説明

表面波プラズマCVD装置および成膜方法

【課題】1台の表面波プラズマCDV装置を用いて、組成および厚さの異なる薄膜を基板に連続成膜し、高スループットで超構造膜を形成する。
【解決手段】本発明は、共通の真空室内において基板に複数の薄膜を成膜する表面波プラズマCVD装置であって、この基板に成膜を行う複数のプラズマ生成ユニットと、各々のプラズマ生成ユニットに設けられた、プラズマ生成ガスを放出するプラズマ生成ガス放出口と成膜ガスを放出する成膜ガス放出口と、これら複数のプラズマ生成ユニットで成膜を行う成膜領域を真空室内で互いに隔てる隔壁と、各々のプラズマ生成ユニットの成膜領域の間で基板を移動可能に戴置可能とする移動手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面波プラズマCVD装置およびこれを用いた成膜方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、太陽電池や半導体素子の製造において、製造コストの削減の要求が大きくなっている。これらの素子の製造においては各種の薄膜の成膜を行うため、成膜装置のスループットを向上することが重要となっている。
【0003】
また、近年、ナノオーダーで異なる組成を繰り返す非晶質超構造膜あるいはナノ構造を有する極薄積層膜が注目されている。これらの膜を用いることにより、例えば高速な薄膜トランジスタや高効率の発光素子を製造することが可能となる。
【0004】
超格子構造は複数の種類の結晶格子の重ね合わせにより、その周期構造が基本単位格子より長くなった結晶格子のことであり、天然に存在しない人工的な結晶構造を創り出せることから、古くから盛んに研究されてきた。例えば半導体では積層の厚さや原子の種類の選択等によってバンド幅を比較的自由に制御することができる。このことから半導体レーザーの波長を変化させることが可能となる。このような結晶における超格子構造の効果は非晶質材料においても同様の効果が確認されており、非晶質材料の極薄積層膜を種々のデバイスに応用する試みがなされてきた。例えば、非特許文献1では、井戸層:非晶質Si:H/バリア層:非晶質Si0.20.8:Hからなる超構造膜をグロー放電プラズマCVDで形成している。また、非特許文献2では非晶質SiC:H/非晶質Si1+x:H構造の量子ドット超構造を作製し、フォトルミネッセンス強度の向上を果たしている。非特許文献3では非晶質シリコン/シリコン系合金の超構造膜を太陽電池に応用し、膜の広ギャップ化による高効率化を達成している。上記のような超構造膜を形成する装置として、特許文献1に代表されるように体積波プラズマを生成するプラズマCVD装置(平行平板型プラズマCVD装置)を用い、異なる成膜ガスを交互に真空室内に導入することで超構造膜を得ている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−349744号公報
【非特許文献1】Jpn. J. Appl. Phys., vol. 25, (1986) pp. L922-L924
【非特許文献2】Jpn. J. Appl. Phys., vol. 46, (2007) pp. L833-L835
【非特許文献3】Renewable Energy, vol. 33, (2008) p. 273-276)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、通常、超構造膜では1層あたりの膜厚が数ナノメートルであり、上記のような成膜ガスの切り替えでは、1層目を形成した後に真空室内を一旦真空排気して、この1層目の成膜ガスを除去し、その後に2層目の膜を形成するための成膜ガスを導入するという作業を繰り返す必要があり、スループットの点で問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)請求項1に記載の発明は、共通の真空室内において基板に複数の薄膜を成膜する表面波プラズマCVD装置であって、この基板に成膜を行う複数のプラズマ生成ユニットと、各々のプラズマ生成ユニットに設けられた、プラズマ生成ガスを放出するプラズマ生成ガス放出口と成膜ガスを放出する成膜ガス放出口と、これらの複数のプラズマ生成ユニットで成膜を行う成膜領域を真空室内で互いに隔てる隔壁と、各々のプラズマ生成ユニットの成膜領域の間で基板を移動可能に戴置可能とする移動手段とを備えることを特徴とする。
(2)請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の表面波プラズマCVD装置において、複数のプラズマ生成ユニットの各々に設けられたプラズマ生成ガス放出口から放出されるプラズマ生成ガスおよび、これら複数のプラズマ生成ユニットの各々に設けられた成膜ガス放出口から放出される成膜ガスについて、各々のプラズマ生成ユニット毎に独立にそれぞれ組成およびガス流量を調整するガス調整手段を有することを特徴とする。
(3)請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の表面波プラズマCVD装置において、複数のプラズマ生成ユニットの各々に印加されるマイクロ波出力を、これら複数のプラズマ生成ユニット毎に独立に調整する出力調整手段を有することを特徴とする。
(4)請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の表面波プラズマCVD装置において、複数のプラズマ生成ユニットは、2つのプラズマ生成ユニットから構成され、この表面波プラズマCVD装置は、基板に第1の成膜を行うための第1のプラズマ生成ユニット、第1のプラズマ生成ガス放出口、および第1の成膜ガス放出口と、基板に第2の成膜を行うための第2のプラズマ生成ユニット、第2のプラズマ生成ガス放出口、および第2の成膜ガス放出口と、この第1の成膜を行う第1の成膜領域と第2の成膜を行う第2の成膜領域とを隔てる隔壁とを備え、移動手段は、第1の成膜領域と第2の成膜領域の間で、基板を往復移動可能に戴置することを特徴とする。
(5)請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の表面波プラズマCVD装置において、複数のプラズマ生成ユニットでは、それぞれ異なる組成の成膜が行われるように、それぞれのプラズマ生成ユニットに異なる組成の成膜ガスが供給されることを特徴とする。
(6)請求項6に記載の発明は、請求項2乃至5のいずれか1項に記載の表面波プラズマCVD装置において、複数のプラズマ生成ユニットの各々に設けられたプラズマ生成ガス放出口から放出されるプラズマ生成ガスおよび、複数のプラズマ生成ユニットの各々に設けられた成膜ガス放出口から放出される成膜ガスにおいて、各々のプラズマ生成ユニット毎に独立にそれぞれ組成およびガス流量の調整を行い、および/または複数のプラズマ生成ユニットの各々に印加されるマイクロ波出力において、複数のプラズマ生成ユニット毎に独立に調整を行うことによって、各々のプラズマ生成ユニットの成膜領域で成膜される薄膜の組成および厚さが調整可能であることを特徴とする。
(7)請求項7に記載の発明は、請求項2乃至5のいずれか1項に記載のプラズマCVD装置を用いて基板に多層の薄膜を形成する成膜方法であって、複数のプラズマ生成ユニットの各々に設けられたプラズマ生成ガス放出口から放出されるプラズマ生成ガスおよび、これら複数のプラズマ生成ユニットの各々に設けられた成膜ガス放出口から放出される成膜ガスにおいて、各々のプラズマ生成ユニット毎に独立にそれぞれ組成およびガス流量の調整を行い、および/または複数のプラズマ生成ユニットの各々に印加されるマイクロ波出力において、これら複数のプラズマ生成ユニット毎に独立に調整を行うことによって、各々のプラズマ生成ユニットの成膜領域で成膜される薄膜の組成および厚さを調整することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、成分および厚さの異なる2種類の膜を連続成膜することができ、また、1種類の膜の成膜の後に成膜ガスの真空排気を行う必要がなく、プラズマ処理装置のスループットが向上する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第1の実施形態における表面波プラズマCVD装置の概略を説明する垂直断面図である。2つのプラズマ発生ユニットが設けられている。
【図2】図1の表面波プラズマCVD装置の水平断面図で、図1のA2−A2線に沿って下側(誘電体板から反応室側)を見た概略図である。
【図3】本発明の第1の実施形態における表面波プラズマCVD装置によって形成された多層膜の概略図を示す。
【図4】本発明の第1の実施形態における表面波プラズマCVD装置の2つのプラズマ発生ユニットの間で基板を戴置したステージを一定期間毎に移動した場合の、プラズマ電子密度を示す。
【図5】本発明の第1の実施形態の変形実施例であり、往復移動可能なステージが搭載されている。
【図6】本発明の第2の実施形態であり、3つのプラズマ発生ユニットが設けられている。
【図7】本発明の第3の実施形態であり、4つのプラズマ発生ユニットが設けられている。
【図8】本発明の第3の実施形態の変形実施例であり、4つのプラズマ発生ユニット間で移動可能な複数のステージが概略的に示されている。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明による表面波励起プラズマCVD装置の実施形態を図1〜図8を用いて説明する。
図1は本発明の一実施形態の表面波励起型プラズマCVD装置を正面から見た断面の概略図である。この表面波励起型プラズマCVD装置は、反応容器(真空容器)1を備え、この反応容器内に2つの独立した表面波プラズマ生成ユニット2、3が設けられている。各々のプラズマ生成ユニットは、導波管4、6、スロットアンテナ部5、7、誘電体窓8、9から構成されている。プラズマ生成ユニット2、3にはそれぞれ独立に、マイクロ波電源(不図示)からマイクロ波が印加され、それぞれのプラズマ生成ユニットに印加されるマイクロ波出力は、プラズマ生成ユニット毎に調整可能である。
【0011】
更に反応容器内に、プラズマ生成ガス放出口10および成膜ガス放出口11が設けられており、それぞれプラズマ生成ユニット2での表面波プラズマ生成と成膜を行うためのガスを放出する。プラズマ生成ガス放出口10は、反応容器1のプラズマ生成ユニット2側の側壁側に、誘電体窓8の近くに設けられ、成膜ガス放出口11は、誘電体窓8から離れて設けられている。同様にプラズマ生成ガス放出口12は、反応容器1のプラズマ生成ユニット3側の側壁側に、誘電体窓9の近くに設けられており、成膜ガス放出口13は、誘電体窓9から離れて設けられている。これらのプラズマ生成ガス放出口および成膜ガス放出口は、それぞれガスの供給パイプ(図2参照)に接続され、更に反応室1外部のガス供給装置(不図示)に接続されて、それぞれのプラズマ生成ガスまたは成膜ガスが供給される。なお、このガス供給装置はプラズマ生成ユニット2およびプラズマ生成ユニット3に供給する、プラズマ生成ガスおよび成膜ガスそれぞれの組成と流量とを、これらのユニット毎に独立して調整可能である。
【0012】
成膜物の反応容器1の側壁への付着を防止するために、反応容器1の側壁には、防着板14〜17が設けられている(図2参照)。また2つのプラズマ生成ユニット2、3の間には、更にもう1つの防着板18が設けられている。これらの防着板は2つのプラズマ生成ユニットのそれぞれの成膜領域19、20を定めている(図1参照)。これら成膜領域では、それぞれの誘電体窓8、9の付近に表面波プラズマの層21、22が生成される。
すなわち上記の防着板18は2つの成膜領域19、20を隔てる隔壁となっている。またこの隔壁18により2つの成膜領域19、20は略同一の大きさとなっている。
【0013】
反応容器1内には更に、成膜が行われる基板23と、これを移動可能に戴置する金属製コンベアベルト24とが設けられている。
【0014】
反応室底部には2つの排気口25、26が設けられ、これらに接続された真空ポンプなどからなる真空排気システム(不図示)によって、反応室1内は真空排気される。なお、この排気口は1つであっても、3つ以上であってもよいが、2つのプラズマ生成ユニットのそれぞれの成膜領域の排気速度が同等となるように、反応室1内部の構成および構造を考慮して設計される。
【0015】
ここで、本発明の一実施形態による表面波プラズマCVD装置の動作と基板23への成膜方法について説明する。
【0016】
反応室1は一旦、例えば0.1Pa以下に十分真空排気しておく。まずガス供給装置(不図示)を調整して、プラズマ生成ガス放出口10および12からは、それぞれプラズマ生成ガスとしてArガス350sccmを放出する。更に成膜ガス放出口11からは、SiHガス70sccmとNHガス500sccmの混合ガスが、成膜ガス放出口13からはSiHガス70sccmとN0ガス400sccmの混合ガスを放出される。反応室1内の圧力を10Pa程度にほぼ一定に保つように、排気口25、26のコンダクタンスを調整する。このコンダクタンスの調整は、例えばコンダクタンス調整バルブ等(不図示)を排気口25、26と真空排気システムの間に設け、このコンダクタンス調整バルブを調整することによって行われる。
【0017】
この状態で、基板23を戴置した金属製コンベアベルト24を送り速度100mm/sの速度で駆動し、基板23をプラズマユニット2と3の間で往復運動させる。更にこの状態でプラズマ生成ユニット2、3にマイクロ波電力を供給し、それぞれの誘電体窓8、9の表面付近にプラズマ21、22を生成した。プラズマ生成ユニット2には1kWのマイクロ波を印加し、プラズマ生成ユニット3には700Wのマイクロ波を印加した。これらのマイクロ波は、それぞれのユニットの導波管4、6、およびスロットアンテナ5、7を介して誘電体窓8、9に印加され、それぞれの誘電体窓直下で表面波プラズマ21、22を生成する。
【0018】
上記で発生した表面波プラズマの中のラジカルやイオンは、反応容器1内の下方にある、金属製コンベアベルトに戴置された基板23まで拡散し、誘電体窓8、9から離れて設けられた成膜ガス放出口11、13から放出される成膜ガスと反応して生成され、成膜物質が基板23上に堆積して成膜が行われる。
成膜ガス放出口11から放出される成膜ガスSiHとNHの混合ガスからは、SiN膜が成膜され、成膜ガス放出口13から放出される成膜ガスSiHとN0の混合ガスからはSiO膜が成膜される。すなわち、プラズマ生成ユニット1の成膜領域19ではSiN膜が成膜され、プラズマ生成ユニット2の成膜領域20ではSiO膜が成膜される。
【0019】
これら2つの成膜領域19、20で、基板23を戴置した金属製コンベアベルト24を往復運動させることにより、SiN膜とSiO膜が交互に成膜される。
図3にこうして得られた膜の断面の概略を示す。基板23の上に、SiN膜27とSiO膜28が交互に成膜されている。この多層膜を分光エリプソメータにて構造を解析した結果、SiN膜は膜厚約2nm、屈折率1.95であり、SiO膜は膜厚約1.5nmで屈折率1.45であり、均一な膜厚のSiN膜とSiO膜が交互に成膜されていることが確認された。積層膜の1層を形成する際のおおよその成膜速度を見積もると、プラズマ生成ユニット2で成膜されるSiN膜は1.6nm/s、プラズマ生成ユニット3で成膜されるSiO膜は1.2nm/sであった。
【0020】
なお、これらのSiN膜またはSiO膜の成膜速度は、発生したプラズマの密度やこれに含まれるラジカル等の反応分子の密度に依存し、これらの反応分子と反応して成膜物質を生成する成膜ガスの放出量に依存する。また、プラズマの密度や反応分子の密度は、入力されたマイクロ波の電力および周波数と、プラズマ生成ガスの放出量に依存する。したがって上記の成膜速度は1つの条件での例であり、種々の条件が変化すると、成膜速度はこれに依存して変化する。なお上記に説明した本発明の装置で用いたマイクロ波は、表面波プラズマ生成装置で通常用いられる2.45GHzである。
【0021】
上記のように2つの成膜領域の間を往復させて、2つの異なる膜を成膜しても、このように安定した均一の厚みの薄膜が交互に成膜される理由は以下の理由によると考えられる。
【0022】
表面波プラズマ成膜装置は表面波励起プラズマを利用した高密度プラズマ成膜装置であり、プラズマ生成時に直下の基板が移動してもプラズマの状態を乱すことが無い。図4は、上記のように2つのプラズマ発生ユニットの1つにArガスをプラズマ生成ガスとして供給して表面波プラズマを発生させ、その時に基板をプラズマ発生ユニットの下方に固定(図中▲)、もう1つのプラズマ発生ユニットの下方に移動(図中◇)を繰り返した時の、プラズマの電子密度を測定した結果である。
この図から明らかなように、基板を移動させてもプラズマ中の電子密度にほとんど変化がなく、1017−3台の一定値を維持していることが分かる。
【0023】
このことから、2つのプラズマ生成ユニットの間で基板を往復運動させても、それぞれのプラズマ生成ユニットで安定した2種類の薄膜の成膜が行われることが分かる。本発明はこの表面波プラズマの特長を利用し、複数の表面波プラズマ生成ユニットの間を基板が移動する構造を備えることにより、それぞれのプラズマ生成ユニットに異なる成膜ガスを導入することで、容易に超構造膜を形成することができる。
【0024】
また、この超構造膜を構成する各々の薄膜は、これら2つのプラズマ生成ユニットに供給するプラズマ生成ガスおよび成膜ガスそれぞれの組成および流量と、これら2つのプラズマ生成ユニットそれぞれに印加するマイクロ波出力とをプラズマ生成ユニット毎に調整することによって、これら2つのプラズマ生成ユニットで異なる組成および異なる厚みの薄膜とすることが可能である。
【0025】
本発明は上記に説明した実施形態に限定されず、種々の変形実施が可能である。
【0026】
<本発明の実施形態の第1の変形実施例>
上記の説明では、成膜が行われる基板は往復運動可能な金属製コンベアベルト24に戴置されるとしたが、基板を戴置するものは往復運動が可能なものであればどのようなものであってもよい。ただし、反応室1内の圧力を一定に保つため、真空排気のコンダクタンスに影響を与えないような構造が必要である。
例えば、図5に示すような、成膜領域とほぼ同じ大きさのステージ29を設け、このステージ29の上に基板を戴置して2つの成膜領域19、20の間を往復するようにしてもよい。ここで真空引きのコンダクタンスにステージ移動による影響を与えないように、例えばステージの下側に、2つの成膜領域を合わせた程度の大きさのコンダクタンス安定化用の金属板30を更に設けるとよい。なお、この金属板30はセラミック板であってもよい。またこの金属板30は上記のステージ29の支持台として設けてもよい。
【0027】
<本発明の実施形態の第2の変形実施例>
上記の本発明の実施形態では、反応室1内にプラズマ生成ユニットを2つ設けた例を示したが、本発明は3つ以上のプラズマ生成ユニットを反応室1内に設けることも可能である。
図6は3つのプラズマ生成ユニットを6角形の反応室1に設けたものを、図2のように上面から見た図である。ガスの放出口は省略してあり、3つのプラズマ生成ユニットを隔てる防着板のみ模式的に示してある。
プラズマ生成ユニットを3つ反応室1内に設ける場合は、例えば図6に示すようにプラズマ生成ユニットを配置し、更に反応室1内に円形の回転ステージを設ければよい。
このような構成の表面波プラズマCVD装置によって、3つの異なる組成の薄膜からなる超構造膜を高スループットで成膜することができる。
【0028】
<本発明の実施形態の第3の変形実施例>
更にプラズマ生成ユニットを反応室1内に4つ設ける場合は、図7に示すように4つのプラズマ生成ユニットを配置すればよい。ここでも図6と同様にガス放出口は省略し、4つのプラズマ生成ユニットを隔てる防着板のみ模式的に示してある。
反応室1内には水平方向に2次元で移動するステージを設けてよい。
または、図8のように、反応室内に予備のスペースを設けて、複数のステージが順に移動できるようにしてもよい。
【0029】
上記の第2の変形実施例および第3の変形実施例のように、3つ以上の複数のプラズマ生成ユニットを反応室1内に設ける場合であっても、これら複数のプラズマ生成ユニットに供給するプラズマ生成ガスおよび成膜ガスそれぞれの組成および流量と、これら複数のプラズマ生成ユニットそれぞれに印加するマイクロ波出力とをプラズマ生成ユニット毎に調整することによって、これら複数のプラズマ生成ユニットで異なる組成および異なる厚みの成膜を行うことが可能である。
【0030】
上記で、本発明の実施形態を説明したが、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の態様も本発明の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0031】
1‥ 真空容器(反応室)
2‥ 第1のプラズマ生成ユニット
3‥ 第2のプラズマ生成ユニット
4‥ 第1のプラズマ生成ユニットの導波管
5‥ 第1のプラズマ生成ユニットのスロットアンテナ
6‥ 第2のプラズマ生成ユニットの導波管
7‥ 第2のプラズマ生成ユニットのスロットアンテナ
8‥ 第1のプラズマ生成ユニットの誘電体窓
9‥ 第2のプラズマ生成ユニットの誘電体窓
10‥ 第1のプラズマ生成ユニットのプラズマ生成ガス放出口
11‥ 第1のプラズマ生成ユニットの成膜ガス放出口
12‥ 第2のプラズマ生成ユニットのプラズマ生成ガス放出口
13‥ 第2のプラズマ生成ユニットの成膜ガス放出口
14〜18‥ 防着板
19‥ 第1のプラズマ生成ユニットの成膜領域
20‥ 第2のプラズマ生成ユニットの成膜領域
21‥ 第1のプラズマ生成ユニットの生成プラズマ
22‥ 第2のプラズマ生成ユニットの生成プラズマ
23‥ 基板
24‥ 金属製コンベアベルト
25、26‥ 排気口
27‥ SiN
28‥ SiO
29‥ ステージ
30‥ コンダクタンス安定化用金属板


【特許請求の範囲】
【請求項1】
共通の真空室内において基板に複数の薄膜を成膜する表面波プラズマCVD装置であって、
前記基板に成膜を行う複数のプラズマ生成ユニットと、
各々の前記プラズマ生成ユニットに設けられた、プラズマ生成ガスを放出するプラズマ生成ガス放出口と成膜ガスを放出する成膜ガス放出口と、
前記複数のプラズマ生成ユニットで成膜を行う成膜領域を前記真空室内で互いに隔てる隔壁と、
前記各々のプラズマ生成ユニットの成膜領域の間で前記基板を移動可能に戴置可能とする移動手段とを備えることを特徴とする表面波プラズマCVD装置。
【請求項2】
請求項1に記載の表面波プラズマCVD装置において、
前記複数のプラズマ生成ユニットの各々に設けられた前記プラズマ生成ガス放出口から放出されるプラズマ生成ガスおよび、前記複数のプラズマ生成ユニットの各々に設けられた前記成膜ガス放出口から放出される成膜ガスについて、各々のプラズマ生成ユニット毎に独立にそれぞれ組成およびガス流量を調整するガス調整手段を有することを特徴とする表面波プラズマCVD装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の表面波プラズマCVD装置において、
前記複数のプラズマ生成ユニットの各々に印加されるマイクロ波出力を、前記複数のプラズマ生成ユニット毎に独立に調整する出力調整手段を有することを特徴とする表面波プラズマCVD装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の表面波プラズマCVD装置において、
前記複数のプラズマ生成ユニットは、2つのプラズマ生成ユニットから構成され、
前記表面波プラズマCVD装置は、前記基板に第1の成膜を行うための第1のプラズマ生成ユニット、第1のプラズマ生成ガス放出口、および第1の成膜ガス放出口と、
前記基板に第2の成膜を行うための第2のプラズマ生成ユニット、第2のプラズマ生成ガス放出口、および第2の成膜ガス放出口と、
前記第1の成膜を行う第1の成膜領域と前記第2の成膜を行う第2の成膜領域とを隔てる隔壁とを備え、
前記移動手段は、前記第1の成膜領域と前記第2の成膜領域の間で、前記基板を往復移動可能に戴置することを特徴とする表面波プラズマCVD装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の表面波プラズマCVD装置において、
前記複数のプラズマ生成ユニットでは、それぞれ異なる組成の成膜が行われるように、それぞれのプラズマ生成ユニットに異なる組成の成膜ガスが供給されることを特徴とする表面波プラズマCVD装置。
【請求項6】
請求項2乃至5のいずれか1項に記載の表面波プラズマCVD装置において、
前記複数のプラズマ生成ユニットの各々に設けられた前記プラズマ生成ガス放出口から放出されるプラズマ生成ガスおよび、前記複数のプラズマ生成ユニットの各々に設けられた前記成膜ガス放出口から放出される成膜ガスにおいて、各々のプラズマ生成ユニット毎に独立にそれぞれ組成およびガス流量の調整を行い、
および/または前記複数のプラズマ生成ユニットの各々に印加されるマイクロ波出力において、前記複数のプラズマ生成ユニット毎に独立に調整を行うことによって、
前記各々のプラズマ生成ユニットの成膜領域で成膜される薄膜の組成および厚さが調整可能であることを特徴とする表面波プラズマCVD装置。
【請求項7】
請求項2乃至5のいずれか1項に記載のプラズマCVD装置を用いて基板に多層の薄膜を形成する成膜方法であって、
前記複数のプラズマ生成ユニットの各々に設けられた前記プラズマ生成ガス放出口から放出されるプラズマ生成ガスおよび、前記複数のプラズマ生成ユニットの各々に設けられた前記成膜ガス放出口から放出される成膜ガスにおいて、各々のプラズマ生成ユニット毎に独立にそれぞれ組成およびガス流量の調整を行い、
および/または前記複数のプラズマ生成ユニットの各々に印加されるマイクロ波出力において、前記複数のプラズマ生成ユニット毎に独立に調整を行うことによって、
前記各々のプラズマ生成ユニットの成膜領域で成膜される薄膜の組成および厚さを調整することを特徴とする成膜方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−129253(P2012−129253A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−277379(P2010−277379)
【出願日】平成22年12月13日(2010.12.13)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】