説明

走行制御装置

【課題】アクセルペダルを操作して走行する通常運転時のエンジン出力特性に複数のエンジンモードが設定されている場合であっても、クルーズ制御において、演算を複雑にすることなく通常運転時のエンジン出力特性に適合する出力特性を得ることができるようにする。
【解決手段】エンジン制御装置22に設けられている記憶手段にエンジンモードに対応する3種類のモードマップMp1〜Mp3が格納されており、運転者がモード選択スイッチ8を操作することで、モードマップMp1〜Mp3から1つのモードマップが選択され、選択されたモードマップに基づきエンジン出力特性が設定される。一方クルーズ制御装置52ではエンジンモードに対応する上限ガード値を備えており、クルーズ制御時は、この上限ガード値で目標車速を規制することで、通常運転時のエンジンモードに適合する出力特性を設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクセルペダル操作による通常運転時のエンジン出力特性がエンジンモード毎に複数設定されている場合であっても、クルーズ制御時は通常運転時に選択されたエンジンモードに適合するエンジン出力特性を設定することのできる走行制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スロットル弁をスロットルアクチュエータにより電子的に制御する、いわゆる電子制御スロットル方式のエンジンでは、アクセルペダルとスロットル弁とが機械的にリンクされていないため、アクセルペダルの踏込み量(アクセル開度)に対して、スロットル弁の開度(スロットル開度)を非線形特性で制御することができる。
【0003】
例えば特許文献1(特開2005−188384号公報)には、エンジン回転数とアクセル開度に基づきエンジンの運転状態を複数の運転領域に分別し、各運転領域毎にマップを設定して、エンジンの運転状態に適したスロットル弁の開度制御、すなわち、エンジンの出力を制御するようにした技術が開示されている。
【0004】
この文献に開示されている技術によれば、高速走行においてはポテンシャルを最大に発揮させることで良好な運転性能が発揮され、一方、渋滞等の停車と発進とを繰り返すような運転の際には、パワーを抑制した運転が可能となり、良好なドライバビリティを得ることができる。
【0005】
又、最近では、非特許文献2に記載されているように、エンジンの出力モード(以下「エンジンモード」と称する)を、運転者の好みに応じて、通常走行に適したノーマルモード、エンジンの出力トルクを抑制してイージードライブ性と低燃費性(経済性)との双方を両立させることのできるセーブモード、エンジンの低回転域から高回転域までレスポンスに優れる出力特性としたパワー重視のパワーモードから任意に選択できるようにした技術も知られている。
【0006】
同様に、クルーズ制御装置においても、例えば特許文献3(特開2003−343305号公報)には、運転者の好みに応じて走行状態を選択できるように、制御パターンを選択できるようにし、エコランモードを選択したときは、スロットル開度の増加量、及びエンジン回転数の上限値を規制して低燃費化を実現する技術が開示されている。
【特許文献1】特開2005−188384号公報
【非特許文献2】2006年8月機構解説書 SI−DRIVE(富士重工業株式会社編)
【特許文献3】特開2003−343305号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上述した特許文献1或いは非特許文献2に開示されているような、運転者がアクセルペダルを操作して走行する通常運転時のエンジン出力に、複数の特性(モード)が設定される技術に、上述した特許文献3に開示されているような、複数の制御モードを有するクルーズ制御の技術を適用した場合、クルーズ制御においても、通常運転時に選択したエンジンの特性に適合させて、同等の運転性能が得られるようにすれば、例えば追従走行においても、通常運転時に選択したエンジンモードと同等の加速性能を得ることができるようになり、良好なドライバビリティを得ることができる。
【0008】
しかし、特許文献3に開示されている技術では、通常運転のエンジン出力とは無関係に、運転者が独自に特性(モード)を選択するようになっているため、通常運転とクルーズ制御による運転とを適合させることができない問題がある。
【0009】
これに対処するに、クルーズ制御時において、通常運転時に選択したエンジンモードに対応する特性(目標スロットル開度)を読込み、この特性に基づいてクルーズ制御を行うことで、適合させることも考えられる。
【0010】
しかし、一般に、アクセルペダルを操作して走行する通常運転におけるエンジン特性(目標スロットル開度)は、アクセル開度とエンジン回転数とに基づいて設定される。一方、クルーズ制御においては、自車の車速と先行車の車速との差分、或いは先行車が捕捉されていない場合はセット車速(クルーズ制御時にセットした車速、すなわち目標車速の上限値)と自車の車速との差分に基づいて、要求トルク(目標スロットル開度)が設定される。
【0011】
このように、クルーズ制御における要求トルク(目標スロットル開度)の演算方法と、通常運転時のエンジン特性(目標スロットル開度)の演算方法とはパラメータが相違しているため、両者を適合させることが困難である。
【0012】
本発明は、上記事情に鑑み、アクセルペダル等のアクセル操作手段を操作して走行する通常運転時のエンジン出力特性に複数のエンジンモードが設定されている場合であっても、クルーズ制御において、演算を複雑にすることなく通常運転時のエンジン出力特性に適合する出力特性を得ることができて、良好なドライバビリティを得ることのできる走行制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため本発明による第1の走行制御装置は、エンジン運転状態を検出するエンジン運転状態検出手段とアクセル開度とに基づき設定される複数の異なるエンジン出力特性を外部操作者により選択手段にて選択されるエンジンモード毎に記憶する記憶手段を有し、前記エンジンモードに従いスロットル開度を制御するエンジン制御手段と、予め或いは先行車の車速に基づいて設定される制御用目標車速と自車の車速との偏差に基づいて該自車の車速を前記制御用目標車速に収束させる要求トルクを求め、該要求トルクに基づいて前記エンジン制御手段へ出力するための目標スロットル開度を設定するクルーズ制御手段とを備え、前記クルーズ制御手段は、前記選択手段で選択された前記エンジンモードに対応する前記制御用目標車速における上限ガード値を運転領域毎に設定し、該各上限ガード値と前記制御用目標車速とを運転領域毎に比較し、該制御用目標車速が該上限ガード値よりも高いときは該上限ガード値で前記制御用目標車速を設定することを特徴とする。
【0014】
第2の走行制御装置は、エンジン運転状態を検出するエンジン運転状態検出手段とアクセル開度とに基づき設定される複数の異なるエンジン出力特性を外部操作者により選択手段にて選択されるエンジンモード毎に記憶する記憶手段を有し、前記エンジンモードに従いスロットル開度を制御するエンジン制御手段と、予め或いは先行車の車速に基づいて設定される制御用目標車速と自車の車速との偏差に基づいて該自車の車速を前記制御用目標車速に収束させる要求トルクを求め、該要求トルクに基づいて前記エンジン制御手段へ出力するための目標スロットル開度を設定するクルーズ制御手段とを備え、前記クルーズ制御手段は、前記選択手段で選択された前記エンジンモードに対応する前記制御用目標車速の変化量における上限ガード値を運転領域毎に設定し、該各上限ガード値と前記制御用目標車速の変化量とを運転領域毎に比較し、該制御用目標車速の変化量が該上限ガード値よりも高いときは該上限ガード値で前記制御用目標車速の変化量を設定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、クルーズ制御時には、エンジンモードに対応するガード値で目標車速を規制することで、アクセルペダル等のアクセル操作手段を操作して走行する通常運転時のエンジン出力特性に適合させるようにしたので、クルーズ制御時の演算を複雑にすることなく通常運転時のエンジン出力特性に適合する出力特性を得ることができ、良好なドライバビリティを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面に基づいて本発明の一形態を説明する。図1にインストルメントパネル及びセンタコンソールを運転席側から見た斜視図が示されている。
【0017】
図1に示すように、車両の車室内前部に配設されているインストルメントパネル(以下「インパネ」と略称)1は、車幅方向左右に延出されており、運転席2の前方に位置するインパネ1にコンビネーションメータ(以下「コンビメータ」と略称)3が配設されている。又、このインパネ1の車幅方向ほぼ中央に、周知のカーナビゲーションシステムを構成するセンタディスプレイ4が配設されている。
【0018】
又、運転席2と助手席5との間に配設されて、インパネ1側から車体後方へ延出するセンタコンソール6に、自動変速機のレンジを選択するセレクトレバー7が配設され、その後方に、エンジンモードを選択する選択手段としてのモード選択スイッチ8が配設されている。更に、運転席2の前方にステアリングホイール9が配設されている。
【0019】
ステアリングホイール9は、エアバッグ等を収容するセンタパッド部9aを有し、このセンタパッド部9aと外周のグリップ部9bとの左右及び下部が、3本のスポーク9cを介して連設されている。このセンタパッド部9aの左下部に表示切換スイッチ10が配設され、又、右下部に、モードを一時的に切り換るための手段としての一時切換スイッチ11が配設されている。更に、右側のスポーク9cにクルーズ制御操作スイッチ(以下「クルコン操作スイッチ」と称する)34が配設されている。
【0020】
このクルコン操作スイッチ34は、車間設定スイッチ34a、CRUISEスイッチ34b、RES(リジューム)/ACC(アクセラレート)スイッチ34c、SET/COASTスイッチ34d、CANCELスイッチ34eで構成されている。ここで、各スイッチ34a〜34eの機能について簡単に説明する。
【0021】
車間設定スイッチ34aは、クルーズ制御時の先行車との車間を設定するスイッチであり、本実施形態では、先行車との車間距離(以下「設定車間距離」と称する)を「長」、「中」、「短」の三段階に設定することができる。又、CRUISEスイッチ34bは、クルーズ制御のON/OFFを行うもので、ONさせることでシステムがスタンバイ状態となる。RES/ACCスイッチ34cは、これをONすると前回のセット車速が今回のセット車速として設定され、更にONすると、セット車速が段階的に増速される。
【0022】
一方、SET/COASTスイッチ34dは、クルーズ制御を開始させるスイッチであり、ONするとクルーズ制御が開始され、更にONするとセット車速が段階的に減速される。又、CANCELスイッチ34eはクルーズ制御を解除するスイッチである。
【0023】
又、図2に示すように、コンビメータ3は、中央寄りの左右に、エンジン回転数を示すタコメータ3aと、車速を表示するスピードメータ3bとが各々配設されている。更に、タコメータ3aの左側に冷却水温を表示する水温計3cが配設され、スピードメータ3bの右側に燃料残量を表示する燃料計3dが配設されている。又、中央部に現在の変速段を表示する変速段表示部3eが配設されている。尚、符号3fはウォーニングランプ、3gはトリップメータをリセットするトリップリセットスイッチである。
【0024】
更に、タコメータ3a内の下部に、走行距離や燃費、エンジントルク、クルーズ制御等の情報を複数の表示画面を切換えて、それぞれ表示させるマルチインフォメーションディスプレイ(以下「MID」と略称)12が配設されている。尚、このMID12の機能については後述する。又、タコメータ3a内の右側に、クルーズ制御動作表示ランプ3hと車間距離警告ランプ3jとが配設されている。クルーズ制御動作表示ランプ3hは、矢尻状に形成された上下2段の表示灯を有し、クルーズ制御がセットされると、下段の表示ランプが点滅する。又、先行車が捕捉されると、この下段の表示ランプが点灯に切替わると共に上段の表示ランプが点滅する。
【0025】
又、スピードメータ3bの下部に、瞬間燃費とトリップ平均燃費との差に基づき経済的な走行を指標する燃費メータ13が配設されている。更に、スピードメータ3bの左下側に、クルーズ制御の全機能がON状態で点灯するCRUISE表示ランプ3kとクルーズ制御がセット状態で点灯するSETランプ3mとが配設されている。
【0026】
又、図3に示すように、モード選択スイッチ8は、プッシュスイッチを併設する中点自動復帰式シャトルスイッチであり、外部操作者(一般的には運転者であるため、以下においては、「運転者」と称して説明する)がリング状の操作つまみ8aを操作することで、後述する3種類の異なるエンジン出力特性を有するエンジンモード(ノーマルモード1、セーブモード2、パワーモード3)を選択することができる。すなわち、本実施形態では、操作つまみ8aを左方向へ回転させることで左側スイッチがON動作されてノーマルモード1が選択され、右方向へ回転させることで右側スイッチがON動作されてパワーモード3が選択され、一方、操作つまみ8aを下方向にプッシュすることでプッシュスイッチがON動作してセーブモード2が選択される。
【0027】
ここで、各エンジンモード1〜3の出力特性について簡単に説明する。尚、この各モード1〜3のエンジン出力特性は、具体的には、後述するモードマップMp1〜Mp3で設定される。
【0028】
ノーマルモード1は、アクセル操作手段としてのアクセルペダル14の踏込み量(アクセル開度)に対して出力トルクがほぼリニアに変化するように設定されている(図7(a)参照)、通常運転に適したエンジンモードである。
【0029】
又、セーブモード2は、エンジントルクのセーブ、及び自動変速機搭載車では変速機のロックアップ制御に同期させてエンジントルクをセーブする等して、十分な出力を確保しながらスムーズな出力特性とし、アクセルワークを楽しむことができるエンジンモードに設定されている。更に、セーブモード2は出力トルクを抑制しているのでイージードライブ性と低燃費性(経済性)との双方をバランス良く両立させることができる。
【0030】
又、パワーモード3は、エンジンの低回転域から高回転域までレスポンスに優れる出力特性とし、更に、自動変速機搭載車の場合には、エンジントルクに同期させてシフトアップポイントを変更させる等してワインディング路などでのスポーティな走行状況にも積極的に対応可能として、きびきびとした運転ができるようなパワー重視のエンジンモードに設定されている。尚、この各エンジンモード(ノーマルモード1、セーブモード2、パワーモード3)の目標トルクは、後述するように、エンジン回転数とアクセル開度との2つのパラメータに基づいて設定する。
【0031】
表示切換スイッチ10は、MID12に表示される情報を切換える際に操作するもので、順送りスイッチ部10aと逆送りスイッチ部10bと初期画面復帰スイッチ部10cとが設けられている。図4、図5にMID12に表示される画面毎の項目を例示する。尚、このMID12はカラーディスプレイであっても良い。
【0032】
本実施形態では、(a)〜(f)、及び、図5に示すように、クルーズ制御時において表示される(e’)の7種類の画像が設定されている。尚、画面(e’)は、画面(e)に代えて表示される。これらの表示内容は、順送りスイッチ部10aをONする都度に、(a)〜(f)へ順に切換えられ、(f)の画面が表示されているときに順送りスイッチ部10aをONすると、初期画面(a)が表示される。一方、逆送りスイッチ部10bをONすると、逆送りで画面が切換えられる。
【0033】
ここで、各画面(a)〜(f),(e’)の表示内容について簡単に説明する。画面(a)は、イグニッションスイッチをONした際に表示される初期画面である。この画面には、下段にオドメータが表示され、上段にトリップメータが表示され、更に、左端に現在のエンジンモード(図においてはセーブモード2を示す「2」)が表示される。
【0034】
画面(b)は、下段にトリップメータによる走行距離と、当該走行距離における総燃料噴射パルス幅(パルス時間)とに基づいて算出したトリップ平均燃費[Km/L]が表示され、上段に数秒間の走行距離と、そのときの総燃料噴射パルス幅(パルス時間)とに基づき算出した瞬間燃費[Km/L]が表示される。
【0035】
画面(c)は、下段にエンジンを起動させたときからの運転時間が表示され、上段に外気温[℃]が表示される。
【0036】
画面(d)には、燃料タンク内の残燃量とトリップ平均燃費とに基づき算出した、おおよその走行可能距離[Km]が表示される。
【0037】
画面(e)には、現在選択されているエンジンモード(図においてはセーブモード2が示されている)のアクセル−トルク線が表示される。このアクセル−トルク線は、縦軸にエンジンの出力トルク、横軸にアクセル開度が示されており、表示されるアクセル−トルク線内にパワー表示領域が設定されている。パワー表示領域はアクセル開度の増減に連動してパワーレベルが、図の左側から右方向(増加)、或いは右側から左方向(減少)へリニアに表示される。従って、運転者は表示されるパワーレベルを目視することで、現在の運転状態を容易に把握することができる。尚、このアクセル−トルク線は、選択されているノーマルモード1、セーブモード2、パワーモード3毎に異なる特性で表示される。
【0038】
画面(f)には、現在時刻が表示される。
【0039】
又、クルーズ制御時に表示される画面(e’)は、下段に、クルコン操作スイッチ34の車間設定スイッチ34aでセットした設定車間距離(「長」、「中」、「短」)に対応するレベルと、セット車速とが表示される。又、上段には、クルーズ制御がONで表示するCRUISE表示、及び、SET/READY表示が設けられている。SET/READY表示は、クルーズ制御が作動中で「SET」と表示され、スタンバイ状態では「READY」と表示される。
【0040】
又、燃費メータ13は、中立位置がトリップ平均燃費[Km/L]を示し、このトリップ平均燃費[Km/L]よりも瞬間燃費[Km/L]が高い場合は、指針13aがその偏差に応じてプラス(+)方向へ振れ、一方、トリップ平均燃費[Km/L]よりも瞬間燃費[Km/L]が低い場合、指針13aはその偏差に応じてマイナス(−)方向へ振れる。
【0041】
ところで、図6に示すように、車両には、CAN(Controller Area Network)通信等の車内通信回線16を通じて、メータ制御装置(メータ_ECU)21、エンジン制御手段としてのエンジン制御装置(E/G_ECU)22、変速機制御装置(T/M_ECU)23、クルーズ制御ユニット51に設けられた、クルーズ制御手段としてのクルーズ制御装置(ACC_ECU)52等の、車両を制御する演算手段としての制御装置が相互通信可能に接続されている。この各ECU21〜23,52は、マイクロコンピュータを主体に構成され、周知のCPU、ROM、RAM、及びEEPROM等の不揮発性記憶手段等を有している。
【0042】
メータ_ECU21は、コンビメータ3の表示全体を制御するもので、入力側にモード選択スイッチ8、表示切換スイッチ10、一時切換スイッチ11、及びトリップリセットスイッチ3gが接続されている。又、出力側に、タコメータ3a、スピードメータ3b、水温計3c、燃料計3d等の計器類、及びウォーニングランプ3fとクルーズ制御動作表示ランプ3hと車間距離警告ランプ3jとCRUISE表示ランプ3kとSETランプ3mとを駆動するコンビメータ駆動部26、MID駆動部27、燃費メータ駆動部28が接続されている。
【0043】
E/G_ECU22は、エンジンの運転状態を制御するもので、入力側にエンジン回転数を検出するエンジン運転状態検出手段としてのエンジン回転数センサ29、吸入空気量を検出する吸入空気量センサ30、アクセルペダル14の踏込み量からアクセル開度を検出するアクセル開度センサ31、吸気通路に介装されてエンジンの各気筒に供給する吸入空気量を調整するスロットル弁(図示せず)の開度を検出するスロットル開度センサ32、エンジン温度を示す冷却水温を検出する水温センサ33等、車両及びエンジン運転状態を検出するセンサ類が接続されている。更に、E/G_ECU22の入力側に上述したクルコン操作スイッチ34が接続されている。
【0044】
又、E/G_ECU22の出力側に、燃焼室に対して所定に計量された燃料を噴射するインジェクタ36、電子制御スロットル装置(図示せず)に設けられて、スロットル弁を開閉動作させるスロットルアクチュエータ37等、エンジン駆動を制御するアクチュエータ類が接続されている。
【0045】
E/G_ECU22は、入力された各センサ類からの検出信号に基づき、インジェクタ36に対する燃料噴射タイミング、及び燃料噴射パルス幅(パルス時間)を設定する。更に、スロットル弁を駆動するスロットルアクチュエータ37に対してスロットル開度信号を出力してスロットル弁の開度を制御する。更に、クルコン操作スイッチ34のSET/COASTスイッチ34dがONされて、クルーズ制御が開始されると、ACC_ECU52で算出した目標スロットル開度θthoを読込み、電子制御スロットル装置に対して、スロットル弁の開度が目標スロットル開度θthoに収束するようにフィードバック制御を行う。
【0046】
ところで、E/G_ECU22に設けられている不揮発性記憶手段には、各エンジンモード(ノーマルモード1、セーブモード2、パワーモード3)に対応するモードマップMp1,Mp2,Mp3が格納されている。図7(a)〜(c)に示すように、各モードマップMp1,Mp2,Mp3は、アクセル開度とエンジン回転数とを格子軸とし、各格子点に目標トルクを格納する3次元マップで構成されている。
【0047】
この各モードマップMp1,Mp2,Mp3は、基本的には、モード選択スイッチ8の操作により選択される。すなわち、モード選択スイッチ8にてノーマルモード1を選択した場合はノーマルモードマップMp1が選択され、セーブモード2を選択した場合はセーブモードマップMp2が選択され、又、パワーモード3を選択した場合はパワーモードマップMp3が選択される。
【0048】
以下、各モードマップMp1,Mp2,Mp3にて設定されるエンジン出力特性について説明する。図7(a)に示すノーマルモードマップMp1は、アクセル開度が比較小さい領域で目標トルクがリニアに変化させる特性に設定されており、又、スロットル弁の開度が全開付近で最大目標トルクとなるように設定されている。
【0049】
又、同図(b)に示すセーブモードマップMp2は、上述したノーマルモードマップMp1に比し、目標トルクの上昇が抑えられており、アクセルペダル14を全踏しても、出力トルクを抑制することで、アクセルペダル14を思い切り踏み込む等のアクセルワークを楽しむことができる。更に、目標トルクの上昇が抑えられているため、イージードライブ性と低燃費性との双方をバランス良く両立させることができる。例えば3リッターエンジンを搭載する車両であっても、2リッターエンジン相当の充分な出力を確保しながらスムーズな出力特性とし、特に街中などの実用領域における扱い易さを重視した目標トルクが設定される。
【0050】
又、同図(c)に示すパワーモードマップMp3は、ほぼ全運転領域でアクセル開度の変化に対する目標トルクの変化率が大きく設定されている。
【0051】
このように、本実施形態によれば、運転者がモード選択スイッチ8を操作して、何れかのエンジンモード(ノーマルモード1、或いはセーブモード2、或いはパワーモード3)を選択すると、対応するモードマップMp1,Mp2,或いはMp3が選択され、当該モードマップMp1,Mp2,或いはMp3に基づいて目標トルクが設定される。そのため、1つの車両で全く異なる3種類のアクセルレスポンスを楽しむことができる。尚、スロットル弁の開閉速度も、モードマップMp2では緩やかに、モードマップMp3では素早く動作するように設定されている。
【0052】
又、T/M_ECU23は、自動変速機の変速制御を行うもので、入力側にトランスミッション出力軸の回転数から車速を検出、或いは各車輪の回転速度(車輪速)の平均から車速を検出する車速検出手段41、セレクトレバー7のセットされているレンジを検出するインヒビタスイッチ42等が接続され、出力側に自動変速機の変速制御を行うコントロールバルブ43、及びロックアップクラッチをロックアップ動作させるロックアップアクチュエータ44が接続されている。このT/M_ECU23では、インヒビタスイッチ42からの信号に基づきセレクトレバー7のセットレンジを判定し、Dレンジにセットされているときは、車速とアクセル開度とに基づき特定される変速パターンに従い、その変速信号をコントロールバルブ43へ出力して変速制御を行う。尚、この変速パターンは、E/G_ECU22で設定されているエンジンモード(ノーマルモード1、或いはセーブモード2、或いはパワーモード3)に対応して可変設定される。
【0053】
又、ロックアップ条件が満足されたときはロックアップアクチュエータ44にスリップロックアップ信号或いはロックアップ信号を出力し、トルクコンバータの入出力要素間を、コンバータ状態からスリップロックアップ状態、或いはロックアップ状態に切換える。その際、E/G_ECU22は、目標トルクをスリップロックアップ状態、及びロックアップ状態に同期させて補正する。その結果、例えばエンジンモードがセーブモード2に設定されている場合は、目標トルクが、より経済的な走行ができる領域に補正される。
【0054】
クルーズ制御ユニット51はACC_ECU52と先行車検出部53とを備えている。先行車検出部53は、レーザレーダやミリ波レーダ等のスキャン型レーダを代表とする先行車検出手段を備えていると共に、この先行車検出手段からの信号に基づき、先行車情報(先行車捕捉の有無、先行車と自車との実際の車間距離(以下「先行車間距離」と称する)、先行車の車速(以下「先行車速」と称する))を求め、この先行車情報をACC_ECU52へ出力する。ACC_ECU52は、クルコン操作スイッチ34のSET/COASTスイッチ34dがONされて、クルーズ制御が開始されると、先行車検出部53からの先行車情報を読込み、先行車が捕捉されていない場合は、セット車速を目標車速として設定し、一方、先行車が捕捉されているときは、先行車速と自車速との差分から目標車速を求め、この目標車速に対応する目標スロットル開度を求めて、E/G_ECU22へ出力する。
【0055】
ACC_ECU52でのクルーズ制御処理を、図8に示す機能ブロックを用いて、より詳細に説明する。同図に示すように、ACC_ECU52にはクルーズ制御を実行する機能として、目標車速演算部61、追従目標車速演算部62、追尾フラグ演算部63、制御用目標車速演算部64、クルーズ制御要求馬力(以下「クルコン要求馬力」と称する)演算部65、クルーズ制御要求トルク(以下、「クルコン要求トルク」と称する)演算部66、アクセル要求トルク演算部67、要求トルク選択演算部68、目標スロットル開度演算部69、疑似アクセル開度演算部70を備えている。
【0056】
次に、各演算部61〜70で実行されるクルーズ制御処理について説明する。車両の走行中に運転者が、クルコン操作スイッチ34のSET/COASTスイッチ34dをONすると、クルーズ制御が開始され、目標車速演算部61は、クルコン操作スイッチ34で設定したセット車速Sst[Km/h]を目標車速St[Km/h]として設定する。
【0057】
又、追従目標車速演算部62は、先行車検出部53で求めた先行車情報(先行車間距離L、先行車速Sn[Km/h])、車速検出手段41で検出した自車の実際の車速(以下「自車速」と称する)Si[Km/h]、及びモード選択スイッチ8で選択したエンジンモード(ノーマルモード1、セーブモード2、パワーモード3の何れか)に基づき、先行車に対する自車の追従目標車速Sfoを、次の(1)式から算出する。
【0058】
Sfo←Sn+Sα…(1)
ここで、Sαは追尾応答速度[Km/h]であり、先行車間距離Lとクルコン操作スイッチ34でセットした設定車間距離Loとの差分(車間距離偏差)ΔL(=L−Lo)に応じて設定される。すなわち、クルーズ制御時の追従走行において、図9(a)に示すように、設定車間距離Loに対して先行車間距離Lが長い場合(ΔL>0)、自車速Siを加速させて設定車間距離Loを保持させる必要がある。逆に、同図(b)に示すように、設定車間距離Loよりも先行車間距離Lが短い場合(ΔL<0)、自車速Siを減速させて設定車間距離Loを確保する必要がある。従って、Lo=LのときはΔL=0であるため、追尾応答速度Sα=0に設定される。
【0059】
追尾応答速度Sαは、車間距離偏差ΔLに基づき、図10に示す車間距離偏差マップを参照して、エンジンモード別に設定される。図10に記載されている車間距離偏差マップの特性について説明する。
【0060】
追尾応答速度Sαは設定車間距離Loを維持しようとする際の応答強さであり、車間距離偏差ΔLに対して中心値(ΔL=0)を通り、マイナス側からプラス側へ増加する非線形の特性を有している。又、ノーマルモード時の追尾応答速度Sαに対して、セーブモード時の追尾応答速度Sαは緩やかな立ち上がりの特性を有し、一方、パワーモード時の追尾応答速度Sαは急な立ち上がり特性を有している。その結果、運転者はアクセルペダル操作による通常の加速運転と同等の加速感を得ることができる。
【0061】
従って、追従走行において車間距離偏差ΔLがプラス側或いはマイナス側へ大きな値になると、エンジンモードとしてセーブモードが選択されている場合は、ノーマルモードの場合に比し、緩やかに加速或いは減速して、先行車間距離Lをゆっくりと設定車間距離Loに近づける制御が行われる。一方、エンジンモードとしてパワーモードが選択されている場合は、ノーマルモードの場合に比し、比較的急な加速或いは減速により、先行車間距離Lを設定車間距離Loに近づける制御が行われる。
【0062】
又、その際、追従目標車速Sfoの変化量から加速度の勾配を算出し、この加速度の勾配と加速ガード値の勾配とを比較する。そして、加速度の勾配が、第1上限ガード値としての加速ガード値の勾配よりも大きいとき、追従目標車速Sfoを加速ガード値で制限する。この加速ガード値の勾配は、エンジンモード(ノーマルモード1、セーブモード2、パワーモード3)毎に設定されており、図11に示すように、細線で示すノーマルモード時の加速ガード値の勾配に対して、破線で示すセーブモード時の加速ガード値の勾配が緩やかに設定されており、又、一点鎖線で示すパワーモード時の加速ガード値の勾配が急勾配に設定されている。同図に示すように、例えば追従走行において、先行車が一定速で低速走行している状態から二点鎖線で示すように加速した場合、(1)式に基づいて算出される追従目標車速Sfoもある勾配で加速される。この場合、同図に太線で示す追従目標車速Sfoの加速度(勾配)が、破線で示すセーブモード時の加速ガード値より急で、且つ細線で示すノーマルモードの加速ガード値の勾配よりも緩やかな場合において、エンジンモードとしてパワーモード或いはノーマルモードが選択されている場合は、(1)式で算出した追従目標車速Sfoがそのまま出力される。
【0063】
一方、エンジンモードとしてセーブモードが選択されている場合は、(1)式で算出した追従目標車速Sfoの加速度(勾配)が、セーブモード時の加速ガード値の勾配よりも急であるため、追従目標車速Sfoの加速度(勾配)は、セーブモード時の加速ガード値の勾配で制限される。
【0064】
ところで、この加速ガード値は追従走行時の過大な加速を規制するためのものであるため、通常の追従走行では、(1)式で算出した追従目標車速Sfoが加速ガード値を越えることはない。例えば、エンジンモードとしてセーブモードが選択されている場合、(1)式の追尾応答速度Sαは、車間距離偏差ΔLに対して緩やかな変化を示しているため、追従目標車速Sfoの加速度(勾配)は、図11に太線で示すような急勾配とはならず、セーブモード時の加速ガード値の勾配よりも緩い傾斜で加速される。尚、先行車が捕捉されていない場合、先行車速Sn、先行車間距離Lが検出されないため、追従目標車速Sfoは設定されない。
【0065】
又、追尾フラグ演算部63は、先行車検出部53からの先行車捕捉信号を読込み、先行車が捕捉されたとき追尾フラグFfoをセットし(Ffo←1)、先行車が捕捉されないときクリアする(Ffo←0)。尚、この追尾フラグFfoがセットされると、クルーズ制御動作表示ランプ3hの上段の表示ランプが点滅し、下段の表示ランプが点灯する。又、追尾フラグFfoがクリアされると、上段の表示ランプが消灯し、下段の表示ランプが点滅する。
【0066】
制御用目標車速演算部64は、目標車速演算部61で設定した目標車速St(セット車速Sst)と追従目標車速演算部62で求めた追従目標車速Sfoと追尾フラグ演算部63で設定した追尾フラグFfoの値を読込み、制御用目標車速Soを求めると共に、各運転領域において制御用目標車速Soの上限を規制する第2上限ガード値を設定する。この第2上限ガード値は運転領域毎に設定され、追従走行時に設定されるものと定速走行へ移行する過渡時に設定されるものとがある。
【0067】
具体的には、追尾フラグFfoがクリアされているとき(Ffo=0)、すなわち、先行車が捕捉されていない定速走行では目標車速Stが優先し、この目標車速Stにて制御用目標車速Soが設定される(So←St)。又、追尾フラグFfoがセットされているとき(Ffo=1)、すなわち、先行車が捕捉されている追従走行では追従目標車速Sfoが優先し、この追従目標車速Sfoにて制御用目標車速Soが設定される(So←Sfo)。尚、追従目標車速Sfoの上限は目標車速St(セット車速Sst)である。
【0068】
追従目標車速Sfoにて制御用目標車速Soを設定するに際し、先行車が加速された場合、追従目標車速Sfoの加速度(勾配)は、上述した追従目標車速演算部62において、エンジンモード(ノーマルモード1、セーブモード2、パワーモード3)毎に設定されている加速ガード値にて規制される。従って、図12に示すように、先行車の加速運転に追従して加速する追従加速に際し、追従目標車速Sfoは追従目標車速演算部62において設定された加速ガード値以上の加速度は発生しない。しかし、誤った加速の追従目標車速Sfoが追従目標車速演算部62から出力された場合、急加速となってしまう。同様に追従目標車速Sfoの最大値はセット車速Sstであるが、追従目標車速Sfoがセット車速Sst、すなわち目標車速St以上の誤った値が設定される場合も考えられる。
【0069】
従って、図12に示すように、追尾フラグFfoがセットされている追従走行では(Ffo=1)、先行車の加速運転に追従して加速走行する際に設定される追従目標車速Sfoを規制する、追従加速ガード値が設定される。又、追従目標車速Sfoの上限値を規制するセット車速ガード値が設定される。
【0070】
追従加速ガード値は各エンジンモード毎に設定されている。この追従加速ガード値はセーフティ機能としての役割を有しており、又、その勾配は、前述した追従目標車速演算部62で設定するエンジンモード毎の加速ガード値よりも急な勾配で設定されている。又、セット車速ガード値は、クルーズ制御時の最大車速であるセット車速Sst、すなわち目標車速Stにて設定される。
【0071】
又、追尾フラグFfoがクリアされたとき(Ffo←0)、すなわち、定速走行を開始するときは、まず最初に定速走行開始ガード値が設定される。この定速走行開始ガード値は、現在の自車速Siから設定速度ΔSg分だけ減速した値に設定される。尚、この設定速度ΔSgは本実施形態では固定値(例えば5[Km/h])であるが、定速走行開始時の自車速Siに基づいて設定する可変値であっても良い。この定速走行開始ガード値は設定時間維持され、その後、定速復帰加速ガード値が設定される。この定速復帰加速ガード値は、自車速Siを目標車速Stへ復帰させる際の加速度(勾配)を規制するもので、エンジンモード毎に設定されており、エンジンモードとしてノーマルモード1が選択されている際に設定される定速復帰加速ガード値の勾配に比し、セーブモードが選択されている際に設定される定速復帰加速ガード値は、その例えば80[%]の緩やかな勾配で設定される。又、パワーモード3が選択されている際に設定される定速復帰加速ガード値の勾配は、ノーマルモード1が選択されている際に設定される定速復帰加速ガード値の、例えば110[%]の急な勾配で設定される。
【0072】
この制御用目標車速演算部64では、先ず追尾フラグFfoの値を参照して、Ffo=0の定速走行時は目標車速演算部61で求めた目標車速Stで、制御用目標車速Soを設定する(So←St)。又、Ffo=1の追従走行時は追従目標車速演算部62で求めた追従目標車速Sfoで、制御用目標車速Soを設定する(So←Sfo)。そして、追従走行時においては、制御用目標車速Soと、追従加速ガード値及びセット車速ガード値とを比較し、制御用目標車速Soが追従加速ガード値を越えているときは、この制御用目標車速Soを追従加速ガード値で設定する。その結果、追従目標車速演算部62から誤った加速の追従目標車速Sfoが出力されても、急加速の制御用目標車速Soが設定されることはない。更に、制御用目標車速Soがセット車速ガード値を越えているときは、この制御用目標車速Soがセット車速ガード値で規制されるので、セット車速Sst以上の車速が制御用目標車速Soとして設定されることがない。
【0073】
一方、追従走行から定速走行へ移行するに際しては、先ず、定速走行開始ガード値が設定される。この定速走行開始ガード値は,現在の自車速Siから設定速度ΔSg分だけ減速した値で設定されているため、定速走行開始時においては必ず、制御用目標車速Soが定速走行開始ガード値で設定される。その結果、定速走行開始時において、先行車を一瞬ロストし、再び捕捉された場合であっても、運転者に車両の飛び出し感を与えることが無く、良好なドライバビリティを得ることができる。
【0074】
更に、定速走行へ移行後、自車速Siを目標車速Stに復帰させるに際しては定速復帰加速ガード値が設定されるため、制御用目標車速Soは定速復帰加速ガード値に規制されて次第に増速される。追従走行から定速走行へ切り替わる際に、いきなり制御用目標車速Soを目標車速St(セット車速Sst)に設定すると、自車速Siと目標車速Stとの偏差が大きい場合は、急加速してしまうことがあるが、本実施形態では、定速復帰加速ガード値で加速の勾配を規制しているため、急加速されることが無く、しかも、この定速復帰加速ガード値がエンジンモード毎に設定されているため、良好なドライバビリティを得ることができる。
【0075】
そして、この制御用目標車速Soは、クルーズ制御要求馬力(以下「クルコン要求馬力」と称する)演算部65で読込まれる。このクルコン要求馬力演算部65は、制御用目標車速Soと車速検出手段41で検出した自車速Siとの速度差ΔS(=So−Si)に基づき、自車速Siを制御用目標車速Soに到達させるためのクルコン要求馬力HPsを、計算式或いはテーブル検索により求める。
【0076】
このクルコン要求馬力HPsがクルコン要求トルク演算部66で読込まれる。クルコン要求トルク演算部66は、クルコン要求馬力HPsとエンジン回転数Neとに基づきクルコン要求トルクTcsを計算式から求める(Tcs=k・(HPs/Ne)、ここでkは係数である)。
【0077】
一方、アクセル要求トルク演算部67は、クルーズ制御中において、アクセル開度センサ31で検出したアクセルペダルの踏込み量であるアクセル開度θaとエンジン回転数Neとに基づき、運転者の選択したエンジンモードに対応するモードマップ(図7参照)を参照してアクセル要求トルクTacsを求める。
【0078】
要求トルク選択演算部68は、クルコン要求トルクTcsとアクセル要求トルクTacsとを比較し、何れか値の高い方を要求トルクTsとして設定する。従って、運転者がアクセルペダルを開放した状態ではクルコン要求トルクTcsが要求トルクTsとして設定される(Ts←Tcs)。一方、運転者がアクセルペダルを踏み込んで、クルコン要求トルクTcsよりも高いアクセル要求トルクTacsが出力された場合は、クルーズ制御が一時中断され、このアクセル要求トルクTacsが要求トルクTsとして設定される(Ts←Tacs)。
【0079】
このクルコン要求トルクTcsは、アクセルペダル操作により走行する通常運転時に参照されるモードマップ(図7参照)を参照することなく、加減速運転時の特性を前述した第1、第2の上限ガード値を用いて規制されているだけであるため、演算が複雑化せず、上限ガード値が運転者の選択したエンジンモードに対応して設定されるため、通常運転時のエンジン出力特性と適合させることができ、良好なドライバビリティを得ることができる。
【0080】
更に、この要求トルクTsと第3上限ガード値とを比較し、要求トルクTsが第3上限ガード値を越えている場合は、この要求トルクTsを第3上限ガード値で設定する。この第3上限ガード値は、エンジンモード毎に設定されており、各エンジンモードにおいてアクセルペダルを全踏みしたときの最大トルクに設定されている。アクセルペダルを操作して走行する通常運転では、スロットル弁の開度はアクセルペダルを全踏みしたときよりも大きく開弁することはないが、クルーズ制御では、要求トルクからスロットル弁の開度を設定するため、スロットル弁をアクセルペダル全踏み時よりも大きく開弁させることが可能となる。しかし、本実施形態では、要求トルクTsを第3上限ガード値で規制しているので、スロットル開度がアクセルペダルを全踏みしたときよりも大きく開弁することがない。尚、この第3上限ガード値は任意に設定することができるため、各エンジンモードにおいてアクセルペダルを全踏みしたときの最大トルクよりも低い値、例えばアクセルペダルを全踏みしたときの最大トルクの80[%]程度に設定することも可能である。
【0081】
そして、この要求トルクTsが、目標スロットル開度演算部69と疑似アクセル開度演算部70とに読込まれる。
【0082】
目標スロットル開度演算部69は、要求トルクTsに基づき、当該要求トルクTsに対応する目標スロットル開度θαsを求め、E/G_ECU22へ出力する。一方、疑似アクセル開度演算部70は、要求トルクTsとエンジン回転数Neとに基づき、運転者の選択したエンジンモードに対応するモードマップ(図7参照)を参照し、疑似アクセル開度θhaを逆算して求め、T/M_ECU23へ出力する。
【0083】
このように、本実施形態によれば、加速時における目標車速がエンジンモード毎に設定されているガード値で規制されるため、アクセルペダルを操作して走行する通常運転時に運転者が選択したエンジンモードによるエンジン出力特性に適合する加速感を運転者に与えることができ、良好なドライバビリティを得ることができる。又、クルーズ制御では目標車速をガード値で規制するだけであるため、通常運転時に参照するモードマップに適合するマップを別途設ける必要が無く、制御が容易になる。
【0084】
又、本実施形態ではガード値によって規制される対象を目標車速としたが、自車両の加速度を検出する加速度検出手段を備えた上で、ガード値によって規制される対象を自車両において発生する加速度としても、同様の効果を得る事が出来る。
【0085】
更に、本実施形態では、追尾フラグをセット後、それがクリアされた時に定速走行制御に移行し、追従走行制御時とは異なる値のガード値を持つことになるが、先行車の不在が確定しない間は定速走行制御時におけるガード値を追従走行制御時におけるガード値よりも小さな値に設定し、先行車の不在が確定しない状態での急加速を防止することで安全性の向上を図る事が出来る一方、先行車の不在が確定している場合は定速走行制御時におけるガード値を追従走行制御時におけるガード値よりも大きな値に設定することで、運転者の意思に添った加速を実現出来るので操作性が向上する。
【0086】
尚、上述した各ガード値は、各エンジンモード毎に設定されているモードマップMp1〜Mp3とは別個に設定されているため調整が可能であり、各ガード値を個々に微調整することで、アクセルペダル操作による通常運転時のエンジン出力特性に対して、より高い適合を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】インストルメントパネル及びセンタコンソールを運転席側から見た斜視図
【図2】コンビネーションメータの正面図
【図3】モード選択スイッチの斜視図
【図4】マルチインフォメーションディスプレイの表示例を示す説明図
【図5】クルーズ制御時のマルチインフォメーションディスプレイの表示例を示す説明図
【図6】車両に設けた制御装置の構成図
【図7】(a)はノーマルモードマップの特性図、(b)はセーブモードマップの特性図、(c)はパワーモードマップの特性図
【図8】クルーズ制御装置の機能構成を示すブロック図
【図9】(a)はクルーズ制御において先行車間距離が設定車間距離よりも離れている状態の説明図、(b)はクルーズ制御において先行車間距離が設定車間距離よりも短い状態の説明図
【図10】車間距離偏差マップの説明図
【図11】追従目標車速と各エンジンモードに対応した加速ガード値との関係を示す説明図
【図12】クルーズ制御時の追従走行と定速走行とにおいて設定する各ガード値の説明図
【符号の説明】
【0088】
3h…クルーズ制御動作表示ランプ、
3j…車間距離警告ランプ、
8…モード選択スイッチ、
31…アクセル開度センサ、
32…スロットル開度センサ、
34…クルコン操作スイッチ、
37…スロットルアクチュエータ、
41…車速検出手段、
51…クルーズ制御ユニット、
53…先行車検出部、
61…目標車速演算部、
62…追従目標車速演算部、
63…追尾フラグ演算部、
64…制御用目標車速演算部、
65…クルコン要求馬力演算部、
66…クルコン要求トルク演算部、
67…アクセル要求トルク演算部、
68…要求トルク選択演算部、
69…目標スロットル開度演算部、
70…疑似アクセル開度演算部、
ΔL…車間距離偏差、
ΔS…速度差、
ΔSg…設定速度、
θαs…目標スロットル開度、
θa…アクセル開度、
θha…疑似アクセル開度、
θtho…目標スロットル開度、
Ffo…追尾フラグ、
L…先行車間距離、
Lo…設定車間距離、
Ne…エンジン回転数、
Sα…追尾応答速度、
Sfo…追従目標車速、
Si…自車速、
Sn…先行車速、
So…制御用目標車速、
Sst…セット車速、
St…目標車速、
Tacs…アクセル要求トルク、
Tcs…クルコン要求トルク、
Ts…要求トルク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン運転状態を検出するエンジン運転状態検出手段とアクセル開度とに基づき設定される複数の異なるエンジン出力特性を外部操作者により選択手段にて選択されるエンジンモード毎に記憶する記憶手段を有し、前記エンジンモードに従いスロットル開度を制御するエンジン制御手段と、
予め或いは先行車の車速に基づいて設定される制御用目標車速と自車の車速との偏差に基づいて該自車の車速を前記制御用目標車速に収束させる要求トルクを求め、該要求トルクに基づいて前記エンジン制御手段へ出力するための目標スロットル開度を設定するクルーズ制御手段と
を備え、
前記クルーズ制御手段は、前記選択手段で選択された前記エンジンモードに対応する前記制御用目標車速における上限ガード値を運転領域毎に設定し、該各上限ガード値と前記制御用目標車速とを運転領域毎に比較し、該制御用目標車速が該上限ガード値よりも高いときは該上限ガード値で前記制御用目標車速を設定する
ことを特徴とする走行制御装置。
【請求項2】
エンジン運転状態を検出するエンジン運転状態検出手段とアクセル開度とに基づき設定される複数の異なるエンジン出力特性を外部操作者により選択手段にて選択されるエンジンモード毎に記憶する記憶手段を有し、前記エンジンモードに従いスロットル開度を制御するエンジン制御手段と、
予め或いは先行車の車速に基づいて設定される制御用目標車速と自車の車速との偏差に基づいて該自車の車速を前記制御用目標車速に収束させる要求トルクを求め、該要求トルクに基づいて前記エンジン制御手段へ出力するための目標スロットル開度を設定するクルーズ制御手段と
を備え、
前記クルーズ制御手段は、前記選択手段で選択された前記エンジンモードに対応する前記制御用目標車速の変化量における上限ガード値を運転領域毎に設定し、該各上限ガード値と前記制御用目標車速の変化量とを運転領域毎に比較し、該制御用目標車速の変化量が該上限ガード値よりも高いときは該上限ガード値で前記制御用目標車速の変化量を設定する
ことを特徴とする走行制御装置。
【請求項3】
前記クルーズ制御手段は、追従走行制御時に設定する上限ガード値と定速走行制御時に設定する上限ガード値とを有しており、
前記追従走行制御時に設定する上限ガード値と前記定速走行制御時に設定する上限ガード値とは異なる値を有する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の走行制御装置。
【請求項4】
前記追従走行制御時に設定する上限ガード値は前記定速走行制御時に設定する上限ガード値よりも大きな値を有する
ことを特徴とする請求項3記載の走行制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2008−120302(P2008−120302A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−308268(P2006−308268)
【出願日】平成18年11月14日(2006.11.14)
【出願人】(000005348)富士重工業株式会社 (3,010)
【Fターム(参考)】