説明

高電源電圧除去比(PSRR)を有し曲線補正されたバンドギャップ型電圧基準回路

PTATおよびCTAT生成構成要素を含む、電圧基準回路が提供される。CTAT構成要素は、演算増幅器の回りのフィードバック構成内に設けられ、増幅器の入力に結合された、PTAT生成構成要素と組み合わされる。このCTAT構成要素とPTAT構成要素の組み合せは、回路の出力電圧の温度曲線補正を提供するように、実現される。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
発明の分野
本発明は、バンドギャップ型電圧基準回路に関し、特に、高電源電圧除去比(PSRR:Power Supply Rejection Ratio)を有し、曲線補正(curvature correction)されて低ドロップアウトの温度補償式バンドギャップ型電圧基準回路に関する。
【0002】
発明の背景
バンドギャップ型電圧基準回路は、当該技術において周知である。この回路は、必要な場所に実装して、広い範囲の動作温度にわたって温度に依存しない安定した電源を提供する。通常、この回路の動作は、エミッタ・ベース電圧の負の温度係数(すなわち、CTATまたは絶対温度電圧の補完(Complementary To Absolute Temperature))と、異なる電流密度で動作する2つのトランジスタのエミッタ・ベース電圧差分の正の温度係数(すなわち、PTATまたは絶対温度電圧に比例する(Proportional To Absolute Temperature voltage))とを合成することによって動作して、実質的にゼロ温度係数基準電圧を生成する。
【0003】
そのような電圧基準回路の一例が、「New Developments in IC Voltage Regulators」、IEEE Journal of Solid-State Circuits Vol SC-6 No 1 February 1971, pages 2-7に記載されている。しかしながら、この従来型電圧基準回路に付随する問題の一つは、バンドギャップ電圧出力は、第1近似では温度と独立であるが、この標準回路の出力は、TlnTとともに変化する項を含み、ここでTは絶対温度、「ln」は自然対数関数であることがわかった。図1は、そのような回路の出力電圧の例を示すグラフである。出力が、「弓形(bow-shape)」応答を示すことは明白である。この曲線は、基準電圧がある温度範囲にわたって一定ではなく、したがって温度独立型基準電圧の理想を達成できないことを示している。
【0004】
この問題を克服するための改変が、アウディ(Jonathan M. Audy)によって提案されており、本発明の譲受人に譲渡された、米国特許第5352973号に記載されている。この特許において、アウディは、TlnT項を補償することによって曲線を相殺する方法について記載している。それは、標準バンドギャップ実装に補正回路を加えることによって達成される。図2は、アウディによって実装された回路を示す。点線の右の回路は、PTAT電流で動作する2つのトランジスタQ1およびQ2を備える、標準バンドギャップ回路である。曲線相殺回路を、点線の左に示してある。この回路では、トランジスタQclは、主回路におけるQ2と同じものであるが、それは増幅器A2を介して一定電流で動作する。ここで、2つのトランジスタQ2およびQclは、同一のベース・エミッタ電圧で動作し、Q2は、PTAT電流で動作しており、一方で、Qclは一定電流で動作しており、その結果が、形式TlnTの2つのエミッタ間の電圧である。この電圧によってRcを通過する電流が生成されて、これが補正電流である。
【0005】
この前述した回路は、出力電圧における曲線効果を実質的に解消するが、その実装に関連して1つの欠点がある。補正トランジスタ端子が反転および非反転入力、および演算増幅器の出力に接続されているので、動作には、トランジスタの3つの端子のそれぞれにおける自由な電圧移動(free voltage movement)があきらかに必要であることがわかる。標準CMOSプロセスにおいては、2つのタイプのバイポーラトランジスタだけが利用可能であり、それは、一端子が基板に永久的に接続された奇生基板バイポーラトランジスタデバイス、および非常に性能の低いラテラルバイポーラトランジスタデバイスである。したがって、この実装は、標準CMOSに直接的に実装することはできない。
したがって、先行技術に関連する、この問題を克服するように適合された回路および方法を提供することへのニーズがある。
【0006】
発明の概要
これらおよびその他のニーズは、CMOS技術で実装されるバンドギャップ型電圧基準回路を提供する、本発明の曲線補正方式によって対処される。
本発明の第1の態様によれば、供給電圧を有して、温度曲線補正された出力電圧基準を提供するように適合された、バンドギャップ型電圧基準回路が提供される。この回路は、反転入力ノード、非反転入力ノード、および出力ノードを有する、演算増幅器を含む。
演算増幅器に結合された、第1の組の回路構成要素が、演算増幅器の入力ノードにおいて、PTAT(絶対温度に比例する)電流を生成するように適合されている。CTAT(絶対温度を補完する)電流を生成するように適合された、第2の組の回路構成要素が、フィードバック構成で設けられて、演算増幅器の出力ノードを演算増幅器の入力ノードに結合させる。第1および第2の組の構成要素によって生成されるPTAT電流およびCTAT電流は、出力ノードにおいて出力電圧の温度曲線補正を提供するように演算増幅器の入力ノードにおいて合成され、それによって出力電圧基準ノードにおいて電圧基準を提供する。
【0007】
望ましくは、第1の組の回路構成要素および第2の組の回路構成要素は、出力電圧基準ノードに結合される。また、第1の組および第2の組の回路構成要素は、供給電圧から切り離してもよい。
通常、第1の組の回路構成要素は、演算増幅器の反転入力ノードに結合された第1の対の積層型トランジスタ(stacked transistor)と、演算増幅器の非反転入力ノードに結合された第2の対の積層型トランジスタを含み、第1および第2の積層型トランジスタ対が、第1の積層型トランジスタ対と第2の積層型トラジスタ対の間でPTAT電圧を生成するように、面積がスケーリングされており、PTAT電圧が、演算増幅器の入力ノードにおいてPTAT電流を提供する。
【0008】
第1の組の回路構成要素は、さらに第1の抵抗および第2の抵抗を含み、第1の抵抗は、第2の積層型トランジスタ対の共通ノードと接地との間に設けられており、第2の抵抗は、演算増幅器の出力ノードと第2の積層型トランジスタ対の共通ノードとの間に設けられている。そのような構成において、第1および第2の抵抗の値は、通常等しく、それによって、第2の積層型トランジスタ対のトランジスタが、PTAT電流で動作することが保証される。
【0009】
第1の組の回路構成要素は、第3および第4の抵抗をさらに含み、第3の抵抗は、演算増幅器の出力ノードと同演算増幅器の反転ノートとの間に結合されており、第4の抵抗は、反転ノードと第1の積層型トランジスタの間に結合されており、第3と第4の抵抗の値の比は、整数比であり、それによってミスマッチが減少するとともに、出力電圧ができる限り正確になることが保証される。
第2の組の回路構成要素は、通常、第1の積層型トランジスタ対の共通ノードにおいてCTAT電流を提供するように配設される。
【0010】
第2の組の回路構成要素は、さらに、第1の積層型トランジスタ対の共通ノードにおいて、PTAT電流を提供することもできる。
好ましい一態様においては、第2の組の回路構成要素は、電流ミラーを含む。望ましくは、第3の積層型トランジスタ対を、第2の組の回路構成要素内に設けて、電流ミラーを、演算増幅器の出力ノードに結合して、第3の積層型トランジスタ対の共通ノードを電流ミラーの1つの端子に結合し、それによって、第2の組の回路構成要素が、第1の積層型トランジスタ対の共通ノードにおいてPTAT電流およびCTAT電流の合成を行い、CTAT電流は、電流ミラーから生成される出力電流によって供給され、PTAT電流は、第3の積層型トランジスタ対から生成される出力電流によって供給される。
【0011】
第2の組の回路構成要素は、望ましくは、第1の組の電流ミラーと第2の組の電流ミラーを有し、第1の組の電流ミラーは、第1の積層型トランジスタ対の共通ノードにおいて電流を提供し、第2の組の電流ミラーは、演算増幅器の反転ノードにおいて電流を提供し、第1および第2の組の電流ミラーを、それぞれそれらのノードに結合することによって、演算増幅器の出力ノードにおける電圧が、所望の値に調整される。
そのような態様において、第2の組の回路構成要素は、第1の組の電流ミラーと接地との間に結合された、第5の抵抗をさらに含み、第1、第2および第5の抵抗は、出力電圧の温度曲線補正をもたらすように適合されている。
本発明のこれら、およびその他の特徴は、以下の図面と説明を参照することによってより詳細に理解されるであろう。
【0012】
図面の詳細な説明
図1および図2は、先行技術について記述したものである。
図3は、基準電圧における温度偏差を補償するように適合された、本発明の回路を示すブロック図300である。その回路は、演算増幅器301、第1の回路ブロック302、および第2の回路ブロック303を含む。第1の回路ブロック302は、演算増幅器301の入力ノードに結合されるときに、バンドギャップ型電圧基準回路を提供するように構成された、第1の組の回路構成要素を含む。望ましくは、このバンドギャップ型電圧基準回路は、演算増幅装置301の入力ノードにおいて、PTAT電流を生成する。本発明によれば、第2の回路ブロック303は、演算増幅器301の出力ノードに結合され、それによってバンドギャップ型電圧基準回路に通常は存在する温度曲線成分を補償する。
【0013】
第2の回路ブロック303は、フィードバック構成で設けられた第2の組の回路構成要素を含み、それによって演算増幅器301の出力ノードを、第1の回路ブロック302を介して同演算増幅器の入力ノードに結合する。第2の組の回路構成要素は、少なくともCTAT電流を生成するように適合されており、本発明の態様によっては、PTAT電流も設けることもできる。本発明によれば、第1および第2の組の回路構成要素によって生成されるPTAT電流およびCTAT電流は、演算増幅器の入力ノードにおいて合成され、それによって出力ノードにおける出力基準電圧の温度曲線補正を提供する。
【0014】
次に本発明を、添付の図面を参照してさらに詳細に説明する。図4から6は、バンドギャップ型電圧基準回路に従来から存在する曲線の補正をもたらすように適合されて、CMOS技術で実装された、本発明による回路の例示的な態様である。図3に示す第1および第2の回路302、303の概略ブロックについて、温度曲線補正を実現するように設けられた、基本バンドギャップ回路および補正回路を参照して、次に説明する。
【0015】
図4の破線ボックス1で包囲して示してあるのが、基本バンドギャップ型電圧基準回路であり、この回路に、上記の「発明の背景」の項で述べたような温度曲線偏差が発生する。この回路は、4つのトランジスタQ1、Q2、Q3およびQ4、演算増幅器Aおよび抵抗r1、r2、r3およびr4からなる。本発明のこの態様によれば、破線ボックスの外に示すように、補正回路が基本バンドギャップ型電圧基準回路に加えられて、曲線補正が達成される。
【0016】
補正回路は、2つのPMOSトランジスタMP1、MP2、2つのバイポーラ型トランジスタQ5、Q6、ならびに3つの抵抗r5、r6、r7を含む。MP1およびMP2のゲートは互いに接続され、またMP1のゲートは、Q5のエミッタに短絡されている。MP1およびMP2は、通常、異なるドレイン電流で動作する。MP1およびMP2の両方のソースは、増幅器Aの電圧基準出力Vrefに接続されている。MP1のドレインは、Q3のエミッタに接続されている。Q5のエミッタはまた、Q6のベースに接続されている。r6は、VrefとQ6のエミッタの間に接続されている。Q6のエミッタは、r7を介してQ3のエミッタに接続されている。Q5のベースは接地されている。また、Q5およびQ6両方のコレクタは接地されている。r5は、Q1のベースとエミッタの間に接続されている。
【0017】
標準的な電圧基準回路において、トランジスタQ1、Q2、Q3、Q4は、通常、PTAT電流によってバイアスされている。しかしながら、本発明の補正回路の追加によって、CTAT電流がこの回路中に導入される。図4の回路を参照すると、r2=4r1の場合、増幅器の出力基準電圧は、次式
【化1】

によって与えられ、ここで、
【化2】

である。
【0018】
ΔVbeと温度の関係は、標準的な技法によって、次式
【化3】

で定義され、ここで、Tは動作温度、Tは任意の基準温度、そしてΔVbe0は、TにおけるΔVbeである。
【0019】
PTAT電流で動作している単一のトランジスタに対して、基本エミッタ電圧は、
【化4】

であることを示すことができ、ここで
g0は、絶対ゼロ温度(0K)に外挿したバンドギャップ電圧、
σは、飽和電流温度指数(saturation current temperature exponent)、
Kはボルツマン定数、
bel0は、TにおけるVbel、そして
qは電荷である。
【0020】
図4の回路から理解かつ観察されるように、MOSFET MP2によって設定される、トランジスタQ5のエミッタ電流は、
【化5】

であり、ここでβはMOSFETの伝導パラメータ(conduction parameter)である。
この式は、式(4)を代入するとともに、その最後の項を無視することによって、次式のように書き換えることができる。
【化6】

この電流は、3つの構成要素、すなわち温度独立な1つの要素、Tに比例する(PTAT)1つの要素、およびTに比例する1つの要素を含むことが認識されるであろう。主たる寄与は、PTAT電流を提供する構成要素から発生することが理解されるであろう。
【0021】
ここで分かることは、MP1のアスペクト比がMP2の「n」倍のときに、MP1のドレイン電流は、IQ5eの「n」倍にスケーリングされることである。Q3のエミッタを通過する電流は、MP1のドレイン電流と抵抗r7を通過して流れる電流との和であることが理解されるであろう。Q1、Q2、Q3、Q4が同一のエミッタ面積を有し、n1=n2であれば、次式が成り立つ。
【化7】

【0022】
belはCTAT電圧、ΔVbeはPTAT電圧、そしてIQ5eは実質的にPTAT電流であるので、このエミッタ電流は、CTAT電流とPTAT電流の合成である。PTATおよびCTATの均衡がよく取れている場合には、Q3のエミッタ電流は、温度独立となる。また、図4の回路から分かることは、r4=r5の場合には、次式が成り立つ。
【化8】

これらの電流は、形式ΔVbeのものであるので、これらの電流のそれぞれはPTAT電流であることが認識されるであろう。
【0023】
これらの式(8)を式(2)に代入すると、次式が得られる。
【化9】

式(9)が示すように、ΔVbeは、2つの構成要素を有し、KT形式の1つのPTAT、およびKTlnTの形式の2番目である。
【0024】
Vrefの元の式(1)に戻り、式(9)および式(4)から代入することによって、Vrefは次式のように書きなおすことができる。
【化10】

ここでわかることは、式(10)において、PTAT、CTATおよび曲線の構成要素を適当にスケーリングすることによって、次の関係が得られることである。
ref=2Vg0
この式から、出力電圧曲線項が除去されていることは明らかである。
ここで留意すべきことは、r5をr4と等しく選ぶことによって、Q1がPTAT電流で動作することが保証されることである。抵抗比r2/r1も、ミスマッチを減少させるように、整数比となるように選ぶ必要がある。
【0025】
記述した回路の1つの利点は、VbeおよびΔVbeを生成するすべての電流が、供給電源ではなく一定出力電圧から生成されることである。この結果として、100dBを超える電源電圧除去比(PSRR)値が得られる。別の利点は、セルが、本質的に非常に低い出力インピーダンスでバッファされるとともに、非常に低いノイズを有することである。第1の態様において提供される曲線補正は、複数の抵抗を使用することが認識されるであろう。これによって補正回路が提供されるが、このアーキテクチャは、すべての実装に対しては好適であるわけではなく、特に大きさがプレミアムとなる実装には適していない。
【0026】
図5は、本発明の第2の態様を示しており、これは実装に必要な面積を低減しながら、なお曲線における補正をもたらすことのできるタイプの改変の例となるものである。両方の態様に存在する構成要素には、同一の参照番号を使用してある。
この第2の態様は、電流ミラーアーキテクチャによって、図4に記述されている抵抗r5、r6、r7の置換を提供し、このことは、同一の機能を異なる方法で提供する役割をする。図4に関して先に使用したように、この回路は、説明を簡単にするために、構成要素の補正および非補正の組の観点で考えることができる。破線ボックス内に示すのは、以前と同様に、基本バンドギャップ型電圧基準である。それは、4つのバイポーラトランジスタQ1、Q2、Q3、Q4、4つの抵抗r1、r2、r3、r4および演算増幅器Aからなる。
【0027】
本発明のこの第2の態様によれば、破線ボックスの外側に示してあるのは修正回路であり、この回路が、基本バンドギャップ型電圧基準回路に付加されて、曲線補正を達成する。その回路は、5つのPMOSトランジスタ、MP3、MP4、MP5、MP6、MP7、4つのNMOSトランジスタMN1、MN2、MN3、MN4、1つのバイポーラトランジスタQ7、および抵抗r8を含む。
【0028】
MP3、MP4、MP5、MP6およびMP7のそれぞれのソースは、演算増幅器Aの電圧基準出力Vrefに接続されている。MP3およびMP4は、電流ミラーとして配設され、それらのゲートが互いに接続されるとともに、MP3のドレインがそのゲートに接続されている。MN1およびMN2は、電流ミラーとして接続されており、それらのゲートが互いに接続されるとともに、MN1のドレインが、そのゲートに接続されている。MP5、MP6およびMP7は、2出力電流ミラーとして接続され、MP5、MP6およびMP7のゲートはすべて、互いに接続されるとともに、MP5のドレインがそのゲート端子に接続されている。MN3およびMN4は、電流ミラーとして接続され、それらのゲートが互いに接続されるとともに、MN3のドレインがそのゲートに接続されている。MP4のドレインは、MN1のドレインに接続されている。抵抗r8は、その一端でMN2のソースに接続され、他端で接地されている。MP3のドレインおよびMN1のソースの両方とも、Q7のエミッタに接続されている。Q7のコレクタ端子およびベース端子は接地されている。MP5のドレインは、MN2のドレインに接続されている。MP6のドレインは、Q3のエミッタに接続されている。MP7のドレインは、MN3およびMN4の共通ゲートに接続されている。MN3およびMN4のソースは接地されている。MN4のドレインは、演算増幅器Aの反転入力に接続されている。PMOS用のすべてのボディ端子は、それぞれのソース端子に接続されている。
【0029】
図5のこの回路を参照すると、CTAT電圧がQ7の両端に生じることを示すことができる。MP3とMP4の間、およびMN1とMN2の間の電流ミラー構成のために、対応するCTAT電圧が、抵抗r8の両端で生じる。これによって、MN2およびMP5のドレイン電流が、CTAT電流になる。このCTAT電流は、MP6およびMP7のドレインにおいて反射される。M6のドレインに流れるCTAT電流は、Q3のエミッタに押し込まれる。MP7のドレインに流れるCTAT電流は、MN3のドレインの方向に流れ、この場合に、それはMN4のドレイミラーとして反射される。したがって、MN4のドレイン電流は、基準電圧Vrefを所望の値に調節するために、演算増幅器Aの反転ノードからCTAT電流を引き出す。
【0030】
したがって、抵抗r2中を流れる電流は、PTAT電流とCTAT電流の合成であるが、PTATが支配的であることが認識されるであろう。したがって、演算増幅器の出力電圧は、以下の式、
【化11】

となり、これはPTAT電圧とCTAT電圧の合成である。r1、r2およびr8の抵抗比を適当にスケーリングすることによって、第1の態様と同様に、基準電圧は温度独立となる。フィードバック抵抗r2から引き出されるCTAT電流によって、基準電圧を、図4に示す第1の態様の値よりも大きな値に変える機会が得られる。
【0031】
ここで留意すべきことは、この第2の態様において、Q1は、第1の態様におけるように純粋PTATではなく、PTATとCTATの合成である電流で動作していることである。その結果として、曲線の相殺を維持するためには、第1の態様におけるのと同様にPTATとCTATの混合ではなく、CTATである電流で、Q3を動作させることが必要である。このことは、MOSFET MP6のドレインをQ3のエミッタに接続して、補正回路における構成要素を接続することによって実現される。
【0032】
使用する抵抗の数が減少することによって、第2の態様では、第1の態様よりも必要な面積が小さくなることを、当業者は理解するであろう。またこの実装は、r4とr5を等しくする必要がある第1の態様における要件と類似する要件がないので、より柔軟性が高い。本発明の例示的な態様において、第1の態様は、約2.3Vの固定基準電圧を提供するのに対して、第2の態様は、2.5Vの標準的な値に調整することのできる基準電圧を提供する。
【0033】
図6に示す第3の態様は、2.3V未満に低減できる基準電圧を提供する。
第3の態様の回路動作は、CTAT電流を演算増幅器Aの反転ノードから差し引く代わりに、MP7によって生成されるCTAT電流を同ノードに注入することを除いては、電流第2の態様と同等である。このことは、基準電圧を減少させる効果がある。第2の態様についての同様な分析によって、第3の態様においては、基準電圧は次式で得られる。
【化12】

当業者であれば、第3の態様は、2.3V未満の基準が必要な場合に有用であることを認識するであろう。例えば、多くの用途では、2.048Vの基準電圧が要求され、これは回路によって提供することができる。
【0034】
本発明は、CMOS技術で実装可能な、温度補償バンドギャップ型電圧基準を提供することが、認識されるであろう。本発明によれば、演算増幅器の出力からフィードバックループにおけるCTAT電流の生成を、演算増幅器の入力におけるPTAT電流と組み合わせて使用し、それによって任意の温度曲線を補正することができる。3つの好ましい態様について記述したが、これらの態様は本発明の概念の応用例であり、添付のクレームの観点で必要となる場合を除いて、いかなる方法によっても本発明を限定することを意図するものではない。用語「含む、備える(comprise)/含んでいる、備えている(comprising)」および用語「有する(having)/含む(including)」は、本明細書において本発明に関して使用する場合には、記述した特徴、整数、ステップまたは構成要素の存在を規定するのに使用するが、1つまたは2つ以上のその他の特徴、整数、ステップ、構成要素またはそれらの群の存在または追加を排除するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】基本バンドギャップ型電圧基準回路の、典型的なTlnT温度偏差を示すグラフである。
【図2】基本バンドギャップ型電圧基準回路における温度偏差を実質的に補償する、既知のバンドギャップ型電圧基準回路を示す概略図である。
【図3】本発明による、温度偏差の補償を提供する回路の構造を示すブロック図である。
【図4】本発明による、温度偏差における補償を提供する回路の第1の態様を示す概略図である。
【図5】本発明の第2の態様を示す概略図である。
【図6】本発明の第3の態様を示す概略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給電圧を有して、温度曲線を補正した出力電圧基準を提供するように適合されたバンドギャップ型電圧基準回路であって、反転入力ノード、非反転入力ノード、および出力ノードを有する演算増幅器を含むとともに、
前記演算増幅器に結合されて、前記演算増幅器の入力ノードにおいてPTAT(絶対温度に比例する)電流を生成するように適合された第1の組の回路構成要素、および
フィードバック構成で設けられて、前記演算増幅器の出力ノードを前記演算増幅器の入力ノードに結合する、第2の組の回路構成要素であって、CTAT(絶対温度を補完する)電流を生成するように適合された、前記第2の組の回路構成要素を含み、
前記第1および第2の組の回路構成要素によって生成される前記PTAT電流およびCTAT電流が、前記出力ノードにおいて出力電圧の温度曲線補正を提供するように、前記演算増幅器の入力ノードにおいて合成され、それによって出力電圧基準ノードにおける電圧基準を提供する、前記バンドギャップ型電圧基準回路。
【請求項2】
第1の組の回路構成要素および第2の組の回路構成要素が、出力電圧基準ノードに結合されている、請求項1に記載のバンドギャップ型電圧基準回路。
【請求項3】
第1の組の構成要素および第2の組の構成要素が、供給電圧から切り離されている、請求項1に記載のバンドギャップ型電圧基準回路。
【請求項4】
第1の組の回路構成要素が、演算増幅器の反転入力ノードに結合された第1の対の積層型トランジスタと、前記演算増幅器の非反転入力ノードに結合された第2の対の積層型トランジスタとを含み、前記第1および第2の積層型トランジスタ対が、前記第1の積層型トランジスタ対と前記第2のトランジスタ対との間でPTAT電圧を生成するように、面積がスケーリングされており、前記PTAT電圧が、前記演算増幅器の入力ノードにおいて前記PTAT電流を提供する、請求項3に記載のバンドギャップ型電圧基準回路。
【請求項5】
第1の組の回路構成要素が、第1の抵抗および第2の抵抗をさらに含み、第1の抵抗は、第2の積層型トランジスタ対の共通ノードと接地との間に設けられており、第2の抵抗は、前記演算増幅器の出力ノードと前記第2の積層型トランジスタ対の共通ノードとの間に設けられている、請求項4に記載のバンドギャップ型電圧基準回路。
【請求項6】
第1および第2の抵抗の値が等しく、それによって第2の積層型トランジスタ対のトランジスタが、PTAT電流で動作することが保証される、請求項5に記載のバンドギャップ型電圧基準回路。
【請求項7】
第1の組の回路構成要素が、第3および第4の抵抗をさらに含み、前記第3の抵抗は、演算増幅器の出力ノードと前記演算増幅器の反転ノードとの間に結合されており、前記第4の抵抗は、前記反転ノードと前記第1の積層型トランジスタ対との間に結合されており、前記第3の抵抗と前記第4の抵抗の値の比が、整数比であり、それによってミスマッチが減少するとともに、出力電圧ができる限り正確になることが保証される、請求項6に記載のバンドギャップ型電圧基準回路。
【請求項8】
第2の組の回路構成要素が、第1の積層型トランジスタ対の共通ノードにおいて、CTAT電流を提供する、請求項7に記載のバンドギャップ型電圧基準回路。
【請求項9】
第2の組の回路構成要素が、第1の積層型トランジスタ対の共通ノードにおいて、PTAT電流をさらに提供する、請求項8に記載のバンドギャップ型電圧基準回路。
【請求項10】
第2の組の回路構成要素が、電流ミラーを含む、請求項5に記載のバンドギャップ型電圧基準回路。
【請求項11】
第2の組の回路構成要素が、第3の積層型トランジスタ対をさらに含み、電流ミラーが、演算増幅器の出力ノードに結合され、前記第3の積層トランジスタ対の共通ノードが前記電流ミラーの一端子に結合されており、それによって前記第2の組の回路構成要素が、第1の積層型トランジスタ対の共通ノードにおいてPTAT電流とCTAT電流の合成を行い、前記CTAT電流は、前記電流ミラーから生成される出力電流によって供給され、前記PTAT電流は、前記第3の積層型トランジスタ対から生成される出力電流によって供給される、請求項10に記載のバンドギャップ型電圧基準回路。
【請求項12】
第2の組の回路構成要素が、第1の組の電流ミラーと第2の組の電流ミラーとを有し、前記第1の組の電流ミラーは、第1の積層トランジスタ対の共通ノードにおいて電流を提供し、前記第2の組の電流ミラーは、演算増幅器の反転ノードにおいて電流を提供し、前記第1および第2の組の電流ミラーを、それぞれそれらのノードに結合することによって、前記演算増幅器の出力ノードにおける電圧を、所望の値に調整する、請求項10に記載のバンドギャップ型電圧基準回路。
【請求項13】
第2の組の回路構成要素が、第1の組の電流ミラーと接地との間に結合された、第5の抵抗をさらに含み、第1、第2および第5の抵抗が、出力電圧の温度曲線補正をもたらすように適合されている、請求項12のバンドギャップ型電圧基準回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2006−512682(P2006−512682A)
【公表日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−565719(P2004−565719)
【出願日】平成15年12月24日(2003.12.24)
【国際出願番号】PCT/US2003/041309
【国際公開番号】WO2004/061542
【国際公開日】平成16年7月22日(2004.7.22)
【出願人】(501144003)アナログ・デバイシズ・インコーポレーテッド (51)
【Fターム(参考)】