説明

飲酒運転防止装置

【課題】車両の走行を抑止する制御の解除が適切なタイミングで可能となるようにした上で飲酒運転を確実に防止する飲酒運転防止装置を提供する。
【解決手段】ドライバーの飲酒状態が飲酒状態判断部12により検知された場合に車両の走行を抑止する制御を行う車両制御部13を備えて当該ドライバーによる当該車両の飲酒運転を防止する飲酒運転防止装置1であって、緊急事態の発生を検出する緊急信号受信機14と、ドライバーの飲酒状態が検知され、且つ、緊急信号受信機14により緊急事態の発生が検出された場合に、車両制御部13による制御を解除させることを可能にする車両制御解除機構部16と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転者の飲酒状態が検知された場合に車両の走行を抑止する制御を行う制御手段を備えて、当該運転者による当該車両の飲酒運転を防止する飲酒運転防止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、飲酒運転を防止するために、アルコールインターロックシステムなどの飲酒運転防止装置が知られている。例えば、特許文献1には、アルコール濃度が所定値以上か否かを判断して、所定濃度以上であれば自動車を発進不能とする制御を行う技術が開示されている。ここで、アルコール濃度が所定値以上であっても自動車を発進可能とする(即ち、発進不能とする制御を解除する)解除スイッチが設けられており、傷病者の緊急治療のためにやむなく飲酒運転することが必要な緊急事態の場合等において、運転者は解除スイッチを作動させ、自動車を発進させて運転することが可能となる。
【特許文献1】特開2007−106277号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1に記載の技術では、運転者が解除スイッチを作動させる操作に対する制限に関してはなんら考慮されておらず、上記のような緊急事態の場合以外でも作動が可能となってしまうため、自動車の発進等の走行を抑止する制御の解除を行うべきでないタイミングでも行うことが可能であり、飲酒運転を確実に防止することが不可能となるおそれがある。
【0004】
そこで本発明は、車両の走行を抑止する制御の解除が適切なタイミングで可能となるようにした上で飲酒運転を確実に防止する飲酒運転防止装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち、本発明に係る飲酒運転防止装置は、運転者の飲酒状態が検知された場合に車両の走行を抑止する制御を行う制御手段を備えて当該運転者による当該車両の飲酒運転を防止する飲酒運転防止装置であって、緊急事態の発生を検出する検出手段と、運転者の飲酒状態が検知され、且つ、検出手段により緊急事態の発生が検出された場合に、制御手段による制御を解除させることを可能にする制御解除手段と、を備えることを特徴とする。
【0006】
本発明では、運転者の飲酒状態が検知され、且つ、検出手段により緊急事態の発生が検出された場合に、制御手段による制御を解除させることが制御解除手段により可能になる。このように、飲酒状態が検知された場合であっても、緊急事態の発生が検出された場合に、車両走行の抑止制御の解除が可能になるため、自動車等の車両の走行を抑止する制御の解除が不適切なタイミングで行われることがなくなる。このため、車両の走行を抑止する制御の解除が適切なタイミングで可能となるようにした上で、飲酒運転を確実に防止することができるようになる。
【0007】
また、検出手段は、車両から、運転者の保護のための保護施設までの距離が所定距離以上であると推測される状態を緊急事態として検出するのも好ましい。
【0008】
これにより、車両から保護施設までの距離が所定距離以上であると推測される状態が緊急事態として検出手段により検出される。このため、飲酒状態が検知された場合であっても、上記距離が所定距離以上であると推測される状態のときに、車両走行の抑止制御の解除が可能になるため、車両の走行を可能にして飲酒状態の運転者の保護施設までの移動を行わせることができる。このように、車両の走行を抑止する制御の解除が適切なタイミングで可能となるようにした上で、飲酒運転を確実に防止することができるようになる。
【0009】
また、検出手段は、車両から、運転者の保護のための保護施設までの走行に要する時間が所定時間以上であると推測される状態を緊急事態として検出するのも好ましい。
【0010】
これにより、車両から保護施設までの走行に要する時間が所定時間以上であると推測される状態が緊急事態として検出手段により検出される。このため、飲酒状態が検知された場合であっても、上記時間が所定時間以上であると推測される状態のときに、車両走行の抑止制御の解除が可能になるため、車両の走行を可能にして飲酒状態の運転者の保護施設までの移動を行わせることができる。このように、車両の走行を抑止する制御の解除が適切なタイミングで可能となるようにした上で、飲酒運転を確実に防止することができるようになる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、車両の走行を抑止する制御の解除が適切なタイミングで可能となるようにした上で飲酒運転を確実に防止する飲酒運転防止装置を提供することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を附し、重複する説明は省略する。
【0013】
(1)第一実施形態
まず、図1を用いて、本発明の第一実施形態に係る飲酒運転防止装置の構成について説明する。図1は、第一実施形態に係る飲酒運転防止装置1の構成概略図である。飲酒運転防止装置1は、ドライバー(運転者)による車両(例えば、自動車)の飲酒運転を防止するための装置であり、車両に搭載される。
【0014】
第一実施形態に係る飲酒運転防止装置1は、飲酒状態検知センサ11(飲酒状態検知手段)と、飲酒状態判断部12(飲酒状態検知手段)と、車両制御部13(制御手段)と、緊急信号受信機14(検出手段)と、ナビゲーションシステム15(検出手段)と、車両制御解除機構部16(制御解除手段)と、を備えている。なお、飲酒状態判断部12と、車両制御部13と、車両制御解除機構部16の一部とによる機能は、例えば、車両内部に搭載された電子制御装置であるECUにより実現される。
【0015】
飲酒状態検知センサ11は、ドライバーの飲酒状況を測定するためのセンサである。飲酒状態検知センサ11にドライバーの呼気が吹きかけられると、飲酒状態検知センサ11は、このドライバーの呼気中のアルコール濃度を測定して飲酒状況として出力表示する。飲酒状態検知センサ11は、飲酒状況の測定(即ち、飲酒検査)が可能であれば特に限定されず、ドライバーの飲酒量を測定するセンサでもよい。
【0016】
飲酒状態判断部12は、飲酒状態検知センサ11が測定した飲酒状況に基づいて、ドライバーが飲酒状態であるか否かを検知する部分である。飲酒状態検知センサ11がアルコール濃度を測定するセンサである場合、飲酒状態判断部12は、飲酒状態検知センサ11が測定したアルコール濃度が所定濃度以上である場合は、ドライバーは飲酒状態であると判断する。また、飲酒状態検知センサ11がドライバーの飲酒量を測定するセンサである場合、飲酒状態判断部12は、飲酒状態検知センサ11が測定した飲酒量が所定量以上である場合は、ドライバーは飲酒状態であると判断する。
【0017】
車両制御部13は、飲酒状態判断部12によってドライバーが飲酒状態であると検知された場合に、車両の走行を抑止する制御(即ち、インターロック制御)を行う部分である。車両の走行を抑止する制御の具体的な例として、車両のエンジンの停止や、停止中のエンジンの始動の防止や、エンジンへの燃料の供給の遮断や、車両の点火系への電流の供給の遮断等が挙げられる。
【0018】
緊急信号受信機14は、公共の電波放送(例えばラジオ放送)によって送信される防災情報を含む緊急信号を受信して取得し、この緊急信号に基づいて緊急事態の発生を検出する部分である。この防災情報の具体的な例として、後述するように、強風や波浪や洪水や濃霧に関する警報・注意報や、地震情報や、津波情報や、火山情報や、台風情報等が挙げられる。なお、緊急信号受信機14は、街頭等に設置された防災放送スピーカーにより放送される緊急放送(例えば緊急事態を意味するサイレンによる放送等)に基づいて、緊急事態の発生を検出するセンサであってもよい。
【0019】
なお、緊急信号受信機14は、受信した緊急信号によって、車両の緊急避難が必要となる場合、例えば、震源地又は震度が最大の地点から所定半径(例えば1km)の円内で示される範囲に車両が位置することが検出された場合や、津波被害を受けそうな海岸から車両までの距離が所定距離(例えば1km)以内の範囲に車両が位置することが検出された場合や、噴火した火山の噴火口から車両までの距離が所定距離(例えば2km)以内の範囲に車両が位置することが検出された場合や、洪水が発生したエリアから車両までの距離が所定距離(例えば2km)以内の範囲に車両が位置することが検出された場合に、緊急事態が発生したと判定する。
【0020】
ナビゲーションシステム15は、車両の現在位置等に関する交通情報を受信して、この交通情報やこれに基づく目的地までの情報をドライバーに対して画面表示するとともに、この交通情報に基づいて緊急事態の発生を検出する装置である。ナビゲーションシステム15は、後述するVICS151(検出手段)及びGPS受信機152(検出手段)を有しており、VICS151及びGPS受信機152等から出力される交通情報を用いて上記した画面表示及び検出を行う。
【0021】
なお、ナビゲーションシステム15は、車両から、ドライバーの収容が可能な、ドライバーの保護のための保護施設までの距離を取得してこの距離が所定距離以上であると推測される状態を、ドライバーの収容に長時間かかる可能性が高い緊急事態として検出する。ドライバーの保護のための保護施設の具体的な例として、消防署、警察署、病院等の施設が挙げられる。ナビゲーションシステム15には、予めこれらの保護施設の位置や収容可能な人数や対応可能な時間帯に関する情報が記憶されている。所定距離とは、例えば3kmといったように数kmから数十km程度の距離である。また、ナビゲーションシステム15は、上記の保護施設までの走行に要する時間を取得してこの時間が所定時間以上であると推測される状態を、ドライバーの収容に長時間かかる可能性が高い緊急事態として検出する。所定時間とは、例えば10分といったように数分から数十分程度の時間である。
【0022】
VICS151(Vehicle Information and CommunicationSystem、即ち道路交通情報通信システム)は、車両が走行する道路近傍に設置されたビーコン等から送信された情報を受信して、ナビゲーションシステム15に渋滞情報等を表示させる部分である。ビーコン等から送信された情報には、VICSセンターで処理された渋滞等に関する交通情報が含まれている。
【0023】
GPS(Global Positioning System、即ち全地球測位システム)受信機152は、衛星からの電波の到達時間等に基づいて車両の地球上における位置を測位して、ナビゲーションシステム15に現在地に関する位置情報等を表示させる部分である。
【0024】
車両制御解除機構部16は、所定の場合に(又は、所定の場合に限って)押下して使用することが可能となる機構を有する解除ボタンを備える。所定の場合とは、飲酒状態判断部12によってドライバーが飲酒状態であると検知され、且つ、緊急信号受信機14によって緊急事態の発生が検出された場合である。解除ボタンの押下が可能になってドライバーによって押下されると、車両制御部13による上記の車両走行の抑止制御が解除(即ち、抑止制御を停止することにより抑止制御を行わないようにする)されて(即ち、インターロックの解除)、車両の走行が可能となる。
【0025】
なお、車両制御解除機構部16は、上記の場合に(又は、所定の場合に限り)上記の抑止制御を解除させることができるようになる部分であれば特に限定されず、解除ボタンの代わりに解除スイッチでもよい。
【0026】
引き続き、図2を用いて、飲酒運転防止装置1で実行される、飲酒状況の測定から車両走行の抑止制御の解除までの一連の測定及び判定処理について説明する。図2は、飲酒運転防止装置1で実行される一連の測定及び判定処理を説明するためのフローチャートである。ここで、飲酒状態検知センサ11は、アルコール濃度を測定するセンサであるとするが、上記したように、ドライバーの飲酒量を測定するセンサでもよい。図2のフローチャートに示される処理は、主として上記ECUによって行われるものであり、飲酒運転防止装置1の電源がオンされて処理が開始してからオフされるまでの間、所定の時間間隔で繰り返し実行される。
【0027】
まず、飲酒状態検知センサ11にドライバーの呼気が吹きかけられると、飲酒状態検知センサ11が、ドライバーの飲酒状況を測定する(ステップS01)。
【0028】
次に、飲酒状態判断部12が、飲酒状態検知センサ11が測定した飲酒状況に基づいて、ドライバーが飲酒状態であるか否かを判定する(ステップS02)。飲酒状態検知センサ11が測定したアルコール濃度が所定濃度未満である場合、ドライバーは飲酒状態でないと判定され、一連の処理は終了する。一方、飲酒状態検知センサ11が測定したアルコール濃度が所定濃度以上である場合、ドライバーは飲酒状態であると判定され、後述のステップS03に移行する。
【0029】
ステップS03では、車両制御部13が、車両の走行を抑止する上記の制御(即ち、インターロック制御)を行う。そして、後述のステップS04に移行する。
【0030】
ステップS04では、緊急信号受信機14が、公共の電波放送(例えばラジオ放送)によって送信される防災情報を含む緊急信号を受信する。ここで、この防災情報は地震に関するものであり、例えば、震度とその震度が観測された地点や、震源地や、震度最大地点等に関する情報である。そして、後述のステップS05に移行する。
【0031】
ステップS05では、緊急信号受信機14が、受信したこの緊急信号に基づいて、震源地又は震度最大地点から所定半径(例えば1km)の円内で示される範囲に車両が位置するか否かを判定する。この判定には、ナビゲーションシステム15や、VICS151や、GPS受信機152等からの情報が用いられる。この円内で示される範囲に車両は位置していないと判定された場合は、緊急事態は発生していないと判断されて、一連の処理は終了する。一方、この円内で示される範囲に車両は位置していると判定された場合は、緊急事態は発生していると判断されて、後述のステップS06に移行する。
【0032】
ステップS06では、車両制御解除機構部16に備えられた解除ボタンが、押下して使用することが可能となる。ここで、ドライバーによって解除ボタンが押下されると、車両制御部13による上記の車両走行の抑止制御が解除されて(即ち、インターロックの解除)、車両の走行が可能となる。そして、後述のステップS07に移行する。
【0033】
ステップS07では、車両において緊急事態が発生しているため緊急時の飲酒運転が行われていることが、車両の外部に対して報知される。この報知の具体的な例として、車両が備える外部向けライト及びランプの点灯や、クラクションの鳴動や、警報音の出力等が挙げられる。この報知が行われている間、車両の走行が可能な状態は継続されており、この状態が継続されている間に車両は走行する。そして、一連の処理が終了する。
【0034】
(2)第二実施形態
次に、図3を用いて、本発明の第二実施形態に係る飲酒運転防止装置について説明する。図3は、第二実施形態に係る飲酒運転防止装置で実行される一連の測定及び判定処理を説明するためのフローチャートである。なお、第二実施形態に係る飲酒運転防止装置の構成は、第一実施形態におけるステップS03〜S05に関してのみ異なる。その他の構成については、第一実施形態と同一または同様であるので、ここでは説明を省略する。
【0035】
ステップS03では、車両制御部13が、車両の走行を抑止する上記の制御(即ち、インターロック制御)を行う。そして、後述のステップS14に移行する。
【0036】
ステップS14では、緊急信号受信機14が、公共の電波放送(例えばラジオ放送)によって送信される防災情報を含む緊急信号を受信する。ここで、この防災情報は津波警報(注意報)に関するものであり、例えば、津波被害を受けそうな海岸及び地域や、津波の高さ等に関する情報である。そして、後述のステップS15に移行する。
【0037】
ステップS15では、緊急信号受信機14が、受信したこの緊急信号に基づいて、車両から、津波被害を受けそうな海岸及び地域までの距離が所定距離(例えば1km)以下であるか否かを判定する。この判定には、ナビゲーションシステム15や、VICS151や、GPS受信機152等からの情報が用いられる。車両から津波被害を受けそうな海岸及び地域までの距離が所定距離より長いと判定された場合は、緊急事態は発生していないと判断されて、一連の処理は終了する。一方、車両から津波被害を受けそうな海岸及び地域までの距離が所定距離以下であると判定された場合は、緊急事態は発生していると判断されて、上述のステップS06に移行する。
【0038】
(3)第三実施形態
次に、図4を用いて、本発明の第三実施形態に係る飲酒運転防止装置について説明する。図4は、第三実施形態に係る飲酒運転防止装置で実行される一連の測定及び判定処理を説明するためのフローチャートである。なお、第三実施形態に係る飲酒運転防止装置の構成は、第一実施形態におけるステップS03〜S05に関してのみ異なる。その他の構成については、第一実施形態と同一または同様であるので、ここでは説明を省略する。
【0039】
ステップS03では、車両制御部13が、車両の走行を抑止する上記の制御(即ち、インターロック制御)を行う。そして、後述のステップS24に移行する。
【0040】
ステップS24では、緊急信号受信機14が、公共の電波放送(例えばラジオ放送)によって送信される防災情報を含む緊急信号を受信する。ここで、この防災情報は火山に関するものであり、例えば、火山の噴火はあったか否かや、噴火があった場合において噴火した火山の噴火口の位置等に関する情報である。そして、後述のステップS25に移行する。
【0041】
ステップS25では、緊急信号受信機14が、受信したこの緊急信号に基づいて、噴火した火山の噴火口から所定半径(例えば2km)の円内で示される範囲に車両が位置するか否かを判定する。この判定には、ナビゲーションシステム15や、VICS151や、GPS受信機152等からの情報が用いられる。この円内で示される範囲に車両は位置していないと判定された場合は、緊急事態は発生していないと判断されて、一連の処理は終了する。一方、この円内で示される範囲に車両は位置していると判定された場合は、緊急事態は発生していると判断されて、上述のステップS06に移行する。
【0042】
(4)第四実施形態
次に、図5を用いて、本発明の第四実施形態に係る飲酒運転防止装置について説明する。図5は、第四実施形態に係る飲酒運転防止装置で実行される一連の測定及び判定処理を説明するためのフローチャートである。なお、第四実施形態に係る飲酒運転防止装置の構成は、第一実施形態におけるステップS03〜S05に関してのみ異なる。その他の構成については、第一実施形態と同一または同様であるので、ここでは説明を省略する。
【0043】
ステップS03では、車両制御部13が、車両の走行を抑止する上記の制御(即ち、インターロック制御)を行う。そして、後述のステップS34に移行する。
【0044】
ステップS34では、緊急信号受信機14が、公共の電波放送(例えばラジオ放送)によって送信される防災情報を含む緊急信号を受信する。ここで、この防災情報は洪水に関するものであり、例えば、洪水の発生はあったか否かや、洪水が発生したエリア等に関する情報である。そして、後述のステップS35に移行する。
【0045】
ステップS35では、緊急信号受信機14が、受信したこの緊急信号に基づいて、車両から、洪水が発生したエリアまでの距離が所定距離(例えば2km)以下であるか否かを判定する。この判定には、ナビゲーションシステム15や、VICS151や、GPS受信機152等からの情報が用いられる。車両から洪水が発生したエリアまでの距離が所定距離より長いと判定された場合は、緊急事態は発生していないと判断されて、一連の処理は終了する。一方、車両から洪水が発生したエリアまでの距離が所定距離以下であると判定された場合は、緊急事態は発生していると判断されて、上述のステップS06に移行する。
【0046】
(5)第五実施形態
次に、図6を用いて、本発明の第五実施形態に係る飲酒運転防止装置について説明する。図6は、第五実施形態に係る飲酒運転防止装置で実行される一連の測定及び判定処理を説明するためのフローチャートである。なお、第五実施形態に係る飲酒運転防止装置の構成は、第一実施形態におけるステップS03〜S05に関して異なる。その他の構成については、第一実施形態と同一または同様であるので、ここでは説明を省略する。
【0047】
ステップS03では、車両制御部13が、車両の走行を抑止する上記の制御(即ち、インターロック制御)を行う。そして、後述のステップS44に移行する。
【0048】
ステップS44では、ナビゲーションシステム15が、VICS151及びGPS受信機152等から出力される交通情報に基づいて、渋滞等を考慮しながら、車両から、ドライバーの保護のための保護施設(消防署、警察署、病院等)までの距離を推測して取得する。そして、後述のステップS45に移行する。
【0049】
ステップS45では、ナビゲーションシステム15が、取得した距離(即ち、車両から保護施設までの距離)が所定距離(例えば3km)以上であると推測されるか否かを判定する。車両から保護施設までの距離が所定距離未満であると判定された場合は、緊急事態は発生していないと判断されて、一連の処理は終了する。一方、車両から保護施設までの距離が所定距離以上であると判定された場合は、緊急事態は発生していると判断されて、保護施設のうち最短距離にある保護施設までの仮想的なルート案内をナビゲーションシステム15がドライバーに対して開始して、上述のステップS06に移行する。
【0050】
(6)第六実施形態
次に、図7を用いて、本発明の第六実施形態に係る飲酒運転防止装置について説明する。図7は、第五実施形態に係る飲酒運転防止装置で実行される一連の測定及び判定処理を説明するためのフローチャートである。なお、第五実施形態に係る飲酒運転防止装置の構成は、第一実施形態におけるステップS03〜S05に関してのみ異なる。その他の構成については、第一実施形態と同一または同様であるので、ここでは説明を省略する。
【0051】
ステップS03では、車両制御部13が、車両の走行を抑止する上記の制御(即ち、インターロック制御)を行う。そして、後述のステップS54に移行する。
【0052】
ステップS54では、ナビゲーションシステム15が、VICS151及びGPS受信機152等から出力される交通情報に基づいて、渋滞等を考慮しながら、車両から保護施設(消防署、警察署、病院等)までの走行時間を推測して取得する。なお、この走行時間の代わりに、ドライバーの保護のための車両(救急車、パトカー、消防車等)がドライバーの現在地に到着するまでに必要な到着必要時間を推測して取得してもよい。そして、後述のステップS55に移行する。
【0053】
ステップS55では、ナビゲーションシステム15が、取得した走行時間(又は到着必要時間)が所定時間(例えば30分間)以上であると推測されるか否かを判定する。車両から保護施設までの走行時間(又は到着必要時間)が所定時間未満であると判定された場合は、緊急事態は発生していないと判断されて、一連の処理は終了する。一方、車両から保護施設までの走行時間(又は到着必要時間)が所定時間以上であると判定された場合は、緊急事態は発生していると判断されて、保護施設のうち最短時間で到着可能な保護施設までの仮想的なルート案内をナビゲーションシステム15がドライバーに対して開始して、上述のステップS06に移行する。
【0054】
(7)作用効果
引き続き、第一実施形態から第六実施形態のそれぞれの作用効果について説明する。第一実施形態から第四実施形態のそれぞれによれば、ドライバーの飲酒状態が検知され、且つ、緊急信号受信機14により緊急事態の発生が検出された場合に、車両制御部13による制御を解除させることが車両制御解除機構部16により可能になる。このように、飲酒状態が検知された場合であっても、緊急事態の発生が検出された場合に、車両走行の抑止制御の解除が可能になるため、自動車等の車両の走行を抑止する制御の解除が不適切なタイミングで行われることがなくなる。このため、緊急避難用の移動モビリティとしての車両の走行を抑止する制御の解除が適切なタイミングで可能となるようにした上で、飲酒運転を確実に防止することができるようになる。
【0055】
また、第五実施形態によれば、車両から保護施設までの距離が所定距離以上であると推測される状態が緊急事態としてナビゲーションシステム15により検出される。このため、飲酒状態が検知された場合であっても、上記距離が所定距離以上であると推測される状態のときに、車両走行の抑止制御の解除が可能になるため、車両の走行を可能にして飲酒状態の運転者の保護施設までの移動を行わせることができる。このように、車両の走行を抑止する制御の解除が適切なタイミングで可能となるようにした上で、飲酒運転を確実に防止することができるようになる。
【0056】
また、第六実施形態によれば、車両から保護施設までの走行に要する時間が所定時間以上であると推測される状態が緊急事態としてナビゲーションシステム15により検出される。このため、飲酒状態が検知された場合であっても、上記時間が所定時間以上であると推測される状態のときに、車両走行の抑止制御の解除が可能になるため、車両の走行を可能にして飲酒状態の運転者の保護施設までの移動を行わせることができる。このように、車両の走行を抑止する制御の解除が適切なタイミングで可能となるようにした上で、飲酒運転を確実に防止することができるようになる。
【0057】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、飲酒状態判断部12によってドライバーが飲酒状態であると検知され、且つ、緊急信号受信機14によって緊急事態の発生が検出された場合に、車両制御解除機構部16が押下可能となるようにしたが、この代わりに、このような場合に自動的に、車両制御部13による上記の車両走行の抑止制御が解除されるようにしてもよい。
【0058】
また、図6のステップS45において、車両から保護施設までの距離が所定距離以上であると判定された場合にステップS06に移行するのではなく、車両から保護施設までの距離が所定距離以上であると判定され、且つ、車両から保護施設までの走行時間(又は到着必要時間)が所定時間以上であると判定された場合に、ステップS06に移行するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】第一実施形態に係る飲酒運転防止装置の構成概略図である。
【図2】第一実施形態で実行される処理のフローチャートである。
【図3】第二実施形態で実行される処理のフローチャートである。
【図4】第三実施形態で実行される処理のフローチャートである。
【図5】第四実施形態で実行される処理のフローチャートである。
【図6】第五実施形態で実行される処理のフローチャートである。
【図7】第六実施形態で実行される処理のフローチャートである。
【符号の説明】
【0060】
1…飲酒運転防止装置、11…飲酒状態検知センサ、12…飲酒状態判断部、13…車両制御部、14…緊急信号受信機、15…ナビゲーションシステム、16…車両制御解除機構部、151…VICS、152…GPS受信機。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転者の飲酒状態が検知された場合に車両の走行を抑止する制御を行う制御手段を備えて当該運転者による当該車両の飲酒運転を防止する飲酒運転防止装置であって、
緊急事態の発生を検出する検出手段と、
前記運転者の飲酒状態が検知され、且つ、前記検出手段により緊急事態の発生が検出された場合に、前記制御手段による前記制御を解除させることを可能にする制御解除手段と、
を備えることを特徴とする飲酒運転防止装置。
【請求項2】
前記検出手段は、前記車両から、前記運転者の保護のための保護施設までの距離が所定距離以上であると推測される状態を緊急事態として検出することを特徴とする請求項1に記載の飲酒運転防止装置。
【請求項3】
前記検出手段は、前記車両から、前記運転者の保護のための保護施設までの走行に要する時間が所定時間以上であると推測される状態を緊急事態として検出することを特徴とする請求項1又は2に記載の飲酒運転防止装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−137537(P2009−137537A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−318659(P2007−318659)
【出願日】平成19年12月10日(2007.12.10)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VICS
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】