説明

現像ブレード用金型及び現像ブレードの製造方法

【課題】弾性部材の形状に応じて形成したキャビティ部が材料を充填し難い複雑な形状でも、確実に充填して現像ブレードを製造できる金型を提供する。
【解決手段】長尺形状の硬質プレート2上に長手方向LDに沿って弾性部材を接着し、更に前記硬質プレートが長手方向での両側部に切欠き部を有すると共に、当該切欠き部を跨ぐようにして前記弾性部材が成型してある現像ブレード1の製造用金型30であって、前記弾性部材の形状に応じた形状のキャビティ部CAに材料を注入するゲート部35の位置が、前記長手方向LDで前記切欠き部と本体部中央側との境界CL上或いはこれより外側、または、前記境界より内側に10mm以内に設定してある。この金型のキャビティCA内に材料を注入するゲート部35の位置が、長手方向LDで最適に設定してあるので、切欠き部に対応する細径部が存在している場合でも材料を確実に充填し、充填不良やバリの発生を抑制可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属などで形成した硬質プレートの片側の面にゴム材などの弾性部材を接着して形成してある現像ブレードを製造するための金型及び現像ブレードの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機、ファクシミリ、プリンター等の電子写真方式あるいは静電記録方式の画像形成装置(以下、これらを総称して「OA装置」と称す)において、特にカラー用のものに関しては、非磁性現像剤を帯電させその電荷により感光ドラムに現像剤を転写する方式が採用されている。この方式においては、現像ローラの外周上に現像剤を担持させ、回転する現像ローラによって供給される現像剤の量を、この外周面に対向する姿勢で取付けた現像ブレードにより規制すると共に、このブレードで現像剤を摩擦帯電させることが行われている。
【0003】
そして、このような現像ブレードとして、現像剤が通過する隙間を形成するのに十分な柔軟性と、現像剤を摩擦帯電させるのに必要な特性とを有するゴム部材を薄肉の金属プレートに接着したものが採用されている。
【0004】
このような現像剤の量規制をする現像ブレードは、従来から、接着剤となるプライマ(以下、プライマと称す)を予め塗布した金属プレートを金型内の所定位置にインサートし、トラスファー成形法や射出成形法を用いてゴム材料を金型のキャビティに充填(注入)して、金型内で金属プレートにシリコーンゴム部材などを貼付けた状態に成型する方法が採用されている。
【0005】
さらに、近年にあっては、OA装置側の種々の要請に応じて、多種、多様な形状の現像ブレードが製品化されている。よって、これに伴って現像ブレードを成型する金型についても適宜に改善、変更することが必要となっている。例えば、特許文献1は長手方向での両側に切欠き部を有している金属プレートにゴム部材を接着した現像ブレードの製造法について開示しており、特に金属プレートが配置されたインサート成形用の金型から現像ブレードを容易に取り出すことができる方法および金型について提案している。
【特許文献1】特開2004−151249号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のように特許文献1は製造工程で金型から現像ブレードを容易に取出ための技術を提案するものであって、硬化させる前の材料でキャビティ内を確実に充填することについては検討をしていない。しかしながら、特許文献1で開示する現像ブレードで採用している金属プレートは、上記のように両側部に切欠き部のある複雑形状であり、この切欠き部の近傍のゴム部材は断面積が小さく幅が狭い形状となっている。よって、このようなゴム部材を成型するために使用する金型にも対応の細径部を設け、更にはこの細径部に材料を確実に充填させることが必要となる。しかし、このように細く、複雑な形状部分に材料を充填することは一般に困難であって、製造工程で充填不良(ショート ショット)となる虞がある。
【0007】
よって、本発明の目的は、弾性部材の形状に応じて形成したキャビティ部が材料を充填し難い複雑な形状を含むような場合であっても、確実に充填して現像ブレードを製造できる技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的は、長尺形状の硬質プレート上に長手方向に沿って弾性部材を接着してなり、更に前記硬質プレートが長手方向での両側部に切欠き部を有していると共に、当該切欠き部を跨ぐようにして前記弾性部材が成型してある現像ブレードの製造に用いる金型であって、前記弾性部材の形状に応じた形状のキャビティ部に材料を注入するゲート部の位置が、前記長手方向で前記切欠き部と本体部中央側との境界上或いはこれより外側、または、前記境界より内側に10mm以内に設定してある現像ブレード用金型により達成できる。
【0009】
また、前記キャビティ部の本体部の概略形状が長方形であると共に、前記長手方向と垂直である幅方向で前記切欠き部とは反対側で拡幅する突出部が形成されており、前記ゲート部が、前記幅方向では前記突出部内に設定されている構造とするのが好ましい。
【0010】
そして、更に、前記弾性部材の形状に応じた形状にキャビティ部が形成されており、当該キャビティ部は長手方向で前記切欠き部より外側の側端部にガスを排出するガスベント部が設けてある構造とするのがより好ましい。
【0011】
また、前記キャビティ部の周囲には密閉用のパッキンが配備されると共に、当該パッキンの内側に真空引き部が設けられ、当該真空引き部を介して外部のガス吸引装置に接続されて前記キャビティ部の周囲を真空引きできるように構成してある構造とするのが望ましい。
【0012】
また、前記キャビティ部は、複数の現像ブレードを同時に形成するように多数本取りに設定しておけば生産性の面でより望ましい金型構造となる。なお、多数本取りの数は4〜16本程度とするのが好ましい。特に、ゲートバランスを考慮すると、4、8、16本取りとするのが望ましい。
【0013】
上記の現像ブレード用金型は、上記の現像ブレード用金型に材料を注入して現像ブレードを製造する方法であって、前記材料を液状シリコーンとしたことを特徴とする現像ブレードの製造方法に対して特に効果が高い。
【発明の効果】
【0014】
本発明によると、金型のキャビティ部内に材料を注入するゲート部の位置が、長手方向で最適に設定してあるので、切欠き部に対応する細径部が存在している場合でも材料を確実に充填し、充填不良やバリの発生を抑制可能な現像ブレード用の金型を提供できる。
【0015】
更に、前記ゲート部の位置を長手方向と垂直な幅方向でも適切に設定することで充填不良やバリの発生をより確実に抑制できる現像ブレード用の金型とすることができる。
【0016】
更には、切欠き部より外側の側端部にガスを排出するガスベント部が設けることで、滞留し易い部分のガスを確実に排出して、充填不良の発生を更に確実に抑制できる現像ブレード用の金型とすることができる。
【0017】
また、キャビティ部の周囲に密閉用のパッキンを配備し、このパッキンの内側に真空引きする構造を採用した場合には、材料をより効率良く充填することができる。この場合、材料の充填圧(注入圧)を低圧にしてもガス抜き、および充填不良を確実に防止できる。
【0018】
前記キャビティ部を複数の現像ブレードを同時に形成するように多数本取りとした場合には、一度に複数の現像ブレードを製造できるので、成型時間の短縮化および上記真空設備の簡素化を図ることができる。ところで、一般に、多数本取りとした金型は、圧力制御や材料流れの制御が複雑になるので、キャビティ部間でのゲートバランスなど、材料充填条件にバラツキが発生し易い。その結果、多数本取りとした金型構造では、材料の一部が漏れ出「バリ」が発生してしまう場合がある。これのような問題に対して、本発明では、上記のようにガスベント部を設けた構造、更に好ましくはガス吸引装置でキャビティ部の周囲を減圧する構造にすることで、充填圧が低圧でも材料がより充填され易い状況を形成可能としている。よって、充填し難い複雑な形状を含むような場合であっても、材料をキャビティ部に確実に充填する金型を提供できる。
なお、一般に寸法精度を高くして金型を製造すれば、バリの発生を抑制できることが知られている。ただし、多数本取りとした場合の金型は内部に複数のキャビティ部が形成されるので、これらキャビティ部の全てについて寸法精度良く揃えることは極めて困難である。仮に、これを実現しようとすると金型のコストが著しく増大してしまう。金型精度が低い場合には、成形条件を最適化(例えば、充填圧を下げるなど)してバリ発生を抑制する対処が必要となる。そのため、製造工程での調整が複雑化して、やはりコストの上昇を招来してしまう。これに対し、本発明を採用すると、金型に寸法のバラツキがある場合でも、これに適切に対処して成形条件を最適化できる。
【0019】
上記現像ブレード用金型の材料として、液状シリコーンを採用することにより生産効率を高めて現像ブレードを製造できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明にかかる一実施形態を、図を参照して詳細に説明する。
図1は、本実施形態の金型を用いて製造される現像ブレードをOA装置に取付けた状態を示している模式図である。図2は現像ブレードを取り出して示した正面図である。現像ブレード1は、薄肉で長尺形状をなす硬質プレートとしての金属プレート2と、その一方の面2aの一部に配置された弾性部材としてのゴム部材3とを含んで構成されている。このようなゴム部材3としては、例えば2液硬化性ポリウレタン、フッ素ゴム、クロロプ レンゴム、シリコーンゴム(ミラブル、液状)などの熱硬化性樹脂を好適に採用することができる。特に、物性などの性能や生産効率の面から、ゴム部材3の材料として液状シリコーンを採用するのが好ましい。金属プレート2は、例えばステンレスなどで形成することができる。また、ゴム部材3は、金属プレート2の長手方向での中央部にプライマにより接着固定されている。
【0021】
なお、図1で示すように現像ブレード1は、回転する現像ローラ100の周面に当接する姿勢、もしくは、周面と僅かの隙間を有する姿勢で配置され、現像ローラ周面100a上の現像剤101の層厚さを規制するように機能する。
【0022】
そして、図2で示すように、現像ブレード1の片面にゴム部材3が接着されている。この現像ブレード1の金属プレート2は、長手方向LDでの両側部にそれぞれ切欠き部3GLが形成されている。そして、これらの切欠き部3GLを跨ぐようにゴム部材3が成型されている。例示している現像ブレード1の構成をより詳細に説明すると、両側に何も配備しないブランクエリアBAが形成してある。このブランクエリアBAは、OA機器に現像ブレードをセットする際、また機器へのセット後にあって所望のシール材を貼るなどで使用するために何も付着させないようにしてある領域である。さらに、この現像ブレード1の金属プレート2は、ブランクエリアBAの直ぐ内側に切欠き部3GLが形成してある。この切欠き部3GLもOA機器側の要請に基づくものである。この様に、金属プレート2の長手方向LDでの両側部には切欠き部が形成され、この切欠き部を跨ぐようにしてゴム部材3が成型してある。よって、ゴム部材3は切欠き部を跨いで反対側(外側)まで存在し、ブランクエリアBAとの境界BLまで形成されている。そのために、切欠き部3GLを跨いで外側に延在したゴム部材3の延在部分3PRは複雑で断面積の小さな形状(幅が狭い形状)になっている。図2を参照して具体例を示すと、例えば長手方向LDでの延在部分3PRの長手方向LDの寸法は1mm程度となる。
【0023】
更に、図を参照して、上記現像ブレード1を製造するのに好適な金型について説明する。図3は、上記現像ブレード1を製造する際に使用する金型の片方である下型10の構造を模式的に示した平面図である。なお、ここでは図示しない上型は下型10と対応した形状を有しており、下型10の上に載置されると内部に現像ブレード1と対応した形状に形成されている。
【0024】
図3で示す下型10は、上記金属プレート2をセットする位置が設定されている。そして、この金属プレート2の所定位置にゴム部材3を形成するため、硬化前の材料が充填されるキャビティ部(凹部)CA(以下、キャビティCAとする)が設けてある。このキャビティCAには、前述した現像ブレード1の両側部の切欠き部3GLに対応する位置で内側へ突出するくぼみ部11が設けてある。このくぼみ部11を設けることで、ゴム部材3を成型したときに切欠き部3GLを跨ぐように成型できる。
【0025】
しかしながら、上記のようにキャビティCAにくぼみ部11を設けると、これより長手方向LDで外側の領域(現像ブレード1の延在部分3PRとなる領域に対応する部分、以下、側端部11PRとする)が断面積の小さな形状となる。そのため、キャビティCAに材料を充填したときに、この側端部11PRにガス(主に空気)が滞留してしまう可能性がある。そのため、この側端部11PRに材料を充填できなかった部分が発生して充填不良となる場合が想定される。
【0026】
そこで、本発明者はキャビティCA内に材料を注入するゲート部(図3中では符号15で示す)の位置を側端部側へ寄せることにより、硬化前の材料を側端部へ誘導して確実に充填できる最適な条件について検討を行って、これを特定した。
【0027】
本発明者は材料を注入するゲート部の位置を、最適に設定することによって材料の充填不良やバリ発生を抑制できることを確認した。好ましいゲート部の位置設定について、図面を参照して以下説明する。図4は、ゲート部の位置設定を説明するために示した図であって、金型の一部(右側部分)を拡大して示している。この図4で示す金型30のゲート部35は、現像ブレード1の延在部分3PR(図2参照)を形成する領域、すなわち、くぼみ部31及びその外側に存在する側端部31PRに対応して所定の位置関係で設定されている。なお、この図4は、図3の場合と同様に、金属プレート2を設置した状態で下型の様子を図示しており、金属プレート2の下に位置するキャビティCAを点線で示している。また、このキャビティCAはその概略形状が長方形(矩形)形状である。そして、前記長手方向LDと垂直な幅方向WDで、くぼみ部31(切欠き部を形成する部分)と反対側で本体部より幅WTだけ拡幅した突出部(タブ部)38が設けられている。
【0028】
現像ブレード1は採用されるOA装置側の要求に応じて、その形状が規定される。これに応じて、金型内のキャビティCAの形状(寸法)が定まることになる。キャビティCAの概略寸法は、例えば長手方向LDで150〜300mm、幅方向WDで2〜10mmとなる。そして、これに対して、突出部38の長手方向LDの寸法は例えば5〜30mm、幅方向WDでの突出量(突出幅WT)は1〜10mm程度である。
【0029】
図4で示す金型30で、ゲート部35は、長手方向LDでくぼみ部31と本体部中央側との境界CL上、或いはこれより外側に設定するのが好ましい。または、ゲート部35は境界CLより内側に10mm以内に設定するのが好ましい。ただし、前述した形状(寸法)のキャビティCAとする場合、長手方向LDでの側端部31PRの寸法は例えば1mm、くぼみ部31の寸法は例えば3mm、また、突出部38の長手方向の寸法については特に規定はないが、例えば15mm程度である。
【0030】
また、ゲート部35は幅方向WDで本体部より突出した突出部38内に設定されている。幅方向WDでの本体部の寸法は例えば9.5mmで、突出部38の突出する幅WTについては規定する必要はないが、余裕をもってゲート部35を設定できる幅寸法にしておけばよい。ゲート部35は、例えば円形の管路である。その直径は0.3〜2.0mm程度とするのが好ましく、更には0.5〜1.2mmとするのが特に好ましい。
なお、上記のようにゲート部35の配置位置は突出部38内としておくのが好ましい。長手方向LDで前述した条件を少なくとも満たすようにゲート部35を配置すれば、充填不良やバリ発生を抑制する効果を期待できるが、突出部38より本体側、特に本体部の幅方向中央より下方に配置すると、いわゆるヒケが本体に発生し易くなるため突出部内であることが望ましい。
【0031】
図5は、ゲート部35の設定位置と充填不良、バリ発生の関係をまとめて示した模式図である。図5の各図(a)〜(d)では、境界CLをゼロ(0)とし、境界CLから本体部中央側(図で左側)へ向かってプラス(+)、境界CLからくぼみ部31を介して外側へ向かってプラス(−)で示している。この各図(a)〜(d)では、ゲート部35を起点とした複数の矢印は材料の流れを示している。
【0032】
図5(a)はゲート部35を境界CL上としてある場合で、本体部側および側端部31PRに材料を最もバランス良く流すことができる。よって、ゲート部35の位置を図5(a)で示すように境界CL上に設定するのが最も好ましい。図5(b)はゲート部35を境界CLより内側に10mm以内とした場合、図5(c)は境界CLより外側とした場合である。このどちらの場合も、本体部中央側および側端部31PRへ材料を流すことができるので、これらの範囲内にゲート部35を適宜に設定できる。ただし、図5(c)の場合にあっては、あまりに外側にゲート部35を設定し過ぎるとバリが発生の可能性が生じてしまう。
【0033】
図5(d)は境界CLより10mmを越えて内側へ、ゲート部35を設定した場合の比較例を示している。このようにゲート部35の設定位置を内側へ設定し過ぎると、側端部31PRへ材料を十分に流すことができなくなるので、充填不良が発生してしまう。
【0034】
図6は、上述した金型30の具体例について示している図であり、上段に金型の簡略図、下段にゲート部位置と充填不良(ショート)及びバリ発生の有無をまとめたものである。なお、ここでの材料粘度は70〜600Pa・s(10s−1)、ゲート部35の直径は0.8〜1.2mmである。そして、射出圧は標準で20MPaであるが、ショートが発生する場合は50MPaまでの間で適宜に増加させている。
【0035】
図6から明らかなように、ゲート部35の長手方向での位置設定は、境界CLから内側へ10mmまでとするのが好ましく、より好ましくは7mmである。そして、外側へは3mmまでとするのが好ましく、より好ましくは2mmである。だだし、ここでは境界CLの外側に幅3mmのくぼみ部、更にその外側に幅1mmの側端部を設定した場合である。図6の下段の図では好ましいゲート部設定範囲をAR、より好ましい設定範囲をGRで示してある。
【0036】
更に、前述した金型が備えているのが好ましい構造について説明する。再度、図3を参照する。図3で示す下型10のキャビティCAには、側端部11PRに滞留するガスを排出する通路状のガスベント部12、13が付加してある。ここでは、長手方向に延在するように設けた第1のガスベント部12と、これと垂直に延在するように設けた第2のガスベント部13を例示している。ただし、キャビティCAの設計時の要請に応じていずれか一方のガスベント部としてもよい。なお、図3は金属プレート2を設置した状態で下型10の様子を図示している。よって、金属プレート2の下に位置するキャビティCAとガスベント部12の一部を点線で示している。ただし、図3では符号15でゲート部の位置を示している。
【0037】
なお、採用する材料の粘度により上記のようにガスベント部12、13を設けた場合でも、キャビティCAへ低粘度の材料を充填する場合、側端部11PR内でのガス滞留を防止するため所定圧以上にすると、材料が隙間部分に漏れ出してバリが発生する可能性がある。よって、使用する材料の粘度および充填圧、ガスベント部12、13の内径や、厚み、幅などを適宜に調整することが好ましい。図3を参照してガスベント部12について、具体例を示すと、材料の粘度70〜600Pa・s(10s−1)、また射出圧10〜50MPaであるときに、幅(図3で上下方向での寸法)を3.0mm程度、厚み(図3の紙面に対し垂直方向での寸法)を0.001〜0.01mm程度とすることができる。
【0038】
さらに、図3で例示した下型10は現像ブレードを個別(1本取りで)製造する場合について示しているが、図7で例示する下型20は現像ブレード1を多数本取り(図7の例示は4個取り)するように設計されている。すなわち、図7では、4個の現像ブレードを同時に製造するように下型20内に4個のキャビティCA−1〜CA−4が形成されている。この下型20の所定位置に金属プレート2が保持され、その内側に各キャビティCA−1〜CA−4が設定されている。プライマを予め塗布した金属プレート2をセットしてから図示しない上型で上方を閉止し、各キャビティCA−1〜CA−4内に材料を所定領域内に充填し、これを硬化させる。複数の現像ブレード1を同時に製造できるので成型時間の短縮化を図ってコスト低減を図ることができる。
【0039】
上記金型が備えておくのが好ましい構造を、更に図7を参照して説明する。下型20にはキャビティCA−1〜CA−4の周囲には密閉用のパッキン21が配備されると共に、当該パッキン21の内側に(図7ではパッキンの下側をくぐって)真空引き部22が設けられている。この真空引き部22は、外部のガス吸引装置(真空ポンプ)23に接続されてパッキン21内にあるキャビティの周囲を真空引きできるように構成してある。このように真空引きする構造を更に備えることでキャビティ周囲を低圧とし、キャビティ内から不要ガスを速やかに排出させることができる。よって、各キャビティ内に材料をスムーズに流仕込んで充填不良を防止できる。なお、図3で示した1個取りの金型についても、ここで説明した真空引き構造を同様に設けても良いことは言うまでもない。ただし、図7のように多数本取りとした金型であれば、真空引きに係る構造を共有できるので真空設備の簡素化を図り、その結果として生産性を上げることができるため製造単価を下げることができる。なお、先に説明したゲート部位置の好ましい設定条件についても、1本取りだけでなく、多数本取りの金型に同様で適用できることは言うまでもない。
【0040】
以上本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0041】
以上の説明から明らかなように、この発明によればOA装置に使用する現像ブレードを確実に、また効率良く製造するための金型を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本実施形態の金型を用いて製造される現像ブレードをOA装置に取付けた状態を示している模式図である。
【図2】現像ブレードを取り出して示した正面図である。
【図3】現像ブレードを製造する際に使用する金型の片方である下型の構造を模式的に示した平面図である。
【図4】ゲート部の位置設定を説明するために示した図である。
【図5】ゲート部の設定位置と充填不良、バリ発生の関係をまとめて示した模式図である。
【図6】金型の具体例について示している図であり、上段に金型の簡略図、下段にゲート部位置と充填不良及びバリ発生の有無をまとめた図を示している。
【図7】現像ブレードを多数本取りするように設計した金型例について示した図である。
【符号の説明】
【0043】
1 現像ブレード
2 金属プレート(硬質プレート)
3 ゴム部材(弾性部材)
3PR 延在部分
3GL 切欠き部
10 下型(金型)
11PR 側端部
12、13 ガスベント部
15 ゲート部
20 多数本取りの下型(金型)
21 パッキン
22 真空引き部
23 ガス吸引装置
30 下型(金型)
31 くぼみ部
35 ゲート部
38 突出部
100 現像ローラ
CA キャビティ
LD 長手方向
WD 幅方向
CL くぼみ部(切欠き部)と本体部中央側との境界

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺形状の硬質プレート上に長手方向に沿って弾性部材を接着してなり、更に前記硬質プレートが長手方向での両側部に切欠き部を有していると共に、当該切欠き部を跨ぐようにして前記弾性部材が成型してある現像ブレードの製造に用いる金型であって、
前記弾性部材の形状に応じた形状のキャビティ部に材料を注入するゲート部の位置が、前記長手方向で前記切欠き部と本体部中央側との境界上或いはこれより外側、または、前記境界より内側に10mm以内に設定してある、ことを特徴とする現像ブレード用金型。
【請求項2】
前記キャビティ部の本体部の概略形状が長方形であると共に、前記長手方向と垂直である幅方向で前記切欠き部とは反対側で拡幅する突出部が形成されており、
前記ゲート部が、前記幅方向では前記突出部内に設定されている、ことを特徴とする請求項1に記載の現像ブレード用金型。
【請求項3】
前記弾性部材の形状に応じた形状にキャビティ部が形成されており、当該キャビティ部は長手方向で前記切欠き部より外側の側端部にガスを排出するガスベント部が設けてある、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の現像ブレード用金型。
【請求項4】
前記キャビティ部の周囲には密閉用のパッキンが配備されると共に、当該パッキンの内側に真空引き部が設けられ、当該真空引き部を介して外部のガス吸引装置に接続されて前記キャビティ部の周囲を真空引きできるように構成してある、ことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の現像ブレード用金型。
【請求項5】
前記キャビティ部は、複数の現像ブレードを同時に形成するように多数本取りに設定してある、ことを特徴とする請求項4に記載の現像ブレード用金型。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の現像ブレード用金型に材料を注入して現像ブレードを製造する方法であって、
前記材料を液状シリコーンとした、ことを特徴とする現像ブレードの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−122384(P2009−122384A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−295990(P2007−295990)
【出願日】平成19年11月14日(2007.11.14)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】