説明

気相成長装置

【課題】サセプタの交換の際にサセプタの位置ずれの問題が生じない気相成長装置を得る。
【解決手段】本発明に係る気相成長装置は、サセプタ3が着脱可能に設置されて気相成長を行う反応炉5と、サセプタ3を搬送する搬送ロボット7と、搬送ロボット7及び反応炉5が収容されるグローボックス9と、グローボックス9内に設置されてサセプタ3の交換時にサセプタ3を一時的に載置する交換テーブル11と、グローボックス9の側壁に設けられてサセプタ3の交換を行う交換ボックス13とを備えた気相成長装置1であって、交換テーブル11は、サセプタ3が載置されると回転して所定の回転位置で停止することでサセプタ3の回転方向の位置を決める位置決め装置15を備えてなることを特徴とするものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板を加熱しながら気相原料を供給して基板上に薄膜を堆積させる気相成長装置に関する。
【背景技術】
【0002】
サセプタに保持された基板を所定温度に加熱した状態で反応室内に原料ガスを供給し、前記基板面に薄膜を堆積(成長)させる気相成長装置として、複数枚の基板に均一に薄膜を形成するため、サセプタを回転させるとともに、該サセプタの回転に伴って基板を載置する基板載置部材(基板トレイ)を回転させ、成膜中の基板を自公転させる機構を備えた気相成長装置が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
図4は特許文献1に開示された気相成長装置70の断面図である。特許文献1に開示された気相成長装置70は、上部中央にガス導入管71を配設した偏平円筒状のチャンバー72内に、円盤状のカーボンからなるサセプタ73と、該サセプタ73の外周部分の同心円上に等間隔で配置された複数の基板ホルダー74と、サセプタ73の上方に対向配置されてチャンバー72内を上下に区画し、サセプタ73側に反応室75を形成する仕切板76とを備えている。
【0004】
チャンバー72は、反サセプタ側の上方が開口したチャンバー本体77と、該チャンバー本体77の周壁上部にOリングを介して気密に装着されるチャンバー蓋78とに分割形成されている。チャンバー本体77の底部中央部には、サセプタ73を回転させるための回転駆動軸79が設けられ、該回転駆動軸79でサセプタ73を回転させることにより、基板80を保持した基板ホルダー74がサセプタ73の中心に対して公転するとともに、サセプタ73の外周に設けられた自転歯車機構によって自転する仕組みになっている。
また、基板ホルダー74の下方には、基板80を加熱するためのヒーター81がリング状に配設され、サセプタ73の外周側にはリング状の排気通路82が設けられている。
【0005】
サセプタ73が設置されるチャンバー内は汚染をきらうため、グローボックスというボックス内に収容されており、外気にさらすことができない。そのため、サセプタ73の交換は、グローボックスの側面に設けられ内部環境を窒素雰囲気に調整できる交換ボックスにおいて行われる。
【0006】
サセプタの交換を自動搬送装置によって行う例が、特許文献2に記載されている。
特許文献2においては、サセプタ73自体の搬送について詳細は記載されていないが、概ね以下のように行われる。
グローブボックス内に設置された搬送ロボットによって、反応炉内にあるサセプタを保持して交換ボックスに搬送する。一方、交換ボックスで待機している2枚目のサセプタを交換ボックスから交換テーブルへ搬送する。交換テーブルで基板ホルダ(基板トレイ)上に基板を載置した後、交換テーブルから反応炉へサセプタを搬送する。このように、1枚目のサセプタで成長させている間、2枚目のサセプタは交換ボックスで待機しているという2枚運用である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008―262967号公報
【特許文献2】特開2010―255083号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来例において搬送ロボットは、交換ボックス内のサセプタを載置された位置(位相)のままでサセプタを搬送してチャンバーにセットする。
サセプタのチャンバーへのセットは、サセプタの中心開口部に設けられた嵌合部とチャンバーの回転軸側に設けられた嵌合部を正確に位置合わせして行う必要がある。
そのため、サセプタを交換ボックス内に載置した際に位置ずれが生じていると、サセプタが回転軸に正しく嵌らない事態が生ずる。
また、サセプタをグローボックス内の例えば交換テーブルに載置してからチャンバーに搬送する場合において、交換テーブル上で意図せずにサセプタの位相がずれてしまった場合には、上記と同様の問題が生ずる。
【0009】
サセプタがチャンバー内に正しくにセットされないと、正常な気相成長が不可能となるため、サセプタをチャンバーに正しくセットすることは必須である。
しかしながら、従来例では、サセプタの位置合わせは交換ボックスにおいて作業者が行っていたが、この作業は慎重を期する必要から作業効率が悪いという問題がある。
また、仮に交換ボックスにおいて位置ずれが生じていたような場合には、サセプタの位置合わせをやり直す必要があるが、そのためには一旦サセプタを交換ボックスに戻して位置合わせをした後、再度サセプタを搬送し直す必要がある。
しかし、サセプタを再搬送するとなると、時間を要し、生産効率が低下するという問題がある。
【0010】
本発明はかかる問題点を解決するためになされたものであり、サセプタの交換の際にサセプタの位置ずれの問題が生じない気相成長装置を得ることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(1)本発明に係る気相成長装置は、サセプタが着脱可能に設置されて気相成長を行う反応炉と、前記サセプタを搬送する搬送ロボットと、該搬送ロボット及び前記反応炉が収容されるグローボックスと、該グローボックス内に設置されてサセプタの交換時にサセプタを一時的に載置する交換テーブルと、前記グローボックスの側壁に設けられて前記サセプタの交換を行う交換ボックスとを備えた気相成長装置であって、
前記交換テーブルは、前記サセプタが載置されると回転して所定の回転位置で停止することでサセプタの回転方向の位置を決める位置決め装置を備えてなることを特徴とするものである。
【0012】
(2)また、上記(1)に記載のものにおいて、前記位置決め装置は、交換テーブルに載置されたサセプタを回転させる回転機構と、前記交換テーブルの近傍に設けられて前記サセプタに設けられたマーカーを検出するセンサと、該センサの信号を入力して前記交換テーブルの回転位置を制御する制御装置とを備えてなることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明においては、グローボックス内に設置した交換テーブルがサセプタの回転方向の位置を決める位置決め装置を備えているので、作業者が交換ボックスでサセプタの位置決めをする必要がなく、作業効率が高くなると共に、位置決めの不備による作業効率の低下がない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施の形態に係る気相成長装置の全体構成の説明図である。
【図2】本発明の一実施の形態に係るサセプタの説明図である。
【図3】本発明の一実施の形態に係る気相成長装置の要部の説明図である。
【図4】従来の気相成長装置の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本実施の形態に係る気相成長装置1は、図1に示すように、サセプタ3が着脱可能に設置されて気相成長を行う反応炉5と、サセプタ3を搬送する搬送ロボット7と、搬送ロボット7及び反応炉5が収容されるグローボックス9と、グローボックス9内に設置されてサセプタ3の交換時にサセプタ3を一時的に載置する交換テーブル11と、グローボックス9の側壁に設けられてサセプタ3の交換を行う交換ボックス13とを備えた気相成長装置1であって、交換テーブル11はサセプタ3が載置されると回転して所定の回転位置で停止することでサセプタ3の回転方向の位置を決める位置決め装置15(図3参照)を備えてなるものである。
以下詳細に説明する。
【0016】
<サセプタ>
サセプタ3は、図2に示すように、中央に開口部17を有する全体形状がドーナツ状の円盤によって構成されている。
サセプタ3には基板載置部が設置される複数のポケット19が設けられている。ポケット19の数は特に限定されず、例えば図1においては11個のものが図示され、図2では7個のものが図示されている。
サセプタ3の中央の開口部17には嵌合部21が設けられており、サセプタ3は開口部17に形成された嵌合部21が反応炉5側の回転軸側に嵌合して回転する構造になっている。
【0017】
サセプタ3における裏面側であって位置決め基準となるひとつのポケット19の両側には、図2に示すように、マーカー23が形成されている。マーカー23を後述するセンサ31によって検出することで、このポケット19の位置を検出できるようになっている。マーカー23は、センサ31が識別できる程度の凹形状(例えば10mm×6mmの楕円、深さ5mm)になっている。
ポケット19に設置される基板載置部は、自転可能になっており、基板載置部に薄膜が形成される基板が載置される。
サセプタ3は、反応炉5にセットされると、図示しない駆動機構によってサセプタ3全体が公転(回転)し、この公転に連動して基板載置部が自転する機構になっている。
【0018】
<反応炉>
反応炉5はサセプタ3が着脱可能に設置されて気相成長を行うものである。反応炉5の形態は特に限定されるものではなく、例えば特許文献1、2に記載されたものが適用できる。
反応炉5の一形態を概説すると、全体形状が偏平円筒状をしており、下部側のチャンバー本体と、チャンバー本体を開閉するチャンバー蓋とを備えている。
チャンバー本体の中心部には、原料ガス導入ノズルが設置され、サセプタ3に載置された基板に原料ガスを供給できるようになっている。原料ガス導入は、例えば特許文献1のように上方から導入する形態でもよいし、特許文献2のように下方から導入する形態でもよい。
チャンバー本体の外周縁部は本体部フランジとなっており、チャンバー蓋の蓋部フランジと当接して反応炉5を気密に閉止できるようになっている。
チャンバー蓋は、昇降機構によってチャンバー本体に対して昇降するようになっている。
【0019】
<搬送ロボット>
搬送ロボット7は、グローボックス9内に設置されて、サセプタ3を搬送する。搬送ロボット7は、図2に示すように、複数の腕25が関節で回転可能に連結され、先端の腕25にサセプタ3を保持する保持部27が設けられている。
搬送ロボット7は、各腕25を旋回させることで、サセプタ3を反応炉5、交換テーブル11、交換ボックス13のそれぞれに搬送することができる。
【0020】
<グローボックス>
グローボックス9は、搬送ロボット7及び反応炉5を収容する。グローボックス9には、窒素ガスを供給して、ボックス内を窒素雰囲気に置換できるようになっている。
グローブボックスの側面には、サセプタ3の交換を行う交換ボックス13が設けられている。交換ボックス13には、真空ポンプや窒素ガス供給管が接続され、交換ボックス13内の雰囲気を窒素雰囲気に置換できるようになっている。
【0021】
<交換テーブル>
交換テーブル11は、グローボックス9内に設置されてサセプタ3の交換時にサセプタ3を一時的に載置するものである。交換テーブル11には、後述する位置決め装置15が搭載されている。
【0022】
<位置決め装置>
位置決め装置15は、交換テーブル11に載置されたサセプタ3を回転させる回転機構29と、交換テーブル11の近傍に設けられてサセプタ3に設けられたマーカー23を検出するセンサ31と、センサ31の信号を入力して交換テーブル11の回転位置を制御する制御装置33とを備えている。
【0023】
上記のように構成された本実施の形態におけるサセプタ3の交換時の動作を説明する。
交換用のサセプタ3が交換ボックス13内に載置される。このとき、従来例ではサセプタ3の位置決めを交換ボックス13で行うようにしていたので、作業者はサセプタ3の位置(位相)合わせをする必要があった。しかし、本実施の形態では、交換テーブル11においてサセプタ3の位置合わせが行われるので、交換ボックス13にサセプタ3を載置する際には、位置合わせを行う必要がない。
【0024】
交換ボックス13にサセプタ3が載置されると、搬送ロボット7がサセプタ3を保持して交換テーブル11の位置まで搬送して交換テーブル11にサセプタ3を載置する。サセプタ3が載置されると交換テーブル11が回転し、センサ31がサセプタ3の裏面のマーカー23を検出して検出信号を制御装置33に送信する。制御装置33はセンサ31からの検出信号を入力して、マーカー検出位置が所定の位置になるように回転機構29を制御して交換テーブル11を所定の位置に停止する。交換テーブル11が所定の位置で停止することで、交換テーブル11に載置されているサセプタ3の位置(位相)合わせが完了する。
【0025】
サセプタ3の位置合わせが完了すると、サセプタ3のポケット19に基板載置部及び基板等がセットされる。そして、基板等のセットが完了すると、搬送ロボット7によってサセプタ3が保持されて反応炉5に搬送され、サセプタ3の開口部17を反応炉5の回転軸に位置合わせして設置される。このとき、サセプタ3の位相が交換テーブル11において正しい位置に位置合わせされているので、サセプタ3の位相ずれによりサセプタ3が反応炉5の回転軸に嵌らないということがない。
【0026】
以上のように、本実施の形態においては、交換テーブル11においてサセプタ3の位置合わせを自動で行うようにしたので、以下のような効果を奏する。
まず、交換テーブル11において、作業者がサセプタ3の位置合わせをする必要がなくなるので、作業効率が向上する。
また、交換テーブル11においてサセプタ3の位置を自動的に正しい位置に合わせるため、反応炉5にサセプタ3をセットする際に位置ずれのためにサセプタ3のセットができないということがない。
この点、従来例では、交換ボックス13におけるサセプタ3の位置が正しくなっていない場合には、反応炉5にサセプタ3が正しくセットされず、再度、交換ボックス13に戻して位置合わせを行ったあとで、再度搬送しなければならず、無駄な時間を要することになり生産効率が低下していた。
これに対して、本実施の形態では、このような無駄な時間が発生しないので、生産効率が向上するという効果がある。
【0027】
なお、上記の実施の形態においては、サセプタ3に設けるマーカー23はサセプタ3の位置を認識するためにのみ使用した。
しかし、マーカー23の形状をサセプタ3ごとに変えるようにして、サセプタ3の位置の認識に加えてサセプタ3を個体識別ができるようにしてもよい。このようにすれば、サセプタ3ごとに反応条件等を予め設定した気相成長プログラムを準備しておくことで、当該サセプタ3に最も適した条件での気相成長反応を実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明は、特に化合物半導体を成膜する半導体製造装置に関し、該装置によって製造される半導体の品質向上に利用できる。
【符号の説明】
【0029】
1 気相成長装置
3 サセプタ
5 反応炉
7 搬送ロボット
9 グローボックス
11 交換テーブル
13 交換ボックス
15 位置決め装置
17 開口部
19 ポケット
21 嵌合部
23 マーカー
25 腕
27 保持部
29 回転機構
31 センサ
33 制御装置
70 気相成長装置
71 ガス導入管
72 チャンバー
73 サセプタ
74 基板ホルダー
75 反応室
77 チャンバー本体
78 チャンバー蓋
79 回転駆動軸
80 基板
81 ヒーター
82 排気通路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サセプタが着脱可能に設置されて気相成長を行う反応炉と、前記サセプタを搬送する搬送ロボットと、該搬送ロボット及び前記反応炉が収容されるグローボックスと、該グローボックス内に設置されてサセプタの交換時にサセプタを一時的に載置する交換テーブルと、前記グローボックスの側壁に設けられてサセプタの交換を行う交換ボックスとを備えた気相成長装置であって、
前記交換テーブルは、前記サセプタが載置されると回転して所定の回転位置で停止することで前記サセプタの回転方向の位置を決める位置決め装置を備えてなることを特徴とする気相成長装置。
【請求項2】
前記位置決め装置は、交換テーブルに載置されたサセプタを回転させる回転機構と、前記交換テーブルの近傍に設けられて前記サセプタに設けられたマーカーを検出するセンサと、該センサの信号を入力して前記交換テーブルの回転位置を制御する制御装置とを備えてなることを特徴とする請求項1記載の気相成長装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−212771(P2012−212771A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−77390(P2011−77390)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000231235)大陽日酸株式会社 (642)
【出願人】(509054005)大陽日酸イー・エム・シー株式会社 (13)
【Fターム(参考)】