説明

粒子径測定装置、粒子径測定方法及びコンピュータプログラム

【課題】本発明は、試料表面の粒子の蛍光X線スペクトルに基づいて粒子径を測定する粒子径測定装置、粒子径測定方法及びコンピュータプログラムを提供する。
【解決手段】X線源13からウェハ3表面にX線ビームが照射され、ウェハ3表面が走査されてウェハ3表面の各粒子の蛍光X線スペクトルが測定される。測定された蛍光X線スペクトル及び標準スペクトルデータベース281に格納されている標準スペクトルデータに基づいて粒子に含まれる元素が同定される。測定された蛍光X線スペクトルから、同定元素の蛍光X線スペクトルが抽出され、面積分強度が算出される。検量線データベース282から同定元素に対応する検量線を読み出して面積分強度と対応する粒子径が特定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料表面の粒子の蛍光X線スペクトルに基づいて粒子径を測定する粒子径測定装置、粒子径測定方法及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
表面に粒子状汚染物質(以下、単に「粒子」という)が付着したウェハ表面に半導体デバイス、例えば超LSI( Large Scale Integrated circuit )を微細加工プロセスにより作製した場合、粒子が存在するウェハ表面の一部に半導体デバイスの回路が形成されず欠陥個所が発生する虞がある。ウェハ表面に付着した粒子の検出及び粒子径の測定が、欠陥個所の発生を抑えて半導体デバイスの微細加工プロセスにおける歩留まりを向上させるために必要となっている。粒子の検出方法及び粒子径の測定方法として、レーザ光を照射し、粒子径によって異なる散乱光強度を測定するレーザ散乱法等がある。
【0003】
レーザ光により試料表面を走査し、複数の測定点における散乱光強度からレーザ散乱法により粒子の検出及び粒子径を測定する装置が広く用いられている。近年、配線幅50nm以下の回路が形成されてきているため、欠陥箇所の発生に関与する虞があり、50nm以下の粒子径を有する粒子の検出及び粒子径を測定する方法が必要とされている。ところが、粒子径が50nm以下の粒子にレーザ光を照射した場合、散乱光の強度が弱く検出が困難となる。また、散乱光の強度を増大させるために、照射するレーザ光の波長を紫外領域まで短くした場合、紫外領域のレーザ光により損傷を受ける有機物からなる粒子を検出することが困難となる。
【0004】
また、散乱光の強度を増大させるために、照射するレーザ光の光強度を増大させた場合、レーザ光を出力する素子の寿命が短くなるという問題がある。また、散乱光の検出感度を向上させた場合、粒子と共にウェハ表面に微小な表面粗さによる散乱光も同時に検出されるため、両者の区別が困難となる。そこで、X線をウェハ表面等の試料表面上に全反射条件を満たすよう照射し、試料表面に付着した物質が放射する蛍光X線を検出して粒子を含む汚染物質を検出する方法が特許文献1に記載されている。特許文献1に記載の方法では、汚染物質を蛍光X線強度の入射角依存性から粒子状及び非粒子状に分類することで有機物からなり、粒子径の小さな粒子であっても損傷を与えることなく検出可能にしている。
【特許文献1】特開平8−327566号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の方法では、試料表面に付着した粒子を検出するのみであり、試料表面に付着した粒子の粒子径を測定することができないという問題があった。
【0006】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、粒子の蛍光X線スペクトルから粒子を構成する元素を同定する元素同定手段と、同定した元素の蛍光X線スペクトルを面積分して面積分強度を算出する面積分強度算出手段と、検量線に基づいて面積分強度に対応する粒子径を取得する粒子径取得手段とを備えることにより、試料表面に付着しており、レーザ散乱法により測定困難な小さな粒子であっても粒子径を測定可能にする粒子径測定装置、粒子径測定方法及びコンピュータプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る粒子径測定装置は、試料表面の粒子にX線ビームを照射して得た前記粒子の蛍光X線スペクトルに基づいて前記粒子の粒子径を測定する粒子径測定装置において、前記粒子の蛍光X線スペクトルに基づいて前記粒子に含まれる元素を同定する元素同定手段と、前記粒子の蛍光X線スペクトルから、前記元素同定手段が同定した元素の蛍光X線スペクトルを抽出する抽出手段と、該抽出手段が抽出した前記蛍光X線スペクトルを面積分して得られる面積分強度を算出する面積分強度算出手段と、複数の元素夫々に関する面積分強度及び粒子径の対応関係を示す検量線を記憶してある検量線記憶手段と、該検量線記憶手段に記憶してある前記検量線のうち、前記元素同定手段が同定した元素に関する検量線に基づいて、前記面積分強度算出手段が算出した前記面積分強度に対応する粒子径を特定する粒子径特定手段とを備えることを特徴とする。
【0008】
本発明にあっては、試料表面の粒子にX線ビームが照射されて粒子の蛍光X線スペクトルが測定される。粒子の蛍光X線スペクトルから粒子に含まれる元素が同定される。粒子の蛍光X線スペクトルから、同定された元素の蛍光X線スペクトルが抽出されて面積分強度が算出される。同定元素に対応して予め記憶してあり、面積分強度及び粒子径の対応関係を示す検量線に基づいて、算出された面積分強度に対応する粒子径が特定される。
【0009】
本発明に係る粒子径測定装置は、前記抽出手段は、前記元素同定手段が複数の元素を同定した場合、複数の蛍光X線スペクトルを抽出するよう構成してあり、前記面積分強度算出手段は、前記抽出手段が複数の蛍光X線スペクトルを抽出した場合、複数の面積分強度を算出するよう構成してあり、前記粒子径特定手段は、前記面積分強度算出手段が複数の面積分強度を算出した場合、前記元素同定手段が同定した複数の元素夫々に関する検量線に基づいて複数の粒子径を特定するよう構成してあり、前記粒子径特定手段が複数の粒子径を特定した場合、前記複数の粒子径に基づいて前記粒子の粒子径を算出する粒子径算出手段を更に備えることを特徴とする。
【0010】
本発明にあっては、複数の元素からなる粒子にX線ビームが照射されて蛍光X線スペクトルが測定された場合、複数の元素夫々が同定される。粒子の蛍光X線スペクトルから、同定された複数の元素夫々の蛍光X線スペクトルが抽出されて複数の面積分強度が算出される。同定された複数の元素夫々に対応する検量線から、複数の面積分強度夫々に対応する粒子径が特定される。特定された複数の粒子径に基づいて粒子の粒子径が算出される。
【0011】
本発明に係る粒子径測定装置は、前記粒子径算出手段は、下記式に基づいて前記粒子の粒子径を算出するよう構成してあることを特徴とする。
【0012】
【数1】

ここで、
n:特定された複数の粒子径の個数
Dm:特定された複数の粒子径
Da:粒子の粒子径
【0013】
本発明にあっては、複数の粒子径夫々D1,D2,…,Dnが前述の式に代入されて粒子の粒子径Daが算出される。
【0014】
本発明に係る粒子径測定装置は、前記X線ビームにより試料表面を走査するX線ビーム走査手段を備えることを特徴とする。
【0015】
本発明にあっては、X線ビームにより試料表面が走査されて、試料表面の粒子の蛍光X線スペクトルが測定されて、粒子夫々の粒子径が測定される。
【0016】
本発明に係る粒子径測定装置は、光ビームにより試料表面を走査して粒子径が所定値以上である大型粒子を検出する大型粒子検出手段を備え、前記X線ビーム走査手段は、試料表面のうち、前記大型粒子検出手段により大型粒子が検出された領域を除いた試料表面を走査するよう構成してあることを特徴とする。
【0017】
本発明にあっては、レーザ光等の光ビームにより試料表面が走査されて、試料表面の粒子のうち、レーザ散乱法で検出可能な所定値以上の粒子径を有する大型粒子が検出される。X線ビームにより、大型粒子が検出された領域を除く試料表面を走査することにより、X線ビームの走査時間が短時間となる。X線ビームにより試料表面を走査して得た各粒子の蛍光X線スペクトルに基づいて、レーザ散乱法で検出困難な小型粒子の粒子径が測定される。
【0018】
本発明に係る粒子径測定方法は、試料表面の粒子にX線ビームを照射して得た前記粒子の蛍光X線スペクトルに基づいて前記粒子の粒子径を測定する粒子径測定方法において、前記粒子の蛍光X線スペクトルに基づいて前記粒子に含まれる元素を同定し、前記粒子の蛍光X線スペクトルから、同定した元素の蛍光X線スペクトルを抽出し、抽出した前記蛍光X線スペクトルを面積分して得られる面積分強度を算出し、同定した元素に対応しており、面積分強度及び粒子径の対応関係を示す検量線に基づいて前記面積分強度に対応する粒子径を特定することを特徴とする。
【0019】
本発明にあっては、試料表面の粒子にX線ビームが照射されて粒子の蛍光X線スペクトルが測定される。粒子の蛍光X線スペクトルから粒子に含まれる元素が同定される。粒子の蛍光X線スペクトルから、同定された元素の蛍光X線スペクトルが抽出されて面積分強度が算出される。同定元素に対応して予め記憶してあり、面積分強度及び粒子径の対応関係を示す検量線に基づいて、算出された面積分強度に対応する粒子径が特定される。
【0020】
本発明に係るコンピュータプログラムは、試料表面の粒子の蛍光X線スペクトルを測定する測定装置が備えるコンピュータに、前記粒子の蛍光X線スペクトルに基づいて前記粒子の粒子径を算出させるためのコンピュータプログラムにおいて、前記コンピュータに、前記粒子の蛍光X線スペクトルに基づいて前記粒子に含まれる元素を同定させる元素同定ステップと、前記粒子の蛍光X線スペクトルに含まれており、同定された元素の蛍光X線スペクトルを面積分させて面積分強度を算出させる面積分強度算出ステップと、面積分強度及び粒子径の対応関係を示す検量線に基づいて前記面積分強度に対応する粒子径を取得させる粒子径取得ステップとを実行させることを特徴とする。
【0021】
本発明にあっては、粒子の蛍光X線スペクトルから粒子に含まれる元素が同定される。粒子の蛍光X線スペクトルに含まれており、同定された元素の蛍光X線スペクトルが面積分されて面積分強度が算出される。算出した面積分強度に対応する粒子径が検量線に基づいて取得される。
【発明の効果】
【0022】
本発明にあっては、粒子の蛍光X線スペクトルから粒子を構成する元素を同定する元素同定手段と、同定した元素の蛍光X線スペクトルを面積分して面積分強度を算出する面積分強度算出手段と、検量線に基づいて面積分強度に対応する粒子径を取得する粒子径取得手段とを備えることにより、試料表面に付着しており、レーザ散乱法により測定困難な小さな粒子であっても粒子径を測定可能にする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
実施の形態1
以下、本発明をその実施の形態を示す図面を参照して具体的に説明する。図1は、実施の形態1に係る粒子径測定装置の内部構成の例を示すブロック図である。図中1は、ウェハ(試料)3表面にX線ビームを照射して蛍光X線スペクトルを測定するX線分析装置である。粒子径測定装置は、X線分析装置1と、X線分析装置1の制御及びX線分析装置1が測定した各種データを処理して粒子径を取得する処理装置2とからなる。X線分析装置1は、真空下で蛍光スペクトルを測定するための真空チャンバからなる試料室10を備える。試料室10には、試料台12と、試料台12が載置されており、試料台12を水平面でのXY方向に移動させる試料台移動部11と、試料台12に載置されたウェハ3の表面に対して全反射するようX線ビームを照射するX線源13と、ウェハ3表面の粒子から放射される蛍光X線を検出してX線検出信号を出力するX線検出器14とを備える。
【0024】
図中破線矢印及び白抜矢印夫々は、X線源13からウェハ3表面に入射し全反射されるX線ビーム及びウェハ3表面から放射される蛍光X線の軌跡の例を示す。試料台移動部11は、試料台12を移動させるべくステッピングモータにより駆動されるX方向及びY方向のトラバース機構により構成してある。また、試料台移動部11は、ピエゾアクチュエータにより構成してもよい。X線源13は、X線を発生するX線発生装置と、X線をウェハ3表面に集光するX線集光鏡とからなり、マイクロメートル単位のビームスポット径を有するX線ビームをウェハ3表面に照射するようにしてある。
【0025】
試料台移動部11は、試料台12をXY方向に移動させてウェハ3表面のX線ビームの照射位置を移動させることにより、X線ビームによりウェハ3表面を走査するX線ビーム走査手段として機能する。処理装置2は、バス20aを介して内部のハードウェア各部を制御するCPU( Central Processing Unit )20と、CPU20で実行される制御プログラム等を記憶してあるROM( Read-Only Memory )26と、CPU20が制御プログラムを実行している際に生じるデータを一時的に記憶するためのRAM( Random-Access Memory )27と、複数のキー等からなり、各種操作等を受付けるための操作受付部24と、液晶パネル等からなり、装置の状態及び設定等を表示する表示部25とを備える。CPU20は、ROM26に記憶してある制御プログラムをRAM27に読み出して実行するようにしてある。
【0026】
また、処理装置2は、X線分析装置1の試料台移動部11の移動を制御するための試料台移動制御部21と、X線源13を駆動させるX線源駆動部22と、X線検出器14からX線検出信号が入力されるX線検出信号入力部23とを備える。試料台移動制御部21は、CPU20からウェハ3表面における座標が与えられ、X線ビームの照射位置が与えられた座標となるよう試料台移動部11に制御信号を与えるようにしてある。さらに、処理装置2は、HDD( Hard Disk Drive )又はフラッシュメモリ等からなる記憶部28を備えており、記憶部28には、複数種類の元素夫々の標準スペクトルデータが格納された標準スペクトルデータベース281及び複数種類の元素夫々の検量線が格納された検量線データベース282(検量線記憶手段)が予め記憶してある。
【0027】
また、記憶部28は、粒子径の測定に用いられる後述のスペクトルデータ等の各種測定データ及び後述の測定管理テーブルも記憶するようにしてある。標準スペクトルデータベース281には、複数種類の元素夫々の蛍光スペクトルデータとして刊行物等に記載されており、X線分析装置による元素同定に対して広く用いられている既知の標準スペクトルデータを予め格納すると良い。CPU20は、測定した蛍光X線スペクトルを標準スペクトルデータベース281に格納してある標準スペクトルデータと比較することにより、粒子に含まれる元素を同定する元素同定手段としても機能する。
【0028】
また、CPU20は、測定した蛍光X線スペクトルから、同定した元素の蛍光X線スペクトルを抽出する抽出手段及び抽出した蛍光X線スペクトルデータの面積分強度を算出する面積分強度算出手段としても機能する。検量線データベース282は、CPU20から同定した元素及び算出した面積分強度が与えられた場合、格納してある検量線のうち、与えられた元素に対応する検量線から面積分強度に対応する粒子径を読み出して特定し、CPU20に与える粒子径特定手段(粒子径取得手段)としても機能する。ここで、検量線データベース282に予め格納してある検量線を得る方法について説明する。
【0029】
検量線を予め得るために、鉄、ニッケル及びコバルト等の元素単体からなり、既知の異なる粒子径を有する複数の粒子夫々の蛍光X線スペクトルが測定される。検量線を予め得るために用いる既知の粒子径を有する粒子は、例えば、粒子を帯電させて粒子径によって異なる電気移動度を測定する電気移動度分析法等によりナノメートル単位で正確に粒子径が予め求められている粒子を用いるとよい。蛍光X線スペクトルは、本発明の粒子径測定装置に含まれるX線分析装置1を用いて測定する場合に限るものではなく、従来技術に基づく他のX線分析装置を用いてもよい。測定結果の蛍光X線スペクトルからエネルギー及び強度の面積分からなる面積分強度が算出される。
【0030】
粒子径の異なる複数の粒子夫々の蛍光X線スペクトルから算出した面積分強度を、横軸及び縦軸夫々が粒子径及び面積分強度に対応するグラフ上にプロットすることにより、粒子径及び面積分強度の対応関係を示す検量線が得られる。複数種類の元素単体からなる粒子の検量線夫々を求めることにより、各元素に対応して複数の検量線が得られる。得られた検量線から最小2乗近似法等を用いて近似関数を求め、当該近似関数を用いて粒子径及び面積分強度からなるテーブルを生成し、当該テーブルを検量線とし、元素夫々に対応付けて検量線データベース282に格納してある。
【0031】
図2及び図3夫々は、実施の形態1に係る面積分強度の算出を説明するための蛍光X線スペクトル及び検量線の例を示すグラフである。図2の横軸及び縦軸夫々は、検出される蛍光X線のエネルギー及び強度を示す。図3の横軸及び縦軸夫々は、粒子径及び面積分強度を示す。図2に示す蛍光X線スペクトルの例では、元素単体に由来しており、エネルギーEa2及び強度P2を有するkα1線と、エネルギーEa1及び強度P1を有するkα2線とが検出されており、図中斜線で示す部分の面積に対応する面積分強度が算出される。図3に示す例では、同一の元素単体からなり、既知の粒子径5nm,18nm,25nm,40nm及び50nm夫々を有する複数の粒子から算出された面積分強度がプロットされており、1次関数からなる近似関数で示された検量線が得られている。
【0032】
次に粒子径測定装置がX線ビームによりウェハ3表面を走査して蛍光X線スペクトルを測定する手順を説明する。試料台12に載置されたウェハ3表面が複数領域に分割され、各領域を識別する領域番号が割り当てられ、各領域の中心におけるX座標及びY座標が各領域番号に対応づけて取得される。以下、X座標及びY座標を、座標という。領域番号、座標、後述のスペクトルデータのファイル名及び粒子径夫々の記録欄からなる測定管理テーブルが作成されて記憶部28に記憶される。各領域番号及び座標が測定管理テーブルに記録される。測定管理テーブルから最初の領域番号に対応する座標が読み出されてX線ビームの照射位置が座標に一致するよう試料台12が移動される。X線ビームの照射が開始されて蛍光X線スペクトルが測定される。
【0033】
測定された蛍光X線スペクトルは、領域番号に対応したファイル名を有するスペクトルデータとして記憶されると共に、測定管理テーブルに領域番号と対応付けて当該ファイル名が記録される。測定管理テーブルから、次の領域番号に対応する座標が読み出され、試料台12を移動してX線ビームの照射位置を変更する動作が順次繰り返される。これにより、X線ビームを用いてウェハ3表面が走査される。また、X線ビームによる走査と共に各領域の蛍光X線スペクトルが同様に測定され、異なるファイル名を有するスペクトルデータが記録されると共に測定管理テーブルに各スペクトルデータのファイル名が記録される。測定管理テーブルの最後の領域番号に対応するファイル名が記録された場合、X線ビームの照射が終了されて蛍光X線スペクトルの測定が完了する。
【0034】
図4及び図5夫々は、実施の形態1に係るウェハ3表面が分割されてなる複数領域の例を示す模式図及び測定管理テーブルのレコードレイアウト例を示す図表である。図4に示す例では、直径300mmの円板であるウェハ3が試料台12に載置されており、ウェハ3の中心を原点としたXY座標軸が設定されている。例えば、略正方形の領域3aの座標として(−40,+60)が取得されている。図5に示す如く、測定管理テーブルは、領域番号、座標、ファイル名及び粒子径夫々の記録欄からなり、領域番号1,2,…,565夫々に対して座標(0,+145),(−10,+135),…,(0,−145)及びファイル名「SA001」,「SA002」,…,「SA565」が記録してある。
【0035】
次に各領域の蛍光X線スペクトルから元素を同定し、同定元素の蛍光X線スペクトルを抽出して面積分強度を算出する手順を説明する。測定管理テーブルに記録された領域番号が選択され、対応するファイル名を有するスペクトルデータが読み出される。読み出されたスペクトルデータとスペクトル形状が一致する標準スペクトルデータが標準スペクトルデータベース281から検索される。検索の結果、一致する標準スペクトルデータがある場合、検索された標準スペクトルデータに対応付けられた元素が粒子を構成する元素として同定される。蛍光X線スペクトルから同定元素夫々の蛍光X線スペクトルが抽出されて面積分強度が算出される。
【0036】
図6は、実施の形態1に係る粒子の蛍光X線スペクトルの例を示すグラフである。図6に示す粒子の蛍光X線スペクトルの例では、元素A由来のエネルギーEa1及びEa2夫々の輝線からなるスペクトル形状と、元素B由来のエネルギーEb1、Eb2及びEb3夫々の輝線からなるスペクトル形状と、元素C由来のエネルギーEc1、Ec2及びEc3夫々の輝線からなるスペクトル形状とを有している。図6に示す例の場合、元素A、元素B及び元素Cの標準スペクトルデータが検索され、粒子を構成する元素として元素A、元素B及び元素Cが同定される。この例では、元素A、元素B及び元素C夫々の蛍光X線スペクトルの斜線で示した面積分強度が算出される。次に同定元素夫々に対して算出された面積分強度を検量線に基づいて粒子径を特定する手順及び複数の粒子径が特定された場合に粒子の粒子径を算出する手順を説明する。
【0037】
同定元素夫々の検量線が検量線データベース282から読み出され、同定元素夫々に対して算出された面積分強度に対応する粒子径が読み出されて特定される。同定元素が1種類である場合、算出される面積分強度は1つであり、当該面積分強度に対応する粒子径が粒子の粒子径として特定される。また、同定元素が複数種類である場合、複数の面積分強度が変換されて複数の粒子径が特定される。ここで、n個の粒子径D1,D2,…,Dn夫々を直径とするn個の仮想の球体の体積の合計値が、粒子径Daを直径とする仮想の球体の体積と一致すると仮定して、以下の式が得られる。
【0038】
【数2】

式(2)を整理すると以下の式が得られる。
【0039】
【数1】

【0040】
複数の粒子径D1,D2,…,Dnを式(1)に代入することで粒子径Daが算出される。粒子径Daの算出は、式(1)に限るものではなく、式(1)を式変形したものであってもよい。粒子径Daが領域番号に対応付けて測定管理テーブルに記録される。また、元素が同定されず、粒子が検出されなかった場合、測定管理テーブルの粒子径の記録欄は空欄となる。測定管理テーブルに記録してある領域番号全てに対して同様に粒子径の取得が行われ、試料表面で検出された粒子に対して粒子径の測定が完了する。
【0041】
図7は、実施の形態1に係る粒子径測定処理の手順を示すフローチャートである。処理装置2のCPU20は、測定管理テーブルを生成する(ステップS1)。CPU20は、測定管理テーブルから領域番号1の座標を読み出す(ステップS2)。CPU20は、後述の蛍光X線スペクトル測定処理を実行する(ステップS3)。CPU20は、最終領域番号を読み出しているか否かを判定する(ステップS4)。CPU20は、最終領域番号を読み出していないと判定した場合(ステップS4でNO)、測定管理テーブルから次の領域番号の座標を読出し(ステップS5)、蛍光X線スペクトル測定処理を実行するステップS3に処理を戻す。
【0042】
CPU20は、最終領域番号を読み出していると判定した場合(ステップS4でYES)、測定管理テーブルに記録されているファイル名を参照して領域番号1のスペクトルデータを読み出す(ステップS6)。CPU20は、スペクトルデータに基づいて後述の粒子径取得処理を実行する(ステップS7)。CPU20は、最終領域番号のスペクトルデータを読み出したか否かを判定する(ステップS8)。CPU20は、最終領域番号のスペクトルデータを読み出していないと判定した場合(ステップS8でNO)、測定管理テーブルに記録されているファイル名を参照して次の領域番号のスペクトルデータを読み出し(ステップS9)、粒子径取得処理を実行するステップS7に処理を戻す。CPU20は、最終領域番号のスペクトルデータを読み出したと判定した場合(ステップS8でYES)、粒子径測定処理を終了する。
【0043】
図8は、実施の形態1に係る蛍光X線スペクトル測定処理の手順を示すフローチャートである。CPU20は、読み出した座標に基づいて試料台を移動させる(ステップS11)。CPU20は、領域番号1の座標を読み出したか否かを判定する(ステップS12)。CPU20は、領域番号1の座標を読み出したと判定した場合(ステップS12でYES)、X線ビームの照射を開始し(ステップS13)、蛍光X線スペクトルを測定する(ステップS14)。CPU20は、領域番号1の座標を読み出していないと判定した場合(ステップS12でNO)、蛍光X線スペクトルを測定するステップS14に処理を移す。
【0044】
CPU20は、測定した蛍光X線スペクトルからなるスペクトルデータを記憶する(ステップS15)。CPU20は、測定管理テーブルにスペクトルデータのファイル名を記録する(ステップS16)。CPU20は、最終領域番号の座標を読み出したか否かを判定する(ステップS17)。CPU20は、最終領域番号の座標を読み出していないと判定した場合(ステップS17でNO)、蛍光X線スペクトル測定処理を終了する。CPU20は、最終領域番号の座標を読み出したと判定した場合(ステップS17でYES)、X線ビームの照射を終了し(ステップS18)、蛍光X線スペクトル測定処理を終了する。
【0045】
図9は、実施の形態1に係る粒子径取得処理の手順を示すフローチャートである。CPU20は、読み出したスペクトルデータと一致する標準スペクトルデータを検索する(ステップS21)。CPU20は、検索の結果、一致する標準スペクトルデータがあるか否かを判定する(ステップS22)。CPU20は、一致する標準スペクトルデータがあると判定した場合(ステップS22でYES)、粒子を構成する元素を同定する(ステップS23)。CPU20は、スペクトルデータから同定元素の蛍光X線スペクトルを抽出し(ステップS24)、面積分強度を算出する(ステップS25)。CPU20は、同定元素に対応する検量線を読出し(ステップS26)、粒子径を特定する(ステップS27)。
【0046】
CPU20は、同定元素が複数であるか否かを判定する(ステップS28)。CPU20は、同定元素が複数であると判定した場合(ステップS28でYES)、複数の粒子径から式(1)を用いて粒子径Daを算出する(ステップS29)。CPU20は、粒子径を測定管理テーブルに記録して(ステップS30)、粒子径取得処理を終了する。CPU20は、同定元素が複数であるか否かを判定するステップS28において、同定元素が複数でないと判定した場合(ステップS28でNO)、粒子径を測定管理テーブルに記録するステップS30に処理を移す。CPU20は、検索の結果、一致する標準スペクトルデータがあるか否かを判定するステップS22において、一致する標準スペクトルデータがないと判定した場合(ステップS22でNO)、粒子径取得処理を終了する。
【0047】
試料台移動部11は、試料台12を水平面でのXY方向に移動させるよう構成してある場合を示したが、これに限るものではなく水平面のrθ方向に移動させるよう構成し、座標としてrθ座標を用いてもよい。この場合、試料台移動部11は、基準となる回転中心を原点とし試料台12を回転させるθ方向回転機構及び回転中心から半径方向に移動させるθ方向移動機構で構成するとよい。また、検量線データベース282に検量線の近似関数から生成したテーブルを格納する例を示したが、これに限るものではなく近似関数の変数を格納してもよい。この場合、検量線データベース282に格納してある変数に基づいて面積分強度を近似関数に代入し、粒子径を算出することにより、粒子径を特定するとよい。
【0048】
実施の形態2
図10は、実施の形態2に係る粒子径測定装置の内部構成の例を示すブロック図である。本実施の形態2は、実施の形態1がX線ビームによりウェハ表面の全領域を走査するよう構成してあるのに対して、光ビームによりウェハ表面の全領域を走査し、大型粒子を検出した後に、大型粒子が検出された領域を除くウェハ表面をX線ビームにより走査するよう構成してある。図中5は、ウェハ3表面にレーザ光(光ビーム)を照射して散乱光強度を測定するレーザ散乱測定装置である。粒子径測定装置は、レーザ散乱測定装置5と、X線分析装置4と、レーザ散乱測定装置5からX線分析装置4にウェハを移動させるためのロードロック室6と、レーザ散乱測定装置5及びX線分析装置4の制御並びに各装置が測定した各種データを処理して粒子径を取得する処理装置7とからなる。
【0049】
レーザ散乱測定装置5は、大気圧下で散乱光強度を測定するための試料室50を備える。試料室50には、試料台12が載置されており、試料台12を水平面でのXY方向に移動させる試料台移動部51と、試料台12に載置されたウェハ3表面に対してレーザ光を照射するレーザ光源53と、ウェハ3表面で散乱される散乱光を検出して光検出信号を出力する光検出器54とを備える。図中破線矢印は、レーザ光源53からウェハ3表面に入射し反射されるレーザ光及びウェハ3表面で散乱される散乱光の軌跡の例を示す。
【0050】
レーザ散乱測定装置5の試料台移動部51及びX線分析装置4の試料台移動部11夫々は、同一の座標が与えられた場合、ウェハ3表面のレーザ光及びX線ビーム夫々の照射位置が一致するよう構成してある。レーザ光源53は、レーザ光を出射するレーザ素子と、レーザ光をウェハ3表面に集光する集光レンズとからなり、レーザ光をウェハ3表面に照射するようにしてある。試料台移動部51は、試料台12をXY方向に移動させてウェハ3表面のレーザ光の照射位置を移動させてレーザ光によりウェハ3表面を走査し、大型粒子を検出する大型粒子検出手段として機能する。レーザ散乱測定装置5及びX線分析装置4夫々は、真空バルブ52及び真空バルブ41を備えている。
【0051】
真空バルブ52及び真空バルブ41は、試料台12をレーザ散乱測定装置5の大気圧の試料室10及びX線分析装置4の真空の試料室50間で移動させるためのロードロック室6を介して接続されている。また、レーザ散乱測定装置5は、ウェハ3が載置された試料台12を把持してロードロック室6に搬送するロボットアームを有する試料台搬送部55を備える。X線分析装置4は、ロードロック室6に搬送された試料台12を把持して試料室50に搬送するロボットアームを有する試料台搬送部42を備える。ロードロック室6には真空排気する為のポンプ(図示せず)及び大気を導入する為のガス配管(図示せず)が接続してある。
【0052】
処理装置7は、HDD又はフラッシュメモリ等からなる記憶部74を備えている。記憶部74は、標準スペクトルデータベース281と、検量線データベース282と、散乱光強度を粒子径に変換するための粒子径変換データが格納された粒子径変換データベース741とが記憶してある。また、処理装置7は、レーザ光源53を駆動させる光源駆動部72と、光検出器54から光検出信号が入力される光検出信号入力部73とを備える。試料台移動制御部21は、CPU20から与えられる座標にレーザ光又はX線ビーム夫々が照射されるべく試料台移動部51及び試料台移動部11の移動を制御するようにしてある。また、処理装置7は、試料台搬送部55及び真空バルブ52、41を制御して試料台12をレーザ散乱測定装置5からX線分析装置4に移動させる搬送制御部71を備える。次にレーザ散乱測定装置5に試料台12と共に配されたウェハ3表面でレーザ光を走査してレーザ散乱測定を実行し、所定粒子径以上の粒子径を有する大型粒子を検出する手順を説明する。
【0053】
試料台12に載置されたウェハ3表面が複数領域に分割され、各領域を識別する領域番号が割り当てられ、各領域の中心におけるX座標及びY座標からなる座標が各領域番号に対応づけて取得される。領域番号、座標、後述のスペクトルデータのファイル名及び粒子径夫々の記録欄からなる測定管理テーブルが作成されて、各領域番号及びXY座標が測定管理テーブルに記録される。測定管理テーブルから最初の領域番号に対応する座標が読み出されてレーザ光の照射位置が座標に一致するよう試料台12が移動される。レーザ光の照射が開始されて散乱光強度が測定される。
【0054】
測定された散乱光強度は、領域番号に関連付けられてRAM27に記憶される。測定管理テーブルから、次の領域番号に対応する座標が読み出され、試料台12を移動してレーザ光の照射位置を変更する動作が順次繰り返される。これにより、レーザ光を用いてウェハ3表面が走査される。また、レーザ光の走査と共に各領域の散乱光強度が同様に測定され、RAM27に記憶される。全ての領域散乱光強度が記憶された場合、レーザ光の照射が停止されてレーザ散乱測定を完了する。粒子径変換データベース741に格納されている粒子径変換データに基づいて各散乱光強度が粒子径に変換され、測定管理テーブルに各領域番号に対応付けて記録される。次にウェハ3が載置された試料台12がレーザ散乱測定装置5の試料室50からX線分析装置4の試料室10に搬送される。
【0055】
搬送制御部71は、CPU20により搬送指示が与えられた場合、ロードロック室6を大気圧にし、真空バルブ52を開放する。搬送制御部71は、試料台搬送部55のロボットアームにより試料台12を把持させてロードロック室6に搬送させ、把持を解除させた後に真空バルブ52を閉鎖させ、ロードロック室6の真空引きを実行させる。搬送制御部71は、ロードロック室6が真空となった場合、真空バルブ41を開放しX線分析装置4の試料台搬送部42のロボットアームにより試料台12を把持させてX線分析装置4の試料室10に搬送させる。搬送制御部71は、真空バルブ41を閉鎖し、試料台搬送部42に把持を解除させて試料台12の搬送動作を完了する。次に、レーザ散乱測定により大型粒子が検出された領域を除いて試料表面をX線ビームにより走査して蛍光X線スペクトルを測定する手順を説明する。
【0056】
レーザ散乱測定装置5の試料台移動部51及びX線分析装置4の試料台移動部11夫々は、試料台12の搬送により生じた同一座標におけるウェハ3表面のレーザ光及びX線ビーム夫々の照射位置のずれを補正する座標補正処理が実行される。座標補正処理は、例えば同一線上にない3つの識別点をウェハ3表面に予め形成し、レーザ散乱測定装置5が検出した識別点夫々の座標と、X線分析装置4が検出した識別点夫々の座標とのずれを算出して補正するとよい。測定管理テーブルに記録された領域番号が選択され、対応する粒子径が読み出される。読み出された粒子径が所定粒子径以上であるか否かを判定して、各領域から大型粒子が検出される。
【0057】
所定粒子径は、レーザ散乱測定装置5が検出可能な最小粒子径等に基づいて予め設定するとよく、例えば50nmとすればよい。大型粒子でないと判定された場合、測定管理テーブルから領域番号に対応付けられた座標が読み出され、試料台12の移動、X線ビームの照射及び蛍光X線スペクトルの測定が順次実行される。大型粒子であると判定された場合、読み出された領域番号に対して蛍光X線スペクトル測定が実行されず、測定管理テーブルから次の領域番号に対応づけられた粒子径が読み出され、同様に大型粒子であるか否かが判定される。
【0058】
蛍光X線スペクトルが測定された場合、実施の形態1と同様にスペクトルデータが記憶されると共に測定管理テーブルにファイル名が記録される。測定管理テーブルに記録してある領域番号のうち、大型粒子が検出された領域の領域番号を除く領域番号に対応する座標にのみX線ビームが照射されて蛍光X線スペクトル測定が完了する。次に、測定管理ファイルから所定粒子径未満の粒子径が記録してある領域番号を選択し、当該領域番号に対応付けられたファイル名を有するスペクトルデータを読出して、元素の同定、同定元素の蛍光X線スペクトルの抽出、面積分強度の算出、検量線に基づいた粒子径の特定及び複数の粒子径に基づいた粒子の粒子径の算出を実行し、得られた粒子径を測定管理テーブルに記録して粒子径の測定を完了する。
【0059】
図11及び図12は、実施の形態2に係る粒子径測定処理の手順を示すフローチャートである。処理装置7のCPU20は、測定管理テーブルを生成する(ステップS31)。CPU20は、後述のレーザ散乱測定処理を実行する(ステップS32)。CPU20は、X線分析装置4へウェハ3が載置された試料台12を搬送させて(ステップS33)、座標補正処理を実行する(ステップS34)。CPU20は、測定管理テーブルから領域番号1の粒子径を読み出す(ステップS35)。CPU20は、読み出した粒子径が所定粒子径以上であるか否かを判定する(ステップS36)。CPU20は、所定粒子径以上であると判定した場合(ステップS36でYES)、測定管理テーブルから次の領域番号の粒子径を読出し(ステップS40)、所定粒子径以上であるか否かを判定するステップS36に処理を戻す。
【0060】
CPU20は、所定粒子径以上でないと判定した場合(ステップS36でNO)、測定管理テーブルから領域番号の座標を読み出し(ステップS37)、蛍光X線スペクトル測定処理を実行する(ステップS38)。CPU20は、最終領域番号の粒子径を読み出したか否かを判定する(ステップS39)。CPU20は、最終領域番号の粒子径を読み出していないと判定した場合(ステップS39でNO)、測定管理テーブルから次の領域番号の粒子径を読出すステップS40に処理を移す。CPU20は、最終領域番号の粒子径を読み出したと判定した場合(ステップS39でYES)、測定管理テーブルから領域番号1の粒子径を読み出す(ステップS41)。
【0061】
CPU20は、読み出した粒子径が所定粒子未満であるか否かを判定する(ステップS42)。CPU20は、所定粒子径未満でないと判定した場合(ステップS42でNO)、測定管理テーブルから次の領域番号の粒子径を読出し(ステップS43)、所定粒子径未満であるか否かを判定するステップS42に処理を戻す。CPU20は、所定粒子径未満であると判定した場合(ステップS42でYES)、スペクトルデータを読み出し(ステップS44)、粒子径取得処理を実行する(ステップS45)。
【0062】
CPU20は、最終領域番号のスペクトルデータを読み出したか否かを判定する(ステップS46)。CPU20は、最終領域番号のスペクトルデータを読み出していないと判定した場合(ステップS46でNO)、測定管理テーブルから次の領域番号の粒子径を読み出すステップS43に処理を移す。CPU20は、最終領域番号のスペクトルデータを読み出したと判定した場合(ステップS46でYES)、粒子径測定処理を終了する。
【0063】
図13は、実施の形態2に係るレーザ散乱測定処理の手順を示すフローチャートである。CPU20は、測定管理テーブルから領域番号1の座標を読み出す(ステップS51)。CPU20は、読み出した座標に基づいて試料台を移動させる(ステップS52)。CPU20は、領域番号1の座標を読み出したか否かを判定する(ステップS53)。CPU20は、領域番号1の座標を読み出したと判定した場合(ステップS53でYES)、レーザ光の照射を開始し(ステップS54)、散乱光強度を測定する(ステップS55)。CPU20は、領域番号1の座標を読み出していないと判定した場合(ステップS53でNO)、散乱光強度を測定するステップS55に処理を移す。
【0064】
CPU20は、測定した散乱光強度を一時記憶する(ステップS56)。CPU20は、最終領域番号の座標を読み出したか否かを判定する(ステップS57)。CPU20は、最終領域番号の座標を読み出していないと判定した場合(ステップS57でNO)、測定管理テーブルから、次の領域番号の座標を読出し(ステップS58)、読み出した座標に基づいて試料台を移動させるステップS52に処理を戻す。CPU20は、最終領域番号の座標を読み出したと判定した場合(ステップS57でYES)、レーザ光の照射を終了し(ステップS59)、粒子径変換データに基づいて一時記憶してある各散乱光強度を粒子径に変換し(ステップS60)、測定管理テーブルに各粒子径を記録して(ステップS61)、レーザ散乱測定処理を終了する。
【0065】
本実施の形態2は以上の如き構成としてあり、その他の構成、作用及び処理名は実施の形態1と同様であるので対応する部分には同一の符号及び処理名を付してその詳細な説明を省略する。
【0066】
実施の形態3
図14は、実施の形態3に係る粒子径測定装置の内部構成の例を示すブロック図である。本実施の形態3は、実施の形態1がROMに記憶してある制御プログラムをRAMに読み出して実行するのに対して、記録媒体に記録してあるコンピュータプログラムを記憶部28にインストールして実行するように構成してある。図中8は、記録媒体読込部81を備える処理装置を示す。処理装置8は、記録媒体読込部81に挿入された記録媒体810からコンピュータプログラム811を読み込んで記憶部28にインストールするようにしてある。
【0067】
CPU20は、記憶部28にインストールされたコンピュータプログラム811をRAM27に読み出して実行することにより、処理装置8に必要な処理を実行する構成にしてある。コンピュータプログラム811は、CPU20に測定した粒子の蛍光X線スペクトルから粒子を構成する元素を同定させ(元素同定ステップ)、測定した粒子の蛍光X線スペクトルから同定した元素の蛍光X線スペクトルを抽出し、面積分強度を算出させる(面積分強度算出ステップ)。コンピュータプログラム811は、同定した元素の検量線に基づいて面積分強度に対応する粒子径を取得させる(粒子径取得ステップ)。
【0068】
本発明に係るコンピュータプログラム811は、CD( Compact Disk )−ROM又はDVD( Digital Versatile Disk )−ROM等の記録媒体810だけでなく、メモリカード等の外部メモリに記憶させておくこともできる。この場合、CPU20に接続される図示しない外部メモリからコンピュータプログラム811を読み出して記憶部28に記憶させる。さらにCPU20に接続された図示しない外部のサーバーコンピュータとの間で通信を確立し、係るコンピュータプログラム811を記憶部28へダウンロードしても良い。
【0069】
本実施の形態3は以上の如き構成としてあり、その他の構成、作用及び処理名は実施の形態1と同様であるので対応する部分には同一の符号及び処理名を付してその詳細な説明を省略する。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】実施の形態1に係る粒子径測定装置の内部構成の例を示すブロック図である。
【図2】実施の形態1に係る面積分強度の算出を説明するための蛍光X線スペクトルの例を示すグラフである。
【図3】実施の形態1に係る検量線の例を示すグラフである。
【図4】実施の形態1に係るウェハ表面が分割されてなる複数領域の例を示す模式図である。
【図5】実施の形態1に係る測定管理テーブルのレコードレイアウト例を示す図表である。
【図6】実施の形態1に係る粒子の蛍光X線スペクトルの例を示すグラフである。
【図7】実施の形態1に係る粒子径測定処理の手順を示すフローチャートである。
【図8】実施の形態1に係る蛍光X線スペクトル測定処理の手順を示すフローチャートである。
【図9】実施の形態1に係る粒子径取得処理の手順を示すフローチャートである。
【図10】実施の形態2に係る粒子径測定装置の内部構成の例を示すブロック図である。
【図11】実施の形態2に係る粒子径測定処理の手順を示すフローチャートである。
【図12】実施の形態2に係る粒子径測定処理の手順を示すフローチャートである。
【図13】実施の形態2に係るレーザ散乱測定処理の手順を示すフローチャートである。
【図14】実施の形態3に係る粒子径測定装置の内部構成の例を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0071】
1,4 X線分析装置
2,7,8 処理装置
3 ウェハ
5 レーザ散乱測定装置
6 ロードロック室
10,50 試料室
11,51 試料台移動部
12 試料台
13 X線源
14 X線検出器
20 CPU
20a バス
21 試料台移動制御部
22 X線源駆動部
23 X線検出信号入力部
24 操作受付部
25 表示部
26 ROM
27 RAM
28,74 記憶部
281 標準スペクトルデータベース
282 検量線データベース
741 粒子径変換データベース
41,52 真空バルブ
42,55 試料台搬送部
53 レーザ光源
54 光検出器
71 搬送制御部
72 光源駆動部
73 光検出信号入力部
74 粒子径変換データベース
81 記録媒体読込部
810 記録媒体
811 コンピュータプログラム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料表面の粒子にX線ビームを照射して得た前記粒子の蛍光X線スペクトルに基づいて前記粒子の粒子径を測定する粒子径測定装置において、
前記粒子の蛍光X線スペクトルに基づいて前記粒子に含まれる元素を同定する元素同定手段と、
前記粒子の蛍光X線スペクトルから、前記元素同定手段が同定した元素の蛍光X線スペクトルを抽出する抽出手段と、
該抽出手段が抽出した前記蛍光X線スペクトルを面積分して得られる面積分強度を算出する面積分強度算出手段と、
複数の元素夫々に関する面積分強度及び粒子径の対応関係を示す検量線を記憶してある検量線記憶手段と、
該検量線記憶手段に記憶してある前記検量線のうち、前記元素同定手段が同定した元素に関する検量線に基づいて、前記面積分強度算出手段が算出した前記面積分強度に対応する粒子径を特定する粒子径特定手段と
を備えることを特徴とする粒子径測定装置。
【請求項2】
前記抽出手段は、
前記元素同定手段が複数の元素を同定した場合、複数の蛍光X線スペクトルを抽出するよう構成してあり、
前記面積分強度算出手段は、
前記抽出手段が複数の蛍光X線スペクトルを抽出した場合、複数の面積分強度を算出するよう構成してあり、
前記粒子径特定手段は、
前記面積分強度算出手段が複数の面積分強度を算出した場合、前記元素同定手段が同定した複数の元素夫々に関する検量線に基づいて複数の粒子径を特定するよう構成してあり、
前記粒子径特定手段が複数の粒子径を特定した場合、前記複数の粒子径に基づいて前記粒子の粒子径を算出する粒子径算出手段を更に備える
ことを特徴とする請求項1に記載の粒子径測定装置。
【請求項3】
前記粒子径算出手段は、下記式に基づいて前記粒子の粒子径を算出するよう構成してあることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の粒子径測定装置。
【数1】

ここで、
n:特定された複数の粒子径の個数
Dm:特定された複数の粒子径
Da:粒子の粒子径
【請求項4】
前記X線ビームにより試料表面を走査するX線ビーム走査手段を備えることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の粒子径測定装置。
【請求項5】
光ビームにより試料表面を走査して粒子径が所定値以上である大型粒子を検出する大型粒子検出手段を備え、
前記X線ビーム走査手段は、
試料表面のうち、前記大型粒子検出手段により大型粒子が検出された領域を除いた試料表面を走査するよう構成してある
ことを特徴とする請求項4に記載の粒子径測定装置。
【請求項6】
試料表面の粒子にX線ビームを照射して得た前記粒子の蛍光X線スペクトルに基づいて前記粒子の粒子径を測定する粒子径測定方法において、
前記粒子の蛍光X線スペクトルに基づいて前記粒子に含まれる元素を同定し、
前記粒子の蛍光X線スペクトルから、同定した元素の蛍光X線スペクトルを抽出し、
抽出した前記蛍光X線スペクトルを面積分して得られる面積分強度を算出し、
同定した元素に対応しており、面積分強度及び粒子径の対応関係を示す検量線に基づいて前記面積分強度に対応する粒子径を特定する
ことを特徴とする粒子径測定方法。
【請求項7】
試料表面の粒子の蛍光X線スペクトルを測定する測定装置が備えるコンピュータに、前記粒子の蛍光X線スペクトルに基づいて前記粒子の粒子径を算出させるためのコンピュータプログラムにおいて、
前記コンピュータに、
前記粒子の蛍光X線スペクトルに基づいて前記粒子に含まれる元素を同定させる元素同定ステップと、
前記粒子の蛍光X線スペクトルに含まれており、同定された元素の蛍光X線スペクトルを面積分させて面積分強度を算出させる面積分強度算出ステップと、
面積分強度及び粒子径の対応関係を示す検量線に基づいて前記面積分強度に対応する粒子径を取得させる粒子径取得ステップと
を実行させることを特徴とするコンピュータプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2010−71762(P2010−71762A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−238466(P2008−238466)
【出願日】平成20年9月17日(2008.9.17)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】