説明

車両の制御装置

【課題】エンジンの冷却性能を保ちつつ、停車時にエンジンを運転する。
【解決手段】エンジンは、冷却水の温度に基づいてフィードバック制御される。停車中に、冷却水の温度と予め定められた上限温度との差が大きいほど、エンジンの運転状態が、効率が予め定められた効率となるときの運転状態に近づくように、エンジンが制御される。冷却水の温度と上限温度との差が小さいほど、たとえば、出力が低下するようにエンジンが制御される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の制御装置に関し、特に、停車時に内燃機関の動力を用いて発電した電力を車両の外部に供給する場合に内燃機関を制御する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、内燃機関と電動モータとが搭載され、少なくともいずれか一方からの駆動力により走行可能なハイブリッド車両が知られている。ハイブリッド車両は、内燃機関からの動力を用いて、電動モータまたは発電機により発電することができる。発電された電力は、主に、ハイブリッド車両の走行に費やされる。また、特開平2−142329号公報(特許文献1)に記載のように、ハイブリッド車両に搭載されている発電機を家庭用の非常電力として使用することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平2−142329号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、停車中は、走行中に比べて、空気によるエンジンの冷却性能が低下する。しかしながら、特開平2−142329号公報には、低下した冷却性能を補う方法については何等記載されていない。
【0005】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであって、その目的は、内燃機関の冷却性能を保ちつつ、停車時に内燃機関を運転することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明に係る車両の制御装置は、内燃機関と、内燃機関により駆動されて発電する発電機とが搭載され、停車中に発電機が発電した電力を外部の機器に供給可能な車両の制御装置である。制御装置は、内燃機関の冷却水の温度を検出するための手段と、停車中に、冷却水の温度と予め定められた上限温度との差が大きいほど、内燃機関の運転状態が、内燃機関の効率が予め定められた効率となるときの運転状態に近づくように、冷却水の温度に基づいて内燃機関を制御するための制御手段とを備える。
【0007】
この構成によると、内燃機関は、冷却水の温度に基づいてフィードバック制御される。内燃機関は、停車中に、冷却水の温度と予め定められた上限温度との差が大きいほど、内燃機関の運転状態が、内燃機関の効率が予め定められた効率となるときの運転状態に近づくように制御される。これにより、内燃機関の冷却水の温度が低い場合には、所望の効率を実現する運転状態で内燃機関を運転することができる。一方、内燃機関の冷却水の温度が高い場合には、たとえば内燃機関が冷却水へ排出する熱量が減少するように運転状態を変化させることができる。そのため、冷却水の温度上昇を制限することができる。その結果、内燃機関の冷却性能を保ちつつ、停車時に内燃機関を運転することができる。
【0008】
第2の発明に係る車両の制御装置においては、請求項1の発明の構成に加えて、制御手段は、冷却水の温度と上限温度との差が小さいほど、出力が低下するように内燃機関を制御する。
【0009】
この構成によると、冷却水の温度が高いほど、内燃機関の出力が低下される。これにより、内燃機関が冷却水へ排出する熱量を低減することができる。そのため、冷却水の温度上昇を制限することができる。
【0010】
第3の発明に係る車両の制御装置は、請求項1または2の発明の構成に加えて、車両が停車し、かつ発電機が発電した電力を車両の外部の機器に供給している場合、車両の走行中に比べて、上限温度が高くなるように変更するための手段をさらに備える。
【0011】
この構成によると、車両が停車し、かつ発電機が発電した電力を車両の外部の機器に供給している間、上限温度が高くされる。これにより、所望の効率を実現する運転状態で内燃機関を運転する領域を大きくすることができる。
【0012】
第4の発明に係る車両の制御装置は、請求項1〜3のいずれかの発明の構成に加えて、予め定められた効率は、内燃機関の最高効率である。
【0013】
この構成によると、効率が最も高くなるように内燃機関を制御することができる。そのため、内燃機関が冷却水に捨てる熱量を最小限にすることができる。その結果、冷却水の温度上昇を必要最小限に制限することができる。
【0014】
第5の発明に係る車両の制御装置においては、請求項1の発明の構成に加えて、制御手段は、内燃機関の燃料消費率を考慮して定められた条件に従って運転状態が変化するように、内燃機関を制御する。
【0015】
この構成によると、燃料消費率に関して定められた条件を満たすように運転状態が変化する。そのため、たとえば、燃料消費率が最小限となるように運転状態を変化させることができる。その結果、燃料消費率を必要最小限にすることができる。
【0016】
第6の発明に係る車両の制御装置は、請求項1の発明の構成に加えて、車両の走行中、車両の騒音および振動のうちの少なくともいずれか一方を考慮して定められた第1の条件に従って運転状態が変化するように内燃機関を制御するための手段をさらに備える。制御手段は、車両が停車し、かつ発電機が発電した電力を車両の外部の機器に供給している場合、第1の条件の代わりに、内燃機関の燃料消費率を考慮して定められた第2の条件に従って運転状態が変化するように、内燃機関を制御する。
【0017】
この構成によると、車両の走行中は、車両の騒音および/または振動に関して定められた条件を満たすように運転状態が変化する。そのため、たとえば車両の騒音および/または振動が許容範囲に収まるように運転状態を変化させることができる。一方、車両が停車し、かつ車両から外部の機器に電力を供給している場合は、運転者等が車両に搭乗していないため、騒音および振動を低減する必要性が小さい。したがって、車両が停車し、かつ発電機が発電した電力を車両の外部の機器に供給している場合、車両の騒音および/または振動に関して定められた条件の代わりに、内燃機関の燃料消費率に関して定められた条件を満たすように運転状態が変化する。そのため、騒音および振動よりも、燃料消費率を優先することができる。たとえば、燃料消費率が最小限となるように運転状態を変化させることができる。その結果、燃料消費率を必要最小限にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】プラグインハイブリッド車両を示す概略構成図である。
【図2】プラグインハイブリッド車両の電気システムを示す図(その1)である。
【図3】プラグインハイブリッド車両の電気システムを示す図(その2)である。
【図4】プラグインハイブリッド車両の電気システムを示す図(その3)である。
【図5】プラグインハイブリッド車両の電気システムを示す図(その4)である。
【図6】ECUの機能ブロック図である。
【図7】エンジンの効率が最高効率となる運転状態などを示す図である。
【図8】冷却水の温度とエンジンの出力PEとを示す図(その1)である。
【図9】冷却水の温度とエンジンの出力PEとを示す図(その2)である。
【図10】ECUが実行するプログラムの制御構造を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同一である。したがって、それらについての詳細な説明は繰返さない。
【0020】
図1を参照して、プラグインハイブリッド車両には、エンジン100と、第1MG(Motor Generator)110と、第2MG120と、動力分割機構130と、減速機140と、バッテリ150とが搭載される。本実施の形態におけるプラグインハイブリッド車両には、エンジン100および電動モータ(第2MG120)が駆動源として搭載される。
【0021】
エンジン100、第1MG110、第2MG120、バッテリ150は、ECU(Electronic Control Unit)170により制御される。なお、ECU170は複数のECUに分割するようにしてもよい。
【0022】
この車両は、エンジン100および第2MG120のうちの少なくともいずれか一方からの駆動力により走行する。すなわち、エンジン100および第2MG120のうちのいずれか一方もしくは両方が、運転状態に応じて駆動源として自動的に選択される。
【0023】
エンジン100は、内燃機関である。燃料と空気の混合気を燃焼室内で燃焼することによって、出力軸であるクランクシャフトが回転する。エンジン100から排出される排気ガスは、触媒102によって浄化された後、車外に排出される。
【0024】
エンジン100は、冷却水を用いて冷却される。冷却水の温度は温度センサ104により検出される。温度センサ104の検出結果を表わす信号は、ECU170に入力される。通常、エンジン100は、冷却水の温度が予め定められた上限温度以下になるように制御される。たとえば、冷却水の温度が上限温度に達すると、ラジエータファンが回転するように制御される。
【0025】
エンジン100、第1MG110および第2MG120は、動力分割機構130を介して接続されている。エンジン100が発生する動力は、動力分割機構130により、2経路に分割される。一方は減速機140を介して前輪160を駆動する経路である。もう一方は、第1MG110を駆動させて発電する経路である。
【0026】
第1MG110は、U相コイル、V相コイルおよびW相コイルを備える、三相交流回転電機である。第1MG110は、動力分割機構130により分割されたエンジン100の動力により発電する。第1MG110により発電された電力は、車両の走行状態や、バッテリ150の残存容量の状態に応じて使い分けられる。たとえば、通常走行時では、第1MG110により発電された電力はそのまま第2MG120を駆動させる電力となる。一方、バッテリ150の残存容量(SOC:State Of Charge)が予め定められた値よりも低い場合、第1MG110により発電された電力は、後述するインバータにより交流から直流に変換される。その後、後述するコンバータにより電圧が調整されてバッテリ150に蓄えられる。
【0027】
第1MG110が発電機として作用している場合、第1MG110は負のトルクを発生している。ここで、負のトルクとは、エンジン100の負荷となるようなトルクをいう。第1MG110が電力の供給を受けてモータとして作用している場合、第1MG110は正のトルクを発生する。ここで、正のトルクとは、エンジン100の負荷とならないようなトルク、すなわち、エンジン100の回転をアシストするようなトルクをいう。なお、第2MG120についても同様である。
【0028】
第2MG120は、U相コイル、V相コイルおよびW相コイルを備える、三相交流回転電機である。第2MG120は、バッテリ150に蓄えられた電力および第1MG110により発電された電力のうちの少なくともいずれかの電力により駆動する。
【0029】
第2MG120の駆動力は、減速機140を介して前輪160に伝えられる。これにより、第2MG120はエンジン100をアシストしたり、第2MG120からの駆動力により車両を走行させたりする。なお、前輪160の代わりにもしくは加えて後輪を駆動するようにしてもよい。
【0030】
プラグインハイブリッド車両の回生制動時には、減速機140を介して前輪160により第2MG120が駆動され、第2MG120が発電機として作動する。これにより第2MG120は、制動エネルギを電力に変換する回生ブレーキとして作動する。第2MG120により発電された電力は、バッテリ150に蓄えられる。
【0031】
動力分割機構130は、サンギヤと、ピニオンギヤと、キャリアと、リングギヤとを含む遊星歯車から構成される。ピニオンギヤは、サンギヤおよびリングギヤと係合する。キャリアは、ピニオンギヤが自転可能であるように支持する。サンギヤは第1MG110の回転軸に連結される。キャリアはエンジン100のクランクシャフトに連結される。リングギヤは第2MG120の回転軸および減速機140に連結される。
【0032】
エンジン100、第1MG110および第2MG120が、遊星歯車からなる動力分割機構130を介して連結されることで、エンジン100、第1MG110および第2MG120の回転数は、共線図において直線で結ばれる関係になる。
【0033】
バッテリ150は、複数のバッテリセルを一体化したバッテリモジュールを、さらに複数直列に接続して構成された組電池である。バッテリ150の電圧は、たとえば200V程度である。バッテリ150には、第1MG110および第2MG120の他、車両の外部の電源から供給される電力が充電される。なお、バッテリ150の代わりにもしくは加えてキャパシタを用いるようにしてもよい。
【0034】
図2を参照して、プラグインハイブリッド車両の電気システムについてさらに説明する。プラグインハイブリッド車両には、コンバータ200と、第1インバータ210と、第2インバータ220と、SMR(System Main Relay)230と、充電器240と、インレット250とが設けられる。
【0035】
コンバータ200は、リアクトルと、二つのnpn型トランジスタと、二つダイオードとを含む。リアクトルは、各バッテリの正極側に一端が接続され、2つのnpn型トランジスタの接続点に他端が接続される。
【0036】
2つのnpn型トランジスタは、直列に接続される。npn型トランジスタは、ECU170により制御される。各npn型トランジスタのコレクタ−エミッタ間には、エミッタ側からコレクタ側へ電流を流すようにダイオードがそれぞれ接続される。
【0037】
なお、npn型トランジスタとして、たとえば、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)を用いることができる。npn型トランジスタに代えて、パワーMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field-Effect Transistor)等の電力スイッチング素子を用いることができる。
【0038】
バッテリ150から放電された電力を第1MG110もしくは第2MG120に供給する際、電圧がコンバータ200により昇圧される。逆に、第1MG110もしくは第2MG120により発電された電力をバッテリ150に充電する際、電圧がコンバータ200により降圧される。
【0039】
コンバータ200と、各インバータとの間のシステム電圧VHは、電圧センサ180により検出される。電圧センサ180の検出結果は、ECU170に送信される。
【0040】
第1インバータ210は、U相アーム、V相アームおよびW相アームを含む。U相アーム、V相アームおよびW相アームは並列に接続される。U相アーム、V相アームおよびW相アームは、それぞれ、直列に接続された2つのnpn型トランジスタを有する。各npn型トランジスタのコレクタ−エミッタ間には、エミッタ側からコレクタ側へ電流を流すダイオードがそれぞれ接続される。そして、各アームにおける各npn型トランジスタの接続点は、第1MG110の各コイルの中性点112とは異なる端部にそれぞれ接続される。
【0041】
第1インバータ210は、バッテリ150から供給される直流電流を交流電流に変換し、第1MG110に供給する。また、第1インバータ210は、第1MG110により発電された交流電流を直流電流に変換する。
【0042】
第2インバータ220は、U相アーム、V相アームおよびW相アームを含む。U相アーム、V相アームおよびW相アームは並列に接続される。U相アーム、V相アームおよびW相アームは、それぞれ、直列に接続された2つのnpn型トランジスタを有する。各npn型トランジスタのコレクタ−エミッタ間には、エミッタ側からコレクタ側へ電流を流すダイオードがそれぞれ接続される。そして、各アームにおける各npn型トランジスタの接続点は、第2MG120の各コイルの中性点122とは異なる端部にそれぞれ接続される。
【0043】
第2インバータ220は、バッテリ150から供給される直流電流を交流電流に変換し、第2MG120に供給する。また、第2インバータ220は、第2MG120により発
電された交流電流を直流電流に変換する。
【0044】
コンバータ200、第1インバータ210および第2インバータ220は、ECU170により制御される。
【0045】
SMR230は、バッテリ150と充電器240との間に設けられる。SMR230は、バッテリ150と電気システムとを接続した状態および遮断した状態を切換えるリレーである。SMR230が開いた状態であると、バッテリ150が電気システムから遮断される。SMR230が閉じた状態であると、バッテリ150が電気システムに接続される。
【0046】
すなわち、SMR230が開いた状態であると、バッテリ150が、コンバータ200および充電器240などから電気的に遮断される。SMR230が閉じた状態であると、バッテリ150が、コンバータ200および充電器240などと電気的に接続される。
【0047】
SMR230の状態は、ECU170により制御される。たとえば、ECU170が起動すると、SMR230が閉じられる。ECU170が停止する際、SMR230が開かれる。
【0048】
充電器240は、バッテリ150とコンバータ200との間に接続される。充電器240は、バッテリ150を充電するために、交流電力を直流電力に変換するとともに、昇圧する。充電器240は、ECU170により制御される。
【0049】
インレット250は、たとえばプラグインハイブリッド車両の側部に設けられる。図3に示すように、インレット250には、プラグインハイブリッド車両と外部の電源402とを連結する充電ケーブル300のコネクタ310が接続される。
【0050】
充電ケーブル300は、バッテリ150に充電される電力をプラグインハイブリッド車両の外部の電源402からプラグインハイブリッド車両に伝達する。充電ケーブル300は、コネクタ310と、プラグ320とを含む。
【0051】
充電ケーブル300のコネクタ310は、プラグインハイブリッド車両に設けられたインレット250に接続される。充電ケーブル300のプラグ320は、家屋に設けられたコンセント400に接続される。コンセント400には、プラグインハイブリッド車両の外部の電源402から交流電力が供給される。
【0052】
本実施の形態においては、充電ケーブル300によりプラグインハイブリッド車両と外部の電源402とが連結された状態において、外部の電源402から供給された電力がバッテリ150に充電される。バッテリ150の充電時には、SMR230が閉じられる。
【0053】
図4を参照して、本実施の形態におけるハイブリッド車には、さらに、AC/DC変換回路500が搭載される。AC/DC変換回路500は、ECU170により制御される。AC/DC変換回路500は、直流電力を交流電力に変換する。また、AC/DC変換回路500は、降圧回路としても機能する。
【0054】
なお、AC/DC変換回路500を別途設ける代わりに、充電器240が双方向に電力を変換するように構成してもよい。すなわち、第1MG110が発電し、コンバータ200を介して供給された直流電力を交流電力に変換するとともに、降圧するように充電器240を構成してもよい。
【0055】
本実施の形態において、AC/DC変換回路500は、少なくとも車両が停止しているという条件が満たされた場合、交流電力を出力するように制御される。図5に示すように、AC/DC変換回路500から出力された電力は、たとえばプラグインハイブリッド車両の側面、荷室内面などに設けられたコンセント502から、家屋などの建築物内の電気機器に供給することができる。たとえば、汎用のケーブル504を介して、プラグインハイブリッド車両から外部の電気機器506に電力が供給される。なお、電力を供給するための専用のケーブルを用いてもよい。また、AC/DC変換回路500をプラグインハイブリッド車の外部に設けたり、建築物の内部に設けたりしてもよい。
【0056】
さらに、AC/DC変換回路500が降圧機能を有しなくてもよい。AC/DC変換回路500を設けなくてもよい。
【0057】
停車中にプラグインハイブリッド車両から外部の電気機器506に電力を供給する際、第1MG110により発電するために、エンジン100が運転される。
【0058】
図6を参照して、ECU170の機能について説明する。なお、以下に説明する機能は、ソフトウェアにより実現するようにしてもよく、ハードウェアにより実現するようにしてもよい。
【0059】
ECU170は、第1制御部171と、第2制御部172と、変更部174とを備える。第1制御部171は、冷却水の温度に基づいてエンジン100をフィードバック制御する。より具体的には、停車中に、冷却水の温度と予め定められた上限温度との差が大きいほど、エンジン100の運転状態が、効率が予め定められた効率となるときの運転状態に近づくように、エンジン100を制御する。
【0060】
図7を参照して、冷却水の温度が上限温度に比べて十分に低い場合は、エンジン100の運転状態が、「M」で示される、効率が最高値になるときの運転状態(トルクおよびエンジン回転速度)になるように、エンジン100が制御される。一方、冷却水の温度と上限温度との差が小さいほど、出力が低下するようにエンジン100が制御される。
【0061】
たとえば、図8に示すように、冷却水の温度が上限温度に到達すると、効率が最高効率となるときの運転状態によって実現される出力PEMから出力PEが低下するようにエンジン100が制御される。したがって、効率は低下する。
【0062】
出力PEの低下量は、たとえば、実験およびシミュレーションなどに基づいて冷却水の温度が上限温度を超えないような値に定められる。なお、外気温に応じて低下量を補正するようにしてもよい。たとえば、外気温が高いほど、出力PEがより低くなるようにしてもよい。また、プラグインハイブリッド車両のボンネットが開いている場合は、開いている場合に比べて、出力PEが高くなる(低下量が小さくなる)ようにしてもよい。さらに、プラグインハイブリッド車両に組み込まれている冷却装置(ラジエータなど)とは別に、外部の冷却装置がプラグインハイブリッド車両に接続されている場合は、接続されていない場合に比べて、出力PEが高くなる(低下量が小さくなる)ようにしてもよい。
【0063】
さらに、図9に示すように、出力PEが徐々に低下するようにしてもよい。さらに、周知の比例制御、微分制御および積分制御を用いて、冷却水の温度と上限温度との差が小さいほど、出力PEがより低くなるようにしてもよい。
【0064】
なお、効率が最高値になるときの運転状態は、実験およびシミュレーションなどの結果に基づいて、予め定められる。たとえば、各運転状態において効率を計算し、計算された効率が最も高い運転状態が特定される。効率は、たとえば、燃料消費率から算出される消費エネルギと、ベンチテストの結果から得られるエンジン100の出力とから算出される。なお、効率を計算する方法は周知の一般的な技術を利用すればよいため、ここではその詳細な説明は繰返さない。
【0065】
図7に戻って、一例として、エンジン100は、その運転状態が予め定められた燃費最適作動線に従って変化するように制御される。燃費最適作動線は、燃費が最適になる運転状態を結ぶ線である。すなわち、燃費最適作動線は、エンジン100の燃料消費率を考慮して定められた条件を示す。燃費最適作動線は、実験およびシミュレーションの結果に基づいて予め定められる。なお、燃費最適作動線を定める方法については、周知の一般的な技術を利用すればよいため、ここではその詳細な説明は繰返さない。
【0066】
後述するように、プラグインハイブリッド車両の走行中は、「A」で示す運転状態と「B」で示す運転状態との間は、点線で示すNV(Noise and Vibration)ラインに従って運転状態が変化するようにエンジン100が制御される。しかしながら、停車し、かつ第1MG110が発電した電力をプラグインハイブリッド車両の外部の電気機器506に供給している場合、NVラインの代わりに、燃費最適作動線に従って運転状態が変化するように、エンジン100が制御される。
【0067】
第2制御部172は、プラグインハイブリッド車両の走行中、図7において「A」で示す運転状態と「B」で示す運転状態との間において、点線で示すNVラインに従って運転状態が変化するようにエンジン100を制御する。NVラインは、エンジン100によって発生するプラグインハイブリッド車両の振動およびノイズのうちの少なくともいずれか一方が許容範囲になる運転状態を結ぶ線である。すなわち、NVラインは、プラグインハイブリッド車両の騒音および振動のうちの少なくともいずれか一方を考慮して定められた条件を示す。
【0068】
なお、「A」で示す運転状態と「B」で示す運転状態との区間以外の領域においては、運転状態が燃費最適作動線に従って変化するように制御するようにしてもよい。
【0069】
変更部174は、プラグインハイブリッド車両が停車し、かつ第1MG110が発電した電力を、プラグインハイブリッド車両の外部の電気機器506に供給している場合、プラグインハイブリッド車両の走行中に比べて、上限温度が高くなるように変更する。図8および図9に示すように、プラグインハイブリッド車両の走行中には温度TW1(TW1>0)に設定されていた上限温度が、温度TW1よりも高い温度TW2に設定される。
【0070】
温度TW1は、車両の走行中にエンジン100の負荷が過剰になった場合を考慮して、ある程度低めに定められた温度である。一方、温度TW2は、エンジン100を発電のために駆動している場合には負荷が過剰になる可能性が低いことに鑑みて、温度TW1よりも高く設定される。
【0071】
図10を参照して、ECU170が実行するプログラムの制御構造について説明する。 ステップ(以下、ステップをSと略す)100にて、ECU170は、停車中であるか否かを判断する。たとえば、周知の車速センサにより検出される車速が零であるか否かに基づいて、停車中であるか否かが判断される。
【0072】
停車中である場合(S100にてYES)、処理はS102に移される。プラグインハイブリッド車が走行中であると(S100にてNO)、処理はS104に移される。
【0073】
S102にて、ECU170は、プラグインハイブリッド車両から外部の電気機器506への電力供給が要求されているか否かを判断する。たとえば、スイッチを押すなどの予め定められた操作が行なわれた場合、プラグインハイブリッド車両から外部の電気機器506への電力供給が要求されていると判断される。
【0074】
プラグインハイブリッド車両から外部の電気機器506への電力供給が要求されている場合(S102にてYES)、処理はS108に移される。電力供給が要求されていないと(S104にてNO)、処理はS104に移される。
【0075】
S104にて、冷却水の上限温度を温度TW1に設定する。S106にて、ECU170は、プラグインハイブリッド車両の運転状態に応じてエンジン100を制御する。エンジン100の駆動が必要である場合は、前述したように、図7「A」で示す運転状態と「B」で示す運転状態との間において、NVラインに従って運転状態が変化するようにエンジン100が制御される。また、冷却水の上限温度が温度TW1以下になるように、ラジエータファンなどが制御される。なお、その他の運転領域におけるエンジン100の制御態様については、周知の技術を利用すればよいため、ここではその詳細な説明は繰返さない。
【0076】
S108にて、冷却水の上限温度を温度TW1よりも高い温度TW2に設定する。S110にて、ECU170は、温度センサ104から送信された信号に基づいて、エンジン100の冷却水の温度を検出する。
【0077】
S112にて、ECU170は、冷却水の温度に基づいてエンジン100をフィードバック制御する。上述したように、冷却水の温度と上限温度との差が大きいほど、エンジン100の運転状態が、効率が最高効率となるときの運転状態に近づくように、エンジン100が制御される。また、冷却水の温度と上限温度との差が小さいほど、出力が低下するようにエンジン100が制御される。
【0078】
S114にて、ECU170は、発電するように第1MG110を制御する。S116にて、ECU170は、第1MG110が発電した直流電力を降圧し、交流電力に変換し、交流電力を出力するようにAC/DC変換回路500を制御する。
【0079】
以上のような構造およびフローチャートに基づく、プラグインハイブリッド車両の制御態様について説明する。
【0080】
停車中であって(S100にてYES)、プラグインハイブリッド車両から外部の電気機器506への電力供給が要求されていない場合(S102にてNO)、冷却水の上限温度が温度TW1に設定される(S104)。また、プラグインハイブリッド車が走行中であると(S100にてNO)、冷却水の上限温度が温度TW1に設定される(S104)。
【0081】
これらの場合は、プラグインハイブリッド車両の運転状態に応じてエンジン100が制御される(S106)。すなわち、アクセル操作およびブレーキ操作などの運転者による操作に応じて、エンジン100が制御される。エンジン100の駆動が必要である場合は、前述したように、図7「A」で示す運転状態と「B」で示す運転状態との間において、NVラインに従って運転状態が変化するようにエンジン100が制御される。また、冷却水の温度が温度TW1以下になるようにラジエータファンなどが制御される。
【0082】
停車中であって(S100にてYES)、プラグインハイブリッド車両から外部の電気機器506への電力供給が要求されている場合は(S102にてYES)、冷却水の温度に基づいてエンジン100がフィードバック制御される(S112)。冷却水の温度と上限温度との差が大きいほど、エンジン100の運転状態が、効率が最高効率となるときの運転状態に近づくように、エンジン100が制御される。また、冷却水の温度と上限温度との差が小さいほど、出力が低下するようにエンジン100が制御される。
【0083】
これにより、エンジン100の冷却水の温度が低い場合には、最高効率を実現する運転状態でエンジン100を運転することができる。一方、エンジン100の冷却水の温度が高い場合には、エンジン100が冷却水へ排出する熱量が減少するように運転状態を変化させることができる。そのため、冷却水の温度上昇を制限することができる。その結果、エンジン100の冷却性能を保ちつつ、停車時にエンジン100を運転することができる。
【0084】
このように、停車中であって(S100にてYES)、プラグインハイブリッド車両から外部の電気機器506への電力供給が要求されている場合は(S102にてYES)、エンジン100の出力が、効率が最高効率になるときの出力以下に制限される。そのため、出力が突発的に過剰になる可能性が小さい。よって、冷却水の上限温度を低めに設定する必要性が小さい。したがって、この場合、冷却水の上限温度が温度TW1よりも高い温度TW2に設定される(S108)。これにより、エンジン100の効率が最高効率となるように制御される領域を拡大することができる。
【0085】
第1MG110は、発電するように制御される(S114)。さらに、第1MG110が発電した直流電力を降圧し、交流電力に変換し、交流電力を出力するようにAC/DC変換回路500が制御される(S116)。これにより、プラグインハイブリッド車両から外部の電気機器への電力供給が可能となる。
【0086】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0087】
100 エンジン、102 触媒、104 温度センサ、110 第1MG、120 第2MG、130 動力分割機構、140 減速機、150 バッテリ、160 前輪、170 ECU、171 第1制御部、172 第2制御部、174 変更部、200 コンバータ、210 第1インバータ、220 第2インバータ、230 SMR、240 充電器、250 インレット、300 充電ケーブル、310 コネクタ、320 プラグ、400 コンセント、402 電源、500 AC/DC変換回路、502 コンセント、504 ケーブル、506 電気機器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関と、前記内燃機関により駆動されて発電する発電機とが搭載され、停車中に前記発電機が発電した電力を外部の機器に供給可能な車両の制御装置であって、
前記内燃機関の冷却水の温度を検出するための手段と、
停車中に、前記冷却水の温度と予め定められた上限温度との差が大きいほど、前記内燃機関の運転状態が、前記内燃機関の効率が予め定められた効率となるときの運転状態に近づくように、前記冷却水の温度に基づいて前記内燃機関を制御するための制御手段とを備える、車両の制御装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記冷却水の温度と前記上限温度との差が小さいほど、出力が低下するように前記内燃機関を制御する、請求項1に記載の車両の制御装置。
【請求項3】
前記車両が停車し、かつ前記発電機が発電した電力を前記車両の外部の機器に供給している場合、前記車両の走行中に比べて、前記上限温度が高くなるように変更するための手段をさらに備える、請求項1または2に記載の車両の制御装置。
【請求項4】
前記予め定められた効率は、前記内燃機関の最高効率である、請求項1〜3のいずれかに記載の車両の制御装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記内燃機関の燃料消費率を考慮して定められた条件に従って運転状態が変化するように、前記内燃機関を制御する、請求項1に記載の車両の制御装置。
【請求項6】
前記車両の走行中、前記車両の騒音および振動のうちの少なくともいずれか一方を考慮して定められた第1の条件に従って運転状態が変化するように前記内燃機関を制御するための手段をさらに備え、
前記制御手段は、前記車両が停車し、かつ前記発電機が発電した電力を前記車両の外部の機器に供給している場合、前記第1の条件の代わりに、前記内燃機関の燃料消費率を考慮して定められた第2の条件に従って運転状態が変化するように、前記内燃機関を制御する、請求項1に記載の車両の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−122502(P2011−122502A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−280161(P2009−280161)
【出願日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】