説明

車両減速装置及び車両

【課題】1G以上の制動性能で車両を減速させることができ、低コストで車両の衝突を予防することができる車両減速装置を提供する。
【解決手段】車両を構成する車体1及び車輪2間に設けられ、車輪2に加わる荷重に応じて、伸縮するコイルスプリングを有する懸架装置31と、車両の衝突を予測する衝突予測部34とを備え、衝突予測部34が衝突を予測した場合、車輪2の回転を制動するようにしてある車両減速装置3に、衝突予測部34が衝突を予測した場合、コイルスプリングを可逆的に伸張させる伸張装置32を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の衝突を予測した場合、車輪の回転を制動させると供に、車体及び車輪間に設けられた緩衝部材を可逆的に伸張させる車両減速装置及び該車両減速装置を備えた車両に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両の衝突安全性に関し、様々な乗員拘束装置が開発されている。一方、車両の衝突そのものを回避することによって、車両の乗員を保護する技術、いわゆる予防安全技術に関する研究が始められている。
【0003】
特許文献1には、予防安全技術の一例として、車両の衝突を予測し、衝突の危険性又は安全性を確保すべく、車両の運転者に対する警報として車両を減速させる減速制動装置が開示されている。
また、車両の衝突を予測し、1G程度の自動制動を行う予防安全装置が開示されている。
【0004】
警察庁から発行された事故統計2007年度版によれば、自動車の交通事故による死亡者は、事故直前における危険認知速度が50(km/時)以下で約半数を占め、100(km/時)以下で95%を占めている。従って、100(km/時)で走行する車両を20(km/時)程度の軽衝突レベルまで減速させることにより、多くの死亡者を救うことができる可能性がある。
【特許文献1】特開2008−1304号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、車両の制動性能は1G程度が限界であることは周知の事実である。
【0006】
図15は、従来の衝突予測センサ及び車両減速装置を用いた減速制御時における車両の挙動を示すグラフである。横軸は衝突前時間(s)、左側の縦軸は速度(km/時)、右側の縦軸は加速度(m/s2 )及び衝突前距離(m)を示している。また、三角印のプロット点で示したグラフは車両の速度、菱形印のプロット点で示したグラフは衝突前距離、四角印のプロット点で示したグラフは車両の加速度を夫々示している。図15に示すように、100(km/時)の車両を衝突前時間0.8(s)から1Gの制動能力で減速させた場合、衝突時における車両の速度は80(km/時)超である。このように、従来の衝突予測センサ及び車両減速装置では、衝突を予測し、車両を十分に減速させることができない。また、1Gの制動能力で、車両を十分に減速させるためには、早期に高精度で衝突を予測することができる衝突予測センサが必要になり、車両減速装置のコストが上昇するという問題が発生する。
【0007】
以上の諸事情から、従来の廉価な衝突予測センサを用いて衝突を予測し、100(km/時)で走行する車両を20(km/時)程度の軽衝突レベルまで減速させるために、1G以上の制動能力を有する車両減速装置が望まれている。
また、衝突予測センサによる衝突予測の信頼性が7割を超えるのが、衝突前時間0.3s程度とされている。衝突前時間0.3s以前の衝突予測検知では、衝突しない場合も多いため、1G以上の制動能力を有し、かつ可逆式であることが求められている。
【0008】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、車両の衝突を予測した場合、車輪の回転を制動させると共に、更に車両を構成する車体及び車輪間に設けられた緩衝部材を可逆的に伸張させる伸張手段を備えることにより、1G以上の制動性能で車両を減速させることができ、低コストで車両の衝突を予防することができる車両減速装置及び該車両減速装置を備えた車両を提供することを目的とする。
【0009】
また、本発明の他の目的は、車両の衝突を予測した場合、車輪の回転を制動させると供に、更に車輪及び路面間に挿脱が可能な車輪制動部材を、該車輪及び路面間に挿入する手段を備えることにより、1G以上の制動性能で車両を減速させることができ、低コストで車両の衝突を予防することができる車両減速装置及び該車両減速装置を備えた車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る車両減速装置は、車両を構成する車体及び車輪間に設けられ、該車輪に加わる荷重に応じて、伸縮する緩衝部材を有する懸架装置と、車両の衝突を予測する衝突予測手段とを備え、該衝突予測手段が衝突を予測した場合、前記車輪の回転を制動するようにしてある車両減速装置において、前記衝突予測手段が衝突を予測した場合、前記緩衝部材を可逆的に伸張させる伸張手段を備えることを特徴とする。
【0011】
本発明に係る車両減速装置は、前記伸張手段は、前記緩衝部材に並設され、前記車輪側(又は車体側)に設けられたねじ軸と、前記車体側(又は車輪側)に設けられており、前記ねじ軸に螺合するナットと、該ナットを回転させるナット駆動部とを備え、前記ナット駆動部は、前記衝突予測手段が衝突を予測した場合、前記ねじ軸が前記ナットから進出するように、前記ナットを回転させ、前記衝突予測手段が非衝突を予測した場合、前記ねじ軸が前記ナットへ進入するように前記ナットを回転させるようにしてあることを特徴とする。
【0012】
本発明に係る車両減速装置は、前記緩衝部材は、空気ばねを備え、前記伸張手段は、前記衝突予測手段が衝突を予測した場合、前記空気ばねに圧縮ガスを供給する圧縮機と、前記衝突予測手段が非衝突を予測した場合、前記空気ばねから圧縮ガスを排気させる排気弁とを備えることを特徴とする。
【0013】
本発明に係る車両減速装置は、前記車体側に収納されており、前記車輪及び路面間に巻き込ませて該車輪の回転を制動するための車輪制動部材と、前記衝突予測手段が衝突を予測した場合、前記車輪制動部材を前記車輪の前方へ投下する投下手段と、該投下手段によって投下された前記車輪制動部材を回収する回収手段とを備えることを特徴とする。
【0014】
本発明に係る車両減速装置は、前記車輪制動部材は、鋼材で形成された帯状をなし、前記回収手段は、外周面に前記車輪制動部材の一端部が固定され、前記車体側に回動可能に設けられた回転円筒部材と、該回転円筒部材を回転させる回転円筒部材駆動部とを備え、前記投下手段は、前記車輪の前方車体側に回動開閉が可能に支持され、前記車輪制動部材の他端側が載置される開閉板と、該開閉板を開方向へ回動させる開閉板駆動部とを備えることを特徴とする。
【0015】
本発明に係る車両減速装置は、車輪及び路面間に挿脱が可能な車輪制動部材と、車両の衝突を予測する衝突予測手段とを備え、該衝突予測手段が衝突を予測した場合、前記車輪の回転を制動するようにしてある車両減速装置であって、前記衝突予測手段が衝突を予測した場合、前記車輪制動部材を車輪及び路面間に挿入する手段を備えることを特徴とする。
【0016】
本発明に係る車両は、上述のいずれか一つの車両減速装置を備えることを特徴とする。
【0017】
本発明にあっては、衝突予測手段が車両の衝突を予測した場合、車輪の回転が制動される。車輪の回転が制動された場合、車輪及び路面間に発生する摩擦力によって、車両が減速する。
また、伸張手段は、衝突予測手段が車両の衝突を予測した場合、懸架装置を構成する緩衝部材を不可逆的に伸張させる。緩衝部材の伸張によって、車輪及び路面間に加わる接地面圧が増大し、摩擦力も増大する。
従って、従来の車両減速装置に比べて、より大きな制動能力で車両を減速させることが可能になる。また、緩衝部材の伸張は不可逆であるため、衝突を予測する都度、緩衝部材を伸張させ、車両を減速させることができる。
【0018】
本発明にあっては、伸張手段は緩衝部材に並設されている。該緩衝部材は、車輪側に設けられたねじ軸と、車体側に設けられ、該ねじ軸に螺合するナットとを備えたねじ機構を構成している。衝突予測手段が衝突を予測した場合、ナットが回転し、ねじ軸がナットから進出し、緩衝部材は伸張する。また、衝突予測手段が非衝突を予測した場合、ナットが回転し、ねじ軸がナットに進入し、衝突部材が短縮する。従って、衝突予測時に緩衝部材は不可逆的に伸張する。
なお、ねじ軸を車体側に設け、ナットを車輪側に設けても良い。
【0019】
本発明にあっては、緩衝部材は、空気ばねを備えている。衝突予測手段が衝突を予測した場合、空気ばねに圧縮ガスを供給し、緩衝部材を強制的に伸張させる。また、衝突予測手段が非衝突を予測した場合、排気弁が空気ばね中の圧縮ガスを排気させる。従って、衝突予測時に緩衝部材は不可逆的に伸張する。
【0020】
本発明にあっては、衝突予測手段が衝突を予測した場合、投下手段は、車輪の前方へ車輪制動部材を投下する。投下された車輪制動部材は、車輪及び路面間に巻き込まれ、車輪の回転は制動される。従って、より効果的に車両は減速する。
また、回収手段によって、車輪制動部材を回収することができるため、衝突を予測する都度、車輪制動部材を投下し、車両を減速させることができる。
【0021】
本発明にあっては、車輪制動部材は、鋼材で形成された帯状である。車輪制動部材の一端部は、車体側に設けられた回転円筒部材に固定され、他端部は、車輪の前方車体側に回動開閉が可能に支持された開閉板に載置されている。
衝突予測手段が衝突を予測した場合、開閉板駆動部は、開閉板を開方向へ回動させることによって、車輪制動部材を投下する。
また、回転円筒部材駆動部は、回転円筒部材を回転させることによって、車輪制動部材を回収する。
【0022】
本発明にあっては、衝突予測手段が車両の衝突を予測した場合、車輪及び路面間に車輪制動部材が挿入され、車輪の回転は制動される。従って、より効果的に車両は減速する。
また、車輪制動部材は、挿脱が可能であり、衝突を予測する都度、車輪制動部材を投下し、車両を減速させることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、1G以上の制動性能で車両を減速させることができ、低コストで車両の衝突を予防することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて詳述する。
図1は、本発明の実施の形態に係る車両及び車両減速装置3の略示平面構成図、図2は、本発明の実施の形態に係る車両及び車両減速装置3の略示側面構成図である。本実施の形態に係る車両は、車体1及び車輪2を備えた四輪自動車であり、減速手段として懸架装置31を利用した車両減速装置3を備える。
【0025】
車両減速装置3は、車体1及び車輪2間に設けられた懸架装置31と、懸架装置31に搭載された伸張装置32と、ディスクブレーキ装置33と、衝突予測部34と、制御回路35と、車輪ストッパ装置36とを備える。
【0026】
図3は、懸架装置31及び伸張装置32の構成を模式的に示す説明図である。懸架装置31は、例えば、ストラット式であり、車体1及び車輪2間を接続すると供に、振動を抑えるショックアブソーバー31d、例えばオイルダンパーを備える。ショックアブソーバー31dは、例えばオイルシリンダと、該オイルシリンダに対して下方へ進退が可能なピストンロッドとを備える。オイルシリンダの上部及びピストンロットの下部には夫々、上部ストラット鍔部31c及び下部ストラット鍔部31fが設けられている。上部ストラット鍔部31c及び下部ストラット鍔部31fの間には、ショックアブソーバー31dに対して同軸的にコイルスプリング(緩衝部材)31eが介装されている。
車輪2のハブには、車輪側支柱31hが接続されている。車輪側支柱31hは途中で第1車輪側支柱31gと、第2車輪側支柱32dとに分岐し、第1車輪側支柱31gは、下部ストラット鍔部31fの下面部に接続されている。
また、車体1側には、車体側支柱31aが接続されており、車体側支柱31aは途中で第1車体側支柱31bと、第2車体側支柱32aとに分岐し、第1車体側支柱31bは、上部ストラット鍔部31cの上面部に接続されている。
【0027】
伸張装置32は、従来の懸架装置31に並設されたボールねじ式回転歯車機構によって伸張する回転歯車式であり、第2車輪側支柱32dの上端部の外周面に雄ねじを形成してなるねじ軸32cを備える。第2車体側支柱32aの下端部には、回転自在に取り付けられたナット32bが設けられ、該ナット32bはねじ軸32cに螺合している。なお、ナット32bとねじ軸32cとの間には、図示しないボールが介在している。ナット32bの外周にはナット駆動雄ねじが形成されており、該ナット駆動雄ねじにはナット駆動歯車32eが噛合している。ナット駆動歯車32eには、ナット駆動モータ32f(図4参照)の出力軸が接続されている。ナット駆動歯車32eを回転させることによって、ナット32bを回転させ、車輪2に働く接地面圧を調整することができる。
なお、伸張装置32が伸縮し、動作していない場合、車輪2に加わる荷重に応じて、コイルスプリング31eが伸縮する。
また、ねじ軸32cを第2車輪側支柱32dに設け、ナット32bを第2車体側支柱32aに設けてあるが、言うまでもなくねじ軸32cを第2車体側支柱32aに設け、ナット32bを第2車輪側支柱32dに設けても良い。
【0028】
衝突予測部34は、例えば、レーザレーダ、超音波センサ等の非接触型距離センサによって所定時間毎に自車両と障害物との距離を計測する。この距離の時間的変化から相対速度を計算する。距離を相対速度で除算して衝突までの時間を計算する。該衝突時間が予め設定された所定時間以下なら、衝突の可能性があるとして衝突予測信号を制御回路35へ出力する。なお、レーザレーダを用いた衝突予測方法は、一例であり、自車両と、前方車両等の障害物との衝突が生ずる可能性があるか、衝突を回避可能か回避不可であるかを判別できるのであれば、他の装置を採用しても良い。例えば、車両周囲モニターを搭載しても良い。また、自車両の位置情報を送受信することができる車載器を搭載している車両同士で、各車両の相対位置を監視し、車両同士の衝突を予測するようにしても良い。
【0029】
車輪ストッパ装置36は、ウインチ駆動モータ36aを備え、ウインチ駆動モータ36aは、ウインチ駆動モータ36aの回転軸36cが車両進行方向になるような姿勢で、車輪2の前方、車体1側に固定されている。回転軸36cには、中心線が一致するように回転円筒部材36bが設けられている。
【0030】
また、車輪ストッパ装置36は、車輪2及び路面間に巻き込ませて車輪2の回転を制動するための車輪制動部材36dを備える。車輪制動部材36dは、鉄製の鎖のような鋼材で形成された帯状をなし、回転円筒部材36bの外周面の適宜箇所に車輪制動部材36dの一端部が固定されている。また、車輪制動部材36dの長さは、車輪制動部材36dが回転円筒部材36bに巻き取られていない状態で、車体1から投下された場合に、車輪2が車輪制動部材36dの他端部に乗り上げることができるように設定されている。
更に車輪ストッパ装置36は、車輪2の前方車体1側であって、回転円筒部材36bの下側に開閉板36eを備える。開閉板36eは、矩形板状をなし、車体1先端側の一辺部が、横方向の開閉板回動軸36fによって回動開閉可能に支持されている。開閉板回動軸36fは、開閉板36eを開閉させる開閉板駆動モータ36gの出力軸に接続されている。開閉板駆動モータ36gは、例えばステッピングモータである。開閉板36eが閉じている場合、車輪制動部材36dの予長部分が開閉板36eに載置され、開閉板36eが下方へ開いた場合、車体1の下方が開状態になり、車輪制動部材36dの他端側が車体1から投下される。
【0031】
ディスクブレーキ装置33は、ブレーキペダル33aと、マスタシリンダ33bと、油圧回路33cと、車輪2のハブに設けられたブレーキディスク33eと、油圧にてブレーキディスク33eを挟むキャリパ33dとを備える。油圧回路33cは、図示しないオイルリザーバ、オイルポンプ及び種々の電磁弁等によって構成されており、各キャリパ33dが備えるホイールシリンダの制動圧を変更し得るようになっている。油圧回路33cは、制御回路35の制御指示に従って、電磁弁の開閉動作を制御することによって、各車輪2の制動を制御できるように構成されている。
【0032】
図4は、制御回路35の構成を模式的に示すブロック図である。制御回路35は、車両の減速制御、各種演算、判定処理を行うCPU35aを備える。CPU35aには、バスを介して車両の減速制御を行うためのコンピュータプログラムを記憶するROM35bと、演算に伴って発生する一時的な情報を記憶するRAM35cと、入力部35dと、出力部35eとを備える。
【0033】
入力部35dには、衝突予測部34、乗員の位置及び体格を検知する乗員位置・体格検知部5、車輪制動部材36dを回収するための回収スイッチ36hが接続されており、各構成部から出力された信号が入力部35dに入力するように構成されている。
【0034】
出力部35eには、乗員拘束装置4、油圧回路33c、ナット駆動モータ32f、ウインチ駆動モータ36a、開閉板駆動モータ36gが接続されている。CPU35aは、出力部35eを介して各種制御信号を各構成部へ出力することによって、車両の減速を制御するように構成されている。
【0035】
乗員拘束装置4は、車両の座席に設けられ、車両の衝突時に乗員を拘束し、保護する装置であり、シートベルト(ウェビング)、シートベルトリトラクタ及びバックルから構成される。シートベルトリトラクタは、シートベルトを巻取軸に巻回し、渦巻きばねの付勢力により内部に引き込み、シートベルト非装着時にはその引き込んだ状態でシートベルトを収容している。また、特に車両急減速時等において一層強力に乗員の身体を拘束するため、プリテンショナ及びロック機構が設けられる。プリテンショナは、例えば、電動式であり、車両が急減速状態になったことを加速度センサが検知した場合にシートベルトの弛みを除去し、シートベルトによる拘束力を向上するものである。
なお、最悪の事態を想定し、乗員拘束装置4として、火薬式のプリテンショナを併用しても良いが、本実施の形態に係る車両減速装置3が動作する範囲においては電動式のプリテンショナを作動させ、火薬式のプリテンショナは作動しないように構成する。火薬式のプリテンショナは、衝突信号を検知した場合に作動するように作動範囲を設定すべきである。可逆式のシステムで1G以上の制動能力を実現した発明の長所が没却されるためである。
【0036】
図5は、車両の減速制御に係るCPU35aの処理手順を示すフローチャート、図6は、減速制御時における車両の挙動を示すグラフである。横軸は衝突前時間(s)、左側の縦軸は速度(km/時)、右側の縦軸は加速度(m/s2 )及び衝突前距離(m)を示している。また、三角印のプロット点で示したグラフは車両の速度、菱形印のプロット点で示したグラフは衝突前距離、四角印のプロット点で示したグラフは車両の加速度を夫々示している。
【0037】
CPU35aは、衝突予測部34から出力された衝突予測信号に基づいて、車両が衝突するか否かを予測する(ステップS11)。車両の非衝突を予測した場合(ステップS11:NO)、CPU35aは、再度ステップS11の処理を実行する。車両の衝突を予測した場合(ステップS11:YES)、CPU35aは、乗員拘束装置4へ乗員拘束制御信号を出力することによって、乗員拘束装置4を動作させ、乗員を拘束する(ステップS12)。
【0038】
次いで、CPU35aは、油圧回路33cの動作を制御することによって、ディスクブレーキ装置33を作動させ、車輪2を制動させる(ステップS13)。
例えば、図6に示すように、車両が100(km/時)で走行していて、衝突前距離約30(m)、衝突前時間0.8(s)の時点で衝突を予測した場合、ブレーキ制動が開始される。車両は、衝突前時間0.8〜0.6(s)の間、ディスクブレーキ装置33の動作によって減速する。なお、衝突前時間0.8(s)では、衝突予測の信頼性が低い状態にあるため、まずは伸張装置32を作動させずに、ディスクブレーキ装置33を作動させ、衝突の可能性が高くなった段階で、伸張装置32、車輪ストッパ装置36を順次作動させるように構成されている。
【0039】
そして、CPU35aは、衝突予測部34から出力された衝突予測信号に基づいて、車両の衝突が予測される状態が継続しているか否かを判定する(ステップS14)。衝突が予測される状態が継続していないと判定した場合(ステップS14:NO)、CPU35aは、油圧回路33cの動作を制御することによって、車輪2の制動を解除し(ステップS15)、処理を終える。
【0040】
衝突が予測される状態が継続していると判定した場合(ステップS14:YES)、CPU35aは、ナット駆動モータ32fを正方向、即ちコイルスプリング31eが伸張する方向へ回転駆動させる(ステップS16)。
【0041】
伸張装置32の伸張加速度は、車輪2及び路面間の接地面圧が、通常時の2倍以上になるように設定されている。例えば、3G、即ち9.8(m/s2 )×3程度の加速度で伸張装置32が伸張するようにすれば良い。
【0042】
図7は、減速制御時における伸張装置32の動作を模式的に示す説明図である。図7(a)は、伸張開始前における伸張装置32、図7(b)は、伸張開始後における伸張装置32を模式的に示す説明図である。図7(b)に示すように、ナット駆動モータ32fの回転駆動によって、ナット駆動歯車32e及びナット32bが回転し、ねじ機構によって、ねじ軸32cが下方へ移動する。ねじ軸32cが図7(b)に示す白抜き矢印方向へ移動した場合、車輪2及び路面間の圧力が増大し、摩擦力が向上し、車両の減速度も上昇する。
【0043】
図6に示すように、衝突前距離約20(m)、衝突前時間0.6(s)の時点で衝突を予測した場合、CPU35aは、ナット駆動歯車32eを回転駆動し、ナット32bからねじ軸32cが外れていく方向へねじ軸32cを移動させる。伸張装置32が伸張を続けている衝突前時間0.6(s)〜0.3(s)においては、単にディスクブレーキ装置33を動作させる場合に比べて、車両は、より効果的に減速する。
【0044】
次いで、CPU35aは、衝突予測部34から出力された衝突予測信号に基づいて、車両の衝突が予測される状態が継続しているか否かを判定する(ステップS17)。衝突が予測される状態が継続していないと判定した場合(ステップS17:NO)、CPU35aは、油圧回路33cの動作を制御することによって、車輪2の制動を解除する(ステップS18)。そして、CPU35aは、ナット駆動モータ32fを逆方向、即ちコイルスプリング31eが短縮する方向へ回転駆動させ(ステップS19)、処理を終える。ステップS18及びステップS19の処理によって、コイルスプリング31eが通常の収縮状態に戻り、従来のコイルスプリング31e式懸架装置31として動作する。このように、伸張装置32は、可逆式のシステムとして作動する。
【0045】
衝突が予測される状態が継続していると判定した場合(ステップS17:YES)、CPU35aは、開閉板36eが開く方向へ開閉板駆動モータ36gを回転駆動することによって、車輪制動部材36dを投下する(ステップS20)。より具体的には、CPU35aは、図6に示すように、現行の衝突予測部34の信頼性が約7割となる衝突前時間0.3秒になった段階で、衝突回避が困難であると判定し、車輪制動部材36dを投下する。車輪ストッパ装置36も伸張装置32と同様、可逆式の装置であるが、後述するように、車輪制動部材36dを、車輪2及び路面間から引き出し、車体1側に回収する必要があるため、衝突回避が困難な衝突前時間0.3(s)の段階で使用すると良い。
そして、CPU35aは、開閉板36eが開状態であることを示した開状態情報をRAM35cに記憶させ(ステップS21)、処理を終える。
【0046】
図8は、車輪ストッパ装置36の動作を模式的に示す説明図である。図8(a)は、開閉板36eが開く前の車輪ストッパ装置36、図8(b)は、開閉板36eが開いた状態における車輪ストッパ装置36を模式的に示す説明図である。図8(b)に示すように、開閉板駆動モータ36gの回転駆動によって、開閉板36eが下方へ開いて車輪制動部材36dが車輪2の前方へ投下される。車輪制動部材36dは、回転円筒部材36bから全量引き出された状態で収納されているため、開閉板36eが開くことで、車輪制動部材36dを投下し、車輪2及び路面間に巻き込ませることができる。車輪2の前方に投下された車輪制動部材36dに車輪2が乗り上げ、車輪制動部材36dは車輪2及び路面間に巻き込まれ、車輪制動部材36d及び路面間で摩擦力が発生する。つまり、車輪制動部材36dは、車輪2止めとしての役割を発揮し、車両の抵抗となることで車両を減速させる。車輪制動部材36dを用いた場合、車両は、ディスクブレーキ装置33及び伸張装置32を用いた場合に比べて、より効果的に減速する。
【0047】
図9は、車輪制動部材36dの回収に係るCPU35aの処理手順を示すフローチャート、図10は、車輪制動部材36dの回収動作を模式的に示す説明図である。CPU35aは、RAM35cが記憶している開状態情報を参照することによって、開閉板36eが開状態であるか否かを判定する(ステップS31)。開状態にないと判定した場合(ステップS31:NO)、CPU35aは、処理を終える。
【0048】
図10(a)に示すように、開閉板36eが開状態にあると判定した場合(ステップS31:YES)、CPU35aは、回収スイッチ36hの操作状態を検出することによって、回収スイッチ36hがオン状態にあるか否かを判定する(ステップS32)。回収スイッチ36hがオン状態にないと判定した場合(ステップS32:NO)、CPU35aは、処理を終える。
【0049】
回収スイッチ36hがオン状態にあると判定した場合(ステップS32:YES)、CPU35aは、ウインチ駆動モータ36aを、車輪制動部材36dの巻き取り方向へ回転駆動させる(ステップS33)。ウインチ駆動モータ36aが車輪制動部材36dの巻き取り方向へ回転した場合、車輪制動部材36dは、図10(b)に示すように、回転円筒部材36bに巻き取られ、回収される。
【0050】
そして、CPU35aは、開閉板駆動モータ36gを、開閉板36eの閉方向へ回転駆動させる(ステップS34)。開閉板駆動モータ36gが開閉板36eの開閉方向へ回転した場合、開閉板36eは、図10(c)に示すように上方へ回動し、閉状態になる。
【0051】
そして、CPU35aは、ウインチ駆動モータ36aを、車輪制動部材36dの巻き戻し方向へ回転駆動させる(ステップS35)。車輪制動部材36dが巻き戻し方向へ回転した場合、車輪制動部材36dは、図10(d)に示すように、回転円筒部材36bから巻き戻され、車輪制動部材36dの他端部は開閉板36eに載置される。車輪制動部材36dの巻き戻し量は、開閉板36eが開いた場合に、車輪制動部材36dが投下され、車輪2が車輪制動部材36dの端部に乗り上げることができる程度に設定されている。なお、巻取り量制御は、ウインチ駆動モータ36aの回転量をROM35bに予め書き込んでおき、CPU35aは、ROM35bから前記回転量を読み出し、該回転量に基づいて、ウインチ駆動モータ36aの回転動作を制御するように構成すれば良い。
【0052】
次いで、CPU35aは、開閉板36eが閉状態であることを示した閉状態情報をRAM35cに記憶させ(ステップS36)、処理を終える。
【0053】
このように構成された車両減速装置3及び車両にあっては、ボールねじ式回転歯車機構の伸張装置32、及び車輪ストッパ装置36を複合的に組み合わせることによって1G以上の制動性能で車両を減速させることができる。
また、1G以上の制動性能で車両を減速させることができるため、高精度及び高コストの衝突予測部34が不要になり、車両の衝突を予防することができる車両減速装置及び車両を低コストで構成することができる。
【0054】
また、1G以上の制動性能を発揮するための伸張装置32、車輪ストッパ装置36の動作は可逆的であるため、本発明に係る車両減速装置3による減速機能は繰り返し利用することができる。従って、高い衝突予測精度を衝突予測部34に求める必要が無く、衝突予測部34を低コストで構成することができる。
【0055】
更に、本実施の形態によれば、より多くの事故は軽衝突を前提とした拘束装置を装備するだけで安全性を確保することが可能になる。例えば、本発明により衝突が軽衝突となり衝突安全におけるエアバッグが不要になる可能性がある。更に、エアバッグが不要になることによって、エアバッグによる加害性を考慮する必要がなくなる可能性がある。
【0056】
更にまた、本実施の形態に係る車両減速装置3を備えることにより、軽衝突向けに、車両強度を落とし、軽量化を図ることができる。
【0057】
更に、本発明によれば、衝突時のシートベルト張力が十分に低いと考えられるため、シートベルト巻き取り装置を補強無しでシートに内蔵することができ、車両レイアウトへの制約を低減できる。
更にまた、衝突時における火薬式プリテンショナが不要になる可能性もありシステム全体の構成コストの見直しができる。
【0058】
なお、実施の形態では、可逆式の車輪ストッパ装置を説明したが、衝突0.1s前程度で鉄製鎖の車輪制動部材のかわりにF1用タイヤゴムを同様に降下させて、車輪及び路面間の摩擦係数を上昇させ、車両を減速させるように構成しても良い。但し、F1用タイヤゴムを用いた場合、不可逆式システムとなり、衝突後にタイヤ等の交換が必要となる。
【0059】
また、伸張装置に加えて、車輪ストッパ装置を備えているが、衝突予測部の信頼性が十分に高い場合、車両ストッパ装置を備えないようにしても良い。
【0060】
更にまた、本実施の形態では、伸張装置及び車輪ストッパ装置の双方を設けているが、必要に応じて、いずれか一方のみを備えるように構成しても良い。
【0061】
(変形例)
変形例に係る車両及び車両減速装置3は、懸架装置131及び伸張装置132の構成、減速制御に係る処理手順が異なるため、以下では主に上記相異点を説明する。
【0062】
図11は、変形例に係る車両減速装置3の要部を模式的に示す説明図である。変形例に係る懸架装置131は、空気ばね式であり、図示しないショックアブソーバーを備え、ショックアブソーバーには、空気ばね(緩衝部材)131bが付設されている。前記ショックアブソーバーの車体側支柱131aは車体1に接続され、ショックアブソーバーの車輪側支柱131cは、車輪2のロアアームに接続されている。
【0063】
伸張装置132は、圧縮ガスを供給するための圧縮機132aを備える。圧縮機132a及び空気ばね131bは、第1圧縮ガス供給管132bによって接続されており、圧縮機132aから供給された圧縮ガスが空気ばね131bに供給されるように構成されている。また、第1圧縮ガス供給管132bの適宜箇所には、第1圧縮ガス供給管132bを開閉させる圧縮ガス供給弁132cが設けられている。
【0064】
また、圧縮機132aには、連結管132dを通じてバッファタンク132eが接続されており、バッファタンク132eは、圧縮機132aから供給された圧縮ガスを蓄えている。更に、バッファタンク132e及び空気ばね131bは、第2圧縮ガス供給管132fによって接続されており、バッファタンク132eに蓄えられた圧縮ガスを空気ばね131bに供給するように構成されている。また、第2圧縮ガス供給管132fの適宜箇所には、第2圧縮ガス供給管132fを開閉させる伸張弁132gが設けられている。
【0065】
更に、空気ばね131bの適宜箇所には排気管132hが設けられている。排気管132hには排気管132hを開閉させる圧縮ガス排気弁132iが設けられている。
【0066】
図12は、変形例に係る制御回路35の構成を模式的に示す説明図である。制御回路35の構成は、実施の形態と同様であり、出力部35eに圧縮ガス供給弁132c、圧縮ガス排気弁132i、伸張弁132gが接続されている点が異なる。圧縮ガス供給弁132c、圧縮ガス排気弁132i、伸張弁132gは、例えば電磁弁であり、制御回路35は、各電磁弁へ制御信号を出力することによって、各電磁弁の開閉状態を制御することができる。
【0067】
図13は、変形例における車両の減速制御に係るCPU35aの処理手順を示すフローチャートである。CPU35aは、衝突予測部34から出力された衝突予測信号に基づいて、車両が衝突するか否かを予測する(ステップS111)。車両の非衝突を予測した場合(ステップS111:NO)、CPU35aは、再度ステップS111の処理を実行する。なお、衝突が予測されていない通常の走行時においては、空気ばね131bに圧縮ガスが供給されることなく、空気ばね131bは従来の懸架装置131として機能する。
【0068】
車両の衝突を予測した場合(ステップS111:YES)、CPU35aは、乗員拘束装置4へ乗員拘束制御信号を出力することによって、乗員を拘束する(ステップS112)。
【0069】
次いで、CPU35aは、油圧回路33cの動作を制御することによって、ディスクブレーキ装置33を作動させ、車輪2を制動させる(ステップS113)。
【0070】
そして、CPU35aは、衝突予測部34から出力された衝突予測信号に基づいて、車両の衝突が予測される状態が継続しているか否かを判定する(ステップS114)。衝突が予測される状態が継続していないと判定した場合(ステップS114:NO)、CPU35aは、油圧回路33cの動作を制御することによって、車輪2の制動を解除し(ステップS115)、処理を終える。
【0071】
衝突が予測される状態が継続していると判定した場合(ステップS114:YES)、CPU35aは、伸張弁132gを開放する(ステップS116)。
【0072】
図14は、減速制御時における空気ばね131bの動作を模式的に示す説明図である。図14(a)は、伸張開始前における空気ばね131b、図14(b)は、伸張開始後における空気ばね131bを模式的に示す説明図である。図14(b)に示すように、圧縮ガスの供給によって、空気ばね131bが上下方向へ伸張する。空気ばね131bが伸張した場合、車輪2及び路面間の接地面圧が増大し、摩擦力が向上し、車両の減速度も上昇する。
【0073】
次いで、CPU35aは、衝突予測部34から出力された衝突予測信号に基づいて、車両の衝突が予測される状態が継続しているか否かを判定する(ステップS117)。衝突が予測される状態が継続していないと判定した場合(ステップS117:NO)、CPU35aは、油圧回路33cの動作を制御することによって、車輪2の制動を解除する(ステップS118)。そして、CPU35aは、伸張弁132gを閉鎖する(ステップS119)。次いで、圧縮ガス排気弁132iを開閉することによって(ステップS120)、圧縮ガスを暫時抜いて通常時に戻し、処理を終える。
ステップS118〜ステップS120の処理によって、空気ばね131bは収縮し、従来の空気ばね式懸架装置131として動作する。このように、伸張装置132は、可逆式のシステムとして作動する。
【0074】
衝突が予測される状態が継続していると判定した場合(ステップS117:YES)、CPU35aは、開閉板36eが開く方向へ開閉板駆動モータ36gを回転駆動することによって、車輪制動部材36dを投下する(ステップS121)。そして、CPU35aは、開閉板36eが開状態であることを示した開状態情報をRAM35cに記憶させ(ステップS122)、処理を終える。
【0075】
変形例に係る車両減速装置及び車両にあっても、上述の実施の形態と同様の作用効果を奏する。
【0076】
なお、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明の実施の形態に係る車両及び車両減速装置の略示平面構成図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る車両及び車両減速装置の略示側面構成図である。
【図3】懸架装置及び伸張装置の構成を模式的に示す説明図である。
【図4】制御回路の構成を模式的に示すブロック図である。
【図5】車両の減速制御に係るCPUの処理手順を示すフローチャートである。
【図6】減速制御時における車両の挙動を示すグラフである。
【図7】減速制御時における伸張装置の動作を模式的に示す説明図である。
【図8】車輪ストッパ装置の動作を模式的に示す説明図である。
【図9】車輪制動部材の回収に係るCPUの処理手順を示すフローチャートである。
【図10】車輪制動部材の回収動作を模式的に示す説明図である。
【図11】変形例に係る車両減速装置の要部を模式的に示す説明図である。
【図12】変形例に係る制御回路の構成を模式的に示す説明図である。
【図13】変形例における車両の減速制御に係るCPUの処理手順を示すフローチャートである。
【図14】減速制御時における空気ばねの動作を模式的に示す説明図である。
【図15】従来の衝突予測センサ及び車両減速装置を用いた減速制御時における車両の挙動を示すグラフである。
【符号の説明】
【0078】
1 車体
2 車輪
3 車両減速装置
4 乗員拘束装置
5 乗員位置・体格検知部
31 懸架装置
32 伸張装置
32b ナット
32c ねじ軸
32e ナット駆動歯車
32f ナット駆動モータ
33 ディスクブレーキ装置
34 衝突予測部
35 制御回路
35a CPU
35b ROM
35c RAM
35d 入力部
35e 出力部
36 車輪ストッパ装置
36a ウインチ駆動モータ
36b 回転円筒部材
36d 車輪制動部材
36e 開閉板
36g 開閉板駆動モータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両を構成する車体及び車輪間に設けられ、該車輪に加わる荷重に応じて、伸縮する緩衝部材を有する懸架装置と、車両の衝突を予測する衝突予測手段とを備え、該衝突予測手段が衝突を予測した場合、前記車輪の回転を制動するようにしてある車両減速装置において、
前記衝突予測手段が衝突を予測した場合、前記緩衝部材を可逆的に伸張させる伸張手段を備える
ことを特徴とする車両減速装置。
【請求項2】
前記伸張手段は、
前記緩衝部材に並設され、前記車輪側(又は車体側)に設けられたねじ軸と、
前記車体側(又は車輪側)に設けられており、前記ねじ軸に螺合するナットと、
該ナットを回転させるナット駆動部と
を備え、
前記ナット駆動部は、
前記衝突予測手段が衝突を予測した場合、前記ねじ軸が前記ナットから進出するように、前記ナットを回転させ、前記衝突予測手段が非衝突を予測した場合、前記ねじ軸が前記ナットへ進入するように前記ナットを回転させるようにしてあることを特徴とする請求項1に記載の車両減速装置。
【請求項3】
前記緩衝部材は、空気ばねを備え、
前記伸張手段は、
前記衝突予測手段が衝突を予測した場合、前記空気ばねに圧縮ガスを供給する圧縮機と、
前記衝突予測手段が非衝突を予測した場合、前記空気ばねから圧縮ガスを排気させる排気弁と
を備えることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の車両減速装置。
【請求項4】
前記車体側に収納されており、前記車輪及び路面間に巻き込ませて該車輪の回転を制動するための車輪制動部材と、
前記衝突予測手段が衝突を予測した場合、前記車輪制動部材を前記車輪の前方へ投下する投下手段と、
該投下手段によって投下された前記車輪制動部材を回収する回収手段と
を備えることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一つに記載の車両減速装置。
【請求項5】
前記車輪制動部材は、鋼材で形成された帯状をなし、
前記回収手段は、
外周面に前記車輪制動部材の一端部が固定され、前記車体側に回動可能に設けられた回転円筒部材と、
該回転円筒部材を回転させる回転円筒部材駆動部と
を備え、
前記投下手段は、
前記車輪の前方車体側に回動開閉が可能に支持され、前記車輪制動部材の他端側が載置される開閉板と、
該開閉板を開方向へ回動させる開閉板駆動部と
を備えることを特徴とする請求項4に記載の車両減速装置。
【請求項6】
車輪及び路面間に挿脱が可能な車輪制動部材と、車両の衝突を予測する衝突予測手段とを備え、該衝突予測手段が衝突を予測した場合、前記車輪の回転を制動するようにしてある車両減速装置であって、
前記衝突予測手段が衝突を予測した場合、前記車輪制動部材を車輪及び路面間に挿入する手段を備える
ことを特徴とする車両減速装置。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれか一つに記載の車両減速装置を備えることを特徴とする車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2010−149591(P2010−149591A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−327929(P2008−327929)
【出願日】平成20年12月24日(2008.12.24)
【出願人】(503358097)オートリブ ディベロップメント エービー (402)
【復代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
【復代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
【Fターム(参考)】