説明

電動機制御装置

【課題】 電動機の要求出力が小さいような場合でも、一定の直流リンク電圧を出力することができる電動機制御装置を提供すること。
【解決手段】 電動機制御装置は、電池1と電動機4を駆動するインバータ3との間に設けられ、電池1からインバータ3へ電力を供給するとき昇圧動作を行い、インバータ3から電池1へ電力を回生するとき降圧動作を行なう。このとき、電動機4に対する要求出力の絶対値が所定の値より小さいとき、内部のスイッチング素子Q1とスイッチング素子Q2の両方をスイッチングさせて、昇圧動作あるいは降圧動作を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動機を駆動する電動機制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッド車の電動機の駆動において、インバータと直流電源間に昇降圧コンバータを設けることが知られている(特許文献1参照)。昇降圧コンバータは、インバータの直流リンク電圧(インバータの入力電圧)を制御し、電動機に印加される電圧を制御する。昇降圧コンバータでは、昇圧時には下アームのトランジスタを、降圧時には上アームのトランジスタをスイッチングさせることにより、下アームのトランジスタと上アームのトランジスタとの接続中点に接続されたインダクタンスに流れる電流を制御して昇圧,降圧の動作を実現している。
【0003】
【特許文献1】特開2003−134606号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、スイッチング素子にIGBTなどを使用する場合、スイッチング時間は数マイクロ秒程度かかる。このスイッチング時間には,電流と電圧が交差するので大きな損失が発生する。これにより、パルス時間を短くすると,スイッチング損失ばかりとなり、効率が著しく低下してしまう。従って、IGBTなどのスイッチング素子を使用する場合、パルス時間をあまり短くすることはできない。その結果、昇圧するエネルギー(インダクタンスに流れる電流)もある値以下にすることができないという問題があった。これを解決するために、例えば、インバータに設けられている平滑用コンデンサと並列に負荷抵抗を接続して電流を消費することが考えられる。しかし、この場合には、負荷抵抗を追加することによるコストアップが発生すると共に、常に負荷抵抗による電力消費が発生し、回路全体としての効率が悪化するという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
電動機制御装置は、直流電源と電動機を駆動する駆動回路との間に設けられ、直流電源から駆動回路へ電力を供給するとき昇圧動作を行い、駆動回路から直流電源へ電力を供給するとき降圧動作を行なう。この電動機制御装置は、第1の端子と第2の端子とを有し、第1の端子が駆動回路のプラス側に接続された第1のスイッチング素子と、第3の端子と第4の端子とを有し、第3の端子が第1のスイッチング素子の第2の端子と接続し、第4の端子が駆動回路のマイナス側および直流電源のマイナス側に接続された第2のスイッチング素子と、第5の端子と第6の端子とを有し、第5の端子が第1のスイッチング素子の第2の端子と第2のスイッチング素子の第3の端子との接続中点に接続され、第6の端子が直流電源のプラス側に接続されたインダクタンスと、インダクタンスを流れる平均直流電流の大きさに対応する指令値に基づき、第1のスイッチング素子と第2のスイッチング素子のスイッチングを制御して昇圧動作あるいは降圧動作を制御する制御手段とを備え、制御手段は、指令値の絶対値が第1の所定値より小さいとき、第1のスイッチング素子と第2のスイッチング素子とを交互にスイッチングさせて昇圧動作あるいは降圧動作を制御することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、以上説明したように構成しているので、次のような効果を奏する。指令値の絶対値が所定値より小さいとき、第1のスイッチング素子と第2のスイッチング素子とを交互にスイッチングさせて昇圧動作あるいは降圧動作を制御しているので、流れる平均直流電流を正負0近くで精密に制御することができる。すなわち、小さな要求出力であっても、直流リンク電圧を精度よく合わせることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
−第1の実施の形態−
図1は、本発明の第1の実施の形態の電動機制御装置の全体構成図を示す図である。本実施の形態の電動機制御装置は、ハイブリッド車を駆動する電動機の制御に使用される。図1において、回生入力(充電)可能な電池1より、昇降圧コンバータ2を介して、インバータ3の直流部に電圧が印加され,インバータ3で変換した交流により電動機(モータ)4を駆動する。インバータ3の直流部は、インバータ3において直流電力が入力される側のことを言う。
【0008】
昇降圧コンバータ2は、図1に示すように、2つのスイッチング素子Q1、Q2を、オン時に電流が流れる方向が同一になるように直列に接続する。各スイッチング素子Q1、Q2には,並列にダイオードD1、D2を接続し、各ダイオードの順方向がスイッチング素子のオン時に電流が流れる方向とは逆向きに接続する。2つのスイッチング素子Q1、Q2の中間点(接続中点)と電池1の間にインダクタンス(リアクトル)Lを接続する。スイッチング素子Q1,Q2は、例えばIGBTで構成される。昇降圧コンバータ2の出力は、インバータ3の直流部に入力する。スイッチング素子Q1は上アーム、スイッチング素子Q2は下アームと呼ばれる。なお、図1においてはスイッチング素子Q1、Q2にIGBTを用いているため、ダイオードD1、D2を設けているが、これに限定されることはない。例えば、スイッチングQ1、Q2にFETを用いる場合は、素子中にダイオード(寄生ダイオード、内蔵ダイオード)が組み込まれているため、FET外部にダイオードD1、D2を設ける必要はない。
【0009】
昇降圧コンバータ2を表現を変えて説明すると、次のようになる。スイッチング素子Q1は、端子T1と端子T2とを有し、端子T1はインバータ3のプラス側に接続される。スイッチング素子Q2は、端子T3と端子T4とを有し、端子T3はスイッチング素子Q1の端子T2と接続し、端子T4はインバータ3のマイナス側および電池1のマイナス側に接続される。スイッチング素子Q1の端子T1と端子T2にはダイオードD1が接続され、スイッチング素子Q2の端子T3と端子T4にはダイオードD2が接続される。インダクタンスLは、端子T5と端子T6とを有し、端子T5はスイッチング素子Q1の端子T2とスイッチング素子Q2の端子T3とを接続する点に接続され、端子T6は電池1のプラス側に接続される。
【0010】
インバータ3の直流部には,平滑用の電解コンデンサCが設けられている。インバータ3の3つの上下アームの中点からそれぞれ3相の出力が電動機4に接続されている。インバータ3は、公知のベクトル制御で電動機4を駆動(力行動作)し,電動機4を制動するときには回生動作により,直流部に電力を回生する。
【0011】
車両コントローラ11は、車両全体の制御を統括するとともに、電動機4に対する要求出力、トルクの指令値などを決めて、電動機コントローラ12および昇降圧コントローラ14に出力する。電動機コントローラ12は、車両コントローラ12からの電動機4に対する要求出力、トルク指令値、および電動機4の回転位置、各相電流、直流リンク電圧VDなどにより、インバータ3のスイッチング素子のスイッチングを制御する。電動機4の回転位置は回転位置センサ5により検出され、各相電流は電流センサ6により検出され、直流リンク電圧VDは直流リンク電圧センサ7により検出される。
【0012】
電池コントローラ13は、センサ8により検出された電池電圧VB、電池電流IBを入力して電池1の充放電制御を行い、他のコントローラに対して電池の出力可能電力を出力する。
【0013】
昇降圧コントローラ14は、車両コントローラ11からの電動機4に対する要求出力、トルク指令値、および直流リンク電圧VD、リアクトル電流ILを入力して、昇降圧コンバータ2のスイッチング素子Q1、Q2のスイッチングを制御する。インダクタンスLに流れるリアクトル電流ILは電流センサ9により検出される。各コントローラ間は,CANなどの通信で結ばれて、指令値などのやり取りを行う。
【0014】
車両コントローラ11、電動機コントローラ12、電池コントローラ13、昇降圧コントローラ14は、それぞれマイクロプロセッサおよび周辺回路から構成され、所定のプログラムを実行することにより、各コントローラのそれぞれの機能を実行する。
【0015】
次に、昇降圧コンバータ2の動作を説明する。昇降圧コンバータ2は、いわゆる昇圧チョッパと降圧チョッパの組み合わせで構成されている。インダクタンスL、スイッチング素子Q2、ダイオードD1、コンデンサCとでいわゆる昇圧チョッパを構成し、スイッチング素子Q1、インダクタンスL、ダイオードD2とでいわゆる降圧チョッパを構成する。
【0016】
昇降圧コンバータ2は、力行出力のとき、すなわち電動機4を駆動するとき、電池1の直流電圧VBを所望の直流リンク電圧VDまで昇圧してインバータ3の直流部に電力を供給する。また、回生出力のとき、すなわち電動機4が発電機として働くとき、インバータ3の直流部からの直流リンク電圧VDを電池1の直流電圧VBまで降圧させ、インバータ3の直流部から直流電力を電池1へ供給する。すなわち、電池1へ所望の回生(充電)電流を流す。
【0017】
昇降圧コンバータ2は、通常、力行出力のとき、スイッチング素子Q1をオフし、スイッチング素子Q2のみをスイッチング動作させ、所望の直流リンク電圧VDを得る。また、回生出力のとき、スイッチング素子Q2をオフし、スイッチング素子Q1のみをスイッチング動作させ、所望の回生電流を得る。しかし、本発明では、力行要求出力あるいは回生要求出力がそれぞれ小さい場合には、スイッチング素子Q1、Q2の両方をスイッチング動作させるところに特徴がある。
【0018】
図2は、昇降圧コントローラ14の制御を説明する図である。昇降圧コンバータ2において、インバータ3へ接続する側を出力側とし、電池1と接続する側を入力側とする。
【0019】
図2において、差分器101にて、インバータ3の出力側の電圧、すなわち直流リンク電圧VDの実測値に対して、その要求値であるVD*の差分をとり,さらにPI制御部102にてPI制御をかけて制御値を出力する。直流リンク電圧の要求値VD*は、車両コントローラ11からの電動機4に対する要求出力、トルク指令値などにより決定される。PI制御部102から出力された制御値と、キャリア生成部103から出力されたキャリアである三角波とが、比較器104で比較されPWM信号が生成される。
【0020】
PWM信号は、スイッチング素子Q1の制御に使用される場合は、そのままの位相で使用し、スイッチング素子Q2の制御に使用される場合は、NOT回路106で位相を反転して使用する。PWM信号および位相を反転させた信号は、デッドタイム制御部105および駆動回路を介して、スイッチング素子Q1、Q2を駆動する。デッドタイム制御部105は、後述するように、スイッチング素子Q1、Q2の両方を交互に駆動するときデッドタイム制御を行なう。
【0021】
図3は、本実施の形態の昇降圧コンバータ2のスイッチング特性を示す図である。横軸に、電動機4の要求出力をとる。図3では、力行出力は正の符号をもち、回生出力は負の符号をもつとして表す。力行出力が所定の値P1より大きいとき、スイッチング素子Q1をオフし、スイッチング素子Q2をスイッチング動作させ、回生出力が所定の値P2より小さいとき、スイッチング素子Q2をオフし、スイッチング素子Q1をスイッチング動作させる。そして、力行出力がP1以下のとき、スイッチング素子Q1、Q2の両方をスイッチング動作させ、また、回生出力がP2以上のときも、スイッチング素子Q1、Q2の両方をスイッチング動作させる。
【0022】
言い換えると、要求された力行出力および回生出力の絶対値がそれぞれ所定の値以下であると、スイッチング素子Q1、Q2の両方をスイッチング動作させている。力行出力および回生出力の絶対値がそれぞれ所定の値より大きいときは、正負を判別して,力行の場合スイッチング素子Q2のみを、回生の場合にはスイッチング素子Q1のみをスイッチングさせる。スイッチング素子Q1、Q2の両方をスイッチングする場合には,スイッチング素子Q1、Q2が同時にオンしないように、スイッチング素子Q1とスイッチング素子Q2のオンさせるパルス間にはデッドタイムを設けている。すなわち、デッドタイム制御を行なっている。
【0023】
図4は、力行要求出力が所定値以上の場合の昇圧(力行)動作を説明する図である。この場合の昇圧動作は,スイッチング素子Q1をオフし、スイッチング素子Q2をスイッチングさせることにより行なう。t1でスイッチング素子Q2がオンし、その後、インダクタンスLに流れる電流ILが増加する(t1〜t2)。所定時間後(t2)、スイッチング素子Q2をオフすると,インダクタンスLにためられた電流は流れつづけようとするので,スイッチング素子Q1に並列に接続されたダイオードD1を通してインバータ3の直流部へと流れ、電解コンデンサ7を充電する。その結果、電池1の電圧VBが昇圧された直流リンク電圧VDがインバータ3へ供給される。
【0024】
図5は、回生要求出力の絶対値が所定値以上の降圧(回生)動作を説明する図である。この場合の降圧動作は,スイッチング素子Q2をオフし、スイッチング素子Q1をスイッチングさせることにより行なう。昇圧動作とは逆に,スイッチング素子Q1を所定時間オンすると、直流リンク電圧VDと電池電圧VBの差により,電流が流れリアクトル電流ILが増加する。そして、スイッチング素子Q1をオフすると、インダクタンスLにためられた電流が流れつづけようとするので、スイッチング素子Q2に並列に接続されたダイオードD2を通して電池1へと流れ、電池1を充電する。
【0025】
図6は、力行要求出力あるいは回生要求出力の絶対値が所定値以下の場合の力行あるいは回生動作を説明する図である。この場合、スイッチング素子Q1、Q2の両方をスイッチング動作させている。まず、t0においてスイッチング素子Q2がオンする。しかし、リアクトル電流ILが負方向、すなわちダイオードD2に電流が流れているので、スイッチング素子Q2にはまだ電流IQ2が流れない。
【0026】
t1において、スイッチング素子Q2がオンしているので,前記昇圧時の動作のようにリアクトル電流ILが正の方向に流れる。t2においてQ2はオフし、今度は,Q1がオンする。インダクタンスLにたまった電流は流れつづけるので,スイッチング素子Q1には電流は流れず、ダイオードD1に電流が流れる。インダクタンスLのエネルギーが開放されてリアクトル電流ILが減少して0になると、今度は電流が反転して、スイッチング素子Q1に電流IQ1が流れはじめる(t3)。
【0027】
t4になると、スイッチング素子Q1はオフしスイッチング素子Q2がオンするが,同様にダイオードD2には電流が流れるがスイッチング素子Q2には電流が流れない。t5(=t1)で電流は0に戻る。ここで、t1からt5で一周期Tとなる。
【0028】
このようにして、インバータ3−電池1間の直流電流を正負0近くで精密に制御することができる。すなわち、インバータ3の出力が小さい場合あっても、インバータ3の直流リンク電圧VDを精密に制御することが可能となる。このとき直流電流にはリップルが生じているが、このリップルを平均した平均直流電流が正負0近くで精密に制御されることになる。
【0029】
なお、スイッチング素子Q1とスイッチング素子Q2は、PWM信号の1周期のデューティに応じてそれぞれオンするように制御される。すなわち、PWM信号の1周期内でPWM信号がハイのときスイッチング素子Q1がオンし、PWM信号がローのときスイッチング素子Q2がオンするように制御される。PWM信号のデューティの違いによって昇圧動作あるいは降圧動作となる。
【0030】
上記のようにスイッチング素子Q1とスイッチング素子Q2の両方をスイッチングさせるようにしたことは、従来の力行動作と回生動作の間に新たなスイッチングモードを設けたことになる。すなわち、スイッチング素子Q1をオフしスイッチング素子Q2をスイッチング動作させるスイッチングモード、スイッチング素子Q2をオフしスイッチング素子Q1をスイッチング動作させるスイッチングモードの間に、スイッチング素子Q1、Q2を交互にオンさせるスイッチングモードの3つのモードを設けたことになる。これにより、力行動作から回生動作へ、もしくはその逆の制御の遷移をスムーズに行うことができる。
【0031】
そして、力行、回生の全領域でスイッチング素子Q1、Q2を交互にオンさせるスイッチングさせるわけではないので、すなわち、力行、回生の電力が小さいときのみスイッチングQ1、Q2を交互にスイッチングさせるので、従来の片方のみスイッチングさせる場合に比較してスイッチングロスはさほど増えない。
【0032】
なお、要求出力に対する所定値P1および所定値P2は、例えば、次のように設定すればよい。スイッチング素子Q1をオフしスイッチング素子Q2をスイッチングさせる昇圧動作の場合、また、スイッチング素子Q2をオフしスイッチング素子Q1をスイッチングさせる降圧動作の場合、図4あるいは図5にも示した通り、インダクタンスLに流れる直流電流ILにはリップルが生じる。このリップル電流ΔIは、|VD−VB|×Ton/Lとなる。平均電流Iaveに対しての幅は|VD−VB|×Ton/2Lとなる。電流ILの下限値即ちIave−(ΔI/2)が0以下で、上限値即ちIave+(ΔI/2)が0以上となる要求出力の場合に、スイッチング素子Q1、Q2の両方をスイッチングさせる制御を行うよう所定値P1および所定値P2を設定すればよい。例えば、所定値P1はIave−(ΔI/2)=0となる出力値とし、所定値P2はIave+(ΔI/2)=0となる出力値とする。つまり、所定値P1および所定値P2は、インダクタンスLに流れる電流が0をまたぐ(ゼロクロスする)様な値が設定される。なお、この所定値P1および所定値P2は、実験や計算等によって予め求めてくことができる。
【0033】
図7は、昇降圧コントローラ14での制御のフローチャートを示す図である。ステップS1では、車両コントローラ11から電動機4に対する要求出力P*を入力する。ステップS2では、要求出力P*に基づき、直流リンク電圧の要求値VD*を計算し設定する。ステップS3では、要求出力P*がP2<P2*<P1を満足するか否かを判定する。P1は力行出力に対する所定の出力値、P2は回生出力に対する所定の出力値である。P1はプラスの符号を有し、P2はマイナスの符号を有する。
【0034】
ステップS3で、上記条件が満足すると判定するとステップS5に進む。ステップS5では、前述したスイッチング素子Q1、Q2の両方をスイッチングさせる動作を行なう。すなわち、力行要求出力の絶対値が所定の値P1より小さい場合、あるいは、回生要求出力の絶対値が所定の値P2より小さい場合に、スイッチング素子Q1、Q2の両方をスイッチングさせる動作を行なう。
【0035】
一方、ステップS3で、条件が満足しないと判定するとステップS4に進む。ステップS4では、要求出力の正負を判定する。すなわち、要求出力が正の場合は力行出力、負の場合は回生出力と判定する。ステップS4で、力行出力と判定するとステップS7に進む。ステップS7では、スイッチング素子Q1をオフし、スイッチング素子Q2をスイッチング動作させて力行動作を制御する。ステップS4で、回生出力と判定するとステップS6に進む。ステップS6では、スイッチング素子Q2をオフし、スイッチング素子Q1をスイッチング動作させて回生動作を制御する。
【0036】
以上のようにして電動機4に対する要求出力を判断し、図2の構成に基づいて、スイッチング素子Q1、Q2のスイッチングが制御される。
【0037】
以上のように構成された本発明の車両用電動機制御装置は、次のような効果を奏する。
(1)力行要求出力あるいは回生要求出力の絶対値が、所定の値より小さい場合には、スイッチング素子Q1、Q2の両方を交互にオンさせるようにしているので、昇降圧コンバータ2を流れる直流電流を正負0近くで精密に制御することができる。言い換えれば、小さな要求出力であっても、直流リンク電圧VDを指令値に精度よく合わせることができる。
(2)コンデンサCに並列に負荷抵抗を設ける必要がないため、コストアップや回路の効率を低下させることなく、要求出力が小さい場合でも直流リンク電圧VDを指令値に精度良く合わせることができる。
(3)スイッチング素子Q1をオフしスイッチング素子Q2をスイッチング動作させるスイッチングモードと、スイッチング素子Q2をオフしスイッチング素子Q1をスイッチング動作させるスイッチングモードとの間に、スイッチング素子Q1、Q2を交互にオンさせる第3のスイッチングモードを設けたので、力行動作から回生動作へ、もしくはその逆への制御の遷移をスムーズに行うことができる。
【0038】
−第2の実施の形態−
第1の実施の形態では、電動機4の要求出力が小さいときに、スイッチング素子Q1、Q2の両方をスイッチングさせることにより、小さい要求出力であっても負荷抵抗による損失の増大を招くことなく安定した正確な制御を行なうものであった。
【0039】
しかし、第1の実施の形態においても、スイッチング素子Q1、Q2のスイッチングによるロスは発生する。第2の実施の形態では、このスイッチング素子Q1、Q2のスイッチングロスをさらに小さくするようにしたものである。このために、第1の実施の形態で説明したスイッチング素子Q1、Q2の両方をスイッチングさせる第3のスイッチングモードにおいて、間欠発振制御を行なうようにした。以下、この間欠発振制御について説明する。第2の実施の形態の電動機制御装置の全体構成図は、第1の実施の形態の図1と同じであるので、その説明を省略する。
【0040】
図8は、第2の実施の形態の間欠発振の動作について説明する図である。間欠発振とは、図8に示すように、スイッチングを行っている期間とスイッチングを行っていない休止期間を作り、スイッチングを間欠的に行うことである。この間欠発振の周期は,スイッチングしている時間Tionとスイッチング停止時間Tioffの和であるTiである。間欠発振周波数は1/Tiであり、間欠発振デューティはTion/Tiである。これらは、スイッチング素子Q1、Q2のスイッチング周期、周波数などとは区別する。この間欠発振により、スイッチングを休止(停止)する時間を設けるので,スイッチングロスを減らすことができる。
【0041】
図9は、昇降圧コントローラ14における間欠発振の制御を説明する図である。第1の実施の形態の図2と同じ構成要素には同じ符号をつける。
【0042】
要求出力P*に基づき間欠発振可否判定を行う判断部201を設けている。この判断部201の制御の詳細については後述する。この判断部201が間欠発振をすると判定すると、出力信号202がHiになり、間欠発振周波数で発振する発振器203の出力を開始させる。判断部201の出力信号202の反転信号204と発振器出力205の論理和がOR回路206でとられ、AND回路207、208に入力する。AND回路207の出力はスイッチング素子Q2のゲートに入力し、AND回路208の出力はスイッチング素子Q1のゲートに入力する。
【0043】
これにより,間欠発振をすると判定された時には、間欠発振用発振器203の発振器出力205がAND回路207、208に入力するように論理構成されている。間欠発振器203の発振器出力205がHiのときには,電圧VD、要求値VD*から生成されるPWM信号がスイッチング素子Q1、Q2のゲートに印加され、通常のスイッチング動作を行うことができる。しかし、間欠発振器203の発振器出力205がLoのときには、PWM信号はAND回路207、208によって遮断されるので,スイッチング素子Q1、Q2のスイッチングは行わない。
【0044】
判断部201が間欠発振をしないと判定すると、出力信号202はLoを出力する。出力信号202のLo信号の反転信号204はHiとなり、OR回路206の出力は常にHiとなり、間欠発振出力205は無視される。その結果、AND回路207、208にはHiが入力され、PWM信号は間欠でない通常どおりにスイッチング素子Q1、Q2のゲートに印加される。このように、間欠発振可否を判定する判断部201の出力により,間欠発振を行うかどうかを決定することができる。
【0045】
また、間欠発振のスイッチング時間が始まる時点で発振器出力205はHiとなる。ソフトスタート用三角波生成器209は、そのエッジ検出によりソフトスタート用三角波をスタートさせ,その出力はPWM波生成用の比較器210の入力に入るように構成する。これによりスイッチング開始時のデューティをゆっくり大きくしていくソフトスタート動作を行うようにする。これにより、スイッチング開始時に急激に負荷を与えることによるインダクタンスLのリアクトル鉄心などからの音の発生を防止する。
【0046】
間欠発振周波数は、可聴周波数領域よりも低い周波数として、具体的には20Hz以下が望ましい。
【0047】
次に、間欠発振を行うかどうかの判断方法について述べる。図10は、昇降圧コントローラ14における間欠発振を行うかどうかの判断の処理のフローチャートを示す図である。これは、図9の中央点線四角211で囲んだ部分の説明である。従って、第1の実施の形態で説明した図2の特性の説明も含む。
【0048】
まずステップS11では、要求出力P*がP−2<P2*<P+2を満足するか否かを判定する。ステップS11で、条件が満足しないと判定するとステップS12に進む。ステップS12では、フラグ1を0にリセットし、タイマーもリセットする。フラグ1およびタイマーは、後述する間欠発振の制御に利用する。ステップS13では、要求出力の正負を判定する。すなわち、要求出力が正の場合は力行出力、負の場合は回生出力と判定する。
【0049】
ステップS13で、力行出力と判定するとステップS14に進む。ステップS14では、スイッチング素子Q1をオフし、スイッチング素子Q2をスイッチング動作させて力行動作を制御する。ステップS13で、回生出力と判定するとステップS15に進む。ステップS15では、スイッチング素子Q2をオフし、スイッチング素子Q1をスイッチング動作させて回生動作を制御する。
【0050】
要求出力P*が、スイッチング素子Q1、Q2の両方をスイッチングさせる下限閾値P−2より小さい場合には,ある程度の回生要求出力があるということで、スイッチング素子Q1をスイッチングすることにより、降圧動作を行う。逆に、上限閾値P+2より大きい場合には、ある程度以上の力行要求出力があるということで、スイッチング素子Q2をスイッチングさせ昇圧動作を行う。
【0051】
ステップS11で、条件が満足すると判定するとステップS16に進む。ステップS16では、要求出力P*がP−1<P2*<P+1を満足するか否かを判定する。ステップS16で、条件が満足しないと判定するとステップS17に進む。ステップS17では、フラグ1を0にリセットし、タイマーもリセットする。ステップS18では、スイッチング素子Q1、Q2の両方をスイッチングさせる動作を行なう。
【0052】
要求出力P*がP+2以下かつP−2以上の場合には、さらに要求出力P*が間欠発振上限閾値P+1以下かつ間欠発振下限閾値P−1以上であるかどうかを判定する。要求出力P*が間欠発振閾値の範囲外の場合には、スイッチング素子Q1、Q2の両方のスイッチング動作を行い、直流リンク電圧VDを所定値に制御する。
【0053】
ステップS16で、条件が満足すると判定するとステップS19に進む。ステップS19では、フラグ1=1であるかどうか判定する。ステップS19で、フラグ1=1でないと判定すると、ステップS20に進む。ステップS20では、フラグ1に1をセットし、タイマーをスタートさせる。フラグ1を立てて、タイマーをスタートさせるのは、要求出力が、一定時間以上が間欠発振閾値P+1、P−1の範囲内にあるどうかを判定するためである。
【0054】
ステップS19で、フラグ1=1であると判定すると、ステップS21に進む。ステップS21では、タイマーが所定値以上かどうかを判定する。ステップS21で、タイマーがまだ所定値以上でないと判定すると、ステップS18に進み、前述したスイッチング素子Q1、Q2の両方をスイッチングさせる動作を行なう。一方、ステップS21で、タイマーが所定値以上であると判定すると、ステップS22に進む。ステップS22では、スイッチング素子Q1、Q2を両方スイッチングさせる間欠発振制御を行なう。
【0055】
要求出力P*が、一定時間以上間欠発振閾値P+1、P−1の範囲内にある場合には間欠発振動作とし、これにより、間欠発振の動作をほぼ無負荷が続いている状態のときにのみ行い,スイッチングロスを減らすことができる。図11は、要求出力P*と、各閾値と、スイッチング素子Q1、Q2のスイッチング動作の関係を示す図である。図11が示すように,スイッチング素子Q1、Q2の両方がスイッチングする要求出力のさらに無負荷に近いところで、間欠発振としている。
【0056】
なお、図10の処理では、間欠発振でスイッチング素子Q1、Q2の両方をスイッチングさせる例を説明した。しかし、要求出力の正負によって、スイッチング素子Q1、Q2の片方をスイッチングさせて間欠発振動作とするようにしてもよい。図12は、その変形例を示す図である。図10と異なる点だけを以下説明する。
【0057】
ステップS21で、タイマーが所定値以上であると判定すると、ステップS25に進む。ステップS25では、間欠発振制御の準備を行なう。ステップS26では、要求出力の正負を判定する。すなわち、要求出力が正の場合は力行出力、負の場合は回生出力と判定する。ステップS26で、力行出力と判定するとステップS27に進む。ステップS27では、スイッチング素子Q2のスイッチングを間欠発振制御で行なう。ステップS26で、回生出力と判定するとステップS28に進む。ステップS28では、スイッチング素子Q1のスイッチングを間欠発振制御を行なう。
【0058】
要求出力P*が、一定時間以上間欠発振閾値P+1、P−1の範囲内にある場合には間欠発振動作とし、要求出力の正負によって、スイッチング素子Q1、Q2の片方をスイッチングさせて間欠発振動作とする。これによっても、間欠発振の動作をほぼ無負荷が続いている状態のときにのみ行い,スイッチングロスを減らすことができる。また、図12の制御のときに上述したソフトスタートの制御が有効となる。
【0059】
図13は、間欠発振制御からの復帰方法について説明する図である。要求出力P*が、時間t10において閾値P+1以下になると、タイマーがスタートする。時間t11において、タイマーが所定値以上になると間欠制御に入る。t11〜t12ではスイッチングを停止し、t12〜t13ではスイッチングを行い、t13〜t15では再びスイッチングを停止し、間欠制御を継続する。
【0060】
このような間欠発振動作時に、要求出力P*が間欠発振閾値範囲をこえた場合には,図10の処理によると、フラグ1、タイマをリセットし、要求出力P*の値に応じて,スイッチング素子Q1、Q2の両方のスイッチング、または、スイッチング素子Q1スイッチング、または、スイッチング素子Q2スイッチングの動作をする。
【0061】
ただし、閾値を超えた要求出力P*が、まだ、スイッチング素子Q1、Q2の両方のスイッチングを行なう上限閾値P+2、下限閾値P−2内にある場合において、間欠発振の休止状態のときは、間欠発振の次のスイッチング時間になるまで待ってから復帰するものとする。図13の例では、要求出力P*が、点線で示すように時間t14において閾値P−1を下回ったとしても、間欠発振の次のスイッチング時間t15になるまで待ってから復帰するものとする。
【0062】
一方、要求出力P*が大きく変化し、下限閾値P−2より小さい場合、または、上限閾値P+2より大きい場合には、要求出力が大きいので間欠発振の次のスイッチング時間が来る前に即時に、スイッチング素子Q1またはスイッチング素子Q2をスイッチングさせ降圧、または昇圧動作を行うように制御する。これにより、要求出力P*が変動した場合にも、的確に対応することができる。
【0063】
図14は、昇降圧コントローラ14における間欠発振を行うかどうかの判断の処理の変形例のフローチャートを示す図である。図10の処理と同じ処理には、同じステップ番号を付してその説明を省略する。図10の処理と異なる点は、図10の処理のステップS16とS19の間に、ステップS31とS32を追加した点である。以下、この点について説明する。
【0064】
ステップS16で、条件が満足すると判定するとステップS31に進む。ステップS31では、今回の要求出力P*から前回の要求出力(P*−1)を引いた絶対値ΔPを演算する。演算後、今回の要求出力P*を前回の要求出力(P*−1)メモリに格納する。ステップS32では、ΔPが所定値より小さいかどうかを判定する。ステップS32で、ΔPが所定値より小さくないと判定するとステップS18に進む。ステップS32で、ΔPが所定値より小さいと判定するとステップS19に進む。
【0065】
これにより、要求出力P*が、一定時間以上閾値以下で、かつ、変動も少ない場合に間欠発振動作とすることができる。
【0066】
以上のように構成された第2の実施の形態の車両用電動機制御装置は、第1の実施の形態の車両用電動機制御装置の効果に加えて、次のような効果を奏する。
(1)要求出力の絶対値が小さい場合に、間欠制御でスイッチングをさせるので、スイッチングロスをさらに小さくすることができる。
(2)タイマーで所定時間以上要求出力が小さい状態が続いた場合に、間欠制御をするようにしているので、より正確にスイッチングロスの小さい制御を行なうことができる。所定時間以上要求出力が小さい状態が続くということは、今後も要求出力が小さい状態が続く可能性が高いことを意味する。従って、間欠制御のスイッチング停止時に要求出力が変化する可能性が低い。
(3)間欠発振周波数を、可聴周波数領域よりも低い周波数としているので、間欠発振による音の発生を防ぐことができる。
(4)間欠発振のオン時には、スイッチングをソフトスタートさせるようにしている。これにより、スイッチング開始時に急激に負荷を与えることによるインダクタンスLのリアクトル鉄心などからの音の発生を防止することができる。
(5)間欠発振制御中に要求出力が変化した場合に、上述した上限閾値P+2と下限閾値P−2内にある場合には、間欠発振の次のスイッチング時間になるまで待ってから復帰し、要求出力が、上限閾値P+2と下限閾値P−2外に変化した場合には、即時に、スイッチング素子Q1またはスイッチング素子Q2をスイッチングさせ降圧、または昇圧動作を行うように制御する。これにより、要求出力の変動に応じた適切な対応が可能となる。
【0067】
上記実施の形態は、指令値として電動機4の要求出力を使用する例で説明したが、必ずしもこの内容に限定する必要はない。トルク指令値であってもよい。昇降圧コンバータ2の負荷が小さいこと、すなわち、昇降圧コンバータ2に流れる平均直流電流が小さいことが判定できる指令値であればどのようなものでもよい。
【0068】
上記実施の形態は、1つの電動機4を駆動する例で説明したが、必ずしもこの内容に限定する必要はない。複数の電動機を駆動する場合にも本発明は適用できる。
【0069】
上記実施の形態は、ハイブリッド車で使用する電動機制御装置の例で説明したが、必ずしもこの内容に限定する必要はない。電気自動車に適用する場合であってもよい。また、電動機により駆動される他の車両の場合であってもよい。さらに、電動機で駆動するのは車両に限定する必要はない。すなわち、直流電源からの直流電力に基づき電動機を駆動するすべての場合に本発明は適用できる。
【0070】
上記では、種々の実施の形態および変形例を説明したが、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の態様も本発明の範囲内に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明の第1の実施の形態の電動機制御装置の全体構成図を示す図である。
【図2】昇降圧コントローラの制御を説明する図である。
【図3】本実施の形態の昇降圧コンバータのスイッチング特性を示す図である。
【図4】力行要求出力が所定値以上の場合の昇圧(力行)動作を説明する図である。
【図5】回生要求出力の絶対値が所定値以上の降圧(回生)動作を説明する図である。
【図6】力行要求出力あるいは回生要求出力の絶対値が所定値以下の場合の力行あるいは回生動作を説明する図である。
【図7】昇降圧コントローラでの制御のフローチャートを示す図である。
【図8】第2の実施の形態の間欠発振の動作について説明する図である。
【図9】昇降圧コントローラにおける間欠発振の制御を説明する図である。
【図10】昇降圧コントローラにおける間欠発振を行うかどうかの判断の処理のフローチャートを示す図である。
【図11】要求出力P*と、各閾値と、スイッチング素子のスイッチング動作の関係を示す図である。
【図12】昇降圧コントローラにおける間欠発振を行うかどうかの判断の処理の変形例のフローチャートを示す図である。
【図13】間欠発振制御からの復帰方法について説明する図である。
【図14】昇降圧コントローラにおける間欠発振を行うかどうかの判断の処理の変形例のフローチャートを示す図である。
【符号の説明】
【0072】
1 電池
2 昇降圧コンバータ
3 インバータ
4 電動機
5 回転位置センサ
6 電流センサ
7 電圧センサ
8 センサ
9 電流センサ
11 車両コントローラ
12 電動機コントローラ
13 電池コントローラ
14 昇降圧コントローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電源と電動機を駆動する駆動回路との間に設けられ、前記直流電源から前記駆動回路へ電力を供給するとき昇圧動作を行い、前記駆動回路から前記直流電源へ電力を供給するとき降圧動作を行なう電動機制御装置であって、
第1の端子と第2の端子とを有し、前記第1の端子が前記駆動回路のプラス側に接続された第1のスイッチング素子と、
第3の端子と第4の端子とを有し、前記第3の端子が前記第1のスイッチング素子の第2の端子と接続し、前記第4の端子が前記駆動回路のマイナス側および前記直流電源のマイナス側に接続された第2のスイッチング素子と、
第5の端子と第6の端子とを有し、前記第5の端子が前記第1のスイッチング素子の第2の端子と前記第2のスイッチング素子の第3の端子との接続中点に接続され、前記第6の端子が前記直流電源のプラス側に接続されたインダクタンスと、
前記インダクタンスを流れる平均直流電流の大きさに対応する指令値に基づき、前記第1のスイッチング素子と前記第2のスイッチング素子のスイッチングを制御して前記昇圧動作あるいは前記降圧動作を制御する制御手段とを備え、
前記制御手段は、前記指令値の絶対値が第1の所定値より小さいとき、前記第1のスイッチング素子と前記第2のスイッチング素子とを交互にスイッチングさせて前記昇圧動作あるいは前記降圧動作を制御することを特徴とする電動機制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電動機制御装置において、
前記指令値は、前記電動機に対する要求出力および要求トルクの少なくともいずれかであることを特徴とする電動機制御装置。
【請求項3】
請求項1から2のいずれかに記載の電動機制御装置において、
前記制御手段は、前記第1のスイッチング素子と前記第2のスイッチング素子とを交互にスイッチングさせるとき、前記第1のスイッチング素子と前記第2のスイッチング素子をオンさせるパルス間にデッドタイムを設けて制御することを特徴とする電動機制御装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の電動機制御装置において、
前記指令値は、プラスの値で前記昇圧動作を指令し、マイナスの値で前記降圧動作を指令し、
前記制御手段は、前記指令値が前記第1の所定値のプラス側の所定値以上のとき、前記第1のスイッチング素子をオフして前記第2のスイッチング素子をスイッチングをさせて前記昇圧動作の制御を行い、前記指令値が前記第1の所定値のマイナス側の所定値以下のとき、前記第2のスイッチング素子をオフして前記第1のスイッチング素子をスイッチングをさせて前記降圧動作の制御を行うことを特徴とする電動機制御装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の電動機制御装置において、
前記制御手段は、前記指令値の絶対値が前記第1の所定値よりさらに小さい第2の所定値より小さいとき、前記第1のスイッチング素子と前記第2のスイッチング素子の少なくともいずれかのスイッチングを間欠的に行なうことを特徴とする電動機制御装置。
【請求項6】
請求項5に記載の電動機制御装置において、
前記制御手段は、前記指令値の絶対値が前記第2の所定値より小さい状態が所定時間以上継続したときに、前記スイッチングを間欠的に行なう制御を開始することを特徴とする電動機制御装置。
【請求項7】
請求項5から6のいずれかに記載の電動機制御装置において、
前記制御手段は、前記スイッチングを間欠的に行なう制御の間欠周波数を可聴周波数より低く設定することを特徴とする電動機制御装置。
【請求項8】
請求項5から7のいずれかに記載の電動機制御装置において、
前記制御手段は、前記第1のスイッチング素子と前記第2のスイッチング素子の少なくともいずれかのスイッチングを間欠的に開始するとき、前記第1のスイッチング素子あるいは前記第2のスイッチング素子のオンのパルス幅を徐々に大きくしていくように制御することを特徴とする電動機制御装置。
【請求項9】
請求項5から8のいずれかに記載の電動機制御装置において、
前記制御手段は、前記スイッチングを間欠的に行なう制御中でかつスイッチングの休止状態のときに前記指令値の絶対値が第2の所定値より大きくなったとき、次のスイッチングの開始時期まで休止状態を継続することを特徴とする電動機制御装置。
【請求項10】
請求項9に記載の電動機制御装置において、
前記制御手段は、前記スイッチングを間欠的に行なう制御中でかつスイッチングの休止状態のときに前記指令値の絶対値が第2の所定値より大きくなったとき、前記指令値に基づき、ただちに前記第1のスイッチング素子あるいは前記第2のスイッチング素子のスイッチングを開始することを特徴とする電動機制御装置。
【請求項11】
請求項1から10のいずれかに記載の電動機制御装置において、
前記直流電源は、充電が可能な電池手段であり、
前記駆動回路は、インバータ回路であり、
前記電動機は、車両の駆動輪を駆動する電動機であることを特徴とする電動機制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2006−74932(P2006−74932A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−256875(P2004−256875)
【出願日】平成16年9月3日(2004.9.3)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】