説明

真空成膜装置用部品の製造方法

【課題】真空成膜装置で内部応力が大きい薄膜を成膜する際に、成膜工程中に付着する成膜材料の剥離を安定かつ有効に防止し、装置クリーニングや部品の交換などに伴う生産性の低下や成膜コストの増加を抑える。
【解決手段】Ti、Zr、Hf、Nb、Ta、W、Ru、Pd、Ir、Pt、Ag、AuおよびInから選ばれる金属元素の単体、もしくは前記金属元素を含む合金または化合物の薄膜を成膜する真空成膜装置の構成部品の製造方法であって、部品本体の表面にCuの含有比率が65〜95質量%の範囲のCu−Al合金からなるCu−Al合金膜を形成する工程と、前記Cu−Al合金膜に1.33×10−3Pa以下の真空雰囲気中で300〜800℃の温度でアニール処理を行う工程とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スパッタリング装置やCVD装置などの真空成膜装置に用いられる真空成膜装置用部品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体部品や液晶部品などにおいては、スパッタリング法やCVD法などの成膜方法を利用して各種の配線や電極などを形成している。具体的には、半導体基板やガラス基板などの被成膜基板上に、スパッタリング法やCVD法などを適用して、各種の金属薄膜や金属化合物薄膜を形成している。これら各薄膜は配線層、電極層、バリア層、下地層(ライナー材)などとして利用される。
【0003】
ところで、上述した金属薄膜や金属化合物薄膜の形成に使用されるスパッタリング装置やCVD装置などの真空成膜装置においては、成膜工程中に成膜装置内に配置されている各種部品にも成膜材料が付着、堆積することが避けられない。このような部品上に付着、堆積した成膜材料(付着物)は、成膜工程中に部品から剥離することによりダストの発生原因となる。このようなダストが被成膜基板上の薄膜中に混入すると、配線形成後にショートやオープンなどの配線不良を引き起こし、製品歩留りの低下を招くことになる。
【0004】
このようなことから、従来のスパッタリング装置などにおいては、防着板やターゲット固定部品などの装置構成部品の表面に、ターゲット材もしくはそれと熱膨張率が近い材料の被膜を形成することが行われている。また、部品表面への被膜の形成方法に関しても種々の提案がなされており、特に部品本体との密着性や成膜材料の付着性などに優れる溶射法が適用されている(例えば特開昭61−56277号公報、特開平9−272965号公報など参照)。このような部品表面の被膜によって、装置構成部品上に付着、堆積した成膜材料(付着物)の剥離、脱落を防止している。
【0005】
上記したような従来の付着物の剥離防止対策によっても、ある程度の効果が得られている。しかし、例えばWやTaに代表される高融点の金属を成膜材料として用いて、金属薄膜や化合物薄膜を成膜した場合には、薄膜の内部応力が大きいことに起因して、装置構成部品上に付着、堆積した成膜材料(付着物)の剥離が生じやすいという問題がある。特に、窒化物や酸化物などの化合物薄膜は内部応力が顕著であることから、付着物の装置構成部品に対する密着力が低下して容易に剥離してしまう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように、従来の真空成膜装置の構成部品における付着物の剥離防止対策では、W膜、Ta膜、WN膜、TaN膜などに代表される内部応力が大きい薄膜を成膜する際に、部品表面に付着した成膜材料(付着物)の剥離を十分に抑制することができず、比較的短期間で付着物の剥離が生じてしまうという問題がある。付着物の剥離が発生すると急激にダストの発生量が増加するため、装置のクリーニングや部品の交換が必要となり、結果的に生産性の低下や成膜コストの上昇などが生じてしまう。
【0007】
すなわち、内部応力が大きい金属薄膜や化合物薄膜を成膜するための真空成膜装置においては、従来の付着物の剥離防止対策が十分に機能せず、生産性の低下や成膜コストの増加などを招いている。さらに、内部応力が大きい薄膜は、被成膜基板に対する付着力も弱いため、成膜時に基板温度を高く設定する場合が多く、このような際には部品温度も例えば500℃前後まで上昇する。このため、装置構成部品の表面に形成する被膜には、高温環境下での使用に耐え得るような特性を有することが求められている。
【0008】
また、最近の半導体素子においては、256M、1Gというような高集積度を達成するために、配線幅の狭小化(例えば0.18μm、さらには0.1μm以下)が進められている。このように狭小化された配線やそれを有する素子においては、例えば直径0.2μm程度の極微小粒子(微小パーティクル)が混入しても、配線不良や素子不良などを引起こすことになるため、装置構成部品に起因する微細なダスト(パーティクル)の発生をより一層抑制することが強く望まれている。
【0009】
本発明はこのような課題に対処するためになされたもので、内部応力が大きい薄膜を成膜する際に、成膜工程中に付着する成膜材料の剥離を安定かつ有効に防止し、装置クリーニングや部品の交換などに伴う生産性の低下や成膜コストの増加を抑えると共に、微細なダストの発生を抑制することを可能にした真空成膜装置用部品、さらに成膜した膜中へのダストの混入を抑制し、高集積化された半導体素子などへの対応を図ると共に、稼働率の改善により成膜コストの低減などを図ることを可能にした真空成膜装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の真空成膜装置用部品の製造方法は、Ti、Zr、Hf、Nb、Ta、W、Ru、Pd、Ir、Pt、Ag、AuおよびInから選ばれる金属元素の単体、もしくは前記金属元素を含む合金または化合物の薄膜を成膜する真空成膜装置の構成部品の製造方法であって、部品本体の表面にCuの含有比率が65〜95質量%の範囲のCu−Al合金からなるCu−Al合金膜を形成する工程と、前記Cu−Al合金膜に1.33×10−3Pa以下の真空雰囲気中で300〜800℃の温度でアニール処理を行う工程とを有することを特徴とする。
【0011】
Cu−Al合金膜はビッカース硬さでHv200以下の硬度を有することが好ましい。また、Cu−Al合金膜は200μm以上の膜厚を有することが好ましい。部品本体表面へのCu合金膜の形成方法としては、溶射法、真空蒸着法、イオンプレーティング法などが適用可能であるが、ダストの低減効果に優れる溶射法を適用することが望ましい。
【0012】
本発明の真空成膜装置用部品においては、部品本体の表面にCu合金膜を形成している。例えば、ビッカース硬さがHv200以下のCu合金膜は良好な応力緩和効果を有している。Cu合金膜による応力緩和効果は、その膜厚を200μm以上としたり、また溶射膜を適用することでより一層向上する。すなわち、Cu合金膜はその上に付着した成膜材料(付着物)の内部応力を緩和する機能を有することから、上述したような内部応力が大きい金属の単体薄膜、合金薄膜または化合物薄膜を成膜する場合においても、部品上に堆積した付着物の剥離を安定かつ有効に抑制することができる。
【0013】
従って、真空成膜装置用部品上に堆積する付着物の剥離によるダスト(パーティクル)の発生を抑えることができると共に、装置クリーニングや部品交換の回数を大幅に減らすことができる。ダスト(パーティクル)の発生量の低減は、真空成膜装置で形成する各種の薄膜、さらにはそれを用いた素子や部品の歩留り向上に大きく寄与する。また、装置クリーニングや部品交換回数の低減は、生産性の向上並びに成膜コストの削減に大きく寄与する。
【0014】
ここで、応力緩和効果はCu合金膜より低硬度化が可能なCu膜の方が優れることが考えられるが、Cu膜は耐食性に劣り、容易に酸化してしまうという欠点を有する。このように、Cu膜は膜特性の経時変化が大きく、付着物の密着性などが経時的に劣化しやすいため、結果的にダストの発生量などが増加しやすい傾向を有する。また、被膜の酸化は部品取付け後の装置内真空度にも悪影響を及ぼす。さらに、Cu膜の酸化物を除去するために、水素雰囲気中で熱処理して還元することも考えられるが、このような処理を施すと水素脆化により部品本体との密着性が低下してしまう。また、Cu膜自体の密着強度も高いとは言えない。
【0015】
このような点に対して、Cu合金膜はCu膜に比べて耐食性に優れることから、膜特性の経時変化が抑制され、その結果としてダストの発生を長期間にわたって安定に抑制することが可能となる。また、Cu合金膜は部品本体に対する密着強度もCu膜に比べて大きく、さらに水素脆化をもたらす還元処理などを施す必要がないため、部品本体からのCu合金膜自体の剥離を安定的に抑制することができる。このようなことからも、装置クリーニングや部品交換回数の低減を図ることが可能となる。
【0016】
本発明の真空成膜装置用部品において、部品本体上に形成する被膜はCu合金膜の単層構造に限られるものではない。すなわち、Cu合金膜上にそれとは異種の金属材料からなる第2の金属膜を設けてもよい。第2の金属膜には、例えば薄膜の構成元素などが使用される。
【0017】
本発明の真空成膜装置は、真空容器と、前記真空容器内に配置される被成膜試料保持部と、前記真空容器内に前記被成膜試料保持部と対向して配置され、Ti、Zr、Hf、Nb、Ta、W、Ru、Pd、Ir、Pt、Ag、AuおよびInから選ばれる金属元素の単体、もしくは前記金属元素を含む合金または化合物の薄膜を成膜するための成膜源と、前記成膜源を保持する成膜源保持部と、前記被成膜試料保持部または前記成膜源保持部の周囲に配置された防着部品とを具備し、前記被成膜試料保持部、前記成膜源保持部および前記防着部品から選ばれる少なくとも1つが、上記した本発明の真空成膜装置用部品からなることを特徴としている。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように、本発明の真空成膜装置用部品によれば、成膜工程中に付着する成膜材料の剥離を安定かつ有効に防止できると共に、剥離防止用の被膜自体の安定性を高めることが可能となる。従って、装置のクリーニングや部品の交換回数を削減することができる。また、このような真空成膜装置用部品を有する本発明の真空成膜装置によれば、配線膜や素子の不良発生原因となる膜中へのダストの混入を抑制することが可能となると共に、生産性の向上並びに成膜コストの低減を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態による真空成膜装置用部品の要部構造を示す断面図である。
【図2】本発明の真空成膜装置用部品の他の構成例を示す断面図である。
【図3】本発明の真空成膜装置を適用したスパッタリング装置の一実施形態の要部構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための形態について説明する。図1は、本発明の第1の実施形態による真空成膜装置用部品の要部構成を示す断面図である。同図に示す真空成膜装置用部品1は、部品本体(基材)2の表面に設けられたCu合金膜3を有している。なお、部品本体2の構成材料は特に限定されるものではないが、例えば装置部品の構成材料として一般的なステンレス材などが用いられる。部品本体2の被膜形成面はアンカー効果が得られるように、予めブラスト処理などで荒らしておくことが好ましい。
【0021】
上記したCu合金膜3は溶射法、真空蒸着法、イオンプレーティング法などの種々の被膜形成方法を適用して形成することができるが、特にダストの低減効果に優れる溶射法を適用して形成することが望ましい。このようなCu合金溶射膜3は、パーティクルの発生を低減するために、その表面形態が制御可能な溶射法を適用して形成することが好ましい。
【0022】
具体的には、部品本体2の構成材料や形状、使用される環境条件、溶射材料などに応じて、アーク溶射法、プラズマ溶射法、超高速フレーム溶射法などを適宜選択して使用する。溶射材料には、例えば線材や粉末などが用いられる。そして、電流、電圧、ガス流量、圧力、溶射距離、ノズル径、材料供給量などの溶射条件をコントロールすることによって、Cu合金溶射膜3の膜厚や表面粗さなどを制御することができる。溶射した部品1には、膜の軟化や脱ガスなどを目的としてアニーリング処理が施される。
【0023】
Cu合金溶射膜3には、例えばAl、Ti、Zr、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、Pt、Ag、ZnおよびSnから選ばれる少なくとも1種の元素(以下、M元素と記す)を含有するCu合金が用いられる。さらに、Cu合金溶射膜3はCuの含有比率が65〜95質量%の範囲のCu合金で構成することが好ましい。このようなCu合金を適用することによって、Cu合金溶射膜3の硬度を再現性よくビッカース硬さでHv200以下とすることができる。ここで、本発明のCu合金溶射膜3においては、合金元素(M元素)の一部が単体として存在していてもよい。すなわち、Cu合金溶射膜3はM元素を固溶点以上に含んでいてもよく、またCu原料とM元素原料を用いた複合溶射によって形成したものであってもよい。
【0024】
上述したようなCu合金溶射膜3によって、成膜工程中に部品1上に付着、堆積した成膜材料(付着物)の剥離が防止される。すなわち、Cu合金溶射膜3の低硬度特性に加えて、溶射膜の気孔を多数含む内部構造などによって、付着物の内部応力を吸収して緩和することができる。特に、ビッカース硬さがHv200以下のCu合金溶射膜3は優れた応力緩和効果を示すことから、内部応力が大きい金属の単体薄膜、合金薄膜または化合物薄膜を成膜する場合においても、部品1上に堆積した付着物の剥離、脱落を長期間にわたって安定かつ有効に抑制することができる。
【0025】
ここで、応力緩和効果はCu合金膜より低硬度化が可能なCu膜の方が優れることが考えられるが、Cu膜は耐食性に劣り、容易に酸化してしまうという欠点を有する。例えば、Cu膜を大気中で溶射すると容易に酸化されてしまう。また、真空中で溶射した場合においても、その後の大気放置により容易に酸化されてしまう。このように、Cu膜は膜特性の経時変化が大きく、付着物の密着性などが経時的に劣化しやすいため、結果的にダストの発生量などが増加しやすい傾向を有する。また、被膜の酸化は部品取付け後の装置内真空度にも悪影響を及ぼす。さらに、Cu膜の酸化物を除去するために、水素雰囲気中で熱処理して還元することも考えられるが、このような処理を施すと水素脆化により部品本体との密着性が低下してしまう。また、Cu膜自体の密着強度も高いとは言えない。低硬度被膜としてはAl膜やNi膜も挙げられるが、これらは高温特性や部品本体に対する密着性に劣るものである。
【0026】
このような点に対して、上述したようなCu合金で構成したからなるCu合金溶射膜3は、Cu膜に比べて耐食性に優れることから、膜特性の経時変化が抑制され、その結果としてダストの発生を長期間にわたって安定に抑制することが可能となる。合金化による耐食性の向上効果は、上述したM元素のいずれか1種以上の元素を含有させたCu合金を用いることにより得ることができる。Cu合金溶射膜3は耐食性に加えて耐熱性にも優れるものである。
【0027】
さらに、Cu合金溶射膜3は部品本体2に対する密着強度もCu膜に比べて大きい。すなわち、Cu溶射膜の部品本体2に対する密着強度は13MPa程度であるのに対して、例えばAlを10質量%程度含むCu−Al合金からなるCu合金溶射膜3の密着強度はその2〜3倍程度になる。さらに、Cu合金溶射膜3を用いた場合には、水素脆化をもたらす還元処理などを施す必要がないため、部品本体2からのCu合金膜溶射膜3自体の剥離を安定的に抑制することができる。
【0028】
上述したような付着物の応力緩和効果、さらには耐食性や密着強度の改善効果を得る上で、Cu合金溶射膜3にはCuの含有比率が65〜95質量%の範囲のCu合金を用いることが好ましい。Cuの含有比率が95質量%を超えると、耐食性や密着強度の改善効果が十分に得られないおそれがある。一方、内部応力が大きい薄膜を成膜する際に、部品1に堆積した付着物の応力緩和効果を十分に得る上で、Cu合金溶射膜3の硬度はビッカース硬さでHv200以下とすることが好ましく、このような硬度はCuの含有比率を65質量%以上とすることで得ることができる。Cu合金溶射膜3のCu含有比率は80〜95質量%の範囲とすることがより好ましい。
【0029】
Cu合金溶射膜3の硬度は上記したようにビッカース硬さでHv200以下とすることが好ましい。ビッカース硬さがHv200以下のCu合金溶射膜3は、その上部に堆積する付着物の内部応力を緩和する効果に優れるだけでなく、それ自体の内部応力も十分に緩和されていることから、Cu合金溶射膜3自体の剥離も有効に防ぐことができる。すなわち、Cu合金溶射膜3の内部応力を十分に緩和することによって、成膜工程時に外部応力(例えば熱応力)が負荷された際に、Cu合金溶射膜3の内部からの破壊の進行を有効に抑制することができる。これによって、Cu合金溶射膜3自体の剥離をより一層有効に防ぐことが可能となる。Cu合金溶射膜3の硬度はHv150以下とすることがより好ましい。
【0030】
ここで、本発明で規定するCu合金膜3のビッカース硬さは、以下のようにして測定した値を示すものとする。すなわち、まずCu合金膜3の表面を研磨して平坦化する。次いで、平坦化した面に荷重200gでダイヤモンド圧子を30秒間押し付ける。これにより生じた圧痕の長さをXおよびY方向に測定し、その平均長さからビッカース硬さ値に変換する。このような測定を5回行い、その平均値を本発明のビッカース硬さとする。
【0031】
また、Cu合金溶射膜3を構成するCu合金中に含有させる合金元素は、上述したM元素のいずれであってもよいが、特にAlを用いることが好ましい。すなわち、本発明におけるCu合金溶射膜3は特にCu−Al合金で構成することが望ましい。この際のAlの含有量は5〜15質量%の範囲とすることが好ましい。このようなCu−Al合金によれば、Cu合金溶射膜3の部品本体2に対する密着性や耐食性などを高めることが可能であると共に、より一層の低硬度化を実現することができる。
【0032】
Cu合金溶射膜3はCu膜などに比べて耐食性に優れるが、特にCuに固溶していないM元素、例えばAlの一部をCu合金溶射膜3の表面近傍で酸化させ、Cu合金溶射膜3の表面にCu以外の元素の酸化物を形成することが好ましい。このようなCu合金溶射膜3表面の酸化物は、予めCuに対して固溶点を超えるM元素(例えばAl)を含有させておくことで形成することができる。固溶点を超えるAlはCu合金溶射膜3の最表面を層状に覆うため、大気中で溶射した場合にはCu合金溶射膜3の表面にAl酸化物層が形成される。複合溶射の場合には、最表面をAl溶射層としておけばよい。
【0033】
上記したように、Al酸化物などでCu合金溶射膜3の表面を覆うことによって、膜内部の経時的な酸化をより安定的に防ぐことができる。特に、Alはその酸化物が安定であることに加えて、Cu合金溶射膜3の表面に酸化物を形成しやすい。このようなことからも、Cu−Al合金は本発明のCu合金溶射膜3に好適である。Cu合金溶射膜3の表面に形成する酸化物層の厚さは数nm〜数10nm程度あれば十分である。具体的には、30〜40nm程度のAl酸化物層などを形成することが好ましい。
【0034】
上述したCu合金溶射膜3は、さらに200μm以上の膜厚を有することが好ましい。すなわち、膜厚が200μm以上のCu合金溶射膜3は優れた応力緩和効果を示すことから、内部応力が大きい金属の単体薄膜、合金薄膜または化合物薄膜を成膜する場合においても、部品1上に堆積した付着物の剥離、脱落をより確実に抑制することができる。Cu合金溶射膜3の膜厚は400μm以上とすることがより好ましい。Cu合金溶射膜3の膜厚の上限は必ずしも規定されるものではないが、あまり厚くしてもそれ以上の効果が得られないだけでなく、Cu合金溶射膜3自体の剥離が発生しやすくなるため、その膜厚は1mm以下とすることが好ましい。Cu合金溶射膜3の膜厚は、特に付着物の応力緩和効果に優れると共に、それ自体の内部応力も小さい400〜600μmの範囲とすることが望ましい。
【0035】
Cu合金溶射膜3はその形成過程に基づいて複雑な表面形態を有することから、付着物に対して良好な密着性を示す。すなわち、Cu合金溶射膜3の表面粗さがあまり小さいと、成膜材料(付着物)の堆積量が増加した際に、その内部応力などにより剥離、脱落が生じやすくなるおそれがある。このようなことから、Cu合金溶射膜3の表面粗さはJIS B 0601−1994で規定する算術平均粗さRaで15μm以上であることが好ましい。
【0036】
一方、Cu合金溶射膜3の表面粗さが大きくなりすぎると、付着物の形態が不安定となって、逆に脱落が生じやすくなるおそれがある。すなわち、Cu合金溶射膜3表面の凹凸が大きくなりすぎると、付着物がパーティクルの発生しやすい付着形態となり、さらに付着物がCu合金溶射膜3全体に付着せずに空孔が残るため、そこを起点として付着物の剥離、脱落が起こるおそれがある。従って、Cu合金溶射膜3の表面粗さは算術平均粗さRaで35μm以下であることが好ましい。Cu合金溶射膜3の表面粗さは算術平均粗さRaが18〜30μmの範囲となるように制御することがより好ましい。
【0037】
上述したようなCu合金溶射膜3は、それ自体の安定性や付着物の内部応力を吸収する応力緩和効果に優れることから、内部応力が大きい金属の単体薄膜、合金薄膜または化合物薄膜を成膜する場合においても、部品1上に堆積した付着物の剥離を長期間にわたって安定かつ有効に抑制することができる。さらに、Cu合金溶射膜3はそれ自体の密着性にも優れ、Cu合金溶射膜3自体の剥離も安定かつ有効に抑制することができる。
【0038】
従って、真空成膜装置用部品1上に堆積する付着物の剥離や被膜(溶射膜)自体の剥離などによるダスト(パーティクル)の発生を抑えることができ、さらには装置クリーニングや部品交換の回数を大幅に減らすことが可能となる。言い換えると、装置構成部品1の寿命を大幅に延ばすことができる。このように、装置構成部品1を長寿命化することによって、成膜装置の稼働率の向上(生産性の向上)、ひいては成膜コストの削減を実現することができる。さらに、真空成膜装置で形成する各種の膜(高応力膜)、それを用いた素子や部品などの歩留りを高めることが可能となる。
【0039】
真空成膜装置用部品1に適用するCu合金溶射膜3には、部品本体2の表面に形成した後に、膜の軟化や脱ガスなどを目的としてアニール処理を施すことが好ましい。アニール処理は例えば300〜800℃の温度で施される。アニール処理温度が300℃未満であると、Cu合金溶射膜3の軟化効果や脱ガス効果を十分に得ることができない。一方、アニール処理温度が800℃を超えると部品本体2に熱変形が生じたり、またCu合金溶射膜3に剥がれが生じるおそれがある。
【0040】
さらに、アニール処理はCu合金溶射膜3中のガス成分の除去を促進する上で、例えば1.33×10−3Pa以下の真空雰囲気中で実施することが好ましい。Cu合金溶射膜3や部品本体2の含有ガス成分の除去が不十分であると、部品1を真空成膜装置に使用した際に、装置内の圧力が必要な真空度(例えば1×10−5Pa前後)に到達するまでに時間を要するほか、成膜した膜特性に悪影響を及ぼすおそれがある。
【0041】
このようなことから、Cu合金溶射膜3を有する部品1の含有ガス成分量は、部品1を室温から500℃まで加熱したときに、部品1から発生するガス発生量が水素(H)、窒素(N)、酸素(O)、一酸化炭素(CO)、二酸化炭素(CO)およびメタン(CH)の総量で50μL/10g以下であることが好ましい。このようなガス発生量を満足させることによって、真空成膜装置に使用した際の作業性、信頼性、特性などを高めることが可能となる。
【0042】
ここで、本発明における部品1からのガス発生量は、以下のようにして求めた値を指すものとする。すなわち、まず厚さ3mmの板材に膜厚500μmのCu合金溶射膜を形成し、これを10×10mmに切断して測定試料とし、この試料のガス発生量をガス抽出分析器で測定する。ガス発生量の測定は、まず試料を室温(常温)から100℃まで昇温し、100℃で15分間保持する。この100℃で保持している間のガス発生量を測定する。同様にして、100℃から200℃、200℃から300℃、300℃から400℃、400℃から500℃まで、それぞれの温度で15分間ずつ保持しながら昇温する。そして、各温度で保持している間のガス発生量をそれぞれ測定し、これらの合計量をガス発生量とする。これを試料10g当りのガス発生量に換算する。
【0043】
本発明の真空成膜装置用部品1において、部品本体2上に形成する溶射膜はCu合金溶射膜3の単層構造に限られるものではない。例えば図2に示すように、Cu合金溶射膜3上にそれとは異種の金属材料からなる第2の金属溶射膜4を設けてもよい。このような第2の金属溶射膜4には、例えば付着物との熱膨張率の差が小さい金属材料(例えば熱膨張率の差が15×10−6/K以下の金属材料)、さらには成膜材料と同一材料などが用いられる。このような構成を採用することによって、成膜した薄膜のコンタミなどを防止することができる。第2の金属溶射膜4の膜厚は50〜150μmの範囲とすることが好ましい。
【0044】
上述した本発明の装置構成部品1は、Ti、Zr、Hf、Nb、Ta、W、Ru、Pd、Ir、Pt、Ag、AuおよびInから選ばれる金属元素の単体、もしくは前記金属元素を含む合金または化合物の薄膜、すなわち内部応力が大きい薄膜を成膜する真空成膜装置に用いられる。具体的には、スパッタリング装置やCVD装置などの真空成膜装置の構成部品として用いられ、特にスパッタリング装置に好適である。また、装置構成部品1は成膜工程中に成膜材料が付着する部品であれば種々の部品に対して適用可能である。
【0045】
次に、本発明の真空成膜装置の実施形態について説明する。図3は本発明の真空成膜装置をスパッタリング装置に適用した一実施形態の要部構成を示す図である。同図において、11はバッキングプレート12に固定されたスパッタリングターゲットである。スパッタリングターゲット11には、Ti、Zr、Hf、Nb、Ta、W、Ru、Pd、Ir、Pt、Ag、AuおよびInから選ばれる金属元素の単体、もしくは前記金属元素を含む合金または化合物の薄膜を成膜するための材料が用いられる。
【0046】
成膜源としてのスパッタリングターゲット11の外周部下方には、アースシールド13が設けられている。アースシールド13の下方には、さらに上部防着板14および下部防着板15が配置されている。被成膜試料である基板16は、スパッタリングターゲット11と対向配置するように、被成膜試料保持部であるプラテンリング17により保持されている。これらは図示を省略した真空容器内に配置されている。真空容器には、スパッタガスを導入するためのガス供給系(図示せず)と真空容器内を所定の真空状態まで排気する排気系(図示せず)とが接続されている。
【0047】
この実施形態のスパッタリング装置においては、アースシールド13、上部防着板14、下部防着板15およびプラテンリング17を、上述した本発明の真空成膜装置用部品1で構成している。真空成膜装置用部品1の具体的な構成は前述した通りである。なお、Cu合金溶射膜3はいずれもスパッタリングターゲット11からスパッタされた粒子が付着する面に形成されている。
【0048】
上述したスパッタリング装置においては、成膜工程中にアースシールド13、上部防着板14、下部防着板15、プラテンリング17などの表面にスパッタされた成膜材料(ターゲット11の構成材料)が付着するが、この付着物の剥離は部品表面のCu合金溶射膜3により安定かつ有効に防止される。また、Cu合金溶射膜3自体も安定で長寿命である。これらによって、パーティクルの発生量、さらには基板16に形成される膜中への混入量を大幅に抑制することができる。従って、256M、1Gというような高集積度の半導体素子や液晶表示素子などの製造歩留りを大幅に高めることが可能となる。すなわち、配線幅が0.2μm以下というように狭小でかつ高密度の配線網を形成する配線膜であっても、微小パーティクル(例えば直径0.2μm以上)の混入を大幅に抑制できることから、配線不良を大幅に低減することが可能となる。これにより、素子歩留りが向上する。
【0049】
さらに、付着物やCu合金溶射膜3自体の剥離を安定かつ有効に抑制することが可能であることから、装置クリーニングや部品交換の回数を大幅に減らすことができる。この装置クリーニングや部品交換回数の低減に基づいて、スパッタリング装置の稼働率の向上(生産性の向上)を図ることができる。すなわち、スパッタリング装置のランニングコストを低減することができ、ひいては各種薄膜の成膜コストを削減することが可能となる。
【0050】
上記した実施形態においては、アースシールド13、上部防着板14、下部防着板15、プラテンリング17を本発明の部品で構成した例について説明したが、これら以外にバッキングプレート12、ターゲット外周押え(図示せず)、シャッタ(図示せず)などを本発明の真空成膜装置用部品で構成することも有効である。さらに、これら以外の部品についても、成膜工程中に成膜材料の付着が避けられない部品であれば、本発明の真空成膜装置用部品は有効に機能する。
【0051】
なお、上記実施形態では本発明の真空成膜装置をスパッタリング装置に適用した例について説明したが、これ以外に真空蒸着装置(イオンプレーティングやレーザーアブレーションなどを含む)、CVD装置などに対しても本発明の真空成膜装置は適用可能であり、上述したスパッタリング装置と同様な効果を得ることができる。
【実施例】
【0052】
次に、本発明の具体的な実施例について述べる。
【0053】
実施例1、比較例1〜3
まず、図3に示したスパッタリング装置のアースシールド13、上部防着板14、下部防着板15およびプラテンリング17(部品基材は全てSUS 304)について、ブラストによる下地処理を施した後、基材表面にアーク溶射法でCu合金溶射膜を形成した。Cu合金溶射膜はAlを9.5質量%含有するCu−Al合金で構成した。
【0054】
Cu合金膜の溶射は、予め純Cuに9.5質量%のAlを添加し、これを溶融して合金化した材料を線材(線径16mm)に加工し、このCu−Al合金線材を溶射材として用いて実施した。アーク溶射の条件は電流100A、電圧30V、空気圧80PSI、溶射距離150mmとし、大気中でアーク溶射した。このようにして、膜厚が250μm、表面粗さがRaで18μmのCu−Al合金溶射膜を形成した。
【0055】
次に、上記した部品のCu溶射面をクリーニング処理した後、アニールおよび脱ガス処理として3×10−2Pa以下の真空雰囲気中にて600℃×3時間の条件で熱処理を施した。熱処理後のCu合金溶射膜の硬度はビッカース硬さでHv130であった。
【0056】
一方、本発明との比較例として、純Cuによる溶射膜(比較例1)、純Niによる溶射膜(比較例2)、純Alによる溶射膜(比較例3)をそれぞれ部品表面に形成する以外は、実施例1と同様にして各部品を作製した。各溶射膜の膜厚および表面粗さは実施例1と同様とした。また、各比較例による部品については3×10−2Pa以下の真空雰囲気中にて500℃×3時間の条件で熱処理を施した。
【0057】
このようにして作製した実施例1および比較例1〜3による各部品を用いて、それぞれマグネトロンスパッタリング装置を組立てた。これら各マグネトロンスパッタリング装置に高純度Tiターゲット11をセットし、マグネトロンスパッタリングを行った。具体的に、まず6インチSiウェハー上にTi薄膜を形成し、さらにその上にNガスを導入しながらマグネトロンスパッタリングを行ってTiN薄膜を形成した。スパッタ条件は、スパッタ圧4×10−1Pa、スパッタ電流5A、Ar流量15sccm、N流量0/30sccmとした。また、スパッタリングはヒータ加熱で500℃とした装置内で実施した。
【0058】
得られたTi/TiN薄膜上の直径0.2μm以上のダスト数をパーティクルカウンタで測定した。このような操作を連続して行い、50ロット毎にダスト数を測定した。さらに、膜剥離が発生するまでスパッタ操作を続け、膜剥離までの寿命(ロット数)を調べた。これらの結果を表1に示す。
【0059】
【表1】

【0060】
表1から明らかなように、Cu−Al合金溶射膜を形成した部品を用いることによって、膜剥離までの寿命を延ばすことができると共に、ダスト数も低減できることが分かる。このように、実施例1のCu−Al合金溶射膜は部品寿命の改善並びにダストの低減に有効である。
【0061】
実施例2、比較例4〜6
上記した実施例1および比較例1〜3と同様にして作製した各部品を用いて、それぞれマグネトロンスパッタリング装置を組立てた。これら各マグネトロンスパッタリング装置に高純度Taターゲット11をセットし、マグネトロンスパッタリングを行った。具体的に、まず6インチSiウェハー上にTa薄膜を形成し、さらにその上にNガスを導入しながらマグネトロンスパッタリングを行ってTaN薄膜を形成した。スパッタ条件は、スパッタ圧4×10−1Pa、スパッタ電流5A、Ar流量15sccm、N流量30sccmとした。また、スパッタリングはヒータ加熱で500℃とした装置内で実施した。
【0062】
得られたTa/TaN薄膜上の直径0.2μm以上のダスト数をパーティクルカウンタで測定した。このような操作を連続して行い、10ロット毎にダスト数を測定した。さらに、膜剥離が発生するまでスパッタ操作を続け、膜剥離までの寿命(ロット数)を調べた。これらの結果を表2に示す。
【0063】
【表2】

【0064】
表2から明らかなように、Cu−Al合金溶射膜を形成した部品を用いることによって、膜剥離までの寿命を延ばすことができると共に、ダスト数も低減できることが分かる。このように、実施例2のCu−Al合金溶射膜は部品寿命の改善並びにダストの低減に有効である。
【0065】
実施例3
上記した実施例1と同様にして、Cu−Al合金溶射膜(膜厚:250μm,表面粗さRa:18μm)を作製した各部品に対して、それぞれ以下の条件で熱処理を施した。試料1は実施例1と同一条件で熱処理した。試料2はAr雰囲気中にて600℃×3時間の条件で熱処理した。試料3には熱処理を施さなかった。
【0066】
これら各試料(試料1〜3)の室温から500℃まで加熱したときのガス発生量を前述した方法にしたがって測定した。これら各試料の測定結果を表3〜5にそれぞれ示す。さらに、各表には各試料に相当する部品を用いたスパッタリング装置の真空到達時間(1×10−5Paに到達するまでの時間)を併せて示す。なお、スパッタリング装置の真空到達時間は300℃で4時間ベーキングした後に測定した。
【0067】
【表3】

【0068】
【表4】

【0069】
【表5】

【0070】
表3〜5から明らかなように、Cu合金溶射膜に真空雰囲気中で熱処理を施すことによって、ガス発生量を低減することができることが分かる。これによって、スパッタリング装置の真空到達時間を短くすることが可能となる。
【0071】
実施例4、比較例7〜9
図3に示したスパッタリング装置のアースシールド13、上部防着板14、下部防着板15およびプラテンリング17(部品基材は全てSUS 304)について、ブラストによる下地処理を施した後、基材表面にアーク溶射法でCu−Al合金溶射膜を形成した。Cu−Al合金溶射膜は膜厚が400μm、表面粗さRaが15μmであり、溶射条件は実施例1と同様とした。
【0072】
次に、上記したCu−Al合金溶射膜上にプラズマ溶射法でTi溶射膜を形成した。Ti溶射は、溶射材として平均粒径が65μmのTi粉末原料を用い、電流500A、電圧65V、Ar流量73L/min、H2流量8L/minの条件下で実施した。2層溶射膜(Cu−Al合金+Ti)の最表面の表面粗さRaは12μmとした。この後、部品の溶射面をクリーニング処理し、さらにアニールおよび脱ガス処理として、3×10−2Pa以下の真空雰囲気中にて600℃×3時間の条件で熱処理を施した。
【0073】
一方、本発明との比較例として、1層目を純Cu溶射膜(比較例7)、純Ni溶射膜(比較例8)、純Al溶射膜(比較例9)とする以外は、それぞれ実施例4と同様にして、Ti膜との2層溶射膜を有する部品を作製した。各溶射膜の膜厚および表面粗さは実施例4と同様とした。また、各比較例による部品の熱処理条件は、比較例7(Cu+Ti)と比較例8(Ni+Ti)については3×10−2Pa以下の真空雰囲気中にて600℃×3時間、比較例9(Al+Ti)については3×10−2Pa以下の真空雰囲気中にて400℃×3時間とした。
【0074】
このようにして作製した実施例4および比較例7〜9による各部品を用いて、それぞれマグネトロンスパッタリング装置を組立てた。これら各マグネトロンスパッタリング装置に高純度Tiターゲット11をセットし、マグネトロンスパッタリングを行った。スパッタリング条件は実施例1と同一とし、それぞれTi/TiN薄膜を形成し、これらTi/TiN薄膜上の直径0.2μm以上のダスト数をパーティクルカウンタで測定した。このような操作を連続して行い、50ロット毎にダスト数を測定した。さらに、膜剥離が発生するまでスパッタ操作を続け、膜剥離までの寿命(ロット数)を調べた。これらの結果を表6に示す。
【0075】
【表6】

【符号の説明】
【0076】
1……真空成膜装置用部品,2……部品本体,3……Cu合金溶射膜,4……第2の金属溶射膜,11……スパッタリングターゲット,12……バッキングプレート,13……アースシールド,14、15……防着板,16……被成膜基板,17……プラテンリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Ti、Zr、Hf、Nb、Ta、W、Ru、Pd、Ir、Pt、Ag、AuおよびInから選ばれる金属元素の単体、もしくは前記金属元素を含む合金または化合物の薄膜を成膜する真空成膜装置の構成部品の製造方法であって、
部品本体の表面にCuの含有比率が65〜95質量%の範囲のCu−Al合金からなるCu−Al合金膜を形成する工程と、
前記Cu−Al合金膜に1.33×10−3Pa以下の真空雰囲気中で300〜800℃の温度でアニール処理を行う工程と
を有することを特徴とする真空成膜装置用部品の製造方法。
【請求項2】
請求項1記載の真空成膜装置用部品の製造方法において、
前記アニール処理は、前記Cu−Al合金膜のビッカース硬さがHv200以下の硬度となるように行うことを特徴とする真空成膜装置用部品の製造方法。
【請求項3】
請求項1または2記載の真空成膜装置用部品の製造方法において、
前記Cu−Al合金膜の形成は、前記Cu−Al合金膜の膜厚が200μm以上となるように行うことを特徴とする真空成膜装置用部品の製造方法。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項記載の真空成膜装置用部品の製造方法において、
前記Cu−Al合金膜の形成は、前記Cu−Al合金膜の表面に前記Cu−Al合金中のAlの酸化物を形成することを特徴とする真空成膜装置用部品の製造方法。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項記載の真空成膜装置用部品の製造方法において、
前記Cu−Al合金膜の形成は、溶射法により行うことを特徴とする真空成膜装置用部品の製造方法。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項記載の真空成膜装置用部品の製造方法において、
前記部品は、室温から500℃まで加熱したときに発生するガス発生量が、水素、窒素、酸素、一酸化炭素、二酸化炭素およびメタンの総量で、50μL/10g以下であることを特徴とする真空成膜装置用部品の製造方法。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項記載の真空成膜装置用部品の製造方法において、
前記Cu−Al合金膜の形成後、さらに前記Cu合金膜とは異種の金属材料からなる第2の金属膜を形成することを特徴とする真空成膜装置用部品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−72503(P2012−72503A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−285653(P2011−285653)
【出願日】平成23年12月27日(2011.12.27)
【分割の表示】特願2001−171465(P2001−171465)の分割
【原出願日】平成13年6月6日(2001.6.6)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(000221339)東芝電子エンジニアリング株式会社 (238)
【Fターム(参考)】