説明

気相成長装置及びシリコンエピタキシャルウェーハの製造方法

【課題】不純物汚染を十分に抑制しながら、低コストで、生産性良く気相成長を行うことができる気相成長装置及びシリコンエピタキシャルウェーハの製造方法を提供する。
【解決手段】気相成長装置10の反応チャンバー12内に配設されたサセプタ17のウェーハWの載置面が、原料ガスから生成された厚さ6〜20μmのポリシリコン膜で被覆され、かつ、前記気相成長装置10を構成する部材のうち前記反応チャンバー12内に露出した金属部材の表面が、原料ガスから生成された反応副生成物からなる膜で被覆された反応チャンバーを具備する気相成長装置とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気相成長装置及びシリコンエピタキシャルウェーハの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
気相成長装置を用いたシリコンエピタキシャルウェーハの製造では、HとSi原料ガスであるSiCl、SiHCl、SiHCl、SiHなどのガスを用いて、Siのエピタキシャル成長を行う。このエピタキシャル成長においてHClが生じる。また、ウェーハ以外に、チャンバー内部にもシリコンが成長するため、この装置の部材に成長したシリコンを定期的に除去する必要があり、この除去のためのクリーニングガスとしてもHClが用いられる。
【0003】
このような気相成長装置では、金属部材が使われる場所が多く、例えば、ガス導入配管、排気配管、チャンバーベース、ガス導入ポート、ウェーハ回転機構などが挙げられ、金属部材の材質としては、耐腐食性の強いステンレス、特にSUS316Lが使われることが多い。
【0004】
気相成長の反応は、ランプ加熱などで900〜1200℃の比較的高温にしたチャンバー内で行われることが多い。多くの気相成長装置はコールドウォール式であり、水冷、空冷により、チャンバー構造部材である、石英や、SUSなどの金属等を冷却しながら気相成長プロセスを行う。
【0005】
気相成長装置では、SUS等の耐腐食性の高い金属でも、高濃度HCl雰囲気では腐食が進み、金属を含むガス(金属塩化物など)となり、ウェーハに取り込まれ、エピプロセス中にウェーハが金属で汚染されるという問題がある。特に、水分の存在下や、高温ではHClによる腐食の進行が早いため、メンテナンス等のためにチャンバーを大気に開放した後などは、汚染レベルが著しく悪化する。
【0006】
エピプロセスでの汚染レベルは、SPV(Surface Photo Voltage)やWLT(Wafer Life Time)によりモニターしており、一定のレベルで管理を行っている。特に、定期メンテナンスによるチャンバー解放後には、これらの汚染レベルが悪化し、管理レベルまで回復させるためにダミーウェーハなどでのデポジション、クリーニングの繰り返し工程が必要である。このため、回復工程に時間を要し、シリコンエピタキシャルウェーハの生産性が大きく低下する。
【0007】
特許文献1には、下端部にガス排気口を有するバレル型気相成長装置において、ガス排気系の内壁をセラミックコーティングする技術が開示されている。また、特許文献2には、処理室内壁をコーティングする技術が開示されている。
しかしながら、特許文献1、2のような技術では、コストが高くなったり、不純物の低減効果も不十分なものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平7−221022号公報
【特許文献2】特開2005−56910号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであって、不純物汚染を十分に抑制しながら、低コストで、生産性良く気相成長を行うことができる気相成長装置及びシリコンエピタキシャルウェーハの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明は、少なくとも、チャンバーと、前記チャンバー内に連通し、該チャンバー内にガスを導入するガス導入管と、前記チャンバー内に連通し、該チャンバー内からガスを排出するガス排出管と、前記チャンバー内に配置され、ウェーハを載置するウェーハ載置面を有するサセプタとを具備し、前記サセプタに載置されたウェーハに前記ガス導入管から原料ガスを供給しながら気相成長させる気相成長装置であって、少なくとも、前記サセプタのウェーハ載置面は、原料ガスから生成された厚さ6〜20μmのポリシリコン膜で被覆され、かつ、前記気相成長装置を構成する部材のうち前記チャンバー内に金属の表面が露出された部材の該露出された金属の表面は、原料ガスから生成された副生成物からなる被覆膜で被覆されたものであることを特徴とする気相成長装置を提供する。
【0011】
このように、サセプタのウェーハ載置面と気相成長装置を構成する部材のうちチャンバー内に金属の表面が露出された部材の該露出された金属の表面とが被覆されたものであれば、ウェーハへの不純物汚染を効果的に抑制することができる。また、サセプタのウェーハ載置面に被覆されるポリシリコン膜が、厚さ6〜20μmであれば、生産性を高く保ちながら被覆でき、かつ、十分に不純物汚染を抑制することができる。さらに、被覆するポリシリコン膜及び被覆膜は両方とも気相成長に用いる原料ガスで形成することができるため、被覆が容易でコストが低く、膜からの不純物汚染の心配も無い。
以上より、本発明であれば、不純物汚染がほとんど生じない気相成長を生産性良く低コストで行うことができる装置となる。
【0012】
このとき、前記被覆膜は、SiHCl、SiHCl及びSiClのうち少なくとも一つの原料ガスから生成されたポリクロロシランからなるものであることが好ましい。
このように、露出された金属の表面の被覆膜は、SiHCl、SiHCl及びSiClのうち少なくとも一つの原料ガスから生成されたポリクロロシランからなるものであれば、被覆膜が、エピタキシャルプロセス中でも除去されず、さらに、処理されるウェーハに対して不純物とならない上に、ゲル状で発塵しにくいため、成長させるシリコンエピタキシャル層へのパーティクルの発生が無く、より生産性の良い気相成長を行うことができる装置となる。また、ポリシリコン膜も同じ原料ガスで生成させることができ、効率的に被覆できる。
【0013】
このとき、前記チャンバー内に金属の表面が露出された部材の該露出された金属の表面は、ステンレスであることが好ましい。
このように、本発明の装置のチャンバー内に金属の表面が露出された部材の該露出された金属の表面は、一般的に気相成長装置に用いられるステンレスとすることができる。すなわち、露出したステンレスの表面を被覆膜で被覆すれば、高純度のエピタキシャルウェーハを製造できる装置となる。
【0014】
また、本発明は、少なくとも、チャンバーと、前記チャンバー内に連通し、該チャンバー内にガスを導入するガス導入管と、前記チャンバー内に連通し、該チャンバー内からガスを排出するガス排出管と、前記チャンバー内に配置され、ウェーハを載置するウェーハ載置面を有するサセプタとを具備する気相成長装置を用いて、前記チャンバー内壁に前の製造で堆積したポリシリコンを気相エッチングで除去してクリーニングし、その後、前記サセプタにウェーハを載置して前記ガス導入管から原料ガスを供給しながら気相成長させてシリコンエピタキシャルウェーハを製造する方法であって、少なくとも、前記クリーニングの後に、前記サセプタのウェーハ載置面を、原料ガスから生成された厚さ6〜20μmのポリシリコン膜で被覆すると同時に、前記気相成長装置を構成する部材のうち前記チャンバー内に金属の表面が露出された部材の該露出された金属の表面を、原料ガスから生成された副生成物からなる被覆膜で被覆し、その後、前記サセプタにウェーハを載置して前記ガス導入管から原料ガスを供給しながら気相成長させることを特徴とするシリコンエピタキシャルウェーハの製造方法を提供する。
【0015】
このように、クリーニング後にサセプタのウェーハ載置面と気相成長装置を構成する部材のうちチャンバー内に金属の表面が露出された部材の該露出された金属の表面とを被覆することで、被覆膜やポリシリコン膜が除去されず、クリーニング時に腐食された金属からの汚染が効果的に抑制された気相成長を行うことができる。また、サセプタのウェーハ載置面にポリシリコン膜を厚さ6〜20μmで被覆することで、生産性を高く保ちながら、十分に不純物汚染を抑制することができる。さらに、被覆するポリシリコン膜及び被覆膜は両方とも原料ガスで形成することができるため、同時に形成でき、被覆が容易で、膜からの不純物汚染の心配も無い。
以上より、本発明であれば、不純物汚染を抑制しながら気相成長を低コストで効率的に行うことができ、高品質のシリコンエピタキシャルウェーハを生産性良く製造することができる。
【0016】
このとき、前記被覆膜を、SiHCl、SiHCl及びSiClのうち少なくとも一つの原料ガスから生成された副生成物であるポリクロロシランとすることが好ましい。
このように、露出された金属表面の被覆膜を、SiHCl、SiHCl及びSiClのうち少なくとも一つの原料ガスから生成された副生成物であるポリクロロシランとすることで、被覆膜がエピタキシャルプロセス中や、HClクリーニングでも除去されず、さらに、ゲル状で発塵しにくいため、パーティクルの発生が無く、より生産性良く高品質のシリコンエピタキシャルウェーハを製造できる。また、同じ原料ガスで、同時に本発明のポリシリコン膜も形成でき、効率的である。
【0017】
このとき、前記露出された金属の表面がステンレスである気相成長装置を用いることが好ましい。
このように、本発明で用いる装置を、露出された金属の表面がステンレスである気相成長装置とすることができる。
【0018】
このとき、前記ポリシリコン膜及び前記被覆膜の被覆を、1000〜1180℃に加熱した前記チャンバー内に前記原料ガスを導入することにより、前記サセプタのウェーハ載置面を、原料ガスから生成された厚さ6〜20μmのポリシリコン膜で被覆すると同時に、前記気相成長装置を構成する部材のうち前記チャンバー内に金属の表面が露出された部材の該露出された金属の表面を、原料ガスから生成された副生成物からなる被覆膜で被覆することが好ましい。
このように、ポリシリコン膜及び被覆膜の被覆を、1000〜1180℃に加熱したチャンバー内に原料ガスを導入して被覆することで、簡易な方法で、ポリシリコン膜及び被覆膜を効率的に形成することができる。
【発明の効果】
【0019】
以上のように、本発明によれば、不純物汚染のほとんどないシリコンエピタキシャル層を低コストで効率的に気相成長させることができ、高純度のシリコンエピタキシャルウェーハを生産性良く製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の気相成長装置の実施態様の一例を示す概略図である。
【図2】ポリシリコン膜厚とシリコンエピタキシャルウェーハの不純物濃度を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明について、実施態様の一例として、図を参照しながら詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
図1は、気相成長装置の一例を示す概略図である。
【0022】
本発明の気相成長装置として、例えば図1に示す枚葉式の気相成長装置について、以下説明するが、本発明は縦型、バレル型等の各種の気相成長装置にも適用することができる。
【0023】
図1に示す気相成長装置10のチャンバー(反応容器)12は、例えばSUSからなるチャンバーベース11と、チャンバーベース11を上下から挟む透明石英部材13、14とから形成される。このチャンバー12内には、チャンバーベース11をカバーする不透明石英部材15、16と、ウェーハWを上面のウェーハ載置面で支持するサセプタ17とを備えている。
【0024】
このサセプタ17はウェーハ回転機構18に接続されており、気相成長中はサセプタ17を回転させて、シリコンエピタキシャル層をウェーハW上に膜厚均一に気相成長させる。このウェーハ回転機構18内部はSUSが使われており、ウェーハ回転機構18内部をパージするパージガス導入管19が設けられている。
【0025】
チャンバー12には、チャンバー12内に原料ガス及びキャリアガス(例えば、水素)を含む気相成長ガスをサセプタ17の上側の領域に導入して、サセプタ17上に載置されたウェーハWの主表面上に原料ガスとキャリアガスを供給するガス導入管20、21が接続されている。例えば、ガス導入管20の導入口は、3つ以上に仕切られ、導入口の外側2つと中央部1つのガス流量がそれぞれ調整できるようになっている。
また、チャンバー12のガス導入管20、21が接続された側の反対側には、チャンバー12内からガスを排出するガス排出管22、23が接続されている。
【0026】
そして、本発明の装置10は、サセプタ17のウェーハ載置面が、原料ガスから生成された厚さ6〜20μmのポリシリコン膜で被覆され、かつ、気相成長装置10を構成する部材のうちチャンバー12内に金属の表面が露出された部材の該露出された金属の表面は、原料ガスから生成された副生成物からなる被覆膜で被覆されたものである。
【0027】
このように、サセプタのウェーハ載置面と気相成長装置を構成する部材のうちチャンバー内に金属の表面が露出された部材の該露出された金属の表面とが被覆されたものであれば、処理するウェーハへの不純物汚染を効果的に抑制することができる。また、被覆するポリシリコン膜及び被覆膜は両方とも原料ガスで形成することができるため、被覆も容易で、膜からの不純物汚染の心配も無い装置となる。
サセプタのウェーハ載置面に通常被覆されるポリシリコン膜は、厚さ3μm以下であるが、これではウェーハへの汚染低減効果は不十分で、本発明のように厚さ6μm以上であれば、ウェーハへの汚染量を大きく低減することができる。また、厚さ20μm以下であれば、被覆が容易で生産性を高く保つことができ、さらに、気相成長後にポリシリコン膜を除去するのも容易である。また、ポリシリコン膜の厚さが20μmを超えても、ウェーハの不純物は検出下限値以下まで既に低下しており、厚くすることによる不純物低減効果の向上はこれ以上期待できないどころか、生産性が悪化したり被覆のためのコストが高くなってしまう。
【0028】
このような、被覆膜を被覆する金属の表面を有する部材としては、チャンバー12の内壁等があり、さらには、ガス導入管20の出口、ガス排出管22の入り口、ウェーハ回転機構18等のチャンバー12内の雰囲気に露出した金属の表面にも被覆膜を被覆することができる。
また、ポリシリコン膜を被覆するサセプタ17のウェーハ載置面は、サセプタ17上面の少なくともウェーハと接触する面であればよく、その他、サセプタ17上面の全面や、サセプタ17の全表面にもポリシリコン膜を形成してもよい。
【0029】
このとき、被覆膜は、SiHCl、SiHCl及びSiClのうち少なくとも一つの原料ガスから生成されたポリクロロシランからなるものであることが好ましい。
SiHCl、SiHCl及びSiClは、シリコンの気相成長に一般的に用いられる原料ガスであり、その原料ガスの副生成物であれば気相成長プロセス中に不純物も混入しない。また、ポリクロロシランであれば、気相成長中でも分解されずに残り、さらにはゲル状であるため発塵もない。このため、パーティクルが無く、高純度のシリコンエピタキシャルウェーハを生産性良く製造できる装置となる。
【0030】
このような、本発明の気相成長装置10を用いてシリコンエピタキシャルウェーハを製造する本発明の方法について、実施態様の一例を以下に説明する。
まず、本発明の製造方法では、例えば、チャンバー12を1100〜1200℃まで加熱し、HClガスを導入することで、チャンバー12内壁に前の製造で堆積したポリシリコンを、気相エッチングで除去してクリーニングする。
このクリーニング工程では、前の製造の気相成長時にチャンバー内壁等に堆積したポリシリコンが、シリコンエピタキシャル層のパーティクル等の原因にならないようにエッチング除去する。この際、チャンバー12内の金属表面がHClガスにより腐食され、特にクリーニング後最初の気相成長において、腐食された金属がウェーハ中に取り込まれて不純物汚染が生じることがあった。
【0031】
上記のような汚染を抑制するために、本発明では、上記クリーニング後に、サセプタ17のウェーハ載置面を、原料ガスから生成された厚さ6〜20μmのポリシリコン膜で被覆すると同時に、気相成長装置10を構成する部材のうちチャンバー12内に金属の表面が露出された部材の該露出された金属の表面を、原料ガスから生成された副生成物からなる被覆膜で被覆する。
このように、クリーニング後に被覆することで、クリーニング時のHClガス等で被覆膜やポリシリコン膜が分解、除去されることもなく、クリーニング時に腐食された金属が、気相成長時にウェーハに取り込まれることを抑制できる。
【0032】
好ましい被覆方法としては、まず、チャンバー12内を1000〜1180℃まで加熱する。その際、チャンバー12を構成するステンレス等の金属部材には、十分な冷却水を流しておく。次に、ガス導入管20から原料ガス(例えばSiHCl)を導入することで、高温となったサセプタ上にはポリシリコン膜が、比較的低温に保たれた金属部材上には被覆膜が同時に形成される。
原料ガスのSiHClやSiHCl等が熱分解すると中間生成物と呼ばれるSiClなどの不安定な化合物が生成される。これらはサセプタのウェーハ載置面上でSiを析出してポリシリコン膜が形成され、一方、上記のように十分な冷却水を流して冷却された部材の金属の表面に接触することによりポリクロロシランが生成されて、被覆膜が形成される。
【0033】
上記のように、ポリシリコン膜及び被覆膜を形成した後、シリコンウェーハの主表面に、シリコンエピタキシャル層を気相成長させる。
最初に、投入温度(例えば650℃)に調整したチャンバー12内にシリコンウェーハWを投入し、その主表面が上を向くように、サセプタ17上面のザグリのウェーハ載置面に載置する。ここでチャンバー12内には、シリコンウェーハWが投入される前段階から、ガス導入管20、21及びパージガス導入管19のそれぞれを介して水素ガスが導入されている。
【0034】
次に、サセプタ17上のシリコンウェーハWを、不図示の加熱装置により水素熱処理温度(例えば1050〜1200℃)まで加熱する。
次に、シリコンウェーハWの主表面に形成されている自然酸化膜を除去する為の気相エッチングを行う。この気相エッチングは、次工程である気相成長の直前まで行われる。
【0035】
次に、シリコンウェーハWを所望の成長温度(例えば950〜1180℃)まで降温させ、シリコンウェーハWの主表面上に、ガス導入管20を介して原料ガス(例えばトリクロロシラン:SiHCl)及びキャリアガス(例えば水素)をそれぞれ略水平に供給することによって、シリコンウェーハWの主表面上にシリコンエピタキシャル層を気相成長させてシリコンエピタキシャルウェーハを製造する。
最後に、取り出し温度(例えば、650℃)まで降温し、シリコンエピタキシャルウェーハをチャンバー12の外へと搬出する。
【0036】
このように、本発明によれば、クリーニング後最初の気相成長から不純物汚染の抑制されたシリコンエピタキシャル層を成長させることができ、生産性良く、高純度のシリコンエピタキシャルウェーハを製造することができる。
【実施例】
【0037】
以下、実施例及び比較例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例、比較例)
図1に示す気相成長装置を用いて、複数回の気相成長を行った。
まず、チャンバー内を1150℃まで加熱し、HClガスを導入することで、チャンバー内壁に前の製造で堆積したポリシリコンを、気相エッチングで除去してクリーニングした。
【0038】
次に、チャンバー内の温度を1100℃まで降温し、SiHClのガスを導入して、サセプターのウェーハ載置面にポリシリコン膜を、チャンバーを構成するステンレス等の金属部材表面にはポリクロロシランの被覆膜を形成した。この際、ポリシリコン膜の厚さを気相成長毎に変更して形成した。
次に、直径200mm、P型で抵抗率10Ωcmのシリコン単結晶基板上に、温度1100℃で、原料ガスとしてSiHClを用い、10μmのエピタキシャル成長を行った。
【0039】
また、上記と同様に、ただし、被覆膜のみを形成し、ポリシリコン膜は形成しないで(膜厚0μm)、エピタキシャル成長を行った。
上記のように製造したシリコンエピタキシャルウェーハ中のMoとNiの濃度を測定した結果を図2に示す。
【0040】
図2に示すように、ポリシリコン膜の膜厚が6μm以上、より好ましくは膜厚13μm以上であれば、ウェーハ中の不純物濃度が大きく低減されていることが分かる。
また、膜厚20μmを超えると、これ以上の不純物低減効果の向上は見込めず、一方、生産性が悪化し、コストも高くなった。
以上より、ポリシリコン膜の厚さが6〜20μm、好ましくは13〜20μmの範囲であれば、生産性を高く保ちながら、十分な不純物低減効果を期待できることが分かる。
【0041】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0042】
10…気相成長装置、 11…チャンバーベース、 12…チャンバー、
13、14…透明石英部材、 15、16…不透明石英部材、 17…サセプタ、
18…ウェーハ回転機構、 19…パージガス導入管、 20、21…ガス導入管、
22、23…ガス排出管、 W…ウェーハ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、チャンバーと、前記チャンバー内に連通し、該チャンバー内にガスを導入するガス導入管と、前記チャンバー内に連通し、該チャンバー内からガスを排出するガス排出管と、前記チャンバー内に配置され、ウェーハを載置するウェーハ載置面を有するサセプタとを具備し、前記サセプタに載置されたウェーハに前記ガス導入管から原料ガスを供給しながら気相成長させる気相成長装置であって、少なくとも、
前記サセプタのウェーハ載置面は、原料ガスから生成された厚さ6〜20μmのポリシリコン膜で被覆され、かつ、前記気相成長装置を構成する部材のうち前記チャンバー内に金属の表面が露出された部材の該露出された金属の表面は、原料ガスから生成された副生成物からなる被覆膜で被覆されたものであることを特徴とする気相成長装置。
【請求項2】
前記被覆膜は、SiHCl、SiHCl及びSiClのうち少なくとも一つの原料ガスから生成されたポリクロロシランからなるものであることを特徴とする請求項1に記載の気相成長装置。
【請求項3】
前記チャンバー内に金属の表面が露出された部材の該露出された金属の表面は、ステンレスであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の気相成長装置。
【請求項4】
少なくとも、チャンバーと、前記チャンバー内に連通し、該チャンバー内にガスを導入するガス導入管と、前記チャンバー内に連通し、該チャンバー内からガスを排出するガス排出管と、前記チャンバー内に配置され、ウェーハを載置するウェーハ載置面を有するサセプタとを具備する気相成長装置を用いて、前記チャンバー内壁に前の製造で堆積したポリシリコンを気相エッチングで除去してクリーニングし、その後、前記サセプタにウェーハを載置して前記ガス導入管から原料ガスを供給しながら気相成長させてシリコンエピタキシャルウェーハを製造する方法であって、少なくとも、
前記クリーニングの後に、前記サセプタのウェーハ載置面を、原料ガスから生成された厚さ6〜20μmのポリシリコン膜で被覆すると同時に、前記気相成長装置を構成する部材のうち前記チャンバー内に金属の表面が露出された部材の該露出された金属の表面を、原料ガスから生成された副生成物からなる被覆膜で被覆し、その後、前記サセプタにウェーハを載置して前記ガス導入管から原料ガスを供給しながら気相成長させることを特徴とするシリコンエピタキシャルウェーハの製造方法。
【請求項5】
前記被覆膜を、SiHCl、SiHCl及びSiClのうち少なくとも一つの原料ガスから生成された副生成物であるポリクロロシランとすることを特徴とする請求項4に記載のシリコンエピタキシャルウェーハの製造方法。
【請求項6】
前記露出された金属の表面がステンレスである気相成長装置を用いることを特徴とする請求項4又は請求項5に記載のシリコンエピタキシャルウェーハの製造方法。
【請求項7】
前記ポリシリコン膜及び前記被覆膜の被覆を、1000〜1180℃に加熱した前記チャンバー内に前記原料ガスを導入することにより、前記サセプタのウェーハ載置面を、原料ガスから生成された厚さ6〜20μmのポリシリコン膜で被覆すると同時に、前記気相成長装置を構成する部材のうち前記チャンバー内に金属の表面が露出された部材の該露出された金属の表面を、原料ガスから生成された副生成物からなる被覆膜で被覆することを特徴とする請求項4乃至請求項6のいずれか一項に記載のシリコンエピタキシャルウェーハの製造方法。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−233583(P2011−233583A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−100104(P2010−100104)
【出願日】平成22年4月23日(2010.4.23)
【出願人】(000190149)信越半導体株式会社 (867)
【Fターム(参考)】