車両の車速制限装置
【課題】車速制限動作を解除した際に運転者の意図に沿った加速を実現することができる車両の車速制限装置を提供する。
【解決手段】車速制限動作が解除された際のギヤ段を、車速制限動作が解除される直前のアクセル開度の変化割合dpapbfが第2の所定の変化割合X2よりも小さいとき(dpapbf<X2)にLoギヤ側に1つだけ小さいギヤ段に、車速制限動作が解除される直前のアクセル開度の変化割合dpapbfが第2の所定の変化割合X2よりも大きくかつ第3の所定の変化割合X3よりも小さいとき(X2≦dpapbf<X3)にLoギヤ側に2つ小さいギヤ段に、更に、車速制限動作が解除される直前のアクセル開度の変化割合dpapbfが第3の所定の変化割合X3よりも大きいとき(dpapbf≧X3)にLoギヤ側に実現可能な最小のギヤ段にそれぞれ変更している。
【解決手段】車速制限動作が解除された際のギヤ段を、車速制限動作が解除される直前のアクセル開度の変化割合dpapbfが第2の所定の変化割合X2よりも小さいとき(dpapbf<X2)にLoギヤ側に1つだけ小さいギヤ段に、車速制限動作が解除される直前のアクセル開度の変化割合dpapbfが第2の所定の変化割合X2よりも大きくかつ第3の所定の変化割合X3よりも小さいとき(X2≦dpapbf<X3)にLoギヤ側に2つ小さいギヤ段に、更に、車速制限動作が解除される直前のアクセル開度の変化割合dpapbfが第3の所定の変化割合X3よりも大きいとき(dpapbf≧X3)にLoギヤ側に実現可能な最小のギヤ段にそれぞれ変更している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、予め設定された制限車速よりも走行車速が高くなるときに車速制限動作によって走行車速を制限車速に制限する車両の車速制限装置に関し、詳しくは、車速制限動作を解除したときの運転者の意図に応じた変速比への変更を可能にする対策に係る。
【背景技術】
【0002】
近年より、予め設定された制限車速の範囲内での車両の走行を可能にする車速制限装置が知られている。この車速制限装置では、運転者によるアクセルペダルの開度(アクセル開度)に連動するスロットル開度よって要求される走行車速が、予め設定された制限車速よりも高くなるときに、車速制限動作を行ってスロットル開度を小さく変更し、上記走行車速を上記制限車速に制限することが行われる。
【0003】
そして、緊急時の加速や追い越し時の加速を必要とする場合には、車速制限装置による車速制限動作を車速制限解除手段により解除することで、運転者のアクセル開度に反映した加速が得られるようにしている。この車速制限解除手段としては、アクセル開度を検出するアクセル開度検出手段によって検出されたアクセル開度が所定の開度以上であるときに車速制限装置による車速制限動作を解除するようにしたものが従来より知られている(例えば、特許文献1参照)。また、アクセル開度がキックダウン位置まで踏み込まれたときに、車速制限装置による車速制限動作を解除するようにした車速制限解除手段もある。
【特許文献1】特開2006−299909号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記従来のものでは、車速制限装置による車速制限動作を解除するに当たって、アクセル開度を所定の開度以上踏み込んだり、アクセル開度をキックダウン位置まで踏み込む必要がある。その場合、アクセル開度に応じた走行車速に基づいて自動変速機の変速比が設定されていることから、車速制限装置による車速制限動作が解除された途端に変速比が変更されると、運転者が意図する加速以上の加速が行われることになる。これは、車速制限装置による車速制限動作を解除するに当たって踏み込んだアクセル開度によって、変速比が大きく変更、つまり走行車速に基づいて設定されていた変速比が実現可能な限り小さな変速比に一気に変更されるおそれがあるからであり、これでは、運転者が緩加速を要求しているにもかかわらず、アクセル開度の踏み込み位置に応じて変速比が変更されることになり、運転者の意図に沿った加速を実現することができない。
【0005】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、車速制限装置による車速制限動作を解除した際に運転者の意図に沿った加速を実現することができる車両の車速制限装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明では、予め制限された制限車速よりも走行車速が高くなるときに、車速制限動作を行って上記走行車速を上記制限車速に制限する車両の車速制限装置を前提とし、上記走行車速を、アクセル開度によって要求されるスロットル開度に応じて設定している一方、上記制限車速を、上記スロットル開度に制限を加えた制限スロットル開度に応じて設定している。更に、上記スロットル開度に応じた走行車速に基づいて自動変速機の変速比を設定する変速制御手段と、上記車速制限動作を解除する車速制限解除手段と、アクセル開度を検出するアクセル開度検出手段と、上記アクセル開度検出手段により検出されたアクセル開度によりそのアクセル開度の変化割合を算出するアクセル開度変化割合算出手段と、上記車速制限解除手段により車速制限動作が解除された際に上記変速制御手段により設定されている自動変速機の変速比を、上記車速制限解除手段により車速制限動作が解除される直前に上記アクセル開度変化割合算出手段により算出されたアクセル開度の変化割合に応じて変更する変速比変更手段とを備えている。
【0007】
この特定事項により、車速制限動作を解除するに当たり、アクセル開度を所定の開度以上踏み込んだり、アクセル開度をキックダウン位置まで踏み込むなどして、車速制限動作が解除されても、その車速制限動作が解除された際の変速比は、車速制限動作が解除される直前にアクセル開度変化割合算出手段により算出されたアクセル開度の変化割合に応じたものに変更される。つまり、車速制限動作を解除するに当たって、アクセル開度が所定の開度以上踏み込まれたり、キックダウン位置まで踏み込まれていても、車速制限動作を解除する直前の運転者の意図を反映するアクセル開度の変化割合に応じて変速比が変更されることになる。これにより、車速制限解除手段により車速制限動作が解除された際に運転者の要求する加速が得られ、運転者の意図に沿った加速を実現することが可能となる。
【0008】
また、車速制限動作が解除された際の変速比が、その車速制限動作が解除される直前のアクセル開度の変化割合に応じて変更されることにより、運転者によるアクセルペダルの踏み込み方次第で車速制限動作が解除された際の変速比が決定されることになる。これにより、高出力の原動機を備えた車両やファミリータイプの車両などの穏やかな加速を要求する車両や、低出力の原動機を備えた車両やスポーツタイプの車両などの強力な加速を要求する車両などのように性格の相反する車両に対して別個の制御プログラムを複数用意して車速制限動作が解除された際の変速比を個々に決定しなくとも単一の制御プログラムによって運転者の望む加速が得られ、車速制限動作が解除された際の変速比を決定する制御プログラムの共用化を図ることが可能となる。
【0009】
特に、車速制限解除手段を具体的に特定するものとして、以下の構成が掲げられる。つまり、上記車速制限解除手段を、上記アクセル開度変化割合算出手段により算出されたアクセル開度の変化割合が所定割合以上であるときに、上記車速制限動作を解除するものであるとしている。
【0010】
この特定事項により、アクセル開度の変化割合が所定割合以上であるときに車速制限動作が解除され、そのときの所定割合を超えるアクセル開度の変化割合に応じて変速比が変更されることになる。これにより、所定割合を超えるアクセル開度の変化割合に応じて変更された変速比によって、車速制限動作が解除された際に運転者の要求する加速がスムーズに得られ、運転者の意図に沿った加速を円滑に実現することが可能となる。しかも、車速制限解除手段を別途設ける必要がなく、実施する上で非常に有利なものとなる。
【0011】
特に、変速比変更手段をより具体的に特定するものとして、以下の構成が掲げられる。つまり、上記変速比変更手段により、上記車速制限解除手段により車速制限動作が解除された際の変速比を、その車速制限動作が解除される直前のアクセル開度の変化割合が小さいほど小さく変更している一方、上記車速制限動作が解除される直前のアクセル開度の変化割合が大きいほど大きく変更している。
【0012】
この特定事項により、車速制限動作が解除された際の変速比の変更は、運転者が緩加速を要求しているときには運転者の意図を反映するアクセル開度の小さな変化割合に応じて低速側に僅かに変更されるように小さなものとなる一方、運転者が急加速を要求しているときには運転者の意図を反映するアクセル開度の大きな変化割合に応じてより低速側に変更されるように大きなものとなる。これにより、車速制限動作が解除された際に運転者の要求する加速がアクセル開度の変化割合に応じて的確に得られ、運転者の意図に沿った加速を実現することが可能となる。
【0013】
また、上記目的を達成するため、本発明が講じたその他の車速制限装置として、以下の構成が掲げられる。つまり、予め制限された制限車速よりも走行車速が高くなるときに、車速制限動作を行って上記走行車速を上記制限車速に制限する車両の車速制限装置を同様に前提とし、上記走行車速を、アクセル開度によって要求されるスロットル開度に応じて設定している一方、上記制限車速を、上記スロットル開度に制限を加えた制限スロットル開度に応じて設定している。更に、上記スロットル開度に応じた走行車速に基づいて自動変速機の変速比を設定する変速制御手段と、上記車速制限動作を解除する車速制限解除手段と、上記車両に前後方向から作用する前後走行負荷の度合いを検出する前後走行負荷検出手段と、上記車速制限解除手段により車速制限動作が解除された際に上記変速制御手段により設定されている自動変速機の変速比を、上記車速制限動作が解除される直前に上記前後走行負荷検出手段により検出された前後走行負荷の度合いに応じて変更する変速比変更手段とを備えている。
【0014】
この特定事項により、車速制限動作が解除されると、その車速制限動作が解除された際の変速比は、車速制限動作が解除される直前に前後走行負荷検出手段により検出された前後走行負荷の度合いに応じて変更される。つまり、車速制限動作が解除される直前の車体に作用する前後走行負荷の度合いに応じて変速比が変更されることになる。これにより、車速制限解除手段により車速制限動作が解除された際に運転者の要求する加速が前後走行負荷の度合いに応じて円滑に得られ、運転者の意図に沿った加速を実現することが可能となる。
【0015】
また、車速制限動作が解除された際の変速比が、その車速制限動作が解除される直前の前後走行負荷の度合いに応じて変更されることにより、前後走行負荷の車体への作用のし方次第で車速制限動作が解除された際の変速比が決定されることになる。これにより、高出力の原動機を備えた車両やファミリータイプの車両などの穏やかな加速を要求する車両や、低出力の原動機を備えた車両やスポーツタイプの車両などの強力な加速を要求する車両などのように性格の相反する車両に対して別個の制御プログラムを複数用意して車速制限動作が解除された際の変速比を個々に決定しなくとも単一の制御プログラムによって運転者の望む加速が得られ、車速制限動作が解除された際の変速比を前後走行負荷の度合いに応じて決定する制御プログラムの共用化を図ることが可能となる。
【0016】
特に、変速比変更手段をより具体的に特定するものとして、以下の構成が掲げられる。つまり、上記変速比変更手段により、上記車速制限解除手段により車速制限動作が解除された際の変速比を、その車速制限動作が解除される直前に上記前後走行負荷検出手段により検出された前後走行負荷の度合いが大きいほど大きく変更している一方、上記車速制限解除手段により車速制限動作が解除される直前に上記前後走行負荷検出手段により検出された前後走行負荷の度合いが小さいほど小さく変更している。
【0017】
この特定事項により、車速制限動作が解除された際の変速比の変更は、車両が下り坂に差し掛かったときに小さくなる前後走行負荷の度合いに応じて低速側に僅かに変更されるように小さなものとなる一方、車両が上り坂に差し掛かったときに大きくなる前後走行負荷の度合いに応じてより低速側に変更されるように大きなものとなる。これにより、車速制限解除手段により車速制限動作が解除された際に運転者の要求する加速が前後走行負荷の度合いに応じて的確に得られ、運転者の意図に沿った加速を実現することが可能となる。
【0018】
また、上記目的を達成するため、本発明が講じたその他の車速制限装置として、以下の構成が掲げられる。つまり、予め制限された制限車速よりも走行車速が高くなるときに、車速制限動作を行って上記走行車速を上記制限車速に制限する車両の車速制限装置を同様に前提とし、上記走行車速を、アクセル開度によって要求されるスロットル開度に応じて設定している一方、上記制限車速を、上記スロットル開度に制限を加えた制限スロットル開度に応じて設定している。更に、上記スロットル開度に応じた走行車速に基づいて自動変速機の変速比を設定する変速制御手段と、上記車速制限動作を解除する車速制限解除手段と、ステアリング舵角の度合いまたは車両に左右方向から作用する横加速度の度合いを検出する左右負荷検出手段と、上記車速制限解除手段により車速制限動作が解除されたときに上記変速制御手段により設定されている自動変速機の変速比を、上記車速制限動作が解除される直前に上記左右負荷検出手段により検出されたステアリング舵角の度合いまたは横加速度の度合いに応じて変更する変速比変更手段とを備えている。
【0019】
この特定事項により、車速制限解除手段による車速制限動作が解除されると、その車速制限動作が解除された際の変速比は、車速制限動作が解除される直前に左右負荷検出手段により検出された車線変更時などのステアリング舵角の度合いまたはコーナリング時などの横加速度の度合いに応じて変更される。つまり、車速制限動作が解除される直前の車体に作用するステアリング舵角の度合いまたは横加速度の度合いに応じて変速比が変更されることになる。これにより、車速制限動作が解除された際に運転者の要求する加速がステアリング舵角の度合いまたはコーナリング時などの横加速度の度合いに応じて安心して得られ、運転者の意図に沿った加速を安全に実現することが可能となる。
【0020】
また、車速制限動作が解除された際の変速比が、その車速制限動作が解除される直前のステアリング舵角の度合いまたはコーナリング時などの横加速度の度合いに応じて変更されることにより、ステアリング舵角またはコーナリング時などの横加速度の車体への作用のし方次第で車速制限動作が解除された際の変速比が決定されることになる。これにより、高出力の原動機を備えた車両やファミリータイプの車両などの穏やかな加速を要求する車両や、低出力の原動機を備えた車両やスポーツタイプの車両などの強力な加速を要求する車両などのように性格の相反する車両に対して別個の制御プログラムを複数用意して車速制限動作が解除された際の変速比を個々に決定しなくとも単一の制御プログラムによって運転者の望む加速が得られ、車速制限動作が解除された際の変速比をステアリング舵角の度合いまたはコーナリング時などの横加速度の度合いに応じて決定する制御プログラムの共用化を図ることが可能となる。
【0021】
特に、変速比変更手段をより具体的に特定するものとして、以下の構成が掲げられる。つまり、上記変速比変更手段によって、上記車速制限解除手段により車速制限動作が解除されたときの変速比を、その車速制限動作が解除される直前に上記左右負荷検出手段により検出されたステアリング舵角の度合いまたは横加速度の度合いが小さいときに大きく変更している一方、上記車速制限動作が解除される直前に上記左右負荷検出手段により検出されたステアリング舵角の度合いまたは横加速度の度合いが大きいときに小さく変更している。
【0022】
この特定事項により、車速制限動作が解除された際の変速比は、車線を大きく変更するときなどに大きくなるステアリング舵角の度合いや、大きなコーナに差し掛かって大きくコーナリングするときなどに大きくなる横加速度の度合いに応じて低速側に僅かに変更されるように小さなものとなる一方、車線を小さく変更するときなどに小さくなるステアリング舵角の度合いや、小さなコーナリングに差し掛かって小さくコーナリングするときなどに小さくなる横加速度の度合いに応じてより低速側に変更されるように大きなものとなる。これにより、車速制限動作が解除された際に運転者の要求する加速がステアリング舵角の度合いまたは横加速度の度合いに応じて安心して得られ、運転者の意図に沿った加速を安全に実現することが可能となる。
【0023】
特に、変速比変更手段による変速比の変更をアクセル開度の変化割合に加え他のパラメータにより行うものとして、以下の構成が掲げられる。つまり、車両に前後方向から作用する前後走行負荷の度合いを検出する前後走行負荷検出手段を備えている。そして、上記変速比変更手段によって、上記車速制限解除手段により車速制限動作が解除されたときの変速比を、その車速制限動作が解除される直前に上記アクセル開度変化割合算出手段により算出されたアクセル開度の変化割合および上記前後走行負荷検出手段により検出された前後走行負荷の度合いに応じて変更している。
【0024】
この特定事項により、車速制限動作が解除された際の変速比は、アクセル開度が所定の開度以上踏み込まれたり、キックダウン位置まで踏み込まれているにもかかわらず、運転者の意図を反映するアクセル開度の変化割合と車両に前後方向から作用する前後走行負荷の度合いとに応じて変更されることになる。これにより、車速制限動作が解除された際に運転者の要求する加速がアクセル開度の変化割合および車両の前後走行負荷の度合いに応じて的確に得られ、運転者の意図に沿った加速を前後走行負荷の度合いを考慮しつつ円滑に実現することが可能となる。
【0025】
そして、アクセル開度の変化割合に加え他のパラメータにより行う場合の変速比変更手段による変速比の変更をより具体的に特定するものとして、以下の構成が掲げられる。つまり、上記変速比変更手段によって、上記アクセル開度の変化割合が小さいほど小さく変更される変速比を、上記前後走行負荷検出手段により検出された前後走行負荷の度合いが大きいときに大きく変更し直す一方、上記アクセル開度の変化割合が大きいほど大きく変更される変速比を、上記前後走行負荷検出手段により検出された前後走行負荷の度合いが小さいときに小さく変更し直している。
【0026】
この特定事項により、車速制限動作が解除された際の変速比の変更は、運転者が緩加速を要求しているときには運転者の意図を反映するアクセル開度の小さな変化割合に応じて低速側に僅かに変更されるように小さなものとなるが、前後走行負荷の度合いが大きければ大きく変更し直している。一方、運転者が急加速を要求しているときには運転者の意図を反映するアクセル開度の大きな変化割合に応じてより低速側に変更されるように大きなものとなるが、前後走行負荷の度合いが小さければ小さく変更し直している。これにより、車速制限動作が解除された際に運転者の要求する加速がアクセル開度の変化割合のみならず車両に作用する前後走行負荷の度合いに応じてより的確に得られ、運転者の意図に沿った加速を前後走行負荷の度合いを考慮しつつより円滑に実現することが可能となる。
【0027】
これに対し、変速比変更手段による変速比の変更をアクセル開度の変化割合に加えその他のパラメータにより行うものとして、以下の構成が掲げられる。つまり、ステアリング舵角の度合いまたは車両に左右方向から作用する横加速度の度合いを検出する左右負荷検出手段を備えている。そして、上記変速比変更手段によって、上記車速制限解除手段により車速制限動作が解除されたときの変速比を、上記アクセル開度変化割合算出手段により算出されたアクセル開度の変化割合および上記左右負荷検出手段により検出されたステアリング舵角の度合いまたは横加速度の度合いに応じて変更している。
【0028】
この特定事項により、車速制限動作が解除された際の変速比は、アクセル開度が所定の開度以上踏み込まれたり、キックダウン位置まで踏み込まれているにもかかわらず、運転者の意図を反映するアクセル開度の変化割合と車両に左右方向から作用するステアリング舵角の度合いまたは横加速度の度合いとに応じて変更されることになる。これにより、車速制限動作が解除された際に運転者の要求する加速がアクセル開度の変化割合および車両のステアリング舵角の度合いまたは横加速度の度合いに応じて安心して得られ、運転者の意図に沿った加速をステアリング舵角の度合いまたは横加速度の度合いを考慮しつつ安全に実現することが可能となる。
【0029】
そして、アクセル開度の変化割合に加えその他のパラメータにより行う場合の変速比変更手段による変速比の変更をより具体的に特定するものとして、以下の構成が掲げられる。つまり、上記変速比変更手段によって、上記アクセル開度の変化割合が小さいほど小さく変更される変速比を、上記左右負荷検出手段により検出されたステアリング舵角の度合いまたは横加速度の度合いが小さいときに大きく変更し直す一方、上記アクセル開度の変化割合が大きいほど大きく変更される変速比を、上記左右負荷検出手段により検出されたステアリング舵角の度合いまたは横加速度の度合いが大きいときに小さく変更し直している。
【0030】
この特定事項により、車速制限動作が解除された際の変速比の変更は、運転者が緩加速を要求しているときには運転者の意図を反映するアクセル開度の小さな変化割合に応じて低速側に僅かに変更されるように小さなものとなるが、ステアリング舵角の度合いまたは横加速度の度合いが小さければ大きく変更し直している。一方、運転者が急加速を要求しているときには運転者の意図を反映するアクセル開度の大きな変化割合に応じてより低速側に変更されるように大きなものとなるが、ステアリング舵角の度合いまたは横加速度の度合いが大きければ小さく変更し直している。これにより、車速制限動作が解除された際に運転者の要求する加速がアクセル開度の変化割合のみならず車両に作用するステアリング舵角の度合いまたは横加速度の度合いに応じてより的確に得られ、運転者の意図に沿った加速をステアリング舵角の度合いまたは横加速度の度合いを考慮しつつより安全に実現することが可能となる。
【0031】
更に、変速比変更手段をさらに具体的に特定するものとして、以下の構成が掲げられる。つまり、上記変速比変更手段に、上記車速制限解除手段により車速制限動作が解除されたときの変速比を、アクセル開度、または車両の原動機の回転数とタービンの回転数との差回転、および車速により設定された第1の変速比判断条件と、この第1の変速比判断条件とは異なる第2の変速比判断条件とに基づいて変更するように切り換える切換スイッチを備える。そして、上記切換スイッチを、車両の性格、または車両の原動機が発生する出力に応じて切り換えるようにしている。
【0032】
この特定事項により、アクセル開度または車両の原動機の回転数とタービンの回転数との差回転、および車速により設定された第1の変速比判断条件と、この第1の変速比判断条件とは異なる第2の変速比判断条件とを切り換えて車速制限動作が解除されたときに変速比を変更する切換スイッチが、車両の性格または車両の原動機が発生する出力に応じて切り換えられるので、この切換スイッチを第1の変速比判断条件に切り換えることで、車速制限動作が解除されたときの変速比が第1の変速比判断条件に応じて変更されて、穏やかな加速が得られることになる。一方、切換スイッチを第2の変速比判断条件に切り換えることで、車速制限動作が解除されたときの変速比が第2の変速比判断条件に応じて変更されて、第1の変速比判断条件とは異なる強力な加速が得られることになる。これにより、車両のタイプを選択した運転者の意図通りの加速を実現することが可能となる。
【発明の効果】
【0033】
以上、要するに、車速制限動作が解除された際の変速比をその車速制限動作が解除される直前のアクセル開度の変化割合に応じて変更することで、車速制限動作が解除された際の変速比を運転者の意図を反映するアクセル開度の変化割合に応じて変更し、車速制限動作が解除された際に運転者の要求する加速が得られ、運転者の意図に沿った加速を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0035】
本発明の実施例1に係る車速制限装置を備えた車両のパワートレーンについて図1を参照して説明する。この例の車両は、FR(フロントエンジン・リアドライブ)型車両であって、原動機としてのエンジン1、トルクコンバータ2を有する自動変速機3、及び、ECU100などが搭載されており、そのECU100により実行されるプログラムによって本発明の車速制限装置による車速制限動作およびこれの解除動作が実現される。これらエンジン1、トルクコンバータ2、自動変速機3、及び、ECU100の各部について以下に説明する。
【0036】
−エンジン−
図2に示すように、エンジン1の出力軸であるクランクシャフト11はトルクコンバータ2の入力軸に接続される。クランクシャフト11の回転数(エンジン回転数)はエンジン回転数センサ201によって検出される。
【0037】
エンジン1に吸入される空気量は、電子制御式のスロットルバルブ12により調整される。スロットルバルブ12は、運転者のアクセルペダル操作とは独立してスロットル開度を電子的に制御することが可能であり、その開度(スロットル開度)はスロットル開度センサ202によって検出される。
【0038】
スロットルバルブ12のスロットル開度はECU100によって駆動制御される。具体的には、エンジン回転数センサ201によって検出されるエンジン回転数、及び、運転者のアクセルペダル踏み込み量(アクセル開度)等のエンジン1の運転状態に応じた最適な吸入空気量(目標吸気量)が得られるようにスロットルバルブ12のスロットル開度を制御している。より具体的には、スロットル開度センサ202を用いてスロットルバルブ12の実際のスロットル開度を検出し、その実スロットル開度が、上記目標吸気量が得られるスロットル開度(目標スロットル開度)に一致するようにスロットルバルブ12のスロットルモータをフィードバック制御している。
【0039】
−トルクコンバータ・自動変速機−
トルクコンバータ2は、入力軸側のポンプ羽根車21と、出力軸側のタービン羽根車22(タービン)と、トルク増幅機能を発現するステータ23と、ワンウェイクラッチ24とを備え、ポンプ羽根車21とタービン羽根車22との間で流体を介して動力伝達を行う。
【0040】
トルクコンバータ2には、入力軸と出力軸とを直結状態にするロックアップクラッチ25が設けられており、このロックアップクラッチ25を完全係合させることにより、ポンプ羽根車21とタービン羽根車22とが一体回転する。また、ロックアップクラッチ25を所定のスリップ状態で係合させることにより、駆動時には所定のスリップ量でタービン羽根車22がポンプ羽根車21に追随して回転する。
【0041】
自動変速機3は、ダブルピニオン型の第1遊星歯車装置31、シングルピニオン型の第2遊星歯車装置32、及び、シングルピニオン型の第3遊星歯車装置33を備えた遊星歯車式の変速機である。
【0042】
自動変速機3の入力軸30の回転数(トルクコンバータ2のタービン回転数と同じ)は入力軸回転数センサ203によって検出される。また、自動変速機3の出力軸34の回転数は出力軸回転数センサ204によって検出される。
【0043】
第1遊星歯車装置31のサンギヤS1はクラッチC3を介して入力軸30に選択的に連結される。また、サンギヤS1は、ワンウェイクラッチF2及びブレーキB3を介して非回転部材であるハウジングに選択的に連結され、逆方向(入力軸30の回転と反対方向)の回転が阻止される。第1遊星歯車装置31のキャリアCA1は、ブレーキB1を介してハウジングに選択的に連結されるとともに、そのブレーキB1と並列に設けられたワンウェイクラッチF1により、常に逆方向の回転が阻止される。第1遊星歯車装置31のリングギヤR1は、第2遊星歯車装置32のリングギヤR2と一体的に連結されており、ブレーキB2を介してハウジングに選択的に連結される。
【0044】
第2遊星歯車装置32のサンギヤS2は、第3遊星歯車装置33のサンギヤS3と一体的に連結されており、クラッチC1を介して入力軸30に選択的に連結される。第2遊星歯車装置32のキャリアCA2は、第3遊星歯車装置33のリングギヤR3と一体的に連結されており、クラッチC2を介して入力軸30に選択的に連結されるとともに、ブレーキB4を介してハウジングに選択的に連結される。さらに、キャリアCA2は、ブレーキB4と並列に設けられたワンウェイクラッチF3によって、常に逆方向の回転が阻止される。そして、第3遊星歯車装置33のキャリアCA3は出力軸34に一体的に連結されている。
【0045】
以上の自動変速機3では、摩擦係合要素であるクラッチC1〜C3、ブレーキB1〜B4、及び、ワンウェイクラッチF1〜F3などが、所定の状態に係合または解放されることによってギヤ段(変速段)が設定される。
【0046】
自動変速機3には、運転者により操作されるシフトレバーが設けられており、そのシフトレバーを操作することにより、例えばPレンジ(パーキングレンジ)、Rレンジ(後進走行レンジ)、Nレンジ(ニュートラルレンジ)、Dレンジ(前進走行レンジ)等に切り変えることができる。
【0047】
自動変速機3のクラッチC1〜C3、ブレーキB1〜B4、及び、ワンウェイクラッチF1〜F3の係合・解放状態を図3の作動表に示す。図3の作動表において「●」は「係合」を表し、「空欄」は「解放」を表している。また、「▲」は「エンジンブレーキ時の係合」を表している。
【0048】
この例の自動変速機3において、1速のギヤ段から2速のギヤ段への変速(1→2変速)は、ブレーキB3を係合することにより達成され、エンジンブレーキ作用を発生させる必要があるエンジンブレーキレンジでは、更にブレーキB2を係合する。このブレーキB2は、ブレーキB3よりも相対的に係合トルク容量が小さく設定されている。
【0049】
2速のギヤ段から3速のギヤ段への変速(2→3変速)は、クラッチC3を係合することにより達成され、エンジンブレーキ作用を発生させる必要があるエンジンブレーキレンジでは、更にブレーキB1を係合する。また、3速ギヤ段から4速ギヤ段への変速(3→4変速)は、クラッチC2を係合することにより達成される。
【0050】
そして、4速のギヤ段から5速のギヤ段への変速(4→5アップ変速)は、クラッチC1を解放すると同時に、ブレーキB1を係合するクラッチツウクラッチ変速制御によって達成される。
【0051】
以上のエンジン1及び自動変速機3(トルクコンバータ2も含む)はECU100によって制御される。
【0052】
−ECU−
ECU100は、図4に示すように、CPU101、ROM102、RAM103及びバックアップRAM104などを備えている。
【0053】
ROM102には、車両の基本的な運転に関する制御の他、車両の走行状態に応じて自動変速機3のギヤ段の設定する変速制御を実行するためのプログラムを含む各種プログラムなどが記憶されている。この変速制御の具体的な内容については後述する。
【0054】
CPU101は、ROM102に記憶された各種制御プログラムやマップに基づいて演算処理を実行する。また、RAM103はCPU101での演算結果や各センサから入力されたデータ等を一時的に記憶するメモリであり、バックアップRAM104はエンジン1の停止時にその保存すべきデータ等を記憶する不揮発性のメモリである。
【0055】
これらCPU101、ROM102、RAM103、及び、バックアップRAM104はバス106を介して互いに接続されるとともに、インターフェース105と接続されている。
【0056】
ECU100のインターフェース105には、エンジン回転数センサ201、スロットル開度センサ202、入力軸回転数センサ203、出力軸回転数センサ204、アクセルペダルの開度つまりアクセル開度を検出するアクセル開度センサ205、自動変速機3のシフト位置を検出するシフトポジションセンサ206、車両の車速を検出する車速センサ207、車両の加速度Gを検出する加速度センサ208、車両に前後方向から作用する勾配路走行時などの前後走行負荷の度合いを検出する前後走行負荷検出手段としての前後走行負荷センサ209、及び、ステアリング舵角の度合いまたは車両に左右方向から作用する横加速度の度合いを検出する左右負荷検出手段としての左右負荷センサ210などが接続されており、これらの各センサからの信号がECU100に入力される。
【0057】
ECU100は、上記した各種センサの出力信号に基づいて、エンジン1のスロットルバルブ12の開度制御を含むエンジン1の各種制御を実行する。
【0058】
ECU100は、トルクコンバータ2にロックアップクラッチ制御信号を出力する。このロックアップクラッチ制御信号に基づいてロックアップクラッチ25の係合圧が制御される。また、ECU100は、自動変速機3にソレノイド制御信号(油圧指令信号)を出力する。このソレノイド制御信号に基づいて、自動変速機3の油圧回路のリニアソレノイドバルブやオンオフソレノイドバルブなどが制御され、所定の変速ギヤ段(1速〜5速)を構成するように、クラッチC1〜C3、ブレーキB1〜B4、及び、ワンウェイクラッチF1〜F3などが、所定の状態に係合または解放される。
【0059】
さらに、ECU100は、後述する制限車速よりも車両の走行車速が高いときに、走行車速を制限車速に制限する車速制限動作を行う。つまり、運転者によるアクセルペダルの開度によって要求されるスロットル開度に応じた走行車速が、実際の実スロットル開度に応じて制限される制限車速よりも高いときに、車速制限動作を行って上記走行車速を上記制限車速に制限するようにしている。この制限車速は、実スロットル開度に制限を加えた制限スロットル開度に応じて設定され、実スロットル開度が制限スロットル開度よりも大きくならないような車速制限動作が行われる。この場合、制限車速の設定は、運転席のダッシュボード付近に設けられた手動スイッチにより行われ、車速制限動作の解除も上記手動スイッチにより行うことが可能である。
【0060】
そして、ECU100は変速制御手段を備え、この変速制御手段により下記の「変速制御」を実行する。
【0061】
まず、この例の変速制御に用いる変速マップについて図5を参照して説明する。
【0062】
図5に示す変速マップは、車速及びスロットル開度をパラメータとし、それら車速及びスロットル開度に応じて、適正なギヤ段を求めるための複数の領域が設定されたマップであって、ECU100のROM102内に記憶されている。変速マップの各領域は複数の変速線(ギヤ段の切り換えライン)によって区画されている。なお、図5に示す変速マップでは、シフトダウン変更線のみを示している。
【0063】
次に、変速制御の基本動作について説明する。
【0064】
ECU100は、車速センサ207、スロットル開度センサ202およびアクセル開度センサ205の出力信号に基づいて、図5の変速マップを参照して目標ギヤ段を算出し、その目標ギヤ段と現在のギヤ段とを比較して変速操作が必要であるか否かを判定する。
【0065】
その判定結果により、変速の必要がない場合(目標ギヤ段と現在のギヤ段とが同じで、ギア段が適切に設定されている場合)には、現在のギヤ段を維持するソレノイド制御信号(油圧指令信号)を自動変速機3に出力する。
【0066】
一方、目標ギヤ段と現在のギヤ段とが異なる場合には変速制御を行う。例えば、自動変速機3のギヤ段が「5速」の状態で走行している状況から、車両の走行状態が変化して、シフトダウン変更線[5→4]を跨いで変化した場合、変速マップから算出される目標ギヤ段が「4速」となり、その4速のギヤ段を設定するソレノイド制御信号(油圧指令信号)を自動変速機3に出力して、5速のギヤ段から4速のギヤ段への変速(5→4ダウン変速)を行う。
【0067】
また、ECU100のCPU101は、アクセル開度センサ205の出力信号(アクセル開度)によりそのアクセル開度の変化割合を算出するアクセル開度変化割合算出手段221を備えている。更に、CPU101は、車速制限動作を解除する車速制限解除手段を備え、この車速制限解除手段によって車速制限動作が一時的に解除つまりオーバライドされる。この車速制限解除手段は、アクセル開度変化割合算出手段221により算出されたアクセル開度の変化割合dpapbfと、ROM102に記憶されたアクセル開度の第1の所定の変化割合X1とを比較し、アクセル開度変化割合算出手段221によるアクセル開度の変化割合dpapbfがROM102の第1の所定の変化割合X1よりも大きいとき(dpapbf>X1)に、車走制限動作を解除するものである。また、ROM102は、アクセル開度の第1の所定の変化割合X1よりも大きな第2の所定の変化割合X2(X2>X1)、及び、この第2の所定の変化割合X2よりも大きな第3の所定の変化割合X3(X3>X2)を予め記憶している。
【0068】
そして、ECU100は、車速制限解除手段により車速制限動作が解除された際のギヤ段(変速比)を、車速制限動作が解除される直前にアクセル開度変化割合算出手段221により算出されたアクセル開度の変化割合dpapbfに応じて変更する変速比変更手段としてのギヤ段変更手段を備えている。
【0069】
このギヤ段変更手段には、車速制限解除手段により車速制限動作が解除されたときのギヤ段の変更を、図6に示すように、車速とアクセル開度とにより設定された第1のギヤ段判断条件(第1の変速比判断条件)つまり図5の変速マップの各シフトダウン変更線に基づいて1段ずつ段階的に行う場合と、図7に示すように、この第1のギヤ段判断条件とは異なる第2のギヤ段判断条件(第2の変速比判断条件)つまりアクセル開度の変化割合dpapbfに基づいてギヤ段の飛び越しにより複数段一度に行う場合とに切り換える切換スイッチを備えている。本実施例では、切換スイッチは、第2のギヤ段判断条件に切り換えられており、この第2のギヤ段判断条件に基づいて車速制限動作が解除された際のギヤ段を変更している。なお、切換スイッチは、車両の性格、または車両に搭載されるエンジン(原動機)が発生する出力に応じて切り換えられるようにしている。
【0070】
そして、ギヤ段変更手段は、車速制限動作が解除された際のギヤ段を、図8に細かい破線で示すように、その車速制限動作が解除される直前のアクセル開度の変化割合dpapbfが第2の所定の変化割合X2よりも小さいとき(dpapbf<X2)にLoギヤ側に1つ小さいギヤ段に、図8に粗い破線で示すように、車速制限動作が解除される直前のアクセル開度の変化割合dpapbfが第2の所定の変化割合X2よりも大きくかつ第3の所定の変化割合X3よりも小さいとき(X2≦dpapbf<X3)にLoギヤ側に2つ小さいギヤ段に、更に、図8に実線で示すように、車速制限動作が解除される直前のアクセル開度の変化割合dpapbfが第3の所定の変化割合X3よりも大きいとき(dpapbf>X3)にLoギヤ側に実現可能な最小のギヤ段にそれぞれ変更している。つまり、ギヤ段変更手段では、車速制限動作が解除された際のギヤ段を、その車速制限動作が解除される直前のアクセル開度の変化割合dpapbfが小さいほどLoギヤ側に小さく変更している一方、車速制限動作が解除される直前のアクセル開度の変化割合dpapbfが大きいほどLoギヤ側に大きく変更している。
【0071】
ここで、ECU100の車速制限動作解除後における自動変速機3のギヤ段の変速制御の流れを図9のフローチャートに基づいて説明する。
【0072】
先ず、図9のフローチャートのステップST1において、走行車速を制限車速に制限する車速制限動作中であるか否かを判定する。この車速制限動作は、図10に示すように、自動変速機3のギヤ段が「5速」の状態で走行している状況(目標ギヤ段と現在のギヤ段とが同じで、ギア段が適切に設定されている状況)から車両の走行状態が変化、例えばアクセルペダルを踏み込んだ際のアクセル開度センサ205によって要求されるスロットル開度(図10中に実線で示す)に応じた走行車速が、実際の実スロットル開度(図10中に実線で示す)に応じて制限される制限車速(図10に破線で示す)よりも高くなる際に、実スロットル開度が制限スロットル開度(図10に二点鎖線で示す)よりも大きくならないように制限して、走行車速を制限車速に制限する動作のことである。
【0073】
そして、上記ステップST1の判定が、車速制限動作中であるときに、ステップST2に進んで、車速制限動作を一時的に解除するオーバライドの要求が有ったか否かを判定する。このオーバライドの要求は、アクセル開度変化割合算出手段221によるアクセル開度の変化割合dpapbfがROM102の第1の所定の変化割合X1よりも大きいとき(dpapbf>X1)に有ったものと判定される。
【0074】
このステップST2の判定が、オーバライドの要求が有ったYESの場合には、ステップST3において、車速制限動作が解除される直前のアクセル開度の変化割合dpapbfが第2の所定の変化割合X2よりも小さいか否か、つまり『dpapbf<X2』を判定する。このステップST3の判定が、『dpapbf<X2』であるYESの場合には、ステップST4に進んで、車速制限動作が解除された際のギヤ段「5速」を、シフトダウン変更線「5→4」を跨いでLoギヤ側に1つ小さいギヤ段「4速」に変更する。つまり、車速制限動作が解除される直前のアクセル開度の変化割合dpapbfが第2の所定の変化割合X2よりも小さいことが入力されると、図5中実線矢印で示すように、ギヤ段が「5速」の状態で走行している状況からシフトダウン変更線「5→4」を1つ跨いで変化し、変速マップから算出される目標ギヤ段が「4速」となり、その「4速」のギヤ段を設定するソレノイド制御信号(油圧指令信号)を自動変速機3に出力して、「5速」のギヤ段をLoギヤ側に1つ小さい「4速」のギヤ段に変更する。その後、ステップST5において、ギヤ段の変更制御を終了する。
【0075】
一方、上記ステップST3の判定が、『dpapbf≧X2』であるNOの場合には、ステップST6において、車速制限動作が解除される直前のアクセル開度の変化割合dpapbfが第3の所定の変化割合X3よりも小さいか否か、つまり『dpapbf<X3』を判定する。このステップST6の判定が、『dpapbf<X3』であるYESの場合には、ステップST7に進んで、車速制限動作が解除された際のギヤ段「5速」を、2つ小さい「3速」のギヤ段に変更する。つまり、車速制限動作が解除される直前のアクセル開度の変化割合dpapbfが第2の所定の変化割合X2よりも大きくかつ第3の所定の変化割合X3よりも小さいことが入力されると、図5中破線矢印で示すように、ギヤ段が「5速」の状態で走行している状況から複数のシフトダウン変更線「5→4」および「4→3」を飛び越して変化し、変速マップから算出される目標ギヤ段が「3速」となり、その「3速」のギヤ段を設定するソレノイド制御信号(油圧指令信号)を自動変速機3に出力して、「5速」のギヤ段からLoギヤ側に2つ小さい「3速」のギヤ段への変更(5→3ダウン変速)を行う。その後、上記ステップST5に進む。
【0076】
また、上記ステップST6の判定が、『dpapbf≧X3』であるNOの場合には、ステップST8に進んで、車速制限動作が解除された際のギヤ段「5速」を、実現可能な最小の「2速」のギヤ段に変更する。つまり、車速制限動作が解除される直前のアクセル開度の変化割合dpapbfが第3の所定の変化割合X3よりも小さいことが入力されると、図5中破線矢印で示すように、ギヤ段が「5速」の状態で走行している状況から複数のシフトダウン変更線「5→4」、「4→3」および「3→2」を飛び越して変化し、変速マップから算出される目標ギヤ段が「2速」となり、その「2速」のギヤ段を設定するソレノイド制御信号(油圧指令信号)を自動変速機3に出力して、「5速」のギヤ段からLoギヤ側に3つ小さい「2速」のギヤ段への変速(5→2ダウン変速)を行う。その後、上記ステップST5に進む。
【0077】
しかる後、ステップST9において、走行車速が制限車速よりも小さく(例えば、5km/h程度低く)なるまで待機する。そして、上記ステップST9の判定が、走行車速が制限速度よりも小さくなった時点で、ステップST10に進み、車速制限動作を復帰し、走行車速を制限車速に制限する。
【0078】
この場合、上記ステップST2により車速制限解除手段が構成され、ステップST3ないしステップST8により変速比変更手段としてのギヤ段変更手段が構成されている。
【0079】
このように、車速制限動作を解除するに当たり、アクセルペダルを踏み込んだ際のアクセル開度の変化割合dpapbfが第1の所定の変化割合X1よりも大きいとき(dpapbf>X1)に、車速制限動作が一時的に解除される。そして、車速制限動作が解除されると、その車速制限動作が解除された際のギヤ段は、車速制限動作が解除される直前のアクセル開度の変化割合dpapbfに応じて変更される。つまり、車速制限動作が解除された際のギヤ段は、車速制限動作が解除される直前のアクセル開度の変化割合dpapbfが第2の所定の変化割合X2よりも小さいとき(dpapbf<X2)にLoギヤ側に1つだけ小さいギヤ段に、車速制限動作が解除される直前のアクセル開度の変化割合dpapbfが第2の所定の変化割合X2よりも大きくかつ第3の所定の変化割合X3よりも小さいとき(X2≦dpapbf<X3)にLoギヤ側に2つ小さいギヤ段に、更に、車速制限動作が解除される直前のアクセル開度の変化割合dpapbfが第3の所定の変化割合X3よりも大きいとき(dpapbf≧X3)にLoギヤ側に実現可能な最小のギヤ段にそれぞれ変更される。このため、運転者が緩加速を要求しているときには運転者の意図を反映するアクセル開度の小さな変化割合dpapbfが第2の所定の変化割合X2よりも小さくなるためにLoギヤ側に僅かに1段だけ変更されるように小さなものとなる一方、運転者が急加速を要求しているときには運転者の意図を反映するアクセル開度の大きな変化割合dpapbfが第3の所定の変化割合X3よりも大きくなるためによりLoギヤ側となる実現可能な最小のギヤ段に変更されるように大きなものとなる。これにより、車速制限動作が解除された際に運転者の要求する加速が得られ、運転者の意図に沿った加速を実現することができる。
【0080】
また、車速制限動作が解除された際のギヤ段が、その車速制限動作が解除される直前のアクセル開度の変化割合dpapbfに応じて変更されることにより、運転者によるアクセルペダルの踏み込み方次第で車速制限動作が解除された際のギヤ段が決定されることになる。これにより、高出力のエンジン(原動機)を備えた車両やファミリータイプの車両などの穏やかな加速を要求する車両や、低出力のエンジンを備えた車両やスポーツタイプの車両などの強力な加速を要求する車両などのように性格の相反する車両に対して別個の制御プログラムを複数用意して車速制限動作が解除された際のギヤ段を個々に決定しなくとも単一の制御プログラムによって運転者の望む加速が得られ、車速制限動作が解除された際のギヤ段を決定する制御プログラムの共用化を図ることができる。
【0081】
しかも、アクセル開度の変化割合dpapbfが第1の所定割合X1以上であるときに車速制限動作が解除され、そのときの第1の所定割合X1を超えるアクセル開度の変化割合dpapbfに応じてギヤ段が変更されることにより、第1の所定割合X1を超えるアクセル開度の変化割合dpapbfに応じて変更されたギヤ段によって、車速制限動作が解除された際に運転者の要求する加速がスムーズに得られ、運転者の意図に沿った加速を円滑に実現することができる。
【0082】
更に、車速制限動作が解除されたときのギヤ段の変更を、図6に示すように、車速とアクセル開度とにより設定された第1のギヤ段判断条件つまり図5に示す変速マップの各シフトダウン変更線(第1の変速比判断条件)に基づいて1段ずつ段階的に行う場合と、図7に示すように、この第1のギヤ段判断条件とは異なる第2のギヤ段判断条件(第2の変速比判断条件)つまりアクセル開度の変化割合dpapbfに基づいて複数段一度に行う場合とに切り換える切換スイッチが設けられ、この切換スイッチが、車両の性格、または車両に搭載されるエンジンが発生する出力に応じて切り換えられているので、この切換スイッチを第1のギヤ段判断条件に切り換えることで、車速制限動作が解除されたときのギヤ段が第1のギヤ段判断条件に応じて変更されて、穏やかな加速が得られることになる。一方、切換スイッチを第2のギヤ段判断条件に切り換えることで、車速制限動作が解除されたときのギヤ段が第2のギヤ段判断条件に応じて変更されて、第1のギヤ段判断条件とは異なる強力な加速が得られることになる。これにより、車両のタイプを選択した運転者の意図通りの加速を実現することができる。
【実施例2】
【0083】
次に、本発明の実施例2を図11に基づいて説明する。
【0084】
この実施例2では、ギヤ段変更手段によるギヤ段の変更をアクセル開度の変化割合に加えその他のパラメータとしての前後走行負荷の度合いにより行うようにしている。
【0085】
すなわち、本実施例2では、ECU100のROM102に、前後走行負荷の第1の所定の度合いY1が予め記憶されている。
【0086】
そして、ギヤ段変更手段は、車速制限動作が解除されたときのギヤ段を、その車速制限動作が解除される直前にアクセル開度変化割合算出手段221により算出されたアクセル開度の変化割合および前後走行負荷センサ209により検出された前後走行負荷の度合いに応じて変更している。
【0087】
このギヤ段変更手段は、車速制限動作が解除される直前のアクセル開度の変化割合dpapbfが第2の所定の変化割合X2よりも小さいとき(dpapbf<X2)にLoギヤ側に1つ小さい「4速」のギヤ段に変更される車速制限動作解除時の「5速」のギヤ段を、前後走行負荷センサ209により検出された前後走行負荷の度合いloadbfがROM102の前後走行負荷の第1の所定の度合いY1よりも大きいとき(loadbf>Y1)に大きく変更し直す、つまりLoギヤ側にさらに1つ小さな「3速」のギヤ段となるように大きく変更し直している。一方、車速制限動作が解除される直前のアクセル開度の変化割合dpapbfが第2の所定の変化割合X2よりも大きくかつ第3の所定の変化割合X3よりも大きいとき(dpapbf≧X3)に実現可能な最小の「2速」のギヤ段に変更される車速制限動作解除時の「5速」のギヤ段を、前後走行負荷センサ209により検出された前後走行負荷の度合いloadbfがROM102の前後走行負荷の第1の所定の度合いY1よりも小さいときに小さく変更し直す、つまりLoギヤ側に3つ小さくなる「2速」のギヤ段をHiギヤ側に1つ大きい「3速」のギヤ段に変更し直している。要するに、ギヤ段変更手段では、車速制限動作が解除される直前のアクセル開度の変化割合dpapbfが小さいほど小さく変更されるギヤ段を、前後走行負荷の度合いloadbfが大きいときに大きく変更し直している一方、車速制限動作が解除される直前のアクセル開度の変化割合dpapbfが大きいほど大きく変更されるギヤ段を、前後走行負荷の度合いloadbfが小さいときに小さく変更し直している。
【0088】
ここで、ECU100による車速制限動作中における自動変速機のギヤ段の変速制御の流れを図11のフローチャートに基づいて説明する。この場合においても、自動変速機3のギヤ段が「5速」の状態で走行している状況(目標ギヤ段と現在のギヤ段とが同じで、ギア段が適切に設定されている状況)であるものとする。
【0089】
先ず、図11のフローチャートのステップST21において、走行車速を制限車速に制限する車速制限動作中であるか否かを判定し、このステップST21の判定が、車速制限動作中であるときに、ステップST22に進んで、車速制限動作を一時的に解除するオーバライドの要求(dpapbf>X1)が有ったか否かを判定する。
【0090】
このステップST22の判定が、オーバライドの要求が有ったYESの場合には、ステップST23において、車速制限動作が解除される直前のアクセル開度の変化割合dpapbfが第2の所定の変化割合X2および第3の所定の変化割合X3よりも小さいか否か、つまり『dpapbf<X2、dpapbf<X3』を判定する。このステップST23の判定が、『dpapbf<X2』であるYESの場合には、ステップST24において、前後走行負荷センサ209により検出された前後走行負荷の度合いloadbfがROM102の前後走行負荷の第1の所定の度合いY1よりも小さいか否か、つまり『loadbf<Y1』を判定する。
【0091】
このステップST24の判定が、『loadbf<Y1』であるYESの場合には、ステップST25において、車速制限動作が解除される直前のアクセル開度の変化割合dpapbfが第2の所定の変化割合X2よりも小さいとき(dpapbf<X2)にLoギヤ側に1つ小さい「4速」のギヤ段に変更される車速制限動作解除時の「5速」のギヤ段を、前後走行負荷の度合いloadbfによって変更し直すことなく、第2の所定の変化割合X2よりも小さなアクセル開度の変化割合dpapbfに応じてLoギヤ側に1つ小さい「4速」のギヤ段とする。その後、ステップST26において、ギヤ段の変更制御を終了する。
【0092】
また、上記ステップST24の判定が、『loadbf≧Y1』であるNOの場合には、ステップST27において、車速制限動作が解除される直前のアクセル開度の変化割合dpapbfが第2の所定の変化割合X2よりも小さいとき(dpapbf<X2)にLoギヤ側に1つ小さい「4速」のギヤ段に変更される車速制限動作解除時の「5速」のギヤ段を、第1の所定の度合いY1よりも大きい前後走行負荷の度合いloadbfに応じてLoギヤ側にさらに1つ小さい「3速」のギヤ段となるように大きく変更し直した後、上記ステップST26に進む。
【0093】
一方、上記ステップST23の判定が、車速制限動作が解除される直前のアクセル開度の変化割合dpapbfが第2の所定の変化割合X2および第3の所定の変化割合X3よりも大きい(dpapbf≧X3)NOの場合には、ステップST28において、『loadbf<Y1』を判定する。
【0094】
このステップST28の判定が、『loadbf<Y1』であるYESの場合には、上記ステップST27において、車速制限動作が解除される直前のアクセル開度の変化割合dpapbfが第3の所定の変化割合X3よりも大きいとき(dpapbf<X3)にLoギヤ側に実現可能な最小の「2速」のギヤ段に変更される車速制限動作解除時の「5速」のギヤ段を、第1の所定の度合いY1よりも小さい前後走行負荷の度合いloadbfに応じてHiギヤ側に1つ大きい「3速」のギヤ段となるように小さく変更し直した後、上記ステップST26に進む。
【0095】
また、ステップST28の判定が、『loadbf≧Y1』であるNOの場合には、ステップST29において、車速制限動作が解除される直前のアクセル開度の変化割合dpapbfが第3の所定の変化割合X3よりも大きいとき(dpapbf<X3)に実現可能な最小のギヤ段「2速」に変更される車速制限動作解除時のギヤ段「5速」を、前後走行負荷の度合いloadbfによって変更し直すことなく、第3の所定の変化割合X3よりも大きなアクセル開度の変化割合dpapbfに応じた実現可能な最小の「2速」のギヤ段とした後、上記ステップST26に進む。
【0096】
しかる後、ステップST30において、走行車速が制限車速よりも小さく(例えば、5km/h程度低く)なるまで待機した後、ステップST31において、車速制限動作を復帰し、走行車速を制限車速に制限する。
【0097】
この場合、上記ステップST22により車速制限解除手段が構成され、ステップST23ないしステップST29により変速比変更手段としてのギヤ段変更手段が構成されている。
【0098】
このように、車速制限動作が解除された際の「5速」のギヤ段からの変更は、運転者が緩加速を要求しているときには、運転者の意図を反映するように、第2の所定の変化割合X2よりも小さなアクセル開度の変化割合dpapbfに応じてLoギヤ側に1つ小さな「4速」のギヤ段に変更されるように小さなものとなるが、前後走行負荷の度合いloadbfが第1の所定の度合いY1よりも大きければ、その大きな前後走行負荷の度合いloadbfに応じてLoギヤ側にさらに1つ小さい「3速」のギヤ段となるように大きく変更し直されている。一方、車速制限動作が解除された際の「5速」のギヤ段からの変更は、運転者が急加速を要求しているときには、運転者の意図を反映するように、第3の所定の変化割合X3よりも大きなアクセル開度の変化割合dpapbfに応じて実現可能な最小の「2速」のギヤ段に変更されるように大きなものとなるが、前後走行負荷の度合いloadbfが第1の所定の度合いY1よりも小さければ、その小さな前後走行負荷の度合いloadbfに応じてHiギヤ側に1つ大きな「3速」のギヤ段となるように小さく変更し直されている。これにより、車速制限動作が解除された際に運転者の要求する加速がアクセル開度の変化割合dpapbfのみならず車両に作用する前後走行負荷の度合いloadbfに応じて的確に得られ、運転者の意図に沿った加速を前後走行負荷の度合いloadbfを考慮しつつ実現することができる。
【0099】
なお、本発明は、上記各実施例に限定されるものではなく、その他種々の変形例を包含している。例えば、上記実施例1では、車速制限動作が解除された際のギヤ段を、車速制限動作が解除される直前のアクセル開度の変化割合dpapbfが小さいほど小さく変更する一方、車速制限動作が解除される直前のアクセル開度の変化割合dpapbfが大きいほど大きく変更したが、車速制限動作が解除された際のギヤ段を、車速制限動作が解除される直前に前後走行負荷検出手段により検出された前後走行負荷の度合いが大きいほど大きく変更する一方、車速制限動作が解除される直前に前後走行負荷検出手段により検出された前後走行負荷の度合いが小さいほど小さく変更するギヤ段変更手段であってもよい。具体的には、車速制限動作が解除された際のギヤ段を、車速制限動作が解除される直前の前後走行負荷の度合いloadbfが第1の所定の度合いY1よりも小さいとき(loadbf<Y1)にLoギヤ側に1つ小さいギヤ段に、車速制限動作が解除される直前の前後走行負荷の度合いloadbfが第1の所定の度合いY1よりも大きくかつ第2の所定の度合いY2よりも小さいとき(Y1≦loadbf<Y2)にLoギヤ側に2つ小さいギヤ段に、更に、車速制限動作が解除される直前の前後走行負荷の度合いloadbfが第2の所定の度合いY2よりも大きいとき(loadbf≧Y2)にLoギヤ側に実現可能な最小のギヤ段にそれぞれ変更するギヤ段変更手段であってもよい。この場合には、車速制限動作が解除された際に運転者の要求する加速が前後走行負荷の度合いloadbfに応じて的確に得られ、運転者の意図に沿った加速を実現することが可能となる。
【0100】
これに対し、車速制限動作が解除された際のギヤ段を、車速制限動作が解除される直前に左右負荷センサにより検出されたステアリング舵角の度合いまたは車両に左右方向から作用する横加速度の度合いが小さいほど大きく変更する一方、車速制限動作が解除される直前に左右負荷検出手段により検出されたステアリング舵角の度合いまたは横加速度の度合いが大きいほど小さく変更するギヤ段変更手段であってもよい。具体的には、車速制限動作が解除される直前に左右負荷センサにより検出されたステアリング舵角の度合いまたは横加速度の度合いを第1の所定の度合いおよびこれよりも大きな第2の所定の度合いと比較し、車速制限動作が解除された際のギヤ段を、車速制限動作が解除される直前のステアリング舵角の度合いまたは横加速度の度合いが第2の所定の度合いよりも大きいときにLoギヤ側に1つ小さいギヤ段に、車速制限動作が解除される直前のステアリング舵角の度合いまたは横加速度の度合いが第2の所定の度合いよりも小さくかつ第1の所定の度合いよりも大きいときにLoギヤ側に2つ小さいギヤ段に、更に、車速制限動作が解除される直前のステアリング舵角の度合いまたは横加速度の度合いが第1の所定の度合いよりも小さいときにLoギヤ側に実現可能な最小のギヤ段にそれぞれ変更するギヤ段変更手段であってもよい。この場合には、車速制限動作が解除された際に運転者の要求する加速がステアリング舵角の度合いまたは横加速度の度合いに応じて的確に得られ、運転者の意図に沿った加速を実現することが可能となる。
【0101】
また、上記実施例2では、ギヤ段変更手段によるギヤ段の変更をアクセル開度の変化割合dpapbfに加え、前後走行負荷の度合いloadbfにより行うようにしたが、ギヤ段変更手段によるギヤ段の変更がアクセル開度の変化割合に加え、車速制限動作が解除される直前のステアリング舵角の度合いまたは横加速度の度合いに応じて行われるようにしてもよい。
【0102】
また、上記各実施例では、自動変速機3を有段変速タイプの遊星歯車機構とした例を挙げているが、有段変速タイプの歯車機構や、ベルト式やトロイダル式の無段変速機構とすることが可能である。この場合、ベルト式の無段変速機構のものでは、図示していないが、一対のプーリにベルトを巻き掛けた構成になっていて、上記プーリの有効径を油圧によって変化させることで連続的に変速比を変更させて無段の変速を実現するようにしている。
【0103】
また、上記各実施例では、5速の変速ギヤ段に変速可能な自動変速機3について述べたが、5速の変速ギヤ段に変速可能なものに限定されることはなく、5速の変速ギヤ段を除く3速以上の変速ギヤ段に変速可能な自動変速機であってもよいのはもちろんである。
【0104】
また、上記各実施例では、アクセル開度変化割合算出手段221によるアクセル開度の変化割合dpapbfがROM102の第1の所定の変化割合X1よりも大きいとき(dpapbf>X1)に、車速制限動作を解除するようにしたが、運転席のダッシュボード付近に設けられた手動スイッチ、またはキックダウンスイッチにより車速制限動作が解除されるようにしてもよい。
【0105】
更に、上記各実施例では、車速とアクセル開度とにより第1のギヤ段判断条件を設定したが、車速と、車両の原動機の回転数とトルクコンバータのタービン回転数との差回転により第1のギヤ段判断条件(第1の変速比判断条件)が設定されていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0106】
【図1】本発明の実施例1に係る車速制限装置を備えた車両の一部を示す概略構成図である。
【図2】同じく車両の自動変速機の一例を示す概略構成図である。
【図3】同じく自動変速機の作動表である。
【図4】同じくECU等の制御系の構成を示すブロック図である。
【図5】同じく変速制御に用いる変速マップを示す図である。
【図6】同じく第1のギヤ段判断条件に基づくオーバライド後の車速、アクセル開度、スロットル開度およびギヤ段のそれぞれの時間に対する経過の特性を示すタイムチャート図である。
【図7】同じく第2のギヤ段判断条件に基づくオーバライド後の車速、アクセル開度、スロットル開度およびギヤ段のそれぞれの時間に対する経過の特性を示すタイムチャート図である。
【図8】同じくアクセル開度の変化割合に応じた自動変速機のギヤ段の変更の特性を示すタイムチャート図である。
【図9】同じくECUの車速制限動作解除後における自動変速機のギヤ段の変速制御の流れを示すフローチャート図である。
【図10】同じく車速制限動作中における制限車速およびスロットル開度の特性を示す特性図である。
【図11】本発明の実施例2に係るECUの車速制限動作解除後における自動変速機のギヤ段の変速制御の流れを示すフローチャート図である。
【符号の説明】
【0107】
205 アクセル開度センサ(アクセル開度検出手段)
209 前後走行負荷センサ(前後走行負荷検出手段)
210 左右負荷センサ(左右負荷検出手段)
221 アクセル開度変化割合算出手段
dpapbf アクセル開度の変化割合
loadbf 前後走行負荷の度合い
X1 アクセル開度の第1の所定の変化割合(アクセル開度の所定の変化割合)
【技術分野】
【0001】
本発明は、予め設定された制限車速よりも走行車速が高くなるときに車速制限動作によって走行車速を制限車速に制限する車両の車速制限装置に関し、詳しくは、車速制限動作を解除したときの運転者の意図に応じた変速比への変更を可能にする対策に係る。
【背景技術】
【0002】
近年より、予め設定された制限車速の範囲内での車両の走行を可能にする車速制限装置が知られている。この車速制限装置では、運転者によるアクセルペダルの開度(アクセル開度)に連動するスロットル開度よって要求される走行車速が、予め設定された制限車速よりも高くなるときに、車速制限動作を行ってスロットル開度を小さく変更し、上記走行車速を上記制限車速に制限することが行われる。
【0003】
そして、緊急時の加速や追い越し時の加速を必要とする場合には、車速制限装置による車速制限動作を車速制限解除手段により解除することで、運転者のアクセル開度に反映した加速が得られるようにしている。この車速制限解除手段としては、アクセル開度を検出するアクセル開度検出手段によって検出されたアクセル開度が所定の開度以上であるときに車速制限装置による車速制限動作を解除するようにしたものが従来より知られている(例えば、特許文献1参照)。また、アクセル開度がキックダウン位置まで踏み込まれたときに、車速制限装置による車速制限動作を解除するようにした車速制限解除手段もある。
【特許文献1】特開2006−299909号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記従来のものでは、車速制限装置による車速制限動作を解除するに当たって、アクセル開度を所定の開度以上踏み込んだり、アクセル開度をキックダウン位置まで踏み込む必要がある。その場合、アクセル開度に応じた走行車速に基づいて自動変速機の変速比が設定されていることから、車速制限装置による車速制限動作が解除された途端に変速比が変更されると、運転者が意図する加速以上の加速が行われることになる。これは、車速制限装置による車速制限動作を解除するに当たって踏み込んだアクセル開度によって、変速比が大きく変更、つまり走行車速に基づいて設定されていた変速比が実現可能な限り小さな変速比に一気に変更されるおそれがあるからであり、これでは、運転者が緩加速を要求しているにもかかわらず、アクセル開度の踏み込み位置に応じて変速比が変更されることになり、運転者の意図に沿った加速を実現することができない。
【0005】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、車速制限装置による車速制限動作を解除した際に運転者の意図に沿った加速を実現することができる車両の車速制限装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明では、予め制限された制限車速よりも走行車速が高くなるときに、車速制限動作を行って上記走行車速を上記制限車速に制限する車両の車速制限装置を前提とし、上記走行車速を、アクセル開度によって要求されるスロットル開度に応じて設定している一方、上記制限車速を、上記スロットル開度に制限を加えた制限スロットル開度に応じて設定している。更に、上記スロットル開度に応じた走行車速に基づいて自動変速機の変速比を設定する変速制御手段と、上記車速制限動作を解除する車速制限解除手段と、アクセル開度を検出するアクセル開度検出手段と、上記アクセル開度検出手段により検出されたアクセル開度によりそのアクセル開度の変化割合を算出するアクセル開度変化割合算出手段と、上記車速制限解除手段により車速制限動作が解除された際に上記変速制御手段により設定されている自動変速機の変速比を、上記車速制限解除手段により車速制限動作が解除される直前に上記アクセル開度変化割合算出手段により算出されたアクセル開度の変化割合に応じて変更する変速比変更手段とを備えている。
【0007】
この特定事項により、車速制限動作を解除するに当たり、アクセル開度を所定の開度以上踏み込んだり、アクセル開度をキックダウン位置まで踏み込むなどして、車速制限動作が解除されても、その車速制限動作が解除された際の変速比は、車速制限動作が解除される直前にアクセル開度変化割合算出手段により算出されたアクセル開度の変化割合に応じたものに変更される。つまり、車速制限動作を解除するに当たって、アクセル開度が所定の開度以上踏み込まれたり、キックダウン位置まで踏み込まれていても、車速制限動作を解除する直前の運転者の意図を反映するアクセル開度の変化割合に応じて変速比が変更されることになる。これにより、車速制限解除手段により車速制限動作が解除された際に運転者の要求する加速が得られ、運転者の意図に沿った加速を実現することが可能となる。
【0008】
また、車速制限動作が解除された際の変速比が、その車速制限動作が解除される直前のアクセル開度の変化割合に応じて変更されることにより、運転者によるアクセルペダルの踏み込み方次第で車速制限動作が解除された際の変速比が決定されることになる。これにより、高出力の原動機を備えた車両やファミリータイプの車両などの穏やかな加速を要求する車両や、低出力の原動機を備えた車両やスポーツタイプの車両などの強力な加速を要求する車両などのように性格の相反する車両に対して別個の制御プログラムを複数用意して車速制限動作が解除された際の変速比を個々に決定しなくとも単一の制御プログラムによって運転者の望む加速が得られ、車速制限動作が解除された際の変速比を決定する制御プログラムの共用化を図ることが可能となる。
【0009】
特に、車速制限解除手段を具体的に特定するものとして、以下の構成が掲げられる。つまり、上記車速制限解除手段を、上記アクセル開度変化割合算出手段により算出されたアクセル開度の変化割合が所定割合以上であるときに、上記車速制限動作を解除するものであるとしている。
【0010】
この特定事項により、アクセル開度の変化割合が所定割合以上であるときに車速制限動作が解除され、そのときの所定割合を超えるアクセル開度の変化割合に応じて変速比が変更されることになる。これにより、所定割合を超えるアクセル開度の変化割合に応じて変更された変速比によって、車速制限動作が解除された際に運転者の要求する加速がスムーズに得られ、運転者の意図に沿った加速を円滑に実現することが可能となる。しかも、車速制限解除手段を別途設ける必要がなく、実施する上で非常に有利なものとなる。
【0011】
特に、変速比変更手段をより具体的に特定するものとして、以下の構成が掲げられる。つまり、上記変速比変更手段により、上記車速制限解除手段により車速制限動作が解除された際の変速比を、その車速制限動作が解除される直前のアクセル開度の変化割合が小さいほど小さく変更している一方、上記車速制限動作が解除される直前のアクセル開度の変化割合が大きいほど大きく変更している。
【0012】
この特定事項により、車速制限動作が解除された際の変速比の変更は、運転者が緩加速を要求しているときには運転者の意図を反映するアクセル開度の小さな変化割合に応じて低速側に僅かに変更されるように小さなものとなる一方、運転者が急加速を要求しているときには運転者の意図を反映するアクセル開度の大きな変化割合に応じてより低速側に変更されるように大きなものとなる。これにより、車速制限動作が解除された際に運転者の要求する加速がアクセル開度の変化割合に応じて的確に得られ、運転者の意図に沿った加速を実現することが可能となる。
【0013】
また、上記目的を達成するため、本発明が講じたその他の車速制限装置として、以下の構成が掲げられる。つまり、予め制限された制限車速よりも走行車速が高くなるときに、車速制限動作を行って上記走行車速を上記制限車速に制限する車両の車速制限装置を同様に前提とし、上記走行車速を、アクセル開度によって要求されるスロットル開度に応じて設定している一方、上記制限車速を、上記スロットル開度に制限を加えた制限スロットル開度に応じて設定している。更に、上記スロットル開度に応じた走行車速に基づいて自動変速機の変速比を設定する変速制御手段と、上記車速制限動作を解除する車速制限解除手段と、上記車両に前後方向から作用する前後走行負荷の度合いを検出する前後走行負荷検出手段と、上記車速制限解除手段により車速制限動作が解除された際に上記変速制御手段により設定されている自動変速機の変速比を、上記車速制限動作が解除される直前に上記前後走行負荷検出手段により検出された前後走行負荷の度合いに応じて変更する変速比変更手段とを備えている。
【0014】
この特定事項により、車速制限動作が解除されると、その車速制限動作が解除された際の変速比は、車速制限動作が解除される直前に前後走行負荷検出手段により検出された前後走行負荷の度合いに応じて変更される。つまり、車速制限動作が解除される直前の車体に作用する前後走行負荷の度合いに応じて変速比が変更されることになる。これにより、車速制限解除手段により車速制限動作が解除された際に運転者の要求する加速が前後走行負荷の度合いに応じて円滑に得られ、運転者の意図に沿った加速を実現することが可能となる。
【0015】
また、車速制限動作が解除された際の変速比が、その車速制限動作が解除される直前の前後走行負荷の度合いに応じて変更されることにより、前後走行負荷の車体への作用のし方次第で車速制限動作が解除された際の変速比が決定されることになる。これにより、高出力の原動機を備えた車両やファミリータイプの車両などの穏やかな加速を要求する車両や、低出力の原動機を備えた車両やスポーツタイプの車両などの強力な加速を要求する車両などのように性格の相反する車両に対して別個の制御プログラムを複数用意して車速制限動作が解除された際の変速比を個々に決定しなくとも単一の制御プログラムによって運転者の望む加速が得られ、車速制限動作が解除された際の変速比を前後走行負荷の度合いに応じて決定する制御プログラムの共用化を図ることが可能となる。
【0016】
特に、変速比変更手段をより具体的に特定するものとして、以下の構成が掲げられる。つまり、上記変速比変更手段により、上記車速制限解除手段により車速制限動作が解除された際の変速比を、その車速制限動作が解除される直前に上記前後走行負荷検出手段により検出された前後走行負荷の度合いが大きいほど大きく変更している一方、上記車速制限解除手段により車速制限動作が解除される直前に上記前後走行負荷検出手段により検出された前後走行負荷の度合いが小さいほど小さく変更している。
【0017】
この特定事項により、車速制限動作が解除された際の変速比の変更は、車両が下り坂に差し掛かったときに小さくなる前後走行負荷の度合いに応じて低速側に僅かに変更されるように小さなものとなる一方、車両が上り坂に差し掛かったときに大きくなる前後走行負荷の度合いに応じてより低速側に変更されるように大きなものとなる。これにより、車速制限解除手段により車速制限動作が解除された際に運転者の要求する加速が前後走行負荷の度合いに応じて的確に得られ、運転者の意図に沿った加速を実現することが可能となる。
【0018】
また、上記目的を達成するため、本発明が講じたその他の車速制限装置として、以下の構成が掲げられる。つまり、予め制限された制限車速よりも走行車速が高くなるときに、車速制限動作を行って上記走行車速を上記制限車速に制限する車両の車速制限装置を同様に前提とし、上記走行車速を、アクセル開度によって要求されるスロットル開度に応じて設定している一方、上記制限車速を、上記スロットル開度に制限を加えた制限スロットル開度に応じて設定している。更に、上記スロットル開度に応じた走行車速に基づいて自動変速機の変速比を設定する変速制御手段と、上記車速制限動作を解除する車速制限解除手段と、ステアリング舵角の度合いまたは車両に左右方向から作用する横加速度の度合いを検出する左右負荷検出手段と、上記車速制限解除手段により車速制限動作が解除されたときに上記変速制御手段により設定されている自動変速機の変速比を、上記車速制限動作が解除される直前に上記左右負荷検出手段により検出されたステアリング舵角の度合いまたは横加速度の度合いに応じて変更する変速比変更手段とを備えている。
【0019】
この特定事項により、車速制限解除手段による車速制限動作が解除されると、その車速制限動作が解除された際の変速比は、車速制限動作が解除される直前に左右負荷検出手段により検出された車線変更時などのステアリング舵角の度合いまたはコーナリング時などの横加速度の度合いに応じて変更される。つまり、車速制限動作が解除される直前の車体に作用するステアリング舵角の度合いまたは横加速度の度合いに応じて変速比が変更されることになる。これにより、車速制限動作が解除された際に運転者の要求する加速がステアリング舵角の度合いまたはコーナリング時などの横加速度の度合いに応じて安心して得られ、運転者の意図に沿った加速を安全に実現することが可能となる。
【0020】
また、車速制限動作が解除された際の変速比が、その車速制限動作が解除される直前のステアリング舵角の度合いまたはコーナリング時などの横加速度の度合いに応じて変更されることにより、ステアリング舵角またはコーナリング時などの横加速度の車体への作用のし方次第で車速制限動作が解除された際の変速比が決定されることになる。これにより、高出力の原動機を備えた車両やファミリータイプの車両などの穏やかな加速を要求する車両や、低出力の原動機を備えた車両やスポーツタイプの車両などの強力な加速を要求する車両などのように性格の相反する車両に対して別個の制御プログラムを複数用意して車速制限動作が解除された際の変速比を個々に決定しなくとも単一の制御プログラムによって運転者の望む加速が得られ、車速制限動作が解除された際の変速比をステアリング舵角の度合いまたはコーナリング時などの横加速度の度合いに応じて決定する制御プログラムの共用化を図ることが可能となる。
【0021】
特に、変速比変更手段をより具体的に特定するものとして、以下の構成が掲げられる。つまり、上記変速比変更手段によって、上記車速制限解除手段により車速制限動作が解除されたときの変速比を、その車速制限動作が解除される直前に上記左右負荷検出手段により検出されたステアリング舵角の度合いまたは横加速度の度合いが小さいときに大きく変更している一方、上記車速制限動作が解除される直前に上記左右負荷検出手段により検出されたステアリング舵角の度合いまたは横加速度の度合いが大きいときに小さく変更している。
【0022】
この特定事項により、車速制限動作が解除された際の変速比は、車線を大きく変更するときなどに大きくなるステアリング舵角の度合いや、大きなコーナに差し掛かって大きくコーナリングするときなどに大きくなる横加速度の度合いに応じて低速側に僅かに変更されるように小さなものとなる一方、車線を小さく変更するときなどに小さくなるステアリング舵角の度合いや、小さなコーナリングに差し掛かって小さくコーナリングするときなどに小さくなる横加速度の度合いに応じてより低速側に変更されるように大きなものとなる。これにより、車速制限動作が解除された際に運転者の要求する加速がステアリング舵角の度合いまたは横加速度の度合いに応じて安心して得られ、運転者の意図に沿った加速を安全に実現することが可能となる。
【0023】
特に、変速比変更手段による変速比の変更をアクセル開度の変化割合に加え他のパラメータにより行うものとして、以下の構成が掲げられる。つまり、車両に前後方向から作用する前後走行負荷の度合いを検出する前後走行負荷検出手段を備えている。そして、上記変速比変更手段によって、上記車速制限解除手段により車速制限動作が解除されたときの変速比を、その車速制限動作が解除される直前に上記アクセル開度変化割合算出手段により算出されたアクセル開度の変化割合および上記前後走行負荷検出手段により検出された前後走行負荷の度合いに応じて変更している。
【0024】
この特定事項により、車速制限動作が解除された際の変速比は、アクセル開度が所定の開度以上踏み込まれたり、キックダウン位置まで踏み込まれているにもかかわらず、運転者の意図を反映するアクセル開度の変化割合と車両に前後方向から作用する前後走行負荷の度合いとに応じて変更されることになる。これにより、車速制限動作が解除された際に運転者の要求する加速がアクセル開度の変化割合および車両の前後走行負荷の度合いに応じて的確に得られ、運転者の意図に沿った加速を前後走行負荷の度合いを考慮しつつ円滑に実現することが可能となる。
【0025】
そして、アクセル開度の変化割合に加え他のパラメータにより行う場合の変速比変更手段による変速比の変更をより具体的に特定するものとして、以下の構成が掲げられる。つまり、上記変速比変更手段によって、上記アクセル開度の変化割合が小さいほど小さく変更される変速比を、上記前後走行負荷検出手段により検出された前後走行負荷の度合いが大きいときに大きく変更し直す一方、上記アクセル開度の変化割合が大きいほど大きく変更される変速比を、上記前後走行負荷検出手段により検出された前後走行負荷の度合いが小さいときに小さく変更し直している。
【0026】
この特定事項により、車速制限動作が解除された際の変速比の変更は、運転者が緩加速を要求しているときには運転者の意図を反映するアクセル開度の小さな変化割合に応じて低速側に僅かに変更されるように小さなものとなるが、前後走行負荷の度合いが大きければ大きく変更し直している。一方、運転者が急加速を要求しているときには運転者の意図を反映するアクセル開度の大きな変化割合に応じてより低速側に変更されるように大きなものとなるが、前後走行負荷の度合いが小さければ小さく変更し直している。これにより、車速制限動作が解除された際に運転者の要求する加速がアクセル開度の変化割合のみならず車両に作用する前後走行負荷の度合いに応じてより的確に得られ、運転者の意図に沿った加速を前後走行負荷の度合いを考慮しつつより円滑に実現することが可能となる。
【0027】
これに対し、変速比変更手段による変速比の変更をアクセル開度の変化割合に加えその他のパラメータにより行うものとして、以下の構成が掲げられる。つまり、ステアリング舵角の度合いまたは車両に左右方向から作用する横加速度の度合いを検出する左右負荷検出手段を備えている。そして、上記変速比変更手段によって、上記車速制限解除手段により車速制限動作が解除されたときの変速比を、上記アクセル開度変化割合算出手段により算出されたアクセル開度の変化割合および上記左右負荷検出手段により検出されたステアリング舵角の度合いまたは横加速度の度合いに応じて変更している。
【0028】
この特定事項により、車速制限動作が解除された際の変速比は、アクセル開度が所定の開度以上踏み込まれたり、キックダウン位置まで踏み込まれているにもかかわらず、運転者の意図を反映するアクセル開度の変化割合と車両に左右方向から作用するステアリング舵角の度合いまたは横加速度の度合いとに応じて変更されることになる。これにより、車速制限動作が解除された際に運転者の要求する加速がアクセル開度の変化割合および車両のステアリング舵角の度合いまたは横加速度の度合いに応じて安心して得られ、運転者の意図に沿った加速をステアリング舵角の度合いまたは横加速度の度合いを考慮しつつ安全に実現することが可能となる。
【0029】
そして、アクセル開度の変化割合に加えその他のパラメータにより行う場合の変速比変更手段による変速比の変更をより具体的に特定するものとして、以下の構成が掲げられる。つまり、上記変速比変更手段によって、上記アクセル開度の変化割合が小さいほど小さく変更される変速比を、上記左右負荷検出手段により検出されたステアリング舵角の度合いまたは横加速度の度合いが小さいときに大きく変更し直す一方、上記アクセル開度の変化割合が大きいほど大きく変更される変速比を、上記左右負荷検出手段により検出されたステアリング舵角の度合いまたは横加速度の度合いが大きいときに小さく変更し直している。
【0030】
この特定事項により、車速制限動作が解除された際の変速比の変更は、運転者が緩加速を要求しているときには運転者の意図を反映するアクセル開度の小さな変化割合に応じて低速側に僅かに変更されるように小さなものとなるが、ステアリング舵角の度合いまたは横加速度の度合いが小さければ大きく変更し直している。一方、運転者が急加速を要求しているときには運転者の意図を反映するアクセル開度の大きな変化割合に応じてより低速側に変更されるように大きなものとなるが、ステアリング舵角の度合いまたは横加速度の度合いが大きければ小さく変更し直している。これにより、車速制限動作が解除された際に運転者の要求する加速がアクセル開度の変化割合のみならず車両に作用するステアリング舵角の度合いまたは横加速度の度合いに応じてより的確に得られ、運転者の意図に沿った加速をステアリング舵角の度合いまたは横加速度の度合いを考慮しつつより安全に実現することが可能となる。
【0031】
更に、変速比変更手段をさらに具体的に特定するものとして、以下の構成が掲げられる。つまり、上記変速比変更手段に、上記車速制限解除手段により車速制限動作が解除されたときの変速比を、アクセル開度、または車両の原動機の回転数とタービンの回転数との差回転、および車速により設定された第1の変速比判断条件と、この第1の変速比判断条件とは異なる第2の変速比判断条件とに基づいて変更するように切り換える切換スイッチを備える。そして、上記切換スイッチを、車両の性格、または車両の原動機が発生する出力に応じて切り換えるようにしている。
【0032】
この特定事項により、アクセル開度または車両の原動機の回転数とタービンの回転数との差回転、および車速により設定された第1の変速比判断条件と、この第1の変速比判断条件とは異なる第2の変速比判断条件とを切り換えて車速制限動作が解除されたときに変速比を変更する切換スイッチが、車両の性格または車両の原動機が発生する出力に応じて切り換えられるので、この切換スイッチを第1の変速比判断条件に切り換えることで、車速制限動作が解除されたときの変速比が第1の変速比判断条件に応じて変更されて、穏やかな加速が得られることになる。一方、切換スイッチを第2の変速比判断条件に切り換えることで、車速制限動作が解除されたときの変速比が第2の変速比判断条件に応じて変更されて、第1の変速比判断条件とは異なる強力な加速が得られることになる。これにより、車両のタイプを選択した運転者の意図通りの加速を実現することが可能となる。
【発明の効果】
【0033】
以上、要するに、車速制限動作が解除された際の変速比をその車速制限動作が解除される直前のアクセル開度の変化割合に応じて変更することで、車速制限動作が解除された際の変速比を運転者の意図を反映するアクセル開度の変化割合に応じて変更し、車速制限動作が解除された際に運転者の要求する加速が得られ、運転者の意図に沿った加速を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0035】
本発明の実施例1に係る車速制限装置を備えた車両のパワートレーンについて図1を参照して説明する。この例の車両は、FR(フロントエンジン・リアドライブ)型車両であって、原動機としてのエンジン1、トルクコンバータ2を有する自動変速機3、及び、ECU100などが搭載されており、そのECU100により実行されるプログラムによって本発明の車速制限装置による車速制限動作およびこれの解除動作が実現される。これらエンジン1、トルクコンバータ2、自動変速機3、及び、ECU100の各部について以下に説明する。
【0036】
−エンジン−
図2に示すように、エンジン1の出力軸であるクランクシャフト11はトルクコンバータ2の入力軸に接続される。クランクシャフト11の回転数(エンジン回転数)はエンジン回転数センサ201によって検出される。
【0037】
エンジン1に吸入される空気量は、電子制御式のスロットルバルブ12により調整される。スロットルバルブ12は、運転者のアクセルペダル操作とは独立してスロットル開度を電子的に制御することが可能であり、その開度(スロットル開度)はスロットル開度センサ202によって検出される。
【0038】
スロットルバルブ12のスロットル開度はECU100によって駆動制御される。具体的には、エンジン回転数センサ201によって検出されるエンジン回転数、及び、運転者のアクセルペダル踏み込み量(アクセル開度)等のエンジン1の運転状態に応じた最適な吸入空気量(目標吸気量)が得られるようにスロットルバルブ12のスロットル開度を制御している。より具体的には、スロットル開度センサ202を用いてスロットルバルブ12の実際のスロットル開度を検出し、その実スロットル開度が、上記目標吸気量が得られるスロットル開度(目標スロットル開度)に一致するようにスロットルバルブ12のスロットルモータをフィードバック制御している。
【0039】
−トルクコンバータ・自動変速機−
トルクコンバータ2は、入力軸側のポンプ羽根車21と、出力軸側のタービン羽根車22(タービン)と、トルク増幅機能を発現するステータ23と、ワンウェイクラッチ24とを備え、ポンプ羽根車21とタービン羽根車22との間で流体を介して動力伝達を行う。
【0040】
トルクコンバータ2には、入力軸と出力軸とを直結状態にするロックアップクラッチ25が設けられており、このロックアップクラッチ25を完全係合させることにより、ポンプ羽根車21とタービン羽根車22とが一体回転する。また、ロックアップクラッチ25を所定のスリップ状態で係合させることにより、駆動時には所定のスリップ量でタービン羽根車22がポンプ羽根車21に追随して回転する。
【0041】
自動変速機3は、ダブルピニオン型の第1遊星歯車装置31、シングルピニオン型の第2遊星歯車装置32、及び、シングルピニオン型の第3遊星歯車装置33を備えた遊星歯車式の変速機である。
【0042】
自動変速機3の入力軸30の回転数(トルクコンバータ2のタービン回転数と同じ)は入力軸回転数センサ203によって検出される。また、自動変速機3の出力軸34の回転数は出力軸回転数センサ204によって検出される。
【0043】
第1遊星歯車装置31のサンギヤS1はクラッチC3を介して入力軸30に選択的に連結される。また、サンギヤS1は、ワンウェイクラッチF2及びブレーキB3を介して非回転部材であるハウジングに選択的に連結され、逆方向(入力軸30の回転と反対方向)の回転が阻止される。第1遊星歯車装置31のキャリアCA1は、ブレーキB1を介してハウジングに選択的に連結されるとともに、そのブレーキB1と並列に設けられたワンウェイクラッチF1により、常に逆方向の回転が阻止される。第1遊星歯車装置31のリングギヤR1は、第2遊星歯車装置32のリングギヤR2と一体的に連結されており、ブレーキB2を介してハウジングに選択的に連結される。
【0044】
第2遊星歯車装置32のサンギヤS2は、第3遊星歯車装置33のサンギヤS3と一体的に連結されており、クラッチC1を介して入力軸30に選択的に連結される。第2遊星歯車装置32のキャリアCA2は、第3遊星歯車装置33のリングギヤR3と一体的に連結されており、クラッチC2を介して入力軸30に選択的に連結されるとともに、ブレーキB4を介してハウジングに選択的に連結される。さらに、キャリアCA2は、ブレーキB4と並列に設けられたワンウェイクラッチF3によって、常に逆方向の回転が阻止される。そして、第3遊星歯車装置33のキャリアCA3は出力軸34に一体的に連結されている。
【0045】
以上の自動変速機3では、摩擦係合要素であるクラッチC1〜C3、ブレーキB1〜B4、及び、ワンウェイクラッチF1〜F3などが、所定の状態に係合または解放されることによってギヤ段(変速段)が設定される。
【0046】
自動変速機3には、運転者により操作されるシフトレバーが設けられており、そのシフトレバーを操作することにより、例えばPレンジ(パーキングレンジ)、Rレンジ(後進走行レンジ)、Nレンジ(ニュートラルレンジ)、Dレンジ(前進走行レンジ)等に切り変えることができる。
【0047】
自動変速機3のクラッチC1〜C3、ブレーキB1〜B4、及び、ワンウェイクラッチF1〜F3の係合・解放状態を図3の作動表に示す。図3の作動表において「●」は「係合」を表し、「空欄」は「解放」を表している。また、「▲」は「エンジンブレーキ時の係合」を表している。
【0048】
この例の自動変速機3において、1速のギヤ段から2速のギヤ段への変速(1→2変速)は、ブレーキB3を係合することにより達成され、エンジンブレーキ作用を発生させる必要があるエンジンブレーキレンジでは、更にブレーキB2を係合する。このブレーキB2は、ブレーキB3よりも相対的に係合トルク容量が小さく設定されている。
【0049】
2速のギヤ段から3速のギヤ段への変速(2→3変速)は、クラッチC3を係合することにより達成され、エンジンブレーキ作用を発生させる必要があるエンジンブレーキレンジでは、更にブレーキB1を係合する。また、3速ギヤ段から4速ギヤ段への変速(3→4変速)は、クラッチC2を係合することにより達成される。
【0050】
そして、4速のギヤ段から5速のギヤ段への変速(4→5アップ変速)は、クラッチC1を解放すると同時に、ブレーキB1を係合するクラッチツウクラッチ変速制御によって達成される。
【0051】
以上のエンジン1及び自動変速機3(トルクコンバータ2も含む)はECU100によって制御される。
【0052】
−ECU−
ECU100は、図4に示すように、CPU101、ROM102、RAM103及びバックアップRAM104などを備えている。
【0053】
ROM102には、車両の基本的な運転に関する制御の他、車両の走行状態に応じて自動変速機3のギヤ段の設定する変速制御を実行するためのプログラムを含む各種プログラムなどが記憶されている。この変速制御の具体的な内容については後述する。
【0054】
CPU101は、ROM102に記憶された各種制御プログラムやマップに基づいて演算処理を実行する。また、RAM103はCPU101での演算結果や各センサから入力されたデータ等を一時的に記憶するメモリであり、バックアップRAM104はエンジン1の停止時にその保存すべきデータ等を記憶する不揮発性のメモリである。
【0055】
これらCPU101、ROM102、RAM103、及び、バックアップRAM104はバス106を介して互いに接続されるとともに、インターフェース105と接続されている。
【0056】
ECU100のインターフェース105には、エンジン回転数センサ201、スロットル開度センサ202、入力軸回転数センサ203、出力軸回転数センサ204、アクセルペダルの開度つまりアクセル開度を検出するアクセル開度センサ205、自動変速機3のシフト位置を検出するシフトポジションセンサ206、車両の車速を検出する車速センサ207、車両の加速度Gを検出する加速度センサ208、車両に前後方向から作用する勾配路走行時などの前後走行負荷の度合いを検出する前後走行負荷検出手段としての前後走行負荷センサ209、及び、ステアリング舵角の度合いまたは車両に左右方向から作用する横加速度の度合いを検出する左右負荷検出手段としての左右負荷センサ210などが接続されており、これらの各センサからの信号がECU100に入力される。
【0057】
ECU100は、上記した各種センサの出力信号に基づいて、エンジン1のスロットルバルブ12の開度制御を含むエンジン1の各種制御を実行する。
【0058】
ECU100は、トルクコンバータ2にロックアップクラッチ制御信号を出力する。このロックアップクラッチ制御信号に基づいてロックアップクラッチ25の係合圧が制御される。また、ECU100は、自動変速機3にソレノイド制御信号(油圧指令信号)を出力する。このソレノイド制御信号に基づいて、自動変速機3の油圧回路のリニアソレノイドバルブやオンオフソレノイドバルブなどが制御され、所定の変速ギヤ段(1速〜5速)を構成するように、クラッチC1〜C3、ブレーキB1〜B4、及び、ワンウェイクラッチF1〜F3などが、所定の状態に係合または解放される。
【0059】
さらに、ECU100は、後述する制限車速よりも車両の走行車速が高いときに、走行車速を制限車速に制限する車速制限動作を行う。つまり、運転者によるアクセルペダルの開度によって要求されるスロットル開度に応じた走行車速が、実際の実スロットル開度に応じて制限される制限車速よりも高いときに、車速制限動作を行って上記走行車速を上記制限車速に制限するようにしている。この制限車速は、実スロットル開度に制限を加えた制限スロットル開度に応じて設定され、実スロットル開度が制限スロットル開度よりも大きくならないような車速制限動作が行われる。この場合、制限車速の設定は、運転席のダッシュボード付近に設けられた手動スイッチにより行われ、車速制限動作の解除も上記手動スイッチにより行うことが可能である。
【0060】
そして、ECU100は変速制御手段を備え、この変速制御手段により下記の「変速制御」を実行する。
【0061】
まず、この例の変速制御に用いる変速マップについて図5を参照して説明する。
【0062】
図5に示す変速マップは、車速及びスロットル開度をパラメータとし、それら車速及びスロットル開度に応じて、適正なギヤ段を求めるための複数の領域が設定されたマップであって、ECU100のROM102内に記憶されている。変速マップの各領域は複数の変速線(ギヤ段の切り換えライン)によって区画されている。なお、図5に示す変速マップでは、シフトダウン変更線のみを示している。
【0063】
次に、変速制御の基本動作について説明する。
【0064】
ECU100は、車速センサ207、スロットル開度センサ202およびアクセル開度センサ205の出力信号に基づいて、図5の変速マップを参照して目標ギヤ段を算出し、その目標ギヤ段と現在のギヤ段とを比較して変速操作が必要であるか否かを判定する。
【0065】
その判定結果により、変速の必要がない場合(目標ギヤ段と現在のギヤ段とが同じで、ギア段が適切に設定されている場合)には、現在のギヤ段を維持するソレノイド制御信号(油圧指令信号)を自動変速機3に出力する。
【0066】
一方、目標ギヤ段と現在のギヤ段とが異なる場合には変速制御を行う。例えば、自動変速機3のギヤ段が「5速」の状態で走行している状況から、車両の走行状態が変化して、シフトダウン変更線[5→4]を跨いで変化した場合、変速マップから算出される目標ギヤ段が「4速」となり、その4速のギヤ段を設定するソレノイド制御信号(油圧指令信号)を自動変速機3に出力して、5速のギヤ段から4速のギヤ段への変速(5→4ダウン変速)を行う。
【0067】
また、ECU100のCPU101は、アクセル開度センサ205の出力信号(アクセル開度)によりそのアクセル開度の変化割合を算出するアクセル開度変化割合算出手段221を備えている。更に、CPU101は、車速制限動作を解除する車速制限解除手段を備え、この車速制限解除手段によって車速制限動作が一時的に解除つまりオーバライドされる。この車速制限解除手段は、アクセル開度変化割合算出手段221により算出されたアクセル開度の変化割合dpapbfと、ROM102に記憶されたアクセル開度の第1の所定の変化割合X1とを比較し、アクセル開度変化割合算出手段221によるアクセル開度の変化割合dpapbfがROM102の第1の所定の変化割合X1よりも大きいとき(dpapbf>X1)に、車走制限動作を解除するものである。また、ROM102は、アクセル開度の第1の所定の変化割合X1よりも大きな第2の所定の変化割合X2(X2>X1)、及び、この第2の所定の変化割合X2よりも大きな第3の所定の変化割合X3(X3>X2)を予め記憶している。
【0068】
そして、ECU100は、車速制限解除手段により車速制限動作が解除された際のギヤ段(変速比)を、車速制限動作が解除される直前にアクセル開度変化割合算出手段221により算出されたアクセル開度の変化割合dpapbfに応じて変更する変速比変更手段としてのギヤ段変更手段を備えている。
【0069】
このギヤ段変更手段には、車速制限解除手段により車速制限動作が解除されたときのギヤ段の変更を、図6に示すように、車速とアクセル開度とにより設定された第1のギヤ段判断条件(第1の変速比判断条件)つまり図5の変速マップの各シフトダウン変更線に基づいて1段ずつ段階的に行う場合と、図7に示すように、この第1のギヤ段判断条件とは異なる第2のギヤ段判断条件(第2の変速比判断条件)つまりアクセル開度の変化割合dpapbfに基づいてギヤ段の飛び越しにより複数段一度に行う場合とに切り換える切換スイッチを備えている。本実施例では、切換スイッチは、第2のギヤ段判断条件に切り換えられており、この第2のギヤ段判断条件に基づいて車速制限動作が解除された際のギヤ段を変更している。なお、切換スイッチは、車両の性格、または車両に搭載されるエンジン(原動機)が発生する出力に応じて切り換えられるようにしている。
【0070】
そして、ギヤ段変更手段は、車速制限動作が解除された際のギヤ段を、図8に細かい破線で示すように、その車速制限動作が解除される直前のアクセル開度の変化割合dpapbfが第2の所定の変化割合X2よりも小さいとき(dpapbf<X2)にLoギヤ側に1つ小さいギヤ段に、図8に粗い破線で示すように、車速制限動作が解除される直前のアクセル開度の変化割合dpapbfが第2の所定の変化割合X2よりも大きくかつ第3の所定の変化割合X3よりも小さいとき(X2≦dpapbf<X3)にLoギヤ側に2つ小さいギヤ段に、更に、図8に実線で示すように、車速制限動作が解除される直前のアクセル開度の変化割合dpapbfが第3の所定の変化割合X3よりも大きいとき(dpapbf>X3)にLoギヤ側に実現可能な最小のギヤ段にそれぞれ変更している。つまり、ギヤ段変更手段では、車速制限動作が解除された際のギヤ段を、その車速制限動作が解除される直前のアクセル開度の変化割合dpapbfが小さいほどLoギヤ側に小さく変更している一方、車速制限動作が解除される直前のアクセル開度の変化割合dpapbfが大きいほどLoギヤ側に大きく変更している。
【0071】
ここで、ECU100の車速制限動作解除後における自動変速機3のギヤ段の変速制御の流れを図9のフローチャートに基づいて説明する。
【0072】
先ず、図9のフローチャートのステップST1において、走行車速を制限車速に制限する車速制限動作中であるか否かを判定する。この車速制限動作は、図10に示すように、自動変速機3のギヤ段が「5速」の状態で走行している状況(目標ギヤ段と現在のギヤ段とが同じで、ギア段が適切に設定されている状況)から車両の走行状態が変化、例えばアクセルペダルを踏み込んだ際のアクセル開度センサ205によって要求されるスロットル開度(図10中に実線で示す)に応じた走行車速が、実際の実スロットル開度(図10中に実線で示す)に応じて制限される制限車速(図10に破線で示す)よりも高くなる際に、実スロットル開度が制限スロットル開度(図10に二点鎖線で示す)よりも大きくならないように制限して、走行車速を制限車速に制限する動作のことである。
【0073】
そして、上記ステップST1の判定が、車速制限動作中であるときに、ステップST2に進んで、車速制限動作を一時的に解除するオーバライドの要求が有ったか否かを判定する。このオーバライドの要求は、アクセル開度変化割合算出手段221によるアクセル開度の変化割合dpapbfがROM102の第1の所定の変化割合X1よりも大きいとき(dpapbf>X1)に有ったものと判定される。
【0074】
このステップST2の判定が、オーバライドの要求が有ったYESの場合には、ステップST3において、車速制限動作が解除される直前のアクセル開度の変化割合dpapbfが第2の所定の変化割合X2よりも小さいか否か、つまり『dpapbf<X2』を判定する。このステップST3の判定が、『dpapbf<X2』であるYESの場合には、ステップST4に進んで、車速制限動作が解除された際のギヤ段「5速」を、シフトダウン変更線「5→4」を跨いでLoギヤ側に1つ小さいギヤ段「4速」に変更する。つまり、車速制限動作が解除される直前のアクセル開度の変化割合dpapbfが第2の所定の変化割合X2よりも小さいことが入力されると、図5中実線矢印で示すように、ギヤ段が「5速」の状態で走行している状況からシフトダウン変更線「5→4」を1つ跨いで変化し、変速マップから算出される目標ギヤ段が「4速」となり、その「4速」のギヤ段を設定するソレノイド制御信号(油圧指令信号)を自動変速機3に出力して、「5速」のギヤ段をLoギヤ側に1つ小さい「4速」のギヤ段に変更する。その後、ステップST5において、ギヤ段の変更制御を終了する。
【0075】
一方、上記ステップST3の判定が、『dpapbf≧X2』であるNOの場合には、ステップST6において、車速制限動作が解除される直前のアクセル開度の変化割合dpapbfが第3の所定の変化割合X3よりも小さいか否か、つまり『dpapbf<X3』を判定する。このステップST6の判定が、『dpapbf<X3』であるYESの場合には、ステップST7に進んで、車速制限動作が解除された際のギヤ段「5速」を、2つ小さい「3速」のギヤ段に変更する。つまり、車速制限動作が解除される直前のアクセル開度の変化割合dpapbfが第2の所定の変化割合X2よりも大きくかつ第3の所定の変化割合X3よりも小さいことが入力されると、図5中破線矢印で示すように、ギヤ段が「5速」の状態で走行している状況から複数のシフトダウン変更線「5→4」および「4→3」を飛び越して変化し、変速マップから算出される目標ギヤ段が「3速」となり、その「3速」のギヤ段を設定するソレノイド制御信号(油圧指令信号)を自動変速機3に出力して、「5速」のギヤ段からLoギヤ側に2つ小さい「3速」のギヤ段への変更(5→3ダウン変速)を行う。その後、上記ステップST5に進む。
【0076】
また、上記ステップST6の判定が、『dpapbf≧X3』であるNOの場合には、ステップST8に進んで、車速制限動作が解除された際のギヤ段「5速」を、実現可能な最小の「2速」のギヤ段に変更する。つまり、車速制限動作が解除される直前のアクセル開度の変化割合dpapbfが第3の所定の変化割合X3よりも小さいことが入力されると、図5中破線矢印で示すように、ギヤ段が「5速」の状態で走行している状況から複数のシフトダウン変更線「5→4」、「4→3」および「3→2」を飛び越して変化し、変速マップから算出される目標ギヤ段が「2速」となり、その「2速」のギヤ段を設定するソレノイド制御信号(油圧指令信号)を自動変速機3に出力して、「5速」のギヤ段からLoギヤ側に3つ小さい「2速」のギヤ段への変速(5→2ダウン変速)を行う。その後、上記ステップST5に進む。
【0077】
しかる後、ステップST9において、走行車速が制限車速よりも小さく(例えば、5km/h程度低く)なるまで待機する。そして、上記ステップST9の判定が、走行車速が制限速度よりも小さくなった時点で、ステップST10に進み、車速制限動作を復帰し、走行車速を制限車速に制限する。
【0078】
この場合、上記ステップST2により車速制限解除手段が構成され、ステップST3ないしステップST8により変速比変更手段としてのギヤ段変更手段が構成されている。
【0079】
このように、車速制限動作を解除するに当たり、アクセルペダルを踏み込んだ際のアクセル開度の変化割合dpapbfが第1の所定の変化割合X1よりも大きいとき(dpapbf>X1)に、車速制限動作が一時的に解除される。そして、車速制限動作が解除されると、その車速制限動作が解除された際のギヤ段は、車速制限動作が解除される直前のアクセル開度の変化割合dpapbfに応じて変更される。つまり、車速制限動作が解除された際のギヤ段は、車速制限動作が解除される直前のアクセル開度の変化割合dpapbfが第2の所定の変化割合X2よりも小さいとき(dpapbf<X2)にLoギヤ側に1つだけ小さいギヤ段に、車速制限動作が解除される直前のアクセル開度の変化割合dpapbfが第2の所定の変化割合X2よりも大きくかつ第3の所定の変化割合X3よりも小さいとき(X2≦dpapbf<X3)にLoギヤ側に2つ小さいギヤ段に、更に、車速制限動作が解除される直前のアクセル開度の変化割合dpapbfが第3の所定の変化割合X3よりも大きいとき(dpapbf≧X3)にLoギヤ側に実現可能な最小のギヤ段にそれぞれ変更される。このため、運転者が緩加速を要求しているときには運転者の意図を反映するアクセル開度の小さな変化割合dpapbfが第2の所定の変化割合X2よりも小さくなるためにLoギヤ側に僅かに1段だけ変更されるように小さなものとなる一方、運転者が急加速を要求しているときには運転者の意図を反映するアクセル開度の大きな変化割合dpapbfが第3の所定の変化割合X3よりも大きくなるためによりLoギヤ側となる実現可能な最小のギヤ段に変更されるように大きなものとなる。これにより、車速制限動作が解除された際に運転者の要求する加速が得られ、運転者の意図に沿った加速を実現することができる。
【0080】
また、車速制限動作が解除された際のギヤ段が、その車速制限動作が解除される直前のアクセル開度の変化割合dpapbfに応じて変更されることにより、運転者によるアクセルペダルの踏み込み方次第で車速制限動作が解除された際のギヤ段が決定されることになる。これにより、高出力のエンジン(原動機)を備えた車両やファミリータイプの車両などの穏やかな加速を要求する車両や、低出力のエンジンを備えた車両やスポーツタイプの車両などの強力な加速を要求する車両などのように性格の相反する車両に対して別個の制御プログラムを複数用意して車速制限動作が解除された際のギヤ段を個々に決定しなくとも単一の制御プログラムによって運転者の望む加速が得られ、車速制限動作が解除された際のギヤ段を決定する制御プログラムの共用化を図ることができる。
【0081】
しかも、アクセル開度の変化割合dpapbfが第1の所定割合X1以上であるときに車速制限動作が解除され、そのときの第1の所定割合X1を超えるアクセル開度の変化割合dpapbfに応じてギヤ段が変更されることにより、第1の所定割合X1を超えるアクセル開度の変化割合dpapbfに応じて変更されたギヤ段によって、車速制限動作が解除された際に運転者の要求する加速がスムーズに得られ、運転者の意図に沿った加速を円滑に実現することができる。
【0082】
更に、車速制限動作が解除されたときのギヤ段の変更を、図6に示すように、車速とアクセル開度とにより設定された第1のギヤ段判断条件つまり図5に示す変速マップの各シフトダウン変更線(第1の変速比判断条件)に基づいて1段ずつ段階的に行う場合と、図7に示すように、この第1のギヤ段判断条件とは異なる第2のギヤ段判断条件(第2の変速比判断条件)つまりアクセル開度の変化割合dpapbfに基づいて複数段一度に行う場合とに切り換える切換スイッチが設けられ、この切換スイッチが、車両の性格、または車両に搭載されるエンジンが発生する出力に応じて切り換えられているので、この切換スイッチを第1のギヤ段判断条件に切り換えることで、車速制限動作が解除されたときのギヤ段が第1のギヤ段判断条件に応じて変更されて、穏やかな加速が得られることになる。一方、切換スイッチを第2のギヤ段判断条件に切り換えることで、車速制限動作が解除されたときのギヤ段が第2のギヤ段判断条件に応じて変更されて、第1のギヤ段判断条件とは異なる強力な加速が得られることになる。これにより、車両のタイプを選択した運転者の意図通りの加速を実現することができる。
【実施例2】
【0083】
次に、本発明の実施例2を図11に基づいて説明する。
【0084】
この実施例2では、ギヤ段変更手段によるギヤ段の変更をアクセル開度の変化割合に加えその他のパラメータとしての前後走行負荷の度合いにより行うようにしている。
【0085】
すなわち、本実施例2では、ECU100のROM102に、前後走行負荷の第1の所定の度合いY1が予め記憶されている。
【0086】
そして、ギヤ段変更手段は、車速制限動作が解除されたときのギヤ段を、その車速制限動作が解除される直前にアクセル開度変化割合算出手段221により算出されたアクセル開度の変化割合および前後走行負荷センサ209により検出された前後走行負荷の度合いに応じて変更している。
【0087】
このギヤ段変更手段は、車速制限動作が解除される直前のアクセル開度の変化割合dpapbfが第2の所定の変化割合X2よりも小さいとき(dpapbf<X2)にLoギヤ側に1つ小さい「4速」のギヤ段に変更される車速制限動作解除時の「5速」のギヤ段を、前後走行負荷センサ209により検出された前後走行負荷の度合いloadbfがROM102の前後走行負荷の第1の所定の度合いY1よりも大きいとき(loadbf>Y1)に大きく変更し直す、つまりLoギヤ側にさらに1つ小さな「3速」のギヤ段となるように大きく変更し直している。一方、車速制限動作が解除される直前のアクセル開度の変化割合dpapbfが第2の所定の変化割合X2よりも大きくかつ第3の所定の変化割合X3よりも大きいとき(dpapbf≧X3)に実現可能な最小の「2速」のギヤ段に変更される車速制限動作解除時の「5速」のギヤ段を、前後走行負荷センサ209により検出された前後走行負荷の度合いloadbfがROM102の前後走行負荷の第1の所定の度合いY1よりも小さいときに小さく変更し直す、つまりLoギヤ側に3つ小さくなる「2速」のギヤ段をHiギヤ側に1つ大きい「3速」のギヤ段に変更し直している。要するに、ギヤ段変更手段では、車速制限動作が解除される直前のアクセル開度の変化割合dpapbfが小さいほど小さく変更されるギヤ段を、前後走行負荷の度合いloadbfが大きいときに大きく変更し直している一方、車速制限動作が解除される直前のアクセル開度の変化割合dpapbfが大きいほど大きく変更されるギヤ段を、前後走行負荷の度合いloadbfが小さいときに小さく変更し直している。
【0088】
ここで、ECU100による車速制限動作中における自動変速機のギヤ段の変速制御の流れを図11のフローチャートに基づいて説明する。この場合においても、自動変速機3のギヤ段が「5速」の状態で走行している状況(目標ギヤ段と現在のギヤ段とが同じで、ギア段が適切に設定されている状況)であるものとする。
【0089】
先ず、図11のフローチャートのステップST21において、走行車速を制限車速に制限する車速制限動作中であるか否かを判定し、このステップST21の判定が、車速制限動作中であるときに、ステップST22に進んで、車速制限動作を一時的に解除するオーバライドの要求(dpapbf>X1)が有ったか否かを判定する。
【0090】
このステップST22の判定が、オーバライドの要求が有ったYESの場合には、ステップST23において、車速制限動作が解除される直前のアクセル開度の変化割合dpapbfが第2の所定の変化割合X2および第3の所定の変化割合X3よりも小さいか否か、つまり『dpapbf<X2、dpapbf<X3』を判定する。このステップST23の判定が、『dpapbf<X2』であるYESの場合には、ステップST24において、前後走行負荷センサ209により検出された前後走行負荷の度合いloadbfがROM102の前後走行負荷の第1の所定の度合いY1よりも小さいか否か、つまり『loadbf<Y1』を判定する。
【0091】
このステップST24の判定が、『loadbf<Y1』であるYESの場合には、ステップST25において、車速制限動作が解除される直前のアクセル開度の変化割合dpapbfが第2の所定の変化割合X2よりも小さいとき(dpapbf<X2)にLoギヤ側に1つ小さい「4速」のギヤ段に変更される車速制限動作解除時の「5速」のギヤ段を、前後走行負荷の度合いloadbfによって変更し直すことなく、第2の所定の変化割合X2よりも小さなアクセル開度の変化割合dpapbfに応じてLoギヤ側に1つ小さい「4速」のギヤ段とする。その後、ステップST26において、ギヤ段の変更制御を終了する。
【0092】
また、上記ステップST24の判定が、『loadbf≧Y1』であるNOの場合には、ステップST27において、車速制限動作が解除される直前のアクセル開度の変化割合dpapbfが第2の所定の変化割合X2よりも小さいとき(dpapbf<X2)にLoギヤ側に1つ小さい「4速」のギヤ段に変更される車速制限動作解除時の「5速」のギヤ段を、第1の所定の度合いY1よりも大きい前後走行負荷の度合いloadbfに応じてLoギヤ側にさらに1つ小さい「3速」のギヤ段となるように大きく変更し直した後、上記ステップST26に進む。
【0093】
一方、上記ステップST23の判定が、車速制限動作が解除される直前のアクセル開度の変化割合dpapbfが第2の所定の変化割合X2および第3の所定の変化割合X3よりも大きい(dpapbf≧X3)NOの場合には、ステップST28において、『loadbf<Y1』を判定する。
【0094】
このステップST28の判定が、『loadbf<Y1』であるYESの場合には、上記ステップST27において、車速制限動作が解除される直前のアクセル開度の変化割合dpapbfが第3の所定の変化割合X3よりも大きいとき(dpapbf<X3)にLoギヤ側に実現可能な最小の「2速」のギヤ段に変更される車速制限動作解除時の「5速」のギヤ段を、第1の所定の度合いY1よりも小さい前後走行負荷の度合いloadbfに応じてHiギヤ側に1つ大きい「3速」のギヤ段となるように小さく変更し直した後、上記ステップST26に進む。
【0095】
また、ステップST28の判定が、『loadbf≧Y1』であるNOの場合には、ステップST29において、車速制限動作が解除される直前のアクセル開度の変化割合dpapbfが第3の所定の変化割合X3よりも大きいとき(dpapbf<X3)に実現可能な最小のギヤ段「2速」に変更される車速制限動作解除時のギヤ段「5速」を、前後走行負荷の度合いloadbfによって変更し直すことなく、第3の所定の変化割合X3よりも大きなアクセル開度の変化割合dpapbfに応じた実現可能な最小の「2速」のギヤ段とした後、上記ステップST26に進む。
【0096】
しかる後、ステップST30において、走行車速が制限車速よりも小さく(例えば、5km/h程度低く)なるまで待機した後、ステップST31において、車速制限動作を復帰し、走行車速を制限車速に制限する。
【0097】
この場合、上記ステップST22により車速制限解除手段が構成され、ステップST23ないしステップST29により変速比変更手段としてのギヤ段変更手段が構成されている。
【0098】
このように、車速制限動作が解除された際の「5速」のギヤ段からの変更は、運転者が緩加速を要求しているときには、運転者の意図を反映するように、第2の所定の変化割合X2よりも小さなアクセル開度の変化割合dpapbfに応じてLoギヤ側に1つ小さな「4速」のギヤ段に変更されるように小さなものとなるが、前後走行負荷の度合いloadbfが第1の所定の度合いY1よりも大きければ、その大きな前後走行負荷の度合いloadbfに応じてLoギヤ側にさらに1つ小さい「3速」のギヤ段となるように大きく変更し直されている。一方、車速制限動作が解除された際の「5速」のギヤ段からの変更は、運転者が急加速を要求しているときには、運転者の意図を反映するように、第3の所定の変化割合X3よりも大きなアクセル開度の変化割合dpapbfに応じて実現可能な最小の「2速」のギヤ段に変更されるように大きなものとなるが、前後走行負荷の度合いloadbfが第1の所定の度合いY1よりも小さければ、その小さな前後走行負荷の度合いloadbfに応じてHiギヤ側に1つ大きな「3速」のギヤ段となるように小さく変更し直されている。これにより、車速制限動作が解除された際に運転者の要求する加速がアクセル開度の変化割合dpapbfのみならず車両に作用する前後走行負荷の度合いloadbfに応じて的確に得られ、運転者の意図に沿った加速を前後走行負荷の度合いloadbfを考慮しつつ実現することができる。
【0099】
なお、本発明は、上記各実施例に限定されるものではなく、その他種々の変形例を包含している。例えば、上記実施例1では、車速制限動作が解除された際のギヤ段を、車速制限動作が解除される直前のアクセル開度の変化割合dpapbfが小さいほど小さく変更する一方、車速制限動作が解除される直前のアクセル開度の変化割合dpapbfが大きいほど大きく変更したが、車速制限動作が解除された際のギヤ段を、車速制限動作が解除される直前に前後走行負荷検出手段により検出された前後走行負荷の度合いが大きいほど大きく変更する一方、車速制限動作が解除される直前に前後走行負荷検出手段により検出された前後走行負荷の度合いが小さいほど小さく変更するギヤ段変更手段であってもよい。具体的には、車速制限動作が解除された際のギヤ段を、車速制限動作が解除される直前の前後走行負荷の度合いloadbfが第1の所定の度合いY1よりも小さいとき(loadbf<Y1)にLoギヤ側に1つ小さいギヤ段に、車速制限動作が解除される直前の前後走行負荷の度合いloadbfが第1の所定の度合いY1よりも大きくかつ第2の所定の度合いY2よりも小さいとき(Y1≦loadbf<Y2)にLoギヤ側に2つ小さいギヤ段に、更に、車速制限動作が解除される直前の前後走行負荷の度合いloadbfが第2の所定の度合いY2よりも大きいとき(loadbf≧Y2)にLoギヤ側に実現可能な最小のギヤ段にそれぞれ変更するギヤ段変更手段であってもよい。この場合には、車速制限動作が解除された際に運転者の要求する加速が前後走行負荷の度合いloadbfに応じて的確に得られ、運転者の意図に沿った加速を実現することが可能となる。
【0100】
これに対し、車速制限動作が解除された際のギヤ段を、車速制限動作が解除される直前に左右負荷センサにより検出されたステアリング舵角の度合いまたは車両に左右方向から作用する横加速度の度合いが小さいほど大きく変更する一方、車速制限動作が解除される直前に左右負荷検出手段により検出されたステアリング舵角の度合いまたは横加速度の度合いが大きいほど小さく変更するギヤ段変更手段であってもよい。具体的には、車速制限動作が解除される直前に左右負荷センサにより検出されたステアリング舵角の度合いまたは横加速度の度合いを第1の所定の度合いおよびこれよりも大きな第2の所定の度合いと比較し、車速制限動作が解除された際のギヤ段を、車速制限動作が解除される直前のステアリング舵角の度合いまたは横加速度の度合いが第2の所定の度合いよりも大きいときにLoギヤ側に1つ小さいギヤ段に、車速制限動作が解除される直前のステアリング舵角の度合いまたは横加速度の度合いが第2の所定の度合いよりも小さくかつ第1の所定の度合いよりも大きいときにLoギヤ側に2つ小さいギヤ段に、更に、車速制限動作が解除される直前のステアリング舵角の度合いまたは横加速度の度合いが第1の所定の度合いよりも小さいときにLoギヤ側に実現可能な最小のギヤ段にそれぞれ変更するギヤ段変更手段であってもよい。この場合には、車速制限動作が解除された際に運転者の要求する加速がステアリング舵角の度合いまたは横加速度の度合いに応じて的確に得られ、運転者の意図に沿った加速を実現することが可能となる。
【0101】
また、上記実施例2では、ギヤ段変更手段によるギヤ段の変更をアクセル開度の変化割合dpapbfに加え、前後走行負荷の度合いloadbfにより行うようにしたが、ギヤ段変更手段によるギヤ段の変更がアクセル開度の変化割合に加え、車速制限動作が解除される直前のステアリング舵角の度合いまたは横加速度の度合いに応じて行われるようにしてもよい。
【0102】
また、上記各実施例では、自動変速機3を有段変速タイプの遊星歯車機構とした例を挙げているが、有段変速タイプの歯車機構や、ベルト式やトロイダル式の無段変速機構とすることが可能である。この場合、ベルト式の無段変速機構のものでは、図示していないが、一対のプーリにベルトを巻き掛けた構成になっていて、上記プーリの有効径を油圧によって変化させることで連続的に変速比を変更させて無段の変速を実現するようにしている。
【0103】
また、上記各実施例では、5速の変速ギヤ段に変速可能な自動変速機3について述べたが、5速の変速ギヤ段に変速可能なものに限定されることはなく、5速の変速ギヤ段を除く3速以上の変速ギヤ段に変速可能な自動変速機であってもよいのはもちろんである。
【0104】
また、上記各実施例では、アクセル開度変化割合算出手段221によるアクセル開度の変化割合dpapbfがROM102の第1の所定の変化割合X1よりも大きいとき(dpapbf>X1)に、車速制限動作を解除するようにしたが、運転席のダッシュボード付近に設けられた手動スイッチ、またはキックダウンスイッチにより車速制限動作が解除されるようにしてもよい。
【0105】
更に、上記各実施例では、車速とアクセル開度とにより第1のギヤ段判断条件を設定したが、車速と、車両の原動機の回転数とトルクコンバータのタービン回転数との差回転により第1のギヤ段判断条件(第1の変速比判断条件)が設定されていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0106】
【図1】本発明の実施例1に係る車速制限装置を備えた車両の一部を示す概略構成図である。
【図2】同じく車両の自動変速機の一例を示す概略構成図である。
【図3】同じく自動変速機の作動表である。
【図4】同じくECU等の制御系の構成を示すブロック図である。
【図5】同じく変速制御に用いる変速マップを示す図である。
【図6】同じく第1のギヤ段判断条件に基づくオーバライド後の車速、アクセル開度、スロットル開度およびギヤ段のそれぞれの時間に対する経過の特性を示すタイムチャート図である。
【図7】同じく第2のギヤ段判断条件に基づくオーバライド後の車速、アクセル開度、スロットル開度およびギヤ段のそれぞれの時間に対する経過の特性を示すタイムチャート図である。
【図8】同じくアクセル開度の変化割合に応じた自動変速機のギヤ段の変更の特性を示すタイムチャート図である。
【図9】同じくECUの車速制限動作解除後における自動変速機のギヤ段の変速制御の流れを示すフローチャート図である。
【図10】同じく車速制限動作中における制限車速およびスロットル開度の特性を示す特性図である。
【図11】本発明の実施例2に係るECUの車速制限動作解除後における自動変速機のギヤ段の変速制御の流れを示すフローチャート図である。
【符号の説明】
【0107】
205 アクセル開度センサ(アクセル開度検出手段)
209 前後走行負荷センサ(前後走行負荷検出手段)
210 左右負荷センサ(左右負荷検出手段)
221 アクセル開度変化割合算出手段
dpapbf アクセル開度の変化割合
loadbf 前後走行負荷の度合い
X1 アクセル開度の第1の所定の変化割合(アクセル開度の所定の変化割合)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め制限された制限車速よりも走行車速が高くなるときに、車速制限動作を行って上記走行車速を上記制限車速に制限する車両の車速制限装置であって、
上記走行車速は、アクセル開度によって要求されるスロットル開度に応じて設定されている一方、上記制限車速は、上記スロットル開度に制限を加えた制限スロットル開度に応じて設定されており、
上記スロットル開度に応じた走行車速に基づいて自動変速機の変速比を設定する変速制御手段と、
上記車速制限動作を解除する車速制限解除手段と、
アクセル開度を検出するアクセル開度検出手段と、
上記アクセル開度検出手段により検出されたアクセル開度によりそのアクセル開度の変化割合を算出するアクセル開度変化割合算出手段と、
上記車速制限解除手段により車速制限動作が解除された際に上記変速制御手段により設定されている自動変速機の変速比を、上記車速制限動作が解除される直前に上記アクセル開度変化割合算出手段により算出されたアクセル開度の変化割合に応じて変更する変速比変更手段と
を備えていることを特徴とする車両の車速制限装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両の車速制限装置において、
上記車速制限解除手段は、上記アクセル開度変化割合算出手段により算出されたアクセル開度の変化割合が所定割合以上であるときに、上記車速制限動作を解除するものであることを特徴とする車両の車速制限装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の車両の車速制限装置において、
上記変速比変更手段は、
上記車速制限動作が解除された際の変速比を、上記車速制限動作が解除される直前のアクセル開度の変化割合が小さいほど小さく変更している一方、上記車速制限動作が解除される直前のアクセル開度の変化割合が大きいほど大きく変更していることを特徴とする車両の車速制限装置。
【請求項4】
予め制限された制限車速よりも走行車速が高くなるときに、車速制限動作を行って上記走行車速を上記制限車速に制限する車両の車速制限装置であって、
上記走行車速は、アクセル開度によって要求されるスロットル開度に応じて設定されている一方、上記制限車速は、上記スロットル開度に制限を加えた制限スロットル開度に応じて設定されており、
上記スロットル開度に応じた走行車速に基づいて自動変速機の変速比を設定する変速制御手段と、
上記車速制限動作を解除する車速制限解除手段と、
上記車両に前後方向から作用する前後走行負荷の度合いを検出する前後走行負荷検出手段と、
上記車速制限解除手段により車速制限動作が解除された際に上記変速制御手段により設定されている自動変速機の変速比を、上記車速制限動作が解除される直前に上記前後走行負荷検出手段により検出された前後走行負荷の度合いに応じて変更する変速比変更手段と
を備えていることを特徴とする車両の車速制限装置。
【請求項5】
請求項4に記載の車両の車速制限装置において、
上記変速比変更手段は、
上記車速制限動作が解除された際の変速比を、上記車速制限動作が解除される直前に上記前後走行負荷検出手段により検出された前後走行負荷の度合いが大きいほど大きく変更している一方、上記車速制限動作が解除される直前に上記前後走行負荷検出手段により検出された前後走行負荷の度合いが小さいほど小さく変更していることを特徴とする車両の車速制限装置。
【請求項6】
予め制限された制限車速よりも走行車速が高くなるときに、車速制限動作を行って上記走行車速を上記制限車速に制限する車両の車速制限装置であって、
上記走行車速は、アクセル開度によって要求されるスロットル開度に応じて設定されている一方、上記制限車速は、上記スロットル開度に制限を加えた制限スロットル開度に応じて設定されており、
上記スロットル開度に応じた走行車速に基づいて自動変速機の変速比を設定する変速制御手段と、
上記車速制限動作を解除する車速制限解除手段と、
ステアリング舵角の度合いまたは車両に左右方向から作用する横加速度の度合いを検出する左右負荷検出手段と、
上記車速制限解除手段により車速制限動作が解除されたときに上記変速制御手段により設定されている自動変速機の変速比を、上記車速制限動作が解除される直前に上記左右負荷検出手段により検出されたステアリング舵角の度合いまたは横加速度の度合いに応じて変更する変速比変更手段と
を備えていることを特徴とする車両の車速制限装置。
【請求項7】
請求項6に記載の車両の車速制限装置において、
上記変速比変更手段は、
上記車速制限動作が解除されたときの変速比を、上記車速制限動作が解除される直前に上記左右負荷検出手段により検出されたステアリング舵角の度合いまたは横加速度の度合いが小さいほど大きく変更している一方、上記車速制限動作が解除される直前に上記左右負荷検出手段により検出されたステアリング舵角の度合いまたは横加速度の度合いが大きいほど小さく変更していることを特徴とする車両の車速制限装置。
【請求項8】
請求項1または請求項2に記載の車両の車速制限装置において、
車両に前後方向から作用する前後走行負荷の度合いを検出する前後走行負荷検出手段を備え、
上記変速比変更手段は、
上記車速制限動作が解除されたときの変速比を、上記車速制限動作が解除される直前に上記アクセル開度変化割合算出手段により算出されたアクセル開度の変化割合および上記前後走行負荷検出手段により検出された前後走行負荷の度合いに応じて変更していることを特徴とする車両の車速制限装置。
【請求項9】
請求項8に記載の車両の車速制限装置において、
上記変速比変更手段は、
上記アクセル開度の変化割合が小さいほど小さく変更される変速比を、上記前後走行負荷検出手段により検出された前後走行負荷の度合いが大きいときに大きく変更し直す一方、上記アクセル開度の変化割合が大きいほど大きく変更される変速比を、上記前後走行負荷検出手段により検出された前後走行負荷の度合いが小さいときに小さく変更し直していることを特徴とする車両の車速制限装置。
【請求項10】
請求項1または請求項2に記載の車両の車速制限装置において、
ステアリング舵角の度合いまたは車両に左右方向から作用する横加速度の度合いを検出する左右負荷検出手段を備え、
上記変速比変更手段は、上記車速制限動作が解除されたときの変速比を、上記アクセル開度変化割合算出手段により算出されたアクセル開度の変化割合および上記左右負荷検出手段により検出されたステアリング舵角の度合いまたは横加速度の度合いに応じて変更していることを特徴とする車両の車速制限装置。
【請求項11】
請求項10に記載の車両の車速制限装置において、
上記変速比変更手段は、
上記アクセル開度の変化割合が小さいほど小さく変更される変速比を、上記左右負荷検出手段により検出されたステアリング舵角の度合いまたは横加速度の度合いが小さいときに大きく変更し直す一方、上記アクセル開度の変化割合が大きいほど大きく変更される変速比を、上記左右負荷検出手段により検出されたステアリング舵角の度合いまたは横加速度の度合いが大きいときに小さく変更し直していることを特徴とする車両の車速制限装置。
【請求項12】
請求項1〜請求項11のいずれか1つに記載の車両の車速制限装置において、
上記変速比変更手段は、
上記車速制限動作が解除されたときの変速比を、アクセル開度、または車両の原動機の回転数とトルクコンバータのタービン回転数との差回転、および車速により設定された第1の変速比判断条件と、この第1の変速比判断条件とは異なる第2の変速比判断条件とに基づいて変更するように切り換える切換スイッチを備え、
上記切換スイッチは、車両の性格、または車両の原動機が発生する出力に応じて切り換えられるようにしていることを特徴とする車両の車速制限装置。
【請求項1】
予め制限された制限車速よりも走行車速が高くなるときに、車速制限動作を行って上記走行車速を上記制限車速に制限する車両の車速制限装置であって、
上記走行車速は、アクセル開度によって要求されるスロットル開度に応じて設定されている一方、上記制限車速は、上記スロットル開度に制限を加えた制限スロットル開度に応じて設定されており、
上記スロットル開度に応じた走行車速に基づいて自動変速機の変速比を設定する変速制御手段と、
上記車速制限動作を解除する車速制限解除手段と、
アクセル開度を検出するアクセル開度検出手段と、
上記アクセル開度検出手段により検出されたアクセル開度によりそのアクセル開度の変化割合を算出するアクセル開度変化割合算出手段と、
上記車速制限解除手段により車速制限動作が解除された際に上記変速制御手段により設定されている自動変速機の変速比を、上記車速制限動作が解除される直前に上記アクセル開度変化割合算出手段により算出されたアクセル開度の変化割合に応じて変更する変速比変更手段と
を備えていることを特徴とする車両の車速制限装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両の車速制限装置において、
上記車速制限解除手段は、上記アクセル開度変化割合算出手段により算出されたアクセル開度の変化割合が所定割合以上であるときに、上記車速制限動作を解除するものであることを特徴とする車両の車速制限装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の車両の車速制限装置において、
上記変速比変更手段は、
上記車速制限動作が解除された際の変速比を、上記車速制限動作が解除される直前のアクセル開度の変化割合が小さいほど小さく変更している一方、上記車速制限動作が解除される直前のアクセル開度の変化割合が大きいほど大きく変更していることを特徴とする車両の車速制限装置。
【請求項4】
予め制限された制限車速よりも走行車速が高くなるときに、車速制限動作を行って上記走行車速を上記制限車速に制限する車両の車速制限装置であって、
上記走行車速は、アクセル開度によって要求されるスロットル開度に応じて設定されている一方、上記制限車速は、上記スロットル開度に制限を加えた制限スロットル開度に応じて設定されており、
上記スロットル開度に応じた走行車速に基づいて自動変速機の変速比を設定する変速制御手段と、
上記車速制限動作を解除する車速制限解除手段と、
上記車両に前後方向から作用する前後走行負荷の度合いを検出する前後走行負荷検出手段と、
上記車速制限解除手段により車速制限動作が解除された際に上記変速制御手段により設定されている自動変速機の変速比を、上記車速制限動作が解除される直前に上記前後走行負荷検出手段により検出された前後走行負荷の度合いに応じて変更する変速比変更手段と
を備えていることを特徴とする車両の車速制限装置。
【請求項5】
請求項4に記載の車両の車速制限装置において、
上記変速比変更手段は、
上記車速制限動作が解除された際の変速比を、上記車速制限動作が解除される直前に上記前後走行負荷検出手段により検出された前後走行負荷の度合いが大きいほど大きく変更している一方、上記車速制限動作が解除される直前に上記前後走行負荷検出手段により検出された前後走行負荷の度合いが小さいほど小さく変更していることを特徴とする車両の車速制限装置。
【請求項6】
予め制限された制限車速よりも走行車速が高くなるときに、車速制限動作を行って上記走行車速を上記制限車速に制限する車両の車速制限装置であって、
上記走行車速は、アクセル開度によって要求されるスロットル開度に応じて設定されている一方、上記制限車速は、上記スロットル開度に制限を加えた制限スロットル開度に応じて設定されており、
上記スロットル開度に応じた走行車速に基づいて自動変速機の変速比を設定する変速制御手段と、
上記車速制限動作を解除する車速制限解除手段と、
ステアリング舵角の度合いまたは車両に左右方向から作用する横加速度の度合いを検出する左右負荷検出手段と、
上記車速制限解除手段により車速制限動作が解除されたときに上記変速制御手段により設定されている自動変速機の変速比を、上記車速制限動作が解除される直前に上記左右負荷検出手段により検出されたステアリング舵角の度合いまたは横加速度の度合いに応じて変更する変速比変更手段と
を備えていることを特徴とする車両の車速制限装置。
【請求項7】
請求項6に記載の車両の車速制限装置において、
上記変速比変更手段は、
上記車速制限動作が解除されたときの変速比を、上記車速制限動作が解除される直前に上記左右負荷検出手段により検出されたステアリング舵角の度合いまたは横加速度の度合いが小さいほど大きく変更している一方、上記車速制限動作が解除される直前に上記左右負荷検出手段により検出されたステアリング舵角の度合いまたは横加速度の度合いが大きいほど小さく変更していることを特徴とする車両の車速制限装置。
【請求項8】
請求項1または請求項2に記載の車両の車速制限装置において、
車両に前後方向から作用する前後走行負荷の度合いを検出する前後走行負荷検出手段を備え、
上記変速比変更手段は、
上記車速制限動作が解除されたときの変速比を、上記車速制限動作が解除される直前に上記アクセル開度変化割合算出手段により算出されたアクセル開度の変化割合および上記前後走行負荷検出手段により検出された前後走行負荷の度合いに応じて変更していることを特徴とする車両の車速制限装置。
【請求項9】
請求項8に記載の車両の車速制限装置において、
上記変速比変更手段は、
上記アクセル開度の変化割合が小さいほど小さく変更される変速比を、上記前後走行負荷検出手段により検出された前後走行負荷の度合いが大きいときに大きく変更し直す一方、上記アクセル開度の変化割合が大きいほど大きく変更される変速比を、上記前後走行負荷検出手段により検出された前後走行負荷の度合いが小さいときに小さく変更し直していることを特徴とする車両の車速制限装置。
【請求項10】
請求項1または請求項2に記載の車両の車速制限装置において、
ステアリング舵角の度合いまたは車両に左右方向から作用する横加速度の度合いを検出する左右負荷検出手段を備え、
上記変速比変更手段は、上記車速制限動作が解除されたときの変速比を、上記アクセル開度変化割合算出手段により算出されたアクセル開度の変化割合および上記左右負荷検出手段により検出されたステアリング舵角の度合いまたは横加速度の度合いに応じて変更していることを特徴とする車両の車速制限装置。
【請求項11】
請求項10に記載の車両の車速制限装置において、
上記変速比変更手段は、
上記アクセル開度の変化割合が小さいほど小さく変更される変速比を、上記左右負荷検出手段により検出されたステアリング舵角の度合いまたは横加速度の度合いが小さいときに大きく変更し直す一方、上記アクセル開度の変化割合が大きいほど大きく変更される変速比を、上記左右負荷検出手段により検出されたステアリング舵角の度合いまたは横加速度の度合いが大きいときに小さく変更し直していることを特徴とする車両の車速制限装置。
【請求項12】
請求項1〜請求項11のいずれか1つに記載の車両の車速制限装置において、
上記変速比変更手段は、
上記車速制限動作が解除されたときの変速比を、アクセル開度、または車両の原動機の回転数とトルクコンバータのタービン回転数との差回転、および車速により設定された第1の変速比判断条件と、この第1の変速比判断条件とは異なる第2の変速比判断条件とに基づいて変更するように切り換える切換スイッチを備え、
上記切換スイッチは、車両の性格、または車両の原動機が発生する出力に応じて切り換えられるようにしていることを特徴とする車両の車速制限装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2009−133432(P2009−133432A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−310934(P2007−310934)
【出願日】平成19年11月30日(2007.11.30)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年11月30日(2007.11.30)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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