説明

隊列走行制御システム

【課題】隊列を構成する各車両の走行性能を反映させた走行制御により、スムーズな隊列走行を実現することができる隊列走行制御システムを提供する。
【解決手段】隊列走行制御システム1は、複数の車両が隊列を形成するように車両の走行制御を行う隊列走行制御システムであって、各車両の加速度指令値u〜uは、評価関数Jを最小にするように決定され、評価関数Jは、車両間の相対関係に関する値と、車両ごとにそれぞれ重み付けεu1〜εu5がされた各車両の目標加速度指令値u〜uに関する値と、に基づいて算出され、上記重み付けεu1〜εu5は、それぞれの車両の加減速応答性を示す時定数T〜Tに応じて決定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の車両が隊列を形成するように車両の走行制御を行う隊列走行制御システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年では、交通流改善を図り、空気抵抗の低減による燃費向上を図るために、複数の車両を短い車間距離で一列で隊列走行させる技術が注目されている。従来、このような隊列走行の技術として、下記特許文献1に記載のシステムが提案されている。このシステムでは、隊列の各後続車両の各々が、隊列の先頭車両との間の車間距離を制御することで、複数台の車両による隊列走行が実現されている。この方式によれば、隊列の先頭車両が受けた外乱に対しては、各後続車両が素早く応答するので、車間距離の誤差の伝播等もなく、隊列の挙動が乱れにくいと示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−162282号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような隊列走行においては、隊列内に様々な種類の構成車両が混在する場合も考えられる。従って、この種の隊列走行システムにおいては、互いに走行性能が異なる複数の構成車両で隊列が構成される場合にも、各構成車両の走行性能を考慮に含めた走行制御が行われることが好ましい。ところが、上記特許文献1のシステムでは、走行性能が異なる車両が隊列内に混在する状況は考慮されず、このような状況において十分にスムーズな隊列走行を行うことは困難である。
【0005】
そこで、本発明は、隊列を構成する各車両の走行性能を反映させた走行制御により、スムーズな隊列走行を実現することができる隊列走行制御システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の隊列走行制御システムは、複数の車両が隊列を形成するように車両の走行制御を行う隊列走行制御システムであって、複数の各車両の走行制御量は、所定の評価値を小さくするように決定され、所定の評価値は、車両間の相対関係に関する値と、車両ごとにそれぞれ重み付けがされた各車両の目標走行制御量に関する値と、に基づいて算出され、所定の評価値における各車両の目標走行制御量に関する値の重み付けは、それぞれの車両の走行性能に応じて決定されることを特徴とする。
【0007】
この隊列走行制御システムによれば、所定の評価値を小さくするように、各車両の走行制御量が決定される。この評価値には、車両ごとにそれぞれ重み付けがされた各車両の目標走行制御量に関する値が含まれている。ここで、それぞれの車両の走行性能に応じて上記重み付けを決定することにより、車両ごとの走行性能が評価値に反映され、ひいては、各車両の走行制御量に反映される。従って、このシステムによれば、隊列を構成する各車両の走行性能を走行制御に反映させることができ、その結果、スムーズな隊列走行を実現することができる。
【0008】
また、具体的には、上記の車両の走行性能は、車両の加減速応答性であることとしてもよい。この構成によれば、隊列を構成する車両ごとの加減速応答性の相違を、隊列走行制御に反映させることができ、スムーズな隊列走行を実現することができる。
【0009】
また、所定の評価値は、各車両の回生エネルギーに関する値に更に基づいて算出されることとしてもよい。この構成によれば、隊列を構成する車両ごとのエネルギー回生能力の相違を、隊列走行制御に反映させることができ、車両のエネルギー回生能力を有効に引き出すことができる。
【0010】
また、この場合、上記の各車両の目標走行制御量に関する値は、各車両の回生エネルギーに関する値を含むこととしてもよい。この構成によれば、隊列を構成する車両ごとのエネルギー回生能力の相違を、隊列走行制御に反映させることができ、車両のエネルギー回生能力を有効に引き出すことができる。
【0011】
また、具体的には、上記の車両の走行性能は、車両の燃費性能であることとしてもよい。この構成によれば、隊列を構成する車両ごとの燃費性能の相違を、隊列走行制御に反映させることができ、隊列走行全体としての燃費を向上させることができる。
【0012】
また、具体的には、上記の車両の走行性能は、車両の走行抵抗であることとしてもよい。この構成によれば、隊列を構成する車両ごとの走行抵抗の相違を、隊列走行制御に反映させることができ、隊列走行全体としての燃費を向上させることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の隊列走行制御システムによれば、隊列を構成する各車両の走行性能を反映させた走行制御により、スムーズな隊列走行を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、本発明に係る隊列走行制御システムの実施形態を示すブロック図である。
【図2】図2は、図1に示す隊列走行制御システムにより実現される隊列走行を示す図である。
【図3】図3は、第1実施形態の隊列走行制御システムが隊列走行中に行う処理を示すフローチャートである。
【図4】図4は、第3実施形態の隊列走行制御システムが隊列走行中に行う処理を示すフローチャートである。
【図5】図5は、第3実施形態の隊列走行制御システムの処理で用いられる重み再設定用マップを示す図である。
【図6】図6は、第5実施形態の隊列走行制御システムの処理で用いられる走行抵抗変化率マップを示す図である。
【図7】図7は、第5実施形態の隊列走行制御システムが隊列走行中に行う処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しつつ本発明に係る隊列走行制御システムの好適な実施形態について詳細に説明する。
【0016】
(第1実施形態)
図1に示す隊列走行制御システム1は、複数の車両に隊列を組んで走行させるべく、当該複数の車両の各々の走行状態を制御するシステムである。この隊列走行制御システム1により、複数の車両が比較的狭い車間距離で縦一列に並んで走行する隊列走行が実現される。この隊列走行制御システム1では、任意台数の車両で構成される隊列走行を実現することができるが、ここでは、図2に示すように、5台の車両C,C,C,C,Cで隊列走行が行われる場合を例に挙げて説明する。
【0017】
なお、以下の説明においては、図2に示されるように、隊列の先頭から数えてn番目(n=1,2,…,5)の車両Cの加速度を「a」で表し、車両Cの速度を「V」で表し、車両Cの加速度指令値を「u」で表す。また、車両Cと車両Cn+1との車間誤差を「L」で表す。なお、車間誤差とは、目標車間距離Ltgtと現在の車間距離との誤差を意味する。また、隊列の構成車両C〜Cのうち、先頭を走行する車両Cを「先頭車両」と呼び、これに対して、車両C〜Cを総称し「後続車両」と呼ぶ場合がある。
【0018】
隊列を構成するすべての車両C〜Cは、それぞれ1つずつ、以下に説明する隊列走行制御システム1を搭載している。
【0019】
図1に示すように、隊列走行制御システム1は、車両制御ECU(Electronic Control Unit)10を備えている。車両制御ECU10は、隊列走行制御システム1の全体の制御を行う電子制御ユニットであり、例えばCPU、ROM、RAMを含むコンピュータを主体として構成されている。車両制御ECU10は、情報を一時的又は長期的に保存することが可能な情報記憶部10aを有している。情報記憶部10aには、自車両の種々の特性を示す車両諸元情報が保存されている。なお、この車両制御ECU10は、後述する所定の演算により車両C〜Cの各加速度指令値u〜uを算出する演算手段として機能する。
【0020】
更に、隊列走行制御システム1は、自車両の走行状態を検知するためのセンサ類を備えている。このセンサ類には、前方車間距離センサ21aと、後方車間距離センサ22aと、車速センサ23aと、加速度センサ24aとが含まれている。
【0021】
前方車間距離センサ21aは、自車両の直ぐ前方を走行する車両との車間距離を検知することができる。同様に、後方車間距離センサ22aは、自車両の直ぐ後方を走行する車両との車間距離を検知することができる。このような前方車間距離センサ21a及び後方車間距離センサ22aとしては、例えば、それぞれ車両の前部及び後部にそれぞれ設けられたミリ波レーダが採用される。前方車間距離センサ21aで得られる信号は、前方センサECU21で処理され、前方車間距離情報として車両制御ECU10に送信される。同様に、後方車間距離センサ22aで得られる信号は、後方センサECU22で処理され、後方車間距離情報として車両制御ECU10に送信される。
【0022】
車速センサ23aは、自車両の速度を検知することができる。車速センサ23aとしては、例えば、車輪速を検知する電磁ピックアップセンサが用いられる。車速センサ23aで得られる信号は、車速センサECU23で処理され、車速情報として車両制御ECU10に送信される。加速度センサ24aとしては、例えば、ガスレートセンサもしくはジャイロセンサが用いられる。加速度センサ24aで得られる信号は、加速度センサECU24で処理され、加速度情報として車両制御ECU10に送信される。
【0023】
なお、前方センサECU21と、後方センサECU22と、車速センサECU23と、加速度センサECU24とは、車両内ネットワークとして構築された通信・センサ系CAN20を介して車両制御ECU10に接続されている。
【0024】
以上のように、隊列走行制御システム1では、上述のセンサ類により、自車両についての前方車間距離情報と、後方車間距離情報と、車速情報と、加速度情報とが得られる。なお、以下の説明では、前方車間距離情報と、後方車間距離情報と、車速情報と、加速度情報とをまとめて「走行状態情報」という場合がある。
【0025】
更に、システム1は、自車両の加減速・操舵等の操作を行うべく、エンジン制御ECU31と、ブレーキ制御ECU32と、ステアリング制御ECU33とを備えている。エンジン制御ECU31は、車両制御ECU10から送信される加速度指令値情報を受信し、当該加速度指令値に対応する操作量でスロットルアクチュエータ31a等を操作する。また、ブレーキ制御ECU32は、上記加速度指令値情報を受信し、当該加速度指令値に対応する操作量でブレーキアクチュエータ32a等を操作する。また、ステアリング制御ECU33は、車両制御ECU10から送信される操舵指令値情報を受信し、当該操舵指令値に対応する操作量でステアリングアクチュエータ33a等を操作する。エンジン制御ECU31と、ブレーキ制御ECU32と、ステアリング制御ECU33とは、車両内ネットワークとして構築された制御系CAN30を介して車両制御ECU10に接続されている。
【0026】
また、隊列走行制御システム1は、隊列の他の構成車両との間で互いの走行状態情報等を交換すべく、無線アンテナ26a及び無線制御ECU26を備えている。隊列内の各車両C〜Cは、この無線アンテナ26a及び無線制御ECU26により互いに車車間通信を行い、他の構成車両すべての車両諸元情報、走行状態情報、及び加速度指令値情報を取得すると共に、自車両の車両諸元情報、走行状態情報、及び加速度指令値情報を他車両に送信する。このような車車間通信により、すべての車両C〜Cの車両制御ECU10において、すべての車両C〜Cの車両諸元情報、走行状態情報、及び加速度指令値情報を共有することができる。なお、無線制御ECU26は、前述の通信・センサ系CAN20を介して車両制御ECU10に接続されている。
【0027】
続いて、この隊列走行制御システム1による隊列走行制御について説明する。
【0028】
隊列走行制御システム1による隊列走行制御では、車両制御ECU10が各車両C〜Cの各加速度指令値u〜uを決定する際に、すべての車両C〜Cの走行状態情報等が利用される。具体的には、隊列走行制御システム1では、最適制御(LQ制御)が用いられ、隊列を構成するすべての車両C〜Cについての加速度a〜aと、車間誤差L〜Lと、車両間相対速度L’〜L’と、加速度指令値u〜uと、を利用して、加速度指令値u〜uが決定される。なお、車両間相対速度は、車両Cの車速Vと車両Cn+1の車速Vn+1との差であるが、車間誤差Lの時間微分でもあるので、車両間相対速度を、dLn/dt又はL’で表わす。
【0029】
ここで、この隊列走行制御システム1が、各後続車両C〜Cの加速度指令値u〜uを決定するアルゴリズムを説明する。
【0030】
この隊列走行制御においては、加速度指令値u〜uを制御入力とし、加速度a〜aと、車間誤差L〜Lと、車両間相対速度L’〜L’とを状態量として、車両C〜Cの隊列走行を下の状態空間方程式(1・1)で表わす。そして、この状態空間方程式(1・1)で表されるシステムに対して、最適制御(LQ制御)を適用する。
【数1】


但し、
x :状態ベクトル、x=(a1,L1,L'1,a2,L2,L'2,a3,L3,L'3,a4,L4,L'4,a5)T
:加速度指令値ベクトル、u=(u,u,u,u,u
:先頭車両の目標加速度指令値
:道路勾配や風などの外乱
である。

また、式(1・1)中のA,B,B,Bは、車両C〜Cの車両諸元情報等の諸条件に基づいて適宜決定される行列である。なお、式(1・1)においてx等の文字の上のドット(点)は、時間微分を表すものであるが、本文中では、ドットの代わりに、x’等と表す。また、数式の中では、行列、ベクトルを示す文字を太字表示しているが、本文中では太字表示を省略し通常の文字で表す。
【0031】
このとき、上記の加速度指令値ベクトルuは、フィードバックゲイン行列Kを用いて、下式(1・2)で表される。
【数2】


ここでは、フィードバックゲイン行列Kは、13列×5行の行列である。
【0032】
そして、状態空間方程式(1・1)で表されるシステムの最適制御(LQ制御)を行うための所望の評価関数Jを定めれば、当該評価関数Jを最小にするようなフィードバックゲイン行列としてのLQ制御ゲインKが一意に求められる。そして、求められたLQ制御ゲインKを式(1・2)に適用する。そして、LQ制御ゲインKが適用された式(1・2)において、先頭車の目標加速度指令値u0をフィードフォワードにセットすると共に、各センサ類からの情報に基づいて得られる状態ベクトルxを代入することで、評価関数Jを最小にするような加速度指令値ベクトルuが求められる。すなわち、評価関数Jを最小にするような加速度指令値u〜uの組が求められる。
【0033】
具体的には、式(1・2)に基づいて、LQ制御ゲインKに含まれる13×5個の要素を”k”に添字を付けて表せば、
【数3】


といった演算で、加速度指令値u〜uが求められる。
【0034】
なお、この隊列走行制御で用いられる状態ベクトルxは、各車両C〜Cの各センサ類からの情報に基づいて得られる。すなわち、状態ベクトルxの加速度a〜aは、各車両C〜Cの加速度センサ24aから得られる各加速度情報に基づいて求められる。また、車間誤差L〜Lは、各車両C〜Cの前方車間距離センサ21a或いは後方車間距離センサ22aから得られる各車間距離情報に基づいて求められる。また、車両間相対速度L’〜L’は、各車両C〜C車速センサ23aから得られる各車速情報に基づいて、前後の車両の車速同士の差を算出することにより求められる。なお、加速度a〜a、車間誤差L〜L、車両間相対速度L’〜L’は、他の方法で求めてもよい。例えば、車両間相対速度L’〜L’は、それぞれ車間誤差L〜Lの変化率に基づいて求めてもよい。
【0035】
続いて、前述の評価関数Jについて更に説明する。評価関数Jは、下式(1・4)のように表される。
【数4】

【0036】
この評価関数Jにおいて、式(1・4)中の車間誤差L〜Lに関する項、車両間相対速度dL1/dt〜dL4/dtに関する項、各車両C〜Cの各加速度指令値u〜uに関するそれぞれの項には、それぞれ重み付けの重みε,εdL,εu1〜εu5が設定されている。すなわち、評価関数Jに含まれる重みε,εdL,εu1〜εu5を配分することで、車間距離の安定性、車両間相対速度の低減、各車両C〜Cの加減速の低減(加減速のエネルギー節約)といった要素の隊列走行制御における重要度のバランスが決定される。
【0037】
ここで、車両C〜Cごとの加減速応答性の相違を考慮すれば、隊列走行制御においては、加減速応答性が良い車両ほど大きい加減速を行い、加減速応答性が悪い車両ほど小さい加減速を行うことが、車間距離の乱れを早くスムーズに制御する観点から好ましい。このような知見に鑑み、上記の重みεu1〜εu5は、各車両C〜Cの加減速応答性に応じて配分される。ここで、車両Cの加速度指令値uに対する加速度aの応答性を、下式(1・5)のように伝達関数が1/(T・s+1)で表される一次遅れ系でモデル化すれば、時定数Tを、車両Cの加速度応答性を示す応答性パラメータとして採用することができる。
【数5】


そして、各車両Cに関する各重みεunは、時定数Tに反比例するように配分され、
【数6】


とされる。この時定数Tは、車両ごとに固有のパラメータであり、各車両Cは、それぞれ自車両の時定数Tを、車両諸元情報として保有していてもよい。或いは、時定数Tが、車両Cの加速度、速度等に依存するものとすれば、各車両Cは、自車両の現時点の加速度、速度等に対応する自車両の現時点の時定数Tを導出してもよい。そして、隊列走行制御中においては、各車両C〜Cは、車車間通信により全車両の時定数T〜Tを共有することが可能である。
【0038】
続いて、各車両C〜Cの隊列走行制御システム1が上記アルゴリズムに基づいて行う具体的な処理について、図3のフローチャートを参照しながら説明する。すべての車両C〜Cの隊列走行制御システム1の車両制御ECU10は、各々が、以下に説明する処理を並行して行う。
【0039】
図3に示すように、車両制御ECU10は、車車間通信によって他車両4台分の前方車間距離、後方車間距離、車速、加速度、及び車両諸元情報を取得する(S101)。次に、自車両のセンサ類21a〜24aから自車両の前方車間距離、後方車間距離、車速、加速度を取得すると共に、自車両の車両諸元情報を取得する(S103)。これらの処理により、車両制御ECU10は、全車両C〜C分の前方車間距離、後方車間距離、車速、加速度、車両諸元情報を取得することになり、取得したこれらの情報に基づいて、加速度a〜a、車間誤差L〜L、車両間相対速度L’〜L’を算出し、状態ベクトルxを得ることができる。なお、処理S101において取得される他車両の車両諸元情報には各他車両の時定数が含まれており、処理S103において取得される自車両の車両諸元情報には自車両の時定数が含まれている。
【0040】
続いて、車両制御ECU10は、取得した時定数T〜Tに基づいて、式(1・6)の関係から、加速度指令値の重みεu1〜εu5を算出する(S105)。そして車両制御ECU10は、算出された重みεu1〜εu5を前述の式(1・4)に適用して評価関数Jを決定し、評価関数Jを最小にするLQ制御ゲインKを算出する(S121)。次に、前述の式(1・2)において、先頭車両Cの目標加速度指令値uがフィードフォワードにセットされ、算出されたLQ制御ゲインKを用いて、状態ベクトルxに基づいて加速度指令値ベクトルuが算出される(S123)。すなわち、ここでは、加速度指令値u〜uの組が求められる。
【0041】
その後、車両C〜Cの車両制御ECU10は、算出された加速度指令値u〜uのうち、自車両の加速度指令値u(例えば、自車両が車両Cであれば加速度指令値u、自車両が車両Cであれば加速度指令値u)をエンジン制御ECU31及びブレーキ制御ECU32に送信する(S125)。
【0042】
そして、エンジン制御ECU31は受信した加速度指令値uに基づいてスロットルアクチュエータ31aを操作し、ブレーキ制御ECU32は受信した加速度指令値uに基づいてブレーキアクチュエータ32aを操作することで、自車両の加減速が実現される(S127)。以上のような図3のS101〜S125の処理が隊列走行中に繰り返される。このような処理により、5台の車両C〜Cによる隊列走行が達成される。
【0043】
以上説明した通り、各車両C〜Cが搭載する隊列走行制御システム1は、隊列内のすべての車両C〜Cに関する加速度a〜a、車間誤差L〜L、及び車両間相対速度L’〜L’を取得する。そして、取得された加速度a〜a、車間誤差L〜L、及び車両間相対速度L’〜L’を要素とする状態ベクトルxを用い、LQ制御によって全車両C〜Cの加速度指令値u〜uの組が決定される。そして、各車両C〜Cの隊列走行制御システム1は、決定された加速度指令値u〜uのうち、自車両Cに関する加速度指令値uを採用し、エンジン制御ECU31、ブレーキ制御ECU32は、加速度指令値uに基づいてスロットルアクチュエータ31a、ブレーキアクチュエータ32aを操作する。
【0044】
このように、隊列走行制御システム1によれば、車両C〜Cの加速度a〜aと、車両C〜Cの間における車間誤差L〜Lと、車両C〜Cの間における車両間相対速度L’〜L’と、車両C〜Cの加速度指令値u〜uと、を考慮して隊列走行が制御される。従って、隊列走行中に車両C〜Cの何れか1台が受けた外乱に対しても、全車両C〜Cが協調して動いて車間を安定させ、スムーズに車間誤差を収束させる。よって、隊列走行制御システム1によれば、各車両C〜Cの車両間の車間距離や車両間相対速度を乱すような外乱に強い隊列走行を実現することができる。
【0045】
また、評価関数Jにおいては、車間誤差L〜Lに関する項、車両間相対速度L’〜L’に関する項、加速度指令値u〜uに関する項、各々に配分される重みε,εdL,εu1〜εu5を、設計者が設定することで、車間距離の安定性、車両間相対速度の低減、及び加減速のエネルギー節約といった事項が所望の配分で重要視される隊列走行制御を実行させることができる。また、加速度指令値u〜uに関する重みについては、各車両C〜Cごとにそれぞれ重みεu1〜εu5が配分されている。そして、この重みεu1〜εu5は、各車両C〜Cの加速度応答性に反比例するように配分されている。従って、隊列走行制御においては、加速度応答性が良い車両ほど大きいフィードバックがかかり、加速度応答性が悪い車両ほど小さいフィードバックがかかることになる。このように、隊列走行制御システム1によれば、各構成車両C〜Cごとの加速度応答性の相違を考慮した隊列走行制御が行われ、全車両C〜Cが協調して動いて車間を安定させるにあたって、車間距離の乱れをより早くスムーズに制御することが可能になる。
【0046】
(第2実施形態)
続いて、本発明に係る隊列走行制御システムの第2実施形態として、隊列走行制御システム201について説明する。隊列走行制御システム201は、図1に示す通り、隊列走行制御システム1と同様の構成を有しているので、隊列走行制御システム201の構成についての詳細な説明は省略する。
【0047】
複数の構成車両からなる隊列の隊列走行制御においては、エネルギー回生能力を有する車両が構成車両の中に含まれる場合もある。このような能力を有する車両として、ここでは、ハイブリッド車を例に挙げて説明する。ハイブリッド車は、減速時に車両の運動エネルギーを電気エネルギーに変換してエネルギー回生を図る制動回生能力を有している。このようなハイブリッド車が隊列内に含まれている場合には、当該ハイブリッド車による回生エネルギーを有効に引き出すことが、隊列走行全体のエネルギー節約の観点から好ましい。そこで、隊列走行制御システム201は、構成車両内にハイブリッド車が存在する場合において、前述の隊列走行制御システム1とは異なる処理を行う。以下、隊列の構成車両C〜Cのうち、車両C及び車両Cがハイブリッド車である場合を例として説明する。
【0048】
車両C及び車両Cがハイブリッド車である場合、隊列走行制御システム201においては、前述の隊列走行制御システム1における式(1・4)の評価関数Jに代えて、下の式(2・1)で表される評価関数Jを用いて隊列走行制御が行われる。
【数7】


この式(2・1)中で、u3eは、車両Cの回生能力においてエネルギーの回生が可能な限界の減速度に対応する加速度指令値(以下、「回生限界指令値」という。)である。そして、(u−u3e)は、車両Cにおいて、回生能力を超えて熱エネルギーとして棄てられるエネルギー分の加速度指令値に対応する。同様に、(u−u4e)は、車両Cにおいて、回生能力を超えて熱エネルギーとして棄てられるエネルギー分の加速度指令値に対応する。回生限界指令値u3e,u4eは、それぞれ車両C,Cが、車両諸元情報として保有していてもよい。そして、隊列走行制御中においては、各車両C〜Cは、車車間通信により回生限界指令値u3e,u4eを共有することが可能である。
【0049】
隊列走行制御システム201による隊列走行制御は、式(2・1)に示す評価関数Jを用いる点以外は、隊列走行制御システム1の制御(図3参照)と同様であるので、重複する詳細な説明を省略する。
【0050】
このような評価関数Jを用いることで、隊列走行制御システム201による隊列走行制御では、ハイブリッド車C,Cのエネルギー回生可能な限界を超える加減速が少なくなるような制御が行われる。従って、隊列走行制御システム201によれば、隊列に含まれるハイブリッド車の回生エネルギーをより大きく有効に引き出すことができ、隊列走行全体のエネルギー節約を図ることができる。
【0051】
なお、ここでは、車両C及びCがハイブリッド車である場合を例に説明したが、隊列中に他の組み合わせでハイブリッド車が含まれている場合、或いは、隊列の構成車両すべてがハイブリッド車である場合にも、この例に倣った評価関数Jを用いて、同様の制御が可能である。すなわち、上式(2・1)を一般化すれば、評価関数Jは下式(2・2)で表される。
【数8】


非ハイブリッド車は制動回生能力がゼロであるので、この式(2・2)において、非ハイブリッド車Cに対応する回生限界指令値uneはゼロとすればよい。例えば、式(2・2)において、非ハイブリッド車C,C,Cの各回生限界指令値u1e,u2e5eをゼロとしたものが、上式(2・1)となる。
【0052】
(第3実施形態)
続いて、本発明に係る隊列走行制御システムの第3実施形態として、隊列走行制御システム301について説明する。隊列走行制御システム301は、図1に示す通り、隊列走行制御システム1と同様の構成を有しているので、隊列走行制御システム301の構成についての詳細な説明は省略する。
【0053】
前述の隊列走行制御システム201で用いられる評価関数J(式(2・2))では、回生能力を超えて棄てられるエネルギー分を示す項が、数式上で(u−uneとして表される。本来は、ハイブリッド車の回生能力を超える大きな減速度を抑えることが望まれるところ、式(2・2)のような表現の評価関数Jでは、ハイブリッド車の大きな減速だけではなく、大きな加速も抑えられることになり、本来の目的には合わない制御が一部発生することになる。
【0054】
そこで、本実施形態の隊列走行制御システム301では、ハイブリッド車の回生能力を超える減速度の要求を排除すべく、次のような隊列走行制御が行われる。すなわち、各車両の加速度指令値が一旦算出され、このうちハイブリッド車両の加速度指令値が当該ハイブリッド車両のエネルギー回生能力を超える減速を示す場合には、算出された当該車両の加速度指令値に基づいて重み付けを変更し、各車両の加速度指令値の算出を再度行う。以下、隊列の構成車両C〜Cのうち、車両C及び車両Cがハイブリッド車である場合を例として、各車両C〜Cの隊列走行制御システム301の具体的な処理について、図4のフローチャートを参照しながら説明する。すべての車両C〜Cの隊列走行制御システム301の車両制御ECU10は、各々が、以下に説明する処理を並行して行う。
【0055】
まず、図4に示すように、車両制御ECU10は、隊列走行制御システム1と同様の処理S101,S103,S105,S121,S123によって、暫定的に、加速度指令値u〜uを算出する。ここでは、処理S101において取得される他車両の車両諸元情報には各他車両の回生限界指令値が含まれており、処理S103において取得される自車両の車両諸元情報には自車両の回生限界指令値が含まれている。なおここでは、前述の通り、非ハイブリッド車C,C,Cの各回生限界指令値u,u,uは、ゼロとして得られる。また、各車両C〜Cの車両諸元情報には、自車両がハイブリッド車であるか否かを示す情報が含まれており、この情報は車車間通信によって全車両C〜Cに共有される。
【0056】
次に、暫定的に算出された加速度指令値u〜uのうち、ハイブリッド車C,Cの加速度指令値u,uが、それぞれの回生限界指令値u3e,u4eを超える減速度であるか否かが判定される。すなわち、加速度指令値uと回生限界指令値u3eとが大小比較され、加速度指令値uと回生限界指令値u4eとが大小比較される(S331)。ここで、u<u3e又はu<u4eが成立する場合(S331でYes)、ハイブリッド車C,Cの少なくとも何れか一方において、回生能力を超えるような大きな減速が要求されることを意味する。従って、この場合には、以下の処理S333〜S337によって、加速度指令値u〜uの算出を再度やり直す。
【0057】
車両制御ECU10は、回生能力を超えるような大きな減速が要求されたハイブリッド車(ここでは車両Cとする)について、図5に例示するような重み再設定用マップを参照し、暫定的な加速度指令値uに対応する重みを、新たな重みεu3_reとする(S333)。重み再設定用マップは、前述のように暫定的に算出された加速度指令値uと、再設定すべき新たな重みεu3と、を関連付けたマップであり、図5に示されるように、暫定的に算出された加速度指令値uが小さいほど(すなわち、要求された減速度が大きいほど)、新たな重みεu3_reが大きくなるように設定されている。重み再設定用マップは、例えば、車両Cの車両諸元情報に含まれ、車車間通信によって全車両C〜Cで共有することができる。そして、式(1・4)においてεu3=εu3_reとすることにより、新たな評価関数Jを再設定する。
【0058】
そして車両制御ECU10は、再設定された評価関数Jを最小にするLQ制御ゲイン行列Kを算出する(S335)。次に、前述の式(1・2)において、先頭車両Cの目標加速度指令値uがフィードフォワードにセットされ、算出されたLQ制御ゲイン行列Kを用いて、再び、状態ベクトルxに基づいて加速度指令値ベクトルuが算出される(S337)。すなわち、新たな重みに基づく加速度指令値u〜uの組が求められる。その後、車両制御ECU10は、隊列走行制御システム1と同様の処理S125,S127を行うことによって、自車両の加減速が実現される。
【0059】
一方、前述の処理S331において、u<u3e又はu<u4eが成立しない場合(S331でNo)、ハイブリッド車C,Cには、回生能力を超えるような大きな減速は要求されていないことを意味する。従って、この場合には、処理S123で暫定的に算出された加速度指令値u〜uが採用されて、処理S125,S127が行われる。
【0060】
以上のような図4の処理が隊列走行中に繰り返されることで、5台の車両C〜Cによる隊列走行が達成される。
【0061】
この隊列走行制御システム301によれば、隊列内のハイブリッド車について、回生限界指令値よりも大きい減速度を示す加速度指令値が算出された場合には、評価関数Jにおける重みを再設定して、加速度指令値u〜uの算出を再度やり直すこととしている。従って、ハイブリッド車に対してエネルギー回生可能な限界を超える減速度が要求されることが少なくなる。その結果、隊列走行制御システム201によれば、隊列に含まれるハイブリッド車の回生エネルギーをより大きく有効に引き出すことができ、隊列走行全体のエネルギー節約を図ることができる。また、この方式によれば、ハイブリッド車に加速が要求される場合には、加速度指令値u〜uの算出のやり直しは行われないので、ハイブリッド車の減速時のエネルギー回生を有効に引き出すといった本来の目的に合わせた制御が可能である。
【0062】
なお、ここでは、車両C及びCがハイブリッド車である場合を例に説明したが、隊列中に他の組み合わせでハイブリッド車が含まれている場合、或いは、隊列の構成車両すべてがハイブリッド車である場合にも、この例に倣った同様の制御が可能である。
【0063】
(第4実施形態)
続いて、本発明に係る隊列走行制御システムの第4実施形態として、隊列走行制御システム401について説明する。隊列走行制御システム401は、図1に示す通り、隊列走行制御システム1と同様の構成を有しているので、隊列走行制御システム401の構成についての詳細な説明は省略する。
【0064】
隊列走行においては、通常は、各構成車両ごとに燃費性能が相違する。ここで、加速に関連する車両の燃費性能として、「車両が単位加速度・単位時間あたりに必要とする燃料の量」で定義される「加速燃費」という指標を考える。加速燃費の単位は、例えば、〔L/(m/S)〕となる。隊列走行制御においては、加速燃費が良い車両ほど大きく頻繁な加減速を行い、加速燃費が悪い車両ほど小さい加減速を行うことが、隊列走行全体としての燃費向上の観点から好ましい。このような知見に鑑み、隊列走行制御システム401は、前述の式(1・4)の評価関数Jにおける重みεunが、各車両Cの加速燃費性能に応じて配分される点において、隊列走行制御システム1と相違する。
【0065】
以下、5台の車両C〜Cで隊列走行が行われる場合を例に挙げて説明する。隊列走行制御システム401では、車両Cの加速燃費をEとすれば、評価関数Jにおける各車両Cに関する各重みεunは、加速燃費に比例するように配分され、
【数9】


とされる。この加速燃費Eは、車両ごとに固有のパラメータであり、各車両Cは、それぞれ自車両の加速燃費Eを、車両諸元情報として保有していてもよい。或いは、加速燃費Eが、車両Cの加速度、速度等に依存するものとすれば、各車両Cは、自車両の現時点の加速度、速度等に基づいて自車両の現時点の加速燃費Eを導出してもよい。そして、隊列走行制御中においては、各車両C〜Cは、車車間通信により、全車両の現時点の加速燃費E〜Eを共有することが可能である。
【0066】
隊列走行制御システム401による隊列走行制御は、式(4・1)に示すように加速燃費E〜Eから重みεu1〜εu5が配分され評価関数Jが決定される点以外は、隊列走行制御システム1の制御(図3参照)と同様であるので、重複する詳細な説明を省略する。
【0067】
このような重みの配分がなされた評価関数Jを用いることで、隊列走行制御システム401による隊列走行制御においては、加速燃費が良い車両ほど大きいフィードバックがかかり、加速燃費が悪い車両ほど小さいフィードバックがかかることになる。このように、隊列走行制御システム401によれば、各構成車両C〜Cごとの燃費性能の相違を考慮した隊列走行制御が行われ、隊列走行全体としての燃費を向上させることができる。
【0068】
(第5実施形態)
続いて、本発明に係る隊列走行制御システムの第5実施形態として、隊列走行制御システム501について説明する。隊列走行制御システム501は、図1に示す通り、隊列走行制御システム1と同様の構成を有しているので、隊列走行制御システム501の構成についての詳細な説明は省略する。
【0069】
隊列走行においては、隊列内における順位(隊列内の何番目を走行しているか)、車間距離、車速に応じて、各構成車両ごとに走行抵抗(主に空気抵抗)が相違する。そして、隊列走行制御においては、走行抵抗が小さい車両ほど大きく頻繁な加減速を行い、走行抵抗が大きい車両ほど小さい加減速を行うことが、隊列走行全体としての燃費向上の観点から好ましい。このような知見に鑑み、隊列走行制御システム501は、前述の式(1・4)の評価関数Jにおける重みεunが、各車両Cの走行抵抗に応じて配分される点において、隊列走行制御システム1と相違する。
【0070】
以下、先頭車C、中間車C、後尾車Cの3台の構成車両で隊列走行が行われる場合を例に挙げて説明する。この場合の評価関数は、下式(5・1)で表される。
【数10】


この隊列走行制御システム501では、車両Cにおける走行抵抗変化率をrとすれば、評価関数Jにおける各車両Cに関する各重みεunは、現時点の走行抵抗変化率rに比例するように配分され、
【数11】


とされる。車両Cの走行抵抗変化率rとは、走行中の当該車両Cに生じる走行抵抗と、同じ車速で当該車両Cが単独で走行した場合に生じる走行抵抗との比の値である。
【0071】
各車両Cは、自車両の走行抵抗変化率を導出すべく、図6に例示するように、車間と、隊列内の順位と、走行抵抗変化率rとを関連づけた走行抵抗変化率マップを、各車速ごとに準備し保有している。図6に示されるように、隊列走行時には、単独走行時に比べて各車両に生じる空気抵抗が低下することから、隊列走行時における走行抵抗変化率rは、1.0以下の値を示す。また、隊列走行の車速が同じであれば、隊列走行の車間が小さくなるほど走行抵抗変化率rは低下する。また、車両の隊列内における順位によっても走行抵抗変化率が異なり、走行抵抗変化率の大きさは、先頭車C、後尾車C、中間車Cの順になる。
【0072】
各車両Cの現時点の走行抵抗変化率rは、以下のように導出される。まず、車両Cの車両制御ECU10は、現時点の自車両の車速に対応する走行抵抗変化率マップを読み出す。そして、隊列内における自車両の順位及び現時点の前方車間距離に対応する走行抵抗変化率rを、自車両の現時点の走行抵抗変化率rとする。隊列走行制御中においては、各車両C〜Cは、車車間通信により、全車両の現時点の走行抵抗変化率r〜rを共有することが可能である。
【0073】
自車両の順位は、例えば、車車間通信で共有される各車両C〜Cの現時点の位置を比較して導出することができる。この場合、各車両C〜Cは、自車両の現時点の位置を取得するために、GPS装置等の自車両位置検知手段を備えてもよい。なお、走行抵抗変化率マップに代えて、各車両Cは、自車両の走行抵抗変化率rを、隊列内の順位と、自車両前方の車間と、車速との関数として表し、当該関数に基づいて自車両の現時点の走行抵抗変化率を導出してもよい。隊列走行制御中においては、各車両C〜Cは、車車間通信により、全車両の現時点の走行抵抗変化率r〜rを共有することが可能である。
【0074】
続いて、各車両C〜Cの隊列走行制御システム501の具体的な処理について、図7のフローチャートを参照しながら説明する。すべての車両C〜Cの隊列走行制御システム1の車両制御ECU10は、各々が、以下に説明する処理を並行して行う。
【0075】
まず、図7に示すように、車両制御ECU10は、隊列走行制御システム1と同様の処理S101,S103を行う。ここでは、処理S101において取得される他車両の車両諸元情報には各他車両の走行抵抗変化率が含まれており、処理S103において取得される自車両の車両諸元情報には自車両の走行抵抗変化率が含まれている。処理S101,S103により、状態ベクトルxと走行抵抗変化率r〜rとが取得される。
【0076】
続いて、車両制御ECU10は、取得した走行抵抗変化率r〜rに基づいて、式(5・2)の関係から、評価関数Jにおける加速度指令値の重みεu1〜εu3を算出する(S505)。そして車両制御ECU10は、算出された重みεu1〜εu3を前述の式(5・1)に適用して評価関数Jを決定し、評価関数Jを最小にするLQ制御ゲインKを算出する(S521)。次に、算出されたLQ制御ゲインKを用いて、状態ベクトルxに基づいて加速度指令値ベクトルuが算出される(S523)。すなわち、ここでは、加速度指令値u〜uの組が求められる。その後、車両制御ECU10は、隊列走行制御システム1と同様の処理S125,S127を行うことによって、自車両の加減速が実現される。
【0077】
以上のような図7の処理が隊列走行中に繰り返されることで、3台の車両C〜Cによる隊列走行が達成される。
【0078】
このような重みの配分による評価関数Jを用いることで、隊列走行制御システム501による隊列走行制御においては、走行抵抗が小さい車両ほど大きいフィードバックがかかり、走行車両が大きい車両ほど小さいフィードバックがかかることになる。このように、隊列走行制御システム501によれば、各構成車両C〜Cごとの走行抵抗の相違を考慮した隊列走行制御が行われ、隊列走行全体としての燃費を向上させることができる。
【0079】
本発明は上述した第1〜第5実施形態に限定されるものではない。例えば、第1〜第5実施形態では、各車両がそれぞれ備える各隊列走行制御システムが、それぞれ独立して重複する演算処理を並行して行うようにしているが、構成車両のうちの何れか1台の車両の隊列走行制御システムが上記演算処理を行って全車両についての加速度指令値を算出した後、車車間通信により演算結果を各他車両に配信するようにしてもよい。但し、各車両が備える各隊列走行制御システムが、それぞれ独立して演算処理を行う方式は、車車間通信分の遅れが発生しない点で優れている。また、各車両が備える各隊列走行制御システムが、それぞれ独立して演算処理を行うと共に、車車間通信により互いに演算結果を交換し、演算結果のクロスチェックを行うようにしてもよい。
【0080】
また、第1〜第5実施形態では、3台の車両或いは5台の車両で隊列走行が行われる場合を例として説明しているが、第1〜第5実施形態における隊列走行制御に倣えば、3台や5台に限られず任意台数の車両による隊列走行が実現できることは明白である。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明は、複数の車両が隊列を形成するように車両の走行制御を行う隊列走行制御システムに関するものであり、隊列を構成する各車両の走行性能を反映させた走行制御により、スムーズな隊列走行を実現するものである。
【符号の説明】
【0082】
1,201,301,401,501…隊列走行制御システム、C〜C…車両、dL1/dt〜dL4/dt,L’1〜L’4…相対速度(相対関係)、E〜E…加速燃費、J…評価関数、L〜L…車間誤差(相対関係)、T〜T…時定数(加速度応答性)、r〜r…走行抵抗変化率(走行抵抗)、u〜u…加速度指令値(走行制御量)、u1e〜u5e…回生限界指令値(回生エネルギーに関する値)、εu1〜εu5…重み。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の車両が隊列を形成するように前記車両の走行制御を行う隊列走行制御システムであって、
前記複数の各車両の走行制御量は、所定の評価値を小さくするように決定され、
前記所定の評価値は、
前記車両間の相対関係に関する値と、前記車両ごとにそれぞれ重み付けがされた前記各車両の目標走行制御量に関する値と、に基づいて算出され、
前記所定の評価値における前記各車両の前記目標走行制御量に関する値の重み付けは、
それぞれの前記車両の走行性能に応じて決定されることを特徴とする隊列走行制御システム。
【請求項2】
前記車両の前記走行性能は、
前記車両の加減速応答性であることを特徴とする請求項1に記載の隊列走行制御システム。
【請求項3】
前記所定の評価値は、
前記各車両の回生エネルギーに関する値に更に基づいて算出されることを特徴とする請求項1に記載の隊列走行制御システム。
【請求項4】
前記各車両の目標走行制御量に関する値は、
前記各車両の回生エネルギーに関する値を含むことを特徴とする請求項3に記載の隊列走行制御システム。
【請求項5】
前記車両の前記走行性能は、
前記車両の燃費性能であることを特徴とする請求項1に記載の隊列走行制御システム。
【請求項6】
前記車両の前記走行性能は、
前記車両の走行抵抗であることを特徴とする請求項1に記載の隊列走行制御システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−244346(P2010−244346A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−93196(P2009−93196)
【出願日】平成21年4月7日(2009.4.7)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】