銅層エッチング方法、エッチング処理液及び銅配線の製造方法
【課題】化学機械研磨(CMP)に代わる新たな銅層エッチング方法を提供する。
【解決手段】1価の銅イオンと錯体を形成し、1価の銅イオンとの錯化定数が1×103より高い値を示し、且つ使用環境下において1価の銅イオンと形成する錯体の溶解度が0.5g/L以上の銅錯化剤、若しくは、1価の銅イオンと錯体を形成し、1価の銅イオンとの錯化定数が1×103より高い値を示し、且つ2価の銅イオンとの錯化定数が1×1020以下の値を示す銅錯化剤、例えばアセトニトリルを1wt%以上と、水を1wt%以上とを含むエッチング処理液は、特に銅を溶解する効果があるため、かかる水溶液を強制攪拌させながら銅層表面に接触させることにより余分な銅層を除去することができる。
【解決手段】1価の銅イオンと錯体を形成し、1価の銅イオンとの錯化定数が1×103より高い値を示し、且つ使用環境下において1価の銅イオンと形成する錯体の溶解度が0.5g/L以上の銅錯化剤、若しくは、1価の銅イオンと錯体を形成し、1価の銅イオンとの錯化定数が1×103より高い値を示し、且つ2価の銅イオンとの錯化定数が1×1020以下の値を示す銅錯化剤、例えばアセトニトリルを1wt%以上と、水を1wt%以上とを含むエッチング処理液は、特に銅を溶解する効果があるため、かかる水溶液を強制攪拌させながら銅層表面に接触させることにより余分な銅層を除去することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば銅配線を製造する際に行うダマシン法などに好適に用いることができる銅層エッチング方法、及びこの銅層エッチング方法を用いた銅配線の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスには、素子間を接続する配線溝(トレンチ)や、多層配線間を電気的に接続する配線接続孔(ビアホール或いはコンタクトホール)が多数設けられる。
これら配線溝や配線接続孔内に埋め込む導電性材料としては、従来、アルミニウムが使用されてきたが、半導体デバイスの高集積化、微細化に伴い、これまでのアルミニウムに代わり、電気抵抗率が低く(低抵抗ともいう)、エレクトロマイグレーション耐性にも優れた銅が注目され実用化が進められている。
【0003】
銅配線の製造方法としては、シリコンウエハ等からなる基板上に形成された絶縁膜に溝や孔を形成しておき、その上にバリアメタル(拡散防止膜)及びCu膜(導通を得るための下地導電膜)を順次積層した後、電気めっきによって前記溝や孔内に銅を埋め込みつつ表面に銅層を形成し、その後、化学機械研磨(CMP;Chemical Mechanical Polishing)等によって余分な銅層を除去して銅配線を製造する、いわゆるダマシン法が採用されている(特許文献1参照)。このような電気めっき(電解めっきともいう)によって形成された銅配線は、膜中の不純物濃度が低く、電気抵抗が低いため、半導体デバイスの高速化に有利である。
【0004】
このような銅配線の製造方法において、余分な銅層を除去するために行われる化学機械研磨(CMP)は、研磨対象物をキャリアと呼ばれる部材で保持し、研磨布または研磨パッドを張った平板(ラップ)に押し付けて、各種化学成分を含んだ研磨液と硬質の微細な研磨剤を含んだスラリーを一緒に相対運動させることで、被処理面を平坦にする表面処理方法であり、ダマシン法では一般的に採用されている。
しかしながら、このような化学機械研磨(CMP)は、通常は前工程、すなわち電気めっき工程とは別の工程として行わなければならず、作業負担が大きいため、化学機械研磨(CMP)に代わるか、或いは化学機械研磨(CMP)の負担を軽減できる、新たな銅層エッチング方法(すなわち、余分な銅層を除去する方法)の開発が望まれていた。
【0005】
従来提案されている銅層のエッチング方法としては、特許文献2において開示されている、非水系の配位溶剤及びハロゲンイオン基発生種からなる剥離組成物を用いて残留銅層を除去する方法などを挙げることができる。
【0006】
【特許文献1】特表2007−115886号公報
【特許文献2】特開2001−38700号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、かかる課題に鑑みて、化学機械研磨(CMP)に代わるか、或いは化学機械研磨(CMP)の負担を軽減することができる、新たな銅層エッチング方法、並びにこれに用いるエッチング処理液、並びにこれを用いた銅配線の製造方法を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、1価の銅イオンと錯体を形成し、1価の銅イオンとの錯化定数が1×103より高い値を示し、且つ使用環境下において1価の銅イオンと形成する錯体の溶解度が0.5g/L以上の銅錯化剤、若しくは、1価の銅イオンと錯体を形成し、1価の銅イオンとの錯化定数が1×103より高い値を示し、且つ2価の銅イオンとの錯化定数が1×1020以下の値を示す銅錯化剤を1wt%以上と、水を1wt%以上とを含むエッチング処理液を、強制攪拌させながら銅層からなる被処理面に接触させることを特徴とする銅層エッチング方法を提案する。
【0009】
また、本発明の銅層エッチング方法の好ましい利用態様として、配線を形成する予定箇所に設けられた基材の溝や孔内に銅を埋め込みつつ基材表面に銅層を形成し、その後、上記の銅錯化剤を1wt%以上と、水を1wt%以上とを含むエッチング処理液を、強制攪拌させながら前記銅層表面に接触させることにより、銅層の少なくとも一部を除去することを特徴とする銅配線の製造方法を提案する。
【0010】
上記のような銅錯化剤を1wt%以上含む錯化剤含有水溶液は、銅を溶解する効果があるため、かかる水溶液を強制攪拌させながら銅層表面に接触させることにより、余分な銅層を除去することができる。よって、少なくとも化学機械研磨(CMP)の負担を軽減することができ、好ましくは化学機械研磨(CMP)を省略することもできる。
【0011】
また、上記エッチング処理の際に、基材がカソードとなるように還元電流を該基材に印加しながら、エッチング処理液を前記銅層表面に接触させることにより、余分な銅層の除去と銅配線の補修とを同時に行わせることができる。すなわち、上記のような銅錯化剤を1wt%以上含む錯化剤含有水溶液は、銅を電気めっきする際の電解液としても好適に機能し、特に凹部への銅の埋め込みに優れた効果を発揮するため、基材がカソードとなるように還元電流を該基材に印加することにより(銅成分を添加するとさらに好ましい)、電気めっきによる孔埋めも同時に進行し、詳しく後述するように余分な銅層の除去と銅配線の補修とを同時に行うことができる。
【0012】
このように、銅錯化剤を1wt%以上含む錯化剤含有水溶液(銅成分を添加するとさらに好ましい)は、銅を電気めっきする際の電解液としても優れた効果を発揮するため、エッチングの工程を電気めっき工程と連続して行うことができる。
ただし、本発明が提案する銅層エッチング方法及び銅配線の製造方法は、銅錯化剤を含む電解液で、基材の溝や孔内に銅を埋め込みつつ表面に銅層を形成した後に適用する場合に限定するものではなく、他の方法により基材の溝や孔内に銅を埋め込みつつ表面に銅層を形成した後、例えばPEG、SPS、JGBなどの有機系添加剤や塩化物イオンを添加した電解液を用いて基材の溝や孔内に銅を埋め込みつつ表面に銅層を形成した後にも適用可能である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施形態の好ましい一例として、銅配線の製造方法について説明するが、本発明が、以下に説明する実施形態に限定されるものではない。特に本発明の銅層エッチング方法は銅配線の製造方法以外にも適用可能である。
【0014】
ここでは、基材の配線を形成する予定箇所に設けられた溝や孔内に銅を埋め込みつつ表面に銅層を形成した後、錯化剤含有水溶液を用いて、表面の余分な銅層を除去(エッチング)して銅配線を製造する方法(以下「本銅配線製造方法」と称する)について説明するが、本発明の銅層エッチング方法が、このような銅配線の製造方法の利用に限定されるものではない。
【0015】
ここで、本銅配線製造方法にかかる具体的な一例を紹介する。
図1に示すように、シリコンウエハ等からなる基板1A上に、絶縁物質からなる酸化膜等の絶縁膜1Bを形成し、絶縁膜1Bにおける配線パターンを形成する予定箇所に溝又は孔2を設け(図中の(A)参照)、次に、Ti、Ta、W或いはこれらの窒化物等からなるバリアメタル膜(拡散防止膜)3及びCu下地導電膜(導通を得るための下地導電膜)4を順次形成し(図中の(B)参照)、その上で、前記溝又は孔2内に銅を埋め込みつつ基板1A表面に銅層5を形成し(図中の(C)参照)、次いで、基板1A表面に形成された銅層5の少なくとも一部を除去して銅配線6を露出させて銅配線を形成する(図中の(D)参照)。この際、さらに耐マイグレーション性を向上させるために、露出した銅配線6上に金属や酸化物、有機物を積層してもよい。
以下、この具体例を中心に本銅配線製造方法について説明するが、本銅配線製造方法がかかる具体例に限定されるものではない。
【0016】
<配線接続孔・配線溝>
銅を埋め込む対象である配線接続孔(ビア)又は配線溝(トレンチ)の大きさは特に限定するものではないが、本銅配線製造方法は、例えば、深さが0.1μm〜2.0μmであり、且つ深さ/幅で求められるアスペクト比が3〜5であるという極めて微細な孔及び溝に対しても十分に埋め込みが可能であるから、少なくともそれ以上に径が大きいか、或いは深さの浅い孔や溝に対しては十分に埋め込み可能である。なお、微細な孔或いは溝の幅とは、孔が例えば長孔であればその短径を意味し、溝の場合にはその短手長を意味するものである。
但し、本発明の限界が、前記の孔径や溝幅或いはアスペクト比であるという意味ではない。
【0017】
例えば孔径或いは溝幅が100μmで深さが200μmのようなSoC (システム オン チップ)やSiP (システム イン パッケージ)、MEMS (メムス、機械電気マイクロシステム)などの貫通電極用の孔或いは溝に対して十分に埋め込み可能である。
また、例えば孔径或いは溝幅が200μmで深さが50μmのような、プリント配線板のビアフィリングめっきの孔或いは溝に対しても十分に埋め込み可能である。
【0018】
配線接続孔(ビア)又は配線溝(トレンチ)の形状は特に限定するものではない。ちなみに、孔径或いは溝幅が0.2μm以下の極めて微細な孔或いは溝になると、開口部から奥まで同径の孔や溝を設けること自体が困難であるため、通常は、図1に示すように開口部から底部に向って窄まった断面形状となる。
【0019】
<銅>
埋め込む対象である銅、言い換えれば電気めっきする銅は、純粋な銅であっても、銅以外の金属を不可避不純物として含有する銅であってもよい。また、例えば耐食性を高める目的でCoなどの金属を微量添加(例えば5質量%未満)した銅合金など、銅を主成分(少なくとも80質量%以上が銅)とする銅合金であってもよい。このような銅合金であっても、純粋な銅と同様に本発明の効果が得られると考えられる。
【0020】
<配線接続孔又は配線溝内への銅の埋め込み>
配線接続孔又は配線溝内へ銅を埋め込む方法は、特に限定するものではないが、好ましくは電気めっきによる方法、好ましくは錯化剤含有電解液を用いて、該電解液を強制攪拌しながら電気めっきすることにより、配線接続孔又は配線溝内に銅を埋め込む方法を挙げることができる。
ここでは、好ましい埋め込む方法として、電気めっきによる方法、上記の具体例でいえば、溝又は孔2内に銅を埋め込みつつ基板1A表面に銅層5を形成する方法について説明するが、これに限定されるものではない。
【0021】
(電解液)
本銅配線製造方法で用いる電解液(以下「本電解液」ともいう)としては、銅錯化剤を1wt%以上と、水を1wt%以上と、銅成分とを含む電解液(以下「錯化剤含有電解液」と称する)を用いるのが好ましい。
【0022】
ここで、銅錯化剤としては、1価の銅イオンと錯体を形成し、1価の銅イオンとの錯化定数が1×103より大きいことが必要であり、上限値は特に限定するものではないが、現実的には1×1040程度であると考えられ、好ましくは1×104〜1×1015である。1価の銅イオンとの錯化定数が過度に大きい場合には、銅錯体が安定化し過ぎて電気めっき時の極間電圧が上がり、実用的でないため好ましくない。
ちなみに、アセトニトリルの1価の銅イオンとの錯化定数は1×104であり、この値は、P.Kamau and R.B.Jordan:Inorganic Chemistry,vol.40,Issue
16,p.3879(2001)の記載に基づくものである。
【0023】
用いる銅錯化剤は、さらに2価の銅イオンとの錯化定数が1×1020以下である(2価の銅イオンと錯体化しないものも含む)か、或いは、使用環境下において1価の銅イオンと形成した錯体の溶解度が0.5g/L以上である必要であり、さらに、これら両方の条件を満足する銅錯化剤が好ましい。
2価の銅イオンとの錯化定数に関して言えば、好ましくは1×1018以下であり、特に好ましくは1×1016以下である。
また、1価の銅イオンと形成した錯体の溶解度に関して言えば、好ましくは5g/L以上であり、特に好ましくは溶解度が10g/L以上である。
【0024】
本銅配線製造方法では、銅錯化剤と1価の銅イオンとが形成する錯体を安定化させることがポイントの一つであり、そのためには1価の銅イオンとの錯化定数が1×103より大きい銅錯化剤を用いることが必要である。また、同様の理由で、用いる銅錯化剤が2価の銅イオンとも錯体化する場合には、2価の銅イオンとの錯化定数が1×1020以下であることも重要である。他方、1価の銅イオンと形成した錯体が、用いる液中において0.5g/L以上の溶解量がないと実用性がないと考えられる。
【0025】
なお、上記の「1価或いは2価の銅イオンとの錯化定数(K)」は、次のように定義される値である。
1価或いは2価の銅イオンMと銅錯化剤Aとから錯体MAn(Mとn個のAの錯体を示す)が形成される逐次反応(逐次反応:M+A→MA、MA+A→MA2、・・・)において、逐次錯化定数knを、
k1=[MA]/([M]・[A])、k2=[MA2]/([MA]・[A])、・・・と表すとき、
錯化定数(K)は、LogK=Logk1+Logk2+・・・で表される値である。
なお、[M]、[A]及び [MAn]はそれぞれの濃度(mol/L)の意である。
【0026】
本銅配線製造方法で用いる銅錯化剤としては、特に限定するものではないが、1価の銅イオンと錯体を形成し、1価の銅イオンとの錯化定数が1×103より高い値を示し、且つ使用環境下において1価の銅イオンと形成する錯体の溶解度が0.5g/L以上の銅錯化剤、若しくは、1価の銅イオンと錯体を形成し、1価の銅イオンとの錯化定数が1×103より高い値を示し、且つ2価の銅イオンとの錯化定数が1×1020以下の値を示す銅錯化剤として、例えばピロリン酸カリウム、シアン化ナトリウム、アセトニトリルなどを挙げることができる。中でも、1価の銅イオンとの錯化定数や溶解速度、並びに均一に混合できることを加味すると、アセトニトリルが特に好ましい。
【0027】
本電解液は、銅を溶解させる速度が0.05〜5mgmin-1cm-2、中でも0.07〜4mgmin-1cm-2、その中でも特に0.1〜3mgmin-1cm-2となるような量で前記銅錯化剤を含むものが好ましい。
【0028】
なお、「銅を溶解させる速度」とは、錯化剤含有電解液(温度25℃)又は錯化剤含有水溶液(温度25℃)に銅板を浸漬させ、限界電流密度が80mA/cm2となるように攪拌しながら銅板を溶解させた時の単位時間・単位面積当たりの銅板重量減少量から求められる値である。
【0029】
本電解液における銅錯化剤の濃度、すなわち銅錯化剤と水との合計量に対する銅錯化剤の混合比率は、1wt%以上であることが重要であり、好ましくは2wt%以上、特に4wt%以上であるのが好ましい。上限値は、特に限定するものではないが、環境負荷等を考慮すると50wt%程度であると考えられるが、硫酸銅の溶解量を確保する観点から27wt%であるのが好ましい。
【0030】
銅成分としては、例えば、アルカリ性のシアン化銅、ピロリン酸銅や酸性のホウフッ化銅、硫酸銅などの水溶性銅塩が好ましく、中でも硫酸銅及び硫酸を含む硫酸銅水溶液が好ましい。これらは、予め銅錯化剤と混合することができる。
この場合に加える硫酸濃度は、適宜調整可能であるが、通常は0.01mol/L以上、特に0.1mol/L〜2mol/Lとするのが好ましい。
【0031】
本電解液の好ましい具体例として、硫酸銅水溶液と銅錯化剤とを含む電解液を、純水によって希釈して、目的に合った所望の組成濃度に調整してなる電解液を挙げることができる。
【0032】
なお、本電解液は、ハロゲンイオン及び、キャリア、ブライトナ、レベラ等の有機系添加剤を実質的に含んでいても、含んでいなくてもよい。ハロゲンイオンや前記の有機系添加剤を実質的に含んでいなくても、埋め込み率を十分に高めることができる点は本電解液の特徴の一つではあるが、これらを含んでいれば更に効果を高めることが期待できるため、含んでいてもよい。
ここで、「実質的に含まない」とは、積極的に添加しないという意味であり、不可避的に含まれる場合は、これを許容する意味である。具体的濃度で言えば3ppm以下であるのが好ましい。
また、例えば光沢剤、錯化剤、緩衝剤、導電剤、有機化合物(にかわ、ゼラチン、フェノールスルフォン酸、白糖蜜など)、多価アルコール、チタンなどの添加剤を本電解液に添加することも可能である。
【0033】
(電解液の攪拌)
銅イオン錯化電解液を用いて電気めっきする場合、電解液の攪拌程度を高めることにより電流効率を低下させることができ、逆に電解液の攪拌を抑制することにより電流効率を高めることができるという意外な事実が判明した。よって、このような知見に基づいて攪拌条件を調整することで、液拡散の少ない微細孔(溝)内への銅の埋め込みにおいても、微細孔(溝)内部に積極的に電気めっきを施して埋め込み率を高めることができるようになり、さらには、被めっき体表面への銅の電析量を抑制することもできるようになった。なお、「被めっき体表面」とは、微細孔(溝)内の表面を包含するものではない(他においても同様)。
【0034】
電解液の攪拌方法は、特に限定するものではない。例えば被めっき体である基板を、めっき面である基板表面に対して垂直な軸を中心として回転させて電解液を攪拌する方法や、電解液内で攪拌具を振動させて電解液を攪拌する方法、電解液を流動させて電解液を攪拌する方法、その他の方法を採用することができる。
なお、前記の攪拌具としては、攪拌棒、攪拌羽、その他攪拌可能な部材を挙げることができる。
【0035】
微細孔(溝)内部に積極的に電気めっきを施して埋め込み率を高める一方、被めっき体表面への銅の電析量を抑制するためには、電解液の攪拌程度を所定の範囲に制御することが重要であり、好ましくは、対極として銅電極、参照極として飽和カロメル電極を用いて25℃の0.05mol/L硫酸銅+0.5mol/L硫酸を含む電解液を用いて浸漬電位からカソード方向に100mV/minで電位走査した際の限界電流密度が10mA/cm2〜150mA/cm2となるように電解液の攪拌程度を制御するのが好ましく、特に20mA/cm2〜80mA/cm2、中でも特に40mA/cm2〜80mA/cm2となるように電解液の攪拌程度を制御するのが好ましい。実際には、製造設備に電極位置を当てはめることで、限界電流密度を予め測定しておき、所定の限界電流密度になるように電解液の攪拌程度を制御するのが好ましい。
なお、本明細書における「限界電流密度」の語は全て上記定義における電解液の攪拌程度を示す指標としての限界電流密度の意味である。
【0036】
ここで、限界電流密度について補足する。
本発明では、電解液の攪拌程度を示す指標として限界電流密度を採用している。物質の移動限界電流は流速に依存することが知られており、前記の限界電流密度は、攪拌の程度と一定の関係があることが確認されている。したがって、限界電流密度は攪拌の程度を示すパラメータとして評価することができる。例えば後述する試験2で示すように、限界電流密度を電極回転速度に変換することも、電極回転速度を限界電流密度に変換することも可能である。なお、限界電流密度を規定する電極面積の基準は、孔(溝)内を含まない見かけ上の面積である。
【0037】
この限界電流密度は、電流密度と電極電位との関係をプロットすることにより求めることができるから、例えば実際に埋め込みめっきを行う電解槽において、下記条件の予備試験を行い、電流密度と電極電位との関係をプロットして限界電流密度を求めておき、所定の限界電流密度になるように、それぞれの攪拌方法における攪拌速度を調整することができる。
(予備試験の条件)
対極として銅電極、参照極として飽和カロメル電極を用いて、25℃の0.05mol/L硫酸銅+0.5mol/L硫酸の電解液中にて、浸漬電位からカソード方向に100mV/minで電位走査する。
【0038】
電解液の攪拌方法ごとに攪拌程度について検討すると、電解液の攪拌方法として、被めっき体である基板を、めっき面である基板表面に対して垂直な軸を中心として回転させて電解液を攪拌する方法を採用する場合には、100〜5000rpmで回転させるのが好ましく、特に300〜3000rpm、中でも特に600〜3000rpmで回転させるのがより一層好ましい。
また、電解液を攪拌具を振動させて電解液を攪拌する方法を採用する場合には、電解液を0.8Hz〜10Hzの周波数で攪拌具を振動させるのが好ましく、特に1.5Hz〜5Hz、中でも特に2.5Hz〜3.6Hzの周波数で振動させるのが好ましい。
【0039】
(陰極)
本銅配線製造方法で用いる陰極、すなわち被めっき体となる基板の素材は、特に限定するものではない。半導体デバイスの基板材料は、通常シリコンウエハ等からなる基板上に酸化膜等の絶縁膜を形成してなる構成のものであるため、それだけでは電気的導通が得られず電気めっきすることができない。そこで、前記絶縁膜上に導電性材料、例えば銅などをスパッタその他の手段により積層させて下地導電膜を形成するのが一般的である。
【0040】
(陽極)
本銅配線製造方法で用いる陽極すなわち対極としての素材は、特に限定するものではない。例えば銅のほか、白金、白金めっきチタンなどの不溶性電極、その他の電極板を例示できるが、中でも銅が好ましい。
【0041】
(電解温度)
電解温度、すなわち電解液の温度は、特に限定するものではなく、20℃以上であればよい。中でも、製造コストや有機成分の蒸発を少なくするために25〜45℃となるように制御するのが好ましい。
【0042】
(電流密度)
電流密度は、特に限定するものではないが、好ましくは5mA/cm2以上に制御するのがよい。上限値は特に限定されないが、500mA/cm2程度が現実的な上限値になると考えられる。
より好ましくは、目的に応じて電流密度をさらに制御するのが好ましく、攪拌程度を示す限界電流密度が大きな場合には電流密度を大きくするのが好ましい。例えば、微細孔(溝)内部に積極的に電気めっきを施して埋め込み率を高める一方、被めっき体表面への銅の電析量を抑制するためには、電流密度を10mA/cm2〜200mA/cm2、特に20mA/cm2〜100mA/cm2、中でも特に40mA/cm2〜80mA/cm2に制御するのが好ましい。
【0043】
(電解時間)
電解時間(通電時間)は、特に限定するものではない。孔や溝の大きさや形状等に応じて適宜調整するのがよい。
【0044】
(好ましい電解条件)
以上の点を総合すると、微細孔(溝)内部に積極的に電気めっきを施して埋め込み率を高める一方、被めっき体表面への銅の電析量を抑制するための好ましい電解条件の一例として、電解液中の硫酸銅濃度が0.24mol/Lで硫酸濃度が1.8mol/Lのとき、電解液中の銅錯化剤濃度が1wt%〜27wt%であり、電解液の攪拌程度を示す限界電流密度が15mA/cm2〜80mA/cm2であり、電流密度が40mA/cm2〜100mA/cm2であるという条件を挙げることができる。
【0045】
(装置)
電気めっき装置の構成については、特に限定するものではない。例えば、電解液を収容するめっき槽を備え、このめっき槽は電解液排水部と電解液供給部とを備え、めっき槽内には、基板(例えば半導体ウエハ)保持する基板ホルダーと、電源の陽極が接続されたアノード電極と、攪拌棒や攪拌羽などの攪拌機構とが配設されてなる電気めっき装置や、電極が回転して電解液を攪拌し得る構成の回転ディスク電極装置などを挙げることができる。
【0046】
<エッチング>
次に、エッチング、すなわち、基板表面に形成された余分な銅層の除去方法について説明する。
【0047】
銅錯化剤を1wt%以上と、水を1wt%以上とを含む錯化剤含有水溶液は、銅イオンとの錯体を形成し易く、金属銅を溶解する作用を有るため、エッチング処理液として用いることができる。よって、かかる水溶液を強制攪拌させながら、エッチング処理を受ける基材としての基板表面に形成された銅層に接触させることにより、余分な銅層を除去することができる。
よって、エッチング処理液として用いる錯化剤含有水溶液は、銅錯化剤を1wt%以上と、水を1wt%以上とを含む水溶液であるのが好ましい。
【0048】
ここで、銅錯化剤としては、1価の銅イオンと錯体を形成し、1価の銅イオンとの錯化定数が1×103より大きいことが必要であり、上限値は特に限定するものではないが、現実的には1×1040程度であると考えられ、好ましくは1×104〜1×1015である。1価の銅イオンとの錯化定数が過度に大きい場合には、銅錯体が安定化し過ぎて電気めっき時の極間電圧が上がり、実用的でないため好ましくない。
【0049】
用いる銅錯化剤は、さらに2価の銅イオンとの錯化定数が1×1020以下である(2価の銅イオンと錯体化しないものも含む)か、或いは、使用環境下において1価の銅イオンと形成した錯体の溶解度が0.5g/L以上である必要であり、さらに、これら両方の条件を満足する銅錯化剤が好ましい。
2価の銅イオンとの錯化定数に関して言えば、好ましくは1×1018以下であり、特に好ましくは1×1016以下である。
また、1価の銅イオンと形成した錯体の溶解度に関して言えば、好ましくは5g/L以上であり、特に好ましくは溶解度が10g/L以上である。
【0050】
エッチングに用いる銅錯化剤としては、特に限定するものではないが、1価の銅イオンと錯体を形成し、1価の銅イオンとの錯化定数が1×103より高い値を示し、且つ使用環境下において1価の銅イオンと形成する錯体の溶解度が0.5g/L以上の銅錯化剤、若しくは、1価の銅イオンと錯体を形成し、1価の銅イオンとの錯化定数が1×103より高い値を示し、且つ2価の銅イオンとの錯化定数が1×1020以下の値を示す銅錯化剤として、例えばピロリン酸カリウム、シアン化ナトリウム、アセトニトリルなどを挙げることができる。中でも、1価の銅イオンとの錯化定数や溶解速度、並びに均一に混合できることを加味すると、アセトニトリルが特に好ましい。
【0051】
また、エッチング処理液は、銅を溶解させる速度が0.05〜5mgmin-1cm-2、中でも0.07〜4mgmin-1cm-2、その中でも特に0.1〜3mgmin-1cm-2となるような量で前記銅錯化剤を含むものが好ましい。
【0052】
本発明の効果を得るためには、エッチング処理液(錯化剤含有水溶液)における銅錯化剤の濃度、すなわち銅錯化剤と水との合計量に対する銅錯化剤の混合比率が、1wt%以上であることが好ましく、特に2wt%以上、中でも特に4wt%以上であるのが好ましい。上限値は、特に限定するものではないが、環境負荷等を考慮すると50wt%程度であると考えられるが、硫酸銅の溶解量を確保する観点から27wt%であるのが好ましい。
【0053】
なお、エッチング処理液(錯化剤含有水溶液)には、ハロゲンイオンや、キャリア、ブライトナ、レベラ等の有機系添加剤を添加してもよい。また、例えば光沢剤、錯化剤、緩衝剤、導電剤、有機化合物(にかわ、ゼラチン、フェノールスルフォン酸、白糖蜜など)、多価アルコール、チタンなどの添加剤を添加することも可能である。
【0054】
エッチング処理液の攪拌方法としては、前述の電気めっきの場合と同様、基板表面に対して垂直な軸を中心として回転させてエッチング処理液を攪拌する方法や、エッチング処理液内で攪拌具を振動させてエッチング処理液を攪拌する方法、エッチング処理液を流動させてエッチング処理液を攪拌する方法、その他の攪拌方法を採用することができ、攪拌程度は、対極として銅電極、参照極として飽和カロメル電極を用いて25℃の0.05mol/L硫酸銅+0.5mol/L硫酸を含むエッチング処理液を用いて浸漬電位からカソード方向に100mV/minで電位走査した際の限界電流密度が10mA/cm2〜150mA/cm2、特に20mA/cm2〜80mA/cm2となるようにエッチング処理液の攪拌程度を調整するのが好ましい。
さらに、エッチング処理液の攪拌方法として、被めっき体である基板を、めっき面である基板表面に対して垂直な軸を中心として回転させる方法を採用する場合には、100〜5000rpm、特に600〜3000rpmで回転させるのがより一層好ましい。
また、エッチング処理液を所定の周波数で攪拌具を振動させる方法を採用する場合には、エッチング処理液を0.8Hz〜10Hz、特に1.5Hz〜5Hz、中でも特に2.5Hz〜3.6Hzの周波数で振動させるのが好ましい。
【0055】
より好ましい銅層エッチング方法としては、基板がカソードとなるように還元電流を被めっき体に印加すると共に、エッチング処理液を強制攪拌しながら基板表面の銅層に該エッチング処理液を接触させるのが好ましい。
銅錯化剤を1wt%以上と、水を1wt%以上とを含む錯化剤含有水溶液は、銅を電気めっきする際の電解液としても好適に機能するため、基板がカソードとなるように還元電流(負のバイアス)を印加することにより、電気めっきによる孔埋めを行うことができる。よって、銅の電気めっき(銅の電着)と余分な銅層の除去(エッチング)とを同時に行うことができる。特にこの錯化剤含有水溶液は、銅の孔埋め効果、つまり凹部内への銅の電着効果に優れている一方、微細孔(溝)部分の銅層表面が凹部状になる傾向があるため、この部分の電着効果が優先的に進み、全体として平坦になるように修復することができる。また、例えば銅層の除去が過度に進み、微細孔(溝)内の銅までも除去されて銅層表面が凹部状になったとしても、凹部への優れた電着効果によって微細孔(溝)部分の電着が優先して進み、平坦になるように修復することができる。よって、このようなオーバーエッチングを防ぎつつ余分な銅層を効果的に除去することができる。
【0056】
被めっき体に電流を流す際の電流密度は、前記電気めっき時の電流密度未満の電流密度に制御するのが好ましく、より好ましくは40mA/cm2未満、中でも好ましくは0.1mA/cm2〜10mA/cm2である。
【0057】
なお、錯化剤含有水溶液は、電気化学的平衡を制御することにより銅成分を含んでいなくても、銅の電気めっきを行わせしめることは可能であるが、より安定的な効果を得るためには、錯化剤含有水溶液に銅成分を添加するのが好ましい。
この際の銅成分としては、例えば、アルカリ性のシアン化銅、ピロリン酸銅や酸性のホウフッ化銅、硫酸銅などの水溶性銅塩が好ましく、中でも硫酸銅及び硫酸を含む硫酸銅水溶液が好ましい。これらは、予め銅錯化剤と混合することができる。この場合に加える硫酸濃度は、適宜調整可能であるが、通常は0.01mol/L以上、特に0.1mol/L〜2mol/Lとするのが好ましい。
【0058】
(好ましいエッチング条件)
以上の点を総合すると、オーバーエッチングを防ぎつつ余分な銅層を効果的に除去するための好ましいエッチング条件の一例として、エッチング処理液中の硫酸銅濃度が0.24mol/Lで硫酸濃度が1.8mol/Lのとき、エッチング処理液中の銅錯化剤濃度が1wt%〜27wt%であり、エッチング処理液の攪拌程度を示す限界電流密度が41mA/cm2〜80mA/cm2であり、電流密度が0.1mA/cm2〜10mA/cm2であるという条件を挙げることができる。
【0059】
このようにエッチング処理液を強制攪拌しながら該エッチング処理液と被めっき体表面の銅層とを接触させて被めっき体表面の銅層を除去する方法は、他のエッチング方法、例えば、被処理体をアノードとして電流を流す電解研磨法、研磨剤(砥粒)が有する表面化学作用又は研磨液に含まれる化学成分の作用と共に、研磨剤と研磨対象物との相対運動による機械的研磨による化学機械研磨法(CMP)、エッチング液に溶解させる方法などと、併用することが可能である。具体的には、例えば本発明の銅層エッチング処理液を用いて被めっき体表面の余分な銅層をある程度除去した後、化学機械研磨法(CMP)によって余分な銅層を除去することにより、従来の化学機械研磨法(CMP)の負担を軽減することができる。
【0060】
<効果>
本銅配線製造方法によれば、複数の添加剤を実質的に含まないでも、極めて微細な孔又は溝(例えば深さが0.1μm〜2.0μmで且つアスペクト比(深さ/幅)3〜5である孔又は溝)内に十分に銅を埋め込むことができ、極めて微細な銅配線を優れた精度で形成することができる。
【0061】
また、本銅配線製造方法で得られる銅配線は、純度が高いという特徴を有しており、特に銅錯化剤としてアセトニトリルを用いる場合には、得られる銅配線中にアセトニトリルが残らないため、不純物の濃度が低く、且つ比抵抗が十分に低い銅薄膜を得ることができる。
さらに、アセトニトリルをエッチング処理液に添加して得られる銅配線の配向性は、(111)面が優先配向となる傾向があるから、エレクトロマイグレーション耐性に優れた配線を得ることができる。具体的には、(111)面の相対積分強度を65%以上、好ましくは70%以上、中でも好ましくは80%以上の結晶配向性を得ることができる。
なお、(111)面の相対積分強度とは、X線回折チャートにおける(111)面、(200)面、(220)面及び(311)面のピーク面積の総和に対する(111)面のピーク面積の割合(%)を示す。
【0062】
このように、本銅配線製造方法によって形成される銅配線は、電子材料、例えばIC、LSI、CPU等の集積回路などの製造に有効に利用することができる。
【0063】
(用語の解説)
本発明において「電気めっき」とは、イオン化した金属を含む電解液に通電し、陰極の表面にめっき金属を析出させる方法を全て包含する。
また、本発明において「銅配線」とは、半導体回路及びプリント配線板の両方を含み、平面配線の他、フィルドヴィア、配線溝、配線接続孔、スルーホール等の3次元配線も含む概念である。
なお、本発明において、「X〜Y」(X、Yは任意の数字)と記載した場合、特にことわらない限り「X以上Y以下」の意と共に、「好ましくはXより大きい」或いは「好ましくはYより小さい」の意も包含する。
【実施例】
【0064】
以下、試験結果(実施例に相当)に基づいて本発明について説明するが、本発明の範囲が下記試験結果に限定されるものではない。なお、試験3〜5は、本発明を想到する上で基礎となった試験内容として説明するものである。
【0065】
<試験1:エッチング試験>
図2に示すように、(株)山本鍍金試験器製マイクロセルModelI型を使用して、シリコンウエハからなる基板表面に設けた多数の溝内に電気めっきにより銅の埋め込みを行った。
カソードには、図3に示すように、表面に酸化シリコンからなる絶縁膜を形成したシリコンウエハ基板(11mm×15mm×0.8mm)に、溝幅190nm、深さ700nmの配線溝を、190nm間隔で185本形成し、その表面にTaN及びCuを順次スパッタしてバリアメタル層、銅層を形成したものを使用した。
アノードには含燐銅板(8mm×12mm)を使用し、電極間距離を25mmに配置した。
【0066】
電解液には、硫酸銅水溶液とアセトニトリルとを混合した後、水濃度が1wt%以上になるように純水によって希釈して、Cu(II)濃度0.24mol/L、硫酸濃度1.8mol/L、アセトニトリル濃度14wt%に調整したものを用いた。
そして、250mLの電解液を2.5Hzの周波数で攪拌棒を振動させながら(限界電流密度41.0mA/cm2に相当)、ポテンシオスタット(北斗電工社製HA−151)を使用して電流密度40mA/cm2に制御しつつ、電解液温度25℃にて電気めっきを1.44C/cm2行い、銅層形成サンプルを得た。
【0067】
上記と同じ装置を使用し、上記で得られた銅層形成サンプルをエッチング処理液(25℃)中に浸漬し、エッチング処理液を2.5Hz(限界電流密度41.0mA/cm2)で強制攪拌しながら、サンプルに還元電流を電流密度:1mA/cm2又は2mA/cm2で印加して、1min〜4minエッチング処理を行い(表1参照)、エッチング効果を評価した。
【0068】
なお、エッチング処理液には、硫酸銅水溶液とアセトニトリルとを混合した後、水濃度が1wt%以上になるように純水によって希釈して、Cu(II)濃度0.24mol/L、硫酸濃度1.8mol/L、アセトニトリル濃度14wt%に調製したものを用いた。
【0069】
なお、下記表2の表面厚減少率(%)及び孔底厚減少率(%)は、図4に示す断面においてエッチング前の表面厚み(h0)及び孔底厚み(H0)を測定し、次の式で求めた値である。
表面厚減少率(%)={(h0−h)/h0}×100
孔底厚減少率(%)={(H0−H)/H0}×100
【0070】
【表1】
【0071】
(考察)
1mA/cm2、2minの条件では、表面厚減少率/孔底厚減少率が1を超え、選択的に表面層の銅がエッチングされることが分かった。
【0072】
<試験2>
攪拌の程度と限界電流密度との関係について試験し、限界電流密度を電極回転速度に変換する式を求めた。
【0073】
図5に示す回転ディスク電極装置(北斗電工社製HR−201)を使用し、対極に銅線、参照極に飽和カロメル電極(SCE)を用いた。また、作用極には、電極面積0.2cm2の白金ディスク電極(北斗電工社製HR−D2)上に、0.5mol/Lの硫酸銅及び1.0mol/Lの硫酸を含む30℃の電解液を用いて、−0.4Vvs.SCEの一定電位で30秒間電析したものを作用極として用いた。
【0074】
0.05mol/Lの硫酸銅、0.5mol/Lの硫酸を含む25℃の電解液を用いて、0〜3000rpmの各回転数において電気めっきを行った。
また、浸漬電位からカソード方向に100mV/minで電位走査した際の電流密度及び電極電位を測定し、測定した電流密度と電極電位との関係をプロットすることにより限界電流密度を測定し、限界電流密度と電極回転速度の関係を図6に示した。
【0075】
図6に示されるように、限界電流密度と電極回転速度とには比例関係が認められ、次の式により、限界電流密度から電極回転速度に変換することができることが分かった。
f=(−1.37+0.72×iL)2
但し、f:電極回転速度(rpm)、iL:限界電流密度(mA/cm2)
【0076】
<試験3:分極曲線の測定>
本発明を想到する上で基礎とした分極曲線の測定試験について説明する。
【0077】
(試験方法)
電解液の調製は、硫酸銅五水和物(CuSO4・5H2O)(和光純薬工業、特級)、硫酸(H2SO4)( 和光純薬工業、特級)及びアセトニトリル(CH3CN、「AN」とも称する)( 和光純薬工業、特級)を用い、脱イオン水により調製した(この電解液を「AN電解液」とも称する)。
電解液の銅濃度及び硫酸濃度は、水1wt%以上、CuSO4 0.24mol/dm3及びH2SO4 1.8mol/dm3に統一した。
分極曲線の測定に用いた3種類の電解液組成を表2に記す。
なお、本実験ではAN電解液中にCl-を添加していない。一般的な電解液では、Cl-を添加しないとスライムが発生するが、AN電解液では、Cl-がなくてもスライムは発生しない。これはCu(I)がANと安定的な錯体を形成するためと考えられる。
【0078】
分極曲線の測定は、溝等を設けていない回転ディスク電極装置(北斗電工、HR-201及びHR-202)により行った。対極は銅線(ニラコ、99.9wt%)、参照極は飽和カロメル電極(SCE)(東亜DKK、HC-205C)を使用した。
なお、電位は全てSCE基準である(以降の試験においても同様。)
電極面積0.2cm2の白金ディスク電極(北斗電工、HR-D2)上に、30℃のCuSO4 0.5 mol/dm3及びH2SO4 1.0mol/dm3からなる電解液を用い、−0.4Vの一定電位で30秒間、銅を電析したものを作用極とした。
カソード分極曲線の測定には、表2に示した3種類の電解液を用い、0、500、2000rpmの各電極回転速度にて浸漬電位から卑な方向に、100mV/minの電位走査速度で行った。電解液の温度は30℃とした。
【0079】
【表2】
【0080】
(結果及び考察)
表2に示した典型電解液(A浴)、添加剤フリー電解液(B浴)及びAN電解液(C浴)を用い、電極回転速度を変化させた場合のカソード分極曲線測定を行った。その結果を図7に示す。
図7において、A浴では0〜−0.3Vの電位領域で、電極回転速度の増加に伴い電流値が減少する傾向が観察された。この傾向は、電析反応抑制剤として作用するJGBの吸着が拡散支配によるためと考えられる。一方、B浴及びC浴では、そのような傾向は観察されなかった。
また、図7(b)及び図7(c)を比較し、アセトニトリル添加の効果をみると、浸漬電位が、B浴では0.044Vであるのに対し、C浴では−0.076Vであり、大きく卑側にシフトしていた。
【0081】
<試験4:電流効率の測定>
本発明を想到する上で基礎とした電流効率の測定試験について説明する。
【0082】
(試験方法)
電流効率は、溝等を設けていない回転ディスク電極装置を用い、電析電気量と溶解電気量の比から算出した。電流効率は、電析及び溶解のいずれにおいても、式(1)に示す反応で進行するとして計算した。
Cu(II)+2e-⇔Cu・・・・(1)
【0083】
電極上への銅の電析には、表2に示した3種類の電解液を用い(電解液の温度は330℃)、作用極は電極面積0.2cm2の白金電極、対極は銅線(ニラコ、99.9%)、参照極はSCEを使用した。
それぞれの電解液で電流密度を制御し、電極回転速度は0、500及び2000rpmで電析させた。このとき、通電電気量は6.75C/cm2の一定とした。
銅の電析量は、アノード分極し、その溶解反応に消費された電気量より算出した。
銅が電析した電極をCuSO4 0.5mol/dm3及びH2SO4 1.0mol/dm3の溶液中において、0.2Vで白金電極上の銅を電気化学的に溶解させ、溶解電流密度が2mA/cm2未満となったときを終点とし、流れた電気量をクーロンメーターにより測定した。
銅の電析量を溶解電気量から算出する方法を採用したのは、誘導結合プラズマ発光分析装置(ICP)などの分光分析法に比べて分析時間を短縮できるためである。
【0084】
(結果及び考察)
(1)電流効率の測定について
表2に示した3種類の電解液をそれぞれ用い、溝等を設けていない回転ディスク電極装置により様々な電流密度における電流効率を測定した。なお、電極回転速度は500rpmとした。結果を図8に示す。
図8より、A浴では、100mA/cm2以下の電流密度領域において80%以上の電流効率を維持し、200 mA/ cm2で電流効率が26.5%まで低下した。同様にB浴でも100mA/cm2以下の電流密度領域において80%以上の電流効率を維持し、200mA/cm2で電流効率が72%にまで電流効率が低下した。これらの電流効率の低下は、図7に示した分極曲線測定結果から分かるように、副反応である水素発生による。
一方、C浴では、10mA/cm2から200mA/cm2まで、電流密度の増加にともない電流効率が0%から67%まで増加した。電流密度が大きくなるに従い、電流効率増加の傾きは小さくなった。
B浴とC浴では、流速(電極回転速度)に対する電流量の変化に違いはみられなかった(図7)が、電流効率においては両者に大きな違いがあることが分かった(図8)。
【0085】
(2)電流効率に対する流速の影響について
銅の電流効率に対する流速の影響について検討した。
表2に示した3種類の電解液を用い、電極回転速度を0及び2000rpmと変化させた場合の電流効率を測定した。なお、図8の電極回転速度が500rpmの場合の結果も併せて図9に示した。
A浴及びB浴では、電極回転速度が500及び2000rpmにおいて、実験を行った0〜20mA/cm2の全ての電流密度において共に高い電流効率を維持し、有意な差はなかった。しかし、電極回転速度が0rpmの場合、電流密度が大きくなるにしたがい電流効率は大きく低下した。これは、水素発生反応が起こっているためである。
一方、C浴では、電極回転速度が500及び2000rpmにおいて電流効率は16%未満と著しく低かった。しかし、電極回転速度が0rpmの場合、5mA/cm2においても銅の電析が観察され(電流効率25%)、電流密度が20mA/cm2では電流効率が63%であった。これは、同じ条件下でのANを含まないA浴の42%、B浴の53%よりも高い。AN電解液では、流速が小さいほど電流効率が高くなる特徴があることが分かった。
【0086】
(2) 電流効率に影響を与える要因
銅の電析反応は、一般には以下の反応で表される。
Cu(II)+e-→Cu(I)・・・・(2)
Cu(I)+e-→Cu ・・・・(3)
【0087】
AN電解液では、電流効率が約60%以下であり、電流密度や流速でその電流効率が大きく変化した(図8及び図9)。つまり、AN電解液を用いた電析においては、式(2)及び(3)で示される銅の電析以外の反応も寄与していると考えられる。
ANはCu(I)と錯体を形成するため、ANを含む硫酸溶液中においてはCu(I)が安定となり、以下の均化反応(不均化反応の逆反応)が起こる。
Cu+Cu(II)→2Cu(I)・・・・(4)
式(4)は、カソード反応及びアノード反応で構成され、それぞれの反応は以下である。
Cu(II)+e-→Cu(I)・・・・(2)
Cu→Cu(I)+e- ・・・・(5)
【0088】
AN電解液中では、式(4)で示されるように、Cu(II)による銅の溶解反応が起こっており、これが電流効率が低下する原因になっていると予想される。そこで、本条件下においてAN電解液中で銅の溶解が起こるのか溶解試験を実施した。
6.75C/cm2の銅が電析した白金ディスク電極を、電極回転速度500rpmにて30℃のC浴中に浸漬させた。白金と銅では浸漬電位が異なるため、溶解の終点では浸漬電位が貴に遷移する。12min後、電位が急激に貴側へ変化し、白金電極面が露出していた。
この浸漬電位の変化より、銅が溶解するまでの時間を求め、金属銅がCu(I)で溶解する式(5)の平均電流密度を算出した。その値は4.7mA/cm2となり、図7(c)の500rpmでターフェル直線と浸漬電位の交点から決定した腐食電流密度の約5mA/cm2とほぼ同じ値となった。
これより、図8(c)で示したAN電解液の電流効率が約60%以下であり、また図7(c)において浸漬電位が卑側にシフトしていたのは、銅の溶解反応を含む均化反応(式(4))が起こっているためと考えられる。
【0089】
(4)電流効率に影響を与える要因の考察
以上の結果より、図10に示す反応モデルを仮定する。AN電解液中における銅の電析反応は、Cu(II)のバルクから電極表面への物質移動(過程I)、Cu(II)sのCu(I)sへの還元(過程II)及びCu(I)sからCuへの還元(過程IV)を経て進む。なお、添字sは電極表面付近のイオン種を示す。
式(4)の均化反応も起こっている(過程V)。図10において、II及びVの反応経路により生成したCu(I)sは以下に示すようにバルクへの拡散(過程III)或いは金属銅へ還元(過程IV)される。
Cu(I)s→Cu(I)b ・・(過程III)・・(6)
Cu(I)b+e- →Cu・・(過程IV)・・(7)
ここで、添字bは溶液バルクのイオン種を意味する。AN電解液を用いた銅の電流効率は、図10の過程I〜Vの速度のバランスで決定される。
【0090】
AN電解液を用いた銅電析において、電流密度が一定(電析速度(過程IIとIVの和)が一定)のとき、流速が大きいほど電流効率が減少するのは、流速が大きいと過程Iが加速され、さらに過程Vが加速されることで、銅の溶解速度の割合が電析に比べ大きくなるためと考えられる。流速が一定(過程I及びIIIの物質移動速度が一定)のとき、電流密度が小さいほど電流効率が減少するのは、過程IIとIVで表される電析速度が小さいので、過程Vによる銅の溶解で相殺されるためと考えられる。
以上の検討から、C浴では銅電析の電流効率に影響を与える要因は、大きく2つあることが分かる。一つは、(イ)流速が大きいほど電流効率が低下する効果(流速の効果)であり、もう一つは、(ロ)電流密度が小さいほど電流効率が低下する効果(電流密度の効果)である。
一般的な電解液の電流効率は、水素発生の起こらない領域において流速や電流密度に影響を受けない。典型電解液においても電流効率はほぼ100%(図9(a))であり、AN電解液が特異的な性質を持っているといえる。
【0091】
<試験5:微細孔への銅の電析>
本発明を想到する上で基礎とした微細孔への銅の電析試験について説明する。
【0092】
(試験方法)
銅の埋め込みは、窒化タンタル、タンタルバリア層を順次形成し、最表面に約10nmの銅シード層を形成させた微細孔(径:150〜200nm、深さ:約700nm)を有する加工済みのシリコンウエハ(グローバルネット社製)を1.5cm×1.1cmに切り出し、カソード電極として使用した。
微細孔への銅電析には、シリコンウエハ用精密めっきセル(山本鍍金試験器、マイクロセルI型)を使用した。
露出面積が1.4cm2となるように、1.4cm×1.0cmの窓を設けたテフロン製マスクでシリコンウエハカソードを被覆した。
アノードには銅板を使用し、アノード電極窓の面積は0.96cm2とした。
電解液の温度は25℃、電解液量は0.25dm3とした。
表2に示した3種類の電解液を用い、アノードとカソードの間の電解液を約0.8或いは2.5Hzで攪拌棒を揺動させながら、ポテンシオスタット(北斗電工、HA-151)を使用し、所定の電流密度にて電析した。
電解液中への電極浸漬と同時に所定の電流を印加した。
通電電気量は、1.44C/cm2の一定とした。
電析後のウエハ電極を水洗し乾燥させ、試料の断面観察を集束イオンビーム加工観察装置/走査型イオン顕微鏡(FIB-SIM)(エスアイアイナノテクノロジー、SMI9200)により行った。
【0093】
(結果及び考察)
(1)微細孔への銅の埋め込み性
試験3及び4の検討結果より、AN電解液を微細孔への銅埋め込みに適用する場合には、流速の効果と電流密度の効果のバランスによって埋め込み性が変化すると考えられる。そこで、微細孔を有する加工済みシリコンウエハに銅を電析し、断面観察を行った。その結果を図11に示す。
C浴を用いた場合、孔の底部においては銅が電析せず、孔の上部(36%)にのみ銅が電析した。
【0094】
図11の孔上部にだけ銅が電析するのは、(ロ)の流速の効果より(イ)の電流密度の効果が優先となっていると考えられる。つまり、微細孔の底部の電流密度が銅が電析できるほど大きくなく、孔上部にだけ銅が電析したものと考えられる。
ところで、AN電解液にCl-を100ppm添加すると、埋め込み性がさらに悪くなる結果を得た。一般的にCl-は硫酸銅電解液中で銅の溶解を促進させるが、AN電解液中においても銅の溶解を速め、微細孔底部に銅がより電析しなくなったものと予想できる。従って、めっき液中の塩化物イオンは100ppm未満とすることが望ましい。
逆に(ロ)の流速の効果を支配的にできれば、孔埋め込みができるはずである。図9(c)より、電流密度が10mA/cm2で流速の違いによる銅の電析量の比が最大となり、埋め込みに好都合となる。
【0095】
次に、電流密度を変化させて銅の電析を行い、埋め込み性を調べた。ただし、図11において微細孔底部に銅が電析していないことから、図11の電流密度よりも高い電流密度で実験を行った。その結果を図12に示す。
図11で示した電流密度10mA/cm2の場合、孔上部からの埋め込み率が36%であったのに対し、図12より電流密度20mA/cm2では67%、電流密度30mA/cm2では70%、電流密度40mA/cm2では76%と、電流密度の増加に伴い埋め込み率が増加した。
【0096】
次に、微細孔への銅の埋め込みに対する流速の影響について検討を行った。
流速が大きいと、電流効率(銅の電析量)が低下する。よって、ウエハ上部の流速をより大きくすれば微細孔内外での流速差が大きくなり、孔上部に比べて孔底部の電析がより優先的になると考えられる。そこで、図12(c)で示した電流密度で攪拌棒の揺動周波数を約0.8Hzから約2.5Hzに増加させ、微細孔への銅の電析を行った。その結果を図13に示す。
これより、流速を大きくさせることによって、孔の底部まで銅の電析が起こることが分かった。
典型的な微細孔への銅埋め込み用電解液は、キャリア、ブライトナ、レベラや塩化物イオンによって分極を増大或いは減少させ、電析速度を局所的に制御し、埋め込みを実現させている。しかし、ANは、これら添加剤とは異なる機能で埋め込みを可能にすることが分かった。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】(A)〜(D)は、銅配線の製造方法を工程順に説明した断面図である。
【図2】試験1で使用したセルの構成を説明した図である。
【図3】試験1で使用した被めっき体の構成を説明した図である。
【図4】試験1の評価に用いた孔底厚み(H)及び表面厚み(h)を説明するための図である。
【図5】試験2で使用した回転ディスク電極装置の構成を説明した図である。
【図6】試験2の結果として、限界電流密度と電極回転速度との関係を示したグラフである。
【図7】試験3において、電極回転速度を変化させた場合のカソード分極曲線を示したグラフであり、(a)は典型電解液(A浴)、(b)は添加剤フリー電解液(B浴)、(c)はAN電解液(C浴)を用いた時のグラフである。なお、図中の(i)(ii)(iii)はそれぞれ電極回転速度(i)0rpm、(ii)500rpm、(iii)2000rpmを示すものである。
【図8】試験4において、電極回転速度500rpm、通電電気量6.75C/cm2一定の条件下で、電流密度を変化させた場合の電流効率の変化を示すグラフであり、(a)は典型電解液(A浴)、(b)は添加剤フリー電解液(B浴)、(c)はAN電解液(C浴)を用いた時のグラフである。
【図9】試験4において、電極回転速度毎に電流密度を変化させた場合の電流効率の変化を示すグラフであり、(a)は典型電解液(A浴)、(b)は添加剤フリー電解液(B浴)、(c)はAN電解液(C浴)を用いた時のグラフである。
【図10】電解液中における、銅の析出の反応モデルを示す図である。
【図11】試験5において、電解液を0.8Hzで攪拌棒を揺動させながら、10mA/cm2で電析した場合に、得られた試料の断面をFIB-SIMで観察した際の写真であり、AN電解液(C浴)を用いた時の写真である。
【図12】試験5において、AN電解液(C浴)を電解液に用いて、電解液を0.8Hzで攪拌棒を揺動させながら、所定の電流密度で電析した場合に、得られた試料の断面をFIB-SIMで観察した際の写真であり、(a)は20mA/cm2、(b)は20mA/cm2、(c)は30mA/cm2で電析した時の写真である。
【図13】試験5において、AN電解液(C浴)を電解液に用いて、電解液を2.5Hzで攪拌棒を揺動させながら、40mA/cm2の電流密度で電析した場合に、得られた試料の断面をFIB-SIMで観察した際の写真である。
【符号の説明】
【0098】
1A 基板
1B 絶縁膜
2 溝又は孔
3 バリアメタル膜
4 下地導電膜
5 銅層
6 銅配線
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば銅配線を製造する際に行うダマシン法などに好適に用いることができる銅層エッチング方法、及びこの銅層エッチング方法を用いた銅配線の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスには、素子間を接続する配線溝(トレンチ)や、多層配線間を電気的に接続する配線接続孔(ビアホール或いはコンタクトホール)が多数設けられる。
これら配線溝や配線接続孔内に埋め込む導電性材料としては、従来、アルミニウムが使用されてきたが、半導体デバイスの高集積化、微細化に伴い、これまでのアルミニウムに代わり、電気抵抗率が低く(低抵抗ともいう)、エレクトロマイグレーション耐性にも優れた銅が注目され実用化が進められている。
【0003】
銅配線の製造方法としては、シリコンウエハ等からなる基板上に形成された絶縁膜に溝や孔を形成しておき、その上にバリアメタル(拡散防止膜)及びCu膜(導通を得るための下地導電膜)を順次積層した後、電気めっきによって前記溝や孔内に銅を埋め込みつつ表面に銅層を形成し、その後、化学機械研磨(CMP;Chemical Mechanical Polishing)等によって余分な銅層を除去して銅配線を製造する、いわゆるダマシン法が採用されている(特許文献1参照)。このような電気めっき(電解めっきともいう)によって形成された銅配線は、膜中の不純物濃度が低く、電気抵抗が低いため、半導体デバイスの高速化に有利である。
【0004】
このような銅配線の製造方法において、余分な銅層を除去するために行われる化学機械研磨(CMP)は、研磨対象物をキャリアと呼ばれる部材で保持し、研磨布または研磨パッドを張った平板(ラップ)に押し付けて、各種化学成分を含んだ研磨液と硬質の微細な研磨剤を含んだスラリーを一緒に相対運動させることで、被処理面を平坦にする表面処理方法であり、ダマシン法では一般的に採用されている。
しかしながら、このような化学機械研磨(CMP)は、通常は前工程、すなわち電気めっき工程とは別の工程として行わなければならず、作業負担が大きいため、化学機械研磨(CMP)に代わるか、或いは化学機械研磨(CMP)の負担を軽減できる、新たな銅層エッチング方法(すなわち、余分な銅層を除去する方法)の開発が望まれていた。
【0005】
従来提案されている銅層のエッチング方法としては、特許文献2において開示されている、非水系の配位溶剤及びハロゲンイオン基発生種からなる剥離組成物を用いて残留銅層を除去する方法などを挙げることができる。
【0006】
【特許文献1】特表2007−115886号公報
【特許文献2】特開2001−38700号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、かかる課題に鑑みて、化学機械研磨(CMP)に代わるか、或いは化学機械研磨(CMP)の負担を軽減することができる、新たな銅層エッチング方法、並びにこれに用いるエッチング処理液、並びにこれを用いた銅配線の製造方法を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、1価の銅イオンと錯体を形成し、1価の銅イオンとの錯化定数が1×103より高い値を示し、且つ使用環境下において1価の銅イオンと形成する錯体の溶解度が0.5g/L以上の銅錯化剤、若しくは、1価の銅イオンと錯体を形成し、1価の銅イオンとの錯化定数が1×103より高い値を示し、且つ2価の銅イオンとの錯化定数が1×1020以下の値を示す銅錯化剤を1wt%以上と、水を1wt%以上とを含むエッチング処理液を、強制攪拌させながら銅層からなる被処理面に接触させることを特徴とする銅層エッチング方法を提案する。
【0009】
また、本発明の銅層エッチング方法の好ましい利用態様として、配線を形成する予定箇所に設けられた基材の溝や孔内に銅を埋め込みつつ基材表面に銅層を形成し、その後、上記の銅錯化剤を1wt%以上と、水を1wt%以上とを含むエッチング処理液を、強制攪拌させながら前記銅層表面に接触させることにより、銅層の少なくとも一部を除去することを特徴とする銅配線の製造方法を提案する。
【0010】
上記のような銅錯化剤を1wt%以上含む錯化剤含有水溶液は、銅を溶解する効果があるため、かかる水溶液を強制攪拌させながら銅層表面に接触させることにより、余分な銅層を除去することができる。よって、少なくとも化学機械研磨(CMP)の負担を軽減することができ、好ましくは化学機械研磨(CMP)を省略することもできる。
【0011】
また、上記エッチング処理の際に、基材がカソードとなるように還元電流を該基材に印加しながら、エッチング処理液を前記銅層表面に接触させることにより、余分な銅層の除去と銅配線の補修とを同時に行わせることができる。すなわち、上記のような銅錯化剤を1wt%以上含む錯化剤含有水溶液は、銅を電気めっきする際の電解液としても好適に機能し、特に凹部への銅の埋め込みに優れた効果を発揮するため、基材がカソードとなるように還元電流を該基材に印加することにより(銅成分を添加するとさらに好ましい)、電気めっきによる孔埋めも同時に進行し、詳しく後述するように余分な銅層の除去と銅配線の補修とを同時に行うことができる。
【0012】
このように、銅錯化剤を1wt%以上含む錯化剤含有水溶液(銅成分を添加するとさらに好ましい)は、銅を電気めっきする際の電解液としても優れた効果を発揮するため、エッチングの工程を電気めっき工程と連続して行うことができる。
ただし、本発明が提案する銅層エッチング方法及び銅配線の製造方法は、銅錯化剤を含む電解液で、基材の溝や孔内に銅を埋め込みつつ表面に銅層を形成した後に適用する場合に限定するものではなく、他の方法により基材の溝や孔内に銅を埋め込みつつ表面に銅層を形成した後、例えばPEG、SPS、JGBなどの有機系添加剤や塩化物イオンを添加した電解液を用いて基材の溝や孔内に銅を埋め込みつつ表面に銅層を形成した後にも適用可能である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施形態の好ましい一例として、銅配線の製造方法について説明するが、本発明が、以下に説明する実施形態に限定されるものではない。特に本発明の銅層エッチング方法は銅配線の製造方法以外にも適用可能である。
【0014】
ここでは、基材の配線を形成する予定箇所に設けられた溝や孔内に銅を埋め込みつつ表面に銅層を形成した後、錯化剤含有水溶液を用いて、表面の余分な銅層を除去(エッチング)して銅配線を製造する方法(以下「本銅配線製造方法」と称する)について説明するが、本発明の銅層エッチング方法が、このような銅配線の製造方法の利用に限定されるものではない。
【0015】
ここで、本銅配線製造方法にかかる具体的な一例を紹介する。
図1に示すように、シリコンウエハ等からなる基板1A上に、絶縁物質からなる酸化膜等の絶縁膜1Bを形成し、絶縁膜1Bにおける配線パターンを形成する予定箇所に溝又は孔2を設け(図中の(A)参照)、次に、Ti、Ta、W或いはこれらの窒化物等からなるバリアメタル膜(拡散防止膜)3及びCu下地導電膜(導通を得るための下地導電膜)4を順次形成し(図中の(B)参照)、その上で、前記溝又は孔2内に銅を埋め込みつつ基板1A表面に銅層5を形成し(図中の(C)参照)、次いで、基板1A表面に形成された銅層5の少なくとも一部を除去して銅配線6を露出させて銅配線を形成する(図中の(D)参照)。この際、さらに耐マイグレーション性を向上させるために、露出した銅配線6上に金属や酸化物、有機物を積層してもよい。
以下、この具体例を中心に本銅配線製造方法について説明するが、本銅配線製造方法がかかる具体例に限定されるものではない。
【0016】
<配線接続孔・配線溝>
銅を埋め込む対象である配線接続孔(ビア)又は配線溝(トレンチ)の大きさは特に限定するものではないが、本銅配線製造方法は、例えば、深さが0.1μm〜2.0μmであり、且つ深さ/幅で求められるアスペクト比が3〜5であるという極めて微細な孔及び溝に対しても十分に埋め込みが可能であるから、少なくともそれ以上に径が大きいか、或いは深さの浅い孔や溝に対しては十分に埋め込み可能である。なお、微細な孔或いは溝の幅とは、孔が例えば長孔であればその短径を意味し、溝の場合にはその短手長を意味するものである。
但し、本発明の限界が、前記の孔径や溝幅或いはアスペクト比であるという意味ではない。
【0017】
例えば孔径或いは溝幅が100μmで深さが200μmのようなSoC (システム オン チップ)やSiP (システム イン パッケージ)、MEMS (メムス、機械電気マイクロシステム)などの貫通電極用の孔或いは溝に対して十分に埋め込み可能である。
また、例えば孔径或いは溝幅が200μmで深さが50μmのような、プリント配線板のビアフィリングめっきの孔或いは溝に対しても十分に埋め込み可能である。
【0018】
配線接続孔(ビア)又は配線溝(トレンチ)の形状は特に限定するものではない。ちなみに、孔径或いは溝幅が0.2μm以下の極めて微細な孔或いは溝になると、開口部から奥まで同径の孔や溝を設けること自体が困難であるため、通常は、図1に示すように開口部から底部に向って窄まった断面形状となる。
【0019】
<銅>
埋め込む対象である銅、言い換えれば電気めっきする銅は、純粋な銅であっても、銅以外の金属を不可避不純物として含有する銅であってもよい。また、例えば耐食性を高める目的でCoなどの金属を微量添加(例えば5質量%未満)した銅合金など、銅を主成分(少なくとも80質量%以上が銅)とする銅合金であってもよい。このような銅合金であっても、純粋な銅と同様に本発明の効果が得られると考えられる。
【0020】
<配線接続孔又は配線溝内への銅の埋め込み>
配線接続孔又は配線溝内へ銅を埋め込む方法は、特に限定するものではないが、好ましくは電気めっきによる方法、好ましくは錯化剤含有電解液を用いて、該電解液を強制攪拌しながら電気めっきすることにより、配線接続孔又は配線溝内に銅を埋め込む方法を挙げることができる。
ここでは、好ましい埋め込む方法として、電気めっきによる方法、上記の具体例でいえば、溝又は孔2内に銅を埋め込みつつ基板1A表面に銅層5を形成する方法について説明するが、これに限定されるものではない。
【0021】
(電解液)
本銅配線製造方法で用いる電解液(以下「本電解液」ともいう)としては、銅錯化剤を1wt%以上と、水を1wt%以上と、銅成分とを含む電解液(以下「錯化剤含有電解液」と称する)を用いるのが好ましい。
【0022】
ここで、銅錯化剤としては、1価の銅イオンと錯体を形成し、1価の銅イオンとの錯化定数が1×103より大きいことが必要であり、上限値は特に限定するものではないが、現実的には1×1040程度であると考えられ、好ましくは1×104〜1×1015である。1価の銅イオンとの錯化定数が過度に大きい場合には、銅錯体が安定化し過ぎて電気めっき時の極間電圧が上がり、実用的でないため好ましくない。
ちなみに、アセトニトリルの1価の銅イオンとの錯化定数は1×104であり、この値は、P.Kamau and R.B.Jordan:Inorganic Chemistry,vol.40,Issue
16,p.3879(2001)の記載に基づくものである。
【0023】
用いる銅錯化剤は、さらに2価の銅イオンとの錯化定数が1×1020以下である(2価の銅イオンと錯体化しないものも含む)か、或いは、使用環境下において1価の銅イオンと形成した錯体の溶解度が0.5g/L以上である必要であり、さらに、これら両方の条件を満足する銅錯化剤が好ましい。
2価の銅イオンとの錯化定数に関して言えば、好ましくは1×1018以下であり、特に好ましくは1×1016以下である。
また、1価の銅イオンと形成した錯体の溶解度に関して言えば、好ましくは5g/L以上であり、特に好ましくは溶解度が10g/L以上である。
【0024】
本銅配線製造方法では、銅錯化剤と1価の銅イオンとが形成する錯体を安定化させることがポイントの一つであり、そのためには1価の銅イオンとの錯化定数が1×103より大きい銅錯化剤を用いることが必要である。また、同様の理由で、用いる銅錯化剤が2価の銅イオンとも錯体化する場合には、2価の銅イオンとの錯化定数が1×1020以下であることも重要である。他方、1価の銅イオンと形成した錯体が、用いる液中において0.5g/L以上の溶解量がないと実用性がないと考えられる。
【0025】
なお、上記の「1価或いは2価の銅イオンとの錯化定数(K)」は、次のように定義される値である。
1価或いは2価の銅イオンMと銅錯化剤Aとから錯体MAn(Mとn個のAの錯体を示す)が形成される逐次反応(逐次反応:M+A→MA、MA+A→MA2、・・・)において、逐次錯化定数knを、
k1=[MA]/([M]・[A])、k2=[MA2]/([MA]・[A])、・・・と表すとき、
錯化定数(K)は、LogK=Logk1+Logk2+・・・で表される値である。
なお、[M]、[A]及び [MAn]はそれぞれの濃度(mol/L)の意である。
【0026】
本銅配線製造方法で用いる銅錯化剤としては、特に限定するものではないが、1価の銅イオンと錯体を形成し、1価の銅イオンとの錯化定数が1×103より高い値を示し、且つ使用環境下において1価の銅イオンと形成する錯体の溶解度が0.5g/L以上の銅錯化剤、若しくは、1価の銅イオンと錯体を形成し、1価の銅イオンとの錯化定数が1×103より高い値を示し、且つ2価の銅イオンとの錯化定数が1×1020以下の値を示す銅錯化剤として、例えばピロリン酸カリウム、シアン化ナトリウム、アセトニトリルなどを挙げることができる。中でも、1価の銅イオンとの錯化定数や溶解速度、並びに均一に混合できることを加味すると、アセトニトリルが特に好ましい。
【0027】
本電解液は、銅を溶解させる速度が0.05〜5mgmin-1cm-2、中でも0.07〜4mgmin-1cm-2、その中でも特に0.1〜3mgmin-1cm-2となるような量で前記銅錯化剤を含むものが好ましい。
【0028】
なお、「銅を溶解させる速度」とは、錯化剤含有電解液(温度25℃)又は錯化剤含有水溶液(温度25℃)に銅板を浸漬させ、限界電流密度が80mA/cm2となるように攪拌しながら銅板を溶解させた時の単位時間・単位面積当たりの銅板重量減少量から求められる値である。
【0029】
本電解液における銅錯化剤の濃度、すなわち銅錯化剤と水との合計量に対する銅錯化剤の混合比率は、1wt%以上であることが重要であり、好ましくは2wt%以上、特に4wt%以上であるのが好ましい。上限値は、特に限定するものではないが、環境負荷等を考慮すると50wt%程度であると考えられるが、硫酸銅の溶解量を確保する観点から27wt%であるのが好ましい。
【0030】
銅成分としては、例えば、アルカリ性のシアン化銅、ピロリン酸銅や酸性のホウフッ化銅、硫酸銅などの水溶性銅塩が好ましく、中でも硫酸銅及び硫酸を含む硫酸銅水溶液が好ましい。これらは、予め銅錯化剤と混合することができる。
この場合に加える硫酸濃度は、適宜調整可能であるが、通常は0.01mol/L以上、特に0.1mol/L〜2mol/Lとするのが好ましい。
【0031】
本電解液の好ましい具体例として、硫酸銅水溶液と銅錯化剤とを含む電解液を、純水によって希釈して、目的に合った所望の組成濃度に調整してなる電解液を挙げることができる。
【0032】
なお、本電解液は、ハロゲンイオン及び、キャリア、ブライトナ、レベラ等の有機系添加剤を実質的に含んでいても、含んでいなくてもよい。ハロゲンイオンや前記の有機系添加剤を実質的に含んでいなくても、埋め込み率を十分に高めることができる点は本電解液の特徴の一つではあるが、これらを含んでいれば更に効果を高めることが期待できるため、含んでいてもよい。
ここで、「実質的に含まない」とは、積極的に添加しないという意味であり、不可避的に含まれる場合は、これを許容する意味である。具体的濃度で言えば3ppm以下であるのが好ましい。
また、例えば光沢剤、錯化剤、緩衝剤、導電剤、有機化合物(にかわ、ゼラチン、フェノールスルフォン酸、白糖蜜など)、多価アルコール、チタンなどの添加剤を本電解液に添加することも可能である。
【0033】
(電解液の攪拌)
銅イオン錯化電解液を用いて電気めっきする場合、電解液の攪拌程度を高めることにより電流効率を低下させることができ、逆に電解液の攪拌を抑制することにより電流効率を高めることができるという意外な事実が判明した。よって、このような知見に基づいて攪拌条件を調整することで、液拡散の少ない微細孔(溝)内への銅の埋め込みにおいても、微細孔(溝)内部に積極的に電気めっきを施して埋め込み率を高めることができるようになり、さらには、被めっき体表面への銅の電析量を抑制することもできるようになった。なお、「被めっき体表面」とは、微細孔(溝)内の表面を包含するものではない(他においても同様)。
【0034】
電解液の攪拌方法は、特に限定するものではない。例えば被めっき体である基板を、めっき面である基板表面に対して垂直な軸を中心として回転させて電解液を攪拌する方法や、電解液内で攪拌具を振動させて電解液を攪拌する方法、電解液を流動させて電解液を攪拌する方法、その他の方法を採用することができる。
なお、前記の攪拌具としては、攪拌棒、攪拌羽、その他攪拌可能な部材を挙げることができる。
【0035】
微細孔(溝)内部に積極的に電気めっきを施して埋め込み率を高める一方、被めっき体表面への銅の電析量を抑制するためには、電解液の攪拌程度を所定の範囲に制御することが重要であり、好ましくは、対極として銅電極、参照極として飽和カロメル電極を用いて25℃の0.05mol/L硫酸銅+0.5mol/L硫酸を含む電解液を用いて浸漬電位からカソード方向に100mV/minで電位走査した際の限界電流密度が10mA/cm2〜150mA/cm2となるように電解液の攪拌程度を制御するのが好ましく、特に20mA/cm2〜80mA/cm2、中でも特に40mA/cm2〜80mA/cm2となるように電解液の攪拌程度を制御するのが好ましい。実際には、製造設備に電極位置を当てはめることで、限界電流密度を予め測定しておき、所定の限界電流密度になるように電解液の攪拌程度を制御するのが好ましい。
なお、本明細書における「限界電流密度」の語は全て上記定義における電解液の攪拌程度を示す指標としての限界電流密度の意味である。
【0036】
ここで、限界電流密度について補足する。
本発明では、電解液の攪拌程度を示す指標として限界電流密度を採用している。物質の移動限界電流は流速に依存することが知られており、前記の限界電流密度は、攪拌の程度と一定の関係があることが確認されている。したがって、限界電流密度は攪拌の程度を示すパラメータとして評価することができる。例えば後述する試験2で示すように、限界電流密度を電極回転速度に変換することも、電極回転速度を限界電流密度に変換することも可能である。なお、限界電流密度を規定する電極面積の基準は、孔(溝)内を含まない見かけ上の面積である。
【0037】
この限界電流密度は、電流密度と電極電位との関係をプロットすることにより求めることができるから、例えば実際に埋め込みめっきを行う電解槽において、下記条件の予備試験を行い、電流密度と電極電位との関係をプロットして限界電流密度を求めておき、所定の限界電流密度になるように、それぞれの攪拌方法における攪拌速度を調整することができる。
(予備試験の条件)
対極として銅電極、参照極として飽和カロメル電極を用いて、25℃の0.05mol/L硫酸銅+0.5mol/L硫酸の電解液中にて、浸漬電位からカソード方向に100mV/minで電位走査する。
【0038】
電解液の攪拌方法ごとに攪拌程度について検討すると、電解液の攪拌方法として、被めっき体である基板を、めっき面である基板表面に対して垂直な軸を中心として回転させて電解液を攪拌する方法を採用する場合には、100〜5000rpmで回転させるのが好ましく、特に300〜3000rpm、中でも特に600〜3000rpmで回転させるのがより一層好ましい。
また、電解液を攪拌具を振動させて電解液を攪拌する方法を採用する場合には、電解液を0.8Hz〜10Hzの周波数で攪拌具を振動させるのが好ましく、特に1.5Hz〜5Hz、中でも特に2.5Hz〜3.6Hzの周波数で振動させるのが好ましい。
【0039】
(陰極)
本銅配線製造方法で用いる陰極、すなわち被めっき体となる基板の素材は、特に限定するものではない。半導体デバイスの基板材料は、通常シリコンウエハ等からなる基板上に酸化膜等の絶縁膜を形成してなる構成のものであるため、それだけでは電気的導通が得られず電気めっきすることができない。そこで、前記絶縁膜上に導電性材料、例えば銅などをスパッタその他の手段により積層させて下地導電膜を形成するのが一般的である。
【0040】
(陽極)
本銅配線製造方法で用いる陽極すなわち対極としての素材は、特に限定するものではない。例えば銅のほか、白金、白金めっきチタンなどの不溶性電極、その他の電極板を例示できるが、中でも銅が好ましい。
【0041】
(電解温度)
電解温度、すなわち電解液の温度は、特に限定するものではなく、20℃以上であればよい。中でも、製造コストや有機成分の蒸発を少なくするために25〜45℃となるように制御するのが好ましい。
【0042】
(電流密度)
電流密度は、特に限定するものではないが、好ましくは5mA/cm2以上に制御するのがよい。上限値は特に限定されないが、500mA/cm2程度が現実的な上限値になると考えられる。
より好ましくは、目的に応じて電流密度をさらに制御するのが好ましく、攪拌程度を示す限界電流密度が大きな場合には電流密度を大きくするのが好ましい。例えば、微細孔(溝)内部に積極的に電気めっきを施して埋め込み率を高める一方、被めっき体表面への銅の電析量を抑制するためには、電流密度を10mA/cm2〜200mA/cm2、特に20mA/cm2〜100mA/cm2、中でも特に40mA/cm2〜80mA/cm2に制御するのが好ましい。
【0043】
(電解時間)
電解時間(通電時間)は、特に限定するものではない。孔や溝の大きさや形状等に応じて適宜調整するのがよい。
【0044】
(好ましい電解条件)
以上の点を総合すると、微細孔(溝)内部に積極的に電気めっきを施して埋め込み率を高める一方、被めっき体表面への銅の電析量を抑制するための好ましい電解条件の一例として、電解液中の硫酸銅濃度が0.24mol/Lで硫酸濃度が1.8mol/Lのとき、電解液中の銅錯化剤濃度が1wt%〜27wt%であり、電解液の攪拌程度を示す限界電流密度が15mA/cm2〜80mA/cm2であり、電流密度が40mA/cm2〜100mA/cm2であるという条件を挙げることができる。
【0045】
(装置)
電気めっき装置の構成については、特に限定するものではない。例えば、電解液を収容するめっき槽を備え、このめっき槽は電解液排水部と電解液供給部とを備え、めっき槽内には、基板(例えば半導体ウエハ)保持する基板ホルダーと、電源の陽極が接続されたアノード電極と、攪拌棒や攪拌羽などの攪拌機構とが配設されてなる電気めっき装置や、電極が回転して電解液を攪拌し得る構成の回転ディスク電極装置などを挙げることができる。
【0046】
<エッチング>
次に、エッチング、すなわち、基板表面に形成された余分な銅層の除去方法について説明する。
【0047】
銅錯化剤を1wt%以上と、水を1wt%以上とを含む錯化剤含有水溶液は、銅イオンとの錯体を形成し易く、金属銅を溶解する作用を有るため、エッチング処理液として用いることができる。よって、かかる水溶液を強制攪拌させながら、エッチング処理を受ける基材としての基板表面に形成された銅層に接触させることにより、余分な銅層を除去することができる。
よって、エッチング処理液として用いる錯化剤含有水溶液は、銅錯化剤を1wt%以上と、水を1wt%以上とを含む水溶液であるのが好ましい。
【0048】
ここで、銅錯化剤としては、1価の銅イオンと錯体を形成し、1価の銅イオンとの錯化定数が1×103より大きいことが必要であり、上限値は特に限定するものではないが、現実的には1×1040程度であると考えられ、好ましくは1×104〜1×1015である。1価の銅イオンとの錯化定数が過度に大きい場合には、銅錯体が安定化し過ぎて電気めっき時の極間電圧が上がり、実用的でないため好ましくない。
【0049】
用いる銅錯化剤は、さらに2価の銅イオンとの錯化定数が1×1020以下である(2価の銅イオンと錯体化しないものも含む)か、或いは、使用環境下において1価の銅イオンと形成した錯体の溶解度が0.5g/L以上である必要であり、さらに、これら両方の条件を満足する銅錯化剤が好ましい。
2価の銅イオンとの錯化定数に関して言えば、好ましくは1×1018以下であり、特に好ましくは1×1016以下である。
また、1価の銅イオンと形成した錯体の溶解度に関して言えば、好ましくは5g/L以上であり、特に好ましくは溶解度が10g/L以上である。
【0050】
エッチングに用いる銅錯化剤としては、特に限定するものではないが、1価の銅イオンと錯体を形成し、1価の銅イオンとの錯化定数が1×103より高い値を示し、且つ使用環境下において1価の銅イオンと形成する錯体の溶解度が0.5g/L以上の銅錯化剤、若しくは、1価の銅イオンと錯体を形成し、1価の銅イオンとの錯化定数が1×103より高い値を示し、且つ2価の銅イオンとの錯化定数が1×1020以下の値を示す銅錯化剤として、例えばピロリン酸カリウム、シアン化ナトリウム、アセトニトリルなどを挙げることができる。中でも、1価の銅イオンとの錯化定数や溶解速度、並びに均一に混合できることを加味すると、アセトニトリルが特に好ましい。
【0051】
また、エッチング処理液は、銅を溶解させる速度が0.05〜5mgmin-1cm-2、中でも0.07〜4mgmin-1cm-2、その中でも特に0.1〜3mgmin-1cm-2となるような量で前記銅錯化剤を含むものが好ましい。
【0052】
本発明の効果を得るためには、エッチング処理液(錯化剤含有水溶液)における銅錯化剤の濃度、すなわち銅錯化剤と水との合計量に対する銅錯化剤の混合比率が、1wt%以上であることが好ましく、特に2wt%以上、中でも特に4wt%以上であるのが好ましい。上限値は、特に限定するものではないが、環境負荷等を考慮すると50wt%程度であると考えられるが、硫酸銅の溶解量を確保する観点から27wt%であるのが好ましい。
【0053】
なお、エッチング処理液(錯化剤含有水溶液)には、ハロゲンイオンや、キャリア、ブライトナ、レベラ等の有機系添加剤を添加してもよい。また、例えば光沢剤、錯化剤、緩衝剤、導電剤、有機化合物(にかわ、ゼラチン、フェノールスルフォン酸、白糖蜜など)、多価アルコール、チタンなどの添加剤を添加することも可能である。
【0054】
エッチング処理液の攪拌方法としては、前述の電気めっきの場合と同様、基板表面に対して垂直な軸を中心として回転させてエッチング処理液を攪拌する方法や、エッチング処理液内で攪拌具を振動させてエッチング処理液を攪拌する方法、エッチング処理液を流動させてエッチング処理液を攪拌する方法、その他の攪拌方法を採用することができ、攪拌程度は、対極として銅電極、参照極として飽和カロメル電極を用いて25℃の0.05mol/L硫酸銅+0.5mol/L硫酸を含むエッチング処理液を用いて浸漬電位からカソード方向に100mV/minで電位走査した際の限界電流密度が10mA/cm2〜150mA/cm2、特に20mA/cm2〜80mA/cm2となるようにエッチング処理液の攪拌程度を調整するのが好ましい。
さらに、エッチング処理液の攪拌方法として、被めっき体である基板を、めっき面である基板表面に対して垂直な軸を中心として回転させる方法を採用する場合には、100〜5000rpm、特に600〜3000rpmで回転させるのがより一層好ましい。
また、エッチング処理液を所定の周波数で攪拌具を振動させる方法を採用する場合には、エッチング処理液を0.8Hz〜10Hz、特に1.5Hz〜5Hz、中でも特に2.5Hz〜3.6Hzの周波数で振動させるのが好ましい。
【0055】
より好ましい銅層エッチング方法としては、基板がカソードとなるように還元電流を被めっき体に印加すると共に、エッチング処理液を強制攪拌しながら基板表面の銅層に該エッチング処理液を接触させるのが好ましい。
銅錯化剤を1wt%以上と、水を1wt%以上とを含む錯化剤含有水溶液は、銅を電気めっきする際の電解液としても好適に機能するため、基板がカソードとなるように還元電流(負のバイアス)を印加することにより、電気めっきによる孔埋めを行うことができる。よって、銅の電気めっき(銅の電着)と余分な銅層の除去(エッチング)とを同時に行うことができる。特にこの錯化剤含有水溶液は、銅の孔埋め効果、つまり凹部内への銅の電着効果に優れている一方、微細孔(溝)部分の銅層表面が凹部状になる傾向があるため、この部分の電着効果が優先的に進み、全体として平坦になるように修復することができる。また、例えば銅層の除去が過度に進み、微細孔(溝)内の銅までも除去されて銅層表面が凹部状になったとしても、凹部への優れた電着効果によって微細孔(溝)部分の電着が優先して進み、平坦になるように修復することができる。よって、このようなオーバーエッチングを防ぎつつ余分な銅層を効果的に除去することができる。
【0056】
被めっき体に電流を流す際の電流密度は、前記電気めっき時の電流密度未満の電流密度に制御するのが好ましく、より好ましくは40mA/cm2未満、中でも好ましくは0.1mA/cm2〜10mA/cm2である。
【0057】
なお、錯化剤含有水溶液は、電気化学的平衡を制御することにより銅成分を含んでいなくても、銅の電気めっきを行わせしめることは可能であるが、より安定的な効果を得るためには、錯化剤含有水溶液に銅成分を添加するのが好ましい。
この際の銅成分としては、例えば、アルカリ性のシアン化銅、ピロリン酸銅や酸性のホウフッ化銅、硫酸銅などの水溶性銅塩が好ましく、中でも硫酸銅及び硫酸を含む硫酸銅水溶液が好ましい。これらは、予め銅錯化剤と混合することができる。この場合に加える硫酸濃度は、適宜調整可能であるが、通常は0.01mol/L以上、特に0.1mol/L〜2mol/Lとするのが好ましい。
【0058】
(好ましいエッチング条件)
以上の点を総合すると、オーバーエッチングを防ぎつつ余分な銅層を効果的に除去するための好ましいエッチング条件の一例として、エッチング処理液中の硫酸銅濃度が0.24mol/Lで硫酸濃度が1.8mol/Lのとき、エッチング処理液中の銅錯化剤濃度が1wt%〜27wt%であり、エッチング処理液の攪拌程度を示す限界電流密度が41mA/cm2〜80mA/cm2であり、電流密度が0.1mA/cm2〜10mA/cm2であるという条件を挙げることができる。
【0059】
このようにエッチング処理液を強制攪拌しながら該エッチング処理液と被めっき体表面の銅層とを接触させて被めっき体表面の銅層を除去する方法は、他のエッチング方法、例えば、被処理体をアノードとして電流を流す電解研磨法、研磨剤(砥粒)が有する表面化学作用又は研磨液に含まれる化学成分の作用と共に、研磨剤と研磨対象物との相対運動による機械的研磨による化学機械研磨法(CMP)、エッチング液に溶解させる方法などと、併用することが可能である。具体的には、例えば本発明の銅層エッチング処理液を用いて被めっき体表面の余分な銅層をある程度除去した後、化学機械研磨法(CMP)によって余分な銅層を除去することにより、従来の化学機械研磨法(CMP)の負担を軽減することができる。
【0060】
<効果>
本銅配線製造方法によれば、複数の添加剤を実質的に含まないでも、極めて微細な孔又は溝(例えば深さが0.1μm〜2.0μmで且つアスペクト比(深さ/幅)3〜5である孔又は溝)内に十分に銅を埋め込むことができ、極めて微細な銅配線を優れた精度で形成することができる。
【0061】
また、本銅配線製造方法で得られる銅配線は、純度が高いという特徴を有しており、特に銅錯化剤としてアセトニトリルを用いる場合には、得られる銅配線中にアセトニトリルが残らないため、不純物の濃度が低く、且つ比抵抗が十分に低い銅薄膜を得ることができる。
さらに、アセトニトリルをエッチング処理液に添加して得られる銅配線の配向性は、(111)面が優先配向となる傾向があるから、エレクトロマイグレーション耐性に優れた配線を得ることができる。具体的には、(111)面の相対積分強度を65%以上、好ましくは70%以上、中でも好ましくは80%以上の結晶配向性を得ることができる。
なお、(111)面の相対積分強度とは、X線回折チャートにおける(111)面、(200)面、(220)面及び(311)面のピーク面積の総和に対する(111)面のピーク面積の割合(%)を示す。
【0062】
このように、本銅配線製造方法によって形成される銅配線は、電子材料、例えばIC、LSI、CPU等の集積回路などの製造に有効に利用することができる。
【0063】
(用語の解説)
本発明において「電気めっき」とは、イオン化した金属を含む電解液に通電し、陰極の表面にめっき金属を析出させる方法を全て包含する。
また、本発明において「銅配線」とは、半導体回路及びプリント配線板の両方を含み、平面配線の他、フィルドヴィア、配線溝、配線接続孔、スルーホール等の3次元配線も含む概念である。
なお、本発明において、「X〜Y」(X、Yは任意の数字)と記載した場合、特にことわらない限り「X以上Y以下」の意と共に、「好ましくはXより大きい」或いは「好ましくはYより小さい」の意も包含する。
【実施例】
【0064】
以下、試験結果(実施例に相当)に基づいて本発明について説明するが、本発明の範囲が下記試験結果に限定されるものではない。なお、試験3〜5は、本発明を想到する上で基礎となった試験内容として説明するものである。
【0065】
<試験1:エッチング試験>
図2に示すように、(株)山本鍍金試験器製マイクロセルModelI型を使用して、シリコンウエハからなる基板表面に設けた多数の溝内に電気めっきにより銅の埋め込みを行った。
カソードには、図3に示すように、表面に酸化シリコンからなる絶縁膜を形成したシリコンウエハ基板(11mm×15mm×0.8mm)に、溝幅190nm、深さ700nmの配線溝を、190nm間隔で185本形成し、その表面にTaN及びCuを順次スパッタしてバリアメタル層、銅層を形成したものを使用した。
アノードには含燐銅板(8mm×12mm)を使用し、電極間距離を25mmに配置した。
【0066】
電解液には、硫酸銅水溶液とアセトニトリルとを混合した後、水濃度が1wt%以上になるように純水によって希釈して、Cu(II)濃度0.24mol/L、硫酸濃度1.8mol/L、アセトニトリル濃度14wt%に調整したものを用いた。
そして、250mLの電解液を2.5Hzの周波数で攪拌棒を振動させながら(限界電流密度41.0mA/cm2に相当)、ポテンシオスタット(北斗電工社製HA−151)を使用して電流密度40mA/cm2に制御しつつ、電解液温度25℃にて電気めっきを1.44C/cm2行い、銅層形成サンプルを得た。
【0067】
上記と同じ装置を使用し、上記で得られた銅層形成サンプルをエッチング処理液(25℃)中に浸漬し、エッチング処理液を2.5Hz(限界電流密度41.0mA/cm2)で強制攪拌しながら、サンプルに還元電流を電流密度:1mA/cm2又は2mA/cm2で印加して、1min〜4minエッチング処理を行い(表1参照)、エッチング効果を評価した。
【0068】
なお、エッチング処理液には、硫酸銅水溶液とアセトニトリルとを混合した後、水濃度が1wt%以上になるように純水によって希釈して、Cu(II)濃度0.24mol/L、硫酸濃度1.8mol/L、アセトニトリル濃度14wt%に調製したものを用いた。
【0069】
なお、下記表2の表面厚減少率(%)及び孔底厚減少率(%)は、図4に示す断面においてエッチング前の表面厚み(h0)及び孔底厚み(H0)を測定し、次の式で求めた値である。
表面厚減少率(%)={(h0−h)/h0}×100
孔底厚減少率(%)={(H0−H)/H0}×100
【0070】
【表1】
【0071】
(考察)
1mA/cm2、2minの条件では、表面厚減少率/孔底厚減少率が1を超え、選択的に表面層の銅がエッチングされることが分かった。
【0072】
<試験2>
攪拌の程度と限界電流密度との関係について試験し、限界電流密度を電極回転速度に変換する式を求めた。
【0073】
図5に示す回転ディスク電極装置(北斗電工社製HR−201)を使用し、対極に銅線、参照極に飽和カロメル電極(SCE)を用いた。また、作用極には、電極面積0.2cm2の白金ディスク電極(北斗電工社製HR−D2)上に、0.5mol/Lの硫酸銅及び1.0mol/Lの硫酸を含む30℃の電解液を用いて、−0.4Vvs.SCEの一定電位で30秒間電析したものを作用極として用いた。
【0074】
0.05mol/Lの硫酸銅、0.5mol/Lの硫酸を含む25℃の電解液を用いて、0〜3000rpmの各回転数において電気めっきを行った。
また、浸漬電位からカソード方向に100mV/minで電位走査した際の電流密度及び電極電位を測定し、測定した電流密度と電極電位との関係をプロットすることにより限界電流密度を測定し、限界電流密度と電極回転速度の関係を図6に示した。
【0075】
図6に示されるように、限界電流密度と電極回転速度とには比例関係が認められ、次の式により、限界電流密度から電極回転速度に変換することができることが分かった。
f=(−1.37+0.72×iL)2
但し、f:電極回転速度(rpm)、iL:限界電流密度(mA/cm2)
【0076】
<試験3:分極曲線の測定>
本発明を想到する上で基礎とした分極曲線の測定試験について説明する。
【0077】
(試験方法)
電解液の調製は、硫酸銅五水和物(CuSO4・5H2O)(和光純薬工業、特級)、硫酸(H2SO4)( 和光純薬工業、特級)及びアセトニトリル(CH3CN、「AN」とも称する)( 和光純薬工業、特級)を用い、脱イオン水により調製した(この電解液を「AN電解液」とも称する)。
電解液の銅濃度及び硫酸濃度は、水1wt%以上、CuSO4 0.24mol/dm3及びH2SO4 1.8mol/dm3に統一した。
分極曲線の測定に用いた3種類の電解液組成を表2に記す。
なお、本実験ではAN電解液中にCl-を添加していない。一般的な電解液では、Cl-を添加しないとスライムが発生するが、AN電解液では、Cl-がなくてもスライムは発生しない。これはCu(I)がANと安定的な錯体を形成するためと考えられる。
【0078】
分極曲線の測定は、溝等を設けていない回転ディスク電極装置(北斗電工、HR-201及びHR-202)により行った。対極は銅線(ニラコ、99.9wt%)、参照極は飽和カロメル電極(SCE)(東亜DKK、HC-205C)を使用した。
なお、電位は全てSCE基準である(以降の試験においても同様。)
電極面積0.2cm2の白金ディスク電極(北斗電工、HR-D2)上に、30℃のCuSO4 0.5 mol/dm3及びH2SO4 1.0mol/dm3からなる電解液を用い、−0.4Vの一定電位で30秒間、銅を電析したものを作用極とした。
カソード分極曲線の測定には、表2に示した3種類の電解液を用い、0、500、2000rpmの各電極回転速度にて浸漬電位から卑な方向に、100mV/minの電位走査速度で行った。電解液の温度は30℃とした。
【0079】
【表2】
【0080】
(結果及び考察)
表2に示した典型電解液(A浴)、添加剤フリー電解液(B浴)及びAN電解液(C浴)を用い、電極回転速度を変化させた場合のカソード分極曲線測定を行った。その結果を図7に示す。
図7において、A浴では0〜−0.3Vの電位領域で、電極回転速度の増加に伴い電流値が減少する傾向が観察された。この傾向は、電析反応抑制剤として作用するJGBの吸着が拡散支配によるためと考えられる。一方、B浴及びC浴では、そのような傾向は観察されなかった。
また、図7(b)及び図7(c)を比較し、アセトニトリル添加の効果をみると、浸漬電位が、B浴では0.044Vであるのに対し、C浴では−0.076Vであり、大きく卑側にシフトしていた。
【0081】
<試験4:電流効率の測定>
本発明を想到する上で基礎とした電流効率の測定試験について説明する。
【0082】
(試験方法)
電流効率は、溝等を設けていない回転ディスク電極装置を用い、電析電気量と溶解電気量の比から算出した。電流効率は、電析及び溶解のいずれにおいても、式(1)に示す反応で進行するとして計算した。
Cu(II)+2e-⇔Cu・・・・(1)
【0083】
電極上への銅の電析には、表2に示した3種類の電解液を用い(電解液の温度は330℃)、作用極は電極面積0.2cm2の白金電極、対極は銅線(ニラコ、99.9%)、参照極はSCEを使用した。
それぞれの電解液で電流密度を制御し、電極回転速度は0、500及び2000rpmで電析させた。このとき、通電電気量は6.75C/cm2の一定とした。
銅の電析量は、アノード分極し、その溶解反応に消費された電気量より算出した。
銅が電析した電極をCuSO4 0.5mol/dm3及びH2SO4 1.0mol/dm3の溶液中において、0.2Vで白金電極上の銅を電気化学的に溶解させ、溶解電流密度が2mA/cm2未満となったときを終点とし、流れた電気量をクーロンメーターにより測定した。
銅の電析量を溶解電気量から算出する方法を採用したのは、誘導結合プラズマ発光分析装置(ICP)などの分光分析法に比べて分析時間を短縮できるためである。
【0084】
(結果及び考察)
(1)電流効率の測定について
表2に示した3種類の電解液をそれぞれ用い、溝等を設けていない回転ディスク電極装置により様々な電流密度における電流効率を測定した。なお、電極回転速度は500rpmとした。結果を図8に示す。
図8より、A浴では、100mA/cm2以下の電流密度領域において80%以上の電流効率を維持し、200 mA/ cm2で電流効率が26.5%まで低下した。同様にB浴でも100mA/cm2以下の電流密度領域において80%以上の電流効率を維持し、200mA/cm2で電流効率が72%にまで電流効率が低下した。これらの電流効率の低下は、図7に示した分極曲線測定結果から分かるように、副反応である水素発生による。
一方、C浴では、10mA/cm2から200mA/cm2まで、電流密度の増加にともない電流効率が0%から67%まで増加した。電流密度が大きくなるに従い、電流効率増加の傾きは小さくなった。
B浴とC浴では、流速(電極回転速度)に対する電流量の変化に違いはみられなかった(図7)が、電流効率においては両者に大きな違いがあることが分かった(図8)。
【0085】
(2)電流効率に対する流速の影響について
銅の電流効率に対する流速の影響について検討した。
表2に示した3種類の電解液を用い、電極回転速度を0及び2000rpmと変化させた場合の電流効率を測定した。なお、図8の電極回転速度が500rpmの場合の結果も併せて図9に示した。
A浴及びB浴では、電極回転速度が500及び2000rpmにおいて、実験を行った0〜20mA/cm2の全ての電流密度において共に高い電流効率を維持し、有意な差はなかった。しかし、電極回転速度が0rpmの場合、電流密度が大きくなるにしたがい電流効率は大きく低下した。これは、水素発生反応が起こっているためである。
一方、C浴では、電極回転速度が500及び2000rpmにおいて電流効率は16%未満と著しく低かった。しかし、電極回転速度が0rpmの場合、5mA/cm2においても銅の電析が観察され(電流効率25%)、電流密度が20mA/cm2では電流効率が63%であった。これは、同じ条件下でのANを含まないA浴の42%、B浴の53%よりも高い。AN電解液では、流速が小さいほど電流効率が高くなる特徴があることが分かった。
【0086】
(2) 電流効率に影響を与える要因
銅の電析反応は、一般には以下の反応で表される。
Cu(II)+e-→Cu(I)・・・・(2)
Cu(I)+e-→Cu ・・・・(3)
【0087】
AN電解液では、電流効率が約60%以下であり、電流密度や流速でその電流効率が大きく変化した(図8及び図9)。つまり、AN電解液を用いた電析においては、式(2)及び(3)で示される銅の電析以外の反応も寄与していると考えられる。
ANはCu(I)と錯体を形成するため、ANを含む硫酸溶液中においてはCu(I)が安定となり、以下の均化反応(不均化反応の逆反応)が起こる。
Cu+Cu(II)→2Cu(I)・・・・(4)
式(4)は、カソード反応及びアノード反応で構成され、それぞれの反応は以下である。
Cu(II)+e-→Cu(I)・・・・(2)
Cu→Cu(I)+e- ・・・・(5)
【0088】
AN電解液中では、式(4)で示されるように、Cu(II)による銅の溶解反応が起こっており、これが電流効率が低下する原因になっていると予想される。そこで、本条件下においてAN電解液中で銅の溶解が起こるのか溶解試験を実施した。
6.75C/cm2の銅が電析した白金ディスク電極を、電極回転速度500rpmにて30℃のC浴中に浸漬させた。白金と銅では浸漬電位が異なるため、溶解の終点では浸漬電位が貴に遷移する。12min後、電位が急激に貴側へ変化し、白金電極面が露出していた。
この浸漬電位の変化より、銅が溶解するまでの時間を求め、金属銅がCu(I)で溶解する式(5)の平均電流密度を算出した。その値は4.7mA/cm2となり、図7(c)の500rpmでターフェル直線と浸漬電位の交点から決定した腐食電流密度の約5mA/cm2とほぼ同じ値となった。
これより、図8(c)で示したAN電解液の電流効率が約60%以下であり、また図7(c)において浸漬電位が卑側にシフトしていたのは、銅の溶解反応を含む均化反応(式(4))が起こっているためと考えられる。
【0089】
(4)電流効率に影響を与える要因の考察
以上の結果より、図10に示す反応モデルを仮定する。AN電解液中における銅の電析反応は、Cu(II)のバルクから電極表面への物質移動(過程I)、Cu(II)sのCu(I)sへの還元(過程II)及びCu(I)sからCuへの還元(過程IV)を経て進む。なお、添字sは電極表面付近のイオン種を示す。
式(4)の均化反応も起こっている(過程V)。図10において、II及びVの反応経路により生成したCu(I)sは以下に示すようにバルクへの拡散(過程III)或いは金属銅へ還元(過程IV)される。
Cu(I)s→Cu(I)b ・・(過程III)・・(6)
Cu(I)b+e- →Cu・・(過程IV)・・(7)
ここで、添字bは溶液バルクのイオン種を意味する。AN電解液を用いた銅の電流効率は、図10の過程I〜Vの速度のバランスで決定される。
【0090】
AN電解液を用いた銅電析において、電流密度が一定(電析速度(過程IIとIVの和)が一定)のとき、流速が大きいほど電流効率が減少するのは、流速が大きいと過程Iが加速され、さらに過程Vが加速されることで、銅の溶解速度の割合が電析に比べ大きくなるためと考えられる。流速が一定(過程I及びIIIの物質移動速度が一定)のとき、電流密度が小さいほど電流効率が減少するのは、過程IIとIVで表される電析速度が小さいので、過程Vによる銅の溶解で相殺されるためと考えられる。
以上の検討から、C浴では銅電析の電流効率に影響を与える要因は、大きく2つあることが分かる。一つは、(イ)流速が大きいほど電流効率が低下する効果(流速の効果)であり、もう一つは、(ロ)電流密度が小さいほど電流効率が低下する効果(電流密度の効果)である。
一般的な電解液の電流効率は、水素発生の起こらない領域において流速や電流密度に影響を受けない。典型電解液においても電流効率はほぼ100%(図9(a))であり、AN電解液が特異的な性質を持っているといえる。
【0091】
<試験5:微細孔への銅の電析>
本発明を想到する上で基礎とした微細孔への銅の電析試験について説明する。
【0092】
(試験方法)
銅の埋め込みは、窒化タンタル、タンタルバリア層を順次形成し、最表面に約10nmの銅シード層を形成させた微細孔(径:150〜200nm、深さ:約700nm)を有する加工済みのシリコンウエハ(グローバルネット社製)を1.5cm×1.1cmに切り出し、カソード電極として使用した。
微細孔への銅電析には、シリコンウエハ用精密めっきセル(山本鍍金試験器、マイクロセルI型)を使用した。
露出面積が1.4cm2となるように、1.4cm×1.0cmの窓を設けたテフロン製マスクでシリコンウエハカソードを被覆した。
アノードには銅板を使用し、アノード電極窓の面積は0.96cm2とした。
電解液の温度は25℃、電解液量は0.25dm3とした。
表2に示した3種類の電解液を用い、アノードとカソードの間の電解液を約0.8或いは2.5Hzで攪拌棒を揺動させながら、ポテンシオスタット(北斗電工、HA-151)を使用し、所定の電流密度にて電析した。
電解液中への電極浸漬と同時に所定の電流を印加した。
通電電気量は、1.44C/cm2の一定とした。
電析後のウエハ電極を水洗し乾燥させ、試料の断面観察を集束イオンビーム加工観察装置/走査型イオン顕微鏡(FIB-SIM)(エスアイアイナノテクノロジー、SMI9200)により行った。
【0093】
(結果及び考察)
(1)微細孔への銅の埋め込み性
試験3及び4の検討結果より、AN電解液を微細孔への銅埋め込みに適用する場合には、流速の効果と電流密度の効果のバランスによって埋め込み性が変化すると考えられる。そこで、微細孔を有する加工済みシリコンウエハに銅を電析し、断面観察を行った。その結果を図11に示す。
C浴を用いた場合、孔の底部においては銅が電析せず、孔の上部(36%)にのみ銅が電析した。
【0094】
図11の孔上部にだけ銅が電析するのは、(ロ)の流速の効果より(イ)の電流密度の効果が優先となっていると考えられる。つまり、微細孔の底部の電流密度が銅が電析できるほど大きくなく、孔上部にだけ銅が電析したものと考えられる。
ところで、AN電解液にCl-を100ppm添加すると、埋め込み性がさらに悪くなる結果を得た。一般的にCl-は硫酸銅電解液中で銅の溶解を促進させるが、AN電解液中においても銅の溶解を速め、微細孔底部に銅がより電析しなくなったものと予想できる。従って、めっき液中の塩化物イオンは100ppm未満とすることが望ましい。
逆に(ロ)の流速の効果を支配的にできれば、孔埋め込みができるはずである。図9(c)より、電流密度が10mA/cm2で流速の違いによる銅の電析量の比が最大となり、埋め込みに好都合となる。
【0095】
次に、電流密度を変化させて銅の電析を行い、埋め込み性を調べた。ただし、図11において微細孔底部に銅が電析していないことから、図11の電流密度よりも高い電流密度で実験を行った。その結果を図12に示す。
図11で示した電流密度10mA/cm2の場合、孔上部からの埋め込み率が36%であったのに対し、図12より電流密度20mA/cm2では67%、電流密度30mA/cm2では70%、電流密度40mA/cm2では76%と、電流密度の増加に伴い埋め込み率が増加した。
【0096】
次に、微細孔への銅の埋め込みに対する流速の影響について検討を行った。
流速が大きいと、電流効率(銅の電析量)が低下する。よって、ウエハ上部の流速をより大きくすれば微細孔内外での流速差が大きくなり、孔上部に比べて孔底部の電析がより優先的になると考えられる。そこで、図12(c)で示した電流密度で攪拌棒の揺動周波数を約0.8Hzから約2.5Hzに増加させ、微細孔への銅の電析を行った。その結果を図13に示す。
これより、流速を大きくさせることによって、孔の底部まで銅の電析が起こることが分かった。
典型的な微細孔への銅埋め込み用電解液は、キャリア、ブライトナ、レベラや塩化物イオンによって分極を増大或いは減少させ、電析速度を局所的に制御し、埋め込みを実現させている。しかし、ANは、これら添加剤とは異なる機能で埋め込みを可能にすることが分かった。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】(A)〜(D)は、銅配線の製造方法を工程順に説明した断面図である。
【図2】試験1で使用したセルの構成を説明した図である。
【図3】試験1で使用した被めっき体の構成を説明した図である。
【図4】試験1の評価に用いた孔底厚み(H)及び表面厚み(h)を説明するための図である。
【図5】試験2で使用した回転ディスク電極装置の構成を説明した図である。
【図6】試験2の結果として、限界電流密度と電極回転速度との関係を示したグラフである。
【図7】試験3において、電極回転速度を変化させた場合のカソード分極曲線を示したグラフであり、(a)は典型電解液(A浴)、(b)は添加剤フリー電解液(B浴)、(c)はAN電解液(C浴)を用いた時のグラフである。なお、図中の(i)(ii)(iii)はそれぞれ電極回転速度(i)0rpm、(ii)500rpm、(iii)2000rpmを示すものである。
【図8】試験4において、電極回転速度500rpm、通電電気量6.75C/cm2一定の条件下で、電流密度を変化させた場合の電流効率の変化を示すグラフであり、(a)は典型電解液(A浴)、(b)は添加剤フリー電解液(B浴)、(c)はAN電解液(C浴)を用いた時のグラフである。
【図9】試験4において、電極回転速度毎に電流密度を変化させた場合の電流効率の変化を示すグラフであり、(a)は典型電解液(A浴)、(b)は添加剤フリー電解液(B浴)、(c)はAN電解液(C浴)を用いた時のグラフである。
【図10】電解液中における、銅の析出の反応モデルを示す図である。
【図11】試験5において、電解液を0.8Hzで攪拌棒を揺動させながら、10mA/cm2で電析した場合に、得られた試料の断面をFIB-SIMで観察した際の写真であり、AN電解液(C浴)を用いた時の写真である。
【図12】試験5において、AN電解液(C浴)を電解液に用いて、電解液を0.8Hzで攪拌棒を揺動させながら、所定の電流密度で電析した場合に、得られた試料の断面をFIB-SIMで観察した際の写真であり、(a)は20mA/cm2、(b)は20mA/cm2、(c)は30mA/cm2で電析した時の写真である。
【図13】試験5において、AN電解液(C浴)を電解液に用いて、電解液を2.5Hzで攪拌棒を揺動させながら、40mA/cm2の電流密度で電析した場合に、得られた試料の断面をFIB-SIMで観察した際の写真である。
【符号の説明】
【0098】
1A 基板
1B 絶縁膜
2 溝又は孔
3 バリアメタル膜
4 下地導電膜
5 銅層
6 銅配線
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1価の銅イオンと錯体を形成し、1価の銅イオンとの錯化定数が1×103より高い値を示し、且つ使用環境下において1価の銅イオンと形成する錯体の溶解度が0.5g/L以上の銅錯化剤、若しくは、1価の銅イオンと錯体を形成し、1価の銅イオンとの錯化定数が1×103より高い値を示し、且つ2価の銅イオンとの錯化定数が1×1020以下の値を示す銅錯化剤を1wt%以上と、水を1wt%以上とを含むエッチング処理液を、強制攪拌させながら銅層からなる被処理面に接触させることを特徴とする銅層エッチング方法。
【請求項2】
1価の銅イオンと錯体を形成し、1価の銅イオンとの錯化定数が1×103より高い値を示し、且つ使用環境下において1価の銅イオンと形成する錯体の溶解度が10g/L以上である銅錯化剤を用いることを特徴とする請求項1に記載の銅層エッチング方法。
【請求項3】
銅錯化剤として、アセトニトリルを用いることを特徴とする請求項1又は2に記載の銅層エッチング方法。
【請求項4】
配線を形成する予定箇所に設けられた基材の溝や孔内に銅を埋め込みつつ基材表面に銅層を形成し、その後、1価の銅イオンと錯体を形成し、1価の銅イオンとの錯化定数が1×103より高い値を示し、且つ使用環境下において1価の銅イオンと形成する錯体の溶解度が0.5g/L以上の銅錯化剤、若しくは、1価の銅イオンと錯体を形成し、1価の銅イオンとの錯化定数が1×103より高い値を示し、且つ2価の銅イオンとの錯化定数が1×1020以下の値を示す銅錯化剤を1wt%以上と、水を1wt%以上とを含むエッチング処理液を、強制攪拌させながら前記銅層表面に接触させることにより、銅層の少なくとも一部を除去することを特徴とする銅配線の製造方法。
【請求項5】
1価の銅イオンと錯体を形成し、1価の銅イオンとの錯化定数が1×103より高い値を示し、且つ使用環境下において1価の銅イオンと形成する錯体の溶解度が10g/L以上である銅錯化剤を用いることを特徴とする請求項4に記載の銅配線の製造方法。
【請求項6】
銅錯化剤として、アセトニトリルを用いることを特徴とする請求項4又は5に記載の銅配線の製造方法。
【請求項7】
基材がカソードとなるように還元電流を該基材に印加しながら、エッチング処理液を前記銅層表面に接触させることを特徴とする請求項4〜6の何れかに記載の銅配線の製造方法。
【請求項8】
エッチング処理液に銅成分を添加することを特徴とする請求項7に記載の銅配線の製造方法。
【請求項9】
化学機械研磨によって銅層の少なくとも一部を除去する方法を併用することを特徴とする請求項4〜8の何れかに記載の銅配線の製造方法。
【請求項10】
1価の銅イオンと錯体を形成し、1価の銅イオンとの錯化定数が1×103より高い値を示し、且つ使用環境下において1価の銅イオンと形成する錯体の溶解度が0.5g/L以上の銅錯化剤、若しくは、1価の銅イオンと錯体を形成し、1価の銅イオンとの錯化定数が1×103より高い値を示し、且つ2価の銅イオンとの錯化定数が1×1020以下の値を示す銅錯化剤を1wt%以上と、水を1wt%以上とを含むエッチング処理液。
【請求項11】
1価の銅イオンと錯体を形成し、1価の銅イオンとの錯化定数が1×103より高い値を示し、且つ使用環境下において1価の銅イオンと形成する錯体の溶解度が10g/L以上である銅錯化剤を用いることを特徴とする請求項10に記載のエッチング処理液。
【請求項12】
銅錯化剤として、アセトニトリルを用いることを特徴とする請求項10又は11に記載のエッチング処理液。
【請求項1】
1価の銅イオンと錯体を形成し、1価の銅イオンとの錯化定数が1×103より高い値を示し、且つ使用環境下において1価の銅イオンと形成する錯体の溶解度が0.5g/L以上の銅錯化剤、若しくは、1価の銅イオンと錯体を形成し、1価の銅イオンとの錯化定数が1×103より高い値を示し、且つ2価の銅イオンとの錯化定数が1×1020以下の値を示す銅錯化剤を1wt%以上と、水を1wt%以上とを含むエッチング処理液を、強制攪拌させながら銅層からなる被処理面に接触させることを特徴とする銅層エッチング方法。
【請求項2】
1価の銅イオンと錯体を形成し、1価の銅イオンとの錯化定数が1×103より高い値を示し、且つ使用環境下において1価の銅イオンと形成する錯体の溶解度が10g/L以上である銅錯化剤を用いることを特徴とする請求項1に記載の銅層エッチング方法。
【請求項3】
銅錯化剤として、アセトニトリルを用いることを特徴とする請求項1又は2に記載の銅層エッチング方法。
【請求項4】
配線を形成する予定箇所に設けられた基材の溝や孔内に銅を埋め込みつつ基材表面に銅層を形成し、その後、1価の銅イオンと錯体を形成し、1価の銅イオンとの錯化定数が1×103より高い値を示し、且つ使用環境下において1価の銅イオンと形成する錯体の溶解度が0.5g/L以上の銅錯化剤、若しくは、1価の銅イオンと錯体を形成し、1価の銅イオンとの錯化定数が1×103より高い値を示し、且つ2価の銅イオンとの錯化定数が1×1020以下の値を示す銅錯化剤を1wt%以上と、水を1wt%以上とを含むエッチング処理液を、強制攪拌させながら前記銅層表面に接触させることにより、銅層の少なくとも一部を除去することを特徴とする銅配線の製造方法。
【請求項5】
1価の銅イオンと錯体を形成し、1価の銅イオンとの錯化定数が1×103より高い値を示し、且つ使用環境下において1価の銅イオンと形成する錯体の溶解度が10g/L以上である銅錯化剤を用いることを特徴とする請求項4に記載の銅配線の製造方法。
【請求項6】
銅錯化剤として、アセトニトリルを用いることを特徴とする請求項4又は5に記載の銅配線の製造方法。
【請求項7】
基材がカソードとなるように還元電流を該基材に印加しながら、エッチング処理液を前記銅層表面に接触させることを特徴とする請求項4〜6の何れかに記載の銅配線の製造方法。
【請求項8】
エッチング処理液に銅成分を添加することを特徴とする請求項7に記載の銅配線の製造方法。
【請求項9】
化学機械研磨によって銅層の少なくとも一部を除去する方法を併用することを特徴とする請求項4〜8の何れかに記載の銅配線の製造方法。
【請求項10】
1価の銅イオンと錯体を形成し、1価の銅イオンとの錯化定数が1×103より高い値を示し、且つ使用環境下において1価の銅イオンと形成する錯体の溶解度が0.5g/L以上の銅錯化剤、若しくは、1価の銅イオンと錯体を形成し、1価の銅イオンとの錯化定数が1×103より高い値を示し、且つ2価の銅イオンとの錯化定数が1×1020以下の値を示す銅錯化剤を1wt%以上と、水を1wt%以上とを含むエッチング処理液。
【請求項11】
1価の銅イオンと錯体を形成し、1価の銅イオンとの錯化定数が1×103より高い値を示し、且つ使用環境下において1価の銅イオンと形成する錯体の溶解度が10g/L以上である銅錯化剤を用いることを特徴とする請求項10に記載のエッチング処理液。
【請求項12】
銅錯化剤として、アセトニトリルを用いることを特徴とする請求項10又は11に記載のエッチング処理液。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2009−135336(P2009−135336A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−311485(P2007−311485)
【出願日】平成19年11月30日(2007.11.30)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(000006183)三井金属鉱業株式会社 (1,121)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年11月30日(2007.11.30)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(000006183)三井金属鉱業株式会社 (1,121)
【Fターム(参考)】
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