車両の制御装置
【課題】エンジンのアイドリング停止機能によってアイドリング停止が頻繁に行われる状況においても快適な空調を実現可能にして、乗員によるアイドリング停止機能の解除がなされないようにし、燃料消費量及び排気ガス排出量の低減効果を十分に得る。
【解決手段】空調装置の吹出モードを、複数のモードの中から車室の空調状態に適したモードに切り替える。動作中の空調装置の吹出モードを検出する。エアコン制御ユニットの自動停止制御部は、検出された吹出モードに基づいて、エンジンのアイドリングを停止させておく時間を設定する。
【解決手段】空調装置の吹出モードを、複数のモードの中から車室の空調状態に適したモードに切り替える。動作中の空調装置の吹出モードを検出する。エアコン制御ユニットの自動停止制御部は、検出された吹出モードに基づいて、エンジンのアイドリングを停止させておく時間を設定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンのアイドリングを停止させるように構成された車両の制御装置に関し、特に、空調装置に関連した制御を行う技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
従来より、車両の燃料消費量や排気ガスの排出量を低減する手段の1つとして、車両が信号待ち等で停止したときに、エンジンのアイドリングを自動停止させる、いわゆるアイドリング停止機能を備えた車両が知られている。
【0003】
また、車両には、空調装置が設けられている。この空調装置は、エンジンにより駆動される補機としてのウォーターポンプやコンプレッサーから供給される熱媒体(エンジン冷却水や冷媒)が流通する熱交換器を備えている。車室への送風空気は、熱交換器を通過することで熱媒体と熱交換して加熱又は冷却され、所望温度とされてから、車室の各部に吹き出すようになっている。
【0004】
このような空調装置を備えた車両においては、空調装置の動作中にアイドリング停止機能によってエンジンのアイドリングを停止させると、補機も停止することから、上記熱媒体による空気の加熱又は冷却が十分に行われなくなる。こうなると、乗員が要求している空調能力が得られなくなって、車室の快適性が損なわれる。このことに対して、乗員が空調装置を作動させているときには、アイドリング停止をキャンセルすることが考えられる。しかし、空調装置は作動状態にあることが多いので、そのようにした場合にはエンジンのアイドリング停止が殆ど行われないことになり、燃料消費量や排気ガスの排出量を低減する効果が殆ど得られなくなってしまう。
【0005】
そこで、特許文献1に開示されているように、車室内温度を検出する内気センサを設け、この内気センサから出力されるセンサ出力温度と、乗員が温度設定スイッチで設定した温度との差を求め、この差に応じてエンジンのアイドリングを停止させておく時間を変更することで、燃料消費量や排気ガスの排出量低減の効果を得ながら、乗員が要求する空調能力を得ることが提案されている。
【0006】
また、特許文献1のような車両用空調装置に用いられる内気センサには、一般に、過渡応答を遅らせるための時定数が設けられている。これは、車室内温度が急にかつ一時的に変化した場合に、その温度変化をそのまま制御に用いると送風空気の温度変化が急激になって乗員が違和感を感じるのを防止するためである。従って、内気センサからのセンサ出力温度は緩やかに変化するようになっている。
【特許文献1】特開2005−247107号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、特許文献1の空調装置において、例えば、夏場の炎天下にアイドリング停止機能によってエンジンのアイドリングを停止させた場合を想定すると、補機が停止することで、車室内温度は急に上昇していくが、内気センサには上述の如く時定数が設定されていることから、センサ出力温度は緩やかに上昇していく。このため、特に、市街地走行のように停止と発進が頻繁に繰り返されて補機が短い間隔で停止及び起動を繰り返す場合には、センサ出力温度が実際の車室の温度よりも低い側に大きくずれてしまう。このようにセンサ出力温度が大きくずれると、センサ出力温度と乗員による設定温度との差に基づいてエンジンのアイドリング停止時間を設定する際、車室の空調状態が乗員の要求から離れて不適な状態となっているのに、エンジンのアイドリング停止時間が長く設定されて空調能力が不足してしまうことが考えられる。こうなると、乗員の快適性が損なわれてしまい、ひいては、乗員は、エンジンのアイドリングが停止しないようにアイドリング停止機能を解除してしまう。つまり、アイドリング停止機能による燃料消費量や排気ガスの排出量低減の効果を得ることと、乗員にとって快適な空調を実現することとを両立できない。
【0008】
本発明は斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、エンジンのアイドリング停止が頻繁に行われる状況においても必要な空調能力を確保して快適な空調を実現可能にし、乗員によるアイドリング停止機能の解除がなされないようにして燃料消費量及び排気ガス排出量の低減効果を十分に得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明では、空調装置においては、複数の動作モードの中から車室の空調状態に適した動作モードが選択されるように構成されていることに着目し、この動作モードに基づいてエンジンのアイドリング停止時間を設定するようにした。
【0010】
具体的には、請求項1の発明では、車両のエンジンによって駆動される補機により供給される熱媒体と車室への送風空気とを熱交換させる熱交換器を有する空調装置と、車両の停止時に上記エンジンのアイドリングを停止させるエンジン自動停止手段とを備えた車両の制御装置において、上記空調装置の動作モードを、該空調装置が有する複数の動作モードの中から車室の空調状態に適した動作モードに切り替える動作モード切替手段と、動作中の上記空調装置がどの動作モードにあるかを検出する動作モード検出手段とを備え、上記エンジン自動停止手段は、上記動作モード検出手段で検出された動作モードに基づいて、上記エンジンのアイドリングを停止させておく時間を設定する構成とする。
【0011】
この構成によれば、空調装置は、動作モード切替手段によって現在の車室の空調状態に適した動作モードに切り替えられる。この動作モードは、動作モード検出手段によって検出される。動作モードが、例えば、強い冷房が要求されている場合に適した動作モードであれば、エンジン自動停止手段は、強い冷房が要求されていない場合の動作モードに比べてエンジンのアイドリングを停止させておく時間を短く設定することで、補機の駆動時間が長く確保され、十分な冷房を行えるだけの空調能力を確保することが可能になる。このように、空調装置の動作モードに基づいてエンジンのアイドリング停止時間を設定することで、アイドリング停止時間が、内気センサに設けられている時定数の影響を受けることはなく、現在の車室の空調状態に適した時間となる。
【0012】
請求項2の発明では、請求項1の発明において、空調装置が有するケースには、熱交換器を通過した空気が吹き出すベント吹出口、デフロスタ吹出口及びヒート吹出口が形成され、動作モード切替手段は、上記ベント吹出口、デフロスタ吹出口及びヒート吹出口を開閉することで動作モードとしての吹出モードを切り替えるように構成されているものとする。
【0013】
すなわち、車両用の空調装置においては、例えば、乗員が冷房を要求している場合には、冷房の効果を高めるために、一般に、冷風を乗員の上半身に向けて直接供給すべくベント吹出口が開かれた吹出モードとされる。この吹出モードを動作モードとして動作モード検出手段により検出することで、現在の車室の空調状態を的確に把握して、その空調状態に適したエンジンのアイドリング停止時間を設定することが可能になる。
【0014】
請求項3の発明では、請求項2の発明において、車両周囲の外気温度を検出する外気温度検出手段を備え、エンジン自動停止手段は、上記外気温度検出手段により検出された外気温度が所定温度以下で、かつ、動作モード検出手段により検出された吹出モードがベント吹出口を開く吹出モードであるときには、上記外気温度検出手段により検出された外気温度が所定温度よりも高いときと比べて、エンジンのアイドリングを停止させておく時間を長く設定する構成とする。
【0015】
この構成によれば、外気温度が所定温度以下で、しかも、ベント吹出口を開く吹出モードが選択されているということは、車室内の空調状態としては冷房が弱めでよい状態である。この状態では、エンジンのアイドリング停止時間を長く設定することで、補機の停止時間を長くしても乗員の快適性は損なわれることはない。
【0016】
請求項4の発明では、請求項1から3のいずれか1つの発明において、空調装置が有するケースには、送風用の空気を車室内から該ケース内へ導入するための内気導入口と、車室外から該ケース内へ導入するための外気導入口とが形成され、動作モード切替手段は、上記内気導入口及び外気導入口を開閉することで動作モードとしての導入モードを切り替えるように構成されているものとする。
【0017】
この構成によれば、例えば、内気導入口が開かれて外気導入口が閉じられる内気導入モードにあるときは、車室外の空気よりも目標とする車室内温度に近い車室内の空気がケース内に導入されることになる。つまり、車両用の空調装置においては、内気導入モードは、強い冷房が要求される場合に選択されるモードである。このように、導入モードを動作モードとして動作モード検出手段により検出することで、現在の車室の空調状態を的確に把握して、その空調状態に適したエンジンのアイドリング停止時間を設定することが可能になる。
【0018】
請求項5の発明では、請求項1から4のいずれか1つの発明において、車室内に差し込んでくる日射量を検出する日射量検出手段を備え、エンジン自動停止手段は、上記日射量検出手段により検出された日射量に基づいて、エンジンのアイドリングを停止させておく時間を変更する構成とする。
【0019】
この構成によれば、車室の空調状態に影響を及ぼす日射量によってアイドリング停止時間が変更される。
【0020】
請求項6の発明では、請求項1から5のいずれか1つの発明において、エンジン自動停止手段は、エンジンのアイドリングを停止させておく時間を所定時間以上とする構成とする。
【0021】
この構成によれば、エンジンのアイドリングが停止した場合、停止から所定時間経過しなければ再始動されない。これにより、アイドリング停止直後に再始動されることが無くなり、エンジンや始動装置にかかる負担を小さくすることが可能になる。
【発明の効果】
【0022】
請求項1の発明によれば、空調装置の動作モードを検出し、この動作モードに基づいてエンジンのアイドリング停止時間を設定するようにしたので、内気センサの時定数の影響を受けることなく、現在の車室の空調状態に適した空調能力を得ることができる。これにより、エンジンのアイドリング停止が頻繁に行われる状況においても乗員に快適な空調を実現できるので、アイドリング停止機能が乗員により解除され難くなり、燃料消費量及び排気ガス排出量の低減効果を十分に得ることができる。
【0023】
請求項2の発明によれば、現在の車室の空調状態を吹出モードにより的確に把握してエンジンのアイドリング停止時間を設定することができ、車室の空調をより一層快適にできる。
【0024】
請求項3の発明によれば、外気温度が所定温度以下で、ベント吹出口を開くモードのときにエンジンのアイドリング停止時間を長くすることで、乗員の快適性を損なうことなく、燃料消費量及び排気ガス排出量を一層低減できる。
【0025】
請求項4の発明によれば、現在の車室の空調状態を空気の導入モードによって的確に把握してエンジンのアイドリング停止時間を設定することができ、車室の空調をより一層快適にできる。
【0026】
請求項5の発明では、車室の空調状態に影響を及ぼす日射量によってアイドリング停止時間を変更するようにしたので、車室の空調をより一層快適にできる。
【0027】
請求項6の発明では、エンジンのアイドリング停止時間を所定時間以上としたので、アイドリング停止直後に再始動されることは無く、エンジンや始動装置の損傷を防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0029】
本発明の実施形態に係る車両の制御装置Aは、乗用自動車に搭載されている。この車両の車室には、図1に示す空調装置1が配設されている。上記制御装置Aは、図3に示すように、空調装置1を制御するエアコン制御ユニット2と、当該車両のエンジンの点火装置4や燃料噴射装置5等を制御するエンジン制御ユニット3と、エンジン制御ユニット3に対しエンジンの始動及び停止要求信号を出力する車両制御ユニット6とを備えている。詳細は後述するが、車両側の停止条件を満たし、かつ、空調装置1側の停止条件を満たしたときに、上記車両制御ユニット6によってエンジンのアイドリングを停止させるようにしている。
【0030】
上記空調装置1は、車室の前端部に配設されたインストルメントパネルIP内に収容されている。図2に示すように、インストルメントパネルIPの左右略中央部には、空調装置1の操作パネルBが配設されている。このインストルメントパネルIPの車体後方には、車体右側に運転席(図示せず)が配設され、左側に助手席(図示せず)が配設されている。インストルメントパネルIPの前端部には、フロントウインド(図示せず)の内面に向けて空調風が吹き出すデフロスタ口7が開口している。インストルメントパネルIPの上側の左右両端部には、サイドウインド(図示せず)の内面に向けて空調風が吹き出すデミスタ口8がそれぞれ開口している。インストルメントパネルIPの左右方向略中央部には、乗員の上半身に向けて空調風が吹き出すセンタベント口9が開口している。インストルメントパネルIPの左右方向両端部近傍にも、乗員の上半身に向けて空調風が吹き出すサイドベント口10が開口している。
【0031】
図1に示すように、上記空調装置1は、樹脂材を成形してなるケース20を備えている。このケース20には空気導入部21と温度調節部22と空調風分配部23とが設けられている。尚、ケース20は、例えば空気導入部21と温度調節部22と空調風分配部23とに3分割されたものや、空気導入部21と、温度調節部22及び空調風分配部23とに2分割されたものであってもよい。
【0032】
上記空気導入部21には、車室内で開口し車室内の空気をケース20内に取り入れるための内気導入口25と、車室外に連通するダクト(図示せず)に接続され車室外の空気をケース20内に取り入れるための外気導入口26とが形成されている。空気導入部21の内部には、上記内気導入口25と外気導入口26との一方を開いて他方を閉じる内外気切替ドア27が設けられている。この内外気切替ドア27は、ケース20の外面に固定された内外気アクチュエータ28(図3に示す)により動作して、内気導入口25及び外気導入口26の一方を開き他方を閉じるようになっている。この内外気アクチュエータ28は、サーボモータを内蔵した周知の構造のものである。この内外気アクチュエータ28により、動作モードとしての導入モードが、内気のみをケース20に導入する内気導入モードと、外気のみをケース20に導入する外気導入モードとに切り替えられるようになっている。
【0033】
上記空気導入部21の内部における内外気切替ドア27よりも空気流れ方向下流側には、ケース20内に導入された空気を濾過するためのエアフィルタ31と送風ファン32とが下流側へ向けて順に設けられている。送風ファン32は遠心式ファンであり、回転軸が上下方向に延びるように配置されている。送風ファン32の下部には、該送風ファン32を回転駆動するためのブロアモータ33が配置されている。このブロアモータ33は、一部がケース20の外部に突出した状態で該ケース20に固定されている。
【0034】
上記空気導入部21の空気流れ方向下流側に上記温度調節部22が位置している。温度調節部22の内部には、冷却用熱交換器としてのエバポレータ35が収容されている。このエバポレータ35と、エンジンにより駆動される補機としてのコンプレッサー36(図3に示す)と、冷媒凝縮器と、膨張弁とで周知の冷凍サイクルが構成されている。エバポレータ35は、複数のチューブとフィン(共に図示せず)とを交互に並べて一体化したチューブアンドフィンタイプの熱交換器である。エバポレータ35には、熱媒体としての冷媒がクーラパイプ(図示せず)を介して供給され、この冷媒がチューブを流通するようになっている。エバポレータ35のフィン間を通過する空気がチューブを流通する冷媒と熱交換し、これによって空気が冷却される。また、エバポレータ35の空気流れ下流側の面には、エバポレータ35の表面温度を検出するための温度センサからなるエバセンサ37が取り付けられている。
【0035】
上記温度調節部22内部のエバポレータ35よりも下流側には、加熱用熱交換器としてのヒータコア43が収容されている。このヒータコア43は、エバポレータ35と同様なチューブアンドフィンタイプの熱交換器である。ヒータコア43には、上記エンジンにより駆動される補機としてのウォータポンプ(図示せず)から熱媒体としてのエンジン冷却水がヒータパイプ(図示せず)を介して供給されるようになっている。このヒータコア43を通過する空気がチューブを流通するエンジン冷却水と熱交換し、これによって空気が加熱される。このヒータコア43の側方には、エバポレータ35を通過した空気を、ヒータコア43をバイパスして流すバイパス通路44が形成されている。バイパス通路44の下流側には、バイパス通路44を流れた空気とヒータコア43を通過した空気とを混合させて空調風を得るためのエアミックス空間45が形成されている。
【0036】
上記エバポレータ35とヒータコア43との間には、エアミックスドア46が配設されている。エアミックスドア46は、ケース20の外面に固定されたエアミックスアクチュエータ48(図3に示す)により動作するようになっている。エアミックスアクチュエータ48は、上記内外気アクチュエータ28と同様に構成されている。
【0037】
上記エアミックスアクチュエータ48を動作させてエアミックスドア46によるバイパス通路44の開度を変更することにより、バイパス通路44を流れる空気量とヒータコア43を通過する空気量との比率が変更され、その結果、エアミックス空間45で得られる空調風の温度が変更される。エアミックスドア46の開度が0%のときには、ヒータコア43側の通路が全閉とされかつバイパス通路44が全開とされ、100%のときにはヒータコア43側の通路が全開とされかつバイパス通路44が全閉とされるようになっている。エアミックスドア46の開度は、上記した0%〜100%の間で任意の値に設定されるようになっている。
【0038】
上記温度調節部22の空気流れ方向下流側に、上記エアミックス空間45に連通する空調風分配部23が位置している。空調風分配部23には、ベント吹出口50、ヒート吹出口51及びデフロスタ吹出口52が形成されている。ベント吹出口50には、インストルメントパネルIPのセンタベント口9及びサイドベント10に連通するベントダクト53の上流端が接続されている。また、ヒート吹出口51には、前席乗員の足下及び後席乗員の足下近傍まで延びるヒートダクト54(図2にその一部を示す)の上流端が接続されている。また、デフロスタ吹出口52には、インストルメントパネルIPのデフロスタ口7及びデミスタ口8に連通するデフロスタダクト55の上流端が接続されている。上記ベント吹出口50、ヒート吹出口51及びデフロスタ吹出口52は、空調風分配部23の内部に配設されたベントドア56、ヒートドア57及びデフロスタドア58により個別に開閉されるようになっている。
【0039】
上記ベントドア56、ヒートドア57及びデフロスタドア58は、図示しないが、リンク部材によって連結されており、吹出モードを切り替えるための吹出モードアクチュエータ60(図3に示す)により互いに連動して動作するようになっている。上記吹出モードアクチュエータ60は、上記内外気アクチュエータ28と同様にサーボモータを内蔵した周知の構造のものであり、ケース20の外面に固定されている。
【0040】
この空調装置1は、図3に示すように、外気温度検出手段としての外気センサ65、内気センサ66及び日射センサ67を備えている。外気センサ65は、車両周囲の外気温度を検出するためのものであり、フロントグリル(図示せず)近傍やドアミラー(図示せず)近傍等の車室外に配設されている。上記内気センサ66は、車室内温度を検出するためのものであり、図2に示すように、インストルメントパネルIPの運転席側に配設されている。この内気センサ66には、過渡応答を遅らせるために時定数が設けられている。上記日射センサ67は、車室内に差し込んでくる太陽光の強さである日射量を検出するためのものであり、インストルメントパネルIPの前端部に配設されている。これら外気センサ65、内気センサ66及び日射センサ67は、エアコン制御ユニット2に接続されている。
【0041】
上記インストルメントパネルIPの操作パネルBには、図3に示すように、温度設定スイッチ68、吹出モードスイッチ69、エアコンスイッチ70、内外気切替スイッチ71、ファンスイッチ72、エアコン優先スイッチ73が配設されている。上記温度設定スイッチ68は、乗員が車室の設定温度を所望温度に変更してセットするためのものである。上記吹出モードスイッチ69は、空調風の吹出モードを乗員が選択する場合に操作されるものである。吹出モードは、動作モードであり、空調風がデフロスタ口7及びデミスタ口8から吹き出すデフロスタモードと、デフロスタ口7、デミスタ口8及びヒートダクト54から吹き出すヒートデフモードと、センタベント口9及びサイドベント口10から吹き出すベントモードと、ヒートダクト54から吹き出すヒートモードと、センタベント口9、サイドベント口10及びヒートダクト54から吹き出すバイレベルモードとがある。
【0042】
上記エアコンスイッチ70は、冷凍サイクルのコンプレッサー36を通常運転させるACモードを選択するためのACポジションと、弱冷房でよい場合のエコノミーモード(ECOモード)を選択するためのECOポジションと、コンプレッサー36を運転させないOFFモードを選択するためのOFFポジションとを備えており、乗員が3つのポジションから任意の1つを選択できるようになっている。内外気切替スイッチ71は、空気の導入モードを内気導入モードと外気導入モードとを切り替えるためのものである。ファンスイッチ72は、ファン32による送風量を多段階に増減させるためのものである。エアコン優先スイッチ73は、空調装置1を作動させているときにはエンジンのアイドリングを停止させないエアコン優先モードと、アイドリングの停止を許可するアイドリング停止モードとに切り替えるためのものである。つまり、この車両においては、乗員の意志により、アイドリング停止機能を解除することができるようになっている。
【0043】
上記エアコン制御ユニット2は、中央演算処理装置、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読み出し専用メモリ(ROM)、入出力ポート等(図示せず)を有しており、車載バッテリー(図示せず)から電力供給を受けて作動するようになっている。エアコン制御ユニット2の入出力ポートには、上記スイッチ68〜73が接続されるとともに、外気センサ65、内気センサ66、日射センサ67、水温センサ74、エバセンサ37、ブロワモータ33、アクチュエータ28、48、60が接続されている。上記水温センサ74は、エンジンの冷却水の温度を検出するためのものである。尚、エアコン制御ユニット2には、吹出モード、導入モード及び送風量を車室の空調状態に適するように自動的に設定する自動空調モードと、乗員が手動で設定する手動モードとがあり、乗員によって一方が選択されるようになっている。
【0044】
上記エンジン制御ユニット3と、エアコン制御ユニット2とは、信号線を介して接続されている。エアコン制御ユニット2がコンプレッサー36を作動させる必要があると判断したときには、コンプレッサーON信号をエンジン制御ユニット3に送信し、このコンプレッサーON信号を受けたエンジン制御ユニット3は電磁クラッチを接続状態にし、一方、エアコン制御ユニット2がコンプレッサー36を作動させる必要がないと判断したときには、コンプレッサーOFF信号をエンジン制御ユニット3に送信し、このコンプレッサーOFF信号を受けたエンジン制御ユニット3は電磁クラッチを断状態にするようになっている。
【0045】
上記エアコン制御ユニット2は、空調制御部2aと、自動停止制御部2bとを備えている。空調制御部2aは、自動空調モードとされている場合には、所定のプログラムに従って上記各センサ37、65〜67、74からの入力信号やスイッチ68〜73からの入力信号を処理し、空調装置1の動作モードを決定して、ブロアモータ33やアクチュエータ28、48、60を制御するように構成されている。自動停止制御部2bは、空調装置1の動作モードを検出し、この検出した動作モードに基づいてエンジンのアイドリングを停止させておく時間を設定し、アイドリング停止の許可又は禁止信号を生成するように構成されている。
【0046】
上記エンジン制御ユニット3には、点火装置4、燃料噴射装置5及びコンプレッサー36が信号線を介して接続されている。このエンジン制御ユニット3により、コンプレッサー36の電磁クラッチが断続制御されるようになっている。電磁クラッチが接続状態のときには、エンジンの動力がコンプレッサー36に伝わり、断状態のときには、動力が伝わらないようになっている。
【0047】
上記車両制御ユニット6には、乗員が操作する自動変速機のセレクトレバーがどの変速レンジ位置にあるかを検出するインヒビタスイッチ75、当該車両の車速を検出する車速センサ76及びブレーキペダルの踏み込み操作を検出するブレーキスイッチ77が信号線を介して接続されている。また、車両制御ユニット6と上記エアコン制御ユニット2とは信号線で接続されており、エアコン制御ユニット2からは、自動停止制御部2bで生成されたアイドリング停止許可信号と禁止信号とのうち、一方の信号が出力されて車両制御ユニット6に入力されるようになっている。また、車両制御ユニット6からは、エンジンが停止しているか否かの判別信号がエアコン制御ユニット2に対し出力されるようになっている。尚、車両が手動変速機を搭載している場合には、シフトレバーがどの位置にあるかを検出するセンサを設け、このセンサの信号を車両制御ユニット6に入力するようにすればよい。
【0048】
上記車両制御ユニット6は、車両側の停止条件が成立したときで、かつ、エアコン制御ユニット2からアイドリング停止の許可信号が出力されているときには、エンジンのアイドリングを所定時間だけ停止させるようになっているが、所定時間経過前に車両側の停止条件が成立しなくなったとき、または、エアコン制御ユニット2からアイドリング停止の禁止信号が出力されたときには、その時点でアイドリング停止を終了し、エンジンを始動する。車両側の停止条件とは、車速センサ76により検出された車速が0で車両が停止し、かつインヒビタスイッチ75によりセレクトレバーがニュートラルレンジ又はパーキングレンジに位置していることが検出され、かつブレーキスイッチ77によりブレーキペダルの踏み込み操作が検出されたときである。尚、車両制御ユニット6がエンジンのアイドリングを停止を許可する場合には、エンジン制御ユニット3に対してアイドリング停止許可信号を出力して、点火装置4や燃料噴射装置5を非作動状態にさせる。また、車両制御ユニット6からは、エンジンが停止しているか否かの判別信号がエアコン制御ユニット2に対し出力されるようになっている。
【0049】
次に、上記エアコン制御ユニット2の具体的な制御動作を、図4〜6、図13及び図17に示すフローチャートに基づいて説明する。この制御は、車両のイグニッションスイッチがONとなったときにスタートし、所定サイクルで繰り返されるようになっている。
【0050】
車両のイグニッションスイッチがONにされると、図4に示すフローチャートのステップSA1に進み、エアコン制御ユニット2の空調制御部2aは、上記センサ37、65〜67、74やスイッチ68〜73からの信号を読み込む。その後、ステップSA2に進んで、目標車室内温度を演算する。目標車室内温度は、温度設定スイッチ68の設定温度を含む空調条件に基づいて決定されるようになっている。そして、空調制御部2aにおいては、エバセンサ37やエンジン水温センサ74等の入力信号を考慮してエアミックスドア46の開度を演算し、エアミックスアクチュエータ48を作動させてエアミックスドア46を所望の開度とする。
【0051】
しかる後、ステップSA3に進んで、吹出モードを選択し、この選択した吹出モードとなるように吹出モードアクチュエータ60を作動させるとともに、導入モードを選択し、この選択した導入モードとなるように内外気アクチュエータ28を作動させる。このステップSA3が本発明の動作モード切替手段である。尚、吹出モードと導入モードとは、同じタイミングで切り替えるようにしてもよいし、異なるタイミングで切り替えるようにしてもよい。
【0052】
ステップSA3において吹出モードを選択する際には、夏場のように、外気センサ65により検出された外気温度が例えば約30℃以上で高く強めの冷房が必要な場合には、吹出モードをベントモードにし、導入モードを内気導入モードとする。吹出モードをベントモードにすることで、冷風が乗員の上半身に向けて直接供給され、また、導入モードを内気導入モードとすることで、車室外の空気よりも目標車室内温度に近い車室内の空気をケース20に取り込むことができ、効率の良い冷房が可能になる。また、外気温度が例えば約20℃で低く比較的弱めの冷房でよい場合には、吹出モードをバイレベルモードにし、導入モードを外気導入モードとする。一方、冬場のように、外気センサ65により検出された外気温度が例えば約10℃以下の低温で暖房が必要な場合には、吹出モードをヒートモードやヒートデフモードにし、導入モードを外気導入モードとする。導入モードを外気導入モードとすることで、乾燥した外気を車室に取り込んでウインドガラスの曇りが防止される。
【0053】
次いで、ステップSA4に進み、送風量が設定され、この設定された送風量となるように、ブロアモータ33に印加される電圧が変更される。この送風量は、内気センサ66で検出された車室内温度と目標車室内温度との差が大きいほど増加する。そして、ステップSA5に進み、コンプレッサー36を作動させるか停止させるかを決定する。ステップSA5では、エアコンスイッチ70により設定されたエアコンモードがACモード又はECOモードとされているときにはコンプレッサー36を作動させ、OFFモードとされているときには、停止させる。ステップSA5においてコンプレッサー36を作動させるとした場合には、コンプレッサーON信号がエアコン制御ユニット2からエンジン制御ユニット3に出力され、このエンジン制御ユニット3によりコンプレッサー36の電磁クラッチが接続状態とされる。一方、停止させるとした場合には、コンプレッサーOFF信号がエアコン制御ユニット2からエンジン制御ユニット3に出力され、電磁クラッチが断状態となる。
【0054】
以上のステップSA1からステップSA5での制御は空調制御部2aで行われており、ステップSA5に続くステップSA6での制御は、自動停止制御部2bにおいて行われる。この自動停止制御部2bでは、まず、図5のフローチャートに示すように、ステップSB1において、エアコンモード、吹出モード及び外気温度に基づいて第1アイドリング停止時間(ISMAX)が設定される。詳しくは、図6のフローチャートに示すように、まず、ステップSC1において、エアコンスイッチ70により設定されたエアコンモードが判定される。エアコンモードがACモード又はECOモードであると判定されると、ステップSC2に進んで吹出モードがどのモードにあるか判定される。ステップSC1においてエアコンモードがOFFモードであると判定されて進んだステップSC3においても、吹出モードがどのモードにあるか判定される。
【0055】
ステップSC2において、吹出モードがベント(VENT)モードであると判定されると、ステップSC4に進む。このステップSC4においては、エアコンモードがACモード又はECOモードで、かつ吹出モードがベントモードであるときのデータテーブルを読み込み、外気センサ65で検出された外気温度に基づいて第1アイドリング停止時間(ISMAX)を得る。このデータテーブルは、グラフにすると、図7に示すようになり、外気温度が高くなるほど第1アイドリング停止時間(ISMAX)が短くなるように構成されている。これは、外気温度が高くなるほど高い冷房能力が要求されることに対応して、補機の駆動時間を短くするためである。具体的には、外気温度が例えば30℃以下では、30℃よりも高いときと比べて、第1アイドリング停止時間(ISMAX)が長く設定される。
【0056】
ステップSC2において、吹出モードがバイレベル(B/L)モードであると判定されると、ステップSC5に進む。このステップSC5においては、エアコンモードがACモード又はECOモードで、かつ吹出モードがバイレベルモードであるときのデータテーブルを読み込み、外気センサ65で検出された外気温度に基づいて第1アイドリング停止時間(ISMAX)を得る。このデータテーブルは、グラフにすると、図8に示すようになり、外気温度が20℃付近にあるときに第1アイドリング停止時間(ISMAX)が最も長くなるように構成されている。また、このデータテーブルでは、外気温度が−10℃以下では、−10℃よりも高い場合に比べて、第1アイドリング停止時間(ISMAX)が短く設定され、また、外気温度が20℃以上の場合には、外気温度が高くなるほど、第1アイドリング停止時間(ISMAX)が短くなる。具体的には、外気温度が例えば20℃以上30℃以下の範囲にあるときには、30℃よりも高いときと比べて、第1アイドリング停止時間(ISMAX)が長く設定される。
【0057】
ステップSC2において、吹出モードがヒート(HEAT)モード又はヒートデフ(H/D)モードであると判定されると、ステップSC6に進む。このステップSC6においては、エアコンモードがACモード又はECOモードで、かつ吹出モードがヒートモード又はヒートデフモードであるときのデータテーブルを読み込み、外気センサ65で検出された外気温度に基づいて第1アイドリング停止時間(ISMAX)を得る。このデータテーブルは、グラフにすると、図9に示すようになり、外気温度が約−5℃以下の低い領域では、−5℃よりも高い場合に比べて、第1アイドリング停止時間(ISMAX)が短く設定され、また、約35℃以上の高い領域では、第1アイドリング停止時間(ISMAX)が最長時間となるように構成されている。
【0058】
また、上記ステップSC3において、吹出モードがベントモードであると判定されると、ステップSC7に進む。このステップSC7においては、エアコンモードがOFFモードで、かつ吹出モードがベントモードであるときのデータテーブルを読み込み、外気センサ65で検出された外気温度に基づいて第1アイドリング停止時間(ISMAX)を得る。このデータテーブルは、グラフにすると、図10に示すようになり、外気温度に関係なくアイドリング停止時間が最長時間となるように構成されている。
【0059】
上記ステップSC3において、吹出モードがバイレベルモードであると判定されると、ステップSC8に進む。このステップSC8においては、エアコンモードがOFFモードで、かつ吹出モードがバイレベルモードであるときのデータテーブルを読み込み、外気センサ65で検出された外気温度に基づいて第1アイドリング停止時間(ISMAX)を得る。このデータテーブルは、グラフにすると、図11に示すようになり、外気温度が約20℃以上では、第1アイドリング停止時間(ISMAX)が最長時間となり、約−20℃以下では、−20℃よりも高い場合に比べて短くなるように構成されている。
【0060】
上記ステップSC3において、吹出モードがヒートモード又はヒートデフモードであると判定されると、エアコンモードがOFFモードで、かつ吹出モードがヒートモード又はヒートデフモードであるときのデータテーブルを読み込み、外気センサ65で検出された外気温度に基づいて第1アイドリング停止時間(ISMAX)を得る。このデータテーブルは、グラフにすると、図12に示すようになり、外気温度が低い領域では、アイドリング停止時間が短く、高い領域では長くなるように構成されている。
【0061】
つまり、吹出モードは、図4のフローチャートにおけるステップSA3において、強い冷房時、弱い冷房時及び暖房時に適した吹出モードとされるので、この吹出モードを検出することで、現在の車室の空調状態が得られる。そして、図6のフローチャートにおけるステップSC2及びSC3において吹出モードが検出され、吹出モード毎に設けられているデータテーブルによって、吹出モード別に第1アイドリング停止時間(ISMAX)が設定される。このように吹出モードを検出し吹出モードに基づいて第1アイドリング停止時間(ISMAX)を設定することにより、第1アイドリング停止時間(ISMAX)は、内気センサ66に設けられている時定数の影響を受けることなく、現在の車室の空調状態に適応した時間となる。上記ステップSC2及びSC3が本発明の動作モード検出手段である。尚、図示しないが、ステップSC2及びステップSC3において、吹出モードがベントモード、バイレベルモード、ヒートモード及びヒートデフモード以外のデフロスタモードである場合には、ENDに進み、第1アイドリング停止時間(ISMAX)を、設定可能な範囲で最も短い時間とする。
【0062】
このようにして、第1アイドリング停止時間(ISMAX)が設定された後、図5のフローチャートのステップSB2に進み、吹出モード及び日射量により第2アイドリング停止時間(ISSRA)が設定される。詳しくは、図13のフローチャートに示すように、まず、ステップSD1において、吹出モードがどのモードにあるか判定される。
【0063】
上記ステップSD1において、吹出モードがベントモードであると判定されると、ステップSD2に進む。このステップSD2においては、吹出モードがベントモードであるときのデータテーブルを読み込み、日射センサ67で検出された日射量に基づいて第2アイドリング停止時間(ISSRA)を得る。このデータテーブルは、グラフにすると、図14に示すようになり、日射量が多くなるほど第2アイドリング停止時間(ISSRA)が長くなるように構成されている。
【0064】
上記ステップSD1において、吹出モードがバイレベルモードであると判定されると、ステップSD3に進む。このステップSD3においては、吹出モードがバイレベルモードであるときのデータテーブルを読み込み、日射センサ67で検出された日射量に基づいて第2アイドリング停止時間(ISSRA)を得る。データテーブルは、グラフにすると、図15に示すようになり、日射量が多くなるほど第2アイドリング停止時間(ISSRA)が長くなるように構成され、上記図14に示すデータテーブルに比べて、第2アイドリング停止時間(ISSRA)の最大値が小さく設定されている。
【0065】
上記ステップSD1において、吹出モードがヒートモード又はヒートデフモードであると判定されると、ステップSD4に進む。このステップSD4においては、吹出モードがヒートモード又はヒートデフモードであるときのデータテーブルを読み込み、日射センサ67で検出された日射量に基づいて第2アイドリング停止時間(ISSRA)を得る。データテーブルは、グラフにすると、図16に示すようになり、日射量が多くなるほどアイドリング停止時間が長くなるように構成されている。このデータテーブルは、上記図15に示すデータテーブルと略同じである。
【0066】
つまり、上記第1アイドリング停止時間(ISMAX)を設定する場合と同様に、吹出モードを検出し、これら吹出モード毎に設けられているデータテーブルによって、吹出モード別に第2アイドリング停止時間(ISSRA)が設定されるので、第2アイドリング停止時間(ISSRA)は、内気センサ66に設けられている時定数の影響を受けることなく、現在の車室の空調状態に適応した時間となる。第2アイドリング停止時間(ISSRA)を設定するモジュールのフローチャートにおけるステップSD1が、本発明の動作モード検出手段を構成している。尚、図示しないが、ステップSD1において、吹出モードがベントモード、バイレベルモード、ヒートモード及びヒートデフモード以外のデフロスタモードである場合には、ENDに進み、第2アイドリング停止時間(ISSRA)を、設定可能な範囲で最も短い時間とする。
【0067】
このようにして、第2アイドリング停止時間(ISSRA)が設定された後、図5のフローチャートのステップSB3に進み、吹出モード及び導入モードにより第3アイドリング停止時間(ISRF)が設定される。詳しくは、図17のフローチャートに示すように、まず、ステップSE1において、導入モードがどのモードにあるか判定される。このステップSE1において、導入モードが内気導入(REC)モードとされると、ステップSE2に進む。このステップSE2では、吹出モードがどのモードにあるか判定される。
【0068】
上記ステップSE2において、吹出モードがベントモードであると判定されると、ステップSE3に進む。このステップSE3においては、導入モードが内気導入モードで、かつ吹出モードがベントモードであるときのデータテーブルを読み込み、第3アイドリング停止時間(ISRF)を得る。
【0069】
上記ステップSE2において、吹出モードがバイレベルモードであると判定されると、ステップSE4に進む。このステップSE4においては、導入モードが内気導入モードで、かつ吹出モードがバイレベルモードであるときのデータテーブルを読み込み、第3アイドリング停止時間(ISRF)を得る。
【0070】
上記ステップSE2において、吹出モードがヒートモード又はヒートデフモードであると判定されると、ステップSE5に進む。このステップSE5においては、導入モードが内気導入モードで、かつ吹出モードがヒートモード又はヒートデフモードであるときのデータテーブルを読み込み、第3アイドリング停止時間(ISRF)を得る。尚、図示しないが、ステップSE2において、吹出モードがベントモード、バイレベルモード、ヒートモード及びヒートデフモード以外のデフロスタモードである場合には、ENDに進み、第3アイドリング停止時間(ISRF)を、設定可能な範囲で最も短い時間とする。
【0071】
一方、上記ステップSE1において、外気導入モードであると判定されると、ステップSE6に進む。このステップSE6では、第3アイドリング停止時間(ISRF)を、設定可能な範囲で最も短い時間とする。
【0072】
つまり、上記第3アイドリング停止時間(ISRF)を設定するモジュールのフローチャートにおけるステップSE1が内外気モードを検出する動作モード検出手段を構成し、また、ステップSE2が吹出モードを検出する動作モード検出手段を構成している。そして、内気導入モードと外気導入モードとで別のデータテーブルが設けられていることによって、導入モード別に第3アイドリング停止時間(ISRF)が設定される。さらに、吹出モード毎にデータテーブルが設けられていることによって、吹出モード別に第3アイドリング停止時間(ISRF)が設定される。これにより、第3アイドリング停止時間(ISRF)は、内気センサ66に設けられている時定数の影響を受けることなく、現在の車室の空調状態に適応した時間となる。
【0073】
このようにして、第3アイドリング停止時間(ISRF)が設定された後、図5のフローチャートのステップSB4に進み、吹出モードがヒート又はヒートデフモードであるか否かが判定される。ステップSB4において吹出モードがヒート又はヒートデフモードであるYESと判定されて進んだSB5では、第1アイドリング停止時間(ISMAX)、第2アイドリング停止時間(ISSRA)及び第3アイドリング停止時間(ISRF)を加算してアイドリング停止時間(IS)を得る計算処理を行う。
【0074】
上記ステップSB5では、吹出モードがヒート吹出口51を開いていて車室を暖房している状態であり、従って、日射量が多いと乗員は温かく感じフィーリングが良くなる。このため、日射量に基づいて設定された第2アイドリング停止時間(ISSRA)を加算してアイドリング停止時間(IS)を長くしても乗員の快適性が損なわれにくい。
【0075】
一方、上記ステップSB4において吹出モードがヒート又はヒートデフモード以外のNOであると判定されて進んだステップSB6では、吹出モードがベント又はバイレベルモードであるか否かが判定される。ステップSB6において吹出モードがベント又はバイレベルモードであるYESと判定されて進んだステップSB7では、第1アイドリング停止時間(ISMAX)から第2アイドリング停止時間(ISSRA)を差し引いた値に第3アイドリング停止時間(ISRF)を加算する計算処理を行う。
【0076】
上記ステップSB7では、吹出モードがベント吹出口50を開いていて車室を冷房している状態であり、従って、日射量が多いと乗員は暑く感じフィーリングが悪くなる。このため、日射量に基づいて設定された第2アイドリング停止時間(ISSRA)を減算してアイドリング停止時間(IS)を短くしている。
【0077】
ステップSB6においてNOと判定されて吹出モードがデフロスタモードである場合には、ステップSB13に進んでアイドリング停止禁止信号の出力値を設定する。その後、図4に示すフローチャートのステップSA7に進んでアイドリング停止禁止信号の出力制御が行われる。このアイドリング停止禁止信号が入力された車両制御ユニット6は、エンジンのアイドリング停止を解除、即ち、エンジンがアイドリング停止状態にあれば始動させる。
【0078】
ステップSB5又はSB7を経て進んだステップSB8においては、アイドリング停止時間(IS)が最短時間(ISMIN)以上であるか否かが判定される。最短時間(ISMIN)は、アイドリング停止直後の再始動によってエンジンや始動装置が損傷しないように、アイドリング停止直後から所定時間経過してからエンジンが始動されるようにするための短い時間である。この最短時間(ISMIN)は、エンジンや始動装置を保護するのに十分な時間であればよい。
【0079】
ステップSB8において、アイドリング停止時間(IS)が最短時間(ISMIN)以上のYESであればステップSB9、SB10へ進み、ステップSB5又はステップSB7で計算したアイドリング停止時間(IS)を選択しアイドリング停止時間として確定する。一方、ステップSB8において、アイドリング停止時間(IS)が最短時間(ISMIN)未満のNOと判定されると、ステップSB11、SB10へ進み、最短時間(ISMIN)をアイドリング停止時間として確定する。
【0080】
ステップSB10に続くステップSB12においては、外気センサ65で検出された外気温度がTa1以上であるか否かが判定される。Ta1は、例えば氷点下近傍の低い値に設定されており、従って、ステップSB12においては、冬場で強めの暖房が必要な状況であるか否かが判定される。ステップSB12において、外気温度がTa1未満であるNOと判定されると、強めの暖房を行うための熱源を確保すべく、ステップSB13に進んでアイドリング停止禁止信号の出力値を設定する。その後、図4に示すフローチャートのステップSA7に進んでアイドリング停止禁止信号の出力制御が行われる。一方、ステップSB12において、外気温度がTa1以上であるYESと判定されると、ステップSB15に進む。
【0081】
上記ステップSB15においては、水温センサ74で検出されたエンジン冷却水温がTw1以上であるか否かが判定される。ステップSB15において、エンジン冷却水温がTw1未満であるNOと判定されると、エンジンの暖機が不十分であるとして、ステップSB13に進んでアイドリング停止禁止信号の出力値を設定する。その後、図4に示すフローチャートのステップSA7に進んでアイドリング停止禁止信号の出力制御が行われる。一方、ステップSB15において、エンジン冷却水温がTw1以上であるYESと判定されると、ステップSB16に進む。
【0082】
上記ステップSB16においては、エアコン優先スイッチ73がONであるか否かが判定される。ステップSB16において、エアコン優先スイッチ73がONであるYESと判定されると、乗員が空調を優先したい状況であるため、ステップSB13に進んでアイドリング停止禁止信号の出力値を設定する。その後、図4に示すフローチャートのステップSA7に進んでアイドリング停止禁止信号の出力制御が行われる。一方、ステップSB16において、エアコン優先スイッチ73がOFFであるNOと判定されると、ステップSB17に進む。
【0083】
上記ステップSB17においては、目標車室内温度から内気センサ66で検出された車室内温度を差し引いた値が−5℃以上であるか否かが判定される。ステップSB17でNOと判定されると、目標車室内温度と車室内温度との差が大きく車室が快適な状態となっていないため、ステップSB13に進んでアイドリング停止禁止信号の出力値を設定する。その後、図4に示すフローチャートのステップSA7に進んでアイドリング停止禁止信号の出力制御が行われる。一方、ステップSB17でYESと判定されると、ステップSB18に進む。
【0084】
上記ステップSB18においては、目標車室内温度から内気センサ66で検出された車室内温度を差し引いた値が+5℃以下であるか否かが判定される。ステップSB18でNOと判定されると、目標車室内温度と車室内温度との差が大きく車室が快適な状態となっていないため、ステップSB13に進んでアイドリング停止禁止信号の出力値を設定する。その後、図4に示すフローチャートのステップSA7に進んでアイドリング停止禁止信号の出力制御が行われる。一方、ステップSB18でYESと判定されると、ステップSB19に進む。
【0085】
上記ステップSB19においては、エンジンが停止中であるか否かが判定される。ステップSB19でYESと判定されると、ステップSB20に進み、アイドリング停止時間のカウントダウンが開始される。そして、ステップSB21に進み、アイドリング停止時間が0であるか否かが判定される。ステップSB21において、アイドリング停止時間が0であるYESと判定されると、ステップSB13に進んでアイドリング停止禁止信号の出力値を設定する。その後、図4に示すフローチャートのステップSA7に進んでアイドリング停止禁止信号の出力制御が行われる。一方、ステップSB21においてNOと判定されると、ステップSB22に進んでアイドリング停止許可信号の出力値を設定する。その後、図4に示すフローチャートのステップSA7に進んでアイドリング停止許可信号の出力制御が行われる。これにより、車両の停止条件が成立したときに、エンジンのアイドリングが上記ステップSB10で確定した時間だけ停止される。上記自動停止制御部2b及び車両制御ユニット6が、本発明のエンジン自動停止手段である。また、自動停止制御部2bは、ファンスイッチ72がOFFであるときのように空調装置1が作動していないときには、アイドリング停止許可信号を出力する。
【0086】
以上説明したように、この実施形態に係る車両の制御装置Aによれば、空調装置1の吹出モード及び空気の導入モードを検出し、これらモードに基づいてエンジンのアイドリング停止時間を設定するようにしたので、内気センサ66の時定数の影響を受けることなく、現在の車室の空調状態に適したアイドリング停止時間を得ることができる。これにより、乗員に快適な空調を実現できるので、アイドリング停止機能が乗員により解除され難くなり、燃料消費量及び排気ガス排出量の低減効果を十分に得ることができる。
【0087】
また、空調装置1の吹出モードを検出し、この吹出モード別にアイドリング停止時間を設定するようにしたので、現在の車室の空調状態を的確に把握して、その空調状態に適したエンジンのアイドリング停止時間を設定することができ、車室の空調をより一層快適にできる。
【0088】
また、外気温度が所定温度、例えば約25℃以下で、しかも、吹出モードがベント吹出口50を開く吹出モードのように、弱めの冷房が要求されているときに、エンジンのアイドリング停止時間を、外気温度が25℃よりも高いときと比べて長く設定することができる。これにより、乗員の快適性を損なうことなく、燃料消費量及び排気ガス排出量を一層低減できる。
【0089】
また、導入モードを検出することで、現在の車室の空調状態を的確に把握して、その空調状態に適したエンジンのアイドリング停止時間を設定することが可能になり、車室の空調をより一層快適にできる。
【0090】
また、車室の空調状態に影響を及ぼす日射量によってアイドリング停止時間が変更されるので、車室の空調をより一層快適にできる。
【0091】
また、エンジンのアイドリング停止時間を最短時間(ISMIN)以上としたので、アイドリング停止直後に再始動されることは無く、エンジンや始動装置の損傷を防止できる。
【0092】
尚、自動停止手段は、エアコン制御ユニット2やエンジン制御ユニット3で構成してもよく、また、これら複数のユニットを組み合わせた装置で構成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0093】
以上説明したように、本発明は、エンジンにより駆動される補機から供給される熱媒体との熱交換によって車室内への送風空気を加熱又は冷却する熱交換器を有する車両において、車両の停止時にエンジンのアイドリングを自動停止させるようにする場合に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】空調装置の概略構造を説明する図である。
【図2】車室前側の斜視図である。
【図3】本発明の実施形態に係る車両の制御装置の構成を示すブロック図である。
【図4】エアコン制御ユニットの制御動作を示すフローチャートである。
【図5】アイドリング停止制御モジュールの制御動作を示すフローチャートである。
【図6】第1アイドリング停止時間(ISMAX)設定モジュールの制御動作を示すフローチャートである。
【図7】エアコンモードがAC又はECOモードで、かつ吹出モードがベントモードであるときのデータテーブルをグラフ化した図である。
【図8】エアコンモードがAC又はECOモードで、かつ吹出モードがバイレベルモードであるときのデータテーブルをグラフ化した図である。
【図9】エアコンモードがAC又はECOモードで、かつ吹出モードがヒートモード又はヒートデフモードであるときのデータテーブルをグラフ化した図である。
【図10】エアコンモードがOFFモードで、かつ吹出モードがベントモードであるときのデータテーブルをグラフ化した図である。
【図11】エアコンモードがOFFモードで、かつ吹出モードがバイレベルモードであるときのデータテーブルをグラフ化した図である。
【図12】エアコンモードがOFFモードで、かつ吹出モードがヒート又はヒートデフモードであるときのデータテーブルをグラフ化した図である。
【図13】第2アイドリング停止時間(ISSRA)設定モジュールの制御動作を示すフローチャートである。
【図14】吹出モードがベントモードであるときのデータテーブルをグラフ化した図である。
【図15】吹出モードがバイレベルモードであるときのデータテーブルをグラフ化した図である。
【図16】吹出モードがヒート又はヒートデフモードであるときのデータテーブルをグラフ化した図である。
【図17】第3アイドリング停止時間(ISRF)設定モジュールの制御動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0095】
A 車両の制御装置
1 空調装置
2 エアコン制御ユニット
2a 空調制御部
2b 自動停止制御部
3 エンジン制御ユニット
6 車両制御ユニット
20 ケース
25 内気導入口
26 外気導入口
35 エバポレータ
36 コンプレッサ
43 ヒータコア
50 ベント吹出口
51 ヒート吹出口
52 デフロスタ吹出口
65 外気センサ(外気温度検出手段)
67 日射センサ(日射量検出手段)
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンのアイドリングを停止させるように構成された車両の制御装置に関し、特に、空調装置に関連した制御を行う技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
従来より、車両の燃料消費量や排気ガスの排出量を低減する手段の1つとして、車両が信号待ち等で停止したときに、エンジンのアイドリングを自動停止させる、いわゆるアイドリング停止機能を備えた車両が知られている。
【0003】
また、車両には、空調装置が設けられている。この空調装置は、エンジンにより駆動される補機としてのウォーターポンプやコンプレッサーから供給される熱媒体(エンジン冷却水や冷媒)が流通する熱交換器を備えている。車室への送風空気は、熱交換器を通過することで熱媒体と熱交換して加熱又は冷却され、所望温度とされてから、車室の各部に吹き出すようになっている。
【0004】
このような空調装置を備えた車両においては、空調装置の動作中にアイドリング停止機能によってエンジンのアイドリングを停止させると、補機も停止することから、上記熱媒体による空気の加熱又は冷却が十分に行われなくなる。こうなると、乗員が要求している空調能力が得られなくなって、車室の快適性が損なわれる。このことに対して、乗員が空調装置を作動させているときには、アイドリング停止をキャンセルすることが考えられる。しかし、空調装置は作動状態にあることが多いので、そのようにした場合にはエンジンのアイドリング停止が殆ど行われないことになり、燃料消費量や排気ガスの排出量を低減する効果が殆ど得られなくなってしまう。
【0005】
そこで、特許文献1に開示されているように、車室内温度を検出する内気センサを設け、この内気センサから出力されるセンサ出力温度と、乗員が温度設定スイッチで設定した温度との差を求め、この差に応じてエンジンのアイドリングを停止させておく時間を変更することで、燃料消費量や排気ガスの排出量低減の効果を得ながら、乗員が要求する空調能力を得ることが提案されている。
【0006】
また、特許文献1のような車両用空調装置に用いられる内気センサには、一般に、過渡応答を遅らせるための時定数が設けられている。これは、車室内温度が急にかつ一時的に変化した場合に、その温度変化をそのまま制御に用いると送風空気の温度変化が急激になって乗員が違和感を感じるのを防止するためである。従って、内気センサからのセンサ出力温度は緩やかに変化するようになっている。
【特許文献1】特開2005−247107号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、特許文献1の空調装置において、例えば、夏場の炎天下にアイドリング停止機能によってエンジンのアイドリングを停止させた場合を想定すると、補機が停止することで、車室内温度は急に上昇していくが、内気センサには上述の如く時定数が設定されていることから、センサ出力温度は緩やかに上昇していく。このため、特に、市街地走行のように停止と発進が頻繁に繰り返されて補機が短い間隔で停止及び起動を繰り返す場合には、センサ出力温度が実際の車室の温度よりも低い側に大きくずれてしまう。このようにセンサ出力温度が大きくずれると、センサ出力温度と乗員による設定温度との差に基づいてエンジンのアイドリング停止時間を設定する際、車室の空調状態が乗員の要求から離れて不適な状態となっているのに、エンジンのアイドリング停止時間が長く設定されて空調能力が不足してしまうことが考えられる。こうなると、乗員の快適性が損なわれてしまい、ひいては、乗員は、エンジンのアイドリングが停止しないようにアイドリング停止機能を解除してしまう。つまり、アイドリング停止機能による燃料消費量や排気ガスの排出量低減の効果を得ることと、乗員にとって快適な空調を実現することとを両立できない。
【0008】
本発明は斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、エンジンのアイドリング停止が頻繁に行われる状況においても必要な空調能力を確保して快適な空調を実現可能にし、乗員によるアイドリング停止機能の解除がなされないようにして燃料消費量及び排気ガス排出量の低減効果を十分に得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明では、空調装置においては、複数の動作モードの中から車室の空調状態に適した動作モードが選択されるように構成されていることに着目し、この動作モードに基づいてエンジンのアイドリング停止時間を設定するようにした。
【0010】
具体的には、請求項1の発明では、車両のエンジンによって駆動される補機により供給される熱媒体と車室への送風空気とを熱交換させる熱交換器を有する空調装置と、車両の停止時に上記エンジンのアイドリングを停止させるエンジン自動停止手段とを備えた車両の制御装置において、上記空調装置の動作モードを、該空調装置が有する複数の動作モードの中から車室の空調状態に適した動作モードに切り替える動作モード切替手段と、動作中の上記空調装置がどの動作モードにあるかを検出する動作モード検出手段とを備え、上記エンジン自動停止手段は、上記動作モード検出手段で検出された動作モードに基づいて、上記エンジンのアイドリングを停止させておく時間を設定する構成とする。
【0011】
この構成によれば、空調装置は、動作モード切替手段によって現在の車室の空調状態に適した動作モードに切り替えられる。この動作モードは、動作モード検出手段によって検出される。動作モードが、例えば、強い冷房が要求されている場合に適した動作モードであれば、エンジン自動停止手段は、強い冷房が要求されていない場合の動作モードに比べてエンジンのアイドリングを停止させておく時間を短く設定することで、補機の駆動時間が長く確保され、十分な冷房を行えるだけの空調能力を確保することが可能になる。このように、空調装置の動作モードに基づいてエンジンのアイドリング停止時間を設定することで、アイドリング停止時間が、内気センサに設けられている時定数の影響を受けることはなく、現在の車室の空調状態に適した時間となる。
【0012】
請求項2の発明では、請求項1の発明において、空調装置が有するケースには、熱交換器を通過した空気が吹き出すベント吹出口、デフロスタ吹出口及びヒート吹出口が形成され、動作モード切替手段は、上記ベント吹出口、デフロスタ吹出口及びヒート吹出口を開閉することで動作モードとしての吹出モードを切り替えるように構成されているものとする。
【0013】
すなわち、車両用の空調装置においては、例えば、乗員が冷房を要求している場合には、冷房の効果を高めるために、一般に、冷風を乗員の上半身に向けて直接供給すべくベント吹出口が開かれた吹出モードとされる。この吹出モードを動作モードとして動作モード検出手段により検出することで、現在の車室の空調状態を的確に把握して、その空調状態に適したエンジンのアイドリング停止時間を設定することが可能になる。
【0014】
請求項3の発明では、請求項2の発明において、車両周囲の外気温度を検出する外気温度検出手段を備え、エンジン自動停止手段は、上記外気温度検出手段により検出された外気温度が所定温度以下で、かつ、動作モード検出手段により検出された吹出モードがベント吹出口を開く吹出モードであるときには、上記外気温度検出手段により検出された外気温度が所定温度よりも高いときと比べて、エンジンのアイドリングを停止させておく時間を長く設定する構成とする。
【0015】
この構成によれば、外気温度が所定温度以下で、しかも、ベント吹出口を開く吹出モードが選択されているということは、車室内の空調状態としては冷房が弱めでよい状態である。この状態では、エンジンのアイドリング停止時間を長く設定することで、補機の停止時間を長くしても乗員の快適性は損なわれることはない。
【0016】
請求項4の発明では、請求項1から3のいずれか1つの発明において、空調装置が有するケースには、送風用の空気を車室内から該ケース内へ導入するための内気導入口と、車室外から該ケース内へ導入するための外気導入口とが形成され、動作モード切替手段は、上記内気導入口及び外気導入口を開閉することで動作モードとしての導入モードを切り替えるように構成されているものとする。
【0017】
この構成によれば、例えば、内気導入口が開かれて外気導入口が閉じられる内気導入モードにあるときは、車室外の空気よりも目標とする車室内温度に近い車室内の空気がケース内に導入されることになる。つまり、車両用の空調装置においては、内気導入モードは、強い冷房が要求される場合に選択されるモードである。このように、導入モードを動作モードとして動作モード検出手段により検出することで、現在の車室の空調状態を的確に把握して、その空調状態に適したエンジンのアイドリング停止時間を設定することが可能になる。
【0018】
請求項5の発明では、請求項1から4のいずれか1つの発明において、車室内に差し込んでくる日射量を検出する日射量検出手段を備え、エンジン自動停止手段は、上記日射量検出手段により検出された日射量に基づいて、エンジンのアイドリングを停止させておく時間を変更する構成とする。
【0019】
この構成によれば、車室の空調状態に影響を及ぼす日射量によってアイドリング停止時間が変更される。
【0020】
請求項6の発明では、請求項1から5のいずれか1つの発明において、エンジン自動停止手段は、エンジンのアイドリングを停止させておく時間を所定時間以上とする構成とする。
【0021】
この構成によれば、エンジンのアイドリングが停止した場合、停止から所定時間経過しなければ再始動されない。これにより、アイドリング停止直後に再始動されることが無くなり、エンジンや始動装置にかかる負担を小さくすることが可能になる。
【発明の効果】
【0022】
請求項1の発明によれば、空調装置の動作モードを検出し、この動作モードに基づいてエンジンのアイドリング停止時間を設定するようにしたので、内気センサの時定数の影響を受けることなく、現在の車室の空調状態に適した空調能力を得ることができる。これにより、エンジンのアイドリング停止が頻繁に行われる状況においても乗員に快適な空調を実現できるので、アイドリング停止機能が乗員により解除され難くなり、燃料消費量及び排気ガス排出量の低減効果を十分に得ることができる。
【0023】
請求項2の発明によれば、現在の車室の空調状態を吹出モードにより的確に把握してエンジンのアイドリング停止時間を設定することができ、車室の空調をより一層快適にできる。
【0024】
請求項3の発明によれば、外気温度が所定温度以下で、ベント吹出口を開くモードのときにエンジンのアイドリング停止時間を長くすることで、乗員の快適性を損なうことなく、燃料消費量及び排気ガス排出量を一層低減できる。
【0025】
請求項4の発明によれば、現在の車室の空調状態を空気の導入モードによって的確に把握してエンジンのアイドリング停止時間を設定することができ、車室の空調をより一層快適にできる。
【0026】
請求項5の発明では、車室の空調状態に影響を及ぼす日射量によってアイドリング停止時間を変更するようにしたので、車室の空調をより一層快適にできる。
【0027】
請求項6の発明では、エンジンのアイドリング停止時間を所定時間以上としたので、アイドリング停止直後に再始動されることは無く、エンジンや始動装置の損傷を防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0029】
本発明の実施形態に係る車両の制御装置Aは、乗用自動車に搭載されている。この車両の車室には、図1に示す空調装置1が配設されている。上記制御装置Aは、図3に示すように、空調装置1を制御するエアコン制御ユニット2と、当該車両のエンジンの点火装置4や燃料噴射装置5等を制御するエンジン制御ユニット3と、エンジン制御ユニット3に対しエンジンの始動及び停止要求信号を出力する車両制御ユニット6とを備えている。詳細は後述するが、車両側の停止条件を満たし、かつ、空調装置1側の停止条件を満たしたときに、上記車両制御ユニット6によってエンジンのアイドリングを停止させるようにしている。
【0030】
上記空調装置1は、車室の前端部に配設されたインストルメントパネルIP内に収容されている。図2に示すように、インストルメントパネルIPの左右略中央部には、空調装置1の操作パネルBが配設されている。このインストルメントパネルIPの車体後方には、車体右側に運転席(図示せず)が配設され、左側に助手席(図示せず)が配設されている。インストルメントパネルIPの前端部には、フロントウインド(図示せず)の内面に向けて空調風が吹き出すデフロスタ口7が開口している。インストルメントパネルIPの上側の左右両端部には、サイドウインド(図示せず)の内面に向けて空調風が吹き出すデミスタ口8がそれぞれ開口している。インストルメントパネルIPの左右方向略中央部には、乗員の上半身に向けて空調風が吹き出すセンタベント口9が開口している。インストルメントパネルIPの左右方向両端部近傍にも、乗員の上半身に向けて空調風が吹き出すサイドベント口10が開口している。
【0031】
図1に示すように、上記空調装置1は、樹脂材を成形してなるケース20を備えている。このケース20には空気導入部21と温度調節部22と空調風分配部23とが設けられている。尚、ケース20は、例えば空気導入部21と温度調節部22と空調風分配部23とに3分割されたものや、空気導入部21と、温度調節部22及び空調風分配部23とに2分割されたものであってもよい。
【0032】
上記空気導入部21には、車室内で開口し車室内の空気をケース20内に取り入れるための内気導入口25と、車室外に連通するダクト(図示せず)に接続され車室外の空気をケース20内に取り入れるための外気導入口26とが形成されている。空気導入部21の内部には、上記内気導入口25と外気導入口26との一方を開いて他方を閉じる内外気切替ドア27が設けられている。この内外気切替ドア27は、ケース20の外面に固定された内外気アクチュエータ28(図3に示す)により動作して、内気導入口25及び外気導入口26の一方を開き他方を閉じるようになっている。この内外気アクチュエータ28は、サーボモータを内蔵した周知の構造のものである。この内外気アクチュエータ28により、動作モードとしての導入モードが、内気のみをケース20に導入する内気導入モードと、外気のみをケース20に導入する外気導入モードとに切り替えられるようになっている。
【0033】
上記空気導入部21の内部における内外気切替ドア27よりも空気流れ方向下流側には、ケース20内に導入された空気を濾過するためのエアフィルタ31と送風ファン32とが下流側へ向けて順に設けられている。送風ファン32は遠心式ファンであり、回転軸が上下方向に延びるように配置されている。送風ファン32の下部には、該送風ファン32を回転駆動するためのブロアモータ33が配置されている。このブロアモータ33は、一部がケース20の外部に突出した状態で該ケース20に固定されている。
【0034】
上記空気導入部21の空気流れ方向下流側に上記温度調節部22が位置している。温度調節部22の内部には、冷却用熱交換器としてのエバポレータ35が収容されている。このエバポレータ35と、エンジンにより駆動される補機としてのコンプレッサー36(図3に示す)と、冷媒凝縮器と、膨張弁とで周知の冷凍サイクルが構成されている。エバポレータ35は、複数のチューブとフィン(共に図示せず)とを交互に並べて一体化したチューブアンドフィンタイプの熱交換器である。エバポレータ35には、熱媒体としての冷媒がクーラパイプ(図示せず)を介して供給され、この冷媒がチューブを流通するようになっている。エバポレータ35のフィン間を通過する空気がチューブを流通する冷媒と熱交換し、これによって空気が冷却される。また、エバポレータ35の空気流れ下流側の面には、エバポレータ35の表面温度を検出するための温度センサからなるエバセンサ37が取り付けられている。
【0035】
上記温度調節部22内部のエバポレータ35よりも下流側には、加熱用熱交換器としてのヒータコア43が収容されている。このヒータコア43は、エバポレータ35と同様なチューブアンドフィンタイプの熱交換器である。ヒータコア43には、上記エンジンにより駆動される補機としてのウォータポンプ(図示せず)から熱媒体としてのエンジン冷却水がヒータパイプ(図示せず)を介して供給されるようになっている。このヒータコア43を通過する空気がチューブを流通するエンジン冷却水と熱交換し、これによって空気が加熱される。このヒータコア43の側方には、エバポレータ35を通過した空気を、ヒータコア43をバイパスして流すバイパス通路44が形成されている。バイパス通路44の下流側には、バイパス通路44を流れた空気とヒータコア43を通過した空気とを混合させて空調風を得るためのエアミックス空間45が形成されている。
【0036】
上記エバポレータ35とヒータコア43との間には、エアミックスドア46が配設されている。エアミックスドア46は、ケース20の外面に固定されたエアミックスアクチュエータ48(図3に示す)により動作するようになっている。エアミックスアクチュエータ48は、上記内外気アクチュエータ28と同様に構成されている。
【0037】
上記エアミックスアクチュエータ48を動作させてエアミックスドア46によるバイパス通路44の開度を変更することにより、バイパス通路44を流れる空気量とヒータコア43を通過する空気量との比率が変更され、その結果、エアミックス空間45で得られる空調風の温度が変更される。エアミックスドア46の開度が0%のときには、ヒータコア43側の通路が全閉とされかつバイパス通路44が全開とされ、100%のときにはヒータコア43側の通路が全開とされかつバイパス通路44が全閉とされるようになっている。エアミックスドア46の開度は、上記した0%〜100%の間で任意の値に設定されるようになっている。
【0038】
上記温度調節部22の空気流れ方向下流側に、上記エアミックス空間45に連通する空調風分配部23が位置している。空調風分配部23には、ベント吹出口50、ヒート吹出口51及びデフロスタ吹出口52が形成されている。ベント吹出口50には、インストルメントパネルIPのセンタベント口9及びサイドベント10に連通するベントダクト53の上流端が接続されている。また、ヒート吹出口51には、前席乗員の足下及び後席乗員の足下近傍まで延びるヒートダクト54(図2にその一部を示す)の上流端が接続されている。また、デフロスタ吹出口52には、インストルメントパネルIPのデフロスタ口7及びデミスタ口8に連通するデフロスタダクト55の上流端が接続されている。上記ベント吹出口50、ヒート吹出口51及びデフロスタ吹出口52は、空調風分配部23の内部に配設されたベントドア56、ヒートドア57及びデフロスタドア58により個別に開閉されるようになっている。
【0039】
上記ベントドア56、ヒートドア57及びデフロスタドア58は、図示しないが、リンク部材によって連結されており、吹出モードを切り替えるための吹出モードアクチュエータ60(図3に示す)により互いに連動して動作するようになっている。上記吹出モードアクチュエータ60は、上記内外気アクチュエータ28と同様にサーボモータを内蔵した周知の構造のものであり、ケース20の外面に固定されている。
【0040】
この空調装置1は、図3に示すように、外気温度検出手段としての外気センサ65、内気センサ66及び日射センサ67を備えている。外気センサ65は、車両周囲の外気温度を検出するためのものであり、フロントグリル(図示せず)近傍やドアミラー(図示せず)近傍等の車室外に配設されている。上記内気センサ66は、車室内温度を検出するためのものであり、図2に示すように、インストルメントパネルIPの運転席側に配設されている。この内気センサ66には、過渡応答を遅らせるために時定数が設けられている。上記日射センサ67は、車室内に差し込んでくる太陽光の強さである日射量を検出するためのものであり、インストルメントパネルIPの前端部に配設されている。これら外気センサ65、内気センサ66及び日射センサ67は、エアコン制御ユニット2に接続されている。
【0041】
上記インストルメントパネルIPの操作パネルBには、図3に示すように、温度設定スイッチ68、吹出モードスイッチ69、エアコンスイッチ70、内外気切替スイッチ71、ファンスイッチ72、エアコン優先スイッチ73が配設されている。上記温度設定スイッチ68は、乗員が車室の設定温度を所望温度に変更してセットするためのものである。上記吹出モードスイッチ69は、空調風の吹出モードを乗員が選択する場合に操作されるものである。吹出モードは、動作モードであり、空調風がデフロスタ口7及びデミスタ口8から吹き出すデフロスタモードと、デフロスタ口7、デミスタ口8及びヒートダクト54から吹き出すヒートデフモードと、センタベント口9及びサイドベント口10から吹き出すベントモードと、ヒートダクト54から吹き出すヒートモードと、センタベント口9、サイドベント口10及びヒートダクト54から吹き出すバイレベルモードとがある。
【0042】
上記エアコンスイッチ70は、冷凍サイクルのコンプレッサー36を通常運転させるACモードを選択するためのACポジションと、弱冷房でよい場合のエコノミーモード(ECOモード)を選択するためのECOポジションと、コンプレッサー36を運転させないOFFモードを選択するためのOFFポジションとを備えており、乗員が3つのポジションから任意の1つを選択できるようになっている。内外気切替スイッチ71は、空気の導入モードを内気導入モードと外気導入モードとを切り替えるためのものである。ファンスイッチ72は、ファン32による送風量を多段階に増減させるためのものである。エアコン優先スイッチ73は、空調装置1を作動させているときにはエンジンのアイドリングを停止させないエアコン優先モードと、アイドリングの停止を許可するアイドリング停止モードとに切り替えるためのものである。つまり、この車両においては、乗員の意志により、アイドリング停止機能を解除することができるようになっている。
【0043】
上記エアコン制御ユニット2は、中央演算処理装置、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読み出し専用メモリ(ROM)、入出力ポート等(図示せず)を有しており、車載バッテリー(図示せず)から電力供給を受けて作動するようになっている。エアコン制御ユニット2の入出力ポートには、上記スイッチ68〜73が接続されるとともに、外気センサ65、内気センサ66、日射センサ67、水温センサ74、エバセンサ37、ブロワモータ33、アクチュエータ28、48、60が接続されている。上記水温センサ74は、エンジンの冷却水の温度を検出するためのものである。尚、エアコン制御ユニット2には、吹出モード、導入モード及び送風量を車室の空調状態に適するように自動的に設定する自動空調モードと、乗員が手動で設定する手動モードとがあり、乗員によって一方が選択されるようになっている。
【0044】
上記エンジン制御ユニット3と、エアコン制御ユニット2とは、信号線を介して接続されている。エアコン制御ユニット2がコンプレッサー36を作動させる必要があると判断したときには、コンプレッサーON信号をエンジン制御ユニット3に送信し、このコンプレッサーON信号を受けたエンジン制御ユニット3は電磁クラッチを接続状態にし、一方、エアコン制御ユニット2がコンプレッサー36を作動させる必要がないと判断したときには、コンプレッサーOFF信号をエンジン制御ユニット3に送信し、このコンプレッサーOFF信号を受けたエンジン制御ユニット3は電磁クラッチを断状態にするようになっている。
【0045】
上記エアコン制御ユニット2は、空調制御部2aと、自動停止制御部2bとを備えている。空調制御部2aは、自動空調モードとされている場合には、所定のプログラムに従って上記各センサ37、65〜67、74からの入力信号やスイッチ68〜73からの入力信号を処理し、空調装置1の動作モードを決定して、ブロアモータ33やアクチュエータ28、48、60を制御するように構成されている。自動停止制御部2bは、空調装置1の動作モードを検出し、この検出した動作モードに基づいてエンジンのアイドリングを停止させておく時間を設定し、アイドリング停止の許可又は禁止信号を生成するように構成されている。
【0046】
上記エンジン制御ユニット3には、点火装置4、燃料噴射装置5及びコンプレッサー36が信号線を介して接続されている。このエンジン制御ユニット3により、コンプレッサー36の電磁クラッチが断続制御されるようになっている。電磁クラッチが接続状態のときには、エンジンの動力がコンプレッサー36に伝わり、断状態のときには、動力が伝わらないようになっている。
【0047】
上記車両制御ユニット6には、乗員が操作する自動変速機のセレクトレバーがどの変速レンジ位置にあるかを検出するインヒビタスイッチ75、当該車両の車速を検出する車速センサ76及びブレーキペダルの踏み込み操作を検出するブレーキスイッチ77が信号線を介して接続されている。また、車両制御ユニット6と上記エアコン制御ユニット2とは信号線で接続されており、エアコン制御ユニット2からは、自動停止制御部2bで生成されたアイドリング停止許可信号と禁止信号とのうち、一方の信号が出力されて車両制御ユニット6に入力されるようになっている。また、車両制御ユニット6からは、エンジンが停止しているか否かの判別信号がエアコン制御ユニット2に対し出力されるようになっている。尚、車両が手動変速機を搭載している場合には、シフトレバーがどの位置にあるかを検出するセンサを設け、このセンサの信号を車両制御ユニット6に入力するようにすればよい。
【0048】
上記車両制御ユニット6は、車両側の停止条件が成立したときで、かつ、エアコン制御ユニット2からアイドリング停止の許可信号が出力されているときには、エンジンのアイドリングを所定時間だけ停止させるようになっているが、所定時間経過前に車両側の停止条件が成立しなくなったとき、または、エアコン制御ユニット2からアイドリング停止の禁止信号が出力されたときには、その時点でアイドリング停止を終了し、エンジンを始動する。車両側の停止条件とは、車速センサ76により検出された車速が0で車両が停止し、かつインヒビタスイッチ75によりセレクトレバーがニュートラルレンジ又はパーキングレンジに位置していることが検出され、かつブレーキスイッチ77によりブレーキペダルの踏み込み操作が検出されたときである。尚、車両制御ユニット6がエンジンのアイドリングを停止を許可する場合には、エンジン制御ユニット3に対してアイドリング停止許可信号を出力して、点火装置4や燃料噴射装置5を非作動状態にさせる。また、車両制御ユニット6からは、エンジンが停止しているか否かの判別信号がエアコン制御ユニット2に対し出力されるようになっている。
【0049】
次に、上記エアコン制御ユニット2の具体的な制御動作を、図4〜6、図13及び図17に示すフローチャートに基づいて説明する。この制御は、車両のイグニッションスイッチがONとなったときにスタートし、所定サイクルで繰り返されるようになっている。
【0050】
車両のイグニッションスイッチがONにされると、図4に示すフローチャートのステップSA1に進み、エアコン制御ユニット2の空調制御部2aは、上記センサ37、65〜67、74やスイッチ68〜73からの信号を読み込む。その後、ステップSA2に進んで、目標車室内温度を演算する。目標車室内温度は、温度設定スイッチ68の設定温度を含む空調条件に基づいて決定されるようになっている。そして、空調制御部2aにおいては、エバセンサ37やエンジン水温センサ74等の入力信号を考慮してエアミックスドア46の開度を演算し、エアミックスアクチュエータ48を作動させてエアミックスドア46を所望の開度とする。
【0051】
しかる後、ステップSA3に進んで、吹出モードを選択し、この選択した吹出モードとなるように吹出モードアクチュエータ60を作動させるとともに、導入モードを選択し、この選択した導入モードとなるように内外気アクチュエータ28を作動させる。このステップSA3が本発明の動作モード切替手段である。尚、吹出モードと導入モードとは、同じタイミングで切り替えるようにしてもよいし、異なるタイミングで切り替えるようにしてもよい。
【0052】
ステップSA3において吹出モードを選択する際には、夏場のように、外気センサ65により検出された外気温度が例えば約30℃以上で高く強めの冷房が必要な場合には、吹出モードをベントモードにし、導入モードを内気導入モードとする。吹出モードをベントモードにすることで、冷風が乗員の上半身に向けて直接供給され、また、導入モードを内気導入モードとすることで、車室外の空気よりも目標車室内温度に近い車室内の空気をケース20に取り込むことができ、効率の良い冷房が可能になる。また、外気温度が例えば約20℃で低く比較的弱めの冷房でよい場合には、吹出モードをバイレベルモードにし、導入モードを外気導入モードとする。一方、冬場のように、外気センサ65により検出された外気温度が例えば約10℃以下の低温で暖房が必要な場合には、吹出モードをヒートモードやヒートデフモードにし、導入モードを外気導入モードとする。導入モードを外気導入モードとすることで、乾燥した外気を車室に取り込んでウインドガラスの曇りが防止される。
【0053】
次いで、ステップSA4に進み、送風量が設定され、この設定された送風量となるように、ブロアモータ33に印加される電圧が変更される。この送風量は、内気センサ66で検出された車室内温度と目標車室内温度との差が大きいほど増加する。そして、ステップSA5に進み、コンプレッサー36を作動させるか停止させるかを決定する。ステップSA5では、エアコンスイッチ70により設定されたエアコンモードがACモード又はECOモードとされているときにはコンプレッサー36を作動させ、OFFモードとされているときには、停止させる。ステップSA5においてコンプレッサー36を作動させるとした場合には、コンプレッサーON信号がエアコン制御ユニット2からエンジン制御ユニット3に出力され、このエンジン制御ユニット3によりコンプレッサー36の電磁クラッチが接続状態とされる。一方、停止させるとした場合には、コンプレッサーOFF信号がエアコン制御ユニット2からエンジン制御ユニット3に出力され、電磁クラッチが断状態となる。
【0054】
以上のステップSA1からステップSA5での制御は空調制御部2aで行われており、ステップSA5に続くステップSA6での制御は、自動停止制御部2bにおいて行われる。この自動停止制御部2bでは、まず、図5のフローチャートに示すように、ステップSB1において、エアコンモード、吹出モード及び外気温度に基づいて第1アイドリング停止時間(ISMAX)が設定される。詳しくは、図6のフローチャートに示すように、まず、ステップSC1において、エアコンスイッチ70により設定されたエアコンモードが判定される。エアコンモードがACモード又はECOモードであると判定されると、ステップSC2に進んで吹出モードがどのモードにあるか判定される。ステップSC1においてエアコンモードがOFFモードであると判定されて進んだステップSC3においても、吹出モードがどのモードにあるか判定される。
【0055】
ステップSC2において、吹出モードがベント(VENT)モードであると判定されると、ステップSC4に進む。このステップSC4においては、エアコンモードがACモード又はECOモードで、かつ吹出モードがベントモードであるときのデータテーブルを読み込み、外気センサ65で検出された外気温度に基づいて第1アイドリング停止時間(ISMAX)を得る。このデータテーブルは、グラフにすると、図7に示すようになり、外気温度が高くなるほど第1アイドリング停止時間(ISMAX)が短くなるように構成されている。これは、外気温度が高くなるほど高い冷房能力が要求されることに対応して、補機の駆動時間を短くするためである。具体的には、外気温度が例えば30℃以下では、30℃よりも高いときと比べて、第1アイドリング停止時間(ISMAX)が長く設定される。
【0056】
ステップSC2において、吹出モードがバイレベル(B/L)モードであると判定されると、ステップSC5に進む。このステップSC5においては、エアコンモードがACモード又はECOモードで、かつ吹出モードがバイレベルモードであるときのデータテーブルを読み込み、外気センサ65で検出された外気温度に基づいて第1アイドリング停止時間(ISMAX)を得る。このデータテーブルは、グラフにすると、図8に示すようになり、外気温度が20℃付近にあるときに第1アイドリング停止時間(ISMAX)が最も長くなるように構成されている。また、このデータテーブルでは、外気温度が−10℃以下では、−10℃よりも高い場合に比べて、第1アイドリング停止時間(ISMAX)が短く設定され、また、外気温度が20℃以上の場合には、外気温度が高くなるほど、第1アイドリング停止時間(ISMAX)が短くなる。具体的には、外気温度が例えば20℃以上30℃以下の範囲にあるときには、30℃よりも高いときと比べて、第1アイドリング停止時間(ISMAX)が長く設定される。
【0057】
ステップSC2において、吹出モードがヒート(HEAT)モード又はヒートデフ(H/D)モードであると判定されると、ステップSC6に進む。このステップSC6においては、エアコンモードがACモード又はECOモードで、かつ吹出モードがヒートモード又はヒートデフモードであるときのデータテーブルを読み込み、外気センサ65で検出された外気温度に基づいて第1アイドリング停止時間(ISMAX)を得る。このデータテーブルは、グラフにすると、図9に示すようになり、外気温度が約−5℃以下の低い領域では、−5℃よりも高い場合に比べて、第1アイドリング停止時間(ISMAX)が短く設定され、また、約35℃以上の高い領域では、第1アイドリング停止時間(ISMAX)が最長時間となるように構成されている。
【0058】
また、上記ステップSC3において、吹出モードがベントモードであると判定されると、ステップSC7に進む。このステップSC7においては、エアコンモードがOFFモードで、かつ吹出モードがベントモードであるときのデータテーブルを読み込み、外気センサ65で検出された外気温度に基づいて第1アイドリング停止時間(ISMAX)を得る。このデータテーブルは、グラフにすると、図10に示すようになり、外気温度に関係なくアイドリング停止時間が最長時間となるように構成されている。
【0059】
上記ステップSC3において、吹出モードがバイレベルモードであると判定されると、ステップSC8に進む。このステップSC8においては、エアコンモードがOFFモードで、かつ吹出モードがバイレベルモードであるときのデータテーブルを読み込み、外気センサ65で検出された外気温度に基づいて第1アイドリング停止時間(ISMAX)を得る。このデータテーブルは、グラフにすると、図11に示すようになり、外気温度が約20℃以上では、第1アイドリング停止時間(ISMAX)が最長時間となり、約−20℃以下では、−20℃よりも高い場合に比べて短くなるように構成されている。
【0060】
上記ステップSC3において、吹出モードがヒートモード又はヒートデフモードであると判定されると、エアコンモードがOFFモードで、かつ吹出モードがヒートモード又はヒートデフモードであるときのデータテーブルを読み込み、外気センサ65で検出された外気温度に基づいて第1アイドリング停止時間(ISMAX)を得る。このデータテーブルは、グラフにすると、図12に示すようになり、外気温度が低い領域では、アイドリング停止時間が短く、高い領域では長くなるように構成されている。
【0061】
つまり、吹出モードは、図4のフローチャートにおけるステップSA3において、強い冷房時、弱い冷房時及び暖房時に適した吹出モードとされるので、この吹出モードを検出することで、現在の車室の空調状態が得られる。そして、図6のフローチャートにおけるステップSC2及びSC3において吹出モードが検出され、吹出モード毎に設けられているデータテーブルによって、吹出モード別に第1アイドリング停止時間(ISMAX)が設定される。このように吹出モードを検出し吹出モードに基づいて第1アイドリング停止時間(ISMAX)を設定することにより、第1アイドリング停止時間(ISMAX)は、内気センサ66に設けられている時定数の影響を受けることなく、現在の車室の空調状態に適応した時間となる。上記ステップSC2及びSC3が本発明の動作モード検出手段である。尚、図示しないが、ステップSC2及びステップSC3において、吹出モードがベントモード、バイレベルモード、ヒートモード及びヒートデフモード以外のデフロスタモードである場合には、ENDに進み、第1アイドリング停止時間(ISMAX)を、設定可能な範囲で最も短い時間とする。
【0062】
このようにして、第1アイドリング停止時間(ISMAX)が設定された後、図5のフローチャートのステップSB2に進み、吹出モード及び日射量により第2アイドリング停止時間(ISSRA)が設定される。詳しくは、図13のフローチャートに示すように、まず、ステップSD1において、吹出モードがどのモードにあるか判定される。
【0063】
上記ステップSD1において、吹出モードがベントモードであると判定されると、ステップSD2に進む。このステップSD2においては、吹出モードがベントモードであるときのデータテーブルを読み込み、日射センサ67で検出された日射量に基づいて第2アイドリング停止時間(ISSRA)を得る。このデータテーブルは、グラフにすると、図14に示すようになり、日射量が多くなるほど第2アイドリング停止時間(ISSRA)が長くなるように構成されている。
【0064】
上記ステップSD1において、吹出モードがバイレベルモードであると判定されると、ステップSD3に進む。このステップSD3においては、吹出モードがバイレベルモードであるときのデータテーブルを読み込み、日射センサ67で検出された日射量に基づいて第2アイドリング停止時間(ISSRA)を得る。データテーブルは、グラフにすると、図15に示すようになり、日射量が多くなるほど第2アイドリング停止時間(ISSRA)が長くなるように構成され、上記図14に示すデータテーブルに比べて、第2アイドリング停止時間(ISSRA)の最大値が小さく設定されている。
【0065】
上記ステップSD1において、吹出モードがヒートモード又はヒートデフモードであると判定されると、ステップSD4に進む。このステップSD4においては、吹出モードがヒートモード又はヒートデフモードであるときのデータテーブルを読み込み、日射センサ67で検出された日射量に基づいて第2アイドリング停止時間(ISSRA)を得る。データテーブルは、グラフにすると、図16に示すようになり、日射量が多くなるほどアイドリング停止時間が長くなるように構成されている。このデータテーブルは、上記図15に示すデータテーブルと略同じである。
【0066】
つまり、上記第1アイドリング停止時間(ISMAX)を設定する場合と同様に、吹出モードを検出し、これら吹出モード毎に設けられているデータテーブルによって、吹出モード別に第2アイドリング停止時間(ISSRA)が設定されるので、第2アイドリング停止時間(ISSRA)は、内気センサ66に設けられている時定数の影響を受けることなく、現在の車室の空調状態に適応した時間となる。第2アイドリング停止時間(ISSRA)を設定するモジュールのフローチャートにおけるステップSD1が、本発明の動作モード検出手段を構成している。尚、図示しないが、ステップSD1において、吹出モードがベントモード、バイレベルモード、ヒートモード及びヒートデフモード以外のデフロスタモードである場合には、ENDに進み、第2アイドリング停止時間(ISSRA)を、設定可能な範囲で最も短い時間とする。
【0067】
このようにして、第2アイドリング停止時間(ISSRA)が設定された後、図5のフローチャートのステップSB3に進み、吹出モード及び導入モードにより第3アイドリング停止時間(ISRF)が設定される。詳しくは、図17のフローチャートに示すように、まず、ステップSE1において、導入モードがどのモードにあるか判定される。このステップSE1において、導入モードが内気導入(REC)モードとされると、ステップSE2に進む。このステップSE2では、吹出モードがどのモードにあるか判定される。
【0068】
上記ステップSE2において、吹出モードがベントモードであると判定されると、ステップSE3に進む。このステップSE3においては、導入モードが内気導入モードで、かつ吹出モードがベントモードであるときのデータテーブルを読み込み、第3アイドリング停止時間(ISRF)を得る。
【0069】
上記ステップSE2において、吹出モードがバイレベルモードであると判定されると、ステップSE4に進む。このステップSE4においては、導入モードが内気導入モードで、かつ吹出モードがバイレベルモードであるときのデータテーブルを読み込み、第3アイドリング停止時間(ISRF)を得る。
【0070】
上記ステップSE2において、吹出モードがヒートモード又はヒートデフモードであると判定されると、ステップSE5に進む。このステップSE5においては、導入モードが内気導入モードで、かつ吹出モードがヒートモード又はヒートデフモードであるときのデータテーブルを読み込み、第3アイドリング停止時間(ISRF)を得る。尚、図示しないが、ステップSE2において、吹出モードがベントモード、バイレベルモード、ヒートモード及びヒートデフモード以外のデフロスタモードである場合には、ENDに進み、第3アイドリング停止時間(ISRF)を、設定可能な範囲で最も短い時間とする。
【0071】
一方、上記ステップSE1において、外気導入モードであると判定されると、ステップSE6に進む。このステップSE6では、第3アイドリング停止時間(ISRF)を、設定可能な範囲で最も短い時間とする。
【0072】
つまり、上記第3アイドリング停止時間(ISRF)を設定するモジュールのフローチャートにおけるステップSE1が内外気モードを検出する動作モード検出手段を構成し、また、ステップSE2が吹出モードを検出する動作モード検出手段を構成している。そして、内気導入モードと外気導入モードとで別のデータテーブルが設けられていることによって、導入モード別に第3アイドリング停止時間(ISRF)が設定される。さらに、吹出モード毎にデータテーブルが設けられていることによって、吹出モード別に第3アイドリング停止時間(ISRF)が設定される。これにより、第3アイドリング停止時間(ISRF)は、内気センサ66に設けられている時定数の影響を受けることなく、現在の車室の空調状態に適応した時間となる。
【0073】
このようにして、第3アイドリング停止時間(ISRF)が設定された後、図5のフローチャートのステップSB4に進み、吹出モードがヒート又はヒートデフモードであるか否かが判定される。ステップSB4において吹出モードがヒート又はヒートデフモードであるYESと判定されて進んだSB5では、第1アイドリング停止時間(ISMAX)、第2アイドリング停止時間(ISSRA)及び第3アイドリング停止時間(ISRF)を加算してアイドリング停止時間(IS)を得る計算処理を行う。
【0074】
上記ステップSB5では、吹出モードがヒート吹出口51を開いていて車室を暖房している状態であり、従って、日射量が多いと乗員は温かく感じフィーリングが良くなる。このため、日射量に基づいて設定された第2アイドリング停止時間(ISSRA)を加算してアイドリング停止時間(IS)を長くしても乗員の快適性が損なわれにくい。
【0075】
一方、上記ステップSB4において吹出モードがヒート又はヒートデフモード以外のNOであると判定されて進んだステップSB6では、吹出モードがベント又はバイレベルモードであるか否かが判定される。ステップSB6において吹出モードがベント又はバイレベルモードであるYESと判定されて進んだステップSB7では、第1アイドリング停止時間(ISMAX)から第2アイドリング停止時間(ISSRA)を差し引いた値に第3アイドリング停止時間(ISRF)を加算する計算処理を行う。
【0076】
上記ステップSB7では、吹出モードがベント吹出口50を開いていて車室を冷房している状態であり、従って、日射量が多いと乗員は暑く感じフィーリングが悪くなる。このため、日射量に基づいて設定された第2アイドリング停止時間(ISSRA)を減算してアイドリング停止時間(IS)を短くしている。
【0077】
ステップSB6においてNOと判定されて吹出モードがデフロスタモードである場合には、ステップSB13に進んでアイドリング停止禁止信号の出力値を設定する。その後、図4に示すフローチャートのステップSA7に進んでアイドリング停止禁止信号の出力制御が行われる。このアイドリング停止禁止信号が入力された車両制御ユニット6は、エンジンのアイドリング停止を解除、即ち、エンジンがアイドリング停止状態にあれば始動させる。
【0078】
ステップSB5又はSB7を経て進んだステップSB8においては、アイドリング停止時間(IS)が最短時間(ISMIN)以上であるか否かが判定される。最短時間(ISMIN)は、アイドリング停止直後の再始動によってエンジンや始動装置が損傷しないように、アイドリング停止直後から所定時間経過してからエンジンが始動されるようにするための短い時間である。この最短時間(ISMIN)は、エンジンや始動装置を保護するのに十分な時間であればよい。
【0079】
ステップSB8において、アイドリング停止時間(IS)が最短時間(ISMIN)以上のYESであればステップSB9、SB10へ進み、ステップSB5又はステップSB7で計算したアイドリング停止時間(IS)を選択しアイドリング停止時間として確定する。一方、ステップSB8において、アイドリング停止時間(IS)が最短時間(ISMIN)未満のNOと判定されると、ステップSB11、SB10へ進み、最短時間(ISMIN)をアイドリング停止時間として確定する。
【0080】
ステップSB10に続くステップSB12においては、外気センサ65で検出された外気温度がTa1以上であるか否かが判定される。Ta1は、例えば氷点下近傍の低い値に設定されており、従って、ステップSB12においては、冬場で強めの暖房が必要な状況であるか否かが判定される。ステップSB12において、外気温度がTa1未満であるNOと判定されると、強めの暖房を行うための熱源を確保すべく、ステップSB13に進んでアイドリング停止禁止信号の出力値を設定する。その後、図4に示すフローチャートのステップSA7に進んでアイドリング停止禁止信号の出力制御が行われる。一方、ステップSB12において、外気温度がTa1以上であるYESと判定されると、ステップSB15に進む。
【0081】
上記ステップSB15においては、水温センサ74で検出されたエンジン冷却水温がTw1以上であるか否かが判定される。ステップSB15において、エンジン冷却水温がTw1未満であるNOと判定されると、エンジンの暖機が不十分であるとして、ステップSB13に進んでアイドリング停止禁止信号の出力値を設定する。その後、図4に示すフローチャートのステップSA7に進んでアイドリング停止禁止信号の出力制御が行われる。一方、ステップSB15において、エンジン冷却水温がTw1以上であるYESと判定されると、ステップSB16に進む。
【0082】
上記ステップSB16においては、エアコン優先スイッチ73がONであるか否かが判定される。ステップSB16において、エアコン優先スイッチ73がONであるYESと判定されると、乗員が空調を優先したい状況であるため、ステップSB13に進んでアイドリング停止禁止信号の出力値を設定する。その後、図4に示すフローチャートのステップSA7に進んでアイドリング停止禁止信号の出力制御が行われる。一方、ステップSB16において、エアコン優先スイッチ73がOFFであるNOと判定されると、ステップSB17に進む。
【0083】
上記ステップSB17においては、目標車室内温度から内気センサ66で検出された車室内温度を差し引いた値が−5℃以上であるか否かが判定される。ステップSB17でNOと判定されると、目標車室内温度と車室内温度との差が大きく車室が快適な状態となっていないため、ステップSB13に進んでアイドリング停止禁止信号の出力値を設定する。その後、図4に示すフローチャートのステップSA7に進んでアイドリング停止禁止信号の出力制御が行われる。一方、ステップSB17でYESと判定されると、ステップSB18に進む。
【0084】
上記ステップSB18においては、目標車室内温度から内気センサ66で検出された車室内温度を差し引いた値が+5℃以下であるか否かが判定される。ステップSB18でNOと判定されると、目標車室内温度と車室内温度との差が大きく車室が快適な状態となっていないため、ステップSB13に進んでアイドリング停止禁止信号の出力値を設定する。その後、図4に示すフローチャートのステップSA7に進んでアイドリング停止禁止信号の出力制御が行われる。一方、ステップSB18でYESと判定されると、ステップSB19に進む。
【0085】
上記ステップSB19においては、エンジンが停止中であるか否かが判定される。ステップSB19でYESと判定されると、ステップSB20に進み、アイドリング停止時間のカウントダウンが開始される。そして、ステップSB21に進み、アイドリング停止時間が0であるか否かが判定される。ステップSB21において、アイドリング停止時間が0であるYESと判定されると、ステップSB13に進んでアイドリング停止禁止信号の出力値を設定する。その後、図4に示すフローチャートのステップSA7に進んでアイドリング停止禁止信号の出力制御が行われる。一方、ステップSB21においてNOと判定されると、ステップSB22に進んでアイドリング停止許可信号の出力値を設定する。その後、図4に示すフローチャートのステップSA7に進んでアイドリング停止許可信号の出力制御が行われる。これにより、車両の停止条件が成立したときに、エンジンのアイドリングが上記ステップSB10で確定した時間だけ停止される。上記自動停止制御部2b及び車両制御ユニット6が、本発明のエンジン自動停止手段である。また、自動停止制御部2bは、ファンスイッチ72がOFFであるときのように空調装置1が作動していないときには、アイドリング停止許可信号を出力する。
【0086】
以上説明したように、この実施形態に係る車両の制御装置Aによれば、空調装置1の吹出モード及び空気の導入モードを検出し、これらモードに基づいてエンジンのアイドリング停止時間を設定するようにしたので、内気センサ66の時定数の影響を受けることなく、現在の車室の空調状態に適したアイドリング停止時間を得ることができる。これにより、乗員に快適な空調を実現できるので、アイドリング停止機能が乗員により解除され難くなり、燃料消費量及び排気ガス排出量の低減効果を十分に得ることができる。
【0087】
また、空調装置1の吹出モードを検出し、この吹出モード別にアイドリング停止時間を設定するようにしたので、現在の車室の空調状態を的確に把握して、その空調状態に適したエンジンのアイドリング停止時間を設定することができ、車室の空調をより一層快適にできる。
【0088】
また、外気温度が所定温度、例えば約25℃以下で、しかも、吹出モードがベント吹出口50を開く吹出モードのように、弱めの冷房が要求されているときに、エンジンのアイドリング停止時間を、外気温度が25℃よりも高いときと比べて長く設定することができる。これにより、乗員の快適性を損なうことなく、燃料消費量及び排気ガス排出量を一層低減できる。
【0089】
また、導入モードを検出することで、現在の車室の空調状態を的確に把握して、その空調状態に適したエンジンのアイドリング停止時間を設定することが可能になり、車室の空調をより一層快適にできる。
【0090】
また、車室の空調状態に影響を及ぼす日射量によってアイドリング停止時間が変更されるので、車室の空調をより一層快適にできる。
【0091】
また、エンジンのアイドリング停止時間を最短時間(ISMIN)以上としたので、アイドリング停止直後に再始動されることは無く、エンジンや始動装置の損傷を防止できる。
【0092】
尚、自動停止手段は、エアコン制御ユニット2やエンジン制御ユニット3で構成してもよく、また、これら複数のユニットを組み合わせた装置で構成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0093】
以上説明したように、本発明は、エンジンにより駆動される補機から供給される熱媒体との熱交換によって車室内への送風空気を加熱又は冷却する熱交換器を有する車両において、車両の停止時にエンジンのアイドリングを自動停止させるようにする場合に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】空調装置の概略構造を説明する図である。
【図2】車室前側の斜視図である。
【図3】本発明の実施形態に係る車両の制御装置の構成を示すブロック図である。
【図4】エアコン制御ユニットの制御動作を示すフローチャートである。
【図5】アイドリング停止制御モジュールの制御動作を示すフローチャートである。
【図6】第1アイドリング停止時間(ISMAX)設定モジュールの制御動作を示すフローチャートである。
【図7】エアコンモードがAC又はECOモードで、かつ吹出モードがベントモードであるときのデータテーブルをグラフ化した図である。
【図8】エアコンモードがAC又はECOモードで、かつ吹出モードがバイレベルモードであるときのデータテーブルをグラフ化した図である。
【図9】エアコンモードがAC又はECOモードで、かつ吹出モードがヒートモード又はヒートデフモードであるときのデータテーブルをグラフ化した図である。
【図10】エアコンモードがOFFモードで、かつ吹出モードがベントモードであるときのデータテーブルをグラフ化した図である。
【図11】エアコンモードがOFFモードで、かつ吹出モードがバイレベルモードであるときのデータテーブルをグラフ化した図である。
【図12】エアコンモードがOFFモードで、かつ吹出モードがヒート又はヒートデフモードであるときのデータテーブルをグラフ化した図である。
【図13】第2アイドリング停止時間(ISSRA)設定モジュールの制御動作を示すフローチャートである。
【図14】吹出モードがベントモードであるときのデータテーブルをグラフ化した図である。
【図15】吹出モードがバイレベルモードであるときのデータテーブルをグラフ化した図である。
【図16】吹出モードがヒート又はヒートデフモードであるときのデータテーブルをグラフ化した図である。
【図17】第3アイドリング停止時間(ISRF)設定モジュールの制御動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0095】
A 車両の制御装置
1 空調装置
2 エアコン制御ユニット
2a 空調制御部
2b 自動停止制御部
3 エンジン制御ユニット
6 車両制御ユニット
20 ケース
25 内気導入口
26 外気導入口
35 エバポレータ
36 コンプレッサ
43 ヒータコア
50 ベント吹出口
51 ヒート吹出口
52 デフロスタ吹出口
65 外気センサ(外気温度検出手段)
67 日射センサ(日射量検出手段)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のエンジンによって駆動される補機により供給される熱媒体と車室への送風空気とを熱交換させる熱交換器を有する空調装置と、車両の停止時に上記エンジンのアイドリングを停止させるエンジン自動停止手段とを備えた車両の制御装置において、
上記空調装置の動作モードを、該空調装置が有する複数の動作モードの中から車室の空調状態に適した動作モードに切り替える動作モード切替手段と、
動作中の上記空調装置がどの動作モードにあるかを検出する動作モード検出手段とを備え、
上記エンジン自動停止手段は、上記動作モード検出手段で検出された動作モードに基づいて、上記エンジンのアイドリングを停止させておく時間を設定することを特徴とする車両の制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両の制御装置において、
空調装置が有するケースには、熱交換器を通過した空気が吹き出すベント吹出口、デフロスタ吹出口及びヒート吹出口が形成され、
動作モード切替手段は、上記ベント吹出口、デフロスタ吹出口及びヒート吹出口を開閉することで動作モードとしての吹出モードを切り替えるように構成されていることを特徴とする車両の制御装置。
【請求項3】
請求項2に記載の車両の制御装置において、
車両周囲の外気温度を検出する外気温度検出手段を備え、
エンジン自動停止手段は、上記外気温度検出手段により検出された外気温度が所定温度以下で、かつ、動作モード検出手段により検出された吹出モードがベント吹出口を開く吹出モードであるときには、上記外気温度検出手段により検出された外気温度が所定温度よりも高いときと比べて、エンジンのアイドリングを停止させておく時間を長く設定することを特徴とする車両の制御装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1つに記載の車両の制御装置において、
空調装置が有するケースには、送風用の空気を車室内から該ケース内へ導入するための内気導入口と、車室外から該ケース内へ導入するための外気導入口とが形成され、
動作モード切替手段は、上記内気導入口及び外気導入口を開閉することで動作モードとしての導入モードを切り替えるように構成されていることを特徴とする車両の制御装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1つに記載の車両の制御装置において、
車室内に差し込んでくる日射量を検出する日射量検出手段を備え、
エンジン自動停止手段は、上記日射量検出手段により検出された日射量に基づいて、エンジンのアイドリングを停止させておく時間を変更することを特徴とする車両の制御装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1つに記載の車両の制御装置において、
エンジン自動停止手段は、エンジンのアイドリングを停止させておく時間を所定時間以上とすることを特徴とする車両の制御装置。
【請求項1】
車両のエンジンによって駆動される補機により供給される熱媒体と車室への送風空気とを熱交換させる熱交換器を有する空調装置と、車両の停止時に上記エンジンのアイドリングを停止させるエンジン自動停止手段とを備えた車両の制御装置において、
上記空調装置の動作モードを、該空調装置が有する複数の動作モードの中から車室の空調状態に適した動作モードに切り替える動作モード切替手段と、
動作中の上記空調装置がどの動作モードにあるかを検出する動作モード検出手段とを備え、
上記エンジン自動停止手段は、上記動作モード検出手段で検出された動作モードに基づいて、上記エンジンのアイドリングを停止させておく時間を設定することを特徴とする車両の制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両の制御装置において、
空調装置が有するケースには、熱交換器を通過した空気が吹き出すベント吹出口、デフロスタ吹出口及びヒート吹出口が形成され、
動作モード切替手段は、上記ベント吹出口、デフロスタ吹出口及びヒート吹出口を開閉することで動作モードとしての吹出モードを切り替えるように構成されていることを特徴とする車両の制御装置。
【請求項3】
請求項2に記載の車両の制御装置において、
車両周囲の外気温度を検出する外気温度検出手段を備え、
エンジン自動停止手段は、上記外気温度検出手段により検出された外気温度が所定温度以下で、かつ、動作モード検出手段により検出された吹出モードがベント吹出口を開く吹出モードであるときには、上記外気温度検出手段により検出された外気温度が所定温度よりも高いときと比べて、エンジンのアイドリングを停止させておく時間を長く設定することを特徴とする車両の制御装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1つに記載の車両の制御装置において、
空調装置が有するケースには、送風用の空気を車室内から該ケース内へ導入するための内気導入口と、車室外から該ケース内へ導入するための外気導入口とが形成され、
動作モード切替手段は、上記内気導入口及び外気導入口を開閉することで動作モードとしての導入モードを切り替えるように構成されていることを特徴とする車両の制御装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1つに記載の車両の制御装置において、
車室内に差し込んでくる日射量を検出する日射量検出手段を備え、
エンジン自動停止手段は、上記日射量検出手段により検出された日射量に基づいて、エンジンのアイドリングを停止させておく時間を変更することを特徴とする車両の制御装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1つに記載の車両の制御装置において、
エンジン自動停止手段は、エンジンのアイドリングを停止させておく時間を所定時間以上とすることを特徴とする車両の制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2008−138622(P2008−138622A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−327020(P2006−327020)
【出願日】平成18年12月4日(2006.12.4)
【出願人】(000152826)株式会社日本クライメイトシステムズ (154)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年12月4日(2006.12.4)
【出願人】(000152826)株式会社日本クライメイトシステムズ (154)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】
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