非平面的試料を調査するための方法及び装置
試料特に(製薬)錠剤を調査するための方法及び装置である。放射体及び/又は試料は、最初は、放射体が所定の距離にあり、試料表面の最初に照射した点の法線方向に位置する。放射体は25GHz〜100THzの範囲で複数の周波数を持つ光を試料の複数の点に照射する。放射体と試料とは相対的に位置を変えることが可能である。ただし、その位置の変更は、放射体と試料との間では所定の距離(試料表面と放射体との)を保存し、放射体は各照射点の法線と一致させ、透過又は反射した光を各点で検出することが可能になるようにする。この特徴的な応用として(製薬)錠剤のコーティングの形状及び組成を画像化するというのがある。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般には3次元の非平面的試料を調査するための装置及び方法に関する。特に表面層又は非平面的試料層の画像化に関する。より詳細には、本発明は錠剤のコーティングの分析を目的とした錠剤の表面層の調査に関する。
【背景技術】
【0002】
(製薬)錠剤製造の分野では、錠剤にコーティングを行う必要がよくある。錠剤コーティングにはいくつもの目的があり、それはたとえば錠剤の使用期限を延ばすことであり、飲みやすさ(palatability)、溶けやすさ(solubility)や見栄え(コーティングは色のついた外観を提供することができる)である。しばしば錠剤は2つ以上の層を含むコーティングを有する。
【0003】
錠剤やほかの3次元的に覆われた組成物及び、製造過程での品質管理を監視は非破壊的な評価方法であることが望ましい。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近赤外(NIR)分光法は非特許文献1で記述されているように、製薬分野で用いられてきた錠剤の画像化方法として用いられてきた。この技術はしかし散乱の問題に影響され、それゆえ試料表面より深いところを調べることができない。
【0005】
他の方法はラマン分光法である。この技術はラマン画像データを得て、その画像データに多変数画像処理を行う。この技術もまた錠剤の表面の画像しか得ることができない。しかし、さらなる問題がある。それは、錠剤の表面は非常に平坦である必要があるということである。この平坦さがどこまで要求されるのかは、有効なシグナルを集めるために非常に高い開口数の対物レンズを使用する必要があるため、ラマン画像の被写体深度(depth-of-field)の限界によって決まる。
【0006】
ラマン分光法の別な問題は、燐光(蛍光)する化学物質には、燐光がラマン信号のマスクとなって使用できないことである。さらに、高出力の照射がラマン分光法の特徴であり、この高出力照射が熱を起こし、画像化される試料の化学(的性質)が変化してしまう可能性がある。
【特許文献1】英国特許第2347835号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第01907935.9.号
【非特許文献1】ルイス、キャロル、クラーク(Lewis, Caroll and Clarke)、「近赤外光による製薬配合分析」(A near infrared view of pharmaceutical formulation analysis)、”NIRニュース”(英国)、NIR出版会(NIR Publications)、2001年、12巻、第3号、p.16-18
【非特許文献2】プレス、テューコスキー、ベッタリング、フラナリ(W.H.Press, S.A. Teukosky, W.T. Vetterling and B.P. Flannery)著、「C言語による数値計算のレシピ:科学計算の技術」(Numerical Recipes in C:The Art of Scientific Computing)、第2版、ケンブリッジ大学出版会(Cambridge University Press)(英国)、1992年
【課題を解決するための手段】
【0007】
1つの特徴に従えば、本発明は非平面的試料の調査方法を提供する。この方法は以下の工程を有する:
非平面的試料に照射する少なくとも1つの放射体を提供する工程;
複数の点の各々に対して所定の、前記放射体のうちの1つの位置は保持しながら、試料の非平面的表面の複数の点に、25GHzから100THzの範囲の少なくとも1つの周波数の光を照射する工程;及び
試料を透過する及び/又は試料の複数の点から反射される光を検出する工程。
【0008】
本発明のこの特徴は、非平面的対象物たとえば(製薬)錠剤のようなものを正確に調査すること及び、必要があれば画像化することを可能にする。特に、本発明は1つ以上の表面層又は錠剤のコーティングの調査、たとえば1つ以上のコーティングが設計通りになっているのかを確かめることなど、ことを可能にする。
【0009】
1つ以上の放射体を試料上の各点で所定の場所に保持しておくことで、試料表面の2次元以上の行路を生じさせることができ、非平面的試料の調査が可能になる。従って、この特徴はTHz光の使用と組み合わせることによって1つ以上の表面層の分析を可能にする。
【0010】
検出された光は試料の1つ以上の表面層の特性又は試料の1つ以上の表面の形状を決定するために分析されることが可能である。決定された特性は試料の1つ以上の表面層の厚さに関連付けることが可能である。
【0011】
本発明のこの特徴はさらに検出された光を用いた試料の1つ以上の表面層の画像生成を有することが好ましい。また、所定の距離は放射体の焦点距離に対応することが好ましい。
また、所定の位置とは、以下(のような性質)を有することが好ましい:
a)試料上のある点と放射体との所定の距離;及び
b)所定の試料の点への入射角度での放射体の照射軸(方向)。
この点では、照射軸は試料表面入射の基本方向としてよい。照射軸は試料上の点への法線入射方向にすることが可能である。放射体がプローブの先に内蔵されている場合、プローブの先の長手方向に照射軸が対応することが可能である。又は、放射体がプローブの先にある場合、プローブの長手方向の軸は法線入射の点と交差するが、照射軸は厳密にプローブ軸と平行にはならないだろう。そのかわり、そのようなシステムはいわゆる"法線入射に近い”システムで、放射されたビームと反射されたビームは空間的に分離される。
【0012】
放射体及び/又は試料は、放射体が試料に対して最初の軌道に沿って動くように動くことが好ましい。その際、複数の点は最初の軌道上にあるものとする。さらに放射体は最初の位置からある角度で再配置されることが可能である。その際、その角度は第2の軌道上に位置する。第2の軌道は第1の軌道がつくる面と垂直な面内にある;動作及び照射する工程は第1の軌道と平行な第3の軌道に沿って繰り返される;そして試料を透過する及び/又は試料から反射する光は第3の軌道に沿ったもうひとつの複数の点で検出される。付加的な検出測定を行うため、放射体の再配置は第2の軌道に沿ってある角度の範囲で繰り返すことが可能である。
【0013】
別な特徴に従うと、本発明は非平面的表面を持つ試料を調査するための装置を提供する。その装置は以下を有する:
試料表面の複数の点において25GHzから100THzの範囲で少なくとも1つの周波数を持つ光を試料に照射するための少なくとも1つの放射体;及び
試料上の複数の点において試料を透過する及び/又は試料から反射される光を検出するための検出器;
前記放射体のうちの1つは試料の非平面的表面上の点に対して所定の位置を保持し、所定の位置は複数の点の各々に対して保持されるという特徴。
【0014】
装置はさらに複数の点が最初の軌道上にあるように最初の点から放射体が試料に対して最初の軌道に沿って動くことが可能になるように、放射体及び/又は試料を動かす方法を有することが好ましい。この動かす方法にはロボットアームを有することも可能である。ロボットアームは少なくとも3軸の並進運動と2軸の回転運動が可能な5軸の運動系であることが可能である。
【0015】
また、少なくとも1つの放射体の各々はファイバーと結合したプローブの先端部内に内蔵されているのが好ましい。プローブはGB 2371618のタイプを使うことが可能である。これらのプローブは固定する、又はロボットアームに取り付けることが可能である。プローブ先端部が固定されている場合、製造環境中のベルトコンベアなどを用いて1つ又は複数のプローブ先端部を試料に対して動かす方法が提供されるであろう。
【0016】
さらなる特徴に従うと、本発明は以下の工程を有する非平面的試料の調査方法を提供する:
試料表面上の最初の位置から所定の距離に走査手段を合わせる工程;
走査手段及び/又は試料を、走査手段が最初の位置から最初の軌道に沿って試料に対して動くことが可能になるように動かす工程;
25GHzから100THzまでの範囲で複数の周波数を持つ光を最初の軌道に沿って試料に照射する工程;及び
その軌道に沿った複数の位置での反射及び/又は透過測定を行う工程。
【0017】
もうひとつの方法として、複数の放射体を非平面状試料上のいくつかの異なる点に対し、所定の位置にその各々を置いておくことが可能である。
【0018】
本発明のこれらの特徴は、赤外及び25GHzから100THzまでの範囲のテラヘルツ周波数の光を利用する。この種類の断層撮影法技術では、そのような光のすべて、特に25GHzから100THzまでの範囲で、もっと特定すると、50GHzから84THzの範囲で、特に100GHzから50THzの範囲の周波数を持つ光を、便宜上THz光と呼ぶことに注意されたい。
【実施例】
【0019】
ここで本発明を添付された図を参照して説明することにする:
テラヘルツパルス画像化は対象物の内部組成の非破壊分析、他の一般的な面の画像化及び分子組成の分光学的分析に有用な撮画方法であることを示した。しかし、高い空間分解能と焦点深度の要求とは相反するため、非平面的対象物の画像化目的にはTHz光を用いた画像化は問題がある。
【0020】
より詳細には、典型的なTHz画像化システムにおいて、THz光の低い光学F値(大きな開口数と等価)は大抵の場合、THz光入射方向に垂直な面内での空間分解能を最大にするように選ばれる。しかし、その系の低いF値は結果として系の面焦点を非常に限られたものにしてしまう。よって、非平面対象物表面の外形はTHzの被写体深度が許容できる領域よりも広いため、非平面対象物の表面を画像にするのは難しい。
【0021】
さらに、曲率の大きい、又は非平面的表面はTHz光検出系から離れたところに入射THz光を反射させる傾向があり、その結果反射されたTHz信号は小さい、又は無視されるものとなる。
【0022】
本発明の実施例はこれらの問題を解決することが可能であり、図1に示された本発明の1つの実施例に従った装置は丸みを帯びた(製薬)錠剤のような非平面的対象物のTHz光による走査に用いることが可能である。
【0023】
図1の装置は超短パルスレーザー11を有する。レーザー11は、たとえばTi:サファイア、Yb:Erをドープしたファイバ、Cr:LiSAF、Yb:シリカ、Nd:YLF、Nd:ガラス、Nd:YAG又はアレクサンドライトレーザーであってよい。このレーザー11は光13、たとえばパルスの平行にそろえられた(collimated)ビーム、を放出する。各々のパルスの平行にそろえられたビームは複数の周波数を有する。このパルスは第1のミラー15と第2のミラー17で反射されて、ビームスプリッタ32に入射する。ビームスプリッタはビームを試料の照射に用いられるポンプパルス12と検出中に用いられるプローブパルス14とに分ける。
【0024】
ポンプパルス12は最初の走査遅延ライン16に向かう。走査遅延ライン16は静的な遅延、又はステップ走査である。これはポンプビームとプローブビームとの間の相対的な光路長を調整する。最初の走査遅延ラインからのポンプパルスの出力はミラー18,19,40及び41によってレンズ20に向かう。レンズ20は近赤外光を用いる場合は非球面レンズであることが好ましい。レンズ20はポンプパルスを光源21に集光する。光源21は周波数変換部分と蝶ネクタイ構造の放射体を有することが好ましい。周波数変換部分は入力の周波数の違い、いわゆる差周波発生による光を出力するために、入射光を混合させるようになっている。この技術については、特許文献1に詳細が記述されている。
【0025】
光源すなわち放射体21は超半球レンズ35に接している。放射体21から出力されるテラヘルツビームは第1のシリコン製超半球レンズ35によって最初の放物面状ミラー25の方向へ向かう。ビームはそこで最初の放物面状ミラー25に反射され、第2の放物面状ミラー26へ進む。放物面状ミラー26は光を試料30に向かわせる。最終的な(測定)結果から装置によるデータのエラーを取り除くため、試料は参照試料に置き換えることが可能である。試料30から反射された光は第3の放物面状ミラー27で反射されて、第4の放物面状ミラー28へ向かい、放物面状ミラー28は、反射光を第2の超半球レンズ36及びたとえば光伝導検出器のような検出器29へ導く。試料によって反射されたテラヘルツビームはプローブパルス14と受光器29のところで再結合する。
【0026】
テラヘルツビームと再結合する前に、プローブビーム14は、ミラー42によって第2の走査遅延ライン22に向かう。この遅延ラインは高速走査型で、この最も単純な形式は、180度でビームを反射する2つのミラーを有する。これらのミラーはプローブパルス14の光路長を変化させるために、すばやく前後に水平に動く。又は、ポンプビームとプローブビームとの相対光路長が一致しうると仮定すれば、遅延ラインの各種位置は問題にはならないので、第2の遅延ラインを静的なラインに、第1の遅延ラインを走査遅延ラインにすることは可能であろう。
【0027】
プローブビーム14の第2の走査遅延ライン22からの出力は第1のプローブビームミラー23によって反射され、第2のプローブビームミラー24に向かう。ミラー24はプローブビームをレンズ31に通す。レンズ31は近赤外ビームを集光するのに用いる場合は非球面レンズである。このレンズ31は反射されたテラヘルツビームと結合させるために、プローブビームを受光器29に集光する。
【0028】
試料はテラヘルツパルスの光路中に時間遅延を導入する。遅延は吸収係数、屈折率及び試料の位置に依存する。検出信号を得るため、プローブビームの周波数成分はポンプビームの周波数成分と一致しなくてはならない。第1及び第2の走査遅延ラインのバリエーションはプローブビームの位相及び/又はポンプビームの位相がこれらのビームに対して水平に動くことを可能にしている。ゆえに、試料を透過する各周波数成分の遅延時間測定が可能になる。
【0029】
装置が平行にそろえられたパルスビームのようなパルスとの関連で説明される一方で、本発明は連続波(CW)出力源を用いた実装も可能であることは評価されるべきことである。連続波発生は特許文献2に詳細が記述されている。
【0030】
THz放射体21、テラヘルツ受光器、超半球レンズ35,36及び放物面状のミラー25,26,27,28は光ファイバーによって供給されるプローブ先端部に設置することが可能である。この配置では、光ファイバーはポンプ及びプローブパルス12,14はプローブ先端部に運ばれる。光ファイバーの出力において、プローブ先端部のレンズ20はポンプパルスを、31はプローブパルスをそれぞれ受け取り、ポンプパルスを放射体21で、プローブパルスを受光器29でそれぞれ集光する。
【0031】
図1の装置では、試料は並進する台33に置かれる。本発明の実施例では、台は3軸の並進運動と2軸の回転運動の座標を持つ。この方法では、対象物の位置は、走査の過程で、プローブ先端部は所定の距離と、対象物表面に対する法線入射を保持しながら操作することが可能である。この所定の距離はTHz光の焦点距離に等しいものでなくてはならない。従って、対象物表面は追跡記録され、錠剤表面での屈折によるTHz光信号のゆがみは避けられる。それゆえ、対象物の層又は外の層を調査するときに、より高い精度での測定が可能になる。
【0032】
試料が台33上にあるとき、試料の領域の中には、支持点の設計上、プローブ先端部に近づけない領域が出てくるだろう。よって、この配置では一度の走査で対象物のすべてを走査することができない。対象物の全領域を走査するため、対象物は最初の走査後、近づけない領域を露光し、これらの領域を走査して、これらのデータセットを取得完了できるように再配置される必要がある。もし、しかし、対象物のほとんどすべてを一度の走査で行うことが必要な場合、1つのアプローチは真空ピンセット又は他のそのような試料をつかむ機構を用いることである。これはテラヘルツ走査先端部に近づけない領域を露出させることが可能になるだろう。ただ真空ピンセットのような試料をつかまえる機構を用いたときでさえも、ほんの小さな近づけない領域はどうしても残ってしまうだろう。
【0033】
よって、5軸運動系を用いるこのアプローチで、THz焦点スポットは固定された場所に保持され、運動系は焦点に対して対象物を並進及び、回転させるために用いられる。走査を行うため、ユーザーは回転軸同様、x,y,z座標軸のすべて/いずれかの上限と下限について、関心領域の境界を近似することが可能になる。又は、プローブ先端部が動ける最大範囲に基づくなどのデフォルトの限界を利用することが可能である。
【0034】
他の実施例に従うと、走査先端部は、台33に加えて、又は台33のかわりに運動能力を与えられている。図2を参照すると、THzプローブ先端部50は不規則な形状又は非平面状表面を持つ対象物51に隣接するように描かれている。テラヘルツビームは光ファイバーによってプローブ先端部50に分配される。対象物に対するプローブ先端部50の軌道は破線にて示されている。この軌道はプローブ先端部を対象物表面からの一定距離及び対象物表面に垂直な方向を保持している。
【0035】
ファイバー結合したテラヘルツ装置ではテラヘルツ波及び/又は検出器を自由に配置することが許されている、その一方で近赤外光学部品は固定されたままになっている。この点で、テラヘルツパルスから近赤外光パルス/近赤外パルスからテラヘルツパルス、へ変換するための装置は小型であり、典型的には数センチの次元で、それゆえに妥当なサイズで可変のプローブ先端部に組み込むことが可能である。
【0036】
従って、本発明の実施例においては、プローブ先端部は関心ある対象物に対して自由にその位置を変えることができる。プローブ先端部は並進運動の3軸と回転運動の2軸とを持つ。従って、対象物の表面形状がわかっている場合、プローブ先端部は、対象物表面に対する一定の距離及び法線方向を保持したまま、対象物を横断することができる。この配置はそれゆえに対象物の表面が丸みを帯びているという問題を解決することが可能である。
【0037】
この自由にプローブ先端部の位置を変えることができる能力を実現するため、図11に図示しているように、ロボットアームを利用することが可能である。そのようなロボットアームは走査される対象物の周りをTHz光による点状プローブを自動操作するのに適しているだろう。
【0038】
さらなる代替方法はプローブ先端部19及び台33が動くようにすることである。たとえば、プローブ先端部は並進可能に、台は回転可能になるなどが可能であろう。カギとなる点は、プローブ先端部が試料表面に対して法線方向にあり、そして所定の距離を保持するように台とプローブ先端部の間で相対運動をすることである。
【0039】
プローブ先端部が試料表面に対して法線方向にあり、そして所定の距離を保持するようにするためには、システムは対象物の表面形状に関する知識を持っている必要がある。これはあらかじめ決めておき、走査システムにつながっているメモリに保存しておくことが可能である。本発明が生産ラインからの錠剤のサンプルのような同じ種類の対象物の画像化に用いられる場合、この方法は便利である。
【0040】
従って、本発明の別な実施例は、表面形状を決定するために対象物を走査するための技術に関する。この技術は対象物の表面層、特に閉じられた表面物質の画像化に使用することが可能である。
【0041】
閉じられた表面とは、球や楕円のように、それ自身を包み込んでしまうような表面のことである。閉じられた表面形状を持つ対象物は製薬錠剤や丸薬(pill)を含む。閉じられた表面は、r=F(θ,Φ)、で表すのが最もよい。ここでrは対象物内部から表面上のある位置Rへのベクトル、θ,Φは位置の角度座標である。
【0042】
この点で、図3を参照すると、デカルト座標(x,y,z)は原点を(0,0,0)とした位置Rと合わせて図示されている。Φはベクトルr(原点から位置Rまで)とデカルト座標軸の1つ、この場合はz軸、とのなす角である。角度座標θはベクトルrに対するxy平面状での回転角である。同様に、2次元での表現に適用可能な極座標を図2に示す。ベクトルrは原点(つまり、(0,0,0)から対象物表面上のある位置)、そしてθはベクトルrとデカルト座標軸の1つとのなす角である。
【0043】
閉じられた表面形状が決定されているとき、表面の限界は角度座標θ及びΦの限界で特定されるだろう。
【0044】
座標原点のおおよその位置は特定される必要がある。原点は試料体積内部に位置しなくてはならない。操作する人はそれを特定することができる。この原点の厳密な場所というのは決定的ではないが、体積中の中心に近いことが望ましい。
【0045】
空間分解能、ΔLは特定されなければならない。これは求められるおおよその空間分解能に対応する(たとえば50μm)。図8を参照すると、空間分解能はθ走査中の連続する点間のおおよその距離で視覚的に示唆される。
【0046】
閉じられた表面の全領域を走査するため、θは0から2π、そしてΦは0からπまで測定されなくてはならない。表面上の初期化された点、又は”開始点”で始まる”既知の領域”を連続的に拡大することで実現される。走査の開始点は走査が開始される試料表面上の点を表す。また、”開始方向”とは、開始点において試料表面に垂直な方向を表す。この反復過程は一般的には図4に図示されたようなものである。つまり、図4は閉じられた表面の一部を投影したものを表している。THz走査は開始点から、対象物の境界を周る破線の軌道で示されているように行われる。最初の走査の結果は開始点の外にある最初の暗い輪郭で示されている。この領域は対象物表面がどのような形状をしているのかという最初の示唆を与える。これが最初の反復後、事実上の”既知の表面”ということになる。”既知の表面”の領域はすべての閉じられた表面がわかるまでΦの値を増加させながら対象物周辺を繰り返し走査させることで拡大することが可能である。
【0047】
この反復走査手順を行う前、プローブ先端部は初期化されている。この初期化には、試料表面の点に焦点を合わせるような位置にすること、THz信号及びバンド幅(帯域幅)が最大になるように法線入射を最適化することが含まれる。初期化が効果を持つようにΦ=0の位置に設定される。これは手動で行うことも自動で行うことも可能である。
【0048】
図5は、最初の走査位置にプローブを合わせるための一般的な手順を図示している。プローブ先端部50の位置は所定の原点Oからプローブ先端部上のデータPへのベクトルpで表される。原点Oは任意に選ぶことが可能である。位置ベクトルpは機械的走査システム(図示していない)の状態によって決定される。そのような走査システムはいくつかの並進及び/又は回転ユニットを有する。各々のユニットはその現在位置に関する情報を保持する。全領域のベクトルpは従って走査システムの各部分から得られる位置ベクトルの総和から決定される。
【0049】
THzビーム及びTHz光を集める光学系の焦点距離Fは、走査するプローブ先端部に対して既知の位置である。プローブ先端部上のデータPと焦点Fとの間のベクトルは図5でfとなっている。よって、THz焦点の全領域の位置はベクトルpとfの和になる。原点Oに対するTHz光の焦点Fの位置はいつでもわかっているということになる。
【0050】
対象物表面の最初の走査を行う前に、開始点でプローブ先端部を整合させるために、THz光の焦点Fが対象物表面上の点と一致するようにする。また、プローブ先端部の方向は焦点Fにおいて、対象物表面の法線方向に対応するように調整されなくてはならない。ずれ及び、焦点Fと対象物表面との間の角度の不整合(angular misalignment)の発生が予想されるが、最初からそのような条件に出会うことは考えにくい。
【0051】
Fの対象物表面からのずれは図5においてδで表される。一方角度の不整合はΨで表される。δ及びΨの最小化はユーザーが手動にて行うことも、また自動化された過程で行うことも可能である。
【0052】
手動の最小化は0.1Hzより大きい周波数での高速走査の遅延ラインを走査する間に取得されるTHz波形と参照波形との実時間表示での比較を含む。参照波形は焦点Fにミラー又は他の高い屈折率を持つ平面状の対象物を置くことで得られる。その際、ベクトルfに沿ったTHzプローブ先端部軸がミラー表面と垂直になるようにする。
【0053】
図6を参照すると、下側の破線でTHz波形の形が、上側の実線で参照波形が図示されている。これらのトレースは分かりやすくするためにオフセットしている。y軸は受光器の出力で、x軸の単位は、ずれ又は時間遅延のいずれとみなすことも可能である。
【0054】
また、THz光の焦点位置と対象物表面とのずれδは図6で示されている。δは2つの波形の最大ピーク間の距離である。観察されたTHz波形は参照パルスよりも振幅及びバンド幅が小さい(つまりバンド幅は広がっている)。このTHz波形は十分に整合されていない状態であることを表している。
【0055】
最適な整合条件において、対象物表面から得られるTHz波形は参照波形と同じ光学遅延値でピーク(又は他の特徴)を持つだろう。最適に整合された(つまり、δ=0)プローブ先端部から得られた観測されたTHzパルスは図7に図示されている。観測されたパルスは参照試料のバンド幅と同程度のバンド幅を持ち(つまり、パルスは同様に’鋭い’)、ピークは同じ箇所に出てくる。また、観測されたパルスの振幅は対象物表面の反射率が小さくなることで減少している可能性がある。
【0056】
プローブ先端部の最適な方向は振幅と表面で反射されるTHz光のバンド幅を最大にするような先端部の方向の調整によって決まる。THz光の被写体深度の限界は有限のδにおいてTHz光のバンド幅の減少を引き起こす。ここでδは観測されるTHzパルスの広がりを表す。もし、対象物の表面反射率が参照データを得るために用いられたミラーよりも小さい場合は、THz光の波形の振幅は参照試料の波形振幅よりも小さい値をとることが可能である。ただ、対象物の表面反射率が参照データを得るために用いられたミラーよりも小さいという場合は一般的なことではない。
【0057】
対象物表面の反射率は周波数依存性がある。この依存性は参照試料(図示していない)との比較で、観測されたパルスのある程度の広がりを結果として起こしてしまうかもしれない。しかし、最大バンド幅の位置は依然としてδ=0の位置にあるだろう。
【0058】
プローブ先端部の最適な整合及び位置は交互に自動化可能である。自動化された手順では。δとΓBWの最小化及びAの最大化を同時に行うことが目的である。ここでΓBWは観測された波形のパルス幅(そしてTHzパルスバンド幅の逆数である)を表し、AはTHz波形の振幅を表す。そして3つすべてとも位置と方向の関数である。
【0059】
つまり、δ(x,y,z,θ,Φ),A(x,y,z,θ,Φ),ΓBW (x,y,z,θ,Φ)である。ここで、x,yそしてzはプローブ先端部の位置を表す座標で、θとΦはプローブ先端部の方向を特定する角度座標である。ΓBWの最小値はΨ=0の条件に対応する。これらの関数の最小/最大値は周知の反復的探索アルゴリズムを用いることで見つけることが可能である。たとえば、非特許文献2を参照のこと。
【0060】
一旦整合されると、プローブ先端部はTHz光を試料へ向かわせ、THz波形は記録される。Φ=0での表面上の既知の焦点及び原点に基づいて、原点から表面の場所までの距離r0はこの波形から計算して求めることが可能である。図4を参照すると、過程のこの部分は開始点に関係するすべてのパラメータを本質的に決定する。
【0061】
最初の表面の位置が分かっている場合、他の表面の位置も決定することが可能である。この点では、焦点距離r0を固定したままにして、プローブは新しいファイの値Φ1を得るために、現在の値ΦにΔΦ0分だけ増えるようにプローブを動かす:
Φ1=Φ0+ΔΦ0=Φ0+(ΔL/r0) (1)
よって、増分は求められる空間分解能に依存する。だから、高い空間分解能が要求されるところでは、ΔΦ0は小さくなるしかない。先述の式はΔΦiの値を選ぶ上での唯一のガイドになるだろう。試料の法線方向と位置ベクトルrとの大きなずれが予想されるような場合、正確さを向上させるため小さなΔΦiを選ぶことが可能である。
【0062】
この新しい位置で、ファイの値Φ1及びrを固定したままにすると、プローブは新しいΦの値で、軌道から外れた非線形のライン走査を行う。再度図4を参照すると、破線は走査先端部の軌道を表し、開始点を囲む最初の黒い輪は対象物表面上の位置を表す。その位置に走査先端部は新しいファイの値で照射するだろう。
【0063】
軌道はθの値を0から2πの範囲をn刻みで増加させることで決定される。ここで、nは以下で与えられる:
n=2πrsin(Φ)/ΔL (2)
そしてnは切り上げて最も近い整数にする。従って、nもまた要求される空間分解能に依存する。高い空間分解能が要求されるところでは、測定回数は多くなるだろう。刻み数nは各々のΦの値によって変化するだろう。この方程式は要求されるθの刻み数を選ぶための簡単なガイドである。正確さを向上させるために大きな刻み数を選ぶことが可能である。
【0064】
もしnがこの方法で6未満となった場合、妥当な程度の分解能(たとえば小さなΦ)を保持したまま6に切り上げなければならない。6という数字を、表面の法線を計算するための開始点のまわりにある都合のよい数の点を与えるために任意に選ぶことができるということは便利なことである。
【0065】
このライン走査過程はθの軌道にわたって一連のTHz波形を取得することを含む。つまり、THz波形は軌道に従って、n個の並んだ位置の各々について決定されるだろう。ライン走査の間、プローブ先端部と原点との間の距離はΦ0の点で決められた点で固定されたままになっている。
【0066】
ライン走査が終わり、結果は走査された実際の表面位置を計算するのに用いることができる。よって、推定された値を結果に置き換える。表面位置及び方向の推定された値はΦ0の点で決められた値であることも可能だし、また先に行われたライン走査で見つけられた最近接の補間に基づいて計算することも可能である。
【0067】
ゆえに、Φ1での表面位置で得られたTHz波形及びΦ0でのこれまでの表面位置についての情報を用いて、n個の位置の各々についてr1を決定することが可能である。ここで、r1は表面の点と”元の”位置との実際の距離である。
【0068】
個別の点の測定が行われた後、実際の表面位置は、1)推定された位置、そして2) THz光焦点Fと対象物表面との観測された距離から計算することが可能である。それは表面の法線ベクトルを計算するために用いられる一連の”既知の”点である。
【0069】
各々の表面位置の法線(つまり、表面に垂直なベクトル)は、先のライン走査での測定点から計算される必要がある。
【0070】
最も新たに取得された点の表面法線ベクトルの計算は、現在の点と周りの点との間の距離で定義されるベクトルを用いられる。これは図8に示されている。最後に取得した点はこの図ではPとなっている。Pから最近接の既知の点(つまり、実際の点)への変換を表す3つのベクトルは、p1,p2,p3で示されている。これらのベクトルのうちどれか2つは、それらの外積(ベクトル積としても知られている)を計算することで法線ベクトルを計算するのに用いることができる。つまり:
n1=p1Λp2/|p1||p2|
n2=p2Λp3/|p2||p3|
n3=p1Λp3/|p1||p3|
noverall=(n1+n2+n3)/3
測定点全域にわたる法線ベクトルは、最近接点へのベクトル同士の外積の様々な考えられる組み合わせの平均を取る。法線ベクトルは単位長さを持つ。
【0071】
表面の推定された位置は隣接点の”表面の法線ベクトル”を用いて計算される(又は、もし2点以上の最近接点が存在する場合は、これらの平均を用いる)。もし最後の測定点がrn,θn及びΦnで特定される場合、rn+1,θn+1及びΦn+1(たとえ各ライン走査の終了でΦの値が増加しても、定義により、Φの値は各ライン走査で一定に保持される)で与えられる次の点、は以下のように推定される。
θn+1=θn+Δθ=θn+(ΔL/r sinΦn)
【0072】
更新されたr座標のrn+1は次のように計算される:
nを最後の測定点(又は他の最近接点)の表面法線方向に沿って単位長さを持つベクトルで、rnを座標rn,θn及びΦnで記述されるベクトルとする。第2のベクトルr’nをrnと同じ大きさと定義する(つまり、|rn|=|r’n|)が、新たな角度座標は、θn+1及びΦn+1である。各q走査の終わりを除けば、大抵Φn+1=Φnである。
【0073】
・n+1番目の点の推定されるr座標、rn+1は以下で与えられる:
rn+1=rn[(n.rn)/(n.r’n)]=rn[(cosξn/cosξn+1)]
ここで、ドットは2つのベクトルのスカラー積を表す。ξnはnとrnとのなす角で、
ξn+1はnとrn+1とのなす角を表す。
【0074】
・n+1番目の点の推定される表面法線ベクトルはその点の1つ以上の最近接点の表面法線の平均となる。
【0075】
一旦、n+1番目の点の推定される表面法線ベクトル及び位置が計算されると、プローブ先端部はTHz光の焦点をこの場所に移すように動き、新たな位置の表面法線に沿った方向にプローブを保持する。THz波形はこの新たに推定された場所で取得される。
【0076】
既知の位置から大きく変わる領域では、THz信号はまったくなくなるだろう(つまり、非常に高い誤配向表面からのTHz反射は受光用の光学系にまったく反射されないだろう)。これらの領域では、THz信号が表面位置の有用な方法として小さすぎるところでは、より正確に決定された表面形状の隣接領域からの内挿/外挿に基づいて表面形状の最適な推定がなされる。
【0077】
従って、この方法で、対象物表面にわたっての走査は同時に表面を追跡記録しながら行われる。この点では、THz波形は試料表面からも試料内部からも反射された光の波形を表し、既知の表面位置に対する試料表面の違いを明確にする方法も提供する。
【0078】
再度図4を参照すると、ここではΦ1に対する対象物表面のn個の位置が決定しているが、開始点に対する領域、この領域はこれらn個の点で境界がつくられている、は外挿可能であり、従って”既知”である。
【0079】
一旦、ライン走査がΦ1で完了したら、(1)と同様の公式に従って、Φ1は増加する:
Φ2=Φ1+ΔΦ1=Φ1+(ΔL/r1) (3)
ΔΦ1の値は場合によっては、正確さを向上させるために小さい値が選ばれることが可能である。
【0080】
この新たなΦ2の位置から、θの軌道0から2πにわたってライン走査が行われる。図4を参照すると、走査先端部は破線の外形で表されているように、対象物と同じ軌道を動く。この新たなΦ2の位置で走査される試料上の表面の位置は開始点に対する第2のループに対応する。
【0081】
再度Φ2に対するn個の表面の位置が走査される。nの値は各Φの値において方程式(2)を用いて計算される。
【0082】
Φを増加させ、そして各々のΦの位置に関係する軌道に沿って対象物を走査するこの手順は図4に示されているように、試料の”既知の領域”を拡張させることを可能にする。ここで、各々の輪は異なるΦの位置に対して走査された位置を表す。このことは図8でもまた表現されている。ここでΦ0とは開始位置で、Φ0での最初の軌道はΦ1を決定するためである。Φ1は波形が得られるところで対象物表面上に6つの点を持つ。次の軌道はΦ2を決定するためである。Φ2は波形が得られるところで、対象物表面上に12個の点を持つ。というような具合で(n個の点は決まる)。
【0083】
この方法で、対象物の全表面領域をカバーするため、Φは全Φの範囲(0からπまで)にわたり、増加させることができる。又は、対象物の特定表面領域だけをカバーするため、Φは代わりに先に決められた走査範囲にわたり、増加させることができる。
【0084】
この手順は、表面形状と対象物表面層の構造/組成を同時に測定するために用いることが可能である。一旦、走査手順が終了すると、データは、対応する表面位置と表面法線ベクトル(これは、各表面位置の特定の方向を示唆する)とともに、一連のTHz波形の形式を持つ(各々は対象物表面上の特定の点に対応している)。
【0085】
対象物が錠剤の場合は、コーティング層の数、又はコーティング層の厚さといった錠剤コーティングの様々なパラメータはTHz波形から抽出可能だろう。この点で、(対象物)内部での反射は物質の界面を示唆すること、そして試料内の不均一性も示唆することが可能である。
【0086】
これらの値は測定された錠剤の形状から得られる錠剤表面のモデル上でプロットすることが可能である。これを図9に示す。ここではテラヘルツ波形が描かれており、錠剤断面での波形の特性の対応を示唆している。
【0087】
また、図10は図9で示したような走査測定を用いて得られた体積データセットを介した(錠剤の)薄片を表す。この体積データセットは、本発明が閉じられた対象物表面から異なる物質界面を抽出できることを示すために、左にある錠剤の外形と比較してある。
【0088】
さらに、図12は、錠剤100のコーティング構造のため、錠剤の体積を介した薄片として、図10の3次元データセットを図示している。体積データセットを介したこの薄片は断面図としても図で描かれている。像は横の位置に対して深さをプロットしたものであり、明らかに錠剤の物質界面が見える。つまり、像は外のコーティングの厚さと、また内部コーティングの厚さを示している。このように断面像を生成することで、そのような錠剤の品質を、たとえば錠剤は一貫したコーティングの厚さを持っていることを保証することで、制御することが可能となる。
【0089】
本発明は製造環境において実装可能である。この点では、図13を参照すれば、ファイバーで分配されたテラヘルツプローブを用いた例が図示されている。図の左側で、製造ラインの例が図示されている。ここでは、錠剤がベルトコンベアに沿って動くので、錠剤を画像化するのに、複数のプローブを固定された位置で利用する。この技術は従って”オンライン”過程である。”オンライン”過程で品質管理を行うため、複数の錠剤の所定の場所からの測定を行う。図の右側で、オフライン検査システムで、ロボットアームのマニピュレータに取り付けられた単一のプローブが図示されている。試料は試料ホルダに固定され、また、この例ではロボットアームは試料の調査と画像化を行うために6つの異なる座標についてプローブを動かす。
【0090】
変更及び追加は一般的な発明の概念の範囲内であれば可能である。本発明の実施例は発明の図示とみなされるべきであり、一般的な発明の概念に制限される必要はない。
【0091】
たとえば、極座標を用いた単一の走査技術は反復的過程として利用されることが可能である。一旦、表面位置やこれらの位置の表面法線が決定されたら、過程中、決まった表面位置及びそこに対する垂線から所定の距離を保持し、再走査する一方で、走査先端部はΦの位置についてしっかりと進んでゆくことができる。もし再走査の結果が、実際の表面構造と現在の推定との違いが所定の水準を下回っていることを示唆しているのであれば、表面形状の推定は妥当なものであり、データから得られた対象物表面/コーティング構造の特性は信頼可能なものである。しかし、もし、先の形状の推定と最後の走査の結果との間に重大な違いが明白になった場合(又は信頼できるTHz反射データのない表面領域が残る場合)、更新された形状の推定を用いて走査手順を繰り返すことになるだろう。この反復的走査手順は形状の推定が十分に正確とみなせるまで繰り返すことが可能である。換言すれば、表面形状のより精緻化された推定を、さらなる走査を試料表面にわたって行うことで得ることが可能である。その際、THzプローブ先端部は先に得られた結果のように表面形状を追跡記録する。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】本発明の実施例に従った、テラヘルツ画像システムの概略図である。
【図2】本発明の実施例に従った、非均一の対象物の周りを走査するテラヘルツプローブの概略図である。
【図3】標準的x,y,z軸上の極座標を表す。
【図4】表面形状及び、本発明の実施例に従った走査技術を用いた場合に一般的に表面形状がどのように拡張してゆくのかを表す概略図である。
【図5】最初の走査箇所へのプローブの整列を含むベクトルを表す概略図である。
【図6】放射体が最適な状態でそろっていないときの、参照波形に対して比較される初期化されるテラヘルツ波形の概略図である。
【図7】放射体が最適な状態で整合されているときの、参照波形に対して比較される初期化されるテラヘルツ波形の概略図である。
【図8】最初の点について異なるΦについて3つのθ走査の測定手続きと法線ベクトルの計算に用いられるベクトル表す概略的である。
【図9】本発明を用いて得られたテラヘルツ波形を表し、錠剤の断面に対する波形中に、対応する特性があることを示唆している。
【図10】異なる物質の界面を示すため、体積のデータセットの右側を通した薄片を錠剤の概形と比較して表している概略図である。
【図11】本発明の実施例に従った対象物の周りのテラヘルツプローブ先端部の自動化された操作に適したロボットアームを表す概略図である。
【図12】本発明の実施例に従って画像化された錠剤のコーティング構造の3次元データセットを表す灰略図である。図はまた、コーティングの断面を示すためにプロットされた体積データセットを通した薄片も示している。
【図13】ファイバーによって供給されるテラヘルツプローブの例で、生産ラインでのロボットアームによるマニピュレータ(左側)と、また生産ラインから外れたところでの検査システム(右側)を表す概略図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は一般には3次元の非平面的試料を調査するための装置及び方法に関する。特に表面層又は非平面的試料層の画像化に関する。より詳細には、本発明は錠剤のコーティングの分析を目的とした錠剤の表面層の調査に関する。
【背景技術】
【0002】
(製薬)錠剤製造の分野では、錠剤にコーティングを行う必要がよくある。錠剤コーティングにはいくつもの目的があり、それはたとえば錠剤の使用期限を延ばすことであり、飲みやすさ(palatability)、溶けやすさ(solubility)や見栄え(コーティングは色のついた外観を提供することができる)である。しばしば錠剤は2つ以上の層を含むコーティングを有する。
【0003】
錠剤やほかの3次元的に覆われた組成物及び、製造過程での品質管理を監視は非破壊的な評価方法であることが望ましい。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近赤外(NIR)分光法は非特許文献1で記述されているように、製薬分野で用いられてきた錠剤の画像化方法として用いられてきた。この技術はしかし散乱の問題に影響され、それゆえ試料表面より深いところを調べることができない。
【0005】
他の方法はラマン分光法である。この技術はラマン画像データを得て、その画像データに多変数画像処理を行う。この技術もまた錠剤の表面の画像しか得ることができない。しかし、さらなる問題がある。それは、錠剤の表面は非常に平坦である必要があるということである。この平坦さがどこまで要求されるのかは、有効なシグナルを集めるために非常に高い開口数の対物レンズを使用する必要があるため、ラマン画像の被写体深度(depth-of-field)の限界によって決まる。
【0006】
ラマン分光法の別な問題は、燐光(蛍光)する化学物質には、燐光がラマン信号のマスクとなって使用できないことである。さらに、高出力の照射がラマン分光法の特徴であり、この高出力照射が熱を起こし、画像化される試料の化学(的性質)が変化してしまう可能性がある。
【特許文献1】英国特許第2347835号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第01907935.9.号
【非特許文献1】ルイス、キャロル、クラーク(Lewis, Caroll and Clarke)、「近赤外光による製薬配合分析」(A near infrared view of pharmaceutical formulation analysis)、”NIRニュース”(英国)、NIR出版会(NIR Publications)、2001年、12巻、第3号、p.16-18
【非特許文献2】プレス、テューコスキー、ベッタリング、フラナリ(W.H.Press, S.A. Teukosky, W.T. Vetterling and B.P. Flannery)著、「C言語による数値計算のレシピ:科学計算の技術」(Numerical Recipes in C:The Art of Scientific Computing)、第2版、ケンブリッジ大学出版会(Cambridge University Press)(英国)、1992年
【課題を解決するための手段】
【0007】
1つの特徴に従えば、本発明は非平面的試料の調査方法を提供する。この方法は以下の工程を有する:
非平面的試料に照射する少なくとも1つの放射体を提供する工程;
複数の点の各々に対して所定の、前記放射体のうちの1つの位置は保持しながら、試料の非平面的表面の複数の点に、25GHzから100THzの範囲の少なくとも1つの周波数の光を照射する工程;及び
試料を透過する及び/又は試料の複数の点から反射される光を検出する工程。
【0008】
本発明のこの特徴は、非平面的対象物たとえば(製薬)錠剤のようなものを正確に調査すること及び、必要があれば画像化することを可能にする。特に、本発明は1つ以上の表面層又は錠剤のコーティングの調査、たとえば1つ以上のコーティングが設計通りになっているのかを確かめることなど、ことを可能にする。
【0009】
1つ以上の放射体を試料上の各点で所定の場所に保持しておくことで、試料表面の2次元以上の行路を生じさせることができ、非平面的試料の調査が可能になる。従って、この特徴はTHz光の使用と組み合わせることによって1つ以上の表面層の分析を可能にする。
【0010】
検出された光は試料の1つ以上の表面層の特性又は試料の1つ以上の表面の形状を決定するために分析されることが可能である。決定された特性は試料の1つ以上の表面層の厚さに関連付けることが可能である。
【0011】
本発明のこの特徴はさらに検出された光を用いた試料の1つ以上の表面層の画像生成を有することが好ましい。また、所定の距離は放射体の焦点距離に対応することが好ましい。
また、所定の位置とは、以下(のような性質)を有することが好ましい:
a)試料上のある点と放射体との所定の距離;及び
b)所定の試料の点への入射角度での放射体の照射軸(方向)。
この点では、照射軸は試料表面入射の基本方向としてよい。照射軸は試料上の点への法線入射方向にすることが可能である。放射体がプローブの先に内蔵されている場合、プローブの先の長手方向に照射軸が対応することが可能である。又は、放射体がプローブの先にある場合、プローブの長手方向の軸は法線入射の点と交差するが、照射軸は厳密にプローブ軸と平行にはならないだろう。そのかわり、そのようなシステムはいわゆる"法線入射に近い”システムで、放射されたビームと反射されたビームは空間的に分離される。
【0012】
放射体及び/又は試料は、放射体が試料に対して最初の軌道に沿って動くように動くことが好ましい。その際、複数の点は最初の軌道上にあるものとする。さらに放射体は最初の位置からある角度で再配置されることが可能である。その際、その角度は第2の軌道上に位置する。第2の軌道は第1の軌道がつくる面と垂直な面内にある;動作及び照射する工程は第1の軌道と平行な第3の軌道に沿って繰り返される;そして試料を透過する及び/又は試料から反射する光は第3の軌道に沿ったもうひとつの複数の点で検出される。付加的な検出測定を行うため、放射体の再配置は第2の軌道に沿ってある角度の範囲で繰り返すことが可能である。
【0013】
別な特徴に従うと、本発明は非平面的表面を持つ試料を調査するための装置を提供する。その装置は以下を有する:
試料表面の複数の点において25GHzから100THzの範囲で少なくとも1つの周波数を持つ光を試料に照射するための少なくとも1つの放射体;及び
試料上の複数の点において試料を透過する及び/又は試料から反射される光を検出するための検出器;
前記放射体のうちの1つは試料の非平面的表面上の点に対して所定の位置を保持し、所定の位置は複数の点の各々に対して保持されるという特徴。
【0014】
装置はさらに複数の点が最初の軌道上にあるように最初の点から放射体が試料に対して最初の軌道に沿って動くことが可能になるように、放射体及び/又は試料を動かす方法を有することが好ましい。この動かす方法にはロボットアームを有することも可能である。ロボットアームは少なくとも3軸の並進運動と2軸の回転運動が可能な5軸の運動系であることが可能である。
【0015】
また、少なくとも1つの放射体の各々はファイバーと結合したプローブの先端部内に内蔵されているのが好ましい。プローブはGB 2371618のタイプを使うことが可能である。これらのプローブは固定する、又はロボットアームに取り付けることが可能である。プローブ先端部が固定されている場合、製造環境中のベルトコンベアなどを用いて1つ又は複数のプローブ先端部を試料に対して動かす方法が提供されるであろう。
【0016】
さらなる特徴に従うと、本発明は以下の工程を有する非平面的試料の調査方法を提供する:
試料表面上の最初の位置から所定の距離に走査手段を合わせる工程;
走査手段及び/又は試料を、走査手段が最初の位置から最初の軌道に沿って試料に対して動くことが可能になるように動かす工程;
25GHzから100THzまでの範囲で複数の周波数を持つ光を最初の軌道に沿って試料に照射する工程;及び
その軌道に沿った複数の位置での反射及び/又は透過測定を行う工程。
【0017】
もうひとつの方法として、複数の放射体を非平面状試料上のいくつかの異なる点に対し、所定の位置にその各々を置いておくことが可能である。
【0018】
本発明のこれらの特徴は、赤外及び25GHzから100THzまでの範囲のテラヘルツ周波数の光を利用する。この種類の断層撮影法技術では、そのような光のすべて、特に25GHzから100THzまでの範囲で、もっと特定すると、50GHzから84THzの範囲で、特に100GHzから50THzの範囲の周波数を持つ光を、便宜上THz光と呼ぶことに注意されたい。
【実施例】
【0019】
ここで本発明を添付された図を参照して説明することにする:
テラヘルツパルス画像化は対象物の内部組成の非破壊分析、他の一般的な面の画像化及び分子組成の分光学的分析に有用な撮画方法であることを示した。しかし、高い空間分解能と焦点深度の要求とは相反するため、非平面的対象物の画像化目的にはTHz光を用いた画像化は問題がある。
【0020】
より詳細には、典型的なTHz画像化システムにおいて、THz光の低い光学F値(大きな開口数と等価)は大抵の場合、THz光入射方向に垂直な面内での空間分解能を最大にするように選ばれる。しかし、その系の低いF値は結果として系の面焦点を非常に限られたものにしてしまう。よって、非平面対象物表面の外形はTHzの被写体深度が許容できる領域よりも広いため、非平面対象物の表面を画像にするのは難しい。
【0021】
さらに、曲率の大きい、又は非平面的表面はTHz光検出系から離れたところに入射THz光を反射させる傾向があり、その結果反射されたTHz信号は小さい、又は無視されるものとなる。
【0022】
本発明の実施例はこれらの問題を解決することが可能であり、図1に示された本発明の1つの実施例に従った装置は丸みを帯びた(製薬)錠剤のような非平面的対象物のTHz光による走査に用いることが可能である。
【0023】
図1の装置は超短パルスレーザー11を有する。レーザー11は、たとえばTi:サファイア、Yb:Erをドープしたファイバ、Cr:LiSAF、Yb:シリカ、Nd:YLF、Nd:ガラス、Nd:YAG又はアレクサンドライトレーザーであってよい。このレーザー11は光13、たとえばパルスの平行にそろえられた(collimated)ビーム、を放出する。各々のパルスの平行にそろえられたビームは複数の周波数を有する。このパルスは第1のミラー15と第2のミラー17で反射されて、ビームスプリッタ32に入射する。ビームスプリッタはビームを試料の照射に用いられるポンプパルス12と検出中に用いられるプローブパルス14とに分ける。
【0024】
ポンプパルス12は最初の走査遅延ライン16に向かう。走査遅延ライン16は静的な遅延、又はステップ走査である。これはポンプビームとプローブビームとの間の相対的な光路長を調整する。最初の走査遅延ラインからのポンプパルスの出力はミラー18,19,40及び41によってレンズ20に向かう。レンズ20は近赤外光を用いる場合は非球面レンズであることが好ましい。レンズ20はポンプパルスを光源21に集光する。光源21は周波数変換部分と蝶ネクタイ構造の放射体を有することが好ましい。周波数変換部分は入力の周波数の違い、いわゆる差周波発生による光を出力するために、入射光を混合させるようになっている。この技術については、特許文献1に詳細が記述されている。
【0025】
光源すなわち放射体21は超半球レンズ35に接している。放射体21から出力されるテラヘルツビームは第1のシリコン製超半球レンズ35によって最初の放物面状ミラー25の方向へ向かう。ビームはそこで最初の放物面状ミラー25に反射され、第2の放物面状ミラー26へ進む。放物面状ミラー26は光を試料30に向かわせる。最終的な(測定)結果から装置によるデータのエラーを取り除くため、試料は参照試料に置き換えることが可能である。試料30から反射された光は第3の放物面状ミラー27で反射されて、第4の放物面状ミラー28へ向かい、放物面状ミラー28は、反射光を第2の超半球レンズ36及びたとえば光伝導検出器のような検出器29へ導く。試料によって反射されたテラヘルツビームはプローブパルス14と受光器29のところで再結合する。
【0026】
テラヘルツビームと再結合する前に、プローブビーム14は、ミラー42によって第2の走査遅延ライン22に向かう。この遅延ラインは高速走査型で、この最も単純な形式は、180度でビームを反射する2つのミラーを有する。これらのミラーはプローブパルス14の光路長を変化させるために、すばやく前後に水平に動く。又は、ポンプビームとプローブビームとの相対光路長が一致しうると仮定すれば、遅延ラインの各種位置は問題にはならないので、第2の遅延ラインを静的なラインに、第1の遅延ラインを走査遅延ラインにすることは可能であろう。
【0027】
プローブビーム14の第2の走査遅延ライン22からの出力は第1のプローブビームミラー23によって反射され、第2のプローブビームミラー24に向かう。ミラー24はプローブビームをレンズ31に通す。レンズ31は近赤外ビームを集光するのに用いる場合は非球面レンズである。このレンズ31は反射されたテラヘルツビームと結合させるために、プローブビームを受光器29に集光する。
【0028】
試料はテラヘルツパルスの光路中に時間遅延を導入する。遅延は吸収係数、屈折率及び試料の位置に依存する。検出信号を得るため、プローブビームの周波数成分はポンプビームの周波数成分と一致しなくてはならない。第1及び第2の走査遅延ラインのバリエーションはプローブビームの位相及び/又はポンプビームの位相がこれらのビームに対して水平に動くことを可能にしている。ゆえに、試料を透過する各周波数成分の遅延時間測定が可能になる。
【0029】
装置が平行にそろえられたパルスビームのようなパルスとの関連で説明される一方で、本発明は連続波(CW)出力源を用いた実装も可能であることは評価されるべきことである。連続波発生は特許文献2に詳細が記述されている。
【0030】
THz放射体21、テラヘルツ受光器、超半球レンズ35,36及び放物面状のミラー25,26,27,28は光ファイバーによって供給されるプローブ先端部に設置することが可能である。この配置では、光ファイバーはポンプ及びプローブパルス12,14はプローブ先端部に運ばれる。光ファイバーの出力において、プローブ先端部のレンズ20はポンプパルスを、31はプローブパルスをそれぞれ受け取り、ポンプパルスを放射体21で、プローブパルスを受光器29でそれぞれ集光する。
【0031】
図1の装置では、試料は並進する台33に置かれる。本発明の実施例では、台は3軸の並進運動と2軸の回転運動の座標を持つ。この方法では、対象物の位置は、走査の過程で、プローブ先端部は所定の距離と、対象物表面に対する法線入射を保持しながら操作することが可能である。この所定の距離はTHz光の焦点距離に等しいものでなくてはならない。従って、対象物表面は追跡記録され、錠剤表面での屈折によるTHz光信号のゆがみは避けられる。それゆえ、対象物の層又は外の層を調査するときに、より高い精度での測定が可能になる。
【0032】
試料が台33上にあるとき、試料の領域の中には、支持点の設計上、プローブ先端部に近づけない領域が出てくるだろう。よって、この配置では一度の走査で対象物のすべてを走査することができない。対象物の全領域を走査するため、対象物は最初の走査後、近づけない領域を露光し、これらの領域を走査して、これらのデータセットを取得完了できるように再配置される必要がある。もし、しかし、対象物のほとんどすべてを一度の走査で行うことが必要な場合、1つのアプローチは真空ピンセット又は他のそのような試料をつかむ機構を用いることである。これはテラヘルツ走査先端部に近づけない領域を露出させることが可能になるだろう。ただ真空ピンセットのような試料をつかまえる機構を用いたときでさえも、ほんの小さな近づけない領域はどうしても残ってしまうだろう。
【0033】
よって、5軸運動系を用いるこのアプローチで、THz焦点スポットは固定された場所に保持され、運動系は焦点に対して対象物を並進及び、回転させるために用いられる。走査を行うため、ユーザーは回転軸同様、x,y,z座標軸のすべて/いずれかの上限と下限について、関心領域の境界を近似することが可能になる。又は、プローブ先端部が動ける最大範囲に基づくなどのデフォルトの限界を利用することが可能である。
【0034】
他の実施例に従うと、走査先端部は、台33に加えて、又は台33のかわりに運動能力を与えられている。図2を参照すると、THzプローブ先端部50は不規則な形状又は非平面状表面を持つ対象物51に隣接するように描かれている。テラヘルツビームは光ファイバーによってプローブ先端部50に分配される。対象物に対するプローブ先端部50の軌道は破線にて示されている。この軌道はプローブ先端部を対象物表面からの一定距離及び対象物表面に垂直な方向を保持している。
【0035】
ファイバー結合したテラヘルツ装置ではテラヘルツ波及び/又は検出器を自由に配置することが許されている、その一方で近赤外光学部品は固定されたままになっている。この点で、テラヘルツパルスから近赤外光パルス/近赤外パルスからテラヘルツパルス、へ変換するための装置は小型であり、典型的には数センチの次元で、それゆえに妥当なサイズで可変のプローブ先端部に組み込むことが可能である。
【0036】
従って、本発明の実施例においては、プローブ先端部は関心ある対象物に対して自由にその位置を変えることができる。プローブ先端部は並進運動の3軸と回転運動の2軸とを持つ。従って、対象物の表面形状がわかっている場合、プローブ先端部は、対象物表面に対する一定の距離及び法線方向を保持したまま、対象物を横断することができる。この配置はそれゆえに対象物の表面が丸みを帯びているという問題を解決することが可能である。
【0037】
この自由にプローブ先端部の位置を変えることができる能力を実現するため、図11に図示しているように、ロボットアームを利用することが可能である。そのようなロボットアームは走査される対象物の周りをTHz光による点状プローブを自動操作するのに適しているだろう。
【0038】
さらなる代替方法はプローブ先端部19及び台33が動くようにすることである。たとえば、プローブ先端部は並進可能に、台は回転可能になるなどが可能であろう。カギとなる点は、プローブ先端部が試料表面に対して法線方向にあり、そして所定の距離を保持するように台とプローブ先端部の間で相対運動をすることである。
【0039】
プローブ先端部が試料表面に対して法線方向にあり、そして所定の距離を保持するようにするためには、システムは対象物の表面形状に関する知識を持っている必要がある。これはあらかじめ決めておき、走査システムにつながっているメモリに保存しておくことが可能である。本発明が生産ラインからの錠剤のサンプルのような同じ種類の対象物の画像化に用いられる場合、この方法は便利である。
【0040】
従って、本発明の別な実施例は、表面形状を決定するために対象物を走査するための技術に関する。この技術は対象物の表面層、特に閉じられた表面物質の画像化に使用することが可能である。
【0041】
閉じられた表面とは、球や楕円のように、それ自身を包み込んでしまうような表面のことである。閉じられた表面形状を持つ対象物は製薬錠剤や丸薬(pill)を含む。閉じられた表面は、r=F(θ,Φ)、で表すのが最もよい。ここでrは対象物内部から表面上のある位置Rへのベクトル、θ,Φは位置の角度座標である。
【0042】
この点で、図3を参照すると、デカルト座標(x,y,z)は原点を(0,0,0)とした位置Rと合わせて図示されている。Φはベクトルr(原点から位置Rまで)とデカルト座標軸の1つ、この場合はz軸、とのなす角である。角度座標θはベクトルrに対するxy平面状での回転角である。同様に、2次元での表現に適用可能な極座標を図2に示す。ベクトルrは原点(つまり、(0,0,0)から対象物表面上のある位置)、そしてθはベクトルrとデカルト座標軸の1つとのなす角である。
【0043】
閉じられた表面形状が決定されているとき、表面の限界は角度座標θ及びΦの限界で特定されるだろう。
【0044】
座標原点のおおよその位置は特定される必要がある。原点は試料体積内部に位置しなくてはならない。操作する人はそれを特定することができる。この原点の厳密な場所というのは決定的ではないが、体積中の中心に近いことが望ましい。
【0045】
空間分解能、ΔLは特定されなければならない。これは求められるおおよその空間分解能に対応する(たとえば50μm)。図8を参照すると、空間分解能はθ走査中の連続する点間のおおよその距離で視覚的に示唆される。
【0046】
閉じられた表面の全領域を走査するため、θは0から2π、そしてΦは0からπまで測定されなくてはならない。表面上の初期化された点、又は”開始点”で始まる”既知の領域”を連続的に拡大することで実現される。走査の開始点は走査が開始される試料表面上の点を表す。また、”開始方向”とは、開始点において試料表面に垂直な方向を表す。この反復過程は一般的には図4に図示されたようなものである。つまり、図4は閉じられた表面の一部を投影したものを表している。THz走査は開始点から、対象物の境界を周る破線の軌道で示されているように行われる。最初の走査の結果は開始点の外にある最初の暗い輪郭で示されている。この領域は対象物表面がどのような形状をしているのかという最初の示唆を与える。これが最初の反復後、事実上の”既知の表面”ということになる。”既知の表面”の領域はすべての閉じられた表面がわかるまでΦの値を増加させながら対象物周辺を繰り返し走査させることで拡大することが可能である。
【0047】
この反復走査手順を行う前、プローブ先端部は初期化されている。この初期化には、試料表面の点に焦点を合わせるような位置にすること、THz信号及びバンド幅(帯域幅)が最大になるように法線入射を最適化することが含まれる。初期化が効果を持つようにΦ=0の位置に設定される。これは手動で行うことも自動で行うことも可能である。
【0048】
図5は、最初の走査位置にプローブを合わせるための一般的な手順を図示している。プローブ先端部50の位置は所定の原点Oからプローブ先端部上のデータPへのベクトルpで表される。原点Oは任意に選ぶことが可能である。位置ベクトルpは機械的走査システム(図示していない)の状態によって決定される。そのような走査システムはいくつかの並進及び/又は回転ユニットを有する。各々のユニットはその現在位置に関する情報を保持する。全領域のベクトルpは従って走査システムの各部分から得られる位置ベクトルの総和から決定される。
【0049】
THzビーム及びTHz光を集める光学系の焦点距離Fは、走査するプローブ先端部に対して既知の位置である。プローブ先端部上のデータPと焦点Fとの間のベクトルは図5でfとなっている。よって、THz焦点の全領域の位置はベクトルpとfの和になる。原点Oに対するTHz光の焦点Fの位置はいつでもわかっているということになる。
【0050】
対象物表面の最初の走査を行う前に、開始点でプローブ先端部を整合させるために、THz光の焦点Fが対象物表面上の点と一致するようにする。また、プローブ先端部の方向は焦点Fにおいて、対象物表面の法線方向に対応するように調整されなくてはならない。ずれ及び、焦点Fと対象物表面との間の角度の不整合(angular misalignment)の発生が予想されるが、最初からそのような条件に出会うことは考えにくい。
【0051】
Fの対象物表面からのずれは図5においてδで表される。一方角度の不整合はΨで表される。δ及びΨの最小化はユーザーが手動にて行うことも、また自動化された過程で行うことも可能である。
【0052】
手動の最小化は0.1Hzより大きい周波数での高速走査の遅延ラインを走査する間に取得されるTHz波形と参照波形との実時間表示での比較を含む。参照波形は焦点Fにミラー又は他の高い屈折率を持つ平面状の対象物を置くことで得られる。その際、ベクトルfに沿ったTHzプローブ先端部軸がミラー表面と垂直になるようにする。
【0053】
図6を参照すると、下側の破線でTHz波形の形が、上側の実線で参照波形が図示されている。これらのトレースは分かりやすくするためにオフセットしている。y軸は受光器の出力で、x軸の単位は、ずれ又は時間遅延のいずれとみなすことも可能である。
【0054】
また、THz光の焦点位置と対象物表面とのずれδは図6で示されている。δは2つの波形の最大ピーク間の距離である。観察されたTHz波形は参照パルスよりも振幅及びバンド幅が小さい(つまりバンド幅は広がっている)。このTHz波形は十分に整合されていない状態であることを表している。
【0055】
最適な整合条件において、対象物表面から得られるTHz波形は参照波形と同じ光学遅延値でピーク(又は他の特徴)を持つだろう。最適に整合された(つまり、δ=0)プローブ先端部から得られた観測されたTHzパルスは図7に図示されている。観測されたパルスは参照試料のバンド幅と同程度のバンド幅を持ち(つまり、パルスは同様に’鋭い’)、ピークは同じ箇所に出てくる。また、観測されたパルスの振幅は対象物表面の反射率が小さくなることで減少している可能性がある。
【0056】
プローブ先端部の最適な方向は振幅と表面で反射されるTHz光のバンド幅を最大にするような先端部の方向の調整によって決まる。THz光の被写体深度の限界は有限のδにおいてTHz光のバンド幅の減少を引き起こす。ここでδは観測されるTHzパルスの広がりを表す。もし、対象物の表面反射率が参照データを得るために用いられたミラーよりも小さい場合は、THz光の波形の振幅は参照試料の波形振幅よりも小さい値をとることが可能である。ただ、対象物の表面反射率が参照データを得るために用いられたミラーよりも小さいという場合は一般的なことではない。
【0057】
対象物表面の反射率は周波数依存性がある。この依存性は参照試料(図示していない)との比較で、観測されたパルスのある程度の広がりを結果として起こしてしまうかもしれない。しかし、最大バンド幅の位置は依然としてδ=0の位置にあるだろう。
【0058】
プローブ先端部の最適な整合及び位置は交互に自動化可能である。自動化された手順では。δとΓBWの最小化及びAの最大化を同時に行うことが目的である。ここでΓBWは観測された波形のパルス幅(そしてTHzパルスバンド幅の逆数である)を表し、AはTHz波形の振幅を表す。そして3つすべてとも位置と方向の関数である。
【0059】
つまり、δ(x,y,z,θ,Φ),A(x,y,z,θ,Φ),ΓBW (x,y,z,θ,Φ)である。ここで、x,yそしてzはプローブ先端部の位置を表す座標で、θとΦはプローブ先端部の方向を特定する角度座標である。ΓBWの最小値はΨ=0の条件に対応する。これらの関数の最小/最大値は周知の反復的探索アルゴリズムを用いることで見つけることが可能である。たとえば、非特許文献2を参照のこと。
【0060】
一旦整合されると、プローブ先端部はTHz光を試料へ向かわせ、THz波形は記録される。Φ=0での表面上の既知の焦点及び原点に基づいて、原点から表面の場所までの距離r0はこの波形から計算して求めることが可能である。図4を参照すると、過程のこの部分は開始点に関係するすべてのパラメータを本質的に決定する。
【0061】
最初の表面の位置が分かっている場合、他の表面の位置も決定することが可能である。この点では、焦点距離r0を固定したままにして、プローブは新しいファイの値Φ1を得るために、現在の値ΦにΔΦ0分だけ増えるようにプローブを動かす:
Φ1=Φ0+ΔΦ0=Φ0+(ΔL/r0) (1)
よって、増分は求められる空間分解能に依存する。だから、高い空間分解能が要求されるところでは、ΔΦ0は小さくなるしかない。先述の式はΔΦiの値を選ぶ上での唯一のガイドになるだろう。試料の法線方向と位置ベクトルrとの大きなずれが予想されるような場合、正確さを向上させるため小さなΔΦiを選ぶことが可能である。
【0062】
この新しい位置で、ファイの値Φ1及びrを固定したままにすると、プローブは新しいΦの値で、軌道から外れた非線形のライン走査を行う。再度図4を参照すると、破線は走査先端部の軌道を表し、開始点を囲む最初の黒い輪は対象物表面上の位置を表す。その位置に走査先端部は新しいファイの値で照射するだろう。
【0063】
軌道はθの値を0から2πの範囲をn刻みで増加させることで決定される。ここで、nは以下で与えられる:
n=2πrsin(Φ)/ΔL (2)
そしてnは切り上げて最も近い整数にする。従って、nもまた要求される空間分解能に依存する。高い空間分解能が要求されるところでは、測定回数は多くなるだろう。刻み数nは各々のΦの値によって変化するだろう。この方程式は要求されるθの刻み数を選ぶための簡単なガイドである。正確さを向上させるために大きな刻み数を選ぶことが可能である。
【0064】
もしnがこの方法で6未満となった場合、妥当な程度の分解能(たとえば小さなΦ)を保持したまま6に切り上げなければならない。6という数字を、表面の法線を計算するための開始点のまわりにある都合のよい数の点を与えるために任意に選ぶことができるということは便利なことである。
【0065】
このライン走査過程はθの軌道にわたって一連のTHz波形を取得することを含む。つまり、THz波形は軌道に従って、n個の並んだ位置の各々について決定されるだろう。ライン走査の間、プローブ先端部と原点との間の距離はΦ0の点で決められた点で固定されたままになっている。
【0066】
ライン走査が終わり、結果は走査された実際の表面位置を計算するのに用いることができる。よって、推定された値を結果に置き換える。表面位置及び方向の推定された値はΦ0の点で決められた値であることも可能だし、また先に行われたライン走査で見つけられた最近接の補間に基づいて計算することも可能である。
【0067】
ゆえに、Φ1での表面位置で得られたTHz波形及びΦ0でのこれまでの表面位置についての情報を用いて、n個の位置の各々についてr1を決定することが可能である。ここで、r1は表面の点と”元の”位置との実際の距離である。
【0068】
個別の点の測定が行われた後、実際の表面位置は、1)推定された位置、そして2) THz光焦点Fと対象物表面との観測された距離から計算することが可能である。それは表面の法線ベクトルを計算するために用いられる一連の”既知の”点である。
【0069】
各々の表面位置の法線(つまり、表面に垂直なベクトル)は、先のライン走査での測定点から計算される必要がある。
【0070】
最も新たに取得された点の表面法線ベクトルの計算は、現在の点と周りの点との間の距離で定義されるベクトルを用いられる。これは図8に示されている。最後に取得した点はこの図ではPとなっている。Pから最近接の既知の点(つまり、実際の点)への変換を表す3つのベクトルは、p1,p2,p3で示されている。これらのベクトルのうちどれか2つは、それらの外積(ベクトル積としても知られている)を計算することで法線ベクトルを計算するのに用いることができる。つまり:
n1=p1Λp2/|p1||p2|
n2=p2Λp3/|p2||p3|
n3=p1Λp3/|p1||p3|
noverall=(n1+n2+n3)/3
測定点全域にわたる法線ベクトルは、最近接点へのベクトル同士の外積の様々な考えられる組み合わせの平均を取る。法線ベクトルは単位長さを持つ。
【0071】
表面の推定された位置は隣接点の”表面の法線ベクトル”を用いて計算される(又は、もし2点以上の最近接点が存在する場合は、これらの平均を用いる)。もし最後の測定点がrn,θn及びΦnで特定される場合、rn+1,θn+1及びΦn+1(たとえ各ライン走査の終了でΦの値が増加しても、定義により、Φの値は各ライン走査で一定に保持される)で与えられる次の点、は以下のように推定される。
θn+1=θn+Δθ=θn+(ΔL/r sinΦn)
【0072】
更新されたr座標のrn+1は次のように計算される:
nを最後の測定点(又は他の最近接点)の表面法線方向に沿って単位長さを持つベクトルで、rnを座標rn,θn及びΦnで記述されるベクトルとする。第2のベクトルr’nをrnと同じ大きさと定義する(つまり、|rn|=|r’n|)が、新たな角度座標は、θn+1及びΦn+1である。各q走査の終わりを除けば、大抵Φn+1=Φnである。
【0073】
・n+1番目の点の推定されるr座標、rn+1は以下で与えられる:
rn+1=rn[(n.rn)/(n.r’n)]=rn[(cosξn/cosξn+1)]
ここで、ドットは2つのベクトルのスカラー積を表す。ξnはnとrnとのなす角で、
ξn+1はnとrn+1とのなす角を表す。
【0074】
・n+1番目の点の推定される表面法線ベクトルはその点の1つ以上の最近接点の表面法線の平均となる。
【0075】
一旦、n+1番目の点の推定される表面法線ベクトル及び位置が計算されると、プローブ先端部はTHz光の焦点をこの場所に移すように動き、新たな位置の表面法線に沿った方向にプローブを保持する。THz波形はこの新たに推定された場所で取得される。
【0076】
既知の位置から大きく変わる領域では、THz信号はまったくなくなるだろう(つまり、非常に高い誤配向表面からのTHz反射は受光用の光学系にまったく反射されないだろう)。これらの領域では、THz信号が表面位置の有用な方法として小さすぎるところでは、より正確に決定された表面形状の隣接領域からの内挿/外挿に基づいて表面形状の最適な推定がなされる。
【0077】
従って、この方法で、対象物表面にわたっての走査は同時に表面を追跡記録しながら行われる。この点では、THz波形は試料表面からも試料内部からも反射された光の波形を表し、既知の表面位置に対する試料表面の違いを明確にする方法も提供する。
【0078】
再度図4を参照すると、ここではΦ1に対する対象物表面のn個の位置が決定しているが、開始点に対する領域、この領域はこれらn個の点で境界がつくられている、は外挿可能であり、従って”既知”である。
【0079】
一旦、ライン走査がΦ1で完了したら、(1)と同様の公式に従って、Φ1は増加する:
Φ2=Φ1+ΔΦ1=Φ1+(ΔL/r1) (3)
ΔΦ1の値は場合によっては、正確さを向上させるために小さい値が選ばれることが可能である。
【0080】
この新たなΦ2の位置から、θの軌道0から2πにわたってライン走査が行われる。図4を参照すると、走査先端部は破線の外形で表されているように、対象物と同じ軌道を動く。この新たなΦ2の位置で走査される試料上の表面の位置は開始点に対する第2のループに対応する。
【0081】
再度Φ2に対するn個の表面の位置が走査される。nの値は各Φの値において方程式(2)を用いて計算される。
【0082】
Φを増加させ、そして各々のΦの位置に関係する軌道に沿って対象物を走査するこの手順は図4に示されているように、試料の”既知の領域”を拡張させることを可能にする。ここで、各々の輪は異なるΦの位置に対して走査された位置を表す。このことは図8でもまた表現されている。ここでΦ0とは開始位置で、Φ0での最初の軌道はΦ1を決定するためである。Φ1は波形が得られるところで対象物表面上に6つの点を持つ。次の軌道はΦ2を決定するためである。Φ2は波形が得られるところで、対象物表面上に12個の点を持つ。というような具合で(n個の点は決まる)。
【0083】
この方法で、対象物の全表面領域をカバーするため、Φは全Φの範囲(0からπまで)にわたり、増加させることができる。又は、対象物の特定表面領域だけをカバーするため、Φは代わりに先に決められた走査範囲にわたり、増加させることができる。
【0084】
この手順は、表面形状と対象物表面層の構造/組成を同時に測定するために用いることが可能である。一旦、走査手順が終了すると、データは、対応する表面位置と表面法線ベクトル(これは、各表面位置の特定の方向を示唆する)とともに、一連のTHz波形の形式を持つ(各々は対象物表面上の特定の点に対応している)。
【0085】
対象物が錠剤の場合は、コーティング層の数、又はコーティング層の厚さといった錠剤コーティングの様々なパラメータはTHz波形から抽出可能だろう。この点で、(対象物)内部での反射は物質の界面を示唆すること、そして試料内の不均一性も示唆することが可能である。
【0086】
これらの値は測定された錠剤の形状から得られる錠剤表面のモデル上でプロットすることが可能である。これを図9に示す。ここではテラヘルツ波形が描かれており、錠剤断面での波形の特性の対応を示唆している。
【0087】
また、図10は図9で示したような走査測定を用いて得られた体積データセットを介した(錠剤の)薄片を表す。この体積データセットは、本発明が閉じられた対象物表面から異なる物質界面を抽出できることを示すために、左にある錠剤の外形と比較してある。
【0088】
さらに、図12は、錠剤100のコーティング構造のため、錠剤の体積を介した薄片として、図10の3次元データセットを図示している。体積データセットを介したこの薄片は断面図としても図で描かれている。像は横の位置に対して深さをプロットしたものであり、明らかに錠剤の物質界面が見える。つまり、像は外のコーティングの厚さと、また内部コーティングの厚さを示している。このように断面像を生成することで、そのような錠剤の品質を、たとえば錠剤は一貫したコーティングの厚さを持っていることを保証することで、制御することが可能となる。
【0089】
本発明は製造環境において実装可能である。この点では、図13を参照すれば、ファイバーで分配されたテラヘルツプローブを用いた例が図示されている。図の左側で、製造ラインの例が図示されている。ここでは、錠剤がベルトコンベアに沿って動くので、錠剤を画像化するのに、複数のプローブを固定された位置で利用する。この技術は従って”オンライン”過程である。”オンライン”過程で品質管理を行うため、複数の錠剤の所定の場所からの測定を行う。図の右側で、オフライン検査システムで、ロボットアームのマニピュレータに取り付けられた単一のプローブが図示されている。試料は試料ホルダに固定され、また、この例ではロボットアームは試料の調査と画像化を行うために6つの異なる座標についてプローブを動かす。
【0090】
変更及び追加は一般的な発明の概念の範囲内であれば可能である。本発明の実施例は発明の図示とみなされるべきであり、一般的な発明の概念に制限される必要はない。
【0091】
たとえば、極座標を用いた単一の走査技術は反復的過程として利用されることが可能である。一旦、表面位置やこれらの位置の表面法線が決定されたら、過程中、決まった表面位置及びそこに対する垂線から所定の距離を保持し、再走査する一方で、走査先端部はΦの位置についてしっかりと進んでゆくことができる。もし再走査の結果が、実際の表面構造と現在の推定との違いが所定の水準を下回っていることを示唆しているのであれば、表面形状の推定は妥当なものであり、データから得られた対象物表面/コーティング構造の特性は信頼可能なものである。しかし、もし、先の形状の推定と最後の走査の結果との間に重大な違いが明白になった場合(又は信頼できるTHz反射データのない表面領域が残る場合)、更新された形状の推定を用いて走査手順を繰り返すことになるだろう。この反復的走査手順は形状の推定が十分に正確とみなせるまで繰り返すことが可能である。換言すれば、表面形状のより精緻化された推定を、さらなる走査を試料表面にわたって行うことで得ることが可能である。その際、THzプローブ先端部は先に得られた結果のように表面形状を追跡記録する。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】本発明の実施例に従った、テラヘルツ画像システムの概略図である。
【図2】本発明の実施例に従った、非均一の対象物の周りを走査するテラヘルツプローブの概略図である。
【図3】標準的x,y,z軸上の極座標を表す。
【図4】表面形状及び、本発明の実施例に従った走査技術を用いた場合に一般的に表面形状がどのように拡張してゆくのかを表す概略図である。
【図5】最初の走査箇所へのプローブの整列を含むベクトルを表す概略図である。
【図6】放射体が最適な状態でそろっていないときの、参照波形に対して比較される初期化されるテラヘルツ波形の概略図である。
【図7】放射体が最適な状態で整合されているときの、参照波形に対して比較される初期化されるテラヘルツ波形の概略図である。
【図8】最初の点について異なるΦについて3つのθ走査の測定手続きと法線ベクトルの計算に用いられるベクトル表す概略的である。
【図9】本発明を用いて得られたテラヘルツ波形を表し、錠剤の断面に対する波形中に、対応する特性があることを示唆している。
【図10】異なる物質の界面を示すため、体積のデータセットの右側を通した薄片を錠剤の概形と比較して表している概略図である。
【図11】本発明の実施例に従った対象物の周りのテラヘルツプローブ先端部の自動化された操作に適したロボットアームを表す概略図である。
【図12】本発明の実施例に従って画像化された錠剤のコーティング構造の3次元データセットを表す灰略図である。図はまた、コーティングの断面を示すためにプロットされた体積データセットを通した薄片も示している。
【図13】ファイバーによって供給されるテラヘルツプローブの例で、生産ラインでのロボットアームによるマニピュレータ(左側)と、また生産ラインから外れたところでの検査システム(右側)を表す概略図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
非平面的試料を調査する方法であって:
非平面的試料を照射するための少なくとも1つの放射体を提供する工程;
複数の点の各々について、試料上の点に対して、前記放射体のうちの1つの所定の位置は保持しながら、試料の非平面的表面上の複数の点において25GHzから100THzまでの範囲の少なくとも1つの周波数を持つ光を照射する工程;及び
複数の点で、試料を透過する及び/又は試料から反射される光を検出する工程;
を有する方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、さらに前記試料の1つ以上の表面層の特性を決定するために前記検出された光を解析する方法。
【請求項3】
請求項2に記載の方法であって、前記決定された特性が試料の1つ以上の表面層の厚さに関することを特徴とする方法。
【請求項4】
上記請求項のいずれかの請求項に記載された方法であって、1つ以上の表面層の形状を決定するために前記検出した光を解析する方法。
【請求項5】
上記請求項のいずれかの請求項に記載された方法であって、前記検出された光を用いて試料の1つ以上の表面層の像を生成する方法。
【請求項6】
上記請求項のいずれかの請求項に記載された方法であって、所定の位置が:
前記試料上の点と放射体との所定の距離;及び
前記試料上の前記点に入射した、所定の角度における前記放射体の照射軸;
であることを特徴とする方法。
【請求項7】
上記請求項のいずれかの請求項に記載された方法であって、
前記放射体及び/又は試料を、前記放射体が最初の点から前記複数の点が上に存在する最初の軌道に沿って、試料に対して動くことが可能なように動かす
ことを有する方法。
【請求項8】
請求項7に記載の方法であって:
最初の位置に対する最初の軌道の平面に垂直な面内にある第2の軌道上に存在するある角度に前記放射体を再配置する工程;
前記最初の軌道に平行な第3の軌道に対して移動と照射の工程を繰り返す工程;及び
前記第3の軌道に従って第2の複数の点で試料を透過する及び/又は試料から反射される光を検出する工程;
を有する方法。
【請求項9】
請求項8に記載の方法であって、さらに付加的な測定技術を行うために、第2の軌道に沿った角度の範囲に沿って前記放射体の再配置を繰り返す方法。
【請求項10】
上記請求項のいずれかの請求項に記載された方法であって、前記検出された光を用いて試料の1つ以上の表面を表す像を形成する方法。
【請求項11】
上記請求項のいずれかの請求項に記載された方法であって、前記所定の距離が前記放射体の焦点距離に対応することを特徴とする方法。
【請求項12】
上記請求項のいずれかの請求項に記載された方法の使用であって、製薬試料の1つ以上の表面層を評価するための方法の使用。
【請求項13】
請求項12に記載の前記方法の使用であって、1つ以上の表面層が製薬試料のコーティングを含むことを特徴とする方法の使用。
【請求項14】
非平面的表面を有する試料を調査するための装置であって:
前記試料の表面上の複数の点に25GHzから100THzの範囲の少なくとも1つの周波数を持つ光を照射するために、前記試料の非平面的表面上の点に対して所定の位置を保持し、前記所定の位置は前記複数の点の各々に対して保持しようとする少なくとも1つの放射体;及び、
前記試料上の前記複数の点で、前記試料を透過する及び/又は前記試料から反射される光を検出するための検出器
を有する装置。
【請求項15】
請求項14に記載の装置であって、さらに前記最初の点から前記複数の点が属する最初の軌道に沿って前記試料に対して前記放射体が動くことができるように前記放射体及び/又は前記試料を動かす方法を有する装置。
【請求項16】
請求項15に記載の装置の装置であって、動かすための前記方法がロボットアームを有する装置。
【請求項17】
請求項16に記載の装置の装置であって、前記ロボットアームが少なくとも5軸の運動系を有する装置。
【請求項18】
請求項14から17のうちいずれかの請求項に記載された装置であって、前記放射体がファイバー結合されたプローブ先端部に内蔵されていることを特徴とする装置。
【請求項19】
請求項14に記載の装置であって、前記試料の前記非平面的表面上の異なる点に対して前記所定の位置にある複数の固定された放射体を有する装置。
【請求項1】
非平面的試料を調査する方法であって:
非平面的試料を照射するための少なくとも1つの放射体を提供する工程;
複数の点の各々について、試料上の点に対して、前記放射体のうちの1つの所定の位置は保持しながら、試料の非平面的表面上の複数の点において25GHzから100THzまでの範囲の少なくとも1つの周波数を持つ光を照射する工程;及び
複数の点で、試料を透過する及び/又は試料から反射される光を検出する工程;
を有する方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、さらに前記試料の1つ以上の表面層の特性を決定するために前記検出された光を解析する方法。
【請求項3】
請求項2に記載の方法であって、前記決定された特性が試料の1つ以上の表面層の厚さに関することを特徴とする方法。
【請求項4】
上記請求項のいずれかの請求項に記載された方法であって、1つ以上の表面層の形状を決定するために前記検出した光を解析する方法。
【請求項5】
上記請求項のいずれかの請求項に記載された方法であって、前記検出された光を用いて試料の1つ以上の表面層の像を生成する方法。
【請求項6】
上記請求項のいずれかの請求項に記載された方法であって、所定の位置が:
前記試料上の点と放射体との所定の距離;及び
前記試料上の前記点に入射した、所定の角度における前記放射体の照射軸;
であることを特徴とする方法。
【請求項7】
上記請求項のいずれかの請求項に記載された方法であって、
前記放射体及び/又は試料を、前記放射体が最初の点から前記複数の点が上に存在する最初の軌道に沿って、試料に対して動くことが可能なように動かす
ことを有する方法。
【請求項8】
請求項7に記載の方法であって:
最初の位置に対する最初の軌道の平面に垂直な面内にある第2の軌道上に存在するある角度に前記放射体を再配置する工程;
前記最初の軌道に平行な第3の軌道に対して移動と照射の工程を繰り返す工程;及び
前記第3の軌道に従って第2の複数の点で試料を透過する及び/又は試料から反射される光を検出する工程;
を有する方法。
【請求項9】
請求項8に記載の方法であって、さらに付加的な測定技術を行うために、第2の軌道に沿った角度の範囲に沿って前記放射体の再配置を繰り返す方法。
【請求項10】
上記請求項のいずれかの請求項に記載された方法であって、前記検出された光を用いて試料の1つ以上の表面を表す像を形成する方法。
【請求項11】
上記請求項のいずれかの請求項に記載された方法であって、前記所定の距離が前記放射体の焦点距離に対応することを特徴とする方法。
【請求項12】
上記請求項のいずれかの請求項に記載された方法の使用であって、製薬試料の1つ以上の表面層を評価するための方法の使用。
【請求項13】
請求項12に記載の前記方法の使用であって、1つ以上の表面層が製薬試料のコーティングを含むことを特徴とする方法の使用。
【請求項14】
非平面的表面を有する試料を調査するための装置であって:
前記試料の表面上の複数の点に25GHzから100THzの範囲の少なくとも1つの周波数を持つ光を照射するために、前記試料の非平面的表面上の点に対して所定の位置を保持し、前記所定の位置は前記複数の点の各々に対して保持しようとする少なくとも1つの放射体;及び、
前記試料上の前記複数の点で、前記試料を透過する及び/又は前記試料から反射される光を検出するための検出器
を有する装置。
【請求項15】
請求項14に記載の装置であって、さらに前記最初の点から前記複数の点が属する最初の軌道に沿って前記試料に対して前記放射体が動くことができるように前記放射体及び/又は前記試料を動かす方法を有する装置。
【請求項16】
請求項15に記載の装置の装置であって、動かすための前記方法がロボットアームを有する装置。
【請求項17】
請求項16に記載の装置の装置であって、前記ロボットアームが少なくとも5軸の運動系を有する装置。
【請求項18】
請求項14から17のうちいずれかの請求項に記載された装置であって、前記放射体がファイバー結合されたプローブ先端部に内蔵されていることを特徴とする装置。
【請求項19】
請求項14に記載の装置であって、前記試料の前記非平面的表面上の異なる点に対して前記所定の位置にある複数の固定された放射体を有する装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公表番号】特表2007−503582(P2007−503582A)
【公表日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−524424(P2006−524424)
【出願日】平成16年8月27日(2004.8.27)
【国際出願番号】PCT/GB2004/003685
【国際公開番号】WO2005/022130
【国際公開日】平成17年3月10日(2005.3.10)
【出願人】(505078870)テラビュー リミテッド (6)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年8月27日(2004.8.27)
【国際出願番号】PCT/GB2004/003685
【国際公開番号】WO2005/022130
【国際公開日】平成17年3月10日(2005.3.10)
【出願人】(505078870)テラビュー リミテッド (6)
【Fターム(参考)】
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