説明

液晶表示装置

【課題】低抵抗率で且つ下地との密着性が高い信号線を有する液晶表示装置を提供する。
【解決手段】信号線は、下地の上に銅合金膜を形成する。下地と銅合金膜の界面に、銅合金の添加金属元素の酸化物膜、珪化物膜、又は、窒化物膜を形成する。こうして、銅合金膜と、酸化物膜、珪化物膜、又は、窒化物膜の積層膜によって、信号線が形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は薄膜トランジスタによって駆動するアクティブマトリクス型液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、薄膜トランジスタ駆動のアクティブマトリクス型液晶表示装置では、動画質向上のために駆動周波数が高速化している。そのため、信号線の低抵抗化が必須となっている。更に、アクティブマトリクス型液晶表示装置は、大画面のテレビジョン受像機に用いられている。そのため、低価格化が求められ、生産コストの抑制が強く求められている。
【0003】
信号線を低抵抗化するためには、アルミニウム、銅などの抵抗率が低い金属材料を主配線材料とすればよい。しかしながら、アルミニウム及び銅は、単独では配線材料として用いることはできない。例えば、アルミニウムは、異層の透明導電膜(一般的には、インジウムを主成分とする酸化物)と直接的に電気的に接触することができないため、アルミニウムと透明導電膜との界面にモリブデンやチタンの接続層を積層する必要がある。また、アルミニウムは、薄膜トランジスタを形成するシリコン中に不必要に拡散するため、アルミニウムとシリコンとの界面にもやはりモリブデンやチタンのバリア層を積層する必要がある。一方の銅も、シリコン中に不必要に拡散するため、銅とシリコンとの界面にバリア層を積層する必要がある。また、銅は、下地との付着力が弱いため、銅と下地の界面には接着層を積層する必要がある。
【0004】
このように、薄膜トランジスタ駆動の液晶表示装置の信号線の材料としてアルミニウムや銅を用いる場合には、不可避的に、モリブデンやチタンのバリア層や接着層を積層する必要がある。
【0005】
しかしながら、モリブデンやチタンは、信号線の低抵抗化に殆ど寄与しないばかりでなく、アルミニウムや銅と比較して高価である。すなわち低価格化に寄与しないという欠点がある。また、バリア層や接着層を積層する工程が必要となるため、成膜処理時間が長くなり、高価なスパッタリング装置を付加的に設ける必要がある。そのため、量産工場において、設備投資額が高くなる欠点もある。
【0006】
非特許文献1には、単層の信号線として用いることのできるアルミニウム合金の例が記載されている。これを液晶パネルの薄膜トランジスタと画素電極の接続配線に用いれば、生産性が高くなる。しかしながら、このアルミニウム合金の抵抗率は3.7μΩcmが限界であり、これ以上の抵抗率の低減は困難である。また、アルミニウム合金を単独で用いると、ストレスマイグレーションのような信号線の長期信頼性に関わる問題を担保できなくなる。
【0007】
特許文献1には、液晶表示装置の信号線に単層で用いることができる銅合金の例が記載されている。この銅合金の添加金属元素の酸化物形成自由エネルギー又は酸化物形成エンタルピーの絶対値は、銅よりも大きく、かつ、銅中における添加金属元素の拡散係数は、銅の自己拡散係数より大きい。この合金膜を400℃で熱処理することにより、下地であるシリコン酸化物との界面に添加金属元素の酸化物が形成される。それによって、下地との密着性が改善され、熱処理前に高かった抵抗率を低減することができる。
【0008】
【非特許文献1】資源と素材 Vol. 120(2004).p.310
【特許文献1】WO2006/025347A1
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1の例では、400℃で熱処理を行っている。しかしながら、非晶質シリコンを用いる薄膜トランジスタ液晶表示装置の製造プロセス温度は約300℃又はそれよい低い。従って、300℃の熱処理でも抵抗率が充分に低下する必要がある。具体的な抵抗率の目標値は、上述の非特許文献1に記載されている単層で用いることのできるアルミニウム合金の抵抗率である3.7μΩcmを下回ることである。本発明者達は、300℃で熱処理を行う実験を行った。その結果、シリコン酸化物上に形成した銅合金の抵抗率は、その熱処理前と比較して充分に低減しなかった。抵抗率を低減するだけであれば、添加金属元素含有量を低減すればよいが、下地との密着性が低下する。
【0010】
本発明の目的は、薄膜トランジスタ液晶表示装置において、300℃の熱処理でも十分に抵抗率が低下し、且つ、下地との密着性が高い配線構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によると、薄膜トランジスタによって駆動するアクティブマトリクス型液晶表示装置において、走査信号線と透明共通電極の少なくとも一方は、インジウム酸化物又は亜鉛酸化物を主成分とする透明導電膜の上に設けられた銅合金膜と、この2つの膜の界面に形成された銅合金膜の添加金属元素の酸化物膜と、の積層膜から構成される。
【0012】
ここに、(1)銅中における銅合金膜の添加金属元素の拡散係数は、銅の自己拡散係数よりも大きく、且つ、(2)銅合金膜の添加金属元素の酸化反応の平衡酸素ポテンシャルは、インジウム又は亜鉛の酸化反応の平衡酸素ポテンシャルよりも低い。更に、(3)銅中における銅合金膜の添加金属元素の固溶限は0.1%よりも大きい。
【0013】
本発明によると、ドレイン電極及びソース電極は、n型アモルファスシリコンからなるコンタクト層の上に設けられた銅合金膜と、コンタクト層と銅合金膜の界面に形成された銅合金膜の添加金属元素の珪化物膜と、の積層膜から構成される。
【0014】
ここに、(1)銅中における銅合金膜の添加金属元素の拡散係数は、銅の自己拡散係数よりも大きく、且つ、(2)銅合金膜の添加金属元素の珪化反応の平衡珪素ポテンシャルは、銅の珪化反応の平衡珪素ポテンシャルよりも低い。更に、(3)銅中における銅合金膜23a、25aの添加金属元素の固溶限は0.1%よりも大きい。
【0015】
本発明によると、映像信号線は、窒化シリコンからなるゲート絶縁膜の上に設けられた銅合金膜と、ゲート絶縁膜と銅合金膜の界面に形成された銅合金膜の添加金属元素の窒化物膜と、の積層膜から構成される。
【0016】
ここで、(1)銅中における銅合金膜の添加金属元素の拡散係数は、銅の自己拡散係数よりも大きく、且つ、(2)銅合金膜の添加金属元素の窒化反応の平衡窒素ポテンシャルは、珪素の窒化反応の平衡窒素ポテンシャルよりも低く、且つ、珪化物の生成自由エネルギーは負である。更に、(3)銅中における銅合金膜の添加金属元素の固溶限は0.1%よりも大きい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によると、薄膜トランジスタ液晶表示装置において、300℃の熱処理でも十分に抵抗率が低下し、且つ、下地との密着性が高い配線構造を提供することにある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下に、本発明による薄膜トランジスタによって駆動するアクティブマトリクス型液晶表示装置の例について説明する。
【0019】
図1に本発明による液晶表示装置の第1の例を示す。図1はアクティブマトリクス型液晶表示装置の薄型トランジスタの部分を拡大して示す。液晶表示装置は、アクティブマトリクス基板とカラーフィルタ基板を有し、その間に液晶36が封入されている。カラーフィルタ用のガラス基板30の内面には、ブラックマトリクス32及びカラーフィルタ33、平坦化膜34、配向膜35が設けられている。ガラス基板30の外面には、偏光膜31が設けられている。
【0020】
アクティブマトリクス用のガラス基板10(以下、単に基板10という。)の内面には、透明共通電極20、共通信号線21、走査信号線22、ゲート絶縁膜13、保護絶縁膜16、画素電極17、及び、配向膜18が設けられている。一方、基板10の外面には、偏光膜11が設けられている。
【0021】
共通信号線21は、走査信号線22に隣接し且つそれと平行に延びている。走査信号線22と映像信号線(図示なし)はマトリクス状に交差している。走査信号線22と映像信号線とに囲まれた画素領域に画素電極17及び透明共通電極20が設けられている。走査信号線22と映像信号線との交点に対応して薄膜トランジスタが形成されている。薄膜トランジスタは、ドレイン電極23、ソース電極25、及び、ゲート電極(走査信号線22が兼ねる。)を有する。画素電極17は、スルーホール19を介して薄膜トランジスタのソース電極25に接続されている。
【0022】
以下の説明では、特に断らない限り、走査信号線22を形成するとき、ゲート電極、及び、走査信号線端子も、同時に形成される。ドレイン電極端子を形成するとき、映像信号線、ソース電極25、透明共通電極20及び共通信号線21も同時に形成される。
【0023】
ドレイン電極23は、コンタクト層15を介して半導体層14上に形成された電極部23−1と、その外側の周辺部23−2からなる。同様に、ソース電極25は、コンタクト層15を介して半導体層14上に形成された電極部25−1と、その外側の周辺部25−2からなる。
【0024】
透明共通電極20はインジウム酸化物又は亜鉛酸化物を主成分として含む透明導電膜12によって形成されている。ゲート絶縁膜13及び保護絶縁膜16は、窒化シリコンSiNによって形成されている。半導体層14は、アモルファスシリコンa−Siによって形成されている。コンタクト層15はn型アモルファスシリコンna−Siによって形成されている。画素電極17はインジウム酸化物又は亜鉛酸化物を主成分として含む透明導電膜によって形成されている。
【0025】
共通信号線21及び走査信号線22は、透明導電膜12上の銅合金膜21a、22aと、透明導電膜12と銅合金膜21a、22aの界面に形成された金属酸化物膜21b、22bとを含む。
【0026】
ドレイン電極部23−1及びソース電極部25−1は、コンタクト層15上の銅合金膜23a、25aと、コンタクト層15と銅合金膜23a、25aの界面に形成された金属珪化物膜23b、25bとを含む。
【0027】
ドレイン電極周辺部23−2及びソース電極周辺部25−2は、ゲート絶縁膜13上の銅合金膜23a、25aと、ゲート絶縁膜13と銅合金膜23a、25aの界面に形成された金属窒化物膜23b、25bとを含む。
【0028】
本発明の1つの例では、透明導電膜12はインジウム酸化物によって形成される。共通信号線21及び走査信号線22は、インジウム酸化物を含む透明導電膜12の上に銅合金膜21a、22aを形成することによって、作製される。本例によると、(1)銅中における銅合金膜21a、22aの添加金属元素の拡散係数は、銅の自己拡散係数よりも大きく、且つ、(2)銅合金膜21a、22aの添加金属元素の酸化反応の平衡酸素ポテンシャルは、インジウムの酸化反応の平衡酸素ポテンシャルよりも低い。更に、(3)銅中における銅合金膜21a、22aの添加金属元素の固溶限は0.1%よりも大きい。尚、酸化反応の平衡酸素ポテンシャルは次式のPOで定義される。
【0029】
O=2ΔGO/nO 式1
【0030】
ここで、ΔGOは酸化物の生成自由エネルギー、nOは該酸化物の酸素原子モル数である。
【0031】
銅合金膜21a、22a中の添加金属元素は、拡散によって、銅合金膜21a、22aと透明導電膜12の界面に移動し、そこで、透明導電膜12(インジウム酸化物)に含まれる酸素と化合し、金属酸化物膜21b、22bを生成する。
【0032】
透明導電膜12及び透明共通電極20は、インジウム酸化物を主成分として含むものであればよく、インジウム錫酸化物、インジウム亜鉛酸化物、又は、インジウム錫亜鉛酸化物を用いてよい。銅合金の添加金属元素として、アルミニウム、ベリリウム、クロム、ガリウム、マグネシウム、マンガン、チタン、バナジウム、亜鉛からなる第1群の元素から、1種類以上の元素を選択して用いてよい。最も好適なのは、マンガン、又は、マグネシウムである。銅合金の添加金属元素がマグネシウムMgの場合、金属酸化物膜21b、22bを生成する反応は次の反応式によって表される。
【0033】
In+3Mg→2In+3MgO 式2
【0034】
こうして、本例では、インジウム酸化物(透明導電膜12)と銅合金膜21a、22aの界面に、銅合金の添加金属元素の酸化物膜21b、22bが形成される。従って、共通信号線21及び走査信号線22は、インジウム酸化物を主成分とする透明導電膜12の上に形成された銅合金膜21a、22aと、2つの膜の界面に形成された金属酸化物膜21b、22bと、の積層膜から構成される。
【0035】
本例では、下地の透明導電膜12に強固に接続され、且つ、低抵抗率の信号線が得られる。また、金属酸化物膜21b、22bが導電性を有する場合には、共通信号線21及び走査信号線22と下地の透明導電膜12の間の導通を得ることができる。
【0036】
本発明の1つの例では、透明導電膜12は亜鉛酸化物によって形成される。共通信号線21及び走査信号線22は、亜鉛酸化物を含む透明導電膜12の上に銅合金膜21a、22aを形成することによって、作製される。
【0037】
本例によると、(1)銅中における銅合金膜21a、22aの添加金属元素の拡散係数は、銅の自己拡散係数よりも大きく、且つ、(2)銅合金膜21a、22aの添加金属元素の酸化反応の平衡酸素ポテンシャルは、亜鉛の酸化反応の平衡酸素ポテンシャルよりも低い。更に、(3)銅中における銅合金膜21a、22aの添加金属元素の固溶限は0.1%よりも大きい。尚、酸化反応の平衡酸素ポテンシャルは式1のPで定義される。
【0038】
銅合金膜21a、22a中の添加金属元素は、拡散によって、銅合金膜21a、22aと透明導電膜12の界面に移動し、そこで、透明導電膜12(亜鉛酸化物)に含まれる酸素と化合し、金属酸化物膜21b、22bを生成する。
【0039】
透明導電膜12及び透明共通電極20は、亜鉛酸化物を主成分として含むものであればよく、亜鉛アルミニウム酸化物、又は、亜鉛ガリウム酸化物を用いてよい。銅合金の添加金属元素として、アルミニウム、ベリリウム、クロム、ガリウム、マグネシウム、マンガン、チタン、バナジウムからなる第2群の元素から、1種類以上の元素を選択して用いてよい。最も好適なのは、マンガン又はマグネシウムである。銅合金の添加金属元素がマンガンMnの場合、金属酸化物膜21b、22bを生成する反応は次の反応式によって表される。
【0040】
ZnO+Mn→Zn+MnO 式3
【0041】
こうして、本例では、亜鉛酸化物(透明導電膜12)と銅合金膜21a、22aの界面に、銅合金の添加金属元素の酸化物膜21b、22bが形成される。従って、共通信号線21及び走査信号線22は、亜鉛酸化物を主成分とする透明導電膜12の上に形成された銅合金膜21a、22aと、2つの膜の界面に形成された金属酸化物膜21b、22bと、の積層膜から構成される。
【0042】
本例では、下地の透明導電膜12に強固に接続され、且つ、低抵抗率の信号線が得られる。また、金属酸化物膜21b、22bが導電性を有する場合には、共通信号線21及び走査信号線22と下地の透明導電膜12の間の導通を得ることができる。
【0043】
上述の2つの例において、300℃の熱処理によって信号線の抵抗率を3.7μΩcm以下に低減するためには、銅合金の添加金属元素の含有量を2原子%以下とするのがよい。また、下地に対する信号線の良好な密着性を得るためには、添加金属元素の含有量を0.5原子%以上、3原子%以下とするのがよい。結局、信号線の抵抗率の低減と良好な下地密着性の両者を確保するには、銅合金の添加金属元素の含有量を0.5原子%以上、2原子%以下とするのが好適である。金属酸化物膜21b、22bの膜厚は0.5nmから3nmの範囲にあるのがよい。
【0044】
本発明の1つの例では、ドレイン電極部23−1及びソース電極部25−1は、n型アモルファスシリコンからなるコンタクト層15上に銅合金膜23a、25aを形成することによって、作製される。
【0045】
本例によると、(1)銅中における銅合金膜23a、25aの添加金属元素の拡散係数は、銅の自己拡散係数よりも大きく、且つ、(2)銅合金膜23a、25aの添加金属元素の珪化反応の平衡珪素ポテンシャルは、銅の珪化反応の平衡珪素ポテンシャルよりも低い。更に、(3)銅中における銅合金膜23a、25aの添加金属元素の固溶限は0.1%よりも大きい。
【0046】
薄型トランジスタの電極部において、銅合金膜23a、25a中の添加金属元素は、拡散によって、銅合金膜23a、25aとコンタクト層15の界面に移動し、そこで、コンタクト層15(n型アモルファスシリコン)に含まれる珪素と化合し、金属珪化物膜23b、25bを生成する。
【0047】
銅合金の添加金属元素として、クロム、マグネシウム、マンガン、チタン、バナジウムからなる第3群の元素から、1種類以上の元素を選択して用いてよい。最も好適なのは、マンガン又はマグネシウムである。銅合金の添加金属元素がマンガンMnの場合、金属珪化物膜23b、25bを生成する反応は次の反応式によって表される。
【0048】
Si+Mn→MnSi 式4
【0049】
こうして、本例では、n型アモルファスシリコン(コンタクト層15)と銅合金膜23a、25aの界面に、銅合金の添加金属元素の珪化物膜23b、25bが形成される。従って、ドレイン電極部23−1及びソース電極部25−1は、n型アモルファスシリコンからなるコンタクト層15の上に形成された銅合金膜23a、25aと、コンタクト層15と銅合金膜23a、25aの界面に形成された金属珪化物膜23b、25bと、の積層膜から構成される。
【0050】
本例では、下地のn型アモルファスシリコンに強固に接続され、且つ、低抵抗率の信号線が得られる。また、銅合金膜23a、25a中の銅がn型アモルファスシリコン中へ拡散するのを抑制することができる。
【0051】
本発明の1つの例ではドレイン電極周辺部23−2及びソース電極周辺部25−2は、窒化シリコンからなるゲート絶縁膜13上に銅合金膜23a、25aを形成することによって、作製される。本例によると、(1)銅中における銅合金膜23a、25aの添加金属元素の拡散係数は、銅の自己拡散係数よりも大きく、且つ、(2)銅合金膜23a、25aの添加金属元素の窒化反応の平衡窒素ポテンシャルは、珪素の窒化反応の平衡窒素ポテンシャルよりも低く、且つ、珪化物の生成自由エネルギーは負である。更に、(3)銅中における銅合金膜23a、25aの添加金属元素の固溶限は0.1%よりも大きい。尚、窒化反応の平衡窒素ポテンシャルは次式のPで定義される。
【0052】
=2ΔG/n 式5
【0053】
ここで、ΔGは窒化物の生成自由エネルギー、nは該窒化物の窒素原子モル数である。薄型トランジスタの周辺部において、銅合金膜23a、25a中の添加金属元素は、拡散によって、銅合金膜23a、25aとゲート絶縁膜13の界面に移動し、そこで、ゲート絶縁膜13(窒化シリコン)に含まれる窒素と化合し、金属窒化物膜23b、25bを生成する。
【0054】
銅合金の添加金属元素として、アルミニウム、ベリリウム、マグネシウム、チタン、バナジウムからなる第4群の元素から、1種類以上の元素を選択して用いてよい。最も好適なのは、アルミニウム又はマグネシウムである。銅合金の添加金属元素がマグネシウムMgの場合、金属窒化物膜23b、25bを生成する反応は次の反応式によって表される。
【0055】
Si+6Mg→3Si+2Mg 式6
【0056】
こうして、本例では、窒化シリコン(ゲート絶縁膜13)と銅合金膜23a、25aの界面に、銅合金の添加金属元素の窒化物膜23b、25bが形成される。従って、ドレイン電極周辺部23−2及びソース電極周辺部25−2は、窒化シリコンからなるゲート絶縁膜13の上に形成された銅合金膜23a、25aと、ゲート絶縁膜13と銅合金膜23a、25aの界面に形成された金属窒化物膜23b、25bと、の積層膜から構成される。
【0057】
本例では、下地の窒化シリコンに強固に接続され、且つ、低抵抗率の信号線が得られる。また、銅合金膜23a、25a中の銅が窒化シリコン中へ拡散するのを抑制することができる。
【0058】
下地がアモルファスシリコンの場合には、銅合金膜の添加金属元素として、第3群の元素、即ち、クロム、マグネシウム、マンガン、チタン、バナジウムから選択される。一方、下地が窒化シリコンの場合には、銅合金膜の添加金属元素として第4群の元素、即ち、アルミニウム、ベリリウム、マグネシウム、チタン、バナジウムから選択される。しかしながら、液晶表示装置の映像信号線の下地には、アモルファスシリコンと窒化シリコンの両方が存在することが多い。そのような場合には、銅合金膜の添加金属元素として、第3群と第4群の共通の元素を選択すればよい。第3群と第4群の共通の元素を第5群と称することとする。下地としてアモルファスシリコンと窒化シリコンの両方が存在する場合には、銅合金膜の添加金属元素として第5群の元素、即ち、マグネシウム、チタン、バナジウムから選択される。
【0059】
また、液晶表示装置の映像信号線と走査信号線の材料や加工プロセスを共通化することは、量産における生産性を高めるのに効果的である。この点を考慮すると、映像信号線と走査信号線を形成するための銅合金膜の添加金属元素としては、第1群又は第2群の元素と、第5群の元素の共通の元素を選択すればよい。このような条件を満たす元素は、第5群の元素であるマグネシウム、チタン、バナジウムである。
【0060】
図2から図6を参照して図1に示した本発明による液晶表示装置のアクティブマトリクス基板の第1の例の製造方法を説明する。本例の製造方法は、5つのフォトリソグラフィ工程を含む。図2(a)から図6(a)は、各フォトリソグラフィ工程が終了し、フォトレジストが剥離された段階の薄膜トランジスタと画素の領域を示し、図2(b)から図6(b)は製造工程の流れを示す。ここで、フォトリソグラフィとは、基板上に金属薄膜を形成し、その上にフォトレジストを塗布し、マスクを介して光を照射し、それによって、レジストを選択的に露光し、それを現像することによって、レジストパターンを形成し、エッチングによってレジストパターン以外の領域の金属を除去し、最後に残余のレジストを剥離することである。以下に説明する第1から第5のフォトリソグラフィ工程は、基本的には、このような処理を含む。
【0061】
図2を参照して第1フォトリソグラフィ工程を説明する。第1フォトリソグラフィ工程によって、透明導電膜12及び第1の銅合金膜21a、22aを形成する。ステップS101にて、無アルカリガラスからなる基板10の上に、スパッタリングによって、インジウム酸化物又は亜鉛酸化物からなる透明導電膜12を形成する。インジウム酸化物として、インジウム錫酸化物、インジウム亜鉛酸化物、又は、インジウム錫亜鉛酸化物が用いられ、亜鉛酸化物として、亜鉛アルミニウム酸化物、又は、亜鉛ガリウム酸化物が用いられる。透明導電膜12の膜厚は10nm〜150nmであるが、約50nmが好適である。続いて、スパッタリングによって、第1の銅合金膜21a、22aを形成する。
【0062】
銅合金は添加金属元素として、マンガンを含む。マンガンの代わりに、第1群の元素、即ち、アルミニウム、ベリリウム、クロム、ガリウム、マンガン、チタン、バナジウム、亜鉛から選択される元素を用いてもよい。尚、透明導電膜12が亜鉛酸化物からなる場合には、第2群の元素、即ち、アルミニウム、ベリリウム、クロム、ガリウム、マンガン、チタン、バナジウムから選択される元素を用いてもよい。銅合金膜21a、22aの厚さは100nm〜500nmであるが、ここでは400nmとする。
【0063】
ステップS102にて、ハーフ露光マスクを用いてレジストパターンを形成する。走査信号線22及び共通信号線21を形成する領域には露光を行わず、厚いレジストを形成する。透明共通電極20を形成する領域には、ハーフ露光を行い、薄いレジストを形成する。走査信号線22、共通信号線21、及び、透明共通電極20を形成する領域以外の領域では通常の露光を行い、現像によりレジストを除去する。
【0064】
ステップS103にて、エッチングによって、レジストが除去された領域、即ち、走査信号線22、共通信号線21、及び、透明共通電極20を形成する領域以外の領域の銅合金膜を除去する。ステップS104にて、エッチングによって、レジストが除去された領域、即ち、走査信号線22、共通信号線21、及び、透明共通電極20を形成する領域以外の領域の透明導電膜を除去する。
【0065】
ステップS105にて、アッシングによって、ハーフ露光部のレジストを剥離する。即ち、透明共通電極20を形成する領域のレジストを剥離する。ステップS106にて、エッチングによって、ハーフ露光部の銅合金膜を除去する。即ち、透明共通電極20を形成する領域の銅合金膜を除去する。ステップS107にて、レジストを剥離する。即ち、走査信号線22及び共通信号線21を形成する領域のレジストを剥離する。
【0066】
こうして、ステップS101からステップS107までの工程により、図2(a)に示すように、基板10上の走査信号線22及び共通信号線21を形成する領域に、透明導電膜12と第1の銅合金膜21a、22aが形成される。また、基板10上の透明共通電極20が形成される領域に透明導電膜12が形成される。
【0067】
図3を参照して第2フォトリソグラフィ工程を説明する。第2フォトリソグラフィ工程によって、ゲート絶縁膜13、半導体層14及びコンタクト層15を形成し、同時に、銅合金の添加金属元素の酸化物膜21b、22bを形成する。ステップS201にて、プラズマ化学蒸着法によって、ゲート絶縁膜13の原料である窒化シリコン膜、半導体層14の原料であるアモルファスシリコン膜、及び、コンタクト層15の原料であるn型アモルファスシリコン膜を、この順で連続的に形成する。ステップS201の成膜温度は約300℃である。この工程にて、第1フォトリソグラフィ工程で形成した透明導電膜12と第1の銅合金膜21a、22aの間の界面に銅合金膜の添加金属元素の酸化物膜21b、22bが形成される。本例では、酸化物膜21b、22bは酸化マンガン膜である。
【0068】
ステップS202にて、バイナリ露光マスクを用いてレジストパターンを形成する。バイナリ露光とは、ハーフ露光を用いない通常の露光及び現像を行うことを言う。即ち、半導体層14及びコンタクト層15を形成する領域に、レジストを形成し、それ以外の領域のレジストを除去する。ステップS203にて、エッチングによって、レジストが除去された領域、即ち、半導体層14及びコンタクト層15を形成する領域以外の領域のn型アモルファスシリコン膜及びアモルファスシリコン膜の積層膜を除去する。ステップS204にて、半導体層14及びコンタクト層15を形成する領域のレジストを剥離する。こうして、図3(a)に示すように、ゲート絶縁膜13上に、半導体層14及びコンタクト層15からなる島状パターンが形成される。
【0069】
図4を参照して第3フォトリソグラフィ工程を説明する。第3フォトリソグラフィ工程によって、第2の銅合金膜23a、25aを形成する。ステップS301にて、スパッタリングによって、マグネシウムを添加金属元素とする銅合金膜と純銅膜を、この順序で連続的に形成する。銅合金の添加金属元素として、マグネシウムの代わりに、第5群の元素、即ち、チタン、バナジウムを選択してもよい。
【0070】
ステップS302にて、バイナリ露光マスクを用いてレジストパターンを形成する。即ち、ドレイン電極23及びソース電極25を形成する領域に、レジストを形成し、それ以外の領域のレジストを除去する。ステップS303にて、エッチングによって、レジストが除去された領域、即ち、ドレイン電極23及びソース電極25を形成する領域以外の領域の銅合金膜と純銅膜の積層膜を除去する。ステップS304にて、チャネル部を形成する領域にて、n型アモルファスシリコン膜を除去する。ステップS305にて、ドレイン電極及びソース電極25を形成する領域のレジストを剥離する。こうして、図4(a)に示すように、ドレイン電極23及びソース電極25を形成する領域に銅合金膜23a、25aと純銅膜(図示なし)の積層膜が形成される。
【0071】
図5を参照して第4フォトリソグラフィ工程を説明する。第4フォトリソグラフィ工程によって、保護絶縁膜16とスルーホール19を形成し、同時に、銅合金の添加金属元素の珪化物膜23b、25b及び窒化物膜21b、22bを形成する。ステップS401にて、プラズマ化学蒸着法によって、保護絶縁膜16の原料である窒化シリコン膜を形成する。この成膜温度は約230℃である。この工程にて、ドレイン電極部23−1及びソース電極部25−1を形成する領域にて、第2フォトリソグラフィ工程(図3)で形成したコンタクト層15と第3フォトリソグラフィ工程(図4)で形成した第2の銅合金膜23a、25aの界面に、銅合金の添加金属元素であるマグネシウムの珪化物膜23b、25bが形成される。更に、ドレイン電極周辺部23−2及びソース電極周辺部25−2を形成する領域にて、第2フォトリソグラフィ工程(図3)で形成したゲート絶縁膜13と第3フォトリソグラフィ工程(図4)で形成した第2の銅合金膜23a、25aの界面に、銅合金の添加金属元素であるマグネシウムの窒化物膜23b、25bが形成される。
【0072】
ステップS402にて、バイナリ露光マスクを用いてレジストパターンを形成する。即ち、スルーホール19を形成する領域以外の領域にレジストを形成し、スルーホール19を形成する領域のレジストを除去する。ステップS403にて、エッチングによって、レジストが除去された領域、即ち、スルーホール19を形成する領域にて、窒化シリコン膜を除去し、開口を形成する。ステップS404にて、スルーホール19を形成する領域以外の領域のレジストを剥離する。こうして、図5(a)に示すように、保護絶縁膜16とスルーホール19用の開口が形成される。
【0073】
図6を参照して第5フォトリソグラフィ工程を説明する。第5フォトリソグラフィ工程によって、画素電極17、走査信号線端子(図示せず)、共通信号線端子(図示せず)、映像信号線端子(図示せず)を形成する。ステップS501にて、スパッタリングによって、画素電極17の原料であるインジウム酸化物又は亜鉛酸化物からなる透明導電膜を形成する。ステップS502にて、バイナリ露光マスクを用いてレジストパターンを形成する。即ち、画素電極、走査信号線端子、共通信号線端子、及び、ドレイン電極端子を形成する領域にレジストを形成し、それ以外の領域のレジストを除去する。ステップS503にて、エッチングによって、レジストが除去された領域、即ち、画素電極17、走査信号線端子、共通信号線端子、映像信号線端子を形成する領域以外の領域の透明導電膜を除去する。ステップS504にて、レジストを剥離する。こうして、図6(a)に示すように、画素電極17、走査信号線端子、共通信号線端子、及び、映像信号線端子が形成される。最後に、図1に示すように、配向膜18を形成することによって、液晶表示装置のアクティブマトリクス基板が製造される。
【0074】
図11(a)に本発明による液晶表示装置の第2の例を示す、ここでは、アクティブマトリクス基板のみを示す。基板10の内面には、透明共通電極20、共通信号線21、走査信号線22、ゲート絶縁膜13、保護絶縁膜16、及び、画素電極17が設けられている。アクティブマトリクス基板の最も内面には配向膜が設けられ、外面には偏光膜が設けられているが、図示は省略する。
【0075】
共通信号線21は、走査信号線22に隣接し且つそれと平行に延びている。走査信号線22と映像信号線(図示なし)はマトリクス状に交差している。走査信号線22と映像信号線とに囲まれた画素領域に画素電極17及び透明共通電極20が設けられている。走査信号線22と映像信号線との交点に対応して薄膜トランジスタが形成されている。薄膜トランジスタは、ドレイン電極23、ソース電極25、及び、ゲート電極(図示なし)を有する。画素電極17は、スルーホール19を介して薄膜トランジスタのソース電極25に接続されている。
【0076】
本例では、半導体層14はドレイン電極23及びソース電極25の下側に、且つ、その全体に延びている。更に、コンタクト層15は、チャネル部24を除いて、ドレイン電極23及びソース電極25の下側に、且つ、その全体に延びている。
【0077】
共通信号線21及び走査信号線22は、第1の例と同様な方法によって作製される。ここでは、ドレイン電極23及びソース電極25について説明する。
【0078】
本例によると、ドレイン電極23及びソース電極25は、n型アモルファスシリコンからなるコンタクト層15の上に銅合金膜23a、25aを形成することによって、作製される。本例によると、(1)銅中における銅合金膜23a、25aの添加金属元素の拡散係数は、銅の自己拡散係数よりも大きく、且つ、(2)銅合金膜23a、25aの添加金属元素の珪化物の生成自由エネルギーは負である。更に、(3)銅中における銅合金膜23a、25aの添加金属元素の固溶限は0.1%よりも大きい。
【0079】
銅合金膜23a、25a中の添加金属元素は、拡散によって、銅合金膜23a、25aとコンタクト層15の界面に移動し、そこで、コンタクト層15(n型アモルファスシリコン)に含まれる珪素と化合し、金属珪化物膜23b、25bを生成する。
【0080】
銅合金の添加金属元素として、第3群の元素、即ち、クロム、マグネシウム、マンガン、チタン、バナジウムから選択される1種類以上の元素が用いられてよい。最も好適なのは、マンガン又はマグネシウムである。銅合金の添加金属元素がマンガンMnの場合、金属珪化物膜23b、25bを生成する反応は次の反応式によって表される。
【0081】
Si+Mn→MnSi 式7
【0082】
こうして、本例では、n型アモルファスシリコン(コンタクト層15)と銅合金膜23a、25aの界面に、銅合金の添加金属元素の珪化物膜23b、25bが形成される。従って、ドレイン電極23及びソース電極25は、n型アモルファスシリコンからなるコンタクト層15の上に形成された銅合金膜23a、25aと、銅合金膜23a、25aとコンタクト層15の界面に形成された金属珪化物膜23b、25bと、の積層膜から構成される。
【0083】
本例では、下地のn型アモルファスシリコンに強固に接続され、且つ、低抵抗率の信号線が得られる。また、銅合金膜23a、25a中の銅がn型アモルファスシリコン中へ拡散するのを抑制することができる。
【0084】
図7から図11を参照して図11に示した本発明による液晶表示装置のアクティブマトリクス基板10の第2の例の製造方法を説明する。本例の製造方法は、4つのフォトリソグラフィ工程を含む。図7(a)から図11(a)は、各フォトリソグラフィ工程が終了し、フォトレジストが剥離された段階の薄膜トランジスタと画素の領域を示し、図7(b)から図11(b)は製造工程の流れを示す。ここで、フォトリソグラフィとは、基板上に金属薄膜を形成し、その上にフォトレジストを塗布し、マスクを介して光を照射し、それによって、レジストを選択的に露光し、それを現像することによって、レジストパターンを形成し、エッチングによってレジストパターン以外の領域の金属を除去し、最後に残余のレジストを剥離することである。以下に説明する第1から第4のフォトリソグラフィ工程は、基本的には、このような処理を含む。
【0085】
図7を参照して第1フォトリソグラフィ工程を説明する。第1フォトリソグラフィ工程によって、透明導電膜12及び第1の銅合金膜21a、22aを形成する。図7の第1フォトリソグラフィ工程は図2の第1フォトリソグラフィ工程と同一であってよい。即ち、図7の第1フォトリソグラフィ工程に含まれるステップS601からステップS607は、図2の第1フォトリソグラフィ工程に含まれるステップS101からステップS107までの処理と同一であってよい。
【0086】
こうして、ステップS601からステップS607までの工程により、図7(a)に示すように、基板10上の走査信号線22及び共通信号線21を形成する領域に、透明導電膜12と第1の銅合金膜21a、22aが形成される。また、基板10上の透明共通電極20が形成される領域に透明導電膜12が形成される。
【0087】
図8を参照して第2フォトリソグラフィ工程を説明する。第2フォトリソグラフィ工程によって、ゲート絶縁膜13、半導体層14、コンタクト層15、及び、第2の銅合金膜23a、25aを形成し、同時に、銅合金の添加金属元素の酸化物膜21b、22bを形成する。
【0088】
ステップS701にて、プラズマ化学蒸着法によって、ゲート絶縁膜13の原料である窒化シリコン膜、半導体層14の原料であるアモルファスシリコン膜、及び、コンタクト層15の原料であるn型アモルファスシリコン膜を、この順で連続的に形成する。この成膜温度は約300℃である。この工程にて、第1フォトリソグラフィ工程で形成した透明導電膜12と第1の銅合金膜21a、22aの界面に銅合金膜の添加金属元素の酸化物膜21b、22bが形成される。本例では、酸化物膜21b、22bは酸化マンガン膜である。
【0089】
次に、スパッタリングによって、マンガンを添加金属元素とする第2の銅合金膜23a、25aと純銅膜を、この順序で連続的に形成する。銅合金の添加金属元素として、マンガンの代わりに、クロム、マグネシウム、チタン、又は、バナジウムを選択してもよい。
【0090】
ステップS702にて、ハーフ露光マスクを用いてレジストパターンを形成する。ドレイン電極23(映像信号線、映像信号線端子を含む)及びソース電極25を形成する領域には露光を行わず、厚いレジストを形成する。ドレイン電極23とソース電極の間のチャネル部24を形成する領域には、ハーフ露光を行い、薄いレジストを形成する。半導体層14、コンタクト層15及びその上のドレイン電極23及びソース電極25が形成される領域以外の領域では通常の露光を行い、現像によりレジストを除去する。
【0091】
ステップS703にて、エッチングによって、レジストが除去された領域の純銅膜及び第2の銅合金膜を除去する。ステップS704にて、エッチングによって、レジストが除去された領域のn型アモルファスシリコン膜とアモルファスシリコン膜を除去する。
【0092】
ステップS705にて、アッシングによって、ハーフ露光部のレジストを剥離する。即ち、チャネル部24を形成する領域のレジストを剥離する。ステップS706にて、エッチングによって、チャネル部24を形成する領域の純銅膜及び銅合金膜を除去する。更に、エッチングによって、チャネル部24を形成する領域のn型アモルファスシリコン膜を除去する。ステップS707にて、レジストを剥離する。即ち、ドレイン電極23(映像信号線、映像信号線端子を含む)及びソース電極25を形成する領域のレジストを剥離する。
【0093】
こうして、図8(a)に示すように、ゲート絶縁膜13上に、半導体層14、コンタクト層15、ドレイン電極23及びソース電極25が形成される。
【0094】
図9は、図8に示した第2フォトリソグラフィ工程の変形例である。即ち、図8に示した第2フォトリソグラフィ工程の代わりに、図9に示す第2フォトリソグラフィ工程を用いてもよい。図9に示す第2フォトリソグラフィ工程を説明する。ステップS801は、ステップS701と同様である。
【0095】
ステップS802にて、ハーフ露光マスクを用いてレジストパターンを形成する。本例では、ドレイン電極23及びソース電極25を形成する領域には露光を行わず厚いレジストを形成し、映像信号線と映像信号線端子を形成する領域にはハーフ露光を行い薄いレジストを形成する。
【0096】
ステップS803にて、エッチングによって、レジストが除去された領域の純銅膜及び第2の銅合金膜を除去する。更に、エッチングによって、レジストが除去された領域、即ち、純銅膜及び第2の銅合金膜を除去した領域のn型アモルファスシリコン膜を除去する。それによって、薄膜トランジスタのチャネル部が形成される。
【0097】
ステップS804にて、ハーフ露光部のレジストをアッシングにより除去する。但し、このステップは省略してもよい。ステップS805にて、レジストをリフローし、薄膜トランジスタのチャネル部24を形成する領域をレジストで埋める。ステップS806にて、エッチングによって、レジストが除去された領域のアモルファスシリコン層を除去する。ステップS807にて、レジストを剥離する。
【0098】
図10を参照して第3フォトリソグラフィ工程を説明する。第3フォトリソグラフィ工程によって、保護絶縁膜16とスルーホール19を形成し、同時に、銅合金の添加金属元素であるマンガンの珪化物膜23b、25bを形成する。
【0099】
ステップS901にて、プラズマ化学蒸着法によって、保護絶縁膜16の原料である窒化シリコン膜を形成する。この成膜温度は約230℃である。この工程にて、ドレイン電極23及びソース電極25を形成する領域にて、第2フォトリソグラフィ工程(図8、図9)で形成したコンタクト層15と第2の銅合金膜膜23a、25aの界面に、銅合金の添加金属元素であるマンガンの珪化物膜23b、25bが形成される。
【0100】
ステップS902にて、バイナリ露光マスクを用いてレジストパターンを形成する。即ち、スルーホール19を形成する領域以外の領域にレジストを形成し、スルーホール19を形成する領域のレジストを除去する。ステップS903にて、エッチングによって、レジストが除去された領域、即ち、スルーホールを形成する領域にて、窒化シリコン膜を除去し、開口を形成する。ステップS904にて、スルーホール19を形成する領域以外の領域のレジストを剥離する。こうして、図10(a)に示すように、保護絶縁膜16とスルーホール19用の開口が形成される。
【0101】
図11を参照して第4フォトリソグラフィ工程を説明する。第4フォトリソグラフィ工程によって、画素電極17、走査信号線端子(図示せず)、共通信号線端子(図示せず)、映像信号線端子(図示せず)を形成する。図11の第4フォトリソグラフィ工程は図6の第5フォトリソグラフィ工程と同一であってよい。即ち、図11の第5フォトリソグラフィ工程に含まれるステップS1001からステップS1004は、図6の第5フォトリソグラフィ工程に含まれるステップS101からステップS504までの処理と同一であってよい。
【0102】
こうして、ステップS1001からステップS1004までの工程により、図11(a)に示すように、画素電極17、走査信号線端子、共通信号線端子、及び、映像信号線端子が形成される。最後に、図1に示すように、配向膜18を形成することによって、液晶表示装置のアクティブマトリクス基板が製造される。
【0103】
図12から図14を参照して本発明による液晶表示装置のアクティブマトリクス基板の第3、第4及び第5の例の構造及び製造方法を説明する。本例の液晶表示装置では、縦電界で液晶を駆動する。画素電極17の位置は、図12〜図14に示す3つの例において、異なる。
【0104】
画素電極17は、図12に示す第3の例では、保護絶縁膜16の上に配置され、図13に示す第4の例では、基板10とゲート絶縁膜13の間に配置され、図14に示す第5の例では、ゲート絶縁膜13と保護絶縁膜16の間に配置される。画素電極17は、インジウム酸化物又は亜鉛酸化物からなる透明導電膜12によって形成される。インジウム酸化物として、インジウム錫酸化物、インジウム亜鉛酸化物、又は、インジウム錫亜鉛酸化物より選択してよい。亜鉛酸化物として、亜鉛アルミニウム酸化物、又は、亜鉛ガリウム酸化物を選択してよい。
【0105】
先ず、図12を参照して第3の例を説明する。本例の基板10の内面には、走査信号線28、ゲート絶縁膜13、保護絶縁膜16、及び、画素電極17が設けられている。アクティブマトリクス基板の最も内面には配向膜が設けられ、外面には偏光膜が設けられているが、図示は省略する。
【0106】
走査信号線28と映像信号線との交点に対応して薄膜トランジスタが形成されている。薄膜トランジスタは、ドレイン電極23、ソース電極25、及び、ゲート電極(走査信号線28が兼ねる。)を有する。画素電極17は、スルーホール19を介して薄膜トランジスタのソース電極25に接続されている。
【0107】
ドレイン電極23は、コンタクト層15を介して半導体層14上に形成された電極部23−1と、その外側の周辺部23−2からなる。同様に、ソース電極25は、コンタクト層15を介して半導体層14上に形成された電極部25−1と、その外側の周辺部25−2からなる。
【0108】
ゲート絶縁膜13及び保護絶縁膜16は、窒化シリコンSiによって形成されている。半導体層14は、アモルファスシリコンa−Siによって形成されている。コンタクト層15はn型アモルファスシリコンna−Siによって形成されている。
【0109】
走査信号線28は、ガラス基板10上の銅−マグネシウム合金膜28aと、銅−マグネシウム合金膜28aとガラス基板10の界面に形成された酸化マグネシウム膜28cと、銅−マグネシウム合金膜28aとゲート絶縁膜13の界面に形成された窒化マグネシウム膜28bと、を含む。
【0110】
走査信号線28は、ガラス基板10の上に銅合金膜28aを形成することによって、作製される。本例によると、(1)銅中における銅合金膜28aの添加金属元素の拡散係数は、銅の自己拡散係数よりも大きく、且つ、(2)銅合金膜28aの添加金属元素の酸化反応の平衡酸素ポテンシャルは、シリコンの酸化反応の平衡酸素ポテンシャルよりも低い。
【0111】
更に、(3)銅中における銅合金膜28aの添加金属元素の固溶限は0.1%よりも大きい。また、(4)銅合金膜28aの添加金属元素の窒化反応の平衡酸素ポテンシャルは、珪素の窒化反応の平衡酸素ポテンシャルよりも低い。
【0112】
銅合金膜28a中の添加金属元素は、拡散によって、銅合金膜28aとガラス基板10の界面に移動し、そこで、ガラス基板10(珪素酸化物)に含まれる酸素と化合し、金属酸化物膜28cを生成する。
【0113】
銅合金の添加金属元素として、アルミニウム、ベリリウム、マグネシウム、チタンからなる第6群の元素から、1種類以上の元素を選択して用いてよい。最も好適なのはマグネシウムである。銅合金の添加金属元素がマグネシウムMgの場合、金属酸化物膜28cを生成する反応は次の反応式によって表される。
【0114】
SiO+2Mg→Si+2MgO 式8
【0115】
銅合金膜28a中の添加金属元素は、拡散によって、銅合金膜28aとゲート絶縁膜13の界面に移動し、そこで、ゲート絶縁膜13(窒化シリコン)に含まれる窒素と化合し、金属窒化物膜28bを生成する。
【0116】
銅合金の添加金属元素がマグネシウムMgの場合、金属窒化物膜28bを生成する反応は次の反応式によって表される。
【0117】
Si+6Mg→3Si+2Mg 式9
【0118】
こうして、本例では、ガラス基板と銅合金膜28aの界面に、銅合金の添加金属元素の酸化物膜28cが形成され、銅合金膜28aとゲート絶縁膜13の界面に、銅合金の添加金属元素の窒化物膜28bが形成される。従って、走査信号線28は、銅合金の添加金属元素の酸化物膜28c、銅合金膜28a、及び、銅合金の添加金属元素の窒化物膜28bの積層膜から構成される。
【0119】
ドレイン電極部23−1及びソース電極部25−1は、コンタクト層15上の銅−マグネシウム合金膜23a、25aと、銅−マグネシウム合金膜23a、25aとコンタクト層15(n型アモルファスシリコン)の界面に形成されたマグネシウム珪化物膜23b、25bとを含む。
【0120】
銅−マグネシウム合金膜23a、25a中のマグネシウムは、拡散によって、銅−マグネシウム合金膜23a、25aとコンタクト層15の界面に移動し、そこで、コンタクト層15(n型アモルファスシリコン)に含まれる珪素と化合し、マグネシウム珪化物膜23b、25bを生成する。
【0121】
ドレイン電極周辺部23−2及びソース電極周辺部25−2は、ゲート絶縁膜13上の銅−マグネシウム合金膜21a、22aと、銅−マグネシウム合金膜23a、25aとゲート絶縁膜13(窒化シリコン)の界面に形成されたマグネシウム窒化物膜23b、25bとを含む。
【0122】
図13を参照して第4の例を説明する。基板10の内面には、走査信号線22、画素電極17、画素電極接続部27、ゲート絶縁膜13、及び、保護絶縁膜16が設けられている。走査信号線22と映像信号線との交点に対応して薄膜トランジスタが形成されている。アクティブマトリクス基板の最も内面には配向膜が設けられ、外面には偏光膜が設けられているが、図示は省略する。薄膜トランジスタは、ドレイン電極(映像信号線、映像信号線端子を含む)23、ソース電極25、及び、ゲート電極(走査信号線22が兼ねる。)を有する。画素電極17は、スルーホール19を介して薄膜トランジスタのソース電極25に接続されている。
【0123】
走査信号線22は、透明導電膜12上の銅−マンガン合金膜22aと、銅−マンガン合金膜22aと透明導電膜12の界面に形成された酸化マンガン膜22bとを含む。
【0124】
ドレイン電極23は、コンタクト層15を介して半導体層14上に形成された電極部23−1と、その外側の周辺部23−2からなる。同様に、ソース電極25は、コンタクト層15を介して半導体層14上に形成された電極部25−1と、その外側の周辺部25−2からなる。
【0125】
ゲート絶縁膜13及び保護絶縁膜16は、窒化シリコンSiによって形成されている。半導体層14は、アモルファスシリコンa−Siによって形成されている。コンタクト層15はn型アモルファスシリコンna−Siによって形成されている。
【0126】
ドレイン電極部23−1及びソース電極部25−1は、コンタクト層15上の銅−マンガン合金膜21a、22aと、銅−マンガン合金膜23a、25aとコンタクト層15(n型アモルファスシリコン)の界面に形成されたマンガン珪化物膜23b、25bとを含む。
【0127】
ドレイン電極周辺部23−2及びソース電極周辺部25−2は、ゲート絶縁膜13上の銅−マンガン合金膜23a、25aからなる。画素電極接続部27は、画素電極17である透明導電膜12上の銅−マンガン合金膜25aと、銅−マンガン合金膜25aと透明導電膜12(インジウム酸化物又は亜鉛酸化物)の界面に形成された酸化マンガン膜27bとを含む。
【0128】
図14を参照して第5の例を説明する。基板10の内面には、走査信号線(ゲート電極、走査信号線端子を含む)28、ゲート絶縁膜13、半導体層14、コンタクト層15、画素電極17、ドレイン電極(映像信号線、映像信号線端子を含む)23、ソース電極25、及び、保護絶縁膜16が設けられている。アクティブマトリクス基板の最も内面には配向膜が設けられ、外面には偏光膜が設けられているが、図示は省略する。
【0129】
走査信号線28と映像信号線との交点に対応して薄膜トランジスタが形成されている。薄膜トランジスタは、ドレイン電極23、ソース電極25、及び、ゲート電極(走査信号線28が兼ねる)を有する。画素電極17は、スルーホール19を介して薄膜トランジスタのソース電極25に接続されている。
【0130】
本例では、画素電極17を構成する透明導電膜12は、ドレイン電極23及びソース電極25の下側に、且つ、コンタクト層15の上を覆うように延びている。
【0131】
ゲート絶縁膜13及び保護絶縁膜16は、窒化シリコンSiによって形成されている。半導体層14は、アモルファスシリコンa−Siによって形成されている。コンタクト層15はn型アモルファスシリコンna−Siによって形成されている。
【0132】
走査信号線28は、ガラス基板10上の銅−マグネシウム合金膜28aと、銅−マグネシウム合金膜28aとガラス基板10の界面に形成された酸化マグネシウム膜28cと、銅−マグネシウム合金膜28aとゲート絶縁膜13の界面に形成された窒化マグネシウム膜28bと、を含む。
【0133】
ドレイン電極23及びソース電極25は、画素電極17である透明導電膜12上の銅−マンガン合金膜23a、25aと、銅−マンガン合金膜23a、25aと透明導電膜12の界面に形成された酸化マンガン膜23b、25bとを含む。
【0134】
以上本発明の例を説明したが本発明はこれらの例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲にて様々な変更が可能であることは当業者によって容易に理解されよう。
【産業上の利用可能性】
【0135】
本発明は、薄膜トランジスタによって駆動するアクティブマトリクス型液晶表示装置がかりでなく、他の形式の液晶テレビや液晶モニター等に利用が可能である。更に、本発明は、有機発光ダイオード表示装置にも適用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0136】
【図1】本発明のアクティブマトリクス型液晶表示装置の第1の例の薄型トランジスタを含む主要部の拡大断面図である。
【図2】本発明のアクティブマトリクス型液晶表示装置の第1の例の製造方法の第1フォトリソグラフィ工程を説明する図である。
【図3】本発明のアクティブマトリクス型液晶表示装置の第1の例の製造方法の第2フォトリソグラフィ工程を説明する図である。
【図4】本発明のアクティブマトリクス型液晶表示装置の第1の例の製造方法の第3フォトリソグラフィ工程を説明する図である。
【図5】本発明のアクティブマトリクス型液晶表示装置の第1の例の製造方法の第4フォトリソグラフィ工程を説明する図である。
【図6】本発明のアクティブマトリクス型液晶表示装置の第1の例の製造方法の第5フォトリソグラフィ工程を説明する図である。
【図7】本発明のアクティブマトリクス型液晶表示装置の第2の例の製造方法の第1フォトリソグラフィ工程を説明する図である。
【図8】本発明のアクティブマトリクス型液晶表示装置の第2の例の製造方法の第2フォトリソグラフィ工程を説明する図である。
【図9】本発明のアクティブマトリクス型液晶表示装置の第2の例の製造方法の第3フォトリソグラフィ工程を説明する図である。
【図10】本発明のアクティブマトリクス型液晶表示装置の第2の例の製造方法の第4フォトリソグラフィ工程を説明する図である。
【図11】本発明のアクティブマトリクス型液晶表示装置の第2の例の薄型トランジスタの部分の主要部とその製造方法の第5フォトリソグラフィ工程を説明する図である。
【図12】本発明のアクティブマトリクス型液晶表示装置の第3の例の薄型トランジスタを含む主要部の拡大断面図である。
【図13】本発明のアクティブマトリクス型液晶表示装置の第4の例の薄型トランジスタを含む主要部の拡大断面図である。
【図14】本発明のアクティブマトリクス型液晶表示装置の第5の例の薄型トランジスタを含む主要部の拡大断面図である。
【符号の説明】
【0137】
10…(アクティブマトリクス基板用の)基板、11…偏光板、12…透明導電膜、13…ゲート絶縁膜、14…半導体層、15…コンタクト層、16…保護絶縁膜、17…画素電極、18…配向膜、19…スルーホール、20…透明共通電極、21…共通信号線、21a…銅合金膜、21b…金属酸化物膜/金属窒素化物膜、22…走査信号線、23…ドレイン電極(映像信号線)、23a…銅合金膜、23b…金属珪化物膜/金属窒化物膜/酸化マンガン膜、25…ソース電極、25a…銅合金膜、25b…金属珪化物膜/金属窒化物膜/酸化マンガン膜、28…走査信号線、30…カラーフィルタ用ガラス基板、31…偏光板、32…ブラックマトリクス、33…カラーフィルタ、34…平坦化膜、35…配向膜、36…液晶

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の基板と、前記一対の基板に挟持された液晶と、前記一対の基板の一方に形成された複数の走査信号線と、前記走査信号線とマトリクス状に交差する複数の映像信号線と、前記走査信号線と前記映像信号線との交点に対応して形成された薄膜トランジスタと、前記薄膜トランジスタに接続された画素電極と、前記走査信号線を覆うゲート絶縁膜と、前記映像信号線と前記薄膜トランジスタとを覆う保護絶縁膜と、を有する液晶表示装置において、
前記走査信号線は、インジウム酸化物を主成分とする透明導電膜の上に形成された銅合金膜と、前記透明導電膜と前記銅合金膜の間に形成された前記銅合金の添加金属元素の金属酸化物膜と、を含む積層膜から構成され、
前記銅合金の添加金属元素の銅中における拡散係数は銅の自己拡散係数よりも大きく、前記銅合金の添加金属元素の酸化反応の平衡酸素ポテンシャルはインジウムの酸化反応の平衡酸素ポテンシャルよりも低く、且つ、前記銅合金の添加金属元素の銅中における固溶限は0.1%よりも大きいことを特徴とする液晶表示装置。
【請求項2】
請求項1に記載の液晶表示装置において、前記銅合金の添加金属元素はアルミニウム、ベリリウム、クロム、ガリウム、マグネシウム、マンガン、チタン、バナジウム、亜鉛から選択される元素を1種類以上含有することを特徴とする液晶表示装置。
【請求項3】
一対の基板と、前記一対の基板に挟持された液晶と、前記一対の基板の一方に形成された複数の走査信号線と、前記走査信号線とマトリクス状に交差する複数の映像信号線と、前記走査信号線と前記映像信号線との交点に対応して形成された薄膜トランジスタと、前記薄膜トランジスタに接続された画素電極と、前記走査信号線を覆うゲート絶縁膜と、前記映像信号線と前記薄膜トランジスタとを覆う保護絶縁膜と、を有する液晶表示装置において、
前記走査信号線は、亜鉛酸化物を主成分とする透明導電膜の上に形成された銅合金膜と、前記透明導電膜と前記銅合金膜の間に形成された前記銅合金の添加金属元素の金属酸化物膜と、を含む積層膜から構成され、
前記銅合金の添加金属元素の銅中における拡散係数は銅の自己拡散係数よりも大きく、前記銅合金の添加金属元素の酸化反応の平衡酸素ポテンシャルは亜鉛の酸化反応の平衡酸素ポテンシャルよりも低く、且つ、前記銅合金の添加金属元素の銅中における固溶限は0.1%よりも大きいことを特徴とする液晶表示装置。
【請求項4】
請求項3に記載の液晶表示装置において、前記銅合金の添加金属元素はアルミニウム、ベリリウム、クロム、ガリウム、マグネシウム、マンガン、チタン、バナジウムから選択される元素を1種類以上含有することを特徴とする液晶表示装置。
【請求項5】
請求項1又は3に記載の液晶表示装置において、前記透明導電膜の上に形成された銅合金膜の添加金属元素の含有量は0.5原子%以上、2原子%以下であることを特徴とするインプレインスイッチング型液晶表示装置。
【請求項6】
請求項1又は3に記載の液晶表示装置において、前記透明導電膜と前記銅合金膜の間に形成された前記金属酸化物膜の膜厚は0.5nmから3nmの範囲であることを特徴とする液晶表示装置。
【請求項7】
請求項1又は3に記載の液晶表示装置において、前記走査信号線の抵抗率は3.7μΩcmより小さいことを特徴とする液晶表示装置。
【請求項8】
一対の基板と、前記一対の基板に挟持された液晶と、前記一対の基板の一方に形成された複数の走査信号線と、前記走査信号線とマトリクス状に交差する複数の映像信号線と、前記走査信号線と前記映像信号線との交点に対応して形成された薄膜トランジスタと、前記薄膜トランジスタに接続された画素電極と、前記走査信号線を覆うゲート絶縁膜と、前記映像信号線と前記薄膜トランジスタとを覆う保護絶縁膜と、を有する液晶表示装置において、
前記ゲート絶縁膜は窒化シリコンからなり、
前記映像信号線は、前記ゲート絶縁膜の上に形成された銅合金膜と、前記ゲート電極と前記銅合金膜の間に形成された前記銅合金の添加金属元素の金属窒化物膜と、を含む積層膜から構成され、
前記銅合金の添加金属元素の銅中における拡散係数は銅の自己拡散係数よりも大きく、前記銅合金の添加金属元素の窒化反応の平衡酸素ポテンシャルは珪素の窒化反応の平衡酸素ポテンシャルよりも低く、且つ、前記銅合金の添加金属元素の銅中における固溶限は0.1%よりも大きいことを特徴とする液晶表示装置。
【請求項9】
請求項8に記載の液晶表示装置において、前記銅合金の添加金属元素は、アルミニウム、ベリリウム、マグネシウム、チタン、バナジウムから選択される元素を1種類以上含有することを特徴とする液晶表示装置。
【請求項10】
一対の基板と、前記一対の基板に挟持された液晶と、前記一対の基板の一方に形成された複数の走査信号線と、前記走査信号線とマトリクス状に交差する複数の映像信号線と、前記走査信号線と前記映像信号線との交点に対応して形成された薄膜トランジスタと、前記薄膜トランジスタに接続された画素電極と、前記走査信号線を覆うゲート絶縁膜と、前記映像信号線と前記薄膜トランジスタとを覆う保護絶縁膜と、を有する液晶表示装置において、
前記薄膜トランジスタは、アモルファスシリコンからなる半導体層とその上のnアモルファスシリコンからなるコンタクト層とその上のドレイン電極及びソース電極とを有し、
前記ドレイン電極及びソース電極は、前記コンタクト層上に形成された銅合金膜と、前記コンタクト層と前記銅合金膜の間に形成された前記銅合金の添加金属元素の金属珪化物膜と、を含む積層膜から構成され、
前記銅合金の添加金属元素の銅中における拡散係数は銅の自己拡散係数よりも大きく、前記銅合金の添加金属元素の珪化物の生成自由エネルギーは負であり、且つ、前記銅合金の添加金属元素の銅中における固溶限は0.1%よりも大きいことを特徴とする液晶表示装置。
【請求項11】
請求項10に記載の液晶表示装置において、前記銅合金の添加金属元素は、クロム、マグネシウム、マンガン、チタン、バナジウムから選択される元素を1種類以上含有することを特徴とする液晶表示装置。
【請求項12】
請求項1、3、8、又は10記載の液晶表示装置において、更に、前記走査信号線と前記映像信号線とに囲まれた画素領域に形成された共通透明電極と、前記走査信号線と隣接かつ平行し前記共通透明電極に接続される共通信号線と、を有するインプレインスイッチング型であることを特徴とする液晶表示装置。
【請求項13】
一対の基板と、前記一対の基板に挟持された液晶と、前記一対の基板の一方に形成された複数の走査信号線と、前記走査信号線とマトリクス状に交差する複数の映像信号線と、前記走査信号線と前記映像信号線との交点に対応して形成された窒化シリコンからなる薄膜トランジスタと、前記薄膜トランジスタに接続された画素電極と、前記走査信号線を覆うゲート絶縁膜と、前記映像信号線と前記薄膜トランジスタとを覆う保護絶縁膜と、を有する液晶表示装置において、
前記走査信号線は、ガラス基板の上に形成された銅合金膜と、前記ガラス基板と前記銅合金膜の間に形成された前記銅合金の添加金属元素の金属酸化物膜と、前記銅合金膜と前記ゲート絶縁膜の間に形成された前記銅合金の添加金属元素の金属窒化物膜と、を含む積層膜から構成され、
前記銅合金の添加金属元素の銅中における拡散係数は銅の自己拡散係数よりも大きく、前記銅合金の添加金属元素の酸化反応の平衡酸素ポテンシャルはインジウムの酸化反応の平衡酸素ポテンシャルよりも低く、前記銅合金の添加金属元素の窒化反応の平衡窒素ポテンシャルは珪素の窒化反応の平衡窒素ポテンシャルよりも低く、且つ、前記銅合金の添加金属元素の銅中における固溶限は0.1%よりも大きいことを特徴とする液晶表示装置。
【請求項14】
走査信号線と映像信号線との交点に対応して形成された薄膜トランジスタと、前記走査信号線と前記映像信号線とに囲まれた画素領域に形成された共通透明電極と、前記画素領域に形成され前記薄膜トランジスタに接続された画素電極と、を有し、液晶の分子を前記共通透明電極と前記画素電極との間に印加される電圧によって駆動されるインプレインスイッチング型液晶表示装置の製造方法において、
基板の上に、スパッタリングによって、インジウム酸化物又は亜鉛酸化物からなる第1の透明導電膜、及び、第1の添加金属元素を含む第1の銅合金膜を、この順で連続的に形成し、ハーフ露光マスクを用いたフォトリソグラフィによって、基板上の所定の領域に第1の透明導電膜からなる共通透明電極と第1の銅合金膜を形成する第1フォトリソグラフィ工程と、
前記第1の透明導電膜と前記第1の銅合金膜を覆うように、プラズマ化学蒸着法によって、窒化シリコン膜、アモルファスシリコン膜、及び、n型アモルファスシリコン膜を、この順で連続的に形成し、バイナリ露光マスクを用いたフォトリソグラフィによって、窒化シリコンからなるゲート絶縁膜、アモルファスシリコンからなる半導体層及びn型アモルファスシリコンからなるコンタクト層を含む島状パターンを形成する第2フォトリソグラフィ工程と、
前記島状パターンを覆うように、スパッタリングによって、第2の添加金属元素を含む第2の銅合金膜を形成し、バイナリ露光マスクを用いたフォトリソグラフィによって、ドレイン電極及びソース電極を形成する領域に前記第2の銅合金膜を形成する第3フォトリソグラフィ工程と、
前記第2の銅合金膜を覆うように、プラズマ化学蒸着法によって、窒化シリコン膜を形成し、バイナリ露光マスクを用いたフォトリソグラフィによって、窒化シリコンからなる保護絶縁膜を形成する第4フォトリソグラフィ工程と、
前記保護絶縁膜を覆うように、スパッタリングによって、インジウム酸化物又は亜鉛酸化物からなる第2の透明導電膜を形成し、バイナリ露光マスクを用いたフォトリソグラフィによって、前記第2の透明導電膜からなる画素電極、走査信号線端子、共通信号線端子、及び、映像信号線端子を形成する第5フォトリソグラフィ工程と、
を有するインプレインスイッチング型液晶表示装置の製造方法。
【請求項15】
請求項14記載のインプレインスイッチング型液晶表示装置の製造方法において、
前記第2フォトリソグラフィ工程において、前記窒化シリコン膜、前記アモルファスシリコン膜、及び、前記n型アモルファスシリコン膜を形成するとき、前記第1フォトリソグラフィ工程にて形成した前記第1の透明導電膜と前記第1の銅合金膜の間に、前記第1の添加金属元素の酸化物膜を形成することを特徴とするインプレインスイッチング型液晶表示装置の製造方法。
【請求項16】
請求項14記載のインプレインスイッチング型液晶表示装置の製造方法において、
前記第4フォトリソグラフィ工程において、前記保護絶縁膜を形成するとき、前記第2フォトリソグラフィ工程にて形成した前記コンタクト層と前記第3フォトリソグラフィ工程にて形成した前記第2の銅合金膜の間に、前記第2の添加金属元素の珪化物膜を形成することを特徴とするインプレインスイッチング型液晶表示装置の製造方法。
【請求項17】
請求項14記載のインプレインスイッチング型液晶表示装置の製造方法において、
前記第4フォトリソグラフィ工程において、前記保護絶縁膜を形成するとき、前記第2フォトリソグラフィ工程にて形成した前記ゲート絶縁膜と前記第3フォトリソグラフィ工程にて形成した前記第2の銅合金膜の間に、前記第2の添加金属元素の窒化物膜を形成することを特徴とするインプレインスイッチング型液晶表示装置の製造方法。
【請求項18】
走査信号線と映像信号線との交点に対応して形成された薄膜トランジスタと、前記走査信号線と前記映像信号線とに囲まれた画素領域に形成された共通透明電極と、前記画素領域に形成され前記薄膜トランジスタに接続された画素電極と、を有し、液晶の分子を前記共通透明電極と前記画素電極との間に印加される電圧によって駆動されるインプレインスイッチング型液晶表示装置の製造方法において、
基板の上に、スパッタリングによって、インジウム酸化物又は亜鉛酸化物からなる第1の透明導電膜、及び、第1の添加金属元素を含む第1の銅合金膜を、この順で連続的に形成し、ハーフ露光マスクを用いたフォトリソグラフィによって、基板上の所定の領域に第1の透明導電膜からなる共通透明電極と第1の銅合金膜を形成する第1フォトリソグラフィ工程と、
前記第1の透明導電膜と前記第1の銅合金膜を覆うように、プラズマ化学蒸着法によって、窒化シリコン膜、アモルファスシリコン膜、及び、n型アモルファスシリコン膜を、この順で連続的に形成し、次に、スパッタリングによって、第2の添加金属元素を含む第2の銅合金膜を形成し、ハーフ露光マスクを用いたフォトリソグラフィによって、窒化シリコンからなるゲート絶縁膜、アモルファスシリコンからなる半導体層、n型アモルファスシリコンからなるコンタクト層、前記第2の銅合金膜からなるドレイン電極及びソース電極を含む島状パターンを形成する第2フォトリソグラフィ工程と、
前記島状パターンを覆うように、プラズマ化学蒸着法によって、窒化シリコン膜を形成し、バイナリ露光マスクを用いたフォトリソグラフィによって、窒化シリコンからなる保護絶縁膜を形成する第3フォトリソグラフィ工程と、
前記保護絶縁膜を覆うように、スパッタリングによって、インジウム酸化物又は亜鉛酸化物からなる第2の透明導電膜を形成し、バイナリ露光マスクを用いたフォトリソグラフィによって、前記第2の透明導電膜からなる画素電極、走査信号線端子、共通信号線端子、及び、映像信号線端子を形成する第4フォトリソグラフィ工程と、
を有するインプレインスイッチング型液晶表示装置の製造方法。
【請求項19】
請求項18記載のインプレインスイッチング型液晶表示装置の製造方法において、
前記第2フォトリソグラフィ工程において、前記窒化シリコン膜、前記アモルファスシリコン膜、及び、前記n型アモルファスシリコン膜を形成するとき、前記第1フォトリソグラフィ工程にて形成した前記第1の透明導電膜と前記第1の銅合金膜の間に、前記第1の添加金属元素の酸化物膜を形成することを特徴とするインプレインスイッチング型液晶表示装置の製造方法。
【請求項20】
請求項18記載のインプレインスイッチング型液晶表示装置の製造方法において、
前記第3フォトリソグラフィ工程において、前記保護絶縁膜を形成するとき、前記第2フォトリソグラフィ工程にて形成した前記コンタクト層と前記第2の銅合金膜の間に、前記第2の添加金属元素の珪化物膜を形成することを特徴とするインプレインスイッチング型液晶表示装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2008−281932(P2008−281932A)
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−128154(P2007−128154)
【出願日】平成19年5月14日(2007.5.14)
【出願人】(502356528)株式会社 日立ディスプレイズ (2,552)
【Fターム(参考)】