説明

油圧制御バルブ

【課題】 可変動弁機構とそれに関連して作動する機能部品とを共通の油圧制御バルブで制御できるようにする。
【解決手段】 油圧制御バルブVは、油圧源、可変動弁機構11,12,13および機能部品14,15にそれぞれ連通する複数のハウジング側油路が形成されたバルブハウジング31と、バルブハウジング31の内部に収納されて複数のスプール側油路が形成されたスプール38と、スプール38を回転させるステップモータ41とを備えるので、可変動弁機構11,12,13および機能部品14,15の各々に対して専用の油圧制御バルブを設ける場合に比べて、それらに対する油圧の供給を相互に関連させて適切に行うことが可能になるだけでなく、部品点数を削減してコストダウンに寄与することができる。しかもハウジング側油路は軸線L方向に3段に並設されるので、多くの油路をコンパクトに配置して油圧制御バルブVの小型化することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンの運転状態に応じて少なくともバルブタイミングを変更する可変動弁機構に供給する油圧と、前記エンジンの運転状態および前記可変動弁機構の作動状態に応じて作動状態を変更する機能部品に供給する油圧とを制御する油圧制御バルブに関する。
【背景技術】
【0002】
バルブボディの内部に収納したスプールをリニアソレノイドで軸方向に摺動させて油路の切り換えを行う油圧制御バルブにおいて、バルブボディの内部に設けた複数の油室をスプールから離間した位置に設けたドレン油路でドレンポートに連通させることで、ドレンポートの数を1個に減少させて油圧制御バルブの小型化およびコストダウンを図るものが、下記特許文献1により公知である。
【0003】
またカムシャフト駆動スプロケットに対するカムシャフトの位相を変化させることで機関弁のバルブタイミングを変更するバルブタイミング可変機構の作動を制御すべく、バルブボディの内部に配置したスプールの回転位置を回転駆動手段で切り換える油圧制御バルブが、下記特許文献2により公知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−193871号公報
【特許文献1】特開2009−221983号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、エンジンのバルブタイミングやバルブリフトを切り換える可変動弁機構には、そのロッカアームを付勢する油圧ラッシュアジャスタや、その摺動部に潤滑油を供給するオイルジェット等の機能部品が付随しており、これらの機能部品は可変動弁機構によるバルブリフトの高低の切り換え等に連動して作動状態が切り換えられる。この場合、可変動弁機構の作動を制御する油圧制御バルブと機能部品の作動を制御する油圧制御バルブとを別個に設けると、部品点数の増加によってコストが増加したり必要な設置スペースが増加したりする問題が発生する。
【0006】
本発明は前述の事情に鑑みてなされたもので、可変動弁機構とそれに関連して作動する機能部品とを共通の油圧制御バルブで制御できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1に記載された発明によれば、エンジンの運転状態に応じて少なくともバルブタイミングを変更する可変動弁機構に供給する油圧と、前記エンジンの運転状態および前記可変動弁機構の作動状態に応じて作動状態を変更する機能部品に供給する油圧とを制御する油圧制御バルブであって、前記油圧制御バルブは、油圧源、前記可変動弁機構および前記機能部品にそれぞれ連通する複数のハウジング側油路が形成されたバルブハウジングと、前記バルブハウジングの内部に収納されて前記ハウジング側油路に連通する複数のスプール側油路が形成されたスプールと、前記スプールを軸線まわりに回転させる駆動部とを備え、前記ハウジング側油路は前記軸線方向に複数段に並設されることを特徴とする油圧制御バルブが提案される。
【0008】
また請求項2に記載された発明によれば、請求項1の構成に加えて、前記スプール側油路は、前記スプールの内部に形成されたフィード液室から径方向外側に貫通する径方向油路と、前記スプールの外周面に形成されて前記径方向油路に連通する周面油路とを含むことを特徴とする油圧制御バルブが提案される。
【0009】
また請求項3に記載された発明によれば、請求項1または請求項2の構成に加えて、前記可変動弁手段は、動弁カムから機関弁への駆動力伝達経路上に設けられた複数のロッカアームの連結状態を切り換える切換手段を備え、前記機能部品は前記ロッカアームを支持する油圧ラッシュアジャスタであり、前記油圧制御バルブは前記切換機構の作動時に前記油圧ラッシュアジャスタへの油圧の供給を停止することを特徴とする油圧制御バルブが提案される。
【0010】
尚、実施の形態の吸気側VTEC11、排気側VTEC12およびVTC13は本発明の可変動弁機構に対応し、実施の形態のオイルジェット14および油圧ラッシュアジャスタ15は本発明の機能部品に対応し、実施の形態のピン17,21は本発明の切換手段に対応し、実施の形態のステップモータ41は本発明の駆動部に対応し、実施の形態のドレン油路D1〜D4は本発明のスプール側油路あるいは周面油路に対応し、実施の形態のポートP1〜P6は本発明のスプール側油路あるいは径方向油路に対応し、実施の形態のグルーブG1〜G9は本発明のハウジング側油路に対応する。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の構成によれば、油圧制御バルブは、油圧源、可変動弁機構および機能部品にそれぞれ連通する複数のハウジング側油路が形成されたバルブハウジングと、バルブハウジングの内部に収納されてハウジング側油路に連通する複数のスプール側油路が形成されたスプールと、スプールを軸線まわりに回転させる駆動部とを備えるので、可変動弁機構および機能部品の各々に対して専用の油圧制御バルブを設ける場合に比べて、それらに対する油圧の供給を相互に関連させて適切に行うことが可能になるだけでなく、部品点数を削減してコストダウンに寄与することができる。しかもハウジング側油路は軸線方向に複数段に並設されるので、バルブハウジングに多くの油路をコンパクトに配置して油圧制御バルブの小型化を図ることができる。
【0012】
また請求項2の構成によれば、スプール側油路は、スプールの内部に形成されたフィード液室から径方向外側に貫通する径方向油路と、スプールの外周面に形成されて径方向油路に連通する周面油路とを含むので、加工が面倒な周面油路の数を極力減少させて加工が容易な径方向油路で補うことで、スプールの加工コストを削減することができる。
【0013】
また請求項3の構成によれば、可変動弁機構は動弁カムから機関弁への駆動力伝達経路上に設けられた複数のロッカアームの連結状態を切り換える切換手段を備えるので、その切り換え時に機能部品である油圧ラッシュアジャスタが作動しているとロッカアームが拘束されて切換機構が作動し難くなる虞があるが、油圧制御バルブは切換手段の作動時に油圧ラッシュアジャスタへの油圧の供給を停止するので、切換手段をスムーズに作動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】エンジンの可変動弁装置の油圧制御系の概略図。
【図2】油圧制御バルブの斜視図。
【図3】スプールの斜視図および断面図。
【図4】図2の4方向矢視図。
【図5】図4の5(A)−5(A)線断面図および5(B)−5(B)線断面図。
【図6】図4の6−6線断面図。
【図7】図4の7−7線断面図。
【図8】図4の8−8線断面図。
【図9】図6〜図8の9−9線展開図。
【図10】油圧制御バルブの1段目の作用説明図。
【図11】油圧制御バルブの2段目の作用説明図。
【図12】油圧制御バルブの3段目の作用説明図。
【図13】前記図9に対応する作用説明図。
【図14】油圧制御バルブの各回転位置に対応する油圧の状態を示す表。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図1〜図14に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
【0016】
図1はエンジンの可変動弁装置の油圧制御系の概略を示すもので、本実施の形態のエンジンは、吸気バルブのバルブリフトおよびバルブタイミングを制御する吸気側可変動弁機構(以下、吸気側VTECという)11と、排気バルブのバルブリフトおよびバルブタイミングを制御する排気側可変動弁機構(以下、排気側VTECという)12と、排気バルブのバルブタイミングを制御するバルブタイミング可変機構(以下、VTCという)13と、ピストンの内面に潤滑油を供給するオイルジェット(以下、OJという)14と、可変動弁装置のロッカアームを油圧で閉弁方向に付勢する油圧ラッシュアジャスタ(以下、HLAという)15と、それらに対する油圧の供給を制御する油圧制御バルブVとを備える。
【0017】
吸気側VTEC11は複数のロッカアーム16…の結合あるいは分離を切り換える複数のピン17…と、そのピン17…を二つの方向に駆動する二つの油室18,19とを備える。一方の油室18に油圧が供給されると吸気バルブのバルブリフトがHI状態(高リフト状態)になり、他方の油室19に油圧が供給されると吸気バルブのバルブリフトがLO状態(低リフト状態)になる。
【0018】
排気側VTEC12は複数のロッカアーム20…の結合あるいは分離を切り換える複数のピン21…と、そのピン21…を一つの方向に駆動する油室22と、この油室22に対向するリターンスプリング23とを備える。油室22に油圧が供給されると排気バルブのバルブリフトがHI状態(高リフト状態)になり、油室22の油圧を抜くとリターンスプリング23の弾発力で排気バルブのバルブリフトがLO状態(低リフト状態)になる。
【0019】
排気側のVTC13は、クランクシャフトによりタイミングベルトを介して駆動されるスプロケット24と排気カムシャフト25との間に設けられ、油室26に供給される油圧でスプロケット24および排気カムシャフト25の相対的な位相を変更して排気バルブのバルブタイミングを変更する。
【0020】
次に、図2〜図9に基づいて油圧制御バルブVの構造を説明する。
【0021】
図2〜図5に示すように、油圧制御バルブVは、バルブハウジング31と、バルブハウジング31の上面にシート状あるいはリング状のシール部材32を介してボルト33…で結合されたアッパカバー34と、バルブハウジング31の下面にシート状あるいはリング状のシール部材35を介してボルト36…で結合されたロアカバー37と、バルブハウジング31の内部に軸線Lまわりに回転自在に収納されたスプール38と、スプール38の上面からアッパカバー34をOリング39を介して貫通して上方に延出するバルブシャフト40と、バルブシャフト40に接続されたステップモータ41とを備える。
【0022】
図4〜図8に示すように、油圧制御バルブVの油路は、上段である1段目と、中段である2段目と、下段である3段目とに分かれており、1段目は吸気側VTEC11(吸気側可変動弁機構)のON/OFFを制御し、2段目は排気側VTEC12(排気側可変動弁機構)のON/OFFおよびVTC13(バルブタイミング可変機構)のON/OFFを制御し、3段目はOJ14(オイルジェット)のON/OFFおよびHLA15(油圧ラッシュアジャスタ)のON/OFFを制御する。
【0023】
エンジンブロック42に結合されるバルブハウジング31の割り面には、1段目に対応して吸気側VTEC11のHI側油路31aと、吸気側VTEC11のLO側油路31bと、ドレン油路31cとが開口し、2段目に対応して排気側VTEC12のHI側油路31dと、VTC油路31eとが開口し、3段目に対応してOJ油路31fと、HLA油路31gと、フィード油路31hとが開口する。
【0024】
ドレン油路31cは図示せぬオイルタンクに接続され、図示せぬ油圧ポンプに接続されたフィード油路31hは、バルブハウジング31の内部および底面を通ってスプール38の内部に形成されたフィード油室38aに連通する。
【0025】
次に、スプール38に形成された油路を説明する。尚、図8はスプール38の外周面およびバルブハウジング31の内周面を展開した展開図であって、実線はスプール38側の油路を示し、鎖線はバルブハウジング31側の油路を示している。
【0026】
スプール38の内部にはオイルポンプから作動油が供給されるフィード油室38aが形成されており、このフィード油室38aからスプール38の外周面に向かって6個のポートが径方向外側に貫通する。第1、第2ポートP1,P2は1段目に形成され、第3、第4ポートP3,P4は2段目に形成され、第5、第6ポートP5,P6は3段目に形成される。
【0027】
スプール38の外周面には、円周方向に延びる第1ドレン溝D1と、第1ドレン溝D1からスプール38の軸線L方向および円周方向にL字状に屈曲して延びる第2ドレン溝D2および第3ドレン溝D3と、スプール38の軸線方向に延びる第4ドレン溝D4とが形成される。第1ドレン溝D1は1段目の高さに形成され、第2ドレン溝D2、第3ドレン溝D3および第4ドレン溝D4は1段目および2段目を接続するように形成される。
【0028】
次に、バルブハウジング31の内周面に形成された油路を説明する。
【0029】
バルブハウジング31の内周面の1段目の高さには円周方向に延びる第1グルーブG1、第2グルーブG2および第3グルーブG3が形成され、2段目の高さには孔状の第4グルーブG4および第5グルーブG5が形成され、3段目の高さには円周方向に離間して相互に連通する第6グルーブG6、第7グルーブG7および第8グルーブG8と、円周方向に延びる第9グルーブG9とが形成される。
【0030】
1段目の第1グルーブG1、第2グルーブG2および第3グルーブG3は、スプール38のフィード油室38aおよびバルブハウジング31のドレン油路31cを、吸気側VTEC11のHI側油路31aおよびLO側油路31bに選択的に連通させる。2段目の第4グルーブG4および第5グルーブG5は、スプール38のフィード油室38aおよびバルブハウジング31のドレン油路31cを、排気側VTEC12のHI側油路31dおよびVTC油路31eに選択的に連通させる。3段目の第6グルーブG6、第7グルーブG7、第8グルーブG8および第9グルーブG9は、スプール38のフィード油室38aをOJ油路31fおよびHLA油路31gに選択的に連通させる。
【0031】
図9〜図13に示すように、スプール38はステップモータ41によって回転駆動され、図6〜図8に示す位置を0°としたとき、0°、30°、40°、70°、100°および110°の6つの回転位置で停止可能であり、各々の位置で吸気側VTEC11、排気側VTEC12、VTC13、OJ14およびHLA15に対する油圧の供給を切り換える。尚、図13において、密な斜線を施した部分はフィード油室38aに連通する高圧部分を示し、疎な斜線を施した部分はドレン油路31cに連通する低圧部分を示している。
[スプール38の回転角が0°のとき]
図10に示す1段目において、スプール38の第1ポートP1が閉塞されて第2ポートP2が第1グルーブG1を介してLO側油路31bに連通する。そしてHI側油路31aが第3グルーブG3、第1ドレン溝D1および第2グルーブG2を介してドレン油路31cに連通する。その結果、フィード油室38aからLO側油路31bに油圧が供給され、かつHI側油路31aからドレン油路31cに油圧が逃がされることで、吸気側VTEC11がLO状態(低バルブリフト状態)に切り換わる。
【0032】
また図11に示す2段目において、スプール38の第3ポートP3および第4ポートP4の両方が閉塞される。そして排気側VTEC12のHI側油路31dが第4グルーブG4および第2ドレン溝D2および第1ドレン溝D1(1段目)を介してドレン油路31cに接続され、排気側VTEC12はLO状態(低バルブリフト状態)に切り換わる。またVTC油路31eが第5グルーブG5、第3ドレン溝D3および第1ドレン溝D1(1段目)を介してドレン油路31cに接続され、VTC13は低バルブリフト状態に切り換わる。
【0033】
また図12に示す3段目において、スプール38の第5ポートP5が第8グルーブG8を介してHLA油路31gに連通し、第6ポートP6は閉塞される。その結果、HLA油路31gに油圧が供給されてHLA15が作動し、OJ14は停止する。
[スプール38の回転角が30°のとき]
図10に示す1段目において、スプール38の第1ポートP1が第3グルーブG3を介してHI側油路31aに連通し、第2ポートP2が閉塞される。そしてLO側油路31bが第1グルーブG1、第1ドレン溝D1および第2グルーブG2を介してドレン油路31cに連通する。その結果、フィード油室38aからHI側油路31aに油圧が供給され、かつLO側油路31bからドレン油路31cに油圧が逃がされることで、吸気側VTEC11がHI状態(高バルブリフト状態)に切り換わる。
【0034】
また図11に示す2段目において、スプール38の第3ポートP3および第4ポートP4の両方が閉塞されるため、上述したスプール38の回転角が0°のときと同様に、排気側VTEC12はLO状態(低バルブリフト状態)に切り換わり、VTC13は低バルブリフト状態に維持される。
【0035】
また図12に示す3段目において、スプール38の第5ポートP5は閉塞され、第6ポートP6が第9グルーブG9を介してOJ油路31fに連通する。その結果、OJ油路31fに油圧が供給されてOJ14が作動し、HLA15は停止する。
[スプール38の回転角が40°のとき]
図10に示す1段目において、スプール38の第1ポートP1が第3グルーブG3を介してHI側油路31aに連通し、第2ポートP2が閉塞されるため、上述したスプール38の回転角が30°のときと同様に、吸気側VTEC11がHI状態(高バルブリフト状態)に維持される。
【0036】
また図11に示す2段目において、スプール38の第3ポートP3および第4ポートP4の両方が閉塞されるため、上述したスプール38の回転角が30°のときと同様に、排気側VTEC12はLO状態(低バルブリフト状態)に維持され、VTC13は低バルブリフト状態に維持される。
【0037】
また図12に示す3段目において、スプール38の第5ポートP5が第7グルーブG7を介してHLA油路31gに連通するとともに、第6ポートP6が第9グルーブG9を介してOJ油路31fに連通する。その結果、OJ油路31fに油圧が供給されてOJ14が作動し、HI側油路31aに油圧が供給されてHLA15が作動する。
[スプール38の回転角が70°のとき]
図10に示す1段目において、スプール38の第1ポートP1および第2ポートP2の両方が第3グルーブG3を介してHI側油路31aに連通する。その結果、フィード油室38aからHI側油路31aに油圧が供給され、かつLO側油路31bから第1グルーブG1、第1ドレン溝D1および第2グルーブG2を介してドレン油路31cに油圧が逃がされることで、吸気側VTEC11がHI状態(高バルブリフト状態)に切り換わる。
【0038】
また図11に示す2段目において、スプール38の第3ポートP3が閉塞されて第4ポートP4が第5グルーブG5を介してVTC油路31eに連通するため、VTC13が作動する。そしてHI側油路31dは第4グルーブG4、第2ドレン溝D2および第1ドレン溝D1(1段目)を介してドレン油路31cに連通するため、排気側VTEC12はLO状態(低バルブリフト状態)に維持される。
【0039】
また図12に示す3段目において、スプール38の第5ポートP5が第7グルーブG7を介してHLA油路31gに連通するとともに、第6ポートP6が第9グルーブG9を介してOJ油路31fに連通する。その結果、上述したスプール38の回転角が40°のときと同様に、OJ14およびHLA15が作動する。
[スプール38の回転角が100°のとき]
図10に示す1段目において、スプール38の第1ポートP1および第2ポートP2の両方が第3グルーブG3を介してHI側油路31aに連通するため、上述したスプール38の回転角が70°のときと同様に、吸気側VTEC11がHI状態(高バルブリフト状態)に維持される。
【0040】
また図11に示す2段目において、スプール38の第3ポートP3が第4グルーブG4を介してHI側油路31dに連通し、第4ポートP4が閉塞される。その結果、フィード油室38aから第3ポートP3および第4グルーブG4を介してHI側油路31dに油圧が供給され、排気側VTEC12がHI状態(高バルブリフト状態)に切り換わる。またVTC油路31eが第5グルーブG5、第4ドレン溝D4および第2グルーブG2(1段目)を介してドレン油路31cに連通し、VTC13はLO状態(低バルブリフト状態)に切り換わる。
【0041】
また図12に示す3段目において、スプール38の第5ポートP5が閉塞されて第6ポートP6が第9グルーブG9を介してOJ油路31fに連通する。その結果、HLA15が停止してOJ14が路31f作動する。
[スプール38の回転角が110°のとき]
図10に示す1段目において、スプール38の第1ポートP1および第2ポートP2の両方が第3グルーブG3を介してHI側油路31aに連通するため、上述した上述したスプール38の回転角が100°のときと同様に、吸気側VTEC11がHI状態(高バルブリフト状態)に維持される。
【0042】
また図11に示す2段目において、スプール38の第3ポートP3が第4グルーブG4を介してHI側油路31dに連通し、第4ポートP4が閉塞される。その結果、上述したスプール38の回転角が100°のときと同様に、排気側VTEC12がHI状態(高バルブリフト状態)に維持されるとともに、VTC13がLO状態(低バルブリフト状態)に維持される。
【0043】
また図12に示す3段目において、第5ポートP5が第6グルーブG6を介してHLA油路31gに連通するとともに、第6ポートP6が第9グルーブG9を介してOJ油路31fに連通する。その結果、HLA15およびOJ14が共に作動する。
【0044】
図14の表は上記作用を纏めたもので、○印はその要素が油圧の供給を受けて作動することを示し、×印はその要素が油圧の供給を遮断されて停止することを示している。
【0045】
エンジンの始動時にはスプール38の回転角が0°とされ、吸気側VTEC11、排気側VTEC12およびVTC13が全てLO状態となり、エンジンの暖機が未完了であることからOJ14は停止して暖機を促進し、HLA15は作動する。エンジンの始動後のアイドリング時にはスプール38の回転角が30°とされ、吸気側VTEC11がLO状態からHI状態に切り換わるため、その切り換えをスムーズに行うためにHLA15が停止する。その理由は、吸気側VTEC11の複数のロッカアーム16…,20…にピン17…,21…を挿通して結合するときに、HLA15によるロッカアーム16…,20…の拘束を解くことで若干のガタを発生させてピン17…,21…の挿通をスムーズに行えるようにするためである。またエンジンの暖機が完了するためにOJ14が作動を開始し、それ以後のスプール38の回転角でOJ14の作動を継続する。
【0046】
スプール38の回転角が40°になると、吸気側VTEC11のLO状態からHI状態への切り換えが完了するため、HLA15が再び作動する。スプール38の回転角が70°になると、排気側VTEC12のバルブリフトを増加させるべくVTC13が作動する。スプール38の回転角が100°になると、排気側VTEC12がLO状態からHI状態に切り換わるため、これと同時に複数のロッカアーム16…,20…へのピン17…,21…の挿通を容易にすべくHLA15を停止する。スプール38の回転角が110°になると、排気側VTEC12がLO状態からHI状態への切り換えが完了するため、HLA15が再び作動する。
【0047】
以上のように本実施の形態によれば、単一の油圧制御バルブVで吸気側VTEC11、排気側VTEC12、VTC13、OJ14およびHLA15に対する油圧の供給を制御するので、各々に対して専用の油圧制御バルブを設ける場合に比べて、それらの可変動弁機構や機能部品に対する油圧の供給を相互に関連させて適切に行うことが可能になるだけでなく、部品点数を削減してコストダウンに寄与することができる。しかもバルブハウジング31およびスプール38には、複数の油路が軸線L方向に3段に並設されるので、多くの油路をコンパクトに配置して油圧制御バルブVの小型化を図ることができる。
【0048】
特に、油圧制御バルブVのスプール38に、その内部に形成されたフィード液室38aから径方向外側に貫通する複数のポートP1〜P6と、スプール38の外周面に形成されて前記ポートP1〜P6に連通する複数のドレン溝D1〜D4とを形成したので、加工が面倒なドレン溝D1〜D4を極力減少させて加工が容易なポートP1〜P6で補うことで、スプール38の加工コストを削減することができる。
【0049】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明はその要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更を行うことが可能である。
【0050】
例えば、本発明の可変動弁機構は実施の形態の吸気側VTEC11、排気側VTEC12およびVTC13に限定されるものではなく、本発明の機能部品は実施の形態のOJ14およびHLA15に限定されるものではない。
【0051】
また実施の形態の油圧制御バルブVは3段に分割した油路を備えているが、その段数は複数段であれば3段に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0052】
11 吸気側VTEC(可変動弁機構)
12 排気側VTEC(可変動弁機構)
13 可変バルブタイミング機構(可変動弁機構)
14 オイルジェット(機能部品)
15 油圧ラッシュアジャスタ(機能部品)
16 ロッカアーム
17 ピン(切換手段)
20 ロッカアーム
21 ピン(切換手段)
31 バルブハウジング
38 スプール
38a フィード液室
41 ステップモータ(駆動部)
D1〜D4 ドレン油路(スプール側油路、周面油路)
G1〜G9 グルーブ(ハウジング側油路)
L 軸線
P1〜P6 ポート(スプール側油路、径方向油路)
V 油圧制御バルブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの運転状態に応じて少なくともバルブタイミングを変更する可変動弁機構(11,12,13)に供給する油圧と、前記エンジンの運転状態および前記可変動弁機構(11,12,13)の作動状態に応じて作動状態を変更する機能部品(14,15)に供給する油圧とを制御する油圧制御バルブ(V)であって、
前記油圧制御バルブ(V)は、油圧源、前記可変動弁機構(11,12,13)および前記機能部品(14,15)にそれぞれ連通する複数のハウジング側油路(G1〜G9)が形成されたバルブハウジング(31)と、前記バルブハウジング(31)の内部に収納されて前記ハウジング側油路(G1〜G9)に連通する複数のスプール側油路(P1〜P6,G1〜G4)が形成されたスプール(38)と、前記スプール(38)を軸線(L)まわりに回転させる駆動部(41)とを備え、前記ハウジング側油路(G1〜G9)は前記軸線(L)方向に複数段に並設されることを特徴とする油圧制御バルブ。
【請求項2】
前記スプール側油路(P1〜P6,G1〜G4)は、前記スプール(38)の内部に形成されたフィード液室(38a)から径方向外側に貫通する径方向油路(P1〜P6)と、前記スプール(38)の外周面に形成されて前記径方向油路(P1〜P6)に連通する周面油路(G1〜G4)とを含むことを特徴とする、請求項1に記載の油圧制御バルブ。
【請求項3】
前記可変動弁機構(14,15)は、動弁カムから機関弁への駆動力伝達経路上に設けられた複数のロッカアーム(16,20)の連結状態を切り換える切換手段(17,21)を備え、前記機能部品(14,15)は前記ロッカアーム(16,20)を支持する油圧ラッシュアジャスタ(15)であり、前記油圧制御バルブ(V)は前記切換手段(17,21)の作動時に前記油圧ラッシュアジャスタ(15)への油圧の供給を停止することを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の油圧制御バルブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−219744(P2012−219744A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−87634(P2011−87634)
【出願日】平成23年4月11日(2011.4.11)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】