説明

電気光学装置及び電子機器

【課題】 互いに交差して配置される信号配線の交差部における不具合を解消して優れた電気的特性及び信頼性を得られるようし、好ましくは画素開口率の向上、及び表示品質の向上をも実現し得る電気光学装置を提供する。
【解決手段】 本発明に係る液晶装置(電気光学装置)は、互いに交差して延びる走査線(第1信号配線)3a及びデータ線(第2信号配線)6aと、前記走査線3a及びデータ線6aと電気的に接続されたTFT30とを備えており、走査線3aとデータ線6aとの交差部に対応してコンタクトホール61が形成され、当該コンタクトホール61内に前記走査線3aの一部が埋入されている。容量線(第3信号配線)3bとデータ線6aとの交差部にもコンタクトホール62が設けられており、当該コンタクトホール62内に前記容量線3bの一部が埋入されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気光学装置及び電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶装置等の電気光学装置の分野では、アクティブマトリクス方式のものが従来から知られている。この種の電気光学装置に用いられるアクティブマトリクス基板は、互いに交差する複数のデータ線と複数の走査線とが設けられ、これら配線によって区画された各画素毎に、画素電極と、当該画素電極を制御するためのTFT(Thin Film Transistor:薄膜トランジスタ)等のスイッチング素子とが配置されている。スイッチング素子には、画像信号を供給するデータ線と、走査信号が順次印加される走査線と画素電極と、が電気的に接続されており、画素電極がマトリクス状に配置された領域が画像表示領域を構成する。
【0003】
ところで、上記のような互いに交差する複数の配線を有するアクティブマトリクス基板では、それらの配線を絶縁膜を介した異なる配線層に形成することで、配線を立体的に交差させている。例えば、下層側に走査線を配置し、それを覆って形成した層間絶縁膜上にデータ線を形成している。このような配線構造では、走査線の膜厚による段差があるため、走査線の幅方向の端部で層間絶縁膜の被覆性が低下しやすく、したがって層間絶縁膜上に形成したデータ線と、下層側の走査線との間でリークを生じやすくなったり、走査線の膜厚に起因して層間絶縁膜表面に形成された段差によってデータ線の断線が生じやすくなるという問題がある。そこで、走査線をデータ線との交差部で不連続に形成するとともに、データ線を挟んだ両側に設けたコンタクトホールを介して走査線と他の層の架橋配線とを接続することでデータ線を迂回するようにした配線構造が知られている(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平11−95256号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載の技術によれば、走査線とデータ線とを同層に形成するので、走査線とデータ線とを立体的に交差させる配線構造に比べればアクティブマトリクス基板表面の凹凸を抑制できると考えられる。しかしながら、走査線とデータ線との交差位置に対応して架橋配線が形成されてるため、実際には架橋配線の分だけアクティブマトリクス基板の表面に凸部が形成されるものと考えられる。また、交差部において走査線とデータ線とが近接して配置されるので、両配線間に寄生容量が発生しやすくなり、信号遅延を生じやすくなるという問題もある。
【0005】
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑み成されたものであって、互いに交差して配置される信号配線の交差部における不具合を解消して優れた電気的特性及び信頼性を得られるようし、好ましくは画素開口率の向上、及び表示品質の向上をも実現し得る電気光学装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するために、互いに交差して延びる第1信号配線及び第2信号配線と、前記第1信号配線及び第2信号配線に電気的に接続されたトランジスタとを基体上に形成してなる電気光学装置であって、前記基体上に形成された前記第1信号配線の少なくとも一部を覆って形成された層間絶縁膜上に前記第2信号配線が形成されて、前記第1信号配線と前記第2信号配線とが交差しており、前記第1信号配線と第2信号配線との交差部に対応する位置の前記基体表面に凹部が形成されていることを特徴とする電気光学装置を提供する。
【0007】
また本発明は、上記課題を解決するために、互いに交差して延びる第1信号配線及び第2信号配線と、前記第1信号配線及び第2信号配線に電気的に接続されたトランジスタとを基体上に形成してなる電気光学装置であって、前記基体上に形成された第1絶縁膜上に前記第1信号配線が形成され、該第1信号配線の少なくとも一部を覆って形成された第2絶縁膜上に前記第2信号配線が形成されて、前記第1信号配線と前記第2信号配線とが交差しており、前記第1信号配線と第2信号配線との交差部に対応する位置の前記第1絶縁膜に凹部が形成されていることを特徴とする電気光学装置を提供する。
【0008】
上記各構成によれば、前記第1信号配線と第2信号配線との交差部において、第1信号配線の膜厚に起因する段差を、前記凹部によって緩和することができるので、第1信号配線上に層間絶縁膜ないし第2絶縁膜を介して形成される第2信号配線における凹凸を緩和することができ、当該第2信号配線の断線等を効果的に防止することができ、信頼性に優れた電気光学装置を得ることができる。また、先の特許文献1に記載の技術のように、他層に設けた架橋配線により迂回する配線構造ではないため、第1信号配線において良好な信号伝達特性を得ることができ、電気的特性に優れた電気光学装置となる。
また、前記交差部において第1信号配線の膜厚による段差が小さくなるので、層間絶縁膜ないし第2絶縁膜による第1信号配線の被覆性が向上し、第1信号配線上で局所的に層間絶縁膜ないし第2絶縁膜が薄くなることがなくなる。これにより、第2信号配線と第1信号配線との間での電流リークを防止でき、また両配線間の寄生容量も小さくできる。さらに、信号配線及びトランジスタが形成された表面における平坦度も向上するので、例えば液晶装置を構成した場合には、液晶層の層厚の不均一や液晶の配向不良等が生じるのを防止でき、高品質の表示を得られる液晶装置とすることができる。
なお、本発明において、「電気光学装置」は、電界により物質の屈折率が変化して光の透過率を変化させる電気光学効果を有する装置のほか、電気エネルギーを光学エネルギーに変換する発光装置等も含んで総称するものである。
【0009】
本発明の電気光学装置では、前記基体表面又は第1絶縁膜上に、前記第1信号配線に沿って延び、前記第2信号配線と交差する第3信号配線が形成されており、前記第3信号配線と第2信号配線との交差部に対応する位置の前記基体表面又は第1絶縁膜にも凹部が形成されている構成とすることもできる。すなわち本発明は、第2信号配線と交差する配線が複数種である場合にも好適に用いることができ、信頼性及び電気的特性に優れた電気光学装置を構成することができる。
【0010】
本発明の電気光学装置では、前記凹部の幅が、前記第2信号配線の線幅より広く形成されていることが好ましい。このような構成とすることで、第2信号配線が形成される層間絶縁膜上の領域、又は第2絶縁膜上の領域を、より平坦化することができ、第2信号配線において断線等の不具合を効果的に防止することができる。
【0011】
本発明の電気光学装置では、前記凹部が、前記第1絶縁膜を貫通する貫通孔であってもよい。このような構成とすれば、第1絶縁膜に形成した凹部を一定の深さに形成しやすくなり、第1信号配線と第2信号配線との交差部が基体上に複数形成されている場合に、各交差部での平坦度を均一化することができ、基体表面全体での平坦度が向上する。
【0012】
本発明の電気光学装置では、前記基体と第1絶縁膜との間に導電膜パターンを含む配線層が形成されており、前記貫通孔を介して前記第1信号配線及び/又は前記第3信号配線と前記導電膜パターンとが電気的に接続されている構成とすることもできる。
この構成によれば、前記交差部における凹凸を緩和するための貫通孔を、絶縁膜を介して積層された複数の配線層間の接続に利用することができる。したがって工数を増加させることなく複雑な配線構造を形成することができ、製造効率及び製造容易性に優れた電気光学装置となる。
【0013】
本発明の電気光学装置では、前記トランジスタと電気的に接続された蓄積容量を備え、前記第3信号配線が、前記蓄積容量の一の電極を構成する容量線であり、前記貫通孔を介して該容量線と接続された前記導電膜パターンが前記蓄積容量の他の一の電極を構成する容量電極膜である構成とすることができる。
前記貫通孔を介して接続する構成部材は、容量線とともに蓄積容量を構成する容量電極膜であってもよい。この構成によれば、電気光学装置の開口率に影響することなく蓄積容量を増大させることができる。また、同じ容量の蓄積容量であればより小さい面積とすることができるので、電気光学装置の開口率を向上させることができる。
【0014】
本発明の電気光学装置では、前記トランジスタが、半導体層と、該半導体層を層厚方向に挟持する第1ゲート電極及び第2ゲート電極とを備えており、前記第1信号配線が前記トランジスタの第1ゲート電極に接続された走査線であり、前記貫通孔を介して該走査線と接続された前記導電膜パターンが、前記トランジスタの第2ゲート電極に接続されたバックゲート配線である構成とすることもできる。
本発明の電気光学装置では、半導体層のチャネル領域を挟んだ両側に一対のゲート電極が設けられたトランジスタを具備した構成とすることもできる。そして、上記第1信号配線と第2信号配線との交差部に設けた第1絶縁膜の貫通孔を、上記第1ゲート電極と第2ゲート電極とに同一の電圧を印加するための導電接続構造に利用することができるようになっている。この構成によれば、基体上に凹凸を生じさせることなく一対のゲート電極を具備したトランジスタを作製できるので、トランジスタの動作安定性に優れ、信頼性に優れるとともに、表示特性に優れる電気光学装置を提供することができる。
【0015】
本発明の電気光学装置では、前記貫通孔を介して前記第1信号配線又は第3信号配線と電気的に接続された導電膜パターンが、前記配線層に含まれる他の導電膜パターンと電気的に絶縁されている構成とすることもできる。この場合、前記交差部に対応する位置の導電膜パターンは、前記配線層に設けられた電子素子の一部を構成するものではないが、前記第1絶縁膜に貫通孔を形成する際のエッチストッパーとして機能するものとなる。前記第1絶縁膜が前記基体と同一の材質である場合や、類似のエッチング特性を有する材料からなるものである場合には、貫通孔の深さをエッチング時間により調整したとしても、基体面内で貫通孔の深さが不均一になる可能性がある。そこで、本構成のようにエッチストッパーとして機能する導電膜パターンを前記配線層に設けておけば、同導電膜パターンの位置でエッチングが停止するので、極めて容易に均一な深さの貫通孔を形成することができ、製造容易性に優れる電気光学装置となる。
【0016】
次に、本発明の電子機器は、先に記載の本発明の電気光学装置を備えたものである。この構成によれば、優れた信頼性と電気的特性を具備し、高画質表示が得られる表示部を備えた電子機器が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
(第1の実施形態)
以下、本発明の第1の実施形態を、図面を参照して説明する。なお、以下の各図面においては、説明を判りやすくするために、縮尺は必ずしも正確ではない。
図1(a)は、本発明に係る電気光学装置の一実施の形態である液晶装置を各構成要素とともに対向基板側からみた平面構成図、図1(b)は、図1(a)に示すH−H’線に沿う断面構成図、図2は、液晶装置を構成するアクティブマトリクス基板上に設けられた各種配線や周辺回路等の電気的な構成を示すブロック図である。
【0018】
[液晶装置の全体構成]
図1(a)及び図1(b)に示すように、本実施形態の液晶装置は、TFTアレイ基板(アクティブマトリクス基板)10と、対向基板20とが平面視略矩形枠状のシール材52によって貼り合わされ、このシール材52に囲まれた領域内に液晶層50が封入された構成を備えている。シール材52内周側に沿って平面視矩形枠状の周辺見切り53が形成され、この周辺見切りの内側の領域が画像表示領域51とされている。シール材52の外側の領域には、データ線駆動回路201及び外部回路実装端子202がTFTアレイ基板10の1辺(図示下辺)に沿って形成されており、この1辺に隣接する2辺に沿ってそれぞれ走査線駆動回路204,204が形成されて周辺回路を成している。TFTアレイ基板10の残る1辺(図示上辺)には、画像表示領域51の両側の走査線駆動回路204,204間を接続する複数の配線205が設けられている。また、対向基板20の各角部においては、TFTアレイ基板10と対向基板20との間の電気的導通をとるための基板間導通材206が配設されている。本実施形態の液晶装置は、透過型の液晶装置として構成され、TFTアレイ基板10側に配置された光源(図示略)からの光を変調して対向基板20側から出射するようになっている。
【0019】
なお、データ線駆動回路201あるいは走査線駆動回路204,204をTFTアレイ基板10の上に形成する代わりに、例えば、駆動用LSIが実装されたCOF(Chip OnFilm)基板とTFTアレイ基板10の周辺部に形成された端子群とを異方性導電膜を介して電気的及び機械的に接続するようにしてもよい。また、液晶装置においては、使用する液晶の種類、すなわち、TN(Twisted Nematic)モード、STN(Super Twisted Nematic)モード、垂直配向モード等の動作モードや、ノーマリホワイトモード/ノーマリブラックモードの別に応じて、位相差板、偏光板等が所定の向きに配置されるが、ここでは図示を省略する。
【0020】
このような構造を有する液晶装置の画像表示領域51には、図2に示すように、データ線6a及び走査線3aがそれぞれ縦横方向に複数本形成されており、各走査線3a、データ線6aの交差部には、TFT(薄膜トランジスタ)30と、蓄積容量70とからなる画素領域41がマトリクス状に配列形成されている。画素領域41内には、図示省略の画素電極が内接するように設けられている。このTFT30のゲート及びソースは、それぞれ走査線3a、データ線6aに接続され、ドレインは画素電極に接続されている。また、画素の保持特性を高めるべく付与されている蓄積容量70は、画素電極と並列に接続されている。
【0021】
図2に回路構成図で示したように、走査線駆動回路204は、主に垂直シフトレジスタから構成され、クロック信号線(図示略)を介して外部制御装置から入力される基準クロックに基づくパルス状の走査信号G1,G2,…Gmを、一垂直走査期間内に線順次に走査線3aに印加するようになっている。また、必要に応じて、容量線3bに対して所定の電圧、ないしパルス状の電気信号を印加できるようになっている。
データ線駆動回路201は、クロック信号線(図示略)を介して外部制御装置から入力される基準クロックに基づいて、各サンプリング駆動信号線111にサンプリング駆動信号S1,S2,…Snを順次供給する水平シフトレジスタ201aと、画像信号線112を介して供給された画像信号VID1〜VID6をサンプリングするサンプリング回路201bとを備えて構成されている。
【0022】
サンプリング回路201bは、データ線毎に設けられたサンプリングスイッチ(回路用薄膜トランジスタ)131を備えており、各サンプリングスイッチ131は、水平シフトレジスタ110からサンプリング駆動信号S1,S2,…Snが入力されると、6つの画像信号線112のそれぞれについてサンプリングされた画像信号VID1〜VID6を6つの隣接するデータ線6aからなるグループ毎に順次印加するようになっている。これにより、一水平走査期間(走査線駆動回路204により1本の走査線3aに走査信号が供給されている期間)に、各データ線6aに対してサンプリングされた画像信号が供給されるようになっている。
【0023】
[画素の詳細構成]
次に、本実施形態の液晶装置の画素構成について図3から図7を参照して詳細に説明する。
図3は、TFTアレイ(アクティブマトリクス)基板10上の1画素領域を示す平面構成図である。図4は、図3のA−A’線に沿う断面構成図、図5は、図3のB−B’線に沿う断面構成図、図6は、図3のC−C’線に沿う断面構成図、図7は、図3のD−D’線に沿う断面構成図である。
【0024】
図3に示すように、TFTアレイ基板10上には、走査線(第1信号配線)3aとデータ線(第2信号配線)6aとが互いに交差して設けられており、走査線3aに沿って延び、データ線6aと交差する容量線(第3信号配線)3bが設けられている。上記データ線6aと走査線3aとによって区画された略矩形状の領域が、本液晶装置の画素領域41である。
画素領域41には、TFT30と蓄積容量70とが形成されており、さらに画素領域41とほぼ重なる位置には図示略の画素電極9が形成されている。TFT30は、大略矩形状部とU字型の枝部からなる平面形状の半導体層42のうちU字型の枝部42bを主体として構成されたものであり、蓄積容量70は、前記半導体層42の大略矩形状の部分(後述する蓄積容量電極42a)を主体として構成されたものである。
【0025】
TFT30を構成する半導体層42の枝部42bは、その両枝の2箇所において図示左右方向に延びる走査線3aと交差しており、この交差部分において走査線3aはTFT30のゲート電極(第1ゲート電極)32,33として機能する。すなわちTFT30は、デュアルゲート(ダブルゲート)構造のTFTである。半導体層42の枝部42bの一端は、データ線6aとの交差部に設けられたソースコンタクトホール55を介してデータ線6aと電気的に接続されている。一方、枝部42bの他端は画素領域41の内側へ延びて、平面視略矩形状の蓄積容量電極42aと接続されている。蓄積容量電極42aは、前記走査線3aと平行に延びる容量線3bと平面的に重なる位置に配置されている。
【0026】
画素領域41とほぼ重なる平面領域に形成される図示省略の画素電極9は、ITO等の透明導電材料からなり、蓄積容量電極42aと平面的に重なる位置に設けられた略矩形状の中間電極層58と、画素コンタクトホール57を介して電気的に接続されている。また、ドレインコンタクトホール56を介して中間電極層58とTFT30の半導体層42とが電気的に接続されており、その結果、画素電極とTFT30とが電気的に接続された構成となっている。
【0027】
画素領域41には、蓄積容量電極42aと平面的に重なる位置に形成された略矩形状の導電膜パターンからなる下部容量配線15aが設けられている。また、走査線3aに沿って延びる線状を成して半導体層42の枝部42bと一部平面的に重なる導電膜パターンからなるバックゲート電極(第2ゲート電極;バックゲート配線)15bが設けられている。これら下部容量配線15aとバックゲート電極15bとは、同一の遮光性材料を用いて、半導体層42の下側の同じ配線層に形成されている。
【0028】
バックゲート電極15bは、半導体層42と対向する位置にて、TFT30の第2ゲート電極として機能するものである。下部容量配線15aは、蓄積容量電極42aと平面的にほぼ重なって配置されており、上記した容量線3bとコンタクトホール62を介して電気的に接続されている。
【0029】
本実施形態では、このように容量線3bと下部容量配線15aとを電気的に接続するためのコンタクトホール(貫通孔)62を画素領域41の外縁部に設けることで、各層の段差による配線(特にデータ線6a)の断線や、配線間のクロストークを効果的に防止できるものとなっている。以下、図4及び図5を参照し、かかる作用効果について詳細に説明する。
【0030】
図4に示す走査線3aとデータ線6aとの交差部分の断面構造を見ると、基板本体(基体)10a上にバックゲート電極15bをなす導電膜パターンが配置されており、その上面に第1信号配線である走査線3aが接して配置されている。走査線3aは、第1層間絶縁膜12と絶縁薄膜(ゲート絶縁膜)2との積層膜(第1絶縁膜)に形成されたコンタクトホール(貫通孔)61内にその一部を埋入するようにして形成されている。走査線3aは、その表面に形成された第2層間絶縁膜13(第2絶縁膜)で覆われており、その上にデータ線6aが走査線3aと直交するように図示左右方向に延びている。このように、第1層間絶縁膜12及び絶縁薄膜2に形成されたコンタクトホール61内に走査線3aが埋設されていることで、かかる交差部における走査線3aの膜厚に起因する段差がほぼ解消され、その結果、走査線3aとデータ線6aとの交差部の段差が従来よりも格段に小さくなっている。
【0031】
また、図5に示す容量線3bとデータ線6aとの交差部分の断面構造を見ると、基板本体10a上に下部容量配線15aをなす導電膜パターンが配置されており、その上面に容量線3bが接して配置されている。容量線3bは、第1層間絶縁膜12と絶縁薄膜2との積層膜(第1絶縁膜)に形成されたコンタクトホール(貫通孔)62内に埋設されて配置されている。容量線3b上は第2層間絶縁膜13(第2絶縁膜)で覆われており、その上にデータ線6aが容量線3bと直交するように延びている。容量線3bはコンタクトホール62の表面形状に倣う断面形状に形成されている。このように、容量線3bがデータ線6aとの交差部において第1層間絶縁膜12に形成されたコンタクトホール62内に埋設されていることで、当該交差部では容量線3bの膜厚に起因する段差がほぼ解消されており、その結果、容量線3bとデータ線6aとの交差部の段差が従来よりも格段に小さくなっている。
【0032】
次に、図6に示す画素領域部分の断面構造を見ると、TFTアレイ基板10は、例えば石英、ガラス、プラスチック等からなる基板本体(基体)10aの一面側に、下地絶縁膜11と、この下地絶縁膜11上に形成された導電膜パターンからなる下部容量配線15a及びバックゲート電極15bとを有している。下部容量配線15a及びバックゲート電極15b上を含む下地絶縁膜11上に、第1層間絶縁膜12が形成されており、第1層間絶縁膜12上にTFT30の主要部を成す半導体層42が設けられている。半導体層42を覆って絶縁薄膜2が形成されている。
本実施形態において、下地絶縁膜11は、導電膜パターンのパターニング工程におけるオーバーエッチングに対するバッファ層として機能するものであり、第1層間絶縁膜12は、下部容量配線15a及びバックゲート電極15bと、半導体層42とを絶縁するものである。またこれらの下地絶縁膜11及び第1層間絶縁膜12は、基板本体10aの表面の荒れや汚染等に起因するTFT30の特性劣化を抑える作用をも奏する。
【0033】
半導体層42のうち、絶縁薄膜2を介した枝部42b上には、ゲート電極32,33が形成されており、蓄積容量電極42a上には容量線3bが形成されている。したがって絶縁薄膜2は、ゲート電極32,33と平面的に重なる位置ではTFT30のゲート絶縁膜として機能し、容量線3bと蓄積容量電極42aとに挟まれた領域では、蓄積容量70の誘電体膜として機能するものとなっている。
図示のように、本実施形態のTFT30はデュアルゲート構造を有しており、かつLDD構造を有している。より詳細には、枝部42bのゲート電極32,33と対向する領域に、それぞれTFT30のチャネル領域1aが形成されている。これら2箇所のチャネル領域1aは、それぞれLDD部を成す低濃度ソース領域1b、低濃度ドレイン領域1cに挟まれるようにして配置されており、低濃度ソース領域1b及び低濃度ドレイン領域1cの外側には、高濃度ソース領域1dと、高濃度ドレイン領域1eと、高濃度ソース/ドレイン領域1fとが形成されている。
【0034】
本実施形態に係る半導体層42は多結晶シリコンにより形成されており、基板上に成膜したアモルファスシリコンを、レーザーアニール法や、Ni助長固相成長法等のガラス基板の融点より低い低温プロセスにより多結晶化したものを用いることが好ましい。
ゲート電極32,33、容量線3b、及び絶縁薄膜2を覆って第2層間絶縁膜(第2絶縁膜)13が形成されており、第2層間絶縁膜13上には、中間電極層58が形成されている。中間電極層58と同層には、図7にも示すように、データ線6aが形成されている。データ線6a及び中間電極層58は、例えばAl等の低抵抗金属を用いて形成される。
【0035】
上記データ線6aは、図3に示したソースコンタクトホール55を介して半導体層42の高濃度ソース領域1dと電気的に接続されている。したがってソースコンタクトホール55は、絶縁薄膜2と第2層間絶縁膜13とを貫通して形成されたものである。
また、第2層間絶縁膜13と絶縁薄膜2とを貫通して半導体層42に達するドレインコンタクトホール56が形成されており、ドレインコンタクトホール56を介して中間電極層58と半導体層42の高濃度ドレイン領域1eとが電気的に接続されている。
【0036】
中間電極層58(及びデータ線6a)を含む第2層間絶縁膜13上には、第3層間絶縁膜14が形成されており、第3層間絶縁膜14上に画素電極9が形成されている。そして、前記中間電極層58の平面領域において、上記第3層間絶縁膜14を貫通して中間電極層58に達する画素コンタクトホール57が形成されており、画素コンタクトホール57を介して画素電極9と中間電極層58とが電気的に接続されている。以上の構成により、中間電極層58を介して半導体層42の高濃度ドレイン領域1eと画素電極9とが電気的に接続されている。また、画素電極9及び第3層間絶縁膜14上に、ラビング処理等の配向処理が施されたポリイミド膜などからなる配向膜17が設けられている。
【0037】
半導体層42と基板本体10aとの間の配線層に設けられたバックゲート電極15bは、TFT30のチャネル領域を基板本体10a側から覆うように形成されており、基板本体10a側からTFT30に入射する光を遮断する遮光層としても機能する。また、バックゲート電極15bは、半導体層42と平面的に重なる領域でTFT30の第2ゲート電極として機能し、例えばバックゲート電極15bに対して、負の電位を与えることで、TFT30のオフリーク電流を抑えることができる。また、バックゲート電極15bを負電位としない場合も、定電位に保持することで、TFT30の動作を安定化することが可能である。
さらに、本実施形態の液晶装置では、TFT30をマルチゲート構造とすることにより、1つのチャネル領域1aの両側の電圧を低減し、オフリーク電流を低減しており、また各チャネル領域1aを挟んで両側に低濃度ソース領域1b、低濃度ドレイン領域1cを形成したLDD構造を採用したことでオフ電流を低減することができるようになっている。
【0038】
図6及び図7に示すように、本実施形態の液晶装置では、半導体層42の高濃度ドレイン領域1eが画素領域41の中央部側へ延出されて形成された蓄積容量電極42aの平面領域において、絶縁薄膜2及び層間絶縁膜12〜14を介して導電材料からなる複数の配線部材が積層されて蓄積容量70を構成している。
より詳細には、蓄積容量70の形成領域において、上記蓄積容量電極42aの下層側には、第1層間絶縁膜12を介して下部容量配線15aが対向配置されている。蓄積容量電極42a上には、絶縁薄膜2を介して容量線3bが対向配置されており、さらに容量線3bと中間電極層58とが第2層間絶縁膜13を介して対向配置されている。そして、蓄積容量電極42aを挟持する下部容量配線15aと容量線3bとは、図5に示したように、容量線3bとデータ線6aとの交差部に対応して設けられたコンタクトホール62を介して電気的に接続されており、容量線3bを挟持する蓄積容量電極42aと中間電極層58とは、図6に示すドレインコンタクトホール56を介して電気的に接続されている。
【0039】
このように、蓄積容量70は下部容量配線15aと、蓄積容量電極42aとからなる第1の蓄積容量部と、蓄積容量電極42aと容量線3bとからなる第2の蓄積容量部と、容量線3bと中間電極層58とからなる第3の蓄積容量部とを層厚方向に重畳した積層構造を有している。この構成により、蓄積容量70では、画素領域41内に占める平面積を節約しつつ、大きな容量が得られるようになっておる。その結果、本実施形態の液晶装置は、画素領域41の開口率を高めることができ、画素ピッチを狭くして高精細化した際にも明るい表示が得られるものとなっている。
【0040】
また、本実施形態の液晶装置では、図3及び図7に示すように、下部容量配線15a、蓄積容量電極42a、容量線3b、及び中間電極層58の平面領域において、蓄積容量70を形成している領域が、基板本体10a側から順次小さく(狭く)なるように形成されている。これにより、1つの部材上に積層される部材の形成領域が、下層側の絶縁膜の段差に掛からないようにすることができ、段差部分で絶縁膜が薄く成膜されることに起因する容量リークを防止することができる。
【0041】
他方、対向基板20は、基板本体20aの液晶層50側にベタ状に形成された共通電極21と、この共通電極21を覆って形成された配向膜22とを備えている。共通電極21は、ITO等の透明導電材料により形成でき、配向膜22は、先のTFTアレイ基板10の配向膜17と同様の構成とすることができる。また、カラー表示を行う場合には、各画素領域41に対応して例えばR(赤)、G(緑)、B(青)の色材層を備えたカラーフィルタを基板本体10a又は20a上に形成すればよい。
【0042】
上記構成の画像表示領域を備えた本実施形態の液晶装置では、データ線6aと走査線3aとの交差部に対応してコンタクトホール61が形成され、データ線6aと容量線3bとの交差部に対応してコンタクトホール62が形成されているので、これらのコンタクトホール61,62に、下層側の配線である走査線3a及び容量線3bを一部埋設することができ、走査線3a及び容量線3bの膜厚に起因して生じる段差を解消することができる。これにより、データ線6aをほぼ平坦な面上に形成することが可能になり、段差によるデータ線6aの断線等を防止できる。
【0043】
また、上記コンタクトホール61,62の形成領域においては、図4及び図5に示したように、第2層間絶縁膜13が形成される絶縁薄膜2及び走査線3a、容量線3b上がほぼ平坦化されているので、走査線3a及び容量線3bを覆う第2層間絶縁膜13の付き回りも良好なものとなり、データ線6aと走査線3a、容量線3bとの間に生じる寄生容量を小さくでき、走査線3a、データ線6aの双方で良好な信号特性を得ることができる。
【0044】
また本実施形態では、コンタクトホール61,62内に一部埋入される走査線3a及び容量線3bは、その延在方向において切断されないので、絶縁膜を介した他の層に設けた架橋配線を利用する構成のように配線抵抗が上昇することもなく、良好な信号特性を得られるものとなっている。
さらに、コンタクトホール61は、TFT30の第1ゲート電極となる走査線3aと、TFT30の第2ゲート電極となるバックゲート電極15bとを電気的に接続する貫通孔として機能し、コンタクトホール62は、蓄積容量70の一の電極を構成する容量線3bと、蓄積容量70の他の一の電極を構成する下部容量配線15aとを電気的に接続する貫通孔として機能するものとなっている。このように、コンタクトホール61,62は、データ線6aの延在領域を平坦化する機能のみならず、複数の機能を具備するものとなっているので、本実施形態の構成は製造工程の効率化に極めて有効な構成である。
【0045】
以上詳細に説明したように、本実施形態の液晶装置は、高速応答化と高開口率を同時に実現でき、また高歩留まりに製造可能なものとなっている。特に、有機EL装置や、画素内RAM、多色CFを備えた液晶装置のような配線の交差部が多い電気光学装置や、画素ピッチが小さくなり開口率がとり難い高精細の液晶装置に用いて好適なものである。
【0046】
なお、本実施形態では、第1層間絶縁膜12と絶縁薄膜2との積層膜(第1絶縁膜)に貫設したコンタクトホール61,62によって、走査線3a及び容量線3bの膜厚に起因する段差を緩和する構成について説明したが、走査線3aとデータ線6aとの交差部、及び容量線3bとデータ線6aとの交差部に対応する位置の基板本体10aの表面に凹部が形成されていてもよい。このような構成とすれば、上記各交差部における段差をさらに低減でき、液晶装置の信頼性をさらに高めることができる。
【0047】
また、走査線3aとバックゲート電極15bとの電気的接続や、容量線3bと下部容量配線15aとの電気的接続を形成する必要がない場合には、走査線3aとデータ線6aとの交差部、及び容量線3bとデータ線6aとの交差部に対応する位置の基板本体10aの表面に凹部を形成し、上記コンタクトホール61,62を省略した構成も採用できる。この場合、基板本体10a表面の凹部に倣って、下地絶縁膜11、バックゲート電極15b(下部容量配線15a)、第1層間絶縁膜12、及び絶縁薄膜2が積層された上に凹部が形成されるようにすることができるので、この絶縁薄膜2表面の凹部に走査線3a及び容量線3bの一部を埋設することで、走査線3aとデータ線6aとの交差部、及び容量線3bとデータ線6aとの交差部における段差を緩和することができ、データ線6aの断線等を防止する効果を得ることができる。
【0048】
また本発明は、基板本体10aの表面に走査線3a(第1配線)や容量線3b(第3配線)が直接形成されている場合にも適用することができる。この場合には、走査線3aとデータ線6aとの交差部、及び容量線3bとデータ線6aとの交差部に対応する位置の基板本体10aの表面に、走査線3a、容量線3bを一部埋設するための凹部を形成すればよく、かかる凹部によって走査線3aとデータ線6aとの交差部、及び容量線3bとデータ線6aとの交差部における段差を良好に緩和することができ、データ線6aの断線等を効果的に防止することができる。
【0049】
以下、第1の実施形態に係るTFTアレイ基板10の製造工程の概略について簡単に説明する。なお、以下の説明では特に明示しない限り図6を参照するものとする。
(1)まず、下地絶縁膜11が形成された基板本体10a上に、遮光性の導電材料からなる導電膜パターンを形成することで、バックゲート電極15bと下部容量配線15aとを形成する。
(2)次に、バックゲート電極15b及び下部容量配線15aと半導体層42との間に、第1層間絶縁膜12を成膜し、その上に非晶質シリコン(a−Si)膜を成膜する。
(3)次に、上記a−Si膜にレーザビームを照射して加熱し、a−Siを結晶化させて多結晶シリコン(p−Si)膜とする。
(4)次に、p−Siを所定平面形状にパターニングし、パターニング後のp−Si膜に各種不純物を所定量注入し、半導体層42(蓄積容量電極42a、枝部42b)を形成する。
(5)次に、半導体層42を覆って、TFT30のゲート絶縁膜及び蓄積容量70の誘電体膜となる絶縁薄膜2を形成する。
(6)次に、絶縁薄膜2及び第1層間絶縁膜12を貫通するコンタクトホールを形成する。具体的には、図3に示したように、前記両絶縁膜を貫通してバックゲート電極15bに達するコンタクトホール61と、下部容量配線15aに達するコンタクトホール62とをそれぞれ開口する。
(7)次に、絶縁薄膜2上に、走査線3aと容量線3bとなる導電膜を成膜し、図3に示した平面形状にパターニングする。このとき、走査線3aがコンタクトホール61内に一部埋設され、走査線3aとバックゲート電極15bとが電気的に接続される。また、容量線3bがコンタクトホール62内に一部埋設され、容量線3bと下部容量配線15aとが電気的に接続される。
(8)次に、走査線3a、容量線3b、及び絶縁薄膜2を覆うように第2層間絶縁膜13を形成した後、第2層間絶縁膜13上に、図3に示した平面形状のデータ線6a及び中間導電層58をパターン形成する。このとき、データ線6aは、前記コンタクトホール61,62上を通過するように形成される。走査線3a及び容量線3bの膜厚に起因する段差は、前記コンタクトホール61,62内にそれぞれ走査線3a、3bが埋設されていることからほぼ解消されており、その結果データ線6aは、良好な平坦性を有して形成される。
(9)以後は、通常の低温ポリシリコンTFTを有するTFTアレイ基板の製造工程と同様である。
【0050】
(第2の実施形態)
図8は、第2の実施形態に係る液晶装置を構成するTFTアレイ(アクティブマトリクス)基板40上の1画素領域を示す平面構成図であり、図9は、図8のE−E’線に沿う断面構成図である。
なお、本実施形態の液晶装置は、図1から図7を参照して説明した第1実施形態の液晶装置において、TFTアレイ基板10に代えて以下に説明するTFTアレイ基板40を用いたものである。
【0051】
このTFTアレイ基板40と、先の第1の実施形態に係るTFTアレイ基板10との異なる点は、(1)TFT30を構成する部分のバックゲート電極15bが走査線3aとは別のバックゲート配線として形成されていること、(2)蓄積容量70を構成する下部容量配線15aが容量線3bと接続されていないこと、(3)データ線6aと走査線3a、容量線3bとが交差する位置に島状の導電膜パターンが形成されていることにある。
本実施形態の液晶装置の全体構成は図1に示したものと同様であり、TFTアレイ基板40における各層の積層構造もTFTアレイ基板10と概略同様である。図8及び図9に示す各構成部材のうち図1から図7に示した第1実施形態の液晶装置と共通のものには同一の符号を付して説明を省略することとする。
【0052】
図8に示すように、本実施形態に係るTFTアレイ基板40では、TFT30を構成する部分のバックゲート電極15bは、走査線3aに沿って延びる蛇行形状の配線を成しており、図8左右方向に配列された複数の画素領域に跨って延在するバックゲート配線を構成している。そして、TFT30の形成位置でのみ走査線3aと平面的に重なって配置され、当該部分を外れると走査線3aから離れ、走査線3aに平行して延び、走査線3aとは異なる位置でデータ線6aと交差している。
【0053】
ここで、図9を参照してデータ線6aと走査線3a等との交差部の構造について説明する。図9には、走査線3a、バックゲート電極15b及び半導体層42の枝部42bが、データ線6aと交差する部分の断面構造が示されている。
図9に示すように、下地絶縁膜11が形成された基板本体10a上に、バックゲート電極15bと、島状の導電膜パターンである島状導電膜15cが形成されており、これらバックゲート電極15bと島状導電膜15cを覆って第1層間絶縁膜12及び絶縁薄膜2が形成されている。同図左側に示された枝部42bは、図8に示す半導体層42のうち平面視略U字型の枝部42bの図示左側の先端部に対応しており、半導体層42は第1層間絶縁膜12と絶縁薄膜2との間に設けられている。
【0054】
第1層間絶縁膜12と絶縁薄膜2とからなる積層膜(第1絶縁膜)を貫通して島状導電膜15cに達するコンタクトホール(貫通孔)64が設けられており、走査線3aはその一部をこのコンタクトホール64内に埋入するようにして形成されている。走査線3a及び絶縁薄膜2を覆って第2層間絶縁膜13(第2絶縁膜)が形成されており、この第2層間絶縁膜13及び絶縁薄膜2を貫通して枝部42b(半導体層42)に達するコンタクトホール55が形成されている。そして、コンタクトホール55に一部を埋設されたデータ線6aが、第2層間絶縁膜13上に延在している。
なお、図9にはデータ線6aまでの積層構造のみが示されているが、データ線6aより上層側(画素電極9側)の積層構造は図6及び図7に示した第1実施形態の液晶装置と同様である。
【0055】
このように走査線3aは、データ線6aとの交差部において、層間絶縁膜12及び絶縁薄膜2を貫通して形成されたコンタクトホール64内に埋設されているので、走査線3aの膜厚に起因する段差が解消される。その結果、走査線3aとデータ線6aとの交差部の段差は従来よりも格段に小さくなり、当該交差部におけるデータ線6aの断面形状は図9に示すように平坦なものとなる。
【0056】
次に、蓄積容量70を構成する容量線3b及び下部容量配線15aと、データ線6aとが交差する位置について説明すると、図8に示すように、下部容量配線15aは、その平面視略矩形状の部分で容量線3bの平面視略矩形状の部分と平面的に重なって配置されているが、互いに異なる位置でデータ線6aと交差している。そして、下部容量配線15aは、先の第1実施形態と同様、バックゲート電極15bと同層の下地絶縁膜11上に形成されている。
【0057】
データ線6aと容量線3bとの交差部に対応して島状導電膜15dが形成され、島状導電膜15dの形成領域内にコンタクトホール63が形成されている。島状導電膜15dは先の島状導電膜15dと同層に形成されており、コンタクトホール63は、絶縁薄膜2及び第1層間絶縁膜12を貫通して島状導電膜15d表面に達している。そして、容量線3bがその一部をコンタクトホール63内に埋入するようにして絶縁薄膜2上に形成されている。これにより、先の走査線3aとデータ線6aとの交差部と同様に、容量線3bとデータ線6aとの交差部における段差が解消され、データ線6aの断面形状が平坦化されたものとなっている。
【0058】
第2実施形態に係るTFTアレイ基板は、第1実施形態に係るTFTアレイ基板と概略同様の製造方法を用いて製造することができる。本実施形態のTFTアレイ基板を製造するに際して、先に述べた第1実施形態の液晶装置の製造手順と異なる製造工程のみを以下に挙げておく。
工程(1)で、バックゲート電極15bと下部容量配線15aとともに、島状導電膜15c、15dを形成する。またバックゲート電極15bを複数の画素領域に跨って延びる配線形状とする。
工程(6)で、コンタクトホール61,62に代えて、図8に示したコンタクトホール63,64を絶縁薄膜2及び層間絶縁膜12に開口する。このとき、コンタクトホール63,64の形成位置に対応する島状導電膜15c、15dがエッチストッパーとして機能し、コンタクトホール63,64の開口深さを基板面内で均一なものとすることができ、TFTアレイ基板40表面の平坦化を容易に実現することができる。
【0059】
上記第2実施形態の液晶装置によれば、走査線3a及び容量線3bと、データ線6aとの交差部に対応して設けられたコンタクトホール63,64にそれぞれ容量線3bの一部、走査線3aの一部を埋設することで走査線3a及び容量線3bの膜厚に起因する段差を解消し、もってデータ線6aをその延在方向で平坦な形状に形成している。これにより、本実施形態の液晶装置も、データ線6aの断線等を防止して優れた信頼性を得られるものとなっている。またデータ線6aと走査線3a、容量線3bとの間の電荷のリークを防止し、寄生容量を低減できるものとなっており、電圧保持性及び高速応答性に優れた液晶装置となっている。
【0060】
第2実施形態の利点は、コンタクトホール63,64の形成位置に対応してそれぞれ島状導電膜15d、15cが形成されているので、これらの島状導電膜15c、15dをコンタクトホール63,64形成時のエッチストッパーとして機能させることができる点にある。これにより、コンタクトホール63,64の開口深さを基板面内で均一化することができ、これによりデータ線6aをより平坦に形成できるので、TFTアレイ基板40の表面形状をより平坦なものとすることができる。
【0061】
また本実施形態の場合、走査線3aとバックゲート電極15bとは電気的に接続されていないので、バックゲート電極15bに走査線3aとは異なる電圧を印加することが可能であり、各ゲート電極に入力する電圧を最適化してTFT30の電気特性を十分に発揮させることができる。また、容量線3bと下部容量配線15aも電気的に接続されていないので、それぞれを異なる電位に保持することが可能である。島状導電膜15c、15dは、それぞれ容量線3b、走査線3aと電気的に接触しているので、これらの島状導電膜15c、15dが液晶装置の動作時に不要な寄生容量を発生させることはない。
【0062】
なお、第2実施形態の液晶装置においても、先の第1実施形態と同様、走査線3aとデータ線6aとの交差部、及び容量線3bとデータ線6aとの交差部に対応する位置の基板本体10a表面に、凹部を形成した構成とすることができるのは勿論であり、この場合には、コンタクトホール63,64の形成を省略することも可能である。
【0063】
以上、図1から図9を参照して本発明に係る電気光学装置の実施形態について詳細に説明したが、本発明の技術範囲は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、図8及び図9を参照して説明した第2実施形態の液晶装置では、走査線3a及び容量線3bとデータ線6aとが交差する位置に、第1層間絶縁膜12と絶縁薄膜2とを貫通するコンタクトホール63,64を形成することとしたが、これらのコンタクトホールは、下層側の配線層と走査線3a、容量線3bとを電気的に接続するものではないため、必ずしも絶縁膜を貫通している必要はなく、第1層間絶縁膜12と絶縁薄膜2との積層膜を部分的に除去してなる凹部であってもよい。このような構成とした場合にも、走査線3a及び容量線3bの膜厚に起因する絶縁薄膜2上の段差を緩和することができ、データ線6aの形状を平坦化することができるので、相当程度の効果を得ることが可能である。なお、このように凹部を設ける場合には島状導電膜15c、15dは不要であるが、これらの島状導電膜を設けておけば、オーバーエッチングを防止することができる。
【0064】
また上記第1、第2実施形態における配線の交差構造は、図1及び図2に示した周辺回路(データ線駆動回路201、走査線駆動回路204)における配線構造にも適用することができる。ポリシリコン膜を半導体層に用いた電気光学装置では、画素スイッチング素子の薄膜トランジスタと、周辺回路の薄膜トランジスタやインバータを同工程で一括に形成する製造プロセスが採用できる。したがって周辺回路における信号配線の交差部に対応してコンタクトホールや凹部を設け、下層側の配線をそれらに対し一部埋設するようにすることで、周辺回路における信号配線の断線や信号配線間での電荷リーク、寄生容量の発生を効果的に防止することができる。
【0065】
(電子機器)
図10は、本発明に係る電子機器の一例を示す斜視図である。この図に示す携帯電話1300は、上記実施形態の液晶装置を小サイズの表示部1301として備え、複数の操作ボタン1302、受話口1303、及び送話口1304を備えて構成されている。
上記各実施の形態の液晶装置は、上記携帯電話に限らず、プロジェクタ、電子ブック、パーソナルコンピュータ、ディジタルスチルカメラ、液晶テレビ、ビデオテープレコーダ、カーナビゲーション装置、ページャ、電子手帳、電卓、ワードプロセッサ、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、タッチパネルを備えた機器等々の画像表示手段として好適に用いることができ、いずれの電子機器においても、明るく、高精細の表示が可能な高信頼性の表示部を備えたものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】第1実施形態の液晶装置の(a)平面構成図、(b)断面構成図。
【図2】同、回路構成図である。
【図3】同、1画素領域を示す平面構成図。
【図4】図3のA−A’線に沿う断面構成図。
【図5】図3のB−B’線に沿う断面構成図。
【図6】図3のC−C’線に沿う断面構成図。
【図7】図3のD−D’線に沿う断面構成図。
【図8】第2実施形態の液晶装置の1画素領域を示す平面構成図。
【図9】同、画素領域の断面構成図。
【図10】本発明の電子機器の一例を示す外観斜視図。
【符号の説明】
【0067】
1a チャネル領域、2 絶縁薄膜(第1絶縁膜)、3a 走査線(第1信号配線)、3b 容量線(第3信号配線)、6a データ線(第2信号配線)、9 画素電極、10,40 TFTアレイ基板(アクティブマトリクス基板)、10a、20a 基板本体、12 第1層間絶縁膜(第1絶縁膜)、13 第2層間絶縁膜(第2絶縁膜)、15a 下部容量配線(導電膜パターン)、15b バックゲート電極(導電膜パターン)、15c,15d 島状導電膜(導電膜パターン)、20 対向基板、30 TFT(薄膜トランジスタ)、41 画素領域、42 半導体層、42a 蓄積容量電極、42b 枝部、50 液晶層、70 蓄積容量、201 データ線駆動回路、204 走査線駆動回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに交差して延びる第1信号配線及び第2信号配線と、前記第1信号配線及び第2信号配線に電気的に接続されたトランジスタとを基体上に形成してなる電気光学装置であって、
前記基体上に形成された前記第1信号配線の少なくとも一部を覆って形成された層間絶縁膜上に前記第2信号配線が形成されて、前記第1信号配線と前記第2信号配線とが交差しており、
前記第1信号配線と第2信号配線との交差部に対応する位置の前記基体表面に凹部が形成されていることを特徴とする電気光学装置。
【請求項2】
互いに交差して延びる第1信号配線及び第2信号配線と、前記第1信号配線及び第2信号配線に電気的に接続されたトランジスタとを基体上に形成してなる電気光学装置であって、
前記基体上に形成された第1絶縁膜上に前記第1信号配線が形成され、該第1信号配線の少なくとも一部を覆って形成された第2絶縁膜上に前記第2信号配線が形成されて、前記第1信号配線と前記第2信号配線とが交差しており、
前記第1信号配線と第2信号配線との交差部に対応する位置の前記第1絶縁膜に凹部が形成されていることを特徴とする電気光学装置。
【請求項3】
前記基体表面又は第1絶縁膜上に、前記第1信号配線に沿って延び、前記第2信号配線と交差する第3信号配線が形成されており、
前記第3信号配線と第2信号配線との交差部に対応する位置の前記基体表面又は第1絶縁膜にも凹部が形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の電気光学装置。
【請求項4】
前記凹部の幅が、前記第2信号配線の線幅より広く形成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の電気光学装置。
【請求項5】
前記凹部が、前記第1絶縁膜を貫通する貫通孔であることを特徴とする請求項2から4のいずれか1項に記載の電気光学装置。
【請求項6】
前記基体と第1絶縁膜との間に導電膜パターンを含む配線層が形成されており、前記貫通孔を介して前記第1信号配線及び/又は前記第3信号配線と前記導電膜パターンとが電気的に接続されていることを特徴とする請求項4に記載の電気光学装置。
【請求項7】
前記トランジスタと電気的に接続された蓄積容量を備え、
前記第3信号配線が、前記蓄積容量の一の電極を構成する容量線であり、前記貫通孔を介して該容量線と接続された前記導電膜パターンが前記蓄積容量の他の一の電極を構成する容量電極膜であることを特徴とする請求項6に記載の電気光学装置。
【請求項8】
前記トランジスタが、半導体層と、該半導体層を層厚方向に挟持する第1ゲート電極及び第2ゲート電極とを備えており、
前記第1信号配線が前記トランジスタの第1ゲート電極に接続された走査線であり、前記貫通孔を介して該走査線と接続された前記導電膜パターンが、前記トランジスタの第2ゲート電極に接続されたバックゲート配線であることを特徴とする請求項6又は7に記載の電気光学装置。
【請求項9】
前記貫通孔を介して前記第1信号配線又は第3信号配線と電気的に接続された導電膜パターンが、前記配線層に含まれる他の導電膜パターンと電気的に絶縁されていることを特徴とする請求項6に記載の電気光学装置。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1項に記載の電気光学装置を備えたことを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−250985(P2006−250985A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−63424(P2005−63424)
【出願日】平成17年3月8日(2005.3.8)
【出願人】(304053854)三洋エプソンイメージングデバイス株式会社 (2,386)
【Fターム(参考)】