説明

誘電体、誘電体を有するディスプレイデバイス、および誘電体製造方法

【課題】ベースへの所望の接着性および非常に良好な絶縁性を有する厚膜タイプの誘電体を提供すること。
【解決手段】本発明の誘電体は、感光性組成物からなる下側誘電体層と、感光性組成物からなり、上記下側誘電体層の上に形成された上側誘電体層とを含む。上記下側誘電体層に使用される主要ガラス粉末の軟化点(T1)と、上記上側誘電体層に使用される主要ガラス粉末の軟化点(T2)と、上記主要ガラス粉末の焼成温度(T3)とが関係T1<T3<T2<T3+30℃を満たす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスプレイデバイスにおけるディスプレイに使用される誘電体に関する。より具体的には、本発明は、ディスプレイデバイスにおけるディスプレイの発光部に配置される誘電体に関する。また、本発明は、前記誘電体を有するディスプレイデバイスおよび前記誘電体を製造するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、様々なタイプのフラットパネルディスプレイデバイスが開発されている。様々なディスプレイデバイスが様々な発光理論を有するが、全ての種類のディスプレイデバイスで電極が配置され、電極間に電圧を印加することによって発光が制御される。例えば、FED(電界放出ディスプレイ)では、電界エミッタから解放される電子が蛍光体に供給されて発光する。電極をオン/オフすることによって発光が制御されるとき、誘電体(絶縁体)が様々な目的で各電極の周りに配置される。例えば、絶縁材料は、導電部の間の領域を絶縁するために導電部の間に配置される。また、絶縁材料は、電極を仕切るためにも配置される。
【0003】
誘電体および絶縁体は、同じ組成を有する場合でさえ、配置の位置および目的によって「誘電体」と呼ばれることも「絶縁体」と呼ばれることもある。このため、電極の周りに配置される絶縁材料を本明細書では以後「誘電体」と呼ぶ。しかし、本明細書における以下の技術範囲は、この使用法によって限定されない。以下に説明する技術において言及する「誘電体」は、「誘電体」と「絶縁体」との両方を含む。
【0004】
誘電体材料としてガラス粉末および無機フィラーを使用することができる。誘電体パターンを形成するために、パターン印刷、またはフォトレジストを使用するエッチングを使用することができる。しかし、パターン印刷によって微細パターンを形成するのは困難である。フォトレジストを使用するエッチングプロセスでは、通常、エッチング対象物が薄膜に限定される。導電部の間に配置される絶縁材料は厚膜でなければならないので、フォトレジストを使用するエッチング方法はこの用途には適さない。絶縁材料として厚膜を形成するために、感光性絶縁体厚膜ペーストを使用して微細パターンを形成する技術が開発されている。
【0005】
絶縁体ペーストの例として、ガラスペーストおよび無機ペーストが挙げられる。ディスプレイデバイス(例えばフラットパネルディスプレイ)を製造するとき、ほぼ排他的にガラス基板がベース基板として使用され、焼成温度は600℃以下、好ましくは550℃以下に制限される。この場合、無機フィラーがペースト中に含有されていると、焼結が抑制されて、圧密な誘電体を得るのが困難である。したがって、ディスプレイデバイスを製造するとき、主にガラスからなるガラスペーストを使用することが好ましい。この前提の下で、感光性絶縁体ペーストを使用して微細パターンを形成する以下の技術が認められる。
【0006】
特許文献1は、ガラス粉末、側鎖または分子末端にカルボキシル基とエチレン性不飽和基を有するアクリル系共重合体、光反応性化合物および光重合開始剤を含有するプラズマディスプレイパネル用感光性ガラスペーストを開示している。誘電体パターンを形成するためにこの感光性絶縁ガラスペーストが使用されるとき、まず、基板の上にガラスペーストが被覆され、次いで乾燥させて溶媒を蒸発させる。次いで、フォトマスクを使用して所定のパターンを露光する。露光の結果、露光部における有機感光性バインダーは架橋されて重合され、しかし現像されない。非露光部は、アルカリ現像によって現像されて、所望のパターンでの非焼結誘電体を得る。その後、所望の温度で焼結されて、誘電体を得る。しかし、特許文献1は、所望のベースへの良好な接着性を有する厚膜タイプの誘電体を開示しておらず、また非常に良好な絶縁性を有する誘電体も開示していない。
【0007】
特許文献2が、0.005〜0.08μmの範囲内の粒子径を有する微細酸化物粒子と、微細酸化物粒子以外の無機粒子と、感光性有機成分とを含有する感光性ペーストであって、微細酸化物粒子および有機成分の平均屈折率N1と微細酸化物粒子以外の無機粒子の平均屈折率N2が次式を満たすことを特徴とするガラス粉末タイプの感光性ペーストを開示している。
【0008】
−0.07≦N2−N1≦0.07(N2>1.65)
しかし、この参考文献は、所望のベースへの良好な接着性および非常に良好な絶縁性を有する厚膜タイプの誘電体を開示していない。また、上記のガラス粉末タイプの感光性ペーストとして、鉛を含有するガラスが使用されている。環境保護に対する意識が地球規模で高まるなか、鉛タイプのガラスの使用はできるだけ避けるべきである。他方、鉛タイプのガラスを使用して製造された誘電体の特性に匹敵する、またはそれよりも良い特性(例えば、前記接着性および/または絶縁性)を得るのは困難である。
【0009】
【特許文献1】特開平8(1996)−50811号公報
【特許文献2】特開2004−318116号公報
【特許文献3】米国特許第3380381号明細書
【特許文献4】米国特許第2927022号明細書
【特許文献5】米国特許第5032490号明細書
【特許文献6】米国特許第2760863号明細書
【特許文献7】米国特許第2850445号明細書
【特許文献8】米国特許第2875047号明細書
【特許文献9】米国特許第3097096号明細書
【特許文献10】米国特許第3074974号明細書
【特許文献11】米国特許第3097097号明細書
【特許文献12】米国特許第3145104号明細書
【特許文献13】米国特許第3427161号明細書
【特許文献14】米国特許第3479185号明細書
【特許文献15】米国特許第3549367号明細書
【特許文献16】米国特許第4162162号明細書
【特許文献17】米国特許第5132490号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、所望のベース(例えば基板)への良好な接着性および非常に良好な絶縁性を有する厚膜タイプの誘電体を提供することである。また、好ましくは、本発明の目的は、環境に優しい鉛を含まないタイプの誘電体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、下側誘電体層と、前記下側誘電体層の上に形成された上側誘電体層とを備える誘電体であって、前記下側誘電体層が第1の主要ガラス粉末を含み、前記上側誘電体層が第2の主要ガラス粉末を含み、前記第1の主要ガラス粉末の軟化点(T1)と、前記第2の主要ガラス粉末の軟化点(T2)と、最大体積で存在する主要ガラス粉末の焼成温度(T3)とが関係T1<T3<T2<T3+30℃を満たすことを特徴とする誘電体に関する。
【0012】
本発明はさらに、
主要ガラス粉末、樹脂バインダー、および有機溶媒をそれぞれ含む下側誘電体組成物および上側誘電体組成物を提供するステップと、
基板を提供するステップと、
前記基板の上に前記下側誘電体組成物を被覆するステップと、
下側誘電体層を形成するために前記下側誘電体組成物および基板を乾燥させるステップと、
前記下側誘電体層の上に前記上側誘電体組成物を被覆するステップと、
上側誘電体層を形成するために前記上側誘電体組成物を乾燥させるステップと、
T1を下側誘電体層の主要ガラス粉末の軟化点、T2を上側誘電体層の主要ガラス粉末の軟化点、T3を体積で最大量存在する主要ガラス粉末の焼成温度として、T1<T3<T2<T3+30℃という関係を満たす焼成温度で前記下側誘電体層および前記上側誘電体層を焼成するステップと
を含むことを特徴とする誘電体製造方法に関する。
【0013】
上記下側誘電体層に使用される主要ガラス粉末の軟化点(T1)と、上記上側誘電体層に使用される主要ガラス粉末の軟化点(T2)と、焼成温度(T3)とが関係T1<T3<T2<T3+30℃を満たすという条件の下で下側および上側誘電体が焼結されるとき、ベースへの所望の接着性および良好な絶縁性を有する絶縁体を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明は、下側誘電体層と、上記下側誘電体層の上に形成された上側誘電体層とを有し、上記下側誘電体層に使用される主要ガラス粉末の軟化点(T1)と、上記上側誘電体層に使用される主要ガラス粉末の軟化点(T2)と、上記主要ガラス粉末の焼成温度(T3)とがT1<T3<T2<T3+30℃という関係を満たすことを特徴とする誘電体を提供する。前記主要ガラス粉末は、複数のガラス粉末が使用されるときは、体積単位で測定して最大の含有量を有するガラス粉末を指す。すなわち、T3を決定する際、焼成温度(T3)は、第1の主要ガラス粉末または第2の主要ガラス粉末のいずれかで大きい体積で存在するほうの焼成温度を指す。典型的な焼成温度は600℃以下である。一実施形態では、焼成温度は550℃以下である。さらなる実施形態では、焼成温度は500℃から600℃の範囲内である。本発明の誘電体は、感光性組成物を使用して、またはペーストを所定のパターンに印刷することによって形成することができる。
【0015】
T1とT3は、T3−30℃<T1<T3という関係を満たすことが好ましい。また、上記下側誘電体層および/または上側誘電体層に使用される主要ガラス粉末は、誘電体の焼成温度で非晶質であってよい。
【0016】
本発明の誘電体では、上記下側誘電体層および/または上側誘電体層に使用される主要ガラス粉末は、誘電体層中のガラス成分の総量に対して50〜100体積%の量で含有することができる。上記下側誘電体層および/または上側誘電体層は、唯一の無機成分としてガラスを含有することができる。
【0017】
本発明の誘電体では、上記下側および上側誘電体層に使用される主要ガラス粉末は、ビスマスタイプのガラス粉末であることが望ましい。上記下側誘電体層に使用される主要ガラス粉末は、Bi−Al−B−Si−Zn−Baベースのガラス粉末またはBi−Al−B−Si−Zn−Caベースのガラス粉末であることが望ましい。上記上側誘電体層に使用される主要ガラス粉末は、Bi−Al−B−Si−Zn−Baベースのガラス粉末またはBi−Al−B−Si−Zn−Caベースのガラス粉末であることが望ましい。
【0018】
また、一実施形態(誘電体組成物が感光性誘電体組成物であるとき)での上記誘電体では、上記上側誘電体層に使用される主要ガラス粉末が、Fe、V、Ti、CuおよびCoからなる群から選択される少なくとも1つの元素を含有することが望ましい。
【0019】
さらに、上記下側および上側誘電体層に使用される主要ガラス粉末は、鉛を実質的に含有せず、上記下側および上側誘電体層は、フィラーを実質的に含有せず、かつ/または上記下側および上側誘電体層は、アルカリ化合物を実質的に含有しないことが望ましい。
【0020】
本発明は、上記誘電体を使用するディスプレイデバイスを含む。
【0021】
さらに、本発明は、主要ガラス粉末、樹脂バインダー、および有機溶媒をそれぞれ含む下側誘電体組成物および上側誘電体組成物を提供するステップと、基板を提供するステップと、前記基板の上に前記下側誘電体組成物を被覆するステップと、下側誘電体層を形成するために前記下側誘電体組成物および基板を乾燥させるステップと、前記下側誘電体層の上に前記上側誘電体組成物を被覆するステップと、上側誘電体層を形成するために前記上側誘電体組成物を乾燥させるステップと、T1を下側誘電体層の主要ガラス粉末の軟化点、T2を上側誘電体層の主要ガラス粉末の軟化点、T3を体積で最大量存在する主要ガラス粉末の焼成温度として、T1<T3<T2<T3+30℃という関係を満たす焼成温度で前記下側誘電体層および前記上側誘電体層を焼成するステップとを含むことを特徴とする誘電体製造方法に関する。
【0022】
本発明の一実施形態は、下側誘電体層と、上記下側誘電体層の上に形成された上側誘電体層とを有し、上記下側誘電体層に使用される主要ガラス粉末の軟化点(T1)と、上記上側誘電体層に使用される主要ガラス粉末の軟化点(T2)と、焼成温度(T3)とがT1<T3<T2<T3+30℃という関係を満たす誘電体を提供する。特に、本発明の誘電体は、ベース(例えば、ガラス基板を含む基板)への所望の接着性と、非常に良好な絶縁性とを提供する厚膜タイプの誘電体である。したがって、本発明の誘電体は、ディスプレイデバイスにおける発光部に適切に配置することができる。本発明の誘電体は、2層を有し、各層が特定の相対軟化点を有し、特定の焼成温度が製造中に採用されるので、優れた接着性および絶縁性を有する。
【0023】
本発明の誘電体は、感光性組成物を使用して、またはペーストを所定のパターンに印刷することによって形成することができる。感光性組成物が使用されるとき、モノマーおよび開始剤が感光性組成物に添加される。感光性組成物のコーティング被膜の上に所定のパターンが露光され、その後、現像されて、所定のパターンでの誘電体を得る。感光性組成物が使用されるとき、微細パターンを形成することが可能である。また、スクリーン印刷などによってペーストで所定のパターンに被覆することもできる。この方法が使用されるとき、コーティング被膜を乾燥させ、焼成することによって、所定のパターンでの誘電体を得ることができる。この場合、上記下側誘電体層に使用される主要ガラス粉末の軟化点は、焼成温度よりも低く、しかし焼成温度よりも30℃低い温度よりは高いことが好ましい。すなわち、T1とT3が、T3−30℃<T1<T3という関係を満たすことが好ましい。また、上記下側誘電体層および/または上側誘電体層に使用される主要ガラス粉末は、誘電体の焼成温度で非晶質であることが好ましい。上記下側誘電体層および/または上側誘電体層に使用される主要ガラス粉末の含有量は、誘電体層中のガラス成分の総量に対して50〜100体積%の範囲内であることが好ましい。ベースへの所望の接着性および絶縁性は、上記の限定項目を採用することによって実現することができる。上記下側誘電体層および/または上側誘電体層は、唯一の無機成分としてガラスを含有することが好ましい。
【0024】
上記下側誘電体層および上側誘電体層に使用される主要ガラス粉末は、ビスマスタイプのガラス粉末であることが好ましい。ビスマスタイプのガラス粉末を使用することによって、ベースへの所望の接着性および絶縁性をさらに改善することができる。前記ビスマスタイプのガラス粉末の例は、Bi−Al−B−Si−Zn−Baベースのガラス粉末およびBi−Al−B−Si−Zn−Caベースのガラス粉末を含む。
【0025】
上記上側誘電体層に使用される主要ガラス粉末が、Fe、V、Ti、CuおよびCoからなる群から選択される少なくとも1つの元素をさらに含有する場合、ベースへの所望の接着性および絶縁性をさらに改善することができる。
【0026】
地球規模の環境保護に貢献するために、上記下側誘電体層および上側誘電体層は、鉛を実質的に含有しない(鉛を本質的に含まない)ことが好ましい。上記下側誘電体層および上側誘電体層は、無機フィラーを実質的に含有しない(フィラーを本質的に含まない)ことが好ましく、それにより低温で焼成を行うことができ、製造効率を向上させることができる。また、上記下側誘電体層および上側誘電体層は、アルカリ化合物を実質的に含有しない(アルカリ化合物を本質的に含まない)ことが好ましく、それにより誘電体の電気的な信頼性を改善することができる。
【0027】
本発明は、誘電体が2層(下側誘電体層と上側誘電体層)を有し、上記下側誘電体層に使用される主要ガラス粉末の軟化点(T1)と、上記上側誘電体層に使用される主要ガラス粉末の軟化点(T2)と、上記主要ガラス粉末の焼成温度(T3)とがT1<T3<T2<T3+30℃という関係を満たすことを特徴とする。
【0028】
様々なパラメータが、ベースへの誘電体の接着性およびその絶縁性に影響を及ぼす。それらのパラメータの1つとして、使用されるガラスの軟化温度と焼成温度との関係がある。焼成温度よりも低い軟化点を有する主要ガラス粉末が使用されるとき、基板および他のベース層への誘電体の接着性を高めることができ、しかしガラスの活性融解の結果、ガラスから気泡が発生する可能性が高いことが判明している。これは、圧密化に悪影響を及ぼし、また、不良な絶縁の可能性を高めることがある。他方、焼成温度よりも高い軟化点を有するガラス粉末が使用される場合、気泡が発生する可能性はほぼないが、ベース層へのガラスの接着性が悪く、これは不良な接着/不良な絶縁の可能性を高める。
【0029】
上記の接着性および圧密化は相反する性質であるので、基板上に1層の誘電体を形成することによって上記の性質の両方を満たすことができる誘電体を得るのは困難である。図1に示されるように、基板10の上に誘電体層12を2層構造(下側誘電体層14、上側誘電体層16)として形成することによって、これらの性質の両方を実現することができる。
【0030】
下側誘電体層に使用される主要ガラス粉末の軟化点は、基板または他のベース層への良好な接着性を実現するために低くすべきである。
【0031】
通常の金属からなる電極が下側および上側誘電体層の上下に配置されるとき、誘電体層の圧密が十分に良好でなくピンホールが形成されている場合、金属がピンホール内に進入して不良な絶縁を生じる。そこで、本発明者は、金属の進入を受けやすい上側誘電体層での誘電体の十分な圧密化を保証するために、上側誘電体に使用される主要ガラス粉末の軟化点を上昇させるべきであると考えた。
【0032】
上記の結果に基づいて、上側誘電体組成物の軟化点を下側誘電体組成物の軟化点よりも高くすることが有益であると考えられる。
【0033】
特定の軟化点を有する主要ガラス粉末を使用するときに焼成温度を高くすると、特定の焼成温度までは圧密な誘電体が得られることが判明した。しかし、焼成温度を高くしすぎると、誘電体中に気泡が生じ、誘電体の圧密化を劣化させる。また、上述したように、誘電体が2層構造を有するときに上側および下側誘電体に関して十分な圧密化を実現することができない場合、下側誘電体層が上側誘電体層から分離されることもある。
【0034】
適切な焼成温度は、下側誘電体層に使用される主要ガラス粉末の軟化点よりも高く、しかし上側誘電体層に使用される主要ガラス粉末の軟化点よりも低くすべきである。また、上側誘電体層に使用される主要ガラス粉末の軟化点と焼成温度との温度差はあまり大きくすべきでないことが判明している。すなわち、上記下側誘電体層に使用される主要ガラス粉末の軟化点(T1)と、上記上側誘電体層に使用される主要ガラス粉末の軟化点(T2)と、上記主要ガラス粉末の焼成温度(T3)とが、関係T1<T3<T2<T3+30℃を満たすべきである。
【0035】
上記の結果に基づいて、本発明は、誘電体が2層(下側誘電体層および上側誘電体層)で形成され、上側誘電体層に含有される主要ガラス粉末の軟化点が下側誘電体層に含有される主要ガラス粉末の軟化点よりも高く、かつT1<T3およびT3<T2<T3+30℃という条件の下で焼成が行われるときに、ベースへの良好な接着性および非常に良好な接着性を得ることができるという結論に達した。これが本特許出願の要点である。
【0036】
(誘電体の組成)
本発明では、それぞれ上側誘電体層および下側誘電体層を形成するために、上側誘電体のための組成物と下側誘電体のための組成物とが調製されて使用される。
【0037】
感光性組成物が誘電体組成物である場合、組成物は、(1)ガラス粉末、(2)モノマー、(3)開始剤、(4)樹脂バインダー、および(5)有機溶媒を含有する。誘電体組成物が感光性組成物でなく、かつスクリーン印刷または当業者に知られている他の塗布法によってパターンが形成される場合、誘電体組成物から(2)モノマーおよび(3)開始剤をなくすことも可能である。また、組成物は、他の添加剤(他の成分)(6)として、酸化防止剤、粘着防止剤、UV吸収剤、または当業者に知られている他の添加剤を含有することもある。必ずしも必要ではないが、誘電体組成物が、唯一の無機成分としてガラス粉末(ガラス成分)を含むことが好ましい。ガラス成分が唯一の無機成分である場合、粉末状成分の圧密焼結構造を、焼成中に比較的低温で簡単に得ることができる。
【0038】
(1)ガラス粉末
本発明の誘電体では、上側および下側誘電体層に使用される主ガラスの軟化点が制御される。上述したように、「主要ガラス粉末」は、本明細書では、複数のガラス粉末が使用されるときには、体積で測定して最大の含有量を有するガラス粉末を指す。例えば、組成物が、50体積%のガラス粉末Aと、30体積%のガラス粉末Bと、20体積%のガラス粉末Cとを含有する場合、主要ガラス粉末はガラス粉末Aである。主要ガラス粉末の含有量は、誘電体層を形成するために誘電体に使用されるガラス成分の総量に対して50〜100体積%の範囲内であることが好ましく、より好ましくは80〜100体積%の範囲内である。上側誘電体層に使用される主要ガラス粉末の含有量は、下側誘電体層に使用される主要ガラス粉末の含有量と異なっていてもよい。
【0039】
2つ以上の主ガラスが存在するとき、主要ガラスの少なくとも1つが本発明で指定される軟化点に関する要件を満たす場合に、本発明の要件が満たされたとみなす。例えば、50体積%のガラスAと50体積%のガラスBが使用される場合、ガラスAまたはガラスBのいずれかが軟化点に関する要件を満たせば十分である。
【0040】
本発明では、上側誘電体層に含有される主要ガラス粉末の軟化点T2は、焼成温度T3よりも高い。また、T2は、T3よりも30℃以上高くならないように設定される。より好ましくは、T2は、T3よりも15℃以上高くならないように設定される。すなわち、T3<T2<T3+15℃である。この温度範囲が満たされる場合、上側誘電体層に形成されるピンホールが少なく、またはピンホールが全く形成されず、良好な圧密を実現することができ、不良な絶縁を防止することができる。
【0041】
本発明では、下側誘電体層中の主要ガラス粉末の軟化点は、焼成温度よりも低い。この軟化点は、焼成温度よりも低く、しかし焼成温度よりも30℃低い温度よりは高いことが好ましい。すなわち、T3−30℃<T1<T3である。より具体的には、T3−15℃<T1<T3である。この温度範囲が満たされるとき、ベースへの下側誘電体層の接着を実現することができる。
【0042】
電極から誘電体層への金属成分の拡散によって引き起こされる不良な絶縁を防止するために、焼成温度は500〜600℃の範囲内であることが好ましく、より好ましくは520〜570℃の範囲内である。本特許出願における焼成温度とは、被覆被膜が焼結されるときのピーク加熱温度を指す。例えば、温度が室温から520℃に上昇され、520℃で20分間保たれ、次いで冷却される場合、焼成温度は、最高温度である520℃である。
【0043】
主要ガラス粉末以外のガラス粉末(本明細書では以後、「副ガラス粉末」と呼ぶことがある)が誘電体層に含有されるとき、副ガラス粉末の軟化点は、主要ガラス粉末の軟化点とは異なっていてよく、また、本特許出願において主要ガラス粉末に関して指定される軟化点範囲から外れていてもよい。必要に応じて様々な成分のガラスを副ガラスとして使用することができる。
【0044】
また、上記下側誘電体層および/または上側誘電体層に使用される主要ガラス粉末は、誘電体の焼成温度で非晶質であることが好ましい。焼成温度で非晶質である場合、ガラスの融解と共に圧密プロセスを一様に行うことができる。他方、焼成温度で結晶化されている場合、結晶化と共に圧密に悪影響が及ぼされることがあり、不良な絶縁をもたらす。
【0045】
主要ガラス粉末に対する特別な限定はないが、環境への影響を考慮して、鉛を含まないガラス粉末が使用されることが好ましい。例えば、鉛を実質的に含有しない(鉛を本質的に含まない)ビスマスタイプのガラス粉末を使用することが好ましい。この理由は、鉛を含まない他のガラスと比較して、約500〜600℃の低温で行われる融解によって圧密な焼結被膜を形成するようなガラス設計が簡単であるためである。また、ガラス設計が簡単であるので、誘電体中に存在するのが望ましくないアルカリ金属を含有しない誘電体を簡単に製造することができる。ここで、「鉛を実質的に含有しない」とは、避けられない不純物としての鉛の含有は許されることを意味する。鉛含有量は、100ppm以下であることが好ましく、より好ましくは1ppm以下である。現在利用可能な分析器によって鉛含有分を検出することができないことがより一層好ましい。
【0046】
主要ガラス粉末の好ましい組成物の例は、Bi−Al−B−Si−Zn−BaベースのガラスまたはBi−Al−B−Si−Zn−Caベースのガラスである。非晶質ガラスを所望の軟化点(500〜600℃の範囲内)で得ることができるので、これらのビスマスタイプのガラスを使用することが好ましい。Bi−Al−B−Si−Zn−BaベースのガラスまたはBi−Al−B−Si−Zn−Caベースのガラスの総量は、誘電体層の総ガラス含有量に対して40〜100重量%の範囲内であることが好ましい。100重量%の場合、含有されるガラス粉末が全てBi−Al−B−Si−Zn−Baベースのガラス粉末またはBi−Al−B−Si−Zn−Caベースのガラス粉末であることを意味する。
【0047】
必要であれば、他の組成を有する主要ガラス粉末を使用することも可能である。他の組成の例として、B−Si、Zn−B−Si、Al−B−Si、Bi−Zn−Si−Alなどが挙げられる。
【0048】
上側誘電体層に含有されるガラスは、Fe、V、Ti、Cu、およびCoからなる群から選択される少なくとも1つの元素をさらに含有することが好ましい。ガラスがこれらの元素を含有するとき、UV透過率が低くなり、露光量が低減される。その結果、生産性を向上させることができる。これらの元素の酸化物の重量で測定したこれらの元素の重量は、ガラス粉末の重量に対して0.1〜2.0重量%の範囲内であることが好ましい。
【0049】
主要ガラス粉末の軟化点は、示差熱分析(DTA)によって測定することができる。
【0050】
主要ガラス粉末の含有量は通常、誘電体組成物の総量に対して50〜70重量%の範囲内である。しかし、本発明はこの範囲に限定されない。
【0051】
(2)モノマー
誘電体組成物に光が照射されると、モノマーは重合されてポリマーになる。露光された領域で、組成物に含まれたモノマーは、現像中に除去されていない硬化物質をポリマー形成する。
【0052】
モノマーのタイプには特別の限定はない。例えば、本発明では、光硬化性モノマー成分として、付加重合可能なエチレン性不飽和化合物を少なくとも1種類含み、かつ重合可能なエチレン基を少なくとも1つ有するモノマー成分を使用することができる。
【0053】
このタイプの化合物は、フリーラジカルの存在によりポリマー形成を開始し、鎖伸長付加重合を行うことができる。モノマー化合物は非ガス状態にあり、つまり100℃よりも高い沸点を有する。これは有機重合バインダーを可塑化させることもできる。
【0054】
単独で、または他のモノマー組み合わせて使用可能な好ましいモノマーの例は、t−ブチル(メタ)アクリレート、1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、デカメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、2,2−ジメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、特許文献3に記載された化合物、2,2−ジ(p−ヒドロキシフェニル)プロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリトリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ポリオキシエチル−1,2−ジ−(p−ヒドロキシエチル)プロパンジメタアクリレート、ビスフェノールAジ−[3−(メタ)アクリルオキシ−2−ヒドロキシプロピル]エーテル、ビスペノールAジ−[2−(メタ)アクリルオキシアクリルオキ]エーテル、1,4−ブタンジオールジ−(3−メタアクリルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)エーテル、トリエチレングリコールジメタアクリレート、ポリオキシプロピルトリメチロールプロパントリアクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,2,4−ブタンジオールトリ(メタ)アクリレート、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1−フェニルエチレン−1,2−ジメタアクリレート、ジアリルフマレート、スチレン、1,4−ベンゼンジオールジメタアクリレート、1,4−ジイソプロペニルベンゼン、1,3,5−トリイソプロピルペニルベンゼンを含む(ここで「(メタ)アクリレート」は、アクリレートとメタアクリレートとの両方を示す略記である)。
【0055】
有用な化合物は、分子量が少なくとも300であるエチレン性不飽和化合物であり、例えば、1〜10個のエーテル結合を有するC2〜C15のアルキレングリコールまたはポリアルキレングリコール、および特許文献4に記載されている化合物、例えば、特に末端基として存在するときに付加重合可能なエチレン結合を有する化合物から調製されたアルキレンまたはポリアルキレングリコールジアクリレートなどである。
【0056】
他の有用なモノマーは、参照として本明細書に組み込む特許文献5に提示されている。
【0057】
好ましいモノマーには、ポリオキシエチレン化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチル化ペンタエリトリトールトリアクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリトリトールモノヒドロキシペンタアクリレート、および1,10−デカンジオールジメタアクリレートが含まれる。
【0058】
他の好ましいモノマーには、モノヒドロキシポリカプロラクトンモノアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート(分子量約200)、およびポリエチレングリコールジメタアクリレート(分子量約400)が含まれる。
【0059】
モノマー含有量は、使用されるモノマーのタイプに従って適宜設定することができる。一般に、モノマー含有量は、誘電体組成物の総量に対して2〜10wt%である。
【0060】
(3)開始剤
開始剤は、光を吸収するときに、モノマーの重合を開始させるため使用する。開始剤のタイプは特に限定されない。例えば、185℃以下の温度で熱的には不活性であるが、光への露出時にフリーラジカルを発生する開始剤は、本発明において光開始剤として使用することができる。これらの光開始剤は、共役炭素環基中における2つの分子内環を有する化合物として、置換または非置換多核キノンを含む。例えば、9,10−アントラキノン、2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、オクタメチルアントラキノン、1,4−ナフトキノン、9,10−フェナントレンキノン、ベンゾアントラキノン−7,12−ジオン、2,3−ナフタセン−5,12−ジオン、2−メチル−1,4−ナフタキノン、1,4−ジメチルアントラキノン、2,3−ジメチルアントラキノン、2−フェニルアントラキノン、2,3−ジフェニルアントラキノン、レテンキノン、7,8,9,10−テトラヒドロナフタセン−5,12−ジノン、および1,2,3,4−テトラヒドロゾアントラセン−7,12−ジオンを含む。他の有用な光開始剤は、特許文献6に記載されている(ただし、それらのいくつかは85℃の低温でさえ熱的に活性であり、ベンゾインやピバロインなどのビシナルケタルドニルアルコール;ベンゾインメチルエーテルおよびベンゾインエチルエーテルまたは他のアシロインエーテル;α−メチルベンゾイン、α−アリルベンゾイン、α−フェニルベンゾイン、チオキサントンおよびその誘導体、ならびに水素供与体を含有する炭化水素置換芳香族アシロインがある)。
【0061】
開始剤として、光還元染料および還元剤を使用することができる。それらは、特許文献7、8、9、10、11、および12に記載されている。また、(特許文献13、14、および15に記載されており、それらの内容を参照として本明細書に組み込む)フェナジン、オキサジン、キノン、例えばミヒラーケトン、エチルミヒラーケトン、およびベンゾフェノンなどロイコ染料を含有する水素供与体を有する他の2,4,5−トリフェニルイミダゾリル二量体、ならびにそれらの混合物も存在する。また、光開始剤および光抑制剤に加えて、特許文献16に記載されている増感剤が有用である。
【0062】
開始剤のタイプおよびその含有量は、使用されるモノマーに従って適宜設定することができる。一般的に、開始剤の含有量は、誘電体組成物の総量に対して0.1〜5wt%である。
【0063】
(4)樹脂バインダー
樹脂バインダーは、十分な硬さを有する誘電体の形成を助けることができる。形成された誘電体の硬さをある程度を保証するため、モノマーの重合によりポリマーは形成される。しかし、多くの場合に硬さが不十分である。このため、通常は樹脂バインダーが誘電体組成物に添加される。樹脂バインダーのタイプは特に限定されない。上述したように、そのポリマーバインダーは、誘電体組成物の補助構成成分である。その水性現像可能性を考慮して、高い解像度を有するものを選択することが好ましい。以下のバインダーがこれらの要件を満たすことが理解される。すなわち、これらのバインダーは、(1)C1〜C10アルキルアクリレート、C1〜C10アルキルメタアクリレート、スチレン、置換スチレン、またはそれらの組合せを含有する非酸性コモノマー、および(2)総ポリマー重量の少なくとも15wt%であるエチレン性不飽和カルボン酸部を含有する酸性コモノマーから調製されるコポリマーまたはインターポリマー(混合されたポリマー)を含む。
【0064】
組成物中の酸性コモノマー成分の存在が効果的に作用することがある。組成物は、その酸性機能基により、0.4wt%炭酸ナトリウム水溶液など水性塩基中で現像することができる。酸性コモノマーが15%未満の濃度で存在する場合、組成物は水性塩基によって完全には洗い落とされない。酸性コモノマーが30%よりも高い濃度で存在する場合、組成物の安定性は現像条件下で低く、像を形成するための部分において部分的な現像しか生じない。適当な酸性コモノマーの例として、アクリル酸、メタアクリル酸、クロトン酸、またはエチレン性不飽和モノカルボン酸、同様に、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、ビニルコハク酸、マレイン酸、または他のエチレン性不飽和ジカルボン酸、それらのヘミエステル、ならびに時としてそれらの無水物およびそれらの混合物が含まれる。メタアクリルポリマーは、低酸素雰囲気下でクリーンに燃焼されるのでアクリルポリマーよりも好ましい。
【0065】
上記の非酸性コモノマーが上記のアルキルアクリレートまたはアルキルメタアクリレートである場合、非酸性コモノマーは、ポリマーバインダーの少なくとも50wt%、好ましくは70〜75%を構成することが好ましい。非酸性コモノマーがスチレンまたは非置換スチレンである場合、非酸性コモノマーは好ましくは酸無水物であり、50wt%がポリマーバインダーであり、残りの50wt%が無水マレイン酸のヘミエステルである。α−メチルスチレンが、好ましい置換スチレンである。
【0066】
好ましくはないが、ポリマーバインダーの非酸性部は、ポリマーのアルキルアクリレート、アルキルメタアクリレート、スチレン、または置換スチレン部を置換する他の非酸性コモノマーを約50%以下含むことができる。例として、アクリロニトリル、ビニルアセテート、およびアクリルアミドが含まれる。しかし、この場合、完全な燃焼はより困難であるので、そのようなモノマーは、好ましくはポリマーバインダーの総量の約25wt%未満の量で使用される。上述した様々な基準をそれぞれ満たす限り、バインダーとして、単一のコポリマーまたはコポリマーの組合せを使用することが許される。上記のコポリマーに加えて、少量の他のポリマーバインダーを添加することもできる。その例として、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリイソブチレン、エチレンプロピレンコポリマー、または他のポリオレフィン、およびまたは酸化ポリエチレンおよび低級アルキレンオキシドなどのポリエーテルを含む。
【0067】
これらのポリマーは、アクリルエステル重合の分野で一般に使用される溶液重合技法によって製造することができる。
【0068】
典型的には、上記の酸性アクリルエステルポリマーは、以下のようにして製造することができる。比較的低い沸点(75〜150℃)を有する有機溶媒中で、αまたはβ−エチレン性不飽和酸(酸性コモノマー)を1つまたは複数の共重合可能なビニルモノマー(非酸性コモノマー)と混合して10〜60%のモノマー混合溶液を得る。その後、得られたモノマー中に、重合触媒を添加することによって重合し、混合物を通常の圧力で、溶媒の還流温度で加熱することによって、上記ポリマーを製造することができる。重合反応が本質的に完了した後、生成された酸性ポリマー溶液が室温まで冷却される。試料が回収され、ポリマーの粘度、分子量、および酸当量が測定される。
【0069】
酸を含有する上記ポリマーバインダーは、50,000未満の分子量を有することが好ましい。
【0070】
樹脂バインダーの含有量は、モノマーのタイプおよびその量、他の成分のタイプおよびその量に従って適宜設定することができる。一般に、樹脂バインダーは、誘電体組成物の総量に対して5〜20wt%の範囲で含まれる。
【0071】
(5)有機溶媒
誘電体組成物は有機溶媒を含む。有機溶媒の主な目的は、誘電体組成物の微細粉砕固形物の拡散溶液を、セラミックまたは他の基板の上に簡単に塗布させることができる形にすることである。したがって、まず、固形分の適当な安定性を維持でき、固形分を拡散することができる有機媒体を使用することが好ましい。第2に、拡散溶液に良好なコーティング特性をもたらすことができるレオロジー特性の有機溶媒を使用することが好ましい。
【0072】
有機溶媒は、溶媒混合物であってもよい。溶媒成分は、ポリマーまたは他の有機成分が中に完全に溶解されている溶媒成分から、適宜選択されるべきである。溶媒は、ペースト組成物の他の成分に対して不活性(無反応性)であるべきである。
【0073】
大気圧下での比較的低い温度でのコーティングによってさえ拡散溶液から蒸発させることができるように、十分に高い揮発性を有する溶媒を選択する必要がある。しかし、印刷プロセス中に通常室温でスクリーン上のペーストが急速に乾燥される程まで揮発性がある溶媒を使用することは望ましくない。ペースト組成物中で使用されることが好ましい溶媒は、通常の圧力で300℃未満、好ましくは250℃未満の沸点を有する。そのような溶媒の例には、脂肪族アルコール、酢酸エステル、またはプロピオン酸エステル、および上記アルコールの他のエーテル、松脂、αまたはβ−テルピネオール、またはそれらの混合物、エチレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、ブチルセロソルブアセテート、およびエチレングリコールの他のエステル、ブチルカルビトール、ブチルカルビトールアセテート、および他のカルビトールエステル、およびテキサノール(登録商標)(2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート)並びに他の適当な溶媒が含まれる。
【0074】
混合される有機溶媒の量は、誘電体組成物のコーティング時に達成される粘度、他の成分のタイプ、混合される量を考慮して決定することができる。一般に、有機溶媒は、誘電体組成物の総量に対して15〜40wt%で含まれる。有機溶媒の添加により、通常は、ペースト状の誘電体組成物が得られる。
【0075】
(6)他の添加剤
上記の成分に加えて、本発明の誘電体組成物中に、以下の添加成分を加えることができる。これらの添加剤の例には、酸化防止剤、粘着防止剤、UV吸収剤、染料などが挙げられる。また、この分野でよく使用されている分散剤、安定剤、可塑剤、剥離剤、ストリップ剤、消泡剤、および保湿剤を組成物中に加えることもできる。適当な材料は、本明細書に参照として組み込む特許文献17に一般に提示されている。それらの含有量は特に限定されない。含有量は、所要の性能、他の材料のタイプなどに従って適宜決定することができる。しかし、上述したように有機成分が使用される場合、添加される有機成分の量を低いレベルに抑えて、焼成中の添加剤の発泡による絶縁不良を防止することが好ましい。
【0076】
また、本発明では、下側誘電体層および上側誘電体層にフィラーを本質的に含まないことが好ましい。フィラーが含まれない場合、ガラスの融解による緻密化が、より低い温度で実現される。ここで、「フィラーを本質的に含まない」とは、避けられない不純物としての少量のフィラーの包含を許容する概念である。フィラー含有量は、好ましくは20wt%以下、より好ましくは5wt%以下である。現在既存の分析器によってフィラーを検出することができないことが最も好ましい。
【0077】
また、本発明では、下側誘電体層および上側誘電体層にアルカリ化合物を本質的に含まないことが好ましい。アルカリ化合物が含まれない場合、電気的信頼性が損なわれにくい。この理由は、アルカリイオンは簡単に移動され、ショートなどの損壊をもたらすことがあるためである。ここで「アルカリ化合物を本質的に含まない」とは、避けられない不純物として含まれる少量のアルカリ化合物の包含を許容する概念である。アルカリ化合物含有量は、好ましくは1wt%以下、より好ましくは0.1wt%以下である。現在既存の分析器によってアルカリ化合物を検出することができないことが最も好ましい。
【0078】
本発明は、上記の誘電体を有するディスプレイデバイスを含む。本発明のディスプレイパネルまたはデバイスは、電界放出ディスプレイ(FED)を使用することができる。FEDでは、例えば図2に示されるように、カソード電極22、エミッタ24、ゲート絶縁被膜26、およびゲート電極28をガラス基板20の上に積層することによって形成される積層体と、アノード電極32および蛍光体34をガラス基板30の上に積層することによって形成される積層体とが互いに向かい合わせて配置され、光36がエミッタ24から蛍光体34に供給される。この構造では、本特許出願の上記誘電体を、カソード電極22とゲート電極28とを絶縁するために使用されるゲート絶縁被膜26として配置することができる。この場合、優れた精度の微細パターンを有する上記誘電体を使用することによってデバイス自体の耐久性を向上させることができる。
【0079】
本発明は、以下のステップを有する誘電体製造方法を含む。ガラス粉末、樹脂バインダー、および有機溶媒を含有する下側誘電体組成物が基板の上に被覆されるステップ;下側誘電体層を形成するために上記下側誘電体組成物が乾燥されるステップ;ガラス粉末、樹脂バインダー、および有機溶媒を含有する上側誘電体組成物が上記下側誘電体層の上に被覆されるステップ;上側誘電体層を形成するために上記上側誘電体組成物が乾燥されるステップ;上記下側誘電体層に使用される主要ガラス粉末の軟化点(T1)、上記上側誘電体層に使用される主要ガラス粉末の軟化点(T2)、および焼成温度(T3)に関してT1<T3<T2<T3+30℃という関係を満たす焼成温度で上記下側および上側誘電体層が焼結されるステップ。
【0080】
本発明で使用される誘電体組成物は感光性組成物であってよい。誘電体組成物が感光性組成物である場合、下側および上側誘電体組成物は、モノマーおよび開始剤を含有する。
【0081】
以下、本発明の製造方法を、図面に基づいて説明する。以下に説明する製造方法では、誘電体組成物が感光性組成物である。誘電体組成物が感光性組成物である場合、組成物は、スクリーン印刷を行い、次いで乾燥および焼成することによって所望のパターンで被覆される。より具体的には、プロセスが以下のステップを含む。(1)下側誘電体組成物を被覆するステップ、(2)乾燥するステップ、(3)上側誘電体組成物を被覆するステップ、(4)乾燥するステップ、(5)下側および上側誘電体層を焼結するステップ。図3は、本発明の誘電体製造方法における各ステップを例示する流れ図である。この図に示されるように、製造方法はステップ1〜7を有する。図4は、図3に示される各ステップをより詳細に示す。
【0082】
第1のステップで、ガラス粉末、モノマー、開始剤、樹脂バインダー、および有機溶媒を含有する下側誘電体組成物(204)が基板(202)の上に被覆される(図3:102、図4(A))。前記下側誘電体組成物(204)は、スクリーン印刷を行う、またはディスペンサを使用するコーティング手段(206)によってガラス基板(202)の表面全体に被覆される。
【0083】
第2のステップで、下側誘電体層(208)を形成するために上記の下側誘電体組成物が乾燥される(図3:104、図4(B))。導電(誘電)組成物を乾燥させることができる限り、乾燥条件に対する特別な限定はない。乾燥は、コンベア型のIR乾燥機を使用して100℃で10〜20分間行うことができる。乾燥された下側誘電体層の厚さは、10〜40μmの範囲内であることが好ましい。
【0084】
第3のステップで、ガラス粉末、モノマー、開始剤、樹脂バインダー、および有機溶媒を含有し、上記下側誘電体組成物よりも高い軟化点を有する上側誘電体組成物(209)が前記下側誘電体層(208)の上に被覆される(図3:106、図4(C))。第1のステップで使用されるコーティング手段を使用することができる。
【0085】
第4のステップで、上側誘電体層(210)を形成するために上記上側誘電体組成物が乾燥される(図3:108、図4(D))。第2のステップで説明した条件を使用することができる。乾燥された上側誘電体層の厚さは、10〜40μmの範囲内であることが好ましい。
【0086】
第5のステップで、前記下側誘電体層(208)および上側誘電体層(210)の上に所定のパターンが露光される(図3:110、図4(E))。例えば、乾燥された上側および下側誘電体層(208、210)の上に電極パターンを有するフォトマスク(212)が形成された後に、照射(214)によって露光が行われる。露光条件は、使用される上側および下側誘電体組成物の成分および組成物の被膜厚さによって変わる。50〜300μmのギャップを使用して、100〜300mJ/cm2の光を使用して露光することが好ましい。照射時間は、5〜30秒の範囲内であることが好ましい。その結果、露光されたコーティング被膜(216)を得ることができる。
【0087】
第6のステップで、露光されたコーティング被膜が現像される(図3:112、図4(F))。現像は、アルカリ溶液を使用して行われる。使用することができるアルカリ溶液の例は、0.4%炭酸ナトリウム水溶液である。露光されたコーティング被膜を有する基板(202)をアルカリ溶液中に浸漬することによって、基板(202)上の露光されたコーティング被膜の上に前記アルカリ溶液(218)を噴霧することによって、現像されたコーティング被膜(220)を得ることができる。
【0088】
第7のステップで、現像されたコーティング被膜が、上記下側誘電体層に使用される主要ガラス粉末の軟化点よりも高く、しかし上記上側誘電体層に使用される主要ガラス粉末の軟化点よりも低い焼成温度で焼結される(図3:114、図4(G))。焼成は、所定の温度プロファイルを有する焼成炉内で行うことができる。焼成中の最高温度は、500〜600℃の範囲内であることが好ましい。焼成時間は1〜3時間の範囲内であることが好ましい。焼成後、所望のパターンを有する誘電体(222)を得るために冷却が行われる。乾燥後、下側誘電体層の厚さおよび上側誘電体層の厚さは、5〜20μmの範囲内であることが好ましい。
【0089】
この製造方法を使用することによって、2層誘電体(下側誘電体層および上側誘電体層)が得られる。また、上側誘電体組成物の軟化点が下側誘電体組成物の軟化点よりも高く、焼成温度が、上記下側誘電体層に使用される主要ガラス粉末の軟化点よりも高く、しかし上記上側誘電体層に使用される主要ガラス粉末の軟化点よりも低いので、ベースへの所望の接着性および優れた絶縁性を有する誘電体を得ることができる。
【0090】
本発明における焼成温度と、上側および下側誘電体層に使用される主要ガラス粉末の軟化点とによって実現される効果は、上で説明した。本発明はまた、誘電体の2層構造によって実現される他の効果も有する。すなわち、1層誘電体が形成されるとき、その層のある部分が十分に露光されない場合、その部分は十分に硬化することができず、不良な絶縁をもたらすことがある。他方、本発明に従って2層誘電体が形成されるとき、ピンホールが発生する場合でさえ、2つの層で発生したピンホールが誘電体の高さ方向で並ぶ可能性は非常に低い。したがって、不良な絶縁を防止することができる。
【0091】
上述した利点の他に、本発明の製造方法に従って2層誘電体が形成されるとき、誘電体に関して十分な厚さを保証することができる。
【実施例】
【0092】
以下、本発明を、適用実施例を参照してより詳細に説明する。しかし、本発明はこれらの適用実施例に限定されない。以下の適用実施例では、特に指示がない限り、パーセンテージは重量に基づいている。
【0093】
(実施例1〜4、比較例1〜42)
誘電体を形成するために誘電体組成物が使用された。これらの誘電体組成物は、感光性ではなく、これらの組成物にはモノマーも開始剤も含有されなかった。
【0094】
(A)ガラス粉末の調製
ガラス粉末を調製するために表1に列挙される組成物が混合された。
【0095】
【表1】

【0096】
表2は、これらガラス粉末の軟化点および平均粒子径を示す。
【0097】
軟化点は、示差熱分析(DTA)によって測定された。
【0098】
【表2】

【0099】
(B)誘電体組成物の調製
ペースト状の誘電体組成物A〜Pを得るために、ガラス粉末が、1:1の重量比で媒質(MMA/BMA/EA/MAAコポリマーの26%テキサノール溶液)と混合された。表3は、誘電体組成物A〜Pのガラス粉末組成を示す(体積ベース)。例えば、誘電体組成物Aに含有されるガラス粉末は、100体積パーセントのガラス粉末Aからなる。使用されたガラス組成を以下に列挙する。
【0100】
【表3】

【0101】
(C)誘電体の形成
誘電体組成物A〜Pを使用して、表4、5に示される23タイプの2層構造を有する誘電体を形成した。誘電体を形成するプロセスを以下に述べる。
【0102】
SUS250メッシュスクリーンマスクがスクリーンプリンタに設置され、これを使用して、1.3mmの厚さを有するソーダガラス基板の上に下側誘電体組成物を印刷した。5cm×5cmの正方形コーティング被膜が得られた。印刷後、温風乾燥炉を使用して、100℃で20分の乾燥を行った。得られた乾燥被膜の厚さは約12〜15μmであった。次いで、同じブランクマスクを使用して、乾燥被膜の上に上側誘電体組成物を印刷した。印刷後、同様に、100℃で30分間、温風乾燥が行われた。得られた2層誘電体の乾燥被膜厚さは、図4、5に示されるように約23〜30μmであった。得られた2層誘電体は、5cm×5cmの正方形状であった。
【0103】
得られた試料が、520℃または570℃のピーク温度が20分間保たれる総計3時間の焼成プロファイルでローラ炉を使用して焼結された。焼成温度と、上側および下側誘電体層に使用される主要ガラス粉末の軟化点との関係も、表4、5に示されている。ベースへの誘電体の接着性およびその絶縁性に関する以下の項目が、上記の試料に関して評価された。次いで、良好な評価結果を満たす条件が全ての試料に関して調べられた。
【0104】
この場合、ベースへの誘電体の接着性、誘電体中の気泡、および誘電体の密度、ならびに上記の絶縁性が評価された。
【0105】
(誘電体中の気泡)
金属顕微鏡(倍率100〜200、暗視野および透過光の条件下)を使用して、焼結された誘電体の試料中の気泡(サイズおよび数)を調べた。気泡が観察されなかった試料は、可とみなされた。他方、マイクロレベルの気泡を有する試料および3μm以上の気泡が観察された試料は、不可とみなされた。
【0106】
密度(表4、5:焼成密度)も測定された。スペースを有さず、一様な融解であり、気泡をほとんど有さない試料は、可とみなされた。他方、焼成中の粉末の焼結収縮によって生じた少数の一様に分布したマッドクラックまたは気泡を有する試料、ならびに粗い表面および重大なマッドクラックまたは気泡を有する試料は、不可とみなされた。
【0107】
(ベースへの接着性)
上記の気泡観察後、焼結試料をピンセットで引っ掻き、誘電体をベースから剥がすことができるか調べた。誘電体をベースから剥がすことができず、かつ損傷を有していなかった試料は、可とみなされた。他方、誘電体がベースから剥がされた試料は、不可とみなされた。
【0108】
上記の評価項目の結果が、表4、5に示されている。表4は、上記の焼成温度のピーク温度が520℃であったときの評価結果を示し、表5は、上記の焼成温度のピーク温度が570℃であったときの評価結果を示す。
【0109】
【表4】

【0110】
【表5】

【0111】
表4(上記焼成温度のピーク温度が520℃であったとき)から分かるように、下側誘電体層に使用される主要ガラス粉末の軟化点(T1)と、上側誘電体層に使用される主要ガラス粉末の軟化点(T2)と、主要ガラス粉末の焼成温度(T3)とがT1<T3<T2<T3+30℃という関係を満たす適用実施例1、2では、気泡、密度、およびガラス基板への接着性に関して良好な結果が得られた。他方、軟化点と焼成温度との上記関係を満たさない比較例1〜22では、3つの評価項目のうち少なくとも1つが不良な結果であった。
【0112】
また、表5(上記焼成温度のピーク温度が570℃であったとき)から分かるように、適用実施例3、4では、気泡、密度、およびガラス基板への接着性に関して良好な結果が得られた。他方、比較例23〜42では、3つの評価項目のうち少なくとも1つが不良な結果であった。
【0113】
(適用実施例5〜10)
誘電体が感光性組成物を使用して製造された場合でさえ本発明の効果を同様に実現することができることを確認するために、感光性誘電体組成物を使用して誘電体を形成した。表6は、上側誘電体組成物および下側誘電体組成物の組成を示す。ガラス粉末Cおよびガラス粉末Fが、上側誘電体組成物のためのガラス粉末として1:1の体積比で使用された。ガラス粉末Bのみが、下側誘電体組成物のためのガラス粉末として使用された。
【0114】
【表6】

【0115】
表6で使用された各成分の詳細が表7に示されている。
【0116】
【表7】

【0117】
上記の上側および下側誘電体組成物が使用され、露光条件および現像条件が変更されて、表8に示される適用実施例5〜10の6タイプの誘電体が形成された。誘電体を形成するプロセスを以下に述べる。
【0118】
SUS150メッシュスクリーンマスクがスクリーンプリンタに設置され、これを使用して、1.3mmの厚さを有するソーダガラス基板の上に下側誘電体組成物を印刷した。5cm×5cmの正方形コーティング被膜が得られた。印刷後、温風乾燥炉を使用して、100℃で20分の乾燥を行った。得られた乾燥被膜の厚さは約20μmであった。次いで、同じスクリーンマスクを使用して、乾燥被膜の上に上側誘電体組成物を印刷した。印刷後、同様に、100℃で30分間、温風乾燥が行われた。得られた2層誘電体の乾燥被膜厚さは、約40μmであった。得られた2層誘電体は、5cm×5cmの正方形状であった。
【0119】
パターン評価のために、365nmの光を放出する高圧水銀ランプを有するUV露光機を使用して、フォトマスクを用いて乾燥被膜にパターン露光が行われた。パターン露光は、80〜240mJ/cm2の範囲内で3つの露光条件の下で各試料に対して行われた。
【0120】
他方、アルカリ現像デバイスを使用し、現像液として0.4%Na23水溶液を使用して、未露光乾燥試料が調製された。この試料が現像されたときに、乾燥被膜の完全な現像にかかった時間(time to clear;TTC)が測定された。パターン露光された上記試料が、TTCの1.5倍または3倍で現像された。すなわち、3露光条件×2現像条件の現像試料が得られた。
【0121】
得られた試料は、520℃のピーク温度が20分間保たれる総計3時間の焼成プロフィルを有するローラ炉を使用して焼結された。
【0122】
上記の気泡、密度、およびガラス基板への接着性が、焼結試料に関して評価された。上述した評価方法が使用された。結果が表8に示されている。各焼結誘電体の厚さは、20μmであった。
【0123】
【表8】

【0124】
表8から分かるように、下側誘電体層に使用される主要ガラス粉末の軟化点(T1)と、上側誘電体層に使用される主要ガラス粉末の軟化点(T2)と、主要ガラス粉末の焼成温度(T3)とがT1<T3<T2<T3+30℃という関係を満たす適用実施例5〜10では、気泡、密度、およびガラス基板への接着性に関して良好な結果が得られた。この結果は、誘電体を形成するために感光性組成物が使用されるとき、T1<T3<T2<T3+30℃という条件の下で焼成を行うことによって優れた誘電体を同様に得ることができることを示す。
【0125】
上述したように、所定の露光条件および現像条件の下で、本発明の誘電体に関してベースへの良好な接着性および非常に良好な絶縁性を実現することができる。特に、これらの特性は、鉛を含まないタイプの誘電体に関してさえも実現することができる。
【0126】
従来、アルミナ基板を使用するハイブリッドマイクロ回路は、850℃の高温で焼結することができるので、セラミックフィラーなどがガラスと混合される場合でさえ、ベースへの優れた接着性および絶縁性を有する誘電体層を形成することが可能である。しかし、ベースとしてガラス基板を使用するディスプレイパネルまたはデバイスを形成することは困難である。本発明によって実現される上記の効果は、薄膜に関する費用のかかるプロセスを使用することなく低費用で誘電体を形成することができるので、大きな意義を持つ。
【図面の簡単な説明】
【0127】
【図1】2層誘電体が基板の上に形成される例を示す図である。
【図2】本発明の誘電体を有するデバイスを示す図である。
【図3】本発明の誘電体製造方法における各ステップを示す流れ図である。
【図4A】図3に示される各ステップの詳細を示す図である。
【図4B】図3に示される各ステップの詳細を示す図である。
【図4C】図3に示される各ステップの詳細を示す図である。
【図4D】図3に示される各ステップの詳細を示す図である。
【図4E】図3に示される各ステップの詳細を示す図である。
【図4F】図3に示される各ステップの詳細を示す図である。
【図4G】図3に示される各ステップの詳細を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下側誘電体層と、前記下側誘電体層の上に形成された上側誘電体層とを備える誘電体であって、前記下側誘電体層が第1の主要ガラス粉末を含み、前記上側誘電体層が第2の主要ガラス粉末を含み、前記第1の主要ガラス粉末の軟化点(T1)と、前記第2の主要ガラス粉末の軟化点(T2)と、最大体積で存在する前記主要ガラス粉末の焼成温度(T3)とが関係T1:<T3<T2<T3+30℃を満たすことを特徴とする誘電体。
【請求項2】
前記下側および上側誘電体層は、感光性組成物から作成されることを特徴とする請求項1に記載の誘電体。
【請求項3】
T1とT3は、関係:T3−30℃<T1<T3も満たすことを特徴とする請求項1に記載の誘電体。
【請求項4】
1つまたは複数の前記主要ガラス粉末は、前記焼成温度で非晶質であることを特徴とする請求項1に記載の誘電体。
【請求項5】
前記第1の主要ガラス粉末は、前記下側誘電体層中の前記ガラス成分の総量に対して50から100体積パーセントの範囲内で前記下側誘電体層中に存在することを特徴とする請求項1に記載の誘電体。
【請求項6】
前記第2の主要ガラス粉末は、前記上側誘電体層中の前記ガラス成分の総量に対して50から100体積パーセントの範囲内で前記上側誘電体層中に存在することを特徴とする請求項1に記載の誘電体。
【請求項7】
前記第1の主要ガラス粉末および前記第2の主要ガラス粉末は、それらの各々の誘電体層中の前記ガラス成分の総量に対して50から100体積パーセントの範囲内でそれらの各々の誘電体層中に存在することを特徴とする請求項1に記載の誘電体。
【請求項8】
前記下側誘電体層は、無機成分として本質的にガラスのみからなることを特徴とする請求項1に記載の誘電体。
【請求項9】
前記上側誘電体層は、無機成分として本質的にガラスのみからなることを特徴とする請求項1に記載の誘電体。
【請求項10】
前記下側誘電体層および前記上側誘電体層は、無機成分として本質的にガラスのみからなることを特徴とする請求項1に記載の誘電体。
【請求項11】
前記第1の主要ガラス粉末および前記第2の主要ガラス粉末は、ビスマスタイプのガラス粉末であることを特徴とする請求項1に記載の誘電体。
【請求項12】
前記第1の主要ガラス粉末は、Bi−Al−B−Si−Zn−Baベースのガラス粉末またはBi−Al−B−Si−Zn−Caベースのガラス粉末から選択されることを特徴とする請求項11に記載の誘電体。
【請求項13】
前記第2の主要ガラス粉末は、Bi−Al−B−Si−Zn−Baベースのガラス粉末またはBi−Al−B−Si−Zn−Caベースのガラス粉末から選択されることを特徴とする請求項11に記載の誘電体。
【請求項14】
前記第2の主要ガラス粉末は、さらに、Fe、V、Ti、CuおよびCoからなる群から選択される少なくとも1つの元素を含むことを特徴とする請求項13に記載の誘電体。
【請求項15】
前記下側誘電体層および前記上側誘電体層は、鉛を本質的に含有しないことを特徴とする請求項1に記載の誘電体。
【請求項16】
前記下側誘電体層および前記上側誘電体層は、フィラーを本質的に含有しないことを特徴とする請求項1に記載の誘電体。
【請求項17】
前記下側誘電体層および前記上側誘電体層は、アルカリ化合物を本質的に含有しないことを特徴とする請求項1に記載の誘電体。
【請求項18】
請求項1に記載の誘電体を備えることを特徴とするディスプレイデバイス。
【請求項19】
主要ガラス粉末、樹脂バインダー、および有機溶媒をそれぞれ含む下側誘電体組成物および上側誘電体組成物を提供するステップと、
基板を提供するステップと、
前記基板の上に前記下側誘電体組成物を被覆するステップと、
下側誘電体層を形成するために前記下側誘電体組成物および基板を乾燥させるステップと、
前記下側誘電体層の上に前記上側誘電体組成物を被覆するステップと、
上側誘電体層を形成するために前記上側誘電体組成物を乾燥させるステップと、
T1を前記下側誘電体層の前記主要ガラス粉末の軟化点、T2を前記上側誘電体層の前記主要ガラス粉末の軟化点、T3を体積で最大量存在する前記主要ガラス粉末の焼成温度として、T1<T3<T2<T3+30℃という関係を満たす焼成温度で前記下側誘電体層および前記上側誘電体層を焼成するステップと
を含むことを特徴とする誘電体製造方法。
【請求項20】
前記下側誘電体組成物および前記上側誘電体組成物は、モノマーおよび開始剤をさらに含む感光性組成物であり、前記方法は、前記上側誘電体層が形成された後に、さらに、露光された下側誘電体層および露光された上側誘電体層を形成するために前記下側誘電体層および前記上側誘電体層の上に1つまたは複数の所望のパターンを露光するステップと、前記露光された層を現像するステップとを含むことを特徴とする請求項19に記載の誘電体製造方法。
【請求項21】
T1とT3は、関係:T3−30℃<T1<T3も満たすことを特徴とする請求項19に記載の誘電体製造方法。
【請求項22】
前記焼成温度は、500℃から600℃の範囲内であることを特徴とする請求項19に記載の誘電体製造方法。
【請求項23】
前記第1の主要ガラス粉末または前記第2の主要ガラス粉末は、前記誘電体の前記焼成温度で非晶質であることを特徴とする請求項19に記載の誘電体製造方法。
【請求項24】
前記第1の主要ガラス粉末および前記第2の主要ガラス粉末は、前記誘電体の前記焼成温度で非晶質であることを特徴とする請求項19に記載の誘電体製造方法。
【請求項25】
前記第1の主要ガラス粉末は、前記下側誘電体層中の前記ガラス成分の総量に対して50から100体積パーセントの範囲内で前記下側誘電体層中に存在することを特徴とする請求項19に記載の誘電体製造方法。
【請求項26】
前記第2の主要ガラス粉末は、前記上側誘電体層中の前記ガラス成分の総量に対して50から100体積パーセントの範囲内で前記上側誘電体層中に存在することを特徴とする請求項19に記載の誘電体製造方法。
【請求項27】
前記第1の主要ガラス粉末および前記第2の主要ガラス粉末は、それらの各々の誘電体層中の前記ガラス成分の総量に対して50から100体積パーセントの範囲内でそれらの各々の誘電体層中に存在することを特徴とする請求項19に記載の誘電体製造方法。
【請求項28】
前記下側誘電体層は、無機成分として本質的にガラスのみからなることを特徴とする請求項19に記載の誘電体製造方法。
【請求項29】
前記上側誘電体層は、無機成分として本質的にガラスのみからなることを特徴とする請求項19に記載の誘電体製造方法。
【請求項30】
前記下側誘電体層および前記上側誘電体層は、無機成分として本質的にガラスのみからなることを特徴とする請求項19に記載の誘電体製造方法。
【請求項31】
前記第1の主要ガラス粉末および前記第2の主要ガラス粉末は、ビスマスタイプのガラス粉末であることを特徴とする請求項19に記載の誘電体製造方法。
【請求項32】
前記第1の主要ガラス粉末は、Bi−Al−B−Si−Zn−Baベースのガラス粉末またはBi−Al−B−Si−Zn−Caベースのガラス粉末から選択されることを特徴とする請求項31に記載の誘電体製造方法。
【請求項33】
前記第2の主要ガラス粉末は、Bi−Al−B−Si−Zn−Baベースのガラス粉末またはBi−Al−B−Si−Zn−Caベースのガラス粉末から選択されることを特徴とする請求項31に記載の誘電体製造方法。
【請求項34】
前記第2の主要ガラス粉末は、さらに、Fe、V、Ti、CuおよびCoからなる群から選択される少なくとも1つの元素を含むことを特徴とする請求項33に記載の誘電体製造方法。
【請求項35】
前記下側誘電体層および前記上側誘電体層は、鉛を本質的に含有しないことを特徴とする請求項19に記載の誘電体製造方法。
【請求項36】
前記下側誘電体層および前記上側誘電体層は、フィラーを本質的に含有しないことを特徴とする請求項19に記載の誘電体製造方法。
【請求項37】
前記下側誘電体層および前記上側誘電体層は、アルカリ化合物を本質的に含有しないことを特徴とする請求項19に記載の誘電体製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図4E】
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【図4F】
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【図4G】
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【公開番号】特開2007−317642(P2007−317642A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−77370(P2007−77370)
【出願日】平成19年3月23日(2007.3.23)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】