説明

炭素質薄膜及びその製造方法

【課題】大きな変形を伴う基材の表面に形成した場合においても、剥離及びクラックが発生しにくく且つ耐蝕性が高い炭素質薄膜を実現できるようにする。
【解決手段】炭素質薄膜は、基材の表面に形成され、炭素同士が結合したC−C成分及び炭素とシリコンとが結合したSiC成分を含む膜本体を備えている。膜本体の表面における酸化シリコン成分の比率は、0.05以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭素質薄膜及びその製造方法に関し、特にガイドワイヤ及びカテーテル等の変形を伴う医療器具の表面に形成する炭素質薄膜及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ダイヤモンド様薄膜(DLC膜)に代表される炭素質薄膜は、耐蝕性及び耐摩耗性等に優れており、さまざまな分野において表面コーティングに用いることが試みられている。例えば、医療器具の基材の表面に炭素質薄膜をコーティングすることにより、表面の平滑性、耐摩耗性、耐蝕性及び生体適合性等を付与することができると期待される。
【0003】
特に、使い捨てにできない医療器具は感染の防止のために滅菌・消毒を行う必要がある。滅菌・消毒を行う方法の一つとして、薬剤の溶液への浸漬がある。滅菌・消毒用の薬剤は、酸性又はアルカリ性で腐食性が高いものが多い。このような薬剤に通常の金属又は樹脂製の医療器具を浸漬すると、薬剤による腐食及び劣化を生じてしまう。このような医療器具の表面を炭素質薄膜でコーティングすることにより、医療器具の寿命を大幅に伸ばすことが可能となると期待される。
【0004】
しかし、通常の炭素質薄膜は硬度が高く剛直な材料であるため、炭素質薄膜が基材の表面から剥がれたり、炭素質薄膜にクラックが生じたりしやすい。このため、炭素質薄膜と基材との間に、シリコン(Si)又は炭化硅素(SiC)等からなる中間層を形成することにより、基材と炭素質薄膜との密着性を向上させることが試みられている(例えば、特許文献1及び2を参照。)。
【特許文献1】特開2006−521号公報
【特許文献2】特開昭63−286334号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記の従来の中間層を形成することにより、炭素質薄膜と基材との密着性を向上させる方法には、以下のような問題がある。中間層の形成により、炭素質薄膜と基材との密着性を向上させることはできる。しかし、炭素質薄膜自体は弾性に乏しいため、基材が大きく変形した場合に炭素質薄膜にクラックが生じることを防止できない。クラックは、剥離の原因となり又剥離が生じなくても、薬剤等が侵入して基材が腐食する原因となる。このため、ガイドワイヤ、カテーテル及び内視鏡といった大きな変形を伴う医療器具においては、中間層を形成するだけでは、炭素質薄膜を表面コーティングとして用いることが困難である。
【0006】
本発明は、前記従来の問題を解決し、剥離及びクラックが発生しにくく且つ耐蝕性が高い炭素質薄膜を実現できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の目的を達成するため、本発明は炭素質薄膜をSiC成分を含み且つ表面のSiO2成分が少ない構成とする。
【0008】
具体的に、本発明に係る炭素質薄膜は、基材の表面に形成され、炭素同士が結合したC−C成分及び炭素とシリコンとが結合したSiC成分を含む膜本体を備え、膜本体の表面における酸素とシリコンとが結合したSiO2成分の比率は、0.05以下であることを特徴とする。
【0009】
本発明の炭素質薄膜は、SiC成分を含んでいるため、弾性率が通常の炭素質薄膜よりも小さい。従って、基材の表面から剥離しにくく、クラックも生じにくい。また、表面におけるSiO2成分の比率が0.05以下であるため、薬剤に対する耐蝕性に優れている。その結果、大きな変形を伴う医療器具等の基材表面に形成した場合においても、基材の耐久性を向上させることができる。
【0010】
本発明の炭素質薄膜において、SiC成分の比率は、0.06以上であってもよい。また、SiC成分の比率は、0.5以下であってもよい。
【0011】
本発明の炭素質薄膜において、基材は金属であってもよい。また、基材は、ガイドワイヤ、カテーテル又は内視鏡であってもよい。
【0012】
本発明に係る炭素質薄膜の製造方法は、基材を載置したチャンバ内の水分を除去する工程(a)と、工程(a)よりも後に、チャンバ内に炭素源及び硅素源となる原料ガスを導入することにより、炭素同士が結合したC−C成分及び炭素とシリコンとが結合したSiC成分を含む膜本体を基材の表面にイオン化蒸着する工程(b)とを備えていることを特徴とする。
【0013】
本発明の炭素質薄膜の製造方法は、チャンバ内の水分を除去する工程を備えている。このため、硅素の導入量を多くした場合にも、酸化シリコン成分が少ない炭素質薄膜を形成することができる。従って、基材の表面から剥離したり、クラックが生じたりしにくく且つ耐蝕性に優れた炭素質薄膜を実現できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る炭素質薄膜及びその製造方法によれば、大きな変形を伴う医療器具等においても耐久性が向上する炭素質薄膜を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本願発明者らは、炭素質薄膜を形成する際にシリコン(Si)を加えることにより、炭素同士が結合したC−C成分の他に、炭素とSiとが結合した炭化硅素(SiC)成分を含む炭素質薄膜が形成でき、SiCの含有量により炭素質薄膜のヤング率が大きく変化することを見いだした。
【0016】
一方、Siを添加することにより、酸化シリコン(SiO2)が生じ、炭素質薄膜の表面におけるSiO2成分の存在量が、炭素質薄膜の耐蝕性に大きな影響を与えることを見いだした。
【0017】
本発明は、前記2つの知見に基づいてなされたものであり、クラック及び剥離が発生しにくく且つ耐蝕性に優れた炭素質薄膜を実現できる。
【0018】
−炭素質薄膜の形成−
本発明において用いる基材は、どのようなものであってもよいが、大きな変形を伴い且つ滅菌等のために腐食性の薬剤に浸漬される医療器具の場合に特に大きな効果を発揮する。具体的には、金属性のガイドワイヤにおいて耐蝕性を大きく向上させることができる。また、カテーテル及び内視鏡等の樹脂等により形成された医療器具においても耐蝕性を向上させることができる。
【0019】
炭素質薄膜の形成方法は、既知の方法を用いることができる。例えば、スパッタ法、DCマグネトロンスパッタ法、RFマグネトロンスパッタ法、化学気相堆積法(CVD法)、プラズマCVD法、プラズマイオン注入法、重畳型RFプラズマイオン注入法、イオンプレーティング法、アークイオンプレーティング法、イオンビーム蒸着法又はレーザーアブレーション法等により基材の表面に形成することができる。また、その厚みは特に限定されるものではないが、0.00μm5〜3μmの範囲が好ましく、より好ましくは0.01μm〜1μmの範囲である。
【0020】
また、炭素質薄膜は基材の表面に直接形成することができるが、基材と炭素質薄膜とをより強固に密着させるために、基材と炭素質薄膜との間に中間層を設けてもよい。中間層の材質としては、基材の種類に応じて種々のものを用いることができるが、硅素(Si)と炭素(C)、チタン(Ti)と炭素(C)又はクロム(Cr)と炭素(C)からなるアモルファス膜等の公知のものを用いることができる。その厚みは特に限定されるものではないが、0.005μm〜0.3μmの範囲が好ましく、より好ましくは0.01〜0.1μmの範囲である。
【0021】
中間層は、公知の方法を用いて形成することができ、例えば、スパッタ法、CVD法、プラズマCVD法、溶射法、イオンプレーティング法又はアークイオンプレーティング法等を用いればよい。
【0022】
−組成評価−
炭素質薄膜の組成はX線光電子分光分析法(XPS法)により行った。測定には、日本電子製のXPS装置JPS9010を用いた。X線源には、AlKα線(1486.3eV)を用い、加速電圧を12.5kV、エミッション電流を15mAとし、真空度が8×10-7Paの条件で測定を行った。また、得られたスペクトルのバックグラウンドはShirley法により除去した。試料の測定においては、0.2eVのチャージシフトが解析精度に影響を与える。このため、金のナノ粒子を試料表面の一部に滴下して乾燥させ、金の結合エネルギ(Au4f7/2)からのシフト量をまず求め、チャージの補正を行った。
【0023】
試料中の全カーボンに対するSiC成分の比率[SiC]/[C]はC1sスペクトルをカーブフィッティングにより分割することによって求めた。まず、C1sスペクトルを、SP3炭素−炭素結合(SP3:C−C)と、グラファイト炭素−炭素結合(SP2:C−C)と、SP3炭素−水素結合(SP3:C−H)と、SP2炭素−水素結合(SP2:C−H)の4つの成分に分割した。各成分のピークの中心値はそれぞれ、283.7〜8eV、284.2〜3eV、284.7〜8eV及び2845.3〜4eVとした。さらに低エネルギ側に残されたピークを炭素−硅素結合(SiC)成分として分割し、高エネルギ側に残されたピークを炭素−酸素結合(C−Ox)成分として分割した。SiC成分のピークの中心値は283.1〜2eVとした。C1sスペクトルから得られた全炭素の積分強度とSiC成分の積分強度との比をSiC成分の比率[SiC]/[C]とした。
【0024】
試料表面におけるSiO2成分の比率は試料面に対する光電子の検出を75°傾け、表面敏感となる条件において測定した。得られたC1s及びSi2pスペクトルからSiとCとの濃度比([Si]/([Si]+[C]))を相対感度係数を用いて算出した。また、Si2pスペクトルをカーブフィッテングすることによりSiO2成分の積分強度を求めた。Si2pスペクトルから得られた全Siの積分強度と、SiO2成分の積分強度との比に、SiとCとの濃度比を掛けることによりSiO2成分の比率[SiO2]/([Si]+[C])とした。
【0025】
また、試料全体に
−物性評価−
炭素質薄膜の弾性率(ヤング率)の測定は、Hysitron社製の高感度(0.0004nm、3nN)センサーを搭載した90度三角錐のダイヤモンド圧子を用いたナノインデンテーション法により行った。圧痕状態の測定には試料表面を微小な探針で走査することによって三次元形状を高倍率で観察できる顕微鏡である株式会社島津製作所製の走査型プローブ顕微鏡(SPM:Scanning Probe Microscope)を用いた。ナノインデンテーションによる測定条件は100μNの精度でダイヤモンド圧子を制御しながら試料に押し込み、荷重-変位曲線の解析から弾性率等の力学的性質を定量した。圧子の押し込み時間は5秒間とし、また引き抜き時間も5秒間に設定して測定を行った。
【0026】
炭素質薄膜の剥がれ及びクラックの発生については、電子顕微鏡(日立TM−1000)の反射電子像を用いて観察することにより評価を行った。
【0027】
耐食性試験は、試料を濃度3.5%のグルタラールに浸漬することにより行った。具体的には、グルタラールを3.5%含むサイデックスプラス28(ジョンソン・エンド・ジョンソン社登録商標)に氷酢酸を含む緩衝液を100:4.5の割合で混合した液を使用した。試料を常温で1週間浸漬した後に、実体顕微鏡(LiecaMZ16)によって観察することにより評価を行った。
【0028】
以下に、本発明に係る炭素質薄膜及びその製造方法について、実施例を用いてさらに詳細に説明する。
【0029】
(一実施例)
直径0.5mmのステンレス(JIS規格SUS316)ワイヤを基材として用いた。まず、基材をイオン化蒸着装置のチャンバ内にセットし、ボンバードクリーニングを30分間行った。ボンバードクリーニングは、チャンバ内にアルゴンガス(Ar)を圧力が10-1Pa〜10-3Pa(10-3Torr〜10-5Torr)となるように導入した後、放電を行うことによりArイオン発生させ、発生したArイオンを基材の表面に衝突させることにより行った。
【0030】
次に、チャンバにベンゼン及びテトラメチルシラン(Si(CH34)を導入しながら5分〜10分間放電を行うことにより硅素(Si)及び炭素(C)を主成分とする膜厚が100nmのアモルファス状のDLC膜である炭素質薄膜を形成した。テトラメチルシランの導入量を変化させることによりSi含有量が異なる炭素質薄膜を形成した。
【0031】
炭素質薄膜の形成前に、チャンバを80℃に昇温し、2時間ベーキングを行った。これにより、炉内に残留する水分を除去し、成膜中に酸化が生じることを防止した。また、成膜終了後、酸素を10-1Paの圧力となるように導入し、15秒間放電を行うことにより強制的に炭素質薄膜表面の酸化を行った。これにより、表面のSiO2成分の比率[SiO2]/([Si]+[C])が異なる炭素質薄膜を形成した。
【0032】
図1(a)〜(d)は、得られた試料をXPS法により測定して得られたC1sスペクトル及びそのカーブフィッティングの結果を示している。図1(a)〜(d)に示したサンプルのオージェ電子分光分析により求めたSiの含有量は、それぞれ0%、3%、19%及び27%であった。オージェ電子分光分析は、PHISICAL ELECTRONICS社製のPHI−660型走査型オージェ電子分光装置を用いて行った。電子銃の加速電圧は10kVとし、資料電流が500nAの条件で測定した。また、Arイオン銃の加速電圧は2kVとし、スパッタリングレートは8.2nm/minに設定した。
【0033】
図1(a)〜(d)に示すように、Si含有量が増加するに従い、SiCのピークの割合が次第に大きくなった。カーブフィッティングから求めたSiC成分の比率[SiC]/[C]は、それぞれ0、0.004、0.064及び0.13であった。
【0034】
図2は、得られた試料における、SiC成分の比率[SiC]/[C]と、ヤング率との関係を示している。[SiC]/[C]が大きくなるに従いヤング率は急激に低下し、[SiC]/[C]が0.06程度でほぼ一定となっている。
【0035】
図3(a)及び(b)は、得られた試料について、炭素質薄膜の剥がれ及びクラックの発生を測定した結果を示している。得られた試料を半径50mmとなるように曲げた後、曲げた部位の観察を行っている。図3(a)は、[SiC]/[C]が0.13の試料について測定した結果を示しているが、炭素質薄膜の剥がれ及びクラックの発生は認められていない。一方、図3(b)は、[SiC]/[C]が0の試料について測定した結果を示しているが、炭素質薄膜に微細なクラックが生じ、膜剥がれが生じていることがわかる。
【0036】
これは、SiC成分を含む炭素質薄膜とすることにより、ヤング率が低下し、クラックが生じにくくなったためである。従って、炭素質薄膜のクラックを防止するためには、[SiC]/[C]を0.06以上とすることが好ましく、0.1以上とすることがさらに好ましい。
【0037】
一方、[SiC]/[C]を大きくするためには、炭素質薄膜中のSi量を増やす必要がある。炭素質薄膜中のSi量が増加すると、炭素質薄膜表面においてSiO2成分が増加し、炭素質薄膜の耐腐食性が低下するおそれがある。
【0038】
図4(a)〜(c)は、それぞれ、[SiC]/[C]が0.004、0.064及び0.13のサンプルについてXPS測定によるSi2pスペクトルを示している。この場合、光電子の検出角度を75°とし、炭素質薄膜の表面について測定を行った。
【0039】
図5は、図4に示したスペクトルをカーブフィッティングして求めたSiO2成分の比率[SiO2]/([Si]+[C])と[SiC]/[C]との関係を示している。[SiC]/[C]の値が大きくなるに従い、SiO2成分の比率も増加している。
【0040】
図6は、[SiO2]/([Si]+[C])が0.0143の試料と、酸素プラズマを照射することにより形成した[SiO2]/([Si]+[C])が0.0668の試料とについて耐蝕性を測定した結果を示している。図6(a)に示すように[SiO2]/([Si]+[C])が0.0143の試料は、腐食が全く認められなかったが、(b)に示すように[SiO2]/([Si]+[C])が0.0668の試料は、薬剤による腐食が生じている。
【0041】
以上の結果から、炭素質薄膜の耐腐食性を確保するには、[SiO2]/([Si]+[C])の値を0.05以下とすることが好ましく、0.02以下とすることがさらに好ましい。また、図5を外挿して求めた、[SiO2]/([Si]+[C])が0.05となる[SiC]/[C]の値は約0.5である。従って、耐蝕性を確保するには、[SiC]/[C]の値を0.5以下とすることが好ましく、0.3以下とすることがさらに好ましい。
【0042】
また、SiO2成分は成膜の際にチャンバ内に残留する酸素を含む成分によって生じると考えられる。特に、水分は残留しやすく且つ分解によって酸素を生じる。従って、成膜前の水分の除去を十分行うことにより、SiC成分を多く含む場合にもSiO2成分が少ない炭素質薄膜が得られる。チャンバ内の水分の除去は、一実施例において示したベーキングの他に、チャンバ内を真空状態とする方法等でもよい。例えば、チャンバ内を10-5Pa以下の高真空にした後、炭素質薄膜を堆積すればよい。また、基材のボンバードクリーニングに用いるガス中の水分を低減したり、原料ガス中の水分を低減したりすることも有効である。ガス中の水分の低減は、超高純度ガスを用いたり、モレキュラーシーブによる脱水等により行うことができる。さらに、これらの方法を組み合わせてもよい。
【0043】
炭素質薄膜の表面におけるSiO2成分を低減する方法としては、表面だけ組成を代えてSiを含まない炭素質薄膜を積層する方法も考えられる。しかし、この場合には、成膜が複雑になる。また、炭素質薄膜同士の界面から剥がれが生じるおそれもある。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明に係る炭素質薄膜及びその製造方法は、大きな変形を伴う基材の表面に形成した場合においても、剥離及びクラックが発生しにくく且つ耐蝕性が高い炭素質薄膜を実現でき、特にガイドワイヤ及びカテーテル等の変形を伴う医療器具の表面に形成する炭素質薄膜及びその製造方法等として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】(a)〜(d)はそれぞれ本発明の一実施例により得られた試料をXPS法により分析した結果得られたC1sスペクトルを示すチャートである。
【図2】本発明の一実施例により得られた試料のSiC成分の比率とヤング率との関係を示すグラフである。
【図3】(a)及び(b)はそれぞれ本発明の一実施例により得られた試料の曲げ試験の結果を示す電子顕微鏡写真である。
【図4】(a)〜(c)はそれぞれ本発明の一実施例により得られた試料の表面をXPS法により分析した結果得られたSi2pスペクトルを示すチャートである。
【図5】本発明の一実施例により得られた試料のSiC成分の比率とSiO2成分の比率との関係を示すグラフである。
【図6】(a)及び(b)はそれぞれ本発明の一実施例により得られた試料の耐蝕性試験の結果を示す顕微鏡写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の表面に形成され、炭素同士が結合したC−C成分及び炭素とシリコンとが結合したSiC成分を含む膜本体を備え、
前記膜本体の表面における酸素とシリコンとが結合したSiO2成分の比率は、0.05以下であることを特徴とする炭素質薄膜。
【請求項2】
前記SiC成分の比率は、0.06以上であることを特徴とする請求項1に記載の炭素質薄膜。
【請求項3】
前記SiC成分の比率は、0.5以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の炭素質薄膜。
【請求項4】
前記基材は、金属であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の炭素質薄膜。
【請求項5】
前記基材は、ガイドワイヤ、カテーテル又は内視鏡であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の炭素質薄膜。
【請求項6】
基材を載置したチャンバ内の水分を除去する工程(a)と、
前記工程(a)よりも後に、前記チャンバ内に炭素源及び硅素源となる原料ガスを導入することにより、炭素同士が結合したC−C成分及び炭素とシリコンとが結合したSiC成分を含む膜本体を基材の表面にイオン化蒸着する工程(b)とを備えていることを特徴とする炭素質薄膜の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図3】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−120885(P2009−120885A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−294273(P2007−294273)
【出願日】平成19年11月13日(2007.11.13)
【出願人】(391003668)トーヨーエイテック株式会社 (145)
【Fターム(参考)】