欠陥検査方法およびその装置
【課題】従来、製造プロセスの不良対策は、該検査装置で検出された欠陥を分析することにより行われている。一方、光散乱方式の欠陥検査装置の検出結果として総検出個数や欠陥の検出座標、欠陥の寸法などの情報を出力している。光散乱方式の欠陥検査においては、散乱光を用いて欠陥の寸法を測定しているが、寸法が適切に算出できない場合があった。
【解決手段】光学的系により検査する欠陥検査装置において、欠陥検出とほぼ同時に欠陥の寸法を測定する。欠陥寸法の測定を高精度化するために、標準粒子などの標準試料を用いて欠陥寸法を校正する手段を備えた。
【解決手段】光学的系により検査する欠陥検査装置において、欠陥検出とほぼ同時に欠陥の寸法を測定する。欠陥寸法の測定を高精度化するために、標準粒子などの標準試料を用いて欠陥寸法を校正する手段を備えた。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体チップや液晶製品、磁気ディスクヘッド、CCDやCMOSなどのセンサを製造する際の薄膜基板、半導体基板、フォトマスク等に存在する欠陥の検査とその不良原因の解析にあたって、その検査結果をユーザに分析しやすい形式で表示または出力し、その不良原因を究明する欠陥検査方法及びその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体基板上等の欠陥を光学的測定手段により検出する技術は広く知られている。例えば、特許文献1には、半導体基板上にレーザを照射して半導体基板上に欠陥が付着している場合に発生する欠陥からの散乱光を検出し、直前に検査した同一品種半導体基板の検査結果と比較することにより、欠陥の検査を可能にする技術が開示されている。
【0003】
また、特許文献2や特許文献3では、レーザビームを被検物体に照射し、その被検物体の粒子または結晶欠陥からの散乱光を受光して画像処理することにより粒子または結晶欠陥の大きさを測定する方法が開示されている。
【0004】
一方、半導体基板や薄膜基板等の製造ラインにおいて、製品の製造プロセス管理をおこなう手法の一つとして、従来から基板上の欠陥をモニタリングする管理手法が用いられている。このようなモニタリングをする方法の一つとしては、欠陥検査装置を用いて基板上を検査し、その欠陥検査装置からの欠陥検出個数の推移を監視する方法が用いられており、特に検出個数が多い基板に対してその欠陥の不良解析をおこなっていた。
【0005】
【特許文献1】特開昭62−89336号公報
【特許文献2】特開平5−273110号公報
【特許文献3】特開2003−98111号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来のプロセス管理手法においては、製造ラインをモニタリングする検査装置として光散乱式の検査装置を用いて粒子や欠陥の散乱光を検出し、画像処理をすることで欠陥寸法を算出する手法が実施されていたが、寸法を適切に算出できない課題を有していた。
【0007】
本発明は、上記従来技術の有する課題を解決するためになされたもので、その目的は、半導体ウェハや薄膜基板の製造過程の検査や不良解析を行うにあたり、欠陥の大きさを算出する際に、寸法を校正する手段を備えることで、欠陥寸法を適切に算出し、迅速な不良対策をおこなうことのできる欠陥検査方法及びその装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本願において開示される発明のうち代表的なものの概要を簡単に説明すれば次のとおりである。
(1)被検査物の欠陥を検査する欠陥検査装置であって、前記被検査物に光を照射する照明手段と、前記照明手段の光による前記被検査物からの光を検出する光検出手段と、前記光検出手段で検出して得た信号を処理して欠陥を検出する欠陥検出手段と、前記欠陥検出手段で検出した欠陥の特徴量と予め測定・算出された標準粒子の対応する特徴量との比を用いて、前記検出された欠陥の大きさを校正する校正手段と、前記校正手段で校正された欠陥の大きさを表示する表示手段と、を有することを特徴とする欠陥検査装置である。
(2)(1)記載の欠陥検査装置であって、前記光検出手段は、光学的解像度の半分以下のサンプリングピッチを持つことを特徴とする欠陥検査装置である。
(3)被検査物の欠陥を検出する欠陥検査方法であって、被検査物に光を照射する照明工程と、前記照明工程の光の照射による前記被検査物からの光を検出する光検出工程と、前記光検出工程で検出して得た信号を処理して欠陥を検出する欠陥検出工程と、前記欠陥検出工程で検出した欠陥の特徴量と予め測定・算出された標準粒子の対応する特徴量との比を用いて、前記検出された欠陥の大きさを校正する校正工程と、を有することを特徴とする欠陥検査方法である。
(4)(3)記載の欠陥検査方法であって、前記光検出工程では、光学的解像度の半分以下のサンプリングピッチで実施すること特徴とする欠陥検査方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、半導体ウェハや薄膜基板の製造過程の検査や不良解析をおこなうにあたり、欠陥やパターン欠陥の寸法を高精度に測定することにより迅速な不良対策をおこなうことのできる欠陥検査装置、ならびに、欠陥検査方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1は欠陥寸法を算出するための基本的な手順を示したものである。
まず、被検査対象物上に光を照射し、照明領域における欠陥やパターンからの光(電磁波)を検出し(手順110)、検出された光のうち欠陥に基づく成分の情報を抽出する(手順120)。次に、得られた欠陥成分情報のうち欠陥の寸法と関連する特徴量(信号強度の総和や最大値など。詳細は後述。)を算出する(手順130)。ここで算出された特徴量と予め測定・算出された標準粒子の対応する特徴量との比を用いて、欠陥成分情報のうちの散乱光量から算出される欠陥の寸法を補正して、適正な欠陥の寸法を算出する(手順140)。算出された寸法の結果は保存、表示、出力、転送される(手順150)。
【0011】
すなわち、本発明によれば、欠陥の寸法に関連する特徴量と標準粒子のこれに対応する特徴量との比較データを用いて、欠陥の大きさについての測定結果を校正することができるため、適正な欠陥寸法を算出することが可能となる。
【0012】
以下、これを実現するための、欠陥検査装置および欠陥検査システムの構成、欠陥の大きさ校正方法、等の詳細について説明する。なお、以下の実施の形態では、半導体ウエハ上の欠陥を検査する場合を特に例にとって説明するが、これに限られるものではなく、薄膜基板やフォトマスク、TFT、PDP等にも適用可能である。
[欠陥検査装置および欠陥検査システムの構成と動作]
図2は、本発明の欠陥検査装置の一例であり、被検査物1に光を照射する照明光学系100と、被検査物1を保持するステージ部200と、被検査物1に照射された光による被検査物1からの反射光又は散乱光を検出する光検出部300と、検出された光が光電変換等されて得られた信号を処理する信号処理回路400と、データ処理部2と、を備え、必要に応じて、検出光学系のフーリエ変換面の像を撮像して観察するフーリエ変換面観察部500と、検出した欠陥や被検査物1に形成されたパターンの位置合わせのために被検査物1上に作りこまれたアライメントマークなどを観察する観察部600と、ステージを適切な焦点位置に制御するオートフォーカス照明部701及びオートフォーカス受光部702と、とを含んで構成される。
【0013】
本欠陥検査装置を用いた欠陥検出は、以下の手順で行われる。照明光学系100によりステージ部200に載せられた被検査物1に対して光を照射し、被検査物1からの反射光又は散乱光を光検出部300で集め、検出する。ここで、照明光学系100は、光源101と光学部品群102と照明制御部103とを含んで構成され、入力手段4又はネットワーク6を経由して与えられたデータ処理部2からの指令に基づいて照明制御部103により光源101の出力を調整する。光源101には後述するようにレーザ光源等、必要に応じて適宜選択できる。照明光は光学部品群102により被検査物1上で円形状や直線形状など適切な形状に整形される。なお、照明光は平行光でも良いし、平行光でなくてもよく、被検査物1上での単位面積当たりの光量を多くしたい場合は、照明光を高いNA(開口数)で照明し、被検査物上で集光するようにするか、照明光源の出力を多くすればよい。
【0014】
また、ステージ部200はステージ201及びステージ制御部202を有して構成されており、ステージ201により被検査物1を水平方向に移動させ、さらに、オートフォーカス照明部701、オートフォーカス受光部702で被検査物1が光検出部300の焦点位置にくるようにステージ201を垂直方向に移動させることによって、被検査物1の全領域にわたって欠陥の検出とその大きさの測定が可能となる。そして、その検出結果は、データ表示部3に表示するか、もしくはネットワーク6により検出結果が転送される。
【0015】
光検出部300は、対物レンズ301、空間フィルタ302、結像レンズ303、偏光板304、センサ305を適宜含んで構成される。照明光学系100によって照射された光のうち、被検査物1からの光をセンサ305に集光させるように光学レンズが構成されている。また、この光検出部300は、その散乱光に対する光学処理、例えば、空間フィルタ302や偏光板304による光学特性の変更・調整等をおこなえる構成となっている。具体的には、空間フィルタ302は被検査物1の繰り返しパターンからの回折光によって生じる回折光パターンを遮光するもので、対物レンズ301のフーリエ変換面に設置する。空間フィルタ302の遮光形状は、光検出部300の光路中に出し入れ可能な構造をもつフーリエ変換面観察部500で被検査物1の回折パターンを観察してこの観察した回折パターンが遮光されるように設定する。すなわち、空間フィルタ302を取り外した状態でフーリエ変換面観察部500を光検出部300の光路中に挿入し、ビームスプリッタ501で光路を分岐してレンズ502を介してカメラ503で対物レンズ301のフーリエ変換面の像を撮像して観察する。空間フィルタ302の遮光パターンは、被検査物1の品種や工程ごとに設定することが可能である。また、空間フィルタ302の遮光パターンは、走査中に一定形状でもよいし、液晶などを用いてスキャンしている領域に応じてリアルタイムに変化してもよい。なお、空間フィルタを用いる場合、照明光として平行光を用いるほうが欠陥の検出性能が向上する。
【0016】
また、光学処理として偏光板304を用いる場合について説明する。欠陥によって、照明の偏光はランダムになりやすく、一方被検査物1の正常パターンやパターンの無い領域では偏光状態が保存されやすいので、S偏光を照射した場合は、検出時にP偏光を透過する方向に偏光板を設定することで、欠陥からの光を効率よく検出することが可能となる。また、P偏光を照射した場合には、S偏光を透過する方向に偏光板を設定すればよい。
【0017】
上記のように光検出部300で取得された光は光電変換されて信号処理回路400に送られ、信号処理部400で処理されて欠陥が検出される。信号処理回路400は、欠陥を検出する部分と欠陥の大きさを測定する部分から構成する。欠陥を検出する場合には、例えば、入力信号を2値化し、2値化しきい値以上の信号を欠陥と判定して出力する。また、欠陥の大きさを測定する処理については後述する。
【0018】
また、本欠陥検査装置は、更にデータ処理部2に接続されたデータ表示部3、入力手段4、データ保存部5を備えており、任意の条件を設定して検査することと検査結果や検査条件を保持、表示することが可能である。また、本欠陥検査装置はネットワーク6に接続することもでき、検査結果や、被検査物1のレイアウト情報、ロット番号、検査条件、又は観察装置で観察した欠陥の画像や欠陥種のデータなどをネットワーク6上で共有することが可能である。
【0019】
以下、本発明の欠陥検査装置の構成および適宜備える構成の詳細を補足説明する。
【0020】
光源101としては、Arレーザや半導体レーザ、YAGレーザ、UVレーザ等のレーザ光源やXeランプやHgランプ等の白色光源などを用いればよい。特に、欠陥の検出感度を工場させる場合には、照明光源として波長が短い光源を使う方がよいため、YAGレーザやArレーザ、UVレーザが適している。また、小型で安価な検査装置とする場合には、半導体レーザが適している。さらに、被検査物上に形成された光透過形の薄膜による干渉を低減したい場合には、照明光源として白色光源や、可干渉性を低減したレーザ照明が適している。また、上記した光学部品群102には、ビームエキスパンダやコリメータレンズ、シリンドリカルレンズを適宜用いればよい。
【0021】
また、センサ305は、集光された光を受光して、光電変換するために用いるものであり、例えば、TVカメラやCCDリニアセンサやTDIセンサ、アンチブルーミングTDI、フォトマルなどを用いればよい。特に、微笑な光を検出する場合には、フォトマルを用いるとよく、2次元の像を高速に得る場合には、TVカメラがよい。また、検出光学系103が結像系の場合には、TVカメラやCCDリニアセンサやTDIセンサやアンチブルーミングTDIセンサのいずれかがよく、検出光学系103が集光系の場合には、フォトマルがよい。さらに、センサ305で受光する光のダイナミックレンジが大きい場合、つまり、センサが飽和する強さの光が入射する場合には、アンチブルーミング機能の付随したセンサがよい。
【0022】
オートフォーカス照明部701は、例えば、Hgランプ等の白色光源やHe−Ne等のレーザ光源から照射された光を被検査物1上に照明する。ここで、オートフォーカス照明部701に用いる光源の波長は、照明光学系100で用いた光源の波長とは異なる波長の光源を用いると、欠陥検出における光のノイズを低減することができる。
オートフォーカス受光部702は、オートフォーカス照明部701から照射された光のうち、被検査物1から反射された光を受光する部分であり、例えば、ポジションセンサのような光の位置を検出できるものを用いる。さらに、オートフォーカス受光部702で得られた情報は、ステージ制御部202に直接もしくはデータ処理部2を介して送られステージの制御に用いられる。
【0023】
なお、図2で示した欠陥検査装置では、照明光学系100は、被検査物1に対し、1方向から照明する場合の例を示しているが、2つ以上を持ち、異なる方位角や異なる仰角のものを組み合わせた構成としてもよい。さらに、光検出部300および信号処理回路400がそれぞれ1つであり、被検査物1に対して1方向で検出しているが、これらを2つ以上持ち、異なる方位角や異なる仰角のものを組み合わせて検出する構成でもよい。
【0024】
次に、本発明の欠陥検査装置のシステム構成とその動作について説明する。図3は、本発明の欠陥検査装置をシステムとして動作させるときのブロック図を示す。
【0025】
このシステムは、本発明の欠陥検査装置2001、データサーバ2002、欠陥レビュー装置2003、電気テスト装置2004、分析装置2005、各装置を接続するネットワーク6を含んで構成される。ここで、欠陥レビュー装置2003は、例えばSEMであり、また、電気テスト装置2004は、テスターであり、分析装置2005はEDXのような欠陥の成分を分析する装置である。また、データサーバ2002は、欠陥検査装置2001の検査データや欠陥レビュー装置2003のレビュー結果、また、電気テスト装置2004のテスト結果、分析装置2005の分析結果を収集、蓄積可能なコンピュータであり、ネットワーク6は、例えば、イーサネット(登録商標)による通信ネットワークである。
【0026】
次に、本発明の欠陥検査装置を用いたシステムの動作について説明する。欠陥検査装置2001で検査が行なわれた後に、対策が必要な欠陥を選択する。欠陥検査装置2001の検査結果、例えば、検出欠陥の検出時の通し番号や欠陥の位置情報や欠陥の大きさ情報に対し、選択された欠陥の情報を付加して、ネットワーク6を介してデータサーバ2002に送信する。ここで、選択された欠陥の情報の付加方法としては、例えば、前記検査結果に対策の要否のフラグを付加してやれば良い。そして、欠陥検査装置2001で検出された欠陥をさらに詳しく調べるために、被検査物を欠陥レビュー装置2003に移動させる。この移動は、手搬送でも良いし、機械搬送でもかまわない。被検査物を欠陥レビュー装置2003に移動させた後、欠陥レビュー装置2003からデータサーバ2002にネットワーク6を介してアクセスし、データサーバ2002から検査結果を受信する。そして、この検査結果を用いてレビューを開始する。この時、欠陥検査装置2001により付加された情報を用いて、対策が必要な欠陥を優先的にレビューすることにより、不良原因となる欠陥の解析を迅速におこなうことが可能となる。また、同様に、分析装置2005においても欠陥検査装置2001により付加された情報により、対策が必要な欠陥を優先的に分析ができ、不良原因の解析を迅速に進めることができる。
【0027】
これらのレビューデータや解析結果は、データサーバ2002に蓄積しておき、電気テスト装置2004でのテスト結果と突き合わせることにより、最終的に不良になるか否かを確認することができる。もし、最終的に不良とならない場合には、データサーバ2002から欠陥検査装置2001に対して対策が必要な欠陥を選択する基準を変更するデータを送信し、欠陥検査装置2001の対策要否の基準を変更することによって、対策が必要な欠陥を、より高精度に選択することが可能となり、半導体製造における不良対策をより迅速におこなうことが可能となる。
【0028】
なお、以上の説明はネットワークを介してデータの送受信をおこなうことを例にとって説明したが、必ずしもネットワークを介しておこなう必要は無く、取り外し可能な記憶媒体やプリントアウトされた紙によるデータの受け渡しをおこなっても良い。
【0029】
さらに、本発明による欠陥検査装置2001と欠陥レビュー装置2003を組み合わせた別の使い方を説明する。図4は図3の一部分を抜き出して示した図である。図4において、2001は検査装置、例えば、本発明の欠陥検査装置である。また、2003は被検査物上の欠陥のレビュー装置であり、例えば、測長SEMである。さらに、6は前記検査装置2001と欠陥レビュー装置2003を間でデータの送受信を行うためのネットワークで、例えばイーサネット(登録商標)で接続されたシステムである。次に動作について説明する。ただし、以下では欠陥を例にとって説明する。
【0030】
まず、検査装置2001で被検査物上の欠陥の検査を行い、その検査結果、例えば検出欠陥の検出時の通し番号や欠陥の位置情報や欠陥の大きさ情報を付加し、ネットワーク6を介して欠陥レビュー装置2003に検査データを送信する。被検査物を欠陥レビュー装置2003に移動させた後、欠陥レビュー装置2003で欠陥のレビュー作業を行う。この時、検査装置2001で測定された欠陥の大きさ情報に合わせて、欠陥レビュー装置2003でのレビュー時の倍率を変えることにより効率の良いレビューが可能となる。つまり、検査装置2001から得られた欠陥の大きさ情報が小さい欠陥を示している場合は、レビュー時に高い倍率でレビューを行うことにより、小さい欠陥の詳細をすばやく観察することが可能となる。また、前記欠陥の大きさ情報が大きい欠陥を示している場合は、レビュー時に低い倍率でレビューを行うことによって、欠陥が大きい場合でもレビュー画面から欠陥がはみ出すことなくレビューが可能となり、欠陥の全体像をすばやく観察することができる。例えば、検査装置2001から送信した検査データの欠陥の大きさが0.1μmの場合は、欠陥レビュー装置2003でのレビュー倍率を視野が1μmになるように設定してレビューを行い、また、欠陥の大きさが10μmの場合は、欠陥レビュー装置2003でのレビュー倍率を視野が100μmになるように設定してレビューを行うわけである。これにより、小さい欠陥から大きい欠陥まで効率良くレビューすることができ、検出欠陥の解析を迅速に行うことが可能となる。
【0031】
なお、本例では、検査装置2001から欠陥の大きさ情報を出力し、その大きさに応じてレビュー装置の倍率を変える例を説明したが、他の方法として、欠陥レビュー装置2003でのレビュー倍率やレビュー視野の情報を検査装置2001の検査データに付け加えても良い。また、本例では欠陥レビュー装置2003のレビュー倍率として、欠陥の大きさに対し、10倍の視野になる倍率でレビューする例を説明したが、他の倍率でも良く、また、検査装置2001での欠陥の位置情報の精度がわかっている場合は、欠陥の大きさ情報による倍率と位置情報の精度を加味した倍率でレビューしても良い。また、本例ではレビュー装置として、測長SEMの場合で説明したが、他にもレビューSEMや光学式の顕微鏡システムでも良く、本手法はレビューを目的とする装置または機能には適用可能である。
【0032】
また、本例では、欠陥のレビューを欠陥レビュー装置2003で行う例で説明したが、欠陥のレビューを本発明の欠陥および欠陥検査装置で行う場合も、本手法を適用することが可能である。
〔欠陥の大きさの測定〕
次に、本発明の欠陥検査装置により欠陥の大きさを測定する処理について説明する。本発明における欠陥の寸法測定においては、欠陥からの散乱光を使った測定方法である。欠陥粒子の大きさ(粒径)と粒子による散乱光の大きさは「粒子の大きさと照明波長との相対関係」によって、適切な近似方法もしくは解析方法が知られており、以下簡単に説明する。
【0033】
粒径が照明波長に比べて十分大きい時は、フラウンフォーファー近似を用いて表すことができる。また粒径が波長から波長の3倍程度の場合は、ローレンツミー理論が適用可能である。また、粒径が波長より小さい場合はレイリーの散乱理論を適用することが可能である。ここでは、レイリー散乱理論によれば、照明の波長に比べて小さい粒子の散乱光量は粒径、照明波長、屈折率の関数であり、る散乱効率の指標であるレイリー散乱係数σ(Scattering Coefficient)は次式で表される。
【0034】
ここで、πは円周率、dは粒径、λは波長、nは粒子の屈折率である。レイリー散乱係数から、照明波長が一定の場合には、散乱光量は粒径の6乗に比例することが分かる。そこで粒子の散乱光量を測定することができれば、粒径に比例する数値を算出可能である。すなわち適切なスカラーを係数として乗算することにより、粒径が算出可能となる。なお、上記の式は粒子が空気中にある場合の散乱効率の指標であるが、ウェハ上における散乱効率もほぼ同様の関係となっている。
【0035】
図5は、欠陥が存在するときの画像データを示す(図5(a))と、欠陥データを測定したときの信号強度の分布を示す(図5(b))である。また図6は、二種類の信号強度の分布を対比した図と、信号強度の最大値を求めるための説明図である。
【0036】
図5(a)は、欠陥が存在する場合に、信号処理回路400で処理される画像の一例を示したものであり、画像の中央部に欠陥データ801が存在している。欠陥データ801は、センサ305から出力され、信号処理回路400によって濃淡値を持ったデータとして捉えられる。図5(b)は、図5(a)を3次元的に表現したもので、x、y軸は画像内での位置を定めるための座標軸であり、z軸はその位置での信号強度をプロットし、各点を線で結んだものである。この図5(b)で、波形802が欠陥データ801の波形データを示している。波形802は光検出部のサンプリングピッチに対応したサンプリング周波数を持っており、例えば光検出部300が結像光学系で構成される場合は、光学系の倍率が高いほど、センサ305の1画素の寸法が小さいほどサンプリング周波数が高くなる。また、光検出部が集光光学系の場合は、照明のスポットが小さいほど、センサ305のサンプリング時間が短いほどサンプリング周波数が高くなる。
【0037】
ここで波形802は、照明光学系100、光検出部300の性質から1次ベッセル関数の2乗の関数となる。
【0038】
図7に1次ベッセル関数の2乗の関数と、ガウス関数を示す。図7(a)が1次ベッセル関数の2乗の関数、図7(b)がガウス関数である。2つの関数が類似していることから、波形802はガウス関数で近似することも可能である。以下は波形802をガウス分布で近似した場合の、欠陥寸法測定方法について議論する。被検査物1上の欠陥の大きさによって、このガウス分布の幅や高さが変化する。さらに、該分布の幅や高さは照明光学系100で用いたレーザ照明の照度によっても変化する。したがって、各種の標準粒子に対して、検出波形の形状や特徴量を本発明の装置構成で事前に測定しておき、その測定結果と検出した波形802とを比較すれば、検出欠陥の大きさ情報を得ることができる。
【0039】
ここで、標準粒子の波形と欠陥の波形802を比較する方法としては、欠陥データ801部分の信号強度の総和(積分値)、すなわち、波形802の体積データを測定しておき、標準粒子での体積データと欠陥データ801の体積データを比較すればよい。ただし、これらのデータの測定時に照明光学系100の照度の違いがある場合は、それぞれの体積データをそれぞれ用いた照明光学系100の照度で除算することによって正規化するか、照度の比を欠陥データ801または標準粒子の体積データに掛け合わせることによって体積データの補正をおこなう。
【0040】
また、波形を比較する別の方法として、波形802の信号強度の最大値、または波形802の幅を比較しても良い。また、容積データの他にも、標準粒子や欠陥の信号の画像上での画素数を用いても良い。これを図8を用いて説明する。図8(a)は図5(a)同様、欠陥の画像であり、欠陥データ801が欠陥からの散乱光による欠陥の信号である。また、図8(b)は欠陥データ801の濃淡値を示した図であり、太枠で囲んだ欠陥信号部811が欠陥の信号である。図8を例にとると、前記の容積データは各画素の濃淡値の総和であるので値は527となる。また、前記画像上の画素数は、欠陥信号部811内の画素数であるので14画素であり、前記信号の幅はx方向が5画素、y方向が5画素である。
【0041】
信号強度の最大値を求める方法について図6を用いて説明する。図6は、波形802と同様に、欠陥データの波形データの例を示しており、図6(a)は、光検出部300によって得られた欠陥データの信号波形が、ピークを持つ山形の波形になっている例であり、これは、信号がセンサ305の飽和領域に達していないことを示している。また、図6(c)は、欠陥データの信号波形の頂上部が台地のような波形になっている例であり、これは信号がセンサ305の飽和領域に達しており、飽和領域以上のデータが存在しない(欠損している)ことを示している。
【0042】
信号強度の最大値は、図6(a)のような信号波形を描く場合には、波形の各画素の信号強度を比較し最大となった値、すなわち、ピーク点信号強度804(または図6(b)805)を信号強度の最大値とする。また、図6(c)のような信号波形を描く場合には、以下に示すような計算をおこなって、信号強度の最大値を求める。
【0043】
先ず、飽和領域807において、x、y方向に対し、飽和している領域の最大長を求める。図6(c)に示されているのは、その最大長部分による図6(c)の断面である。この図6(c)において、横軸は最大長部分の画素位置を示す座標軸であり、縦軸は信号強度を示す座標軸である。また、信号強度808は、センサ305の飽和レベルを示している。この断面に対し、飽和していない信号811を3点以上選択する。ここでは、3点選択するものとして説明する。選択する点として、この断面部の飽和していない信号を信号強度の大きいものから3点選択する。選んだ3点のデータに対し、それぞれの座標をx1、x2、x3、また、それぞれの信号強度をz1、z2、z3とすると、未知数k、σ、uを用いて
z1=k/σ×exp(−(x1−u)^2/(2×σ^2))
z2=k/σ×exp(−(x2−u)^2/(2×σ^2))
z3=k/σ×exp(−(x3−u)^2/(2×σ^2))
のガウス分布の式が得られる。未知数k、σ、uは、前記3式を連立させることにより求めることができる。
【0044】
そして、求めたk、σの値を用いると、図6(c)の信号強度の最大値は、k/σとして計算できる。
【0045】
なお、ここでは、未知数uを用いて計算した例を示したが、必ずしも未知数uを用いなくても良い。その場合、前記信号811を2点選択する。選択する点として、該断面部の飽和していない信号を信号強度の大きいものから2点選択する。該2点のデータに対し、それぞれの座標をx1、x2、また、それぞれの信号強度をz1、z2とすると、未知数k、σを用いて
z1=k/σ×exp(−(x1)^2/(2×σ^2))
z2=k/σ×exp(−(x2)^2/(2×σ^2))
のガウス分布の式が得られる。未知数k、σは、前記2式を連立させることにより求めることができるため、該k、σの値を用いると図6(c)の信号強度の最大値はk/σとして計算できる。
【0046】
以上の計算によって得られる信号強度の最大値をあらかじめ複数の大きさをもつ標準粒子について求めておくことにより、標準粒子の大きさと信号強度の最大値の関係が定まる。実際に検出した欠陥の信号強度の最大値を前記関係式と比較することにより、欠陥の大きさを決定することができる。
【0047】
次に、信号強度の最大値を計算する時の別の実施例を図9で説明する。
【0048】
図9は、図6(c)と同様に欠陥データの信号波形が、頂上で台地のような波形になっている飽和した信号分布を示す図と、前記飽和した信号部分の形状を示した図と、信号強度の最大値を求めるための説明図である。
【0049】
図9(a)は信号波形812と頂上部807の関係を示しており、信号波形812のうち、センサ305の飽和領域に達しているために、飽和領域以上のデータが存在しない部分が頂上部807である。
【0050】
また、図9(b)は信号波形812の断面波形を示したものであり、縦軸が信号強度を、横軸が信号の画素位置を示している。同図において、飽和レベル806はセンサ305の飽和レベルを示しており、信号幅813は前記頂上部807の幅を示している。また、信号強度814は、飽和しないセンサであった場合に得られる信号強度の最大値である。
【0051】
次に飽和した信号波形812から信号強度の最大値814を計算する方法を説明する。飽和レベル806をSL、信号幅813をSW、信号強度814をPLとおき、ガウス分布で近似すると、
SL=k/σ×exp(−(−SW/2)^2/(2×σ^2))
PL=k/σ
が得られる。ここで、kは係数であり、σは本発明の欠陥および欠陥検査装置における光学系の構成から計算される値である。
【0052】
従って、前記2式より、PLは
PL=SL/exp(−(−SW/2)^2/(2×σ^2))
として計算される。ここで、SLはセンサ305の飽和時の出力であるので、例えば、光検出部104のADコンバータが8ビットの場合は255階調である。また、σは光学系の構成より0〜1の値で与えられる。次に、SWの計算方法について説明する。
【0053】
図9(c)は、前記頂上部807の形状を示している。つまり、光検出部104が飽和している領域である。同図は、飽和領域815と信号幅813で構成されている。ここで、信号波形812はガウス分布と考えられるので、飽和領域815の形状は円と仮定できる。従って、信号幅813をSW、飽和領域の面積をSAとすると、
SW=2×√(SA/π)
で計算できる。なお、√(A)はAの平方根を計算することを意味しており、πは円周率である。また、飽和領域815の面積はセンサ305が飽和している画素の数とすれば良い。ここで、飽和している画素とは、センサ305のADコンバータによる出力の最大値を用いれば良く、センサ305の電気的なノイズを考慮して設定すれば良い。例えば、ADコンバータが8ビットの場合は、出力の最大値は255階調であるが、電気的なノイズが10階調ある場合は、245階調以上を飽和していると考えても良い。
【0054】
また、信号波形807が飽和していない場合は、飽和レベル806として信号波形807の最大値を用いて同様の計算をすれば良い。
【0055】
以上の計算により、信号強度の最大値を計算することができるので、標準粒子で計算した値と、検出した欠陥で検出した値を比較することにより、欠陥の大きさを測定することができる。
【0056】
なお、以上の説明では、信号強度の最大値を例に採って説明したが、信号強度の最大値の代りに、欠陥の信号強度の積分値を用いても良い。この場合、欠陥の信号強度の積分値を算出する方法としては、検出された欠陥信号の各画素の濃淡値を加算した値を用いれば良い。積分値を用いるメリットは、信号のサンプリング誤差を低減できることである。ここで、信号強度の積分値を用いたときの信号強度補正方法について説明する。図9はガウス分布を3次元的に表現した図である。図10(a)は、欠陥信号が飽和しないセンサで信号を検出することができた場合を示している。図10(b)は信号がy=y1で飽和した場合を示しており、図10(c)はy=y2(<y1)以下の信号を示している。説明する方法は、図10(b)、図10(c)の信号強度積分値が得られた場合に、ガウス分布全体の信号強度を算出する方法である。
【0057】
まず、図10のガウス分布全体の体積をV0、信号の最大値をy=y0とし、y=y1より下の部分の体積をV1、y=y2(<y1)より下の部分の体積をV2とする。また、図9のガウス分布のX軸で断面形状が
y=y0・exp(−x2/2/σ2)
で得られるものとする。この時y軸周りに積分することにより、y軸上の任意の2点a、bでガウス分布をy軸に垂直に切ったときの(ただし0≦a≦b≦y0)ab間のガウス分布の体積Va〜bは次式で表せる。
Va〜b=2π・σ2[b・{Log(y0)−Log(b)}−a・{Log(y0)−Log(a)}+(b−a)]
よって、V0は(a,b)に(0,y0)を代入し、次のように表せる。
V0=2πσ2・y0
V1、V2もそれぞれ(a,b)に(0,y1)および(0,y2)を代入し、次のように表せる。
V1=2πσ2・y0・[y1・{Log(y0)−Log(y1)} − y1]
V2=2πσ2・y0・[y2・{Log(y0)−Log(y2)} − y2]
なお、上記の式における「Log」は自然対数を計算することを示している。体積比V1/V2をCCと書きなおすと、CCは
CC=[y1・{Log(y0)−Log(y1)} − y1]/[y2・{Log(y0)−Log(y2)} − y2]
で計算できる。ここで、y1、y2はセンサ305の飽和レベル以下の値であることと、それによりV1およびV2が測定可能であることを考えると、上式は変数y0に関する1変数の方程式であり、y0について解くことができる。y0が求まれば、V1またはV2を求める式から、σを算出することができる。以上によりy0、σが求まったので、ガウス分布の全体積V0が算出可能となる。
【0058】
また、本説明では8ビットのADコンバータで説明したが、10ビットやそれ以上のビット数のADコンバータを用いても良い。ビット数が多い場合のメリットは、光検出部で得られる光の強度変化を細かく捉えることが可能となるので、欠陥または欠陥の大きさを精度良く算出することが可能となることである。また、本説明では欠陥の信号波形をガウス分布で近似した場合を例に説明したが、ガウス分布以外にも2変数で近似した関数を用いた場合は、同様の方法で信号強度の積分値が可能である。変数が3つ以上となる場合は、体積V1、体積V2以外に飽和レベル以下の任意の信号値以下の体積V3、V4,・・・を使って、信号の積分値を計算するのに必要な変数を求めることができる。
【0059】
なお、本実施形態では、上記の装置構成の説明時に、照明光学系100はレーザ光を用いる例を挙げたが、レーザ光の代りに白色光を用いても良い。また、被検査物が繰り返し性を有する回路パターンの場合は、その繰り返しパターン上に欠陥の存在しない画像と欠陥の存在する画像との差分をとった後に上記の大きさ測定処理をしても良い。また、繰り返し性の有無にかかわらず、回路パターン上や膜上、例えば酸化膜や金属膜上の欠陥において、事前に回路パターンや膜からの散乱光データや反射率データが得られる場合には、そのデータを用いて欠陥の大きさデータを補正しても良い。さらに、欠陥の大きさを測定するために、本例では標準粒子の大きさと比較する場合について説明したが、標準粒子の代りに大きさが既知の欠陥と比較しても良い。
【0060】
次に信号の積分値が求まったのちに、信号の積分値を寸法に変換する方法について説明する。前述したように粒子の粒径が波長より小さい場合は、レイリー散乱理論が成立し、散乱光量が粒径の6乗に比例することが分かっている。そこで欠陥信号の積分値の6乗根を求め、照明の強度などに応じた比例係数を乗算することで寸法に変換できる。図11は標準粒子を塗布したシリコン(Si)の鏡面ウェハを欠陥検査装置で検査したときのデータである。グラフの横軸が標準粒子の寸法で、縦軸が信号強度積分値の6乗根である。このデータは照明波長が約0.5μmの時のデータであるため、波長より粒径が小さい0.1μm、0.2μm、0.3μmの標準粒子では、粒径と信号強度積分値の6乗根がよい比例関係にあることがわかる。近似曲線1001は粒径が0.3μm以下の標準粒子のデータを元に最小二乗法で計算した近似曲線である。この時、前記グラフの横軸をx、縦軸をyとしたときに、前記近似曲線式はy=a×x+bと表すことが出来る。ここで、aおよびbは最小二乗法で求めた値である。このとき信号強度積分値の6乗根yから欠陥寸法xを算出するには
x=(y−b)/a を計算すればよい。
【0061】
また図13は欠陥寸法と信号の積分値の関係を示すグラフである。レイリー散乱理論によれば寸法の6乗が信号の積分値に比例するので、その関係を元に近似曲線を求めた例である。
【0062】
また図14は信号の積分値から寸法に変換する変換式を複数備えた例である。粒子の寸法が波長より小さい場合にはレイリー散乱理論が成立つが、粒子の寸法が波長付近ではローレンツ・ミー理論、粒子の寸法が波長に比べて十分大きいばあいはフラウンフォーファーの近似が成立することが分かっており、粒子寸法に応じて、信号積分値と寸法の関係式をそれぞれ持つことで寸法算出の精度を向上することができる。
【0063】
本実施形態では、近似曲線を求めるときに標準粒子を塗布したウェハの測定例を示したが、その他の実施形態としては、寸法が既知のパターンや欠陥を作りこんだ標準ウェハを用いてもよい。また粒子からの散乱はウェハ表面の反射率の影響を受けるため、鏡面ウェハではなく、半導体製造時に使用する材料を成膜したウェハや、実際の製品ウェハに標準粒子を塗布した試料を用いてもよい。この場合は検査工程ごとに最適な近似曲線を使い分けることでより高精度な寸法測定が可能となる。
【0064】
またさらに別の実施例としては、あらかじめシミュレーションにより粒子の散乱光量を計算しデータベースとして蓄えておき、検査時に工程やウェハ表面の材質に応じて適切な近似曲線を選択してもよい。この場合検査条件の照明強度によって検出される信号強度が変わるため、あらかじめ少なくとも1つの照明強度に対応する散乱光量を測定しておく。事前に測定した照明強度のN倍の照明強度で検査する場合は、散乱光量のシミュレーションデータをN倍すれば良い。粒子の散乱光量を計算するシミュレータとしてはNIST(National Institute of Standards and Technology)のMISTや、Weidlinger Associates, Inc.のEMFlex、Laser Diagnostics Laboratory of Arizona State UniversityのDDSURFなどがあげられる。
【0065】
近似曲線を求める方法として最小二乗法を例に挙げたが、最小二乗法は外れ値の影響を受けやすいという性質がある。そこで外れ値に影響されにくいロバストな推定方法を適用してもよい。M推定法を例にとって説明する。最小二乗法においては、i番目の標本と近似曲線との誤差をEiとしたときに次式で表される評価基準を用いている。
LMS=minΣ(Ei)2
この評価基準はモデルと標本との誤差が平均0の標準偏差に従う場合に、推定されたモデルが最適なものとなる。しかし標本に外れ値が含まれている場合は良いモデルが推定できるとは限らない。そこで先ほどの評価基準を変形し、外れ値に対しては小さな重みを与えるように変形したものがM推定法である。図12は最小二乗法とM推定法を比較したものである。近似曲線1002は最小二乗法によるもの、近似曲線1003はM推定法によるものである。モデルからの距離をdに対する重み関数をw(d)とするとM推定法における評価基準は次式となる。
M=minΣ{w(d)・Ei2}
図15は重み関数の一例を示したものであり、次式で表される。
w(d)= {1−(d/W)2}2 ・・・ |d| ≦ W
0 ・・・ |d| > W
上記重み関数w(d)では、モデルからの距離がWより離れている標本の影響は考慮しないため、外れ値の影響を受けにくい。
【0066】
図16にM推定法で近似曲線を求める手順を示す。まず、処理1006で最小二乗法により初期値を求める。処理1007で重み関数w(d)に従い近似曲線と標本との距離から重みを決定する。処理1008で重みつきの最小二乗法を行い近似曲線を算出する。判断1009で近似曲線の精度が十分か判断し、精度不足の場合は、処理1007の処理1008、判断1009を繰返す。
【0067】
近似曲線を求めるその他の方法としては、LMS推定、LTS推定法があげられる。LMS推定法ではモデルと標本の誤差の二乗値の中央値を最小にする推定法である。LTS推定法はn個の標本にたいしてモデルと標本の誤差の二乗値を小さいほうからならべ、h=(n/2)+1番目までの誤差の二乗値の和を最小にする方法である。
【0068】
このようにロバストな推定法と組み合わせることで、外れ値の影響を受けにくくなり、信号強度と粒径の関係を適切にもとめることが可能となる。
【0069】
以上の説明では、散乱光により欠陥検査をおこなってきた。この方法のメリットとしては、欠陥の発見が能率的におこなえることがある。また、上で述べた方法によって、欠陥の大きさを求めることにすれば、大きさを測定するための特別な光源を必要とせず、欠陥を発見することと、その大きさを測定することが、同一の散乱光による光源でおこなえると言うメリットがある。
[欠陥信号飽和時の欠陥信号推定とサンプリングについて]
図17に欠陥の信号波形とサンプリングピッチの関係を示す。波形1010はガウス関数で近似した欠陥の信号波形である。またサンプリングピッチ1011は欠陥検出時のサンプリングピッチが2σの場合を示している。図18、図19は照明強度を増加させたときの信号強度積分値の理論値と、図10で示した方法による信号強度積分値の推定方法の誤差をサンプリングピッチごとに示したものである。図18の1011はサンプリングピッチが2σのデータであり、照明強度が100倍以上となった場合には誤差が非常に大きくっている。図19は図18の一部を拡大したものである。点線で囲まれた部分は寸法精度が±20%以内となる領域である。サンプリングピッチが1σの場合1013、0.5σの場合1014とも精度±20%以内を実現している。1次ベッセル関数とガウス関数との類似性から、ガウス関数における2σは、光検出部300の解像度に相当すると考えられる。図18、図19から散乱光量が3桁異なるような欠陥が同一ウェハ上にある場合でも、高精度に寸法を算出するためには、光検出部300の解像度の半分以下のピッチで信号波形をサンプリングする必要があることが分かる。
[光学系の収差および、センサの感度バラツキの補正について]
上記実施例においては光学系の収差や、センサの感度バラツキについては言及しなかったが、実際の検査装置においてはこれらも寸法算出精度に影響を与えうる。図20は光検出部300において結像光学系を用いた実施例において、検出視野の中心と、検出視野の周辺での収差の様子を示したものである。同一寸法の標準粒子を塗布したウェハを測定したときの検出像を示したもので、図20(a)は視野中心、図20(b)はそれぞれ視野周辺での欠陥検出像である。収差の影響を軽減する方法としては2つ考えられ、収差の程度をあらかじめ測定しておき、その測定結果に基づく補正テーブルもしくは補正式を備える方法と、検査中にリアルタイムに対応する方法が考えられる。図10の実施例の説明において、検出信号の広がり具合が事前にわかっていなくても、散乱光量を適切に算出できることを既に示した。
【0070】
図21はセンサ305の感度バラツキを示した図である。図21(a)は欠陥の検出画像データ、図21(b)は図(a)のA−A’断面の信号波形を示している。レイリー散乱領域では欠陥寸法は散乱光量の6乗根に比例するため、図21(b)程度のバラツキであれば寸法算出の精度を低下させる要因とはならないことが分かった。
【0071】
図22は標準サンプルを備えたウェハを用いて、寸法を校正する一例である。図1の手順S140に関連する例である。図22(a)は寸法が既知の標準粒子を複数種類散布している。図22(b)は校正前のSEM測定寸法と検査装置測定寸法の関係を示したもの、図22(c)は校正後のSEM測定寸法と検査装置測定寸法の関係を示したものである。
以下校正の手順をしめす。図22(a)の標準サンプルを備えたウェハを検査装置で検査し、寸法を算出すると装置構成要素の製造ばらつきなどにより、寸法が正しく求まらない場合がある。標準サンプルは寸法が既知であるので、例えば図22(b)のように装置出力と、真値を比較し互いの関係を近似式で表すことにより、補正が可能となる。近似式の求め方は最小二乗法を用いてもよいし、ロバスト推定法を用いてもよい。近似式を求め補正することにより、図22(c)のように寸法を精度よく求めることができる。
【0072】
図23は欠陥寸法を補正、または校正するときの手順を示したものである。図23(a)は寸法が未知の欠陥の例で、例えば実際の製品ウェハ上の欠陥を用いて、補正係数を算出する場合を示す。製品ウェハ上の欠陥は寸法が未知であるため、SEMなどの観察装置を用いて各欠陥の寸法を測定する必要がある。図23(b)は寸法が既知の欠陥を用いて補正係数を算出する例である。図22の説明では寸法が既知のサンプルとして標準粒子を例に挙げたが、ウェハ上にフォトリソグラフィーや、FIBなどで寸法を制御した欠陥を作りこんでもよい。
【0073】
図24は寸法補正係数を算出するための実施例の一例である。
【0074】
ここで再び図1に戻り、他の実施例について説明する。
手順S110の実施例として、図2において暗視野照明と結像光学系を組み合わせた検出技術を例示したが、欠陥やパターンからの光を検出する方式であれば他の方法でも構わない。たとえば明視野照明と結像光学系の組合せや、暗視野照明と集光光学系を用いた検出方式でもよい。
【0075】
また手順S120の他の実施例としては、欠陥領域を抽出する際に隣接するダイの画像間で差をとって、適切なしきい値を設定し、欠陥領域を抽出してもよい。
【0076】
手順S130の他の実施例としては、欠陥の特徴量として、散乱光量や、信号強度の最大値の他の特徴量を用いてもよい。その際、座標データや隣接ダイの情報などを特徴量算出に反映しても良い。また検査装置の検査条件を反映させてもよい。検査条件とは、例えば照明の波長、光量、入射角度は、ステージの走査速度、光検出部の倍率、開口数などである。また検査装置自体の製造ばらつき情報を反映させてもよい。製造バラツキとしては、照明の光量むら、レンズの収差、センサの感度ばらつきなどである。データの反映のさせ方としては2つの方法があり、(1)特徴量算出式の中に変数として盛り込む方法、(2)情報をもとに場合分けをして、それぞれ独立に処理をする方法である。(1)の方法の場合は、特徴量を算出後、そのまま手順S140に移る。(2)の方法の場合分けの例を図25に示す。図25の(a)SEM測定寸法と寸法に関連する特徴量の関係をグラフで示したものである。図25(b)は特徴量や、検査条件、検査装置事態の製造バラツキ情報に基づいて場合分けをした例である。場合分けをすることで、場合分け後のそれぞれのグループ内のばらつきが小さくなる。手順S130以降の処理を場合わけに基づいて分岐し、分岐ごとに手順S140にて寸法と信号積分値の関係式を求め、寸法を算出する。
〔欠陥検査装置の光学系について〕
以上、本発明の記述では、欠陥検査装置の光学系については、散乱光を用いて、欠陥を検出し、その大きさを測定するものについて説明してきたが、本発明の手法は、光学系が反射光で、欠陥や欠陥を検出し、その大きさを測定するものであっても適用可能である。一般に、散乱光を用いるものは検査の能率は良いが、測定精度に難があり、反射光を用いるものは、その逆で、検査の能率は悪いが、測定精度は優れている。本発明の手法は、どちらについても適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明に係る欠陥寸法手順を示す図である。
【図2】本発明に係る欠陥検査装置の概略の構成を示すブロック図である。
【図3】本発明に係る欠陥検査装置をシステムとして動作させるときのブロック図である。
【図4】本発明に係る欠陥検査装置と欠陥レビュー装置をシステムとして動作させるときのブロック図である。
【図5】欠陥があるときの画像データを示す図と、欠陥データを測定したときの信号強度の分布を示す図である。
【図6】二種類の信号強度の分布を対比した図と、信号強度を最大値を求めるための説明図である。
【図7】1次ベッセル関数とガウス関数を比較した図である。
【図8】(a)欠陥の画像、(b)は(a)の画像の濃淡値の分布を示した図である。(c)はノイズが含まれる場合の濃淡値の図である。
【図9】(a)飽和した信号強度のXY平面での分布を示すグラフ(b)信号強度の最大値を求めることを示すグラフである。
【図10】欠陥の信号波形を示すグラフであり、検出信号のうち、信号強度が特定の値以下の部分の信号強度積分値を示す図である。
【図11】標準粒子の寸法と信号強度積分値の6乗根の関係を示すグラフである。
【図12】最小二乗法および、M推定法による近似曲線の算出例を示した図である。
【図13】標準粒子の寸法と信号強度積分値の関係を示すグラフである。
【図14】寸法に応じて異なる近似曲線を適用した例である。
【図15】M推定法における重さ関数の一例を示す図である。
【図16】M推定法における、データ処理の手順をしめした図である。
【図17】ガウス関数とサンプリングピッチの関係を示す図である。
【図18】散乱光量の理論値と、推定値の関係をサンプリングピッチの観点から比較したグラフである。
【図19】散乱光量の理論値と、推定値の関係をサンプリングピッチの観点から比較したグラフである。
【図20】光学系の収差を示す図である。
【図21】センサの画素による感度バラツキを示した図である。
【図22】標準サンプルによる寸法校正手法の例である。
【図23】寸法校正手法の手順を示す図である。
【図24】補正係数を算出する手順を示す図である。
【図25】寸法と関連する特徴量を算出する手順において、特徴量や、その他の情報により場合わけをする例を示した図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体チップや液晶製品、磁気ディスクヘッド、CCDやCMOSなどのセンサを製造する際の薄膜基板、半導体基板、フォトマスク等に存在する欠陥の検査とその不良原因の解析にあたって、その検査結果をユーザに分析しやすい形式で表示または出力し、その不良原因を究明する欠陥検査方法及びその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体基板上等の欠陥を光学的測定手段により検出する技術は広く知られている。例えば、特許文献1には、半導体基板上にレーザを照射して半導体基板上に欠陥が付着している場合に発生する欠陥からの散乱光を検出し、直前に検査した同一品種半導体基板の検査結果と比較することにより、欠陥の検査を可能にする技術が開示されている。
【0003】
また、特許文献2や特許文献3では、レーザビームを被検物体に照射し、その被検物体の粒子または結晶欠陥からの散乱光を受光して画像処理することにより粒子または結晶欠陥の大きさを測定する方法が開示されている。
【0004】
一方、半導体基板や薄膜基板等の製造ラインにおいて、製品の製造プロセス管理をおこなう手法の一つとして、従来から基板上の欠陥をモニタリングする管理手法が用いられている。このようなモニタリングをする方法の一つとしては、欠陥検査装置を用いて基板上を検査し、その欠陥検査装置からの欠陥検出個数の推移を監視する方法が用いられており、特に検出個数が多い基板に対してその欠陥の不良解析をおこなっていた。
【0005】
【特許文献1】特開昭62−89336号公報
【特許文献2】特開平5−273110号公報
【特許文献3】特開2003−98111号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来のプロセス管理手法においては、製造ラインをモニタリングする検査装置として光散乱式の検査装置を用いて粒子や欠陥の散乱光を検出し、画像処理をすることで欠陥寸法を算出する手法が実施されていたが、寸法を適切に算出できない課題を有していた。
【0007】
本発明は、上記従来技術の有する課題を解決するためになされたもので、その目的は、半導体ウェハや薄膜基板の製造過程の検査や不良解析を行うにあたり、欠陥の大きさを算出する際に、寸法を校正する手段を備えることで、欠陥寸法を適切に算出し、迅速な不良対策をおこなうことのできる欠陥検査方法及びその装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本願において開示される発明のうち代表的なものの概要を簡単に説明すれば次のとおりである。
(1)被検査物の欠陥を検査する欠陥検査装置であって、前記被検査物に光を照射する照明手段と、前記照明手段の光による前記被検査物からの光を検出する光検出手段と、前記光検出手段で検出して得た信号を処理して欠陥を検出する欠陥検出手段と、前記欠陥検出手段で検出した欠陥の特徴量と予め測定・算出された標準粒子の対応する特徴量との比を用いて、前記検出された欠陥の大きさを校正する校正手段と、前記校正手段で校正された欠陥の大きさを表示する表示手段と、を有することを特徴とする欠陥検査装置である。
(2)(1)記載の欠陥検査装置であって、前記光検出手段は、光学的解像度の半分以下のサンプリングピッチを持つことを特徴とする欠陥検査装置である。
(3)被検査物の欠陥を検出する欠陥検査方法であって、被検査物に光を照射する照明工程と、前記照明工程の光の照射による前記被検査物からの光を検出する光検出工程と、前記光検出工程で検出して得た信号を処理して欠陥を検出する欠陥検出工程と、前記欠陥検出工程で検出した欠陥の特徴量と予め測定・算出された標準粒子の対応する特徴量との比を用いて、前記検出された欠陥の大きさを校正する校正工程と、を有することを特徴とする欠陥検査方法である。
(4)(3)記載の欠陥検査方法であって、前記光検出工程では、光学的解像度の半分以下のサンプリングピッチで実施すること特徴とする欠陥検査方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、半導体ウェハや薄膜基板の製造過程の検査や不良解析をおこなうにあたり、欠陥やパターン欠陥の寸法を高精度に測定することにより迅速な不良対策をおこなうことのできる欠陥検査装置、ならびに、欠陥検査方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1は欠陥寸法を算出するための基本的な手順を示したものである。
まず、被検査対象物上に光を照射し、照明領域における欠陥やパターンからの光(電磁波)を検出し(手順110)、検出された光のうち欠陥に基づく成分の情報を抽出する(手順120)。次に、得られた欠陥成分情報のうち欠陥の寸法と関連する特徴量(信号強度の総和や最大値など。詳細は後述。)を算出する(手順130)。ここで算出された特徴量と予め測定・算出された標準粒子の対応する特徴量との比を用いて、欠陥成分情報のうちの散乱光量から算出される欠陥の寸法を補正して、適正な欠陥の寸法を算出する(手順140)。算出された寸法の結果は保存、表示、出力、転送される(手順150)。
【0011】
すなわち、本発明によれば、欠陥の寸法に関連する特徴量と標準粒子のこれに対応する特徴量との比較データを用いて、欠陥の大きさについての測定結果を校正することができるため、適正な欠陥寸法を算出することが可能となる。
【0012】
以下、これを実現するための、欠陥検査装置および欠陥検査システムの構成、欠陥の大きさ校正方法、等の詳細について説明する。なお、以下の実施の形態では、半導体ウエハ上の欠陥を検査する場合を特に例にとって説明するが、これに限られるものではなく、薄膜基板やフォトマスク、TFT、PDP等にも適用可能である。
[欠陥検査装置および欠陥検査システムの構成と動作]
図2は、本発明の欠陥検査装置の一例であり、被検査物1に光を照射する照明光学系100と、被検査物1を保持するステージ部200と、被検査物1に照射された光による被検査物1からの反射光又は散乱光を検出する光検出部300と、検出された光が光電変換等されて得られた信号を処理する信号処理回路400と、データ処理部2と、を備え、必要に応じて、検出光学系のフーリエ変換面の像を撮像して観察するフーリエ変換面観察部500と、検出した欠陥や被検査物1に形成されたパターンの位置合わせのために被検査物1上に作りこまれたアライメントマークなどを観察する観察部600と、ステージを適切な焦点位置に制御するオートフォーカス照明部701及びオートフォーカス受光部702と、とを含んで構成される。
【0013】
本欠陥検査装置を用いた欠陥検出は、以下の手順で行われる。照明光学系100によりステージ部200に載せられた被検査物1に対して光を照射し、被検査物1からの反射光又は散乱光を光検出部300で集め、検出する。ここで、照明光学系100は、光源101と光学部品群102と照明制御部103とを含んで構成され、入力手段4又はネットワーク6を経由して与えられたデータ処理部2からの指令に基づいて照明制御部103により光源101の出力を調整する。光源101には後述するようにレーザ光源等、必要に応じて適宜選択できる。照明光は光学部品群102により被検査物1上で円形状や直線形状など適切な形状に整形される。なお、照明光は平行光でも良いし、平行光でなくてもよく、被検査物1上での単位面積当たりの光量を多くしたい場合は、照明光を高いNA(開口数)で照明し、被検査物上で集光するようにするか、照明光源の出力を多くすればよい。
【0014】
また、ステージ部200はステージ201及びステージ制御部202を有して構成されており、ステージ201により被検査物1を水平方向に移動させ、さらに、オートフォーカス照明部701、オートフォーカス受光部702で被検査物1が光検出部300の焦点位置にくるようにステージ201を垂直方向に移動させることによって、被検査物1の全領域にわたって欠陥の検出とその大きさの測定が可能となる。そして、その検出結果は、データ表示部3に表示するか、もしくはネットワーク6により検出結果が転送される。
【0015】
光検出部300は、対物レンズ301、空間フィルタ302、結像レンズ303、偏光板304、センサ305を適宜含んで構成される。照明光学系100によって照射された光のうち、被検査物1からの光をセンサ305に集光させるように光学レンズが構成されている。また、この光検出部300は、その散乱光に対する光学処理、例えば、空間フィルタ302や偏光板304による光学特性の変更・調整等をおこなえる構成となっている。具体的には、空間フィルタ302は被検査物1の繰り返しパターンからの回折光によって生じる回折光パターンを遮光するもので、対物レンズ301のフーリエ変換面に設置する。空間フィルタ302の遮光形状は、光検出部300の光路中に出し入れ可能な構造をもつフーリエ変換面観察部500で被検査物1の回折パターンを観察してこの観察した回折パターンが遮光されるように設定する。すなわち、空間フィルタ302を取り外した状態でフーリエ変換面観察部500を光検出部300の光路中に挿入し、ビームスプリッタ501で光路を分岐してレンズ502を介してカメラ503で対物レンズ301のフーリエ変換面の像を撮像して観察する。空間フィルタ302の遮光パターンは、被検査物1の品種や工程ごとに設定することが可能である。また、空間フィルタ302の遮光パターンは、走査中に一定形状でもよいし、液晶などを用いてスキャンしている領域に応じてリアルタイムに変化してもよい。なお、空間フィルタを用いる場合、照明光として平行光を用いるほうが欠陥の検出性能が向上する。
【0016】
また、光学処理として偏光板304を用いる場合について説明する。欠陥によって、照明の偏光はランダムになりやすく、一方被検査物1の正常パターンやパターンの無い領域では偏光状態が保存されやすいので、S偏光を照射した場合は、検出時にP偏光を透過する方向に偏光板を設定することで、欠陥からの光を効率よく検出することが可能となる。また、P偏光を照射した場合には、S偏光を透過する方向に偏光板を設定すればよい。
【0017】
上記のように光検出部300で取得された光は光電変換されて信号処理回路400に送られ、信号処理部400で処理されて欠陥が検出される。信号処理回路400は、欠陥を検出する部分と欠陥の大きさを測定する部分から構成する。欠陥を検出する場合には、例えば、入力信号を2値化し、2値化しきい値以上の信号を欠陥と判定して出力する。また、欠陥の大きさを測定する処理については後述する。
【0018】
また、本欠陥検査装置は、更にデータ処理部2に接続されたデータ表示部3、入力手段4、データ保存部5を備えており、任意の条件を設定して検査することと検査結果や検査条件を保持、表示することが可能である。また、本欠陥検査装置はネットワーク6に接続することもでき、検査結果や、被検査物1のレイアウト情報、ロット番号、検査条件、又は観察装置で観察した欠陥の画像や欠陥種のデータなどをネットワーク6上で共有することが可能である。
【0019】
以下、本発明の欠陥検査装置の構成および適宜備える構成の詳細を補足説明する。
【0020】
光源101としては、Arレーザや半導体レーザ、YAGレーザ、UVレーザ等のレーザ光源やXeランプやHgランプ等の白色光源などを用いればよい。特に、欠陥の検出感度を工場させる場合には、照明光源として波長が短い光源を使う方がよいため、YAGレーザやArレーザ、UVレーザが適している。また、小型で安価な検査装置とする場合には、半導体レーザが適している。さらに、被検査物上に形成された光透過形の薄膜による干渉を低減したい場合には、照明光源として白色光源や、可干渉性を低減したレーザ照明が適している。また、上記した光学部品群102には、ビームエキスパンダやコリメータレンズ、シリンドリカルレンズを適宜用いればよい。
【0021】
また、センサ305は、集光された光を受光して、光電変換するために用いるものであり、例えば、TVカメラやCCDリニアセンサやTDIセンサ、アンチブルーミングTDI、フォトマルなどを用いればよい。特に、微笑な光を検出する場合には、フォトマルを用いるとよく、2次元の像を高速に得る場合には、TVカメラがよい。また、検出光学系103が結像系の場合には、TVカメラやCCDリニアセンサやTDIセンサやアンチブルーミングTDIセンサのいずれかがよく、検出光学系103が集光系の場合には、フォトマルがよい。さらに、センサ305で受光する光のダイナミックレンジが大きい場合、つまり、センサが飽和する強さの光が入射する場合には、アンチブルーミング機能の付随したセンサがよい。
【0022】
オートフォーカス照明部701は、例えば、Hgランプ等の白色光源やHe−Ne等のレーザ光源から照射された光を被検査物1上に照明する。ここで、オートフォーカス照明部701に用いる光源の波長は、照明光学系100で用いた光源の波長とは異なる波長の光源を用いると、欠陥検出における光のノイズを低減することができる。
オートフォーカス受光部702は、オートフォーカス照明部701から照射された光のうち、被検査物1から反射された光を受光する部分であり、例えば、ポジションセンサのような光の位置を検出できるものを用いる。さらに、オートフォーカス受光部702で得られた情報は、ステージ制御部202に直接もしくはデータ処理部2を介して送られステージの制御に用いられる。
【0023】
なお、図2で示した欠陥検査装置では、照明光学系100は、被検査物1に対し、1方向から照明する場合の例を示しているが、2つ以上を持ち、異なる方位角や異なる仰角のものを組み合わせた構成としてもよい。さらに、光検出部300および信号処理回路400がそれぞれ1つであり、被検査物1に対して1方向で検出しているが、これらを2つ以上持ち、異なる方位角や異なる仰角のものを組み合わせて検出する構成でもよい。
【0024】
次に、本発明の欠陥検査装置のシステム構成とその動作について説明する。図3は、本発明の欠陥検査装置をシステムとして動作させるときのブロック図を示す。
【0025】
このシステムは、本発明の欠陥検査装置2001、データサーバ2002、欠陥レビュー装置2003、電気テスト装置2004、分析装置2005、各装置を接続するネットワーク6を含んで構成される。ここで、欠陥レビュー装置2003は、例えばSEMであり、また、電気テスト装置2004は、テスターであり、分析装置2005はEDXのような欠陥の成分を分析する装置である。また、データサーバ2002は、欠陥検査装置2001の検査データや欠陥レビュー装置2003のレビュー結果、また、電気テスト装置2004のテスト結果、分析装置2005の分析結果を収集、蓄積可能なコンピュータであり、ネットワーク6は、例えば、イーサネット(登録商標)による通信ネットワークである。
【0026】
次に、本発明の欠陥検査装置を用いたシステムの動作について説明する。欠陥検査装置2001で検査が行なわれた後に、対策が必要な欠陥を選択する。欠陥検査装置2001の検査結果、例えば、検出欠陥の検出時の通し番号や欠陥の位置情報や欠陥の大きさ情報に対し、選択された欠陥の情報を付加して、ネットワーク6を介してデータサーバ2002に送信する。ここで、選択された欠陥の情報の付加方法としては、例えば、前記検査結果に対策の要否のフラグを付加してやれば良い。そして、欠陥検査装置2001で検出された欠陥をさらに詳しく調べるために、被検査物を欠陥レビュー装置2003に移動させる。この移動は、手搬送でも良いし、機械搬送でもかまわない。被検査物を欠陥レビュー装置2003に移動させた後、欠陥レビュー装置2003からデータサーバ2002にネットワーク6を介してアクセスし、データサーバ2002から検査結果を受信する。そして、この検査結果を用いてレビューを開始する。この時、欠陥検査装置2001により付加された情報を用いて、対策が必要な欠陥を優先的にレビューすることにより、不良原因となる欠陥の解析を迅速におこなうことが可能となる。また、同様に、分析装置2005においても欠陥検査装置2001により付加された情報により、対策が必要な欠陥を優先的に分析ができ、不良原因の解析を迅速に進めることができる。
【0027】
これらのレビューデータや解析結果は、データサーバ2002に蓄積しておき、電気テスト装置2004でのテスト結果と突き合わせることにより、最終的に不良になるか否かを確認することができる。もし、最終的に不良とならない場合には、データサーバ2002から欠陥検査装置2001に対して対策が必要な欠陥を選択する基準を変更するデータを送信し、欠陥検査装置2001の対策要否の基準を変更することによって、対策が必要な欠陥を、より高精度に選択することが可能となり、半導体製造における不良対策をより迅速におこなうことが可能となる。
【0028】
なお、以上の説明はネットワークを介してデータの送受信をおこなうことを例にとって説明したが、必ずしもネットワークを介しておこなう必要は無く、取り外し可能な記憶媒体やプリントアウトされた紙によるデータの受け渡しをおこなっても良い。
【0029】
さらに、本発明による欠陥検査装置2001と欠陥レビュー装置2003を組み合わせた別の使い方を説明する。図4は図3の一部分を抜き出して示した図である。図4において、2001は検査装置、例えば、本発明の欠陥検査装置である。また、2003は被検査物上の欠陥のレビュー装置であり、例えば、測長SEMである。さらに、6は前記検査装置2001と欠陥レビュー装置2003を間でデータの送受信を行うためのネットワークで、例えばイーサネット(登録商標)で接続されたシステムである。次に動作について説明する。ただし、以下では欠陥を例にとって説明する。
【0030】
まず、検査装置2001で被検査物上の欠陥の検査を行い、その検査結果、例えば検出欠陥の検出時の通し番号や欠陥の位置情報や欠陥の大きさ情報を付加し、ネットワーク6を介して欠陥レビュー装置2003に検査データを送信する。被検査物を欠陥レビュー装置2003に移動させた後、欠陥レビュー装置2003で欠陥のレビュー作業を行う。この時、検査装置2001で測定された欠陥の大きさ情報に合わせて、欠陥レビュー装置2003でのレビュー時の倍率を変えることにより効率の良いレビューが可能となる。つまり、検査装置2001から得られた欠陥の大きさ情報が小さい欠陥を示している場合は、レビュー時に高い倍率でレビューを行うことにより、小さい欠陥の詳細をすばやく観察することが可能となる。また、前記欠陥の大きさ情報が大きい欠陥を示している場合は、レビュー時に低い倍率でレビューを行うことによって、欠陥が大きい場合でもレビュー画面から欠陥がはみ出すことなくレビューが可能となり、欠陥の全体像をすばやく観察することができる。例えば、検査装置2001から送信した検査データの欠陥の大きさが0.1μmの場合は、欠陥レビュー装置2003でのレビュー倍率を視野が1μmになるように設定してレビューを行い、また、欠陥の大きさが10μmの場合は、欠陥レビュー装置2003でのレビュー倍率を視野が100μmになるように設定してレビューを行うわけである。これにより、小さい欠陥から大きい欠陥まで効率良くレビューすることができ、検出欠陥の解析を迅速に行うことが可能となる。
【0031】
なお、本例では、検査装置2001から欠陥の大きさ情報を出力し、その大きさに応じてレビュー装置の倍率を変える例を説明したが、他の方法として、欠陥レビュー装置2003でのレビュー倍率やレビュー視野の情報を検査装置2001の検査データに付け加えても良い。また、本例では欠陥レビュー装置2003のレビュー倍率として、欠陥の大きさに対し、10倍の視野になる倍率でレビューする例を説明したが、他の倍率でも良く、また、検査装置2001での欠陥の位置情報の精度がわかっている場合は、欠陥の大きさ情報による倍率と位置情報の精度を加味した倍率でレビューしても良い。また、本例ではレビュー装置として、測長SEMの場合で説明したが、他にもレビューSEMや光学式の顕微鏡システムでも良く、本手法はレビューを目的とする装置または機能には適用可能である。
【0032】
また、本例では、欠陥のレビューを欠陥レビュー装置2003で行う例で説明したが、欠陥のレビューを本発明の欠陥および欠陥検査装置で行う場合も、本手法を適用することが可能である。
〔欠陥の大きさの測定〕
次に、本発明の欠陥検査装置により欠陥の大きさを測定する処理について説明する。本発明における欠陥の寸法測定においては、欠陥からの散乱光を使った測定方法である。欠陥粒子の大きさ(粒径)と粒子による散乱光の大きさは「粒子の大きさと照明波長との相対関係」によって、適切な近似方法もしくは解析方法が知られており、以下簡単に説明する。
【0033】
粒径が照明波長に比べて十分大きい時は、フラウンフォーファー近似を用いて表すことができる。また粒径が波長から波長の3倍程度の場合は、ローレンツミー理論が適用可能である。また、粒径が波長より小さい場合はレイリーの散乱理論を適用することが可能である。ここでは、レイリー散乱理論によれば、照明の波長に比べて小さい粒子の散乱光量は粒径、照明波長、屈折率の関数であり、る散乱効率の指標であるレイリー散乱係数σ(Scattering Coefficient)は次式で表される。
【0034】
ここで、πは円周率、dは粒径、λは波長、nは粒子の屈折率である。レイリー散乱係数から、照明波長が一定の場合には、散乱光量は粒径の6乗に比例することが分かる。そこで粒子の散乱光量を測定することができれば、粒径に比例する数値を算出可能である。すなわち適切なスカラーを係数として乗算することにより、粒径が算出可能となる。なお、上記の式は粒子が空気中にある場合の散乱効率の指標であるが、ウェハ上における散乱効率もほぼ同様の関係となっている。
【0035】
図5は、欠陥が存在するときの画像データを示す(図5(a))と、欠陥データを測定したときの信号強度の分布を示す(図5(b))である。また図6は、二種類の信号強度の分布を対比した図と、信号強度の最大値を求めるための説明図である。
【0036】
図5(a)は、欠陥が存在する場合に、信号処理回路400で処理される画像の一例を示したものであり、画像の中央部に欠陥データ801が存在している。欠陥データ801は、センサ305から出力され、信号処理回路400によって濃淡値を持ったデータとして捉えられる。図5(b)は、図5(a)を3次元的に表現したもので、x、y軸は画像内での位置を定めるための座標軸であり、z軸はその位置での信号強度をプロットし、各点を線で結んだものである。この図5(b)で、波形802が欠陥データ801の波形データを示している。波形802は光検出部のサンプリングピッチに対応したサンプリング周波数を持っており、例えば光検出部300が結像光学系で構成される場合は、光学系の倍率が高いほど、センサ305の1画素の寸法が小さいほどサンプリング周波数が高くなる。また、光検出部が集光光学系の場合は、照明のスポットが小さいほど、センサ305のサンプリング時間が短いほどサンプリング周波数が高くなる。
【0037】
ここで波形802は、照明光学系100、光検出部300の性質から1次ベッセル関数の2乗の関数となる。
【0038】
図7に1次ベッセル関数の2乗の関数と、ガウス関数を示す。図7(a)が1次ベッセル関数の2乗の関数、図7(b)がガウス関数である。2つの関数が類似していることから、波形802はガウス関数で近似することも可能である。以下は波形802をガウス分布で近似した場合の、欠陥寸法測定方法について議論する。被検査物1上の欠陥の大きさによって、このガウス分布の幅や高さが変化する。さらに、該分布の幅や高さは照明光学系100で用いたレーザ照明の照度によっても変化する。したがって、各種の標準粒子に対して、検出波形の形状や特徴量を本発明の装置構成で事前に測定しておき、その測定結果と検出した波形802とを比較すれば、検出欠陥の大きさ情報を得ることができる。
【0039】
ここで、標準粒子の波形と欠陥の波形802を比較する方法としては、欠陥データ801部分の信号強度の総和(積分値)、すなわち、波形802の体積データを測定しておき、標準粒子での体積データと欠陥データ801の体積データを比較すればよい。ただし、これらのデータの測定時に照明光学系100の照度の違いがある場合は、それぞれの体積データをそれぞれ用いた照明光学系100の照度で除算することによって正規化するか、照度の比を欠陥データ801または標準粒子の体積データに掛け合わせることによって体積データの補正をおこなう。
【0040】
また、波形を比較する別の方法として、波形802の信号強度の最大値、または波形802の幅を比較しても良い。また、容積データの他にも、標準粒子や欠陥の信号の画像上での画素数を用いても良い。これを図8を用いて説明する。図8(a)は図5(a)同様、欠陥の画像であり、欠陥データ801が欠陥からの散乱光による欠陥の信号である。また、図8(b)は欠陥データ801の濃淡値を示した図であり、太枠で囲んだ欠陥信号部811が欠陥の信号である。図8を例にとると、前記の容積データは各画素の濃淡値の総和であるので値は527となる。また、前記画像上の画素数は、欠陥信号部811内の画素数であるので14画素であり、前記信号の幅はx方向が5画素、y方向が5画素である。
【0041】
信号強度の最大値を求める方法について図6を用いて説明する。図6は、波形802と同様に、欠陥データの波形データの例を示しており、図6(a)は、光検出部300によって得られた欠陥データの信号波形が、ピークを持つ山形の波形になっている例であり、これは、信号がセンサ305の飽和領域に達していないことを示している。また、図6(c)は、欠陥データの信号波形の頂上部が台地のような波形になっている例であり、これは信号がセンサ305の飽和領域に達しており、飽和領域以上のデータが存在しない(欠損している)ことを示している。
【0042】
信号強度の最大値は、図6(a)のような信号波形を描く場合には、波形の各画素の信号強度を比較し最大となった値、すなわち、ピーク点信号強度804(または図6(b)805)を信号強度の最大値とする。また、図6(c)のような信号波形を描く場合には、以下に示すような計算をおこなって、信号強度の最大値を求める。
【0043】
先ず、飽和領域807において、x、y方向に対し、飽和している領域の最大長を求める。図6(c)に示されているのは、その最大長部分による図6(c)の断面である。この図6(c)において、横軸は最大長部分の画素位置を示す座標軸であり、縦軸は信号強度を示す座標軸である。また、信号強度808は、センサ305の飽和レベルを示している。この断面に対し、飽和していない信号811を3点以上選択する。ここでは、3点選択するものとして説明する。選択する点として、この断面部の飽和していない信号を信号強度の大きいものから3点選択する。選んだ3点のデータに対し、それぞれの座標をx1、x2、x3、また、それぞれの信号強度をz1、z2、z3とすると、未知数k、σ、uを用いて
z1=k/σ×exp(−(x1−u)^2/(2×σ^2))
z2=k/σ×exp(−(x2−u)^2/(2×σ^2))
z3=k/σ×exp(−(x3−u)^2/(2×σ^2))
のガウス分布の式が得られる。未知数k、σ、uは、前記3式を連立させることにより求めることができる。
【0044】
そして、求めたk、σの値を用いると、図6(c)の信号強度の最大値は、k/σとして計算できる。
【0045】
なお、ここでは、未知数uを用いて計算した例を示したが、必ずしも未知数uを用いなくても良い。その場合、前記信号811を2点選択する。選択する点として、該断面部の飽和していない信号を信号強度の大きいものから2点選択する。該2点のデータに対し、それぞれの座標をx1、x2、また、それぞれの信号強度をz1、z2とすると、未知数k、σを用いて
z1=k/σ×exp(−(x1)^2/(2×σ^2))
z2=k/σ×exp(−(x2)^2/(2×σ^2))
のガウス分布の式が得られる。未知数k、σは、前記2式を連立させることにより求めることができるため、該k、σの値を用いると図6(c)の信号強度の最大値はk/σとして計算できる。
【0046】
以上の計算によって得られる信号強度の最大値をあらかじめ複数の大きさをもつ標準粒子について求めておくことにより、標準粒子の大きさと信号強度の最大値の関係が定まる。実際に検出した欠陥の信号強度の最大値を前記関係式と比較することにより、欠陥の大きさを決定することができる。
【0047】
次に、信号強度の最大値を計算する時の別の実施例を図9で説明する。
【0048】
図9は、図6(c)と同様に欠陥データの信号波形が、頂上で台地のような波形になっている飽和した信号分布を示す図と、前記飽和した信号部分の形状を示した図と、信号強度の最大値を求めるための説明図である。
【0049】
図9(a)は信号波形812と頂上部807の関係を示しており、信号波形812のうち、センサ305の飽和領域に達しているために、飽和領域以上のデータが存在しない部分が頂上部807である。
【0050】
また、図9(b)は信号波形812の断面波形を示したものであり、縦軸が信号強度を、横軸が信号の画素位置を示している。同図において、飽和レベル806はセンサ305の飽和レベルを示しており、信号幅813は前記頂上部807の幅を示している。また、信号強度814は、飽和しないセンサであった場合に得られる信号強度の最大値である。
【0051】
次に飽和した信号波形812から信号強度の最大値814を計算する方法を説明する。飽和レベル806をSL、信号幅813をSW、信号強度814をPLとおき、ガウス分布で近似すると、
SL=k/σ×exp(−(−SW/2)^2/(2×σ^2))
PL=k/σ
が得られる。ここで、kは係数であり、σは本発明の欠陥および欠陥検査装置における光学系の構成から計算される値である。
【0052】
従って、前記2式より、PLは
PL=SL/exp(−(−SW/2)^2/(2×σ^2))
として計算される。ここで、SLはセンサ305の飽和時の出力であるので、例えば、光検出部104のADコンバータが8ビットの場合は255階調である。また、σは光学系の構成より0〜1の値で与えられる。次に、SWの計算方法について説明する。
【0053】
図9(c)は、前記頂上部807の形状を示している。つまり、光検出部104が飽和している領域である。同図は、飽和領域815と信号幅813で構成されている。ここで、信号波形812はガウス分布と考えられるので、飽和領域815の形状は円と仮定できる。従って、信号幅813をSW、飽和領域の面積をSAとすると、
SW=2×√(SA/π)
で計算できる。なお、√(A)はAの平方根を計算することを意味しており、πは円周率である。また、飽和領域815の面積はセンサ305が飽和している画素の数とすれば良い。ここで、飽和している画素とは、センサ305のADコンバータによる出力の最大値を用いれば良く、センサ305の電気的なノイズを考慮して設定すれば良い。例えば、ADコンバータが8ビットの場合は、出力の最大値は255階調であるが、電気的なノイズが10階調ある場合は、245階調以上を飽和していると考えても良い。
【0054】
また、信号波形807が飽和していない場合は、飽和レベル806として信号波形807の最大値を用いて同様の計算をすれば良い。
【0055】
以上の計算により、信号強度の最大値を計算することができるので、標準粒子で計算した値と、検出した欠陥で検出した値を比較することにより、欠陥の大きさを測定することができる。
【0056】
なお、以上の説明では、信号強度の最大値を例に採って説明したが、信号強度の最大値の代りに、欠陥の信号強度の積分値を用いても良い。この場合、欠陥の信号強度の積分値を算出する方法としては、検出された欠陥信号の各画素の濃淡値を加算した値を用いれば良い。積分値を用いるメリットは、信号のサンプリング誤差を低減できることである。ここで、信号強度の積分値を用いたときの信号強度補正方法について説明する。図9はガウス分布を3次元的に表現した図である。図10(a)は、欠陥信号が飽和しないセンサで信号を検出することができた場合を示している。図10(b)は信号がy=y1で飽和した場合を示しており、図10(c)はy=y2(<y1)以下の信号を示している。説明する方法は、図10(b)、図10(c)の信号強度積分値が得られた場合に、ガウス分布全体の信号強度を算出する方法である。
【0057】
まず、図10のガウス分布全体の体積をV0、信号の最大値をy=y0とし、y=y1より下の部分の体積をV1、y=y2(<y1)より下の部分の体積をV2とする。また、図9のガウス分布のX軸で断面形状が
y=y0・exp(−x2/2/σ2)
で得られるものとする。この時y軸周りに積分することにより、y軸上の任意の2点a、bでガウス分布をy軸に垂直に切ったときの(ただし0≦a≦b≦y0)ab間のガウス分布の体積Va〜bは次式で表せる。
Va〜b=2π・σ2[b・{Log(y0)−Log(b)}−a・{Log(y0)−Log(a)}+(b−a)]
よって、V0は(a,b)に(0,y0)を代入し、次のように表せる。
V0=2πσ2・y0
V1、V2もそれぞれ(a,b)に(0,y1)および(0,y2)を代入し、次のように表せる。
V1=2πσ2・y0・[y1・{Log(y0)−Log(y1)} − y1]
V2=2πσ2・y0・[y2・{Log(y0)−Log(y2)} − y2]
なお、上記の式における「Log」は自然対数を計算することを示している。体積比V1/V2をCCと書きなおすと、CCは
CC=[y1・{Log(y0)−Log(y1)} − y1]/[y2・{Log(y0)−Log(y2)} − y2]
で計算できる。ここで、y1、y2はセンサ305の飽和レベル以下の値であることと、それによりV1およびV2が測定可能であることを考えると、上式は変数y0に関する1変数の方程式であり、y0について解くことができる。y0が求まれば、V1またはV2を求める式から、σを算出することができる。以上によりy0、σが求まったので、ガウス分布の全体積V0が算出可能となる。
【0058】
また、本説明では8ビットのADコンバータで説明したが、10ビットやそれ以上のビット数のADコンバータを用いても良い。ビット数が多い場合のメリットは、光検出部で得られる光の強度変化を細かく捉えることが可能となるので、欠陥または欠陥の大きさを精度良く算出することが可能となることである。また、本説明では欠陥の信号波形をガウス分布で近似した場合を例に説明したが、ガウス分布以外にも2変数で近似した関数を用いた場合は、同様の方法で信号強度の積分値が可能である。変数が3つ以上となる場合は、体積V1、体積V2以外に飽和レベル以下の任意の信号値以下の体積V3、V4,・・・を使って、信号の積分値を計算するのに必要な変数を求めることができる。
【0059】
なお、本実施形態では、上記の装置構成の説明時に、照明光学系100はレーザ光を用いる例を挙げたが、レーザ光の代りに白色光を用いても良い。また、被検査物が繰り返し性を有する回路パターンの場合は、その繰り返しパターン上に欠陥の存在しない画像と欠陥の存在する画像との差分をとった後に上記の大きさ測定処理をしても良い。また、繰り返し性の有無にかかわらず、回路パターン上や膜上、例えば酸化膜や金属膜上の欠陥において、事前に回路パターンや膜からの散乱光データや反射率データが得られる場合には、そのデータを用いて欠陥の大きさデータを補正しても良い。さらに、欠陥の大きさを測定するために、本例では標準粒子の大きさと比較する場合について説明したが、標準粒子の代りに大きさが既知の欠陥と比較しても良い。
【0060】
次に信号の積分値が求まったのちに、信号の積分値を寸法に変換する方法について説明する。前述したように粒子の粒径が波長より小さい場合は、レイリー散乱理論が成立し、散乱光量が粒径の6乗に比例することが分かっている。そこで欠陥信号の積分値の6乗根を求め、照明の強度などに応じた比例係数を乗算することで寸法に変換できる。図11は標準粒子を塗布したシリコン(Si)の鏡面ウェハを欠陥検査装置で検査したときのデータである。グラフの横軸が標準粒子の寸法で、縦軸が信号強度積分値の6乗根である。このデータは照明波長が約0.5μmの時のデータであるため、波長より粒径が小さい0.1μm、0.2μm、0.3μmの標準粒子では、粒径と信号強度積分値の6乗根がよい比例関係にあることがわかる。近似曲線1001は粒径が0.3μm以下の標準粒子のデータを元に最小二乗法で計算した近似曲線である。この時、前記グラフの横軸をx、縦軸をyとしたときに、前記近似曲線式はy=a×x+bと表すことが出来る。ここで、aおよびbは最小二乗法で求めた値である。このとき信号強度積分値の6乗根yから欠陥寸法xを算出するには
x=(y−b)/a を計算すればよい。
【0061】
また図13は欠陥寸法と信号の積分値の関係を示すグラフである。レイリー散乱理論によれば寸法の6乗が信号の積分値に比例するので、その関係を元に近似曲線を求めた例である。
【0062】
また図14は信号の積分値から寸法に変換する変換式を複数備えた例である。粒子の寸法が波長より小さい場合にはレイリー散乱理論が成立つが、粒子の寸法が波長付近ではローレンツ・ミー理論、粒子の寸法が波長に比べて十分大きいばあいはフラウンフォーファーの近似が成立することが分かっており、粒子寸法に応じて、信号積分値と寸法の関係式をそれぞれ持つことで寸法算出の精度を向上することができる。
【0063】
本実施形態では、近似曲線を求めるときに標準粒子を塗布したウェハの測定例を示したが、その他の実施形態としては、寸法が既知のパターンや欠陥を作りこんだ標準ウェハを用いてもよい。また粒子からの散乱はウェハ表面の反射率の影響を受けるため、鏡面ウェハではなく、半導体製造時に使用する材料を成膜したウェハや、実際の製品ウェハに標準粒子を塗布した試料を用いてもよい。この場合は検査工程ごとに最適な近似曲線を使い分けることでより高精度な寸法測定が可能となる。
【0064】
またさらに別の実施例としては、あらかじめシミュレーションにより粒子の散乱光量を計算しデータベースとして蓄えておき、検査時に工程やウェハ表面の材質に応じて適切な近似曲線を選択してもよい。この場合検査条件の照明強度によって検出される信号強度が変わるため、あらかじめ少なくとも1つの照明強度に対応する散乱光量を測定しておく。事前に測定した照明強度のN倍の照明強度で検査する場合は、散乱光量のシミュレーションデータをN倍すれば良い。粒子の散乱光量を計算するシミュレータとしてはNIST(National Institute of Standards and Technology)のMISTや、Weidlinger Associates, Inc.のEMFlex、Laser Diagnostics Laboratory of Arizona State UniversityのDDSURFなどがあげられる。
【0065】
近似曲線を求める方法として最小二乗法を例に挙げたが、最小二乗法は外れ値の影響を受けやすいという性質がある。そこで外れ値に影響されにくいロバストな推定方法を適用してもよい。M推定法を例にとって説明する。最小二乗法においては、i番目の標本と近似曲線との誤差をEiとしたときに次式で表される評価基準を用いている。
LMS=minΣ(Ei)2
この評価基準はモデルと標本との誤差が平均0の標準偏差に従う場合に、推定されたモデルが最適なものとなる。しかし標本に外れ値が含まれている場合は良いモデルが推定できるとは限らない。そこで先ほどの評価基準を変形し、外れ値に対しては小さな重みを与えるように変形したものがM推定法である。図12は最小二乗法とM推定法を比較したものである。近似曲線1002は最小二乗法によるもの、近似曲線1003はM推定法によるものである。モデルからの距離をdに対する重み関数をw(d)とするとM推定法における評価基準は次式となる。
M=minΣ{w(d)・Ei2}
図15は重み関数の一例を示したものであり、次式で表される。
w(d)= {1−(d/W)2}2 ・・・ |d| ≦ W
0 ・・・ |d| > W
上記重み関数w(d)では、モデルからの距離がWより離れている標本の影響は考慮しないため、外れ値の影響を受けにくい。
【0066】
図16にM推定法で近似曲線を求める手順を示す。まず、処理1006で最小二乗法により初期値を求める。処理1007で重み関数w(d)に従い近似曲線と標本との距離から重みを決定する。処理1008で重みつきの最小二乗法を行い近似曲線を算出する。判断1009で近似曲線の精度が十分か判断し、精度不足の場合は、処理1007の処理1008、判断1009を繰返す。
【0067】
近似曲線を求めるその他の方法としては、LMS推定、LTS推定法があげられる。LMS推定法ではモデルと標本の誤差の二乗値の中央値を最小にする推定法である。LTS推定法はn個の標本にたいしてモデルと標本の誤差の二乗値を小さいほうからならべ、h=(n/2)+1番目までの誤差の二乗値の和を最小にする方法である。
【0068】
このようにロバストな推定法と組み合わせることで、外れ値の影響を受けにくくなり、信号強度と粒径の関係を適切にもとめることが可能となる。
【0069】
以上の説明では、散乱光により欠陥検査をおこなってきた。この方法のメリットとしては、欠陥の発見が能率的におこなえることがある。また、上で述べた方法によって、欠陥の大きさを求めることにすれば、大きさを測定するための特別な光源を必要とせず、欠陥を発見することと、その大きさを測定することが、同一の散乱光による光源でおこなえると言うメリットがある。
[欠陥信号飽和時の欠陥信号推定とサンプリングについて]
図17に欠陥の信号波形とサンプリングピッチの関係を示す。波形1010はガウス関数で近似した欠陥の信号波形である。またサンプリングピッチ1011は欠陥検出時のサンプリングピッチが2σの場合を示している。図18、図19は照明強度を増加させたときの信号強度積分値の理論値と、図10で示した方法による信号強度積分値の推定方法の誤差をサンプリングピッチごとに示したものである。図18の1011はサンプリングピッチが2σのデータであり、照明強度が100倍以上となった場合には誤差が非常に大きくっている。図19は図18の一部を拡大したものである。点線で囲まれた部分は寸法精度が±20%以内となる領域である。サンプリングピッチが1σの場合1013、0.5σの場合1014とも精度±20%以内を実現している。1次ベッセル関数とガウス関数との類似性から、ガウス関数における2σは、光検出部300の解像度に相当すると考えられる。図18、図19から散乱光量が3桁異なるような欠陥が同一ウェハ上にある場合でも、高精度に寸法を算出するためには、光検出部300の解像度の半分以下のピッチで信号波形をサンプリングする必要があることが分かる。
[光学系の収差および、センサの感度バラツキの補正について]
上記実施例においては光学系の収差や、センサの感度バラツキについては言及しなかったが、実際の検査装置においてはこれらも寸法算出精度に影響を与えうる。図20は光検出部300において結像光学系を用いた実施例において、検出視野の中心と、検出視野の周辺での収差の様子を示したものである。同一寸法の標準粒子を塗布したウェハを測定したときの検出像を示したもので、図20(a)は視野中心、図20(b)はそれぞれ視野周辺での欠陥検出像である。収差の影響を軽減する方法としては2つ考えられ、収差の程度をあらかじめ測定しておき、その測定結果に基づく補正テーブルもしくは補正式を備える方法と、検査中にリアルタイムに対応する方法が考えられる。図10の実施例の説明において、検出信号の広がり具合が事前にわかっていなくても、散乱光量を適切に算出できることを既に示した。
【0070】
図21はセンサ305の感度バラツキを示した図である。図21(a)は欠陥の検出画像データ、図21(b)は図(a)のA−A’断面の信号波形を示している。レイリー散乱領域では欠陥寸法は散乱光量の6乗根に比例するため、図21(b)程度のバラツキであれば寸法算出の精度を低下させる要因とはならないことが分かった。
【0071】
図22は標準サンプルを備えたウェハを用いて、寸法を校正する一例である。図1の手順S140に関連する例である。図22(a)は寸法が既知の標準粒子を複数種類散布している。図22(b)は校正前のSEM測定寸法と検査装置測定寸法の関係を示したもの、図22(c)は校正後のSEM測定寸法と検査装置測定寸法の関係を示したものである。
以下校正の手順をしめす。図22(a)の標準サンプルを備えたウェハを検査装置で検査し、寸法を算出すると装置構成要素の製造ばらつきなどにより、寸法が正しく求まらない場合がある。標準サンプルは寸法が既知であるので、例えば図22(b)のように装置出力と、真値を比較し互いの関係を近似式で表すことにより、補正が可能となる。近似式の求め方は最小二乗法を用いてもよいし、ロバスト推定法を用いてもよい。近似式を求め補正することにより、図22(c)のように寸法を精度よく求めることができる。
【0072】
図23は欠陥寸法を補正、または校正するときの手順を示したものである。図23(a)は寸法が未知の欠陥の例で、例えば実際の製品ウェハ上の欠陥を用いて、補正係数を算出する場合を示す。製品ウェハ上の欠陥は寸法が未知であるため、SEMなどの観察装置を用いて各欠陥の寸法を測定する必要がある。図23(b)は寸法が既知の欠陥を用いて補正係数を算出する例である。図22の説明では寸法が既知のサンプルとして標準粒子を例に挙げたが、ウェハ上にフォトリソグラフィーや、FIBなどで寸法を制御した欠陥を作りこんでもよい。
【0073】
図24は寸法補正係数を算出するための実施例の一例である。
【0074】
ここで再び図1に戻り、他の実施例について説明する。
手順S110の実施例として、図2において暗視野照明と結像光学系を組み合わせた検出技術を例示したが、欠陥やパターンからの光を検出する方式であれば他の方法でも構わない。たとえば明視野照明と結像光学系の組合せや、暗視野照明と集光光学系を用いた検出方式でもよい。
【0075】
また手順S120の他の実施例としては、欠陥領域を抽出する際に隣接するダイの画像間で差をとって、適切なしきい値を設定し、欠陥領域を抽出してもよい。
【0076】
手順S130の他の実施例としては、欠陥の特徴量として、散乱光量や、信号強度の最大値の他の特徴量を用いてもよい。その際、座標データや隣接ダイの情報などを特徴量算出に反映しても良い。また検査装置の検査条件を反映させてもよい。検査条件とは、例えば照明の波長、光量、入射角度は、ステージの走査速度、光検出部の倍率、開口数などである。また検査装置自体の製造ばらつき情報を反映させてもよい。製造バラツキとしては、照明の光量むら、レンズの収差、センサの感度ばらつきなどである。データの反映のさせ方としては2つの方法があり、(1)特徴量算出式の中に変数として盛り込む方法、(2)情報をもとに場合分けをして、それぞれ独立に処理をする方法である。(1)の方法の場合は、特徴量を算出後、そのまま手順S140に移る。(2)の方法の場合分けの例を図25に示す。図25の(a)SEM測定寸法と寸法に関連する特徴量の関係をグラフで示したものである。図25(b)は特徴量や、検査条件、検査装置事態の製造バラツキ情報に基づいて場合分けをした例である。場合分けをすることで、場合分け後のそれぞれのグループ内のばらつきが小さくなる。手順S130以降の処理を場合わけに基づいて分岐し、分岐ごとに手順S140にて寸法と信号積分値の関係式を求め、寸法を算出する。
〔欠陥検査装置の光学系について〕
以上、本発明の記述では、欠陥検査装置の光学系については、散乱光を用いて、欠陥を検出し、その大きさを測定するものについて説明してきたが、本発明の手法は、光学系が反射光で、欠陥や欠陥を検出し、その大きさを測定するものであっても適用可能である。一般に、散乱光を用いるものは検査の能率は良いが、測定精度に難があり、反射光を用いるものは、その逆で、検査の能率は悪いが、測定精度は優れている。本発明の手法は、どちらについても適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明に係る欠陥寸法手順を示す図である。
【図2】本発明に係る欠陥検査装置の概略の構成を示すブロック図である。
【図3】本発明に係る欠陥検査装置をシステムとして動作させるときのブロック図である。
【図4】本発明に係る欠陥検査装置と欠陥レビュー装置をシステムとして動作させるときのブロック図である。
【図5】欠陥があるときの画像データを示す図と、欠陥データを測定したときの信号強度の分布を示す図である。
【図6】二種類の信号強度の分布を対比した図と、信号強度を最大値を求めるための説明図である。
【図7】1次ベッセル関数とガウス関数を比較した図である。
【図8】(a)欠陥の画像、(b)は(a)の画像の濃淡値の分布を示した図である。(c)はノイズが含まれる場合の濃淡値の図である。
【図9】(a)飽和した信号強度のXY平面での分布を示すグラフ(b)信号強度の最大値を求めることを示すグラフである。
【図10】欠陥の信号波形を示すグラフであり、検出信号のうち、信号強度が特定の値以下の部分の信号強度積分値を示す図である。
【図11】標準粒子の寸法と信号強度積分値の6乗根の関係を示すグラフである。
【図12】最小二乗法および、M推定法による近似曲線の算出例を示した図である。
【図13】標準粒子の寸法と信号強度積分値の関係を示すグラフである。
【図14】寸法に応じて異なる近似曲線を適用した例である。
【図15】M推定法における重さ関数の一例を示す図である。
【図16】M推定法における、データ処理の手順をしめした図である。
【図17】ガウス関数とサンプリングピッチの関係を示す図である。
【図18】散乱光量の理論値と、推定値の関係をサンプリングピッチの観点から比較したグラフである。
【図19】散乱光量の理論値と、推定値の関係をサンプリングピッチの観点から比較したグラフである。
【図20】光学系の収差を示す図である。
【図21】センサの画素による感度バラツキを示した図である。
【図22】標準サンプルによる寸法校正手法の例である。
【図23】寸法校正手法の手順を示す図である。
【図24】補正係数を算出する手順を示す図である。
【図25】寸法と関連する特徴量を算出する手順において、特徴量や、その他の情報により場合わけをする例を示した図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検査物の欠陥を検査する欠陥検査装置であって、
前記被検査物に光を照射する照明手段と、
前記照明手段の光による前記被検査物からの光を検出する光検出手段と、
前記光検出手段で検出して得た信号を処理して欠陥を検出する欠陥検出手段と、
前記欠陥検出手段で検出した欠陥の特徴量と予め測定・算出された標準粒子の対応する特徴量との比を用いて、前記検出された欠陥の大きさを校正する校正手段と、
前記校正手段で校正された欠陥の大きさを表示する表示手段と、
を有することを特徴とする欠陥検査装置。
【請求項2】
請求項1記載の欠陥検査装置であって、
前記特徴量は前記信号の強度の総和であることを特徴とする欠陥検査装置。
【請求項3】
請求項1記載の欠陥検査装置であって、
前記特徴量は前記信号の強度の最大値であることを特徴とする欠陥検査装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の欠陥検査装置であって、
前記光検出手段は、光学的解像度の半分以下のサンプリングピッチを持つことを特徴とする欠陥検査装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の欠陥検査装置であって、
欠陥の大きさを求める処理において検査装置に固有パラメータを用いることを特徴とする欠陥検査装置。
【請求項6】
被検査物の欠陥を検出する欠陥検査方法であって、
被検査物に光を照射する照明工程と、
前記照明工程の光の照射による前記被検査物からの光を検出する光検出工程と、
前記光検出工程で検出して得た信号を処理して欠陥を検出する欠陥検出工程と、
前記欠陥検出工程で検出した欠陥の特徴量と予め測定・算出された標準粒子の対応する特徴量との比を用いて、前記検出された欠陥の大きさを校正する校正工程と、
を有することを特徴とする欠陥検査方法。
【請求項7】
請求項6記載の欠陥検査方法であって、
前記特徴量として前記信号の強度の総和を用いることを特徴とする欠陥検査方法。
【請求項8】
請求項6記載の欠陥検査方法であって、
前記特徴量として前記信号の強度の最大値を用いることを特徴とする欠陥検査方法。
【請求項9】
請求項6乃至8のいずれかに記載の欠陥検査方法であって、
前記光検出工程では、光学的解像度の半分以下のサンプリングピッチで実施すること特徴とする欠陥検査方法。
【請求項10】
請求項6乃至9のいずれかに記載の欠陥検査方法であって、
欠陥の大きさを求める処理において検査装置に固有パラメータを用いることを特徴とする欠陥検査方法。
【請求項1】
被検査物の欠陥を検査する欠陥検査装置であって、
前記被検査物に光を照射する照明手段と、
前記照明手段の光による前記被検査物からの光を検出する光検出手段と、
前記光検出手段で検出して得た信号を処理して欠陥を検出する欠陥検出手段と、
前記欠陥検出手段で検出した欠陥の特徴量と予め測定・算出された標準粒子の対応する特徴量との比を用いて、前記検出された欠陥の大きさを校正する校正手段と、
前記校正手段で校正された欠陥の大きさを表示する表示手段と、
を有することを特徴とする欠陥検査装置。
【請求項2】
請求項1記載の欠陥検査装置であって、
前記特徴量は前記信号の強度の総和であることを特徴とする欠陥検査装置。
【請求項3】
請求項1記載の欠陥検査装置であって、
前記特徴量は前記信号の強度の最大値であることを特徴とする欠陥検査装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の欠陥検査装置であって、
前記光検出手段は、光学的解像度の半分以下のサンプリングピッチを持つことを特徴とする欠陥検査装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の欠陥検査装置であって、
欠陥の大きさを求める処理において検査装置に固有パラメータを用いることを特徴とする欠陥検査装置。
【請求項6】
被検査物の欠陥を検出する欠陥検査方法であって、
被検査物に光を照射する照明工程と、
前記照明工程の光の照射による前記被検査物からの光を検出する光検出工程と、
前記光検出工程で検出して得た信号を処理して欠陥を検出する欠陥検出工程と、
前記欠陥検出工程で検出した欠陥の特徴量と予め測定・算出された標準粒子の対応する特徴量との比を用いて、前記検出された欠陥の大きさを校正する校正工程と、
を有することを特徴とする欠陥検査方法。
【請求項7】
請求項6記載の欠陥検査方法であって、
前記特徴量として前記信号の強度の総和を用いることを特徴とする欠陥検査方法。
【請求項8】
請求項6記載の欠陥検査方法であって、
前記特徴量として前記信号の強度の最大値を用いることを特徴とする欠陥検査方法。
【請求項9】
請求項6乃至8のいずれかに記載の欠陥検査方法であって、
前記光検出工程では、光学的解像度の半分以下のサンプリングピッチで実施すること特徴とする欠陥検査方法。
【請求項10】
請求項6乃至9のいずれかに記載の欠陥検査方法であって、
欠陥の大きさを求める処理において検査装置に固有パラメータを用いることを特徴とする欠陥検査方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【公開番号】特開2009−25221(P2009−25221A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−190300(P2007−190300)
【出願日】平成19年7月23日(2007.7.23)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年7月23日(2007.7.23)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]