説明

追従走行制御方法及び追従走行制御装置

【課題】専用スイッチを操作したりアクセルペダルに踏み換えたりすることなく、ドライバが発進意思を示し、この意思を検出した上で、先行車の発進に追従した追従走行制御の自動発進が行なえるようにし、ドライバの負担を大幅に軽減し、ブレーキングの遅れが生じたりしないようにする。
【解決手段】自車が走行停止状態に保持されているときに、先行車の発進後、ドライバがブレーキペダルの踏み増し又は踏み込みの操作で発進の意思を示すことにより、そのブレーキペダルの踏み増し又は踏み込みの操作を自車の発進操作として検出し、この発進操作の検出に基き、自車の追従走行制御の自動発進を許可し、ドライバにペダルの踏み換え等の負担をかけることなく、しかも、ブレーキングの遅れが生じたりしないようにして、ドライバの発進意思を検出した上で、先行車の発進に追従した追従走行制御の自動発進を行なう。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、先行車の発進に追従して自車を発進する追従走行制御方法及び追従走行制御装置に関し、詳しくは、ドライバの発進意思を確認して自車を自動発進する追従走行制御方法及び追従走行制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、追従走行制御により、車間距離を保ちつつ先行車に追従して自車を走行し、さらには、走行停止、発進する場合、先行車両が減速すれば、それに追従して自車も自動的に減速し、最終的には自動的に走行停止に至る。
【0003】
一方、低速での走行と走行停止とを繰り返すような環境は、多くの場合、歩行者、自転車、駐車車両等が存在する複雑な交通条件の環境であり、このような環境下においては、先行車が発進したときに自車をドライバの操作で発進するのであれば、ドライバは周辺の安全を十分確認した上でブレーキペダルの踏み込みを弱くする等の発進操作を行なう。
【0004】
同様の環境下において、追従走行制御により、先行車の発進に追従して自車を自動発進する場合、測距センサや画像センサなどを用いて周辺環境を検知し、それらの検知情報から安全と判断したときに、ドライバがブレーキペダルの踏み込みを弱めたり、そのペダルから足を外したりして、ブレーキペダルを踏んでいない状態になることを条件として自動的に自車を発進することが考えられるが、このようなセンサの検知情報による判断では、ドライバが発進する意思を明確に示したか否かは不明であり、ドライバの意思に反して自動発進する場合があり、また、歩行者の飛び出し等のドライバのいわゆる予感等に基く操作であれば避けられるような突発的な事態や、踏切での一旦停止のようなルールにしたがう必要がある事態等に対しても、適切に対応することができない。
【0005】
そこで、この種の追従走行制御においては、先行車の発進に追従して自車を走行停止から自動発進するときに、ドライバの発進意思を条件とし、ドライバ自身の判断によって自動発進を許可して発進することが提案され、この提案に沿った追従走行制御の自動発進を実現するため、従来、ドライバが発進意思を伝える手段として、専用の手動発進スイッチを設けたり、アクセルペダルを前記の手動発進スイッチの代わりに用いたりすることが提案され、さらには、エンジンの回転数や吸気圧、エンジン油圧の上昇の検出、アクセルペダルの踏み込みの検出、シフトレーバーがドライブポジションであることの検出、ドライブポジションでドライバがブレーキペダルから足を放したことの検出から、ドライバの発進意思を検出することも提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0006】
【特許文献1】特開2003−260957号公報(段落[0002]、[0003]、[0009]−[0011]、図6、図9、図10、図13、図16、図19、図22、図25)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記従来のように、ドライバが発進意思を示する手段として、専用の手動発進スイッチを設けたり、アクセルペダルを前記の手動発進スイッチの代わりに用いたりするのでは、発進する都度、その専用スイッチを操作したり、ブレーキペダルからアクセルペダルに踏み換えたりする必要があり、とくに、前記の低速での走行と停止を繰り返すような環境下では、本来は、安全確保の観点からブレーキペダルの操作のみで走行することが好ましいにもかかわらず、煩雑な専用スイッチの操作やペダルの踏み換え操作が頻繁に要求され、ドライバの負担が大きくなり、しかも、ペダルの踏み換えによるブレーキングの遅れが生じるおそれも生じる問題がある。
【0008】
また、前記従来のように、エンジンの回転数や吸気圧、エンジン油圧の上昇の検出、アクセルペダルの踏み込みの検出、シフトレバーがドライブポジションであることの検出、ドライブポジションでドライバがブレーキペダルから足を放したことの検出から、ドライバの発進意思を検出する場合も、発進する都度、ドライバはブレーキペダルからアクセルペダルに踏み換えたりする必要があり、前記と同様の問題がある。
【0009】
本発明は、専用スイッチを操作したりアクセルペダルに踏み換えたりすることなく、ドライバが発進意思を示し、この意思を検出した上で、先行車の発進に追従した追従走行制御の自動発進が行なえるようにし、ドライバの負担を大幅に軽減し、ブレーキングの遅れが生じないようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記した目的を達成するために、本発明の追従走行制御方法は、自車が走行停止状態に保持されているときに、先行車発進後の前記ブレーキペダルの踏み増し又は踏み込みの操作を自車の発進操作として検出し、前記発進操作の検出に基き、自車の追従走行制御の自動発進を許可することを特徴としている(請求項1)。
【0011】
また、本発明の追従走行制御方法は、自車が走行停止状態に保持されているときに、先行車発進後の前記ブレーキペダルの踏み増し又は踏み込みの操作、パーキングブレーキの解除操作の少なくともいずれか一方を自車の発進操作として検出し、前記発進操作の検出に基き、自車の追従走行制御の自動発進を許可することを特徴としている(請求項2)。
【0012】
つぎに、本発明の追従走行制御装置は、自車が走行停止状態に保持されているときの先行車の発進を検出する先行車発進検出手段と、前記先行車発進検出手段の先行車発進検出後のブレーキ圧の昇圧変化から前記ブレーキペダルの踏み増し又は踏み込みの操作を自車の発進操作として検出する自車発進操作検出手段と、前記自車発進許操作出手段の前記発進操作の検出に基き、自車の追従走行制御の自動発進を許可する自動発進許可手段とを備えたことを特徴としている(請求項3)。
【0013】
また、本発明の追従走行制御装置は、自車が走行停止状態に保持されているときの先行車の発進を検出する先行車発進検出手段と、前記先行車発進検出手段の先行車発進検出後のブレーキ圧の昇圧変化から前記ブレーキペダルの踏み増し又は踏み込みの操作を自車の発進操作として検出するブレーキペダル側の自車発進操作検出手段と、パーキングブレーキの解除操作を前記発進操作として検出するパーキングブレーキ側の自車発進操作検出手段と、前記両自車発進操作検出手段の少なくともいずれか一方の前記発進操作の検出に基き、自車の追従走行制御の自動発進を許可する自動発進許可手段とを備えたことを特徴としている(請求項4)。
【発明の効果】
【0014】
まず、請求項1、3の構成によれば、ドライバのブレーキペダルの操作や自動制動の作動によって自車が走行停止状態にあるときに、先行車の発進後、ドライバがブレーキペダルを踏み増し又は踏み込みして発進の意思を示すことにより、追従走行の自動発進が許可されて自車が自動発進する。
【0015】
この場合、ドライバはアクセルペダルを踏み込んだりすることなく、ブレーキペダルを操作して発進の意思を示すことができ、専用スイッチの操作やペダルの踏み換え操作等が不要であり、ドライバにペダルの踏み換え等の負担をかけることなく、しかも、ブレーキングの遅れが生じないようにして、ドライバの発進意思を検出した上で、先行車の発進に追従した追従走行制御の自動発進を行なうことができ、低速での走行と走行停止とを繰り返すような環境下等での追従走行制御の操作性、安全性等が著しく向上する。
【0016】
また、請求項2、4の構成によれば、前記と同様にして自車が走行停止状態に保持されているときに、先行車の発進後、ドライバがブレーキペダルを踏み増し又は踏み込みをするか、パーキングブレーキを解除操作するかして、発進の意思を示すことにより、追従走行の自動発進が許可されて自車が自動発進する。
【0017】
この場合も、専用スイッチの操作やペダルの踏み換え操作等は不要であり、ドライバのペダルの踏み換え等の負担なく、しかも、ブレーキングの遅れが生じないようにして、ドライバが発進の意思を示すことができ、その発進意思を検出した上で、先行車の発進に追従した追従走行制御の自動発進を行なうことができる。
【0018】
そして、ブレーキペダルの踏み増し又は踏み込みの操作だけでなく、パーキングブレーキの解除操作によっても発進の意思が示されて検出されるため、例えば、パーキングブレーキをかけて自車が走行停止状態に保持されているときに、先行車の発進後、ブレーキペダルの踏み増し又は踏み込みの操作をしなくても、パーキングブレーキを解除することでドライバの発進の意思を示して検出することができ、ドライバの負担を一層軽減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
つぎに、本発明をより詳細に説明するため、その一実施形態について、図1〜図4にしたがって詳述する。
【0020】
図1は車両(自車)1の追従走行制御装置のブロック図、図2は図1のブレーキユニットのブレーキ機構の油圧系統図、図3は図1の自動発進の追従走行制御説明用のフロチャート、図4は図1の自動発進説明用のタイミングチャートである。
【0021】
図1の追従走行制御装置のマイクロコンピュータ構成の制御ECU2は、自車1のエンジンスタート後、車速センサ3、測距センサ4、ブレーキランプセンサ5、ブレーキ圧センサ6、パーキングブレーキセンサ7、スロットル開度センサ8等の各種センサの時々刻々の検出信号を収集する。
【0022】
なお、車速センサ3はいわゆる車輪速センサからなり、自車1の車輪の回転を検出して自車速の検出信号を出力し、測距センサ4は自車1の前方を探査、撮影するレーザレーダ、単眼カメラ等からなり、レーザパルスの送受信時間差の検出、撮影画像処理等により、車両1と先行車等の前方障害物との距離を計測し、その計測信号を出力する。
【0023】
また、ブレーキランプセンサ5は、ブレーキペダルの踏み込み又は自動制動(自動ブレーキ)に基くブレーキランプのオン、オフを検出し、ドライバがブレーキペダルを踏み込むか、自動ブレーキが作動するかしてブレーキランプが点灯している間にブレーキランプ点灯信号を出力し、ブレーキ圧センサ6は、ブレーキユニット9に設けられた後述の液圧センサからなり、ブレーキペダルの踏み込み量、踏み込み速度の検出信号としてのブレーキ圧(液圧)の信号を出力する。
【0024】
さらに、パーキングブレーキセンサ7は、パーキングブレーキのオン/オフの検出信号を出力し、スロットル開度センサ8は、スロットルユニット10のアクセルスロットの開度を検出してその信号を出力する。
【0025】
つぎに、制御ECU2は、追従走行制御の各種プログラムを実行することにより、前記各種センサの信号に基き、先行車に追従して自車1を走行、停止、発進し、とくに、先行車の発進に追従して自車1が走行停止状態から発進するときには、自動発進制御のプログラムを実行することにより、つぎの(a)〜(e)のソフトウエア処理手段を備える。
【0026】
(a)先行車発進検出手段
この手段は、ブレーキペダルが踏まれるか自動ブレーキが作動するかして自車1が走行停止状態に保持されているときの先行車の発進を検出する。
【0027】
具体的には、車速センサ3の車速検出信号から自車1が走行停止状態か否かを判別し、ブレーキランプセンサ5、ブレーキ圧センサ6の信号から制動状態か否かを判別し、前記の自車1の走行停止状態の判別と、前記の制動状態の判別とから、ドライバによってブレーキペダルが設定圧以上で踏まれているか自動ブレーキが作動するかして自車1が走行停止状態に保持されているか否かを判別する。なお、前記の設定圧は、実験等に基き、誤検出が極力生じないように選定された適当なブレーキ圧である。
【0028】
さらに、自車1が走行停止状態に保持されている間に、測距センサ4の計測信号から自車1と先行車との車間距離の長距離側の変化を監視して先行車の発進を検出する。
【0029】
(b)ブレーキペダル側の自車発進操作検出手段
この手段は、前記の先行車発進検出手段が先行車の発進を検出した後、ブレーキ圧センサ6の検出信号からブレーキ圧の昇圧変化を監視してブレーキペダルの踏み増し又は踏み込みの操作を検出し、先行車発進検出後のブレーキペダルの踏み増し又は踏み込みを、ドライバの発進意思である自車1の発進操作として検出する。
【0030】
(c)パーキングブレーキ側の自車発進操作検出手段
この手段は、パーキングブレーキセンサ7の前記のオン/オフの検出信号から、パーキングブレーキがかけられている状態(オン状態)と、パーキングブレーキの解除(オフ)操作とを判別し、パーキングブレーキがかけられている状態中のパーキングブレーキの解除(オフ)操作を、ドライバの発進意思である自車1の発進操作として検出する。
【0031】
(d)自動発進許可手段
この手段は、前記両自車発進操作検出手段の少なくともいずれか一方の前記発進操作の検出に基き、ドライバの発進意思を検出・確認して自車1の追従走行制御の自動発進を許可する。
【0032】
(e)自動発進制御手段
この手段は、前記自動発進の許可に基き、パーキングブレーキが解除されてブレーキペダルの踏み込み又は自動ブレーキも解除されたときに、スロットルユニット10に徐々に大きくなるスロットル開度指令を与えて自車1を自動発進する。
【0033】
つぎに、ブレーキユニット9のブレーキ機構について、図2を参照して説明する。
【0034】
このユニット9はマイクロコンピュータ構成のブレーキECU及びこのECUによって動作するブレーキ機構(アクチュエータ)を備える。
【0035】
このブレーキ機構の右側の前、後輪の部分と、左側の前、後輪の部分とは同一構造であり、例えば、その右側の前、後輪の部分は図2に示すように構成される。
【0036】
ブレーキユニット9はマイクロコンピュータ構成のブレーキECU90及びこのECU90によって動作する油圧ポンプ式のブレーキ機構(アクチュエータ)を備え、ブレーキECU90は図1の制御ECU2のブレーキ制御にしたがって、そのブレーキ機構を制御し、通常のブレーキ制御、ブレーキアシスト制御或いは自動ブレーキの制御を行なう。
【0037】
前記ブレーキ機構の右側の前、後輪の部分と、左側の前、後輪の部分とは同一構造であり、例えば、その右側の前、後輪の部分は図2に示すように構成され、ブレーキECU90により、右側の前、後輪の部分及び左側の前、後輪の部分が同様に制御される。
【0038】
そして、ブレーキペダル91にブレーキブースタ92を介してマスタシリンダ93が連結され、このマスタシリンダ93にブレーキ液(ブレーキ油)を貯留したリザーバタンク94が接続されている。
【0039】
さらに、マスタシリンダ93に上流側流入幹路としての液圧経路901が接続され、ドライバのブレーキペダル91の踏み込み力に応じたブレーキ液圧が、マスタシリンダ圧として、液圧経路901を通ってリニアソレノイドの上流弁902に伝わり、この上流弁902は、ECU90により開閉量が制御される。
【0040】
そして、ブレーキペダル91の通常の踏み込み操作が発生すると、マスタシリンダ圧が、そのまま下流側流入幹路としての液圧経路903から、流入側接続点α、分岐した前側、後側の分岐経路904F、904Rを通って増圧バルブである前入力側、後入力側の下流弁905F、905Rに伝達され、さらに、前側、後側の分岐経路906F、906Rを介して、前輪11Fのホイルシリンダ12F、後輪11Rのホイルシリンダ12Rに伝わり、ブレーキペダル91の踏み込み圧に相当する制動力で自車1が走行停止(停車)する。
【0041】
なお、分岐経路906F、906Rに前側、後側の分岐経路907F、907Rを介して減圧バルブである前出力側、後出力側の下流弁908F、908Rが接続され、下流弁908F、908Rは、ブレーキ制御前は開放保持され、通常のブレーキ制御及びブレーキアシスト制御のときは閉状態になり、自動ブレーキ制御のときは開閉される。
【0042】
また、下流弁908F、908Rに前側、後側の分岐経路909F、909Rが接続され、両分岐経路909F、909Rは流出幹路としての液圧経路910の一端で結合され、この液圧経路910の他端は、流出側接続点βを介して加圧機構の油圧ポンプ911の吸入経路912に接続される。
【0043】
さらに、モータ913で駆動されるポンプ911の吐出側の加圧経路914は、ポンプ911側から順の逆止弁915、アキュムレータ916、圧力スイッチ917が設けられて流入側接続点αに接続され、さらに、液圧経路901のマスタシリンダ93側端部と流出側接続点βとの間に加圧液給液用の経路918が設けられ、この経路918に液圧経路901側から順の切替えバルブの上流弁919、逆止弁920が設けられている。
【0044】
そして、逆止弁915は流入側接続点αからポンプ911への逆流を阻止し、逆止弁720は流出側接続点βから経路918への逆流を阻止する。
【0045】
図2の921、922は液圧経路901、加圧経路914それぞれの圧力スイッチ等からなる圧力センサであり、マスタシリンダ圧、ブレーキアシスト圧を検出し、検出圧の信号を図1のECU2、図2のECU90に出力し、自車1が低速での走行と走行停止とを繰り返すような環境下等では通常のブレーキ制御(ブレーキペダル91の踏み込み)又は自動ブレーキの作動で自車1が走行停止状態になることから、圧力センサ921が図1のブレーキ圧センサ6を形成し、圧力センサ921のマスタシリンダ圧の検出信号が、ブレーキ圧センサ6のブレーキ圧の検出信号である。
【0046】
そして、ブレーキアシスト制御は、ドライバがブレーキペダル91を一定量以上、かつ、一定速度以上で急激に踏み込むことにより、マスタシリンダ圧の急激な昇圧変化に基いてECU2がECU90にブレーキアシストの介入を指令し、この指令に基き、ECU90がブレーキアシスト制御を実行することで行なわれる。
【0047】
このとき、モータ913を駆動するとともに上流弁919を開き、リザーバタンク94からマスタシリンダ93、経路918を介して油圧ポンプ911にアシスト加圧用のブレーキ液が送られ、油圧ポンプ911の吐出とアキュムレータ916の蓄圧とにより、ブレーキアシスト圧が形成され、このアシスト圧が設定された大きさになると、上流弁919が閉じられ、マスタシリンダ圧に一定のアシスト圧を加えた、マスタシリンダ圧+アシスト圧の大きな制御圧が、流入側接続点αから下流弁905F、905Rを介してホイルシリンダ12F、12Rに伝わり、マスタシリンダ圧のみの場合より大きなブレーキアシストの制動力で自車1が速やかに走行を停止する。
【0048】
また、自動ブレーキの制御は、例えば追従走行の自動運転の設定等に基き、図1の測距センサ4の検出信号から、制御ECU2が自車と先行車との車間距離の変化を認識して図2のECU90に自動ブレーキの制御を指令することにより行なわれ、車間距離が十分で衝突の可能性が低い状態で先行車が減速停止するときは、ECU90により、上流弁902の開閉量を調節しつつモータ913を駆動するとともに上流弁919が開かれ、車間距を一定に保つ適当な制御圧がホイルシリンダ12F、12Rに伝わり、自車1が先行車に追従して自動的に減速されて走行を停止する。なお、車間距離が極めて短くなって衝突の可能性が高いときは、上流弁902を閉じてモータ913が限界駆動され、急制動の制御圧がホイルシリンダ12F、12Rに伝わり、自車1に急制動がかかる。
【0049】
つぎに、先行車の発進に追従して自車1が走行停止状態から発進するときの追従走行制御方法について、図3、図4を参照して説明する。
【0050】
例えば、低速での走行と走行停止とを繰り返すような環境下、図4の(a)の先行車速度に示すように先行車が減速して走行を停止すると、このとき、例えば自動ブレーキの制御により、同図の(d)に示すように自動的に適当なブレーキ圧(制動圧)が発生し、同図の(b)に示すように自車速度が先行車に追従して減速する。
【0051】
そして、図4のT1時に自車1が走行を停止し、この停止後、同図の(c)に示すように、T2時からドライバがブレーキペダル91を踏み込むことにより、このT2時以降、自車1はブレーキペダル91が踏み込まれた走行停止状態に保たれる。
【0052】
なお、自動ブレーキが作動して自車1が停止したときは、その後、ドライバがブレーキペダル91を踏まなくても、自動ブレーキが解除されるまで、自車1は走行停止状態に保たれる。一方、ドライバがブレーキペダル91を踏み込むことで自車が減速・停止するときは、ドライバがブレーキペダル91を踏み続けることで自車1が走行停止状態に保たれる。
【0053】
そして、ブレーキペダル91の踏み込み又は自動ブレーキの作動によって自車1が走行停止状態に保持されると、制御ECU2が自動発進制御のプログラムを実行し、図3のステップS1により、検出手段先行車発進は自車1が走行停止状態に保たれているか否かを監視して判別する。
【0054】
また、図3のステップS2により、パーキングブレーキ側の自車発進操作検出手段が、パーキングブレーキセンサ7の検出信号から、自車1がパーキングブレーキがかけられている状態か否かを判別する。
【0055】
そして、パーキングブレーキがかけられていない場合、図3のステップS2からステップS3に移行し、先行車発進検出手段によって先行車の発進を監視し、図4のTa時に、同図の(a)に示すように先行車が発進すると、この先行車の発進の検出に基いて図3のステップS4に移行し、ブレーキペダル側の自車発進操作検出手段によってブレーキペダル91の踏み増し又は踏み込みの操作の発生を監視する。
【0056】
この監視中のTb時に、ドライバがブレーキペダル91を瞬時踏み増し又は踏み込みしてブレーキ圧の一定圧以上の昇圧変化を発生し、発進の意思を示すと、図3のステップS4からステップS5に移行し、自動発進許可手段が自車1の追従走行制御の自動発進を許可し、さらに、ステップS6に移行して自動発進制御手段が動作する。
【0057】
そして、前記の瞬時の踏み増し又は踏み込みの操作後、安全を確認したドライバがブレーキペダル91の踏み込みを止めてブレーキペダル91に足を軽く載せた状態にしたり、ブレーキペダル1から足を外したりして、ブレーキペダル91が踏み込まれていない状態になると、自動発進制御手段のスロットル開度指令に基き、図4のT3時に、同図の(b)に示すように自車1が自動発進する。
【0058】
ところで、自車1が走行停止状態に保たれたときにパーキングブレーキがかけられた場合は、図3のステップS2からステップS7に移行し、ステップS3と同様にして先行車の発進を監視・検出し、先行車の発進を検出すると、ステップS8に移行し、パーキングブレーキ側の自車発進操作検出手段によって、パーキングブレーキの解除(オフ)操作を監視し、この解除操作が発生すると、その解除操作をドライバの発進意思である自車1の発進操作として検出し、ステップS8からステップS5に移行して追従走行制御の自動発進を許可する。
【0059】
その後、パーキングブレーキが解除された状態でブレーキペダル91の踏み込みも解除された状態になると、図3のステップS5、S6により、前記と同様にして自車1が自動発進する。
【0060】
したがって、ドライバがブレーキペダル91を踏むか自動ブレーキが作動するかして自車1が走行停止状態に保持されているときに、先行車の発進後、ドライバがブレーキペダル91を踏み増し又は踏み込みするか、パーキングブレーキを解除操作するかして、発進の意思を示すことにより、追従走行の自動発進が許可されて自車1が自動発進する。
【0061】
この場合、専用スイッチの操作やブレーキペダル91からアクセルペダルへのペダルの踏み換え操作等は不要であり、ドライバにペダルの踏み換え等の負担をかけることがなく、しかも、ブレーキングの遅れが生じることもなく、例えば歩行者の飛び出し等の事態が発生しても直ちにいわゆるオーバライドブレーキングできる状況を維持するようにして、ドライバは発進の意思を示すことができ、この発進意思を検出した上で、先行車の発進に追従した追従走行制御の自動発進を行なうことができ、操作の煩雑さや違和感がなく、追従走行の操作性、安全性が極めて高い自動発進を実現することができる。
【0062】
さらに、この実施形態の場合、ブレーキペダル91の踏み増し又は踏み込みの操作だけでなく、パーキングブレーキの解除操作によっても発進の意思が示されて検出されるため、例えば、自動ブレーキの作動によって停止した後パーキングブレーキをかけて自車1が走行停止状態に保持されているときに、先行車の発進後、ブレーキペダル91の踏み増しや踏み込みの操作をすることなく、パーキングブレーキを解除することで自車1を自動発進することができ、ドライバの負担を一層軽減することができる利点がある。
【0063】
そして、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。
【0064】
例えば、図1の制御ECU2に、ブレーキペダル側の自車発進操作検出手段、パーキングブレーキ側の自車発進操作検出手段に代えて、先行車発進検出手段の先行車発進検出後のブレーキ圧の昇圧変化からブレーキペダル91の踏み増し又は踏み込みの操作を自車の発進操作として検出する自車発進操作検出手段を設け、パーキングブレーキの解除による意思表示を省き、自動発進許可手段により、自車発進許操作出手段の発進操作の検出に基いて自車1の追従走行制御の自動発進を許可するようにしてもよく、この場合は、自動発進制御のプログラムの実行により図3のステップS1、S3〜S6の処理のみが行なわれ、この場合は、ドライバの発進の意思がブレーキペダル91の踏み増し又は踏み込みの操作のみによって示されることになるが、自動発進制御のプログラムやその処理が簡単になり制御ECU2の処理負担が軽減される等の利点がある。
【0065】
そして、ブレーキ機構の構成や自動発進制御のプログラムや手順等は、どのようであってもよく、前記実施形態の構成等に限られるものではなく、種々の追従走行制御の自動発進に適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0066】
ところで、自車1の装備部品数を少なくするため、例えば図1の車速センサ3、測距センサ4等を他の制御のセンサに兼用する場合にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】この発明の一実施形態のブロック図である。
【図2】図1のブレーキユニットのブレーキ機構の詳細なブロック図である。
【図3】図1の自動発進の追従走行制御説明用のフローチャートである。
【図4】図1の自動発進の追従走行制御説明用のタイミングチャートである。
【符号の説明】
【0068】
1 自車
2 制御ECU
9 ブレーキユニット
91 ブレーキペダル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車が走行停止状態に保持されているときに、先行車発進後の前記ブレーキペダルの踏み増し又は踏み込みの操作を自車の発進操作として検出し、
前記発進操作の検出に基き、自車の追従走行制御の自動発進を許可することを特徴とする追従走行制御方法。
【請求項2】
自車が走行停止状態に保持されているときに、先行車発進後の前記ブレーキペダルの踏み増し又は踏み込みの操作、パーキングブレーキの解除操作の少なくともいずれか一方を自車の発進操作として検出し、
前記発進操作の検出に基き、自車の追従走行制御の自動発進を許可することを特徴とする追従走行制御方法。
【請求項3】
自車が走行停止状態に保持されているときの先行車の発進を検出する先行車発進検出手段と、
前記先行車発進検出手段の先行車発進検出後のブレーキ圧の昇圧変化から前記ブレーキペダルの踏み増し又は踏み込みの操作を自車の発進操作として検出する自車発進操作検出手段と、
前記自車発進許操作出手段の前記発進操作の検出に基き、自車の追従走行制御の自動発進を許可する自動発進許可手段とを備えたことを特徴とする追従走行制御装置。
【請求項4】
自車が走行停止状態に保持されているときの先行車の発進を検出する先行車発進検出手段と、
前記先行車発進検出手段の先行車発進検出後のブレーキ圧の昇圧変化から前記ブレーキペダルの踏み増し又は踏み込みの操作を自車の発進操作として検出するブレーキペダル側の自車発進操作検出手段と、
パーキングブレーキの解除操作を前記発進操作として検出するパーキングブレーキ側の自車発進操作検出手段と、
前記両自車発進操作検出手段の少なくともいずれか一方の前記発進操作の検出に基き、自車の追従走行制御の自動発進を許可する自動発進許可手段とを備えたことを特徴とする追従走行制御装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2006−123853(P2006−123853A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−317904(P2004−317904)
【出願日】平成16年11月1日(2004.11.1)
【出願人】(000002967)ダイハツ工業株式会社 (2,560)
【Fターム(参考)】