説明

車両用操舵装置

【課題】 通常走行時の操縦安定性を確保しつつ、最大転舵角を大きく取ることができる車両用操舵装置を提供する。
【解決手段】 上側支持点7aと下側支持点とをそれぞれ懸架部材(サブリンク10、アッパーアーム11)を介して車体に支持し、上側支持点7aを車輪1の車幅方向内側の側面16よりも内側に配置したナックル5と、キングピンオフセット量を変更する第1の自由度と、キングピン傾斜角を変更する第2の自由度との2自由度を有し、下側支持点を側面16よりも内側の位置と外側の位置との間で移動可能なキングピン軸変更装置と、操舵状態に応じた目標転舵角θに基づいて、車輪1の転舵角を制御する転舵制御装置19と、目標転舵角θに応じてキングピン軸変更装置を制御するキングピン軸制御装置20と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、最大転舵角を大きく取ることができる車両用操舵装置の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ナックルを車幅方向外側へ押し出す機構を備え、車輪の転舵時に車輪をホイルハウスから離間させることによって、最大転舵角を大きく取る技術が開示されている。
【特許文献1】特開2005−53471号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記従来技術にあっては、サスペンションアームやホイルハウスとの干渉を避けつつ、最大転舵角を大きく取る必要上、キングピンオフセット量をある程度大きく取らざるを得ない。このため、最大転舵角を必要としない通常走行時において、車輪に作用するブレーキ制動力やインホイールモータの制駆動力により車輪がキングピン軸まわりに回転する力(転舵トルク外乱)が大きくなり、操縦安定性の低下を招くという問題があった。
【0004】
本発明は、上記問題に着目してなされたもので、その目的とするところは、通常走行時の操縦安定性を確保しつつ、最大転舵角を大きく取ることができる車両用操舵装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述の目的を達成するため、本発明の車両用操舵装置では、上側支持点を車輪の車幅方向内側の側面よりも内側に配置したナックルと、キングピンオフセット量を変更する第1の自由度とキングピン傾斜角を変更する第2の自由度との2自由度を有し、下側支持点を前記側面よりも内側の位置と外側の位置との間で移動可能なキングピン軸変更手段と、目標転舵角に応じてキングピン軸変更手段を制御するキングピン軸制御手段と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明では、目標転舵角が小さい小舵角領域では、キングピンオフセット量を小さくして操縦安定性を高めることができる。一方、目標転舵角が小さい大舵角領域では、ナックルの下側支持点を車輪の車幅方向内側の側面よりも内側に移動させることで、車輪の最大転舵角を増大することができる。
この結果、通常走行時の操縦安定性を確保しつつ、最大転舵角を大きく取ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明を実施するための最良の形態を、実施例1〜4に基づいて説明する。
【実施例1】
【0008】
[全体構成]
図1は、実施例1の車両用操舵装置を示す正面図であり、車輪が転舵していない直進状態を表す。
車体右側に取り付けられた車輪1は、外周部にタイヤ2、中心部にホイール3を備える。車輪1はハブ4に回転自在に取り付け、ハブ4はナックル5に取り付けている。ナックル5は、車輪1に制駆動力を与えるインホイールモータ6と、上側支持点7aを支える構造部材7と、ナックル下側支持点移動装置(第1下側支持点位置変更手段)8とを一体に設けている。ナックル下側支持点移動装置8は、ナックル5に対するナックル5の下側支持点8dの位置を変更する。
【0009】
ハブ4にはブレーキディスク9を取り付け、ブレーキディスク9はナックル5に取り付けた図外のブレーキキャリパにより、車輪1に制動力を付与する。
ナックル5の上側支持点7aは、サブリンク(懸架部材)10を介してアッパーアーム(懸架部材)11に取り付けており、アッパーアーム11の他端は車体に取り付けている。ナックル5の上側支持点7aは、車両前方から見て車輪1の車幅方向内側の側面16よりも内側に位置する。サブリンク10には、可変するキングピン軸12まわりにナックル5を回転させるための転舵装置13を取り付け、この転舵装置13を駆動することで車輪1を転舵させる。
【0010】
ナックル5の下側支持点8dは、懸架部材である可変長ロアアーム(第2下側支持点位置変更手段)14を介して車体に取り付けている。可変長ロアアーム14は、ロッド長を変えることで支持点間距離を変更可能である。可変長ロアアーム14には、車両の荷重を支えるショックアブソーバ15を取り付けている。
【0011】
転舵装置13は、転舵制御装置(転舵制御手段)19により制御され(転舵制御)、ナックル下側支持点移動装置8および可変長ロアアーム14は、キングピン軸制御装置(キングピン軸制御装置)20により制御される(キングピン軸制御)。実施例1では、ナックル下側支持点移動装置8と可変長ロアアーム14とからキングピン軸変更装置(キングピン軸変更手段)を構成している。
【0012】
[転舵装置の構成]
次に、図2〜図4を用いて、転舵装置13の詳細について説明する。
図2はサブリンク10、アッパーアーム11、転舵装置13を車両上面から見た平面図、図3は車両前方から見た正面図(図2におけるA-A断面図)、図4は図3のサスペンションストローク量変化時(リバウンド側)の図である。
【0013】
サブリンク10には、ステアリングモータ13aとウォームギアボックス13bを取り付け、ステアリングモータ13aの駆動によりキングピン軸12まわりに転舵トルクを発生可能としている。シャフト13cを介して転舵トルクをナックル5に伝達することで、車輪1を転舵させる。
【0014】
サブリンク10はアッパーアーム11に対し、車両前方から見たときのアッパーアーム中心線11aとキングピン軸12の交差する点を通ってアッパーアーム揺動軸11bに平行な回転軸11cのまわりに回転可能に取り付けている。このため、図3と図4とを比較してわかるように、サスペンションストローク量が変化しても、キングピン軸12まわりにナックル5を回転可能である。
【0015】
[キングピン軸変更装置の構成]
次に、図5〜図8を用いて、キングピン軸変更装置の詳細について説明する。
図5は、2つの自由度を可動制御することでキングピン軸12が動く(12aから12bまで動く)様子を示した図、図6はナックル5を形成するインホイールモータ6とナックル下側支持点移動装置8を斜め下から見た図、図7は可変長ロアアーム14を上から見た平面図、図8は可変長ロアアーム14を前方から見た正面図である。
【0016】
図6に示すように、1つめのキングピン軸制御自由度は、下側支持点8dを車両左右方向に平行移動することで実現する。ナックル下側支持点移動装置8を、スライダーモータ8aと、リニアスライド機構8bと、可動式ナックル下側支持部材8cとから構成し、スライダーモータ8aを駆動することで、可動式ナックル下側支持部材8cは車両左右方向に平行移動する。
【0017】
図7,8に示すように、2つめのキングピン軸制御自由度は、ロアアーム揺動軸14dと、下側支持点8dとの締結軸14eの距離を変更することで実現する。可変長ロアアーム14は、シリンダモータ14aと、シリンダ一体型アーム部材14bと、ロッド14cとから構成し、シリンダモータ14aを駆動することで、ロッド長を可変させる。
【0018】
2つの制御自由度を組み合わせることにより、図5に示すように、車輪1を車幅方向に移動させることなく、キングピン軸12のみを状態Aから状態Bまで可変させることが可能になる。
実施例1では、キングピン軸12の可動範囲を、図5の12a(状態A、キングピン傾斜角が0度)から、12b(状態B、キングピンオフセット量が0)までと設定する。ここで、「キングピン傾斜角」とは、キングピン軸12の鉛直線との角度をいう。また、「キングピンオフセット量」とは、キングピン軸12が地面と交差する点17とタイヤ接地点中心との距離をいう。
【0019】
[制御ロジック]
次に、図9の制御フローチャートを用いて、転舵制御およびキングピン軸制御の制御ロジックについて説明する。
【0020】
ステップS1では、目標車輪転舵角(目標転舵角)θを決定し、ステップS2へ移行する。目標転舵角θは、運転者のステアリング操作量、あるいは運転者の特殊運転モード選択の有無(例えば縦列駐車モードの選択など)、車両状態(車速やヨーレートなど)等に基づいて決定する。
【0021】
ステップS2では、目標転舵角θが小舵角領域であるか否かを、−θ0<θ<θ1であるか否かにより判定する。YESの場合にはステップS3へ移行し、NOの場合にはステップS4へ移行する。
【0022】
ステップS3では、目標転舵角θが小舵角領域の場合のキングピン軸制御を実行し、ステップS5へ移行する。
キングピン制御では、前提として、図5で示したように、キングピン軸12を可変制御する際にタイヤ2が横移動しない(スカッフ変化しない)よう、下側支持点8dが車体から離れる方向へ移動する量と、ロアアーム長の伸びる量が等しくなるようにそれぞれを制御することとする。
【0023】
転舵角の範囲が図10に示すような−θ0<θ<θ1(小舵角領域)の場合は、図11に示すように、可変長ロアアーム14が最も伸びた状態において、車輪1が可変長ロアアーム14やその他懸架部材に干渉しない。
そこで、ブレーキの制動力やインホイールモータ6の制駆動力による転舵トルク外乱の大きさを最小化させるために、転舵角の範囲が−θ0<θ<θ1(小舵角領域)においては、可変長ロアアーム14が最も伸びてキングピンオフセット量が最小となる位置、すなわち図5の状態Bの位置で、キングピン軸12を維持する。この結果、小舵角の通常走行時の転舵制御性を向上させることができる。
【0024】
ステップS4では、目標転舵角θが大舵角領域の場合のキングピン軸制御を実行し、ステップS5へ移行する。
ステップS4でも、ステップS3と同様、図5で示したように、キングピン軸12を可変制御する際にタイヤ2が横移動しない(スカッフ変化しない)よう、下側支持点8dが車体から離れる方向へ移動する量と、ロアアーム長の伸びる量が等しくなるようにそれぞれを制御することを前提とする。
【0025】
転舵角の範囲が−θ0<θ<θ1ではない(すなわち、大舵角領域)場合、可変長ロアアーム14が最も伸びた状態のままで転舵を行うと、車輪1が可変長ロアアーム14やその他懸架部材に干渉する。
そこで干渉を回避するために、転舵を行う前に、あらかじめキングピン傾斜角が最小(=0)となる位置まで、キングピン軸12を移動させる。具体的には、可変長ロアアーム14を最も縮め、下側支持点8dが車体に最も近くなる位置、すなわち図5の状態Aの位置まで、キングピン軸12を動かす。
【0026】
ここで、大舵角転舵時に状態Aの位置にキングピン軸12を設定することは、干渉回避以外の効果を奏する。それは、極低速走行あるいは停車時の据え切り転舵トルクを最小化し、転舵制御性を高める効果である。
大舵角転舵走行を行うシーンを具体的に考えると、例えば90度転舵によって車両を横方向に移動させたり、前輪をハの字かつ後輪を逆ハの字に転舵して車両をその場回転させたり、4輪同相転舵によって自由な向きに斜め走行させたりというような、利便性向上のための低速ないしは極低速走行動作がほとんどであると考えられる。
【0027】
そのため、タイヤに限界の制駆動力を付加するようなことは極めて稀であり、キングピンオフセット量に依存する転舵トルク外乱については、あまり考える必要がない。逆に、転舵制御性を向上させるためには、極低速走行あるいは停車時の据え切り転舵トルクが小さくなるようなキングピン軸設定とすることが望ましい。
【0028】
そこで、据え切り転舵トルクTを算出すると、
【数1】

μh(ξ,w):有効摩擦係数関数(キングピンオフセット量に対し単調減少)、W:輪荷重、ξ:キングピンオフセット量、w:タイヤ呼称幅、σ:キングピン傾斜角、δ:転舵角
ここで、上式の第1項がタイヤをキングピン軸まわりに滑らせるのに必要なトルク(有効摩擦係数×荷重×有効回転半径)、第2項がキングピン傾斜角に伴い発生する転舵時持ち上げトルク(力のつりあいによって求まる)である。
【0029】
通常のタイヤ幅・タイヤ径・サスペンションジオメトリの車両において、上式にて大舵角転舵時の据え切り転舵トルクTを算出すると、例えば図12に示すようにキングピン傾斜角に対して概ね単調増加になる傾向がある。
そのため、大舵角転舵時に状態A(キングピン傾斜角最小)の位置にキングピン軸12を設定することで据え切り転舵トルクを最小化し、転舵制御性を高めることができる。
【0030】
ステップS5では、ステップS3またはステップS4の制御により、すでに車輪1が可変長ロアアーム14やその他懸架部材に干渉しないような位置にキングピン軸12が存在しているため、あとは車輪1の転舵角が目標転舵角θとなるように転舵装置13を制御し、本制御を終了する。
【0031】
次に、作用を説明する。
[キングピンオフセット量による転舵トルク外乱について]
特開2005−53471号公報に記載された技術では、転舵時にはナックルを車幅方向外側へ押し出すことで、最大点舵角を大きくし、車両の小回り性を向上させている。
上記従来技術に対し、左右独立に転舵角を制御する装置や、ドライブシャフト無しに駆動力を与えられるインホイールモータを組み合わせることで、例えば90度転舵によって車両を横方向に移動させたり、前輪をハの字かつ後輪を逆ハの字に転舵して車両をその場回転させたり、4輪同相転舵によって自由な向きに斜め走行したりすることが可能となる。
そのような独立転舵制御装置やインホイールモータを備えた車両の場合、小舵角の通常走行時には、操安性能を向上させるため積極的に転舵角や制駆動力を制御することが考えられる。
【0032】
ここで、インホイールモータやブレーキによる制駆動力の着力点(≒タイヤ接地点中心)がキングピン軸から離れていると、制駆動力制御時にキングピン軸まわりに車輪を勝手に回そうとするモーメントが発生し、転舵角を制御する際の外乱となる。そのため、そのような転舵トルク外乱を受けないように、接地点におけるキングピンオフセット量はできるだけ小さくしておくことが望ましい。
【0033】
しかし、特開2005−53471号公報に記載された技術では、ロアアームが存在するサスペンションにおいて、大舵角転舵時に車輪がサスペンションアームやホイルハウス等に干渉することなく、最大転舵角を大きくするという観点から、キングピン軸の位置を決定している。その結果、小舵角領域でのキングピンオフセット量をある程度大きく取らざるを得ない。
そのため、小舵角領域での通常走行時において、ブレーキの制動力やインホイールモータの制駆動力による転舵トルク外乱を受けてしまい、転舵制御性が低下するという問題が生じる。
【0034】
[操縦安定性と最大転舵角増大との両立作用]
これに対し、実施例1の車両用操舵装置では、上側支持点7aを車輪1の車幅方向内側の側面16よりも内側に配置したナックル5と、キングピンオフセット量を変更する第1の自由度とキングピン傾斜角を変更する第2の自由度との2自由度を有し、ナックル5の下側支持点8dを側面16よりも内側の位置と外側の位置との間で移動可能なキングピン軸変更装置と、車輪1の目標転舵角θに応じてキングピン軸変更装置を制御するキングピン軸制御装置20と、を備える。
【0035】
このため、ナックル5を上下2箇所以上で支持する構造による十分なサスペンション剛性、従来の一般的な小舵角サスペンションと同等の小舵角時サスペンションジオメトリ(キングピンオフセット量、ストローク時のキャンバ変化やスカッフ変化など)をそれぞれ確保でき、通常走行時の操縦安定性を損なうことがない。
【0036】
また、キングピン軸12を構成するナックル5の上側支持点7aが車輪非干渉域(車輪1の側面16よりも内側の領域)に位置し、キングピン軸12が地面と交差する点も車輪非干渉域(車輪1の側面16よりも内側の領域)まで移動可能であるため、設定次第で転舵角を最大±90度程度まで取ることが可能となる。
【0037】
そして、実施例1では、目標転舵角θが−θ0<θ<θ1となる小舵角領域では、図9のフローチャートにおいて、ステップS1→ステップS2→ステップS3→ステップS5へと進む流れとなり、ステップS3では、キングピン軸12をキングピンオフセット量が最小となる状態Bの位置まで移動させるため、ブレーキの制動力やインホイールモータ6の制駆動力による転舵トルク外乱の大きさを最小化し、転舵制御性を向上させることができる。
【0038】
一方、目標転舵角θがθ≦−θ0またはθ≧θ1となる大舵角領域では、図9のフローチャートにおいて、ステップS1→ステップS2→ステップS4→ステップS5へと進み、ステップS4では、キングピン軸12をキングピン傾斜角が最小となる状態Aの位置まで移動させるため、車輪1と可変長ロアアーム14その他の部材と干渉を回避して最大転舵角を大きく取ることができる。
【0039】
また、通常のタイヤ幅・タイヤ径・サスペンションジオメトリの車両において、据え切り大舵角転舵時に必要な転舵トルク(=タイヤを滑らせるのに必要なトルクと、キングピン傾斜角による持ち上げトルクの和)を最小化できるようなキングピン傾斜角およびキングピンオフセット量を実現できるため、停車時あるいは極低速時の大舵角転舵においても、転舵制御性を向上させることができる。
【0040】
実施例1では、目標転舵角θに応じてキングピンオフセット量およびキングピン傾斜角を変更する際、ナックル5の下側支持点8dが車体から離れる方向へ移動する量と、ロアアーム長の伸びる量とが等しくなるようにナックル下側支持点移動装置8と可変長ロアアーム14とを制御する。このため、下側支持点8dの移動に伴うスカッフ変化量を最小化でき、乗り心地や走行安定性の悪化を防止することができる。
【0041】
また、実施例1では、可変長ロアアーム14の支持点間距離を可変とする構成となっているため、可変長ロアアーム14の内側は車体に対して横移動しない。そのため、ショックアブソーバ15またはプッシュロッドの一方の端点を可変長ロアアーム14に取り付けることが可能となり、サスペンションストロークを大きく取りやすくなる効果が得られる。
【0042】
次に、効果を説明する。
実施例1の車両用操舵装置では、以下に列挙する効果を奏する。
【0043】
(1) 上側支持点7aと下側支持点8dとをそれぞれ懸架部材(サブリンク10、アッパーアーム11、可変長ロアリンク14)を介して車体に支持し、上側支持点7aを車輪1の車幅方向内側の側面16よりも内側に配置したナックル5と、キングピンオフセット量を変更する第1の自由度と、キングピン傾斜角を変更する第2の自由度との2自由度を有し、下側支持点8dを側面16よりも内側の位置と外側の位置との間で移動可能なキングピン軸変更装置と、操舵状態に応じた目標転舵角θに基づいて、車輪1の転舵角を制御する転舵制御装置19と、目標転舵角θに応じてキングピン軸変更装置を制御するキングピン軸制御装置20と、を備える。
これにより、通常走行時の操縦安定性を確保しつつ、最大転舵角を大きく取ることができる。
【0044】
(2) キングピン軸制御装置20は、目標転舵角θが所定角度よりも小さい(−θ0<θ<θ1)場合、キングピンオフセット量の絶対値を最小値とするため、ブレーキの制動力やインホイールモータ6の制駆動力による転舵トルク外乱の大きさを最小化し、転舵制御性を向上させることができる。
【0045】
(3) キングピン軸制御装置20は、目標転舵角θが所定角度以上の(θ≦−θ0,θ≧θ1)場合、キングピン傾斜角を最小値とするため、車輪1と懸架部材(可変長ロアアーム14等)との干渉を回避して最大転舵角を大きく取ることができる。また、キングピン傾斜角を最小値とすることで、据え切り大舵角転舵時に必要な転舵トルクを最小化でき、転舵制御性を向上させることができる。
【0046】
(4) キングピン軸制御装置20は、キングピンオフセット量およびキングピン傾斜角の変更に伴うタイヤの車幅方向移動量であるスカッフ変化量を最小とするため、乗り心地や走行安定性の悪化を招くことなく、キングピン軸12の位置を変更することができる。
【0047】
(5) キングピン軸変更装置は、ナックル5に対する下側支持点8dの位置を変更するナックル下側支持点移動装置8と、車体に対する下側支持点8dの位置を変更する可変長ロアアーム14と、を備える。これにより、キングピンオフセット量を変更する第1の自由度と、キングピン傾斜角を変更する第2の自由度との2自由度を実現することができる。
【0048】
(6) 可変長ロアアーム14は、伸縮により車体に対する下側支持点8dの位置を変更するため、可変長ロアアーム14の車体支持点の位置を不変とすることができ、ショックアブソーバ15またはプッシュロッドの一方の端点を可変長ロアアーム14に取り付けることが可能となるため、サスペンションストロークを大きく取ることができる。
【実施例2】
【0049】
実施例2の車両用操舵装置は、制御ロジックのみ実施例1と異なり、他の構成については実施例1と同様であるため、同一の構成についての図示ならびに説明は省略する。
【0050】
[制御ロジック]
図13の制御フローチャートを用いて、転舵制御およびキングピン軸制御の制御ロジックについて説明する。なお、図9に示した実施例1と同じ処理を行うステップには、同一のステップ番号を付して説明を省略する。
【0051】
ステップS11では、目標転舵角θが小舵角領域であるか否かを、−θ0<θ<θ1であるか否かにより判定する。YESの場合にはステップS12へ移行し、NOの場合にはステップS15へ移行する。
【0052】
ステップS12では、状態Bの位置にキングピン軸12があるか否かを判定する。YESの場合にはステップS13へ移行し、NOの場合にはステップS14へ移行する。
【0053】
ステップS13では、転舵角が目標転舵角θとなるように転舵装置13を制御し、本制御を終了する。すなわち、既に状態B(可変長ロアアーム14が最も伸びた状態で、キングピンオフセット量最小)の位置にキングピン軸12があるため、キングピン軸12はその位置を維持したまま、転舵制御のみを実施する。小舵角領域で状態Bの位置にキングピン軸12があることは、小舵角での通常走行を連続して行っている状態を意味する。このため、通常走行時に、ブレーキの制動力やインホイールモータ6の制駆動力による転舵トルク外乱の大きさを最小化することが可能となり、転舵制御性を向上させることができる。
【0054】
ステップS14では、状態B(キングピンオフセット量最小)を目指しキングピン軸12を動かしながら、転舵角を目標転舵角θまで動かし、本制御を終了する。小舵角領域で状態Bの位置にキングピン軸12がないことは、大舵角転舵のためにキングピン軸12が状態Bの位置とは異なる位置(可変長ロアアーム14が縮んだ状態)にあって、その後目標転舵角θが小舵角に切り替わった状態を意味する。小舵角領域では、車輪1が可変長ロアアーム14やその他懸架部材に干渉する可能性はない。そのため、現在のキングピン位置(ロアアーム長)に関係なく、キングピン軸12と転舵角を自由に制御することができる。ここでは、ステップS13と同様の理由から、状態B(キングピンオフセット量最小)を目指しキングピン軸12を動かしながら、転舵角を目標転舵角θまで動かす。
【0055】
ここで、キングピン軸12の動かし方としては、実施例1と同様に、キングピン軸12を可変制御する際にタイヤが横移動しない(スカッフ変化しない)よう、ナックル5の下側支持点8dが車体から離れる方向へ移動する量と、ロアアーム長の伸びる量が等しくなるようにそれぞれを制御することとする。
【0056】
ステップS15では、状態Aの位置にキングピン軸12があるか否かを判定する。YESの場合にはステップS16へ移行し、NOの場合にはステップS17へ移行する。
【0057】
ステップS16では、転舵角が目標転舵角θとなるように転舵装置13を制御し、本制御を終了する。すなわち、既に状態A(可変長ロアアーム14が最も縮んだ状態で、キングピン傾斜角最小)の位置にキングピン軸12があるため、キングピン軸12はその位置を維持したまま、転舵制御のみを実施する。大舵角領域で状態Aの位置にキングピン軸12があることは、大舵角での走行を連続して行っている状態を意味する。このため、基本的には低速での走行を行うことが想定されるため、キングピン傾斜角を最小にすることで据え切り転舵トルクを最小化し、転舵制御性を向上させることができる。
【0058】
ステップS17では、ロアアーム長可変量の前回値を読み込み、ステップS18へ移行する。
【0059】
ステップS18では、ステップS17で読み込んだロアアーム長可変量の前回値に基づいて、車輪干渉の可能性があるか否かを判定する。YESの場合にはステップS19へ移行し、NOの場合にはステップS20へ移行する。
【0060】
ステップS19では、状態A(キングピン傾斜角が最小)を目指しキングピン軸12を動かすと同時に、車輪干渉判定ラインを超えない範囲内で、転舵角が目標転舵角θに最も近づくように転舵装置13を制御し、本制御を終了する。すなわち、大舵角領域で状態Aの位置にキングピン軸12がないことは、小舵角転舵のためにキングピン軸12が状態Aの位置とは異なる位置(可変長ロアアーム14が伸びた状態)にあって、その後目標転舵角θが大舵角転舵に切り替わった状態を意味する。
【0061】
ここで、大舵角領域において、可変長ロアアーム14が伸びた状態では車輪1が可変長ロアアーム14やその他懸架部材に干渉する可能性が出てくる。そのため、まず状態A(キングピン傾斜角が最小)を目指して可変長ロアアーム14を縮め始めると同時に、ロアアーム長可変量の前回値を参照して、車輪干渉の判定を行う必要がある。
【0062】
具体的には、図14に示すように、転舵角とロアアーム長の関係において、車輪干渉する転舵角領域より所定の値の分だけマージンを設けて車輪干渉判定ラインを定める。そして、その判定ラインを超えない範囲で、転舵角が目標転舵角θに最も近づくように制御する。つまり、可変長ロアアーム14が十分縮みきっていない場合には、転舵角可能範囲が制限されるようにする。
【0063】
ステップS20では、状態A(キングピン傾斜角が最小)を目指しキングピン軸12を動かすと同時に、転舵角が目標転舵角θとなるように転舵装置13を制御し、本制御を終了する。
【0064】
次に、作用を説明する。
実施例2では、キングピン軸制御と転舵制御とを同時に行っているため、キングピン軸制御の終了後に転舵制御を行う場合と比較して、転舵初期の応答性を高めることができるが、可変長ロアアーム14が伸びた状態(状態B)では車輪1が可変長ロアアーム14やその他懸架部材に干渉する可能性が出てくる。
【0065】
そこで、実施例2では、目標転舵角θが小舵角領域から大舵角領域へと切り替わった場合、車輪1と懸架部材とが干渉するおそれがある場合には、図13のフローチャートにおいて、ステップS1→ステップS11→ステップS15→ステップS17→ステップS18→ステップS19へと進み、まず状態A(キングピン傾斜角が最小)を目指して可変長ロアアーム14を縮め始めると同時に、転舵角を目標転舵角θよりも小さく制限する。これにより、車輪1が可変長ロアアーム14やその他懸架部材に干渉することなく、状態Aまでキングピン軸12を動かしながらの転舵が可能になる。
【0066】
次に、効果を説明する。
実施例2の車両用操舵装置にあっては、実施例1の効果(1)〜(6)に加え、以下の効果を奏する。
【0067】
(7) 転舵制御装置19は、車輪1と可変長ロアアーム14等の懸架部材との干渉が予測される場合、目標転舵角θに応じた車輪1の転舵角を制限するため、キングピンオフセット量およびキングピン傾斜角の変更と同時に車輪1の転舵を開始することができ、転舵初期の応答性を高めることができる。
【実施例3】
【0068】
実施例3の車両用操舵装置は、制御ロジックのみ実施例1と異なり、他の構成については実施例1と同様であるため、同一の構成についての図示ならびに説明は省略する。
【0069】
[制御ロジック]
図15の制御フローチャートを用いて、転舵制御およびキングピン軸制御の制御ロジックについて説明する。なお、図9に示した実施例1または図13に示した実施例2と同じ処理を行うステップには、同一のステップ番号を付して説明を省略する。
【0070】
ステップS21では、所定時間Δtが経過するまでの間に目標転舵角θが小舵角から大舵角へ遷移しないか否かを判定する。YESの場合にはステップS12へ移行し、NOの場合にはステップS22へ移行する。
【0071】
ステップS22では、転舵角がまだ小舵角領域の状態で、状態A(キングピン傾斜角が最小)を目指しキングピン軸12を動かし始め、ステップS23へ移行する。
【0072】
ステップS23では、目標転舵角θに基づいて(所定時間Δt経過後に小舵角領域から大舵角領域へ遷移)に転舵角を動かし、本制御を終了する。
【0073】
次に、作用を説明する。
図16(未知の転舵動作の場合)と図17(既知の転舵動作の場合)との比較により、実施例3の制御を時系列に説明する。
【0074】
通常走行時は、次に目標転舵角θがどう変化するかを予測することはできないため、あらかじめ大舵角転舵のための準備として、キングピン軸12だけを動かしておくようなことはできない。そのため、図16に示すように、時点t1で目標転舵角θが小舵角領域から大舵角領域への遷移時したとき、車輪1と懸架部材との干渉回避のために転舵角に制限が生じる可能性がある。つまり、転舵速度がキングピン軸変更装置の駆動速度に依存したものとなる。
【0075】
しかし、例えば縦列駐車のように、最初から決められたシーケンス動作(タイヤの向きが勝手に90度変わる)を自動で行うような場合には、今後の目標転舵角θの推移が既知であるため、時点t1で目標転舵角θが小舵角領域から大舵角領域へと遷移する時間よりも所定時間Δtだけ手前の時点t0で、あらかじめ大舵角転舵のための準備を行うことができる。
【0076】
実施例3では、所定時間Δt経過後に、目標転舵角θが小舵角領域から大舵角領域へと遷移することが既知であれば、図15のフローチャートにおいて、ステップS1→ステップS11→ステップS21→ステップS22→ステップS23へと進み、状態遷移の所定時間Δt前から、キングピン軸12の目標を大舵角対応の状態Aへと切り替える。これにより、転舵動作に制約が生じなくなり、転舵速度の向上によってスムーズなシーケンス動作を実現することが可能となる。
【0077】
次に、効果を説明する。
実施例3の車両用操舵装置にあっては、実施例1の効果(1)〜(6)、実施例2の効果(7)に加え、以下の効果を奏する。
【0078】
(8) キングピン軸制御装置20は、目標転舵角θが所定時間Δt経過後に所定角度以上(θ≦−θ0,θ≧θ1)になると予測される場合には、キングピン傾斜角をあらかじめ最小値とするため、転舵速度の向上を図ることができる。
【実施例4】
【0079】
実施例4は、実施例3の制御ロジックを用い、機械的構成を実施例3と異ならせた例である。
【0080】
[キングピン軸変更装置の構成]
図18は、実施例4の車両用操舵装置を示す正面図であり、実施例4では、サブリンク10'が実施例3のサブリンクよりも長い部材で構成され、その先に、いわゆるマルチリンクサスペンションと同様のショックアブソーバ15を取り付けている。
【0081】
そして、実施例2では、一端がナックル5の下側支持点8dに連結されるロアアーム14'(支持点間距離固定)の他端を車体に連結するための、車体側支持点18の位置を可変するロアアーム車体支持点移動装置(第2下側支持点位置変更手段)21を設けた。
【0082】
実施例4では、ナックル下側支持点移動装置8とロアアーム車体支持点移動装置21とからキングピン軸変更装置(キングピン軸変更手段)を構成している。
キングピン軸制御においては、ロアアーム長可変量の代わりに、ロアアーム車体支持点移動装置21を制御して車体側支持点18の可変量を用いることになるが、その他の制御原理は全て同じであるため、説明は割愛する。
【0083】
次に、作用を説明する。
実施例4では、車体にロアアーム14'の車体側支持点18の位置を可変するロアアーム車体支持点移動装置21を設けたため、ロアアーム14'にアクチュエータを設ける必要がない。よって、ロアアーム14'にアクチュエータを取り付ける構成と比較して、ばね下荷重を小さく抑えることができる。ばね下荷重の軽減は、車輪1の路面追従性や転舵応答性の向上に有効である。
【0084】
次に、効果を説明する。
実施例4の車両用操舵装置にあっては、実施例1の効果(1)〜(5)、実施例2の効果(7)、実施例3の効果(8)に加え、以下の効果を奏する。
【0085】
(9) ロアアーム車体支持点移動装置21は、車体に対するロアアーム14'の車体側支持点18の位置を変更するため、ばね下荷重を小さく抑え、路面追従性や転舵応答性等の向上を図ることができる。
【0086】
(他の実施例)
以上、本発明を実施するための最良の形態を、図面に基づく実施例1〜4により説明したが、本発明の具体的な構成は、各実施例に示したものに限定されるものではなく、発明の要旨を変更しない程度の設計変更等があっても本発明に含まれる。
【0087】
例えば、実施例1〜4では、キングピン傾斜角の最小値とキングピンオフセット量の最小値をいずれもゼロとしたが、必ずしもゼロでなくてもよい。
実施例4では、ロアアーム14'の車体側支持端を車体に支持する例を示したが、サスペンションメンバに支持する構成としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】実施例1の車両用操舵装置を示す正面図である。
【図2】サブリンク10、アッパーアーム11、転舵装置13を車両上面から見た平面図である。
【図3】サブリンク10、アッパーアーム11、転舵装置13を車両前方から見た正面図である。
【図4】図3のサスペンションストローク量変化時(リバウンド側)の図である。
【図5】2つの自由度を可動制御することでキングピン軸12が動く(12aから12bまで動く)様子を示した図である。
【図6】ナックル5を形成するインホイールモータ6とナックル下側支持点移動装置8を斜め下から見た図である。
【図7】ロアアーム14を上から見た平面図である。
【図8】ロアアーム14を前方から見た正面図である。
【図9】実施例1の制御フローチャートである。
【図10】ロアアーム14が最も伸びた状態における、車輪1と懸架部材の位置関係を示す図である。
【図11】転舵角とロアアーム長によっては、車輪1が懸架部材と干渉することを示す図である。
【図12】キングピン傾斜角と据え切り転舵トルクの関係を示す図である。
【図13】実施例2の制御フローチャートである。
【図14】ロアアーム長によっては、転舵角可能範囲が制限されることを示す図である。
【図15】実施例3の制御フローチャートである。
【図16】未知の転舵動作の場合の、転舵角とロアアーム長可変量の時系列グラフである。
【図17】既知の転舵動作の場合の、転舵角とロアアーム長可変量の時系列グラフである。
【図18】実施例4の車両用操舵装置を示す正面図である。
【符号の説明】
【0089】
1 車輪
2 タイヤ
3 ホイール
4 ハブ
5 ナックル
6 インホイールモータ
7 構造部材
7a 上側支持点
8 ナックル下側支持点移動装置(キングピン軸変更手段、第1下側支持点位置変更手段)
8a スライダーモータ
8b リニアスライド機構
8c 可動式ナックル下側支持部材
8d 下側支持点
9 ブレーキディスク
10 サブリンク
11 アッパーアーム
11a アッパーアーム中心線
11b アッパーアーム揺動軸
11c 回転軸
12 キングピン軸
13 転舵装置
13a ステアリングモータ
13b ウォームギアボックス
13c シャフト
14 可変長ロアアーム(キングピン軸変更手段、第2下側支持点位置変更手段)
14a シリンダモータ
14b シリンダ一体型アーム部材
14c ロッド
14d ロアアーム揺動軸
14e 締結軸
15 ショックアブソーバ
16 側面
17 キングピン軸が地面と交差する点
18 車体側支持点
19 転舵制御装置(転舵制御手段)
20 キングピン軸制御装置(キングピン軸制御手段)
21 ロアアーム車体支持点移動装置(第2下側支持点位置変更手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上側支持点と下側支持点とをそれぞれ懸架部材を介して車体に支持し、前記上側支持点を車輪の車幅方向内側の側面よりも内側に配置したナックルと、
前記上下支持点を結ぶキングピン軸が地面と交差する点とタイヤ接地点中心との距離であるキングピンオフセット量を変更する第1の自由度と、前記キングピン軸と鉛直線との角度であるキングピン傾斜角を変更する第2の自由度との2自由度を有し、前記下側支持点を前記側面よりも内側の位置と外側の位置との間で移動可能なキングピン軸変更手段と、
操舵状態に応じた目標転舵角に基づいて、前記車輪の転舵角を制御する転舵制御手段と、
前記目標転舵角に応じて前記キングピン軸変更手段を制御するキングピン軸制御手段と、
を備えることを特徴とする車両用操舵装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用操舵装置において、
前記キングピン軸制御手段は、前記目標転舵角が所定角度よりも小さい場合、前記キングピンオフセット量の絶対値を最小値とすることを特徴とする車両用操舵装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2記載の車両用操舵装置において、
前記キングピン軸制御手段は、前記目標転舵角が前記所定角度以上の場合、前記キングピン傾斜角を最小値とすることを特徴とする車両用操舵装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の車両用操舵装置において、
前記キングピン軸制御手段は、前記キングピンオフセット量および前記キングピン傾斜角の変更に伴うタイヤの車幅方向移動量であるスカッフ変化量を最小とすることを特徴とする車両用操舵装置。
【請求項5】
請求項1記載の車両用操舵装置において、
前記キングピン軸制御手段は、前記目標転舵角が所定時間経過後に前記所定角度以上になると予測される場合には、前記キングピン傾斜角をあらかじめ最小値とすることを特徴とする車両用操舵装置。
【請求項6】
請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の車両用操舵装置において、
前記キングピン軸変更手段は、
前記ナックルに対する前記下側支持点の位置を変更する第1下側支持点位置変更手段と、
前記車体に対する前記下側支持点の位置を変更する第2下側支持点位置変更手段と、
を備えることを特徴とする車両用操舵装置。
【請求項7】
請求項5に記載の車両用操舵装置において、
前記第2下側支持点位置変更手段は、前記車体に対する前記下側支持点の位置を変更する手段であることを特徴とする車両用操舵装置。
【請求項8】
請求項5に記載の車両用操舵装置において、
前記第2下側支持点位置変更手段は、前記車体に対する前記懸架部材の車体支持点の位置を変更する手段であることを特徴とする車両用操舵装置。
【請求項9】
請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載の車両用操舵装置において、
前記転舵制御手段は、前記車輪と前記懸架部材との干渉が予測される場合、前記目標転舵角に応じた前記車輪の転舵角を制限することを特徴とする車両用操舵装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2009−202606(P2009−202606A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−43675(P2008−43675)
【出願日】平成20年2月26日(2008.2.26)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】