説明

表示装置

【課題】十分な駆動能力を有し、且つ、表示特性の均一性を向上することが可能な表示装置を提供することを目的とする。
【解決手段】マトリクス状の画素によって構成されたアクティブエリアを備えた表示装置であって、
各画素PXに備えられた有機EL素子40と、
有機EL素子を駆動制御するとともに、多結晶シリコンからなる第1半導体層を備えた第1薄膜トランジスタTR1を含む画素回路10と、
アクティブエリアの周辺に配置され、有機EL素子の駆動制御に必要な信号を出力するとともに、多結晶シリコンからなり第1半導体層とは結晶性が異なる第2半導体層を備えた第2薄膜トランジスタTR2を含む駆動回路DRCと、
を同一の支持基板101の上に備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、表示装置に係り、特に、自発光性の表示素子を含んで構成される表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
CRTディスプレイに対して、薄型、軽量、低消費電力の特徴を生かして、液晶表示装置に代表される平面表示装置の需要が急速に伸びてきている。中でも、各画素にスイッチ素子が設けられたアクティブマトリクス型平面表示装置は、隣接する画素間でのクロストークのない良好な表示品位が得られることから、種々のディスプレイに利用されるようになってきている。
【0003】
近年、平面表示装置として、有機エレクトロルミネッセンス(EL)表示装置の開発が盛んに行われている。この有機EL表示装置は、自己発光型のディスプレイであることから、視野角が広く、バックライトを必要とせず薄型化及び軽量化が可能であり、消費電力が抑えられ、且つ応答速度が速いといった特徴を有している。
【0004】
これらの特徴から、有機EL表示装置は、液晶表示装置に代わる、次世代平面表示装置の有力候補として注目を集めている。このような有機EL表示装置は、ガラス等の支持基板上に、表示素子として、陽極と陰極との間に発光機能を有する有機化合物を含む有機活性層を保持した有機EL素子を備えている。また、この有機EL表示装置は、同一の支持基板上において、有機EL素子をマトリクス状に配置して構成されるアクティブエリアの周辺に、外部回路からの信号に基づいて各表示素子を駆動する駆動回路を備えている。
【0005】
アクティブマトリクス型の有機EL表示装置は、有機EL素子を駆動するために、支持基板上に薄膜トランジスタ(TFT)を有している。近年では、特に、半導体層として多結晶シリコンを用いたTFTが採用されてきており、各種文献にて、結晶性の良い半導体膜を得る、また、電気的特性の均一性が良いトランジスタを得るための手法が開示されている。
【0006】
特許文献1によれば、CVD法などによって半導体材料を堆積した後に、レーザアニールなどの熱処理を行うことにより、結晶粒径の大きな多結晶シリコン膜を得る技術や、LPCVD(減圧化学気相成長)法によって直接多結晶シリコン膜を形成する技術、プラズマCVD法やスパッタ法によって非晶質シリコン膜を形成し、これにアニールを施すことによって多結晶シリコン膜を形成する技術などが開示されている。
【特許文献1】特開2003−282586号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
アクティブマトリクス型の有機EL表示装置においては、適用されるTFTに、次のような特性が要求される。すなわち、アクティブエリアの周辺などに配置されて有機EL素子の画素選択及び信号書込などに用いられる駆動回路用のTFTは、低消費電力であって、しかも、小さい面積に集積する必要があるため、移動度が高く、しきい値電圧が低いことなどが要求される。また、各画素において有機EL素子と直列に接続されて有機EL素子に駆動電流を流すための画素回路用のTFTは、画面内でのTFT特性の均一性などが要求される。
【0008】
上記で記載したように、有機EL素子と同一の支持基板上に形成されるTFTは、その目的や用途により異なる特性が要求され、高い移動度と低いしきい値電圧とその均一性などの要求を十分に満たすTFTを形成することは困難である。例えば、移動度及びしきい値電圧を優先した場合、均一性が不十分となるおそれがあり、このような特性を有したTFTを適用した有機EL表示装置では、その表示特性にTFT特性の不均一性が反映してしまい、輝度ムラなどの表示品位の低下を招くといった問題がある。また、均一性を優先した場合、移動度が低くしきい値電圧が高くなるおそれがあり、このような特性を有したTFTを適用した有機EL表示装置では、十分な駆動能力が得られないといった問題がある。
【0009】
この発明は、上述した問題点に鑑みなされたものであって、その目的は、十分な駆動能力を有し、且つ、表示特性の均一性を向上することが可能な表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明の態様による表示装置は、
マトリクス状の画素によって構成されたアクティブエリアを備えた表示装置であって、
各画素に備えられた自発光性の表示素子と、
前記表示素子を駆動制御するとともに、多結晶シリコンからなる第1半導体層を備えた第1薄膜トランジスタを含む画素回路と、
前記アクティブエリアの周辺に配置され、前記表示素子の駆動制御に必要な信号を出力するとともに、多結晶シリコンからなり前記第1半導体層とは結晶性が異なる第2半導体層を備えた第2薄膜トランジスタを含む駆動回路と、
を同一の支持基板上に備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、同一の支持基板上において、各画素の画素回路については、アクティブエリアにおける表示特性の均一性を優先した特性の多結晶シリコンからなる第1半導体層を備えた薄膜トランジスタを適用し、また、駆動回路については、高移動度及び低しきい値電圧を優先した特性の多結晶シリコンからなる第2半導体層を備えた薄膜トランジスタを適用可能となる。これにより、十分な駆動能力を有し、且つ、表示特性の均一性を向上することが可能な表示装置を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、この発明の一実施の形態に係る表示装置について図面を参照して説明する。なお、この実施の形態では、表示装置として、自己発光型表示装置、例えば有機EL(エレクトロルミネッセンス)表示装置を例にして説明する。
【0013】
有機EL表示装置1は、図1に示すように、画像を表示する略矩形状のアクティブエリア102を有するアレイ基板100を備えている。アクティブエリア102は、マトリクス状に配置された複数の画素PXによって構成されている。また、図1では、カラー表示タイプの有機EL表示装置1を例に示しており、アクティブエリア102は、複数種類の色に発光する画素、例えば3原色に対応した赤色画素PXR、緑色画素PXG、及び、青色画素PXBによって構成されている。
【0014】
アレイ基板100の少なくともアクティブエリア102は、封止体200によって封止されている。すなわち、これらのアレイ基板100と封止体200とは、アクティブエリア102を囲むように枠状に配置されたシール材300により貼り合せられている。シール材300は、感光性樹脂(例えば紫外線硬化型樹脂)であっても良いし、フリットであっても良い。
【0015】
この実施の形態においては、有機EL表示装置1は、アクティブマトリクス型駆動方式を採用しており、各画素PX(R、G、B)は、画素回路10及びこの画素回路10によって駆動制御される表示素子40を備えている。なお、図1に示した画素回路10は、一例であって、他の構成の画素回路を適用しても良いことは言うまでもない。
【0016】
表示素子40は、自発光性の表示素子である有機EL素子40(R、G、B)によって構成されている。すなわち、赤色画素PXRは、主に赤色波長に対応した光を出射する有機EL素子40Rを備えている。緑色画素PXGは、主に緑色波長に対応した光を出射する有機EL素子40Gを備えている。青色画素PXBは、主に青色波長に対応した光を出射する有機EL素子40Bを備えている。
【0017】
図1に示した例では、画素回路10は、駆動トランジスタDRT、スイッチングトランジスタSW、蓄積容量素子Csなどを備えて構成されている。
【0018】
駆動トランジスタDRTと有機EL素子40とは、第1電源端子ND1と第2電源端子ND2との間で、この順に直列に接続されている。この例では、電源端子ND1は高電位電源端子であり、電源端子ND2は低電位電源端子である。第1電源端子ND1は、高電位電源線P1に接続されている。第2電源端子ND2は、低電位電源線P2に接続されている。
【0019】
スイッチングトランジスタSWのゲートは、走査線SLに接続されている。スイッチングトランジスタSWのソースは、映像信号線DLに接続されている。スイッチングトランジスタSWのドレインは、駆動トランジスタDRTのゲートに接続されている。蓄積容量素子Csは、駆動トランジスタDRTのゲートと第1電源端子ND1との間に接続されている。
【0020】
これらの駆動トランジスタDRT、及び、スイッチングトランジスタSWは、多結晶シリコンからなる半導体層を備えた薄膜トランジスタによって構成されている。
【0021】
このような回路構成の場合、走査線SLからオン信号が供給されたのに基づいてスイッチングトランジスタSWがオンとなり、映像信号線DLに供給された電圧によって駆動トランジスタDRTが駆動される。これにより、映像信号線DLの電圧に応じた電流が駆動トランジスタDRTと有機EL素子40に流れる。これにより、有機EL素子40は、所定の輝度で発光する。
【0022】
スイッチングトランジスタSWがオフとなっても、蓄積容量素子Csに電圧が保持されているため、1フレーム後に再度スイッチングトランジスタSWがオンとなって映像信号線DLから新しいデータ電圧が供給されるまで、有機EL素子40は、そのまま発光している。
【0023】
各走査線SLは、画素PXの行方向Xに沿って延びており、画素PXの列方向Yに並列に配置されている。また、各映像信号線DLは、列方向Yに沿って延びており、行方向Xに並列に配置されている。これらの走査線SL及び映像信号線DLは、アクティブエリア102の外側に引き出されている。
【0024】
アレイ基板100は、アクティブエリア102の周辺に配置された駆動回路DRCを備えている。すなわち、駆動回路DRCは、有機EL素子40の駆動制御に必要な信号を出力するものであって、走査線駆動回路YDR、及び、映像信号線駆動回路XDRによって構成されている。このような駆動回路DRCは、多結晶シリコンからなる半導体層を備えた薄膜トランジスタを含んでいる。走査線駆動回路YDR及び映像信号線駆動回路XDRは、例えばnチャネル薄膜トランジスタ及びpチャネル薄膜トランジスタからなる相補型の回路を備えた構成を採用している。
【0025】
走査線駆動回路YDRは、アクティブエリア外において全ての走査線SLと接続されているY。また、映像信号線駆動回路XDRは、アクティブエリア外において全ての映像信号線DLと接続されている。これらの駆動回路DRCにおいては、外部から入力された映像信号にもとづき、走査線駆動回路YDRが走査線SLのそれぞれに走査信号を供給するとともに、映像信号線駆動回路XDRが映像信号線DLのそれぞれに映像信号を供給する。これにより、各画素PXにおいては、画素回路10が駆動制御され、有機EL素子40に通電し、有機EL素子40を発光させている。
【0026】
各種有機EL素子40(R、G、B)は、基本的に同一構成であり、例えば、図2に示すように、配線基板120上に配置されている。なお、配線基板120は、ガラス基板やプラスチックシートなどの絶縁性の支持基板101上に、アンダーコート層111、第1ゲート絶縁膜112A、第2ゲート絶縁膜112B、層間絶縁膜113、有機絶縁膜114などの絶縁層を備える他に、スイッチングトランジスタSW、駆動トランジスタDRT、蓄積容量素子Cs、各種配線(走査線、映像信号線、電源線等)や、駆動回路DRCなどを備えて構成されたものとする。
【0027】
図2に示した例では、画素回路10を構成する第1薄膜トランジスタ(例えば駆動トランジスタDRT)TR1は、ボトムゲート型の薄膜トランジスタであり、また、駆動回路DRCを構成する第2薄膜トランジスタTR2は、トップゲート型の薄膜トランジスタである。
【0028】
すなわち、支持基板101の上に配置されたアンダーコート層111は、画素回路10が配置されるアクティブエリア102のみならず、駆動回路DRCが配置されるアクティブエリア102の周辺にも配置されている。アクティブエリア外において、アンダーコート層111の上には、第2薄膜トランジスタTR2の半導体層(第2半導体層)31が配置されている。
【0029】
この半導体層31は、第1ゲート絶縁膜112Aによって覆われている。この第1ゲート絶縁膜112Aは、アクティブエリア102及びその周辺にわたって配置されている。第1ゲート絶縁膜112Aの上において、アクティブエリア外には第2薄膜トランジスタTR2のゲート電極30Gが配置されているとともに、アクティブエリア102には第1薄膜トランジスタTR1のゲート電極20Gなどが配置されている。
【0030】
ゲート電極20Gは、第2ゲート絶縁膜112Bによって覆われている。アクティブエリア102において、第1ゲート絶縁膜112A及び第2ゲート絶縁膜112Bの上には、第1薄膜トランジスタTR1の半導体層(第1半導体層)21が配置されている。この半導体層21は、層間絶縁膜113によって覆われている。この層間絶縁膜113は、アクティブエリア102及びその周辺にわたって配置されている。つまり、ゲート電極30Gも、層間絶縁膜113によって覆われている。
【0031】
アクティブエリア102において、層間絶縁膜113の上には、第1薄膜トランジスタTR1のソース電極20S及びドレイン電極20Dが配置されている。これらのソース電極20S及びドレイン電極20Dは、層間絶縁膜113を半導体層21まで貫通するコンタクトホールを介して半導体層21のソース領域及びドレイン領域にそれぞれコンタクトしている。
【0032】
これらのソース電極20S及びドレイン電極20Dは、有機絶縁膜114によって覆われている。このような有機絶縁膜114は、アクティブエリア102に配置され、下層の凹凸の影響を緩和しその表面を平坦化する目的で、樹脂材料をコーティングするなどの手法により形成されている。
【0033】
また、アクティブエリア外において、層間絶縁膜113の上には、第2薄膜トランジスタTR2のソース電極30S及びドレイン電極30Dが配置されている。これらのソース電極30S及びドレイン電極30Dは、第1ゲート絶縁膜112A及び層間絶縁膜113を半導体層31まで貫通するコンタクトホールを介して半導体層31のソース領域及びドレイン領域にそれぞれコンタクトしている。
【0034】
有機EL素子40は、有機絶縁膜114の上に配置されている。この有機EL素子40は、第1電極60と第2電極64との間に有機活性層62を保持した構成である。以下に、有機EL素子40の詳細な構造について説明する。
【0035】
すなわち、第1電極60は、有機絶縁膜114の上において各画素PXに独立島状に配置され、陽極として機能する。この第1電極60は、有機絶縁膜114をドレイン電極20Dまで貫通するコンタクトホールを介して、ドレイン電極20Dにコンタクトしている。このような第1電極60は、インジウム・ティン・オキサイド(ITO)などの光透過性を有する導電材料や、銀(Ag)やアルミニウム(Al)などの光反射性を有する導電材料によって形成されている。この第1電極60は、透過層単層、反射層単層、透過層と反射層との積層体などとして構成されている。
【0036】
有機活性層62は、第1電極60上に配置され、少なくとも発光層を含んでいる。この有機活性層62は、発光層以外の機能層を含むことができ、例えば、ホール注入層、ホール輸送層、ブロッキング層、電子輸送層、電子注入層、バッファ層などの機能層を含むことができる。このような有機活性層62は、複数の機能層を複合した単層で構成されても良いし、各機能層を積層した多層構造であっても良い。有機活性層62においては、発光層が有機系材料であればよく、発光層以外の層は無機系材料でも有機系材料でも構わない。有機活性層62において、発光層以外の機能層は共通層であってもよい。発光層は、赤、緑、または青に発光する発光機能を有した有機化合物によって形成される。
【0037】
有機活性層62は、高分子系材料によって形成された薄膜を含んでいても良い。このような薄膜は、インクジェット法などの選択塗布法により成膜可能である。また、有機活性層62は、低分子系材料によって形成された薄膜を含んでいても良い。このような薄膜は、マスク蒸着法などの手法により成膜可能である。
【0038】
第2電極64は、複数の画素PXに共通であって、各画素PXの有機活性層62の上に配置され、陰極として機能する。この第2電極64は、ITOなどの光透過性を有する導電材料や、銀(Ag)とマグネシウム(Mg)との混合物などによって形成されている。この第2電極64は、半透過層単層、透過層単層、半透過層と透過層との積層体などとして構成されている。
【0039】
また、アレイ基板100は、アクティブエリア102において、少なくとも隣接する画素PX(R、G、B)間を分離する隔壁70を備えている。この隔壁70は、各第1電極60の周縁を覆うように配置され、アクティブエリア102において格子状またはストライプ状に形成されている。このような隔壁70は、例えば樹脂材料をパターニングすることによって形成される。
【0040】
ところで、この実施の形態のように、画素回路10及び駆動回路DRCが同一の支持基板101の上に備えられた構成において、画素回路10を構成する第1薄膜トランジスタTR1及び駆動回路DRCを構成する第2薄膜トランジスタTR2は、それぞれ優先度の高い特性を有するように形成されている。
【0041】
すなわち、第1薄膜トランジスタTR1が備える第1半導体層21及び第2薄膜トランジスタTR2が備える第2半導体層31は、多結晶シリコンからなるものの、その結晶性が相違している。特に、この実施の形態においては、第1半導体層21の結晶性は、第2半導体層31の結晶性よりも低い。つまり、ここでの結晶性の相違とは、結晶粒径の相違、移動度(cm/V・sec)の相違、あるいは、薄膜トランジスタとしての特性、特にしきい値電圧の相違に相当する。
【0042】
第1半導体層21を構成する結晶粒径は、第2半導体層31を構成する結晶粒径よりも小さい。例えば、第1半導体層21の結晶粒径は、例えば約20nm程度であるのに対して、第2半導体層31の結晶粒径は例えば500nm程度である。
【0043】
また、第1半導体層21の移動度は、第2半導体層31の移動度よりも小さい。例えば、第1半導体層21の移動度は、20cm/V・sec程度であるのに対して、第2半導体層31の移動度は、100cm/V・sec以上である。
【0044】
また、第1薄膜トランジスタTR1のしきい値電圧は、第2薄膜トランジスタTR2のしきい値電圧より高い。例えば、第1薄膜トランジスタTR1のしきい値電圧は、2.5V程度であるのに対して、第2薄膜トランジスタTR2のしきい値電圧は、1.5V程度である。
【0045】
上述した第1半導体層21は、例えばLPCVD法により直接多結晶シリコンを得る手法を適用して形成しても良いし、CVD法などにより基板上にアモルファスシリコンを成膜(堆積)した後に500℃〜600℃程度で長時間熱処理することにより多結晶シリコンを得る手法を適用して形成しても良い。
【0046】
例えば、後者を適用した場合を例に第1半導体層21の製造方法を説明する。まず、第1ゲート絶縁膜112Aや第2ゲート絶縁膜112Bなどの絶縁膜上(あるいは絶縁基板上)にCVD法などにより、例えば100nmの膜厚のアモルファスシリコン膜を成膜する。その後、このアモルファスシリコン膜に長時間の熱処理を行う。例えば、このときの雰囲気は窒素であり、温度は550℃であり、加熱時間は20時間である。このような熱処理により、アモルファスシリコンを結晶化させている。
【0047】
このような手法によって形成した第1半導体層21は、シリコンの結晶性が低い。つまり、第1半導体層21の結晶粒径は、比較的小さい。このため、第1半導体層21は、単位面積当たりの結晶数が比較的多く、結晶粒内あるいは粒界の欠陥などの影響を受けて、その移動度が小さくなる傾向にある。また、第1薄膜トランジスタTR1は、第1半導体層21における欠陥などの影響を受けてしきい値電圧が高くなる傾向にある。
【0048】
その一方で、上述した手法を適用することにより、一様な結晶性が比較的容易に得られやすい。このため、このような第1半導体層21を備えた第1薄膜トランジスタTR1によれば、均一なトランジスタ特性を安定して得ることが可能となる。
【0049】
したがって、各画素PXの画素回路10については、第1半導体層21のような低結晶性の多結晶シリコン膜を備えた第1薄膜トランジスタTR1を適用することが望ましい。これにより、アクティブエリア102の全体にわたり、表示特性の均一性を向上することが可能となる。
【0050】
一方、第2半導体層31は、アモルファスシリコンを成膜した後に、アモルファスシリコンに対してエキシマレーザビームをパルス照射して、再結晶化することにより多結晶シリコンを得るエキシマレーザアニール(ELA)法を適用して形成可能である。このようなELA法には、パルスレーザ照射法とCW(continuous wave)レーザ走査法とがある。
【0051】
例えば、パルスレーザ照射法を適用した場合を例に第2半導体層31の製造方法を説明する。まず、アンダーコート層111などの絶縁膜上(あるいは絶縁基板上)にCVD法などにより、例えば500オングストロームの膜厚のアモルファスシリコン膜を成膜する。その後、このアモルファスシリコン膜にパルスレーザを照射して熱処理を行う。このときのレーザビームは、例えば、その波長が308nmであり、ショットのエネルギー密度は例えば300mJ/xmであり、例えば長さ200mm×幅100μmのライン状であり、パルス周波数が300Hzであり、照射範囲を一部重複しながら所定範囲を走査する。このように、レーザビームを照射することにより、アモルファスシリコンを瞬時に溶融して冷却することを繰り返して結晶化させている。
【0052】
このような手法によって形成した第2半導体層31は、シリコンの結晶性が高い。つまり、第2半導体層31の結晶粒径は、比較的大きい。このため、第2半導体層31は、単位面積当たりの結晶数が比較的少なく、結晶の形成条件に依存して単位面積当たりの結晶数や粒界の影響が異なる。例えば、ELA法を適用した場合、ビーム出力のばらつきにより結晶の形成条件に差が生じやすい。
【0053】
つまり、上述した手法では、一様な結晶性は得にくい。このため、このような結晶性の第2半導体層31を備えた第2薄膜トランジスタTR2の特性にばらつきが生じやすい。その一方で、比較的容易に大きな結晶粒径を得やすいため、第2薄膜トランジスタTR2では、第2半導体層31における欠陥などの影響が小さく、高い移動度及び低いしきい値電圧が容易に得られる。
【0054】
したがって、駆動回路DRCについては、第2半導体層31のような高結晶性の多結晶シリコン膜を備えた第2薄膜トランジスタTR2を適用することが望ましい。これにより、高移動度及び低しきい値電圧の特性によって、高い駆動能力を実現可能となる。
【0055】
図2に示した例では、同一の支持基板101の上において、画素回路10の第1薄膜トランジスタTR1、及び、駆動回路DRCの第2薄膜トランジスタTR2が配置されている。第2薄膜トランジスタTR2は、ELA法による結晶化により形成した多結晶シリコンからなる第2半導体層31を備えたトップゲート型薄膜トランジスタであり、移動度は100cm/V・sec以上、しきい値電圧は1.5V程度である。また、第1薄膜トランジスタTR1は、堆積及び熱処理により形成した多結晶シリコンからなる第1半導体層21を備えたボトムゲート型薄膜トランジスタであり、移動度は20cm/V・sec程度、しきい値電圧は2.5V程度であり、ELA法を適用して形成した第2薄膜トランジスタTR2とは異なりTFT特性は低下するがそのばらつきは小さく抑えられている。
【0056】
この実施の形態において、第1半導体層21及び第2半導体層31は、異なる製造プロセスを経て形成されている。図2に示した例では、第1半導体層21は、第2半導体層31とは異なる層に配置されている。
【0057】
すなわち、第2半導体層31は、アンダーコート層111の上に配置されている。第1半導体層21と第2半導体層31との間には、絶縁膜が介在しており、ここに示した例では、第1半導体層21は、第2半導体層31を覆う第1ゲート絶縁膜112A及び第2ゲート絶縁膜112Bの上に配置されている。
【0058】
図2に示した例では、第1薄膜トランジスタTR1はボトムゲート型として構成したが、トップゲート型として構成しても良く、画素回路10を構成するトランジスタとして十分な特性を持っていれば良い。なお、第1半導体層21は、多結晶シリコンからなるものであるが、結晶粒径が微小ないわゆる微結晶シリコンからなるものも含む。
【0059】
また、第2薄膜トランジスタTR2はトップゲート型として構成したが、ボトムゲート型として構成しても良く、駆動回路DRCを構成するトランジスタとして十分な特性を持っていればよい。また、第1薄膜トランジスタTR1と第2薄膜トランジスタTR2とは、ボトムゲート型またはトップゲート型のいずれかの同一の型として構成しても良い。
【0060】
第2半導体層31は、第1半導体層21よりも下層側(つまり支持基板101側)に配置されることが望ましい。つまり、第2半導体層31は、第1半導体層21よりも先の工程で形成されることが望ましい。さらに換言すると、第2半導体層31を形成するELA法は、第1半導体層21を形成する堆積及び熱処理よりも先に行われることが望ましい。すなわち、図2に示した例では、第2半導体層31は、第1半導体層21との間に介在する第1ゲート絶縁膜112A及び第2ゲート絶縁膜112Bなどの絶縁膜と支持基板101との間に配置されている。
【0061】
このような順序で第1半導体層21及び第2半導体層31を形成することにより、第1半導体層21を形成するための熱処理を、第1半導体層21より先に形成した第2半導体層31の活性化処理に利用することが可能となる。このため、製造工程数の削減が可能となり、製造コストの削減及び製造時間の短縮が可能となる。
【0062】
各画素PXに配置される画素回路10の構成は、図1に示した例に限らず、特性のばらつきを補正するために3以上の薄膜トランジスタを備えた構成であってもよいが、この実施の形態によれば、各画素PXに配置される薄膜トランジスタの特性を均一化することが可能となるため、画素回路10の簡素化が可能となる。つまり、図1に示した例のように、画素回路10を構成する薄膜トランジスタの数が2つであっても、有機EL素子40の駆動制御に必要な特性を十分に得ることが可能となる。したがって、画素回路10が占める面積を縮小することができ、開口率(有機EL素子の面積のうちの発光に寄与する面積)を拡大することが可能となる。
【0063】
なお、この発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、その実施の段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
【0064】
なお、画素回路10に映像信号として電流信号を書き込む構成を採用してもよいし、映像信号として電圧信号を書き込む構成を採用しても良い。また、画素回路10及び駆動回路DRCを構成する薄膜トランジスタとしては、pチャネル薄膜トランジスタであっても良いし、nチャネル薄膜トランジスタであっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】図1は、この発明の一実施の形態に係る有機EL表示装置の構成を概略的に示す図である。
【図2】図2は、図1に示した有機EL表示装置を切断したときの構造を概略的に示す断面図である。
【符号の説明】
【0066】
1…有機EL表示装置
PX(R、G、B)…画素 SL…走査線 DL…映像信号線
DRC…駆動回路 YDR…走査線駆動回路 XDR…映像信号線駆動回路
TR2…第2薄膜トランジスタ 31…第2半導体層
10…画素回路 DRT…駆動トランジスタ SW…スイッチングトランジスタ
TR1…第1薄膜トランジスタ 21…第1半導体層
40…有機EL素子(表示素子)
60…第1電極 62…有機活性層 64…第2電極 70…隔壁
100…アレイ基板 101…支持基板 102…アクティブエリア
111…アンダーコート層 112A…第1ゲート絶縁膜 112B…ゲート絶縁膜
113…層間絶縁膜 114…有機絶縁膜
200…封止体 300…シール材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マトリクス状の画素によって構成されたアクティブエリアを備えた表示装置であって、
各画素に備えられた自発光性の表示素子と、
前記表示素子を駆動制御するとともに、多結晶シリコンからなる第1半導体層を備えた第1薄膜トランジスタを含む画素回路と、
前記アクティブエリアの周辺に配置され、前記表示素子の駆動制御に必要な信号を出力するとともに、多結晶シリコンからなり前記第1半導体層とは結晶性が異なる第2半導体層を備えた第2薄膜トランジスタを含む駆動回路と、
を同一の支持基板上に備えたことを特徴とする表示装置。
【請求項2】
前記第1半導体層を構成する結晶粒径は、前記第2半導体層を構成する結晶粒径よりも小さいことを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記第1半導体層の移動度は、前記第2半導体層の移動度よりも小さいことを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項4】
第1薄膜トランジスタのしきい値電圧は、第2薄膜トランジスタのしきい値電圧より高いことを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項5】
前記第1半導体層と前記第2半導体層との間に絶縁膜が介在することを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項6】
前記第2半導体層は、前記絶縁膜と前記支持基板との間に配置されたことを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項7】
前記画素回路を構成する薄膜トランジスタは、2つであることを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項8】
前記表示素子は、
各画素に配置された第1電極と、
前記第1電極上に配置された有機活性層と、
前記有機活性層上に配置された第2電極と、
を備えて構成されたことを特徴とする請求項1に記載の表示装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−277478(P2009−277478A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−127059(P2008−127059)
【出願日】平成20年5月14日(2008.5.14)
【出願人】(302020207)東芝モバイルディスプレイ株式会社 (2,170)
【Fターム(参考)】