説明

経路探索システムおよび経路探索システムによる所要時間算出方法

【課題】天候や混雑状況により生じる移動時間の遅延を考慮して、現在地から目的地までの経路を探索して所要時間を算出する経路探索システムを提供する。
【解決手段】経路探索システム1は、携帯端末装置100と経路探索サーバ150とが通信可能に接続され、携帯端末装置100の位置を検出する位置検出手段10と、検出した携帯端末装置100の位置から目的地まで、少なくとも歩行移動を含む複数の移動手段による経路を探索する経路探索手段20と、探索した経路において、移動手段毎の移動に要する標準所要時間を取得する移動時間取得手段24と、標準所要時間を遅延させる天候や雑踏等の外乱に関する情報を取得する外乱情報取得手段30と、取得した外乱に関する情報に応じて標準所要時間をそれぞれ補正し、補正した標準所要時間に基づき、探索した経路での所要時間を算出する所要時間算出手段28とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、目的地までの経路を探索する経路探索システムおよび経路探索システムによる経路探索方法に関する。
【背景技術】
【0002】
地図データ、道路データおよび所望の出発地から目的地までの経路を探索して案内するナビゲーションシステムが知られている。このようなナビゲーションシステムは、例えば、下記特許文献1および特許文献2に示すように、携帯電話をナビゲーション端末として利用して経路探索サーバに経路探索要求を送り、その結果を受信して経路案内を行う通信型のナビゲーションシステムが提案されている。
このような通信型のナビゲーションシステムは、歩行者用のナビゲーションシステムとして好適であり、徒歩経路の探索と案内に加えて、経路探索サーバに鉄道等の公的交通機関の時刻表データを蓄積し、所望の出発駅から所望の目的駅までの経路を、乗換えを含む徒歩経路の探索と案内に加えて案内する機能を有するナビゲーションシステムなどが実用化されている。
【0003】
【特許文献1】特開2006−193020号公報
【特許文献2】特開平8−263786号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、歩行移動時における所要時間は、移動距離や携帯端末装置の保持者毎の移動速度に依り変動が大きいため、精度良く算出できないことに加え、歩行移動時における悪天候や、雑踏による駅構内および歩道等の混雑のように、予測不可能な要因により所要時間を大幅に変更せざるを得ないような状況が生じた場合、従来のナビゲーションシステムでは、このような要因に対応できないため、ナビゲーション端末の使用者に適切な所要時間の情報を提供することはできなかった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0006】
[適用例1]
本適用例にかかる経路探索システムは、携帯端末装置と経路探索サーバが通信可能に接続された経路探索システムであって、携帯端末装置の位置を検出する検出手段と、前記検出した携帯端末装置の位置から目的地まで、少なくとも歩行移動を含む複数の移動手段による経路を探索する探索手段と、前記探索した経路において、移動手段毎の移動に要する既定の標準所要時間をそれぞれ取得する所要時間取得手段と、前記標準所要時間を遅延させる要因に関する情報を取得する情報取得手段と、前記取得した要因に応じて前記標準所要時間をそれぞれ補正する補正手段と、前記補正した標準所要時間に基づき、前記探索した経路での所要時間を算出する算出手段とを備え、前記歩行移動における前記標準所要時間は、前記検出手段により検出された複数の前記位置から得られる移動距離と前記携帯端末装置の保持者の歩行速度とに基づき取得されると共に、天候および混雑状況の少なくとも1つを含む前記要因に応じて補正されることを特徴とする。
【0007】
このような構成によれば、携帯端末装置の位置から目的地までの経路を探索し、探索された経路における移動手段毎の標準所要時間を遅延させる要因に関する情報を取得すると共に、標準所要時間は、取得された要因に応じて補正され、補正された標準所要時間に基づいて、目的地までの所要時間を算出するため、所要時間を精度良く算出できる。特に、歩行移動において、標準所要時間は、実際の移動距離と携帯端末装置保持者の歩行速度とに基づき取得されるため、標準所要時間の精度が向上すると共に、歩行移動時において標準所要時間を遅延させる要因である天候や混雑状況に応じて補正されることから、歩行移動に係る所要時間の精度を向上させることができる。
【0008】
[適用例2]
上記適用例にかかる経路探索システムにおいて、前記探索手段で探索した経路を案内可能な表示情報に編集する編集手段と、前記表示情報と前記算出した所要時間の少なくとも1つを表示する表示手段とを更に備えることが好ましい。
【0009】
このような構成によれば、探索した経路や目的地までの所要時間を表示できる。
【0010】
[適用例3]
上記適用例にかかる経路探索システムにおいて、外部のデータベースと通信するための通信手段を更に備え、前記探索手段は、前記データベースに蓄積されたデータに基づき前記経路を探索し、前記所要時間取得手段および前記情報取得手段は、それぞれの前記移動手段に応じた前記データベースに蓄積されたデータに基づき、前記標準所要時間および前記要因に関する情報をそれぞれ取得することが好ましい。
【0011】
このような構成によれば、外部のデータベースの情報を参照できることから、最新の情報が得られるため、経路情報、標準所要時間および遅延要因に関する情報を精度良く取得できる。
【0012】
[適用例4]
上記適用例にかかる経路探索システムにおいて、前記検出手段は、複数の衛星からの電波を受信して求めた各衛星から前記携帯端末装置までの距離を基に、前記携帯端末装置の絶対位置を検出することが好ましい。
【0013】
このような構成によれば、現在地および移動先を限定することなく、経路や所要時間を取得できる。
【0014】
[適用例5]
上記適用例にかかる経路探索システムにおいて、前記検出手段は、加速度、磁気量、角速度および圧力の少なくとも1つの変動を基に、前記携帯端末装置の相対位置を更に検出し、前記絶対位置および前記相対位置の少なくとも1つから前記携帯端末装置の位置を検出することが好ましい。
【0015】
このような構成によれば、自身の位置をより正確に取得できる。
【0016】
[適用例6]
上記適用例にかかる経路探索システムにおいて、前記歩行速度は、前記歩行移動で移動した距離と前記歩行移動に要した時間とを前記携帯端末装置の保持者毎に統計処理して算出されることが好ましい。
【0017】
このような構成によれば、歩行速度は実際の移動距離や移動時間に応じて携帯端末装置保持者毎に統計的に算出されることから、目的地までの所要時間の算出精度が向上する。
【0018】
[適用例7]
上記適用例にかかる経路探索システムにおいて、前記携帯端末装置は、電子チケットであっても良い。
[適用例8]
本適用例にかかる経路探索システムによる所要時間算出方法は、携帯端末装置と経路探索サーバが通信可能に接続された経路探索システムによる所要時間算出方法であって、携帯端末装置の位置を検出する検出工程と、前記検出した携帯端末装置の位置から目的地まで、少なくとも歩行移動を含む複数の移動手段による経路を探索する探索工程と、前記探索した経路において、移動手段毎の移動に要する既定の標準所要時間をそれぞれ取得する所要時間取得工程と、前記標準所要時間を遅延させる要因に関する情報を取得する情報取得工程と、前記取得した要因に応じて前記標準所要時間をそれぞれ補正する補正工程と、前記補正した標準所要時間に基づき、前記探索した経路での所要時間を算出する算出工程とを備え、前記歩行移動における前記標準所要時間は、前記検出工程により検出された複数の前記位置から得られる移動距離と前記携帯端末装置の保持者の歩行速度とに基づき取得されると共に、天候および混雑状況の少なくとも1つを含む前記要因に応じて補正されることを特徴とする。
【0019】
このような方法によれば、携帯端末装置の位置から目的地までの経路を探索し、探索された経路における移動手段毎の標準所要時間を遅延させる要因に関する情報を取得すると共に、標準所要時間は、取得された要因に応じて補正され、補正された標準所要時間に基づいて、目的地までの所要時間を算出するため、所要時間を精度良く算出できる。特に、歩行移動において、標準所要時間は、実際の移動距離と携帯端末装置保持者の歩行速度とに基づき取得されるため、標準所要時間の精度が向上すると共に、歩行移動時において標準所要時間を遅延させる要因である天候や混雑状況に応じて補正されることから、歩行移動に係る所要時間の精度を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、経路探索システム1について図面を参照して説明する。
【0021】
(実施形態1)
図1は、経路探索システム1の機能構成を示すブロック図である。この経路探索システム1は、携帯端末装置100と、経路探索サーバ150と、複数のデータベース(40〜52)とを備え、携帯端末装置100と経路探索サーバ150は、無線通信により通信可能に接続されると共に、経路探索サーバ150と複数のデータベース(40〜52)はネットワーク35により通信可能に接続される。これらのデータベース(40〜52)は、アクセス可能なストレージデバイスに記憶されても良く、WebサーバやFTPサーバから供給されても良い。
携帯端末装置100は、位置検出手段10と、目的地入力手段12と、無線通信手段14と、表示手段16とを備える。
【0022】
位置検出手段10は、携帯端末装置100の現在の位置(絶対位置)を検出する。検出した現在の位置情報は、無線通信手段14から経路探索サーバ150に送られる。本実施形態1では、GPS(Global Positioning System)衛星による測位により絶対位置を検出するが、GalileoやGLONASSのようなSPS(Standard Positioning Service)測位も適用できる。更に、衛星による測位以外の方法として、RFID(Radio Frequency IDentification)、超音波または赤外線タグ等から送信される位置情報に基づいて絶対位置を検出しても良い。また、携帯端末装置100は、角速度、加速度、磁気および気圧等をセンサ74(図2)で相対位置を検出し、携帯端末装置100の自律航行を実現しても良い。更に、GPS衛星等を利用した絶対位置検出手段と、携帯端末装置100に内蔵するセンサ74等の相対位置検出手段とを組合せることにより、ハイブリッド測位を行っても良い。尚、自律航行の方法については、本発明の要旨ではないため、省略する(かかる方式については、例えば、特開2004−163168号公報、特開平11−194033号公報および特開2005−337872号公報等を参照)。
【0023】
目的地入力手段12は、携帯端末装置100が携帯されて移動されるべき目的地を入力する。入力された目的地の情報は、無線通信手段14から経路探索サーバ150に送られる。本実施形態1では、目的地名を直接入力しても良く、また、表示手段16に地図を表示し、目的地を指し示しても良い。
無線通信手段14は、無線通信により経路探索サーバ150と通信する。本実施形態1では、この無線通信は携帯電話の電波を利用した通信を想定するが、PHS(Personal Handyphone System)や無線LAN(Local Area Network)等であっても良い。尚、携帯端末装置100は、携帯電話装置のような様態であっても良く、図示は略すが、無線通話手段や相手先を指示する電話番号指示手段を更に備えても良い。更に、携帯端末装置100は、PDA(Personal Digital Assistant)やICカードのような様態も想定できる。
表示手段16は、携帯端末装置100の操作に関する情報を表示すると共に、経路探索サーバ150から送られる経路案内情報や所要時間に関する情報を表示する。
【0024】
次に、経路探索サーバ150は、経路探索手段20と、無線通信手段22と、移動時間取得手段24と、ネットワーク通信手段26と、所要時間算出手段28と、外乱情報取得手段30と、経路案内手段34とを備える。
経路探索手段20は、携帯端末装置100から送られる現在の位置情報および目的地の情報に基づき、携帯端末装置100の現在の位置から目的地まで、少なくとも歩行移動を含む複数の移動手段による経路を探索する。尚、歩行移動とは、交通手段に依らず人間自身による移動を示し、走行による移動も含む。経路探索手段20により探索された経路の情報は、経路案内手段34および移動時間取得手段24に送られる。本実施形態1では、経路探索手段20は、ネットワーク35を介して、公共交通機関の運行経路や乗場位置等の情報が蓄積された公共交通機関情報データベース(DB)40にアクセスして、選択可能な経路を探索する。尚、経路探索の方法は、特開平−263786号公報や特開2006−193020号公報に記載された方法を採用できる。
【0025】
経路案内手段34は、経路探索手段20で探索した経路を案内可能な表示情報に編集する編集手段であり、本実施形態1では、経路探索手段20から送られる経路の情報を携帯端末装置100の表示手段16に表示して案内すべく、編集手段としてデータを編集する。編集されたデータは、無線通信手段22から携帯端末装置100に送られ、表示手段16に表示される。
移動時間取得手段24は、経路探索手段20から送られる経路の情報に基づき、移動手段毎の移動に要する既定の所要時間(標準所要時間)を取得する所要時間取得手段である。本実施形態1では、移動時間取得手段24は、ネットワーク35を介して、各駅等における乗換えの所要時間等の情報が蓄積された乗換え情報DB42にアクセスすることにより、公共交通機関の移動手段毎の標準所要時間を取得する。また、移動時間取得手段24は、携帯端末装置100を保持する保持者毎の歩行速度等の情報が蓄積された歩行速度DB44にアクセスして歩行速度を取得すると共に、位置検出手段10から得られる位置情報から移動距離を取得し、歩行移動の場合の標準所要時間を取得する。ここで取得された移動手段毎の標準所要時間に関する情報は、所要時間算出手段28に送られる。尚、位置検出手段10で検出された位置データや、経路上の街角に設置された画像センサの情報から測定される人物の歩行速度に基づいて、歩行速度DB44に蓄積された歩行速度の情報は更新されても良い。
【0026】
外乱情報取得手段30は、各移動手段の標準所要時間を遅延させる要因(外乱)に関する情報を、所定のタイミングもしくは所定の時間間隔で取得する。ここで外乱とは、例えば、鉄道による移動の場合は、運行の遅れであり、車による移動の場合は、道路の渋滞である。更に、歩行による移動の場合は、歩道や駅構内等の混雑状況や、降雪および降雨等の天候である。本実施形態1では、外乱情報取得手段30は、ネットワーク35を介して、現在の鉄道の運行状況の情報が蓄積された運行情報DB46、現在の道路の通行状況の情報が蓄積された道路情報DB48、現在の天候状況の情報が蓄積された天候情報DB50および現在の駅や通路の混雑情報が蓄積された混雑情報DB52に所定の時間間隔でアクセスし、それぞれの外乱に関する情報を取得する。尚、駅や通路の混雑情報は、駅構内や歩道に設置されたCCDカメラから推定しても良く、特定の携帯電話の所有者の位置情報から推定しても良い。また、駅の自動改札装置から出力される通過信号等から推定しても良い。このようにして取得された外乱に関する情報は、所要時間算出手段28に送られる。
【0027】
所要時間算出手段28は、外乱情報取得手段30から送られる外乱に関する情報に応じて、それぞれの移動手段における標準所要時間を補正する補正手段と、補正した標準所要時間を含むそれぞれの標準所要時間を総和することにより、目的地までに所要する時間を算出する算出手段としての機能を有する。例えば、歩行移動と、複数の公共交通機関による移動と、複数の公共交通機関を乗換えるための歩行による移動とにより、現在地から目的地まで移動する場合、歩行移動に要する歩行時間は天候により遅延し、乗換えのための歩行移動に要する歩行時間は駅や通路の混雑状況により遅延する。従って、目的地までの所要時間(T)は、以下の様に示すことができる。
T=Σ(tw×kw)+Σ(tp×kc)+Σ(tt×kt)・・・・式1
各変数は以下に示す。
tw:歩行時間
tp:公共交通乗車時間
tt:乗換え時間
kw:天候係数
kc:混雑係数
kt:乗換え混雑係数
尚、各係数は、例えば以下のような値を想定できる。
kw・・・曇り=1.0、小雨=1.1、大雨=1.4、小雪=1.2、大雪=2.0、路面凍結=2.5
kc、kt・・・混雑なし=1.0、やや混雑=1.1、大混雑=1.5
ここで図3は、上記した式1による所要時間の算出例を示し、図3のような天気状況や混雑状況では、所要時間は平常時より24分多くかかる。このようにして所要時間算出手段28で算出された所要時間に関する情報は、携帯端末装置100に送られて表示される。従って、携帯端末装置100の保持者は、携帯端末装置100に表示される情報を見て、平常時より早めに移動を開始したり、他の経路への代替を検討したりする。
【0028】
次に、図2は携帯端末装置100のハードウェア構成を示す図である。携帯端末装置100は、CPU(Central Processing Unit)60と、ROM(Read Only Memory)62と、RAM(Random Access Memory)64と、メモリカード66と、I/F(InterFace)68とを備え、それぞれはバス90を介して信号を授受可能に接続されている。更に、I/F68には、GPS受信装置70、無線通信装置72、センサ74、表示素子76および入力装置78が接続されている。GPS受信装置70は、GPS衛星80からの位置データを含む電波信号を受信する。また、無線通信装置72は、携帯電話の基地局82と通信する。また、センサ74は、角速度センサや加速度センサや磁気センサや気圧センサ等を想定する。また、表示素子76は、リライタブルペーパや電子ペーパ等を想定し、入力装置78は、キーボードや音声認識入力や文字認識入力やバーコードリーダ等を想定する。
【0029】
CPU60は、基本ソフトウェアやI/F68に接続された各装置のデバイスドライバや、アプリケーションソフトウェアなどの各種プログラム、および各種のデータをROM62やメモリカード66から読み込み、これらをRAM64内に設けられるメインメモリ領域に展開して実行する。尚、メモリカード66には、携帯端末装置100の保持者ごとの歩行速度が予め記憶されており、必要に応じて読み出され、歩行速度DB44(図1)に送られても良い。
また、経路探索サーバ150は、図示は略すが、CPU、ROM、RAMおよび記憶装置等を備え、各部の機能は所定のオペレーティングシステム(OS)により管理される。尚、携帯端末装置100および経路探索サーバ150の機能は、前記したハードウェア資源と、ソフトウェアとが有機的に協働することで実現される。
【0030】
図4は、経路探索システム1において目的地までの経路および到着時刻等を表示する処理の流れを説明するフローチャートである。この処理が開始されると、最初に、携帯端末装置100は、現在の位置を測位する(ステップS200)。次に、携帯端末装置100の位置が測位できたか、否かが判定される(ステップS202)。ここで、携帯端末装置100の位置を正しく測位できなかった場合(ステップS202でNo)、ステップS200に戻り、携帯端末装置100の現在の位置を再度測位する。他方で、携帯端末装置100の位置を測位できた場合(ステップS202でYes)、ユーザは、移動先の目的地を携帯端末装置100から入力する(ステップS204)。
次に、経路探索サーバ150は、現在の位置から目的地までの経路情報を取得する(ステップS206)。続いて、経路探索サーバ150は、携帯端末装置100の保持者の歩行速度に関する情報を取得する(ステップS208)。続いて、経路探索サーバ150は、それぞれの移動手段毎の標準所要時間から目的地に到着する到着予定時刻を算出する(ステップS210)。
【0031】
次に、経路探索サーバ150は、現在位置から目的地までの外乱情報を取得する(ステップS212)。尚、このフローチャートでは説明および理解を容易にすべく、外乱情報は1回のみ取得するが、予め設定された時間間隔で繰り返し外乱情報を取得しても良く、また、携帯端末装置100の保持者からの指示に応じて外乱情報を取得しても良い。続いて、取得した外乱情報から、目的地に到着する到着予定時刻が遅れるか、否かを判定する(ステップS214)。ここで、到着予定時刻が遅れないと判定された場合(ステップS214でNO)、ステップS218に進む。他方で、到着予定時刻が遅れると判定された場合(ステップS214でYes)、外乱情報に基づき、到着予定時刻を補正する(ステップS216)。最後に、ステップS218において、目的地までの経路および到着予定時刻等の情報を携帯端末装置100に表示し、一連の処理を終了する。
【0032】
以上述べた実施形態1によれば、現在地から目的地までの歩行を含む移動において、通路や駅構内等における人の混み具合や、天候に関する現在の状況を勘案した所要時間が携帯端末装置100に表示されるため、携帯端末装置100の保持者にとって土地感がない場所であっても、緊張感や不安感を与えることなく、安心して移動できるナビゲーションシステムを提供できる。
【0033】
(実施形態2)
次に、本発明の実施形態2について、図5を参照して説明する。尚、以下の説明では、既に説明した部分と同じ部分については、同一符号を付してその説明を省略する。本実施形態2では、携帯端末装置100を電子チケットの1つである鉄道の切符95に適用する。尚、電子チケットは、鉄道の切符95に限定されるものでは無く、航空券や乗船券のような公共交通のチケット、あるいはアミューズメントパーク、スキー場およびゴルフ場における入場券等に適用しても良い。この切符95は、それぞれ図1に示した位置検出手段10、目的地入力手段12および無線通信手段14が筐体部98内に実装され、表示手段16として電子ペーパ96が採用される。筐体部98の一面には、操作ボタン92および電源ボタン94が配置される。
【0034】
本実施形態2では、目的地(行き先)および乗車予定の列車の情報は、切符95の購入時に購入窓口で目的地入力手段12から入力される。また、現在の切符95の位置は、位置検出手段10で逐次検出される。更に、途中の駅での乗換え情報や列車の運行に関する情報は、経路探索サーバ150で逐次取得されて切符95に送信される。また、電子ペーパ96には、行き先および乗車予定の列車情報に加え、現在の切符95の位置を示す地図、最新の乗換え情報および列車の運行状況が表示される。この場合、目的地までの経路上に所定の間隔でチエックポイント(ノード)を仮想的に設け、各ノードを通過ごとに位置情報、乗換え情報および列車の運行状況が更新されても良い。更に、通過した経路における位置情報や運行状況は非表示にしても良い。
【0035】
以上述べた実施形態2によれば、実施形態1で述べた効果に加えて、このような切符95を使用することで、切符95の保持者は安心して公共交通機関を利用できる。
【0036】
本発明の実施形態について、図面を参照して説明したが、具体的な構成は、これらの実施形態1および2に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。例えば、経路探索サーバ150の機能部のいくつかは、携帯端末装置100側に具備されても良く、また、携帯端末装置100の機能部のいくつかは、経路探索サーバ150側に具備されても良い。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】経路探索システムの機能構成を示すブロック図。
【図2】携帯端末装置のハードウェア構成を示す図。
【図3】目的地までの所要時間の算出例を示す図。
【図4】経路探索システムにおいて目的地までの経路および到着時刻等を表示する処理の流れを説明するフローチャート。
【図5】鉄道の切符に適用した携帯端末装置を示す図。
【符号の説明】
【0038】
1…経路探索システム、10…位置検出手段、12…目的地入力手段、14…無線通信手段、16…表示手段、20…経路探索手段、22…無線通信手段、24…移動時間取得手段、26…ネットワーク通信手段、28…所要時間算出手段、30…外乱情報取得手段、34…経路案内手段、35…ネットワーク、40…公共交通機関情報DB、42…情報DB、44…歩行速度DB、46…運行情報DB、48…道路情報DB、50…天候情報DB、52…混雑情報DB、60…CPU、62…ROM、64…RAM、66…メモリカード、68…I/F、70…GPS受信装置、72…無線通信装置、74…センサ、76…表示素子、78…入力装置、80…GPS衛星、82…基地局、90…バス、92…操作ボタン、94…電源ボタン、95…切符、96…電子ペーパ、98…筐体部、100…携帯端末装置、150…経路探索サーバ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
携帯端末装置と経路探索サーバが通信可能に接続された経路探索システムであって、
携帯端末装置の位置を検出する検出手段と、
前記検出した携帯端末装置の位置から目的地まで、少なくとも歩行移動を含む複数の移動手段による経路を探索する探索手段と、
前記探索した経路において、移動手段毎の移動に要する既定の標準所要時間をそれぞれ取得する所要時間取得手段と、
前記標準所要時間を遅延させる要因に関する情報を取得する情報取得手段と、
前記取得した要因に応じて前記標準所要時間をそれぞれ補正する補正手段と、
前記補正した標準所要時間に基づき、前記探索した経路での所要時間を算出する算出手段とを備え、
前記歩行移動における前記標準所要時間は、前記検出手段により検出された複数の前記位置から得られる移動距離と前記携帯端末装置の保持者の歩行速度とに基づき取得されると共に、天候および混雑状況の少なくとも1つを含む前記要因に応じて補正されることを特徴とする経路探索システム。
【請求項2】
請求項1に記載の経路探索システムにおいて、
前記探索手段で探索した経路を案内可能な表示情報に編集する編集手段と、
前記表示情報と前記算出した所要時間の少なくとも1つを表示する表示手段とを更に備えることを特徴とする経路探索システム。
【請求項3】
請求項1乃至2のいずれかに記載の経路探索システムにおいて、
外部のデータベースと通信するための通信手段を更に備え、
前記探索手段は、前記データベースに蓄積されたデータに基づき前記経路を探索し、
前記所要時間取得手段および前記情報取得手段は、それぞれの前記移動手段に応じた前記データベースに蓄積されたデータに基づき、前記標準所要時間および前記要因に関する情報をそれぞれ取得することを特徴とする経路探索システム。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の経路探索システムにおいて、
前記検出手段は、複数の衛星からの電波を受信して求めた各衛星から前記携帯端末装置までの距離を基に、前記携帯端末装置の絶対位置を検出することを特徴とする経路探索システム。
【請求項5】
請求項4に記載の経路探索システムにおいて、
前記検出手段は、加速度、磁気量、角速度および圧力の少なくとも1つの変動を基に、前記携帯端末装置の相対位置を更に検出し、
前記絶対位置および前記相対位置の少なくとも1つから前記携帯端末装置の位置を検出することを特徴とする経路探索システム。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の経路探索システムにおいて、
前記歩行速度は、前記歩行移動で移動した距離と前記歩行移動に要した時間とを前記携帯端末装置の保持者毎に統計処理して算出されることを特徴とする経路探索システム。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の経路探索システムにおいて、
前記携帯端末装置は、電子チケットであることを特徴とする経路探索システム。
【請求項8】
携帯端末装置と経路探索サーバが通信可能に接続された経路探索システムによる所要時間算出方法であって、
携帯端末装置の位置を検出する検出工程と、
前記検出した携帯端末装置の位置から目的地まで、少なくとも歩行移動を含む複数の移動手段による経路を探索する探索工程と、
前記探索した経路において、移動手段毎の移動に要する既定の標準所要時間をそれぞれ取得する所要時間取得工程と、
前記標準所要時間を遅延させる要因に関する情報を取得する情報取得工程と、
前記取得した要因に応じて前記標準所要時間をそれぞれ補正する補正工程と、
前記補正した標準所要時間に基づき、前記探索した経路での所要時間を算出する算出工程とを備え、
前記歩行移動における前記標準所要時間は、前記検出工程により検出された複数の前記位置から得られる移動距離と前記携帯端末装置の保持者の歩行速度とに基づき取得されると共に、天候および混雑状況の少なくとも1つを含む前記要因に応じて補正されることを特徴とする経路探索システムによる所要時間算出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−85809(P2009−85809A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−257186(P2007−257186)
【出願日】平成19年10月1日(2007.10.1)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】