説明

電気自動車

【課題】旋回時の運動性能を向上させることができる電気自動車を提供する。
【解決手段】左右の後輪RL,RRを左右それぞれで独立して駆動するモータ102,103と、左右のモータ102,103を制御する制御部と、左右の後輪RL,RR及びモータ102,103を同軸上に配置し、アクスルチューブ201で接続したサスペンション構造と、制御部に設けられ、コンプライアンスステアを生じさせるように左右のモータのトルク配分を制御するトルク配分制御部を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気自動車の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
従来では、後輪のトー特性(ステア特性)が、高速ではトーイン(前輪タイヤ切れ角と同相)、低速ではトーアウト(前輪タイヤ切れ角と逆相)が望ましいとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−058005号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来では、車速等に応じた必要とされるリヤ、トー特性を得る為には専用の機構を必要としてしまう。
【0005】
本発明は、上記問題点に着目してなされたもので、その目的とするところは、専用の機構を追加することなく、必要とされるリヤ、トー特性を得ることができる電気自動車を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明では、電気自動車の後部の左右輪をそれぞれモータで駆動し、左右輪のトルク配分により、後輪のトーイン、トーアウトを制御したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
よって、本発明にあっては、駆動モータの左右トルク配分を制御しリヤ、トー特性を変化させることにより、車両の走行安定性、運動性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施例1の電気自動車の車体構造の概略を示す説明側面図である。
【図2】実施例1の電気自動車の車体構造の概略を示す説明平面図である。
【図3】実施例1の電気自動車の後輪構造の説明平面図である。
【図4】実施例1におけるロワーアーム及びアッパーアームの取付部の構成を示す説明断面図である。
【図5】実施例1の電気自動車において、モータのトルク配分に関する制御部分のブロック構成を示す図である。
【図6】実施例1の制御部で実行されるコンプライアンスステアの制御処理の流れを示すフローチャートである。
【図7】実施例1の電気自動車の低速左旋回状態を示す説明図である。
【図8】実施例1の電気自動車の中高低速左旋回状態を示す説明図である。
【図9】実施例2の電気自動車において、モータのトルク配分に関する制御部分のブロック構成を示す図である。
【図10】実施例3の電気自動車において、モータのトルク配分に関する制御部分のブロック構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の電気自動車を実現する実施の形態を説明する。
【実施例1】
【0010】
まず、構成を説明する。
図1は実施例1の電気自動車の車体構造の概略を示す説明側面図である。図2は実施例1の電気自動車の車体構造の概略を示す説明平面図である。図3は実施例1の電気自動車の後輪構造の説明平面図である。
実施例1の電気自動車1は、車体フレーム101をアルミ製のフレーム構造にして軽量化したものとし、後部の左右輪RL,RRをモータ102,103でそれぞれ駆動する。前輪FL,FRは、操舵される従動輪にしている。
後輪のサスペンション構造は、4リンクサスペンション構造にしている。まず、左右に長いアクスルチューブ201を設ける。このアクスルチューブ201は、例えば中空パイプであり、左右輪を接続する車軸を有しないものである。つまり、言い換えると左右輪は車軸を共有せずに、サスペンション構造上においてリジッド構造を取るものである。
【0011】
アクスルチューブ201の左右両端には、モータ102,103を取り付ける。モータ102,103の外側部分(非回転部材)には接続部202を設けて、後輪RL,RRのリヤブレーキのバックプレート203にボルト締結で固定する。そして、モータ102,103の出力軸は、接続部202及びバックプレート203を貫通し、後輪RL,RRにそれぞれ接続し、駆動力を伝達する構造である。言い換えると、バックプレート203の外側に設けられるブレーキ部208の内部構造で、後輪RL,RRと、モータ102,103の出力軸を回転自在に軸支する。(図3では、後輪RLのバックプレート203及びブレーキ部208のみ図示する。左右対称な構造であるため、後輪RRのバックプレート203及びブレーキ部208については図示を省略する)
左右の接続部202は、車両の前後方向に長いロワーアーム204により車体フレーム101の後方下端に連結する。ロワーアーム204の両端は、長手方向(軸方向)に対して、左右に直交する方向に貫通する孔を備え、この孔にボルト211を貫通させてナットで固定し、する取付部205により、車体フレーム101及び接続部202に連結する。この取付部205は、構造上ブッシュ212の曲げ及び捻り剛性をうけ、ブッシュたわみを生じさせる4リンクサスの節点として機能する。
【0012】
さらに、車体フレーム101の後方で、ロワーアーム204と接続した下端より上方の後方ピラー部分104と、アクスルチューブ201を左右の2箇所でアッパーアーム206により連結する。アッパーアーム206の両端は、長手方向(軸方向)に対して、直交する方向に貫通する孔を備える。そして、この孔にボルト211を貫通させてナットで固定する取付部207により、車体フレーム101の後方ピラー部分104及びアクスルチューブ201の途中に連結する。この取付部207は、構造上ブッシュ212の曲げ及び捻り剛性をうけ、ブッシュたわみを生じさせる4リンクサスの節点として機能する。アッパーアーム206の後方ピラー部分104への取り付け位置は、ロワーアーム204の車体フレーム101への取り付け位置とほぼ同じ左右幅を持つ位置とする。そして、アッパーアーム206のアクスルチューブ201の途中への取り付け位置は、上端より狭い左右幅となる。これにより、アッパーアーム206は、車両上方からの上面視において、車両後方へ行くに従って左右幅が狭くなる逆ハの字状となり、車両後方からの背面視において、車両下方へ行くに従って左右幅が狭くなる逆ハの字状となる。
【0013】
図4は実施例1におけるロワーアーム及びアッパーアームの取付部の構成を示す説明断面図である。
ロワーアーム204とアッパーアーム206において、取付部205,207にボルト211で取り付けられる貫通孔は、円筒状のブッシュ212で構成し、ブッシュ212は弾性のある樹脂213を介してロワーアーム204及びアッパーアーム206に固定する構造にする。
この構成によって、取付部205,207では、ブッシュ構造の分ブッシュたわみを生じさせ、ロワーアーム204とアッパーアーム206によるリンクの節点の曲げや捻りを許容する。実施例1の電気自動車1では、このリンクの節点で捻りが許容されることにより、車体フレーム101に対して、アクスルチューブ201を傾けるように捻ることを可能としている。このアクスルチューブ201の傾きは、後輪RL,RRをトーイン、トーアウトの状態にするコンプライアンスステアを生じることを可能にする。
なお、電気自動車1は、前輪FL,FR及び後輪RL,RRのさらなるサスペンション構造として、上下方向にストロークするショックアブソーバ105を備えている。
【0014】
さらに、電気自動車1には、操舵による操舵角を検出する舵角センサ401、車速を検出する車速センサ402(車速センサについては、必ずしも必要ではなく、左右のモータ回転数の平均とタイヤ径から演算で求めることもできる)、モータ102,103の回転数を検出する回転数センサ403を設け、検出結果を制御部301へ入力する(図1、図2における各センサの配置については図示を省略する)。
【0015】
次に、実施例1の電気自動車1におけるトルク配分の制御ブロック構成について説明する。
図5は実施例1の電気自動車において、モータのトルク配分に関する制御部分のブロック構成を示す図である。
制御部301は、旋回判定部302、トルク配分制御部303、テーブルデータ304、モータ制御部305、回転数差演算部306を備える。
旋回判定部302は、舵角センサ401からの舵角によって、電気自動車1が旋回状態になったことを判定し、判定結果をトルク配分制御部303へ出力する。
トルク配分制御部303は、旋回判定結果により、旋回状態にある際に、車速とモータ回転数左右差に基づいて、テーブルデータ304を参照して、左右のモータ102,103のトルク配分を演算し、モータ制御部305へ出力する。
【0016】
テーブルデータ304は、車速とモータ回転数左右差に対して、予め設定したコンプライアンスステアを生じさせる左右のモータ102,103のトルク配分をテーブルデータとして備えたもので、参照に応じて該当するデータをトルク配分制御部303へ出力する。
なお、実施例1のテーブルデータ304では、例として、車速を10km/h以下の低速と10km/hを超える中高速に分け、車速が10km/h以下の場合には、トーアウト状態の所定のトー角となるように、旋回の内輪が外輪よりトルクを増大させた状態となるよう、モータ回転数左右差に応じたトルク配分をデータとして備える。また、車速が10km/hを超える場合には、トーイン状態の所定のトー角となるように、旋回の外輪が内輪よりトルクを増大させた状態となるよう、モータ回転数左右差に応じたトルク配分をデータとして備える。
【0017】
モータ制御部305は、トルク配分制御部303から出力された左右のモータ102,103のトルク配分に従って、左右のモータ102,103への駆動出力を行う。
回転数差演算部306は、左右のモータ102,103の回転数センサ403からの検出結果から、左右の回転数差を演算し、トルク配分制御部303へ出力する。なお、その際には、左のモータ102の回転数RsLから右のモータ103の回転数RsRを引くというように予め決められた関係式(RsL-RsR)による差分演算となるようにする。
【0018】
作用を説明する。
[コンプライアンスステアの制御処理]
図6に示すのは、実施例1の制御部301で実行されるコンプライアンスステアの制御処理の流れを示すフローチャートで、以下各ステップについて説明する。
【0019】
ステップS1では、トルク配分制御部303が旋回判定部302からの判定結果が車両旋回時と判定された際に、以下のステップS2以降の処理を実行する。
【0020】
ステップS2では、トルク配分制御部303が車速センサ402からの車速を取得する。
なお、この車速は、複数の車輪速を検出して平均化した演算値等であってもよい。
【0021】
ステップS3では、トルク配分制御部303が回転数差演算部306からの左右のモータ102,103の回転数差(RsL-RsR)を取得する。
【0022】
ステップS4では、トルク配分制御部303が、車速と左右のモータ102,103の回転数差に基づいて、テーブルデータ304を参照し、左右のモータ102,103のトルク配分を決定する。このトルク配分はモータ制御部305へ出力される。
【0023】
ステップS5では、モータ制御部305が、トルク配分制御部303からのトルク配分に従って、左右のモータ102,103へ駆動指令出力を行う。処理後には、ステップS1へ戻る。ただし、上記S2〜S5が繰り返し処理される場合に、車両が旋回状態から抜ける場合には、そのことをトルク配分制御部303が、旋回判定部302からの判定結果により判断し、S2〜S5が繰り返す処理から抜けるようにする。
【0024】
[コンプライアンスステアの制御作用]
実施例1の電気自動車1では、後輪RL,RRを駆動するモータ102,103を、同じ軸線上で、1本物のアクスルチューブ201により連結するリジッドサス構造にし、左右のモータ102,103のトルク配分により、コンプライアンスステアを制御して、運動性能を向上させている。また、車速によっては、この運動性能の向上を車両の走行安定性に寄与させて、車両の走行安定性をさらに向上させている。
(低速の場合)
図7は実施例1の電気自動車の低速左旋回状態を示す説明図である。
例えば、実施例1の電気自動車1が10km/h以下の低速で左旋回状態になると、旋回していることが旋回判定部302で判定される(ステップS1)。そして、トルク配分制御部303が車速とモータ左右回転数差を取得する(ステップS2,S3)。そして、この場合には10km/h以下である車速と、この車速での左旋回時のモータ左右回転数差を制御パラメータとして、テーブルデータ304を参照して、左右トルク配分を決定する(ステップS4)。10km/h以下の低速で左旋回状態では、旋回内輪となる左後輪RLを、旋回外輪となる右後輪RRよりもトルクを増大させるトルク配分にする。決定された左右トルク配分は、モータ制御部305によるモータ102,103の駆動により実行される(ステップS5)。
【0025】
すると、このトルク配分によって、左後輪RLの駆動力が右後輪RRよりも強くなり(図7(a)参照)、後輪と同軸位置に設けられたアクスルチューブ201を車体フレーム101に対して捻る力を生じさせることになる。すると、ロワーアーム204とアッパーアーム206によるアクスルチューブ201の車体フレーム101へのリンク支持において、その取付部205,207のブッシュたわみを生じさせる。このたわみ分により、ロワーアーム204とアッパーアーム206のリンクの動きが生じる。
【0026】
この場合には、左側(旋回内側)のロワーアーム204は、前後の節点間隔を収縮する動きとなり、右側(旋回外側)のロワーアーム204は、前後の節点間隔を伸長する動きとなる。また、左右のアッパーアーム206は、上方から見て時計周りへ回転する動きとなる。これによって、車体フレーム101に対して捻られた方向にアクスルチューブ201を傾斜させる。
【0027】
この傾斜により、車両直進方向に対する後輪RL,RRの角度、つまりトー角は、旋回方向と逆方向の所定角度になる。この所定角度は、テーブルデータ304で予め決定されたものとなる。つまりコンプライアンスステアがトーアウトの状態となる(図7(b)参照)。
後輪RL,RRがトーアウトになると、旋回方向への車両のヨー運動を強めることになり、車両の回転半径を小さくする。これにより実施例1の電気自動車は低速時の小回り性能が向上することになる。
なお、右旋回の場合には、左右対称な動きとなるので、説明を省略する。
【0028】
(中高速の場合)
図8は実施例1の電気自動車の中高低速左旋回状態を示す説明図である。
車速が例えば10km/hを超える中高速の場合の左旋回状態では、旋回外輪となる右後輪RRを、旋回内輪となる左後輪RLよりもトルクを増大させるトルク配分にする(ステップS1〜S4)。決定された左右トルク配分は、モータ制御部305によるモータ102,103の駆動により実行される(ステップS5)。
【0029】
すると、このトルク配分によって、右後輪RRの駆動力が左後輪RLよりも強くなり(図8(a)参照)、後輪と同軸位置に設けられたアクスルチューブ201を車体フレーム101に対して捻る力を生じさせることになる。すると、ロワーアーム204とアッパーアーム206によるアクスルチューブ201の車体フレーム101へのリンク支持において、その取付部205,207のブッシュたわみを生じさせる。このたわみ分により、ロワーアーム204とアッパーアーム206のリンクの動きが生じる。
【0030】
この場合には、左側(旋回内側)のロワーアーム204は、前後の節点間隔を伸長する動きとなり、右側(旋回外側)のロワーアーム204は、前後の節点間隔を収縮する動きとなる。また、左右のアッパーアーム206は、上方から見て反時計周りへ回転する動きとなる。これによって、車体フレーム101に対して捻られた方向にアクスルチューブ201を傾斜させる。
【0031】
この傾斜により、車両直進方向に対する後輪RL,RRの角度、つまりトー角は、旋回方向の所定角度になる。この所定角度は、テーブルデータ304で予め決定されたものとなる。つまりコンプライアンスステアがトーインの状態となる(図8(b)参照)。
後輪RL,RRがトーインになると、スリップ角がつくことにより、旋回方向への車両のヨー運動を弱めることになる。言い換えると、旋回方向への車両のヨー運動に対する復元力を強めることになる。そのため、車両の運動特性をアンダーステアにすることになり、車両を直進状態に戻しやすくする。すると、中高速で、横風を受けた場合や、何かをよける動きをした場合、車線を変更した場合などにおいて、車両を安定した直進状態に戻しやすくなる。つまり、グリップ力を向上し安定性を確保しやすくなる。そのため、実施例1の電気自動車は中高速時の走行安定性が向上することになる。
なお、右旋回の場合には、左右対称な動きとなるので、説明を省略する。
【0032】
実施例1の電気自動車1の作用を明確にするために説明を加える。
電気自動車においては、航続距離の課題から軽量化を行っている。実施例1の電気自動車1は、駆動する軸で左右輪を接続していないものの、構造上では、アクスルチューブ201で、左右輪を駆動するモータ102,103を接続するリジッドサス構造にしている。リジッドサス構造は、左右輪を1本物で接続する構造のため簡素構造となり、軽量化に寄与する点が有利である。
実施例1の電気自動車では、このように軽量化したサス構造にしつつ、コンプライアンスステアを左右のモータ102,103のトルク配分で制御することにより、電気自動車1の運動性能を向上させている点が有利である。
【0033】
また、実施例1では、上記説明した4リンクサス構成によって、予め所定のコンプライアンスステアを生じるようにしてもよい。その際には、機械式の4リンクサスの幾何学的作用範囲により、直線的あるいは曲線的なコンプライアンスステアの制御範囲となる。そして、これに加えて実施例1の左右のモータ102,103のトルク配分制御が成されることにより、このコンプライアンスステアの制御範囲が拡大するとともに、自由度を持つ。すると、さらに運動性能を向上させることになる。
【0034】
効果を説明する。実施例1の電気自動車にあっては、下記に列挙する効果を有する。
(1)左右の後輪RL,RRを左右それぞれで独立して駆動するモータ102,103と、左右のモータ102,103を制御する制御部301と、左右の後輪RL,RR及びモータ102,103を同軸上に配置し、アクスルチューブ201で接続したサスペンション構造と、制御部301に設けられ、コンプライアンスステアを生じさせるように左右のモータのトルク配分を制御するトルク配分制御部303を備えたため、モータ102,103の左右トルク配分を制御し、リヤ、トー特性を変化させることにより、車両の走行安定性、運動性能を向上させることができる。
【0035】
(2)制御部301は、車両が旋回中であることを判断する旋回判定部302を備え、サスペンション構造は、アクスルチューブ201と車体を接続するロワーアーム204及びアッパーアーム206と、ロワーアーム204及びアッパーアーム206の両端をアクスルチューブ201及び車体フレーム101に取り付ける取付部205,207を備え、取付部205,207は、ロワーアーム204及びアッパーアーム206のアクスルチューブ201及び車体フレーム101への取り付けがブッシュたわみを許容するブッシュ212を有する構造にし、トルク配分制御部303は、車両の旋回判定時に、トルク配分を制御し、サスペンション構造は、取付部の捻りによりトルク配分によるコンプライアンスステアを生じさせるため、トルク配分の制御により、車両旋回時のコンプライアンスステアによるトー角変化を制御して、電気自動車1の旋回時の運動性能を向上させることができる。
【0036】
(3)車速を検出する車速センサ402を備え、トルク配分制御部303は、低速における車両の旋回判定時に、トルク配分を外輪より内輪のトルクを増大させ、コンプライアンスステアをトーアウトにするため、車両の回転半径を小さくし、電気自動車の低速時の小回り性能を向上させることができる。
【0037】
(4)車速を検出する車速センサ402を備え、トルク配分制御部303は、中高速の車両の旋回判定時に、トルク配分を内輪より外輪のトルクを増大させ、コンプライアンスステアをトーインにするため、後輪にスリップ角を生じさせ、旋回状態からの復元力を増大させて、電気自動車の中高速時の走行姿勢の安定性を向上させることができる。
【0038】
(5)左右のモータ102,103の回転数を検出する回転数センサ403を設け、制御部301は、左右のモータ102,103の回転数差を演算する回転数差演算部306と、車速とモータの回転数差に応じたトルク配分のテーブルデータ304を備え、トルク配分制御部303は、車速とモータの回転数差に基づいて、テーブルデータ304を参照して、トルク配分を決定するため、車速に応じ、且つモータの回転数差による車両の旋回状態に応じたトルク配分データを予めテーブルデータとして予め備えておき、これを参照して良好なコンプライアンスステアの制御を行うことにより、電気自動車1の運動性能を向上させることができる。
【実施例2】
【0039】
実施例2は、車速とモータ回転数差に加えて、舵角により、トルク配分を制御する例である。
構成を説明する。
図9は実施例2の電気自動車において、モータのトルク配分に関する制御部分のブロック構成を示す図である。
実施例2の制御部301では、トルク配分を決定するトルク配分制御部501を設け、トルク配分制御部501への入力を、車速、モータ回転数差に加えて、舵角センサ401からの舵角とする。
そして、トルク配分のテーブルデータとしてテーブルデータ502を設ける。テーブルデータ502では、車速、モータ回転数差及び舵角をパラメータとしてトルク配分データを予め設定している。
その他の構成は実施例1と同様であるので説明を省略する。
【0040】
作用を説明する。
[コンプライアンスステアの制御作用]
実施例2では、テーブルデータ502を車速、モータ回転数差及び舵角をパラメータとしてトルク配分を得るものとしているので、車両の旋回状態を舵角からさらに精度よく得るようにし、トルク配分によるコンプライアンスステアの制御の精度を向上させる。これは、電気自動車1の運動性能を向上させることになる。
その他の作用は実施例1と同様であるので説明を省略する。
【0041】
効果を説明する。
実施例2の電気自動車にあっては、実施例1の(1)〜(4)の効果に加えて、以下の効果を有する。
(6)左右のモータ102,103の回転数を検出する回転数センサ403と、操舵角を検出する舵角センサ401を設け、制御部301は、左右のモータ102,103の回転数差を演算する回転数差演算部306と、車速とモータの回転数差、及び舵角に応じたトルク配分のテーブルデータ502を備え、トルク配分制御部501は、車速とモータの回転数差、及び舵角に基づいて、テーブルデータ502を参照して、トルク配分を決定するため、車両の旋回状態を舵角からさらに精度よく得るようにし、トルク配分によるコンプライアンスステアの制御の精度を向上させることができ、電気自動車1の運動性能を向上させることができる。
【実施例3】
【0042】
実施例3はヨーレイトセンサによりヨーレイトを検出し、車速とモータ回転数差に加えて、ヨーレイトにより、トルク配分を制御する例である。
構成を説明する。
図10は実施例3の電気自動車において、モータのトルク配分に関する制御部分のブロック構成を示す図である。
実施例3では、車両のヨー運動の変化率(ヨーレイト)を検出するヨーレイトセンサ603を車両に設ける。
そして、制御部301では、トルク配分を決定するトルク配分制御部601を設け、トルク配分制御部601への入力を、車速、モータ回転数差に加えて、ヨーレイトセンサ603からのヨーレイトとする。
そして、トルク配分のテーブルデータとしてテーブルデータ602を設ける。テーブルデータ602では、車速、モータ回転数差及びヨーレイトをパラメータとしてトルク配分データを予め設定している。
その他の構成は実施例1と同様であるので説明を省略する。
【0043】
作用を説明する。
[コンプライアンスステアの制御作用]
実施例3では、テーブルデータ602を車速、モータ回転数差及びヨーレイトをパラメータとしてトルク配分を得るものとしているので、車両の旋回状態をヨーレイトから得るヨー運動状態からさらに精度よく得るようにし、トルク配分によるコンプライアンスステアの制御の精度を向上させる。これは、電気自動車1の運動性能を向上させることになる。
その他の作用は実施例1と同様であるので説明を省略する。
【0044】
効果を説明する。
実施例3の電気自動車にあっては、実施例1の(1)〜(4)の効果に加えて、以下の効果を有する。
(7)左右のモータ102,103の回転数を検出する回転数センサ403と、車両のヨー運動の変化率を検出するヨーレイトセンサ603を設け、制御部301は、左右のモータ102,103の回転数差を演算する回転数差演算部306と、車速とモータの回転数差、及びヨーレイトに応じたトルク配分のテーブルデータ602を備え、トルク配分制御部601は、車速とモータの回転数差、及びヨーレイトに基づいて、テーブルデータ602を参照して、トルク配分を決定するため、車両の旋回状態をヨーレイトからさらに精度よく得るようにし、トルク配分によるコンプライアンスステアの制御の精度を向上させることができ、電気自動車1の運動性能を向上させることができる。
【0045】
以上、本発明の電気自動車を実施例1に基づき説明してきたが、具体的な構成については、これらの実施例に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
例えば、実施例では、リジッドサス構造の4リンクサスについて示したが、コンプライアンスステアが可能なサス構造であれば、他のサス構造であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は、内燃機関以外のエネルギーを用いた自動車や他の移動体に利用することができる。
【符号の説明】
【0047】
1 電気自動車
101 車体フレーム
102 モータ
103 モータ
104 後方ピラー部分
105 ショックアブソーバ
201 アクスルチューブ
202 接続部
203 バックプレート
204 ロワーアーム
205 取付部
206 アッパーアーム
207 取付部
208 ブレーキ部
211 ボルト
212 ブッシュ
213 樹脂
301 制御部
302 旋回判定部
303 トルク配分制御部
304 テーブルデータ
305 モータ制御部
306 回転数差演算部
401 舵角センサ
402 車速センサ
403 回転数センサ
501 トルク配分制御部
502 テーブルデータ
601 トルク配分制御部
602 テーブルデータ
603 ヨーレイトセンサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右の後輪を左右それぞれで独立して駆動するモータと、
左右のモータを制御する制御手段と、
左右の後輪及びモータを同軸上に配置し、連結部材で接続したサスペンション構造と、
前記制御手段に設けられ、コンプライアンスステアを生じさせるように左右のモータのトルク配分を制御するトルク配分制御手段と、
を備えることを特徴とする電気自動車。
【請求項2】
請求項1に記載の電気自動車において、
前記制御手段は、車両が旋回中であることを判断する旋回判定手段を備え、
前記サスペンション構造は、前記連結部材と車体を接続するリンク部材と、リンク部材の両端を前記連結部材及び車体に取り付ける取付部を備え、
前記取付部は、前記リンク部材の前記連結部材及び車体への取り付けがブッシュたわみを許容するブッシュ構造にし、
前記トルク配分制御手段は、車両の旋回判定時に、トルク配分を制御し、前記サスペンション構造は、前記取付部の捻りによりトルク配分によるコンプライアンスステアを生じさせることを特徴とする電気自動車。
【請求項3】
請求項2に記載の電気自動車において、
車速を検出する車速検出手段を備え、
前記トルク配分制御手段は、低速における車両の旋回判定時に、トルク配分を外輪より内輪のトルクを増大させ、コンプライアンスステアをトーアウトにすることを特徴とする電気自動車。
【請求項4】
請求項2又は請求項3に記載の電気自動車において、
車速を検出する車速検出手段を備え、
前記トルク配分制御手段は、中高速の車両の旋回判定時に、トルク配分を内輪より外輪のトルクを増大させ、コンプライアンスステアをトーインにすることを特徴とする電気自動車。
【請求項5】
請求項2〜請求項4のいずれか1項に記載の電気自動車において、
左右のモータの回転数を検出する回転数検出手段を設け、
前記制御部は、左右のモータの回転数差を演算する回転数差演算手段と、車速とモータの回転数差に応じたトルク配分のテーブルデータと、を備え、
前記トルク配分制御手段は、車速とモータの回転数差に基づいて、前記テーブルデータを参照して、トルク配分を決定する、ことを特徴とする電気自動車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−233307(P2010−233307A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−76515(P2009−76515)
【出願日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【出願人】(000128544)株式会社オーテックジャパン (183)
【Fターム(参考)】