説明

非導電性または半導電性の基板に導電性ブッシングを製作する方法

本発明は、特に電気的な用途に適している半導電性基板または非導電性基板に導電性のブッシングを製作する方法に関する。本方法は、前面が少なくとも1つの場所に導電性の接触個所(6)を有している半導電性基板または非導電性基板(13)にその裏面から少なくとも1つの切欠き(7)を設けて、切欠き(1)が前記基板の前面で、1つまたは複数の導電性の前記接触個所が存在していて当該接触個所で完全に覆われる1つまたは複数の場所の下で終わるようにし、次いで、前記基板のそれぞれの前記接触個所と裏側の表面(10,11,12)との間で複数または少なくとも1つの前記切欠き(7)を貫いて導電接続を成立させる導電性構造(9)を前記基板の裏面から塗布することを特徴としている。さらに本発明は、本発明の方法によって設定された形態を備える基板ないしコンポーネントも対象としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特にICに適合する基板のための非導電性または半導電性の基板への電気ブッシングの製作に関し、すなわち、このようなブッシングを含んでいる基板ないし電気コンポーネント/電子コンポーネントの製作に関するものである。さらに本発明は、これに対応する基板ないしコンポーネントそれ自体も対象としている。
【背景技術】
【0002】
大半の集積回路およびMEMS部品は依然としてワイヤボンディング技術によって接触が行われている。一部では、このような部品はスペース上の都合からフリップチップ技術によっていっそうコンパクトに構成され、接触される。そのために高等な接触構造(いわゆるバンプ)が、ボンディング接触面の上または近傍に装着される。バンプは多くの場合に軟ろうまたは金でできており、下地金属(UBM)の上に析出される。いっそう高い集積度で構成された次世代の製品のために、ハウジング内のシステム(SIP;図1参照。同図では回転率や加速度などを測定するために設計されたCSPとしてのSIPが示されており、MEMS−CSPおよびスルーホール接触されたASICで構成されている)がトレンドとなっている。平面から平面へ電気接触部を案内するには、チップへの直接的なスルーホールコンタクトがもっともコンパクトであるが、現在のところもっとも安価な方法ではない。
【0003】
J. Gobet他は、その論文“IC compatible fabrication of through−wafer conductive vias”, SPIE Vol.3223(1997),17−25頁において、シリコンウェーハを貫く導電性の貫通孔(いわゆるビア)の製作について記載している。負のフォトレジストで防護された基板が、コーティングされていない個所で、基板に貫通孔ができるまでプラズマエッチング法によりエッチングされる。この貫通孔がパリレン層によって絶縁されてから、スパッタ技術により金属で被覆される。それと同時に、この方法によって基板の両面に導電性構造が製作される。
【0004】
しかしながら著者らの記述によれば、この金属被覆ステップはきわめてクリティカルである。垂直方向に延びるビア壁の内側に、金属を十分に析出させることはほとんど実現不可能だからである。この問題は、ビアの直径に対する基板の直径の比率が不都合になるほど、いっそう深刻となる。しかも開いているスルーホールは、金属被覆のために、基板の両方の面が金属でコーティングされる方法戦略を選択することを必要とする。
【0005】
これに代わる戦略が、米国特許出願公開第2001/28113A1で批判的に検討されている。同文献には、裏面の切欠きが製作されて前面の導電性構造の接触が行われる、比較的古い従来技術が記載されており、この切欠きはウェットエッチングによって形成され、丸屋根の形状を有しており、後のステップで電解または非電解によるニッケルめっきで金属被覆される。切欠きは、本来ならば狭すぎる切欠きでのニッケルの析出を可能にするために、少なくとも基板の厚みの2倍に相当する基本幅を有している。しかしながら、このことが欠点であると記載されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、上述した欠点を取り除き、非導電性または半導電性の基板へのブッシングを具体化するために比較的少ないステップで実施可能であり、それによって低コストな方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題は、次のステップを有している、特に電気的な用途に適している半導電性基板または非導電性基板に導電性のブッシングを製作する方法によって解決される:
(a)前面が少なくとも1つの場所に導電性の接触個所を有している半導電性基板または非導電性基板を用意し、
(b)基板にその裏面から少なくとも1つの切欠きを形成して、その切欠きが基板の前面で、1つまたは複数の導電性の接触個所が存在していて当該接触個所で完全に覆われる1つまたは複数の場所の下で終わるようにし、
(c)基板のそれぞれの接触個所と裏側の表面との間で複数または少なくとも1つの切欠きを貫いて導電接続を成立させる導電性構造の塗布を基板の裏面から行う。
【0008】
本発明の方法により、たとえばMEMS−CSP,Opto−CSPなどで回転率や加速度などを測定するために必要となる積層されたチップ構造ばかりでなく、CCD画像センサ、CMOS画像センサ、BICMOS画像センサ(カメラチップ)のような個別部品も製作することができる。垂直な電気ブッシングを備えるMEMS−CSPとOpto−CSPは、SMT実装装置によって非常に簡単に、かつ高い精度で実装することができ、最小のモジュールの具体化を少ないコストで可能にする。図2は、画像センサを例にとってスルーコンタクトを示している。
【0009】
基板材料としては、シリコンウェーハのような半導体が考慮の対象となり、あるいは、それ以外の非導電性の基板材料、たとえばGaAs,ガラス、パイレックス(登録商標)、セラミックなども考慮の対象となる。本方法はこの点に関して原理的に制約をうけない。
【0010】
本発明に基づいて適用されるテクノロジーは、プレプロセシングされた部品が(たとえばウェーハ平面で)その機能特性に関して変化することがない方法管理と方法パラメータを、可能な限り活用するものである。特に、すべてのステップを400℃以下の温度で実施することができ、格別に好ましくは200℃以下の温度で実施することさえでき、このことは、カラーカメラ画像センサの製造についても本方法の適用を好適なものにする。本発明の方法が集積回路システムの製作を意図しているときは、そのために、ICに適合する補助物質や材料を容易に使用することができる。リソグラフィにおける特殊プロセスは、開いているスルーホールがいかなる時点でも半導体基板に存在しないことによって回避される。
【0011】
本方法は、コーティングされていない基板だけでなく、表面が片側または両側でコーティングにより、たとえばパッシベーションにより覆われている基板にも適用可能である。その一例は、薄いSiO2層で覆われているシリコンウェーハである。
【0012】
基板にその裏面から少なくとも1つの切欠きを形成する本方法のステップ(b)は、エッチング法によって行われるのが好ましい。この場合、基板裏面にリソグラフィで生成されたマスクを介して、基板に凹部がエッチングされる。マスクは基板の上に載せられていてよく、それにより、後で再び取り外すことができ、もしくはその他のやり方で除去することができる。あるいは、マスクは基板に付着する材料でできていてもよく、たとえば、エッチング媒体に対して耐性のあるレジスト層またはアルミニウム層もしくはSiO2層(「ハードマスク」)であってもよい。このようなマスクは以後も基板上に残すことができるが、必ずしも残さなければならないわけではない。エッチングは、適当な混合ガスを用いたプラズマエッチング法であってよい。混合ガスは、基板がシリコンウェーハである場合、たとえば酸化性の六フッ化硫黄を含むことができる。シリコンは、特に、いわゆる高レートエッチング(Deep Reactive Ion Etching, DRIE)によって処理することができる。このような種類のエッチング方法は、シリコンには作用するがSiO2、アルミニウム、レジストなどには作用しない。別案として、たとえば剥離を行う紫外レーザ照射によって、切欠きを機械式に製作することもできる。
【0013】
ステップ(b)によって得られる凹部は、任意の直径を有することができる。基板の厚さが特に35から500μmのときには、およそ10から250μmの直径、特に20から100μmの直径になるよう尽力されことが多い。
【0014】
本発明の特別に好都合な実施形態では、切欠きは、切欠きの断面が基板の前面の方向に狭まってなっていく円錐類似の形状を有している。このような切欠きの側面は、後のコーティングプロセスのときに、直径が同じままに保たれるビアに類似するブッシングよりもはるかに良好にアクセス可能であり、いっそう均等な材料の塗設を可能にする。前述の側面は約90°−70°、好ましくは85°−75°、きわめて特別に好ましくは約80°の側面角を有しているのが好ましい。切欠きは均等ないし左右対称であってよいが、必ずしもそうでなくてもよい。切欠きの円錐類似の形状は、基板の厚さ全体にわたって延びていてよい。しかしこれに代えて、裏面の外面のすぐ後方で初めて穴直径がその最大の直径まで拡張され、それから円錐状に狭まっていく、いわゆる「アンダーエッチング」で作業を行うこともできる。
【0015】
側面構造は、たとえばボッシュ法に基づくエッチング(たとえばSF6と、プラズマ重合によるパッシベーションが行われるように作用することができるガス、たとえばC48などのエッチングガスを交互に適用する)によって行うことができ、または、混合ガスとしてSF6/O2を用いるドライエッチングプロセスによって行うことができ、その場合、SiO2は無機的な側壁パッシベーションとして構成される。
【0016】
従来式のボッシュ・プロセスでは、イオンとラジカルがプロセスガス中に発生する。イオンはバイアス電圧によってウェーハに向かう方向へ誘導され、当たったときにスパッタ作用によって穴底面のパッシベーション層を剥離し、そこでシリコンと反応して気体SiFになる。側壁には、相応にきわめて少ないイオンだけが当たる。そこでバイアス電圧をオフにして、すでに露出している領域で主に中性粒子によるエッチングを行い、場合により作業ガス圧を上げて中性粒子の割合を高めれてやれば、側壁パッシベーションの形成に影響を及ぼすことができる。このことは、パッシベーションの経過時間を通じて追加して行うことができる。閉鎖されていない側壁パッシベーションは中性粒子にとって作用可能なので、外方へと指向するエッチング作用が生じることになる。したがって、側壁パッシベーションの厚みに対する指向性イオンエッチングの比率を(異なるバイアス電圧によって)同じ作業ガス圧力で制御することで、穴角度の形成を規定することができる。
【0017】
エッチング法の諸条件は、基板の前面にある導電性の接触個所が裏面から露出するように、ただし作用は受けないように選択される。接触個所が露出すると、この材料における非常に低い剥離率によってエッチングプロセスが停止する。このとき、接触個所は形成された凹部を前面に向かって覆っており、それによって基板は気密に保たれる。
【0018】
接触個所自体は、後の部品の必要性に応じて構成される。接触個所は、多くの場合、たとえばスパッタリングまたは蒸着された適当な金属からなっている。これはワイヤボンディング面であってよいが、必ずしもそうでなくてもよい。接触個所の構成の1つの特別に好ましい態様については、後でまた説明する。
【0019】
次いで、特殊なケースでは、ステップ(c)で導電性構造を基板に直接塗布することができる。このことは、たとえば携帯電話の高性能増幅器といった特殊なケース用として意図されていてよい半導体チップについて、好都合な場合がある。それにより、アースに対するより良い電位の適合化と同時に、チップのより良い放熱を得ることができる。当然ながら、このような方法管理は、基板が非導体であるあらゆるケースで好適である。
【0020】
ステップ(c)の導電性構造は、たとえば物理的なスパッタ、蒸着、電気めっき、または溶液からの無電解析出など、現在普及している技術によって塗布することができる。導電性構造は1層または多層であってよい。そのための適当な材料は、たとえばチタン、クロム、タングステン、TiN、アルミニウム、ニッケル、金、銀、銅などの金属、あるいはこれらの金属を含む合金である。適当な多層の金属被覆は、たとえばTi/Ni/Ag,TiW/金、Cr/Cu/Au,Al/NiV/Cu、Ti/TiN/Cuなどである。連続する層が生成されるときは、引き続いてこの層を通常の手法によって、たとえば特にスピンレジスト・リソグラフィまたはドライレジスト・リソグラフィとウェットエッチングによって、あるいはドライエッチングやリフトオフテクノロジーによって、構造化することができる。このとき、ブッシングを取り囲む金属被覆ばかりでなく、条導体やはんだ接触面も同時に構造化することができる。はんだ面は、ブッシングから段差をつけて構造化された状態で配置することができ、あるいは、ブッシングと重なり合っていてもよい。この場合、接触材料がブッシングに直接塗布される。
【0021】
別案として、マスクを利用しながら導電性構造を直接塗布して、構造化された形態にすることも当然できる。
【0022】
基板が導電性ブッシングに対して絶縁されるべきケース、またはそれが望ましいケースでは、ステップ(c)で導電性構造を塗布する前にパッシベーション層が基板に配置される。基板がシリコンでできている場合、このパッシベーション層はたとえば二酸化ケイ素、窒化ケイ素、または酸化窒化ケイ素でできていてよい。このようなパッシベーションの利点は、耐熱性が高いことにある。別案として、基板の材料に関わりなくどのようなケースでも絶縁性のポリマー、特に有機ポリマーまたは無機・有機ポリマーを塗布することができる。比較的にほぼ耐熱性である材料も、そのために好都合である。したがって、無機材料あるいはたとえば約290℃まで安定なパリレンなどの有機ポリマーも、同じく考慮の対象となる。パッシベーション層は任意の厚さで塗布することができ、たとえば0.4−2μmが好都合である。
【0023】
パッシベーション層は任意のやり方で塗布することができる。そのために、たとえば層がパリレンやSiNでできているケースについては、低温プラズマ法またはプラズマ支援式の方法も好都合である。
【0024】
パッシベーションは、基板にある切欠きを覆うだけでなく、基板の希望する部分または裏面全体さえも覆うのが好ましい。別案として、パッシベーションを構造化された状態で塗布することもできる。
【0025】
前面側にある接触個所の裏側も覆うようにパッシベーション層が塗布されるときには、ステップ(c)で導電性構造を塗布する前に、これを再び露出させなくてはならない。このことは、気相エッチングプロセスによって行うことができる。接触部位の金属がパッシベーション中に酸化されているとき、またはそれ以外の理由で酸化されているときは、たとえばアルゴンイオンボンバードメントによってこれを再び脱酸することができる。このようにして、その後に析出される金属層は低い接触抵抗と高い電流容量とを有している。
【0026】
ステップ(c)でブッシングが製作された後、後で接触をするために設けられている場所(はんだ付け面)および/または切断通路を除いて、基板の裏面を必要に応じて部分的または全面的にパッシベーション層で覆うことができる。この層はベンゾシクロブテン(BCB)またはポリイミド(Pl)からなっているのが好ましい。そのほか上記以外の有機ポリマー、あるいは無機・有機材料もしくは純粋に無機的な材料、たとえばSiO2などもそのための考慮の対象となる。パッシベーション層は後からたとえばリソグラフィで構造化することができ、あるいは、たとえばマスクや構造化された印刷プロセスを通じて、構造化された状態で塗布することができる。
【0027】
続いて任意選択で、定義されたはんだ合金からなるはんだボールが塗布される。このことは、はんだペースト印刷プロセスとこれに引き続く再融および洗浄によって、または予備成形されたはんだボールの落とし込みと再融によって、または曝露されたはんだ付け接触面へのはんだ材料の電着によって行うことができる。任意選択で、軟ろうに代えて、パラジウム、ニッケル、金、銅などの代替的な接触材料を、好ましくは電着によって塗布することができる。
【0028】
かなり前のところですでに述べたように、本発明のための基板材料は、たとえばパッシベーションなどのコーティングで片側または両側を覆われていてよい材料であってよい。
【0029】
前面にあるこの層は、場合により、たとえばSiO2で覆われたシリコンウェーハの上述したケースで該当するように、裏面からのエッチングの進捗に対して障壁になる可能性があるので、このような場合には、あるいはこれ以外の根拠のある場合にも、導電性の接触個所は場合によりオフセットされた状態で前述した層の上に、または好ましくはその内部または下側に配置される。このような場合には、たとえば希望する接触点のところでこの層をエッチングし、導電性の接触材料をこの個所に塗布することによって、基板の前面を事前に構造化しておくことができる。
【0030】
このように、特にプレプロセシングされた半導体基板の接触のために好適な本発明の特別に好ましい実施形態は、前述のようなケースについて、ならびに、その他の理由により基板の前面にある接触個所へ裏面から直接接触させることができないケースもしくは接触させないほうがよいケースについて、前面の層構造にある切欠きの形態の接触穴という追加の構成を意図しており、それにより、切欠きが半導体基板自体にまで達しているのが好ましい。必要な限りにおいて、次いでこの切欠きにパッシベーション層が施されてから、最後に金属被覆層がそこに析出されて構造化され、それによりこの金属被覆層が、形成された切欠きの底面を導電性の接触個所と導電接続するようにする。
【0031】
当然ながら、このようなケースではすでに設計段階で、能動的な電子部材のない個所を前面側の接触個所の近傍に設けなくてはならない。切欠きを形成するために、たとえばフォトレジストの塗布と構造化によって、前面がマスクで覆われる。切欠きのエッチングのために、層構造と使用するパッシベーション材料に応じて、半導体製造で知られている種々の方法を場合によっては組み合せて適用可能である。フッ素を含有する混合ガスを用いたドライエッチングのほか、HFを含有する酸を用いたウェット式構造化も可能である。それ以外にも、裏面の切欠きについて前述した方法を、前面側の切欠きを形成するために適用することができるのは当然である。
【0032】
切欠きの形状は任意に選択することができる。本発明の1つの好ましい実施形態では、切欠きは、本発明の裏面側の切欠きと同じく、約90°−70°、好ましくは85°−75°、きわめて特別に好ましくは約80°の側面角を有している。切欠きは均等または左右対称であってよいが、必ずしもそうでなくてもよい。切欠きの円錐類似の形状は、基板の厚さ全体にわたって延びていてよい。ただしこれに代えて、裏面側の外面のすぐ後方で初めて穴直径がその最大の直径まで拡張してから円錐状に狭くなる、いわゆる「アンダーエッチング」で作業を行うこともできる。しかしながら、切欠きが垂直方向の側壁を有していても同様に好ましい。
【0033】
次いでレジストが除去され、層構造と基板材料に応じて、場合により基板がシリコン材料であるときには特にSiO2からなるパッシベーション層が塗布される。このパッシベーション層を後でリソグラフィとドライエッチングを通じて構造化することができ、それにより、前面側の接触個所と切欠きの接触窓がいずれも開くようにすることができる。このレジストも引き続いて再び除去される。そしてウェーハ前面に、少なくとも1つの金属層または金属の層複合体が塗布される。金属層としては、たとえばAlSi1,AlSi1Cu0.5などのアルミニウム合金が適している。層複合体としては、接着剤層および/または拡散バリヤ層および導電性の良好な被覆層のなかから選択された、少なくとも2つの、あるいは場合により3つまたはそれ以上の層からなる層複合体を適用することができる。層複合体の例には、Ti/TiN/Cu,TiW,/Ni/AuまたはTi/Pt/Auがある。このような層は(たとえばPVDで)スパッタリングするか、蒸着するか、または化学蒸着法(chemical vapor deposition, CVD)によって塗布することができる。当業者に知られているこれ以外の方法態様も可能である。引き続いて次の方法ステップで、この全面的な金属層を、たとえばリソグラフィ法によって構造化しなくてはならない。そのために、層システムによっては場合によりドライエッチングプロセスを適用可能であるが、多くの場合にウェットエッチングプロセスが適用され、貴金属の被覆層の場合には異なるエッチング液で順次適用される。多くの場合レジストであるリソグラフィマスクが、引き続いて再び除去される。構造化は、前面側の接触個所と、前面側の基板構造へ新たに刻設された切欠きとの間で、程度の差こそあれ短い、または直接的な電気接続が結果的に成立するように行われる。切欠きは、上側の縁部に向かって若干重なり合うように金属被覆されるのが好ましく、ただし少なくとも、切欠きの底面にある接触窓を完全に覆う条導体が成立する。任意選択で、たとえばSiO2やSiNからなる追加のパッシベーション層を、上述した方法のうちいずれかによって、基板構造の前側の表面へ部分的または全面的に塗布することができる。
【0034】
前述したような前面の層構造にある切欠きの形態の接触穴の追加の形成は、裏面側の切欠きが形成される前に行われるのが好ましい。このようなケースでは裏面側の切欠きは、基板の前面に向かう方向へ、前面側の切欠きがすでに刻設されている金属層の下側で終わるように、引き続いて設けられる。それにより、方法の実施中にいつも基板が連続しており、かつそれによってガス不透過性であり、それにより、向かい合う面ないし表面についてのシール材として機能することができる。上に説明したとおり任意選択で可能なように、この金属層の下にパッシベーション層があるときには、パッシベーション層は接触窓を最初から除外しているか、または、後で裏面から基板とともに剥離しなくてはならない。
【0035】
別案として、それぞれの切欠きの形成は上と逆の順序で行われる。その場合には逆に当然ながら、前面からの切欠きは、設けられている場合がある裏面側の切欠きのパッシベーション層を貫通しなければならない。
【0036】
以上に説明したように、たとえば本来のワイヤボンディングパッドの表面へ接触を通じさせることで、動作電圧の有意な低減が回避される。
【0037】
前面側の接触穴を形成し、これを横に位置する本来の接触個所へ接触させる(以下、「間接的な前面側の接触」と呼ぶ)ための前述した方法ステップは、上に説明した本発明による裏面側の接触との組み合わせで実施するのが好ましいものの、前述した裏面側の接触を行わないほうがよい場合、もしくは行うことができない場合、または上に説明したような形態で行わないほうがよい場合もしくは行うことができない場合には、独立した方法としても適用することができることを明記しておく。たとえば間接的な前面側の接触は、従来技術からすでに知られている裏面接触との組み合わせで可能である。したがって本件出願は、ここに開示されている発明の2通りの異なる実施形態を含んでおり、これらの実施形態は、場合によっては別々に適用することができるが、好ましくは互いに組み合わされて適用することができることも明記しておく。それに応じて図3は、図示されている前面側と裏面側の構造が本発明に基づいて組み合せて設けられていてよく、または、それぞれ単独で設けられていてもよいと理解されるべきである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
前面側に塗布されたICプロセシングを備える基板を一例として示す図3を参照しながら、両方の本発明の方法によって実現可能な構造について説明する。
【0039】
図示されているのは、たとえばワイヤボンディング面であってよい本来の接触個所0を備える、プレプロセシングされた半導体基板13である。符号1は、上に説明した方法によって形成することができる窪んだ前面接触部を示している。(任意選択で設けられる)パッシベーション層2が、切欠きすなわち接触穴1の側面を外装しており、さらには、ICプロセシングのその他の層構造5をも接触個所0を除いて覆っているが、裏面側の接触の接触領域には設けられていない。場合により設けられるパッシベーション層の上の接着剤またはこのような拡散バリヤ層は図示しておらず、したがってパッシベーション層の上には、パッシベーション層4で覆われた金属被覆層3がある。金属被覆3は、接触個所0を、前面接触部と裏面接触部の間の接触窓6と接続している。裏面側の切欠きは若干円錐状に構成されており、その側面14は180°−βの側面角を有している。この側面は、前面側の切欠き1と同じくパッシベーション層8で外装されているが、このパッシベーション層は接触窓を除外している。その上には、金属被覆層9とパッシベーション層10がある。金属被覆9を介して、はんだ付け可能な接触面11およびはんだ付け接触部12との接触が成立している。裏面の切欠きも、前面の切欠きについて、およびさらには本方法の説明のなかで詳しく説明したように、別の層をさらに有することができることを明記しておく。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】従来技術を示す図である。
【図2】画像センサを例にとってスルーコンタクトを示している図である。
【図3】前面側に塗布されたICプロセシングを備える基板を一例として示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
特に電気的な用途に適している半導電性基板または非導電性基板に導電性ブッシングを製作する方法において、
(a)前面が少なくとも1つの場所に導電性の接触個所(6)を有している半導電性基板または非導電性基板(13)を用意するステップと、
(b)前記基板にその裏面から少なくとも1つの切欠き(7)を形成して、該切欠きが前記基板の前面で、1つまたは複数の導電性の前記接触個所(6)が存在していて当該接触個所で完全に覆われる1つまたは複数の場所の下で終わるようにするステップと、
(c)前記基板のそれぞれの前記接触個所(6)と裏側の表面(10,11,12)との間で複数または少なくとも1つの前記切欠き(7)を貫いて導電接続を成立させる導電性構造(9)の塗布を前記基板の裏面から行うステップとを含んでいる方法。
【請求項2】
前記基板(13)の前面に1つまたは複数の層(5)ならびに1つまたは複数の前記層の内部または表面にある少なくとも1つの導電性の接触構造(0)が設けられている、請求項1に記載の方法において、
(d)前記層(5)を貫いて延びる、前記前面を起点とする少なくとも1つの切欠き(1)を形成するステップと、
(e)少なくとも導電性の前記接触構造から前記切欠き(1)の底面まで達する導電性構造(3)を塗布して、該構造が導電性の接触個所(6)を形成するようにするステップとを有している方法。
【請求項3】
導電性の前記接触構造(0)は1つまたは複数の前記層(5)に埋設されていることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
1つまたは複数の裏面側の前記切欠き(7)および/または1つまたは複数の前面側の前記切欠き(1)は前記基板の前面ないし前記接触個所(6)の方向に狭まっていく横断面を有していることを特徴とする、前記請求項のうちいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記基板にある裏面側および/または前面側の1つまたは複数の前記切欠き(1,7)は実質的に円錐状に形成され、好ましくは約70−90°、より好ましくは約75−85°、きわめて特別に好ましくは約80°の側面角を与えられることを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記基板にある前記切欠き(1,7)は前記基板の裏面のエッチングによって形成され、該エッチングは導電性の前記接触個所(6)の面をエッチングプロセスが少なくとも部分的に露出させるまで継続されるとともに、エッチングによって生じる前記基板の切欠きを前記面がまだ封止するように覆う程度に早期に打ち切られることを特徴とする、前記請求項のうちいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
エッチングに適用される技術は、(a)基板がシリコンウェーハである場合には好ましくは六フッ化硫黄を用いたプラズマエッチング、高レートエッチングすなわちいわゆるDeep Reactive Ion Etching(DRIE)、(b)それぞれ適当なマスクを用いる、HF含有の酸を用いたエッチングまたはKOHエッチングのいずれかから選択されたウェットエッチング、(c)紫外レーザ放射を用いるエッチングのなかから選択され、前記(a)および(c)の技術は少なくとも裏面側の切欠きについて優先的に適用される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記基板の裏面にある前記導電性構造(9)および/または前記基板の前面にある前記導電性構造(3)は後から構造化される連続する層として塗布される、前記請求項のうちいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記基板の裏面にある前記導電性構造(9)および/または前記基板の前面にある前記導電性構造(3)はたとえばリソグラフィ法、印刷法、またはエッチング法によって塗布される、請求項1から7までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記ステップ(c)の前に少なくとも前記ステップ(b)で生じた前記切欠きの側壁に、および希望に応じて前記基板の裏面にも、パッシベーション層(8)が析出され、および/または前記ステップ(e)の前に少なくとも前記ステップ(d)で生じた前記切欠きの側壁に、および場合により前記層(14)の表面に、パッシベーション層(2)が析出されることを特徴とする、前記請求項のうちいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記接触個所(6)もその前面および/または裏面でパッシベーション層(2および/または8)によって覆われ、引き続いて適当な方法により少なくとも部分的に再び除去されてから、前記ステップ(c)および/または(e)に基づいて前記導電性構造が生成されることを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記パッシベーション層(2,8)は、特に前記基板がシリコンウェーハである場合については、スパッタ技術またはプラズマ支援式のCVDによる基板材料の酸化および/または窒化によって塗布され、および/または有機ポリマー材料または無機・有機ポリマー材料の塗布によって生成されることを特徴とする、請求項10または11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記パッシベーション層(2,8)は0.4から2μmの厚さであることを特徴とする、請求項10から12までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記ステップ(c)に基づく前記基板の裏面および/または前記層(5)の上面は構造化されたパッシベーション層(4,10)で覆われ、後に電気的な接触点または切断通路としての役目をするべき前記導線性構造の場所は前記パッシベーション層なしに保たれることを特徴とする、前記請求項のうちいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記パッシベーション層(4,10)は有機ポリマーからなっており、好ましくはベンゾシクロブテンまたはポリイミドからなっていることを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記パッシベーション層(4,10)は連続する層として塗布され、引き続いて好ましくはリソグラフィにより構造化されることを特徴とする、請求項14または15に記載の方法。
【請求項17】
前記パッシベーション層(4,10)は好ましくは印刷方法により構造化された形態で塗布されることを特徴とする、請求項14または15に記載の方法。
【請求項18】
裏面側の電気的な接触点としての役目をするべき前記導電性構造の場所に接触材料および/またははんだ材料が塗布されることを特徴とする、前記請求項のうちいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記接触材料は好ましくはパラジウム、ニッケル、銅、または金などの導電性金属でできており、特別に好ましくは電着によって塗布される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
好ましくははんだペースト印刷プロセスおよびこれに続く再融と洗浄によって、または予備成形されたはんだボールの落とし込みと再融によって、軟ろうからなるはんだボールが塗布されることを特徴とする、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
少なくとも1つの電気ブッシングを備える非導電性基板または半導電性基板において、基板(13)がその前面で少なくとも1つの場所に導電性の接触個所(6)を有しており、該接触個所が導電性構造(9)と接続されており、該導電性構造が前記基板の切欠き(7)を通ってその裏面側の面まで延びていることによって前記ブッシングが具体化されており、前記切欠きは前記基板の前面に向かって第1の前記導電性構造により完全に覆われている、非導電性基板または半導電性基板。
【請求項22】
前記基板(13)の前面は1つまたは複数の層(5)ならびに当該層の内部または表面にある少なくとも1つの導電性の接触構造(0)を備えており、前記接触個所(6)は、表面を起点として1つまたは複数の層(5)を貫通する凹部(1)の底面にあり、導電性の前記接触構造(0)と前記凹部は互いに間隔をおいていて導電性の層(3)により互いに接続されている、請求項21に記載の非導電性基板または半導電性基板。
【請求項23】
前記切欠き(7,1)は裏面ないし前面に向かって拡張している、請求項21または22に記載の基板。
【請求項24】
シリコンウェーハである、請求項21から23までのいずれか1項に記載の基板。
【請求項25】
少なくとも1つの前記切欠き(1,7)の少なくとも側面は、第2の導電性構造を前記基板から絶縁するパッシベーション層で覆われていることを特徴とする、請求項21から24までのいずれか1項に記載の基板。
【請求項26】
前記基板の裏面はパッシベーション層(10)で覆われており、および/または前記層(5)の表面はパッシベーション層(4)で覆われており、該パッシベーション層は、電気的な接触点(11,12)として意図されている前記導電性構造の場所だけを空けて残していることを特徴とする、請求項21から25までのいずれか1項に記載の基板。
【請求項27】
電気的な接触点(11,12)として意図されている前記導電性構造の場所に好ましくはパラジウム、ニッケル、金、銅からなる接触材料および/または好ましくは再融されたはんだボールの形態のはんだ材料があることを特徴とする、請求項21から27までのいずれか1項に記載の基板。
【請求項28】
少なくとも1つの電気的な前記接触点(11,12)は少なくとも部分的に切欠きの上にあり、該切欠きによって第1の導電性構造と接続されていることを特徴とする、請求項27に記載の基板。
【請求項29】
少なくとも1つの電気的な前記接触点(11,12)は切欠きから間隔をおいており、該切欠きによって第1の導電性構造と接続されていることを特徴とする、請求項27記載の基板。
【請求項30】
請求項1から20までのいずれか1項に記載の方法によって得られる基板。
【請求項31】
半導電性基板または非導電性基板に導電性ブッシングを製作する方法であって、前記基板(13)の前面に1つまたは複数の層(5)ならびに前記層の内部または表面にある少なくとも1つの導電性の接触構造(0)が設けられている、そのような方法において、
(d)前記層(5)を貫いて延びる、前記前面を起点とする少なくとも1つの切欠き(1)を形成するステップと、
(e)少なくとも導電性の前記接触構造(0)から前記切欠き(1)の底面まで達する導電性構造(3)を塗布して、該構造が、前記基板の裏面から接触させることができる導電性の接触個所(6)をそこに形成するようにするステップとを有している方法。
【請求項32】
請求項3から17までのいずれか1項の前面側の切欠きに関わる1つまたは複数の方法ステップによって実施される、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
少なくとも1つの電気ブッシングを備える非導電性基板または半導電性基板であって、その前面は1つまたは複数の層(5)ならびに前記層(5)の内部または表面にある少なくとも1つの導電性の接触構造(0)を備えており、基板(13)がその前面で少なくとも1つの場所に導電性の接触個所(6)を有しており、該接触個所が導電性構造(9)と接続されていることによって前記ブッシングが具体化されている、そのような非導電性基板または半導電性基板において、前記接触個所(6)は、前記層(5)の前面側の表面を起点として当該層を完全に貫通する凹部(1)の底面にあることを特徴とする、非導電性基板または半導電性基板。
【請求項34】
導電性の前記接触構造(0)は1つまたは複数の前記層(5)に埋設されていることを特徴とする、請求項33に記載の基板。
【請求項35】
請求項24から31までのいずれか1項の前面側の切欠きに関わる少なくとも1つの構成要件を有していることを特徴とする、請求項33または34に記載の基板。
【請求項36】
請求項21から35までのいずれか1項に記載の基板の利用法において、写真のカメラにおけるチップ、慣性測定ユニットにおけるチップ、または補聴器におけるチップとしての利用法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2009−515348(P2009−515348A)
【公表日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−539431(P2008−539431)
【出願日】平成18年11月8日(2006.11.8)
【国際出願番号】PCT/EP2006/068247
【国際公開番号】WO2007/054521
【国際公開日】平成19年5月18日(2007.5.18)
【出願人】(503306168)フラウンホーファー・ゲゼルシャフト・ツール・フェルデルング・デア・アンゲヴァンテン・フォルシュング・エー・ファウ (38)
【Fターム(参考)】