説明

焦点面傾斜型共焦点表面形状計測装置

【課題】
本発明は、共焦点撮像系によりZスキャン機構無しで物体の表面形状計測を可能とした焦点面傾斜型共焦点表面形状計測装置において、高速計測時に著しく露光時間が短くなることから三次元形状計測で異常をきたす問題が生じる為、露光時間を多く確保して適度な光量を得た画像を取得し、正常に三次元形状計測を可能とすることを目的とする。
【解決手段】
焦点面傾斜型共焦点表面形状計測装置の移動機構による物体の移動と微小シフト機構によるスポットの移動とを等速とすることにより、共焦点撮像系が物体に対して同じ箇所を長時間露光可能なように構成し、三次元形状計測を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物体の表面形状を測定する表面形状計測装置の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
共焦点光学系を用いると物体の光軸(以下Z軸と称する)方向の位置(以下高さと称する)を精度良く計測することが可能である。従来技術の説明に先立ち共焦点光学系による高さ計測の原理を解説する。共焦点光学系の基本構成を図10に示す。点光源101からでた光は対物レンズ103により集光され物体に投影される。物体から反射して再び対物レンズ103に入射した光はハーフミラー102を介して点光源101と光学的に同じ位置にあるピンホール104に入射し、ピンホール104を通過した光の量が検出器105により計測される。これが共焦点光学系の基本的な構造である。このような光学系を用いると物体表面上の高さが次のようにして計測できる。物体表面が点光源101に共役な位置にある場合、反射光は同じく共役な位置であるピンホール104面に収束し、多くの反射光がピンホール104を通過する。しかし物体表面が点光源に共役な位置から離れるとピンホール104を通過する光量は急速に減少する。このことから物体と対物レンズ103との距離を変化させて検出器105が最大出力を示す点を見つければ物体表面の高さが分かったことになる。以上が共焦点光学系による高さ計測の原理である。
【0003】
共焦点光学系は基本的に物体表面上の1点のみを計測対象としているが、三次元形状計測の為には面的な計測が必要である。共焦点光学系を用いて二次元画像(以下共焦点画像と称する)を得る為には何らかの走査手段を持つかまたは共焦点光学系の並列化かを行う必要がある。後者の並列化を行う典型的な光学系として二次元配列型共焦点光学系を持つ装置として、本発明者により既に出願された特願平8−94682号明細書がある。この装置を二次元配列型共焦点光学系の代表例として図11を用いて説明する。
【0004】
光源201から射出された照明光は照明ピンホール202とコリメーターレンズ203とによって並行光となってビームスプリッター204に入射する。ビームスプリッター204を下方に通過した照明光はマイクロレンズアレイ205に入射し、マイクロレンズアレイ205の各レンズ毎に各レンズの焦点位置に微小スポットを形成する。マイクロレンズアレイ205の焦点面はピンホールアレイ206となっており、各ピンホールはマイクロレンズアレイ205の各レンズと同軸である。この為照明光のほとんどはピンホールアレイ206を通過する。ピンホールアレイ206からでる照明光はちょうど点光源が並列に並べられていることに相当し、レンズ207a、レンズ207bと絞り208よりなる両側テレセントリックな対物レンズ207によりピンホールアレイ206の像(つまり多数の微小スポット)となって物体Aに投影されることになる。物体Aからの反射光は対物レンズ207によりピンホールアレイ206付近に集光される。ピンホールアレイ206は点計測型の共焦点光学系の、検出器側のピンホールの役目をもっており、物体Aに投影された各微小スポットの焦点位置(収束位置)に物体表面があれば対応するピンホールを多くの反射光が通過するが、物体Aの表面が焦点位置からはずれると反射光がピンホールを通過する光量は小さくなる。ピンホールアレイ206を通過した反射光はマイクロレンズアレイ205により各レンズから平行ビームとなって射出され、ビームスプリッター204により偏向させられ、縮小レンズ209によりビーム径が縮小されて二次元検出器210によりその強度が検出される。
【0005】
このような構造により共焦点画像全点が同時並列的に検出されることになる。Z軸方向に移動して焦点位置の異なる複数の共焦点画像を得て、画像各点毎に強度が最大となる画像を見つければ物体Aの表面形状が計測できる。
【0006】
ただし、多くの場合、物体の大きさは共焦点撮像系の一視野内には収まらない。そこで実際には物体に対する共焦点光学系の視野の位置を、XYテーブルを用いて移動させる必要がある。つまりZスキャンの為の移動機構を考えるとXYZ3軸の制御、移動が必要となる。装置コストおよび取り扱いを考えれば移動軸数はできるだけ少ない方が良い。
【0007】
また、このような構造であると、XY移動してXYテーブルを停止した状態でZスキャンを行う必要がある為、XY移動、停止、Zスキャンのサイクルを繰り返さなければならない。装置の高速性、取り扱いの容易性を考えればできるだけXY移動において停止することなく計測できた方が良い。
【0008】
そこで、特願平10−24070記載においては、Zスキャンを行うことなく、かつできるだけXY移動において停止することなく表面形状が計測できる表面形状計測装置(以下、焦点面傾斜型共焦点表面形状計測装置と称する)を提供している。次に本発明の基礎となっている焦点面傾斜型共焦点表面形状計測装置について説明をする。
【0009】
焦点面傾斜型共焦点表面形状計測装置は少なくとも一軸の移動機構と、前記移動機構の、ある軸の移動方向に対して物体側焦点面が傾斜するように配置された共焦点撮像系と、前記共焦点撮像系の視野を前記移動方向にN等分し、1/N視野移動する毎に前記共焦点撮像系により共焦点画像を得て、得られた複数の共焦点画像から物体の表面形状を演算する画像処理装置とにより構成されている。
【0010】
このようにすると連続するN枚の共焦点画像には物体の同じ部位が1/N視野分ずつずれて写ることになり、共焦点撮像系の物体側焦点面は傾斜している為N枚の共焦点画像に写っている、物体の同じ部位の画像はそれぞれ焦点位置が変化していることになりN段階のZスキャンを行ったことになる。焦点位置がN段階変化した画像列から従来の共焦点光学系による表面形状計測と同様に最大の輝度を与える画像を探せば、共焦点撮像系の物体側焦点面の傾きは事前に正確に計測しておくことが可能であるから、最大輝度を与える画像がN段階中の何段目にくるかによって物体表面のZ位置を正確に求めることが可能になる。
【0011】
また、共焦点撮像系は二次元配列型共焦点光学系とし、共焦点撮像系の物体側焦点面が傾斜している方向への移動は、計測範囲内を停止することなく移動し、1/N視野ごとにタイミングセンサによる信号に同期してシャッターまたはストロボまたはその両方を用いて撮像の為の露光を行うようにすれば、非常に広い視野範囲を高速に計測する事が可能になる。
【0012】
また、共焦点撮像系の物体側焦点面を
対物レンズの光軸に対してピンホールアレイ面を傾けて設置することによるようにすれば物体に対して光学系の光軸が傾かない為、より良い照明を施すことができる。
【特許文献1】特開平9−257440号公報
【特許文献2】特開平11−211439号公報
【特許文献3】特開2000−180139号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかし、焦点面傾斜型共焦点表面形状計測装置は、一軸移動機構による連続的ステージ移動である為、シャープな画像を得る為には露光時間を極端に短くしなければならない。その様子を図9に示す。具体的にいうと、1/N視野移動にかかる所要時間=撮像周期を10msとし、1/N視野内には移動軸方向に30画素列存在し、露光時間中の移動により発生するボケを一画素以内に収めると規定すると、露光時間は0.33msしか許容できないことになる。逆に、露光時間を十分とろうとすると撮像周期を長くする必要があり高速性との関係から好ましくない。結果、焦点面傾斜型共焦点表面形状計測装置としてのメリットを失ってしまう。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記移動機構の、ある軸の移動方向に対して物体側焦点面が傾斜するように配置された共焦点撮像系と、前記共焦点撮像系の視野を前記移動方向にN等分し、1/N視野移動する毎に前記共焦点撮像系により共焦点画像を得て、得られた複数の共焦点画像から物体の表面形状を演算する画像処理装置と、前記共焦点撮像系の露光タイミングに同期して前記移動機構の移動平面方向へ物体側焦点面を微小シフトさせる微小シフト機構により構成され、前記移動機構とほぼ同等の速度で前記微小シフト機構が微小シフト動作を行うことにより、共焦点撮像系に対し物体が静止したことと光学的に同等の効果を得ることができ、露光時間を長く確保することが可能となる。
【0015】
また、共焦点撮像系の露光時間中に、前記移動機構と垂直方向にも成分を持った方向へ前記微小シフト機構が微小シフト動作を行うことにより、スポット近傍の平滑化を行うことが可能となる。
【0016】
また、前記微小シフト機構は、平行平面と、この平行平面の光軸に対する角度を変化させる角度変化手段とにより構成され、対物レンズと物体との間またはピンホールアレイと対物レンズとの間に配置することにより、傾斜した焦点面を、移動機構の移動平面方向へ微小シフトさせることが可能となる。
【0017】
また、前記共焦点撮像系の構成として、共焦点ピンホールをスリット状にし、前記微小シフト機構と組み合わせることにより物体表面を隙間無く走査することが可能となる。
【発明の効果】
【0018】
本発明により、焦点面傾斜型共焦点表面形状計測装置において、露光時間を長く確保することが可能となり、また近傍の平滑化も同時に実現できるようになることから、高速かつ高精度な計測が実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図面を参照して具体的に本発明の実施の形態を説明する。図1に本発明の実施例を示す。
【実施例】
【0020】
Bは前記の二次元配列型共焦点光学系であり、図全体は焦点面傾斜型共焦点表面形状計測装置を表している。二次元検出器10には現在最も一般的なCCDカメラを用いることとする。計測する物体Aは移動機構12の上に乗っており、一軸方向に連続移動を行う。微小シフト機構11は平行平面11aと、その平行平面を光軸に対して角度変化させる手段11bとにより構成される。図3を用いて平行平面11aを通る光線が微小シフトする現象を説明する。光軸と垂直方向の軸に対して角度α(rad)の状態にある平行平面(屈折率:n、厚み:d (m) )へ結像光線が入射すると、空気と硝子との屈折率の違いから光線が屈折し、光束全体が光軸と垂直方向にシフトする。光軸と垂直方向に結像光線が微小シフトする距離Lはスネルの法則からL=d * sinα{ 1−√(1-sin2α)/√(n2-sin2α)}と求められる。つまり、結像光線が微小シフトする距離Lは角度αと平行平面の屈折率nと厚みdとにより調整することができる。今回は角度αを調整することにより、結像光線の微小シフトを実現している。
【0021】
次に、二次元検出器10と、微小シフト機構11と、移動機構12との連動について説明する。移動機構12はυ(m/s)で一軸方向に移動しているとする。また、移動機構12にはリニアスケール13が付随している。移動機構12が移動するとリニアスケール13から移動信号が出力され、カウンタ16がその移動信号をカウントする。カウンタ16は1/N視野分の距離カウントする毎にトリガー信号を発生するように構成されている。信号発生器18はこのトリガー信号を受け取ると即座に微小シフト機構11bと二次元検出器10とへトリガー信号を送る。微小シフト機構11bはトリガー信号を受け取ると、動作信号を生成し平行平面11aの角度変化動作を開始させる。並行して二次元検出器10はトリガー信号を受け取ると露光を開始させる。
【0022】
図12を用いて微小シフト機構11によるシフト動作について説明する。二次元配列型共焦点光学系によって物体Aには多数のスポットが投射されるが全て同様の動作となることから、ここでは1スポットを取り上げて説明する。露光時間t(s)において、微小シフト機構11がスポットを微小シフトさせる距離L(m)はL = √(Ly2 + (υt+Lx)2)、微小シフト方向と移動機構12の移動軸とで成す角度β(rad)はβ= tan-1(Ly
/ (υt+Lx))と表される。
【0023】
ここで、Lx(m)、Ly(m)は物体A上でのスポットのシフト量(物体との相対的なスポットの移動量)を表し、それぞれ移動軸と平行方向、垂直方向の距離である。Lx=0、Ly=0は、物体A上ではスポットがシフトしないことを表し、図2に示すように、移動機構12と微小シフト機構11によるスポットとが同速度で同方向動き、スポットは同一点を追従することとなり、共焦点撮像系に対して物体Aが停止したことと光学的に同様の状態となる。その為露光時間tの間、移動機構12により物体Aが移動していてもボケることなく撮像が可能となる。
【0024】
Lx≠0またはLy≠0の時は、スポットが物体A上を微小距離√(Ly2 + Lx2)だけ走査することになる。微小走査の利点について次に述べる。
【0025】
物体Aに投影されるスポットは基本的に点光源から射出されたコヒーレント性の高い光であり、スポット内で物体表面上に凸凹があるとこれらの反射光が結像面であるピンホールアレイ6付近で干渉を起こしてしまう。つまりスペックルが発生する。スペックルが発生すると、高さ計測の結果に著しい悪影響を与えてしまう。スペックルはコヒーレント性が高い光であるほどコントラスト(以下スペックルコントラストと称する)が高く、このスペックルコントラストが高いほど高さ計測への影響が大きい。画像処理により近傍平滑化処理を行ってスペックルコントラストを低減させ高さ計測の精度向上を図ることは可能であるが、XY方向に解像度が著しく低下してしまう。スペックルはスポット内での物体表面の凸凹により発生するから、凸凹がランダムであれば(粗面は一般的にランダムである)スポットを走査すれば凸凹の状態が変化しスペックルコントラストがランダムに変わる。走査によりランダムに変化するスペックルコントラストを重畳すればXY方向の分解能が低下してしまうが、二次元配列型共焦点光学系は次のような理由により一画素の範囲内で、つまりXY方向の分解能が落ちない範囲内で走査することでスペックルコントラストを低減することが可能である。
【0026】
二次元配列型共焦点光学系はスポットを物体Aに投影するが、スポット径に対してスポットピッチは数倍取る必要がある。これは、あるピンホールに隣接のピンホールのぼけた光が入射しないようにする為である。この条件により二次元配列型共焦点光学系の各点の画素開口率(スポット面積/一画素分の面積)は非常に低くなっている。このようにスポット径に対して画素サイズが大きいことは一画素内でスポットを走査する程度の微小な走査であってもスポットに含まれる物体表面が十分に変化できる、つまりスペックルコントラストの変化が十分に現れることを意味する。この微小走査を二次元検出器10の露光時間内に実行すれば時間的にスペックルコントラストの変化が重畳されて平滑化されることになる。このように二次元配列型共焦点光学系は一画素分程度の微小な走査を二次元検出器10の露光時間内に行うことによりXY方向の分解能を落とすことなくスペックルコントラストを低減することができる。
【0027】
Lx、Lyを効果的な値に設定し、β= tan-1(Ly / (υt+Lx))の式に代入して求めた角度方向に微小シフト機構11を設置することで、露光時間を従来より大きくとり、かつ分解能を落とさずスペックルの平滑化を行うことが可能となる。
【0028】
これまでに微小シフト機構11を用いて、露光時間を大きく得て、分解能を落とさず平滑化をする、などの画像を取得する為の方法を説明してきた。次に、取得した共焦点画像から物体の表面形状を演算する工程を、図4を用いて説明する。図4は図1を簡易化して表したものである。
【0029】
ここで説明の簡略化の為に物体AはY方向には共焦点光学系Bの視野15に収まる程度の大きさであり、X方向には視野15の数倍の大きさを持つものとする。移動機構12は前記の通り連続移動を行う。移動機構12が移動するとリニアスケール13から移動信号が出力され、カウンタ16がその移動信号をカウントする。カウンタ16は1/N視野分の距離カウントする毎にトリガー信号を発生するように構成されている。信号発生器18はこのトリガー信号を受け取ると微小シフト機構11の動作信号を生成し平行平面11aの角度変化動作を開始させると同時に、二次元検出器10へ露光トリガー信号を送り露光を開始させる。そして生成された共焦点画像は画像処理装置17へと出力される。視野15のX方向のサイズをa、物体側焦点面14の傾きがθであるとすると、1/N視野の距離は(a/N)cosθで表され、視野15は図5に示すようにN個の領域に分割される。視野15に対してカウンタ16は右方向に(a/N)cosθずつ移動する都度信号を出力し、N個の領域を左から領域1、領域2、...、領域Nと番号付けすると、移動機構12の移動に伴って物体Aの同じ部位の画像が領域1から順次2、3、...、Nと移動していくことになる。このとき共焦点光学系Bの物体側焦点面14はX軸に対して傾いている為、前記の物体Aの部位は領域1から移動していく毎に(a/N)sinθずつ物体側焦点面14との距離が変化していくことになる。つまりZスキャンが成し遂げられることになる。このときZのスキャン範囲はほぼa(N−1/N)sinθで、N回の移動により焦点位置がN段階異なる1/Nサイズの画像セットが得られることになる。この1/Nサイズの画像の各画素毎に、N段階異なる焦点位置の中から最大輝度値を与える(すなわち合焦時の)画像を探し、その画像中でのX位置からZの位置を求めることができる。一度前記画像セットが得られれば、その後は現在の部位の隣の部位の同様な(つまり焦点位置がN段階異なる1/Nサイズの)画像セットが一回の移動毎に得られるので物体すべての部位の画像セットが得られるまで移動し続ければよい。
【0030】
より具体的に図6、図7を用いてN=4の場合について説明する。連続して得られた共焦点画像4枚I1,I2,I3,I4から物体の同じ部位(図6では物体の先端部位)が写っている部分をそれぞれひっぱり出してくる(I1から領域1、
I2から領域2、 I3から領域3、 I4から領域4)。これが一つの画像セットであり、この画像セット内でそれぞれの画像の対応する画素どうしを比較して最大の輝度値を与える画像を探す。例えばI1中の画素(x、y)とI2の画素(x+a/4、y)とI3の画素(
x+a/2、y)とI4の画素( x+3a/4、y)の輝度を比較する。図7に示すように視野のx=0の位置をz=0と定義すればzの位置はxの値によってz=x・sinθで与えられるから、最大輝度を与える画像が例えばI3であれば物体のその点での表面位置は(x+a/2)sinθとして求めることができる。すべての画素について同様の演算を行うことでこの画像セット部位の表面形状データを得ることができる。
【0031】
もう一回移動してI5の画像が得られると、I2,I3,I4,I5の画像のそれぞれ領域1、領域2、領域3、領域4から新しい部位の画像セットが得られるので、同様な演算により物体の表面形状データを得ることができる。物体の全部位の画像セットが得られるまで移動して全データを得る。
【0032】
画像セットにおける各画像の焦点位置のピッチ(a/N)sinθが十分に小さい値となる場合は前記のように、対応するN個の焦点位置の異なる点から最大輝度となる点を見つけてきて、そのX座標値にsinθを掛ければよいが、前記ピッチが小さいと、非常に多くの画像を処理しなくてはならないあるいは十分なZスキャン範囲を得ることができない等の問題がある。
【0033】
一方前記ピッチを大きくとると、x・sinθの演算ではピッチが計測分解能に相当するから、計測分解能が低下してしまう。そこで補間演算を用いてピッチを広げてかつ計測分解能を低下させないようにすることを考える。
【0034】
光軸方向の物体の移動に対する共焦点光学系の出力特性は、オプティカルセクショニング特性と呼ばれる図8に示すような山形の特性となる。この曲線のピーク位置が合焦位置を示しており、この位置を求めることが必要である。前記ピッチが小さい場合はこの曲線をほぼ連続的にサンプリングしていることになるからその最大値のサンプリング点の位置から求めることができる。今、図8の点線で示すような荒いピッチでサンプリングした場合、各サンプリング点の位置はxi・sinθ(xi+1=xi+a/N)で与えられ、サンプリング点中の最大値をfiとしてfiの前後のサンプリング値をそれぞれfi-1、fi+1とするとピーク位置はガウス関数にフィッティングすることでz=xi・sinθ+(log(fi+1)−log(fi-1))・(a/N)・sinθ/(2・(2・log(fi)−log(fi+1)−log(fi-1)))として正確に求めることができる。もちろんフィッティング関数は必ずしもガウス関数でなくてもよく2次曲線(放物線)関数やガウス関数の近似関数等も用いることができる。また、フィッティング演算以外でも、例えば重心演算であるとか山の形のテンプレートを用意しておいてテンプレートとの相互相関から求めることもできる。また、必ずしも3点で演算する必要もなく5点でも7点でも良い。このような補間演算を用いることによりNの数を小さくして、演算に必要な画像の枚数を減らし、かつ分解能を落とさないことも可能になる。
【0035】
以上説明した実施の形態において、例えば次のように構成の一部を適宜変更して実施することも可能である。勿論以下において例示しないほかの変更例も当然可能である。

【0036】
前記説明の実施の形態ではピンホールアレイを用いていたが、ピンホールアレイをスリットアレイに代えたものに構成する。スリットアレイのスリット方向は移動方向と平行方向、または垂直方向どちらの場合も考えられる。スリットアレイの外観と微小シフトの向きを図13、図14に示す。スリット穴は連続的にピンホールがあるのと同じと考えられるので、スリット方向に対しては隙間の無い計測が可能となる。そして微小シフト機構11によってスリット方向と直交方向に微小シフトするようにすれば、物体A上の全面で隙間のない計測が可能となる。以上からスリットアレイにより二次元配列型の共焦点表面形状計測装置の問題点の一つである不感領域がなくなり、かつスペックルの平滑化も可能となる。このことにより光る領域が画素サイズ以下の大きさしかない物体、例えば小さいボールの、頂点の高さの計測であっても問題なく計測することが可能になる。
【0037】
本実施例では微小走査機構として平行平面と、その平行平面を光軸に対して角度変化させる手段とにより構成されたものを示したが、本発明の本質は、二次元検出器の露光時間内にスポットを物体に対して微小シフトさせることにあり、実現手段はその他にも色々と考えることができる。例えば、対物レンズのテレセントリック絞りの位置で90度に光路を折り曲げ、光路を折り曲げる為のミラーを振ることでも本実施例と全く同様の効果が得られる。他にも、ピンホールアレイまたは共焦点光学系全体を微小シフトさせても同様の効果が得られる。また、本実施例では二次元検出器としてCCDカメラを示したが、光信号を電気信号に光電変換し二次元検出を行う装置あれば本発明としての機能を果たすのでCMOSカメラなどで置き換えることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明により、焦点面傾斜型共焦点表面形状計測装置において、露光時間を大きく得ることができ、また近傍の平滑化も可能となる。これにより、対象物の表面形状計測を、高速性を保ちつつ精度向上した計測が実現でき、表面形状計測による各種検査、特に計測速度や精度に対する要求の厳しい半導体業界に大きな効果を上げることが期待できる。

【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の最良の形態を説明する為の図である。
【図2】微小走査機構を用いてステージ移動に追従する様子を表した図である。
【図3】平行平面の角度調整による光線のずれを説明する為の図である。
【図4】本発明の最良の形態を説明する為の図を簡易化した図である。
【図5】本発明の共焦点撮像系の視野について説明する為の図である。
【図6】本発明の画像処理方法について説明する為の図である。
【図7】本発明の共焦点撮像系の視野の位置とZ座標の位置の関係を示す図である。
【図8】共焦点光学系のオプティカルセクショニング特性を示す図である。
【図9】本発明の露光時間について説明する為の図である。
【図10】共焦点光学系を説明する為の図である。
【図11】二次元配列型共焦点光学系を説明する為の図である。
【図12】微小走査機構による走査方向、距離などを示した図である。
【図13】スリットアレイを移動軸と平行に配列した際の物体とスポット位置の図である。
【図14】スリットアレイを移動軸と垂直に配列した際の物体とスポット位置の図である。
【符号の説明】
【0040】
1、101、201 光源
2、202 光源ピンホール
3、203 コリートメントレンズ
4、102、204 ビームスプリッター
5、205 マイクロレンズ
6、206 ピンホールアレイ
7、103、207 対物レンズ
8、208 テレセントリック絞り
9、209 縮小レンズ
10、210 二次元検出器
11 微小シフト機構
12 移動機構
13 リニアスケール
14 焦点面
15 視野
16 カウンター
17 画像処理装置
18 信号発生器
104 ピンホール
105 検出器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一軸の移動機構と、前記移動機構の、ある軸の移動方向に対して物体側焦点面が傾斜するように配置された共焦点撮像系と、前記共焦点撮像系の視野を前記移動方向にN等分し、1/N視野移動する毎に前記共焦点撮像系により共焦点画像を得て、得られた複数の共焦点画像から物体の表面形状を演算する画像処理装置と、前記共焦点撮像系の露光タイミングに同期して前記移動機構の移動平面方向へ物体側焦点面を微小シフトさせる微小シフト機構を有し、共焦点撮像系の露光時間中に、前記移動機構とほぼ同等の速度で前記微小シフト機構が微小シフト動作を行うことを特徴とした焦点面傾斜型共焦点表面形状計測装置。
【請求項2】
共焦点撮像系の露光時間中に、前記移動機構と垂直方向にも成分を持った方向へ前記微小シフト機構が微小シフト動作を行うことを特徴とした請求項1記載の焦点面傾斜型共焦点表面形状計測装置。
【請求項3】
微小シフト機構は、平行平面と、この平行平面の光軸に対する角度を変化させる角度変化手段とにより構成され、対物レンズと物体との間またはピンホールアレイと対物レンズとの間に配置することを特徴とする請求項1及び請求項2記載の焦点面傾斜型共焦点表面形状計測装置。
【請求項4】
共焦点撮像系の構成として、共焦点ピンホールがスリット状であることを特徴とした請求項1及び請求項2及び請求項3記載の焦点面傾斜型共焦点表面形状計測装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2008−145268(P2008−145268A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−332871(P2006−332871)
【出願日】平成18年12月11日(2006.12.11)
【出願人】(000002842)株式会社高岳製作所 (72)
【Fターム(参考)】