説明

配線基板及びその製造方法

【課題】 ホイスカの発生がなくて信頼性が高く、ワイヤボンディング性や半田濡れ性の改善された配線基板を確実な方法で得る。
【解決手段】 セミアディティブ法により絶縁体表面にメッキ層からなる銅配線を設けた配線基板であって、該メッキ層からなる銅配線表面の表面粗さ(Rz)が0.25μm以下の配線基板とする。銅配線は絶縁体表面にメタライズ層もしくはシード層とメタライズ層とを介して設けるのが好ましい。銅配線表面の表面粗さ(Rz)が0.25μm以下にするには、組成が、硫酸濃度5〜50g/l、過酸化水素濃度10〜60g/l、塩素濃度5〜40ppmであるフラッシュエッチング液を使用して、銅メッキ層をフラッシュエッチングする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種電気機器に使用される配線基板及びその製造方法に関し、より詳しくは、絶縁フィルム上にセミアディティブ工法により銅配線が形成された配線基板において、メッキを施す前の表面が平滑な銅配線を有する配線基板とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体パッケージは小型化、高密度化が進み、実装方法もチップオンボード(COB)、ボールグリッドアレイ(BGA)、チップサイズパッケージ(CSP)のように高密度実装に適するようになってきている。
ところで、半導体パッケージに用いられる配線基板を得る方法としては、主として以下の工程よりなるサブトラクティブ法が採用されている。
a. 基板表面に設けられた導体層表面に液状レジストを塗布し、あるいはフィルム状のレジストを張り付けてレジスト層を形成する工程。
b. 所望の配線パターンを有するマスクを用いてレジスト層に紫外線を照射して露光し、現像してエッチングマスクを形成する工程。
c. エッチングマスクの開口部に露出した導体層をエッチングして除去して配線パターンを形成する工程。
d. 配線パターン表面に残存するエッチングマスクを除去して銅配線を作製する工程。
【0003】
しかし、前記した小型化、高密度化の進んだ配線基板を上記サブトラクティブ法により得ようとすると、上記cの工程において良好なエッチング結果が得られないという問題が発生する。これは、前記した小型化、高密度化の進んだ配線基板では、配線間隔が極めて狭いためにエッチング液がエッチングマスクの開口部内部に十分浸入しないという現象が起きるためである。この結果、エッチング不良による短絡という欠陥が発生することになる。
このような問題を回避するために、アディティブ法やセミアディティブ法により小型化、高密度化の進んだ配線基板を作成することが行われている。具体的には、例えば、絶縁基板上に無電解銅メッキ法により作製されたシード層の上にフォトリソグラフィによりレジストパターンを形成し、形成されたレジストパターンを用いて電解銅メッキ法により回路パターン(本発明でいう銅配線パターン)を形成し、次いでレジストパターンを除去し、レジストパターン下に存在していたシード層をエッチングにより除去する(以下、このエッチングをフラッシュエッチングと称する)ことにより配線基板が作製されている(例えば、特許文献1、段落〔0002〕参照)。
【0004】
ところで、こうしたセミアディティブ法では、シード層と回路パターンはともに銅メッキで形成されているため、フラッシュエッチングではシード層だけでなく、回路パターンもエッチングされてしまう。その結果、フラッシュエッチングにより回路パターンの角部が丸くなるため、実装時に要求されるパッド幅等の管理が困難になる(例えば、特許文献1、段落〔0003〕参照)。
こうした問題を解消すべく、フラッシュエッチングを除去する工程でフラッシュエッチングに用いるエッチング液の温度を常温より低く、冷却して用いることが開示されている(例えば、特許文献1、段落〔0010〕参照)。
特許文献1に開示された方法は、エッチング液の温度を常温より低くすることによりエッチング速度を遅くし、シード層のエッチング終了時の制御をしやすくし、もって過エッチングにより回路パターンの角部が丸くなるのを防ごうとするものである。そして、エッチング液として用いうるものは酸であればよいとしているが、具体的に開示されているエッチング液は、SPS(Sodium per sulfate:過硫酸ナトリウム)水溶液とH−HSO水溶液(特許文献1 段落〔0024〕参照)のみであり、その他の酸が同様な効果、あるいは回路パターンの表面状態にどのような影響を与えるかということについてはなんら明らかにされていない。
加えて、エッチング液を常温よりも低い温度で使用するため、エッチング液の冷却設備が必要とされ、装置が大がかりなものとならざるを得ない。
【特許文献1】特開2004−335751号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近時、脱鉛化が進められる中で、銅配線表面に施されるメッキ材質としてスズが用いられるようになってきている。こうした場合、前記従来のフラッシュエッチングではエッチング後の銅配線の表面が粗く、後工程であるスズメッキ工程において銅配線表面にスズの粒状結晶が析出する。銅配線表面にスズの粒状結晶が析出すると、この粒状結晶からスズ特有のホイスカが発生しやすい。スズのホイスカは時間と共に成長し、配線間での短絡を引き起こすことが知られており、銅配線表面にスズの粒状結晶が析出した配線基板は信頼性に問題がありとされている。
特許文献1記載のエッチング方法を適用しても、前記したようにフラッシュエッチングにおけるエッチング量の管理はできても、フラッシュエッチング後の銅配線の表面粗さを平滑化してスズメッキ工程での粒状結晶の析出を防止できるようにすることはできない。
【0006】
また、スズメッキ前の銅配線表面が従来のものより平滑になれば、メッキ後の表面も従来のものより平滑になり、ワイヤボンディング性や半田濡れ性も改善される。加えて、フラッシュエッチングが常温で行うことができれば、特別な冷却設備も不要となり、装置の大型化、複雑化が防止できる。
本発明は、上記問題を解消するためになされたものであり、フラッシュエッチング後の銅配線表面が従来のものより平滑である配線基板とその製造方法の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決する本発明の第1は、絶縁体表面にメッキ層からなる銅配線が設けられてなる配線基板であって、該メッキ層からなる銅配線表面の表面粗さ(Rz)が0.25μm以下である配線基板である。
このような配線基板とすれば、ホイスカの発生もなく、信頼性の高い基板となり、ワイヤボンディング性や半田濡れ性も改善された基板とすることができる。
そして、本発明の第2は、第1の発明に加えて前記絶縁体表面に、メタライズ層又はシード層とメタライズ層とを介して銅配線が設けられてなる配線基板とした。
このような配線基板とすれば、基板と強固な接着力を有する回路配線を有する基板となる。
【0008】
本発明の第3は、第1の発明もしくは第2の発明に加えて、前記メタライズ層が銅又は銅と溶解特性が同じ金属又は合金からなる配線基板とした。
また、本発明の第4は、第1の発明もしくは第2の発明に加えて、前記メタライズ層が銅と溶解特性が異なる金属又は合金からなる配線基板とした。
回路基板としては銅が重用されるが、メタライズ層は銅と溶解特性が同じ金属又は合金からなるのがもっとも好ましいが、銅と溶解特性が異なる金属又は合金を使用することも可能で、安価な材料や製法の選択幅が拡がる利点がある。
【0009】
本発明の第5は、第1の発明ないしは第4の発明に加えて、前記銅配線の表面にスズメッキ層が設けられてなる配線基板とした。
スズメッキ層を施しておけば、湿気による銅回路の腐食を防止すると共に、実装工程でのはんだ付けが容易になる利点がある。
【0010】
本発明の第6は配線基板の製造方法に係わり、
(1)絶縁体表面にメタライズ層を設ける工程、
(2)前記メタライズ層の表面にレジスト層を設ける工程、
(3)所望のマスクを用いてレジスト層に露光した後、現像してレジスト層からなるメッキ用マスクを形成する工程、
(4)銅メッキを施して、露出しているメタライズ層に銅配線を形成する工程、
(5)前記レジスト層を剥離し、塩素を含むフラッシュエッチング液を用いて銅配線間に存在するメタライズ層をフラッシュエッチングにより除去する工程、
を主要工程として含む配線基板の製造方法とした。
【0011】
本発明の第7は、
(1)絶縁体表面に金属からなるシード層を設ける工程
(2)該シード層表面にメタライズ層を設ける工程、
(3)前記メタライズ層の表面にレジスト層を設ける工程、
(4)所望のマスクを用いてレジスト層に露光した後、現像してレジスト層からなるメッキ用マスクを形成する工程、
(5)銅メッキを施して、露出しているメタライズ層に銅配線を形成する工程、
(6)前記レジスト層を剥離し、塩素を含むフラッシュエッチング液を用いて銅配線間に存在するメタライズ層をフラッシュエッチングにより除去する工程、
を主要工程として含む配線基板の製造方法とした。
【0012】
本発明の第8は、前記第6もしくは第7の発明に加えて、前記メタライズ層として銅又は銅と溶解特性が同じ金属もしくは合金を使用する配線基板の製造方法とした。
強固な接合力を有する銅回路を得るためである。
【0013】
本発明の第9は、前記第6ないしは第8の発明に加えて、前記フラッシュエッチング液が硫酸及び過酸化水素を主成分とし、これに塩素イオンが添加されたエッチング液であり、本発明の第10は、その硫酸濃度5〜50g/l、過酸化水素濃度10〜60g/l、塩素濃度5〜40ppmである配線基板の製造方法とした。
得られる銅回路の表面粗さを滑らかにするためである。
【発明の効果】
【0014】
本発明の配線基板は、メッキ層が設けられる前の銅配線表面の表面粗さ(Rz)が0.25μm以下と平滑であるため、この銅配線表面にスズメッキを施しても、スズの粒状結晶は発生しない。その結果、本発明の配線基板ではスズメッキが施されているにもかかわらず、スズ特有のホイスカは発生しないので、高信頼性の配線基板である。
また、このように平滑な銅配線表面上に設けられたメッキ層の表面も、銅配線表面の影響を受けて従来のものより平滑な表面となるため、ワイヤボンディング性や半田濡れ性が改善される。
【0015】
本発明の方法を適用すれば、フラッシュエッチングでメタライズ層やメタライズ層とシード層とを除去する際に、同時に発生する銅配線表面のエッチングが均一となり、結果、前記した平滑な表面状態の銅配線を得ることが可能となる。その結果、後工程であるスズメッキ工程において、銅配線表面へのスズの粒状結晶発生を防止できる。
また、本発明のメタライズ層やメタライズ層とシード層のエッチングは常温で行うことができるため、格別の冷却設備は必要とされず、装置の大型化が避けられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
近時用いられる配線基板製造用の基板材料としては、主として(イ)絶縁層に直接銅や銅合金等の銅と溶解特性が同じものでメタライズ層が設けられた基板や、(ロ)絶縁層に直接銅や銅合金等の銅と溶解特性が同じものでシード層とメタライズ層とが設けられた基板や、(ハ)絶縁層に銅と溶解特性が異なる金属や合金を用いてシード層を設け、このシード層の上に銅や銅合金等の銅と溶解特性が同じものでメタライズ層を設けたものとの3種類がある。どれを用いても本発明の適用は可能である。この3種類の基板を用いた際の主要な差は、(ハ)の基板材料を用いた場合にはメタライズ層をフラッシュエッチングした後、シード層をフラッシュエッチングする工程が追加されることである。シード層のフラッシュエッチング時に用いられるエッチング液は、通常銅を犯さないため、銅メタライズ層除去時に得られた銅配線表面の表面粗さ(Rz)は悪化することはない。
【0017】
本発明において防蝕メッキする前の銅配線の表面粗さを規定するのは、防蝕メッキ後では、例えば、防蝕メッキ後にアニールした場合には防蝕メッキ材質と銅とが合金化して銅配線の表面粗さが規定できなくなることも考え得るからである。
以下、本発明を、絶縁体表面に銅以外の金属、合金等により設けられたシード層と、シード層の上に銅でメタライズ層が設けられた基板を用いて本発明の配線基板を製造する例により説明する。
【0018】
先ず図1(a)は絶縁体4としてポリイミドフィルムを用い、その片面にスパッタリング法によりNi−Cr合金被膜を設けたシード層3と、その上に電気メッキ法により形成された銅製のメタライズ層2と、メタライズ層の表面に開口部が配線パターンとなるメッキ用マスク1とで構成されたものの断面図を示している。
用いられる絶縁体4としては特にポリイミド樹脂に拘らず、ポリアミド樹脂、PET樹脂、ポリエステル樹脂等の絶縁性物質であれば良いが、フィルム状のものが好ましく、加工性、柔軟性、耐熱性、耐薬品性よりポリイミドフィルムがより好ましい。
【0019】
絶縁体4の表面に設けられるシード層3は、後述する電気メッキによる配線形成工程で陰極として機能するものである。シード層3を本例のように銅以外の金属や合金、あるいはその他の導電性物質で構成してもよく、銅で構成してもよい。銅以外の金属や合金で構成する場合、シード層3はニッケル、クロム、タングステンやこれらの合金被膜がよく用いられ、例えばスパッタリング法や蒸着法により設けられる。このため、通常その厚さは0.01μmである。なお、シード層3の厚さが後述する電気メッキを施すのに不十分な場合には、このシード層3の上に銅を乾式成膜してシード層の一部とすることがある。
【0020】
なお、シード層3とメタライズ層2とを銅で構成したものの例として、例えば、シード層3を無電解銅メッキ法やスパッタリング法で構成し、銅メタライズ層2を電気銅メッキ法で構成したものがある。シード層3を銅とするかどうかは得られるシード層3と絶縁体4との密着強度に関係し、最近のように配線幅が45μm幅以下のものでは、最終的に得られる配線の密着強度を高くするためにシード層3を銅以外の金属や合金で構成することが一般的となってきている。
【0021】
メタライズ層2は電気メッキ法により構成されるのが一般的である。このメタライズ層2の厚さは通常0.1μmとシード層3に比して厚い。メタライズ層2として本例では銅で構成しているが、原則として導電性を有しエッチング可能な材料であれば良い。しかし、本発明の利点を生かすためにはエッチング液に対する溶解特性が配線材質と同じであることが好ましい。通常、配線材料としては本例のように銅が用いられるため、メタライズ層2も銅や、エッチング液に対する溶解特性が銅と同等のもの、例えば銅を主成分とする銅合金等であることが好ましい。
仮に、メタライズ層2を銅と溶解特性の異なる金属でかつシード層3と異なる金属や導電性物質で構成した場合には、まず、銅配線表面をフラッシュエッチングし銅配線表面を平滑化し、その後メタライズ層2をフラッシュエッチングして除去し、その後シード層3をフラッシュエッチングすることになるため、フラッシュエッチングの工程数が増加するという不利益を負うことがあるので好ましくない。
【0022】
また、メタライズ層2をシード層3と同じ銅と溶解特性の異なる金属や合金で作製した場合には、まず、銅配線表面をフラッシュエッチングして銅配線表面を平滑化し、その後メタライズ層2とシード層3とをフラッシュエッチングして除去することになるが、メタライズ層2とシード層3との除去に時間がかかることになり、製造に必要とされる時間が長くなり、製造コストが高くなるという不利益を負うことがあるので好ましくない。
なお、こうした絶縁体4とシード層3とメタライズ層2とからなる基板は、市場でいわゆる二層基板、あるいは銅/ポリ基板として販売されており、これらの中で目的に応じたものを選択して用いればよい。
【0023】
メッキ用マスク1を形成するために、前記した基板のメタライズ層表面に設けられるレジスト層は、液状レジストを用いて設けてもよく、フィルム状のレジスト膜を張り合わせて設けてもよい。レジスト層の材質としては、通常の配線基板製造用に用いられるものであれば支障なく、ポジ型でもネガ型でも良い。それに併せて用いるマスクを選定すればすむからである。なお、レジスト層の開口部が得るべき配線パターンとなるようにレジスト材とマスクとを選定する。
レジスト層の露光条件、現像条件は用いるレジスト材に対して推奨されるものを選択すればよい。通常、推奨される条件はレジスト材購入時に開示されている。
次に、図1(b)は(a)のメッキ用マスク1の開口部(メタライズ層表面)に電気メッキ法により銅を析出させ、その後メッキ用マスク1を除去した後の断面構造を示した図である。5は析出した銅により形成される配線である。
【0024】
本発明では、メッキにより析出させる金属は銅として銅配線を形成するが、ニッケルやクロムなどのメッキ法で取り扱える金属であり、電気特性が要求を満たすものであれば本発明への適用は可能である。ただし、この場合メタライズ層2の材質を同じ材質とすることが好ましい。
【0025】
図1(c)は(b)の基板の銅配線側をフラッシュエッチングしてメタライズ層2を除去した後の断面図である。市販の二層基板を用いた場合には、通常シード層としてニッケル・クロム合金が使用され、メタライズ層として銅が使用されており、シード層とメタライズ層との溶解特性が異なり(c)の状態が具現される。
図1(d)はシード層3をフラッシュエッチング処理して除去した後の断面図である。シード層3は前記したように0.01μm前後ときわめて薄いこと、シード層のフラッシュエッチングに用いるエッチング液は銅を浸食しないので、シード層3の除去に際しては(c)で得られた銅配線の露出した表面は実質的に影響を受けない。
本発明の要件である「銅配線表面」とはこの(d)の段階でのメッキ層が設けられる前の状態の銅配線5の露出している表面5a,5bをいい、この銅配線5の表面5a,5bの表面粗さ(Rz)が0.25μm以下のものが本発明に該当する。
【0026】
銅配線5の表面5a,5bの表面粗さ(Rz)を0.25μm以下とするためには、メタライズ層2をフラッシュエッチングで除去するために使用するエッチング液の組成を、硫酸濃度が5〜50g/l、過酸化水素濃度が10〜60g/lであり、塩素含有量が5〜40ppmとすることが好ましい。特に、塩素濃度がこの範囲を外れると、常温でフラッシュエッチングした際に、メッキ層が設けられる前の銅配線表面の表面粗さ(Rz)が0.25μm以下となり難いからである。
また、市販のエッチング液、例えば三菱ガス化学株式会社製のCPE800に、塩化水素または塩化アルカリ金属を所望量添加して使用することもできる。
【0027】
図1(e)は露出する銅配線5パターンの表面にスズ等の防蝕金属メッキを行って、メッキ層6を形成した後の断面図である。金属メッキ層6は銅配線の防蝕と実装行程でのはんだ付けを確実に行うためのもので、はんだとの濡れ性の良いスズメッキが好んで用いられる。
スズ等の金属メッキについては、従来の方法に従えば良く、特殊なメッキ液やメッキ方法が必要とされるものではない。
本発明の目的の一つである銅配線表面にスズメッキを施した際に発生するホイスカを防止するという本発明の課題より、メッキ層が設けられる前の銅配線表面の表面粗さ(Rz)を0.25μm以下としているが、他の目的である良好なワイヤボンディング性や半田濡れ性等を得るという視点でも銅配線表面を平滑にすることは重要である。なお、この後必要に応じて所定の場所にメッキを施し、ソルダーレジストを印刷して配線基板を得る。
[実施例]
【0028】
表1に示した塩素濃度のフラッシュエッチング液を用いて、図1と同様のステップで配線基板を作製した。
本実施例においては、厚さ38μmのポリイミドフィルムと、その上にスパッタリング法で形成された厚さ170ÅのNi/Crシード層と、シード層の上に設けられた厚さ0.3μmの銅メタライズ層からなる銅/ポリイミド基板を用いて配線基板を作製した。
先ず、銅/ポリイミド基板の銅メタライズ層表面にドライフィルムレジスト(日立化成工業(株)製RY−3315)をラミネートし、所定の配線パターンを有するマスクを用いて露光、現像して開口部が配線パターンとなるメッキ用のドライフィルムレジストマスクを形成した。
次に、メッキ用マスク開口部に露出する銅メタライズ層表面に、電解銅メッキ法にて銅を析出させて銅配線を形成し、その後メッキ用マスクを剥離して銅メタライズ層を露出させた。
【0029】
次に、市販エッチング液(品名:CPE800、三菱ガス化学株式会社製)に、塩素濃度が表1に示された値となるように予め塩酸を添加して作ったフラッシュエッチング用のエッチング液を、銅配線側表面に温度30℃で30秒間スプレーして、配線間に露出している銅メタライズ層と銅配線表面とをフラッシュエッチングした。
次に、市販のニッケル/クロム選択エッチング液(品名:メックリムーバーCH1920、メック株式会社製)を用いてシード層を溶解除去した。
その後、超深度カラー3D形状測定顕微鏡にて銅配線表面の粗さを測定した。銅メタライズ層エッチング用のエッチング液の塩素濃度と銅配線表面の粗さとの関係を表1に示した。
【0030】
次に、露出する銅配線の表面に常法に従いスズメッキを行い、スズメッキ表面の平滑なフレキシブル配線基板を得た。スズメッキ層表面を走査型電子顕微鏡にて観察し、粒状のスズ結晶の有無を調べた。発生していないものに○印を、発生しているものに×印を付し、結果を表1に合わせて示した。
次に、スズメッキ表面に金メッキを施しワイヤボンディング性を調べた結果、従来より良好なものに○印を、従来と同等以下のものに×印を付して表1に併記した。
【0031】
【表1】

【0032】
表1の結果より、塩素添加量の増加と共に一旦スズメッキ前の銅配線表面の粗さは減少し、10ppmの添加で極小値を取り、その後添加量の増加と共に表面粗さが漸増している。また、塩素無添加の場合と、1ppm添加した場合と、50ppm添加した場合とではスズメッキ層中にスズの粒状結晶が発生し、かつ金メッキ後のワイヤボンディング性も従来と変わらない。しかし、5〜40ppmの添加ではスズメッキ層中にスズの粒状結晶は発生せず、かつ金メッキ後のワイヤボンディング性も改良される。
以上のことより、エッチング液中の塩素添加量としては、5〜40ppmが好ましく、液管理や分析精度を考慮に入れると、20〜30ppmがより好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】配線基板の製造工程を示す断面工程図でり、(a)はメッキ用マスクを形成した図、(b)は銅配線を形成した図、(c)はメタライズ層をエッチングした図、(d)はシード層をエッチングした図、(e)は銅配線表面に金属メッキ層を形成した図である。
【符号の説明】
【0034】
1 メッキ用マスク
2 メタライズ層
3 シード層
4 絶縁体
5 銅配線
6 金属メッキ層


【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁体表面にメッキ層からなる銅配線が設けられてなる配線基板であって、該メッキ層からなる銅配線表面の表面粗さ(Rz)が0.25μm以下であることを特徴とする配線基板。
【請求項2】
前記絶縁体表面に、メタライズ層又はシード層とメタライズ層とを介して銅配線が設けられてなることを特徴とする請求項1に記載の配線基板。
【請求項3】
前記メタライズ層が銅又は銅と溶解特性が同じ金属もしくは合金からなることを特徴とする請求項1又は2に記載の配線基板。
【請求項4】
前記メタライズ層が銅と溶解特性が異なる金属又は合金からなることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の配線基板。
【請求項5】
前記銅配線の表面にスズメッキ層が設けられてなることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の配線基板。
【請求項6】
(1)絶縁体表面にメタライズ層を設ける工程、
(2)前記メタライズ層の表面にレジスト層を設ける工程、
(3)所望のマスクを用いてレジスト層に露光した後、現像してレジスト層からなるメッキ用マスクを形成する工程、
(4)銅メッキを施して、露出しているメタライズ層に銅配線を形成する工程、
(5)前記レジスト層を剥離し、塩素を含むフラッシュエッチング液を用いて銅配線間に存在するメタライズ層をフラッシュエッチングにより除去する工程、
を主要工程として含むことを特徴とする配線基板の製造方法。
【請求項7】
(1)絶縁体表面に金属からなるシード層を設ける工程、
(2)該シード層表面にメタライズ層を設ける工程、
(3)前記メタライズ層の表面にレジスト層を設ける工程、
(4)所望のマスクを用いてレジスト層に露光した後、現像してレジスト層からなるメッキ用マスクを形成する工程、
(5)銅メッキを施して、露出しているメタライズ層に銅配線を形成する工程、
(6)前記レジスト層を剥離し、塩素を含むフラッシュエッチング液を用いて銅配線間に存在するメタライズ層をフラッシュエッチングにより除去する工程、
を主要工程として含むことを特徴とする配線基板の製造方法。
【請求項8】
前記メタライズ層として銅又は銅と溶解特性が同じ金属もしくは合金を使用することを特徴とする請求項6又は7に記載の配線基板の製造方法。
【請求項9】
前記フラッシュエッチング液が硫酸及び過酸化水素を主成分とし、これに塩素イオンが添加されたエッチング液であることを特徴とする請求項6から8のいずれか1項に記載の配線基板の製造方法。
【請求項10】
前記フラッシュエッチング液の組成が、硫酸濃度5〜50g/l、過酸化水素濃度10〜60g/l、塩素濃度5〜40ppmであることを特徴とする請求項6から9のいずれか1項に記載の配線基板の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2007−173300(P2007−173300A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−364872(P2005−364872)
【出願日】平成17年12月19日(2005.12.19)
【出願人】(000183303)住友金属鉱山株式会社 (2,015)
【Fターム(参考)】