説明

薄膜の形成方法、成膜装置及び記憶媒体

【課題】原料として有機酸銅を用いることにより、微細な凹部を埋め込みつつ銅の薄膜を膜厚の制御性良く、しかも高い成膜レートで堆積させることができる成膜装置を提供する。
【解決手段】被処理体Wの表面に薄膜を形成する成膜装置20において、排気可能になされた処理容器22と、被処理体を載置するための載置台24と、被処理体を加熱するための加熱手段26と、処理容器に設けられて、処理容器内へガスを導入するためのガス導入部56と、ガス導入部へ気体の有機酸銅を供給する原料ガス供給手段68と、装置全体の動作を制御する装置制御部100とを備え、被処理体の表面に薄膜として銅膜を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエハ等の被処理体の表面に薄膜として銅膜を形成するための薄膜の形成方法、成膜装置及びこの制御用のプログラムを記憶する記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、半導体デバイスを製造するには、半導体ウエハ等の被処理体に成膜処理やパターンエッチング処理等の各種の処理を繰り返し行って所望のデバイスを製造するが、半導体デバイスの更なる高集積化及び高微細化の要請より、線幅やホール径が益々微細化されている。そして、配線材料や埋め込み材料としては、各種寸法の微細化により、より電気抵抗を小さくする必要から電気抵抗が非常に小さくて且つ安価である銅を用いる傾向にある(特許文献1、2、3)。
【0003】
そして、このような銅を薄膜として堆積させるには、一般的には金属ターゲットとして銅を用いたプラズマスパッタリング処理によりシード膜を形成し、このシード膜に電気を通してメッキ処理を行うことにより銅の薄膜を形成することが行われている。
このメッキ処理による銅の薄膜の形成方法では、更なる微細化の傾向により溝幅や穴径が65nm、45nm、或いは32nmと、順次狭くなるにつれて、メッキ液が溝内や穴内へ入り難くなって、メッキ処理自体ができなくなる恐れがあった。そこで、最近にあっては、被覆性に優れ、また細い溝内や穴(ホール)内を埋め込む能力に優れていることから、上記銅の薄膜をCVD(Chemical Vapor Deposition)法により、成膜する方法も提案されている(特許文献4)。
【0004】
このCVD法による銅膜の成法においては、例えばCu(I)hfacTMVS等のような常温で液体となる錯体の原料を用い、これをバブリング等することによって気化させ、CVD法により、半導体ウエハ上に銅の薄膜を堆積させるようになっている。
【0005】
【特許文献1】特開2000−77365号公報
【特許文献2】特開平10−74760号公報
【特許文献3】特開平10−214836号公報
【特許文献4】特開2001−53030号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述したような銅の錯体原料は、非常に反応性に富み、熱的安定性が非常に低いことから、容易に分解してしまい、このため処理容器内で銅の凝集が起こり易く、銅膜を均一な厚さで制御性良く形成するのが困難であった。また、上記した理由により、錯体の原料ガスの搬送経路を理論的な熱分解温度以上に加熱維持しているにもかかわらず、搬送途中において熱分解してしまう、といった問題もあった。
【0007】
このため、プロセス温度をできるだけ低くして、容易に分解しないように制御することも行われているが、この場合には、成膜速度が非常に小さくなるのみならず、銅膜中に炭素成分が多く含まれることになり、結果的に銅膜の抵抗が大きくなるなどして物性が低下する、といった問題があった。
【0008】
本発明は、以上のような問題点に着目し、これを有効に解決すべく創案されたものである。本発明の目的は、原料として有機酸銅を用いることにより、微細な凹部を埋め込みつつ銅の薄膜を膜厚の制御性良く、しかも高い成膜レートで堆積させることができる薄膜の形成方法、成膜装置及び記憶媒体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、銅膜の成膜方法について鋭意研究した結果、原料として酢酸銅に代表される有機酸銅を用いることにより、CVD法により銅膜を安定して制御性良く形成することができる、という知見を得ることにより本発明に至ったものである。
請求項1に係る発明は、被処理体の表面に薄膜を形成する方法において、有機酸銅を温度T1に加熱して気体にし、該気体を前記温度T1よりも高い温度T2に維持した前記被処理体上に供給し、前記被処理体の表面に前記薄膜として銅膜を形成するようにした銅膜形成工程を有することを特徴とする薄膜の形成方法である。
このように、原料として有機酸銅を用いることにより、微細な凹部を埋め込みつつ銅の薄膜を膜厚の制御性良く、しかも高い成膜レートで堆積させることができる。
【0010】
この場合、例えば請求項2に記載されたように、前記温度T1は、前記有機酸銅が分解しない温度である。
また例えば請求項3に記載されたように、前記温度T1は、300℃以下である。
また例えば請求項4に記載されたように、前記被処理体の表面には、予め絶縁層が形成されていると共に、該絶縁層には凹部が形成されている。
また例えば請求項5に記載されたように、前記凹部内の表面を含む前記絶縁層の表面には、予めバリヤ層が形成されている。
【0011】
また例えば請求項6に記載されたように、前記銅膜形成工程の後に、前記凹部に形成した銅膜以外の銅膜を削り取ることによって前記バリヤ層の表面を露出させる銅膜除去工程を行う。
また例えば請求項7に記載されたように、前記銅膜除去工程は、前記被処理体を所定の温度T3に維持した状態で有機酸を用いたエッチング処理を行う。
このように、有機酸を用いたエッチング処理を行う場合には、同一の処理容器内で銅膜の形成処理からエッチング処理を連続的に行うことができる。
また例えば請求項8に記載されたように、前記各温度T2、T3の関係は、T2≦T3であり、それぞれ400℃以下である。
【0012】
また例えば請求項9に記載されたように、前記銅膜除去工程では、前記エッチング処理の前処理として前記銅膜の表面を粗化するプラズマスパッタ処理を行う。
また例えば請求項10に記載されたように、前記プラズマスパッタ処理では、前記銅膜の表面を酸化する酸化ガスが添加される。
また例えば請求項11に記載されたように、前記銅膜除去工程は、化学機械研磨処理(CMP:Chemical Mechanical Polishing)を行う。
また例えば請求項12に記載されたように、前記銅膜除去工程の後に、前記被処理体の表面に露出している前記バリヤ層を除去するバリヤ層除去工程を行う。
【0013】
請求項13に係る発明によれば、被処理体の表面に薄膜を形成する方法において、前記被処理体の表面に絶縁層を形成する絶縁層形成工程と、前記絶縁層に凹部を形成する凹部形成工程と、前記凹部内の表面を含む前記絶縁層の表面にバリヤ層を形成するバリヤ層形成工程と、前記凹部内の表面に形成されたバリヤ層以外の他のバリヤ層を除去して下層の絶縁層を露出させるバリヤ層除去工程と、前記被処理体の表面に加熱用の光を照射して前記露出している絶縁層に対して前記残留したバリヤ層を選択的に加熱して所定の温度T2に維持すると共に、有機酸銅を温度T1に加熱して気体にし、該気体を前記被処理体上に供給して前記凹部内を埋め込みつつ前記バリヤ層の表面に前記薄膜として銅膜を形成する銅膜形成工程と、を備えたことを特徴とする薄膜の形成方法である。
【0014】
この場合、例えば請求項14に記載されたように、前記温度T1は、前記有機酸銅が分解しない温度である。
また例えば請求項15に記載されたように、前記温度T1は、300℃以下である。
また例えば請求項16に記載されたように、前記銅膜形成工程の後に、余剰な銅膜を除去する銅膜除去工程を行う。
また例えば請求項17に記載されたように、前記銅膜除去工程は、前記被処理体を所定の温度T3に維持して有機酸を用いたエッチング処理を行う。
【0015】
また例えば請求項18に記載されたように、前記各温度T2、T3の関係は、T2≦T3であり、それぞれ400℃以下である。
また例えば請求項19に記載されたように、前記銅膜除去工程では、前記エッチング処理の前処理として前記銅膜の表面を粗化するプラズマスパッタ処理を行う。
また例えば請求項20に記載されたように、前記プラズマスパッタ処理では、前記銅膜の表面を酸化する酸化ガスが添加される。
また例えば請求項21に記載されたように、前記銅膜除去工程は、化学機械研磨処理(CMP:Chemical Mechanical Polishing)を行う。
【0016】
また例えば請求項22に記載されたように、前記有機酸銅は、酢酸銅、ギ酸銅、プロピオン酸銅、2−エチルヘキ酸銅よりなる群より選択される1又は2以上の材料よりなる。
また例えば請求項23に記載されたように、前記有機酸は、酢酸、ギ酸、プロピオン酸、吉草酸、シュウ酸、マロン酸、2−エチルヘキ酸よりなる群より選択される1又は2以上の材料よりなる。
【0017】
請求項24に係る発明によれば、被処理体の表面に薄膜を形成する成膜装置において、排気可能になされた処理容器と、前記被処理体を載置するための載置台と、前記被処理体を加熱するための加熱手段と、前記処理容器に設けられて、前記処理容器内へガスを導入するためのガス導入部と、前記ガス導入部へ気体の有機酸銅を供給する原料ガス供給手段と、装置全体の動作を制御する装置制御部とを備え、前記被処理体の表面に前記薄膜として銅膜を形成するように構成したことを特徴とする成膜装置である。
【0018】
この場合、例えば請求項25に記載されたように、前記加熱手段は、前記載置台に設けた抵抗加熱ヒータよりなる。
また例えば請求項26に記載されたように、前記加熱手段は、加熱用の光を放射する加熱ランプ部よりなる。
また例えば請求項27に記載されたように、前記加熱ランプ部は、前記被処理体の表面の材質に応じて選択的に加熱が可能な光を放射する。
また例えば請求項28に記載されたように、前記処理容器には、プラズマを発生させるためのプラズマ形成手段が設けられる。
【0019】
請求項29に係る発明によれば、排気可能になされた処理容器と、被処理体を載置するための載置台と、前記被処理体を加熱するための加熱手段と、前記処理容器に設けられて、前記処理容器内へガスを導入するためのガス導入部と、前記ガス導入部へ気体の有機酸銅を供給する原料ガス供給手段と、装置全体の動作を制御する装置制御部とを有する成膜装置を用いて前記被処理体の表面に薄膜を形成するに際して、有機酸銅を温度T1に加熱して気体にし、該気体を前記温度T1よりも高い温度T2に維持した前記被処理体上に供給し、前記被処理体の表面に前記薄膜として銅膜を形成するように前記成膜装置を制御するプログラムを記憶することを特徴とする記憶媒体である。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る薄膜の形成方法、成膜装置及び記憶媒体によれば、次のように優れた作用効果を発揮することができる。
原料として有機酸銅を用いることにより、微細な凹部を埋め込みつつ銅の薄膜を膜厚の制御性良く、しかも高い成膜レートで堆積させることができる。
特に、請求項7に係る発明によれば、有機酸を用いたエッチング処理を行うので、同一の処理容器内で銅膜の形成処理からエッチング処理を連続的に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下に、本発明に係る薄膜の形成方法、成膜装置及び記憶媒体の一実施例を添付図面に基づいて詳述する。
図1は本発明に係る薄膜の形成方法の基本原理を説明するための原理的な成膜装置を示す概略説明図である。
【0022】
図1に示すように、この成膜装置は、例えば石英等の耐熱性材料よりなる筒体状の処理容器2を有している。この処理容器2の一端には、キャリアガスを供給するキャリアガスノズル4が設けられており、これよりキャリアガスとして例えばN ガスを流量制御しつつ供給できるようになっている。尚、このキャリアガスとしてAr、He等の希ガスを用いてもよいし、H ガスを用いてもよい。また、処理容器2の他端には排気口6が設けられており、図示しない真空ポンプ等により処理容器2内を排気できるようになっている。
【0023】
また、上記処理容器2内のガス流の上流側には、加熱ヒータが内蔵された原料容器8が設けられており、この原料容器8内に成膜原料として有機酸銅10が収容されている。この有機酸銅10として例えば代表的に常温で固体の酢酸銅を用いることができる。そして、加熱システム12により上記原料容器8を、例えば250℃程度に加熱することにより上記有機酸銅10を昇華させて気体(ガス)にするようになっている。
【0024】
また上記処理容器2の下流側には、加熱ヒータが内蔵された載置台14が設けられており、この上に、被処理体として例えば半導体ウエハWが載置されている。そして、この載置台14は加熱システム16により加熱されて、上記ウエハWを所望の温度、例えば300℃程度に加熱するようになっている。
このように構成された原理的な成膜装置において、原料容器8内の有機酸銅10を250℃程度で加熱することにより、この有機酸銅10は分解することなく昇華して気体(ガス)となり、キャリアガスノズル4より導入されるN ガスに随伴されて下流側に流れて行く。
【0025】
この下流側に流れた有機酸銅10の気体は、載置台14上で例えば300℃程度に加熱維持されているウエハWの表面に付着し、ここで例えばCVD(Chemical Vapor Deposition)反応を生じて分解してCO やH O等を発生し、この結果、ウエハWの表面に銅の薄膜が堆積することになる。この時の成膜レートは比較的大きく、且つこの銅の薄膜は従来方法の成膜方法とは異なって偏って堆積することなくウエハWの表面に均一に形成される傾向を持っており、膜厚の面内均一性を高めることが可能となる。
【0026】
また、この装置例において、有機酸銅10を取り外し、或いは昇華しないような低温に維持した状態で、N ガスに代えて有機酸、例えば酢酸を流すことにより、これが300℃程度に加熱されているウエハWの銅膜と接触すると、上記した反応とは逆反応が生じて有機酸銅(酢酸銅)が発生し、先に堆積した銅膜がエッチングされて不要な部分を除去することができる。これによりウエハW上に形成された溝や穴等の凹部の埋め込みとエッチング処理とを連続的に行うことができる。尚、上記有機酸による銅膜のエッチング処理を行う直前に、プラズマスパッタ等により銅膜の表面を粗化させておくことにより、上記エッチング処理時のエッチングレートを向上させることができる。
【0027】
<成膜装置の第1実施例>
次に、本発明に係る成膜装置の第1実施例について説明する。図2は本発明に係る成膜装置の第1実施例を示す構成図である。ここでは、熱CVD処理の他に、プラズマ処理も行えるようになされた成膜装置について説明する。
図示するように、この成膜装置20は例えばアルミニウム合金により筒体状に成形された処理容器22を有しており、この処理容器22は接地されている。この処理容器22内には、例えばアルミニウム合金製の載置台24が容器底部より起立させて設けられており、この載置台24の上面に被処理体として例えば半導体ウエハWを載置できるようになっている。
【0028】
この載置台24内には、例えば抵抗加熱ヒータよりなる加熱手段26が埋め込まれており、この加熱手段26には給電ライン28を介して加熱用電源30が接続されている。これにより、上記載置台24上に載置されているウエハWを所望する温度に加熱するようになっている。
【0029】
また、この載置台24には、その周方向に均等に配置された3つのピン挿通孔32(図示例では2つのみ示す)が設けられている。そして、載置台24の下方には上記各ピン挿通孔32に対応させて昇降ピン33が配置されており、上記各昇降ピン33はリング部材34により共通に連結されると共に、このリング部材34は、容器底部を貫通して設けられる昇降ロッド36により上下方向へ昇降可能になされている。従って、載置台24に対してウエハWを載置する際に、この昇降ピン33を上記ピン挿通孔32に挿通させて載置台24の上面から上方へ出没させることによってウエハWを持ち上げ、水平方向から侵入してくる図示しない搬送アームとの間でウエハWの移載を行い得るようになっている。
【0030】
この場合、上記昇降ロッド36の下部には昇降用アクチュエータ38が設けられ、また、容器底部に対する昇降ロッド36の貫通部には、処理容器22内の気密性を維持しつつ上記昇降ロッド36の上下動を許容する金属製の伸縮ベローズ40が設けられている。
【0031】
また処理容器22の側壁には、ウエハWを搬出入するための開口部42が形成されており、この開口部42には、ゲートバルブ44が設けられている。また容器底部には排気口46が設けられており、この排気口46には、処理容器22内の雰囲気を排気する排気系48が設けられている。この排気系48は、上記排気口46に接続された排気通路50に圧力制御弁52及び排気ポンプ54等を順次介設して構成されており、上記排気ポンプ54として例えば真空ポンプを用いることにより、処理容器22内を真空排気可能としている。
【0032】
また、この処理容器22には、この処理容器22内へ所定のガスを導入するためのガス導入部56が設けられている。具体的には、処理容器22の天井部には大きな開口58が形成されており、この開口58に上記ガス導入部56となる中空状になされたシャワーヘッド部60が絶縁部材62を介して設けられている。このシャワーヘッド部60の下面のガス噴射面には多数のガス噴射孔64が形成されており、このガス噴射孔64から下方の処理空間Sに向けてガスを噴射し得るようになっている。また、このシャワーヘッド部60の天井部には、これにガスを供給するガス供給口66が設けられている。
【0033】
そして、このシャワーヘッド部60には、気体になされた有機酸銅を供給する原料ガス導入手段68が接続されている。具体的には、この原料ガス導入手段68は、上記ガス供給口66から延びるガス通路70を有しており、このガス通路70には開閉弁71が介設されると共に、このガス通路70の基端は原料タンク72に接続されている。この原料タンク72内には、銅膜を形成するための原料として有機酸銅74が収容されている。ここでは有機酸銅74の一種として酢酸銅74Aが用いられている。この酢酸銅74Aは常温では固体であるので、この固体を昇華させて気体にするために、原料タンク72には加熱ヒータ76が設けられている。また上記ガス通路70には、気体になって搬送される酢酸銅74Aが凝縮することを防止するテープヒータ78が巻回して設けられており、このガス通路70を所定の温度に加熱するようになっている。
【0034】
また、この原料タンク72にはキャリアガス通路80が接続されると共に、このキャリアガス通路80には、開閉弁82及びマスフローコントローラのような流量制御器83が順次介設されており、キャリアガスを流量制御しつつ供給できるようになっている。このキャリアガスとしては、不活性ガスであるN ガスやAr、He等のような希ガス、更にはH ガス等も用いることができる。
【0035】
また上記シャワーヘッド部60のガス供給口66には、他のガス通路84が接続されており、このガス通路84は途中で3つに分岐されている。そして、第1の分岐路84Aには、途中に開閉弁86及びマスフローコントローラのような流量制御器88を順次介設して有機酸を必要に応じて流量制御しつつ供給できるようになっている。上記有機酸としては、ここでは酢酸が用いられている。
【0036】
また第2の分岐路84Bには、途中に開閉弁90及びマスフローコントローラのような流量制御器92を順次介設してプラズマ用ガスを必要に応じて流量制御しつつ供給できるようになっている。上記プラズマ用ガスとしては、ここでは希ガスであるArガスが用いられているが、他のHe等の希ガスを用いてもよい。更に、第3の分岐路84Cには、途中に開閉弁94及びマスフローコントローラのような流量制御器96を順次介設して酸化ガスを必要に応じて流量制御しつつ供給できるようになっている。上記酸化ガスとしては、ここではO ガスが用いられている。
【0037】
また上記絶縁部材62により処理容器22に対して絶縁されているシャワーヘッド部60には、例えば13.56MHzの高周波を発生する高周波発生源98が接続されている。これにより、このシャワーヘッド部60を上部電極とし、載置台24を下部電極として、両電極間に必要に応じて高周波を印加することによりプラズマを発生し得るようになっている。尚、プラズマ処理を行わない場合には、この高周波発生源98を設ける必要はない。
【0038】
そして、装置各構成部の制御は、装置制御部100により行われ、例えば予め作成されたプログラムに基づいて制御されるようになっている。この際、例えばフレキシブルディスク、コンパクトディスク、フラッシュメモリ、ハードディスク等の記憶媒体102に、各構成部の制御を行うための命令を含むプログラムを格納しておく。
【0039】
次に、以上のように構成された成膜装置20を用いて行われる本発明方法に係る薄膜の形成方法について他の図も参照して説明する。
図3は酢酸銅(無水)[Cu(CH COO) ]のTG(Thermogravimetry)曲線(熱重量分析曲線)を示すグラフ、図4は薄膜の形成方法の第1実施例を説明するための工程図、図5は薄膜の形成方法の第2実施例を説明するための工程図、図6は薄膜の形成方法の第3実施例を説明するための工程図、図7は銅膜の表面をスパッタリングした際の状態を示す図、図8は薄膜の形成方法の第1〜第3実施例を示すフローチャート、図9は銅膜除去工程の態様を示すフローチャートである。
【0040】
<薄膜形成方法の第1実施例>
まず、薄膜の形成方法の第1実施例について説明する。
実際に、銅膜を形成する前に次の処理を半導体ウエハWに施しておく。まず、図4(A)に示すように、半導体ウエハWの表面には、例えば電気的な接続対象となる下層の配線層110が、パターン化されて形成されている。この配線層110は、トランジスタやコンデンサ等の素子の電極が対応する場合もある。
【0041】
そして、このようなウエハWの表面に、図4(B)に示すように所定の厚さで絶縁層112を形成する絶縁層形成工程を行う(図8のS1)。この絶縁層112は、例えばSiO やSiOC等よりなる。
次に、上記絶縁層112に、フォトリソグラフィー技術を用いて、図4(C)に示すように、下層の配線層110に対応させて凹部114を形成する凹部形成工程を行う(図8のS2)。この凹部114は溝状、或いは穴状に形成されており、その底部には配線層110が露出している。
【0042】
次に、図4(D)に示すように、上記凹部114内の全表面を含んで絶縁層112の全表面に例えばスパッタ装置等を用いて所定の厚さでバリヤ層を形成するバリヤ層形成工程を行う(図4のS3)。このバリヤ層116は、TaN膜とTa膜とを順次積層してなる2層構造に形成されている。
このように、バリヤ層116を形成したならば、図2において説明した薄膜の成膜装置20を用いて図4(E)に示すように銅膜118を形成する銅膜形成工程を行う(図8のS4)。
【0043】
具体的には、上記バリヤ層116が形成されたウエハWを図2に示す成膜装置20の処理容器22内へ搬入して、このウエハWを載置台24上に載置し、処理容器22内を密閉状態にして銅膜の成膜処理を開始する。
上記処理容器22内は、排気系48の駆動により、例えば予め真空引きされて所定のプロセス圧力に維持されており、そして、ウエハWは載置台24に設けた加熱手段26により所定の温度T2に維持されている。
【0044】
この状態で、原料ガス導入手段68の原料タンク72において加熱ヒータ76を駆動して、原料タンク72内に収容されている酢酸銅74を所定の温度T1に加熱することにより、この酢酸銅74Aを昇華させて気体(ガス)とし、この酢酸銅74Aの気体は、流量制御されつつ供給されるキャリアガス(N ガス)によりガス通路70内を搬送される。このキャリアガスにより搬送された酢酸銅74Aの気体は、ガス導入部56のシャワーヘッド部60内に供給され、このシャワーヘッド部60内を拡散して各ガス噴射孔64から処理空間Sに噴射されることになる。
【0045】
そして、この気体の酢酸銅74Aは、ウエハWの表面に付着した後に分解してCO やH Oを発生し、ウエハWの表面に銅の薄膜(銅膜)が堆積することになる。すなわち、酢酸銅74Aを原料として熱CVDによりウエハWの表面に銅膜が堆積することになる。
【0046】
ここで上記酢酸銅(無水)74AのTG曲線は図3に示すようになっており、固体の酢酸銅は200℃を越え始めた時点で昇華し初めて、250℃を越えてからは急激に昇華し、更に300℃に到達するまでにはその全量が昇華してしまう。この場合、従来の成膜方法で用いた銅錯体原料は蒸気化して気体になると比較的容易に他の物質に分解する傾向を有していたが、この有機酸銅である酢酸銅は、昇華により気体になっても、容易に分解することなく酢酸銅の分子状態を維持したまま搬送されて、ウエハWの表面に付着することになる。従って、安定的に成膜が行われているので膜が偏って堆積することがなく、高い膜厚均一性で銅膜118を形成することができる。
【0047】
また形成された銅膜118は、これに含有される炭素成分や酸素成分などの不純物が少なく、十分に低抵抗な状態であり、電気的特性が良好である。
また、酢酸銅は蒸気圧が比較的高く、N 等の不活性ガスでの希釈率を大幅に変更できる、という理由から、この成膜レートも高く維持することができる。特に、銅膜がCVD法により形成されるので、溝幅が65nm以下といった微細な溝や直径が65nm以下といった微細な穴等の凹部114内も、ボイドを発生させることなく十分に埋め込むことができる。
【0048】
ここで、上記原料タンク72内の酢酸銅74Aの加熱温度T1は、原料の昇華温度以上であって、この原料が熱分解しない温度であり、図3より判断すれば200〜300℃の範囲内、好ましくは200〜250℃の範囲内である。この温度T1を300℃より大きくすると、酢酸銅自体が分解する恐れが生ずるので好ましくない。
また、この銅膜の成膜時のウエハWの温度T2は、上記温度T1よりも高い温度に設定する。具体的には、250〜400℃の範囲内である。尚、ここでは熱CVDにより銅膜118を形成するようにしたが、この際、プラズマ用ガスとしてArガスを処理容器22内へ供給すると共に、高周波電源98を駆動させて処理空間Sにプラズマを発生させて、プラズマCVD処理によって、上記銅膜118を形成するようにしてもよい。
【0049】
以上のようにして銅膜形成工程を完了したならば、次に、図4(F)に示すように、凹部114内に埋め込まれた部分の銅膜を除いて、銅膜118の表面を削り取ってバリヤ層116の表面を露出させる銅膜除去工程を行う(図8のS5)。この工程により、凹部114内に埋め込まれた銅は残るが、バリヤ層116の表面に形成されていた銅膜118が削理取られて平面状態になる。
【0050】
この場合、銅膜除去工程では、図9に示すように態様1と態様2の2つの方法を用いることができる。態様1は、高温状態の銅が有機酸と接触すると有機酸銅を形成して銅がエッチングされる反応を利用したものであり、上述した銅の成膜処理時とは反対の反応を利用している。具体的には、態様1の場合は、原料ガス導入手段68からの酢酸銅74Aの供給を停止し、これに代えて、有機酸である酢酸を流量制御しつつ供給し、これをシャワーヘッド部60から処理空間Sに供給する(図9のS5−A)。この時、ウエハWを所定の温度T3に維持する。この時の温度T3と先の成膜時の温度T2との関係は”T3≧T2”となるように設定しておく。ここでは上記温度T3は200〜300℃の範囲内である。これにより、加熱された銅と酢酸が接触すると、上記した銅成膜時とは逆反応を起こして酢酸銅が形成され、これが気体となって飛んで行くので、銅膜118が除去されてエッチング処理が施されることになる。
【0051】
また態様2の場合には、態様1のようにウエハWを酢酸に晒す前に、プラズマスパッタ処理を行って、銅膜118の表面を粗化させる(図9のS5−B)。すなわち、原料ガス導入手段68からの原料ガスである酢酸銅の供給を停止し、代わりに、プラズマ用ガスとしてArガスを流量制御しつつ供給し、これをシャワーヘッド部60から処理空間Sに導入する。これと同時に、高周波発生源98を駆動して上下の両電極間、すなわちシャワーヘッド部60と載置台24との間に高周波電力を印加し、処理空間Sにプラズマを形成し、このプラズマにより上記銅膜118の表面にプラズマスパッタ処理を施す。これにより、図7に示すように銅膜118の表面に微細な凹凸120が形成される。
【0052】
次に、先に説明したステップS5−Aと同じ内容の有機酸によるエッチング処理を行う(図9のS5−C)。これによれば、上記銅膜118の表面には微細な凹凸120が形成されているので、その分、エッチング速度を向上させることができる。
【0053】
また、上記ステップS5−Bで示すプラズマスパッタ処理の際に、Arガスと共に酸化ガスとして微量のO ガスを流量制御しつつ処理空間Sに供給するようにすれば、銅が酸化されてエッチング速度を更に大きくすることができる。このように、本実施例では銅膜形成工程と銅膜除去工程とを同一の装置内で行うことができる。尚、上記プラズマスパッタ処理は、真空を破ることなくウエハWを搬送することができるようにして設けられた別のプラズマ装置内で行うようにしてもよい。この具体例としては、例えば成膜装置とプラズマ処理装置とを真空になされた搬送室に共通に接続して、ウエハを上記搬送室を介して相互の処理装置間で搬送するように構成した、いわゆるクラスタ装置を用いることができる。
【0054】
また、ここでは有機酸を用いて銅膜118を除去するようにしているが、これに代えてCMP(Chemical Mechanical Polishing:化学機械研磨)処理により銅膜118を除去するようにしてもよい。
このように、銅膜除去工程が完了したならば、次に、図4(G)に示すように、ウエハ表面に露出している不要なバリヤ層116を除去するバリヤ層除去工程を行う(図8のS6)。これにより、凹部114に埋め込まれた銅膜118の部分のみにバリヤ層116が残留することになる。このバリヤ層除去工程では、例えば上述したようなCMP処理を行えばよい。尚、上記銅膜除去工程でCMP処理を用いた場合には、このCMP処理で連続してバリヤ層除去工程を行うことができる。
【0055】
このように、本発明によれば、原料として有機酸銅を用いることにより、微細な凹部を埋め込みつつ銅の薄膜を膜厚の制御性良く、しかも高い成膜レートで堆積させることができる。
【0056】
<薄膜形成方法の第2実施例>
次に、薄膜の形成方法の第2実施例について図5も参照して説明する。
この第2実施例では、図8に示すように第1実施例のステップS3のバリヤ層形成工程までは同様に適用され、図4(D)に示す構造と同じ構造である図5(A)に示すように、ウエハ表面全体にバリヤ層116が形成されている。
このように、バリヤ層116が形成されたならば、次に、図5(B)に示すように、ウエハ表面に露出している不要なバリヤ層116を除去するバリヤ層除去工程を行う(図8のS7)。これにより、凹部114内の表面に形成されたバリヤ層116のみが残留することになる。このバリヤ層除去工程では、例えば前述したようなCMP処理を行えばよい。
【0057】
次に、図5(C)に示すように銅膜形成工程(図8のS8)及び図5(D)に示す銅膜除去工程(図8のS9)を順次行えばよい。
この銅膜形成工程(図8のS8)及び銅膜除去工程(図8のS9)は、先の第1実施例の銅膜形成工程(図8のS4)及び銅膜除去工程(図8のS5)とそれぞれ同じ内容であり、ここではそのまま適用され、これにより成膜処理が完了する。この第2実施例の場合にも、先の第1実施例と同様な作用効果を発揮することができる。
【0058】
<薄膜形成方法の第3実施例>
次に、薄膜の形成方法の第3実施例について図6も参照して説明する。
この第3実施例では、図8に示すように第2実施例のステップS7のバリヤ層除去工程までは同様に適用され、図5(B)に示す構造と同じ構造である図6(A)に示すように、ウエハ表面のバリヤ層は除去されて、凹部114内の表面のバリヤ層116のみが残留して形成されている。
【0059】
このようにバリヤ層除去工程が完了したならば、次に図6(B)に示すように銅膜形成工程を行う(図8のS10)。この場合の銅膜形成工程は、ウエハ表面の全面に銅膜118を形成した先の第1及び第2実施例とは異なり、残留したバリヤ層116の部分に選択的に形成する。すなわち、ウエハWの表面に加熱用の光を照射して、露出している絶縁層112に対して上記残留したバリヤ層116を選択的に加熱してこのバリヤ層116を所定の温度T2に加熱維持すると共に、酢酸銅を温度T1に加熱して気体にし、この気体をウエハWに供給して凹部114内を埋め込みつつバリヤ層116の表面に銅膜118を形成する。
【0060】
具体的には、例えば図2に示す処理容器22の天井部分に、加熱手段として仮想線で示すように所定の波長の光を放射する加熱ランプ130を設けると共に、この加熱ランプ130を石英等の透明板132により処理空間Sから気密に区画する。この光の波長としてはバリヤ層116に対しては吸収し易く、絶縁層112に対しては吸収し難いような波長を用いる。これにより、加熱ランプ130から放射される光をウエハWの表面に照射し、ウエハ表面の絶縁層112とバリヤ層116との光吸収率の差を利用して、バリヤ層116のみを選択的に加熱し、この温度を成膜が可能な前述したと同様な温度T2に維持する。この際、絶縁層112はそれ程加熱されず、温度T2よりも低い成膜が不可能な温度程度にしか加熱されない。従って、この絶縁層112の表面には銅膜が形成されることはなく、温度T2に加熱されたバリヤ層116の表面のみに銅膜118が選択的に形成されるので、結果的に図6(B)に示すように凹部114内が銅膜118により埋め込まれることになる。
【0061】
この場合、上記加熱ランプ130としては、例えば主として波長1000nm以上の光を放射する加熱ランプを用いるのがよい。尚、上記温度T1、T2の範囲は先に説明したと同様である。
そして、この場合、図6(B)に示すように銅膜118の上面には余剰な銅膜118Aが凸状に上方へ突出した状態で形成される傾向にあるので、次に、図6(C)に示すように余剰な銅膜118Aを除去して表面を平坦化する銅膜除去工程を行う(図8のS11)。
この銅膜除去工程(図8のS11)は、先の第1実施例の銅膜除去工程(図8のS5)と同じ内容であり、このまま適用されることになる。そして、これにより成膜処理が完了する。この第3実施例の場合も、先の第1実施例と同様な作用効果を発揮することができる。
【0062】
この第3実施例で用いた成膜装置では、加熱ランプ130を設けているので載置台24に加熱手段26を設けなくてもよいし、設けてもよい。この加熱手段26を設けた場合には、ウエハWを補助的に加熱する補助加熱手段として用いることができる。更には、上記加熱ランプ130をウエハWの直上の天井部の中心部に設け、ガス導入部56としてシャワーヘッド部60に代えて容器側壁からガス導入ノズル等を挿入するように構成してもよい。
【0063】
<本発明の薄膜の形成方法の評価>
次に、上述したような本発明の薄膜の形成方法を用いて銅膜を形成したので、その評価結果について説明する。
図10は本発明の薄膜の形成方法の第1実施例で説明した銅膜形成工程を実施した時に堆積された銅膜の顕微鏡写真である。
ここで半導体ウエハWとしては、シリコン基板の上に絶縁層として厚さ100nmのSiO 膜を形成したものを用いた。また原料である有機酸銅としては酢酸銅[Cu(CH COO) ]を用い、これを250℃(T1)に加熱してキャリアガスとしてHeガスを用い、基板を300℃(T2)に加熱して成膜を行った。プロセス圧力は200mTorrであり、成膜時間は1分である。
【0064】
この結果、図10に示すように、基板表面全体に銅膜が略均一な厚さで形成されており、また、200〜300nm/minの高い成膜レートを得られることを確認することができた。
【0065】
<成膜装置の第2実施例>
図2に示した成膜装置では、シャワーヘッド部60から長いガス通路70を延ばし、これに原料タンク72を接続したが、これに限定されず、図11に示す成膜装置の第2実施例のように、シャワーヘッド部60の直上に原料タンク72を配置し、両者の途中に開閉弁71が介設された短いガス通路70で接続するようにしてもよい。尚、図11において、図2中で示す構成部分と同一構成部分については同一符号を付してその説明を省略している。
【0066】
尚、ここでは原料である有機酸銅として酢酸銅を用いた場合を例にとって説明したが、これに限定されず、例えば前記有機酸銅は、酢酸銅、ギ酸銅、プロピオン酸銅、2−エチルヘキ酸銅よりなる群より選択される1又は2以上の材料を用いることができる。特に、原料としてはカルボニル基を有する有機酸銅、例えば無水酢酸銅(II)(昇華温度:約200℃)、ギ酸銅(II)・4水和物(昇華温度:約60℃)、プロピオン酸銅(II)・1水和物(昇華温度:約100℃)、2−エチルヘキ酸銅(II)(昇華温度:約170℃)が好ましい。ここで前述した各温度T1、T2、T3は各原料の昇華温度を基準にして定められるのは勿論である。
【0067】
また、本実施例では銅膜に対してエッチング処理を施す時に用いられる有機酸として、酢酸を用いた場合を例にとって説明したが、これに限定されず、上記前記有機酸は、酢酸、ギ酸、プロピオン酸、吉草酸、シュウ酸、マロン酸、2−エチルヘキ酸よりなる群より選択される1又は2以上の材料を用いることができる。また、ここでは凹部114としては、一段の例えば溝状、或いは穴状の凹部を埋め込む場合を例にとって説明したが、これに限定されず、例えば溝状の凹部の底部に、更に穴状の凹部が形成された2段構造の凹部(この構造をデュアルダマシン構造とも称す)を埋め込む場合にも本発明を適用できるのは勿論である。
【0068】
更には、ここでは上記各実施例においては、銅膜形成工程や有機酸を用いた銅膜除去工程は減圧(真空)雰囲気下で行うようにした場合を例にとって説明したが、これに限定されず、常圧雰囲気下で行うようにしてもよい。また、ここで説明した成膜装置は単に一例を示したに過ぎず、これに限定されないのは勿論であり、例えば薄い載置台24を用い、この下方に加熱手段26として加熱ランプ群を配置してウエハを加熱するようにした成膜装置を用いてもよい。
また、ここでは被処理体として半導体ウエハを例にとって説明したが、これに限定されず、ガラス基板、LCD基板、セラミック基板等にも本発明を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明に係る薄膜の形成方法の基本原理を説明するための原理的な成膜装置を示す概略説明図である。
【図2】本発明に係る成膜装置の第1実施例を示す構成図である。
【図3】酢酸銅(無水)]のTG曲線を示すグラフである。
【図4】薄膜の形成方法の第1実施例を説明するための工程図である。
【図5】薄膜の形成方法の第2実施例を説明するための工程図である。
【図6】薄膜の形成方法の第3実施例を説明するための工程図である。
【図7】銅膜の表面をスパッタリングした際の状態を示す図である。
【図8】薄膜の形成方法の第1〜第3実施例を示すフローチャートである。
【図9】銅膜除去工程の態様を示すフローチャートである。
【図10】本発明の薄膜の形成方法の第1実施例で説明した銅膜形成工程を実施した時に堆積された銅膜を示す顕微鏡写真である。
【図11】本発明に係る成膜装置の第2実施例を示す構成図である。
【符号の説明】
【0070】
20 成膜装置
22 処理容器
24 載置台
26 加熱手段
48 排気系
54 排気ポンプ
56 ガス導入部
60 シャワーヘッド部
68 原料ガス導入手段
72 原料タンク
74 有機酸銅
74A 酢酸銅
76 加熱ヒータ
98 高周波発生源
100 装置制御部
102 記憶媒体
110 配線層
112 絶縁層
114 凹部
116 バリヤ層
118 銅膜
W 半導体ウエハ(被処理体)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理体の表面に薄膜を形成する方法において、
有機酸銅を温度T1に加熱して気体にし、該気体を前記温度T1よりも高い温度T2に維持した前記被処理体上に供給し、前記被処理体の表面に前記薄膜として銅膜を形成するようにした銅膜形成工程を有することを特徴とする薄膜の形成方法。
【請求項2】
前記温度T1は、前記有機酸銅が分解しない温度であることを特徴とする請求項1記載の薄膜の形成方法。
【請求項3】
前記温度T1は、300℃以下であることを特徴とする請求項1又は2記載の薄膜の形成方法。
【請求項4】
前記被処理体の表面には、予め絶縁層が形成されていると共に、該絶縁層には凹部が形成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の薄膜の形成方法。
【請求項5】
前記凹部内の表面を含む前記絶縁層の表面には、予めバリヤ層が形成されていることを特徴とする請求項4記載の薄膜の形成方法。
【請求項6】
前記銅膜形成工程の後に、前記凹部に形成した銅膜以外の銅膜を削り取ることによって前記バリヤ層の表面を露出させる銅膜除去工程を行うことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の薄膜の形成方法。
【請求項7】
前記銅膜除去工程は、前記被処理体を所定の温度T3に維持した状態で有機酸を用いたエッチング処理を行うようにしたことを特徴とする請求項6記載の薄膜の形成方法。
【請求項8】
前記各温度T2、T3の関係は、T2≦T3であり、それぞれ400℃以下であることを特徴とする請求項7記載の薄膜の形成方法。
【請求項9】
前記銅膜除去工程では、前記エッチング処理の前処理として前記銅膜の表面を粗化するプラズマスパッタ処理を行うことを特徴とする請求項7又は8記載の薄膜の形成方法。
【請求項10】
前記プラズマスパッタ処理では、前記銅膜の表面を酸化する酸化ガスが添加されることを特徴とする請求項9記載の薄膜の形成方法。
【請求項11】
前記銅膜除去工程は、化学機械研磨処理(CMP:Chemical Mechanical Polishing)を行うことを特徴とする請求項6記載の薄膜の形成方法。
【請求項12】
前記銅膜除去工程の後に、前記被処理体の表面に露出している前記バリヤ層を除去するバリヤ層除去工程を行うことを特徴とする請求項6乃至11のいずれかに記載の薄膜の形成方法。
【請求項13】
被処理体の表面に薄膜を形成する方法において、
前記被処理体の表面に絶縁層を形成する絶縁層形成工程と、
前記絶縁層に凹部を形成する凹部形成工程と、
前記凹部内の表面を含む前記絶縁層の表面にバリヤ層を形成するバリヤ層形成工程と、
前記凹部内の表面に形成されたバリヤ層以外の他のバリヤ層を除去して下層の絶縁層を露出させるバリヤ層除去工程と、
前記被処理体の表面に加熱用の光を照射して前記露出している絶縁層に対して前記残留したバリヤ層を選択的に加熱して所定の温度T2に維持すると共に、有機酸銅を温度T1に加熱して気体にし、該気体を前記被処理体上に供給して前記凹部内を埋め込みつつ前記バリヤ層の表面に前記薄膜として銅膜を形成する銅膜形成工程と、
を備えたことを特徴とする薄膜の形成方法。
【請求項14】
前記温度T1は、前記有機酸銅が分解しない温度であることを特徴とする請求項13記載の薄膜の形成方法。
【請求項15】
前記温度T1は、300℃以下であることを特徴とする請求項13又は14記載の薄膜の形成方法。
【請求項16】
前記銅膜形成工程の後に、余剰な銅膜を除去する銅膜除去工程を行うことを特徴とする請求項15記載の薄膜の形成方法。
【請求項17】
前記銅膜除去工程は、前記被処理体を所定の温度T3に維持して有機酸を用いたエッチング処理を行うことを特徴とする請求項16記載の薄膜の形成方法。
【請求項18】
前記各温度T2、T3の関係は、T2≦T3であり、それぞれ400℃以下であることを特徴とする請求項17記載の薄膜の形成方法。
【請求項19】
前記銅膜除去工程では、前記エッチング処理の前処理として前記銅膜の表面を粗化するプラズマスパッタ処理を行うことを特徴とする請求項17又は18記載の薄膜の形成方法。
【請求項20】
前記プラズマスパッタ処理では、前記銅膜の表面を酸化する酸化ガスが添加されることを特徴とする請求項19記載の薄膜の形成方法。
【請求項21】
前記銅膜除去工程は、化学機械研磨処理(CMP:Chemical Mechanical Polishing)を行うことを特徴とする請求項16記載の薄膜の形成方法。
【請求項22】
前記有機酸銅は、酢酸銅、ギ酸銅、プロピオン酸銅、2−エチルヘキ酸銅よりなる群より選択される1又は2以上の材料よりなることを特徴とする請求項1乃至21のいずれかに記載の薄膜の形成方法。
【請求項23】
前記有機酸は、酢酸、ギ酸、プロピオン酸、吉草酸、シュウ酸、マロン酸、2−エチルヘキ酸よりなる群より選択される1又は2以上の材料よりなることを特徴とする請求項1乃至22のいずれかに記載の薄膜の形成方法。
【請求項24】
被処理体の表面に薄膜を形成する成膜装置において、
排気可能になされた処理容器と、
前記被処理体を載置するための載置台と、
前記被処理体を加熱するための加熱手段と、
前記処理容器に設けられて、前記処理容器内へガスを導入するためのガス導入部と、
前記ガス導入部へ気体の有機酸銅を供給する原料ガス供給手段と、
装置全体の動作を制御する装置制御部とを備え、
前記被処理体の表面に前記薄膜として銅膜を形成するように構成したことを特徴とする成膜装置。
【請求項25】
前記加熱手段は、前記載置台に設けた抵抗加熱ヒータよりなることを特徴とする請求項24記載の成膜装置。
【請求項26】
前記加熱手段は、加熱用の光を放射する加熱ランプ部よりなることを特徴とする請求項24記載の成膜装置。
【請求項27】
前記加熱ランプ部は、前記被処理体の表面の材質に応じて選択的に加熱が可能な光を放射することを特徴とする請求項26記載の成膜装置。
【請求項28】
前記処理容器には、プラズマを発生させるためのプラズマ形成手段が設けられることを特徴とする請求項24乃至27のいずれかに記載の成膜装置。
【請求項29】
排気可能になされた処理容器と、
被処理体を載置するための載置台と、
前記被処理体を加熱するための加熱手段と、
前記処理容器に設けられて、前記処理容器内へガスを導入するためのガス導入部と、
前記ガス導入部へ気体の有機酸銅を供給する原料ガス供給手段と、
装置全体の動作を制御する装置制御部とを有する成膜装置を用いて前記被処理体の表面に薄膜を形成するに際して、
有機酸銅を温度T1に加熱して気体にし、該気体を前記温度T1よりも高い温度T2に維持した前記被処理体上に供給し、前記被処理体の表面に前記薄膜として銅膜を形成するように前記成膜装置を制御するプログラムを記憶することを特徴とする記憶媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−140880(P2008−140880A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−324064(P2006−324064)
【出願日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】