説明

荷電粒子線を用いた検査方法および検査装置

【課題】
電子線を用いて欠陥を検出する検査装置において、電子線を用いた場合の、試料内のチップ内の回路パターンの種類や密度の差異によって生じる検査画像のコントラストの差異を原因とした検査性能の低下を防止する。
【解決手段】
試料に荷電粒子線を走査して得られる少なくとも2つの画像を比較して試料の回路パターンの欠陥を抽出する荷電粒子線を用いた検査方法または装置であって、あらかじめ定められた幅で荷電粒子線を走査しながら試料を連続的に移動し、回路パターンの種類または密度が異なる領域では、検査条件を変えて画像を取得する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微細な回路パターンを有するメモリ,LSI等の半導体装置や液晶,ホトマスク等の回路パターンの荷電粒子線を用いた検査方法および検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウエハの検査を一例として説明する。半導体装置は、半導体ウエハ上にホトマスクに形成された回路パターンをリソグラフィー処理およびエッチング処理により転写する工程を繰り返すことにより製造される。半導体装置の製造過程において、リソグラフィー処理やエッチング処理その他の良否,異物発生等は、半導体装置の歩留まりに大きく影響を及ぼす。このような異常や不良発生を早期にあるいは事前に検知するために、製造過程において半導体ウエハ上の回路パターンの検査が実施されている。
【0003】
半導体ウエハ上の回路パターンに存在する欠陥を検査する方法としては、半導体ウエハに白色光を照射し、光学画像を用いて複数のLSIの同種の回路パターンを比較する欠陥検査装置や、光学画像よりも分解能の高い荷電粒子線、例えば電子線を照射して得られる画像を用いて回路パターンを比較検査する検査装置が知られている。この電子線を用いた検査装置は走査型電子顕微鏡(SEM)の構成を応用したものであり、SEM式外観検査装置と呼ばれる。試料に荷電粒子線を照射することによって発生する二次電子を検出し、画像を形成し、参照画像または隣接する画像と比較し、差違のある画素を抽出することによって、欠陥とするものである。この装置では光学式検査装置に較べて時間当りの取得可能な画素数が少なく、高速に電子線画像を取得するために、試料台を連続的に移動しながら試料台上の半導体ウエハやマスク等の試料に電子線を連続照射し取得する構成としている(特許文献1参照)。
【0004】
試料の移動に対して略直角方向に電子線の試料面の走査が一定の幅で行われるので、走査領域は細長いストライプ状になり、このストライプ状の領域の走査を試料全体に対して複数回行うことによって、試料全体の検査画像が取得できる。電子線を試料へ照射しないためには、走査信号をOFFにする他にブランキングという技術が知られており、これは専用の偏向器で電子線を偏向させてその偏向器の下方に設けられた絞りで遮断するようにして、電子線が試料へ照射されることを防止するものである(特許文献2参照)。
【0005】
また、画像比較検査に用いる画像は、電子線で走査された全ての領域については必要ないことがあるため、ブランキング信号と画像取込の同期信号との関係を制御することで、不要な領域の画像信号を削除する技術が知られている(特許文献3参照)。
【0006】
以上のようなSEM式外観検査装置では、画像比較により違いがある画素を取り出して欠陥として抽出するため、メモリICなどの繰り返しパターンが大部分を占める回路に対しては効率的に検査ができる。しかし、システムLSIを代表とするチップ内のパターンの種類や密度が異なるような回路を検査する場合、検査条件が、ある検査領域には最適でも、別の検査領域には最適条件とはならず、検査性能の低下をきたす事がある。これは、回路パターンの種類や密度の違いが電子線画像のコントラスト特性の違いとなるためである。このような場合でも検査性能の低下のない検査装置が待たれている。
【0007】
【特許文献1】特開昭59−160948号公報(第2頁)
【特許文献2】特開2000−30648号公報(第9頁,図3)
【特許文献3】特開2002−251975号公報(第5頁,図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、かかる点にて鑑みてなされたもので、光学画像では検出困難な欠陥を電子線を用いて高精度に検出する検査装置において、電子線を用いた場合の、試料内のチップ内の回路パターンの種類や密度の差異によって生じる検査画像のコントラストの差異を原因とした検査性能の低下を防止することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の実施態様は、試料に荷電粒子線を走査して得られる少なくとも2つの画像を比較して試料の回路パターンの欠陥を抽出する荷電粒子線を用いた検査方法または装置であって、あらかじめ定められた幅で荷電粒子線を走査しながら試料を連続的に移動し、回路パターンの種類または密度が異なる領域では、検査条件を変えて画像を取得するものである。また、該検査条件はあらかじめ設定されるものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、チップ内の回路パターンの種類や密度の差異による検査画像の差異を原因とした検査性能の低下を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施例を図面を参照しながら説明する。本発明が適用される電子ビームを用いた半導体ウエハまたはマスク,レチクルのパターンを検査するSEM式外観検査装置の構成の概略を縦断面図にて図1に示す。SEM式外観検査装置1は、大きく分けて、電子光学ユニット3と光学顕微鏡ユニット4と試料室8とを備えた検査室2と、画像処理ユニット5と、制御ユニット6と、二次電子検出ユニット7とを備える。
【0012】
電子光学ユニット3は、電子銃10,電子線の引き出し電極11,コンデンサレンズ12,ブランキング偏向器13,絞り14,走査偏向器15,対物レンズ16,反射板17,E×B偏向器18から構成されており、電子銃10で発生し引き出し電極11で引き出された電子線19がコンデンサレンズ12,絞り14,対物レンズ16を通って試料9へ照射される。電子線19は細く絞られたビームであり、走査偏向器15によって試料9を走査され、試料9から反射電子や、二次電子51が発生する。二次電子51はE×B偏向器18によって軌道を曲げられて反射板17を照射し、第二の二次電子52が発生し、二次電子検出器20で検出される。一方、ブランキング偏向器13で電子線19を絞り14の開口部の外に向けることによって、試料9への電子線19の照射を防ぐことができる。
【0013】
試料室8は、試料台30,Xステージ31,Yステージ32,回転ステージ33,位置モニタ測長器34,試料高さ測定器35から構成されている。光学顕微鏡ユニット4は、検査室2の室内における電子光学ユニット3の近傍であって、互いに影響を及ぼさない程度離れた位置に設備されており、電子光学ユニット3と光学顕微鏡ユニットの距離は既知である。そして、Xステージ31またはYステージ32が電子光学ユニット3と光学顕微鏡ユニットの間の既知の距離を往復移動するようになっている。
【0014】
光学顕微鏡ユニット4は白色光源40,光学レンズ41,CCDカメラ42により構成されており、図示されていないが、後述する電子線画像の場合と同様に取得画像が画像処理ユニット5へ送られる。
【0015】
位置モニタ測長器34として、本実施例ではレーザ干渉による測長計を用いている。Xステージ31,Yステージ32,回転ステージ33の位置が実時間でモニタでき、制御ユニット6にその位置情報が送れるようになっている。また、図示していないが、Xステージ31,Yステージ32,回転ステージ33のモータの回転数等のデータも同様に、各々のドライバから制御ユニット6に送られるように構成されている。制御ユニット6はこれらのデータに基づいて電子線19が照射されている領域や位置が正確に把握できるようになっており、必要に応じて実時間で電子線19の照射位置の位置ずれを補正制御回路43を用いて補正できるようになっている。また、試料9が代わっても、試料毎に電子線を照射した領域を記憶できるようになっている。
【0016】
試料高さ測定器35には、電子線以外の測定方式である光学式測定器、例えばレーザ干渉測定器や反射光の位置で変化を測定する反射光式測定器が使用されており、Xステージ31,Yステージ32に搭載された試料9の高さを実時間で測定できるように構成されている。本実施例では、スリットを通過した細長い白色光を透明な窓越しに試料9に照射し、反射光の位置を位置検出モニタにて検出し、位置の変動から高さの変化量を算出する方式を用いた。この試料高さ測定器35の測定データに基づいて、電子線19を細く絞るための対物レンズ16の焦点距離がダイナミックに補正され、常に被検査領域に焦点が合った電子線19を照射できるようになっている。また、試料9の反りや高さ歪みを電子線照射前に予め測定してあり、そのデータをもとに対物レンズ16の検査領域毎の補正条件を設定するように構成することも可能である。
【0017】
試料9の画像を取得するためには、細く絞った電子線19を試料9に照射し、二次電子51を発生させ、これらを電子線19の走査およびXステージ31,Yステージ32の移動と同期させて検出する。
【0018】
電子線19は、電子銃10と引き出し電極11との間に電圧を印加することで電子銃10から引き出される。電子線19の加速は、電子銃10に高電圧の負の電位を印加することでなされる。これにより、電子線19はその電位に相当するエネルギーで試料台30の方向に進み、コンデンサレンズ12で収束され、さらに対物レンズ16により細く絞られて試料台30上のXステージ31,Yステージ32,回転ステージ33の上に搭載された試料9に照射される。
【0019】
ブランキング偏向器13には走査偏向信号およびブランキング信号を発生する走査信号発生器44が接続され、対物レンズ16には対物レンズ電源45が接続されている。試料9には、リターディング電源36により負の電圧を印加できるようになっている。このリターディング電源36の電圧を調節することにより一次電子線を減速し、電子銃10の電位を変えずに試料9への電子線照射エネルギーを最適な値に調節することができる。電子線19をブランキングする必要がある時には、ブランキング偏向器13により電子線19が偏向されて、電子線19が絞り14を通過しないように制御できる。
【0020】
試料9上に電子線19を照射することによって発生した二次電子51は、試料9に印加された負の電圧により加速される。試料9の上方に、E×B偏向器18が配置され、これにより加速された二次電子51は所定の方向へ偏向される。E×B偏向器18にかける電圧と磁界の強度により、偏向量を調整することができる。また、この電磁界は、試料に印加した負の電圧に連動させて可変させることができる。E×B偏向器18により偏向された二次電子51は、所定の条件で反射板17に衝突する。この反射板17は円錐形状をしており、その中央に設けられた開口部を電子線19が通過する。この反射板17に加速された二次電子51が衝突すると、反射板17からは数Vから50eVのエネルギーを持つ第二の二次電子52が発生する。
【0021】
二次電子検出器20は検査室2内の対物レンズ16の上方に配置され、第二の二次電子52を検出し、二次電子検出器20の出力信号は、検査室2の外に設置されたプリアンプ21で増幅され、AD変換器22によりデジタルデータとなり、光変換手段23から光伝送手段24によって、画像処理ユニット5の電気変換手段25へ送られる。なお、反射板17を設けない場合には、第二の二次電子52でなく二次電子51を二次電子検出器20で検出してもよい。
【0022】
高圧電源26はプリアンプ21を駆動するプリアンプ駆動電源27,AD変換器22を駆動するAD変換器駆動電源,第二の二次電子を吸引するために二次電子検出器20に加える電圧を供給する逆バイアス電源29への電源を供給する。反射板17に衝突して発生した第二の二次電子52は、逆バイアス電源29の供給による二次電子検出器20で発生する吸引電界により二次電子検出器20へ導かれる。
【0023】
二次電子検出器20は、電子線19が試料9に照射されている間に発生した二次電子51がその後加速されて反射板17に衝突して発生した第二の二次電子52を、電子線19の走査のタイミングと連動して検出するように構成されている。
【0024】
二次電子検出器20の出力信号は、検査室2の外に設置されたプリアンプ21で増幅され、AD変換器22によりデジタルデータとなる。AD変換器22は、二次電子検出器20が検出したアナログ信号をプリアンプ21によって増幅された後に直ちにデジタル信号に変換して、画像処理ユニット5に伝送するように構成されている。このように、検出したアナログ信号を検出直後にデジタル化して伝送するので、高速で且つSN比の高い信号を得ることができる。
【0025】
Xステージ31,Yステージ32上には試料ホルダを介して試料9が搭載されており、検査実行時にはXステージ31,Yステージ32を静止させて電子線19を二次元に走査する方法と、検査実行時にXステージ31,Yステージ32をY方向に連続して一定速度で移動するようにして、電子線19を試料9に対してX方向に直線的に走査する方法のいずれかを選択できる。ある特定の比較的小さい領域を検査する場合には前者の方法,比較的広い領域を検査するときは後者の方法が有効である。
【0026】
画像処理ユニット5は、第一記憶ユニット46,第二記憶ユニット47,演算ユニット48,欠陥判定ユニット49より構成され、モニタ50に接続されている。取り込まれた電子線画像あるいは光学画像はモニタ50に表示される。装置各部の動作命令および動作条件は、制御ユニット6から入出力される。制御ユニット6には、あらかじめ電子線発生時の加速電圧,電子線偏向幅,偏向速度,二次電子検出器20の信号取り込みタイミング,試料台30の移動速度等々の条件が、目的に応じて任意にあるいは選択して設定できるよう入力されている。
【0027】
制御ユニット6は、補正制御回路43を用いて、位置モニタ測長器34,試料高さ測定器35の信号から位置や高さのずれをモニタし、その結果より補正信号を生成し、電子線19が常に正しい位置に照射されるよう対物レンズ電源45に対物レンズ16の補正信号を、走査信号発生器44にブランキング偏向器13の補正信号を送る。
【0028】
前述の光伝送手段24によって伝送された試料9の画像信号は、電気変換手段25によって再び電気信号に変換された後に第一記憶ユニット46あるいは第二記憶ユニット47に記憶される。演算ユニット48は、この記憶された画像信号をもう一方の記憶部の画像信号との位置合せ、信号レベルの規格化,ノイズ信号を除去するための各種画像処理を施し、双方の画像信号を比較演算する。欠陥判定ユニット49は、演算ユニット48にて比較演算された差画像信号の絶対値を所定の閾値と比較し、所定の閾値よりも差画像信号レベルが大きい場合にその画素を欠陥候補と判定し、モニタ50にその位置や欠陥数等を表示するように信号を送る。この所定の閾値のことを検査閾値と呼ぶ。
【0029】
なお、上記の実施例では、二次電子検出器20は逆バイアス電源29により逆バイアス電圧を印加されていたが、逆バイアス電圧を印加しない構成にしても良い。また、本実施例では二次電子検出器20にPIN型半導体検出器を用いたが、他のタイプの半導体検出器、例えばショットキー型半導体検出器やアバランシェ型半導体検出器等を用いても良い。また、応答性,感度等の条件を満たせば、MCP(マイクロチャネルプレート)を検出器として用いることも可能である。
【0030】
半導体ウエハの検査は以下のように行われる。図1において、試料9が試料交換室(図示せず)へロードされ、試料ホルダ(図示せず)に搭載されて保持固定された後に、試料交換室が真空排気され、試料交換室がある程度の真空度に達したら検査室2に移載される。検査室2では、試料台30に、Xステージ31,Yステージ32,回転ステージ33を介して試料ホルダごと載せられ、保持固定される。
【0031】
試料9は、予め登録された所定の検査条件に基づいて、Xステージ31,Yステージ32のXおよびY方向の移動により光学顕微鏡ユニット4の下の所定の第一の座標に配置され、モニタ50により試料9の上に形成された回路パターンの光学顕微鏡画像が観察される。そして、位置回転補正のために予め記憶された同等の回路パタ−ン画像と比較され、第一の座標の位置補正値が算出される。次に、第一の座標から一定距離だけ離れ、第一の座標と同等の回路パタ−ンが存在する第二の座標に移動し、同様に、光学顕微鏡画像が観察され、位置回転補正のために記憶された回路パターン画像と比較され、第二の座標の位置補正値および第一の座標に対する回転ずれ量が算出される。この算出された回転ずれ量分だけ回転ステージ33が回転して補正する。
【0032】
なお、本実施例では回転ステージ33の回転により回転ずれ量を補正しているが、回転ステージ33を設けず、算出された回転ずれ量に基づいて、電子線の走査偏向位置を補正する方法でも回転ずれ量を補正できる。
【0033】
次に、今後の位置補正のために、第一の座標,光学顕微鏡画像観察による第一の回路パターンの位置ずれ量,第二の座標,光学顕微鏡画像観察による第二の回路パターンの位置ずれ量が記憶され、制御ユニット6に送られる。
【0034】
次に、光学顕微鏡ユニット4の光学顕微鏡によって試料9の上に形成された回路パターンが観察され、回路パターンを持ったチップの位置や2つのチップ間の距離、あるいは繰り返しパターンを備えたメモリセル等の繰り返しパターンの繰り返しピッチ等が予め測定され、制御ユニット6に測定値が入力される。また、検査されるチップ、および、そのチップ内の被検査領域が指定され、制御ユニット6に入力される。光学顕微鏡の画像は、比較的低い倍率によって観察が可能であり、また、試料9の表面が、例えば、シリコン酸化膜等により覆われている場合には、下地まで透過して観察可能であるので、チップの配列やチップ内の回路パターンのレイアウトを簡便に観察することができ、被検査領域が容易に設定できる。
【0035】
以上のようにして光学顕微鏡ユニット4による所定の補正作業や検査領域設定等の準備作業が完了すると、Xステージ31およびYステージ32の移動により、試料9が電子光学ユニット3の下に移動される。試料9が電子光学ユニット3の下に配置されると、上記光学顕微鏡ユニット4で実施された補正作業や検査領域の設定と同様の作業を電子線画像により実施する。このときの電子線画像の取得は、以下の方法でなされる。
【0036】
上記光学顕微鏡画像による位置合せで記憶され補正された座標値に基づき、光学顕微鏡ユニット4で観察されたものと同じ回路パターンに、電子線19が走査偏向器15によりX,Y方向に二次元的に走査される。この電子線の二次元走査により、被観察部位から二次電子51が発生し、反射板17で発生した第二の二次電子52を二次電子検出器20で検出して電子線画像が取得される。既に光学顕微鏡画像により簡便な検査位置確認や位置合せ、および位置調整が実施され、且つ回転補正も予め実施されているため、大きな調整は不要である。電子線画像では光学画像に比べ分解能が高く、高倍率で高精度に位置合せや位置補正,回転補正を実施することができる。
【0037】
二次電子検出器20については、従来のSEMでは、シンチレータ(アルミニウム蒸着された蛍光体)とライトガイドと光電子増倍管による構成が用いられている。このタイプの検出装置は、蛍光体による発光を検出するため、周波数応答性が悪く、高速に電子線画像形成するには不適切である。この問題を解決するために、高周波の二次電子信号を検出する検出装置として半導体検出器を用いている。
【0038】
また、二次電子検出器20を用いて二次電子を検出し、検出された画像信号を検出直後にデジタル化してから光伝送する方法により、各種変換,伝送において発生するノイズの影響を小さくし、SN比の高い画像信号データを得ることができる。検出した信号から電子線画像を形成する過程においては、画像処理ユニット5が制御ユニット6から指定された電子線照射位置の所望の画素に、対応した時間毎の検出信号を、その信号レベルに応じた明るさ階調値として第一記憶ユニット46または第二記憶ユニット47に逐次記憶させる。電子線照射位置と、検出時間で対応つけられた二次電子の量が対応されることにより、試料9の回路パターンの電子線画像が二次元的に形成される。なお、本実施例では試料9から発生する二次電子を検出する検査方法及び装置について記載してきたが、試料9からは二次電子と同時に後方散乱電子や反射電子が発生する。二次電子とともにこれらの二次荷電粒子についても同様に電子線画像信号として検出することが可能である。
【0039】
画像処理ユニット5へ画像信号が転送されると、第一の領域の電子線画像が第一記憶ユニット46に記憶される。演算ユニット48は、この記憶された画像信号をもう一方の第二記憶ユニット47に記憶されている画像信号との位置合せ,信号レベルの規格化,ノイズ信号を除去するための各種画像処理を施す。続いて、第二の領域の電子線画像が第二記憶ユニット47に記憶され、同様の演算処理を施されながら、第二の領域の電子線画像と第一の領域の電子線画像の画像信号を比較演算する。欠陥判定ユニット49は、演算ユニット48にて比較演算された差画像信号の絶対値を所定の閾値(検査閾値)と比較し、所定の閾値(検査閾値)よりも差画像信号レベルが大きい場合にその画素を欠陥候補と判定する。モニタ50はその位置や欠陥数等を表示する。次いで、第三の領域の電子線画像が第一記憶ユニット46に記憶され、同様の演算を施されながら先に第二記憶ユニット47に記憶された第二の領域の電子線画像と比較演算され、同様に欠陥判定される。以降、この動作が繰り返されることにより、すべての検査領域について画像処理が実行されていく。
【0040】
前述の検査方法により、高精度で良質な電子線画像を取得し比較検査することにより、微細な回路パターン上に発生した微小な欠陥を、実用性に則した検査時間で検出することができる。また、電子線を用いて画像を取得することにより、光学式パターン検査方法では光が透過してしまい検査できなかったシリコン酸化膜やレジスト膜で形成されたパターンやこれらの材料の異物,欠陥が検査できるようになる。さらに、回路パターンを形成している材料が絶縁物の場合にも安定して検査を実施することができる。
【0041】
なお、電子線19を試料9に照射すると、その箇所が帯電する。検査の際に対象物がその帯電の影響を受けるのを避けるために、上記位置回転補正あるいは検査領域設定等の検査前準備作業において電子線19を照射する回路パターンは、予め被検査領域外の回路パターンを選択するか、あるいは被検査チップ以外のチップにおける同等の回路パターンを制御ユニット6で自動的に選択できるようにする。これにより、被検査領域が電子線19で照射されることによる影響が検査画像に及ぶことは無くなる。なお、大電流電子線による走査は1回のみでも数回の繰り返しでも良い。
【0042】
上記電子線の試料への照射条件としては、単位面積あたりの電子線の照射量,電子線の電流値,電子線の走査速度,試料に照射する電子線の照射エネルギーが挙げられる。これらのパラメータは、回路パターンの形状や材料毎にその最適値を求める必要がある。そのためには、試料に照射する電子線の照射エネルギーを自由に調整制御する必要がある。本実施例では、試料9にリターディング電源36により電子線19の一次電子を減速するための負の電圧を印加し、この電圧を調整することにより電子線19の照射エネルギーを適宜調整できるように構成している。そして、電子銃10に印加する加速電圧を変化させる場合には電子線19の軸変化が発生して各種調整が必要になるが、本実施例では電子銃10に印加する加速電圧を変化させずに電子線19の照射エネルギーを調整することができる。
【0043】
電子線画像の明るさ(コントラスト)は被検査回路パターンの最表面材料やパターン形状,段差等に依存する。また、回路パターンを構成する各材料の二次電子発生効率は帯電の状態により変化する。従って、試料の帯電の状態を変化させることにより、検査に適したコントラストの画像を得ることができる。しかし、電子線の走査速度や同一箇所への照射回数等を変えると、検査時間が増大する。あるいは、電子線を細く絞り電子線電流を減らすと、画像のS/N比が低下し、欠陥検出が困難となる。そこで、被検査回路パターンの材料や形状,段差,検出すべき欠陥の種類に応じて電子線の照射条件を変えることにより、検査時間や電子線画像のS/N比に影響を与えずに試料表面の帯電状態を変化させ、欠陥検出に適切なコントラストの画像を取得することができる。
【0044】
被検査ウエハの回路パターンが、パターン形状の良く似た領域に分割できる場合、各領域毎に適切な検査条件を設定することにより、S/N比の影響などによって真の欠陥でない位置に欠陥があるように表示される虚報を低減し、高効率に欠陥を検出することが可能である。また、領域毎に不良率が異なることが既知な場合には、領域内の実際に検査する領域の割合、すなわちサンプリング率を適切に設定することで、検査時間を短縮した高効率検査が実施可能となる。
【0045】
以下、被検査回路パターンを複数の検査領域に分割し、各領域毎に適切な検査条件を設定する場合の一実施例を述べる。図2は、半導体ウエハの検査工程、すなわち検査レシピの作成手順を示すフローチャート、図3は、モニタ50に表示される画像の一例を示す画面図である。
【0046】
検査レシピの作成は、モニタ50のGUI画面上で行われる。図3は、このときのGUI画面の一例を示したものである。画面上方の工程切替部53に示されるように、GUI画面は検査工程毎にタブ形式で構成され、任意の工程のタブを指定することでその工程に応じた画面が表示され、検査工程毎に情報が表示されるとともに条件が設定できる。図3は、検査条件を設定する画面であり、ウエハマップ59と、画像表示部56の他、各種設定部が表示されている。マップ切替部54でウエハマップ59とダイマップ(図4参照)とが切替えられる。画像表示部56には光学式顕微鏡画像(以下、光顕像という。)もしくは電子線画像が表示され、オペレータはこれを確認しながらレシピ作成を行う。
【0047】
図4は、画像に表示される検査領域の一例を示す説明図であり、ダイマップ60とはウエハマップ59の上のひとつのチップ、すなわちダイを拡大表示したものである。ひとつのダイには多くの回路パターンが形成されているが、機能別にパターンは規則性を有しており、この規則性に応じてダイの中の検査領域を分割する。例えば、図の例では、ダイを検査領域A61と検査領域B62と検査領域C63に分割する。これら以外の領域は非検査領域である。
【0048】
図3のウエハマップ59とダイマップ60の切替え、光顕像と電子線画像の切替えは、検査工程毎に自動で行われるが、マップ切替部54や、画像切替部55のボタンを指示することで、任意に選択することができる。検査領域,照射条件,検査率等の詳細なデータ入力は各工程で設定すべき項目が諸設定部A57または諸設定部B58に示され、ユーザが値等を設定する。
【0049】
図3に示す画面で示される工程の検査条件作成で入力が必要な項目の入力が完了すると、次の工程に表示が切替わる。先に入力した工程のタブを指定して項目を入力し直したり、項目がデフォールト入力されていて新たな入力の必要のない工程をとばして次の工程のタブを指定する等、工程のタブは任意に指定できる。
【0050】
図2を用いて、レシピ作成の手順を説明する。
【0051】
(1)ウエハロード(ステップ201):この工程では、試料ホルダに試料が載置され、試料ホルダが試料室内のXステージ,Yステージあるいは回転ステージに載置される。
【0052】
(2)ビーム校正(ステップ202):試料台30に取り付けられている標準試料を用い、電子線画像が鮮明に観察できるように、焦点合わせと非点収差補正のための調整を行う。この時の調整操作は手動でも、自動調整機能を用いても可能である。
【0053】
(3)コントラスト/照射条件設定(ステップ203):試料に電子線を照射し、検査に必要な画質が得られるように、電子線の加速電圧,電子線電流,信号取得の際の信号加算数,画素寸法などを設定する。照射領域を、被検査領域と同じパターンの非検査領域とすれば、被検査領域への電子線照射によるダメージを防ぐことができる。画像表示部に表示される、設定された電子線の照射条件で得られた電子線画像で、所望のパターンが鮮明に観察できるように、光量,焦点合わせ,非点収差補正のための調整を行う。この時の調整は自動調整機能の他、手動調整で行うことができる。
【0054】
(4)ダイマトリクス(ステップ204):載置された試料に形成されているダイの配列を入力する。例えば、図3に示す諸設定部A57に、リソグラフィー工程におけるひとつのショットのピッチの値,ショット内のダイのピッチの値,ショットの配列数,ショット内のダイの数等のレイアウト情報を設定する指示ボタンが表示される。指示入力すると、その情報がダイマップ60に表示され、視覚的に確認することができる。
【0055】
(5)アライメント(ステップ205):試料はウエハロード時に回転やずれを生じる。これらは画像生成時に走査信号発生器にて補正可能であり、試料上の適当な位置決めマークを検出し、ウエハのx方向とy方向のずれ、ならびに回転を算出する。
【0056】
(6)セル情報(ステップ206):ダイ内のセル領域とは、図1に示した第一記憶ユニット46または第二記憶ユニット47に記憶される画像の大きさの単位であって、セル毎に比較検査が行われる。したがって、ひとつのセル内の回路パターンと他のセル内の回路パターンとは相似である必要がある。ひとつのセルを指定しておけば、検査実行時には、他のセルは画像認識アルゴリズムにより自動的に見つけ出される。本ステップでは、セル領域を、光顕像、または電子線像で確認しながら設定する。また、セル比較検査する際の画像取得の距離、すなわちセルピッチの設定を行う。セル領域は、(a)ウエハマップ59上で指示した位置の光顕像あるいは電子線像を取得する、(b)ダイマップ60上、および光顕像あるいは電子線像上でセル領域の位置を確認する、(c)ダイマップ60上にセル領域を指定する、これらのステップを繰り返して設定される。なお、既に別の検査条件で設定された領域がある場合は、その領域が予めダイマップ60上、あるいは電子線像上に描画され、重複の設定を避けるようになっている。
【0057】
(7)ダイ情報(ステップ207):ダイ領域内の検査,非検査領域の設定を、光顕像、または電子線像上で指定しながら実施する。ダイ領域は、(a)ウエハマップ59上で指示した位置の光顕像あるいは電子線像を取得する、(b)ダイマップ60上もしくは光顕像あるいは電子線像上でダイ領域内の検査領域或いは非検査領域を指定する、これらのステップを繰り返して設定される。なお、既に別の検査条件で設定された領域がある場合は、その領域が予めダイマップ60上、あるいは電子線像上に描画され、重複の設定を避けるようになっている。
【0058】
(8)領域設定(ステップ208):ウエハマップ59上のダイのうち検査対象とするダイの直接指定,範囲指定、あるいはサンプリング率による指定,画像取得の方向の指定等の設定を行う。
【0059】
(9)キャリブレーション(ステップ209):ウエハマップ59で複数のダイ、またはダイマップで複数の箇所の指定により、電子線画像を取得する。それらの画像の明るさが検査に適切な明るさになるように信号のレベルのキャリブレーションを行う。
【0060】
(10)試し検査/条件設定(ステップ210):試料上の指定されたダイに電子線を照射して1ストライプ分の画像をリファレンスとしてメモリに取込み、画像処理用感度条件パラメータを設定し、取込んだ画像を用いてメモリ上で仮想的に検査を実施する。メモリ上での仮想検査は、同一箇所を繰り返し撮像することによる試料の汚染(コンタミネーション)を回避するために有効である。
【0061】
(11)条件OK?(ステップ211):ステップ210の仮想検査と感度条件パラメータの設定を繰り返し、その結果から検査に最適なパラメータを決定する。
【0062】
(12)別条件検査領域設定?(ステップ212):上記(3)から(11)を行うことにより、一つの検査工程の条件が設定される。この一連の検査工程は検査の手順とその方法を示すのでレシピと呼ぶ。別の検査条件で別の領域の検査を実施する場合には、別領域・照射条件を設定するメニューに移行し(ステップ214)、上記(3)から(11)のレシピ作成を繰り返し実施する。このとき、以前作成した条件の項目は自動的に表示されるので、内容が同じ項目は入力を省略することができる。このようにしてひとつの試料に対してレシピが複数作成される場合は、マルチレシピとよぶ。
【0063】
(13)全条件最終試し検査(ステップ213):以上の手順によりレシピの作成が終わったら、レシピの内容を確認し、最終的な試し検査を実施する。確認が不要なレシピの場合は確認を省略することができる。以上の手順により各領域毎に適切な検査条件を設定することができる。
【0064】
図4に示したダイマップ60に含まれる複数の異なる検査領域について、異なる検査条件でマルチレシピを作成した場合の、検査の手順の例を次に説明する。図5は、図4に示したダイマップ内の各検査領域についての検査の手順を示す説明図である。
【0065】
初めに、図5(a)に示す検査領域A61について、検査領域A61の比較検査用に作成されたレシピに従って、試料全体の比較検査を実施する。電子線による走査は図中、一点鎖線で示す幅xで行われ、ステージの移動によって、図では縦方向に細長いストライプ状の領域が電子線で走査される。検査領域A61以外の領域については、電子線のブランキングによって電子線が照射されないようにするか、あるいは、電子線の走査をしない。したがって、試料全体としては、検査領域A61が含まれる部分だけが縞状に電子線で走査されることになる。これにより、チャージアップによるコントラストむらなどの像質の低下を避けることができる。次に、検査領域A61の比較検査が終了したら、図5(b)に示す様に、検査領域B62の比較検査を、検査領域B62の比較検査用に作成されたレシピに従って、試料全体について実施する。次に、検査領域B62の比較検査が終了したら、図5(c)に示す様に、検査領域C63の比較検査を、検査領域C63の比較検査用に作成されたレシピに従って、試料全体について実施する。
【0066】
このように、一種類の検査領域の比較検査を試料全体について実施した後に、レシピを別の検査領域用に作成されたレシピに変更し、その別の検査領域の比較検査を試料全体について実施する。このようにすると、はじめに一番目のダイについて検査領域A61,検査領域B62,検査領域C63の画像を取得し、次に二番目のダイについて同様に各検査領域の画像を取得し、それぞれの画像の比較を行い、これを試料全体について実施する場合に比べて、レシピの切替えが少なくなって、試料全体として検査時間を少なくでき、効率的な検査が行える。
【0067】
検査中は図3や図4に示した画面やウエハマップ59上に、随時検出した欠陥情報やそのときのレシピ,検査条件を表示することが可能である。また、全てのレシピによる検査が終了したら、ウエハマップ59上に各レシピ毎の検査結果やそのレシピの内容、あるいは全てのレシピの検査結果やそのレシピの内容を、画面上または同一のウエハマップ59上に表示することができる。
【0068】
通常、ステージを移動させながら電子線の走査幅を一定として走査する場合、走査される領域は矩形となる。図4に示す様に、検査領域C63が矩形でなく、検査領域C63の外側の領域が検査領域に指定されていない場合には、その外側の領域を含む矩形領域を電子線で走査し、その外側の領域を検査画像として取得しなければよい。しかし、検査領域C63の外側に検査領域B62があり、両方がひとつの矩形に含まれてしまう場合には、次の問題がある。図5(b)に示すように、検査領域B62が含まれるように電子線の走査幅yを決めて一点鎖線の範囲内すべてを走査し、検査領域B62だけを画像比較する場合、図5(c)に示す検査領域C63のときの電子線の走査幅z内に、検査領域B62が含まれてしまい、走査幅yの領域が電子線で二度照射されてしまうことになる。すると、前述したように、その領域はチャージアップによるコントラストむらを生じるため、検査に悪影響が生じる。これを避けるために、ウエハの同一箇所には一度だけしか照射しない様に制御することが重要となる。また、複数回走査し、画像積算によるノイズ低減効果を得る場合などは、全面に渡り同一回数走査するように制御することが望ましい。
【0069】
図6は、検査領域が単純な矩形ではない場合の電子線の照射の方法を示す説明図であり、図7は、電子線の走査信号とブランキング信号のタイムチャートである。図7(a)に示すように、電子線の走査は紙面に対して左から右の方向へ行われる。ステージの移動は紙面に対して上から下の方向へ行われるので、検査領域に対しては、電子線の走査は紙面に対して下から上の方向へ行われる。なお、図では理解し易いように、2つの電子線走査軌跡64の間を直線的にブランキング軌跡65で結んでいるが、実際の電子線の走査を制御する走査信号は、走査信号X成分のタイムチャートに示されるように、電子線の帰線期間は走査信号をOFFとしている。
【0070】
図6(a)に示すような検査領域C63に電子線を走査する場合、複数の方法が考えられる。第一の方法は、図6(b)、及び図7(b)に示すように、電子線を照射しない領域との境界を偏向中心66に合せると、この偏向中心66を走査信号の目安として、電子線のブランキングを実施するものである。図では紙面の下方から順に電子線走査軌跡64で示される左から右への走査の偏向制御と電子線を振り戻す偏向制御、すなわち帰線制御のときのブランキングとが繰り返され、その途中の領域で、ブランキング軌跡65の(2)(3)(4)で示されるように、電子線をブランキングして電子線が照射されないようにする。図7(b)のタイムチャートでは、走査信号X成分は電子線の左から右への走査のときに増加し、走査の右端でOFFになり、これを繰り返す。一方、ブランキング信号は電子線の走査とは無関係にON,OFFできるので、図のようにブランキング信号がOFFの間だけ太線で示すように電子線が試料へ照射され、ONの間は細線で示すように、電子線は試料へ照射されない。図1に示した制御ユニット6は、位置モニタ測長器34からのステージの位置情報と設定されているレシピの領域とを照合し、補正制御回路43でブランキング偏向器13への印加信号を生成する。この演算はリアルタイムに行っても、事前に演算しておいても良い。ステージ速度と走査速度は等速制御でよく、後述の例のように速度を変える必要はない。
【0071】
第二の方法は、図6(c)、及び図7(c)に示すように、電子線走査を検査領域C63内で行う制御をするものである。図1に示した制御ユニット6は、位置モニタ測長器34からのステージの位置情報と設定されているレシピの領域とを照合し、走査の開始位置と終了位置とを演算し、補正制御回路43で走査偏向器15とブランキング偏向器13への印加信号を生成し、検査領域外に電子線を照射しないようにする。図7(c)の走査信号X成分は、電子線走査軌跡64の(2)(3)(4)の間は、中心よりも下方に細線が引かれていないように、偏向中心66よりも左側には電子線が走査されないような信号とする。そして、その偏向のタイミングに合せるようにブランキング信号を与える。ステージの移動速度が一定の場合、ブランキングに要する時間を長くして、電子線の走査の出発点の位置を調節する必要がある。あるいは、走査幅が狭い領域のブランキング時間を一定とし、ステージ速度と電子線の走査速度とを早くするように調整すると、検査領域の面積が小さくなることに比例して検査時間が短縮できる。
【0072】
第三の方法は、図6(d)、及び図7(d)に示すように、電子線の走査幅を偏向中心66で2つに分け、それぞれを別々のストライプとして走査するものである。電子線走査軌跡64の(2)(3)(4)の間は、走査信号X成分はあるものの、ブランキング信号がONのため、電子線が試料へ照射されない。この方法はブランキングの制御だけで実施でき、電子線の走査偏向速度や帰線制御のブランキング時間の変更を伴わないので、制御が簡単である。しかし、走査の縞状領域が分割したことによって増えるので、試料全体として検査時間が増えるという欠点がある。
【0073】
第四の方法は、図6(e)、及び図7(e)に示すように、走査幅を分割するとともに、検査領域外は一度の帰線制御時のブランキングで済むように走査信号X成分を変化させるか、あるいはステージの移動速度を上げるものである。ステージ移動速度が一定の場合には、図7(e)に示すように、走査信号X成分のOFFの時間を長くする。ステージの移動速度を上げる場合はステージ移動速度の制御が必要であるが、電子線の走査速度と帰線期間のOFFの時間は変化させる必要がなく、検査時間が短縮できる。しかし、ステージ移動の速度変化があることから、予め加速時と減速時に発生するステージの振動を見込んでおく必要がある。
【0074】
以上のように、電子線の走査のストライプ幅内に電子線を照射させない領域がある場合には、上述のレシピの変更で対応可能であり、これらのレシピを必要に応じて選択することによって、検査時間の短縮が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】荷電粒子線を用いた検査装置の構成を示す機能ブロック図。
【図2】レシピ作成手順を示すフローチャート。
【図3】モニタに表示される画像の一例を示す画面図。
【図4】画像に表示される検査領域の一例を示す説明図。
【図5】ダイマップ内の各検査領域についての検査の手順を示す説明図。
【図6】検査領域が単純な矩形ではない場合の電子線の照射の方法を示す説明図。
【図7】電子線の走査信号とブランキング信号のタイムチャート。
【符号の説明】
【0076】
1…SEM式外観検査装置、2…検査室、3…電子光学ユニット、4…光学顕微鏡ユニット、5…画像処理ユニット、6…制御ユニット、7…二次電子検出ユニット、8…試料室、9…試料、13…ブランキング偏向器、14…絞り、15…走査偏向器、19…電子線、20…二次電子検出器、21…プリアンプ、22…AD変換器、23…光変換手段、24…光伝送手段、25…電気変換手段、30…試料台、31…Xステージ、32…Yステージ、33…回転ステージ、34…位置モニタ測長器、42…CCDカメラ、43…補正制御回路、44…走査信号発生器、46…第一記憶ユニット、47…第二記憶ユニット、48…演算ユニット、49…欠陥判定ユニット、50…モニタ、51…二次電子、52…第二の二次電子、53…工程切替部、54…マップ切替部、55…画像切替部、56…画像表示部、57…諸設定部A、58…諸設定部B、59…ウエハマップ、60…ダイマップ、61…検査領域A、62…検査領域B、63…検査領域C、64…電子線走査軌跡
、65…ブランキング軌跡、66…偏向中心。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料に荷電粒子線を走査して得られる少なくとも2つの画像を比較して前記試料の回路パターンの欠陥を抽出する荷電粒子線を用いた検査方法において、あらかじめ定められた幅で前記荷電粒子線を走査しながら前記試料を連続的に移動し、前記回路パターンの種類または密度が異なる領域では、前記荷電粒子線の走査の幅を当該領域の大きさに応じて変更することを特徴とする荷電粒子線を用いた検査方法。
【請求項2】
試料に荷電粒子線を走査して得られる少なくとも2つの画像を比較して前記試料の回路パターンの欠陥を抽出する荷電粒子線を用いた検査装置において、あらかじめ定められた幅で前記荷電粒子線を走査する走査偏向器と、前記荷電粒子線の走査中に前記試料を連続的に移動する試料台と、前記回路パターンの種類または密度が異なる領域では、前記荷電粒子線の走査の幅を当該領域の大きさに応じて変更する検査条件設定部とを備えたことを特徴とする荷電粒子線を用いた検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−16356(P2009−16356A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−204972(P2008−204972)
【出願日】平成20年8月8日(2008.8.8)
【分割の表示】特願2004−15050(P2004−15050)の分割
【原出願日】平成16年1月23日(2004.1.23)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】