説明

欠陥検査装置、欠陥検査方法及び板状体の製造方法

【課題】透明性を有する板状体中の欠陥の、板状体の厚さ方向の位置を測定する際、2台のカメラの位置合わせやキャリブレーションを必要としない、簡易な構成の装置で欠陥の位置を測定する。
【解決手段】欠陥検査装置は、カメラと、板状体とカメラとの間に設けられたハーフミラと、を有する。これにより、カメラは、2つの異なった角度の視線で欠陥の像を撮影する。この2つの視線で撮影した欠陥の像同士の位置ずれ量に基づいて、欠陥の位置を算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明性を有する板状体に存在する欠陥の位置を測定する欠陥検査装置及び欠陥検査方法、さらには、この方法を用いた板状体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
今日、ガラス板等の透明性を有する板状体は、透明性を利用して電子機器等に用いられるが、この板状体に気泡等の欠陥が存在する場合もある。この気泡等の欠陥が板状体の表面近傍に位置するとき、板状体の表面は凹凸形状を成すが、板状体が、電子機器等に用いるデバイスの基板として薄膜形成等の処理を行う場合、上記凹凸は極めて好ましくない。このため、作製された板状体に存在する気泡の位置を正確に知ることは極めて重要である。
【0003】
従来、透明性を有する板状体に存在する気泡等の欠陥を検出する方法として、特許文献1が知られている。
特許文献1は、透過性物体を走査し、透過性物体の表面に対して角度が異なる光軸上で欠点信号を2台のカメラで検出し、この欠点信号の時間より、欠点の深さ方向の位置を検出することを記載している。これにより、欠点の位置を、基準位置からの深さとして検出できるので、確実に表面だけ、内部だけ、特定の深さだけといった透過性物体の検査が可能であると記載している。
【0004】
しかし、特許文献1では、2台のカメラを用い、透過性物体の表面の同じ位置にカメラの焦点を合わせて欠点信号を検出するので、2台のカメラの位置合わせや出力信号のキャリブレーションを正確に行う必要があり、煩雑な作業が必要となる。しかも、製造ラインで搬送される透過性物体に対して、製造ラインの環境下で、2台のカメラを透過性物体の表面の同じ位置にカメラの焦点を合せて設置することも難しい。
【0005】
【特許文献1】特開平7−113757号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、上記問題点を解決するために、透明性を有する板状体(以下、単に板状体ともいう)に存在する欠陥の、板状体の厚さ(深さ)方向の位置を測定する際、2台のカメラの位置合わせやキャリブレーションを必要としない、簡易な構成で欠陥の位置を測定することのできる欠陥検査装置及び欠陥検査方法を提供するとともに、この方法を用いた板状体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、透明性を有する板状体に存在する欠陥の、板状体の厚さ方向の位置を測定する欠陥検査装置であって、前記板状体を照明する光源と、前記光源で照明され、前記板状体から出射した光で作られる欠陥の像を撮影する一台のカメラと、前記板状体と前記カメラとの間に設けられた部材であって、部材の一方の面から入射した光を透過し、部材の他方の面から入射した光を反射する少なくとも1つの光学部材と、前記カメラで撮影された欠陥の像に基づいて、前記板状体に存在する欠陥の、板状体の厚さ方向の位置を算出する演算ユニットと、を有し、前記板状体の面から出射した光が前記カメラに至る光路のうち、前記光学部材を透過した光により欠陥の像をつくる第1の光路における前記板状体の面から光が出射する角度と、前記光学部材で反射した光により欠陥の像をつくる第2の光路における前記板状体の面から光が出射する角度とが、異なることを特徴とする欠陥検査装置を提供する。
【0008】
その際、前記板状体の欠陥は、搬送中に測定され、前記カメラにより撮影される、前記欠陥の第1の像と前記欠陥の第2の像とは、前記板状体の面上の視野範囲が一致しており、前記第2の光路は、前記第1の光路に対して、搬送方向の異なる場所に形成された光路であることが好ましい。
さらに、前記光学部材と異なる位置に設けられ、前記板状体から出射した光でつくられる欠陥の像を、前記光学部材の前記他方の面に向けて反射する少なくとも1つの反射光学部材を備えることが好ましい。
【0009】
その際、前記板状体から出射した光が前記光学部材を透過して前記カメラに至る前記第1の光路の長さと、前記板状体から出射した光が前記反射光学部材で反射されて前記光学部材に入射し、さらに前記光学部材で反射されて前記カメラに至る前記第2の光路の長さとが、等しくなるように、いずれか一方の光路に光路長調整素子が設けられることが好ましい。
また、前記光源には、光の3原色の一つである第1の色と光の3原色の一つである第2の色との混色からなる帯形状の第1のパタンと、この第1のパタンの両側に、光の3原色の一つである第3の色と前記第1の色との混色からなる、帯形状の第2のパタン及び第3のパタンとを備えるフィルタが、前記第1の光路と前記第2に光路とによってつくる欠陥の位置ずれの方向に対して帯形状の延在方向が角度を成すように設けられ、前記カメラは、カラー画像を撮影し、この撮影の視野の略中心に、前記第1のパタンが来るように前記フィルタの位置調整がされていることが好ましい。
前記光源は、前記板状体を挟んで、前記カメラと反対側に設けられ、前記カメラに撮影される前記欠陥の第1の像と前記欠陥の第2の像は、前記光源によってつくられた像であり、一方の像は明視野像であり、他方の像は暗視野像であることも同様に好ましい。
前記カメラは、カラー画像を撮影し、前記光学部材は、所定の波長帯域の光を選択的に反射あるいは透過する機能を有することも同様に好ましい。
【0010】
さらに、本発明は、透明性を有する板状体に存在する欠陥の位置を測定する欠陥検査方法であって、前記板状体を照明する光源と、前記光源で照明され、前記板状体から出射した光で作られる欠陥の像を撮影する一台のカメラと、前記板状体と前記カメラとの間に設けられ、一方の面から入射した光を透過し、他方の面から入射した光を反射する少なくとも一つの光学部材と、を有し、前記板状体の面から出射した光が前記カメラに至る光路のうち、前記光学部材を透過した光により欠陥の像をつくる第1の光路における前記板状体の面から光が出射する角度と、前記光学部材で反射した光により欠陥の像をつくる第2の光路における前記板状体の面から光が出射する角度とが、異なる検査装置を用い、前記光源による照明された前記板状体に存在する欠陥の像を、前記第1の光路を通った光によってつくられる前記欠陥の第1の像と、前記第2の光路を通った光によってつくられる前記欠陥の第2の像とに分けて前記カメラで撮影する工程と、撮影した画像から、前記欠陥の第1の像と前記欠陥の第2の像の位置ずれ量に基づいて、板状体の厚さ方向における欠陥の位置を算出する工程と、を有することを特徴とする欠陥検査方法を提供する。
【0011】
さらに、本発明は、前記欠陥検査方法を用いて前記板状体を製造する板状体の製造方法であり、製造した前記板状体を搬送する工程と、前記板状体の搬送中、前記板状体に存在する欠陥の、板状体の厚さ方向における位置を前記欠陥検査方法を用いて測定する工程と、この欠陥の、板状体の厚さ方向における位置の測定結果に応じて、前記板状体の良品/不良品を選別する、及び/または、前記欠陥の位置の測定結果に応じて、前記板状体の製造条件を調整する工程と、を有することを特徴とする板状体製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の欠陥検査装置及び欠陥検査方法では、板状体の面から出射した光がカメラに至る光路のうち、光学部材を透過した光により欠陥の像をつくる第1の光路における前記板状体の面から光が出射する角度と、光学部材で反射した光により欠陥の像をつくる第2の光路における前記板状体の面から光が出射する角度とが、異なっているので、演算ユニットは、撮影した欠陥の第1の像と欠陥の第2の像との位置ずれ量に基づいて、板状体の厚さ方向における欠陥の位置を算出することが容易にできる。すなわち、光学部材を用いて2方向からの欠陥の像を1台のみのカメラで撮影できるので、2台のカメラの位置合わせやキャリブレーションを必要としない。
又、板状体から出射した光が光学部材を透過してカメラに至る光路の長さと、板状体から出射した光が反射光学部材で反射されて前記光学部材に入射し、さらにこの光学部材で反射されてカメラに至る光路の長さとが、等しくなるように、いずれか一方の光路に光路長調整素子を設けることにより、カメラのピントを2つの欠陥の像に合わせることができる。これよって得られる正確な位置ずれ量からさらに正確な欠陥の位置の情報を得ることができる。
【0013】
さらに、カメラに撮影される欠陥の第1の像と欠陥の第2の像の一方は、明視野像とし、他方は暗視野像とすることにより、欠陥の第1の像と欠陥の第2の像をお互いに識別することもできる。あるいは、カメラはカラー画像を撮影するものであり、光学部材は、所定の波長帯域の光を選択的に反射あるいは透過する機能を有する場合、カラー画像中の3原色の画像に現れる欠陥の像に基づいて、欠陥の第1の像と欠陥の第2の像をお互いに識別することもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の欠陥検査装置、欠陥検査方法及び板状体の製造方法について、添付の図面に示される好適実施例を基に詳細に説明する。
【0015】
図1(a)は、本発明の一実施形態である欠陥検査装置(以降、本装置という)10の構成を説明する図である。本装置10は、ガラスGを板状体として用いるが、本発明においては、ガラスGに限定されず、透明性を有する樹脂材からなる板部材であってもよい。
本装置10は、透明性を有する、搬送中のガラスGに存在する気泡の厚さ方向の位置を測定する装置である。本装置10は、光源12と、カメラ14と、ハーフミラ16と、反射ミラ18と、演算ユニット20と、ディスプレイ22と、表面位置測定ユニット24と、を有する。ガラスGは、搬送ローラ26によって下側から支持されて搬送される。
【0016】
光源12は、搬送中のガラスGの一方の面の側(図1(a)では下側)からガラスGを拡散光により照明する面状光源である。照明光の色は特に限定されない。なお、本発明では、光源12の替わりに、板状のガラスGのエッジから光を入射させる光源を用いてもよい。
カメラ14は、光源12で照明され、搬送されるガラスGをカメラ14のライン状の読み取り位置で読み取ることにより、ガラスGの画像の走査読み取りを行う、ラインセンサタイプのカメラである。図1(b)は、搬送されるガラスGに対してライン状に読み取りを行うことにより走査読み取りを行うカメラ14で得られる画像の例を示す。図中、右側から左側に順次走査読み取りによって得られる情報を一つの画像に表したものである。なお、板状のガラスGの搬送方向は、図1(a),(c),(d)の例では、右側から左側への方向であるが、左側から右側への方向でもよく、2つの異なる光路によってつくられる画像が得られる限り、どの方向でもよい。また、本発明では、搬送中のガラスGをエリア状に撮影するエリアセンサタイプのカメラを用いてもよい。さらに、エリアセンサタイプのカメラを用いて静止状態のガラスGをエリア状に撮影してもよい。
ハーフミラ16は、ガラスGとカメラ14との間に設けられ、一方の面から入射した光を透過し、他方の面から入射した光を反射する光学部材である。ハーフミラ16は、例えば、反射膜を金属膜で形成した金属ハーフミラや、きわめて薄い多層膜を反射層として積層して構成された誘電体ハーフミラ等が用いられる。さらには、ハーフミラ16の替わりに、ビームスプリッタや偏向スプリッタを用いることもできる。
反射ミラ18は、ハーフミラ16の位置と搬送方向において異なる位置に設けられ(図1(a)では、搬送方向下流側)、ガラスGから出射した光でつくられる欠陥の像を、ハーフミラ16に向けて反射する反射光学部材である。
【0017】
演算ユニット20は、カメラ14でライン状に撮影されて順次供給される撮影信号を1つの画像としてまとめることによって得られる画像中の気泡の像に基づいて、ガラスGに存在する気泡の厚さ方向の位置を算出する部分である。演算ユニット20には、撮影された画像をオペレータがモニタリングするためのディスプレイ22が接続されている。
表面位置測定ユニット24は、ガラスGの表面の位置を測定するデバイスであり、例えばレーザ変位計が用いられる。ガラスGが振動により上下に変動したり、ガラスGの厚さが変動して、ガラスGの表面が変動する。このため、演算ユニット20において、気泡の、ガラスGの表面からの厚さ方向の位置を補正するために、ガラスGの表面の位置を測定する。
【0018】
図1(a)には、本装置10において、搬送中のガラスGに気泡Aを含んだ部分がカメラ14の撮影視野に入っている状態が示されている。
ラインセンサタイプのカメラ14が撮影する読み取りラインは、ハーフミラ16を透過した像(光路V1を経た像)を読み取るガラスG上の位置と、ハーフミラ16及び反射ミラ18で反射した像(光路V2を経た像)を読み取るガラスG上の位置とが同じ位置になるように、設定されている。すなわち、ガラスGの厚さ方向の所定の位置において、光路V1及び光路V2を経て作られる像における視野範囲は一致している。図1(a)では、光路V1及び光路V2における像の読み取りラインはともに、交点Bを通る紙面に垂直方向のラインである。又、図1(a)に示すように、光路V2は、光路V1に対して搬送方向下流側の場所に作られている。本発明においては、少なくとも2つの光路が、搬送方向の異なる場所に形成されるとよい。
ハーフミラ16を透過した光により欠陥の像Cをつくる光路V1(ガラスGの面からカメラ14までの光路)の、ガラス板Gの面から光が出射する出射角度と、ハーフミラで反射した光により欠陥の像Dをつくる光路V2(ガラスGの面からカメラ14までの光路)の、ガラスGの面から光が出射する出射角度とが異なっている。光路V1の出射角度は略90度、光路V2の出射角度は10〜30度傾斜している。好ましくは、10〜20度傾斜している。なお、図1(c)に示す構成の場合、光路V3,V4におけるガラスGの表面からの光の出射角度を10〜45度に傾斜して用いることができる。
なお、図1に示す光路V1及び光路V2の交点Bは、ガラスGの上面の表面に一致しているが、本発明ではこれに限定されない。交点Bは、ガラスGの上面の表面の上方にあってもよいし、ガラスGの内部にあってもよいし、ガラスGの下面の表面にあってもよい。
【0019】
光源12で照明された気泡Aの像は、気泡Aが光路V1上を横切ったとき、ハーフミラ16を透過してカメラ14で撮影される。一方、気泡Aの像は、気泡Aが光路V2上を横切ったとき、反射ミラー18で反射されてハーフミラ16に向けられ、ここでさらに反射されてカメラ14に向かい、カメラ14で撮影される。ハーフミラ16を透過してカメラ14で撮影される気泡Aの像は、ガラスGの表面に対して略垂直方向に光が出射する光路V1を経た像であり、反射ミラー18及びハーフミラ16で反射されてカメラ14で撮影される気泡Aの像は、カメラ14の気泡Aを、ガラスGの表面に対して傾斜した方向に光を出射する光路V2を経た像なので、気泡Aが光路V1と光路V2の交点Bに位置しない限り、重ならない。図1(a)に示す例では、気泡Aの光路V2を経た像が先に撮影され、その後、気泡Aの光路V1を経た像が撮影される。カメラ14にて撮影される気泡Aの像は、光路V1と光路V2を経た2つの像を撮影するので、気泡Aの像Cと像Dが位置ずれして撮影される。ここで、像Cは、図1(a)からわかるように、光路V2を経た像であり、像Dは光路V1を経た像である。演算ユニット20は、カメラ14で撮影したデータから、図1(b)に示す光路V1及び光路V2の違いによる位置ずれ量xを求めることにより、気泡AのガラスGの厚さ方向の位置を求める。
例えば、まず、検出した像Dに対する像Cの探索範囲が設定される。本装置10の構成とガラスGの寸法から事前に探索領域の範囲(矩形領域)が設定される。具体的には、まず、ガラスGの厚さを考慮して、図1(b)の位置ずれ量xの最大値を定めると、カメラ14の画像上の座標と、カメラ14の画角の情報とから、探索範囲が定まる。したがって、像Dが検出されると、像Dの位置座標から設定された探索範囲の位置が定まり、その範囲の探索が開始される。勿論、探索範囲を定めることなく像Cの探索を行ってもよいが、データ処理の効率の点から、探索範囲を設定することが好ましい。上記探索は、探索範囲の画像のみを2値化して検索する、または検索範囲内の像Cと類似の部分をパターンマッチング等を用いて検索するとよい。探索範囲を設定しない場合、全画像を2値化して検索する、また全画像に対してパターンマッチング等を用いて探索するとよい。
こうして検出された像C及び検出された像Dの領域を抽出し、この領域の中心の位置を求め、この中心間距離を位置ずれ量xとして求める。一方、演算ユニット20は、光路V1と光路V2との交点Bの位置(カメラ14の受光面からの距離)を既知情報として記憶しておき、この既知情報と、求めた位置ずれ量xとから、気泡Aのカメラ14の受光面からの距離を求めることができる。
【0020】
演算ユニット20には、表面位置計測ユニット24によって測定されたガラスGの表面の位置データが供給されるので、測定対象のガラスGの表面の位置(図1(a)中の高さ方向の位置)を知ることができる。また、表面位置計測ユニット24とカメラ14の受光面との距離(図1(a)中の高さ方向の位置)を既知情報として記憶しており、この既知情報と、ガラスGの表面の位置の情報と、気泡Aのカメラ14の受光面からの距離の情報とを用いて、演算ユニット20では、ガラスGの表面からの気泡Aの厚さ(深さ)方向の位置を求める。本実施例では、ガラスGの厚さ方向の所定の位置において、光路V1及び光路V2を経て作られる像における視野範囲が一致しており、また、光路V2と光路V1が搬送方向の異なる場所に形成されているので、第2の像の検索及び気泡Aのカメラ14の受光面からの距離演算が容易にできる。
【0021】
図1(a)では、光路V1と光路V2との交点Bの位置がガラスGの表面にくるように設定されているが、本発明では交点Bの位置は特に制限されない。少なくとも交点Bの位置からカメラ14の受光面までの距離が既知となって演算ユニット20に記憶されていれば、この既知の距離と、表面位置測定ユニット24からのガラスGの表面の位置情報と、表面位置測定ユニット24とカメラ14の受光面との間の位置の情報と、位置ずれ量xとを用いて、ガラスGの表面からの気泡Aの厚さ方向の位置を求めることができる。
なお、交点BがガラスGの内部に位置する場合、像Cと像Dのどちらが光路V1又は光路V2による気泡Aの像であるか識別が困難となる場合もある。このため、ガラスGの目標板厚、この板厚の変動、及び、搬送中のガラスGの振動を考慮して、交点Bの位置が少なくともガラスGの外側に来るように、光路V1又は光路V2を設定することが好ましい。
本装置10は、搬送中のガラス板Gをラインセンサタイプのカメラ14で走査して気泡の像を含む画像を撮影するものであるが、本発明では、ラインセンサタイプのカメラ14に替えて、ガラス板等の透明性を有する板状体を静止した状態でエリアセンサタイプのカメラで一定の範囲の画像を撮影するように装置を構成してもよい。
【0022】
また、本発明の欠陥検査装置では、図1(a)に示す構成に替えて、図1(c)に示す構成を用いてもよい。すなわち、反射ミラ18a及び反射ミラ18bの2つの反射ミラを対向するように設け、反射ミラ18a及び反射ミラ18bの向きを調整して、反射ミラ18aで反射した、ガラスGの欠陥の像をつくる光をハーフミラ16で透過させてカメラ14に到達する光路V3と、反射ミラ18bで反射した、ガラスGの欠陥の像をつくる光をハーフミラ16で反射させてカメラ14に到達する光路V4とを設けるように構成してもよい。この場合も、カメラ14を用いて、異なる光路を通過した欠陥の像を同じ視野範囲として撮影する。このような形態であると、光路の長さを同じにすることができるので画像のピントがずれない。
【0023】
さらに、本発明の欠陥検査装置では、図1(d)に示すような構成を用いてもよい。すなわち、反射ミラを設けず、ハーフミラ16のみで構成し、ガラス板Gの搬送方向上流側で出射した欠陥の像をつくる光がハーフミラ16を透過してカメラ14に到達する光路V5と、ガラス板Gの搬送方向下流側で出射した欠陥の像をつくる光がハーフミラ16で反射されてカメラ14に到達する光路V6とを設けるように構成してもよい。この場合も、カメラ14を用いて、異なる光路を通過した欠陥の像を同じライン状の視野範囲で撮影する。なお、2つの欠陥の像は、カメラ14により時間差をもって撮影される。図1(d)の構成は、装置を単純化できるが、反射ミラを備える図1(a)または(c)の構成の方が、一方の欠陥の像から他方の欠陥の像を容易に検索できる点で、好ましい。
【0024】
図2(a)は、図1(a)の光源12に替えて光源12a,12bを用いた実施形態を示している。
光路V2による像を、暗視野像とするために、光源12bの光路V2の延長した光源部分に遮光マスク12cを設け、その周辺部から気泡Aを照明するように構成されている。一方、光源12aは、明視野照明により気泡Aを照明する。したがって、図2(b)に示すように、カメラ14により撮影される光路V2による像は、暗い背景に気泡Aが明るく見え、一方、視線V1による像は、明るい背景に気泡Aが暗く見える像となる。このため、2つの像のうち、どちらが光路V1を経た像か、光路V2を経た像かを、識別することができる。図1(a)に示す実施形態では、光路V1及び光路V2を経た像は、光源12により照明された気泡Aの像であり、カメラ14の読み取りライン(交点Bを通る紙面に垂直なライン)がガラスGの表面又はその表面より上側に位置する限り、撮影された画像では、図1(b)に示すように、光路V1を経た像Cは、光路V2を経た像Dに比べて後に読み取られるため、左側に位置する。このため、像の位置関係で光路V1及び光路V2を経た像を識別することができる。しかし、ガラスGの振動による上下移動や、厚さの変動により、交点BがガラスGの内側に位置する場合も発生する。この場合、気泡Aの厚さ方向の位置によっては、光路V1及び光路V2を経た像の位置関係は逆転する。この場合において、暗視野照明及び明視野照明で別々に照明すれば、光路V1及び光路V2を経た像が、撮影された画像の中でどちらの像に対応するか、明確に判断できる。図2(b)では、像Eが明視野像、像Fが暗視野像となっており、光路V1を経た像及び光路V2を経た像を確実に識別することができる。本装置10では、照明を2個設けたが、照明を1個とし、光路V2の延長した光源部分に遮光マスク12cを設ける構成としてもよい。
【0025】
さらに、図2(a)では、ガラスGから出射した光がハーフミラ16を透過してカメラ14に至る光路の長さと、ガラスGから出射した光が反射ミラー18で反射されてハーフミラ16に至り、さらにハーフミラ16で反射されてカメラ14に至る光路の長さとが、等しくなるように、光路長調整素子28が設けられている。具体的には、光路長の長い光路上に、屈折率の高いガラス材を光学経路に挟んで光路長を短くし、あるいは、光路長の短い光路上に、複数の反射ミラーを用いて光路長を長くして調整する。このように、気泡Aからカメラ14の受光面までの光路長を揃えるのは、2つの光路V1及び光路V2から見た気泡Aの像を撮影するとき、2つの像がピントの合った状態で撮影されるようにするためである。このような光路長調整素子28は、勿論、図1(a)に示す実施形態にも設けることができる。
【0026】
さらに、本発明では、図1(a)に示すハーフミラ16の替わりに、ダイクロイックプリズムを用いて、反射及び透過する光の波長を選択させてもよい。この場合、カメラ14は、3原色に分けて画像を得るカラーカメラが用いられる。
例えば、B(青)の光を反射し、R(赤)の光を透過するダイクロイックプリズムをハーフミラ16の替わりに用いることで、カメラ14で撮影される画像のうち、光路V1を経て作られる気泡Aの像はR画像に現れ、光路V2を経て作られる気泡Aの像はB画像に現れるように分離することができる。
演算ユニット20では、図3(a)に示されるようにR画像に現れる気泡Aの像の位置と、図3(b)に示されるようにB画像に現れる像の位置とから位置ずれ量xを求め、この位置ずれ量xから、上述したように、気泡AのガラスGにおける厚さ方向の位置を求める。このように、本実施形態は、視線V1による気泡Aの像と、視線V2による気泡Aの像とを、3原色の画像によって分離して識別することもできる。
気泡Aの、図1(b)に示す像C、Dが部分的に重なる程度に大きくても、また重なった場合でも、光路V1を経てつくられる気泡Aの像と、光路V2を経てつくられる気泡Aの像とを分離できるので、光路V1による像と光路V2による像との位置ずれ量を正確に求めることができる。
なお、本発明においては、ダイクロイックプリズムの他に、所定の波長帯域の光を選択的に反射あるいは透過する機能を有する光学部材を用いることができる。
【0027】
図4(a)は、図1(a)に示す気泡Aを照明する光源12の前面に第1のパタン42、第2のパタン44及び第3のパタン46からなるフィルタ40を設けた光源を説明する図である。図4(b)は、フィルタ40を設けた光源12aの側面図である。フィルタ40を設けることにより、欠陥の種類を知ることができる。この場合、カメラ14は3原色の画像を得るカラー画像を撮影するラインカメラである。
例えば、フィルタ40は、第1のパタンが、G(緑)とB(青)の混色である水色に着色され、第1のパタンの両側に位置する第2のパタン及び第3のパタンが、G(緑)とR(赤)の混色である黄色に着色されたフィルタである。光路V1による像は、第1のパタンを透過した光により照明されるように、フィルタ40が光源12aに設けられている。すなわち、光路V1の中心領域が第1のパタンを透過した光で照明され、その周囲が第2のパタン及び第3のパタンを通過した光で照明される。このような第1のパタン、第2のパタン及び第3のパタンは帯形状に設けられ、この帯形状の延在方向が、光路V1及び光路V2によってつくられる欠陥の位置ずれ方向と一致しないように(角度を成すように)、フィルタ40が設けられる。
気泡Aが存在しない場合、カメラ14で得られるR画像は暗視野の画像となり、G画像及びB画像は明視野の画像となる。これに対して気泡、傷、あるいは透明な異物の欠陥がある場合、この部分の屈折異常により第2のパタン及び第3のパタンによるR(赤)の光が光路V1の中心領域に混入し、この光でR画像中に欠陥の像が現れる。気泡は、傷や透明な異物の欠陥に比べて屈折異常が強いため、Gの画像にも欠陥の像が現れるが、気泡以外の欠陥は、G画像に現れない。このため、G画像における欠陥の有無により、気泡の像かそれ以外の傷や透明な異物の欠陥の像かを判別することができる。
又、R画像における気泡の像は、気泡の像の中心部分で輝度が高く、周辺部分で輝度が低い。一方、異物等の遮光性のある欠陥は、遮光により中心部分で輝度が低いが、周辺部分で反射や散乱により輝度が高い。この特徴を利用して、演算ユニット20は欠陥の種類を判別することもできる。
なお、光源には、光の3原色の一つである第1の色と光の3原色の一つである第2の色との混色からなる帯形状の第1のパタン42と、この第1のパタン42の両側に、光の3原色の一つである第3の色と第1の色との混色からなる、帯状の第2のパタン44及び第3のパタン46と、を備えるフィルタが設けられ、カメラ14は、カラー画像を撮影し、この撮影の視野の中心に、第1のパタン42が来るようにフィルタ40が位置調整されていればよい。本発明においては、フィルタ40の替わりに、ダイクロイックプリズムとフィルタを組み合わせることもできる。
フィルタ40を用いた欠陥の種類の識別については、本願と同一の出願人により出願され公開された特開2003−329612号公報に記載されている。
【0028】
さらに、本発明の欠陥検査装置では、図1(c)に示す装置構成の他に、図5(a),(b)に示す装置構成を用いることもできる。図1(c)では、光路V3の光路によりつくられる画像が実際の像に対して反転するため、光路V3と光路V4によりつくられる画像同士は互いに反転した画像の関係になる。しかし、図5(a)、(b)に示す装置構成では、1つの反射ミラ18aに替えて、2つの反射ミラ18a1,18a2を用いて光路V3を形成するので、光路V3と光路V4によりつくられる画像同士は互いに反転した画像の関係にはならず、画像処理が簡単になる。また、2つの反射ミラ18a1,18a2及び反射ミラ18bを調整することにより、カメラ14の向き及び位置を自在に定めることができる。
【0029】
このように、本発明の欠陥検査装置は、一台のカメラで撮影して、板状体の厚さ方向のどの位置に欠陥が存在するかを求めることができる。
このような欠陥検査装置を用いた欠陥検査方法を、ガラス等の板状体の製造工程に用い、板状体の良品/不良品を選別することができる。あるいは、欠陥の位置の測定結果に応じて、板状体の製造条件を調整することができる。
すなわち、板状体を製造して搬送する工程と、板状体の搬送中、板状体に存在する欠陥の位置を測定する工程と、この欠陥の位置の測定結果に応じて、板状体の良品/不良品を選別する工程とを有する。あるいは、板状体の良品/不良品を選抜する工程の替わりに、欠陥の位置の測定結果に応じて、製造工程における板状体の製造条件を調整する工程と、を有してもよい。
【0030】
以上、本発明の欠陥検査装置、欠陥検査方法及び板状体製造方法について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態や実施例に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更をしてもよいのはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】(a)は、本発明の欠陥検査装置の一実施形態の装置の概略の構成を説明する図であり、(b)は、(a)に示す装置で得られる画像の一例を示す図であり、(c),(d)は、本発明の欠陥検査装置の他の実施形態の装置の概略の構成を説明する図である。
【図2】(a)は、本発明の欠陥検査装置の他の実施形態の装置の概略の構成を説明する図であり、(b)は、(a)に示す装置で得られる画像の一例を示す図である。
【図3】(a)及び(b)は、ダイクロイックプリズムを用いたときに得られる画像の一例を示す図である。
【図4】(a)は、図2(a)に示す光源12aの前面に設けるフィルタを説明する図であり、(b)は、フィルタを光源に設けた状態を示す側面図である。
【図5】(a),(b)は、本発明の欠陥検査装置の他の実施形態の装置の概略の構成を説明する図である。
【符号の説明】
【0032】
10 欠陥検査装置
12,12a,12b 光源
12c 遮光マスク
14 カメラ
16 ハーフミラ
18 反射ミラ
20 演算ユニット
22 ディスプレイ
24 表面位置測定ユニット
26 搬送ローラ
28 光路長調整素子
40 フィルタ
42 第1のパタン
44 第2のパタン
46 第3のパタン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明性を有する板状体に存在する欠陥の、板状体の厚さ方向の位置を測定する欠陥検査装置であって、
前記板状体を照明する光源と、
前記光源で照明され、前記板状体から出射した光で作られる欠陥の像を撮影する一台のカメラと、
前記板状体と前記カメラとの間に設けられた部材であって、部材の一方の面から入射した光を透過し、部材の他方の面から入射した光を反射する少なくとも1つの光学部材と、
前記カメラで撮影された欠陥の像に基づいて、前記板状体に存在する欠陥の、板状体の厚さ方向の位置を算出する演算ユニットと、を有し、
前記板状体の面から出射した光が前記カメラに至る光路のうち、前記光学部材を透過した光により欠陥の像をつくる第1の光路における前記板状体の面から光が出射する角度と、前記光学部材で反射した光により欠陥の像をつくる第2の光路における前記板状体の面から光が出射する角度とが、異なることを特徴とする欠陥検査装置。
【請求項2】
前記板状体の欠陥は、搬送中に測定され、
前記カメラにより撮影される、前記欠陥の第1の像と前記欠陥の第2の像とは、前記板状体の面上の視野範囲が一致しており、
前記第2の光路は、前記第1の光路に対して、搬送方向の異なる場所に形成された光路である請求項1に記載の欠陥検査装置。
【請求項3】
前記光学部材と異なる位置に設けられ、前記板状体から出射した光でつくられる欠陥の像を、前記光学部材の前記他方の面に向けて反射する少なくとも1つの反射光学部材を備える請求項1又は2に記載の欠陥検査装置。
【請求項4】
前記板状体から出射した光が前記光学部材を透過して前記カメラに至る前記第1の光路の長さと、前記板状体から出射した光が前記反射光学部材で反射されて前記光学部材に入射し、さらに前記光学部材で反射されて前記カメラに至る前記第2の光路の長さとが、等しくなるように、いずれか一方の光路に光路長調整素子が設けられる請求項3に記載の欠陥検査装置。
【請求項5】
前記光源には、光の3原色の一つである第1の色と光の3原色の一つである第2の色との混色からなる帯形状の第1のパタンと、この第1のパタンの両側に、光の3原色の一つである第3の色と前記第1の色との混色からなる、帯形状の第2のパタン及び第3のパタンとを備えるフィルタが、前記第1の光路と前記第2に光路とによってつくる欠陥の位置ずれの方向に対して帯形状の延在方向が角度を成すように設けられ、
前記カメラは、カラー画像を撮影し、この撮影の視野の略中心に、前記第1のパタンが来るように前記フィルタの位置調整がされている請求項1〜4のいずれか1項に記載の欠陥検査装置。
【請求項6】
前記光源は、前記板状体を挟んで、前記カメラと反対側に設けられ、
前記カメラに撮影される前記欠陥の第1の像と前記欠陥の第2の像は、前記光源によってつくられた像であり、一方の像は明視野像であり、他方の像は暗視野像である請求項1〜4のいずれか1項に記載の欠陥検査装置。
【請求項7】
前記カメラは、カラー画像を撮影し、
前記光学部材は、所定の波長帯域の光を選択的に反射あるいは透過する機能を有する請求項1〜6のいずれか1項に記載の欠陥検査装置。
【請求項8】
透明性を有する板状体に存在する欠陥の位置を測定する欠陥検査方法であって、前記板状体を照明する光源と、前記光源で照明され、前記板状体から出射した光で作られる欠陥の像を撮影する一台のカメラと、前記板状体と前記カメラとの間に設けられ、一方の面から入射した光を透過し、他方の面から入射した光を反射する少なくとも一つの光学部材と、を有し、前記板状体の面から出射した光が前記カメラに至る光路のうち、前記光学部材を透過した光により欠陥の像をつくる第1の光路における前記板状体の面から光が出射する角度と、前記光学部材で反射した光により欠陥の像をつくる第2の光路における前記板状体の面から光が出射する角度とが、異なる検査装置を用い、
前記光源による照明された前記板状体に存在する欠陥の像を、前記第1の光路を通った光によってつくられる前記欠陥の第1の像と、前記第2の光路を通った光によってつくられる前記欠陥の第2の像とに分けて前記カメラで撮影する工程と、
撮影した画像から、前記欠陥の第1の像と前記欠陥の第2の像の位置ずれ量に基づいて、板状体の厚さ方向における欠陥の位置を算出する工程と、を有することを特徴とする欠陥検査方法。
【請求項9】
請求項8に記載の前記欠陥検査方法を用いて前記板状体を製造する板状体の製造方法であり、
製造した前記板状体を搬送する工程と、
前記板状体の搬送中、前記板状体に存在する欠陥の、板状体の厚さ方向における位置を前記欠陥検査方法を用いて測定する工程と、
この欠陥の、板状体の厚さ方向における位置の測定結果に応じて、前記板状体の良品/不良品を選別する、及び/または、前記欠陥の位置の測定結果に応じて、前記板状体の製造条件を調整する工程と、を有することを特徴とする板状体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−174918(P2009−174918A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−11811(P2008−11811)
【出願日】平成20年1月22日(2008.1.22)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】