説明

集積回路装置

【課題】高い電源電圧を元に、低い電圧を発生させることで、低い電圧を用いる内部回路と高い電圧を用いる外部回路とのインターフェイスを行う場合、外部回路を動作させた状態で内部回路の動作を休止させる場合がある。この場合、低い電圧の発生を止めたことをインターフェイスを行う回路に伝達する回路(POC回路)が必要となるが、従来の回路では、低い電圧を発生させる状態で貫通電流が流れる回路を用いる必要があり、消費電流が増加してしまうという課題がある。
【解決手段】低い電圧の発生を停止する信号により、レギュレーター107の動作を止め、VOUTが十分下がった状態でインターフェイスを行う回路へ供給停止信号をレベルシフト回路121に伝達する。そのため、レベルシフト回路121での貫通電流の発生を抑えられる。さらに、供給停止信号を提供するPOC回路41内での定常状態での貫通電流を防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、集積回路装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、各種の電子機器の高速動作や低消費電力を実現するために、これらの電子機器において使用されるICやLSI等の半導体集積回路の高集積化や低電圧化が進んでいる。しかし、全ての集積回路装置の動作電圧を一律に低電圧化することは、デバイス固有の特性を考慮すると、極めて困難である。従って、異なる電源電圧で動作する複数の集積回路装置が互いに接続される場合が生じる。
【0003】
そのような場合に対応するために、基準電位(例えば接地電位)に対して電位差が少ない、低い電源電位が供給されて動作する、例えばCPUやメモリーが配置される内部回路と、低い電源電位に加え、高い電源電位が供給されて動作するインターフェイス回路とを有し、インターフェイス回路を介して内部回路と外部回路を接続する集積回路装置が開発されている。このように2種類の電源電位が供給されて動作する集積回路装置の例について、図4、図5を参照しながら説明する。ここで、内部回路に印加する低い電源電位は、高い電源電位を元に生成されたものを用いることも好適である。
【0004】
低い電源電位が供給されないときでも、例えば出力パッドに接続されている外部回路が動作している場合に、高い電源電位が供給される場合がある。また、内部回路は常に動作している必要は無く、不要な場合には、内部回路の動作を止めるべく低い電源電位の供給を止めることで消費電力を低減できる。そのためには、低い電源電位の供給が止められた旨の信号をインターフェイス回路に伝達し、動作状態を切り替えることが望ましい。
【0005】
図4は、低い電源電位が遮断されたことを知らせるパワーオンコントロール信号発生回路(以下、POC回路とも記載する)の典型的な構成を示す回路図である。低い電源電位(以下、LVDDとも記載する)の入/切の状況と、高い電源電位(以下、HVDDとも記載する)が供給されることで、パワーオンコントロール信号(以下、POC信号とも記載する)を出力している。
【0006】
POC回路40は、電源電位HVDDが供給されるソースを有するP型トランジスターQP51と電源電位VSSが供給されるソースを有するN型トランジスターQN51とが直列に接続された終段回路を含み、P型トランジスターQP51およびN型トランジスターQN51のドレインからPOC信号を供給する。
【0007】
また、POC回路40は、ゲートがドレインに接続されたN型トランジスターQN12と、電源電位LVDDがゲートに入力される直列接続されたP型トランジスターQP11およびN型トランジスターQN11と、直列接続されたP型トランジスターQP21およびP型トランジスターQP22と、P型トランジスターQP31およびN型トランジスターQN31とを含んでいる。
【0008】
さらに、POC回路40は、P型トランジスターQP31およびN型トランジスターQN31のドレインとP型トランジスターQP41のドレインと繋がるゲートを有するN型トランジスターQN41と、P型トランジスターQP41のドレインとN型トランジスターQN41のドレインとの間に接続され、電源電位VSSが印加されるゲートを有するP型トランジスターQP42と、P型トランジスターQP41のドレインとN型トランジスターQN41のドレインとの間に接続され、電源電位HVDDが印加されるゲートを有するN型トランジスターQN42と、P型トランジスターQP41のドレイン電位を反転してN型トランジスターQN51のゲートに印加するインバーター42と、N型トランジスターQN41のドレイン電位を反転してP型トランジスターQP51のゲートに印加するインバーター43と、を含んでいる。
【0009】
POC回路40は、LVDDの電位がハイレベル((以下、Hとも記載する)にある場合にはローレベル(以下、Lとも記載する)のPOC信号を出力し、LVDDの電位がLの場合にはHのPOC信号を出力する。このPOC信号は、例えばインターフェイス回路の動作を制御する。
【0010】
また、関連する技術として、特許文献1には、複数の電源電位が供給されて動作する半導体集積回路において、プリドライバーに電源電位が供給されていない場合に、出力ドライバーに貫通電流が流れないようにすると共に、外部回路との干渉を防止することが開示されている。この半導体集積回路は、第1の電源電位が供給されたときにプリドライブ信号を生成するプリドライバーと、PトランジスターおよびNトランジスターを含み第2の電源電位が供給されたときに出力端子に出力信号を供給する出力ドライバーと、第1の電源電位が供給されているか否かを検出する検出回路と、第1の電源電位が供給されているときにプリドライブ信号に基づいて第1および第2のゲート信号を生成して出力ドライバーのPトランジスターおよびNトランジスターのゲートにそれぞれ供給し、第1の電源電位が供給されていないときに出力ドライバーのPトランジスターおよびNトランジスターをカットオフさせる中間段回路と、を具備している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2004−356779号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ここで、POC回路40は、電源電位LVDDと電源電位HVDDの双方を扱うため、P型トランジスターQP11の基板電位を電源電位HVDDにとる必要がある。図5は、P型トランジスターの概略を説明するための模式断面図である。P型トランジスターQP11は、基板51に形成されたNウェル52、ドレイン53、ソース54、ゲート絶縁膜55、サイドウォール56、サイドウォール57、ゲート電極58、コンタクト領域59と、を含む要素により構成されている。P型トランジスターQP11は、サイドウォール56、サイドウォール57によりドレイン53、ソース54と分離されたゲート電極58の電位により、ゲート絶縁膜55を介してドレイン53、ソース54の間に電荷(キャリア)を誘起し、オン/オフ状態の制御を行う。
【0013】
Nウェル52に対して、ドレイン53(またはソース54)の電位が低い場合、ドレイン53とNウェル52とは順バイアス状態となり、コンタクト領域59を介し電流が流れてしまうので、P型トランジスターQP11のNウェル52は、ドレイン53の電位以上の電位を取る必要がある。
【0014】
ここで、LVDDがHの場合、N型トランジスターQN12はオン状態となる。N型トランジスターQN11もオン状態となる。この状態で、P型トランジスターQP11はNウェル52の基板バイアス効果により、完全にはオフにならない。そのため、貫通電流が発生し、消費電力が大きくなるという課題がある。また、特許文献1にもこの貫通電流を抑える方法については記載されていない。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、以下の形態または適用例として実現され、上述の発明をさらに改善するものである。
【0016】
[適用例1]本適用例にかかる集積回路装置は、第1の電源電圧の供給を受けて第2の電源電圧を生成する電源回路と、第1の信号および前記電源回路の出力電圧に基づいて第2の信号を生成する第1の回路と、前記第2の電源電圧の電圧レベルの信号を、前記第1の電源電圧の電圧レベルの信号へ変換するレベルシフト回路と、を含み、前記電源回路の出力電圧は前記第1の信号に基づいて制御され、前記レベルシフト回路は、前記第2の信号に基づいて動作の停止を制御されることを特徴とする。
【0017】
これによれば、電源回路を制御する信号を受ける端子を備えていることから、常時第2の電源電位を検出する必要がなくなる。そのため、第2の電源電位を検出するためのコンパレーターを常時動作させる必要が無くなり、定常状態では、コンパレーターを休止させることが出来る。即ち、第2の電源電位を検出する回路に流れる電流を抑えることが可能となる。また、レベルシフト回路に伝える第2の信号を、第2の電源電位が安定的に低下した状態で出力するため、第2の電源電位が中間電位にある場合に生じる第1の電源電位と第3の電源電位(例えば接地電位)との間の貫通電流を抑えることが可能となる。
【0018】
[適用例2]上記適用例にかかる集積回路装置であって、前記第1の信号と前記第1の回路との間にシュミットトリガー回路を含むことを特徴とする。
【0019】
上記した適用例によれば、ノイズが重畳した場合においても安定した動作を行わせることが可能となる。
【0020】
[適用例3]上記適用例にかかる集積回路装置であって、前記第1の回路は、第1導電型の第1のトランジスターと、第1導電型の第2のトランジスターと、第2導電型の第3のトランジスターと、を含み、前記第1のトランジスターと前記第2のトランジスターは、前記第1の電源電圧を備える部分と第1のノードの間に直列に設けられ、前記第3のトランジスターは、前記第1のノードと第3の電源電圧を備える部分との間に設けられ、前記第1のトランジスターのゲートと前記第3のトランジスターのゲートは、前記第2の電源電圧を備える部分と電気的に接続され、前記第2のトランジスターのゲートは、前記第1の信号に基づいて制御されることを特徴とする。
【0021】
上記した適用例によれば、第2のトランジスターは、第2の電源電位の供給を停止する信号を、第1の端子から受けた場合にのみ電力を消費する、第2の電源の電位検出を行う第2のトランジスターと第3のトランジスターを作動させることとなる。即ち、過渡状態以外では第1の回路を停止させることが可能となり、消費電流を軽減することが可能となる。
【0022】
[適用例4]上記適用例にかかる集積回路装置であって、前記第1の回路は、前記第2の電源電圧の供給を停止状態とさせる場合に、前記第2の電源電位を前記第3の電源電位の電位レベルに放電させる第2の回路をさらに備えることを特徴とする。
【0023】
上記した適用例によれば、過渡状態そのものの時間を短縮することが可能となり、過渡状態で流れる電流の量を少なく抑えることが可能となる。
【0024】
[適用例5]上記適用例にかかる集積回路装置であって、前記第1の回路は、前記第1のトランジスターが前記第2の電源側に設けられることを特徴とする。
【0025】
上記した適用例によっても、第1の回路は動作するため、配線のレイアウトパターンの自由度を向上させることが可能となる。
【0026】
[適用例6]上記適用例にかかる集積回路装置であって、前記第1の回路は、前記第1のトランジスターの駆動能力よりも前記第2のトランジスターの駆動能力が大きいことを特徴とする。
【0027】
上記した適用例によれば、電位検出に伴う貫通電流の値を抑えて第2の電源の電位を抽出することが可能となる。
【0028】
[適用例7]上記適用例にかかる集積回路装置であって、前記第1の回路は、前記第2の電源側に位置する第1導電型のトランジスターと前記第2の電源側との間に設けられ、ゲートが前記第2の電源と電気的に接続された第1導電型の第4のトランジスターをさらに備えることを特徴とする。
【0029】
上記した適用例によれば、第4のトランジスターを挿入することで、容易に第1のトランジスターと合わせて駆動能力を低下させることができる。即ち、同形状のトランジスターを重ねるだけで能力が制御でき、デバイス構造を変えた場合に発生する予期せぬ不良発生を事前に避けることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本実施形態にかかる集積回路装置を説明するためのブロック図。
【図2】本実施形態にかかるレベルシフト回路の構成を説明するための回路図。
【図3】(a)〜(c)は、本実施形態にかかるPOC回路の回路図。
【図4】背景技術を説明するためのPOC回路の回路図。
【図5】基板バイアス効果を示すためのトランジスターの断面図。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明を具体化した各実施形態を図面に基づいて説明する。
【0032】
(集積回路装置)
図1は、本実施形態にかかる集積回路装置を説明するためのブロック図である。集積回路装置1は、レギュレーター107、POC回路41、レベルシフト回路121を含む。第1の電源電位LVDD(例えば、1.8V)と、第1の電源電位LVDDよりも高い第2の電源電位HVDD(例えば、3.3V)とが供給されて動作する。以下においては、第1の電源電位がLVDDであり、第2の電源電位がHVDDである場合について説明する。
HVDDは、レギュレーター107とレベルシフト回路121に供給されている。そして、レギュレーター107は、入力としてHVDDを受けて、LVDDを出力する。そして、レベルシフト回路121はHVDDを受けて、LVDDレベルの論理信号をHVDDレベルの論理信号に変換して出力する。
【0033】
POC回路41は、レギュレーター制御端子101と、静電気保護回路102を備えており、POC回路41に浸入する静電気からPOC回路41全体が保護されている。
ここで、レギュレーター制御信号を停止する信号をレギュレーター制御端子101に入力すると、静電気保護回路102からレギュレーター107にレギュレーター停止信号が出力される。そして、レギュレーター107から出力される電圧はLVDDから徐々に減衰する。そして、減衰量をPOC回路41が検知し、レギュレーター停止信号と合わせて予め定められた条件と合致した場合、レベルシフト回路121の動作を止めて、レベルシフト回路121の出力を例えばフローティング状態に制御する。
このように制御することで、レギュレーター107の出力電圧が不安定な状態でのレベルシフト回路121を動作させることによる、例えばレベルシフト回路121の消費電流の過渡的な増大を抑制することが可能となる。また、フローティング状態に制御すると、レベルシフト回路121の出力側(図1ではHVDDレベル)に接続されている他の回路に悪影響を与えることなく動作させることが可能となる。
なお、本実施形態では、外部からPOC回路41にレギュレーター制御信号を受け取る場合の構成について説明しているが、これは、内部(例えば同じチップ内)からPOC回路41にレギュレーター制御信号を受ける場合にも対応でき、その場合には、レギュレーター制御端子101と、静電気保護回路102は省略可能である。
【0034】
(レベルシフト回路)
図2は、図1に示したレベルシフト回路の構成を説明するための回路図である。レベルシフト回路121は、第1の電源電位LVDD(例えば、1.8V)と、第1の電源電位LVDDよりも高い第2の電源電位HVDD(例えば、3.3V)と、基準電位VSS(例えば、0V)とが供給されて動作する。以下においては、基準電位VSSが接地電位(0V)であるとして、第1の電源電位がLVDDであり、第2の電源電位がHVDDである場合について説明する。なお、図面においては、基準電位VSSとなる部分を接地記号で示す。
【0035】
図2に示すレベルシフト回路は、電源電位LVDDが供給されたときに動作する内部回路10と、電源電位LVDDが供給されたときに内部回路10の出力信号を反転して反転出力信号を生成するインバーター20と、出力信号を第1の入力端子(ノードA)に入力すると共に反転出力信号を第2の入力端子(ノードB)に入力し、電源電位HVDDが供給されたときに、第1および第2の入力端子に入力された信号のレベルをシフトさせたレベルシフト信号を第1の出力端子(ノードC)および第2の出力端子(ノードD)においてそれぞれ生成して、第1および第2の出力端子の内の一方からレベルシフト信号を出力するレベルシフト部30と、電源電位HVDDが供給されたときに、レベルシフト部30から出力されるレベルシフト信号を出力パッドに供給する出力回路(本実施形態においては、出力用のP型トランジスターQP7)と、論理を反転させたPOC信号(XPOC信号)を受けて、P型トランジスターQP7の出力を制御するP型トランジスターQP8と、電源電位LVDDの供給状態に応じてレベルシフト部30への電流の供給状態を制御する電源供給制御回路31(P型トランジスターQP5およびP型トランジスターQP6)と、レギュレーター制御端子101に入力されたレギュレーター動作信号を、静電気保護回路102を介してレギュレーター107に伝達させLVDDを発生させる電源回路と、を有している。なお、内部回路10が出力信号および反転出力信号を生成する場合には、インバーター20を省略することができる。
【0036】
レベルシフト部30は、内部回路10の出力信号がゲートに入力される直列接続されたP型トランジスターQP1およびN型トランジスターQN1と、インバーター20の反転出力信号がゲートに入力される直列接続されたP型トランジスターQP2およびN型トランジスターQN2と、P型トランジスターQP1およびN型トランジスターQN1に電流を供給するP型トランジスターQP3と、P型トランジスターQP2およびN型トランジスターQN2に電流を供給するP型トランジスターQP4とを含んでいる。
【0037】
内部回路10の出力信号およびインバーター20の反転出力信号が、レベルシフト部30の第1の入力端子(ノードA)および第2の入力端子(ノードB)にそれぞれ入力されると、レベルシフト部30は、入力された信号のレベルをシフトさせたレベルシフト信号を、第1の出力端子(ノードC)および第2の出力端子(ノードD)において生成する。本実施形態においては、第1の出力端子(ノードC)におけるレベルシフト信号がP型トランジスターQP7に出力され、P型トランジスターQP7によって反転された後に、出力パッドを介して、電源電位HVDDで動作する外部回路に出力される。
【0038】
このようなレベルシフト回路において、電源電位LVDDが供給されないときでも、出力パッドに接続されている外部回路が動作している等の理由により、電源電位HVDDが供給される場合がある。そのような場合には、内部回路10およびインバーター20の出力がフローティング状態(電位不定)となる。
【0039】
そこで、本実施形態においては、電源電位HVDDをレベルシフト部30に選択的に供給する電源供給制御回路31(P型トランジスターQP5およびP型トランジスターQP6)と、電源供給制御回路31の動作を制御するパワーオンコントロール(POC)回路41(図3参照)とを設けることにより、電源電位HVDDが供給され電源電位LVDDが供給されていないときに、レベルシフト部30における貫通電流や、P型トランジスターQP8、N型トランジスターQN2を介して流れる貫通電流を抑制している。
【0040】
(POC回路)
POC回路41は、電源電位HVDDが供給されたときに、電源電位LVDDが供給されているか否かを検出して、電源電位LVDDが供給されていない場合にPOC信号Hを出力し、電源電位LVDDが供給されている場合にPOC信号Lを出力する。POC回路41から出力されるPOC信号は、P型トランジスターQP5およびP型トランジスターQP6のゲートに供給される。
【0041】
これにより、電源電位HVDDが供給され電源電位LVDDが供給されていないときに、P型トランジスターQP5およびP型トランジスターQP6がオフ状態となって、電源電位HVDDと基準電位VSSとの間の電流経路を遮断するので、レベルシフト部30における貫通電流を防止することができる。また、電源電位LVDDが変化する過渡状態においても、POC信号がハイレベルである間は、レベルシフト部30に貫通電流は流れない。
【0042】
図3(a)〜(c)は、本実施形態におけるPOC回路を説明するための回路図である。図3(a)に示すPOC回路41は、レギュレーター制御端子101、静電気保護回路102、シュミットトリガー型バッファー103、インバーター104、インバーター105、インバーター106、低能力のP型トランジスターQP101、P型トランジスターQP102、N型トランジスターQN101と、を備える。
【0043】
そして、高い電源電位(HVDD)の供給を受け、低い電源電位(LVDD)を内部回路10に出力するレギュレーター107が別に備えられている。レギュレーター制御端子101に入力されたレギュレーター停止信号は、静電気保護回路102を介してレギュレーター107に伝達され、その動作を止める。すると、レギュレーター107の出力電位VOUTは自然放電により徐々にLVDDからVSS(この場合は0V)に下がる。この場合、レギュレーター107のオン/オフ検出回路をレギュレーターのコントロール信号のみで制御すると、VOUTがFloating(中間電位)、POC信号がHの状態ができ、図2に示すレベルシフト回路に、HVDDからP型トランジスターQP8、N型トランジスターQN2を介して電流が流れてしまう。この状態を回避するため、図3に示すように、レギュレーター107のオン/オフ検出をレギュレーター107のコントロール信号だけでなく出力電位VOUTでも制御する。P型トランジスターQP101は能力の最適化を施し、VOUTが中間電位の際のHVDD−VSS間の貫通電流を抑える。そして、レギュレーター107からの出力電圧が十分に低下した状態で、POC信号をHにし、XPOC信号をLにする。このようにすることで、図2に示すレベルシフト部30において、HVDD−VSS間の貫通電流を減らすことが可能となる。
【0044】
次に、VOUTが自然放電により徐々にLVDDからVSS(この場合は0V)に下がる際のPOC回路41の動作について説明する。まず、レギュレーター制御端子101に入力されたレギュレーター停止信号(L)が、静電気保護回路102を介してレギュレーター107の動作を止める。そして、シュミットトリガー型バッファー103を通過したレギュレーター停止信号は、P型トランジスターQP102のゲートをLに落とす。すると、P型トランジスターQP102はオン状態となり、P型トランジスターQP101とN型トランジスターQN101により、インバーター動作を行うこととなる。VOUTの電位が高い場合には、N型トランジスターQN101はオンしている。そして、P型トランジスターQP101のドレインはHVDDに接続されており、P型トランジスターQP101のゲート電位はレギュレーター107と繋がっており、VOUTと同じ値を取る。VOUTはHVDDよりも低いため、P型トランジスターQP101もオンした状態となる。
【0045】
この際、P型トランジスターQP101の能力を落とすことで、貫通電流を抑えることが好適となる。P型トランジスターQP101の能力を落とすには、例えばP型トランジスターQP101のゲート長を長くする方法や、ゲート幅を狭くする方法を用いることで実現される。そして、VOUTの電位が下がると、N型トランジスターQN101のドレイン電流は減り、インバーター104に掛かる電位が上昇する。するとインバーター104の出力はLに落ちる。この際、インバーター104の反転レベルを下げておくことも好適である。このようにすることで、VOUTの電位が確実に落ちた状態で、POC信号を反転させることが可能となり、より確実にHVDDと基準電位(VSS)間に流れる貫通電流を抑制することが可能となる。そして、バッファーの機能を兼ねるインバーター105の出力、即ちPOC信号はHとなり、インバーター105の出力を反転するインバーター106の出力、即ちXPOC信号はLとなる。このように構成することで、過渡状態での貫通電流を抑え、かつ通常動作状態では電流を流さないPOC回路41を提供することができる。即ち、POC回路40と比べ消費電力が小さいPOC回路41を提供することが可能となる。また、図3(a)に示すように、P型トランジスターQP101とN型トランジスターQN101との間にP型トランジスターQP102を備える順序で並べることで、P型トランジスターQP101のソース電位を高く保てるため、型トランジスターQP101に流れる電流をさらに小さくすることが可能となる。
【0046】
図3(b)は、図3(a)と類似した構成を備えたPOC回路41である。図3(a)との主な相違点は、LVDDの供給を停止する信号を受けて、VOUTを速やかに低減させる放電用のN型トランジスターQN102と、LVDDの供給を停止する信号を反転させてN型トランジスターQN102に供給するインバーター108と、を備えていることである。LVDDの供給を停止する信号Lは、インバーター108により、Hに変換され、N型トランジスターQN102をオン状態とする。すると、LVDDの供給が停止されると共に、N型トランジスターQN102によりレギュレーター107の出力電位はLVDDから基準電位VSSに速やかに遷移する。そのため、VOUTがFloating(中間電位)状態となる時間が短縮される。これにより、レベルシフト回路121やPOC回路41で消費される電流を低減することが可能となる。
【0047】
図3(c)は、図3(a)と類似した構成を備えたPOC回路41である。図3(a)との主な相違点は、P型トランジスターQP101のゲートと電気的に接続させ、P型トランジスターQP101のソースとHVDDとの間にP型トランジスターQP101Aを配置していることである。この場合、P型トランジスターQP101とP型トランジスターQP101Aとが直列に繋がれるため、P型トランジスターQP101とP型トランジスターQP101Aとを合わせた能力はさらに低下し、さらに貫通電流を抑えることが可能となる。また、例えば同じP型トランジスターを追加するため、レイアウト設計の一部を修正することで対応できるため、プロセス・設計負荷を低減することが可能となる。
【0048】
上記した、本実施形態の集積回路装置を用いることにより、以下に示す効果を得ることができる。
【0049】
従来のPOC回路と比べ、電源電位LVDDの供給を行う際に原理的には電流を流すことなくPOC信号を供給できるため、低消費電流でPOC信号を供給するPOC回路を提供することが可能となる。
【0050】
例えばP型トランジスターQP101(図3(a)参照)のゲート長を長くする方法や、ゲート幅を狭くする方法を用いることで、LVDDの供給を止めた後、VOUTが十分にVSSに近づいた状態でPOC信号を反転させることができる。そのため、過渡状態でHVDDからVSSに流れる電流を低減することが可能となる。
【0051】
インバーター105(図3(a)参照)の反転レベルを下げることで、VOUTの電位が確実に落ちた状態で、POC信号を反転させることが可能となる。そのため、過渡状態でHVDDからVSSに流れる電流を低減することが可能となる。
【0052】
N型トランジスターQN102(図3(b)参照)と、LVDDの供給を停止する信号を反転させてN型トランジスターQN102に供給するインバーター108とを備えることで、過渡状態にある時間を短縮することが可能となり、LVDDの供給を止める場合に生じる過渡状態でHVDDに流れる電流を低減することが可能となる。
【0053】
P型トランジスターQP101(図3(c)参照)のゲートと電気的に接続させ、P型トランジスターQP101のソースとHVDDとの間にP型トランジスターQP101Aを配置することで、P型トランジスターQP101とP型トランジスターQP101Aとが直列に繋がれるため、P型トランジスターQP101とP型トランジスターQP101Aとを合わせた能力はさらに低下し、さらに貫通電流を抑えることが可能となる。また、例えば同じP型トランジスターを追加するため、レイアウト設計の一部を修正することで対応できるため、プロセス・設計負荷を低減することが可能となる。さらに、この場合、N型トランジスターQN102(図3(b)参照)と、LVDDの供給を停止する信号を反転させてN型トランジスターQN102に供給するインバーター108とをさらに備えることで、過渡状態にある時間を短縮することが可能となり、LVDDの供給を止める場合に生じる過渡状態でHVDDに流れる電流を低減することが可能となる。
【符号の説明】
【0054】
1…集積回路装置、10…内部回路、20…インバーター、30…レベルシフト部、31…電源供給制御回路、40…POC回路、41…POC回路、101…レギュレーター制御端子、102…静電気保護回路、103…シュミットトリガー型バッファー、104…インバーター、105…インバーター、106…インバーター、107…レギュレーター、108…インバーター、121…レベルシフト回路、QN1…N型トランジスター、QN2…N型トランジスター、QP1…P型トランジスター、QP2…P型トランジスター、QP3…P型トランジスター、QP4…P型トランジスター、QP5…P型トランジスター、QP6…P型トランジスター、QP7…P型トランジスター、QP8…P型トランジスター、QN101…N型トランジスター、QN102…N型トランジスター、QP101…P型トランジスター、QP101A…P型トランジスター、QP102…P型トランジスター。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の電源電圧の供給を受けて第2の電源電圧を生成する電源回路と、
第1の信号および前記電源回路の出力電圧に基づいて第2の信号を生成する第1の回路と、
前記第2の電源電圧の電圧レベルの信号を、前記第1の電源電圧の電圧レベルの信号へ変換するレベルシフト回路と、を含み、
前記電源回路の出力電圧は前記第1の信号に基づいて制御され、
前記レベルシフト回路は、前記第2の信号に基づいて動作の停止を制御されることを特徴とする集積回路装置。
【請求項2】
請求項1に記載の集積回路装置であって、
前記第1の信号と前記第1の回路との間にシュミットトリガー回路を含むことを特徴とする集積回路装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の集積回路装置であって、
前記第1の回路は、
第1導電型の第1のトランジスターと、
第1導電型の第2のトランジスターと、
第2導電型の第3のトランジスターと、
を含み、
前記第1のトランジスターと前記第2のトランジスターは、前記第1の電源電圧を備える部分と第1のノードの間に直列に設けられ、
前記第3のトランジスターは、前記第1のノードと第3の電源電圧を備える部分との間に設けられ、
前記第1のトランジスターのゲートと前記第3のトランジスターのゲートは、前記第2の電源電圧を備える部分と電気的に接続され、
前記第2のトランジスターのゲートは、前記第1の信号に基づいて制御されることを特徴とする集積回路装置。
【請求項4】
請求項3に記載の集積回路装置であって、
前記第1の回路は、
前記第1の信号により前記第2の電源電圧の供給を停止状態とさせる場合に、前記第2の電源電圧を前記第3の電源電圧の電圧レベルに放電させる第2の回路をさらに備えることを特徴とする集積回路装置。
【請求項5】
請求項3または4に記載の集積回路装置であって、
前記第1の回路は、前記第1のトランジスターが前記第2の電源側に設けられることを特徴とする集積回路装置。
【請求項6】
請求項3乃至5のいずれか一項に記載の集積回路装置であって、
前記第1の回路は、前記第1のトランジスターの駆動能力よりも前記第2のトランジスターの駆動能力が大きいことを特徴とする集積回路装置。
【請求項7】
請求項3乃至6のいずれか一項に記載の集積回路装置であって、
前記第1の回路は、前記第2の電源側に位置する第1導電型のトランジスターと前記第2の電源側との間に設けられ、ゲートが前記第2の電源と電気的に接続された第1導電型の第4のトランジスターをさらに備えることを特徴とする集積回路装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−234267(P2011−234267A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−104917(P2010−104917)
【出願日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】