CVD装置のクリーニング方法
【課題】反応ガスの使用量を低減することが可能なCVD装置のクリーニング方法を提供することである。
【解決手段】ノンプラズマ工程と、プラズマ工程を行うことで、成膜室22のクリーニングを行う。ノンプラズマ工程では、成膜室22内にフッ素と窒素の混合ガス等を導入して成膜室22内を摂氏250度未満に保つ。ノンプラズマ工程においては、プラズマ放電を行わない。プラズマ工程では、成膜室22内を減圧し、フッ素ガスと窒素ガスの混合ガス等を導入してプラズマを発生させる。プラズマ工程においても、成膜室22内を摂氏250度未満に保つ。
【解決手段】ノンプラズマ工程と、プラズマ工程を行うことで、成膜室22のクリーニングを行う。ノンプラズマ工程では、成膜室22内にフッ素と窒素の混合ガス等を導入して成膜室22内を摂氏250度未満に保つ。ノンプラズマ工程においては、プラズマ放電を行わない。プラズマ工程では、成膜室22内を減圧し、フッ素ガスと窒素ガスの混合ガス等を導入してプラズマを発生させる。プラズマ工程においても、成膜室22内を摂氏250度未満に保つ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はCVD装置の成膜室内部をクリーニングする方法に関し、さらに詳細には、プラズマ放電が可能な高周波電源装置を備えたCVD装置に適用され、前記成膜室内で基板に成膜が可能なCVD装置の成膜室をクリーニングする方法に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽光発電装置(光電変換装置)に用いられる太陽光発電素子は、ガラス基板に透明導電膜やアモルファスシリコン薄膜、微結晶シリコン薄膜等の薄膜層を、複数積層したものである。これらの薄膜層は、一般的にCVD(Chemical Vapor Deposition)装置を用いて、ガラス基板を挿入した成膜室内に反応ガスを充填し、化学反応を起こすことで形成される。そのため、量産等に用いられるCVD装置においては、成膜室内に不要な化合物や析出物等がこびりついてしまう。これらの化合物や析出物等は、コンタミネーションの原因となり、太陽光発電素子の特性を劣化させてしまう。そのため、成膜室は、定期的にクリーニングする必要がある。
【0003】
特許文献1には、半導体装置のクリーニング方法が開示されている。特許文献1に記載の半導体装置のクリーニング方法では、半導体装置が有するチャンバー(成膜室)内に混合ガスを導入して、成膜室内の不要物をエッチングできるとされている。特許文献1では、クリーニング方法の実施例として、様々な方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2009−533853号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の方策によると、成膜室内を隅々までクリーニングすることができず、成膜室の細部に残さが残ってしまうという不満がある。すなわち特許文献1の方策は、プラズマ放電を利用して混合ガスを活性化させるものであるから、プラズマが発生している領域についてはクリーニング効果が高い。しかしながら、成膜室内において、プラズマが存在する領域は限られており、成膜室の隅にはプラズマが至らず、残さが除去されずに残ってしまう。
【0006】
また特許文献1の方策では、チャンバー内にアルゴンガスを注入してプラズマ放電を開始した後、混合ガスをチャンバー内に導入し、析出物と混合ガスとを反応させ、生成されたガス状の反応生成物を、真空引きすることで、析出物をチャンバー内から外へ除去している。ところが、この特許文献1に記載のクリーニング方法では、クリーニング工程を実行している間は、チャンバー内に混合ガスを導入して真空排気をし続けるため、大量の混合ガスが必要となる。また、チャンバー内にプラズマ放電をし、且つ真空を維持する必要があり、長時間のクリーニングによって大量の電力を費やしてしまう。つまり、特許文献1に記載のクリーニング方法では、析出物の除去にかかるコストがかさんでしまう恐れがある。
【0007】
上記した現状に鑑み、本発明は、成膜室を隅々まで清掃することができ、且つ反応ガスの消費量の低減にも寄与するCVD装置のクリーニング方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための請求項1に記載の発明は、プラズマ放電が可能な高周波電源装置と、成膜室側減圧装置と、反応ガス注入装置を備えた成膜室を有し、前記成膜室内で基板に成膜が可能なCVD装置のクリーニング方法において、ノンプラズマ工程と、プラズマ工程を有し、前記ノンプラズマ工程は、成膜室内に第一反応ガスを注入して所定の時間だけ経過させる工程、又は成膜室内に第一反応ガスを注入しながら成膜室内を排気する工程であり、前記プラズマ工程は、成膜室内に第二反応ガスを注入しながら成膜室内を排気し、且つプラズマ放電を行う工程であり、第一反応ガスと第二反応ガスは、フッ素元素を含むものであることを特徴とするCVD装置のクリーニング方法である。
【0009】
プラズマ放電が可能な高周波電源装置と、成膜室側減圧装置と、反応ガス注入装置を備えた成膜室とは、成膜が可能な装置を備えた成膜室を指している。
本発明で採用するCVD装置のクリーニング方法は、成膜が可能な成膜室を有したCVD装置において、ノンプラズマ工程と、プラズマ工程を有している。
【0010】
ノンプラズマ工程は、成膜室内に第一反応ガスを注入して所定の時間だけ経過させる工程、又は成膜室内に第一反応ガスを注入しながら成膜室内を排気する工程であり、前記プラズマ工程は、成膜室内に第二反応ガスを注入しながら成膜室内を排気し、且つプラズマ放電を行う工程である。換言すれば、ノンプラズマ工程は、プラズマ放電を行わずに化学反応のみによるクリーニング工程であり、第一反応ガスを成膜室内に一時的に溜めるノンフロー方式か、又は第一反応ガスを成膜室に注入しながら排気するフロー方式を実施する。
【0011】
一方、プラズマ工程は、成膜室内に第二反応ガスを注入しながら成膜室内を排気し、且つプラズマ放電を行う工程である。換言すれば、プラズマ工程は、プラズマ雰囲気中における化学反応によるクリーニング工程であり、第二反応ガスを成膜室に注入しながら排気するフロー方式を実施する。
【0012】
第一反応ガスと第二反応ガスの組成は、同一であってもよい。
ノンプラズマ工程では、第一反応ガスの供給方法としてノンフロー方式、フロー方式の選択肢がある。
またノンプラズマ工程においては、第一反応ガスが至った領域をクリーニングすることができ、成膜室を隅々まで清掃することができる。その一方でノンプラズマ工程はプラズマによらずに残さと反応ガスとを反応させるので、プラズマを併用する場合と比べると、残さ除去に時間を要する。そのため、例えば、単にノンプラズマ工程だけを実行すると、残さが厚く積層された領域については、短時間では残さを充分に除去することができないことがある。
【0013】
一方、プラズマ工程では、プラズマを併用することによって反応ガスを活性化させるので、残さを除去する効果が高い。そのため成膜室内の残さを速く且つ確実に除去可能である。そのため析出物が厚くたまった部位であっても、これを充分に除去することが可能である。また析出物が厚くたまる部位は、基板を設置する領域の近傍や、成膜室に成膜用のガスを導入する部位の近傍である場合が多く、一般的にプラズマを発生させることができる領域である。そのためプラズマ工程を経ると、析出物が厚くたまる部位についても満足な残さ除去を行うことができる。
すなわち本発明は、ノンプラズマ工程にて広範囲に広がる薄い析出物を除去し、プラズマ工程で厚く析出した残さを除去することができる。
特に、ハイブリッド型と称される太陽電池の様な、結晶構造が異なる層を複数備えた基板を1つの成膜室内で成膜する成膜装置では、硬度や組成、反応性が異なる析出物が重なって付着している。この様な成膜室をクリーニングする場合には、反応条件を変えてクリーニングすることが有効であり、本発明の様なプラズマ工程とノンプラズマ工程を併用する効果か高い。
また更に、酸化シリコン膜(特にn型酸化シリコン膜)の様な共有結合を有する析出物が存在する成膜室や、合金が析出する成膜室をクリーニングする場合にも本発明の様なプラズマ工程とノンプラズマ工程を併用する効果か高い。
また本発明によると、反応ガスの節約にも寄与する。つまり、ノンプラズマ工程では、第一反応ガスをノンフロー方式で供給する場合、使用するガス量は少なくて済む。また、プラズマ工程においても、仕上げ処理を速く行うことができるため、使用するガス量は少なくて済む。すなわち、ノンプラズマ工程とプラズマ工程を組み合わせることにより、結果的に残さの除去に使用するガス量を低減できる。またクリーニングに要する総時間も短縮することができる。
すなわち本発明は、ノンプラズマ工程とプラズマ工程を組み合わせることによる相乗効果で、成膜室内をより完全に清掃することができ、且つ反応ガスの消費量を低減し、さらに所要時間を短縮することもできる。
【0014】
請求項2に記載の発明は、前記ノンプラズマ工程及び/又は前記プラズマ工程においては、成膜室内の温度を摂氏250度未満の温度に調整することを特徴とする請求項1に記載のCVD装置のクリーニング方法である。
【0015】
ノンプラズマ工程においては、反応ガスの反応性を高めるために成膜室内を昇温することが望ましい。クリーニングの効率を高めるという観点からは、成膜室の温度は高いほど良いと言える。
しかしながら、本発明者らの実験によると、成膜室内の温度を一定以上に上昇させると、成膜室やこれに連通する流路の部材を腐食させることが判った。
すなわち成膜室やこれに連通する流路は、腐食を防ぐためにステンレス鋼が多用されている。ステンレス鋼は錆びにくいが、フッ素を含む反応ガスと接触すると腐食する。そして腐食速度は、環境温度の上昇と共に増加してゆくが、本発明者らの実験によると、摂氏250度程度を境として腐食速度が急激に上昇する。
ここで本発明は、前述の通り、ノンプラズマ工程において、第一反応ガスの反応性を高めるために成膜室内を昇温し過ぎると反応速度が加速され、過度なクリーニングによって成膜室が腐食されることがある。
本発明で採用するCVD装置のクリーニング方法では、成膜室内の温度を摂氏250度未満としている。つまり、成膜室等にステンレス鋼が使用されていても、成膜室等が腐食されることを防止できる。
プラズマ工程についても同様であり、成膜室内の温度を摂氏250度未満の温度に調整することによって成膜室等にステンレス鋼が使用されていても、成膜室等が腐食されることを防止できる。
【0016】
請求項3に記載の発明は、前記第一反応ガスは、フッ素ガス、少なくともフッ素ガスと窒素ガスとを含む混合ガス、三フッ化塩素ガスのいずれかであることを特徴とする請求項1又は2に記載のCVD装置のクリーニング方法である。
【0017】
フッ素ガス、及び三フッ化塩素ガスは、反応性に優れるため、化学反応のみによるノンプラズマ工程に好適である。また、フッ素ガス、及び三フッ化塩素ガスは、地球温暖化係数(GWP)が極めて小さいため、クリーニングガスとして好適である。
【0018】
請求項4に記載の発明は、前記第二反応ガスは、フッ素ガス、少なくともフッ素ガスと窒素ガスとを含む混合ガス、フッ化カルボニルガス、少なくともフッ化カルボニルガスと酸素ガスとを含む混合ガス、三フッ化塩素ガスのいずれかであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のCVD装置のクリーニング方法である。
【0019】
フッ化カルボニルガスは、前述のフッ素ガス、及び三フッ化塩素ガスと同様に反応性に優れるため、速い反応が望まれるプラズマ工程に好適である。また、フッ化カルボニルガスも、地球温暖化係数(GWP)が極めて小さいため、クリーニングガスとして好適である。
【0020】
前記ノンプラズマ工程において、フッ素ガスと窒素ガスの混合ガスを用いた際には、成膜室内におけるフッ素ガスの分圧を1000〜5000パスカルとすることが好ましい(請求項5)。
【0021】
前記ノンプラズマ工程において、三フッ化塩素ガスを用い、成膜室内における三フッ化塩素ガスの分圧を1000〜5000パスカルとすることが望ましい(請求項6)。
【0022】
前記プラズマ工程において、フッ素ガスと窒素ガスの混合ガスを用いた際の成膜室内のフッ素ガスの分圧を20〜1000パスカルとすることが好ましい(請求項7)。
【0023】
なおこの条件下の成膜室内の全圧は、100〜1000パスカルであることが推奨される。
【0024】
また、前記プラズマ工程において、フッ化カルボニルガスと酸素ガスの混合ガスを用いた際の成膜室内のフッ化カルボニルガスの分圧を20〜1000パスカルとすることが好ましい(請求項8)。
【0025】
なおこの条件下の成膜室内の全圧は、100〜1000パスカルであることが推奨される。
【0026】
さらに、前記プラズマ工程において、三フッ化塩素ガスを用いた際の成膜室内の分圧を20〜1000パスカルとすることが好ましい(請求項9)。
【0027】
なおこの条件下の成膜室内の全圧は、20〜1000パスカルであることが推奨される。
【0028】
請求項10に記載の発明は、前記ノンプラズマ工程とプラズマ工程を順番に行った後に、再度プラズマ工程を行うことを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載のCVD装置のクリーニング方法である。
【0029】
本発明で採用するCVD装置のクリーニング方法では、前記ノンプラズマ工程とプラズマ工程を順番に行った後に、再度プラズマ工程を行う。すなわち最後にプラズマ工程を行ってクリーニングを終了する。前述の通り、成膜室は、ノンプラズマ工程にて大部分の不要物を除去し、プラズマ工程で厚く積層された析出物を除去して仕上げることができる。
【0030】
請求項11に記載の発明は、ガス分析装置を有し、ガス分析装置で前記成膜室から排出される反応ガスのモニタリングを行うことを特徴とする請求項1乃至10のいずれかに記載のCVD装置のクリーニング方法である。
【0031】
本発明で採用するCVD装置のクリーニング方法では、ガス分析装置で前記成膜室から排出される反応ガスのモニタリングを行う。例えば、プラズマ工程では、成膜室内のクリーニング状況を確認することが困難である。つまり、ガス分析装置で反応ガスの成分を分析することで、成膜室内のクリーニング状況を把握できる。その結果、過度なクリーニングによって成膜室が腐食されることを防止できる。
【0032】
またクリーニング方法を実施した後に、成膜室内に膜材料を導入してプラズマを発生させることが望ましい。
【0033】
この方法によると、成膜室そのものや、成膜室内のヒータ等の機器に薄い被膜が形成される。当該被膜は機器等の保護膜として機能する。
【0034】
請求項12に記載の発明は、前記成膜室に基板を搬入及び搬出可能な移動用チャンバーを有し、前記移動用チャンバーは収納室を有し、前記収納室は成膜室と結合して室内を一体化可能であり、収納室と成膜室とを一体化した状態で前記ノンプラズマ工程を実施することを特徴とする請求項1乃至11のいずれかに記載のCVD装置のクリーニング方法である。
【0035】
移動用チャンバーは、成膜室へ基板を搬入及び搬出するものである。つまり、移動用チャンバーは、成膜が可能な装置等を収納室内には備えていない。そのため、収納室内に反応ガスを注入することは困難であり、収納室内のクリーニングは手作業で行われていた。
本発明で採用するCVD装置のクリーニング方法では、移動用チャンバーが有する収納室と成膜室とを一体化した状態でノンプラズマ工程を実施する。すなわち、成膜室のクリーニングを行う際に、収納室も併せてクリーニングすることができる。
【発明の効果】
【0036】
本発明のCVD装置のクリーニング方法によれば、ノンプラズマ工程とプラズマ工程を組み合わせることにより、成膜室を隅々まで清掃することができ、且つ反応ガスの消費量の低減にも寄与できる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明のCVD装置のクリーニング方法に用いるCVD装置を移動用チャンバー側から見た全体斜視図である。
【図2】移動用チャンバーを収納室出入口側から見た斜視図である。
【図3】成膜チャンバーの内部構造を示す斜視図である。
【図4】成膜チャンバーに内蔵される電極の斜視図である。
【図5】移動用チャンバーの内部を示す斜視図である。
【図6】チャンバー本体の内部構造を示す平面断面図である。
【図7】本発明の実施形態で使用する基体キャリアの斜視図である。
【図8】図7の基体キャリアの分解斜視図である。
【図9】移動用チャンバーと成膜チャンバーが接合した状態を示す外観斜視図である。
【図10】移動用チャンバーから成膜チャンバーに基体キャリアが移動する状態を示す移動用チャンバーと成膜チャンバーの一部破断斜視図である。
【図11】ガス分析装置が弁と真空ポンプの間に設けられた成膜チャンバーを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下は、本発明のCVD装置のクリーニング方法の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下の説明は、実施形態の理解を容易にするためのものであり、これによって、本発明が制限して理解されるべきではない。
【0039】
図1において、1は、本発明の実施形態に係るCVD装置のクリーニング方法に用いるCVD装置を示す。CVD装置1は、ガラス製の基体46(基板)に半導体層を成膜するものである。CVD装置1は、大きく分けて、基体受取・払出し装置2と、成膜チャンバー群3と、移動用チャンバー5及びチャンバー移動装置32によって構成される。
【0040】
順次説明すると、基体受取・払出し装置2は、図1の様にベース部材4に基体移動装置8が5基設けられたものである。
成膜チャンバー群3を構成する成膜チャンバー15は、いずれも同一の構造をしたものである。図3は、成膜チャンバー15の内部構造を示す斜視図である。
【0041】
成膜チャンバー15の外観形状は、図1、3に示すように天面、底面、左右側面、裏面の6面が囲まれた箱状であり、正面には長方形の成膜室出入口16が設けられている。成膜室出入口16の開口端にはフランジ17が設けられている。
【0042】
成膜室出入口16には、気密性を備えたシャッター18が設けられている。
シャッター18は、スライド型ゲートバルブと称されるものが採用されており、図3の矢印に示すように扉状の部材14が矢印の方向にスライドする。
【0043】
成膜チャンバー15の内部は、プラズマCVD法によって基体46に成膜する成膜室22となっている。そしてその内部には、図5に示すように6基のヒータ23a,b,c,d,e,fと、5基の電極25a,b,c,d,eが設けられている。すなわち図5で細い長方形として図示されているのがヒータ23であり、太い長方形として図示されているのが電極25である。
【0044】
ヒータ23a,b,c,d,e,fは、いずれも板状の面ヒータであるが、その内部構造は、公知のプラズマCVDに使用されるものと同一であり、たとえば板体の内部にシーズヒータが埋め込まれたものや、板面状のセラミックヒータ、或いはハロゲンランプが面状に配置されたもの等を採用することができる。
【0045】
6基のヒータ23a,b,c,d,e,fの内、両端部のヒータ23a,23fは、成膜室22側面の内壁24a,24bに取り付けられている。他のヒータ23b,c,dは、所定の間隔を開けて成膜室22内に平行に縦置きされている。
【0046】
一方、電極25a,b,c,d,eは、図4に示すように枠体26の両面にシャワープレート27が取り付けられたものである。
【0047】
枠体26にはガスパイプ31が接続されており、原料ガス供給源61(反応ガス注入装置)に接続されている。また枠体26には、マッチング回路(MBX)を介して高周波交流電源60(高周波交流電源)に接続されている。
【0048】
図3に示すように、電極25a,b,c,d,eは前記した6基のヒータ23a,b,c,d,e,fの間に平行に縦置きされている。
また、成膜室22の内部には、前記した基体受取・払出し装置2と同様の基体移動装置29が設けられている。基体移動装置29の数は、前記した基体受取・払出し装置2と同一であり、その間隔も基体受取・払出し装置2と同一である。
成膜室22の内部では、図3に示すように各基体移動装置29のガイド溝11内に電極25a〜25eが位置する。
【0049】
また図3に示すように、成膜室22には弁33を介して真空ポンプ(成膜室側減圧装置)34が接続されている。
【0050】
次に移動用チャンバー5及びチャンバー移動装置32について説明する。
移動用チャンバー5は、図2に示すように天面、底面、左右側面、裏面の6面が囲まれた箱状であり、正面には長方形の収納室出入口35が設けられている。収納室出入口35の開口端にはフランジ37が設けられている。
【0051】
収納室出入口35及びフランジ37の大きさ及び形状は、前記した成膜チャンバー15の成膜室出入口16およびフランジ17と等しい。
移動用チャンバー5の収納室出入口35には、これを遮蔽する部材が無く、収納室出入口35は常に開放されている。
【0052】
移動用チャンバー5の内部は、図5に示すように基体46を収納する収納室47となっている。
収納室47の内部には、前記した基体受取・払出し装置2及び成膜室22と同様に基体移動装置49が設けられている。基体移動装置49の数は、前記した基体受取・払出し装置2及び成膜室22のそれと同一であり、その間隔も基体受取・払出し装置2等と同一である。
【0053】
また移動用チャンバー5の収納室47内には、図6に示すように6基のヒータ43a,b,c,d,e,fが設けられている。6基のヒータ43a,b,c,d,e,fの構造は、前記した成膜チャンバー15の成膜室22に配された6基のヒータ23a,b,c,d,e,fと同様である。移動用チャンバー5内の6基のヒータ43a,b,c,d,e,fの位置関係についても成膜チャンバー15の成膜室22に配された6基のヒータ23a,b,c,d,e,fと同一である。
また、収納室47には、弁45を介して真空ポンプ44が接続されている。真空ポンプ44は、収納室側減圧装置として機能する。
【0054】
チャンバー移動装置32は、横列方向と、前後方向に移動用チャンバー5を移動させるものであり、図1、図2の様に横列方向の移動はレール50に沿って行われる。つまり、図示しない電動機で、レール50に沿って移動する。
一方、前後方向には直線ガイド51に沿って行われる。つまり、図示しない油圧又は空気圧シリンダーで移動用チャンバー5が前後方向(成膜チャンバー15に対して近接・離反方向)に直線移動する。
【0055】
次に、基体46を運搬する基体キャリア72について説明する。
基体キャリア72は、図7に示すように、直方体のキャリアベース73を有し、その両側に合計8個の車輪75が設けられている。
【0056】
キャリアベース73の上面側には、二枚の枠体77が平行に対向して設けられている。
枠体77は、図7,8の様に、正方形の開口78が2個設けられたものであり、当該開口78の周囲にクリップ80が多数設けられている。
【0057】
基体キャリア72の枠体77には、図8に示すように基体46たるガラス基板が取り付けられ、この二者をクリップ80が押さえている。
したがって、基体46たるガラス基板の露出面は、対向する枠体77の内側を向いている。
【0058】
次に、CVD装置1の全体的なレイアウトを説明する。
【0059】
CVD装置1では、図1の様に、成膜チャンバー群3を構成する4個の成膜チャンバー15がいずれも成膜室出入口16を同一方向に向けた状態で横列に配置されている。また基体受取・払出し装置2は、成膜チャンバー群3と並んだ位置にある。
【0060】
そして図1、図2の様にチャンバー移動装置32のレール50が、成膜チャンバー群3及び基体受取・払出し装置2の正面側に沿って設置されており、前記した様に移動台車55を介して移動用チャンバー5がレール50に載置されている。移動用チャンバー5の収納室出入口35は、成膜チャンバー15の成膜室出入口16に対して対向する方向を向いている。
チャンバー移動装置32の電動機(図示省略)を回転して自走し、移動用チャンバー5は、成膜チャンバー群3の列方向に移動する。
またチャンバー移動装置32のシリンダー(図示省略)を伸縮させると、移動用チャンバー5は、成膜チャンバー15に対して近接・離反方向に移動する。
【0061】
次に、CVD装置1を使用したCVD方法について簡単に説明する。
【0062】
図9は、移動用チャンバー5と成膜チャンバー15が接合した状態を示す外観斜視図である。図10は、移動用チャンバー5から成膜チャンバー15に基体キャリア72が移動する状態を示す移動用チャンバー5と成膜チャンバー15の一部破断斜視図である。
【0063】
CVD方法の準備段階として、成膜チャンバー群3を構成する4個の成膜チャンバー15の成膜室22内を減圧する。具体的には、成膜室出入口16のシャッター18を閉じ、真空ポンプ(成膜室側減圧装置)34を起動すると共に、弁33を開いて成膜室22内の空気を排気する。また基体46を基体キャリア72に取り付けておく。
【0064】
CVD方法では、最初に、基体受取・払出し装置2に基体キャリア72をセットする。具体的には、基体キャリア72を基体受取・払出し装置2に載置し、基体受取・払出し装置2の基体移動装置8のガイド溝11間に基体キャリア72の車輪75を嵌め込む。
【0065】
そして図示しない制御装置によって基体受取・払出し装置2、移動用チャンバー5及び成膜チャンバー群3が有機的に動作し、基体46にシリコン系のp層、i層及びn層を成膜する。
【0066】
具体的に説明すると、基体キャリア72を基体受取・払出し装置2に載置すると、基体受取・払出し装置2の位置に移動用チャンバー5が移動する。
そして、5基の基体キャリア72が順次前進し、移動用チャンバー5側の収納室47内に移動する。
【0067】
全ての基体キャリア72が移動用チャンバー5側に移動したことが確認されると、移動用チャンバー5が再度横列方向に移動し、隣接する位置の成膜チャンバー15の前で停止する。
【0068】
続いて移動用チャンバー5のシリンダーが伸び、移動用チャンバーが成膜チャンバー15に対して近接する方向に移動する。
【0069】
そしてついには、図9、図10の様に移動用チャンバー5の先端が成膜チャンバー15の先端と当接する。
【0070】
すなわち移動用チャンバー5の収納室出入口35が、成膜チャンバー15の成膜室出入口16と合致し、移動用チャンバー5のフランジ37が、成膜チャンバー15のフランジ17と合致して移動用チャンバー5のフランジ37が、成膜チャンバー15のフランジ17を押しつける。
【0071】
前記した様に成膜チャンバー15の成膜室出入口16には気密性を備えたシャッター18が設けられているので、移動用チャンバー5においては、収納室47と、成膜チャンバー15のシャッター18とによって囲まれた閉塞空間が形成される。
【0072】
移動用チャンバー5のフランジ37と成膜チャンバー15のフランジ17が完全に結合されたことが確認されると、真空ポンプ(収納室側減圧装置)44を起動すると共に弁45を開き、前記した収納室47と、成膜チャンバー15のシャッター18とによって囲まれた閉塞空間から空気を排気し、減圧して真空にする。
【0073】
そして前記した閉塞空間が所定の真空度に達すると、移動用チャンバー5の収納室47内に設けられた6基のヒータ43a,b,c,d,e,fを昇温し、内部の基体46を加熱昇温する。このCVD方法ではチャンバー内を減圧した後に基体の加熱を行うので、基板表面に酸化膜ができず、高品質の薄膜を形成させることができる。
【0074】
基体46が所定の温度になったことが確認されると、成膜チャンバー15のシャッター18が開かれる。ここで成膜チャンバー15の成膜室22は、先に高真空状態となっているが、前記した様に収納室47と、成膜チャンバー15のシャッター18とによって囲まれた閉塞空間から空気を排気して当該部分も真空状態であるから、成膜チャンバー15のシャッター18を開いても成膜室22内の真空度は維持される。
【0075】
そしてシャッター18が完全に開いたことが確認されると、基体キャリア72は成膜チャンバー15の成膜室22内に引き込まれる。
【0076】
成膜室22の内部には6基のヒータ23a,b,c,d,e,fがあり、各電極25a,b,c,d,eとヒータ23a,b,c,d,e,fは互い違いに配されているから、基体キャリア72に搭載された各基体46は、いずれもヒータ23と電極25の間に挿入される。
【0077】
すなわち移動用チャンバー5の収納室47内には基体46が複数収納され、各基体46は所定の間隔を設けて平行に並べて縦置きされていたが、移動用チャンバー5の収納室47内の基体46は、面方向に直線移動して成膜チャンバー15の成膜室22に移送され、各基体46は、ヒータ23と電極25の間に挿入される。
【0078】
基体キャリア72の全てが成膜チャンバー15の成膜室22内に移動し、それぞれ所定の位置に配置されたことが確認されると成膜チャンバー15のシャッター18を閉じる。そして成膜チャンバー15の成膜室22内において、基体キャリア72の基体46にシリコン半導体が成膜される。
【0079】
すなわち電極25a,b,c,d,eの枠体26内に原料ガスを供給すると共に電極25a,b,c,d,eに高周波交流を印加し、電極25a,b,c,d,eと基体キャリア72の間にグロー放電を発生させて原料ガスを分解し、縦置きされた基体46の表面上に薄膜を形成させる。
【0080】
そして、一つの成膜チャンバー15の成膜室22内で、太陽電池を構成する各薄膜層を形成させる。すなわち太陽電池は、p層、i層及びn層の各半導体層が積層されたものである。CVD装置1では、一つの成膜チャンバー15の成膜室22内で、p層、i層及びn層の各半導体層を順次積層することができる。
【0081】
また成膜チャンバー15内で成膜工程が実行されている間、基体キャリア72が排出されて空状態となっている移動用チャンバー5に大気が導入されることで、収納室47内の圧力が減圧状態から外気圧と均衡化する状態へと至る。
【0082】
そして収納室47内と外気との圧力差が解消すると、チャンバー移動装置32のシリンダー71を縮め、移動用チャンバー5が成膜チャンバー15から離れる方向に移動する。すなわち接合状態であった、移動用チャンバー5を成膜チャンバー15から分離する。なお、収納室47を大気開放してから移動用チャンバー5を成膜チャンバー15から分離するので、移動用チャンバー5に大気圧がかからず、移動用チャンバー5の移動は容易である。
【0083】
そして移動用チャンバー5をレール50に沿って自走させ、成膜チャンバーの列方向に移動し、基体受取・払出し装置2の前で再度停止させる。
以下、この工程を繰り返し、基体46に薄膜を積層する作業を行う。
【0084】
つぎに、本発明の実施形態に係るCVD装置1のクリーニング方法について説明する。
本発明の実施形態に係るCVD装置1のクリーニング方法は、成膜チャンバー15(成膜室22)を単体でクリーニングする方法と、成膜チャンバー15(成膜室22)と移動用チャンバー5(収納室47)とを一体化させた状態でクリーニングする方法とがある。
まず、成膜チャンバー15(成膜室22)単体のクリーニング方法について説明する。
【0085】
成膜チャンバー15(成膜室22)単体のクリーニング方法の準備段階として、成膜室出入口16のシャッター18を閉じる。
成膜室22単体のクリーニング方法で行われる工程は、ノンプラズマ工程と、プラズマ工程の2種類であり、この2種類の工程を順に行うことで、成膜室22のクリーニングを行うことが可能である。ノンプラズマ工程と、プラズマ工程の順番は不問であり、実施回数も問わない。従ってノンプラズマ工程の実施後にプラズマ工程を実施して成膜室22のクリーニングを終えてもよく、プラズマ工程を先に実施してその後でノンプラズマ工程を実施し、成膜室22のクリーニングを終えてもよい。またノンプラズマ工程と、プラズマ工程を交互に複数回繰り返してもよい。さらにノンプラズマ工程又は複数回繰り返した後に、プラズマ工程を複数回繰り返してもよく、プラズマ工程又は複数回繰り返した後に、ノンプラズマ工程を複数回繰り返してもよい。
推奨される方策は、ノンプラズマ工程と、プラズマ工程を交互に複数回繰り返し、最後にプラズマ工程を実施して成膜室22のクリーニングを終える方策である。
【0086】
ここで、各工程について説明する。
ノンプラズマ工程は、成膜室22内でプラズマ放電を行わず、第一反応ガスによる化学反応のみでクリーニングを行う工程である。ノンプラズマ工程において、第一反応ガスの注入方法として、ノンフロー方式とフロー方式があるが、いずれの方式も採用することができる。
ここでノンフロー方式は、成膜室22内に第一反応ガスを注入して所定の時間だけ経過させた後に、第一反応ガスを排出して成膜室22内を清掃する方策である。一方、フロー方式は、成膜室22内に第一反応ガスを注入しながら成膜室22内を排気して成膜室22内を清掃する方策である。
前記した様に第一反応ガスの注入方法は任意であり、ノンフロー方式を採用しても、フロー方式を採用してもよいが、本実施形態では、ノンフロー方式を採用することとする。 第一反応ガスの注入には原料ガス供給源61を用い、成膜室22内の排気には真空ポンプ34を用いる。
【0087】
なお、ノンプラズマ工程では、ノンフロー方式とフロー方式ともに、大気圧近傍の圧力であってもよいが、成膜室22内を減圧して行うことが望ましい。
ノンプラズマ工程を実施する際の成膜室22内の圧力(全圧)は1000〜5000(Pa:パスカル)として説明する。
【0088】
ノンプラズマ工程に用いる第一反応ガスは、表1に示す3種類の中から1つを選択する。すなわち、No.1の単体のフッ素ガス、No.2のフッ素ガスと窒素ガスの混合ガスと、No.3の三フッ化塩素ガスである。なおいずれの場合でも微量の添加ガスを含んでいてもよい。
No.1のフッ素ガス単体を使用する場合においては、全圧が分圧に等しい。すなわちフッ素ガス単体を使用する場合においては、成膜室22内におけるフッ素ガスの分圧は、1000〜5000(Pa)である。
No.2のフッ素ガスと窒素ガスの混合ガスにおいては、フッ素ガス(F2)がクリーニングガスであり、窒素ガス(N2)が希釈ガスである。成膜室22内におけるフッ素ガスの分圧は、1000〜5000(Pa)である。
No.3の三フッ化塩素ガス(ClF3)においては、成膜室22内における三フッ化塩素ガス濃度は、100(vol%)である。また、成膜室22内における三フッ化塩素ガスの分圧は、1000〜5000(Pa)である。
【0089】
【表1】
【0090】
ノンプラズマ工程においては、成膜室22に内蔵されたヒータ23a,b,c,d,e,fを駆動して成膜室22内を昇温する。
成膜室22内の温度は、摂氏250度未満とすることが望ましい。またより望ましい温度範囲は、摂氏25度から摂氏200度であり、もっとも推奨される温度範囲は、摂氏50度から摂氏150度の範囲である。
すなわち成膜室22内の温度が摂氏250度以上になると、成膜室22の本体やヒータ23a,b,c,d,e,f等の内部機器、さらに真空ポンプ34等の付属機器等まで腐食してしまう懸念がある。一方、雰囲気温度が摂氏25度未満であれば、反応ガスの活性が低下し、析出物の除去が円滑に行われない。
成膜室22内の温度が摂氏50度から摂氏150度の範囲に保たれれば、析出物の除去が円滑に行われ、且つ内部機器を傷めることもない。
【0091】
一方、プラズマ工程は、成膜室22内をプラズマ雰囲気とした状態で、第二反応ガスによる化学反応でクリーニングを行う工程である。プラズマ工程では、第二反応ガスの注入方法は、フロー方式である。第二反応ガスの注入には原料ガス供給源61(図4参照)を用い、成膜室22内の排気には真空ポンプ34(図3参照)を用いる。また、プラズマ放電には、高周波交流電源60(図4参照)を用いる。
【0092】
プラズマ工程では、成膜室22内を減圧する。プラズマ工程における成膜室22内の全圧は、1(Pa)から5000(Pa)であり、推奨される全圧は10(Pa)から3000(Pa)である。また最も推奨される全圧は100(Pa)から1000(Pa)である。
本実施形態では、プラズマ工程において、成膜室22内を全圧20〜1000(Pa)に減圧している。
【0093】
プラズマ工程を実施する場合においても、成膜室22内の温度は、摂氏250度未満とすることが望ましい。またより望ましい温度範囲は、摂氏25度から摂氏200度であり、もっとも推奨される温度範囲は、摂氏50度から摂氏150度の範囲である。
すなわち成膜室22内の温度が摂氏250度以上になると、成膜室22の本体やヒータ23a,b,c,d,e,f等の内部機器、さらに真空ポンプ34等の付属機器等まで腐食してしまう懸念がある。一方、雰囲気温度が摂氏25度未満であれば、反応ガスの活性が低下し、析出物の除去が円滑に行われない。
成膜室22内の温度が摂氏50度から摂氏150度の範囲に保たれれば、析出物の除去が円滑に行われ、且つ内部機器を傷めることもない。
【0094】
プラズマ工程に用いる第二反応ガスは、表2に示す5種類の中から1つを選択する。すなわち、No.1のフッ素ガス単体、No.2のフッ素ガスと窒素ガスの混合ガス、No.3のフッ化カルボニルガス単体、No.4のフッ化カルボニルと酸素ガスの混合ガス、No.5の三フッ化塩素ガスの単体、のいずれか選択される。ただしNo.1のフッ素ガス単体、No.3のフッ化カルボニルガス単体は、微量の添加ガスを含んでいてもよい。また他の混合ガスについても微量の添加ガスを含んでいてもよい。
いずれのガスを採用する場合においても、反応ガス(希釈ガスを除く部分)の成膜室22内における分圧は、20〜1000(Pa)である。
すなわちNo.1のフッ素ガス単体には、成膜室22内におけるフッ素ガスの分圧は、20〜1000(Pa)である。No.2のフッ素ガスと窒素ガスの混合ガスにも成膜室22内におけるフッ素ガスの分圧は、20〜1000(Pa)である。
さらには、No.3のフッ化カルボニルガス単体を採用する場合には、成膜室22内におけるフッ化カルボニルガスの分圧は、20〜1000(Pa)である。
またNo.4のフッ化カルボニルと酸素ガスの混合ガス、を採用する場合にも、成膜室22内におけるフッ化カルボニルガスの分圧は、20〜1000(Pa)である。
No.5の三フッ化塩素ガスの単体を採用する場合には、成膜室22内における三フッ化塩素ガスの分圧は、20〜1000(Pa)である。
なお単体のガスを使用する場合には、分圧と全圧とは等しいものとなる。
【0095】
【表2】
【0096】
プラズマ工程では、プラズマを併用して反応性を高めているので、成膜室22内の析出物を速く且つ確実に除去可能である。
そのため、ノンプラズマ工程にて成膜室22内の広い範囲の不要物を除去し、プラズマ工程で成膜室22内に厚く積層された析出物を速く除去して仕上げることができる。またノンプラズマ工程においては第一反応ガスをノンフロー方式で供給し、一度溜めるだけで良いため、使用するガス量は少なくて済む。また、プラズマ工程においても、仕上げ処理を速く行うことができるため、使用するガス量は少なくて済む。すなわち、ノンプラズマ工程とプラズマ工程を組み合わせることにより、成膜室22内の不要物の除去に使用するガス量を、従来と比べて低減できる。また全体の処理時間も短縮することができる。
【0097】
またノンプラズマ工程とプラズマ工程を順番に実施し、あるいは繰り返した後、最後に再度ノンプラズマ工程を行うことが推奨される。
前述の通り、ノンプラズマ工程にて成膜室22の大部分の不要物を除去し、プラズマ工程で成膜室22の不要物を速く除去して仕上げることができる。
【0098】
またクリーニング工程が終了した後に、成膜室内に膜材料を導入してプラズマを発生させることによっても同様の効果が期待できる。例えばクリーニング工程が終了した後に、成膜室内にシリコン等の膜材料を形成するガスを導入してプラズマを発生させる。その結果、成膜室22の内面等が、シリコンが被覆され、このシリコン層が保護膜として機能する。
【0099】
つぎに、プラズマ工程或いはノンプラズマ工程において、成膜室から排出される反応ガスのモニタリングを行う成膜チャンバー15(成膜室22)単体のクリーニング方法について説明する。
図11に示すように、成膜室22の弁33と真空ポンプ34の間には、ガス分析装置65が設けられている。例えばプラズマ工程において、ガス分析装置65で成膜室22から排出される反応ガスのモニタリングを行う。つまり、ガス分析装置65で反応ガスの成分を分析し、排出ガスに含まれる析出物に由来するガスの成分を監視する。そして析出物に由来するガスが一定量以下となったならば、クリーニングが完了したものとみなす。
【0100】
この方法は、ノンプラズマ工程においても応用することができる。例えば、ノンプラズマ工程の最中に、定期的に内部のガスを抽出し、その成分を分析する。例えばノンプラズマ工程においてフロー方式を採用する場合には、析出物に由来するガスが一定量以下となったならば、クリーニングが完了したものとみなす。
逆にノンフロー方式を採用する場合には、析出物に由来するガスが一定量以上となったならば、クリーニングが完了したものとみなす。
この様に、成膜室から排出される反応ガス等をモニタリングすることによって成膜室22内のクリーニング状況を把握できる。その結果、過度なクリーニングによって成膜室22が腐食されることを防止できる。
【0101】
つぎに、成膜チャンバー15(成膜室22)と移動用チャンバー5(収納室47)とを一体化させた状態のクリーニング方法について説明する。
成膜チャンバー15(成膜室22)と移動用チャンバー5(収納室47)とを一体化させた状態のクリーニング方法の準備段階として、図9,10で示したように、成膜室22と収納室47とを結合して一体化させる。この時、成膜室22と収納室47のどちらからも、基材キャリア72は取り出しておく。
【0102】
成膜室22と収納室47とが一体化された状態において、前述と同様に、成膜室22にてノンプラズマ工程を実施する。その結果、成膜室22のクリーニングと共に、収納室47内も併せてクリーニングを行うことができる。なお、収納室47(移動用チャンバー5)内には、図6で示したように、6基のヒータ43a,b,c,d,e,fが設けられている。そのため、収納室47のクリーニングの際に、ヒータ43a,b,c,d,e,fのクリーニングも行うことができる。
【符号の説明】
【0103】
1 CVD装置
5 移動用チャンバー
22 成膜室
34 真空ポンプ(成膜室側減圧装置)
46 基体(基板)
47 収納室
60 高周波交流電源(高周波電源装置)
61 原料ガス供給源(反応ガス注入装置)
65 ガス分析装置
【技術分野】
【0001】
本発明はCVD装置の成膜室内部をクリーニングする方法に関し、さらに詳細には、プラズマ放電が可能な高周波電源装置を備えたCVD装置に適用され、前記成膜室内で基板に成膜が可能なCVD装置の成膜室をクリーニングする方法に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽光発電装置(光電変換装置)に用いられる太陽光発電素子は、ガラス基板に透明導電膜やアモルファスシリコン薄膜、微結晶シリコン薄膜等の薄膜層を、複数積層したものである。これらの薄膜層は、一般的にCVD(Chemical Vapor Deposition)装置を用いて、ガラス基板を挿入した成膜室内に反応ガスを充填し、化学反応を起こすことで形成される。そのため、量産等に用いられるCVD装置においては、成膜室内に不要な化合物や析出物等がこびりついてしまう。これらの化合物や析出物等は、コンタミネーションの原因となり、太陽光発電素子の特性を劣化させてしまう。そのため、成膜室は、定期的にクリーニングする必要がある。
【0003】
特許文献1には、半導体装置のクリーニング方法が開示されている。特許文献1に記載の半導体装置のクリーニング方法では、半導体装置が有するチャンバー(成膜室)内に混合ガスを導入して、成膜室内の不要物をエッチングできるとされている。特許文献1では、クリーニング方法の実施例として、様々な方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2009−533853号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の方策によると、成膜室内を隅々までクリーニングすることができず、成膜室の細部に残さが残ってしまうという不満がある。すなわち特許文献1の方策は、プラズマ放電を利用して混合ガスを活性化させるものであるから、プラズマが発生している領域についてはクリーニング効果が高い。しかしながら、成膜室内において、プラズマが存在する領域は限られており、成膜室の隅にはプラズマが至らず、残さが除去されずに残ってしまう。
【0006】
また特許文献1の方策では、チャンバー内にアルゴンガスを注入してプラズマ放電を開始した後、混合ガスをチャンバー内に導入し、析出物と混合ガスとを反応させ、生成されたガス状の反応生成物を、真空引きすることで、析出物をチャンバー内から外へ除去している。ところが、この特許文献1に記載のクリーニング方法では、クリーニング工程を実行している間は、チャンバー内に混合ガスを導入して真空排気をし続けるため、大量の混合ガスが必要となる。また、チャンバー内にプラズマ放電をし、且つ真空を維持する必要があり、長時間のクリーニングによって大量の電力を費やしてしまう。つまり、特許文献1に記載のクリーニング方法では、析出物の除去にかかるコストがかさんでしまう恐れがある。
【0007】
上記した現状に鑑み、本発明は、成膜室を隅々まで清掃することができ、且つ反応ガスの消費量の低減にも寄与するCVD装置のクリーニング方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための請求項1に記載の発明は、プラズマ放電が可能な高周波電源装置と、成膜室側減圧装置と、反応ガス注入装置を備えた成膜室を有し、前記成膜室内で基板に成膜が可能なCVD装置のクリーニング方法において、ノンプラズマ工程と、プラズマ工程を有し、前記ノンプラズマ工程は、成膜室内に第一反応ガスを注入して所定の時間だけ経過させる工程、又は成膜室内に第一反応ガスを注入しながら成膜室内を排気する工程であり、前記プラズマ工程は、成膜室内に第二反応ガスを注入しながら成膜室内を排気し、且つプラズマ放電を行う工程であり、第一反応ガスと第二反応ガスは、フッ素元素を含むものであることを特徴とするCVD装置のクリーニング方法である。
【0009】
プラズマ放電が可能な高周波電源装置と、成膜室側減圧装置と、反応ガス注入装置を備えた成膜室とは、成膜が可能な装置を備えた成膜室を指している。
本発明で採用するCVD装置のクリーニング方法は、成膜が可能な成膜室を有したCVD装置において、ノンプラズマ工程と、プラズマ工程を有している。
【0010】
ノンプラズマ工程は、成膜室内に第一反応ガスを注入して所定の時間だけ経過させる工程、又は成膜室内に第一反応ガスを注入しながら成膜室内を排気する工程であり、前記プラズマ工程は、成膜室内に第二反応ガスを注入しながら成膜室内を排気し、且つプラズマ放電を行う工程である。換言すれば、ノンプラズマ工程は、プラズマ放電を行わずに化学反応のみによるクリーニング工程であり、第一反応ガスを成膜室内に一時的に溜めるノンフロー方式か、又は第一反応ガスを成膜室に注入しながら排気するフロー方式を実施する。
【0011】
一方、プラズマ工程は、成膜室内に第二反応ガスを注入しながら成膜室内を排気し、且つプラズマ放電を行う工程である。換言すれば、プラズマ工程は、プラズマ雰囲気中における化学反応によるクリーニング工程であり、第二反応ガスを成膜室に注入しながら排気するフロー方式を実施する。
【0012】
第一反応ガスと第二反応ガスの組成は、同一であってもよい。
ノンプラズマ工程では、第一反応ガスの供給方法としてノンフロー方式、フロー方式の選択肢がある。
またノンプラズマ工程においては、第一反応ガスが至った領域をクリーニングすることができ、成膜室を隅々まで清掃することができる。その一方でノンプラズマ工程はプラズマによらずに残さと反応ガスとを反応させるので、プラズマを併用する場合と比べると、残さ除去に時間を要する。そのため、例えば、単にノンプラズマ工程だけを実行すると、残さが厚く積層された領域については、短時間では残さを充分に除去することができないことがある。
【0013】
一方、プラズマ工程では、プラズマを併用することによって反応ガスを活性化させるので、残さを除去する効果が高い。そのため成膜室内の残さを速く且つ確実に除去可能である。そのため析出物が厚くたまった部位であっても、これを充分に除去することが可能である。また析出物が厚くたまる部位は、基板を設置する領域の近傍や、成膜室に成膜用のガスを導入する部位の近傍である場合が多く、一般的にプラズマを発生させることができる領域である。そのためプラズマ工程を経ると、析出物が厚くたまる部位についても満足な残さ除去を行うことができる。
すなわち本発明は、ノンプラズマ工程にて広範囲に広がる薄い析出物を除去し、プラズマ工程で厚く析出した残さを除去することができる。
特に、ハイブリッド型と称される太陽電池の様な、結晶構造が異なる層を複数備えた基板を1つの成膜室内で成膜する成膜装置では、硬度や組成、反応性が異なる析出物が重なって付着している。この様な成膜室をクリーニングする場合には、反応条件を変えてクリーニングすることが有効であり、本発明の様なプラズマ工程とノンプラズマ工程を併用する効果か高い。
また更に、酸化シリコン膜(特にn型酸化シリコン膜)の様な共有結合を有する析出物が存在する成膜室や、合金が析出する成膜室をクリーニングする場合にも本発明の様なプラズマ工程とノンプラズマ工程を併用する効果か高い。
また本発明によると、反応ガスの節約にも寄与する。つまり、ノンプラズマ工程では、第一反応ガスをノンフロー方式で供給する場合、使用するガス量は少なくて済む。また、プラズマ工程においても、仕上げ処理を速く行うことができるため、使用するガス量は少なくて済む。すなわち、ノンプラズマ工程とプラズマ工程を組み合わせることにより、結果的に残さの除去に使用するガス量を低減できる。またクリーニングに要する総時間も短縮することができる。
すなわち本発明は、ノンプラズマ工程とプラズマ工程を組み合わせることによる相乗効果で、成膜室内をより完全に清掃することができ、且つ反応ガスの消費量を低減し、さらに所要時間を短縮することもできる。
【0014】
請求項2に記載の発明は、前記ノンプラズマ工程及び/又は前記プラズマ工程においては、成膜室内の温度を摂氏250度未満の温度に調整することを特徴とする請求項1に記載のCVD装置のクリーニング方法である。
【0015】
ノンプラズマ工程においては、反応ガスの反応性を高めるために成膜室内を昇温することが望ましい。クリーニングの効率を高めるという観点からは、成膜室の温度は高いほど良いと言える。
しかしながら、本発明者らの実験によると、成膜室内の温度を一定以上に上昇させると、成膜室やこれに連通する流路の部材を腐食させることが判った。
すなわち成膜室やこれに連通する流路は、腐食を防ぐためにステンレス鋼が多用されている。ステンレス鋼は錆びにくいが、フッ素を含む反応ガスと接触すると腐食する。そして腐食速度は、環境温度の上昇と共に増加してゆくが、本発明者らの実験によると、摂氏250度程度を境として腐食速度が急激に上昇する。
ここで本発明は、前述の通り、ノンプラズマ工程において、第一反応ガスの反応性を高めるために成膜室内を昇温し過ぎると反応速度が加速され、過度なクリーニングによって成膜室が腐食されることがある。
本発明で採用するCVD装置のクリーニング方法では、成膜室内の温度を摂氏250度未満としている。つまり、成膜室等にステンレス鋼が使用されていても、成膜室等が腐食されることを防止できる。
プラズマ工程についても同様であり、成膜室内の温度を摂氏250度未満の温度に調整することによって成膜室等にステンレス鋼が使用されていても、成膜室等が腐食されることを防止できる。
【0016】
請求項3に記載の発明は、前記第一反応ガスは、フッ素ガス、少なくともフッ素ガスと窒素ガスとを含む混合ガス、三フッ化塩素ガスのいずれかであることを特徴とする請求項1又は2に記載のCVD装置のクリーニング方法である。
【0017】
フッ素ガス、及び三フッ化塩素ガスは、反応性に優れるため、化学反応のみによるノンプラズマ工程に好適である。また、フッ素ガス、及び三フッ化塩素ガスは、地球温暖化係数(GWP)が極めて小さいため、クリーニングガスとして好適である。
【0018】
請求項4に記載の発明は、前記第二反応ガスは、フッ素ガス、少なくともフッ素ガスと窒素ガスとを含む混合ガス、フッ化カルボニルガス、少なくともフッ化カルボニルガスと酸素ガスとを含む混合ガス、三フッ化塩素ガスのいずれかであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のCVD装置のクリーニング方法である。
【0019】
フッ化カルボニルガスは、前述のフッ素ガス、及び三フッ化塩素ガスと同様に反応性に優れるため、速い反応が望まれるプラズマ工程に好適である。また、フッ化カルボニルガスも、地球温暖化係数(GWP)が極めて小さいため、クリーニングガスとして好適である。
【0020】
前記ノンプラズマ工程において、フッ素ガスと窒素ガスの混合ガスを用いた際には、成膜室内におけるフッ素ガスの分圧を1000〜5000パスカルとすることが好ましい(請求項5)。
【0021】
前記ノンプラズマ工程において、三フッ化塩素ガスを用い、成膜室内における三フッ化塩素ガスの分圧を1000〜5000パスカルとすることが望ましい(請求項6)。
【0022】
前記プラズマ工程において、フッ素ガスと窒素ガスの混合ガスを用いた際の成膜室内のフッ素ガスの分圧を20〜1000パスカルとすることが好ましい(請求項7)。
【0023】
なおこの条件下の成膜室内の全圧は、100〜1000パスカルであることが推奨される。
【0024】
また、前記プラズマ工程において、フッ化カルボニルガスと酸素ガスの混合ガスを用いた際の成膜室内のフッ化カルボニルガスの分圧を20〜1000パスカルとすることが好ましい(請求項8)。
【0025】
なおこの条件下の成膜室内の全圧は、100〜1000パスカルであることが推奨される。
【0026】
さらに、前記プラズマ工程において、三フッ化塩素ガスを用いた際の成膜室内の分圧を20〜1000パスカルとすることが好ましい(請求項9)。
【0027】
なおこの条件下の成膜室内の全圧は、20〜1000パスカルであることが推奨される。
【0028】
請求項10に記載の発明は、前記ノンプラズマ工程とプラズマ工程を順番に行った後に、再度プラズマ工程を行うことを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載のCVD装置のクリーニング方法である。
【0029】
本発明で採用するCVD装置のクリーニング方法では、前記ノンプラズマ工程とプラズマ工程を順番に行った後に、再度プラズマ工程を行う。すなわち最後にプラズマ工程を行ってクリーニングを終了する。前述の通り、成膜室は、ノンプラズマ工程にて大部分の不要物を除去し、プラズマ工程で厚く積層された析出物を除去して仕上げることができる。
【0030】
請求項11に記載の発明は、ガス分析装置を有し、ガス分析装置で前記成膜室から排出される反応ガスのモニタリングを行うことを特徴とする請求項1乃至10のいずれかに記載のCVD装置のクリーニング方法である。
【0031】
本発明で採用するCVD装置のクリーニング方法では、ガス分析装置で前記成膜室から排出される反応ガスのモニタリングを行う。例えば、プラズマ工程では、成膜室内のクリーニング状況を確認することが困難である。つまり、ガス分析装置で反応ガスの成分を分析することで、成膜室内のクリーニング状況を把握できる。その結果、過度なクリーニングによって成膜室が腐食されることを防止できる。
【0032】
またクリーニング方法を実施した後に、成膜室内に膜材料を導入してプラズマを発生させることが望ましい。
【0033】
この方法によると、成膜室そのものや、成膜室内のヒータ等の機器に薄い被膜が形成される。当該被膜は機器等の保護膜として機能する。
【0034】
請求項12に記載の発明は、前記成膜室に基板を搬入及び搬出可能な移動用チャンバーを有し、前記移動用チャンバーは収納室を有し、前記収納室は成膜室と結合して室内を一体化可能であり、収納室と成膜室とを一体化した状態で前記ノンプラズマ工程を実施することを特徴とする請求項1乃至11のいずれかに記載のCVD装置のクリーニング方法である。
【0035】
移動用チャンバーは、成膜室へ基板を搬入及び搬出するものである。つまり、移動用チャンバーは、成膜が可能な装置等を収納室内には備えていない。そのため、収納室内に反応ガスを注入することは困難であり、収納室内のクリーニングは手作業で行われていた。
本発明で採用するCVD装置のクリーニング方法では、移動用チャンバーが有する収納室と成膜室とを一体化した状態でノンプラズマ工程を実施する。すなわち、成膜室のクリーニングを行う際に、収納室も併せてクリーニングすることができる。
【発明の効果】
【0036】
本発明のCVD装置のクリーニング方法によれば、ノンプラズマ工程とプラズマ工程を組み合わせることにより、成膜室を隅々まで清掃することができ、且つ反応ガスの消費量の低減にも寄与できる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明のCVD装置のクリーニング方法に用いるCVD装置を移動用チャンバー側から見た全体斜視図である。
【図2】移動用チャンバーを収納室出入口側から見た斜視図である。
【図3】成膜チャンバーの内部構造を示す斜視図である。
【図4】成膜チャンバーに内蔵される電極の斜視図である。
【図5】移動用チャンバーの内部を示す斜視図である。
【図6】チャンバー本体の内部構造を示す平面断面図である。
【図7】本発明の実施形態で使用する基体キャリアの斜視図である。
【図8】図7の基体キャリアの分解斜視図である。
【図9】移動用チャンバーと成膜チャンバーが接合した状態を示す外観斜視図である。
【図10】移動用チャンバーから成膜チャンバーに基体キャリアが移動する状態を示す移動用チャンバーと成膜チャンバーの一部破断斜視図である。
【図11】ガス分析装置が弁と真空ポンプの間に設けられた成膜チャンバーを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下は、本発明のCVD装置のクリーニング方法の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下の説明は、実施形態の理解を容易にするためのものであり、これによって、本発明が制限して理解されるべきではない。
【0039】
図1において、1は、本発明の実施形態に係るCVD装置のクリーニング方法に用いるCVD装置を示す。CVD装置1は、ガラス製の基体46(基板)に半導体層を成膜するものである。CVD装置1は、大きく分けて、基体受取・払出し装置2と、成膜チャンバー群3と、移動用チャンバー5及びチャンバー移動装置32によって構成される。
【0040】
順次説明すると、基体受取・払出し装置2は、図1の様にベース部材4に基体移動装置8が5基設けられたものである。
成膜チャンバー群3を構成する成膜チャンバー15は、いずれも同一の構造をしたものである。図3は、成膜チャンバー15の内部構造を示す斜視図である。
【0041】
成膜チャンバー15の外観形状は、図1、3に示すように天面、底面、左右側面、裏面の6面が囲まれた箱状であり、正面には長方形の成膜室出入口16が設けられている。成膜室出入口16の開口端にはフランジ17が設けられている。
【0042】
成膜室出入口16には、気密性を備えたシャッター18が設けられている。
シャッター18は、スライド型ゲートバルブと称されるものが採用されており、図3の矢印に示すように扉状の部材14が矢印の方向にスライドする。
【0043】
成膜チャンバー15の内部は、プラズマCVD法によって基体46に成膜する成膜室22となっている。そしてその内部には、図5に示すように6基のヒータ23a,b,c,d,e,fと、5基の電極25a,b,c,d,eが設けられている。すなわち図5で細い長方形として図示されているのがヒータ23であり、太い長方形として図示されているのが電極25である。
【0044】
ヒータ23a,b,c,d,e,fは、いずれも板状の面ヒータであるが、その内部構造は、公知のプラズマCVDに使用されるものと同一であり、たとえば板体の内部にシーズヒータが埋め込まれたものや、板面状のセラミックヒータ、或いはハロゲンランプが面状に配置されたもの等を採用することができる。
【0045】
6基のヒータ23a,b,c,d,e,fの内、両端部のヒータ23a,23fは、成膜室22側面の内壁24a,24bに取り付けられている。他のヒータ23b,c,dは、所定の間隔を開けて成膜室22内に平行に縦置きされている。
【0046】
一方、電極25a,b,c,d,eは、図4に示すように枠体26の両面にシャワープレート27が取り付けられたものである。
【0047】
枠体26にはガスパイプ31が接続されており、原料ガス供給源61(反応ガス注入装置)に接続されている。また枠体26には、マッチング回路(MBX)を介して高周波交流電源60(高周波交流電源)に接続されている。
【0048】
図3に示すように、電極25a,b,c,d,eは前記した6基のヒータ23a,b,c,d,e,fの間に平行に縦置きされている。
また、成膜室22の内部には、前記した基体受取・払出し装置2と同様の基体移動装置29が設けられている。基体移動装置29の数は、前記した基体受取・払出し装置2と同一であり、その間隔も基体受取・払出し装置2と同一である。
成膜室22の内部では、図3に示すように各基体移動装置29のガイド溝11内に電極25a〜25eが位置する。
【0049】
また図3に示すように、成膜室22には弁33を介して真空ポンプ(成膜室側減圧装置)34が接続されている。
【0050】
次に移動用チャンバー5及びチャンバー移動装置32について説明する。
移動用チャンバー5は、図2に示すように天面、底面、左右側面、裏面の6面が囲まれた箱状であり、正面には長方形の収納室出入口35が設けられている。収納室出入口35の開口端にはフランジ37が設けられている。
【0051】
収納室出入口35及びフランジ37の大きさ及び形状は、前記した成膜チャンバー15の成膜室出入口16およびフランジ17と等しい。
移動用チャンバー5の収納室出入口35には、これを遮蔽する部材が無く、収納室出入口35は常に開放されている。
【0052】
移動用チャンバー5の内部は、図5に示すように基体46を収納する収納室47となっている。
収納室47の内部には、前記した基体受取・払出し装置2及び成膜室22と同様に基体移動装置49が設けられている。基体移動装置49の数は、前記した基体受取・払出し装置2及び成膜室22のそれと同一であり、その間隔も基体受取・払出し装置2等と同一である。
【0053】
また移動用チャンバー5の収納室47内には、図6に示すように6基のヒータ43a,b,c,d,e,fが設けられている。6基のヒータ43a,b,c,d,e,fの構造は、前記した成膜チャンバー15の成膜室22に配された6基のヒータ23a,b,c,d,e,fと同様である。移動用チャンバー5内の6基のヒータ43a,b,c,d,e,fの位置関係についても成膜チャンバー15の成膜室22に配された6基のヒータ23a,b,c,d,e,fと同一である。
また、収納室47には、弁45を介して真空ポンプ44が接続されている。真空ポンプ44は、収納室側減圧装置として機能する。
【0054】
チャンバー移動装置32は、横列方向と、前後方向に移動用チャンバー5を移動させるものであり、図1、図2の様に横列方向の移動はレール50に沿って行われる。つまり、図示しない電動機で、レール50に沿って移動する。
一方、前後方向には直線ガイド51に沿って行われる。つまり、図示しない油圧又は空気圧シリンダーで移動用チャンバー5が前後方向(成膜チャンバー15に対して近接・離反方向)に直線移動する。
【0055】
次に、基体46を運搬する基体キャリア72について説明する。
基体キャリア72は、図7に示すように、直方体のキャリアベース73を有し、その両側に合計8個の車輪75が設けられている。
【0056】
キャリアベース73の上面側には、二枚の枠体77が平行に対向して設けられている。
枠体77は、図7,8の様に、正方形の開口78が2個設けられたものであり、当該開口78の周囲にクリップ80が多数設けられている。
【0057】
基体キャリア72の枠体77には、図8に示すように基体46たるガラス基板が取り付けられ、この二者をクリップ80が押さえている。
したがって、基体46たるガラス基板の露出面は、対向する枠体77の内側を向いている。
【0058】
次に、CVD装置1の全体的なレイアウトを説明する。
【0059】
CVD装置1では、図1の様に、成膜チャンバー群3を構成する4個の成膜チャンバー15がいずれも成膜室出入口16を同一方向に向けた状態で横列に配置されている。また基体受取・払出し装置2は、成膜チャンバー群3と並んだ位置にある。
【0060】
そして図1、図2の様にチャンバー移動装置32のレール50が、成膜チャンバー群3及び基体受取・払出し装置2の正面側に沿って設置されており、前記した様に移動台車55を介して移動用チャンバー5がレール50に載置されている。移動用チャンバー5の収納室出入口35は、成膜チャンバー15の成膜室出入口16に対して対向する方向を向いている。
チャンバー移動装置32の電動機(図示省略)を回転して自走し、移動用チャンバー5は、成膜チャンバー群3の列方向に移動する。
またチャンバー移動装置32のシリンダー(図示省略)を伸縮させると、移動用チャンバー5は、成膜チャンバー15に対して近接・離反方向に移動する。
【0061】
次に、CVD装置1を使用したCVD方法について簡単に説明する。
【0062】
図9は、移動用チャンバー5と成膜チャンバー15が接合した状態を示す外観斜視図である。図10は、移動用チャンバー5から成膜チャンバー15に基体キャリア72が移動する状態を示す移動用チャンバー5と成膜チャンバー15の一部破断斜視図である。
【0063】
CVD方法の準備段階として、成膜チャンバー群3を構成する4個の成膜チャンバー15の成膜室22内を減圧する。具体的には、成膜室出入口16のシャッター18を閉じ、真空ポンプ(成膜室側減圧装置)34を起動すると共に、弁33を開いて成膜室22内の空気を排気する。また基体46を基体キャリア72に取り付けておく。
【0064】
CVD方法では、最初に、基体受取・払出し装置2に基体キャリア72をセットする。具体的には、基体キャリア72を基体受取・払出し装置2に載置し、基体受取・払出し装置2の基体移動装置8のガイド溝11間に基体キャリア72の車輪75を嵌め込む。
【0065】
そして図示しない制御装置によって基体受取・払出し装置2、移動用チャンバー5及び成膜チャンバー群3が有機的に動作し、基体46にシリコン系のp層、i層及びn層を成膜する。
【0066】
具体的に説明すると、基体キャリア72を基体受取・払出し装置2に載置すると、基体受取・払出し装置2の位置に移動用チャンバー5が移動する。
そして、5基の基体キャリア72が順次前進し、移動用チャンバー5側の収納室47内に移動する。
【0067】
全ての基体キャリア72が移動用チャンバー5側に移動したことが確認されると、移動用チャンバー5が再度横列方向に移動し、隣接する位置の成膜チャンバー15の前で停止する。
【0068】
続いて移動用チャンバー5のシリンダーが伸び、移動用チャンバーが成膜チャンバー15に対して近接する方向に移動する。
【0069】
そしてついには、図9、図10の様に移動用チャンバー5の先端が成膜チャンバー15の先端と当接する。
【0070】
すなわち移動用チャンバー5の収納室出入口35が、成膜チャンバー15の成膜室出入口16と合致し、移動用チャンバー5のフランジ37が、成膜チャンバー15のフランジ17と合致して移動用チャンバー5のフランジ37が、成膜チャンバー15のフランジ17を押しつける。
【0071】
前記した様に成膜チャンバー15の成膜室出入口16には気密性を備えたシャッター18が設けられているので、移動用チャンバー5においては、収納室47と、成膜チャンバー15のシャッター18とによって囲まれた閉塞空間が形成される。
【0072】
移動用チャンバー5のフランジ37と成膜チャンバー15のフランジ17が完全に結合されたことが確認されると、真空ポンプ(収納室側減圧装置)44を起動すると共に弁45を開き、前記した収納室47と、成膜チャンバー15のシャッター18とによって囲まれた閉塞空間から空気を排気し、減圧して真空にする。
【0073】
そして前記した閉塞空間が所定の真空度に達すると、移動用チャンバー5の収納室47内に設けられた6基のヒータ43a,b,c,d,e,fを昇温し、内部の基体46を加熱昇温する。このCVD方法ではチャンバー内を減圧した後に基体の加熱を行うので、基板表面に酸化膜ができず、高品質の薄膜を形成させることができる。
【0074】
基体46が所定の温度になったことが確認されると、成膜チャンバー15のシャッター18が開かれる。ここで成膜チャンバー15の成膜室22は、先に高真空状態となっているが、前記した様に収納室47と、成膜チャンバー15のシャッター18とによって囲まれた閉塞空間から空気を排気して当該部分も真空状態であるから、成膜チャンバー15のシャッター18を開いても成膜室22内の真空度は維持される。
【0075】
そしてシャッター18が完全に開いたことが確認されると、基体キャリア72は成膜チャンバー15の成膜室22内に引き込まれる。
【0076】
成膜室22の内部には6基のヒータ23a,b,c,d,e,fがあり、各電極25a,b,c,d,eとヒータ23a,b,c,d,e,fは互い違いに配されているから、基体キャリア72に搭載された各基体46は、いずれもヒータ23と電極25の間に挿入される。
【0077】
すなわち移動用チャンバー5の収納室47内には基体46が複数収納され、各基体46は所定の間隔を設けて平行に並べて縦置きされていたが、移動用チャンバー5の収納室47内の基体46は、面方向に直線移動して成膜チャンバー15の成膜室22に移送され、各基体46は、ヒータ23と電極25の間に挿入される。
【0078】
基体キャリア72の全てが成膜チャンバー15の成膜室22内に移動し、それぞれ所定の位置に配置されたことが確認されると成膜チャンバー15のシャッター18を閉じる。そして成膜チャンバー15の成膜室22内において、基体キャリア72の基体46にシリコン半導体が成膜される。
【0079】
すなわち電極25a,b,c,d,eの枠体26内に原料ガスを供給すると共に電極25a,b,c,d,eに高周波交流を印加し、電極25a,b,c,d,eと基体キャリア72の間にグロー放電を発生させて原料ガスを分解し、縦置きされた基体46の表面上に薄膜を形成させる。
【0080】
そして、一つの成膜チャンバー15の成膜室22内で、太陽電池を構成する各薄膜層を形成させる。すなわち太陽電池は、p層、i層及びn層の各半導体層が積層されたものである。CVD装置1では、一つの成膜チャンバー15の成膜室22内で、p層、i層及びn層の各半導体層を順次積層することができる。
【0081】
また成膜チャンバー15内で成膜工程が実行されている間、基体キャリア72が排出されて空状態となっている移動用チャンバー5に大気が導入されることで、収納室47内の圧力が減圧状態から外気圧と均衡化する状態へと至る。
【0082】
そして収納室47内と外気との圧力差が解消すると、チャンバー移動装置32のシリンダー71を縮め、移動用チャンバー5が成膜チャンバー15から離れる方向に移動する。すなわち接合状態であった、移動用チャンバー5を成膜チャンバー15から分離する。なお、収納室47を大気開放してから移動用チャンバー5を成膜チャンバー15から分離するので、移動用チャンバー5に大気圧がかからず、移動用チャンバー5の移動は容易である。
【0083】
そして移動用チャンバー5をレール50に沿って自走させ、成膜チャンバーの列方向に移動し、基体受取・払出し装置2の前で再度停止させる。
以下、この工程を繰り返し、基体46に薄膜を積層する作業を行う。
【0084】
つぎに、本発明の実施形態に係るCVD装置1のクリーニング方法について説明する。
本発明の実施形態に係るCVD装置1のクリーニング方法は、成膜チャンバー15(成膜室22)を単体でクリーニングする方法と、成膜チャンバー15(成膜室22)と移動用チャンバー5(収納室47)とを一体化させた状態でクリーニングする方法とがある。
まず、成膜チャンバー15(成膜室22)単体のクリーニング方法について説明する。
【0085】
成膜チャンバー15(成膜室22)単体のクリーニング方法の準備段階として、成膜室出入口16のシャッター18を閉じる。
成膜室22単体のクリーニング方法で行われる工程は、ノンプラズマ工程と、プラズマ工程の2種類であり、この2種類の工程を順に行うことで、成膜室22のクリーニングを行うことが可能である。ノンプラズマ工程と、プラズマ工程の順番は不問であり、実施回数も問わない。従ってノンプラズマ工程の実施後にプラズマ工程を実施して成膜室22のクリーニングを終えてもよく、プラズマ工程を先に実施してその後でノンプラズマ工程を実施し、成膜室22のクリーニングを終えてもよい。またノンプラズマ工程と、プラズマ工程を交互に複数回繰り返してもよい。さらにノンプラズマ工程又は複数回繰り返した後に、プラズマ工程を複数回繰り返してもよく、プラズマ工程又は複数回繰り返した後に、ノンプラズマ工程を複数回繰り返してもよい。
推奨される方策は、ノンプラズマ工程と、プラズマ工程を交互に複数回繰り返し、最後にプラズマ工程を実施して成膜室22のクリーニングを終える方策である。
【0086】
ここで、各工程について説明する。
ノンプラズマ工程は、成膜室22内でプラズマ放電を行わず、第一反応ガスによる化学反応のみでクリーニングを行う工程である。ノンプラズマ工程において、第一反応ガスの注入方法として、ノンフロー方式とフロー方式があるが、いずれの方式も採用することができる。
ここでノンフロー方式は、成膜室22内に第一反応ガスを注入して所定の時間だけ経過させた後に、第一反応ガスを排出して成膜室22内を清掃する方策である。一方、フロー方式は、成膜室22内に第一反応ガスを注入しながら成膜室22内を排気して成膜室22内を清掃する方策である。
前記した様に第一反応ガスの注入方法は任意であり、ノンフロー方式を採用しても、フロー方式を採用してもよいが、本実施形態では、ノンフロー方式を採用することとする。 第一反応ガスの注入には原料ガス供給源61を用い、成膜室22内の排気には真空ポンプ34を用いる。
【0087】
なお、ノンプラズマ工程では、ノンフロー方式とフロー方式ともに、大気圧近傍の圧力であってもよいが、成膜室22内を減圧して行うことが望ましい。
ノンプラズマ工程を実施する際の成膜室22内の圧力(全圧)は1000〜5000(Pa:パスカル)として説明する。
【0088】
ノンプラズマ工程に用いる第一反応ガスは、表1に示す3種類の中から1つを選択する。すなわち、No.1の単体のフッ素ガス、No.2のフッ素ガスと窒素ガスの混合ガスと、No.3の三フッ化塩素ガスである。なおいずれの場合でも微量の添加ガスを含んでいてもよい。
No.1のフッ素ガス単体を使用する場合においては、全圧が分圧に等しい。すなわちフッ素ガス単体を使用する場合においては、成膜室22内におけるフッ素ガスの分圧は、1000〜5000(Pa)である。
No.2のフッ素ガスと窒素ガスの混合ガスにおいては、フッ素ガス(F2)がクリーニングガスであり、窒素ガス(N2)が希釈ガスである。成膜室22内におけるフッ素ガスの分圧は、1000〜5000(Pa)である。
No.3の三フッ化塩素ガス(ClF3)においては、成膜室22内における三フッ化塩素ガス濃度は、100(vol%)である。また、成膜室22内における三フッ化塩素ガスの分圧は、1000〜5000(Pa)である。
【0089】
【表1】
【0090】
ノンプラズマ工程においては、成膜室22に内蔵されたヒータ23a,b,c,d,e,fを駆動して成膜室22内を昇温する。
成膜室22内の温度は、摂氏250度未満とすることが望ましい。またより望ましい温度範囲は、摂氏25度から摂氏200度であり、もっとも推奨される温度範囲は、摂氏50度から摂氏150度の範囲である。
すなわち成膜室22内の温度が摂氏250度以上になると、成膜室22の本体やヒータ23a,b,c,d,e,f等の内部機器、さらに真空ポンプ34等の付属機器等まで腐食してしまう懸念がある。一方、雰囲気温度が摂氏25度未満であれば、反応ガスの活性が低下し、析出物の除去が円滑に行われない。
成膜室22内の温度が摂氏50度から摂氏150度の範囲に保たれれば、析出物の除去が円滑に行われ、且つ内部機器を傷めることもない。
【0091】
一方、プラズマ工程は、成膜室22内をプラズマ雰囲気とした状態で、第二反応ガスによる化学反応でクリーニングを行う工程である。プラズマ工程では、第二反応ガスの注入方法は、フロー方式である。第二反応ガスの注入には原料ガス供給源61(図4参照)を用い、成膜室22内の排気には真空ポンプ34(図3参照)を用いる。また、プラズマ放電には、高周波交流電源60(図4参照)を用いる。
【0092】
プラズマ工程では、成膜室22内を減圧する。プラズマ工程における成膜室22内の全圧は、1(Pa)から5000(Pa)であり、推奨される全圧は10(Pa)から3000(Pa)である。また最も推奨される全圧は100(Pa)から1000(Pa)である。
本実施形態では、プラズマ工程において、成膜室22内を全圧20〜1000(Pa)に減圧している。
【0093】
プラズマ工程を実施する場合においても、成膜室22内の温度は、摂氏250度未満とすることが望ましい。またより望ましい温度範囲は、摂氏25度から摂氏200度であり、もっとも推奨される温度範囲は、摂氏50度から摂氏150度の範囲である。
すなわち成膜室22内の温度が摂氏250度以上になると、成膜室22の本体やヒータ23a,b,c,d,e,f等の内部機器、さらに真空ポンプ34等の付属機器等まで腐食してしまう懸念がある。一方、雰囲気温度が摂氏25度未満であれば、反応ガスの活性が低下し、析出物の除去が円滑に行われない。
成膜室22内の温度が摂氏50度から摂氏150度の範囲に保たれれば、析出物の除去が円滑に行われ、且つ内部機器を傷めることもない。
【0094】
プラズマ工程に用いる第二反応ガスは、表2に示す5種類の中から1つを選択する。すなわち、No.1のフッ素ガス単体、No.2のフッ素ガスと窒素ガスの混合ガス、No.3のフッ化カルボニルガス単体、No.4のフッ化カルボニルと酸素ガスの混合ガス、No.5の三フッ化塩素ガスの単体、のいずれか選択される。ただしNo.1のフッ素ガス単体、No.3のフッ化カルボニルガス単体は、微量の添加ガスを含んでいてもよい。また他の混合ガスについても微量の添加ガスを含んでいてもよい。
いずれのガスを採用する場合においても、反応ガス(希釈ガスを除く部分)の成膜室22内における分圧は、20〜1000(Pa)である。
すなわちNo.1のフッ素ガス単体には、成膜室22内におけるフッ素ガスの分圧は、20〜1000(Pa)である。No.2のフッ素ガスと窒素ガスの混合ガスにも成膜室22内におけるフッ素ガスの分圧は、20〜1000(Pa)である。
さらには、No.3のフッ化カルボニルガス単体を採用する場合には、成膜室22内におけるフッ化カルボニルガスの分圧は、20〜1000(Pa)である。
またNo.4のフッ化カルボニルと酸素ガスの混合ガス、を採用する場合にも、成膜室22内におけるフッ化カルボニルガスの分圧は、20〜1000(Pa)である。
No.5の三フッ化塩素ガスの単体を採用する場合には、成膜室22内における三フッ化塩素ガスの分圧は、20〜1000(Pa)である。
なお単体のガスを使用する場合には、分圧と全圧とは等しいものとなる。
【0095】
【表2】
【0096】
プラズマ工程では、プラズマを併用して反応性を高めているので、成膜室22内の析出物を速く且つ確実に除去可能である。
そのため、ノンプラズマ工程にて成膜室22内の広い範囲の不要物を除去し、プラズマ工程で成膜室22内に厚く積層された析出物を速く除去して仕上げることができる。またノンプラズマ工程においては第一反応ガスをノンフロー方式で供給し、一度溜めるだけで良いため、使用するガス量は少なくて済む。また、プラズマ工程においても、仕上げ処理を速く行うことができるため、使用するガス量は少なくて済む。すなわち、ノンプラズマ工程とプラズマ工程を組み合わせることにより、成膜室22内の不要物の除去に使用するガス量を、従来と比べて低減できる。また全体の処理時間も短縮することができる。
【0097】
またノンプラズマ工程とプラズマ工程を順番に実施し、あるいは繰り返した後、最後に再度ノンプラズマ工程を行うことが推奨される。
前述の通り、ノンプラズマ工程にて成膜室22の大部分の不要物を除去し、プラズマ工程で成膜室22の不要物を速く除去して仕上げることができる。
【0098】
またクリーニング工程が終了した後に、成膜室内に膜材料を導入してプラズマを発生させることによっても同様の効果が期待できる。例えばクリーニング工程が終了した後に、成膜室内にシリコン等の膜材料を形成するガスを導入してプラズマを発生させる。その結果、成膜室22の内面等が、シリコンが被覆され、このシリコン層が保護膜として機能する。
【0099】
つぎに、プラズマ工程或いはノンプラズマ工程において、成膜室から排出される反応ガスのモニタリングを行う成膜チャンバー15(成膜室22)単体のクリーニング方法について説明する。
図11に示すように、成膜室22の弁33と真空ポンプ34の間には、ガス分析装置65が設けられている。例えばプラズマ工程において、ガス分析装置65で成膜室22から排出される反応ガスのモニタリングを行う。つまり、ガス分析装置65で反応ガスの成分を分析し、排出ガスに含まれる析出物に由来するガスの成分を監視する。そして析出物に由来するガスが一定量以下となったならば、クリーニングが完了したものとみなす。
【0100】
この方法は、ノンプラズマ工程においても応用することができる。例えば、ノンプラズマ工程の最中に、定期的に内部のガスを抽出し、その成分を分析する。例えばノンプラズマ工程においてフロー方式を採用する場合には、析出物に由来するガスが一定量以下となったならば、クリーニングが完了したものとみなす。
逆にノンフロー方式を採用する場合には、析出物に由来するガスが一定量以上となったならば、クリーニングが完了したものとみなす。
この様に、成膜室から排出される反応ガス等をモニタリングすることによって成膜室22内のクリーニング状況を把握できる。その結果、過度なクリーニングによって成膜室22が腐食されることを防止できる。
【0101】
つぎに、成膜チャンバー15(成膜室22)と移動用チャンバー5(収納室47)とを一体化させた状態のクリーニング方法について説明する。
成膜チャンバー15(成膜室22)と移動用チャンバー5(収納室47)とを一体化させた状態のクリーニング方法の準備段階として、図9,10で示したように、成膜室22と収納室47とを結合して一体化させる。この時、成膜室22と収納室47のどちらからも、基材キャリア72は取り出しておく。
【0102】
成膜室22と収納室47とが一体化された状態において、前述と同様に、成膜室22にてノンプラズマ工程を実施する。その結果、成膜室22のクリーニングと共に、収納室47内も併せてクリーニングを行うことができる。なお、収納室47(移動用チャンバー5)内には、図6で示したように、6基のヒータ43a,b,c,d,e,fが設けられている。そのため、収納室47のクリーニングの際に、ヒータ43a,b,c,d,e,fのクリーニングも行うことができる。
【符号の説明】
【0103】
1 CVD装置
5 移動用チャンバー
22 成膜室
34 真空ポンプ(成膜室側減圧装置)
46 基体(基板)
47 収納室
60 高周波交流電源(高周波電源装置)
61 原料ガス供給源(反応ガス注入装置)
65 ガス分析装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマ放電が可能な高周波電源装置と、成膜室側減圧装置と、反応ガス注入装置を備えた成膜室を有し、前記成膜室内で基板に成膜が可能なCVD装置のクリーニング方法において、
ノンプラズマ工程と、プラズマ工程を有し、
前記ノンプラズマ工程は、成膜室内に第一反応ガスを注入して所定の時間だけ経過させる工程、又は成膜室内に第一反応ガスを注入しながら成膜室内を排気する工程であり、
前記プラズマ工程は、成膜室内に第二反応ガスを注入しながら成膜室内を排気し、且つプラズマ放電を行う工程であり、
第一反応ガスと第二反応ガスは、フッ素元素を含むものであることを特徴とするCVD装置のクリーニング方法。
【請求項2】
前記ノンプラズマ工程及び/又は前記プラズマ工程においては、成膜室内の温度を摂氏250度未満の温度に調整することを特徴とする請求項1に記載のCVD装置のクリーニング方法。
【請求項3】
前記第一反応ガスは、フッ素ガス、少なくともフッ素ガスと窒素ガスとを含む混合ガス、三フッ化塩素ガスのいずれかであることを特徴とする請求項1又は2に記載のCVD装置のクリーニング方法。
【請求項4】
前記第二反応ガスは、フッ素ガス、少なくともフッ素ガスと窒素ガスとを含む混合ガス、フッ化カルボニルガス、少なくともフッ化カルボニルガスと酸素ガスとを含む混合ガス、三フッ化塩素ガスのいずれかであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のCVD装置のクリーニング方法。
【請求項5】
前記ノンプラズマ工程において、フッ素ガスと窒素ガスの混合ガスを用いた際の成膜室内におけるフッ素ガスの分圧を1000〜5000パスカルとすることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のCVD装置のクリーニング方法。
【請求項6】
前記ノンプラズマ工程において、三フッ化塩素ガスを用い、成膜室内における三フッ化塩素ガスの分圧を1000〜5000パスカルとすることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のCVD装置のクリーニング方法。
【請求項7】
前記プラズマ工程において、フッ素ガスと窒素ガスの混合ガスを用いた際の成膜室内のフッ素ガスの分圧を20〜1000パスカルとすることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載のCVD装置のクリーニング方法。
【請求項8】
前記プラズマ工程において、フッ化カルボニルガスと酸素ガスの混合ガスを用いた際の成膜室内のフッ化カルボニルガスの分圧を20〜1000パスカルとすることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載のCVD装置のクリーニング方法。
【請求項9】
前記プラズマ工程において、三フッ化塩素ガスを用いた際の成膜室内の分圧を20〜1000パスカルとすることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載のCVD装置のクリーニング方法。
【請求項10】
前記ノンプラズマ工程とプラズマ工程を一回ずつあるいは複数回実施した後に、プラズマ工程を行うことを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載のCVD装置のクリーニング方法。
【請求項11】
ガス分析装置を有し、ガス分析装置で前記成膜室から排出される反応ガスのモニタリングを行うことを特徴とする請求項1乃至10のいずれかに記載のCVD装置のクリーニング方法。
【請求項12】
前記成膜室に基板を搬入及び搬出可能な移動用チャンバーを有し、前記移動用チャンバーは収納室を有し、前記収納室は成膜室と結合して室内を一体化可能であり、収納室と成膜室とを一体化した状態で前記ノンプラズマ工程を実施することを特徴とする請求項1乃至11のいずれかに記載のCVD装置のクリーニング方法。
【請求項1】
プラズマ放電が可能な高周波電源装置と、成膜室側減圧装置と、反応ガス注入装置を備えた成膜室を有し、前記成膜室内で基板に成膜が可能なCVD装置のクリーニング方法において、
ノンプラズマ工程と、プラズマ工程を有し、
前記ノンプラズマ工程は、成膜室内に第一反応ガスを注入して所定の時間だけ経過させる工程、又は成膜室内に第一反応ガスを注入しながら成膜室内を排気する工程であり、
前記プラズマ工程は、成膜室内に第二反応ガスを注入しながら成膜室内を排気し、且つプラズマ放電を行う工程であり、
第一反応ガスと第二反応ガスは、フッ素元素を含むものであることを特徴とするCVD装置のクリーニング方法。
【請求項2】
前記ノンプラズマ工程及び/又は前記プラズマ工程においては、成膜室内の温度を摂氏250度未満の温度に調整することを特徴とする請求項1に記載のCVD装置のクリーニング方法。
【請求項3】
前記第一反応ガスは、フッ素ガス、少なくともフッ素ガスと窒素ガスとを含む混合ガス、三フッ化塩素ガスのいずれかであることを特徴とする請求項1又は2に記載のCVD装置のクリーニング方法。
【請求項4】
前記第二反応ガスは、フッ素ガス、少なくともフッ素ガスと窒素ガスとを含む混合ガス、フッ化カルボニルガス、少なくともフッ化カルボニルガスと酸素ガスとを含む混合ガス、三フッ化塩素ガスのいずれかであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のCVD装置のクリーニング方法。
【請求項5】
前記ノンプラズマ工程において、フッ素ガスと窒素ガスの混合ガスを用いた際の成膜室内におけるフッ素ガスの分圧を1000〜5000パスカルとすることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のCVD装置のクリーニング方法。
【請求項6】
前記ノンプラズマ工程において、三フッ化塩素ガスを用い、成膜室内における三フッ化塩素ガスの分圧を1000〜5000パスカルとすることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のCVD装置のクリーニング方法。
【請求項7】
前記プラズマ工程において、フッ素ガスと窒素ガスの混合ガスを用いた際の成膜室内のフッ素ガスの分圧を20〜1000パスカルとすることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載のCVD装置のクリーニング方法。
【請求項8】
前記プラズマ工程において、フッ化カルボニルガスと酸素ガスの混合ガスを用いた際の成膜室内のフッ化カルボニルガスの分圧を20〜1000パスカルとすることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載のCVD装置のクリーニング方法。
【請求項9】
前記プラズマ工程において、三フッ化塩素ガスを用いた際の成膜室内の分圧を20〜1000パスカルとすることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載のCVD装置のクリーニング方法。
【請求項10】
前記ノンプラズマ工程とプラズマ工程を一回ずつあるいは複数回実施した後に、プラズマ工程を行うことを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載のCVD装置のクリーニング方法。
【請求項11】
ガス分析装置を有し、ガス分析装置で前記成膜室から排出される反応ガスのモニタリングを行うことを特徴とする請求項1乃至10のいずれかに記載のCVD装置のクリーニング方法。
【請求項12】
前記成膜室に基板を搬入及び搬出可能な移動用チャンバーを有し、前記移動用チャンバーは収納室を有し、前記収納室は成膜室と結合して室内を一体化可能であり、収納室と成膜室とを一体化した状態で前記ノンプラズマ工程を実施することを特徴とする請求項1乃至11のいずれかに記載のCVD装置のクリーニング方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−216718(P2012−216718A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−81911(P2011−81911)
【出願日】平成23年4月1日(2011.4.1)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年4月1日(2011.4.1)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】
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