超音波アレイセンサーおよびその製造方法
【課題】複数のセンサー素子間での特性バラツキを抑制し、所望の歩留まりが得られる超音波アレイセンサーおよびその製造方法を提供する。
【解決手段】超音波アレイセンサーにおいて、センサー素子2は、圧電体層8の平面パターンが下部電極5の平面パターンよりも外側にはみ出しておらず、上部電極3の平面パターンが圧電体層8の平面パターンよりも外側にはみ出していない。下部電極引き回し配線6は、コンタクトホール13を介して下部電極5と電気的に接続され、コンタクトホール13の箇所を除いて圧電体層8の一面上に配置されている。上部電極引き回し配線4は、下部電極引き回し配線6の延在方向と交差する方向に延在して上部電極3と一体に形成され、圧電体層8の一面上に配置されている。
【解決手段】超音波アレイセンサーにおいて、センサー素子2は、圧電体層8の平面パターンが下部電極5の平面パターンよりも外側にはみ出しておらず、上部電極3の平面パターンが圧電体層8の平面パターンよりも外側にはみ出していない。下部電極引き回し配線6は、コンタクトホール13を介して下部電極5と電気的に接続され、コンタクトホール13の箇所を除いて圧電体層8の一面上に配置されている。上部電極引き回し配線4は、下部電極引き回し配線6の延在方向と交差する方向に延在して上部電極3と一体に形成され、圧電体層8の一面上に配置されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波アレイセンサーおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、マイクロマシニング加工技術を用いて製造される超音波アレイセンサーが注目を集めている。超音波アレイセンサーは、物体検知、計測等を目的としたロボット分野、FA分野、流通・物流分野、医療分野、介護・福祉分野、セキュリティー分野等の種々の分野において、障害物・人・物などの移動体、侵入者等を検知するセンシングシステムとして幅広く採用されている。この種の超音波アレイセンサーおよびその製造方法の一例が、下記の特許文献1に開示されている。超音波アレイセンサーは、最近では携帯用医療機器などにも応用されており、小型、軽量化が進んでいる。
【0003】
超音波アレイセンサーは、ダイヤフラムを有する複数の微小なセンサー素子がアレイ状に配列されたものである。個々のセンサー素子は、一対の電極間に圧電体層が挟持された圧電素子をダイヤフラム上に備えている。圧電素子の一対の電極間に電圧を印加すると、電圧の大きさに応じて圧電素子に機械的変位が生じ、逆に圧電素子に機械的変位が生じると、一対の電極間に機械的変位の大きさに応じて起電力が発生する。この起電力の大きさから、対象物の有無を検知したり、対象物までの距離を測定したりすることができる。
【0004】
なお、超音波アレイセンサーと同様、マイクロマシニング加工技術を用いて微小な圧電素子を形成するデバイスとして、例えばインクジェット式記録装置に用いられる液体噴射ヘッドが挙げられる。下記の特許文献2には、液体噴射ヘッドの一例が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−51690号公報
【特許文献2】特開2009−172878号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、複数の圧電素子を備えた超音波アレイセンサーの小型化に伴って、以下のような製造上の問題が生じている。
【0007】
図10は、従来の超音波アレイセンサーのセンサー素子において、各構成要素のパターンのレイアウトを示す平面図である。
図10において、符号B1は下部電極のパターンである。符号B2は上部電極および圧電体層のパターンである。符号B31は上部電極の引き出し配線のパターンである。符号B32は下部電極の引き出し配線のパターンである。符号B4は裏面空洞部のパターンである。なお、これらのパターンはこれらの構成要素を形成する工程で用いるフォトマスクのパターンに対応している。
【0008】
図11〜図16は、従来の超音波アレイセンサーのセンサー素子の製造方法を、工程順を追って示す断面図である。なお、図11〜図16では工程毎に3つの断面図を示しており、図11(a)〜図16(a)が図10のO−A線に沿う断面図であり、図11(b)〜図16(b)が図10のO−B線に沿う断面図であり、図11(c)〜図16(c)が図10のC−D線に沿う断面図である。
【0009】
以下、図11〜図16を用いてセンサー素子の製造方法について説明する。
図11(a)〜(c)に示すように、シリコン基板101上に第1絶縁膜102、第2絶縁膜103、下部電極となる第1金属膜104を積層する。その後、図10のパターンB1に相当する第1フォトマスクを用いたフォトリソグラフィー、異方性エッチング、レジスト剥離を順に行い、第1金属膜104をパターニングすることにより下部電極105を形成する。
【0010】
次に、図12(a)〜(c)に示すように、圧電素子として機能する圧電材料層106を、下部電極105の上面を含む全面にゾル・ゲル法により成膜する。さらに、圧電材料層106上に、上部電極となる第2金属膜107を成膜する。
【0011】
次に、図13(a)〜(c)に示すように、図10のパターンB2に相当する第2フォトマスクを用いたフォトリソグラフィー、異方性エッチング、レジスト剥離を順に行い、第2金属膜107および圧電材料層106を一括してパターニングすることにより上部電極108および圧電体層109を形成する。このとき、図13(a)に示すように、符号Cの位置で下部電極105の引き出し部105aが消失しないように、異方性エッチングの条件設定を行う。
【0012】
次に、図14(a)〜(c)に示すように、上部電極108の上面および圧電体層109の側面を含む全面に、上部電極108や下部電極105の引き回し配線となる第3金属膜110を成膜する。
【0013】
次に、図15(a)〜(c)に示すように、図10のパターンB3に相当する第3フォトマスクを用いたフォトリソグラフィー、異方性エッチング、レジスト剥離を順に行い、第3金属膜110をパターニングすることにより上部電極引き回し配線111および下部電極引き回し配線112を形成する。
以上の工程により、圧電素子113が完成する。その後、圧電素子113を覆うように基板全面に保護膜(図示せず)を塗布する。
【0014】
次に、基板の表裏を反転し、図16(a)〜(c)に示すように、圧電素子113が形成されていない側のシリコン基板101の一面に対し、図10のパターンB4に相当する第4フォトマスクを用いたフォトリソグラフィー、異方性エッチング、レジスト剥離を順に行い、シリコン基板101に裏面空洞部101aを形成する。裏面空洞部101aを形成したことにより、シリコン基板101が除去されて第1絶縁膜102および第2絶縁膜103が残存した部分が振動板114となる。
【0015】
以上の工程により、従来のセンサー素子115が完成する。
なお、図16(a)には下部電極引き回し配線112が表されており、図16(b)には上部電極引き回し配線111が表されており、図16(c)にはセンサー素子113が表されている。
【0016】
[第1の課題]
図12(a)〜(c)に示す工程において、ゾル・ゲル法を用いて圧電材料層106を成膜する際、シリコン基板101上には下部電極105が存在する領域と下部電極105が存在しない領域との間に下部電極105の膜厚分の段差ができる。そのため、圧電材料のゾルを塗布し、乾燥すると、後で圧電素子の中央部となる箇所と圧電素子の周縁部となる箇所との間で圧電材料層106の膜厚に差が生じる。具体的には、図12(c)の符号Aの箇所に対して符号Bの箇所では膜厚が薄くなる。
【0017】
さらに、場所によって下部電極105の疎密が存在すると、下部電極105が疎の領域では圧電材料層106の膜厚が薄くなり、下部電極105が密の領域では圧電材料層106の膜厚が厚くなる傾向がある。以上の要因により、圧電材料層106の膜厚が所望の設計値よりも薄くなると圧電特性の低下が生じ、圧電素子間での特性ばらつきが大きくなる。
【0018】
[第2の課題]
上述したように、図13(a)〜(c)に示す工程において、図13(a)の符号Cで示す下部電極105の引き出し部105aは、後で引き回し配線とのコンタクトを取る必要があるため、圧電材料層106の異方性エッチングを行う際に断線しないように条件設定する必要がある。そのため、圧電材料層106に過剰なオーバーエッチングを施すことができない。すると、圧電材料層106が本来除去されるべき箇所、すなわち図13(b)の符号Dの箇所において、圧電材料層106が残渣として残る場合があり、以降の製造工程で種々の不具合が発生する。
【0019】
[第3の課題]
図15(a)〜(c)に示す工程において、上部電極引き回し配線111および下部電極引き回し配線112のパターニングを行う際、圧電素子113の上部にあたる図15(a)の符号Eの箇所と、後で振動板114となる図15(c)の符号Fの箇所とを同時にパターニングすることになる。ところが、圧電体層109の膜厚が例えば数μmと厚いため、露光工程においてEの箇所、Fの箇所のいずれか一方に露光装置の焦点を合わすと、他方に焦点が合わず、所望のパターン形状が得られない。パターン形状が崩れた場合、隣り合う引き回し配線の短絡や断線が生じる虞がある。
【0020】
以上の3つの課題に起因して、複数のセンサー素子間で出力や感度等の特性のバラツキが大きくなるという問題があった。また、所望の特性が得られないため、超音波アレイセンサーの歩留まりが低下するという問題があった。
【0021】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、複数のセンサー素子間での特性バラツキを抑制し、所望の歩留まりが得られる超音波アレイセンサーおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
上記の目的を達成するために、本発明の超音波アレイセンサーは、基板と、前記基板上に配列された複数のセンサー素子と、を備え、前記センサー素子は、振動板と、前記振動板の一面に形成された第1電極と、前記第1電極の一面に形成された圧電体層と、前記圧電体層の前記第1電極が形成された側と反対側の面に形成された第2電極と、前記第1電極と電気的に接続された第1電極引き回し配線と、前記第2電極と電気的に接続された第2電極引き回し配線と、を備え、前記圧電体層の平面パターンの外縁が前記第1電極の平面パターンの外縁よりも外側にはみ出しておらず、前記第2電極の平面パターンの外縁が前記圧電体層の平面パターンの外縁よりも外側にはみ出しておらず、前記圧電体層を貫通して前記第1電極の引き出し部に達するコンタクトホールが設けられ、前記第1電極引き回し配線が、前記コンタクトホールを介して前記第1電極と電気的に接続されるとともに、前記コンタクトホールの箇所を除いて前記圧電体層の一面上に配置され、前記第2電極引き回し配線が、前記第1電極引き回し配線の延在方向と交差する方向に延在して前記第2電極と一体に形成されるとともに、前記圧電体層の一面上に配置されたことを特徴とする。
【0023】
本発明の超音波アレイセンサーにおいては、圧電体層と、圧電体層を挟んで振動板側に形成された第1電極と、圧電体層を挟んで振動板と反対側に形成された第2電極と、によりセンサー素子が構成される。ここで、圧電体層の平面パターンの外縁が前記第1電極の平面パターンの外縁よりも外側にはみ出していないため、圧電体層の全面が第1電極の上に積層された状態となっている。そのため、圧電体層が第1電極の縁の段差の影響を受けず、圧電体層の膜厚バラツキが生じにくい。また、第1電極引き回し配線がコンタクトホールを介して第1電極と電気的に接続されているため、第1電極の断線が生じにくく、圧電体層の残渣が発生しにくい。さらに、第1電極引き回し配線および第2電極引き回し配線が圧電体層の一面上に配置されているため、第1電極引き回し配線および第2電極引き回し配線のパターニングを行う際の露光工程で焦点が合わないという問題を解消できる。その結果、複数のセンサー素子間での特性バラツキの少ない超音波アレイセンサーを歩留まり良く得ることができる。
【0024】
本発明の超音波アレイセンサーにおいて、前記圧電体層の平面パターンの外縁と前記第1電極の平面パターンの外縁とが一致していることが望ましい。
この構成によれば、1回のフォトリソグラフィー工程で圧電体層と第1電極とを同時に形成することができる。
【0025】
本発明の超音波アレイセンサーにおいて、前記第2電極の平面パターンの外縁が前記圧電体層の平面パターンの外縁よりも内側に位置していることが望ましい。
この構成によれば、第2電極と圧電体層との位置合わせにマージンを持たせることができ、第2電極の平面パターンの外縁が前記圧電体層の平面パターンの外縁よりも外側にはみ出さない構成を確実に実現できる。
【0026】
本発明の超音波アレイセンサーの製造方法は、基板の一面に振動板となる絶縁膜を形成する工程と、前記絶縁膜上に第1電極となる第1導電膜、圧電体層となる圧電材料層、第2電極となる第2導電膜を順次積層する工程と、第1フォトマスクを用いて前記第2導電膜および前記圧電材料層を開孔することにより、前記第2導電膜および前記圧電材料層を貫通して前記第1導電膜に達するコンタクトホールを形成する工程と、第1電極引き回し配線および第2電極引き回し配線となる第3導電膜を成膜する工程と、第2フォトマスクを用いて前記第3導電膜および前記第2導電膜をパターニングすることにより、前記第2電極、前記第2電極引き回し配線、および前記第1電極引き回し配線を形成する工程と、第3フォトマスクを用いて前記圧電材料層および前記第1導電膜をパターニングすることにより、前記圧電体層および前記第1電極を形成する工程と、第4フォトマスクを用いて前記絶縁膜が形成された側と反対側の面から前記基板を前記絶縁膜が露出するまで開孔することにより、前記基板に空洞部を形成して前記絶縁膜からなる前記振動板を形成する工程と、を備えたことを特徴とする。
【0027】
本発明の超音波アレイセンサーの製造方法においては、第1電極となる第1導電膜、圧電体層となる圧電材料層、第2電極となる第2導電膜を絶縁膜上に順次積層するため、圧電材料層が第1電極の縁の段差の影響を受けることがなく、圧電材料層からなる圧電体層の膜厚バラツキが生じにくい。また、第1電極引き回し配線がコンタクトホールを介して第1電極と電気的に接続されることになり、第1電極と第1電極引き回し配線とのコンタクトのために第1電極が広い面積で剥き出しになる工程が存在しない。したがって、第1電極の断線が生じにくい。また、圧電体層のエッチング時に第1電極のオーバーエッチングを考慮する必要がないため、圧電体層の残渣が発生しにくい。圧電体層および前記第1電極をパターニングする前に第2電極引き回し配線、および第1電極引き回し配線を圧電材料層上でパターニングするため、第2電極引き回し配線、および第1電極引き回し配線のパターニングを行う際の露光工程で焦点が合わないという問題を解消できる。その結果、複数のセンサー素子間での特性バラツキの少ない超音波アレイセンサーを歩留まり良く得ることができる。
【0028】
本発明の超音波アレイセンサーの製造方法において、前記第3フォトマスクの前記圧電体層および前記第1電極の平面パターンの外縁が、前記第2フォトマスクの前記第2電極の平面パターンの外縁よりも外側に位置していることが望ましい。
この構成によれば、第2電極と圧電体層との位置合わせにマージンを持たせることができ、第2電極の平面パターンの外縁が前記圧電体層の平面パターンの外縁よりも外側にはみ出さない構成を確実に実現できる。
【0029】
本発明の超音波アレイセンサーの製造方法において、ゾル・ゲル法を用いて前記圧電材料層を形成することが望ましい。
この構成によれば、膜厚バラツキを十分に小さくすることができ、所望の膜厚の圧電材料層を容易に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の一実施形態の超音波アレイセンサーを示す平面図である。
【図2】本実施形態の超音波アレイセンサーを構成するセンサー素子を示す平面図である。
【図3】(a)〜(c)は本実施形態の超音波アレイセンサーを構成するセンサー素子を示す断面図である。
【図4】(a)〜(c)は本実施形態のセンサー素子の製造方法の一工程を示す断面図である。
【図5】(a)〜(c)は同、センサー素子の製造方法の一工程を示す断面図である。
【図6】(a)〜(c)は同、センサー素子の製造方法の一工程を示す断面図である。
【図7】(a)〜(c)は同、センサー素子の製造方法の一工程を示す断面図である。
【図8】(a)〜(c)は同、センサー素子の製造方法の一工程を示す断面図である。
【図9】(a)〜(c)は同、センサー素子の製造方法の一工程を示す断面図である。
【図10】従来の超音波アレイセンサーを構成するセンサー素子を示す平面図である。
【図11】(a)〜(c)は従来のセンサー素子の製造方法の一工程を示す断面図である。
【図12】(a)〜(c)は同、センサー素子の製造方法の一工程を示す断面図である。
【図13】(a)〜(c)は同、センサー素子の製造方法の一工程を示す断面図である。
【図14】(a)〜(c)は同、センサー素子の製造方法の一工程を示す断面図である。
【図15】(a)〜(c)は同、センサー素子の製造方法の一工程を示す断面図である。
【図16】(a)〜(c)は同、センサー素子の製造方法の一工程を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の一実施形態について、図1〜図9を用いて説明する。
なお、図1〜図9においては、各構成要素を見やすくするため、構成要素によって寸法の縮尺を異ならせて示すことがある。
【0032】
本実施形態の超音波アレイセンサー1は、図1に示すように、複数のセンサー素子2が直交する2方向(x方向、y方向)にアレイ状に配列された構成となっている。図1において、符号A1はコンタクトホールのパターンである。符号A21は上部電極(第2電極)および上部電極引き回し配線(第2電極引き回し配線)のパターンである。符号A22は下部電極引き回し配線(第1電極引き回し配線)のパターンである。符号A3は圧電体層および下部電極(第1電極)のパターンである。符号A4は裏面空洞部のパターンである。
【0033】
上部電極3と上部電極引き回し配線4とは一体のパターンA21として形成され、上部電極引き回し配線4は、隣り合う上部電極3同士を繋ぐように図1の縦方向(y方向)に延在している。なお、一体のパターンの中で、円形部分を上部電極3とし、円形部分以外の線状部分を上部電極引き回し配線4とする。一方、下部電極引き回し配線6は、隣り合う下部電極5同士を繋ぐように図1の横方向(x方向)に延在している。上部電極引き回し配線4および下部電極引き回し配線6は、基板の周縁部に設けられた図示しないボンディングパッドに接続されている。
【0034】
図2は、図1に示した超音波アレイセンサー1のうち、一つのセンサー素子2を拡大視したパターンのレイアウトを示す平面図である。よって、図2において、図1と共通のパターンには同一の符号を付す。なお、これらのパターンはこれらの構成要素を形成するフォトリソグラフィー工程で用いるフォトマスクのパターンに相当する。すなわち、符号A1はコンタクトホール形成用の第1フォトマスクのパターンに相当する。符号A21は第2フォトマスクのうち、上部電極および上部電極引き回し配線形成用のパターンに相当する。符号A22は第2フォトマスクのうち、下部電極引き回し配線形成用のパターンに相当する。符号A3は圧電体層および下部電極形成用の第3フォトマスクのパターンに相当する。符号A4は裏面空洞部形成用の第4フォトマスクのパターンに相当する。
【0035】
図3(a)〜(c)は、本実施形態のセンサー素子2を示す断面図であり、図3(a)は図2のO−A線に沿う断面図であり、図3(b)は図2のO−B線に沿う断面図であり、図3(c)は図2のC−D線に沿う断面図である。
【0036】
センサー素子2は、振動板7と、下部電極5と、下部電極5の上面に形成された圧電体層8と、下部電極5が形成された側と反対側の圧電体層8の上面に形成された上部電極3と、下部電極5と電気的に接続された下部電極引き回し配線6と、上部電極3と電気的に接続された上部電極引き回し配線4と、を備えている。圧電体層8と、圧電体層8を挟持する下部電極5および上部電極3と、によって圧電素子9が構成されている。
【0037】
振動板7は、第1絶縁膜10と、第2絶縁膜11と、から構成されている。第1絶縁膜10および第2絶縁膜11には、一例として、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、窒化シリコン、酸化シリコン、ステンレス鋼等から選ばれる靱性の高い絶縁材料が用いられる。第1絶縁膜10と第2絶縁膜11が形成された領域のうち、シリコン基板12の裏面に裏面空洞部12aが形成され、シリコン基板12が除去された部分が特に振動板7として機能する。第1絶縁膜10および第2絶縁膜11の全体の膜厚は、一例として200〜5000nm程度である。
【0038】
下部電極5には、例えばニッケル、イリジウム、金、プラチナ、タングステン、チタン、パラジウム、銀、タンタル、モリブデン、クロム、ストロンチウムとルテニウムとの複合膜、ランタンとニッケルとの複合膜等から選ばれる導電性材料が用いられる。下部電極5の膜厚は、一例として20〜400nm程度である。
【0039】
圧電体層8は、一般式ABO3で示されるペロブスカイト型酸化物からなる圧電性材料で構成されている。具体的には、例えばチタン酸ジルコン酸鉛(Pb(Zr,Ti)O3)、ニオブ酸チタン酸ジルコン酸鉛(Pb(Zr,Ti,Nb)O3)、チタン酸バリウム(BaTiO3)等が用いられる。圧電体層8の膜厚は、一例として1000〜5000nm程度である。
【0040】
上部電極3、上部電極引き回し配線4および下部電極引き回し配線6には、下部電極5と同様、例えばニッケル、イリジウム、金、プラチナ、タングステン、チタン、パラジウム、銀、タンタル、モリブデン、クロム、ストロンチウムとルテニウムとの複合膜、ランタンとニッケルとの複合膜等から選ばれる導電性材料が用いられる。ただし、上部電極3、上部電極引き回し配線4および下部電極引き回し配線6は、下部電極5と同じ種類の金属材料を用いてもよいし、下部電極5とは異なる種類の金属材料を用いてもよい。上部電極3、上部電極引き回し配線4および下部電極引き回し配線6の膜厚は、一例として50〜400nm程度である。
【0041】
圧電素子9の下部電極5と上部電極3との間に電圧を印加すると、電圧の大きさに応じて圧電素子9に機械的変位が生じ、振動板7が振動する。逆に、振動板7を介して圧電素子9に機械的変位が生じると、下部電極5と上部電極3との間に機械的変位の大きさに応じた起電力が発生する。この起電力の大きさから、対象物の有無を検知したり、対象物までの距離を測定したりすることができる。
【0042】
図2および図3(c)に示すように、圧電体層8の平面パターンの外縁は、下部電極5の平面パターンの外縁と一致している。これは、後述するように、圧電体層8と下部電極5とを一つのフォトマスクを用いて一括してパターニングしていることに起因する。なお、図3(c)に示すように、圧電体層8の側面はテーパー形状となっているため、ここでは、テーパー状の圧電体層8の側面の下端の縁を圧電体層8の外縁と定義する。一方、上部電極3の平面パターンの外縁は、圧電体層8の平面パターンの外縁よりも内側に位置している。すなわち、上部電極3は、圧電体層8のテーパー状の側面や振動板7の上面にかかっておらず、圧電体層8の上面にのみ配置されている。
【0043】
図2および図3(a)に示すように、圧電体層8を貫通して下部電極5の引き出し部5aに達するコンタクトホール13が設けられている。ここでは、図2に示す平面パターンにおいては、円形部分を下部電極5とし、円形部分以外の線状部分を下部電極5の引き出し部5aとする。そして、下部電極引き回し配線6は、コンタクトホール13の内壁に沿って形成されている。これにより、下部電極引き回し配線6は、コンタクトホール13を介して下部電極5と電気的に接続されている。
【0044】
図3(a)に示すように、下部電極引き回し配線6は、コンタクトホール13にかかる箇所を除いて圧電体層8の上面に配置されている。また、図3(b)に示すように、上部電極引き回し配線4は、圧電体層8の上面に配置されている。
【0045】
図4〜図9は、本実施形態の超音波アレイセンサー1のうち、センサー素子2の製造方法を、工程順を追って示す断面図である。なお、図4〜図9では工程毎にセンサー素子2の切断箇所が異なる3つの断面図を示している。図4(a)〜図9(a)が図2のO−A線に沿う断面図(図3(a)に対応)であり、図4(b)〜図9(b)が図2のO−B線に沿う断面図(図3(b)に対応)であり、図4(c)〜図9(c)が図2のC−D線に沿う断面図(図3(c)に対応)である。
【0046】
最初に、図4(a)〜(c)に示すように、シリコン基板12の表面に第1絶縁膜10を形成する。第1絶縁膜10として例えば酸化シリコン層を用いる場合、熱酸化法によりシリコン基板12の表面に酸化シリコン層を形成する。なお、熱酸化法に代えて、CVD法を用いても良い。次いで、第1絶縁膜10の上面に、スパッタ法もしくはCVD法により第2絶縁膜11を形成する。次いで、第2絶縁膜11の上面に、後で下部電極5となる第1金属膜15(第1導電膜)をスパッタ法もしくはCVD法により形成する。
【0047】
次いで、第1金属膜15の上面に、圧電素子9を構成する圧電材料層16をゾル・ゲル法により成膜する。ここでのゾル・ゲル法は、圧電性材料、例えばPZTを含むゾルを塗布、乾燥してゲル化させ、さらに高温で焼成することにより圧電材料層16を得る方法である。
次いで、圧電材料層16の上面に、後で上部電極3となる第2金属膜17(第2導電膜)をスパッタ法もしくは熱CVD法により形成する。
【0048】
次に、図5(a)〜(c)に示すように、図2のパターンA1に相当する第1フォトマスクを用いたフォトリソグラフィー、異方性エッチング、レジスト剥離を順に行い、第2金属膜17および圧電材料層16を1つのフォトマスクでパターニングする。これにより、第2金属膜17および圧電材料層16を貫通して第1金属膜15に達するコンタクトホール13を形成する。コンタクトホール13は、後で形成する下部電極5と下部電極引き回し配線6とを接続するためのものである。
【0049】
次に、図6(a)〜(c)に示すように、コンタクトホール13の内壁を含む第2金属膜17の上面に、後で上部電極引き回し配線4および下部電極引き回し配線6となる第3金属膜18(第3導電膜)をスパッタ法もしくはCVD法により成膜する。
【0050】
次に、図7(a)〜(c)に示すように、図2のパターンA21およびパターンA22に相当する第2フォトマスクを用いたフォトリソグラフィー、異方性エッチング、レジスト剥離を順に行い、第2金属膜17および第3金属膜18を1つのフォトマスクで一括してパターニングする。これにより、第2金属膜17および第3金属膜18からなる上部電極3、上部電極引き回し配線4および下部電極引き回し配線6を形成する。すなわち、上部電極3、上部電極引き回し配線4および下部電極引き回し配線6は、第2金属膜17と第3金属膜18とが積層された積層膜により構成される。この段階で、上部電極3、上部電極引き回し配線4および下部電極引き回し配線6の下地は、圧電材料層16、第1金属膜15、第2絶縁膜11、第1絶縁膜10からなるパターニングされていない積層膜である。
【0051】
次に、図8(a)〜(c)に示すように、図2のパターンA3に相当する第3フォトマスクを用いたフォトリソグラフィー、異方性エッチング、レジスト剥離を順に行い、圧電材料層16と第1金属膜15とを1つのフォトマスクで一括してパターニングする。これにより、圧電材料層16からなる圧電体層8と、第1金属膜15からなる下部電極5と、を形成する。ここでは、圧電材料層16の膜厚が他の層の膜厚と比べて厚いため、圧電材料層16を異方性エッチングすると圧電体層16の側壁がテーパー形状となる。
【0052】
以上の工程により、圧電素子9が完成する。その後、圧電素子9を覆うように基板の全面に保護膜(図示せず)を塗布する。例えば保護膜の一例として、フォトレジストを用いることができる。
【0053】
次に、基板の表裏を反転し、圧電素子9が形成されていない側のシリコン基板12の一面に対し、図2のパターンA4に相当する第4フォトマスクを用いたフォトリソグラフィー、異方性エッチング、レジスト剥離を順に行い、図9(a)〜(c)に示すように、シリコン基板12のうち、圧電素子9の裏面側に対応する位置に第1絶縁膜10の裏面に達する開口部を形成する。このようにして、シリコン基板12に裏面空洞部12aを形成する。裏面空洞部12aを形成したことにより、シリコン基板12が除去されて第1絶縁膜10と第2絶縁膜11とが残存した部分が振動板7となる。
以上の工程により、図2、および図3(a)〜(c)に示すセンサー素子2が完成する。
【0054】
本実施形態の超音波アレイセンサー1の製造方法によれば、従来の製造方法と異なり、第1金属膜15のパターニングを行って下部電極5を形成する工程に先立って、第1金属膜15上の全面に圧電材料層16を形成する。そのため、ゾル・ゲル法を用いて圧電材料層16を形成する際、下部電極5の縁の段差の影響を受けることがなく、圧電材料層16、ひいては圧電体層8の膜厚バラツキを抑えることができる。このとき、ゾル・ゲル法を用いて圧電材料層16を形成しているため、膜厚バラツキを十分に小さくできるとともに比較的厚い膜を形成でき、所望の膜厚の圧電材料層16を容易に形成することができる。
【0055】
また、下部電極引き回し配線6がコンタクトホール13を介して下部電極5と電気的に接続される構成であるため、従来の製造方法と異なり、下部電極5と下部電極引き回し配線6とをコンタクトさせるために下部電極5が広い面積で剥き出しになる工程が存在しない。したがって、下部電極5の断線が生じにくい。また、圧電体層8と下部電極5とを第3フォトマスクで一括してパターニングして形成するため、圧電体層8の側方に下部電極5のみが露出する箇所が存在しない。よって、圧電体層8の異方性エッチング時に下部電極5がエッチングされる虞がなく、圧電材料層16をオーバーエッチングすることができる。そのため、圧電体層8の残渣が発生しにくい。
【0056】
また、圧電体層8および下部電極5をパターニングする前に、上部電極引き回し配線4および下部電極引き回し配線6を圧電材料層16の上面でパターニングしているため、上部電極引き回し配線4および下部電極引き回し配線6のパターニング時の露光工程において、段差に起因して焦点が合わないという問題が発生しにくい。以上の結果、複数のセンサー素子間での特性バラツキの少ない超音波アレイセンサーを歩留まり良く得ることができる。
【0057】
さらに、本実施形態の場合、上部電極3の平面パターンの外縁が圧電体層8の平面パターンの外縁よりも内側に位置している。この構成によれば、上部電極3の平面パターンと圧電体層8の平面パターンとの位置合わせにマージンを持たせることができる。そのため、上部電極3の平面パターンの外縁が圧電体層8の平面パターンの外縁よりも外側にはみ出さない構成を確実に実現できる。
【0058】
なお、本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。例えば上記実施形態で例示した超音波アレイセンサーにおけるセンサー素子の配置、各平面パターンの形状、構成材料等に関しては適宜変更が可能である。
【符号の説明】
【0059】
1…超音波アレイセンサー、2…センサー素子、3…上部電極(第2電極)、4…上部電極引き回し配線(第2電極引き回し配線)、5…下部電極(第1電極)、6…下部電極引き回し配線(第1電極引き回し配線)、7…振動板、8…圧電体層、12…シリコン基板、13…コンタクトホール、15…第1金属膜(第1導電膜)、16…圧電材料層、17…第2金属膜(第2導電膜)、18…第3金属膜(第3導電膜)。
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波アレイセンサーおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、マイクロマシニング加工技術を用いて製造される超音波アレイセンサーが注目を集めている。超音波アレイセンサーは、物体検知、計測等を目的としたロボット分野、FA分野、流通・物流分野、医療分野、介護・福祉分野、セキュリティー分野等の種々の分野において、障害物・人・物などの移動体、侵入者等を検知するセンシングシステムとして幅広く採用されている。この種の超音波アレイセンサーおよびその製造方法の一例が、下記の特許文献1に開示されている。超音波アレイセンサーは、最近では携帯用医療機器などにも応用されており、小型、軽量化が進んでいる。
【0003】
超音波アレイセンサーは、ダイヤフラムを有する複数の微小なセンサー素子がアレイ状に配列されたものである。個々のセンサー素子は、一対の電極間に圧電体層が挟持された圧電素子をダイヤフラム上に備えている。圧電素子の一対の電極間に電圧を印加すると、電圧の大きさに応じて圧電素子に機械的変位が生じ、逆に圧電素子に機械的変位が生じると、一対の電極間に機械的変位の大きさに応じて起電力が発生する。この起電力の大きさから、対象物の有無を検知したり、対象物までの距離を測定したりすることができる。
【0004】
なお、超音波アレイセンサーと同様、マイクロマシニング加工技術を用いて微小な圧電素子を形成するデバイスとして、例えばインクジェット式記録装置に用いられる液体噴射ヘッドが挙げられる。下記の特許文献2には、液体噴射ヘッドの一例が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−51690号公報
【特許文献2】特開2009−172878号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、複数の圧電素子を備えた超音波アレイセンサーの小型化に伴って、以下のような製造上の問題が生じている。
【0007】
図10は、従来の超音波アレイセンサーのセンサー素子において、各構成要素のパターンのレイアウトを示す平面図である。
図10において、符号B1は下部電極のパターンである。符号B2は上部電極および圧電体層のパターンである。符号B31は上部電極の引き出し配線のパターンである。符号B32は下部電極の引き出し配線のパターンである。符号B4は裏面空洞部のパターンである。なお、これらのパターンはこれらの構成要素を形成する工程で用いるフォトマスクのパターンに対応している。
【0008】
図11〜図16は、従来の超音波アレイセンサーのセンサー素子の製造方法を、工程順を追って示す断面図である。なお、図11〜図16では工程毎に3つの断面図を示しており、図11(a)〜図16(a)が図10のO−A線に沿う断面図であり、図11(b)〜図16(b)が図10のO−B線に沿う断面図であり、図11(c)〜図16(c)が図10のC−D線に沿う断面図である。
【0009】
以下、図11〜図16を用いてセンサー素子の製造方法について説明する。
図11(a)〜(c)に示すように、シリコン基板101上に第1絶縁膜102、第2絶縁膜103、下部電極となる第1金属膜104を積層する。その後、図10のパターンB1に相当する第1フォトマスクを用いたフォトリソグラフィー、異方性エッチング、レジスト剥離を順に行い、第1金属膜104をパターニングすることにより下部電極105を形成する。
【0010】
次に、図12(a)〜(c)に示すように、圧電素子として機能する圧電材料層106を、下部電極105の上面を含む全面にゾル・ゲル法により成膜する。さらに、圧電材料層106上に、上部電極となる第2金属膜107を成膜する。
【0011】
次に、図13(a)〜(c)に示すように、図10のパターンB2に相当する第2フォトマスクを用いたフォトリソグラフィー、異方性エッチング、レジスト剥離を順に行い、第2金属膜107および圧電材料層106を一括してパターニングすることにより上部電極108および圧電体層109を形成する。このとき、図13(a)に示すように、符号Cの位置で下部電極105の引き出し部105aが消失しないように、異方性エッチングの条件設定を行う。
【0012】
次に、図14(a)〜(c)に示すように、上部電極108の上面および圧電体層109の側面を含む全面に、上部電極108や下部電極105の引き回し配線となる第3金属膜110を成膜する。
【0013】
次に、図15(a)〜(c)に示すように、図10のパターンB3に相当する第3フォトマスクを用いたフォトリソグラフィー、異方性エッチング、レジスト剥離を順に行い、第3金属膜110をパターニングすることにより上部電極引き回し配線111および下部電極引き回し配線112を形成する。
以上の工程により、圧電素子113が完成する。その後、圧電素子113を覆うように基板全面に保護膜(図示せず)を塗布する。
【0014】
次に、基板の表裏を反転し、図16(a)〜(c)に示すように、圧電素子113が形成されていない側のシリコン基板101の一面に対し、図10のパターンB4に相当する第4フォトマスクを用いたフォトリソグラフィー、異方性エッチング、レジスト剥離を順に行い、シリコン基板101に裏面空洞部101aを形成する。裏面空洞部101aを形成したことにより、シリコン基板101が除去されて第1絶縁膜102および第2絶縁膜103が残存した部分が振動板114となる。
【0015】
以上の工程により、従来のセンサー素子115が完成する。
なお、図16(a)には下部電極引き回し配線112が表されており、図16(b)には上部電極引き回し配線111が表されており、図16(c)にはセンサー素子113が表されている。
【0016】
[第1の課題]
図12(a)〜(c)に示す工程において、ゾル・ゲル法を用いて圧電材料層106を成膜する際、シリコン基板101上には下部電極105が存在する領域と下部電極105が存在しない領域との間に下部電極105の膜厚分の段差ができる。そのため、圧電材料のゾルを塗布し、乾燥すると、後で圧電素子の中央部となる箇所と圧電素子の周縁部となる箇所との間で圧電材料層106の膜厚に差が生じる。具体的には、図12(c)の符号Aの箇所に対して符号Bの箇所では膜厚が薄くなる。
【0017】
さらに、場所によって下部電極105の疎密が存在すると、下部電極105が疎の領域では圧電材料層106の膜厚が薄くなり、下部電極105が密の領域では圧電材料層106の膜厚が厚くなる傾向がある。以上の要因により、圧電材料層106の膜厚が所望の設計値よりも薄くなると圧電特性の低下が生じ、圧電素子間での特性ばらつきが大きくなる。
【0018】
[第2の課題]
上述したように、図13(a)〜(c)に示す工程において、図13(a)の符号Cで示す下部電極105の引き出し部105aは、後で引き回し配線とのコンタクトを取る必要があるため、圧電材料層106の異方性エッチングを行う際に断線しないように条件設定する必要がある。そのため、圧電材料層106に過剰なオーバーエッチングを施すことができない。すると、圧電材料層106が本来除去されるべき箇所、すなわち図13(b)の符号Dの箇所において、圧電材料層106が残渣として残る場合があり、以降の製造工程で種々の不具合が発生する。
【0019】
[第3の課題]
図15(a)〜(c)に示す工程において、上部電極引き回し配線111および下部電極引き回し配線112のパターニングを行う際、圧電素子113の上部にあたる図15(a)の符号Eの箇所と、後で振動板114となる図15(c)の符号Fの箇所とを同時にパターニングすることになる。ところが、圧電体層109の膜厚が例えば数μmと厚いため、露光工程においてEの箇所、Fの箇所のいずれか一方に露光装置の焦点を合わすと、他方に焦点が合わず、所望のパターン形状が得られない。パターン形状が崩れた場合、隣り合う引き回し配線の短絡や断線が生じる虞がある。
【0020】
以上の3つの課題に起因して、複数のセンサー素子間で出力や感度等の特性のバラツキが大きくなるという問題があった。また、所望の特性が得られないため、超音波アレイセンサーの歩留まりが低下するという問題があった。
【0021】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、複数のセンサー素子間での特性バラツキを抑制し、所望の歩留まりが得られる超音波アレイセンサーおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
上記の目的を達成するために、本発明の超音波アレイセンサーは、基板と、前記基板上に配列された複数のセンサー素子と、を備え、前記センサー素子は、振動板と、前記振動板の一面に形成された第1電極と、前記第1電極の一面に形成された圧電体層と、前記圧電体層の前記第1電極が形成された側と反対側の面に形成された第2電極と、前記第1電極と電気的に接続された第1電極引き回し配線と、前記第2電極と電気的に接続された第2電極引き回し配線と、を備え、前記圧電体層の平面パターンの外縁が前記第1電極の平面パターンの外縁よりも外側にはみ出しておらず、前記第2電極の平面パターンの外縁が前記圧電体層の平面パターンの外縁よりも外側にはみ出しておらず、前記圧電体層を貫通して前記第1電極の引き出し部に達するコンタクトホールが設けられ、前記第1電極引き回し配線が、前記コンタクトホールを介して前記第1電極と電気的に接続されるとともに、前記コンタクトホールの箇所を除いて前記圧電体層の一面上に配置され、前記第2電極引き回し配線が、前記第1電極引き回し配線の延在方向と交差する方向に延在して前記第2電極と一体に形成されるとともに、前記圧電体層の一面上に配置されたことを特徴とする。
【0023】
本発明の超音波アレイセンサーにおいては、圧電体層と、圧電体層を挟んで振動板側に形成された第1電極と、圧電体層を挟んで振動板と反対側に形成された第2電極と、によりセンサー素子が構成される。ここで、圧電体層の平面パターンの外縁が前記第1電極の平面パターンの外縁よりも外側にはみ出していないため、圧電体層の全面が第1電極の上に積層された状態となっている。そのため、圧電体層が第1電極の縁の段差の影響を受けず、圧電体層の膜厚バラツキが生じにくい。また、第1電極引き回し配線がコンタクトホールを介して第1電極と電気的に接続されているため、第1電極の断線が生じにくく、圧電体層の残渣が発生しにくい。さらに、第1電極引き回し配線および第2電極引き回し配線が圧電体層の一面上に配置されているため、第1電極引き回し配線および第2電極引き回し配線のパターニングを行う際の露光工程で焦点が合わないという問題を解消できる。その結果、複数のセンサー素子間での特性バラツキの少ない超音波アレイセンサーを歩留まり良く得ることができる。
【0024】
本発明の超音波アレイセンサーにおいて、前記圧電体層の平面パターンの外縁と前記第1電極の平面パターンの外縁とが一致していることが望ましい。
この構成によれば、1回のフォトリソグラフィー工程で圧電体層と第1電極とを同時に形成することができる。
【0025】
本発明の超音波アレイセンサーにおいて、前記第2電極の平面パターンの外縁が前記圧電体層の平面パターンの外縁よりも内側に位置していることが望ましい。
この構成によれば、第2電極と圧電体層との位置合わせにマージンを持たせることができ、第2電極の平面パターンの外縁が前記圧電体層の平面パターンの外縁よりも外側にはみ出さない構成を確実に実現できる。
【0026】
本発明の超音波アレイセンサーの製造方法は、基板の一面に振動板となる絶縁膜を形成する工程と、前記絶縁膜上に第1電極となる第1導電膜、圧電体層となる圧電材料層、第2電極となる第2導電膜を順次積層する工程と、第1フォトマスクを用いて前記第2導電膜および前記圧電材料層を開孔することにより、前記第2導電膜および前記圧電材料層を貫通して前記第1導電膜に達するコンタクトホールを形成する工程と、第1電極引き回し配線および第2電極引き回し配線となる第3導電膜を成膜する工程と、第2フォトマスクを用いて前記第3導電膜および前記第2導電膜をパターニングすることにより、前記第2電極、前記第2電極引き回し配線、および前記第1電極引き回し配線を形成する工程と、第3フォトマスクを用いて前記圧電材料層および前記第1導電膜をパターニングすることにより、前記圧電体層および前記第1電極を形成する工程と、第4フォトマスクを用いて前記絶縁膜が形成された側と反対側の面から前記基板を前記絶縁膜が露出するまで開孔することにより、前記基板に空洞部を形成して前記絶縁膜からなる前記振動板を形成する工程と、を備えたことを特徴とする。
【0027】
本発明の超音波アレイセンサーの製造方法においては、第1電極となる第1導電膜、圧電体層となる圧電材料層、第2電極となる第2導電膜を絶縁膜上に順次積層するため、圧電材料層が第1電極の縁の段差の影響を受けることがなく、圧電材料層からなる圧電体層の膜厚バラツキが生じにくい。また、第1電極引き回し配線がコンタクトホールを介して第1電極と電気的に接続されることになり、第1電極と第1電極引き回し配線とのコンタクトのために第1電極が広い面積で剥き出しになる工程が存在しない。したがって、第1電極の断線が生じにくい。また、圧電体層のエッチング時に第1電極のオーバーエッチングを考慮する必要がないため、圧電体層の残渣が発生しにくい。圧電体層および前記第1電極をパターニングする前に第2電極引き回し配線、および第1電極引き回し配線を圧電材料層上でパターニングするため、第2電極引き回し配線、および第1電極引き回し配線のパターニングを行う際の露光工程で焦点が合わないという問題を解消できる。その結果、複数のセンサー素子間での特性バラツキの少ない超音波アレイセンサーを歩留まり良く得ることができる。
【0028】
本発明の超音波アレイセンサーの製造方法において、前記第3フォトマスクの前記圧電体層および前記第1電極の平面パターンの外縁が、前記第2フォトマスクの前記第2電極の平面パターンの外縁よりも外側に位置していることが望ましい。
この構成によれば、第2電極と圧電体層との位置合わせにマージンを持たせることができ、第2電極の平面パターンの外縁が前記圧電体層の平面パターンの外縁よりも外側にはみ出さない構成を確実に実現できる。
【0029】
本発明の超音波アレイセンサーの製造方法において、ゾル・ゲル法を用いて前記圧電材料層を形成することが望ましい。
この構成によれば、膜厚バラツキを十分に小さくすることができ、所望の膜厚の圧電材料層を容易に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の一実施形態の超音波アレイセンサーを示す平面図である。
【図2】本実施形態の超音波アレイセンサーを構成するセンサー素子を示す平面図である。
【図3】(a)〜(c)は本実施形態の超音波アレイセンサーを構成するセンサー素子を示す断面図である。
【図4】(a)〜(c)は本実施形態のセンサー素子の製造方法の一工程を示す断面図である。
【図5】(a)〜(c)は同、センサー素子の製造方法の一工程を示す断面図である。
【図6】(a)〜(c)は同、センサー素子の製造方法の一工程を示す断面図である。
【図7】(a)〜(c)は同、センサー素子の製造方法の一工程を示す断面図である。
【図8】(a)〜(c)は同、センサー素子の製造方法の一工程を示す断面図である。
【図9】(a)〜(c)は同、センサー素子の製造方法の一工程を示す断面図である。
【図10】従来の超音波アレイセンサーを構成するセンサー素子を示す平面図である。
【図11】(a)〜(c)は従来のセンサー素子の製造方法の一工程を示す断面図である。
【図12】(a)〜(c)は同、センサー素子の製造方法の一工程を示す断面図である。
【図13】(a)〜(c)は同、センサー素子の製造方法の一工程を示す断面図である。
【図14】(a)〜(c)は同、センサー素子の製造方法の一工程を示す断面図である。
【図15】(a)〜(c)は同、センサー素子の製造方法の一工程を示す断面図である。
【図16】(a)〜(c)は同、センサー素子の製造方法の一工程を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の一実施形態について、図1〜図9を用いて説明する。
なお、図1〜図9においては、各構成要素を見やすくするため、構成要素によって寸法の縮尺を異ならせて示すことがある。
【0032】
本実施形態の超音波アレイセンサー1は、図1に示すように、複数のセンサー素子2が直交する2方向(x方向、y方向)にアレイ状に配列された構成となっている。図1において、符号A1はコンタクトホールのパターンである。符号A21は上部電極(第2電極)および上部電極引き回し配線(第2電極引き回し配線)のパターンである。符号A22は下部電極引き回し配線(第1電極引き回し配線)のパターンである。符号A3は圧電体層および下部電極(第1電極)のパターンである。符号A4は裏面空洞部のパターンである。
【0033】
上部電極3と上部電極引き回し配線4とは一体のパターンA21として形成され、上部電極引き回し配線4は、隣り合う上部電極3同士を繋ぐように図1の縦方向(y方向)に延在している。なお、一体のパターンの中で、円形部分を上部電極3とし、円形部分以外の線状部分を上部電極引き回し配線4とする。一方、下部電極引き回し配線6は、隣り合う下部電極5同士を繋ぐように図1の横方向(x方向)に延在している。上部電極引き回し配線4および下部電極引き回し配線6は、基板の周縁部に設けられた図示しないボンディングパッドに接続されている。
【0034】
図2は、図1に示した超音波アレイセンサー1のうち、一つのセンサー素子2を拡大視したパターンのレイアウトを示す平面図である。よって、図2において、図1と共通のパターンには同一の符号を付す。なお、これらのパターンはこれらの構成要素を形成するフォトリソグラフィー工程で用いるフォトマスクのパターンに相当する。すなわち、符号A1はコンタクトホール形成用の第1フォトマスクのパターンに相当する。符号A21は第2フォトマスクのうち、上部電極および上部電極引き回し配線形成用のパターンに相当する。符号A22は第2フォトマスクのうち、下部電極引き回し配線形成用のパターンに相当する。符号A3は圧電体層および下部電極形成用の第3フォトマスクのパターンに相当する。符号A4は裏面空洞部形成用の第4フォトマスクのパターンに相当する。
【0035】
図3(a)〜(c)は、本実施形態のセンサー素子2を示す断面図であり、図3(a)は図2のO−A線に沿う断面図であり、図3(b)は図2のO−B線に沿う断面図であり、図3(c)は図2のC−D線に沿う断面図である。
【0036】
センサー素子2は、振動板7と、下部電極5と、下部電極5の上面に形成された圧電体層8と、下部電極5が形成された側と反対側の圧電体層8の上面に形成された上部電極3と、下部電極5と電気的に接続された下部電極引き回し配線6と、上部電極3と電気的に接続された上部電極引き回し配線4と、を備えている。圧電体層8と、圧電体層8を挟持する下部電極5および上部電極3と、によって圧電素子9が構成されている。
【0037】
振動板7は、第1絶縁膜10と、第2絶縁膜11と、から構成されている。第1絶縁膜10および第2絶縁膜11には、一例として、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、窒化シリコン、酸化シリコン、ステンレス鋼等から選ばれる靱性の高い絶縁材料が用いられる。第1絶縁膜10と第2絶縁膜11が形成された領域のうち、シリコン基板12の裏面に裏面空洞部12aが形成され、シリコン基板12が除去された部分が特に振動板7として機能する。第1絶縁膜10および第2絶縁膜11の全体の膜厚は、一例として200〜5000nm程度である。
【0038】
下部電極5には、例えばニッケル、イリジウム、金、プラチナ、タングステン、チタン、パラジウム、銀、タンタル、モリブデン、クロム、ストロンチウムとルテニウムとの複合膜、ランタンとニッケルとの複合膜等から選ばれる導電性材料が用いられる。下部電極5の膜厚は、一例として20〜400nm程度である。
【0039】
圧電体層8は、一般式ABO3で示されるペロブスカイト型酸化物からなる圧電性材料で構成されている。具体的には、例えばチタン酸ジルコン酸鉛(Pb(Zr,Ti)O3)、ニオブ酸チタン酸ジルコン酸鉛(Pb(Zr,Ti,Nb)O3)、チタン酸バリウム(BaTiO3)等が用いられる。圧電体層8の膜厚は、一例として1000〜5000nm程度である。
【0040】
上部電極3、上部電極引き回し配線4および下部電極引き回し配線6には、下部電極5と同様、例えばニッケル、イリジウム、金、プラチナ、タングステン、チタン、パラジウム、銀、タンタル、モリブデン、クロム、ストロンチウムとルテニウムとの複合膜、ランタンとニッケルとの複合膜等から選ばれる導電性材料が用いられる。ただし、上部電極3、上部電極引き回し配線4および下部電極引き回し配線6は、下部電極5と同じ種類の金属材料を用いてもよいし、下部電極5とは異なる種類の金属材料を用いてもよい。上部電極3、上部電極引き回し配線4および下部電極引き回し配線6の膜厚は、一例として50〜400nm程度である。
【0041】
圧電素子9の下部電極5と上部電極3との間に電圧を印加すると、電圧の大きさに応じて圧電素子9に機械的変位が生じ、振動板7が振動する。逆に、振動板7を介して圧電素子9に機械的変位が生じると、下部電極5と上部電極3との間に機械的変位の大きさに応じた起電力が発生する。この起電力の大きさから、対象物の有無を検知したり、対象物までの距離を測定したりすることができる。
【0042】
図2および図3(c)に示すように、圧電体層8の平面パターンの外縁は、下部電極5の平面パターンの外縁と一致している。これは、後述するように、圧電体層8と下部電極5とを一つのフォトマスクを用いて一括してパターニングしていることに起因する。なお、図3(c)に示すように、圧電体層8の側面はテーパー形状となっているため、ここでは、テーパー状の圧電体層8の側面の下端の縁を圧電体層8の外縁と定義する。一方、上部電極3の平面パターンの外縁は、圧電体層8の平面パターンの外縁よりも内側に位置している。すなわち、上部電極3は、圧電体層8のテーパー状の側面や振動板7の上面にかかっておらず、圧電体層8の上面にのみ配置されている。
【0043】
図2および図3(a)に示すように、圧電体層8を貫通して下部電極5の引き出し部5aに達するコンタクトホール13が設けられている。ここでは、図2に示す平面パターンにおいては、円形部分を下部電極5とし、円形部分以外の線状部分を下部電極5の引き出し部5aとする。そして、下部電極引き回し配線6は、コンタクトホール13の内壁に沿って形成されている。これにより、下部電極引き回し配線6は、コンタクトホール13を介して下部電極5と電気的に接続されている。
【0044】
図3(a)に示すように、下部電極引き回し配線6は、コンタクトホール13にかかる箇所を除いて圧電体層8の上面に配置されている。また、図3(b)に示すように、上部電極引き回し配線4は、圧電体層8の上面に配置されている。
【0045】
図4〜図9は、本実施形態の超音波アレイセンサー1のうち、センサー素子2の製造方法を、工程順を追って示す断面図である。なお、図4〜図9では工程毎にセンサー素子2の切断箇所が異なる3つの断面図を示している。図4(a)〜図9(a)が図2のO−A線に沿う断面図(図3(a)に対応)であり、図4(b)〜図9(b)が図2のO−B線に沿う断面図(図3(b)に対応)であり、図4(c)〜図9(c)が図2のC−D線に沿う断面図(図3(c)に対応)である。
【0046】
最初に、図4(a)〜(c)に示すように、シリコン基板12の表面に第1絶縁膜10を形成する。第1絶縁膜10として例えば酸化シリコン層を用いる場合、熱酸化法によりシリコン基板12の表面に酸化シリコン層を形成する。なお、熱酸化法に代えて、CVD法を用いても良い。次いで、第1絶縁膜10の上面に、スパッタ法もしくはCVD法により第2絶縁膜11を形成する。次いで、第2絶縁膜11の上面に、後で下部電極5となる第1金属膜15(第1導電膜)をスパッタ法もしくはCVD法により形成する。
【0047】
次いで、第1金属膜15の上面に、圧電素子9を構成する圧電材料層16をゾル・ゲル法により成膜する。ここでのゾル・ゲル法は、圧電性材料、例えばPZTを含むゾルを塗布、乾燥してゲル化させ、さらに高温で焼成することにより圧電材料層16を得る方法である。
次いで、圧電材料層16の上面に、後で上部電極3となる第2金属膜17(第2導電膜)をスパッタ法もしくは熱CVD法により形成する。
【0048】
次に、図5(a)〜(c)に示すように、図2のパターンA1に相当する第1フォトマスクを用いたフォトリソグラフィー、異方性エッチング、レジスト剥離を順に行い、第2金属膜17および圧電材料層16を1つのフォトマスクでパターニングする。これにより、第2金属膜17および圧電材料層16を貫通して第1金属膜15に達するコンタクトホール13を形成する。コンタクトホール13は、後で形成する下部電極5と下部電極引き回し配線6とを接続するためのものである。
【0049】
次に、図6(a)〜(c)に示すように、コンタクトホール13の内壁を含む第2金属膜17の上面に、後で上部電極引き回し配線4および下部電極引き回し配線6となる第3金属膜18(第3導電膜)をスパッタ法もしくはCVD法により成膜する。
【0050】
次に、図7(a)〜(c)に示すように、図2のパターンA21およびパターンA22に相当する第2フォトマスクを用いたフォトリソグラフィー、異方性エッチング、レジスト剥離を順に行い、第2金属膜17および第3金属膜18を1つのフォトマスクで一括してパターニングする。これにより、第2金属膜17および第3金属膜18からなる上部電極3、上部電極引き回し配線4および下部電極引き回し配線6を形成する。すなわち、上部電極3、上部電極引き回し配線4および下部電極引き回し配線6は、第2金属膜17と第3金属膜18とが積層された積層膜により構成される。この段階で、上部電極3、上部電極引き回し配線4および下部電極引き回し配線6の下地は、圧電材料層16、第1金属膜15、第2絶縁膜11、第1絶縁膜10からなるパターニングされていない積層膜である。
【0051】
次に、図8(a)〜(c)に示すように、図2のパターンA3に相当する第3フォトマスクを用いたフォトリソグラフィー、異方性エッチング、レジスト剥離を順に行い、圧電材料層16と第1金属膜15とを1つのフォトマスクで一括してパターニングする。これにより、圧電材料層16からなる圧電体層8と、第1金属膜15からなる下部電極5と、を形成する。ここでは、圧電材料層16の膜厚が他の層の膜厚と比べて厚いため、圧電材料層16を異方性エッチングすると圧電体層16の側壁がテーパー形状となる。
【0052】
以上の工程により、圧電素子9が完成する。その後、圧電素子9を覆うように基板の全面に保護膜(図示せず)を塗布する。例えば保護膜の一例として、フォトレジストを用いることができる。
【0053】
次に、基板の表裏を反転し、圧電素子9が形成されていない側のシリコン基板12の一面に対し、図2のパターンA4に相当する第4フォトマスクを用いたフォトリソグラフィー、異方性エッチング、レジスト剥離を順に行い、図9(a)〜(c)に示すように、シリコン基板12のうち、圧電素子9の裏面側に対応する位置に第1絶縁膜10の裏面に達する開口部を形成する。このようにして、シリコン基板12に裏面空洞部12aを形成する。裏面空洞部12aを形成したことにより、シリコン基板12が除去されて第1絶縁膜10と第2絶縁膜11とが残存した部分が振動板7となる。
以上の工程により、図2、および図3(a)〜(c)に示すセンサー素子2が完成する。
【0054】
本実施形態の超音波アレイセンサー1の製造方法によれば、従来の製造方法と異なり、第1金属膜15のパターニングを行って下部電極5を形成する工程に先立って、第1金属膜15上の全面に圧電材料層16を形成する。そのため、ゾル・ゲル法を用いて圧電材料層16を形成する際、下部電極5の縁の段差の影響を受けることがなく、圧電材料層16、ひいては圧電体層8の膜厚バラツキを抑えることができる。このとき、ゾル・ゲル法を用いて圧電材料層16を形成しているため、膜厚バラツキを十分に小さくできるとともに比較的厚い膜を形成でき、所望の膜厚の圧電材料層16を容易に形成することができる。
【0055】
また、下部電極引き回し配線6がコンタクトホール13を介して下部電極5と電気的に接続される構成であるため、従来の製造方法と異なり、下部電極5と下部電極引き回し配線6とをコンタクトさせるために下部電極5が広い面積で剥き出しになる工程が存在しない。したがって、下部電極5の断線が生じにくい。また、圧電体層8と下部電極5とを第3フォトマスクで一括してパターニングして形成するため、圧電体層8の側方に下部電極5のみが露出する箇所が存在しない。よって、圧電体層8の異方性エッチング時に下部電極5がエッチングされる虞がなく、圧電材料層16をオーバーエッチングすることができる。そのため、圧電体層8の残渣が発生しにくい。
【0056】
また、圧電体層8および下部電極5をパターニングする前に、上部電極引き回し配線4および下部電極引き回し配線6を圧電材料層16の上面でパターニングしているため、上部電極引き回し配線4および下部電極引き回し配線6のパターニング時の露光工程において、段差に起因して焦点が合わないという問題が発生しにくい。以上の結果、複数のセンサー素子間での特性バラツキの少ない超音波アレイセンサーを歩留まり良く得ることができる。
【0057】
さらに、本実施形態の場合、上部電極3の平面パターンの外縁が圧電体層8の平面パターンの外縁よりも内側に位置している。この構成によれば、上部電極3の平面パターンと圧電体層8の平面パターンとの位置合わせにマージンを持たせることができる。そのため、上部電極3の平面パターンの外縁が圧電体層8の平面パターンの外縁よりも外側にはみ出さない構成を確実に実現できる。
【0058】
なお、本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。例えば上記実施形態で例示した超音波アレイセンサーにおけるセンサー素子の配置、各平面パターンの形状、構成材料等に関しては適宜変更が可能である。
【符号の説明】
【0059】
1…超音波アレイセンサー、2…センサー素子、3…上部電極(第2電極)、4…上部電極引き回し配線(第2電極引き回し配線)、5…下部電極(第1電極)、6…下部電極引き回し配線(第1電極引き回し配線)、7…振動板、8…圧電体層、12…シリコン基板、13…コンタクトホール、15…第1金属膜(第1導電膜)、16…圧電材料層、17…第2金属膜(第2導電膜)、18…第3金属膜(第3導電膜)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、前記基板上に配列された複数のセンサー素子と、を備え、
前記センサー素子は、振動板と、前記振動板の一面に形成された第1電極と、前記第1電極の一面に形成された圧電体層と、前記圧電体層の前記第1電極が形成された側と反対側の面に形成された第2電極と、前記第1電極と電気的に接続された第1電極引き回し配線と、前記第2電極と電気的に接続された第2電極引き回し配線と、を備え、
前記圧電体層の平面パターンの外縁が前記第1電極の平面パターンの外縁よりも外側にはみ出しておらず、
前記第2電極の平面パターンの外縁が前記圧電体層の平面パターンの外縁よりも外側にはみ出しておらず、
前記圧電体層を貫通して前記第1電極の引き出し部に達するコンタクトホールが設けられ、
前記第1電極引き回し配線が、前記コンタクトホールを介して前記第1電極と電気的に接続されるとともに、前記コンタクトホールの箇所を除いて前記圧電体層の一面上に配置され、
前記第2電極引き回し配線が、前記第1電極引き回し配線の延在方向と交差する方向に延在して前記第2電極と一体に形成されるとともに、前記圧電体層の一面上に配置されたことを特徴とする超音波アレイセンサー。
【請求項2】
前記圧電体層の平面パターンの外縁と前記第1電極の平面パターンの外縁とが一致していることを特徴とする請求項1に記載の超音波アレイセンサー。
【請求項3】
前記第2電極の平面パターンの外縁が前記圧電体層の平面パターンの外縁よりも内側に位置していることを特徴とする請求項1または2に記載の超音波アレイセンサー。
【請求項4】
基板の一面に振動板となる絶縁膜を形成する工程と、
前記絶縁膜上に第1電極となる第1導電膜、圧電体層となる圧電材料層、第2電極となる第2導電膜を順次積層する工程と、
第1フォトマスクを用いて前記第2導電膜および前記圧電材料層を開孔することにより、前記第2導電膜および前記圧電材料層を貫通して前記第1導電膜に達するコンタクトホールを形成する工程と、
第1電極引き回し配線および第2電極引き回し配線となる第3導電膜を成膜する工程と、
第2フォトマスクを用いて前記第3導電膜および前記第2導電膜をパターニングすることにより、前記第2電極、前記第2電極引き回し配線、および前記第1電極引き回し配線を形成する工程と、
第3フォトマスクを用いて前記圧電材料層および前記第1導電膜をパターニングすることにより、前記圧電体層および前記第1電極を形成する工程と、
第4フォトマスクを用いて前記絶縁膜が形成された側と反対側の面から前記基板を前記絶縁膜が露出するまで開孔することにより、前記基板に空洞部を形成して前記絶縁膜からなる前記振動板を形成する工程と、
を備えたことを特徴とする超音波アレイセンサーの製造方法。
【請求項5】
前記第3フォトマスクの前記圧電体層および前記第1電極の平面パターンの外縁が、前記第2フォトマスクの前記第2電極の平面パターンの外縁よりも外側に位置していることを特徴とする請求項4に記載の超音波アレイセンサーの製造方法。
【請求項6】
ゾル・ゲル法を用いて前記圧電材料層を形成することを特徴とする請求項4または5に記載の超音波アレイセンサーの製造方法。
【請求項1】
基板と、前記基板上に配列された複数のセンサー素子と、を備え、
前記センサー素子は、振動板と、前記振動板の一面に形成された第1電極と、前記第1電極の一面に形成された圧電体層と、前記圧電体層の前記第1電極が形成された側と反対側の面に形成された第2電極と、前記第1電極と電気的に接続された第1電極引き回し配線と、前記第2電極と電気的に接続された第2電極引き回し配線と、を備え、
前記圧電体層の平面パターンの外縁が前記第1電極の平面パターンの外縁よりも外側にはみ出しておらず、
前記第2電極の平面パターンの外縁が前記圧電体層の平面パターンの外縁よりも外側にはみ出しておらず、
前記圧電体層を貫通して前記第1電極の引き出し部に達するコンタクトホールが設けられ、
前記第1電極引き回し配線が、前記コンタクトホールを介して前記第1電極と電気的に接続されるとともに、前記コンタクトホールの箇所を除いて前記圧電体層の一面上に配置され、
前記第2電極引き回し配線が、前記第1電極引き回し配線の延在方向と交差する方向に延在して前記第2電極と一体に形成されるとともに、前記圧電体層の一面上に配置されたことを特徴とする超音波アレイセンサー。
【請求項2】
前記圧電体層の平面パターンの外縁と前記第1電極の平面パターンの外縁とが一致していることを特徴とする請求項1に記載の超音波アレイセンサー。
【請求項3】
前記第2電極の平面パターンの外縁が前記圧電体層の平面パターンの外縁よりも内側に位置していることを特徴とする請求項1または2に記載の超音波アレイセンサー。
【請求項4】
基板の一面に振動板となる絶縁膜を形成する工程と、
前記絶縁膜上に第1電極となる第1導電膜、圧電体層となる圧電材料層、第2電極となる第2導電膜を順次積層する工程と、
第1フォトマスクを用いて前記第2導電膜および前記圧電材料層を開孔することにより、前記第2導電膜および前記圧電材料層を貫通して前記第1導電膜に達するコンタクトホールを形成する工程と、
第1電極引き回し配線および第2電極引き回し配線となる第3導電膜を成膜する工程と、
第2フォトマスクを用いて前記第3導電膜および前記第2導電膜をパターニングすることにより、前記第2電極、前記第2電極引き回し配線、および前記第1電極引き回し配線を形成する工程と、
第3フォトマスクを用いて前記圧電材料層および前記第1導電膜をパターニングすることにより、前記圧電体層および前記第1電極を形成する工程と、
第4フォトマスクを用いて前記絶縁膜が形成された側と反対側の面から前記基板を前記絶縁膜が露出するまで開孔することにより、前記基板に空洞部を形成して前記絶縁膜からなる前記振動板を形成する工程と、
を備えたことを特徴とする超音波アレイセンサーの製造方法。
【請求項5】
前記第3フォトマスクの前記圧電体層および前記第1電極の平面パターンの外縁が、前記第2フォトマスクの前記第2電極の平面パターンの外縁よりも外側に位置していることを特徴とする請求項4に記載の超音波アレイセンサーの製造方法。
【請求項6】
ゾル・ゲル法を用いて前記圧電材料層を形成することを特徴とする請求項4または5に記載の超音波アレイセンサーの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2013−46086(P2013−46086A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−180188(P2011−180188)
【出願日】平成23年8月22日(2011.8.22)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月22日(2011.8.22)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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