説明

車両の走行制御装置

【課題】 運転者に対して最適なタイミングで車間距離の制御や衝突回避の制御を実施する。
【解決手段】 先々行車を検知するミリ波レーダ2を備え、運転者からの前方の視認状態の情報を入手する前方カメラ12を備え、ミリ波レーダ2により先々行車の存在が確認された時の前方カメラ12による前方の見え方に応じてエンジン4の出力制御の作動状況、ブレーキ5の効かせ方の状況、シートベルト6やサポート部材9による乗員の拘束状況の作動タイミングを調整し、運転者の目線でみた状態に基づいて、車間距離の制御や衝突回避の制御といった走行制御を的確に行なう。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両前方の状況に応じて、例えば、先行車との車間距離の状況や先行車に対する衝突の危険度合いに応じて、車両の走行を制御する車両の走行制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の前方に存在する先行車に対して所定の車間距離を保つように車両を走行させたり、前方の障害物等に対して衝突を回避する走行制御装置を備えた車両が種々開発されている。このような走行制御装置では、先行車や前方障害物に対して所定の距離に近づいた場合に、警報を発したり、シートベルトの引き込み操作やシートによる乗員の拘束状況を変更する等して運転者に警告を発するようにしている。また、エンジンの出力を制限したりブレーキを効かせる等して車両の走行を強制的に制御することが行なわれている。
【0003】
そして、走行制御装置では、先行車の前の車両、即ち、先々行車の状況を合わせて検出し、先々行車の状況を制御に反映させることが従来から行なわれている。例えば、先行車と先々行車とが所定の距離に接近した場合、制御対象車両を先々行車に変更して車間距離を制御する技術が開示されている(例えば、下記特許文献1参照)。また、先行車と先々行車の衝突の可能性を判断し、衝突の可能性が高くなった際にシートベルトやブレーキの作動量や作動時期を変更する技術が開示されている(例えば、下記特許文献2参照)。更に、先行車と先々行車との車間距離が急接近する場合、ブレーキが直ぐに効く状態に油圧を制御する技術が開示されている(例えば、下記特許文献3参照)。
【0004】
従来の技術では、先々行車の状況を加味して車間距離の制御や衝突回避の制御のやり方を変更するので、車両の走行状況に応じて的確に応答性良く走行制御を実施することが可能になる。
【0005】
従来の走行制御装置では、先々行車の状況に応じて車間距離の制御や衝突回避の制御を行なって警報を発する等が実施されている。しかし、先々行車との間には先行車が存在し、先行車の全長分の距離の余裕があるため、やや余裕を持った距離で警報が発せられたり制御が実施されることになる。運転者が状況を把握できている場合には警報や制御の実施が早く感じる結果となる。また、余裕を持った距離であっても、運転者が状況を全く把握できていない場合や状況を予測できない場合には、警報や制御の実施が遅く感じる結果となる。
【0006】
このように、先々行車の状況に応じて制御を行なうことは、車両の走行状況に応じた的確な制御が可能であるが、運転者の前方の把握状態によっては、必ずしも的確に制御されている状態にはならない場合があるのが現状であった。
【0007】
【特許文献1】特開2006−44421号公報
【特許文献2】特開2005−31967号公報
【特許文献3】特開2004−106588号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、運転者の前方の把握状態に応じて車間距離の制御や衝突回避の制御を的確に行うことができる車両の走行制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための請求項1に係る本発明の車両の走行制御装置は、前方の状況に応じて車両の状態を変更するように作動する状態作動装置と、先々行車を検知する先々行車検知手段と、運転者からの前方の視認状態の情報を入手する視認状態入手手段と、前記先々行車検知手段からの情報及び前記視認状態入手手段の情報が入力され、前記先々行車両の存在が確認された時の前方の視認状態に応じて前記状態作動装置の作動タイミングを調整する調整制御手段とを備えたことを特徴とする。
【0010】
請求項1に係る本発明では、先々行車検知手段により先々行車を検知した際に、視認状態入手手段により運転者からの前方の視認状態を入手し、運転者からの視認状態に応じて状態作動装置の作動タイミングを調整し、車間距離の制御や衝突回避の制御といった走行制御を運転者の前方の把握状況に応じて的確に行なう。
【0011】
そして、請求項2に係る本発明の車両の走行制御装置は、請求項1に記載の車両の走行制御装置において、前記調整制御手段では、前記先々行車の視認割合が低くなるに従って前記状態作動装置の作動タイミングを早めに調整することを特徴とする。
【0012】
請求項2に係る本発明では、先々行車の視認割合が低くなることにより、運転者からの視認状態が、先行車の視認割合が多くなって先行車と先々行車との車間距離が短くなったと判断し、状態作動装置の作動タイミングを早めに調整して制御の開始を早める。
【0013】
また、請求項3に係る本発明の車両の走行制御装置は、請求項2に記載の車両の走行制御装置において、前記調整制御手段は、前記先々行車との距離に応じて前記状態作動装置の作動タイミングが設定され、前記調整制御手段では、前記先々行車の視認割合が所定割合を下回った際に、前記先行車の全長を加味した距離に応じて前記状態作動装置の作動タイミングを設定することを特徴とする。
【0014】
請求項3に係る本発明では、先々行車と先行者との距離が近くなり、運転者からの視認状態が、先行車の視認割合が多くなって先行車と先々行車との車間距離が短くなった状態であると判断し、先行車の全長を加味した距離に応じて状態作動装置の作動タイミングを調整する。
【0015】
また、請求項4に係る本発明の車両の走行制御装置は、請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の車両の走行制御装置において、前記先々行車検知手段は、ミリ波レーダであり、前記視認状態入手手段は、運転者の目線の高さから前方を撮影するカメラ装置であることを特徴とする。
【0016】
請求項4に係る本発明では、天候に左右され難いミリ波レーダにより先々行車を検知することができ、運転者の目線の高さからのカメラ装置により運転者の視認状態を把握することができる。
【0017】
また、請求項5に係る本発明の車両の走行制御装置は、請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の車両の走行制御装置において、前記状態作動装置は、車両減速装置及び乗員保護装置及び警報装置の少なくとも一つからなることを特徴とする。
【0018】
請求項5に係る本発明では、運転者の前方の把握状況に応じて、車両減速装置により減速させる制御、乗員保護装置による乗員の保護制御、警報装置による警報を発する制御の少なくとも一つを実施する。
【0019】
また、請求項6に係る本発明の車両の走行制御装置は、請求項5に記載の車両の走行制御装置において、前記車両減速装置は、エンジンの出力を制御する装置、制動装置を制御する装置の少なくとも一つであり、前記乗員保護装置は、乗員をシートに拘束するシートベルトを引き込む装置、乗員が着座するシートを作動させて乗員をシートに拘束する装置の少なくとも一つであることを特徴とする。
【0020】
また、請求項7に係る本発明の車両の走行制御装置は、請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載の車両の走行制御装置において、前記運転者の状態を監視して前記運転者の状態を前記調整制御手段に出力する運転者監視装置が備えられ、前記調整制御手段では、前記運転者の運転意識の低下が判断された際に前記状態作動装置の前記作動タイミングを補正することを特徴とする。
【0021】
請求項7に係る本発明では、運転者監視装置の情報により運転者の運転意識を判断し、運転意識が低下した際、例えば、覚醒度が低下したり脇見をしている際に状態作動装置の作動タイミングを補正する。
【発明の効果】
【0022】
本発明の車両の走行制御装置は、運転者の前方の把握状態に応じて車間距離の制御や衝突回避の制御を的確に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下に説明する本発明の一実施形態例は、走行制御装置が搭載された車両は、状態作動装置として、オートクルーズコントロール制御装置や車両の衝突を予測して乗員保護装置を作動させるプリクラッシュ制御装置が搭載され、制御の作動時に警報を発する警報装置が備えられた車両を例に示してある。
【0024】
オートクルーズコントロール制御装置は、先行車との車間状態が設定された状態で先行車に追従するようにエンジン等の出力を調整したり、制動装置(ブレーキ)を適宜効かせるようにした装置である。プリクラッシュ制御装置は、先行車や前方の物体への衝突を想定して、シートベルトを引き込んで乗員をシートに拘束したり、シートクッションやシートバックのサポート装置を作動させて乗員をシートに拘束する装置である。
【0025】
そして、本発明の一実施形態例に係る走行制御装置では、先々行車を検知する先々行車検知手段としてのミリ波レーダを備えると共に、運転者からの前方の視認状態の情報を入手する視認状態入手手段としての前方カメラを備え、ミリ波レーダにより先々行車の存在が確認された時の前方カメラによる前方の見え方(視認状態)に応じてエンジン等の出力制御の作動状況、ブレーキの効かせ方(作動)の状況、シートベルトやサポート部材による乗員の拘束状況(作動状況)の作動タイミングを調整するようにしたものである。
【0026】
これにより、運転者の目線でみた状態に基づいて、車間距離の制御や衝突回避の制御といった走行制御を的確に行なうことができ、運転者に対して最適なタイミングで車間距離の制御や衝突回避の制御を実施することができる。
【0027】
以下図面に基づいて本発明の一実施形態例を説明する。
【0028】
図1には本発明の一実施形態例に係る走行制御装置を備えた車両の概念側面視、図2には図1の正面視、図3には先々行車の視認状況の説明、図4には本発明の一実施形態例に係る走行制御装置の制御フローチャート、図5、図6、図7にはオートクルーズコントロール制御装置及びプリクラッシュ制御装置の作動マップの一例を示してある。
【0029】
図1に示すように、車両1には先行車や前方の物体を検知するミリ波レーダ2が備えられ、ミリ波レーダ2の情報はコントローラ3に入力される。また、コントローラ3には、車速、ヨーレイト、ハンドル角等の車両1の走行情報が入力される。コントローラ3からはエンジン4及び制動装置(ブレーキ)5に制御信号が出力されると共に、シートベルト6の作動装置7及びシート8のサポート装置9に制御信号が出力される。車両1には警報装置10が備えられ、コントローラ3から警報の出力指令(音・表示)が警報装置10に送られる。
【0030】
シートベルト6の作動装置7は、例えば、先行車や前方の物体に対して衝突の危険が予測された際にシートベルト6を強制的に引き込んで乗員をシート8に拘束する装置である。また、シート8のサポート装置9は、例えば、先行車や前方の物体に対して衝突の危険が予測された際に作動して乗員の大腿部等をシート8に拘束する装置である。
【0031】
オートクルーズコントロール制御装置では、ミリ波レーダ2により先行車が検知され、先行車との相対速度に応じてエンジン4及び制動装置(ブレーキ)5にコントローラ3から制御信号が出力され、先行車との車間状態が設定された状態で先行車に追従するようにエンジン4の出力が調整されると共にブレーキ5の作動が制御される。
【0032】
また、プリクラッシュ制御装置では、ミリ波レーダ2により先行車や前方の物体が検知され、車両1の走行状態により先行車や前方の物体に衝突する危険性がコントローラ3で判定される。コントローラ3で衝突が想定されると、コントローラ3から警報装置10に作動指令が出力されると共に、シートベルト6の作動装置7及びシート8のサポート装置9に作動指令がコントローラ3から出力されて乗員の拘束を行なう。更に、エンジン4及び制動装置(ブレーキ)5にコントローラ3から制御信号が出力され、緊急停止の自動ブレーキが作動するように制御される。
【0033】
一方、図1、図3に示すように、車両1の運転席の脇のAピラー11には視認状態入手手段としての前方カメラ12が取り付けられ、前方カメラ12の情報はコントローラ3に入力される。前方カメラ12は運転者の目線の高さの位置に取り付けられ、運転者から見た前方の状態(視認状態)が撮影される。また、ルームミラー13には運転者監視装置としての監視カメラ14が取り付けられ、監視カメラ14の情報はコントローラ3に入力される。監視カメラ14の撮影情報により運転者の運転意識(覚醒度合いや前方注視状況)が検出される。例えば、監視カメラ14により、運転者のまぶたが撮影されて瞬きの状態に基づいて覚醒度が検出され、運転者の顔の位置・方向が撮影されて脇見の状態が検出される。
【0034】
前述したミリ波レーダ2により先々行車が検知され(先々行車検知手段)、先々行車の情報(距離、相対速度等)はコントローラ3に入力される。コントローラ3では、ミリ波レーダ2により先々行車が検知された際に、前方カメラ12の撮影情報に応じてエンジン4の出力制御の作動タイミング及び制動装置(ブレーキ)5の作動タイミングが調整される。また、前方カメラ12の撮影情報に応じてシートベルト6の作動装置7及びシート8のサポート装置9の作動タイミングが調整される(調整制御手段)。
【0035】
このため、運転者からの前方の見え方により制御のタイミングが調整され、車間距離の制御や衝突回避の制御といった走行制御を運転者の前方の把握状況に応じて的確に行なうことができる。また、天候に左右され難いミリ波レーダ2により先々行車を検知することができ、運転者の目線の高さからの前方カメラ12により運転者の前方の見え方を把握することができる。
【0036】
具体的には、コントローラ3では、前方カメラ12の撮影情報に基づいて先々行車が見えている割合を求め、先々行車が見えている割合が低下した場合に、運転者からの視認状態が、先行車の視認割合が多くなって先行車と先々行車との車間距離が短くなった状態であると判断し、エンジン4の出力制御の作動タイミング及び制動装置(ブレーキ)5の作動タイミングが早くされ、また、シートベルト6の作動装置7及びシート8のサポート装置9の作動タイミングが早くされる。
【0037】
このため、運転者の前方の見え方が、先行車の視認割合が多くなって先行車と先々行車との車間距離が短くなった状態であると判断して制御の開始を早めることができる。
【0038】
更に、コントローラ3では、先々行車との距離に応じて、エンジン4の出力制御の作動タイミング及び制動装置(ブレーキ)5の作動タイミング、シートベルト6の作動装置7及びシート8のサポート装置9の作動タイミングが設定され、先々行車の視認割合、即ち、運転者から先々行車が見えなくなった時には(視認割合が所定割合を下回った時には)、先行車の全長を加味した距離に応じて作動タイミングが設定されるようになっている。
【0039】
これにより、先行車と先々行車との距離が近くなり、運転者からの見え方が、先行車の視認割合が多くなって先行車と先々行車との車間距離が短くなった状態であると判断し、先行車の全長を加味した距離に応じて制御の開始を早めることができる。
【0040】
また、コントローラ3では、監視カメラ14の撮影情報による運転者の覚醒度や脇見の状態に応じて制御の開始を早めるようにしている(作動のタイミングを補正している)。
【0041】
尚、図示の車両1には車々間通信を行なうための車々間通信ユニット15が搭載され、先行車や先々行車に通信ユニットが搭載されていれば、ミリ波レーダ2と共に(場合によってはミリ波レーダ2に代えて)車々間通信ユニット15により先行車及び先々行車の検知が行なわれることもある。
【0042】
図2〜図7に基づいて上述した先行車及び先々行車に対する車間距離の制御や衝突回避の制御を具体的に説明する。
【0043】
図3に示すように、前方カメラ12で撮影された画像に基づいて先行車21と先々行車22の画面から先々行車22の露出割合を演算する。本実施形態例では、以下に示した4パターンの状態の前方視認指標を例に挙げることができ、前方視認指標が判定される。即ち、運転者の目線からの前方の見え方が判定される。
【0044】
例えば、図2に示すように、先々行車22の露出の割合が0%である状態、即ち、先行車21と先々行車22の車間距離が極めて近く、先行車21が先々行車22に衝突する危険性のある状態の前方視認指標とされる。また、先々行車22の20%が露出している状態、即ち、先行車21と先々行車22の車間距離が比較的短い状態で先々行車22に衝突する危険性のある状態の前方視認指標とされる。
【0045】
また、先々行車22の50%が露出している状態、即ち、先行車21と先々行車22の車間距離がある程度保たれ、先々行車22に衝突する危険性がない状態の前方視認指標とされる。更に、先々行車22の100%が露出している状態、即ち、先行車21と先々行車22の車間距離が充分に保たれ、先々行車22に衝突する危険性が全くない状態の前方視認指標とされる。
【0046】
そして、先々行車22の露出の割合が0%の状態の場合、先行車21及び先々行車22に対する車間距離の制御や衝突回避の制御といった走行制御の制御開始タイミングが早く実行されるように調整され、先々行車22の100%が露出している状態の場合、先行車21及び先々行車22に対する車間距離の制御や衝突回避の制御といった走行制御の制御開始タイミングが遅く実行されるように調整される。
【0047】
このため、先々行車22の画像の露出割合により運転者からの見え方による前方視認指標が求められる。
【0048】
図4に示すように、ステップS1で先行車が検出され、ステップS2で先々行車が検出される。先行車及び先々行車が検出されると、ステップS3で前方視認指標が判定される。即ち、前方カメラ12(図1参照)で撮影された画像に基づいて先々行車の露出割合が求められ、先々行車の露出の割合により前方視認指標が判定される。前方視認指標が判定されると、ステップS4で運転者の脇見の状態が判定される。即ち、監視カメラ14(図1参照)の情報により、運転者が脇見状態にあるか否かが判定される。
【0049】
尚、監視カメラ14は必ずしも備える必要はなく、監視カメラ14を備えない場合にはステップS4の処理は省略される。
【0050】
前方視認指標及び脇見判定が行なわれた後、ステップS5で先行車との衝突判定が行なわれる。衝突判定は、前方視認指標(もしくは脇見状態)に基づいて、先行車に対する衝突の危険度合いにより判定される。例えば、図3に示した前方視認指標により、先々行車22の100%が露出している状態である時の先行車21との距離が短くなった時に衝突判定がありと判断される。
【0051】
ステップS5で衝突判定があると判断された場合、図5に示した先行車との車間距離及び先行車との相対速度の関係のマップ(マップ1)に基づいて走行制御が実行される。
【0052】
マップ1では、先行車に接近するに従って、以下に示したA〜Eまでの5種類の制御態様が設定され、順次走行制御が実行される。
A:音や表示により警報装置を作動させる。
B:シートベルト6の振動や軽いブレーキにより体感警告を実施する。
C:シート8のサポート装置9を作動させて乗員の大腿部等を拘束する。
D:シートベルト6の作動装置7を作動させて乗員をシート8に拘束する。
E:ブレーキ5を緊急に自動作動させる。
【0053】
つまり、運転者からの前方視認の状態を基にして、先行車との車間距離、相対速度に応じて、先ず、音や表示により警報装置を作動させて接近を知らせ、次に、シートベルト6の振動や軽いブレーキにより体感警告により運転者に接近を知らせる。車間距離が短くなって(相対速度が速くなって)衝突の危険が高まると、シート8のサポート装置9を作動させて乗員の大腿部等を拘束し、更に、シートベルト6の作動装置7を作動させて乗員をシート8に拘束する。先行車との車間距離が最短になった状態でブレーキ5を緊急に自動作動させる。
【0054】
これにより、運転者の目線からの見え方に基づき、先行車との車間距離、相対速度に応じて警報を発して乗員を拘束したり、緊急の自動ブレーキを作動させる制御を段階的に実施することができる。即ち、運転者が見えている状態に応じて適切なタイミングで走行制御を実施する(警報を発する等)ことができ、運転者が煩わしさを感じることがない。
【0055】
図4のフローチャートに戻り、ステップS5で衝突判定がなしと判断された場合、ステップS7で先々行車との衝突判定が行なわれる。衝突判定は、前方視認指標(もしくは脇見状態)に基づいて、先行車に対する衝突の危険度合いにより判定される。例えば、図3に示した前方視認指標により、先々行車22の20%が露出している状態や先々行車22の50%が露出している状態である時に先々行車との衝突判定がありと判断される。
【0056】
ステップS7で衝突判定があると判断された場合、ステップS8で、図6に示した先々行車との車間距離及び先々行車との相対速度の関係のマップ(マップ2)に基づいて走行制御が実行される。
【0057】
マップ2では、先々行車に接近するに従ってA1〜E1までの5種類の制御態様が設定され、順次走行制御が実行される。A1〜E1までの制御態様は、前述したA〜Eまでの制御態様に対し制御開始のタイミングが早くなるように設定されている。制御態様の内容は前述したA〜Eと同一である。
【0058】
つまり、運転者からの前方視認の状態を基にして、先々行車との車間距離、相対速度に応じて、先ず、音や表示により警報装置を早めに作動させて接近を知らせ、次に、シートベルト6の振動や軽いブレーキにより体感警告により運転者に接近を早めに知らせる。車間距離が短くなって(相対速度が速くなって)衝突の危険が高まると、シート8のサポート装置9を早めに作動させて乗員の大腿部等を拘束し、更に、シートベルト6の作動装置7を早めに作動させて乗員をシート8に拘束する。先々行車22との車間距離が最短になった状態で早めにブレーキ5を緊急に自動作動させる。
【0059】
これにより、運転者の目線からの見え方に基づき、先々行車との車間距離(相対速度)に応じて警報を早めに発して乗員を早めに拘束したり、緊急の自動ブレーキを早めに作動させる制御を段階的に実施することができる。つまり、先々行車の前方視認指標が低いほど(または、脇見状態にある時ほど)走行制御の作動タイミングを早めることができる。
【0060】
図4のフローチャートに戻り、ステップS7で衝突判定がなしと判断された場合、ステップS9で先行車の先々行車への衝突判定が行なわれる。衝突判定は、前方視認指標に基づいて、先行車が先々行車に衝突する危険度合いにより判定される。例えば、図3に示した前方視認指標により、先々行車22の露出の割合が0%の状態の時に先々行車22に対する先行車の衝突判定がありと判断される。
【0061】
ステップS9で衝突判定があると判断された場合、ステップS10で、図7に示した先々行車との車間距離及び先々行車との相対速度の関係のマップ(マップ3)に基づいて走行制御が実行される。
【0062】
マップ3では、先行車の全長に応じた補正量が加味されて先々行車に接近するに従ってA2〜E2までの5種類の制御態様が設定され、順次走行制御が実行される。A2〜E2までの制御態様は、前述したA〜Eまでの制御態様に対し制御開始のタイミングが早くなるように設定されている。制御態様の内容は前述したA〜Eと同一である。
【0063】
つまり、運転者からの前方視認の状態を基にして、先行車の全長を見込んで、先々行車との車間距離、相対速度に応じて、先ず、音や表示により警報装置を先行車の全長を見込んで早めに作動させて接近を知らせ、次に、シートベルト6の振動や軽いブレーキにより体感警告により運転者に接近を先行車の全長を見込んで早めに知らせる。車間距離が短くなって(相対速度が速くなって)衝突の危険が高まると、シート8のサポート装置9を先行車21の全長を見込んで早めに作動させて乗員の大腿部等を拘束し、更に、シートベルト6の作動装置7を先行車の全長を見込んで早めに作動させて乗員をシート8に拘束する。先々行車22との車間距離が最短になった状態で先行車の全長を見込んで早めにブレーキ5を緊急に自動作動させる。
【0064】
これにより、運転者の目線から見て先々行車が見えていない場合であっても、先々行車との車間距離(相対速度)に応じて警報を先行車の全長を見込んで早めに発して乗員を早めに拘束したり、先行車の全長を見込んで緊急の自動ブレーキを早めに作動させる制御を段階的に実施することができる。
【0065】
即ち、運転者が見えている先々行車の状況に応じて、より早めに(より遠くから)走行制御を実施することができ、危険を回避した適切なタイミングで走行制御を実施する(警報を発する)ことができる。つまり、先々行車が見えていない状態で先行車が先々行車に対して衝突する虞がある場合に、走行制御の作動タイミングをより早めることができる。この場合も、脇見状態にある時に早めに走行制御を実施する(警報を発する)。
【0066】
一方、図4のフローチャートに戻り、ステップS9で衝突判定がなしと判断された場合、ステップS11で通常の走行制御が実行される。尚、通常の走行制御は先行車に対して実施されるものであり、別途設定された条件により実行されたり、ステップS6におけるマップ1に基づく制御が実施されることで実行される。
【0067】
上述した車両の走行制御装置では、運転者が見えている状態に基づいて制御のタイミングを調整するので、前方視界に対して見えない危険に対してはより早めに警報を発したり乗員を拘束する等の走行制御を実行することができ、衝突に対する安全性を高めることができる。また、運転者が見えている前方の先行車や先々行車に対しては、適切なタイミングで警報を発したり乗員を拘束する等の走行制御を実行することができ、運転者が煩わしさを感じることがない。また、監視カメラ14で運転者の覚醒度合いや脇見の状態を監視して制御に反映しているので、前方の状況が視界に入ってる条件で運転者の状態に応じて早めの制御を実施することができる。
【0068】
従って、運転者の前方の把握状態に応じて車間距離の制御や衝突回避の制御を的確に行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明は、車両前方の状況に応じて、例えば、先行車との車間距離の状況や先行車に対する衝突の危険度合いに応じて、車両の走行を制御する車両の走行制御装置の産業分野で利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明の一実施形態例に係る走行制御装置を備えた車両の概念側面図である。
【図2】図1の正面図である。
【図3】先々行車の視認状況の説明図である。
【図4】本発明の一実施形態例に係る走行制御装置の制御フローチャート図である。
【図5】オートクルーズコントロール制御装置及びプリクラッシュ制御装置の作動マップの一例を表すグラフである。
【図6】オートクルーズコントロール制御装置及びプリクラッシュ制御装置の作動マップの一例を表すグラフである。
【図7】オートクルーズコントロール制御装置及びプリクラッシュ制御装置の作動マップの一例を表すグラフである。
【符号の説明】
【0071】
1 車両
2 ミリ波レーダ
3 コントローラ
4 エンジン
5 制御装置(ブレーキ)
6 シートベルト
7 作動装置
8 シート
9 サポート装置
10 警報装置
11 Aピラー
12 前方カメラ
13 ルームミラー
14 監視カメラ
15 車々間ユニット
21 先行車
22 先々行車

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前方の状況に応じて車両の状態を変更するように作動する状態作動装置と、
先々行車を検知する先々行車検知手段と、
運転者からの前方の視認状態の情報を入手する視認状態入手手段と、
前記先々行車検知手段からの情報及び前記視認状態入手手段の情報が入力され、前記先々行車両の存在が確認された時の前方の視認状態に応じて前記状態作動装置の作動タイミングを調整する調整制御手段と
を備えたことを特徴とする車両の走行制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両の走行制御装置において、
前記調整制御手段では、前記先々行車の視認割合が低くなるに従って前記状態作動装置の作動タイミングを早めに調整する
ことを特徴とする車両の走行制御装置。
【請求項3】
請求項2に記載の車両の走行制御装置において、
前記調整制御手段は、前記先々行車との距離に応じて前記状態作動装置の作動タイミングが設定され、
前記調整制御手段では、前記先々行車の視認割合が所定割合を下回った際に、前記先行車の全長を加味した距離に応じて前記状態作動装置の作動タイミングを設定する
ことを特徴とする車両の走行制御装置。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の車両の走行制御装置において、
前記先々行車検知手段は、ミリ波レーダであり、
前記視認状態入手手段は、運転者の目線の高さから前方を撮影するカメラ装置である
ことを特徴とする車両の走行制御装置。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の車両の走行制御装置において、
前記状態作動装置は、車両減速装置及び乗員保護装置及び警報装置の少なくとも一つからなる
ことを特徴とする車両の走行制御装置。
【請求項6】
請求項5に記載の車両の走行制御装置において、
前記車両減速装置は、エンジンの出力を制御する装置、制動装置を制御する装置の少なくとも一つであり、
前記乗員保護装置は、乗員をシートに拘束するシートベルトを引き込む装置、乗員が着座するシートを作動させて乗員をシートに拘束する装置の少なくとも一つである
ことを特徴とする車両の走行制御装置。
【請求項7】
請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載の車両の走行制御装置において、
前記運転者の状態を監視して前記運転者の状態を前記調整制御手段に出力する運転者監視装置が備えられ、
前記調整制御手段では、前記運転者の運転意識の低下が判断された際に前記状態作動装置の前記作動タイミングを補正する
ことを特徴とする車両の走行制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−90840(P2009−90840A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−264114(P2007−264114)
【出願日】平成19年10月10日(2007.10.10)
【出願人】(000006286)三菱自動車工業株式会社 (2,892)
【Fターム(参考)】