説明

電子キーを用いたセキュリティシステム

【課題】複数の被制御部材の作動が可能な複数の電子キーを設定することのできる電子キーを用いたセキュリティシステムを提供することを目的とする。
【解決手段】特定の被制御部材の作動な個別キーと、複数の被制御部材の作動可能なグループキーとを設け、個別キーの識別コードに対応するIDコードを受信したときには、IDコードの一致により被制御部材の作動許可信号を出力する。一方、グループキーの識別コードに対応するIDコードを受信したときには、受信したグループキーのIDコードを登録済みのグループコードにより暗号コードを算出し、次に受信した暗号コードが一致したときに被制御部材の作動を許可するようにした制御部を備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子キーに登録されているIDコードと予め登録されているIDコードとの一致を条件に被制御部材の作動を可能とする電子キーを用いたセキュリティシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、車両の盗難防止性や住宅のセキュリティ性の向上を図るため、機械的なキー(鍵)に送信回路を一体的に搭載した電子キーを用いたセキュリティシステムが用いられている。このような電子キーを用いたセキュリティシステムには、電子キーから送信されるキーコードと電子制御装置に記憶されているキーコードとを照合し、正規な電子キーであると判定された場合にのみ、車両におけるエンジンの始動を許可するようにしたイモビライザーシステムや、ドアロックの施解錠を許可するキーレスエントリーシステムが知られている。
【0003】
このような電子キーを用いたセキュリティシステムでは、電子キーから送信されるキーコードが第三者によって読み取られて電子キーが複製されることを防止するため、キーコードを暗号化して送信するように構成されている。
【0004】
上記した電子キーを用いたセキュリティシステムとしては、下記特許文献1に記載されているような車両用イモビライザーシステムがある。この車両用イモビライザーシステムでは、まず、電子キーによりイグニッションスイッチをACC位置に回転操作すると車両側の始動許可ECUから乱数コードが送信される。そして、電子キーは受信した乱数コード及び不揮発性メモリに予め記憶されている車両毎に設定される共通の車両コードに基づいて予め記憶されている各電子キーに個別のキーコードに対して所定の暗号処理を施すことにより返還コードを作成し、その返還コードを送信する。そして、返還コードを受信した車両側の始動許可ECUは、不揮発性メモリから車両コードを読み込み、その車両コードに基づいて返還コードからキーコードと乱数コードを復号する。その復号したキーコードと乱数コードが予め記憶しているキーコードと乱数コードとを比較して、それぞれ両者が一致した場合にエンジン始動を許可するようになっている。
【0005】
【特許文献1】WO96/015346号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載されているような従来技術では、車両側の始動許可ECUは各電子キー毎に異なる個別の特有なキーコードと不揮発性メモリに予め記憶しているキーコードが一致するかを判定しているので、車両一台に対して複数の電子キーを設定しようとすると、電子キーの数に対応したキーコードを始動許可ECUの不揮発性メモリに記憶させておかなければならない。しかし、不揮発性メモリの記憶領域には限界があるため、予め登録することのできる電子キーのキーコードの数は限られてしまう。
【0007】
そのため、車両レンタル会社のように複数台の車両を所有及び管理している場合には、一個の電子キーで複数台の車両のドアロック施解錠操作や、エンジン始動操作が可能な、いわゆるマスターキーと呼ばれる電子キーのキーコードが複数の車両に共通して登録されていることが一般的である。
【0008】
特に、例えばバックホーなどの車両系建設機械等は、車両レンタル会社が複数台の車両を所有し、特定のメーカーにまとめて複数台の車両をレンタルする場合が多い。そのため、レンタル先の車両が故障した場合や定期的な点検をする場合に、各車両に登録されているキーコードに該当する電子キーの所在を車両レンタル会社側で把握していないと、整備士やサービスマンをレンタル先に派遣しても、登録されている電子キーを所有する人が不在で、特定の電子キーが発見できない場合等には、その電子キーに対応する車両のエンジン始動操作をすることができない。そのため、各車両に対応する電子キーの所在を予めレンタル先に確認しておく等、事前の準備が必要となり、作業が煩雑となり、対応に遅れが生じてしまっていた。
【0009】
そのため、複数の車両のエンジン始動操作を可能とした電子キーを複数本設定することが可能なイモビライザーシステムが要望されている。このような複数台の車両のエンジン始動が可能な電子キーを複数本設定することができれば、車両レンタル会社においてもレンタル先と同じ電子キーを所有しておくことにより、レンタルしている複数台の車両を一本の電子キーでエンジンを始動することができる。したがって、レンタル先の車両が故障した場合などに車両レンタル会社はレンタル先の電子キーの所在を確認することなく、自社で所有している電子キーをサービスマンに持たせて派遣すればよいので、対応を迅速に行うことができ、非常に便利である。
【0010】
このように、一本の電子キーで複数台の車両のエンジン始動をすることができ、且つ車両一台に対して複数台の車両に共通する電子キーを複数本設定したい場合には、上記特許文献1に記載されているような特定の車両一台に対する盗難防止を想定している盗難防止装置では、車両一台に登録できる電子キーの数が限られてしまうため、そのまま採用することはできない。
【課題を解決するための手段】
【0011】
そこで、前記技術的課題を解決するために本発明は、電子キーから送信されたコード信号と、その受信したコード信号と記憶しているコード信号とを比較し、一致したときに被制御部材の作動を許可するようにした制御部を備えた電子キーを用いたセキュリティシステムにおいて、電子キー毎に個別の異なる番号で構成されたIDコードと、電子キーの機能を識別する識別コードとをコード信号として記憶した個別キーと、所定のグループ毎に設定されたグループコードと、グループコードに基づいて所定の暗号処理をIDコードに施して算出した暗号コードとをIDコードと識別コードとともにコード信号として記憶したグループキーとを設け、前記制御部には、前記各種コード信号を記憶する記憶手段と、第1コード信号として前記個別キーの識別コードに対応するIDコードを受信したときには、受信したIDコードと前記記憶手段に記憶している個別キーのIDコードとを比較し、両者が一致したときに前記被制御部材の作動を許可する許可信号を出力する一方、第1コード信号として前記グループキーの識別コードに対応するIDコードを受信したときには、受信したIDコードに前記記憶手段に記憶しているグループコードに基づく所定の暗号処理を施して暗号コードを算出するとともに、その算出された暗号コードと第2コード信号として受信した前記グループキーの暗号コードとを比較し、一致したときに前記被制御部材の作動許可する許可信号を出力する比較手段を備えたことを特徴としている。
【0012】
また、特に、電子キーから送信されたコード信号と、その受信したコード信号と記憶しているコード信号とを比較し、一致したときに車両のエンジン始動を許可するようにしたイモビライザー制御部を備えた電子キーを用いたセキュリティシステムにおいて、電子キー毎に個別の異なる番号で構成されたIDコードと、電子キーの機能を識別する識別コードとをコード信号として記憶した個別キーと、所定のグループ毎に設定されたグループコードと、グループコードに基づいて所定の暗号処理をIDコードに施して算出した暗号コードとをIDコードと識別コードとともにコード信号として記憶したグループキーとを設け、前記イモビライザー制御部には、前記各種コード信号を記憶する記憶手段と、第1コード信号として前記個別キーの識別コードに対応するIDコードを受信したときには、受信したIDコードと前記記憶手段に記憶している個別キーのIDコードとを比較し、両者が一致したときに車両のエンジン始動を許可する許可信号を出力する一方、第1コード信号として前記グループキーの識別コードに対応するIDコードを受信したときには、受信したIDコードに前記記憶手段に記憶しているグループコードに基づく所定の暗号処理を施して暗号コードを算出するとともに、その算出された暗号コードと第2コード信号として受信したグループキーの暗号コードとを比較し、一致したときに車両のエンジン始動を許可する許可信号を出力する比較手段を備えたことを特徴としている。
【0013】
そして、上記した電子キーを用いたセキュリティシステムにおいて、前記記憶手段に、個別キーのIDコードを記憶する第1記憶領域と、グループキーのグループコードを記憶する第2記憶領域とを設け、前記比較手段は識別コードに応じていずれかの記憶領域を選択して、コード信号を読み込むことを特徴としている。
【0014】
また、上記した電子キーを用いたセキュリティシステムにおいて、電子キー毎に個別の異なる番号で構成されたIDコードと、各種コード信号の前記記憶手段への書換え又は書き込みを許可する登録機能を示す識別コードとをコード信号として記憶した個別の登録キーと、所定のグループ毎に設定されたグループコードと、グループコードに基づいて所定の暗号処理をIDコードに施して算出した暗号コードと、各種コード信号の前記記憶手段への書換え又は書き込みを許可する登録機能を示す識別コードとをIDコードとともにコード信号として記憶したグループ登録キーとを設け、前記比較手段は、第1コード信号として前記登録キーの識別コードに対応するIDコードを受信したときには、前記記憶手段に記憶している登録キーのIDコードと比較し、両者が一致したときに各種コード信号の前記記憶手段への書換え又は書き込みを許可する一方、第1コード信号として前記グループ登録キーの識別コードに対応するIDコードを受信したときには、受信したIDコードに前記記憶手段に記憶しているグループコードに基づく所定の暗号処理を施して暗号コードを算出するとともに、その算出された暗号コードと第2コード信号として受信した前記グループ登録キーの暗号コードとを比較し、一致したときに各種コード信号の前記記憶手段への書換え又は書き込みを許可することを特徴としている。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、制御部又はイモビライザー制御部の記憶手段に個々のグループキーのIDコードを登録しておく必要はなく、複数のグループキーに共通する一つのグループコードを登録しておけばよいので、記憶手段の記憶領域に関係なく、一つの制御部又はイモビライザー制御部の記憶手段に対して被制御部材の作動又はエンジン始動を許可することのできるグループキーを複数設定することができる。
【0016】
また、グループキーは、IDコードを送信した後、暗号コードを別個に送信するとともに、制御部又はイモビライザー制御部側では受信したIDコードと予め記憶しているグループコードに基づいて所定の暗号処理を施して暗号コードを算出し、受信した暗号コードと比較するようにしている。したがって、同じグループコードを有する共通した複数のグループキーでもIDコードは異なっているため、第三者がグループキーの暗号コードを不正にコピーしたとしても、暗号コードとともにIDコードをコピーしない限り、不正にエンジン始動をすることはできない。
【0017】
さらに、グループキーのグループコードは、制御部又はイモビライザー制御部に登録するときにのみグループキーから送信され、エンジン始動時には送信されないため、使用時におけるグループコードの不正コピーを防止することにより、暗号コードからIDコードが解読されることを確実に防止することができる。
【0018】
一方、メーカー側でグループキーを複製する場合には、グループコードと暗号コードを電子キーに登録すれば、グループキーを複製することができるので、必要数のグループキーを容易に設定することができる。
【0019】
そして、各種コード信号の記憶手段への書換え又は書き込みを許可する登録機能をする登録キーについても、グループコードをグループ登録キーの識別コードに対応させて記憶手段に登録しておけば、記憶手段の記憶領域に関係なく、一つの制御部又はイモビライザー制御部の記憶手段に対して各種コード信号の記憶手段への書換え又は書き込みを許可することのできるグループ登録キーを複数設定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下に車両用盗難防止用のイモビライザーシステムに本発明の電子キーを用いたセキュリティシステムを採用した実施例を添付の図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明に基づく車両用盗難防止用のイモビライザーシステムのシステムブロック図、図2は、各電子キーのEEPROMにおける各種コード信号の登録状態を示す説明図、図3は、車両側のEEPROMにおける各種コード信号の登録状態を示す説明図、図4は、特定の車両一台に対して登録可能な電子キーを示す説明図、図5は、複数の車両群に対して登録可能な電子キーを示す説明図である。
【0021】
図1を参照して、本発明に係る実施例1の車両用盗難防止装置の構成を説明する。図1に示すように、本実施例1に用いる車両用盗難防止装置は、トランスポンダ60と、トランスポンダ60からの信号を受信するコイルアンテナ21を有する送受信器20と、コイルアンテナ21により取り込まれ、図示しないアンプにより増幅された信号が入力されるイモビライザーECU10(制御部,イモビライザー制御部)と、イモビライザーECU10からの信号により、エンジン始動を制御するエンジン始動装置30とを備えるシステムで構成されている。
【0022】
トランスポンダ60は、自動車のイグニッションスイッチ22のオン、オフを行う運転者が所有する電子キー50のキーヘッド51に内蔵されており、図1に示すように、後述する各種コード信号が記憶されているEEPROM61と、図示しないコイルアンテナを備えた送受信回路62と、そのコイルアンテナが受信した電磁波から電力を生成する電力回路63と、コード信号の送受信を制御するCPU64とを有している。また、本実施例1における電子キー50には、個々の電子キー50に固有のキーコード(鍵山)が形成されたキーブレード52が設けられている。
【0023】
ステアリングロックボデー25には、電子キー50のキーブレード52を挿入可能なキー挿入穴24が形成されているキーシリンダ23が前面側に配設されており、このキーシリンダ23の後端部に連結されるようにイグニションスイッチ22が一体的に組み込まれている。さらに、ステアリングロックボデー25の先端側の外周面には、コイルアンテナ21が配設されている。
【0024】
このコイルアンテナ21は送受信器20に接続されており、イグニッションスイッチ22のオン、オフに連動して後述する電源回路13から送受信器20に電力が供給されることにより作動するようになっている。また、イグニッションスイッチ22は、電子キー50のキーブレード52をキー挿入穴24に挿入してキーシリンダ23をキー挿入位置であるオフ位置からオン位置、さらにスタート位置に回動操作することにより図示しない接点部が切替可能に構成されている。
【0025】
また、イモビライザーECU10は、コイルアンテナ21が受信したコード信号に応じて制御を行うCPU11(比較手段)と、各種コード信号を書換え又は書き込みにより登録可能なEEPROM12(記憶手段)と、CPU11からの要求に応じて各種コード信号を一時的に記憶するRAMと、バッテリ15に接続された電源回路13によって構成されている。したがって、キーシリンダ23に電子キー50が差込まれてイグニッションスイッチ22がオフ位置からオン位置に回動操作されると、バッテリ15から電源回路13を介してCPU11に電力供給がされる。そして、CPU11は送受信器20を起動し、送受信器20はコイルアンテナ21から起動信号を電磁波として電子キー50に送信する。さらにイグニッションスイッチ22をオン位置からスタート位置に回動操作すると、図示しないスタータがバッテリ15に接続され、イモビライザーECU10からエンジン始動許可信号がエンジン始動装置30に出力されることにより、エンジン始動装置30がエンジン40(被制御部)を始動するようになっている。
【0026】
一方、トランスポンダ60は、送受信回路62を構成する図示しないコイルアンテナが起動信号を受信して送受信器20のコイルアンテナ21と電磁結合することにより、電力回路63が電力を生成してCPU64に供給する。CPU64はEEPROM61に予め登録されているコード信号を読み込み、送受信回路62からイモビライザーECU10に向けて送信するようになっている。
【0027】
図2に示すように、電子キー50のEEPROM61には、電子キー50を特定するため、個々の電子キー50に対して設定されているIDコード(1ax,1bx,1cx)と、電子キー50の機能を識別するための識別コード(K,T,M)が、基本情報として個々の電子キー50全てに登録されている。
【0028】
また、特定の電子キー50には、同じ車両群(グループ)に属する電子キー50対して共通するグループコード(Y,W)と、上記したIDコード(1ax,1bx,1cx)にグループコード(Y,W)に基づいた暗号計算処理を施した暗号コード(X1,X2)が登録されている。
【0029】
この識別コード(K,T,M)は、電子キー50が特定の車両に対してエンジン始動を許可することのできる通常キー55であれば、識別コード“K”、エンジン始動を許可することはできないが特定の車両に対してイモビライザーECU10のEEPROM12にIDコード(1ax,1bx,1cx)又はグループコード(Y,W)の書き換え又は書き込みを許可する登録キー56であれば、識別コード“T”、同じ車両群の複数車両に対してエンジン始動を許可することのできるグループキー57であれば、識別コード“T”が登録されており、識別コード(K,T,M)によって、どのような機能を有する電子キー50かを識別できるようになっている。なお、グループキー57に対して、通常キー55及び登録キー56は、特定の車両一台に対して有効であるため、個別キーとして使用される。
【0030】
一方、図3に示すように、イモビライザーECU10のEEPROM12には、通常キー55の3つのIDコード(1ax,2ax,3ax)と登録キー56のIDコード(1bx)が、識別コード(K,T)に対応するように登録されている。また、グループキー57のIDコード(1cx)は登録されておらず、識別コード(M)にグループコード(Y)が対応するように登録されている。
【0031】
なお、本実施例1では、この3つのIDコード(1ax,2ax,3ax)を登録することが可能な記憶領域を第1記憶領域12Aとし、1つのグループコード(Y)を登録することが可能な記憶領域を第2記憶領域12Bとし、登録キー56のIDコード(1bx)を登録することが可能な記憶領域を第3記憶領域12Cとする。
【0032】
通常キー55は図4に示すように特定の車両(A号車又はB号車のいずれか一方)のエンジン始動が可能な電子キー50であり、車両一台に対して所定の数(本実施例1では3本)の通常キー55A1,55A2,55A3を設定できるようになっている。したがって、A号車に対応する通常キー55A1,55A2,55A3ではB号車のエンジンを始動させることはできず、B号車に対応する通常キー55B1,55B2,55B3ではA号車のエンジンを始動させることはできない。
なお、これらの通常キー55にはIDコード(1ax〜6ax)と識別コード(K)が予めトランスポンダ50のEEPROM61に登録されており、グループコードは登録されていない。
【0033】
一方、登録キー56は上記した通常キー55又は、後述するグループキー57を対応する特定の車両(A号車又はB号車のいずれか一方)に登録することができる専用の電子キー50であり、エンジン始動をすることはできない。したがって、A号車に対応する登録キー(56A)ではA号車以外のB号車に対して電子キー50の登録操作をすることはできず、B号車に対応する登録キー(56B)ではB号車以外のA号車に対する電子キー50の登録操作はすることはできない。
【0034】
また、登録キー56のトランスポンダ60のEEPROM61には、図2に示すように、通常キー55と同様にIDコード(1bx,2bx)と識別コード(T)が予め登録されており、グループコードは登録されていない。なお、登録キー56は特定の車両に一本ずつ対応しており、基本的には製造ラインにおいてイモビライザーECU10のEEPROM12に登録されるため、EEPROM12に登録されたIDコード(1bx,2bx)は書き換えられることはないので、トランスポンダ60のEEPROM61には、識別コード(T)を登録せずにIDコード(1bx,2bx)のみを登録するようにしてもよい。
【0035】
グループキー57は図5に示すように複数台(A号車、B号車、C号車)の車両のエンジン始動が可能な電子キー50であり、車両一台に対してそれぞれ必要な数だけ複数本設定することが可能となっている。図2に示すように、グループキー57には、IDコード(1cx〜6cx)と識別コード(M)とともに、所定のグループを構成する複数台の車両群に共通に登録されているグループコード(Y)と暗号コード(X1〜X6)が予めトランスポンダ60のEEPROM61に登録されている。なお、この暗号コード(X1〜X6)はIDコード(1cx〜6cx)をグループコード(Y)に基づいて暗号計算処理を施して暗号化したものであるため、同じグループを構成する複数台の車両群(Y)に設定されたグループキー(57Y)であっても、グループキー(57Y)毎に異なる暗号コード(X1,X2,X3…X6)となっている。
【0036】
また、同じグループを構成する複数台の車両群(Y)のグループキー(57Y)では、他の同じグループを構成する複数台の車両群(W)に属する車両のエンジン始動をすることはできず、車両群(W)のグループキー(57W)では、車両群(Y)に属する車両のエンジン始動をすることはできない。
【0037】
なお、上記した各種コードは、1桁又は複数桁の数値であって、シリアル番号でも不規則な番号でもよい。図中、互いに同一の符号のものは、同一のコードであることを示し、互いに異なる符号のものは、互いに異なるコードであることを示している。
【0038】
次に上記した実施例1におけるイモビライザーECU10側の判定手順を図6〜図11に示すフローチャートで説明する。
図6は、各動作モードに移行するイモビライザーECU側での制御動作を示すフローチャート、図7は、イモビライザーECU側における通常キーによるエンジン始動制御動作を示すフローチャート、図8は、イモビライザーECU側におけるグループキーによるエンジン始動制御動作を示すフローチャート、図9は、イモビライザーECU側における登録キーによる登録モードに移行する制御動作を示すフローチャート、図10は、イモビライザーECU側における通常キーのIDコードを登録する制御動作を示すフローチャート、図11は、イモビライザーECU側におけるグループキーのグループコードを登録する制御動作を示すフローチャートである。
【0039】
まず、図6のフローチャートに示すようにトランスポンダ60内蔵の電子キー50によってイグニッションスイッチ22がオン位置まで回転操作されると、処理が開始され、イモビライザーECU10は、電源回路13を介してバッテリ15からCPU11に電力供給を行い、CPU11は送受信器20を起動し、起動信号(ウェークアップ信号)を電磁波としてコイルアンテナ21から送信する。(ステップS1〜ステップS2)
【0040】
一方、電子キー50側では、ウェークアップ信号をトランスポンダ60に内蔵された送受信回路62の図示しないコイルアンテナが受信することにより、電力回路63が電力を生成し、CPU64に供給する。CPU64はEEPROM61に登録されているIDコードと識別コードを第1コード信号として送受信回路62の図示しないコイルアンテナからコイルアンテナ21に送信するようになっている。
【0041】
ステップS3で第1コード信号としてIDコードと識別コードを送受信器20が受信すると、ステップS4においてEEPROM12に登録している識別コードと受信した識別コードとを比較することによりキーシリンダ23に挿入されている電子キー50の種類を識別する。識別コードが“K”の場合には通常キー55、識別コードが“T”の場合には登録キー56、識別コードが“Y”の場合にはグループキー57と判断し、各動作モードに移行する。(ステップS5〜ステップS9)
【0042】
電子キー50が通常キー55であると判定した場合には、CPU11はEEPROM12の第1記憶領域12Aに登録しているIDコードと受信したIDコードとを比較し、一致した場合には、図7の通常キーの動作モードに移行し、一致しなかった場合には、そのまま動作を終了する。(ステップS5)
【0043】
また、登録キー56であると判定した場合にも、同様にCPU11はEEPROM12の第3記憶領域12Cに登録しているIDコードと受信したIDコードとを比較し、一致した場合には、図9に示す登録キーの動作モードに移行し、一致しなかった場合には、そのまま動作を終了する。(ステップS8)
【0044】
ステップS6から移行する通常キーの動作モード(エンジン始動モード)について図7のフローチャートに基づいて説明する。通常キー55の動作モードでは、図6のステップS5において、受信したIDコードとEEPROM12に登録しているIDコードとの一致を判定しているので、ステップS10においてイグニッションスイッチ22がスタート位置に回転操作されると、ステップS11において、CPU11はエンジン始動装置30にエンジン始動許可信号を出力し、エンジン始動装置30はエンジン40を始動する。
【0045】
このエンジン始動装置30はCPU11から出力されたエンジン始動許可信号に応じてエンジン始動を制御するエンジンECUとすることが一般的であるが、簡易なスターターリレーとしてもよい。この場合には、CPU11はIDコードの一致を照合するとスターターリレーに電力を供給して、リレーをオンさせることによりエンジン40が始動するように構成する。
【0046】
つぎに、ステップS7から移行するグループキー57の動作モード(エンジン始動モード)について図8のフローチャートに基づいて説明する。グループキー57の動作モードでは、ステップS20において、CPU11は送受信器20を起動してコイルアンテナ21から暗号コード要求信号を電磁波としてトランスポンダ60へ送信する。そして、送受信器20がトランスポンダ60から送信された暗号コードを受信すると、ステップS3でEEPROM12に登録されているグループコードに基づいて受信したIDコードに暗号計算処理を施して、暗号コードを算出する。(ステップS21〜ステップS22)
【0047】
そして、ステップS23において、送受信器20が受信した暗号コードとCPU11が算出した暗号コードとを比較し、暗号コードが一致した場合にのみ、イグニッションスイッチ22をスタート位置に回動操作することにより、CPU11からエンジン始動許可信号がエンジン始動装置30に出力され、エンジン始動装置30はエンジン40を始動する。(ステップS24〜ステップS26)
なお、グループキー57に登録されている暗号コードは、CPU11がステップS22で行っている暗号計算処理と同じ暗号計算処理が施されて暗号化されたものである。
【0048】
図9は登録キー56の動作モード(電子キー登録モード)の処理手順を示すフローチャートである。図6のステップS1においてイグニッションスイッチ22をオン位置に回転操作した状態から、そのまま登録キー56をオン位置に2秒間保持することにより、ホーンが吹鳴し、運転者に登録モードに移行したことを知らせる。(ステップS30〜ステップS32)
【0049】
ホーンが吹鳴したにもかかわらず登録キー56が所定時間以上(本実施形態では15秒以上)登録キー56がオン位置に保持されたままとなっている場合には、その後に登録キー56がOFF位置に回動操作されて引き抜かれても、登録モードとはならず、そのまま登録モードは終了する。(ステップS33〜ステップS34)
【0050】
一方、ホーンが吹鳴した後、イグニッションスイッチ22がオフ位置に回動操作され、そして、所定時間以内(本実施例では10秒以内)に登録キー56がキーシリンダ23から抜かれ、次にキーシリンダ23に挿入された電子キー50によりイグニッションスイッチ22がオン位置に回動操作されたかが判定される。(ステップS35〜ステップS36)そして、そのまま電子キー50がオン位置に2秒間保持されるとホーンが吹鳴し、登録処理が開始される。(ステップS37〜ステップS39)
【0051】
ステップS30で登録キー56が引き抜かれた後、所定時間以内(本実施例では10秒以内)に、登録したい電子キー50が挿入されてイグニッションスイッチ22がONされない場合(ステップS35)又はオン位置に回動操作されても2秒間保持されず、イグニッションスイッチ22がオフ位置に回転操作された場合(ステップS40)には、そのまま登録操作は終了する。
【0052】
登録処理として、ステップS41でウェークアップ信号がコイルアンテナ21からトランスポンダ60に電磁波として送信される。ステップS42でトランスポンダ60から送信されたIDコードと識別コードを含む第1コード信号をコイルアンテナ21が受信すると、送受信器20からCPU11に出力され、CPU11は第1コード信号から識別コードを抽出して、電子キー50の種類を判別する。(ステップS43〜ステップS44)
【0053】
このとき、トランスポンダ60ではウェークアップ信号を受信すると、電磁誘導により電力回路63が電力を生成して、CPU64に電力が供給される。そして、CPU64はEEPROM61からIDコードと識別コードを読み込み、送受信回路62から第1コード信号(IDコード及び識別コード)を送信するようになっている。
【0054】
ステップS44で、受信した第1コード信号の識別コードが“K”であれば通常キー55の登録モードへ、識別コードが“M”であればグループキー57の登録モードへ移行する。(ステップS45,ステップS46)なお、識別コードが“T”の場合には、登録キー56であるので、イグニッションスイッチ22がオフ位置に回動操作されることにより、登録モードは終了する。(ステップS47)
【0055】
登録キー56によりイグニッションスイッチ22がオン位置に15秒以上、そのまま保持された場合も、イグニッションスイッチ22がオフ位置に回動操作されることにより、登録モードは終了する。(ステップS37,ステップS40)
【0056】
まず、通常キー55の登録モードについて、図10のフローチャートに基づいて説明する。図9のステップS36において、登録キー56を抜いた後、イグニッションスイッチ22をオン位置に回動操作した最初の通常キー55Aは、既にステップS37で2秒経過しているので、ステップS50からステップS52に移行し、ホーンは吹鳴しない。そして、再度ウェークアップ信号がトランスポンダ60に向けて送信され、送受信器20が第1コード信号(IDコードと識別コード)を受信することにより、電子キー50の種類を識別する。(ステップS52〜ステップS55)
【0057】
最初にステップS55で判定される電子キー50は、図9のステップS44〜ステップS45により通常キー55であると判定されているので、そのままステップS56に移行し、RAM14に一時記憶しているIDコード数をカウントし、EEPROM12の第1記憶領域12Aに登録可能な本数に達していない場合には、RAM14に受信したIDコードを一時保存する。(ステップS57)
【0058】
そして、所定時間以内(本実施例では2〜17秒以内)にイグニッションスイッチ22がオフ位置に回動されたかを判定し、オフ位置に回動された後、所定時間以内(本実施例1では10秒以内)次の電子キー50が挿入されてイグニッションスイッチ22がオン位置に回転操作されたかを判定する。(ステップS58〜ステップS61)
【0059】
なお、図9のステップS39又は図10のステップS51においてホーンが吹鳴したにもかかわらず、イグニッションスイッチ22がオン位置に17秒以上保持されたままとなっている場合には、その後、イグニッションスイッチ22がオフ位置に回転操作されると、そのまま登録モードが終了し、EEPROM12に記憶されている情報は変更されない。(ステップS58,ステップS62)
【0060】
また、ステップS60で通常キー55がオフ位置に回転操作され、所定時間以内(本実施例1では10秒以内)にイグニッションスイッチがオンされない場合にも、そのまま、登録モードは終了し、EEPROM12に記憶されている情報は変更されない。(ステップS60〜ステップS61)
【0061】
一方、ステップS58〜ステップS61の条件が充たされた場合には、ステップS50に戻り、イグニッションスイッチ22をオン位置に回動操作して所定時間(本実施例1では2秒間)保持することにより、ステップS51でホーンが吹鳴されて引き続き登録処理が開始される。
【0062】
すなわち、ステップS52でウェークアップ信号がトランスポンダ60に送信され、送受信器20がトランスポンダ60から送信された第1コード信号(IDコード及び識別コード)を受信することにより、キーシリンダ23に挿入されている電子キー50の種類が識別される。(ステップS50〜ステップS55)
【0063】
ステップS55で挿入された電子キー50が登録キー56の場合には、イグニッションスイッチ22がオン位置に回動操作された後、所定時間内(本実施例では2〜17秒以内)にオフ位置に回動操作された場合には、RAM14に一時保存している全てのIDコードをEEPROMに登録して登録作業を終了する。(ステップS63〜ステップS65)但し、ステップS63で所定時間以上イグニッションスイッチ22がオン位置に保持されたままとなった後、オフ位置に回動操作された場合には、RAMに一時保存しているIDコードをEEPROMに登録することなく、登録モードは終了する。(ステップS66)
【0064】
また、ステップS55で挿入された電子キー50がグループキー57であった場合でも、所定時間以内にイグニッションスイッチ22がオフ位置に回動操作された後、通常キー55又は登録キー56により再度イグニッションスイッチ22をオン位置することにより、ステップ50に戻って引き続き登録作業を行うことができる。(ステップS58〜ステップS61)この場合もグループキー57でイグニッションスイッチ22を所定時間以上オン位置に保持したままとすると、その後、オフ位置に回動操作された場合でも、EEPROM12に記憶されている情報は変更されることなく、登録モードは終了する。(ステップS58〜ステップS59,ステップS62)
【0065】
ステップS56で既にRAM14に一時保存されているIDコードがEEPROM12の第1記憶領域12Aに登録可能本数を超えてしまっているときには、そのIDコードは保存されず、先にRAM14に記憶されたIDコードのみがEEPROM12に登録されることとなる。
【0066】
グループキー56の登録モードについて、図11のフローチャートに基づいて説明する。図9のステップS45において、キーシリンダ23に挿入された電子キー50がグループキー57であると判断した場合には、図11のステップS70に移行し、CPU11は送受信器20を起動してコイルアンテナ21からグループコード要求信号を電磁波として送信する。そして、グループコード要求信号に応じてトランスポンダ60から送信されたグループコードを送受信器20が受信すると、CPU11はグループコードをRAM14に一時記憶する。(ステップS71)
【0067】
その後、ステップS72〜ステップS73で所定時間以内(本実施例では2秒〜17秒以内)にイグニッションスイッチ22がオフ位置に回動操作されたかを判定し、所定時間が経過してもイグニッションスイッチ22がオフ位置に回動操作されない場合には、その後、イグニッションスイッチ22がオフ位置に回動操作されると、そのまま登録モードを終了する。(ステップS74)
【0068】
一方、所定時間以内にイグニッションスイッチ22がオフ位置に回動操作されるとともに、所定時間内に(本実施例では10秒間)次の電子キー50が挿入されて、イグニッションスイッチ22がオン位置に回動操作されたかが判定される。(ステップS75〜ステップS76)所定時間以内にキーシリンダ23に電子キー50が挿入されず、イグニッションスイッチ22がオン位置に回転操作されない場合には、そのまま登録モードを終了する。(ステップS77)
【0069】
そして、ステップS78及びステップS79でオン位置に所定時間(本実施例では2秒間)保持されたかを判定し、2秒経過するとホーンが吹鳴し、登録処理が開始されたことを知らせる。(ステップS80)なお、イグニッションスイッチ22がオン位置に回動されても、電子キー50をすぐに抜いた場合には、ステップS88に移行し、そのまま登録モードは終了する。
【0070】
ステップS81からの登録処理では、まず、ウェークアップ信号がコイルアンテナ21から送信される。そして、送受信器20が受信したIDコードと識別コードから、CPU11は挿入されている電子キー50を識別する。受信した識別コードが登録キー56を示す識別コードであれば、受信したIDコードとEEPROM12の第3記憶領域12Cに登録しているIDコードとを照合し、一致した場合には、ステップS71で受信したグループコードをEEPROM12の第2記憶領域12Bに登録し、イグニッションスイッチ22がオフ位置に回動操作されることにより登録処理は終了する。(ステップS81〜ステップS86)
【0071】
このとき、以前にEEPROM12の第2記憶領域12Bに登録されていたグループコードは消去されるため、以前登録されていたのグループキー57はすべて使用することができなくなる。
なお、挿入された電子キー50が通常キー55、グループキー57又はEEPROM12に登録されている登録キー56以外の登録キーである場合には、イグニッションスイッチ22がオフ位置に回動操作されることにより、登録モードは終了し、RAM14に一時記憶したグループコードは全て消去される。
【0072】
上記のように複数の複製キーを製造することのできるグループキー57の動作モードでは、イモビライザーECU10においてIDコードを受信した後、さらに暗号コードを要求するとともに、受信したIDコードをEEPROM12に記憶しているグループコードに基づいて、所定の暗号計算処理を施すことにより暗号コードを算出し、送受信器20が受信した暗号コードと算出した暗号コードが一致したときにエンジン始動許可信号を出力するようにしているので、グループキー57の暗号コードが第三者に読み取られたとしても、暗号コードだけでは、エンジン40を始動することはできないため、車両一台に対してグループキー57を複数設定した場合でもセキュリティーの低下を防止することができる。
【0073】
また、同じ車両のグループキー57であっても、IDコードは各グループキー57毎で個々に異なっているため、暗号コードは見かけ上、すべて異なるコードとなるため、グループコードが読み取られない限りIDコードを第3者に復号されることを防止することができる。
【0074】
さらに、このグループコードは、登録時にトランスポンダ60からイモビライザーECU10に送信されるだけで、エンジン始動時には送受信されることはないので、グループコードを秘密キーとした暗号計算処理を施すことができる。
【0075】
一方、メーカー側においては、同じ車両に登録されているグループコードと、電子キーの各々登録されているIDコードをグループコードに基づいて暗号計算処理を施して暗号コード算出し、その暗号コードを電子キー50に登録すればグループキー57を簡単に複製することができる。
【0076】
また、イモビライザーECU10はグループキー57から送信されたIDコードを登録されているグループコードに基づいて暗号計算処理を施して暗号コードを算出しているため、EEPROM12の第2記憶領域12Cには暗号計算処理の基礎となるグループコードだけを登録させておけばよいので、EEPROM12の第2記憶領域12Cの記憶容量に関係なく、複数のグループキー57を設定することができる。
【0077】
なお、上記したように、本実施例1では、通常キー55は車両一台に対して設定できる数が限られており、一本ごとに登録を抹消して新規キーを再登録することができるため、電子キー50を紛失した場合や複製された恐れがある場合でも、第三者の不正使用を阻止することが可能であることから、通常キー50では、IDコードの照合だけでエンジン始動ができるようになっており、グループコードのような秘密コードを備えるようにはしていない。しかしながら、通常キー55においても、セキュリティー性を向上させるため、車両側から送信された乱数コード等に基づいて、IDコードに暗号計算処理を施すことにより暗号化して車両側に送信するようにしてもよい。
【0078】
次に上記した実施例1では設定していないグループ登録キー58を備えた実施例2について図12〜図14に基づいて説明する。
図12は、グループ登録キーを含む各電子キーのEEPROMにおける各種コード信号の登録状態を示す説明図、図13は、グループ登録キーを含む車両側のEEPROMにおける各種コード信号の登録状態を示す説明図、図14は、グループ登録キーを含むグループ登録キーを含む複数の車両群に対して登録可能な電子キーを示す説明図である。
なお、上記した実施例1と同一部分については、同じ符号で示し、その説明を省略する。
【0079】
本実施例2の発明では、上記した実施例1の通常キー55、登録キー56及びグループキー57に加え、図14に示すように複数台の車両(A号車、B号車、C号車)に搭載されたイモビライザーECU10のEEPROM12に対して、それぞれの車両に対応する通常キー55のIDコード又は、グループキー57のグループコードの書き換え又は書き込みを許可することができる共通の電子キー50であるグループ登録キー58が設定されている。
【0080】
このグループ登録キー58のEEPROM61には、図12に示すようにIDコード(1dx)と、識別コード(R)が、基本情報として登録されており、グループキー57と同様に同じ車両群(グループ)に属する電子キー50に共通して登録されているグループコード(Y)と、上記したIDコード(1dx)にグループコード(Y)に基づいた暗号計算処理を施した暗号コード(Z1)が登録されている。
【0081】
一方、図13に示すように、イモビライザーECU10のEEPROM12には、通常キー55の3つのIDコード(1ax,2ax,3ax)と登録キー56のIDコード(1bx)が、識別コード(K,T)に対応するように登録されている。また、グループキー57及びグループ登録キー58のIDコード(1cx,1dx)は登録されておらず、識別コード(M,R)にグループコード(Y)が対応するように登録されている。
【0082】
また、実施例1と同様に通常キーのIDコードが登録される記憶領域を第1記憶領域12A、グループキーのグループコードが登録される記憶領域を第2記憶領域12B、登録キーのIDコードが登録される記憶領域を第3記憶領域12C、グループ登録キーのグループコードが登録される記憶領域を第4記憶領域12Dとする。
【0083】
さらに、グループ登録キー58は登録キー56と同様にエンジン始動をすることはできない。また、グループキー57と同様に車両一台に対してそれぞれ必要な数だけ複数本設定することが可能となっている。
【0084】
グループ登録キー58は、各車両の登録キー56によって、図11に示すグループキー57の登録モードと同じ登録処理で一本のグループ登録キー58を複数の車両に登録することができる。このとき、グループ登録キー59のグループコードは識別コード“R”に対応する第4記憶領域12Dが選択されて登録されることになる。
【0085】
また、グループ登録キー58で通常キー55又はグループキー57を車両に登録する場合には、登録キー56と同様にグループ登録キー58をキー挿入穴24に挿入してイグニッションスイッチ22をオン位置に回動操作する。そして、図6のステップS4でイモビライザーECU10のCPU11がグループ登録キー58の識別コードであると判定した場合には、CPU11は、図8のステップS20〜ステップS23の暗号照合処理を行い、EEPROM12に登録されている暗号コードと算出した暗号コードが一致した場合には、ステップS9から図9の登録キーの動作モードに移行する。したがって、登録操作は登録キー56と同じように行うようにすればよい。
【0086】
このような複数台の車両に対して登録作業が可能なグループ登録キー58を設定することにより、新規な通常キー55又はグループキー57を追加登録する場合等に登録キー56が無くても、グループ登録キー58を一本所有しておくことにより、容易にイモビライザーECU10におけるEEPROM12の書換え又は書き込みが可能となるため、上記したような車両を複数台まとめてレンタルする車両レンタル会社では、レンタルしている車両の整備や管理を効率化することができる。
【0087】
なお、上記実施例では、電子キー50にキー挿入穴24に挿入するキーブレード52を設ける設定としているが、機械的な錠装置であるキーシリンダ23やキーブレード52を廃止して、トランスポンダ60によるコード信号の照合のみでエンジン始動を許可するようにしてもよい。この場合には、ステアリングロックボデー25に操作ノブを回動可能に設けると共に、その操作ノブの回動を規制する電磁アクチュエータをステアリングロックボデー25に一体的に設け、コード信号が一致したことを条件に電磁アクチュエータが駆動し、操作ノブの回動を許可する電動ステアリングロックにイグニッションスイッチ22を設けるようにする。
【0088】
さらにキーブレード52を設けた場合には、通常キー55と登録キー56の鍵山は特定の車両一台(例えばA号車)のキーシリンダ23に対するキーコードとして、同じ車両群(グループ)の車両(例えばB号車)のキーシリンダ23でも回動操作することはできない一般的なキーとすればよい。一方、グループキー57とグループ登録キー58の鍵山は同じ車両群(グループ)のキーシリンダ23に共通のキーコードを有するように形成し、所定の車両群(例えば車両群(Y))に属する車両のキーシリンダ23の回動操作はすることはできるが、他の車両群(例えば車両群(W))に属する車両のキーシリンダ23は回動操作することができないようなマスターキーとすればよい。
【0089】
上記した実施例では、車両用盗難防止装置のイモビライザーシステムに適用したものを示したが、車両のドアロック装置を施解錠する非接触キーレスエントリーに適用することもできる。この場合には、コイルアンテナ21をドアハンドル周辺に設け、電子キー50をドアハンドルに近づけるようにして、電子キー50とドアロックECUとの通信を行わせて、上記実施例と同様に電子キー50とドアロックECUに登録されているIDコード又は暗号コードの一致を判定することによって、ドアロック装置の施解錠制御をするように構成すればよい。
【0090】
また、車両に車両用盗難防止装置のイモビライザーシステムと非接触キーレスエントリーの両方を設定することもできる。この場合には、イモビライザーシステム用と非接触キーレスエントリー用のコード信号を異ならせることにより、さらにセキュリティー性を向上することができる。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明は、車両系建設機械等の特殊車両のみならず、普通乗用車等の一般車両にも複数台を管理する必要があるような場合に適用することができる。
【0092】
さらに本発明は、マンションやアパートのような集合住宅の管理会社が所有するマスターキーシステムにも適用することができる。この場合には、各部屋毎の個人のキーを通常キーとし、一棟のマンションやアパートに属する各戸を一つのグループとしてグループキーを設定する。これによりグループキーを管理会社とマンションの管理人にそれぞれマスターキーとして所有することができる。したがって、管理人が不在の場合でも管理会社のサービスマンが各戸のドアの錠前を解錠することができるので、災害時などにおける緊急の対応を迅速に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】本発明に基づく車両用盗難防止用のイモビライザーシステムのシステムブロック図である。
【図2】各電子キーのEEPROMにおける各種コード信号の登録状態を示す説明図である。
【図3】車両側のEEPROMにおける各種コード信号の登録状態を示す説明図である。
【図4】特定の車両一台に対して登録可能な電子キーを示す説明図である。
【図5】複数の車両群に対して登録可能な電子キーを示す説明図である。
【図6】各動作モードに移行するイモビライザーECU側での制御動作を示すフローチャートである。
【図7】イモビライザーECU側における通常キーによるエンジン始動制御動作を示すフローチャートである。
【図8】イモビライザーECU側におけるグループキーによるエンジン始動制御動作を示すフローチャートである。
【図9】イモビライザーECU側における登録キーによる登録モードに移行する制御動作を示すフローチャートである。
【図10】イモビライザーECU側における通常キーのIDコードを登録する制御動作を示すフローチャートである。
【図11】イモビライザーECU側におけるグループキーのグループコードを登録する制御動作を示すフローチャートである。
【図12】グループ登録キーを含む各電子キーのEEPROMにおける各種コード信号の登録状態を示す説明図である。
【図13】グループ登録キーを含む車両側のEEPROMにおける各種コード信号の登録状態を示す説明図である。
【図14】グループ登録キーを含む複数の車両群に対して登録可能な電子キーを示す説明図である。
【符号の説明】
【0094】
10 イモビライザーECU(制御部,イモビライザー制御部)
12 EEPROM(記憶手段)
11 CPU(比較手段)
40 エンジン(被制御部材)
50 電子キー
55 通常キー
56 登録キー
57 グループキー
58 グループ登録キー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子キーから送信されたコード信号と、その受信したコード信号と記憶しているコード信号とを比較し、一致したときに被制御部材の作動を許可するようにした制御部を備えた電子キーを用いたセキュリティシステムにおいて、
電子キー毎に個別の異なる番号で構成されたIDコードと、電子キーの機能を識別する識別コードとをコード信号として記憶した個別キーと、
所定のグループ毎に設定されたグループコードと、グループコードに基づいて所定の暗号処理をIDコードに施して算出した暗号コードとをIDコードと識別コードとともにコード信号として記憶したグループキーとを設け、
前記制御部には、前記各種コード信号を記憶する記憶手段と、
第1コード信号として前記個別キーの識別コードに対応するIDコードを受信したときには、受信したIDコードと前記記憶手段に記憶している個別キーのIDコードとを比較し、両者が一致したときに前記被制御部材の作動を許可する許可信号を出力する一方、第1コード信号として前記グループキーの識別コードに対応するIDコードを受信したときには、受信したIDコードに前記記憶手段に記憶しているグループコードに基づく所定の暗号処理を施して暗号コードを算出するとともに、その算出された暗号コードと第2コード信号として受信した前記グループキーの暗号コードとを比較し、一致したときに前記被制御部材の作動許可する許可信号を出力する比較手段を備えたことを特徴とする電子キーを用いたセキュリティシステム。
【請求項2】
電子キーから送信されたコード信号と、その受信したコード信号と記憶しているコード信号とを比較し、一致したときに車両のエンジン始動を許可するようにしたイモビライザー制御部を備えた電子キーを用いたセキュリティシステムにおいて、
電子キー毎に個別の異なる番号で構成されたIDコードと、電子キーの機能を識別する識別コードとをコード信号として記憶した個別キーと、
所定のグループ毎に設定されたグループコードと、グループコードに基づいて所定の暗号処理をIDコードに施して算出した暗号コードとをIDコードと識別コードとともにコード信号として記憶したグループキーとを設け、
前記イモビライザー制御部には、前記各種コード信号を記憶する記憶手段と、
第1コード信号として前記個別キーの識別コードに対応するIDコードを受信したときには、受信したIDコードと前記記憶手段に記憶している個別キーのIDコードとを比較し、両者が一致したときに車両のエンジン始動を許可する許可信号を出力する一方、第1コード信号として前記グループキーの識別コードに対応するIDコードを受信したときには、受信したIDコードに前記記憶手段に記憶しているグループコードに基づく所定の暗号処理を施して暗号コードを算出するとともに、その算出された暗号コードと第2コード信号として受信したグループキーの暗号コードとを比較し、一致したときに車両のエンジン始動を許可する許可信号を出力する比較手段を備えたことを特徴とする電子キーを用いたセキュリティシステム。
【請求項3】
前記記憶手段に、個別キーのIDコードを記憶する第1記憶領域と、グループキーのグループコードを記憶する第2記憶領域とを設け、
前記比較手段は識別コードに応じていずれかの記憶領域を選択して、コード信号を読み込むことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電子キーを用いたセキュリティシステム。
【請求項4】
電子キー毎に個別の異なる番号で構成されたIDコードと、各種コード信号の前記記憶手段への書換え又は書き込みを許可する登録機能を示す識別コードとをコード信号として記憶した個別の登録キーと、
所定のグループ毎に設定されたグループコードと、グループコードに基づいて所定の暗号処理をIDコードに施して算出した暗号コードと、各種コード信号の前記記憶手段への書換え又は書き込みを許可する登録機能を示す識別コードとをIDコードとともにコード信号として記憶したグループ登録キーとを設け、
前記比較手段は、第1コード信号として前記登録キーの識別コードに対応するIDコードを受信したときには、前記記憶手段に記憶している登録キーのIDコードと比較し、両者が一致したときに各種コード信号の前記記憶手段への書換え又は書き込みを許可する一方、第1コード信号として前記グループ登録キーの識別コードに対応するIDコードを受信したときには、受信したIDコードに前記記憶手段に記憶しているグループコードに基づく所定の暗号処理を施して暗号コードを算出するとともに、その算出された暗号コードと第2コード信号として受信した前記グループ登録キーの暗号コードとを比較し、一致したときに各種コード信号の前記記憶手段への書換え又は書き込みを許可することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電子キーを用いたセキュリティシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2007−176320(P2007−176320A)
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−377383(P2005−377383)
【出願日】平成17年12月28日(2005.12.28)
【出願人】(000138462)株式会社ユーシン (241)
【Fターム(参考)】