説明

車両用制御装置

【課題】状況に応じてニュートラル制御機能又はアイドルストップ機能を適切に実行させることができる車両用制御装置を提供する。
【解決手段】アイドルストップ機能を有すると共に、変速装置の入力クラッチと、エンジンにより駆動される機械式ポンプと、エンジンの停止時に電動モータにより駆動される電動ポンプと、を有する車両に備えられた車両用制御装置41。少なくとも所定のニュートラル移行条件を満たす場合に、入力クラッチに対する供給油圧を油路のライン圧により制御し、入力クラッチが半係合状態とされるニュートラル状態を実現するニュートラル制御部45と、ニュートラル移行条件が成立した場合に、ニュートラル状態への移行を所定の遅延時間だけ遅延させる移行遅延制御部47と、遅延時間中にアイドルストップ条件が成立しなかった場合に、ニュートラル状態に移行させる移行開始制御部49と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、いわゆるニュートラル制御機能とアイドルストップ機能との双方の機能を有する車両に備えられた車両用制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両の燃費向上の観点から、前進走行レンジでの車両停止時に、変速装置の入力クラッチを半係合状態とする、いわゆるニュートラル制御機能を備えた車両が実用化されている(例えば、下記の特許文献1を参照)。また同様に、車両の燃費向上に加えて車両からの排ガス低減の観点から、信号待ち等のアイドリング時にエンジンを自動停止させる、いわゆるアイドルストップ機能を備えた車両が実用化されており、更にはニュートラル制御機能及びアイドルストップ機能の双方の機能を備えた車両も実用化されている(例えば、下記の特許文献2を参照)。なお、ニュートラル制御とアイドルストップ制御とを比較した場合、エンジンを停止させてしまうアイドルストップ制御の方が、より燃費向上効果及び排ガス低減効果に優れることから、これらが同時に移行条件を満たす場合にはアイドルストップ制御が優先されてエンジンが停止させられることが好ましい。
【0003】
ところで、一般的な自動変速装置を搭載している車両では、変速装置において各変速段を形成するための作動油圧を供給するポンプはエンジンにより駆動される機械式ポンプとされている。そのため、特許文献2に記載の車両のようなアイドルストップ機能を備えた車両では、当該アイドルストップ機能によりエンジンが停止した際には十分な油圧を供給することができなくなって変速装置がニュートラル状態となる。この状態でエンジンが再始動すると、エンジンの回転速度が高い場合にはショックが発生する場合がある。そこで、そのような不都合を回避するべく、エンジン停止中には電動モータにより駆動される補助的な電動ポンプを設け、当該電動ポンプにより油路に作動油を供給する技術が提案されている(例えば、下記の特許文献3を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平07−113466号公報
【特許文献2】特開2008−213699号公報
【特許文献3】特開2002−310272号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
入力クラッチに対する供給油圧は、特許文献1に記載された車両のように、作動油の油路のライン圧により制御されるように構成される場合がある。つまり、入力クラッチが専用のリニアソレノイドバルブ等を備えておらず、油路のライン圧に連動して、当該ライン圧の作動油圧、又は一定の関係式により調圧された作動油圧が入力クラッチに供給されるように構成される場合がある。その場合におけるライン圧の具体的な数値範囲等は車両に求められる伝達トルク等に応じて設定される。そのため、例えば、ニュートラル制御中に入力クラッチを半係合状態とするためのライン圧が電動ポンプの保証耐圧よりも高く設定される場合がある。
【0006】
このような場合には、ニュートラル制御への移行条件が成立すると、入力クラッチを半係合状態としてその状態に維持させるため、作動油の油路におけるライン圧が電動ポンプの保証耐圧よりも高い油圧に維持されることになる。そのため、その状態でアイドルストップ制御への移行条件が成立してエンジンが自動停止したとしても、電動ポンプに対して大きな背圧が作用しているために当該電動ポンプを始動させることができない。また、無理に電動ポンプを始動させた場合には、当該電動ポンプを駆動させるための電動モータが過負荷により故障してしまう可能性がある。よって、上記のような場合には、アイドルストップ制御が優先されてエンジンが停止されるのが好ましい状況であるにもかかわらず、電動モータの保護のためにはアイドルストップ制御に移行することができないという不都合が生じていた。
【0007】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、ニュートラル制御機能とアイドルストップ機能との双方の機能を有すると共に入力クラッチに対する供給油圧が油路のライン圧により制御される構成の車両に対して、ニュートラル制御中におけるライン圧の設定値に依存することなく、状況に応じてニュートラル制御機能又はアイドルストップ機能を適切に実行させることができる車両用制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的を達成するための、本発明に係る所定のアイドルストップ条件に応じてエンジンを自動停止させるアイドルストップ機能を有すると共に、前記エンジンの駆動力の変速装置の出力軸への伝達を断接するために設けられた前記変速装置の入力クラッチと、前記エンジンにより駆動され、油路を介して前記入力クラッチへ作動油を供給する機械式ポンプと、前記アイドルストップ機能による前記エンジンの停止時に電動モータにより駆動され、前記油路を介して前記入力クラッチへ作動油を供給する電動ポンプと、を有する車両に備えられた車両用制御装置の特徴構成は、少なくとも所定のニュートラル移行条件を満たす場合に、前記入力クラッチに対する供給油圧を前記油路のライン圧により制御し、前記入力クラッチが半係合状態とされるニュートラル状態を実現するニュートラル制御部と、前記ニュートラル移行条件が成立した場合に、前記ニュートラル状態への移行を所定の遅延時間だけ遅延させる移行遅延制御部と、前記遅延時間中に前記アイドルストップ条件が成立しなかった場合に、前記ニュートラル状態に移行させる移行開始制御部と、を備えた点にある。
【0009】
上記の特徴構成によれば、ニュートラル制御部により、アイドルストップ機能を有する車両に対して更にニュートラル制御機能を付与することができる。このとき、移行遅延制御部と移行開始制御部とが協働することにより、ニュートラル移行条件が成立した時点から所定の遅延時間の間にアイドルストップ条件が成立しなかった場合に初めてニュートラル状態に移行させるので、当該遅延時間内にアイドルストップ条件が成立した場合には、燃費向上効果及び排ガス低減効果に優れたアイドルストップ機能を、ニュートラル制御機能よりも優先して実行させることができる。また、遅延時間内にアイドルストップ条件が成立しなかった場合には、そのままニュートラル状態に移行させてニュートラル制御機能を実行させることができる。従って、状況に応じてニュートラル制御機能又はアイドルストップ機能を適切に実行させることができる。
【0010】
なお、入力クラッチに対する供給油圧が油路のライン圧により制御される構成において、ニュートラル制御中に入力クラッチを半係合状態に維持させるためのライン圧が電動ポンプの保証耐圧よりも高く設定されている場合であっても、ニュートラル移行条件が成立した時点から所定の遅延時間が経過するまでは実際にニュートラル状態に移行しないので、油路のライン圧が電動ポンプの保証耐圧を超えることが回避される。よって、その状態でアイドルストップ条件が成立した場合に、エンジンの自動停止と共に適切に電動ポンプを駆動させることができる。従って、ニュートラル制御中におけるライン圧の設定値に依存することなく、遅延時間内に適切にアイドルストップ機能を実行させることができる。
【0011】
以上より、ニュートラル制御中におけるライン圧の設定値に依存することなく、状況に応じてニュートラル制御機能又はアイドルストップ機能を適切に実行させることができる車両用制御装置を提供することができる。
【0012】
ここで、前記アイドルストップ機能による前記エンジンの停止を許可し、又は禁止するエンジン停止許可制御部を更に備え、前記エンジン停止許可制御部は、前記遅延時間の終了時に前記エンジンの停止を許可する状態から禁止する状態へと切り替えるように構成され、前記移行開始制御部は、前記遅延時間の経過後、更に前記アイドルストップ機能を制御するアイドルストップ制御部に前記エンジンの停止を禁止したことを認識させるための所定の待機時間が経過した後に、前記ニュートラル状態に移行させる構成とすると好適である。
【0013】
この構成によれば、遅延時間の経過後において、エンジン停止許可制御部がエンジンの停止を禁止したことを、所定の待機時間の経過によりアイドルストップ制御部が認識して初めてニュートラル状態に移行されるので、当該待機時間内にアイドルストップ条件が成立した場合には、アイドルストップ機能をニュートラル制御機能よりも優先して実行させることができる。その際、待機時間が経過するまでは実際にニュートラル状態に移行しないので、ニュートラル制御中に入力クラッチを半係合状態に維持させるためのライン圧が電動ポンプの保証耐圧よりも高く設定されている場合であっても、油路のライン圧が電動ポンプの保証耐圧を超えることが回避される。よって、ニュートラル制御中におけるライン圧の設定値に依存することなく、待機時間内に適切にアイドルストップ機能を実行させることができる。従って、アイドルストップ制御部がエンジンの停止が禁止されたことを認識するまでのタイムラグをも考慮しつつ、ニュートラル制御中におけるライン圧の設定値に依存することなく、状況に応じてニュートラル制御機能又はアイドルストップ機能を確実かつ適切に実行させることができる。
【0014】
また、前記遅延時間中に前記アイドルストップ機能による前記エンジンの停止が実行された場合には、前記ニュートラル移行条件の成立に関わらず、前記移行開始制御部は前記ニュートラル状態への移行を中止する構成とすると好適である。
【0015】
また、前記待機時間中に前記アイドルストップ機能による前記エンジンの停止が実行された場合には、前記ニュートラル移行条件の成立及び前記遅延時間中における前記アイドルストップ条件の不成立に関わらず、前記移行開始制御部は前記ニュートラル状態への移行を中止する構成とすると好適である。
【0016】
燃費向上効果及び排ガス低減効果に優れたアイドルストップ機能が実現されれば、ニュートラル制御機能の実現は不要となる。これらの構成によれば、アイドルストップ機能が実現された場合にはニュートラル状態への移行を中止することで、適切にアイドルストップ機能を実行させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本実施形態に係る制御ユニットが備えられた車両の構成を示す模式図である。
【図2】入力クラッチに対する供給油圧の切替機構の構成を示す模式図である。
【図3】本実施形態に係る制御系の構成を示すブロック図である。
【図4】本実施形態に係る車両制御処理の処理手順を示すフローチャートである。
【図5】本実施形態に係る車両制御処理によりアイドルストップ制御を行う場合のタイミングチャートである。
【図6】本実施形態に係る車両制御処理によりニュートラル制御を行なう場合のタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。本実施形態においては、本発明に係る車両用制御装置を、アイドルストップ機能及びニュートラル制御機能の双方の機能を備えて構成された車両1を制御するための制御ユニット41に適用した場合を例として説明する。図1は、本実施形態に係る制御ユニット41が備えられた車両1の構成を示す模式図である。図1には、主として車両1に備えられた駆動装置2の駆動伝達系及び油圧制御系の構成が示されている。この図において、実線は駆動力の伝達経路を示し、破線は作動油の供給経路を示し、一点鎖線は制御電気信号の供給経路を示し、白抜き矢印は信号圧の供給経路を示している。なお、作動油の供給経路を示している破線に隣接して付記された(P1)又は(P2)は、当該供給経路内における作動油の油圧が第一油圧P1又は第二油圧P2であることを示している。この図に示すように、本実施形態に係る制御ユニット41は、車両1に備えられた駆動装置2の各部の制御を行う構成となっている。本実施形態においては、制御ユニット41が本発明における「車両用制御装置」に相当する。
【0019】
1.駆動装置の駆動伝達系の構成
まず、本実施形態に係る駆動装置2の駆動伝達系の構成について説明する。図1に示すように、駆動装置2は、車両駆動用の駆動力源としてエンジン11を備えており、当該エンジン11の回転駆動力をトルクコンバータ13及び変速装置14により変速して出力軸Oに伝達する構成となっている。変速装置14から出力軸Oへ伝達された回転駆動力は、ディファレンシャル装置15を介して車輪16に伝達される。これにより、車両1を走行させることができる。
【0020】
エンジン11は、燃料の燃焼により駆動される内燃機関であり、例えば、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンなどの公知の各種エンジンを用いることができる。本例では、エンジン11のクランクシャフト等の出力回転軸が入力軸Iと一体的に駆動連結されている。なお、エンジン11の出力回転軸が、クラッチやダンパ等の他の部材を介して入力軸Iに駆動連結された構成としても好適である。また、エンジン11に隣接してスタータ12が設けられている。スタータ12はエンジン11に駆動連結されており、スタータ12は図示しない蓄電装置から電力の供給を受けてエンジン11を始動させることができるように構成されている。本例では、蓄電装置としてバッテリが用いられている。
【0021】
入力軸Iには、トルクコンバータ13が駆動連結されている。トルクコンバータ13は、駆動力源としてのエンジン11に駆動連結された入力軸Iの回転駆動力を、その内部に充填された作動油を介して中間軸Mに伝達する。また、このトルクコンバータ13は、ロックアップクラッチ22を備えており、ロックアップクラッチ22の係合状態では、入力軸I(エンジン11)の回転駆動力を直接中間軸Mに伝達する。
【0022】
トルクコンバータ13の出力軸としての中間軸Mには、変速装置14が駆動連結されている。変速装置14は、トルクコンバータ13を介して伝達されるエンジン11(入力軸I)の回転駆動力を変速して、当該変速装置14の出力軸でもある出力軸Oへ伝達する。本実施形態では、変速装置14は、変速比の異なる複数の変速段を有する有段の自動変速装置(有段変速装置)とされている。変速装置14は、これら複数の変速段を構成するために、遊星歯車機構等の歯車機構と、この歯車機構の回転要素の係合又は解放を行い、変速段を切り替えるためのクラッチやブレーキ等の複数の摩擦係合要素とを備えている。なお、図1には、複数の摩擦係合要素の一例として、第一クラッチC1及び第一ブレーキB1が示されている。
【0023】
本実施形態においては、車両1に備えられたシフトレバー(不図示)が前進走行レンジ(例えば、Dレンジ)にある場合には、エンジン11の回転駆動力が出力軸Oへ伝達されるように、第一クラッチC1が係合状態とされる。なお、本例では、第一クラッチC1に加えて、当該第一クラッチC1以外の他の摩擦係合要素の一つが係合状態となって、変速装置14における所望の変速段が形成される。一方、シフトレバーが前進走行レンジ以外の、例えばニュートラルレンジ(Nレンジ)にある場合には、エンジン11の回転駆動力が出力軸Oへ伝達されないように、第一クラッチC1が解放状態とされる。このように、本実施形態では、第一クラッチC1はエンジン11の回転駆動力の出力軸Oへの伝達を断接する機能を果たし、本発明における「入力クラッチ」として機能している。
【0024】
変速装置14は、各変速段について設定された所定の変速比で、中間軸Mの回転速度を変速するとともにトルクを変換して、出力軸Oへ伝達する。変速装置14から出力軸Oへ伝達された回転駆動力は、ディファレンシャル装置15を介して左右二つの車輪16に分配されて伝達される。
【0025】
2.油圧制御系の構成
次に、上述した駆動装置2の油圧制御系について説明する。この油圧制御系は、図示しないオイルパンに蓄えられた作動油を吸引し、駆動装置2の各部に作動油を供給するための油圧源として、図1に示すように、機械式ポンプ23及び電動ポンプ24の二種類のポンプを備えている。ここで、機械式ポンプ23は、駆動力源としてのエンジン11(入力軸I)の回転駆動力により動作するオイルポンプである。このような機械式ポンプ23としては、例えば、歯車ポンプやベーンポンプ等が好適に用いられる。本例では、機械式ポンプ23は、トルクコンバータ13を介して入力軸Iに駆動連結され、エンジン11の回転駆動力により駆動される。そして、機械式ポンプ23は、油路を介して第一クラッチC1を含む複数の摩擦係合要素へ作動油を供給する。この機械式ポンプ23は、基本的には駆動装置2に必要な作動油の油量を十分に上回る吐出能力を備えている。しかし、機械式ポンプ23は、入力軸Iの停止中(すなわちエンジン11の停止中)には作動油を吐出しない。そこで、この駆動装置2は、機械式ポンプ23を補助するためのポンプとして、電動ポンプ24を備えている。
【0026】
電動ポンプ24は、エンジン11(入力軸I)の回転駆動力とは無関係に、ポンプ駆動用の電動モータ25の回転駆動力により動作するオイルポンプである。この電動ポンプ24としても、例えば、歯車ポンプやベーンポンプ等が好適に用いられる。電動ポンプ24を駆動する電動モータ25は、図示しないバッテリと電気的に接続され、当該バッテリから電力の供給を受けて回転駆動力を発生する。電動ポンプ24は、電動モータ24により駆動され、油路を介して第一クラッチC1を含む複数の摩擦係合要素へ作動油を供給する。この電動ポンプ24は、機械式ポンプ23を補助するためのポンプであって、後述するアイドルストップ制御によるエンジン11の停止時等、機械式ポンプ23から必要な油量が供給されない状態で動作する。
【0027】
ところで一般的に、このような補助用の電動ポンプ24を設ける場合、電動ホンプ24のポンプ本体部に対して保証耐圧以上の背圧が作用することを防止するため、当該電動ポンプ24の吐出側の油路にリリーフバルブが併設される場合が多い。ここで、電動ポンプ24の保証耐圧とは、電動ホンプ24のポンプ本体部に対して作用する背圧に関して、当該電動ポンプ24を駆動するための電動モータ25の正常な回転が保証される圧力の上限値である。しかし、本実施形態においては、コスト低減と配置スペース省略による駆動装置の小型化とを図るため、そのようなリリーフバルブを備えることなく、必要な場合には制御ユニット41による電動モータ25の動作制御により、電動ポンプ24を駆動するための電動モータ25の保護が図られる構成となっている。
【0028】
また、本実施形態に係る駆動装置2の油圧制御系は、機械式ポンプ23及び電動ポンプ24から吐出される作動油の油圧を所定圧に調整するための調整弁として、第一調整弁(プライマリ・レギュレータ・バルブ)PVと、第二調整弁(セカンダリ・レギュレータ・バルブ)SVとを備えている。第一調整弁PVは、機械式ポンプ23及び電動ポンプ24から供給される作動油の油圧を第一油圧P1に調整する調整弁である。第二調整弁SVは、第一調整弁PVからの余剰油の油圧を第二油圧P2に調整する調整弁である。第一油圧P1は駆動装置2の基準油圧であって、本発明における「ライン圧」に相当する。第一油圧P1の値は、リニアソレノイド弁SLTから供給される信号圧に基づいて決定される。
【0029】
図1に示すように、第一調整弁PVは、供給される信号圧に応じて、機械式ポンプ23及び電動ポンプ24から供給される、第一調整弁PVより上流側(機械式ポンプ23及び電動ポンプ24側)の作動油の油圧を第一油圧P1に調整する。ここでは、第一調整弁PVは、リニアソレノイド弁SLTから供給される信号圧と、第一調整弁PVによる調整後の第一油圧P1のフィードバック圧とのバランスに基づいて、機械式ポンプ23及び電動ポンプ24から供給された作動油を第二調整弁SV側へ排出する量を調整する。これにより、第一調整弁PVより上流側の作動油の油圧を、信号圧に応じた第一油圧P1に調整する。
【0030】
第二調整弁SVは、リニアソレノイド弁SLTから供給される信号圧に応じて、第一調整弁PVから排出される余剰油の油圧、すなわち、第一調整弁PVより下流側(第二調整弁SV側)であって第二調整弁SVより上流側(第一調整弁PV側)の油圧を所定の第二油圧P2に調整する。ここでは、第二調整弁SVは、リニアソレノイド弁SLTから供給される信号圧と、第二調整弁SVによる調整後の第二油圧P2のフィードバック圧とのバランスに基づいて、第一調整弁PVから排出された余剰の作動油をオイルパンへ排出(ドレン)する量を調整する。これにより、第二調整弁SVより上流側の作動油の油圧を、信号圧に応じた第二油圧P2に調整する。
【0031】
リニアソレノイド弁SLTは、図1に示すように、第一調整弁PVによる調整後の第一油圧P1の作動油の供給を受けるとともに、制御ユニット41から出力されるSLT指令値に応じて弁の開度を調整することにより、当該SLT指令値に応じた信号圧の作動油を出力する。ここで、リニアソレノイド弁SLTから出力される信号圧は、基本的にSLT指令値に比例する値となる。このリニアソレノイド弁SLTから出力される信号圧の作動油は、第一調整弁PV及び第二調整弁SVに供給される。これにより、制御ユニット41は、出力するSLT指令値に応じた第一油圧P1及び第二油圧P2に調整するように、第一調整弁PV及び第二調整弁SVの制御を行う。
【0032】
第一調整弁PVにより調整された第一油圧P1の作動油は、変速制御機構VBを介して変速装置14の複数の摩擦係合要素C1、B1、・・・に供給される。変速制御機構VBは、変速装置14の複数の摩擦係合要素のそれぞれの係合又は解放を行う動作制御用の機構であり、各摩擦係合要素のそれぞれに対応する複数の制御弁等により構成されている。この変速制御機構VBは、制御ユニット41から出力される制御指令値に応じて複数の制御弁の開閉動作を行うことにより、第一調整弁PVにより調整された第一油圧P1の作動油を各摩擦係合要素の油室に供給し、各摩擦係合要素の係合又は解放の動作を制御する。
【0033】
第二調整弁SVにより調整された第二油圧P2の作動油は、トルクコンバータ13、ロックアップクラッチ22の制御用のロックアップ制御弁(ロックアップ・コントロール・バルブ)CV等に供給される。また、第二油圧P2の作動油は、変速装置14の潤滑油路に供給されて、変速装置14内に備えられる各機械要素間の潤滑等の目的にも供される。
【0034】
本実施形態においては、第一クラッチC1に対する供給油圧は、作動油の油路の第一油圧P1(ライン圧)により制御される構成とされている。本例では、第一クラッチC1に対しては、基本的には第一調整弁PVにより調整された第一油圧P1が供給される。これにより、第一クラッチC1に対する供給油圧は、第一油圧P1を調整することにより直接的に制御することができる。但し、ニュートラル制御時には、変速制御機構VB内に設けられた調圧弁MVと切替弁WVとが協働して、第一油圧P1に対して所定の関係式に基づいて調圧した調整圧P1’が第一クラッチC1に対して供給される。その際、調圧弁MVは、次の(式1)を満足するように作動油の油圧を第一油圧P1から調整圧P1’に調整して、調整圧P1’を出力する。
第一油圧P1 = A × 調整圧P1’ +B ・・・(式1)
ここで、係数Aや定数Bの設定値は適宜変更が可能である。なお、本例では調整圧P1’が第一油圧P1よりも小さくなるような係数Aや定数Bの値が設定されている。これにより、ニュートラル制御時には、第一クラッチC1に対する供給油圧は、第一油圧P1を調整することにより(式1)に基づいて間接的に制御することができる。
【0035】
切替弁WVは、第一クラッチC1に供給される油圧を第一油圧P1と調整圧P1’との間で切り替えるための弁機構である。図2に示すように、切替弁WVの入力ポートには第一油圧P1及び調整圧P1’の双方の油圧の作動油が入力される。そして切替弁WVは、車両の制御状態に応じて第一クラッチC1に供給される油圧を第一油圧P1と調整圧P1’との間で切り替える。具体的には、切替弁WVは、通常時は第一油圧P1の作動油が第一クラッチC1に供給される状態となり、ニュートラル制御中は調整圧P1’の作動油が第一クラッチC1に供給される状態となるように、油路の連通状態を切り替える。なお図2においては、第一クラッチC1に対する供給油圧の切替機構の構成を機能的に示している。すなわち、機械式ポンプ23及び電動ポンプ24により吐出された作動油の油圧が第一調整弁SVの機能により第一油圧P1に調整され、当該第一油圧P1の作動油が調圧弁MVの機能により調整圧P1’に調整され、更に第一クラッチC1に供給される作動油の油圧が切替弁WVの機能により第一油圧P1と調整圧P1’との間で切り替えられることを示している。
【0036】
ところで、本実施形態においては、ニュートラル制御中に第一クラッチC1に対して調整圧P1’の作動油を供給するための第一油圧P1(ライン圧)が、通常時(ニュートラル制御中以外)における第一油圧P1よりも高くなると共に、電動ポンプ24の保証耐圧よりも高くなるように設定された構成となっている。なお、通常時における第一油圧P1は、電動ポンプ24の保証耐圧以下となるように設定されている。このような設定条件の下では、一旦ニュートラル制御が実行されると、電動ホンプ24のポンプ本体部に対して作用する背圧が保証耐圧より大きくなることになる。よって、その状態で電動モータ25を駆動させることができない。また、その状態で無理に電動モータ25を駆動させようとすると電動モータ25が過負荷により故障してしまう可能性がある。そのため、いずれにしてもニュートラル制御中にはエンジン11を自動停止させると共に電動ポンプ24の駆動を開始して、アイドルストップ制御を実行することができない。このような状況は、車両1の燃費向上の観点からは好ましい状況とは言えない。
【0037】
そこで、本実施形態においては、上記のような不都合を解消するべく、車両1を制御するための制御系が、アイドルストップ制御の実行との関係で、ニュートラル制御へ実質的に移行するタイミングを調整するように構成されている。以下、詳細について説明する。
【0038】
3.制御系の構成
本実施形態に係る車両1を制御するための制御系の構成について説明する。本実施形態に係る車両1は、図1及び図3に示すように、主にエンジン11を制御するためのエンジン制御ユニット31と、主に駆動装置2を制御するための制御ユニット41と、により制御される。エンジン制御ユニット31及び制御ユニット41は、駆動装置2の各部の動作制御を行う中核部材としての機能を果たしている。このエンジン制御ユニット31及び制御ユニット41は、それぞれCPU等の演算処理装置を中核部材として備えるとともに、当該演算処理装置からデータを読み出し及び書き込みが可能に構成されたRAM(ランダム・アクセス・メモリ)や、演算処理装置からデータを読み出し可能に構成されたROM(リード・オンリ・メモリ)等の記憶装置等を有して構成されている(不図示)。そして、ROM等に記憶されたソフトウェア(プログラム)又は別途設けられた演算回路等のハードウェア、或いはそれらの両方により、エンジン制御ユニット31の各機能部32、33及び制御ユニット41の各機能部42〜49が構成されている。
【0039】
また、図3に示すように、この駆動装置2は、各部に設けられた複数のセンサ、具体的には、入力軸回転速度センサSe1、車速センサSe2、ブレーキ操作検出センサSe3、アクセル開度検出センサSe4、及びシフトポジションセンサSe5を備えている。入力軸回転速度センサSe1は、入力軸Iの回転速度を検出するセンサである。ここで、入力軸Iにはエンジン11の出力回転軸が一体的に駆動連結されているので、入力軸回転速度センサSe1により検出される入力軸Iの回転速度は、エンジン11の出力回転軸の回転速度に等しい。車速センサSe2は、車輪16の回転速度すなわち車速を検出するセンサである。ブレーキ操作検出センサSe3は、図示しないブレーキペダルの操作量を検出することによりブレーキ操作の有無を検出するセンサである。アクセル開度検出センサSe4は、図示しないアクセルペダルの操作量を検出することによりアクセル開度を検出するセンサである。シフトポジションセンサSe5は、図示しないシフトレバーの位置を検出するセンサである。これらの各センサSe1〜Se5による検出結果を示す情報は、必要に応じてエンジン制御ユニット31及び制御ユニット41の一方又は双方へ出力される。
【0040】
図3に示すように、エンジン制御ユニット31は、エンジン制御部32及びアイドルストップ制御部33を備えている。これらの各機能部32、33は、互いに情報の受け渡しを行うことができるように構成されている。また、制御ユニット41は、調整弁制御部42、エンジン停止許可制御部43、電動モータ制御部44、及びニュートラル制御部45を備えている。また、ニュートラル制御部45は、ニュートラル許可制御部46、移行遅延制御部47、移行待機制御部48、及び移行開始制御部49を備えて構成されている。これらの各機能部42〜49は、互いに情報の受け渡しを行うことができるように構成されている。更に、エンジン制御ユニット31と制御ユニット41との間でも、互いに情報の受け渡しを行うことができるように構成されている。以下では、エンジン制御ユニット31及び制御ユニット41の各機能部32、33、42〜49について詳細に説明する。
【0041】
エンジン制御部32は、エンジン11の動作制御を行なう機能部である。エンジン制御部32は、車両要求出力に基づいて定まるエンジン動作点を決定し、当該エンジン動作点でエンジン11を動作させるように制御する処理を行う。ここで、エンジン動作点は、エンジン11の制御目標点を表す制御指令値であって、回転速度及びトルクにより定まる。より詳細には、エンジン動作点は、車両要求出力(車両要求トルク及びエンジン回転速度に基づいて定まる)と最適燃費とを考慮して決定されるエンジン11の制御目標点を表す指令値であって、回転速度指令値とトルク指令値とにより定まる。そして、エンジン制御部32は、エンジン動作点に示されるトルク及び回転速度で動作するようにエンジン11を制御する。
【0042】
アイドルストップ制御部33は、所定のアイドルストップ条件が成立したときにエンジン11への燃料供給を遮断して、エンジン11を自動停止させるアイドルストップ制御を行なう機能部である。ここで、アイドルストップ条件は、エンジン11の回転速度や車速、アクセル開度等に基づいて予め定められている。本例では、一例として、入力軸回転速度センサSe1により取得される入力軸I(エンジン11の出力回転軸)の回転速度がアイドル回転数(例えば、600〜700〔rpm〕)付近であり、かつ車速センサSe2により取得される車速が略ゼロであり、かつブレーキ操作検出センサSe3によりブレーキ操作がなされていることが検出され、かつアクセル開度検出センサSe4により取得されるアクセル開度が略ゼロであることがアイドルストップ条件として定められている。アイドルストップ制御部33は、アイドルストップ条件が成立しなくなったときにエンジン11への燃料供給を再開して、スタータ12によりエンジン11を再始動させる制御も行なう。
【0043】
なお、本実施形態においては、後述するエンジン停止許可制御部43によりエンジン11の停止が許可されている(エンジン停止許可フラグがオンとなっている)ことが、アイドルストップ制御部33がエンジン11を自動停止させるための前提条件とされている。そこで、本実施形態に係るアイドルストップ制御部33は、所定の周期でエンジン停止許可フラグの状態を示す情報を読み取って、エンジン11の停止が許可されているか否かを逐次確認するように構成されている。そして、アイドルストップ制御部33は、エンジン停止許可フラグがオンであることを認識した状態でエンジン11を自動停止させることができ、エンジン停止許可フラグがオフであることを認識した状態ではエンジン11を自動停止させることができないように構成されている。
【0044】
調整弁制御部42は、リニアソレノイドSLT、SLU、第一調整弁PV、第二調整弁SV、並びに変速制御機構VBに含まれる切替弁WV及び複数の制御弁等の弁機構の開閉動作を制御する機能部である。例えば、上述したようにリニアソレノイドSLT及び第一調整弁PVの開度を調整することにより第一油圧P1を形成し、また、切替弁WVによる油路の連通状態の切り替えを制御することにより、第一クラッチC1に供給される油圧を第一油圧P1と調整圧P1’との間で切り替える。また、調整弁制御部42は、変速制御機構VBに含まれる複数の制御弁のそれぞれの開度を調整することにより、変速装置14における所望の変速段を形成する。
【0045】
エンジン停止許可制御部43は、エンジン制御ユニット31側に対してエンジン11の停止を許可し、又は禁止する機能部である。本実施形態では、エンジン停止許可制御部43は、所定のエンジン停止許可条件に基づいて、特にアイドルストップ機能によるエンジン11の停止を許可し、又は禁止する。ここで、エンジン停止許可条件は、車速や変速装置14の状態等に基づいて予め定められている。本例では、一例として、車速センサSe2により取得される車速が5〔km/h〕以下であり、かつ変速装置14が変速動作中でなく、かつ実質的にニュートラル制御中ではないことがエンジン停止許可条件として定められている。エンジン停止許可条件が成立する場合には、エンジン停止許可制御部43はエンジン11の停止を許可し、成立しない場合には、エンジン停止許可制御部43はエンジン11の停止を禁止する。
【0046】
なお、このようなエンジン停止許可条件が設定されている場合、通常であれば後述するニュートラル移行条件が成立すると直ちにニュートラル状態に移行するので、それと同時にエンジン停止許可条件が成立しなくなる。しかし、本実施形態においては、後述するようにニュートラル移行条件が成立した場合であっても、移行遅延制御部47によりニュートラル状態への移行が少なくとも所定の遅延時間TDだけ遅延させられ、実質的なニュートラル制御の実行が少なくとも遅延時間TDだけ遅延させられる。そこで、それに対応して、本実施形態に係るエンジン停止許可制御部43は、ニュートラル移行条件が成立した後もそのままエンジン11の停止を許可する状態とし、ニュートラル移行条件の成立時を基準として遅延時間TDが経過した時点で、エンジン11の停止を許可する状態から禁止する状態へと切り替えるように構成されている。
【0047】
より具体的には、エンジン停止許可制御部43はエンジン停止許可条件に基づいてエンジン11の停止の可否を判定し、当該可否判定の結果に応じてエンジン停止許可フラグのオン/オフを設定する。また、本実施形態においては、エンジン停止許可制御部43は、後述するニュートラル移行条件の成立時を基準として遅延時間TDが経過した時点で、エンジン停止許可フラグをオンからオフに切り替える。
【0048】
電動モータ制御部44は、電動ポンプ24を駆動するための電動モータ25の動作を制御する機能部である。本実施形態では、電動モータ制御部44は、アイドルストップ制御に連動して電動モータ25の動作を制御する。すなわち、エンジン停止許可フラグがオンの状態でアイドルストップ条件が成立してエンジン11が自動停止された場合に、電動モータ制御部44は、電動モータ25を駆動させることにより電動ポンプ24を動作させる。そして、アイドルストップ機能によるエンジン11の停止中は、電動モータ25を駆動状態に維持する。一方、エンジン11の駆動中であって機械式ポンプ23による作動油の吐出量が十分量である場合には、電動モータ制御部44は電動モータ25を停止状態とする。
【0049】
ニュートラル制御部45は、少なくとも所定のニュートラル移行条件が成立する場合に、第一クラッチC1に対する供給油圧を制御してニュートラル状態とするニュートラル制御を行なう機能部である。ここで、ニュートラル制御部45は、第一クラッチC1が半係合状態となるように当該第一クラッチC1に対する供給油圧を制御することにより、ニュートラル状態とする。本例では、ニュートラル制御部45は第一クラッチC1に対する供給油圧を低下させてスリップさせ、第一クラッチC1による伝達トルクが略ゼロとなる状態とする。本実施形態においては、ニュートラル制御部45は、アイドルストップ制御の実行との関係でニュートラル状態へ移行するタイミングを調整するため、その下位の機能部としてニュートラル許可制御部46、移行遅延制御部47、移行待機制御部48、及び移行開始制御部49を備えている。
【0050】
ニュートラル許可制御部46は、所定のニュートラル移行条件に基づいて、ニュートラル状態への移行を許可し、又は禁止する機能部である。ここで、ニュートラル移行条件は、車速やアクセル開度、シフトレバーの位置等に基づいて予め定められている。本例では、一例として、車速センサSe2により取得される車速が略ゼロであり、かつブレーキ操作検出センサSe3によりブレーキ操作がなされていることが検出され、かつアクセル開度検出センサSe4により取得されるアクセル開度が略ゼロであり、シフトポジションセンサSe5より取得されるシフトレバーの位置が前進走行レンジ(例えば、Dレンジ)に対応する位置であることがニュートラル移行条件として定められている。ニュートラル許可制御部46は、ニュートラル移行条件が成立する場合にはニュートラル状態への移行を許可し、成立しない場合にはニュートラル状態への移行を禁止する。
【0051】
より具体的には、ニュートラル許可制御部46はニュートラル移行条件に基づいてニュートラル状態への移行の可否を判定し、当該可否判定の結果に応じてニュートラル状態許可フラグのオン/オフを設定する。なお、ニュートラル許可制御部46はあくまでニュートラル状態への移行の可否を判定するだけであり、仮にニュートラル状態への移行を許可したとしても、後述する移行開始制御部49による移行開始制御が実行されなければ、実際にニュートラル状態へ移行される訳ではない。
【0052】
移行遅延制御部47は、ニュートラル移行条件が成立した場合に、ニュートラル状態への移行を所定の遅延時間TDだけ遅延させる機能部である。ニュートラル移行条件が成立すると、移行遅延制御部47は、制御ユニット41に内部タイマーとして備えられた第一タイマーを作動させて計時を開始する。そして、少なくとも第一タイマーが示す経過時間が予め定められた遅延時間TDに達するまでは、第一クラッチC1に対する供給油圧を第一油圧P1のまま維持して、第一クラッチC1を完全係合状態に維持させる。なお、このときの遅延時間TDとしては、アイドル停止条件及びニュートラル移行条件の双方が成立する場合に、アイドル停止条件の成立時がニュートラル移行条件の成立時に対して遅れる可能性のある長さの時間を含むように設定されていると好適である。具体的には、例えば0.5〜5〔秒〕とすることができる。
【0053】
このようにすれば、遅延時間TDが経過する前にアイドルストップ条件が成立した場合には、既にニュートラル移行条件は成立しているものの、実際にニュートラル状態へ移行している訳ではないので、作動油の油路における第一油圧P1(ライン圧)は、未だ電動ポンプ24の保証耐圧以下のままである。よって、アイドルストップ制御部33によりエンジン11を自動停止すると共に、電動モータ制御部44により電動モータ25を適切に駆動させて電動ポンプ24を動作させることができる。つまり、電動モータ25を故障させることなく正常に回転させて電動ポンプ24を動作させることができる。従って、燃費向上効果及び排ガス低減効果に優れたアイドルストップ機能を適切に実行させることができる。
【0054】
本実施形態においては、ニュートラル制御部45は移行待機制御部48を更に備えている。移行待機制御部48は、ニュートラル移行条件の成立後、アイドルストップ条件が成立しないまま遅延時間TDが経過した場合に、ニュートラル状態への移行を所定の待機時間TWだけ遅延させる機能部である。遅延時間TDが経過すると、移行待機制御部48は、制御ユニット41に内部タイマーとして備えられた第二タイマーを作動させて計時を開始する。そして、少なくとも第二タイマーが示す経過時間が予め定められた待機時間TWに達するまでは、引き続き第一クラッチC1に対する供給油圧を第一油圧P1のまま維持して、引き続き第一クラッチC1を完全係合状態に維持させる。なお、このときの待機時間TWとしては、アイドルストップ制御部33が、エンジン停止許可制御部43がエンジン11の停止を禁止したことを認識することができる程度の長さの時間が設定されていると好適である。つまり、エンジン停止許可制御部43がエンジン停止許可フラグをオフとしてから、アイドルストップ制御部33がそれを認識するまでのタイムラグの長さ以上の時間が設定されていると好適である。本例のように、アイドルストップ制御部33が所定の周期でエンジン停止許可フラグの状態を示す情報を読み取るように構成された場合には、一周期分の長さ以上の時間が設定されていると良い。具体的には、例えば0.05〜0.3〔秒〕とすることができる。
【0055】
このようにすれば、ニュートラル移行条件の成立時を基準として遅延時間TDが経過した時点で、エンジン停止許可制御部43がエンジン停止許可フラグをオンからオフに切り替えてからアイドルストップ制御部33がそれを認識するまでの間にアイドルストップ制御部33によりエンジン11が自動停止された場合にも、作動油の油路における第一油圧P1(ライン圧)は電動ポンプ24の保証耐圧以下のままである。よって、電動モータ25が過負荷により故障するのを防止することができる。従って、アイドルストップ機能を確実かつ適切に実行させることができる。
【0056】
移行開始制御部49は、ニュートラル状態への移行開始を制御する機能部である。本実施形態においては、上記のとおり移行開始制御部49は、第一タイマーによる計時の開始後、遅延時間TD内にアイドルストップ機能が実行されなかった場合であって、更に第二タイマーによる計時の開始後、待機時間TW内にアイドルストップ機能が実行されなかった場合に、ニュートラル状態に移行させる。移行開始制御部49は、調整弁制御部42を介して第一クラッチC1に対する供給油圧を第一油圧P1から調整圧P1’に切り替えることにより、第一クラッチC1に対する供給油圧を低下させて第一クラッチC1を半係合状態とする。これにより、ニュートラル状態が実現される。
【0057】
なお、遅延時間TD内にアイドルストップ機能が実行され、アイドルストップ制御部33によりエンジン11が自動停止された場合には、ニュートラル移行条件の成立に関わらず、移行開始制御部49は、ニュートラル状態への移行を中止する。また、同様に、待機時間TW内にアイドルストップ機能が実行され、アイドルストップ制御部33によりエンジン11が自動停止された場合には、ニュートラル移行条件の成立及び遅延時間TD内におけるアイドルストップ条件の不成立に関わらず、移行開始制御部49は、ニュートラル状態への移行を中止する。アイドルストップ機能によりエンジン11が停止されれば、もはやニュートラル状態を実現する必要がないからである。よってそのような場合には、ニュートラル状態への移行を中止することで、適切にアイドルストップ機能を実行させることができる。
【0058】
また、本実施形態においては、エンジン停止許可条件が成立していない状況下でニュートラル移行条件が成立した場合には、ニュートラル制御部45は、移行遅延制御部47及び移行待機制御部48を機能させることなく、ニュートラル状態へ移行させる。すなわち、ニュートラル移行条件の成立後、遅延時間TD及び待機時間TWの経過を待つことなく直ちに第一クラッチC1に対する供給油圧を第一油圧P1から調整圧P1’に切り替えてニュートラル状態を実現させる。エンジン停止許可条件が成立していない状況下では、アイドルストップ機能によりエンジン11が停止されることがなく、従ってニュートラル制御中にエンジン11が自動停止することによる電動モータ25の故障等の問題は生じないからである。
【0059】
4.車両制御処理の手順
次に、本実施形態に係る車両1の制御の内容について説明する。図4は、本実施形態に係る車両1を制御するための制御処理(車両制御処理)の処理手順を示すフローチャートである。以下に説明する車両制御処理の手順は、エンジン制御ユニット31及び制御ユニット41の各機能部32、33、42〜49により実行される。各機能部32、33、42〜49がプログラムにより構成される場合には、エンジン制御ユニット31及び制御ユニット41がそれぞれ備える演算処理装置は、上記の各機能部32、33、42〜49を構成するプログラムを実行するコンピュータとして動作する。
【0060】
本実施形態に係る車両制御処理においては、まずエンジン停止許可制御部43は、エンジン停止許可条件が成立するか否かを判定する(ステップ#01)。エンジン停止許可条件が成立すると判定されなかった場合には(ステップ#01:No)、エンジン停止許可制御部43は、エンジン停止許可フラグをオフとしてエンジン11の停止を禁止する(ステップ#21)。この場合、次にニュートラル制御部45は、ニュートラル移行条件が成立するか否かを判定する(ステップ#22)。ニュートラル移行条件が成立すると判定された場合には(ステップ#22:Yes)、ニュートラル制御部45は直ちに第一クラッチC1を半係合状態としてニュートラル状態を実現させ(ステップ#23)、本処理を終了する。一方、ニュートラル移行条件が成立しないと判定された場合には(ステップ#22:No)、そのまま本処理を終了する。
【0061】
ステップ#01の判定において、エンジン停止許可条件が成立すると判定された場合には(ステップ#01:Yes)、エンジン停止許可制御部43は、エンジン停止許可フラグをオンとしてエンジン11の停止を許可する(ステップ#02)。次にニュートラル許可制御部46は、ニュートラル移行条件が成立するか否かを判定する(ステップ#03)。ニュートラル移行条件が成立すると判定されなかった場合には(ステップ#03:No)、アイドルストップ制御部33は、アイドルストップ条件が成立するか否かを判定する(ステップ#31)。アイドルストップ条件が成立すると判定された場合には(ステップ#31:Yes)、アイドルストップ制御部33はエンジン11を自動停止させて(ステップ#32)本処理を終了する。一方、アイドルストップ条件が成立すると判定されなかった場合には(ステップ#31:No)、そのまま本処理を終了する。
【0062】
ステップ#03の判定において、ニュートラル移行条件が成立すると判定された場合には(ステップ#03:Yes)、ニュートラル許可制御部46は、ニュートラル状態許可フラグをオンとしてニュートラル状態への移行を許可する(ステップ#04)。次に、移行遅延制御部47は、第一タイマーを作動させて計時を開始すると共に(ステップ#05)、計時を開始してからの経過時間が予め設定された遅延時間TDに達したか否かを判定する(ステップ#06)。そして、未だ遅延時間TDに達していないと判定されている間は(ステップ#06:No)、アイドルストップ制御部33は、アイドルストップ条件が成立するか否かを判定する(ステップ#10)。アイドルストップ条件が成立したと判定されない限りは(ステップ#10:No)、ステップ#06及びステップ#10の処理を繰り返し実行する。そして、アイドルストップ条件が成立しないまま遅延時間TDに達すると(ステップ#06:Yes)、エンジン停止許可制御部43は、エンジン停止許可フラグをオフとしてエンジン11の停止を禁止する状態とする(ステップ#07)。
【0063】
次に、移行待機制御部48は、第二タイマーを作動させて計時を開始すると共に(ステップ#08)、計時を開始してからの経過時間が予め設定された待機時間TWに達したか否かを判定する(ステップ#09)。そして、未だ待機時間TWに達していないと判定されている間は(ステップ#09:No)、アイドルストップ制御部33は、アイドルストップ条件が成立するか否かを判定する(ステップ#10)。アイドルストップ条件が成立したと判定されない限りは(ステップ#10:No)、ステップ#09及びステップ#10の処理を繰り返し実行する。なお、図4のフローチャートにおいては、ステップ#10でアイドルストップ条件が成立したと判定されなかった場合には(ステップ#10:No)ステップ#06の処理に進むものとされているが、遅延時間TDの経過後にあっては、ステップ#06〜ステップ#08の処理は実行されることなくステップ#09の処理に進むものとする。
【0064】
そして、遅延時間TDに達するまでの間、又は待機時間TWに達するまでの間にアイドルストップ条件が成立したと判定された場合には(ステップ#10:Yes)、ニュートラル許可制御部46は、ニュートラル状態許可フラグをオフとしてニュートラル状態への移行を禁止する(ステップ#11)。また、アイドルストップ制御部33はエンジン11を自動停止させて(ステップ#12)本処理を終了する。一方、アイドルストップ条件が成立しないまま待機時間TWに達すると(ステップ#09:Yes)、移行開始制御部49は、第一クラッチC1を半係合状態としてニュートラル状態を実現させ(ステップ#13)、本処理を終了する。
【0065】
5.車両制御処理の具体例
次に、本実施形態に係る車両制御処理の具体例について説明する。図5及び図6は、本実施形態に係る車両制御処理の一例を説明するためのタイミングチャートである。これらの図においては、少なくともニュートラル移行条件が成立した場合における、その後の処理内容の例を示している。なお、これらの図においては、上から順にエンジン停止許可フラグ、ニュートラル許可制御フラグ、アイドルストップ制御信号、ニュートラル制御信号、第一タイマーの計時状態、第二タイマーの計時状態、電動ポンプ24の動作状態、入力軸Iの回転速度、エンジン11の回転速度、中間軸Mの回転速度、が示されている。
【0066】
図5は、アイドルストップ処理によりエンジン11を自動停止させる場合の例を示している。時刻t01においてエンジン停止許可条件が成立すると、エンジン停止許可制御部43はエンジン停止許可フラグをオンとする。この状態で時刻t02においてニュートラル移行条件が成立すると、ニュートラル許可制御部46はニュートラル状態許可フラグをオンとしてニュートラル状態への移行を許可すると共に、移行遅延制御部47は第一タイマーを作動させて計時を開始する。本例では、第一タイマーによる計時の開始後遅延時間TDに達する前に時刻t03においてアイドルストップ条件が成立したので、アイドルストップ機能が実行されて、アイドルストップ制御部33によりエンジン11が自動停止されている。この場合、ニュートラル許可制御部46はニュートラル状態許可フラグをオフとしてニュートラル状態への移行を禁止する。これにより、ニュートラル移行条件の成立に関わらず、ニュートラル状態へ移行することなくアイドルストップ制御が適切に実行される。なお、エンジン11の回転速度が低下するのに伴って電動ポンプ24が動作を開始する。
【0067】
図6は、ニュートラル制御によりニュートラル状態に移行する場合の例を示している。時刻t11においてエンジン停止許可条件が成立すると、エンジン停止許可制御部43はエンジン停止許可フラグをオンとする。この状態で時刻t12においてニュートラル移行条件が成立すると、ニュートラル許可制御部46はニュートラル状態許可フラグをオンとしてニュートラル状態への移行を許可すると共に、移行遅延制御部47は第一タイマーを作動させて計時を開始する。本例では、第一タイマーによる計時の開始後遅延時間TDに達するまでにアイドルストップ条件が成立せずアイドルストップ機能が実行されなかったので、時刻t13において、エンジン停止許可制御部43はエンジン停止許可フラグをオンからオフへと切り替える。また、移行待機制御部48は第二タイマーを作動させて計時を開始する。本例では、更に第二タイマーによる計時の開始後待機時間TWに達するまでにもアイドルストップ条件が成立せずアイドルストップ機能が実行されなかったので、移行開始制御部49は、時刻t14において第一クラッチC1を半係合状態としてニュートラル状態を実現させる。これにより、ニュートラル移行条件の成立後、所定時間内にアイドルストップ機能が実行されなかった場合には、ニュートラル制御が適切に実行される。
【0068】
〔その他の実施形態〕
(1)上記の実施形態においては、制御ユニット41において、ニュートラル制御部45がその下位の機能部としてニュートラル許可制御部46、移行遅延制御部47、移行待機制御部48、及び移行開始制御部49を備えている場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、少なくとも上記の実施形態におけるニュートラル制御部45、移行遅延制御部47、及び移行開始制御部49に相当する機能部を備えた構成とされていれば、これらが互いに独立した機能部として構成されることも、本発明の好適な実施形態の一つである。
【0069】
(2)上記の実施形態においては、ニュートラル制御部45が移行遅延制御部47に加えて移行待機制御部48を更に備え、ニュートラル移行条件の成立後、アイドルストップ条件が成立しないまま遅延時間TDが経過した場合に、ニュートラル状態への移行を更に所定の待機時間TWだけ待機させる場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、例えばエンジン停止許可制御部43が設定するエンジン停止許可フラグオフの情報をアイドルストップ制御部33が読み取るまでのタイムラグがほとんど無視できる場合等には、移行待機制御部48を備えることなく(待機時間TWの経過を待つことなく)、遅延時間TDの経過時に直ちに移行開始制御部49がニュートラル状態へ移行させる構成とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。
【0070】
(3)或いは、例えばエンジン停止許可制御部43が設定するエンジン停止許可フラグオフの情報をアイドルストップ制御部33が認識するまでのタイムラグの長さを考慮して、ニュートラル移行条件の成立後であって遅延時間Dの経過の所定時間前に、エンジン停止許可制御部43がエンジン停止許可フラグをオンからオフに切り替える構成としても、上記の実施形態と実質的に同じである。この場合におけるエンジン停止許可フラグの切り替えのタイミングとしては、ニュートラル移行条件の成立後、(遅延時間D−待機時間TW)だけ経過した時点、又はそれよりも早い時点とすると好適である。
【0071】
(4)上記の実施形態においては、エンジン停止許可制御部43がエンジン停止許可フラグのオン/オフを設定すると共に、アイドルストップ制御部33が、所定の周期でエンジン停止許可フラグの状態を示す情報を読み取ってエンジン11の停止が許可されているか否かを確認するように構成されている場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、例えばエンジン停止許可制御部43が、アイドルストップ機能によるエンジン11の停止を許可し又は禁止するための制御信号をアイドルストップ制御部33に対して出力する構成とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。
【0072】
(5)上記の実施形態においては、コスト低減と配置スペース省略による駆動装置の小型化とを図ることを目的として、電動ポンプ24の吐出側の油路にリリーフバルブが併設されていない場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、そのようなリリーフバルブが併設された車両1に備えられた制御ユニット41に適用することも、本発明の好適な実施形態の一つである。この場合、電動ポンプ24を駆動するための電動モータ25の保護を、より確実に図ることができる。
【0073】
(6)上記の実施形態においては、ニュートラル制御中に第一クラッチC1に対して調整圧P1’の作動油を供給するための第一油圧P1(ライン圧)が、電動ポンプ24の保証耐圧よりも高くなるように設定されている場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、ニュートラル制御中に第一クラッチC1に対して調整圧P1’の作動油を供給するための第一油圧P1が、電動ポンプ24の保証耐圧に等しいか、又は低くなるように設定されている場合にも、上記の実施形態と同様に動作させることができる。
【0074】
(7)上記の実施形態においては、変速装置14に備えられた第一クラッチC1が、本発明に係る「入力クラッチ」としてエンジン11の回転駆動力の出力軸Oへの伝達を断接する機能を有するように構成されている場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、例えばトルクコンバータ13と変速装置14との間(中間軸M)にクラッチを設け、これに「入力クラッチ」としての機能を持たせるように構成することも、本発明の好適な実施形態の一つである。
【0075】
(8)上記の実施形態においては、エンジン停止許可条件、アイドルストップ条件、及びニュートラル移行条件に関して、具体例を挙げて説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、上記の各条件はあくまで一例であり、必要に応じて適宜変更設定することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明は、いわゆるニュートラル制御機能とアイドルストップ機能との双方の機能を有する車両に備えられた車両用制御装置に好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0077】
1 車両
14 変速装置
23 機械式ポンプ
24 電動ポンプ
41 制御ユニット(車両用制御装置)
43 エンジン停止許可制御部
45 ニュートラル制御部
47 移行遅延制御部
49 移行開始制御部
O 出力軸
C1 第一クラッチ(入力クラッチ)
TD 遅延時間
TW 待機時間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定のアイドルストップ条件に応じてエンジンを自動停止させるアイドルストップ機能を有すると共に、前記エンジンの駆動力の変速装置の出力軸への伝達を断接するために設けられた前記変速装置の入力クラッチと、前記エンジンにより駆動され、油路を介して前記入力クラッチへ作動油を供給する機械式ポンプと、前記アイドルストップ機能による前記エンジンの停止時に電動モータにより駆動され、前記油路を介して前記入力クラッチへ作動油を供給する電動ポンプと、を有する車両に備えられた車両用制御装置であって、
少なくとも所定のニュートラル移行条件を満たす場合に、前記入力クラッチに対する供給油圧を前記油路のライン圧により制御し、前記入力クラッチが半係合状態とされるニュートラル状態を実現するニュートラル制御部と、
前記ニュートラル移行条件が成立した場合に、前記ニュートラル状態への移行を所定の遅延時間だけ遅延させる移行遅延制御部と、
前記遅延時間中に前記アイドルストップ条件が成立しなかった場合に、前記ニュートラル状態に移行させる移行開始制御部と、
を備えた車両用制御装置。
【請求項2】
前記アイドルストップ機能による前記エンジンの停止を許可し、又は禁止するエンジン停止許可制御部を更に備え、
前記エンジン停止許可制御部は、前記遅延時間の終了時に前記エンジンの停止を許可する状態から禁止する状態へと切り替えるように構成され、
前記移行開始制御部は、前記遅延時間の経過後、更に前記アイドルストップ機能を制御するアイドルストップ制御部に前記エンジンの停止を禁止したことを認識させるための所定の待機時間が経過した後に、前記ニュートラル状態に移行させる請求項1に記載の車両用制御装置。
【請求項3】
前記遅延時間中に前記アイドルストップ機能による前記エンジンの停止が実行された場合には、前記ニュートラル移行条件の成立に関わらず、前記移行開始制御部は前記ニュートラル状態への移行を中止する請求項1又は2に記載の車両用制御装置。
【請求項4】
前記待機時間中に前記アイドルストップ機能による前記エンジンの停止が実行された場合には、前記ニュートラル移行条件の成立及び前記遅延時間中における前記アイドルストップ条件の不成立に関わらず、前記移行開始制御部は前記ニュートラル状態への移行を中止する請求項2に記載の車両用制御装置。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2010−281398(P2010−281398A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−135492(P2009−135492)
【出願日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【Fターム(参考)】