説明

通信端末

【課題】GPSにより取得した測位データを選別可能な通信端末を提供する。
【解決手段】測位ポイントPnで測位した後(S25)、前回、取得した有効な測位ポイントPaと、今回測位したPnとの距離差Ldを算出する(S26)。算出した距離差Ldが、移動体の限界移動距離L以下のときに、測位ポイントの測位データを有効と判断し(S27にてYES)、地図上へのロギングをする(S32)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信端末に関し、特に、公衆回線網と接続された無線基地局と無線通信する無線通信手段と、GPS(Global Positioning System)衛星からの測位用電波を受信するGPS受信手段とを備える通信端末に関する。
【背景技術】
【0002】
通話機能の他に、GPS衛星からの測位用電波を受信して現在位置を特定する機能を備える通信端末が開発されている。
【0003】
特許文献1には、GPSを利用して移動車両等の位置情報を時刻とともに逐次メモリカードに記憶する通信端末が開示されている。
【0004】
特許文献2には、GPSを利用して取得した位置情報をセンターシステムへ送信する移動端末が開示されている。さらに、特許文献2には、その位置情報に基づいて移動端末周辺の地域情報を検索し、検索結果を移動端末へ送信するセンターシステムが開示されている。
【0005】
また、市場には、現在位置を定期的に取得して、地図上に移動体の移動軌跡をプロットする移動履歴表示機能を備える携帯電話機が投入されている。
【特許文献1】特開2002−267468号公報
【特許文献2】特開2004−236125号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
無線基地局と通信端末との間で行なわれる無線通信は、測位用電波の受信に影響を与える。このため、通信端末の所持者が移動履歴表示機能を利用しつつ歩行している最中に、通信端末で電子メールを着信するなどしたときには、GPSにより取得する測位データが大幅に狂ってしまう。
【0007】
図9は、この問題を具体的に示す移動履歴の一例である。ここには、通信端末を携帯して山頂に向かう人の移動履歴が示されている。山頂へと向かう軌跡のうち、図面右方向へ大きく外れている部分は、無線通信の影響によって測位データに誤りが生じた部分である。
【0008】
このように、従来の通信端末では無線通信の影響によって誤りが生じた測位データについても、そのまま採用して移動履歴等へ反映していたために、トラックログが大幅に狂ってしまうという問題があった。
【0009】
本発明は、係る実情に鑑み考え出されたものであり、その目的は、GPSにより取得した測位データを選別可能な通信端末を提供することである。
【0010】
本発明の他の目的は、GPSにより取得した測位データのうち、有効な測位データを保存可能な通信端末を提供することである。
【0011】
本発明の他の目的は、GPSにより取得した測位データのうち、有効な測位データに基づいて移動軌跡を表示し、さらに、無効な測位データであるために軌跡を描くことができない部分を補完可能な通信端末を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明のある局面に従うと、通信端末は、公衆回線網と接続された無線基地局と無線通信する無線通信手段と、GPS衛星からの測位用電波を受信するGPS受信手段と、該GPS受信手段が受信した測位用電波に基づいて現在位置を測位する測位手段と、該測位手段の測位により得られた測位データが有効であるか否かを判定する判定手段と、該判定手段により有効と判定された測位データを所定の記憶手段に記憶させる記憶制御手段とを備え、前記判定手段は、有効と判定した前回の測位データが示す第1の位置と前記測位手段による今回の測位により得られた測位データが示す第2の位置との距離差、移動体の移動速度、および前記第1の位置から前記第2の位置までの移動に要した移動時間に基づいて、前記測位手段による今回の測位により得られた測位データが有効であるか否かを判定する。
【0013】
好ましくは、前記通信端末は、表示手段と、該表示手段に地図を表示するとともに前記判定手段により有効と判定された測位データに基づいて前記地図上に移動軌跡を表示する表示制御手段とをさらに備える。
【0014】
好ましくは、前記表示制御手段は、前記判定手段により有効と判定された第1の測位データに基づく地図上の第1のポイントと、前記判定手段により有効と判定された第2の測位データに基づく地図上の第2のポイントとを結ぶ移動軌跡を描くときに、前記第1の測位データを前記判定手段が判定してから前記第2の測位データを前記判定手段が判定するまでの間に、前記判定手段が無効と判定した測位データが存在するときと、存在しないときとで、前記第1および前記第2ポイント間を結ぶ移動軌跡の表示態様を異ならせる。
【0015】
好ましくは、前記通信端末は、前記判定手段により連続して所定回数無効判定されたときにエラー報知するエラー報知手段をさらに備える。
【0016】
好ましくは、前記通信端末は、前記移動速度を設定するための操作を検出する第1操作検出手段と、該第1操作検出手段の検出に基づいて前記移動速度を設定する移動速度設定手段と、前記測位手段の測位タイミングを設定するための操作を検出する第2操作検出手段と、該第2操作検出手段の検出に基づいて前記測位手段の測位タイミングを設定する測位タイミング設定手段とをさらに備える。
【0017】
好ましくは、前記通信端末は、前記記憶手段を格納するための格納部をさらに備える。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、GPSにより取得した測位データを判別手段の働きによって選別可能となる。あるいは、また、判別手段の働きによって有効と判定された測位データを保存し、無効と判定された測位データを破棄することも可能となる。あるいは、また、GPSにより取得した測位データのうち、有効な測位データに基づいて移動軌跡を表示し、さらに、無効な測位データであるために軌跡を描くことができない部分を補完可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。
図1は、通信端末の一例となる携帯電話機1の斜視図である。携帯電話機1は、主に、第1の筐体2と第2の筐体4とから構成される。
【0020】
第1の筐体2には、突出部8が取付けられている。突出部8には、ヒンジ部3が、当該突出部8の左右両端と接続されるように、軸A1を回転軸として回動可能に取付けられている。ヒンジ部3には、第2の筐体4が、当該ヒンジ部3に対して軸A2を回転軸として回動可能に取付けられている。
【0021】
第1の筐体2には、その主面に、ユーザが電話番号等の情報を入力するための機能ボタ
ン群6および入力ボタン群9が設けられ、さらに、後述するマイク(マイク11)に音声を入力するための第1のマイク孔11A、および、第2のマイク孔11Bが設けられている。また、第1の筐体2の側面には、後述するカメラ(カメラ18)のシャッタボタン12およびLED(light emitting diode)36が設けられている。
【0022】
第2の筐体4には、その主面に、ほぼ長方形状の第1表示部14およびレシーバ孔15が備えられている。
【0023】
図2は、携帯電話機1が折り畳まれた状態を示す図である。携帯電話機1は、図1の状態に比較して、ヒンジ部3が軸A1に沿って回動されることにより、第2の筐体4と第1の筐体2とが対向する状態となっている。
【0024】
また、図3は、携帯電話機1の、図2に示された状態の裏面を示す図である。なお、図2および図3に示された状態に対して、図1に示された携帯電話機1の状態を、「開かれた状態」と呼ぶ。
【0025】
図2および図3に示されるように、携帯電話機1が折り畳まれた状態では、第1の筐体2と第2の筐体4とは、その主面同士が当接している。
【0026】
そして、特に図3に示されるように、第1の筐体2の主面の裏面には、第2表示部20、後述するカメラ(カメラ18)の撮影レンズ18A、当該カメラの撮影に利用されるフラッシュ19、および、スピーカ孔21が設けられている。
【0027】
図4は、携帯電話機1の構成を示すブロック図である。図4を参照して、携帯電話機1は、当該携帯電話機1の動作を全体的に制御する制御部10を備える。制御部10は、制御用プログラムに基づいて携帯電話機1を制御するCPU101(Central Processing Unit)、制御用プログラムを予め記憶するROM(Read only memory)102、CPU101による演算結果を一時記憶するRAM(Random Access Memory)103を備える。
【0028】
さらに、携帯電話機1は、アンテナ30と、アンテナ30を介して携帯電話用の基地局との無線通信を行なう無線通信部31と、アンテナ40と、アンテナ40を介してGPS衛星から測位用電波を受信するGPS受信部41と、スピーカ22と、マイク11と、写真あるいは動画撮影のためのカメラ18と、第1表示部14と、第2表示部20と、第2の筐体4に内蔵され携帯電話機1の傾き度合いを検出する傾き検出部(加速度センサ)5と、方位を検出する方位検出部(磁気センサ)37と、機能ボタン群6と、入力ボタン群9と、第1の筐体2内に内蔵され着信時に第1の筐体2を振動させるためのバイブレータ35と、地図データその他のデータを格納する内部メモリ107と、外部メモリ39を収容するスロット部30とを備える。
【0029】
スピーカ22は、アンテナ30を介して受信した音声(電話における通話相手から送られる音声等)、および、ROM102に記憶された音声データに基づいた音声(着信音等)を出力する。前者の音声は、主に、レシーバ孔15を介して出力され、後者の音声は、主に、スピーカ孔21を介して出力される。
【0030】
携帯電話機1は、GPSを利用して定期的に現在位置を測位し、その位置を第1表示部14の地図上に表示する移動履歴表示機能を備える。特に、本実施の形態に関わる携帯電話機1の特徴は、新たに取得された測位データが、有効なデータであるか否かを判別する判別手段を備える点にある。
【0031】
たとえば、現在、移動している地図上の位置に対して、大幅に外れた位置が測位されたときには、無効なデータであると判別して、そのデータを破棄する。これにより、たとえば、GPSによる測位中に、携帯電話用の基地局との無線通信が生じたことで、異常値を示すこととなった測位データは、移動履歴に反映されることがない。
【0032】
本実施の形態に関わる携帯電話機1のさらなる特徴は、そのようにして、移動履歴に反映されることがなかった移動履歴部分を補完する機能を備える点にある。これにより、異常な測位データが取得された地点のみ、移動経路が不自然に途切れて第1表示部14に表示されてしまうことを防止できる。
【0033】
携帯電話機1の測位データ判別手法および移動履歴表示手法は、概ね、次のとおりである。まず、移動体の移動限界速度および測位時間間隔を設定しておく。そして、前回、取得された有効な測位データと、今回、取得された測位データとから距離差を算出する。算出した距離差が、予め算出される移動限界距離以内であれば、今回、取得された測位データを有効、移動限界距離を超える場合にはその測位データを無効と判別する。
【0034】
取得された測位データが有効であれば、その地点に対応する地図上の位置をプロットし、前回、取得された有効な測位データに対応するプロット位置とを線で結ぶ。取得された測位データが無効であれば、そのデータを破棄して次回の測位タイミングまで待機する。そして、測位タイミングになった段階で、上記の判別を繰り返す。なお、移動限界距離は、有効な測位が連続する限りは、予め設定した移動限界速度と測位時間間隔との積によって算出される固定値である。
【0035】
図5は、携帯電話機1に記憶された移動履歴表示モードを説明するための図である。携帯電話機1のROM102には、移動履歴表示モードとして、モード1〜モード4の複数種類のモードが予め記憶されている。各モードでは、設定される移動限界速度Vaが異なる。
【0036】
モード1は、概ね徒歩かあるいはランニングによる移動を想定したモードである。モード1では、移動限界速度が10m/秒に設定される。モード2は、概ね自転車による移動を想定したモードである。モード2では、移動限界速度が20m/秒に設定される。モード3は、概ね自動車による移動を想定したモードである。モード3では、移動限界速度が60m/秒に設定される。モード4は、移動限界速度を利用者が直接入力できるモードである。モード4では、入力ボタン群9の操作に応じた移動限界速度が設定される。
【0037】
携帯電話機1のROM102には、各モードに応じた移動限界速度Vaが記憶されている。ただし、モード4については、利用者によって入力された値が移動限界速度として設定される。
【0038】
図5において、移動限界距離Laは、移動限界速度Vaと、測位時間間隔Tiとに基づいて、算出されるデータである。測位時間間隔Tiは、利用者による入力ボタン群9の操作によって1秒単位で任意時間に設定される。図5では、測位時間間隔の例として、1秒、2秒、60秒が示されている。ただし、これに代えて、予め携帯電話機1に記憶された複数種類のTiの中から選択操作可能にしてもよい。
【0039】
携帯電話機1の制御部101は、設定されたモードと測位時間間隔Tiとに基づいて、移動限界距離Laを演算し、演算結果を記憶する。たとえば、設定されたモードがモード2で、設定された測位時間間隔Tiが60秒であれば、移動限界距離La=1200(20×60)メートルとする。
【0040】
図6は、設定処理を説明するためのフローチャートである。制御部101は、以下の手順で移動履歴表示モードの設定をする。まず、携帯電話機1のメニュー画面から移動履歴表示モードを呼び出す操作を行なうことによって、モード1〜モード4の選択画面が第1表示部14に表示される(S1)。次に、選択操作が検出されたか否かが判断される(S2)。
【0041】
利用者がいずれかを選択する操作をすることによって、表示画面が、測位時間間隔の入力待ち画面に切換わる。ただし、モード4が選択されたときには、測位時間間隔の入力待ち画面に切換わる前に、移動限界速度の入力待ち画面に切換わる。そして、移動限界速度が入力されることによって、移動限界速度が設定されるとともに、測位時間間隔の入力待ち画面に切換わる。
【0042】
具体的には、モード1が選択されたときには、S3でYESと判断されて、移動限界速度Vaが10(m/秒)に設定される(S4)。モード2が選択されたときには、S5でYESと判断されて、移動限界速度Vaが20(m/秒)に設定される(S6)。モード3が選択されたときには、S7でYESと判断されて、移動限界速度Vaが60(m/秒)に設定される(S8)。モード4が選択されたときには、S3、S5、S7のいずれにおいてもNOと判断されて、移動限界速度の入力待ち画面に切換わる。そして、ここで、入力された値に応じて移動限界速度Vaが設定される(S9)。
【0043】
S4、S6、S8、またはS9の後、測位時間間隔の入力待ち画面に第1表示部14が切換わる(S10)。測位時間間隔の入力画面では、たとえば、1秒単位で利用者が自由に測位時間間隔を入力できる。利用者が測位時間間隔の入力を終えると、S11でYESと判断されて、入力された値が測位時間間隔Tiとして設定される(S12)。続いて、設定された移動限界速度Vaと測位時間間隔Tiとに基づいて、移動限界速度Laが設定される(S13)。以上により、移動履歴表示モードの設定処理が終了する。
【0044】
その後、第1表示部14の画面が測位開始の操作を待つスタート画面に切換わる。測位開始操作が検出されると、原点、すなわち、現在位置の測位が開始されて、その測位データに基づく位置が第1表示部14の表示画面の地図上に表示される。その後、設定された測位時間間隔で自動的に測位が行なわれるとともに、移動履歴が更新される。
【0045】
図7は、ログ処理を説明するためのフローチャートである。また、図8は、ログ処理によって携帯電話機1の表示部に表示される移動履歴の一例を示す図である。図8において、P0〜P5,P8,P9は、画面図における測位ポイントを説明するための参照用符号である。したがって、実際の画面上にはこれらの符号は表示されない。ただし、このような符号を実際に画面上に表示するようにしてもよい。
【0046】
図7を参照して、最初に初期化処理がなされる(S21)。具体的には、測位時間間隔を計時するためのタイマtと、連続エラー発生回数をカウントするためのカウンタMとが0に設定される。また、測位ポイントPnを更新するためのカウンタnが1に設定される。さらに、移動限界距離Lとして、Laが設定される。なお、Laは、図5に示されるとおり、設定されたモードに対応する移動限界速度Vaと、設定された測位時間間隔Tiとに基づいて算出された値である。さらに、補完フラグがOFFに設定される。補完フラグは、測位データが無効であると判断されたときにONに設定されるフラグである。
【0047】
次に、原点P0の測位処理、測位データのフォーマット変換処理、変換された測位データの記憶処理、地図へのロギング処理、およびPaのセット処理がなされる(S22)。ここで、原点P0とは、移動履歴表示をするときの最初の測位ポイントである。原点P0の測位処理は、測位開始操作が検出されることに基づいて、GPS衛星から測位用電波を受信し、現在位置を測位する処理である。
【0048】
取得された測位データは、WGS−84座標系による座標データである。フォーマット変換処理は、WGS−84座標系による座標データを、携帯電話機1が記憶する地図データに対応する公共座標系の座標データに変換する処理である。
【0049】
記憶処理は、変換後の座標データを、内部メモリ107若しくは外部メモリ39、またはその両方のメモリに記憶させる処理である。
【0050】
ロギング処理は、変換後の座標データに対応する座標位置を含む地図データを内部メモリ107または外部メモリ39から読出し、その地図データ上に原点P0をプロットした画像を表示部に表示する処理である。なお、地図データは、たとえば、アンテナ30および無線通信部31を介して任意のサーバからダウンロードする。あるいは、地図データが記憶された外部メモリ39をスロット部38にセットしてもよい。
【0051】
Paのセット処理は、Paとして、原点P0の測位データをセットする処理である。このPaは、移動限界距離との比較対象となる距離差Ldを算出する際の起点側測位ポイントとなる。
【0052】
次に、tが測位時間間隔Tiに達しているか否かが判断される(S23)。そして、tが測位時間間隔Tiに達するまで、S23の処理が繰り返し実行される。
【0053】
S23において、tが測位時間間隔Tiに達していると判断されたときには、tが0にリセットされた後(S24)、GPSを利用して現在位置Pnが測位される(S25)。続いて、現在位置Pnと前回の測位ポイントPaとの距離差Ldが算出される(S26)。
【0054】
たとえば、S25において、P1が測位されたと仮定する。すると、S26では、原点P0とP1との距離差Ldが算出されることになる。
【0055】
続いて、算出された距離差Ldが、移動限界距離L以下であるか否かが判断される(S27)。距離差Ldが、移動限界距離L以下であるときには、Pnが地図データに対応する公共座標系の座標データに変換され、メモリに記憶される(S28)。この処理は、S21で行なわれるフォーマット変換処理および記憶処理と同様である。
【0056】
続いて、補完フラグがONしているか否かが判断される(S29)。上記のとおり補完フラグは、前回の測位結果が無効と判定されたときにONに設定されるフラグである。たとえば、今回の測位ポイントがP1であれば、前回の測位ポイントが原点P0であるため、S29ではNOと判断される。この場合には、ロギング処理が行なわれる(S32)。これにより、今回の測位ポイントPnに対応する地図上の個所がプロットされ、前回の測位ポイントPaと、今回の測位ポイントPnとが線で接続される。次に、今回、有効な測位ポイントとして計測されたPnの測位データがPaとしてセットされる(S37)。
【0057】
次に、移動履歴表示の処理を停止させる操作が検出されたか否かが判断される(S38)。移動履歴表示の処理を停止させる操作が検出されないときには、nが1だけ加算される(S39)。これにより、次回の測位ポイントが更新される。続いて、再び、S23以降の処理が繰り返される。
【0058】
ここで、測位ポイントP1〜P5まで有効な測位結果が得られた後、P6およびP7の測位が基地局電波等の影響を受け、P8の測位で再び、有効な測位結果が得られるような場合について説明する。
【0059】
図8は、このような測位状態における移動履歴の一例を示している。なお、以下の説明では、モードがモード1に設定され、かつ、測位時間間隔Tiが60秒に設定されているものとする。したがって、図5によれば、移動限界距離Laは、600メートルである。
【0060】
この場合、P6の測位結果に異常が生じるため、距離差Ldが移動限界距離L(600)を超える。したがって、S27において、NOと判断される。そして、連続エラー発生回数をカウントするためのカウンタMに1が加算される(S33)。
【0061】
続いて、Mが予め定めた最大値Mmax以上であるか否かが判断される(S34)。MがMmax以上でなければ、移動限界距離Lが「L+La」に更新され、さらに、補完フラグがONに設定される(S35)。たとえば、モード1で測位時間間隔Tiが60のときには、移動限界距離Lが「600+600=1200」に更新される。
【0062】
このように移動限界距離Lを当初のLaの2倍に更新するのは、次回の測位ポイントP7との距離差Ldを算出するときの基準点(起点)Paが、P5だからである。つまり、前回、有効と判断された測位ポイントP5で測位が行なわれてから、測位ポイントP7で測位が行なわれるまでの経過時間が、測位時間間隔Tiの2倍になるため、これに併せて移動限界距離Lを補正するのである。
【0063】
S35の後、S38でNOと判断されることによって、nが更新される(S39)。これにより、次回の測位ポイントがP7に更新される。そして、tがTiに達した段階で、P7が測位される(S25)。そして、S26では、P7とPa(P5)との距離差Ldが算出される。ここで、Paは、P5である。続いて、その距離差LdがL(ここでは1200)以下であるか否かが判断される。P7の測位においてもなお電波障害を受けているときには、LdはLをはるかに超える値となっている。このため、S27でNOと判断されて、Mが加算される(S34)。
【0064】
続いて、MがMmax以上であるか否かが判断される(S34)。たとえば、Mmaxが2に設定されているときには、今回のケースでは、YESと判断されて表示部にエラー表示がなされる(S36)。そして、これ以降、新たな測位は行なわれない。このように、携帯電話機1では、Mmaxに設定される回数だけ連続して測位結果に異常が発生したときには、エラー報知がなされる。そのため、利用者は、測位に支障が生じていることを理解できる。
【0065】
なお、エラー報知方法としては、画面表示に限られるものではない。画面表示に代えて、あるいはこれに加えて、スピーカから報知音を発生させたり、あるいは、バイブレータ114を動作させて本体を振動させてもよい。また、Mmaxとして設定する値としては2以上の任意の値でよい。
【0066】
または、Mmaxを1に設定して、1回でも異常な測位データが得られたときには、その都度、報知をしてもよい。あるいは、Mmaxを1に設定したとき、あるいは、2以上の値に設定したときには、報知動作をした後、S38に処理が以降するようにして、報知がされるものの、利用者による停止操作が検出されない限りは、移動履歴の作成が継続されるようにしてもよい。
【0067】
さて、Mmaxが2を超える値のときには、P6に続いてP7の測位データが異常値のときでも、S34でNOと判断される。したがって、S35において、Lが更新され、補完フラグがONに設定される。具体的には、Lが「1200+600=1800」に更新される。なお、次回の測位ポイントP8との距離差Ldを算出するときの基準点(起点)Paは、依然、P5のままである。
【0068】
その後、同様の手順で測位ポイントP8について測位され(S25)、P8とP5との距離差Ldが算出される(S26)。続いて、算出された距離差Ldと移動限界距離L(1800)とが比較される(S27)。ここで、P8の測位の時点で電波障害が回復しているならば、その測位データは正確な位置を示すデータである。
【0069】
したがって、設定された移動限界速度以内で移動体が移動を続けている限り、S27では、YESと判断される。この場合、S28に進んでP8の測位データについて、フォーマット変換処理およびメモリへの記憶処理がなされる。続いて、S29では、補完フラグがONと判断される。このため、ロギング補完処理が実行される(S30)。
【0070】
ロギング補完処理では、P5とP8との間の測位ポイントで有効な測位ができなかったために、その測位ポイントを含む移動履歴の表示を補完する処理が実行される。具体的には、P5とP8とが線で連結される。ただし、連続して有効な測位データが得られた測位ポイントP0−P1、P1−P2、P3−P4の各々を連結する線よりも太い線でP5とP8とが連結される。これにより、P5−P8間での測位に異常が発生していること、およびその間の線が補完機能により描かれたものであることが利用者に示される。なお、補完された部分であることを示す表示態様は太線に限られるものではない。たとえば、線の色を異ならせるようにしてもよく、あるいは、線種を破線にするなどしてもよい。
【0071】
S30でロギング補完処理が実行された後、移動限界距離Lが初期値La(600)に戻され、Mが0にリセットされ、さらに補完フラグがOFFに設定される(S31)。続いて、Paが有効な測位データが得られたP8に更新される(S37)。
【0072】
その結果、次回、測位ポイントP9が測位されたときには、P9とP8との距離差Ldと、移動限界距離600とが比較される(S27)。以下、上記と同様の処理が繰り返し実行される。
【0073】
やがて、停止操作が検出されると、S38でYESと判断されてログ処理が終了する。
以上、説明したように、本実施の形態によれば、現在位置の測位中に、基地局との無線通信が発生して、測位データに狂いが生じた場合でも、その前後の有効な測位データが取得された測位ポイントのデータに基づいた移動履歴の補完が可能となる。その結果、地図上でのデータの飛びを回避可能となる。
【0074】
図6および図7に示すアルゴリズムをコーディングして、生成されたプログラムを提供することも可能である。このようなプログラムは、コンピュータ読取り可能な記録媒体に記録して、プログラム製品として提供することも可能である。なお、この種の記録媒体としては、CD−ROMに限られるものではなく、コンピュータに付属するフレキシブルディスク、CD−ROM、あるいはメモリカードなどであってもよい。また、ネットワークを介したダウンロードによって、このようなプログラムを提供することもできる。
【0075】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】携帯電話機の斜視図である。
【図2】携帯電話機が折り畳まれた状態を示す図である。
【図3】携帯電話機の裏面を示す図である。
【図4】携帯電話の構成を示すブロック図である。
【図5】移動履歴表示モードを説明するための図である。
【図6】設定処理を説明するためのフローチャートである。
【図7】ログ処理を説明するためのフローチャートである。
【図8】移動履歴の一例を示す画面図である。
【図9】従来の移動履歴の一例を示す画面図である。
【符号の説明】
【0077】
1 携帯電話機、10 制御部、30 アンテナ、31 無線通信部、40 アンテナ、41 GPS受信部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
公衆回線網と接続された無線基地局と無線通信する無線通信手段と、
GPS衛星からの測位用電波を受信するGPS受信手段と、
該GPS受信手段が受信した測位用電波に基づいて現在位置を測位する測位手段と、
該測位手段の測位により得られた測位データが有効であるか否かを判定する判定手段と、
該判定手段により有効と判定された測位データを所定の記憶手段に記憶させる記憶制御手段とを備え、
前記判定手段は、有効と判定した前回の測位データが示す第1の位置と前記測位手段による今回の測位により得られた測位データが示す第2の位置との距離差、移動体の移動速度、および前記第1の位置から前記第2の位置までの移動に要した移動時間に基づいて、前記測位手段による今回の測位により得られた測位データが有効であるか否かを判定する、通信端末。
【請求項2】
表示手段と、
該表示手段に地図を表示するとともに前記判定手段により有効と判定された測位データに基づいて前記地図上に移動軌跡を表示する表示制御手段とをさらに備える、請求項1に記載の通信端末。
【請求項3】
前記表示制御手段は、前記判定手段により有効と判定された第1の測位データに基づく地図上の第1のポイントと、前記判定手段により有効と判定された第2の測位データに基づく地図上の第2のポイントとを結ぶ移動軌跡を描くときに、前記第1の測位データを前記判定手段が判定してから前記第2の測位データを前記判定手段が判定するまでの間に、前記判定手段が無効と判定した測位データが存在するときと、存在しないときとで、前記第1および前記第2ポイント間を結ぶ移動軌跡の表示態様を異ならせる、請求項2に記載の通信端末。
【請求項4】
前記判定手段により連続して所定回数無効判定されたときにエラー報知するエラー報知手段をさらに備える、請求項1〜請求項3のいずれかに記載の通信端末。
【請求項5】
前記移動速度を設定するための操作を検出する第1操作検出手段と、
該第1操作検出手段の検出に基づいて前記移動速度を設定する移動速度設定手段と、
前記測位手段の測位タイミングを設定するための操作を検出する第2操作検出手段と、
該第2操作検出手段の検出に基づいて前記測位手段の測位タイミングを設定する測位タイミング設定手段とをさらに備える、請求項1〜請求項4のいずれかに記載の通信端末。
【請求項6】
前記記憶手段を格納するための格納部をさらに備える、請求項1〜請求項5のいずれかに記載の通信端末。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−155493(P2007−155493A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−350911(P2005−350911)
【出願日】平成17年12月5日(2005.12.5)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】