説明

自動車用駆動システム及びその制御方法

【課題】減速時などに省エネのためエンジン停止制御指令を発してから実際にエンジンが止まるまでのエンジンからワンウェイ・クラッチの入力部材までの慣性力を有効利用する。
【解決手段】第1のエンジンENG1の下流側に、無限・無段変速機構BD1よりなるトランスミッションTM1が設けられ、その出力側にワンウェイ・クラッチOWC1が設けられ、第1のエンジンの出力軸にサブモータジェネレータMG2が接続された駆動システムにおいて、減速時などにエンジンを停止させる制御が実行された際に、実際にエンジンが停止するまでのエンジンからワンウェイ・クラッチの入力部材までの慣性力を、無段変速機構BD1の変速比可変機構112の駆動操作のアシスト力として利用すると共に、サブモータジェネレータMG2により電気エネルギーとして回生させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用駆動システム及びその制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の自動車用駆動システムとして、特許文献1に示されるように、エンジンとトランスミッションとモータジェネレータを組み合わせ、トランスミッションの駆動軸と被駆動軸とを、駆動軸に設けられた偏心体駆動装置と被駆動軸に設けられたワンウェイ・クラッチとにより接続し、トランスミッションの駆動軸にエンジンの出力を導入すると共に、モータジェネレータをクラッチを介して、トランスミッションの入力側、または、ワンウェイ・クラッチの出力側に選択的に接続可能とし、あるいは、トランスミッションの入力側とワンウェイ・クラッチの出力側の両方に同時に接続可能に構成したハイブリッド型の駆動システムが知られている。
【0003】
この駆動システムでは、エンジンの駆動力だけを利用したエンジン走行、モータジェネレータの駆動力だけを利用したEV走行、エンジンの駆動力とモータジェネレータの駆動力の両方を利用したパラレル走行を行うことができる。また、モータジェネレータの回生動作を利用することにより、減速時に回生エネルギーを得ることができると同時に、回生ブレーキを駆動車輪に利かせることもできる。また、モータジェネレータでエンジンを始動させることもできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2005−502543号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、車両の減速時には、その減速エネルギーを再利用するためにモータジェネレータで回生を行うことが一般的であるが、上述の特許文献1に記載の駆動システムのように、出力側(足軸側)部材と入力側(エンジン側)部材との間にワンウェイ・クラッチを設けた場合は、減速時などにエンジンを停止させる際に、エンジンの停止動作に伴って、ワンウェイ・クラッチの入力軸の回転数が出力軸の回転数を下回ることで、ワンウェイ・クラッチの上流側が下流側から切り離されることになり、このときのワンウェイ・クラッチの上流側のエンジン等の慣性エネルギーが回収されずに無駄に捨てられるという問題があった。
【0006】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、減速時などに省エネのためエンジン停止制御指令を発してから実際にエンジンが止まるまでのエンジンからワンウェイ・クラッチの入力部材までの慣性力を有効利用することができる自動車用駆動システム及び制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1に係る発明は、自動車用駆動システム(例えば、後述の実施形態における駆動システム1)において、
回転動力を発生するエンジン(例えば、後述の実施形態における第1のエンジンENG1または/および第2のエンジンENG2)と、
該エンジンの発生する回転動力を変速して出力する変速機構(例えば、後述の実施形態における第1のトランスミッションTM1または/および第2のトランスミッションTM2)と、
該変速機構の出力部に設けられ、入力部材(例えば、後述の実施形態における入力部材122)と出力部材(例えば、後述の実施形態における出力部材121)とこれら入力部材および出力部材をロック状態または非ロック状態にする係合部材(例えば、後述の実施形態におけるローラ123)とを有し、前記変速機構からの回転動力を受ける前記入力部材の正方向の回転速度が前記出力部材の正方向の回転速度を上回ったとき、前記入力部材と出力部材がロック状態になることで、入力部材に入力された回転動力を前記出力部材に伝達するワンウェイ・クラッチ(例えば、後述の実施形態における第1のワンウェイ・クラッチOWC1または/および第2のワンウェイ・クラッチOWC2)と、
前記ワンウェイ・クラッチの出力部材に連結され、該出力部材に伝達された回転動力を駆動車輪(例えば、後述の実施形態における駆動車輪2)に伝えると共に、該駆動車輪と一体に回転する被回転駆動部材(例えば、後述の実施形態における被回転駆動部材11)と、
前記エンジンの停止要求が発生したときに該エンジンを停止させる制御を実行するエンジン停止制御手段(例えば、後述の実施形態における制御手段5)と、
を備え、
前記変速機構が、
回転動力を受けることで入力中心軸線(例えば、後述の実施形態における入力中心軸線O1)の周りを回転する入力軸(例えば、後述の実施形態における入力軸101)と、
該入力軸の周方向に等間隔に設けられると共に、それぞれが前記入力中心軸線に対して可変の偏心量(例えば、後述の実施形態における偏心量r1)を保ちつつ該入力中心軸線の周りに前記入力軸と共に回転する複数の第1支点(例えば、後述の実施形態における第1支点O3)と、
該各第1支点をそれぞれの中心に持つと共に前記入力中心軸線の周りを回転する複数の偏心ディスク(例えば、後述の実施形態における偏心ディスク104)と、
前記入力中心軸線から離れた出力中心軸線(例えば、後述の実施形態における出力中心軸線O2)の周りを回転する出力部材(例えば、後述の実施形態における出力部材121)と、外部から回転方向の動力を受けることで前記出力中心軸線の周りを揺動する入力部材(例えば、後述の実施形態における入力部材122)と、これら入力部材および出力部材を互いにロック状態または非ロック状態にする係合部材(例えば、後述の実施形態におけるローラ123)とを有し、前記入力部材の正方向の回転速度が前記出力部材の正方向の回転速度を上回ったとき、前記入力部材に入力された回転動力を前記出力部材に伝達し、それにより前記入力部材の揺動運動を前記出力部材の回転運動に変換するワンウェイ・クラッチ(例えば、後述の実施形態におけるワンウェイ・クラッチ120)と、
前記入力部材上の前記出力中心軸線から離間した位置に設けられた第2支点(例えば、後述の実施形態における第2支点O4)と、
それぞれ一端(例えば、後述の実施形態におけるリング部131)が前記各偏心ディスクの外周に前記第1支点を中心に回転自在に連結され、他端(例えば、後述の実施形態における他端部132)が前記ワンウェイ・クラッチの入力部材上に設けられた前記第2支点に回動自在に連結されることで、前記入力軸から前記偏心ディスクに与えられる回転運動を、前記ワンウェイ・クラッチの入力部材に対し該入力部材の揺動運動として伝える複数の連結部材(例えば、後述の実施形態における連結部材130)と、
前記入力中心軸線に対する前記第1支点の偏心量を調節することで、前記偏心ディスクから前記ワンウェイ・クラッチの入力部材に伝えられる揺動運動の揺動角度を変更し、それにより、前記入力軸に入力される回転動力が前記偏心ディスクおよび前記連結部材を介して前記ワンウェイ・クラッチの出力部材に回転動力として伝達される際の変速比を変更する変速比可変機構(例えば、後述の実施形態における変速比可変機構112)と、
を具備し、且つ、前記偏心量がゼロに設定可能とされることで変速比を無限大に設定することができる四節リンク機構式の無段変速機構(例えば、後述の実施形態における無段変速機構BL1または/およびBL2)として構成され、
前記エンジンの出力軸(例えば、後述の実施形態における出力軸S1)が前記無段変速機構の入力軸に連結され、
前記無段変速機構の構成要素であるワンウェイ・クラッチが、前記変速機構と前記被回転駆動部材との間に設けられた前記ワンウェイ・クラッチを兼ねており、
更に、前記エンジン停止制御手段により前記エンジンを停止させる制御が実行された際に、実際にエンジンが停止するまでのエンジンからワンウェイ・クラッチの入力部材までの慣性力を、前記変速機構において無限大またはより無限大に近くなる変速比に変更するための前記変速比可変機構の駆動操作のアシスト力として利用する手段(例えば、後述の実施形態における無段変速機構BL1、BL2および制御手段5)を備えていることを特徴とする。
【0008】
請求項2に係る発明は、自動車用駆動システムにおいて、
回転動力を発生するエンジンと、
該エンジンの発生する回転動力を変速して出力する変速機構と、
該変速機構の出力部に設けられ、入力部材と出力部材とこれら入力部材および出力部材をロック状態または非ロック状態にする係合部材とを有し、前記変速機構からの回転動力を受ける前記入力部材の正方向の回転速度が前記出力部材の正方向の回転速度を上回ったとき、前記入力部材と出力部材がロック状態になることで、入力部材に入力された回転動力を前記出力部材に伝達するワンウェイ・クラッチと、
前記ワンウェイ・クラッチの出力部材に連結され、該出力部材に伝達された回転動力を駆動車輪に伝えると共に、該駆動車輪と一体に回転する被回転駆動部材と、
前記エンジンの出力軸に接続されたモータジェネレータと、
前記エンジンの停止要求が発生したときに該エンジンを停止させる制御を実行するエンジン停止制御手段と、
を備え、
前記変速機構が、
回転動力を受けることで入力中心軸線の周りを回転する入力軸と、
該入力軸の周方向に等間隔に設けられると共に、それぞれが前記入力中心軸線に対して可変の偏心量を保ちつつ該入力中心軸線の周りに前記入力軸と共に回転する複数の第1支点と、
該各第1支点をそれぞれの中心に持つと共に前記入力中心軸線の周りを回転する複数の偏心ディスクと、
前記入力中心軸線から離れた出力中心軸線の周りを回転する出力部材と、外部から回転方向の動力を受けることで前記出力中心軸線の周りを揺動する入力部材と、これら入力部材および出力部材を互いにロック状態または非ロック状態にする係合部材とを有し、前記入力部材の正方向の回転速度が前記出力部材の正方向の回転速度を上回ったとき、前記入力部材に入力された回転動力を前記出力部材に伝達し、それにより前記入力部材の揺動運動を前記出力部材の回転運動に変換するワンウェイ・クラッチと、
前記入力部材上の前記出力中心軸線から離間した位置に設けられた第2支点と、
それぞれ一端が前記各偏心ディスクの外周に前記第1支点を中心に回転自在に連結され、他端が前記ワンウェイ・クラッチの入力部材上に設けられた前記第2支点に回動自在に連結されることで、前記入力軸から前記偏心ディスクに与えられる回転運動を、前記ワンウェイ・クラッチの入力部材に対し該入力部材の揺動運動として伝える複数の連結部材と、
前記入力中心軸線に対する前記第1支点の偏心量を調節することで、前記偏心ディスクから前記ワンウェイ・クラッチの入力部材に伝えられる揺動運動の揺動角度を変更し、それにより、前記入力軸に入力される回転動力が前記偏心ディスクおよび前記連結部材を介して前記ワンウェイ・クラッチの出力部材に回転動力として伝達される際の変速比を変更する変速比可変機構と、
を具備し、且つ、前記偏心量がゼロに設定可能とされることで変速比を無限大に設定することができる四節リンク機構式の無段変速機構として構成され、
前記エンジンの出力軸が前記無段変速機構の入力軸に連結され、
前記無段変速機構の構成要素であるワンウェイ・クラッチが、前記変速機構と前記被回転駆動部材との間に設けられた前記ワンウェイ・クラッチを兼ねており、
更に、前記エンジン停止制御手段により前記エンジンを停止させる制御が実行された際に、実際にエンジンが停止するまでのエンジンからワンウェイ・クラッチの入力部材までの慣性力を、前記モータジェネレータにより電気エネルギーとして回生させるモータジェネレータ制御手段(例えば、後述の実施形態における制御手段5)を備えていることを特徴とする。
【0009】
請求項3に係る発明は、自動車用駆動システムにおいて、
回転動力を発生するエンジンと、
該エンジンの発生する回転動力を変速して出力する変速機構と、
該変速機構の出力部に設けられ、入力部材と出力部材とこれら入力部材および出力部材をロック状態または非ロック状態にする係合部材とを有し、前記変速機構からの回転動力を受ける前記入力部材の正方向の回転速度が前記出力部材の正方向の回転速度を上回ったとき、前記入力部材と出力部材がロック状態になることで、入力部材に入力された回転動力を前記出力部材に伝達するワンウェイ・クラッチと、
前記ワンウェイ・クラッチの出力部材に連結され、該出力部材に伝達された回転動力を駆動車輪に伝えると共に、該駆動車輪と一体に回転する被回転駆動部材と、
前記エンジンの出力軸に接続されたモータジェネレータと、
前記エンジンの停止要求が発生したときに該エンジンを停止させる制御を実行するエンジン停止制御手段と、
を備え、
前記変速機構が、
回転動力を受けることで入力中心軸線の周りを回転する入力軸と、
該入力軸の周方向に等間隔に設けられると共に、それぞれが前記入力中心軸線に対して可変の偏心量を保ちつつ該入力中心軸線の周りに前記入力軸と共に回転する複数の第1支点と、
該各第1支点をそれぞれの中心に持つと共に前記入力中心軸線の周りを回転する複数の偏心ディスクと、
前記入力中心軸線から離れた出力中心軸線の周りを回転する出力部材と、外部から回転方向の動力を受けることで前記出力中心軸線の周りを揺動する入力部材と、これら入力部材および出力部材を互いにロック状態または非ロック状態にする係合部材とを有し、前記入力部材の正方向の回転速度が前記出力部材の正方向の回転速度を上回ったとき、前記入力部材に入力された回転動力を前記出力部材に伝達し、それにより前記入力部材の揺動運動を前記出力部材の回転運動に変換するワンウェイ・クラッチと、
前記入力部材上の前記出力中心軸線から離間した位置に設けられた第2支点と、
それぞれ一端が前記各偏心ディスクの外周に前記第1支点を中心に回転自在に連結され、他端が前記ワンウェイ・クラッチの入力部材上に設けられた前記第2支点に回動自在に連結されることで、前記入力軸から前記偏心ディスクに与えられる回転運動を、前記ワンウェイ・クラッチの入力部材に対し該入力部材の揺動運動として伝える複数の連結部材と、
前記入力中心軸線に対する前記第1支点の偏心量を調節することで、前記偏心ディスクから前記ワンウェイ・クラッチの入力部材に伝えられる揺動運動の揺動角度を変更し、それにより、前記入力軸に入力される回転動力が前記偏心ディスクおよび前記連結部材を介して前記ワンウェイ・クラッチの出力部材に回転動力として伝達される際の変速比を変更する変速比可変機構と、
を具備し、且つ、前記偏心量がゼロに設定可能とされることで変速比を無限大に設定することができる四節リンク機構式の無段変速機構として構成され、
前記エンジンの出力軸が前記無段変速機構の入力軸に連結され、
前記無段変速機構の構成要素であるワンウェイ・クラッチが、前記変速機構と前記被回転駆動部材との間に設けられた前記ワンウェイ・クラッチを兼ねており、
更に、前記エンジン停止制御手段により前記エンジンを停止させる制御が実行された際に、実際にエンジンが停止するまでのエンジンからワンウェイ・クラッチの入力部材までの慣性力を、前記変速機構において無限大またはより無限大に近くなる変速比に変更するための前記変速比可変機構の駆動操作のアシスト力として利用する手段と、
前記エンジン停止制御手段により前記エンジンを停止させる制御が実行された際に、実際にエンジンが停止するまでのエンジンからワンウェイ・クラッチの入力部材までの慣性力を、前記モータジェネレータにより電気エネルギーとして回生させるモータジェネレータ制御手段と、
を備えていることを特徴とする。
【0010】
請求項4に係る発明は、請求項3の構成において、
前記モータジェネレータ制御手段は、前記エンジン停止制御手段により前記エンジンを停止させる制御が実行された際に、実際にエンジンが停止するまでのエンジンからワンウェイ・クラッチの入力部材までの慣性力を、前記変速比可変機構の駆動操作のアシスト力として利用した後に、前記モータジェネレータにより電気エネルギーとして回生させることを特徴とする。
【0011】
請求項5に係る発明は、請求項3の構成において、
前記モータジェネレータ制御手段は、前記エンジン停止制御手段により前記エンジンを停止させる制御が実行された際に、実際にエンジンが停止するまでのエンジンからワンウェイ・クラッチの入力部材までの慣性力を、前記変速比可変機構の駆動操作のアシスト力として利用するのと並行して、前記モータジェネレータにより電気エネルギーとして回生させることを特徴とする。
【0012】
請求項6に係る発明は、
回転動力を発生するエンジンと、
該エンジンの発生する回転動力を変速して出力する変速機構と、
該変速機構の出力部に設けられ、入力部材と出力部材とこれら入力部材および出力部材をロック状態または非ロック状態にする係合部材とを有し、前記変速機構からの回転動力を受ける前記入力部材の正方向の回転速度が前記出力部材の正方向の回転速度を上回ったとき、前記入力部材と出力部材がロック状態になることで、入力部材に入力された回転動力を前記出力部材に伝達するワンウェイ・クラッチと、
前記ワンウェイ・クラッチの出力部材に連結され、該出力部材に伝達された回転動力を駆動車輪に伝えると共に、該駆動車輪と一体に回転する被回転駆動部材と、
前記エンジンの出力軸に接続されたモータジェネレータと、
前記エンジンの停止要求が発生したときに該エンジンを停止させる制御を実行するエンジン停止制御手段と、
を備え、
前記変速機構が、
回転動力を受けることで入力中心軸線の周りを回転する入力軸と、
該入力軸の周方向に等間隔に設けられると共に、それぞれが前記入力中心軸線に対して可変の偏心量を保ちつつ該入力中心軸線の周りに前記入力軸と共に回転する複数の第1支点と、
該各第1支点をそれぞれの中心に持つと共に前記入力中心軸線の周りを回転する複数の偏心ディスクと、
前記入力中心軸線から離れた出力中心軸線の周りを回転する出力部材と、外部から回転方向の動力を受けることで前記出力中心軸線の周りを揺動する入力部材と、これら入力部材および出力部材を互いにロック状態または非ロック状態にする係合部材とを有し、前記入力部材の正方向の回転速度が前記出力部材の正方向の回転速度を上回ったとき、前記入力部材に入力された回転動力を前記出力部材に伝達し、それにより前記入力部材の揺動運動を前記出力部材の回転運動に変換するワンウェイ・クラッチと、
前記入力部材上の前記出力中心軸線から離間した位置に設けられた第2支点と、
それぞれ一端が前記各偏心ディスクの外周に前記第1支点を中心に回転自在に連結され、他端が前記ワンウェイ・クラッチの入力部材上に設けられた前記第2支点に回動自在に連結されることで、前記入力軸から前記偏心ディスクに与えられる回転運動を、前記ワンウェイ・クラッチの入力部材に対し該入力部材の揺動運動として伝える複数の連結部材と、
前記入力中心軸線に対する前記第1支点の偏心量を調節することで、前記偏心ディスクから前記ワンウェイ・クラッチの入力部材に伝えられる揺動運動の揺動角度を変更し、それにより、前記入力軸に入力される回転動力が前記偏心ディスクおよび前記連結部材を介して前記ワンウェイ・クラッチの出力部材に回転動力として伝達される際の変速比を変更する変速比可変機構と、
を具備し、且つ、前記偏心量がゼロに設定可能とされることで変速比を無限大に設定することができる四節リンク機構式の無段変速機構として構成され、
前記エンジンの出力軸が前記無段変速機構の入力軸に連結され、
前記無段変速機構の構成要素であるワンウェイ・クラッチが、前記変速機構と前記被回転駆動部材との間に設けられた前記ワンウェイ・クラッチを兼ねている自動車用駆動システムの制御方法であって、
前記エンジン停止制御手段により前記エンジンを停止させる制御が実行された際に、実際にエンジンが停止するまでのエンジンからワンウェイ・クラッチの入力部材までの慣性力を、前記変速機構において無限大またはより無限大に近くなる変速比に変更するための前記変速比可変機構の駆動操作のアシスト力として利用すると共に、
前記実際にエンジンが停止するまでのエンジンからワンウェイ・クラッチの入力部材までの慣性力を、前記モータジェネレータにより電気エネルギーとして回生することを特徴とする。
【0013】
請求項7に係る発明は、請求項6の構成において、
前記エンジン停止制御手段により前記エンジンを停止させる制御が実行された際に、実際にエンジンが停止するまでのエンジンからワンウェイ・クラッチの入力部材までの慣性力を、前記変速比可変機構の駆動操作のアシスト力として利用した後、前記モータジェネレータにより電気エネルギーとして回生することを特徴とする。
【0014】
請求項8に係る発明は、請求項6の構成において、
前記エンジン停止制御手段により前記エンジンを停止させる制御が実行された際に、実際にエンジンが停止するまでのエンジンからワンウェイ・クラッチの入力部材までの慣性力を、前記変速比可変機構の駆動操作のアシスト力として利用するのと並行して、前記モータジェネレータにより電気エネルギーとして回生することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1の発明によれば、減速時などにエンジン停止指令を発してから実際にエンジンが停止するまでのエンジンからワンウェイ・クラッチの入力部材までの慣性力を、変速機構において無限大またはより無限大に近くなる変速比に変更するための駆動操作のアシスト力として利用するので、変速比を変更するためのエネルギーの削減が可能になり、エンジンからワンウェイ・クラッチの入力部材までの慣性力を無駄なく有効に利用することができる。
【0016】
請求項2の発明によれば、減速時などにエンジン停止指令を発してから実際にエンジンが停止するまでのエンジンからワンウェイ・クラッチの入力部材までの慣性力を、モータジェネレータにより電気エネルギーとして回生させるので、エンジンからワンウェイ・クラッチの入力部材までの慣性力を無駄なく有効に利用することができる。
【0017】
請求項3及び請求項6の発明によれば、減速時などにエンジン停止指令を発してから実際にエンジンが停止するまでのエンジンからワンウェイ・クラッチの入力部材までの慣性力を、変速機構において無限大またはより無限大に近くなる変速比に変更するための駆動操作のアシスト力として利用すると共に、モータジェネレータにより電気エネルギーとして回生させるので、エンジンからワンウェイ・クラッチの入力部材までの慣性力を無駄なく有効に利用することができる。
【0018】
請求項4及び請求項7の発明によれば、減速時などにエンジン停止指令を発してから実際にエンジンが停止するまでのエンジンからワンウェイ・クラッチの入力部材までの慣性力を、最初に変速比に変更するための駆動操作のアシスト力として利用し、その上で、エンジンからワンウェイ・クラッチの入力部材までの慣性力にまだ余裕がある場合に、その慣性力を、モータジェネレータにより電気エネルギーとして回生させるので、無駄なく有効にエンジンからワンウェイ・クラッチの入力部材までの慣性力を活かすことができる。
【0019】
請求項5及び請求項8の発明によれば、エンジンと変速機構の慣性力の回収エネルギーを最大化することができる。即ち、変速比がある有限値で成立している場合には、入力軸側の偏心ディスクが偏心回転しており、偏心分だけ、入力軸を支持している軸受への荷重が増加する。そのため、変速比を無限大または無限大に近い値に変更することにより、軸受荷重を減らして、摩擦ロスとして捨てているエネルギーを回収することができる。一方で、請求項4及び請求項7の発明のように、変速比が無限大または無限大に近い値に変わるまで待ってから発電すると、それまでの時間にエンジン側の摩擦ロスにより、慣性エネルギーを余計に捨ててしまうことになる。この点、変速比の変更とサブモータジェネレータによる発電を並行して行うことで、回収できるエネルギー量を最大化することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1実施形態の自動車用駆動システムのスケルトン図である。
【図2】同システムの要部である無限・無段変速機構の具体的構成を示す断面図である。
【図3】同変速機構の一部の構成を軸線方向から見た側断面図である。
【図4】同変速機構における変速比可変機構による変速原理の前半部分の説明図であり、(a)は偏心ディスク104の中心点である第1支点O3の回転中心である入力中心軸線O1に対する偏心量r1を「大」にして変速比iを「小」に設定した状態を示す図、(b)は偏心量r1を「中」にして変速比iを「中」に設定した状態を示す図、(c)は偏心量r1を「小」にして変速比iを「大」に設定した状態を示す図、(d)は偏心量r1を「ゼロ」にして変速比iを「無限大(∞)」に設定した状態を示す図である。
【図5】同変速機構における変速比可変機構による変速原理の後半部分の説明図であって、偏心ディスクの偏心量r1を変更して変速比iを変えた場合のワンウェイ・クラッチ120の入力部材122の揺動角度θ2の変化を示す図であり、(a)は偏心量r1を「大」にし変速比iを「小」にすることで、入力部材122の揺動角度θ2が「大」になった状態を示す図、(b)は偏心量r1を「中」にし変速比iを「中」にすることで、入力部材122の揺動角度θ2が「中」になった状態を示す図、(c)は偏心量r1を「小」にし変速比iを「大」にすることで、入力部材122の揺動角度θ2が「小」になった状態を示す図である。
【図6】四節リンク機構として構成された前記無限・無段変速機構の駆動力伝達原理の説明図である。
【図7】同変速機構において、入力軸と共に等速回転する偏心ディスクの偏心量r1(変速比i)を「大」、「中」、「小」と変化させた場合の、入力軸の回転角度θとワンウェイ・クラッチの入力部材の角速度ω2の関係を示す図である。
【図8】同変速機構において、複数の連結部材によって入力側(入力軸や偏心ディスク)から出力側(ワンウェイ・クラッチの出力部材)へ動力が伝達される際の出力の取り出し原理を説明するための図である。
【図9】同駆動システムにおいて実行する減速時の制御の内容を示すフローチャートである。
【図10】同制御の内容を示すタイムチャートである。
【図11】エンジン切り替え時の制御の内容を示すフローチャートである。
【図12】本実施形態の駆動システムにおける動作パターンAの説明図である。
【図13】本実施形態の駆動システムにおける動作パターンBの説明図である。
【図14】本実施形態の駆動システムにおける動作パターンCの説明図である。
【図15】本実施形態の駆動システムにおける動作パターンDの説明図である。
【図16】本実施形態の駆動システムにおける動作パターンEの説明図である。
【図17】本実施形態の駆動システムにおける動作パターンFの説明図である。
【図18】本実施形態の駆動システムにおける動作パターンGの説明図である。
【図19】本実施形態の駆動システムにおける動作パターンHの説明図である。
【図20】本実施形態の駆動システムにおける動作パターンIの説明図である。
【図21】本実施形態の駆動システムにおける動作パターンJの説明図である。
【図22】本実施形態の駆動システムにおける動作パターンKの説明図である。
【図23】本実施形態の駆動システムにおける動作パターンLの説明図である。
【図24】本実施形態の駆動システムにおける動作パターンMの説明図である。
【図25】本実施形態の駆動システムにおける動作パターンNの説明図である。
【図26】本実施形態の駆動システムにおける動作パターンOの説明図である。
【図27】本実施形態の駆動システムにおいて、発進時に運転状態に応じて実行する制御動作の説明図である。
【図28】本実施形態の駆動システムにおいて、低速走行時に運転状態に応じて実行する制御動作の説明図である。
【図29】本実施形態の駆動システムにおいて、EV走行モードからエンジン走行モードへの切り替え(スイッチ動作)時の制御動作の説明図である。
【図30】本実施形態の駆動システムにおいて、中速走行時に運転状態に応じて実行する制御動作の説明図である。
【図31】本実施形態の駆動システムにおいて、第1のエンジンによるエンジン走行モードから第2のエンジンによるエンジン走行モードへの切り替え(スイッチ動作)時の制御動作の説明図である。
【図32】本実施形態の駆動システムにおいて、中高速走行時に運転状態に応じて実行する制御動作の説明図である。
【図33】本実施形態の駆動システムにおいて、第2のエンジンによるエンジン走行モードから、第2のエンジンと第1のエンジンによるパラレルのエンジン走行モードへの切り替え(スイッチ動作)時の制御動作の説明図である。
【図34】本実施形態の駆動システムにおいて、高速走行時に運転状態に応じて実行する制御動作の説明図である。
【図35】本実施形態の駆動システムにおいて、車両後退時に実行する制御動作の説明図である。
【図36】本実施形態の駆動システムにおいて、車両停止時に実行する制御動作の説明図である。
【図37】(a)及び(b)はトランスミッションのロックによる後進不可状態の説明図である。
【図38】本発明の第2実施形態に係る、減速回生時のクラッチ機構の遮断制御の内容を示すフローチャートである。
【図39】同制御の内容を示すタイムチャートである。
【図40】第2実施形態のエンジン切り替え時の制御の内容を示すフローチャートである。
【図41】本発明の別の実施形態の自動車用駆動システムのスケルトン図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
《第1実施形態》
以下、本発明の第1実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は本発明の第1実施形態の自動車用駆動システムのスケルトン図であり、図2は同駆動システムの要部である無限・無段変速機構の具体的構成を示す断面図、図3は同無限・無段変速機構の一部の構成を軸線方向から見た側断面図である。
【0022】
《全体構成》
この自動車用駆動システム1は、それぞれ独立して回転動力を発生する第1、第2の2つのエンジンENG1、ENG2と、第1、第2のエンジンENG1、ENG2の各下流側に設けられた第1、第2のトランスミッション(変速機構)TM1、TM2と、各トランスミッションTM1、TM2の出力部に設けられた第1、第2のワンウェイ・クラッチOWC1、OWC2と、これらワンウェイ・クラッチOWC1、OWC2を介して伝達された出力回転を受ける被回転駆動部材11と、この被回転駆動部材11に接続されたメインモータジェネレータMG1と、第1のエンジンENG1の出力軸S1に接続されたサブモータジェネレータMG2と、メインおよび/またはサブのモータジェネレータMG1、MG2との間で電力のやりとりが可能なバッテリ8と、各種要素を制御することで走行パターンなどの制御を行う制御手段5と、を備えている。
【0023】
各ワンウェイ・クラッチOWC1、OWC2は、入力部材(クラッチアウタ)122と、出力部材(クラッチインナ)121と、これら入力部材122および出力部材121の間に配されて両部材122、121を互いにロック状態または非ロック状態にする複数のローラ(係合部材)123と、ロック状態を与える方向にローラ123を付勢する付勢部材126とを有する。そして、第1のトランスミッションTM1および第2のトランスミッションTM2からの各回転動力を受ける入力部材122の正方向(矢印RD1方向)の回転速度が、出力部材121の正方向の回転速度を上回ったとき、入力部材122と出力部材121が互いにロック状態になることにより、入力部材122に入力された回転動力が出力部材121に伝達される。
【0024】
第1、第2のワンウェイ・クラッチOWC1、OWC2は、ディファレンシャル装置10を挟んで右と左に配置されており、第1、第2のワンウェイ・クラッチOWC1、OWC2の各出力部材121は、それぞれ別の第1、第2のクラッチ機構CL1、CL2を介して、被回転駆動部材11に共に連結されている。第1、第2のクラッチ機構CL1、CL2は、第1、第2のワンウェイ・クラッチOWC1、OWC2の各出力部材121と被回転駆動部材11との間の動力の伝達/遮断を制御するために設けられている。これらのクラッチ機構CL1、CL2としては、他の種類のクラッチ(摩擦クラッチ等)を使用することもできるが、伝達ロスの低さからドグクラッチが使用されている。
【0025】
被回転駆動部材11は、ディファレンシャル装置10のデフケースにより構成されており、各ワンウェイ・クラッチOWC1、OWC2の出力部材121に伝達された回転動力は、ディファレンシャル装置10および左右のアクスルシャフト13L、13Rを介して、左右の駆動車輪2に伝達される。ディファレンシャル装置10のデフケース(被回転駆動部材11)には、図示しないデフピニオンやサイドギヤが取り付けられており、左右のサイドギヤに左右のアクスルシャフト13L、13Rが連結され、左右のアクスルシャフト13L、13Rは差動回転する。
【0026】
第1、第2の2つのエンジンENG1、ENG2には、高効率運転ポイントの互いに異なるエンジンが用いられており、第1のエンジンENG1は排気量の小さいエンジンとされ、第2のエンジンENG2は、第1のエンジンENG1よりも排気量の大きいエンジンとされている。例えば、第1のエンジンENG1の排気量は500ccとされ、第2のエンジンENG2の排気量は1000ccとされており、合計排気量が1500ccとされている。もちろん、排気量の組み合わせは任意である。
【0027】
メインモータジェネレータMG1と被回転駆動部材11は、メインモータジェネレータMG1の出力軸に取り付けたドライブギヤ15と被回転駆動部材11に設けたドリブンギヤ12とが噛合することにより、動力伝達可能に接続されている。例えば、メインモータジェネレータMG1がモータとして機能するときは、メインモータジェネレータMG1から被回転駆動部材11に駆動力が伝達される。また、メインモータジェネレータMG1を発電機として機能させるときは、被回転駆動部材11からメインモータジェネレータMG1に動力が入力され、機械エネルギーが電気エネルギーに変換される。同時に、メインモータジェネレータMG1から被回転駆動部材11に回生制動力が作用する。
【0028】
また、サブモータジェネレータMG2は、第1のエンジンENG1の出力軸S1に直に接続されており、該出力軸S1との間で動力の相互伝達を行う。この場合も、サブモータジェネレータMG2がモータとして機能するときは、サブモータジェネレータMG1から第1のエンジンENG1の出力軸S1に駆動力が伝達される。また、サブモータジェネレータMG2が発電機として機能するときは、第1のエンジンENG1の出力軸S1からサブモータジェネレータMG2に動力が伝達される。
【0029】
以上の要素を備えたこの駆動システム1では、第1のエンジンENG1および第2のエンジンENG2の発生する回転動力が、第1のトランスミッションTM1および第2のトランスミッションTM2を介して、第1のワンウェイ・クラッチOWC1および第2のワンウェイ・クラッチOWC2に入力され、第1のワンウェイ・クラッチOWC1および第2のワンウェイ・クラッチOWC2を介して、回転動力が被回転駆動部材11に入力される。
【0030】
また、この駆動システム1では、第2のエンジンENG2の出力軸S2と被回転駆動部材11との間に、第2のトランスミッションTM2を介した動力伝達と異なる当該出力軸S2と被回転駆動部材11の間での動力伝達を断接可能なシンクロ機構(スタータ・クラッチとも言われるクラッチ手段)20が設けられている。このシンクロ機構20は、被回転駆動部材11に設けたドリブンギヤ12に常時噛み合うと共に第2のエンジンENG2の出力軸S2の周りに回転自在に設けられた第1ギヤ21と、第2のエンジンENG2の出力軸S2の周りに該出力軸S2と一体に回転するように設けられた第2ギヤ22と、軸方向にスライド操作されることで第1ギヤ21と第2ギヤ22を結合または解除するスリーブ24と、を備えている。即ち、シンクロ機構20は、第2のトランスミッションTM2、クラッチ機構CL2を介した動力伝達経路と異なる動力伝達経路を構成し、この動力伝達経路での動力伝達を断接する。
【0031】
《トランスミッションの構成》
次に、この駆動システム1に用いられている第1、第2の2つのトランスミッションTM1、TM2について説明する。
第1、第2のトランスミッションTM1、TM2は、ほぼ同じ構成の無段変速機構により構成されている。この場合の無段変速機構は、IVT(Infinity Variable Transmission=クラッチを使用せずに変速比を無限大にして出力回転をゼロにできる方式の変速機構)と呼ばれるものの一種であり、変速比(レシオ=i)を無段階に変更できると共に、変速比の最大値を無限大(∞)に設定することができる、無限・無段変速機構BD(BD1、BD2)により構成されている。
【0032】
この無限・無段変速機構BDは、図2および図3に構成を示すように、エンジンENG1、ENG2からの回転動力を受けることで入力中心軸線O1の周りを回転する、両端が軸受102、103によって支持された入力軸101と、入力軸101と一体回転する複数の偏心ディスク104と、入力側と出力側を結ぶための偏心ディスク104と同数の連結部材130と、出力側に設けられたワンウェイ・クラッチ120とを備えている。
【0033】
複数の偏心ディスク104は、それぞれ第1支点O3を中心とした円形形状に形成されている。第1支点O3は、入力軸101の周方向に等間隔に設けられると共に、それぞれが、入力中心軸線O1に対する偏心量r1を変更可能で、且つ、該偏心量r1を保ちつつ、入力中心軸線O1の周りに入力軸101と共に回転するように設定されている。従って、複数の偏心ディスク104は、それぞれに偏心量r1を保った状態で、入力中心軸線O1の周りに入力軸101の回転に伴って偏心回転するように設けられている。
【0034】
偏心ディスク104は、図3に示すように、外周側円板105と、入力軸101に一体形成された内周側円板108とで構成されている。内周側円板108は、入力軸101の中心軸線である入力中心軸線O1に対して一定の偏心距離だけ中心を偏倚させた肉厚円板として形成されている。外周側円板105は、第1支点O3を中心にした肉厚円板として形成されており、その中心(第1支点O3)を外れた位置に中心を持つ第1円形孔106を有している。そして、この第1円形孔106の内周に回転可能に内周側円板108の外周が嵌っている。
【0035】
また、内周側円板108には、入力中心軸線O1を中心とすると共に周方向の一部が内周側円板108の外周に開口した第2円形孔109が設けられており、その第2円形孔109の内部にピニオン110が回転自在に収容されている。ピニオン110の歯は、第2円形孔109の外周の開口を通して、外周側円板105の第1円形孔106の内周に形成した内歯歯車107に噛み合っている。
【0036】
このピニオン110は、入力軸101の中心軸線である入力中心軸線O1と同軸に回転するように設けられている。即ち、ピニオン110の回転中心と入力軸101の中心軸線である入力中心軸線O1とが一致している。ピニオン110は、図2に示すように、直流モータ及び減速機構によって構成されるアクチュエータ180により、第2円形孔109の内部で回転させられる。通常時は、入力軸101の回転と同期させてピニオン110を回転させ、同期する回転数を基準として、ピニオン110に入力軸101の回転数を上回るか下回るかする回転数を与えることにより、ピニオン110を入力軸101に対して相対回転させる。例えば、ピニオン110およびアクチュエータ180の出力軸が互いに連結されるように配置し、アクチュエータ180の回転が入力軸101の回転に対して回転差が生じる場合には、その回転差に減速比をかけた分だけ入力軸101とピニオン110の相対角度が変化する減速機構(例えば遊星歯車)を用いることで実現できる。この際、アクチュエータ180と入力軸101の回転差がなく同期している場合には偏心量r1は変化しない。
【0037】
従って、ピニオン110を回すことにより、ピニオン110の歯が噛合している内歯歯車107つまり外周側円板105が内周側円板108に対して相対回転し、それにより、ピニオン110の中心(入力中心軸線O1)と外周側円板105の中心(第1支点O3)との間の距離(つまり偏心ディスク104の偏心量r1)が変化する。
【0038】
この場合、ピニオン110の回転によって、ピニオン110の中心(入力中心軸線O1)に外周側円板105の中心(第1支点O3)を一致させることができるように設定されており、両中心を一致させることにより、偏心ディスク104の偏心量r1を「ゼロ」に設定できる。
【0039】
また、ワンウェイ・クラッチ120は、入力中心軸線O1から離れた出力中心軸線O2の周りを回転する出力部材(クラッチインナ)121と、外部から回転方向の動力を受けることで出力中心軸線O2の周りを揺動するリング状の入力部材(クラッチアウタ)122と、これら入力部材122および出力部材121を互いにロック状態または非ロック状態にするために入力部材122と出力部材121の間に挿入された複数のローラ(係合部材)123と、ロック状態を与える方向にローラ123を付勢する付勢部材126とを有し、入力部材122の正方向(例えば、図3中の矢印RD1で示す方向)の回転速度が出力部材121の正方向の回転速度を上回ったとき、入力部材122に入力された回転動力を出力部材121に伝達し、それにより、入力部材122の揺動運動を出力部材121の回転運動に変換することができるようになっている。
【0040】
図2に示すように、ワンウェイ・クラッチ120の出力部材121は、軸方向に一体に連続した部材として構成されたものであるが、入力部材122は、軸方向に複数に分割されており、偏心ディスク104および連結部材130の数だけ、軸方向に各々独立して揺動できるように配列されている。そして、ローラ123は、入力部材122毎に、入力部材122と出力部材121との間に挿入されている。
【0041】
リング状の各入力部材122上の周方向の1箇所には張り出し部124が設けられており、その張り出し部124に、出力中心軸線O2から離間した第2支点O4が設けられている。そして、各入力部材122の第2支点O4上にピン125が配置され、このピン125によって、連結部材130の先端(他端部)132が入力部材122に回転自在に連結されている。
【0042】
連結部材130は、一端側にリング部131を有し、そのリング部131の円形開口133の内周が、ベアリング140を介して、偏心ディスク104の外周に回転自在に嵌合されている。従って、このように連結部材130の一端が偏心ディスク104の外周に回転自在に連結されると共に、連結部材130の他端が、ワンウェイ・クラッチ120の入力部材122上に設けられた第2支点O4に回動自在に連結されることにより、入力中心軸線O1、第1支点O3、出力中心軸線O2、第2支点O4の4つの節を回動点とする四節リンク機構が構成されており、入力軸101から偏心ディスク104に与えられる回転運動が、ワンウェイ・クラッチ120の入力部材122に対して該入力部材122の揺動運動として伝えられ、その入力部材122の揺動運動が出力部材121の回転運動に変換される。
【0043】
その際、ピニオン110、ピニオン110を収容する第2円形孔109を備えた内周側円板108、内周側円板108を回転可能に収容する第1円形孔106を備えた外周側円板105、アクチュエータ180などにより構成された変速比可変機構112の前記ピニオン110をアクチュエータ180で動かすことにより、偏心ディスク104の偏心量r1を変化させることができる。そして、偏心量r1を変更することで、ワンウェイ・クラッチ120の入力部材122の揺動角度θ2を変更することができ、それにより、入力軸101の回転数に対する出力部材121の回転数の比(変速比:レシオi)を変えることができる。即ち、入力中心軸線O1に対する第1支点O3の偏心量r1を調節することで、偏心ディスク104からワンウェイ・クラッチ120の入力部材122に伝えられる揺動運動の揺動角度θ2を変更し、それにより、入力軸101に入力される回転動力が、偏心ディスク104および連結部材130を介してワンウェイ・クラッチ120の出力部材121に回転動力として伝達される際の変速比を変更することができる。
【0044】
この場合、第1、第2のエンジンENG1、ENG2の出力軸S1、S2が、この無限・無段変速機構BD(BD1、BD2)の入力軸101に一体に連結されている。また、無限・無段変速機構BD(BD1、BD2)の構成要素であるワンウェイ・クラッチ120が、第1のトランスミッションTM1および第2のトランスミッションTM2と被回転駆動部材11との間に設けられた前記第1のワンウェイ・クラッチOWC1および第2のワンウェイ・クラッチOWC2をそれぞれに兼ねている。
【0045】
図4及び図5は、無限・無段変速機構BD(BD1、BD2)における変速比可変機構112による変速原理の説明図である。これら図4および図5に示すように、変速比可変機構112のピニオン110を回転させて、内周側円板108に対して外周側円板105を回転させることにより、偏心ディスク104の入力中心軸線O1(ピニオン110の回転中心)に対する偏心量r1を調節することができる。
【0046】
例えば、図4(a)、図5(a)に示すように、偏心ディスク104の偏心量r1を「大」にした場合は、ワンウェイ・クラッチ120の入力部材122の揺動角度θ2を大きくすることができるので、小さな変速比iを実現することができる。また、図4(b)、図5(b)に示すように、偏心ディスク104の偏心量r1を「中」にした場合は、ワンウェイ・クラッチ120の入力部材122の揺動角度θ2を「中」にすることができるので、中くらいの変速比iを実現することができる。また、図4(c)、図5(c)に示すように、偏心ディスク104の偏心量r1を「小」にした場合は、ワンウェイ・クラッチ120の入力部材122の揺動角度θ2を小さくすることができるので、大きな変速比iを実現することができる。また、図4(d)に示すように、偏心ディスク104の偏心量r1を「ゼロ」にした場合は、ワンウェイ・クラッチ120の入力部材122の揺動角度θ2を「ゼロ」にすることができるので、変速比iを「無限大(∞)」にすることができる。
【0047】
図6は四節リンク機構として構成された前記無限・無段変速機構BD(BD1、BD2)の駆動力伝達原理の説明図、図7は同変速機構BD(BD1、BD2)において、入力軸101と共に等速回転する偏心ディスク104の偏心量r1(変速比i)を「大」、「中」、「小」と変化させた場合の、入力軸101の回転角度(θ)とワンウェイ・クラッチ120の入力部材122の角速度ω2の関係を示す図、図8は同変速機構BD(BD1、BD2)において、複数の連結部材130によって入力側(入力軸101や偏心ディスク104)から出力側(ワンウェイ・クラッチ120の出力部材121)へ動力が伝達される際の出力の取り出し原理を説明するための図である。
【0048】
図6に示すように、ワンウェイ・クラッチ120の入力部材122は、連結部材130を介して偏心ディスク104から与えられる動力により揺動運動する。偏心ディスク104を回転させる入力軸101が1回転すると、ワンウェイ・クラッチ120の入力部材122は1往復揺動する。図7に示すように、偏心ディスク104の偏心量r1の値に関係なく、ワンウェイ・クラッチ120の入力部材122の揺動周期は常に一定である。入力部材122の角速度ω2は、偏心ディスク104(入力軸101)の回転角速度ω1と偏心量r1によって決まる。
【0049】
入力軸101とワンウェイ・クラッチ120を繋ぐ複数の連結部材130の一端(リング部131)は、入力中心軸線O1の周りに周方向等間隔で設けられた偏心ディスク104に回転自在に連結されているので、各偏心ディスク104の回転運動によりワンウェイ・クラッチ120の入力部材122にもたらされる揺動運動は、図8に示すように、一定の位相で順番に起こることになる。
【0050】
その際、ワンウェイ・クラッチ120の入力部材122から出力部材121への動力(トルク)の伝達は、入力部材122の正方向(図3中矢印RD1方向)の回転速度が出力部材121の正方向の回転速度を超えた条件でのみ行われる。つまり、ワンウェイ・クラッチ120では、入力部材122の回転速度が出力部材121の回転速度より高くなったときに初めてローラ123を介しての噛み合い(ロック)が発生し、連結部材130により、入力部材122の動力が出力部材121に伝達され、駆動力が発生する。
【0051】
1つの連結部材130による駆動が終了した後は、入力部材122の回転速度が出力部材121の回転速度より低下すると共に、他の連結部材130の駆動力によってローラ123によるロックが解除されて、フリーな状態(空転状態)に戻る。これが、連結部材130の数だけ順番に行われることで、揺動運動が一方向の回転運動に変換される。そのため、出力部材121の回転速度を超えたタイミングの入力部材122の動力のみが出力部材121に順番に伝えられ、ほぼ平滑に均された回転動力が出力部材121に与えられることになる。
【0052】
また、この四節リンク機構式の無限・無段変速機構BD(BD1、BD2)では、偏心ディスク104の偏心量r1を変更することで、変速比(レシオ=エンジンのクランク軸の1回転でどれだけ被回転駆動部材を回転させるか)を決めることができる。この場合、偏心量r1をゼロに設定することで、変速比iを無限大に設定することができ、エンジンの回転中にも拘わらず、入力部材122に伝達される揺動角度θ2をゼロにすることができる。
【0053】
また、この四節リンク機構式の無限・無段変速機構BD(BD1、BD2)は、その入力軸101の回転がピニオン110の回転より相対的に速くなった場合(入力軸の回転数>ピニオンの回転数となった場合)に、偏心ディスク104の偏心量r1が小さくなる方向に変化し、変速比iが無限大の方向(アンダードライブ=略してUD側)に変更されるように設定されると共に、無限大に変更された場合は、その無限大の位置でストッパ(図示略)の働きにより変速比が固定されるように設定されている。
【0054】
なお、変速比が無限大になると、偏心ディスク104が揺動運動をしなくなるので、無限・無段変速機構BD(BD1、BD2)からワンウェイ・クラッチOWC1、OWC2へ動力は伝達されなくなる。また、入力軸101の回転がピニオン110の回転より相対的に遅くなった場合(入力軸の回転数<ピニオンの回転数となった場合)には、偏心ディスク104の偏心量r1が大きくなる方向に変化し、変速比iが小さくなる方向(オーバードライブ=略してOD側)に変更されるように設定されている。この場合も、偏心量r1が最大となった位置でストッパ(図示略)の働きにより、変速比が固定される。
【0055】
従って、車両減速時などにエンジンENG1、ENG2の停止制御(ここでは燃料供給の停止制御を指す)を行った際に、同時にアクチュエータ180の回転をゼロもしくはゼロに近い値に減速制御することで、アクチュエータ180の内部フリクションもしくは減速トルクにより、慣性で回転を続ける入力軸101とアクチュエータ180で回転駆動されるピニオン110との間に、「入力軸101の回転数>ピニオン110の回転数」の関係を自動的に成立させることができるようになり、それにより、変速比を無限大の方向へ移動させることができる。
【0056】
このように、エンジンENG1、ENG2の停止制御に伴ってアクチュエータ180の回転を止めたり減速したりするだけで、自動的に変速比を無限大の方向に変更することができ、実際にエンジンが停止するまでのエンジンからワンウェイ・クラッチOWC1、OWC2の入力部材122までの慣性力を、変速比を無限大の方向に変更するアクチュエータ180の操作のアシスト力として利用することができる。
【0057】
《制御手段の主な働き》
次に、この駆動システム1において実行する制御内容について説明する。
図1に示すように、制御手段5は、第1、第2のエンジンENG1、ENG2、メインモータジェネレータMG1、サブモータジェネレータMG2、第1、第2のトランスミッションTM1、TM2を構成する無限・無段変速機構BD1、BD2のアクチュエータ180、クラッチ機構CL1、CL2、シンクロ機構20などに制御信号を送って、これらの要素を制御することにより、様々な走行パターン(動作パターンとも言う)制御を行う。また、車両減速時やエンジンの切り替え時にエンジンの停止制御を行うと共に、無限・無段変速機構BD1、BD2の変速比制御や回生運転制御を行う。また、制御手段5には、後述の要求出力検出手段を始めとして、各種要素の回転検出手段、その他の検出手段の信号が入力されている。以下、代表的な制御の内容を説明する。
【0058】
制御手段5は、メインモータジェネレータMG1の駆動力のみによるEV走行を制御するEV走行制御モードと、第1のエンジンENG1および/または第2のエンジンENG2の駆動力のみによるエンジン走行を制御するエンジン走行制御モードと、第1のエンジンENG1によりサブモータジェネレータMG2を発電機として駆動させ、それにより生成した電力をメインモータジェネレータMG1および/またはバッテリ8に供給しながら、メインモータジェネレータMG1の駆動力によるモータ走行を行うシリーズ走行を制御するシリーズ走行制御モードと、を選択して実行する機能を有する。また、メインモータジェネレータMG1の駆動力と第1のエンジンENG1の駆動力の両方を利用して走行するパラレル走行モードを実行する機能も有する。また、EV走行、シリーズ走行、エンジン走行、パラレル走行は、要求駆動力およびバッテリ8の残容量(SOC)に応じて、選択して実行される。
【0059】
ここで、シリーズ走行は、EV走行からエンジン走行へと走行モードを切り替える際に、EV走行とエンジン走行との間で実行される。そのシリーズ走行の際には、第1のエンジンENG1の回転数および/または第1のトランスミッションTM1の変速比を制御することにより、第1のワンウェイ・クラッチOWC1の入力部材122に入力される回転速度が出力部材121の回転速度を下回るように制御する。
【0060】
また、シリーズ走行からエンジン走行に切り替える場合、第1のエンジンENG1の回転数および/または第1のトランスミッションTM1の変速比を制御することにより、第1のワンウェイ・クラッチOWC1の入力部材122に入力される回転速度を出力部材121の回転速度を上回る値に変更して、シリーズ走行からエンジン走行へと移行させる。
【0061】
EV走行中に第1のエンジンENG1を始動する際には、第1のトランスミッションTM1の変速比を、第1のワンウェイ・クラッチOWC1の入力回転数が出力回転数を上回らないように設定した状態(回転負荷を最小にするため、主に変速比を無限大に設定した状態)で、第1のエンジンENG1をサブモータジェネレータMG2の駆動力を用いて始動する。そして、走行モードをシリーズ走行からエンジン走行へと切り替えた後に、サブモータジェネレータMG2による発電を停止する。但し、走行モードをシリーズ走行からエンジン走行へ切り替えた後に、バッテリ8の残容量(SOC)が第1所定値(基準値:例えば基準SOCt=35%)以下である場合には、サブモータジェネレータMG2によるチャージ(発電によるバッテリ8の充電動作)を継続する。
【0062】
また、EV走行中は、クラッチ機構CL1、CL2を遮断状態に保持している。それにより、ワンウェイ・クラッチOWC1、OWC2の引き摺りトルクロスを無くすことができ、エネルギー効率の向上が図れる。
【0063】
次に、第2のエンジンENG2の始動を行う際には、例えば、1つの方法として、第2のトランスミッションTM2の変速比を、第2のエンジンENG2からの動力を第2のワンウェイ・クラッチOWC2に伝達可能であり(i≠∞)且つ第2のワンウェイ・クラッチOWC2の入力部材122の回転速度が出力部材121の回転速度を下回るような有限値(目標値にできるだけ近い値)に制御する。あるいは、別の方法として、第2のエンジンENG2の始動を行う際に、第2のトランスミッションTM2の変速比を無限大(∞)に設定し、第2のワンウェイ・クラッチOWC2の入力部材122の回転速度が出力部材121の回転速度を下回るように制御する。そして、第2のエンジンENG2の始動後に、第2のトランスミッションTM2の変速比を有限値(目標値)に変更することで、第2のワンウェイ・クラッチOWC2に入力される回転速度を制御する。
【0064】
ここで、第1のエンジンENG1やメインモータジェネレータMG1の駆動力を利用して走行している状態で、被回転駆動部材11の動力を用いて第2のエンジンENG2を始動する場合には、第2のエンジンENG2の出力軸S2と被回転駆動部材11との間に設けられたシンクロ機構20を動力伝達可能な接続状態とすることにより、被回転駆動部材11の動力を用いて、第2のエンジンENG2のクランキング(スタート回転)を行い、第2のエンジンENG2を始動する。
【0065】
第2のエンジンENG2を始動させて、駆動源を第1のエンジンENG1から第2のエンジンENG2に切り替える場合は、第1のワンウェイ・クラッチOWC1を介して第1のエンジンENG1の発生する動力が被回転駆動部材11に入力されている状態で、第2のワンウェイ・クラッチOWC2の入力部材122に入力される回転数が出力部材121の回転数を上回るように、第2のエンジンENG2の回転数および/または第2のトランスミッションTM2の変速比の変更を行う。こうすることにより、駆動源として用いるエンジンを、第1のエンジンENG1から第2のエンジンENG2にスムーズに切り替えることができる。
【0066】
また、第1のエンジンENG1と第2のエンジンENG2の両方の駆動力を合成して被回転駆動部材11に伝達させる場合は、第1のワンウェイ・クラッチOWC1および第2のワンウェイ・クラッチOWC2の両入力部材122に入力される回転速度が共に同期して出力部材121の回転速度を上回るように、第1、第2のエンジンENG1、ENG2の回転数および/または第1、第2のトランスミッションTM1、TM2の変速比を制御する同期制御を行う。
【0067】
この場合、加速のときに、両方のエンジンENG1、ENG2を無条件に動かすのではなく、一方(第1のエンジンENG1)を高効率運転ポイントに固定した状態で、他方のエンジン(第2のエンジンENG2)の出力を上げることで、出力要求に応えるようにする。
【0068】
具体的には、第1のワンウェイ・クラッチOWC1および第2のワンウェイ・クラッチOWC2の入力部材122に入力される回転速度が出力部材121の回転速度を上回るように第1、第2のエンジンENG1、ENG2の回転数および/または第1、第2のトランスミッションTM1、TM2の変速比を制御しているとき、第1のエンジンENG1の回転数および/またはトルクが高効率運転領域に入るように、運転条件を一定範囲に固定した状態で、第1のエンジンENG1および/または第1のトランスミッションTM1を制御し、且つ、その固定した運転条件によって得られる出力を超える出力要求に対しては、第2のエンジンENG2および第2のトランスミッションTM2を制御することで対応する。
【0069】
あるいは、上記とは別の制御方法として、要求出力に応じて、排気量大の第2のエンジンENG2を運転条件の固定側に設定するようにしてもよく、例えば、要求出力が所定以上の場合は、第1のエンジンENG1を運転条件の固定側に設定し、要求出力が所定以下の場合は、第2のエンジンENG2を運転条件の固定側に設定するようにしてもよい。
【0070】
また、車両の後進時には、クラッチ機構CL1、CL2を遮断状態にして、第1、第2のトランスミッションTM1、TM2のロックによる後進不可状態を解除する。一方、登坂発進時には、少なくとも一方のクラッチ機構CL1、CL2を接続状態とする。
【0071】
また、車両の減速時には、車両の慣性力をメインモータジェネレータMG1で回生する。特に、第1のエンジンENG1の駆動力で走行している状態で減速したときには、省エネのために第1のエンジンENG1への燃料供給を停止して第1のエンジンENG1を停止させる制御を実施することになるが、その場合、エンジンENG1の回転数の低下に伴って、第1のワンウェイ・クラッチOWC1の入力部材122の回転数が出力部材121の回転数より低くなることで、ワンウェイ・クラッチOWC1が切断状態となり、入力部材122側が出力部材121側から切り離される。従って、エンジンENG1が実際に停止するまでの間、エンジンENG1からワンウェイ・クラッチOWC1の入力部材122までの範囲が動力伝達せずに回転することになる。
【0072】
ここで、制御手段5は、このときにアクチュエータ180の回転を停止させるか、もしくは、エンジンENG1の出力軸の回転よりも低速となるように減速回転させる。そうすることで、ピニオン110の回転数が入力軸101(エンジンの出力軸)の回転よりも低下し、それにより、図4(d)に示すように、入力中心軸線O1と第1支点O3が一致することで、偏心量がゼロになり、変速比が無限大になる。
【0073】
このため、エンジン停止指令を発する前には、変速比がある有限値で成立していると、入力軸101側の偏心ディスク104が偏心回転し、その偏心分だけ、入力軸を支持している軸受への荷重が増加することになっていたが、変速比を無限大または無限大に近い値に変更することにより、軸受荷重が減らすことができ、摩擦ロスとして捨てているエネルギーを回収することができる。
【0074】
以下、そのときの制御の流れを図9のフローチャート及び図10のタイムチャートに従って説明する。
この実施形態では、減速時の車両の慣性力の回生はメインモータジェネレータMG1で行い、第1のエンジンENG1のクランク軸S1から第1のワンウェイ・クラッチOWC1の入力部材122までの範囲の動力伝達系の慣性力の回生は、サブモータジェネレータMG2で行う。
【0075】
図9のフローチャートは、車両減速時の第1のエンジンENG1側の駆動系統の制御内容を示すもので、最初のステップS101で減速が開始されたかどうかを確認する。減速が開始されたかどうかは、例えば、アクセルの開度やブレーキの踏み込みのON/OFF等で判断する。減速が開始されていない場合はそのまま処理を終了し、減速が開始されている場合は、ステップS102で、第1のエンジンENG1の停止指令を発生する。エンジンENG1の停止指令の例としては、エンジンENG1への燃料供給の停止指令が挙げられる。
【0076】
次にステップS103で、減速の程度が緩減速か急減速かを確認する。急減速の場合は、ステップS104で第1のクラッチ機構CL1をOFFにする。緩減速の場合は、駆動要求が次に直ぐ来る可能性が高いので、クラッチ機構CL1のOFFのステップを回避する。
【0077】
このように、クラッチ機構CL1を遮断した場合、クラッチ機構CL1の上流側を下流側から切り離すことができる。従って、ワンウェイ・クラッチOWC1からクラッチ機構CL1までの間の動力伝達部材(例えば、ワンウェイ・クラッチの出力部材121)の連れ回りによる摩擦ロスを低減することができて、メインモータジェネレータMG1によるエネルギー回収効率の向上を図ることができる。
【0078】
また、減速要求があるときに全面的にクラッチ機構CL1を遮断するのではなく、再び直ぐにアクセルが踏み込まれる可能性のある緩減速の場合にはクラッチ機構CL1の遮断を回避するので、アクセルの再踏み込みに応じてクラッチ機構CL1を繋ぎに行く時間を減らすことができ、レスポンスを高めることができる。
【0079】
クラッチ機構CL1のON/OFFに拘わらず、次にステップS105で第1の無限・無段変速機構BD1の変速比を無限大に変更する処理を行う。このとき、前述したように、エンジンENG1からワンウェイ・クラッチOWC1の入力部材122までの動力伝達要素の慣性力をアシスト力として利用することで、無限・無段変速機構BD1の変速比を無限大に変更する。
【0080】
ステップS105及びステップS106を繰り返すことで、変速比が無限大になるまで待ち、変速比が無限大になったら、ステップS107に進んで、エンジンENG1がまだ実際に停止していないかどうかを確認し、エンジンENG1がまだ停止しておらずに回転しているときには、さらにその回転による慣性力を回収するべく、ステップS108、109を繰り返すことで、エンジンENG1が実際に回転停止するまで、エンジンENG1からワンウェイ・クラッチOWC1の入力部材122までの動力伝達要素の慣性力を、サブモータジェネレータMG2で電気エネルギーとして回生する。そして、エンジンENG1が実際に回転停止したら、ステップS110にてサブモータジェネレータMG2による回生運転を終了する。
【0081】
以上の流れを図10のタイムチャートで見てみると、まず、エンジン(この場合は第1のエンジンENG1)で走行している状態で減速が開始されると、車速が低下していく。また、減速の開始と同時にエンジンENG1の停止制御(燃料カット)が行われることにより、エンジン回転数が低下していく。このとき、エンジンENG1の回転数が低下することにより、ワンウェイ・クラッチOWC1の入力部材122の回転数が出力部材121の回転数を下回って、ワンウェイ・クラッチOWC1が遮断状態となり、ワンウェイ・クラッチOWC1の上流側と下流側が切り離される。
【0082】
そこで、エンジンENG1のクランク軸S1からワンウェイ・クラッチOWC1の入力部材122までの慣性力を利用して、変速機構TM1を構成する無限・無段変速機構BD1の変速比を無限大に変更する。
【0083】
また、変速比を無限大に変更した後で、エンジンENG1が余力を持って回転している場合は、サブモータジェネレータMG2を発電ONにして、その回転による慣性力を利用してサブモータジェネレータMG2により発電を行い、電力の形でエネルギーを回収する。
【0084】
本実施形態の無限・無段変速機構BD1においては、変速比がある有限値で成立している場合、入力軸101側の偏心ディスク104が偏心回転しており、偏心分だけ、入力軸101を支持している軸受102、103への荷重が増加する。そのため、変速比を無限大に変更することにより、軸受荷重を減らして、摩擦ロスとして捨てているエネルギーを回収することができる。また、減速時にエンジン停止指令を発してから実際にエンジンENG1が停止するまでのエンジンENG1からワンウェイ・クラッチOWC1の入力部材122までの慣性力を、無限・無段変速機構BD1において無限大の変速比に変更するためのアクチュエータ180による駆動操作のアシスト力として利用するので、変速比を変更するためのエネルギーの削減が可能になり、エンジンENG1からワンウェイ・クラッチOWC1の入力部材122までの慣性力を、無駄なく有効に利用することができる。
【0085】
また、変速比に変更するための駆動操作のアシスト力として利用した上で、エンジンENG1からワンウェイ・クラッチOWC1の入力部材122までの慣性力にまだ余裕がある場合には、その慣性力を、サブモータジェネレータMG2により電気エネルギーとして回生させるので、無駄なく有効にエンジンENG1からワンウェイ・クラッチOWC1の入力部材122までの慣性力を活かすことができる。
【0086】
なお、上記においては、変速比を無限大に変更する場合について述べたが、必ずしも無限大にまで変更しないで、無限大に近い変速比に変更するようにすれば、ある程度の効果は期待できる。
【0087】
また、本実施形態では、サブモータジェネレータMG2が接続された第1のエンジンENG1側の変速機構TM1の変速比を無限大に設定する場合について述べたが、第2のエンジンENG2で走行している場合にも、減速時には同様の問題が生じるので(つまり、エンジン回転数が落ちることで、ワンウェイ・クラッチOWC2の上流側と下流側が切り離され、エンジンENG2のクランク軸S2からワンウェイ・クラッチOWC2の入力部材122までの慣性力が無駄になるという問題)、エンジンENG2のクランク軸S2からワンウェイ・クラッチOWC2の入力部材122までの慣性力を利用して、第2の無限・無段変速機構BD2の変速比を無限大または無限大に近い値になるよう変更してもよい。
【0088】
そうすれば、軸受102、103の荷重を減らして、摩擦ロスとして捨てているエネルギーを回収することができる。また、変速比を変更するためのエネルギーの削減が可能になり、エンジンENG2からワンウェイ・クラッチOWC2の入力部材122までの慣性力を、無駄なく有効に利用することができるようになる。
【0089】
また、第1のエンジンENG1から第2のエンジンENG2に駆動源を切り替える際に、第1のエンジンENG1を停止させるような場合にも、車両減速時と同様、図11に示すフローチャートに示すように、エンジンENG1からワンウェイ・クラッチOWC1の入力部材122までの慣性力を有効に利用する。
【0090】
即ち、図11のフローチャートは、その場合の制御の流れを示すもので、図9のフローチャートの印※1の範囲を、ステップS301とステップS302で置き換えたものである。ステップS301ではエンジンENG1の停止要求が発生したかどうかを判断し、エンジンENG1の停止要求が発生した場合は、ステップS302でエンジン停止指令を発生する。
【0091】
《動作パターンについて》
次に、本実施形態の駆動システムにおいて実行する動作パターンについて説明する。
図12〜図26は動作パターンA〜Oを取り出して示す拡大説明図、図27〜図36は各運転状態に応じて実行する制御動作、または走行モード切り替え時の制御動作の説明図である。なお、図27〜図36の各動作パターンを示す枠の中の右上のA〜Oの符号は、図12〜図26に取り出して示す動作パターンA〜Oの符号と対応している。また、動作パターンを示す図の中で、動作中の駆動源を網掛けにより区別して示し、動力の伝達経路や電力の流れを実線や点線などの矢印で示す。
【0092】
図12に示す動作パターンAでは、メインモータジェネレータMG1の駆動力でEV走行を行っている。即ち、バッテリ8からメインモータジェネレータMG1に通電することでメインモータジェネレータMG1を駆動し、メインモータジェネレータMG1の駆動力を、ドライブギヤ15、ドリブンギヤ12を介して被回転駆動部材11に伝達し、ディファレンシャル装置10および左右アクスルシャフト13L、13Rを介して駆動車輪2に伝えることで走行する。このとき、クラッチ機構CL1、CL2は遮断状態(OFF状態)にしておく。
【0093】
図13に示す動作パターンBでは、第1のエンジンENG1の駆動力を利用してサブモータジェネレータMG2で発電し、その発電した電力をメインモータジェネレータMG1およびバッテリ8に供給して、シリーズ走行を行っている。第1のエンジンENG1の始動は、サブモータジェネレータMG2により行う。このとき、第1のトランスミッションTM1の変速比は無限大に設定しておく。
【0094】
図14に示す動作パターンCでは、メインモータジェネレータMG1と第1のエンジンENG1の両方の駆動力を利用してパラレル走行を行っている。第1のエンジンENG1の駆動力を被回転駆動部材11に伝達させるには、第1のワンウェイ・クラッチOWC1の入力回転数が出力回転数を上回るように、第1のエンジンENG1の回転数および/または第1のトランスミッションTM1の変速比を制御する。そうすることにより、メインモータジェネレータMG1の駆動力と第1のエンジンENG1の駆動力の合成力を被回転駆動部材11に伝達させることができる。この動作パターンCは、低速走行や中速走行において、加速時などの要求駆動力が大きくなった場合に実行される。この際、クラッチ機構CL1は接続状態に維持され、クラッチ機構CL2は遮断状態に維持される。これにより、第1のエンジンENG1の駆動力が被回転駆動部材11に伝達されるとともに、第2のワンウェイ・クラッチOWC2の引きずりが防止される。
【0095】
図15に示す動作パターンDでは、第1のエンジンENG1の駆動力を利用したエンジン走行を行っている。この動作パターンDは、例えば、発進時にSOCが低い場合に、バッテリ8の電力消費を少なくするために用いられる。
【0096】
図16に示す動作パターンEでは、減速時に駆動車輪2から被回転駆動部材11を介して伝達される動力を用いたメインモータジェネレータMG1の回生動作によって、メインモータジェネレータMG1が発電機として作用し、駆動車輪2から被回転駆動部材11を介して入力される機械エネルギーが電気エネルギーに変換される。そして、駆動車輪2に回生制動力が伝達されると共に、回生電力がバッテリ8に充電される。この動作パターンを実行するときには、所定のタイミングで、クラッチ機構CL1、CL2を切る。この動作パターンEを実行するに当たって、今まで走行の駆動に寄与していた第1のエンジンENG1を停止させる際には、図9に示したフローチャートの制御を実行する。
【0097】
図17に示す動作パターンFでは、第1のエンジンENG1の駆動力のみを利用してエンジン走行を行っており、同時に、第1のエンジンENG1の駆動力を利用してサブモータジェネレータMG2で発電し、生成した電力をバッテリ8に充電している。なお、SOCに応じて、サブモータジェネレータMG2の発電を停止させてもよい。
【0098】
図18に示す動作パターンGでは、第1のエンジンENG1の駆動力で走行しながら、シンクロ機構(スタータ・クラッチ手段)20を介して、被回転駆動部材11(デフケース)に導入された動力により第2のエンジンENG2の始動を行っており、その始動時の負荷の増大による駆動車輪2への出力の不足分を第1のモータジェネレータMG1の駆動力で補っている。また、サブモータジェネレータMG2は、第1のエンジンENG1の駆動力を利用して発電し、生成した電力を第1のモータジェネレータMG1に供給またはバッテリ8に充電している。
【0099】
図19に示す動作パターンHでは、第1のエンジンENG1の駆動力を利用してエンジン走行を行っており、動作パターンGにおいて接続されたシンクロ機構20を遮断(噛み合い状態を解除)することで、被回転駆動部材11(デフケース)と第2のエンジンENG2の出力軸S2を切り離した状態にし、その状態で、始動後の第2のエンジンENG2の動力を第2のトランスミッションTM2に入力させている。ただし、この段階ではまだ、第2のワンウェイ・クラッチOWC2の入力回転数が出力回転数を上回っていないので、第2のトランスミッションTM2の出力は、被回転駆動部材11に入力されていない。また、サブモータジェネレータMG2は、第1のエンジンENG1の駆動力を利用して発電し、生成した電力をバッテリ8に充電している。
【0100】
図20に示す動作パターンIでは、第2のエンジンENG2の駆動力によるエンジン走行を行っている。この動作パターンIは、動作パターンHの状態から第2のトランスミッションTM2の変速比をOD(オーバードライブ)側に変更して、第2のワンウェイ・クラッチOWC2の入力部材122の回転数が出力部材121の回転数を上回るように制御し、それにより、第2のエンジンENG2の動力を第2のトランスミッションTM2を介して被回転駆動部材11(デフケース)に伝達させ、第2のエンジンENG2の駆動力によるエンジン走行を実現している。この動作パターンIでは、第2のエンジンENG2によるエンゲージが成立(被回転駆動部材11への動力伝達が成立)した段階で、第1のエンジンENG1を停止させている。この際、クラッチ機構CL2は接続状態に維持され、クラッチ機構CL1は遮断状態に維持される。これにより、第2のエンジンENG2の駆動力が被回転駆動部材11に伝達されるとともに、ワンウェイ・クラッチOWC1の引きずりが防止される。
【0101】
図21に示す動作パターンJは、第2のエンジンENG2の駆動力を利用したエンジン走行を行っている状態で、更に要求出力が上昇した場合の動作パターンである。この動作パターンJでは、第2のエンジンENG2による走行状態において、更に第1のエンジンENG1を始動させて、第2のエンジンENG2と第1のエンジンENG1の両方の駆動力を合成して、被回転駆動部材11(デフケース)に伝達させている。即ち、第1、第2のワンウェイ・クラッチOWC1、OWC2の入力部材122の回転数が共に同期して出力部材121の回転数(被回転駆動部材11の回転数)を上回るように、第1、第2のエンジンENG1、ENG2の回転数および/または第1、第2のトランスミッションTM1、TM2の変速比を制御している。
【0102】
図22に示す動作パターンKは、例えば、中高速走行時に減速要求が発生した場合の動作パターンである。この動作パターンKでは、第1のエンジンENG1および第2のエンジンENG2を停止させ、減速に伴って駆動車輪2から被回転駆動部材11を介して伝達される動力によりメインモータジェネレータMG1で発電し、それにより生成される回生電力をバッテリ8に充電すると共に、回生制動力を駆動車輪2に作用させている。また同時に、シンクロ機構20を接続状態にして、第2のエンジンENG2のエンジンブレーキを制動力として駆動車輪2に作用させている。この回生運転のときも、第1、第2のクラッチ機構CL1、CL2は、所定のタイミングで切っておく。
【0103】
図23に示す動作パターンLは、第2のエンジンENG2の駆動力により走行している状態で、更なる要求出力の上昇が生じた場合の切り替え時の動作パターンである。この動作パターンLでは、第1のエンジンENG1を始動するために、サブモータジェネレータMG2を駆動している。このときは、第1のトランスミッションTM1の変速比を無限大に設定する。また、この動作パターンによって、第1のエンジンENG1が始動した後は、第1、第2の両方のエンジンENG1、ENG2の両方の駆動力が、被回転駆動部材11に伝達される動作パターンJとなる。
【0104】
図24に示す動作パターンMでは、シンクロ機構20を接続状態にして第2のエンジンENG2によるエンジンブレーキが利用できる状態にすると共に、第1のエンジンENG1の駆動力を用いてサブモータジェネレータMG2で発電し、生成した電力をバッテリ8に充電している。
【0105】
図25に示す動作パターンNでは、シンクロ機構20を接続状態にして第2のエンジンENG2によるエンジンブレーキが利用できる状態にすると共に、メインモータジェネレータMG1で回生電力を生成してバッテリ8に充電し、同時に、第1のエンジンENG1の駆動力を用いてサブモータジェネレータMG2で発電し、生成した電力をバッテリ8に充電している。また、シンクロ機構20を接続状態に保つことで、第2のエンジンENG2はクランキング待機の状態にある。このときも、回生運転の開始に伴ってクラッチ機構CL1、CL2は、所定のタイミングで切っておく。
【0106】
図26に示す動作パターンOは、停車中の動作パターンであり、この動作パターンOでは、第1のエンジンENG1の駆動力を用いてサブモータジェネレータMG2で発電し、生成した電力をバッテリ8に充電している。この際、第1、第2のトランスミッションTM1、TM2の変速比を無限大(∞)にするか、クラッチ機構CL1、CL2を切ることで、引き摺りトルクロスを抑制している。
【0107】
《運転状況に応じた制御動作について》
次に図27〜図36を用いて、様々な運転状況における制御動作について説明する。各運転状況は表形式で示してあり、表中の各枠の左下には説明の便宜上、以下の括弧内の数字対応する通し番号を付してある。また、各枠の右上の符号A〜Oは、図12〜図26の拡大図に対応しており、必要に応じて参照されたい。
【0108】
《発進時》
まず、発進時の制御動作について図27を参照して説明する。
(1) 発進時の緩加速クルーズの際には、基本的に動作パターンAによるEV走行を行う。EV走行では、バッテリ8から供給される電力によりメインモータジェネレータMG1を駆動し、その駆動力のみによって走行する。
【0109】
(2) また、加速時には、動作パターンBによるシリーズ走行を行う。シリーズ走行では、まず、サブモータジェネレータMG2により第1のエンジンENG1を始動する。第2のエンジンENG1が始動したら、サブモータジェネレータMG2を発電機として機能させて発電し、生成した電力をバッテリ8とメインモータジェネレータMG1に供給することで、EV走行を継続しながら、第1のエンジンENG1の動力によりサブモータジェネレータMG2で発電した電力を有効利用する。この際、第1のワンウェイ・クラッチOWC1の入力回転数が出力回転数を下回るように、第1のエンジンENG1の回転数および/または第1のトランスミッションTM1の変速比を制御する。
【0110】
(3) また、加速要求に応じた制御により第1のエンジンENG1の回転数が上がったら、第1のワンウェイ・クラッチOWC1の入力回転数が出力回転数を上回るように第1のトランスミッションTM1の変速比を変更し、メインモータジェネレータMG1と第1のエンジンENG1の両方の駆動力を合成したパラレル走行を行う。なお、SOCが低い場合には、サブモータジェネレータMG2を発電機として利用し、バッテリ8の充電を行ってもよい。
(4) さらに、SOCが低い場合には、動作パターンDに示す第1のエンジンENG1よるエンジン走行によって発進する。この場合にも、サブモータジェネレータMG2を発電機として利用し、バッテリ8の充電を行ってもよい。
【0111】
このように、車両発進時には、メインモータジェネレータMG1の駆動力を利用したEV走行モードと、第1のエンジンENG1とサブモータジェネレータMG2とメインモータジェネレータMG1を利用したシリーズ走行モードと、メインモータジェネレータMG1と第1のエンジンENG1の両方の駆動力を利用したパラレル走行モードと、第1のエンジンENG1によるエンジン走行モードとを、運転状況に応じて選択して実行する。
【0112】
《低速走行(例えば、0〜30km/h)時》
次に低速走行時の制御動作について図28を参照して説明する。
(5)、(6) 緩加速クルーズ時や、例えばアクセルを離した緩減速クルーズ時は、動作パターンAによるEV走行を行う。
(7) また、ブレーキを踏むなどした減速時には、動作パターンEによる回生運転を行う。このとき、第1、第2のクラッチ機構CL1、CL2は切っておく。ただし、第1のエンジンENG1の駆動力を被回転駆動部材11に伝達して走行している状態(以下の(11)参照。)で回生運転に入る場合は、図9のフローチャートに従って第1のクラッチ機構CL1の遮断制御を行う。
(8)、(9) 緩加速クルーズ時および緩減速クルーズ時でも、バッテリ8の残容量(SOC)が35%以下の場合は、動作パターンBによるシリーズ運転を行う。
(10) また、加速の場合にも、動作パターンBによるシリーズ運転を行う。
(11) 更に加速要求が高い場合は、動作パターンCに切り替えることで、メインモータジェネレータMG1と第1のエンジンENG1の駆動力を用いたパラレル走行を行う。
【0113】
《メインモータジェネレータMG1から第1のエンジンENG1への駆動源の切り替え》
メインモータジェネレータMG1から第1のエンジンENG1への駆動源の切り替え時には、図29に示すように動作制御する。
(12)、(13) まず、クラッチ機構CL1を遮断状態に保持して、動作パターンAによるEV走行を行っている状況から、第1のトランスミッションTM1の変速比を無限大にして、サブモータジェネレータMG2により第1のエンジンENG1を始動する。
【0114】
その際、第1のトランスミッションTM1の変速比を無限大にして、第1のエンジンENG1の出力が被回転駆動部材11に入らない状態にする。始動後には、動作パターンBに切り替えて、サブモータジェネレータMG2の発電によるシリーズ走行を行う。
【0115】
(14) 次いで、動作パターンFに移行して、第1のワンウェイ・クラッチOWC1の入力回転数が出力回転数を上回るように、第1のエンジンENG1の回転数および/または第1のトランスミッションTM1の変速比を制御し、第1のエンジンENG1の動力を被回転駆動部材11に伝達する。例えば、変速比を無限大にして一旦充電モードに入れた後に、変速比をOD(オーバードライブ)側に動かし、メインモータジェネレータMG1によるEV走行からシリーズ走行を介して第1のエンジンENG1によるエンジン走行へとスムーズに移行させる。この際、クラッチ機構CL1は、遅れが生じないように適当なタイミングで接続制御する。
【0116】
第1のエンジンENG1による被回転駆動部材11への動力伝達(駆動源の切り替え)が成立したら、メインモータジェネレータMG1を停止する。但し、バッテリ残容量(SOC)が少ない場合は、サブモータジェネレータMG2による発電および充電を継続し、バッテリ残容量(SOC)が十分にある場合は、サブモータジェネレータMG2を停止させる。
【0117】
《中速走行(例えば20〜70km/h)時》
次に中速走行時の制御動作について図30を参照して説明する。
(15) 緩加速クルーズ時は、動作パターンFにより、第1のエンジンENG1の駆動力のみを利用した単独エンジン走行を行う。その際、サブモータジェネレータMG2で発電した電力でバッテリ8を充電する。第1エンジンENG1は高効率運転ポイントで運転し、第1のトランスミッションTM1の変速比を制御することで、運転状況に対応する。
【0118】
(16)、(17) 緩減速クルーズ時および減速時には、動作パターンEにより、第1のエンジンENG1を停止し、クラッチ機構CL1,CL2を切って、メインモータジェネレータMG1による回生運転を行う。この際、第1のエンジンENG1を停止させるのに伴って、図9のフローチャートの制御を実行する。
(18) 一方、加速時には、動作パターンCに切り替えて、第1のエンジンENG1とメインモータジェネレータMG1の両方の駆動力を利用したパラレル運転を行う。この際、基本は第1エンジンENG1によるエンジン走行であり、加速要求に対してメインモータジェネレータMG1でアシストする。この制御動作は、中速走行時の加速要求に対して第1のトランスミッションTM1の変速比の変化で対応できないときに選択される。
【0119】
《第1のエンジンENG1から第2のエンジンENG2への駆動源の切り替え》
第1のエンジンENG1の駆動力を利用したエンジン走行から第2のエンジンENG2を利用したエンジン走行への切り替え時には、図31に示すように動作制御する。
【0120】
(19)、(20) まず、動作パターンFにより、第1のエンジンENG1でエンジン走行している状態で、動作パターンGに切り替え、第2のエンジンENG2を始動する。この場合、シンクロ機構20を接続状態にして、被回転駆動部材11の動力で第2のエンジンENG2の出力軸S2をクランキングすることにより、第2のエンジンENG2を始動する。その際、始動ショックによる被回転駆動部材11の回転低下をメインモータジェネレータMG1で補う。即ち、第2のエンジンENG2の始動は、被回転駆動部材11に導入されている第1のエンジンENG1からの動力のみでも可能であるが、メインモータジェネレータMG1の駆動力を利用して行うことも可能である。なお、このときは、第2のトランスミッションTM2の変速比は、ワンウェイ・クラッチの入力回転数が出力回転数を下回るように設定されればよく、無限大に設定されてもよいし、目標とする変速比より僅かに小さい値に設定されてもよい。また、第1のエンジンENG1の駆動力に余裕がある場合には、サブモータジェネレータMG2で発電しバッテリ8の充電を行ってもよい。
【0121】
(21) その後、第2のエンジンENG2が始動したら、動作パターンHに切り替え、シンクロ機構20を接続遮断状態にして、メインモータジェネレータMG1を停止する。この段階では、まだ第2のエンジンENG2の動力は被回転駆動部材11まで入らない状態にある。そこで、徐々に第2のトランスミッションTM2の変速比をOD側に変更していく。このとき、第1のエンジンENG1を停止させるのに伴って、図11のフローチャートの制御を実行する。
【0122】
(22) 第2のトランスミッションTM2の変速比をOD側に変更していき、第2のワンウェイ・クラッチOWC2の入力回転数が出力回転数を上回ることで、動作パターンIに切り替わり、第2のワンウェイ・クラッチOWC2を介して、第2のエンジンENG2の駆動力が被回転駆動部材11に伝達される。
【0123】
《中高速走行(50〜110km/h)時》
次に中高速走行時の制御動作について図32を参照して説明する。
(23) 緩加速クルーズ時は、動作パターンIにより、第2のエンジンENG2の駆動力を利用した単体エンジン走行を実施する。
(24) 加速時には、後述する動作パターンJへの切り替えにより、第2のエンジンENG2と第1のエンジンENG1の両方の駆動力を利用して走行する。なお、SOCが低い場合には、サブモータジェネレータMG2を発電機として利用し、バッテリ8の充電を行ってもよい。
(25) 緩減速クルーズ時には、動作パターンEにより、メインモータジェネレータMG1による回生運転を行い、両エンジンENG1、ENG2は停止する。このときも、回生運転の開始に伴い、図9のフローチャートの制御を行う。また、(25)から(23)に戻るときには、シンクロ機構20を接続状態にして、第2のエンジンENG2をクランキングする。
(26) 減速時には、動作パターンKにより、メインモータジェネレータMG1を回生運転させ、同時に、シンクロ機構20を接続状態にすることで、第2のエンジンENG2によるエンジンブレーキを利かせる。
【0124】
《第2のエンジンENG2によるエンジン走行から第2のエンジンENG2と第1のエンジンENG1によるエンジン走行への切り替え》
第2のエンジンENG2の駆動力を利用したエンジン走行から、第2のエンジンENG2に加えて第1のエンジンENG1の両方の駆動力を利用したエンジン走行への切り替え時には、図33に示すように動作制御する。
【0125】
(27)、(28) まず、動作パターンIにより、第2のエンジンENG2で単独エンジン走行している状態で、動作パターンLに示すように、サブモータジェネレータMG2を利用して第1のエンジンENG1を始動する。
(29) その後、動作パターンJに示すように、第1、第2のワンウェイ・クラッチOWC1、OWC2の入力部材122の回転数が共に同期して出力部材121の回転数(被回転駆動部材11の回転数)を上回るように、第1、第2のエンジンENG1、ENG2の回転数および/または第1、第2のトランスミッションTM1、TM2の変速比を制御し、第2のエンジンENG2と第1のENG1の両駆動力を合成したエンジン走行へ移行する。
【0126】
《高速走行(100〜Vmaxkm/h)時》
次に、高速走行時の制御動作について図34を参照して説明する。
(30)、(31) 緩加速クルーズ時および加速時は、動作パターンJにより、第2のエンジンENG2の駆動力と第1のエンジンENG1の駆動力の合成力を利用したエンジン走行を実施する。この際、小排気量の第1のエンジンENG1は、回転数やトルクが高効率運転領域に入るように第1のエンジンENG1および/または第1のトランスミッションTM1を制御する固定した運転条件で運転し、それ以上の要求出力に対しては、大排気量の第2のエンジンENG2および/または第2のトランスミッションTM2を制御する。なお、SOCが低い場合には、サブモータジェネレータMG2を発電機として利用し、バッテリ8の充電を行ってもよい。
【0127】
(32) また、緩減速クルーズ時は、動作パターンMにより、シンクロ機構20を接続状態にして第2のエンジンENG2のエンジンブレーキを利かせる。このとき、減速に寄与しない第1のエンジンENG1は、サブモータジェネレータMG2の発電運転に使い、バッテリ8を充電する。
(33) また、ブレーキを踏むなどした減速時には、動作パターンNに切り替え、シンクロ機構20を接続状態にすることにより、第2のエンジンENG2のエンジンブレーキを利かせる。同時に、メインモータジェネレータMG1の回生運転により、強い制動力が働くようにする。そして、メインモータジェネレータMG1で生成した回生電力をバッテリ8に充電する。また、減速に寄与しない第1のエンジンENG1は、サブモータジェネレータMG2の発電運転に使い、バッテリ8を充電する。このときは、第1のエンジンENG1および第2のエンジンENG2の両方の駆動力を被回転駆動部材11に伝達させている状態での回生運転への切り替えであるから、クラッチ機構CL1、CL2の遮断制御を行う。
【0128】
《後進時》
次に後進(後退)時の制御動作について図35を参照して説明する。
(34) 後進時は緩加速クルーズとして、動作パターンAによりEV走行を行う。後進しようとする時には、第1、第2のワンウェイ・クラッチOWC1、OWC2において、被回転駆動部材11に繋がる出力部材121が、正方向に対して逆方向(図3中の矢印RD2方向)に回転することになるので、入力部材122と出力部材121が互いにローラ123を介して噛み合う。入力部材122と出力部材121が噛み合うと、出力部材121の逆方向の回転力が入力部材122に作用することになるが、図37(a)に示す連結部材130の延長線上に入力中心軸線O1が位置する、入力中心軸線O1と第2支点O4とが最も離れた位置(または、正方向に対して逆方向の回転方向が図3中の矢印RD1方向の場合には、図37(b)に示す連結部材130が入力中心軸線O1を通り入力中心軸線O1と第2支点O4とが最も近接した位置)に至ると、入力部材122は連結部材130に連結されていることにより、入力部材122の揺動運動が規制されるので、それ以上逆方向の運動の伝達はロックされる。従って、出力部材121が逆回転しようとしても、無限・無段変速機構BD1、BD2よりなる第1、第2のトランスミッションTM1、TM2がロックすることにより、後進できない状態(後進不可状態)が発生する。そこで、予めクラッチ機構CL1、CL2を解放状態にしてロックを回避しておき、その状態でメインモータジェネレータMG1を逆回転させて、車両を後進させる。
(35) EV走行で後退している場合も、バッテリ8の残容量SOCが35%以下の場合は、動作パターンBのシリーズ走行に切り替えて、バッテリ8を充電しながら、メインモータジェネレータMG1を逆回転させる。
【0129】
《停止時》
次に停止時の制御動作について図36を参照して説明する。
(36) 車両停止の際のアイドリング時には、動作パターンOに切り替え、第1のエンジンENG1のみ駆動し、駆動力が被回転駆動部材11に伝わらないように、例えば、第1のトランスミッションTM1の変速比を無限大にして、サブモータジェネレータMG2により発電し、生成した電力をバッテリ8に充電する。
(37) また、アイドリングストップの場合は、全ての動力源を停止する。
【0130】
《第2実施形態》
上記第1実施形態において実行される図9のフローチャートでは、最初にエンジンENG1側の慣性力を用いて変速比を無限大に変更し、その後、エンジンEGN1側にまだ余力がある場合に、その回転による慣性力を用いてサブモータジェネレータMG2に発電させる場合について述べたが、次に述べる第2実施形態のように、変速比の変更と回生とを並行して行うようにしてもよい。
【0131】
以下、そのときの制御の流れを図38のフローチャート及び図39のタイムチャートに従って説明する。
この実施形態においても、減速時の車両の慣性力の回生はメインモータジェネレータMG1で行い、第1のエンジンENG1のクランク軸S1から第1のワンウェイ・クラッチOWC1の入力部材122までの範囲の動力伝達系の慣性力の回生は、サブモータジェネレータMG2で行う。
【0132】
図38のフローチャートは、車両減速時の第1のエンジンENG1側の駆動系統の制御内容を示すもので、最初のステップS201で減速が開始されたかどうかを確認する。減速が開始されたかどうかは、例えば、アクセルの開度やブレーキの踏み込みのON/OFF等で判断する。減速が開始されていない場合はそのまま処理を終了し、減速が開始されている場合は、ステップS202で、第1のエンジンENG1の停止指令を発生する。エンジンENG1の停止指令の例としては、エンジンENG1への燃料供給の停止指令が挙げられる。
【0133】
次にステップS203で、減速の程度が緩減速か急減速かを確認する。急減速の場合は、ステップS204で第1のクラッチ機構CL1をOFFにする。緩減速の場合は、駆動要求が次に直ぐ来る可能性が高いので、クラッチ機構CL1のOFFのステップを回避する。
【0134】
クラッチ機構CL1のON/OFFに拘わらず、次にステップS205でサブモータジェネレータMG2による回生運転を行う。また並行して、ステップS206で第1の無限・無段変速機構BD1の変速比を無限大に変更する処理を行う。このときは、エンジンENG1からワンウェイ・クラッチOWC1の入力部材122までの動力伝達要素の慣性力をアシスト力として利用することで、無限・無段変速機構BD1の変速比を無限大に変更する。
【0135】
次にステップS207で、変速比が無限大になっているかどうかをチェックする。無限大になっていない場合は、ステップS208でエンジンENG1が実際に停止しているかどうかをチェックする。変速比が無限大になっておらず、更にエンジンENG1が停止していない場合は、ステップS205〜ステップS208の処理を繰り返し行う。
【0136】
そのうち、変速比が無限大になっていない状態でエンジンENG1が停止した場合は、ステップS209に進み、サブモータジェネレータMG2による回生運転を終了し、ステップS210で、無限・無段変速機構BD1の変速比をエンジンENG1の慣性力によるアシスト無しでアクチュエータ180によって無限大に設定する。ステップS210及びステップS211の処理を変速比が無限大になるまで繰り返し、変速比が無限大になったら処理を終了する。
【0137】
一方、ステップS205〜ステップS208の処理を繰り返しているうちに変速比が無限大になったら、ステップS212〜213に進み、エンジンENG1が停止するまで、サブモータジェネレータMG2による回生運転制御を続行する。そして、エンジンENG1が実際に停止したら、ステップS214でサブモータジェネレータMG2による回生運転を終了し、処理を終了する。
【0138】
以上の流れを図39のタイムチャートで見てみると、まず、エンジン(この場合は第1のエンジンENG1)で走行している状態で減速が開始されると、車速が低下していく。また、減速の開始と同時にエンジンENG1の停止制御(燃料カット)が行われることにより、エンジン回転数が低下していく。このとき、エンジンENG1の回転数が低下することにより、ワンウェイ・クラッチOWC1の入力部材122の回転数が出力部材121の回転数を下回って、ワンウェイ・クラッチOWC1が遮断状態となり、ワンウェイ・クラッチOWC1の上流側と下流側が切り離される。
【0139】
そこで、エンジンENG1のクランク軸S1からワンウェイ・クラッチOWC1の入力部材122までの慣性力を利用して、変速機構TM1を構成する無限・無段変速機構BD1の変速比を無限大に変更する。
【0140】
同時にそれと並行して、エンジンENG1のクランク軸S1からワンウェイ・クラッチOWC1の入力部材122までの範囲の慣性力を、サブモータジェネレータMG2を発電運転すること回生し、電力の形でエネルギー回収する。
【0141】
本実施形態の無限・無段変速機構BD1においては、変速比がある有限値で成立している場合、入力軸101側の偏心ディスク104が偏心回転しており、偏心分だけ、入力軸101を支持している軸受102、103への荷重が増加する。そのため、変速比を無限大に変更することにより、軸受荷重を減らして、摩擦ロスとして捨てているエネルギーを回収することができる。また、減速時にエンジン停止指令を発してから実際にエンジンENG1が停止するまでのエンジンENG1からワンウェイ・クラッチOWC1の入力部材122までの慣性力を、無限・無段変速機構BD1において無限大の変速比に変更するためのアクチュエータ180による駆動操作のアシスト力として利用するので、変速比を変更するためのエネルギーの削減が可能になり、エンジンENG1からワンウェイ・クラッチOWC1の入力部材122までの慣性力を、無駄なく有効に利用することができる。
【0142】
また、変速比に変更するための駆動操作のアシスト力として利用すると同時に、エンジンENG1からワンウェイ・クラッチOWC1の入力部材122までの慣性力を、サブモータジェネレータMG2により電気エネルギーとして回生させるので、無駄なく有効にエンジンENG1からワンウェイ・クラッチOWC1の入力部材122までの慣性力を活かすことができる。
【0143】
特に、第1実施形態のように、変速比が無限大に変わるのを待ってから発電に移行する場合は、発電に移行するまでの時間にエンジン側の摩擦ロスにより、慣性エネルギーを余計に捨ててしまうことになるが、この第2実施形態では、変速比の変更とサブモータジェネレータMG2による発電を並行して行うことで、回収できるエネルギー量を最大化することが可能となる。
【0144】
なお、本実施形態においても、変速比を無限大に変更する場合について述べたが、必ずしも無限大にまで変更しないで、無限大に近い変速比に変更するようにすれば、ある程度の効果は期待できる。
【0145】
また、第1実施形態と同様、第1のエンジンENG1から第2のエンジンENG2に駆動源を切り替える際に、第1のエンジンENG1を停止させるような場合にも、車両減速時と同様、図40のフローチャートに示すように、エンジンENG1からワンウェイ・クラッチOWC1の入力部材122までの慣性力を有効に利用する。
【0146】
即ち、図40のフローチャートは、その場合の制御の流れを示すもので、図38のフローチャートの印※2の範囲を、ステップS401とステップS402で置き換えたものである。ステップS401ではエンジンENG1の停止要求が発生したかどうかを判断し、エンジンENG1の停止要求が発生した場合は、ステップS402でエンジン停止指令を発生する。
【0147】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0148】
例えば、上記実施形態では、車両減速時や第1のエンジンENG1から第2のエンジンENG2に駆動源を切り替える時のエンジンを停止させる際に本発明を適用した場合について述べたが、別の理由でエンジンを停止させる要求が発生した場合にも本発明は適用できる。
【0149】
また、上記実施形態では、ディファレンシャル装置10の左右両側に第1のワンウェイ・クラッチOWC1と第2のワンウェイ・クラッチOWC2をそれぞれ配置し、各ワンウェイ・クラッチOWC1、OWC2の出力部材121をそれぞれクラッチ機構CL1、CL2を介して被回転駆動部材11に接続した場合を示したが、図41に示す別の実施形態のように、ディファレンシャル装置10の片側に第1と第2の両方のワンウェイ・クラッチOWC1、OWC2を配置し、これら両方のワンウェイ・クラッチOWC1、OWC2の出力部材を連結した上で、1つのクラッチ機構CLを介して被回転駆動部材11に接続してもよい。
【0150】
また、上記実施形態では、2つのエンジンENG1,ENG2、2つのトランスミッションTM1,TM2、2つのワンウェイ・クラッチOWC1,OWC2、2つのモータジェネレータMG1,MG2、及び2つのクラッチ機構CL1,CL2を有する構成を用いて説明したが、エンジン、トランスミッション、ワンウェイ・クラッチ、クラッチ機構を1つずつ備える構成に適用可能である。
【0151】
また、メインモータジェネレータMG1は、本実施形態のようにエンジンENG1、ENG2によって駆動される駆動車輪2に回転動力を与える構成であってもよいし、別の駆動車輪2B(駆動車輪2が前輪の場合は後輪、駆動車輪2が後輪の場合は前輪)に回転動力を与える構成であってもよい。
【0152】
さらに、上記実施形態では、2つのエンジン及び2つのトランスミッションを有する構成としたが、3つ以上のエンジン及び3つ以上のトランスミッションを有する構成であってもよい。また、エンジンは、ディーゼルエンジンや水素エンジンとガソリンエンジンとを組み合わせて用いてもよい。
【符号の説明】
【0153】
1 駆動システム
2 駆動車輪
5 制御手段
8 バッテリ
11 被回転駆動部材(デフケース)
12 ドリブンギヤ
13L 左アクスルシャフト
13R 右アクスルシャフト
15 ドライブギヤ
20 シンクロ機構(クラッチ手段)
101 入力軸
104 偏心ディスク
112 変速比可変機構
120 ワンウェイ・クラッチ
121 出力部材
122 入力部材
123 ローラ(係合部材)
130 連結部材
131 一端部(リング部)
132 他端部
133 円形開口
140 軸受
180 アクチュエータ
BD1 第1の無限・無段変速機構
BD2 第2の無限・無段変速機構
CL1 クラッチ機構
CL2 クラッチ機構
ENG1 第1のエンジン
ENG2 第2のエンジン
MG1 メインモータジェネレータ
MG2 サブモータジェネレータ
OWC1 第1のワンウェイ・クラッチ
OWC2 第2のワンウェイ・クラッチ
S1 出力軸
S2 出力軸
TM1 第1のトランスミッション(第1の変速機構)
TM2 第2のトランスミッション(第2の変速機構)
O1 入力中心軸線
O2 出力中心軸線
O3 第1支点
O4 第2支点
RD1 正回転方向
RD2 逆回転方向
r1 偏心量
θ2 揺動角度
ω1 入力軸の回転角速度
ω2 出力部材の角速度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転動力を発生するエンジンと、
該エンジンの発生する回転動力を変速して出力する変速機構と、
該変速機構の出力部に設けられ、入力部材と出力部材とこれら入力部材および出力部材をロック状態または非ロック状態にする係合部材とを有し、前記変速機構からの回転動力を受ける前記入力部材の正方向の回転速度が前記出力部材の正方向の回転速度を上回ったとき、前記入力部材と出力部材がロック状態になることで、入力部材に入力された回転動力を前記出力部材に伝達するワンウェイ・クラッチと、
前記ワンウェイ・クラッチの出力部材に連結され、該出力部材に伝達された回転動力を駆動車輪に伝えると共に、該駆動車輪と一体に回転する被回転駆動部材と、
前記エンジンの停止要求が発生したときに該エンジンを停止させる制御を実行するエンジン停止制御手段と、
を備え、
前記変速機構が、
回転動力を受けることで入力中心軸線の周りを回転する入力軸と、
該入力軸の周方向に等間隔に設けられると共に、それぞれが前記入力中心軸線に対して可変の偏心量を保ちつつ該入力中心軸線の周りに前記入力軸と共に回転する複数の第1支点と、
該各第1支点をそれぞれの中心に持つと共に前記入力中心軸線の周りを回転する複数の偏心ディスクと、
前記入力中心軸線から離れた出力中心軸線の周りを回転する出力部材と、外部から回転方向の動力を受けることで前記出力中心軸線の周りを揺動する入力部材と、これら入力部材および出力部材を互いにロック状態または非ロック状態にする係合部材とを有し、前記入力部材の正方向の回転速度が前記出力部材の正方向の回転速度を上回ったとき、前記入力部材に入力された回転動力を前記出力部材に伝達し、それにより前記入力部材の揺動運動を前記出力部材の回転運動に変換するワンウェイ・クラッチと、
前記入力部材上の前記出力中心軸線から離間した位置に設けられた第2支点と、
それぞれ一端が前記各偏心ディスクの外周に前記第1支点を中心に回転自在に連結され、他端が前記ワンウェイ・クラッチの入力部材上に設けられた前記第2支点に回動自在に連結されることで、前記入力軸から前記偏心ディスクに与えられる回転運動を、前記ワンウェイ・クラッチの入力部材に対し該入力部材の揺動運動として伝える複数の連結部材と、
前記入力中心軸線に対する前記第1支点の偏心量を調節することで、前記偏心ディスクから前記ワンウェイ・クラッチの入力部材に伝えられる揺動運動の揺動角度を変更し、それにより、前記入力軸に入力される回転動力が前記偏心ディスクおよび前記連結部材を介して前記ワンウェイ・クラッチの出力部材に回転動力として伝達される際の変速比を変更する変速比可変機構と、
を具備し、且つ、前記偏心量がゼロに設定可能とされることで変速比を無限大に設定することができる四節リンク機構式の無段変速機構として構成され、
前記エンジンの出力軸が前記無段変速機構の入力軸に連結され、
前記無段変速機構の構成要素であるワンウェイ・クラッチが、前記変速機構と前記被回転駆動部材との間に設けられた前記ワンウェイ・クラッチを兼ねており、
更に、前記エンジン停止制御手段により前記エンジンを停止させる制御が実行された際に、実際にエンジンが停止するまでのエンジンからワンウェイ・クラッチの入力部材までの慣性力を、前記変速機構において無限大またはより無限大に近くなる変速比に変更するための前記変速比可変機構の駆動操作のアシスト力として利用する手段を備えていることを特徴とする自動車用駆動システム。
【請求項2】
回転動力を発生するエンジンと、
該エンジンの発生する回転動力を変速して出力する変速機構と、
該変速機構の出力部に設けられ、入力部材と出力部材とこれら入力部材および出力部材をロック状態または非ロック状態にする係合部材とを有し、前記変速機構からの回転動力を受ける前記入力部材の正方向の回転速度が前記出力部材の正方向の回転速度を上回ったとき、前記入力部材と出力部材がロック状態になることで、入力部材に入力された回転動力を前記出力部材に伝達するワンウェイ・クラッチと、
前記ワンウェイ・クラッチの出力部材に連結され、該出力部材に伝達された回転動力を駆動車輪に伝えると共に、該駆動車輪と一体に回転する被回転駆動部材と、
前記エンジンの出力軸に接続されたモータジェネレータと、
前記エンジンの停止要求が発生したときに該エンジンを停止させる制御を実行するエンジン停止制御手段と、
を備え、
前記変速機構が、
回転動力を受けることで入力中心軸線の周りを回転する入力軸と、
該入力軸の周方向に等間隔に設けられると共に、それぞれが前記入力中心軸線に対して可変の偏心量を保ちつつ該入力中心軸線の周りに前記入力軸と共に回転する複数の第1支点と、
該各第1支点をそれぞれの中心に持つと共に前記入力中心軸線の周りを回転する複数の偏心ディスクと、
前記入力中心軸線から離れた出力中心軸線の周りを回転する出力部材と、外部から回転方向の動力を受けることで前記出力中心軸線の周りを揺動する入力部材と、これら入力部材および出力部材を互いにロック状態または非ロック状態にする係合部材とを有し、前記入力部材の正方向の回転速度が前記出力部材の正方向の回転速度を上回ったとき、前記入力部材に入力された回転動力を前記出力部材に伝達し、それにより前記入力部材の揺動運動を前記出力部材の回転運動に変換するワンウェイ・クラッチと、
前記入力部材上の前記出力中心軸線から離間した位置に設けられた第2支点と、
それぞれ一端が前記各偏心ディスクの外周に前記第1支点を中心に回転自在に連結され、他端が前記ワンウェイ・クラッチの入力部材上に設けられた前記第2支点に回動自在に連結されることで、前記入力軸から前記偏心ディスクに与えられる回転運動を、前記ワンウェイ・クラッチの入力部材に対し該入力部材の揺動運動として伝える複数の連結部材と、
前記入力中心軸線に対する前記第1支点の偏心量を調節することで、前記偏心ディスクから前記ワンウェイ・クラッチの入力部材に伝えられる揺動運動の揺動角度を変更し、それにより、前記入力軸に入力される回転動力が前記偏心ディスクおよび前記連結部材を介して前記ワンウェイ・クラッチの出力部材に回転動力として伝達される際の変速比を変更する変速比可変機構と、
を具備し、且つ、前記偏心量がゼロに設定可能とされることで変速比を無限大に設定することができる四節リンク機構式の無段変速機構として構成され、
前記エンジンの出力軸が前記無段変速機構の入力軸に連結され、
前記無段変速機構の構成要素であるワンウェイ・クラッチが、前記変速機構と前記被回転駆動部材との間に設けられた前記ワンウェイ・クラッチを兼ねており、
更に、前記エンジン停止制御手段により前記エンジンを停止させる制御が実行された際に、実際にエンジンが停止するまでのエンジンからワンウェイ・クラッチの入力部材までの慣性力を、前記モータジェネレータにより電気エネルギーとして回生させるモータジェネレータ制御手段を備えていることを特徴とする自動車用駆動システム。
【請求項3】
回転動力を発生するエンジンと、
該エンジンの発生する回転動力を変速して出力する変速機構と、
該変速機構の出力部に設けられ、入力部材と出力部材とこれら入力部材および出力部材をロック状態または非ロック状態にする係合部材とを有し、前記変速機構からの回転動力を受ける前記入力部材の正方向の回転速度が前記出力部材の正方向の回転速度を上回ったとき、前記入力部材と出力部材がロック状態になることで、入力部材に入力された回転動力を前記出力部材に伝達するワンウェイ・クラッチと、
前記ワンウェイ・クラッチの出力部材に連結され、該出力部材に伝達された回転動力を駆動車輪に伝えると共に、該駆動車輪と一体に回転する被回転駆動部材と、
前記エンジンの出力軸に接続されたモータジェネレータと、
前記エンジンの停止要求が発生したときに該エンジンを停止させる制御を実行するエンジン停止制御手段と、
を備え、
前記変速機構が、
回転動力を受けることで入力中心軸線の周りを回転する入力軸と、
該入力軸の周方向に等間隔に設けられると共に、それぞれが前記入力中心軸線に対して可変の偏心量を保ちつつ該入力中心軸線の周りに前記入力軸と共に回転する複数の第1支点と、
該各第1支点をそれぞれの中心に持つと共に前記入力中心軸線の周りを回転する複数の偏心ディスクと、
前記入力中心軸線から離れた出力中心軸線の周りを回転する出力部材と、外部から回転方向の動力を受けることで前記出力中心軸線の周りを揺動する入力部材と、これら入力部材および出力部材を互いにロック状態または非ロック状態にする係合部材とを有し、前記入力部材の正方向の回転速度が前記出力部材の正方向の回転速度を上回ったとき、前記入力部材に入力された回転動力を前記出力部材に伝達し、それにより前記入力部材の揺動運動を前記出力部材の回転運動に変換するワンウェイ・クラッチと、
前記入力部材上の前記出力中心軸線から離間した位置に設けられた第2支点と、
それぞれ一端が前記各偏心ディスクの外周に前記第1支点を中心に回転自在に連結され、他端が前記ワンウェイ・クラッチの入力部材上に設けられた前記第2支点に回動自在に連結されることで、前記入力軸から前記偏心ディスクに与えられる回転運動を、前記ワンウェイ・クラッチの入力部材に対し該入力部材の揺動運動として伝える複数の連結部材と、
前記入力中心軸線に対する前記第1支点の偏心量を調節することで、前記偏心ディスクから前記ワンウェイ・クラッチの入力部材に伝えられる揺動運動の揺動角度を変更し、それにより、前記入力軸に入力される回転動力が前記偏心ディスクおよび前記連結部材を介して前記ワンウェイ・クラッチの出力部材に回転動力として伝達される際の変速比を変更する変速比可変機構と、
を具備し、且つ、前記偏心量がゼロに設定可能とされることで変速比を無限大に設定することができる四節リンク機構式の無段変速機構として構成され、
前記エンジンの出力軸が前記無段変速機構の入力軸に連結され、
前記無段変速機構の構成要素であるワンウェイ・クラッチが、前記変速機構と前記被回転駆動部材との間に設けられた前記ワンウェイ・クラッチを兼ねており、
更に、前記エンジン停止制御手段により前記エンジンを停止させる制御が実行された際に、実際にエンジンが停止するまでのエンジンからワンウェイ・クラッチの入力部材までの慣性力を、前記変速機構において無限大またはより無限大に近くなる変速比に変更するための前記変速比可変機構の駆動操作のアシスト力として利用する手段と、
前記エンジン停止制御手段により前記エンジンを停止させる制御が実行された際に、実際にエンジンが停止するまでのエンジンからワンウェイ・クラッチの入力部材までの慣性力を、前記モータジェネレータにより電気エネルギーとして回生させるモータジェネレータ制御手段と、
を備えていることを特徴とする自動車用駆動システム。
【請求項4】
前記モータジェネレータ制御手段は、前記エンジン停止制御手段により前記エンジンを停止させる制御が実行された際に、実際にエンジンが停止するまでのエンジンからワンウェイ・クラッチの入力部材までの慣性力を、前記変速比可変機構の駆動操作のアシスト力として利用した後に、前記モータジェネレータにより電気エネルギーとして回生させることを特徴とする請求項3に記載の自動車用駆動システム。
【請求項5】
前記モータジェネレータ制御手段は、前記エンジン停止制御手段により前記エンジンを停止させる制御が実行された際に、実際にエンジンが停止するまでのエンジンからワンウェイ・クラッチの入力部材までの慣性力を、前記変速比可変機構の駆動操作のアシスト力として利用するのと並行して、前記モータジェネレータにより電気エネルギーとして回生させることを特徴とする請求項3に記載の自動車用駆動システム。
【請求項6】
回転動力を発生するエンジンと、
該エンジンの発生する回転動力を変速して出力する変速機構と、
該変速機構の出力部に設けられ、入力部材と出力部材とこれら入力部材および出力部材をロック状態または非ロック状態にする係合部材とを有し、前記変速機構からの回転動力を受ける前記入力部材の正方向の回転速度が前記出力部材の正方向の回転速度を上回ったとき、前記入力部材と出力部材がロック状態になることで、入力部材に入力された回転動力を前記出力部材に伝達するワンウェイ・クラッチと、
前記ワンウェイ・クラッチの出力部材に連結され、該出力部材に伝達された回転動力を駆動車輪に伝えると共に、該駆動車輪と一体に回転する被回転駆動部材と、
前記エンジンの出力軸に接続されたモータジェネレータと、
前記エンジンの停止要求が発生したときに該エンジンを停止させる制御を実行するエンジン停止制御手段と、
を備え、
前記変速機構が、
回転動力を受けることで入力中心軸線の周りを回転する入力軸と、
該入力軸の周方向に等間隔に設けられると共に、それぞれが前記入力中心軸線に対して可変の偏心量を保ちつつ該入力中心軸線の周りに前記入力軸と共に回転する複数の第1支点と、
該各第1支点をそれぞれの中心に持つと共に前記入力中心軸線の周りを回転する複数の偏心ディスクと、
前記入力中心軸線から離れた出力中心軸線の周りを回転する出力部材と、外部から回転方向の動力を受けることで前記出力中心軸線の周りを揺動する入力部材と、これら入力部材および出力部材を互いにロック状態または非ロック状態にする係合部材とを有し、前記入力部材の正方向の回転速度が前記出力部材の正方向の回転速度を上回ったとき、前記入力部材に入力された回転動力を前記出力部材に伝達し、それにより前記入力部材の揺動運動を前記出力部材の回転運動に変換するワンウェイ・クラッチと、
前記入力部材上の前記出力中心軸線から離間した位置に設けられた第2支点と、
それぞれ一端が前記各偏心ディスクの外周に前記第1支点を中心に回転自在に連結され、他端が前記ワンウェイ・クラッチの入力部材上に設けられた前記第2支点に回動自在に連結されることで、前記入力軸から前記偏心ディスクに与えられる回転運動を、前記ワンウェイ・クラッチの入力部材に対し該入力部材の揺動運動として伝える複数の連結部材と、
前記入力中心軸線に対する前記第1支点の偏心量を調節することで、前記偏心ディスクから前記ワンウェイ・クラッチの入力部材に伝えられる揺動運動の揺動角度を変更し、それにより、前記入力軸に入力される回転動力が前記偏心ディスクおよび前記連結部材を介して前記ワンウェイ・クラッチの出力部材に回転動力として伝達される際の変速比を変更する変速比可変機構と、
を具備し、且つ、前記偏心量がゼロに設定可能とされることで変速比を無限大に設定することができる四節リンク機構式の無段変速機構として構成され、
前記エンジンの出力軸が前記無段変速機構の入力軸に連結され、
前記無段変速機構の構成要素であるワンウェイ・クラッチが、前記変速機構と前記被回転駆動部材との間に設けられた前記ワンウェイ・クラッチを兼ねている自動車用駆動システムの制御方法であって、
前記エンジン停止制御手段により前記エンジンを停止させる制御が実行された際に、実際にエンジンが停止するまでのエンジンからワンウェイ・クラッチの入力部材までの慣性力を、前記変速機構において無限大またはより無限大に近くなる変速比に変更するための前記変速比可変機構の駆動操作のアシスト力として利用すると共に、
前記実際にエンジンが停止するまでのエンジンからワンウェイ・クラッチの入力部材までの慣性力を、前記モータジェネレータにより電気エネルギーとして回生することを特徴とする自動車用駆動システムの制御方法。
【請求項7】
前記エンジン停止制御手段により前記エンジンを停止させる制御が実行された際に、実際にエンジンが停止するまでのエンジンからワンウェイ・クラッチの入力部材までの慣性力を、前記変速比可変機構の駆動操作のアシスト力として利用した後、前記エンジンからワンウェイ・クラッチの入力部材までの慣性力にまだ余裕がある場合に、前記モータジェネレータにより電気エネルギーとして回生することを特徴とする請求項6に記載の自動車用駆動システムの制御方法。
【請求項8】
前記エンジン停止制御手段により前記エンジンを停止させる制御が実行された際に、実際にエンジンが停止するまでのエンジンからワンウェイ・クラッチの入力部材までの慣性力を、前記変速比可変機構の駆動操作のアシスト力として利用するのと並行して、前記モータジェネレータにより電気エネルギーとして回生することを特徴とする請求項6に記載の自動車用駆動システムの制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【公開番号】特開2012−51539(P2012−51539A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−198021(P2010−198021)
【出願日】平成22年9月3日(2010.9.3)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】