説明

アモルファスカーボン膜の処理方法およびそれを用いた半導体装置の製造方法

【課題】エッチング加工後のアモルファスカーボン膜をウエット洗浄した際の酸化による劣化を抑制することができるアモルファスカーボン膜の処理方法を提供すること。
【解決手段】基板上に成膜され、ドライエッチング後にウエット洗浄処理が施されたアモルファスカーボン膜の処理方法であって、ウエット洗浄処理後、上層の形成前に、アモルファスカーボン膜の表面改質処理を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置を製造する際のマスク等として好適なアモルファスカーボン膜の処理方法、およびそれを用いた半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスにおいては、配線層間に層間絶縁膜が形成される。このような層間絶縁膜としては従来からSiO膜が用いられてきたが、近時、半導体デバイスのさらなる高速化の要求から、より低誘電率の膜が求められており、このような低誘電率層間絶縁膜(Low−k膜)としては、例えばSi、O、Cを含むSi主体の有機系材料が用いられつつある。
【0003】
しかしながら、このようなSi主体の低誘電率膜は高価である上に、他の膜との間で選択性の高いエッチングを行いにくい等の問題があるため、このような問題が生じない低誘電率膜が求められている。
【0004】
そのような材料として水素を添加したアモルファスカーボン膜が検討されている。アモルファスカーボン膜は、特許文献1に示されているように、処理ガスとして炭化水素ガス等を用いてCVDにより成膜することができ、安価であるし、Si主体の低誘電率膜のような不都合が生じない。
また、特許文献1には、アモルファスカーボン膜を、多層レジストの下層のレジスト膜の代わりや、反射防止層等の種々の用途へ適用することが開示されている。
【特許文献1】特開2002−12972号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、アモルファスカーボンを層間絶縁膜に適用する場合には、アモルファスカーボンを成膜した後、ダマシン工程にてトレンチ、ビア部分のドライエッチングを行い、その後、ウエット洗浄を行って、エッチング時のデポ物を除去する。この際、ドライエッチング加工されたアモルファスカーボン膜の側壁部分はエッチングダメージを受けており、ウエット洗浄時に水分等により比較的容易に酸化され、水酸基(OH基)が形成される。そして、形成されたOH基による酸化作用により、その上に形成される膜との密着性が劣化したり、アモルファスカーボン膜自体の誘電率が増加する等、膜特性が劣化してしまう。
【0006】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであって、エッチング加工後のアモルファスカーボン膜をウエット洗浄した際の酸化による劣化を抑制することができるアモルファスカーボン膜の処理方法を提供することを目的とする。また、そのような処理方法を適用した半導体装置の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の観点では、基板上に成膜され、ドライエッチング後にウエット洗浄処理が施されたアモルファスカーボン膜の処理方法であって、ウエット洗浄処理後、上層の形成前に、アモルファスカーボン膜の表面改質処理を行うことを特徴とするアモルファスカーボン膜の処理方法を提供する。
【0008】
本発明の第2の観点では、半導体基板上にアモルファスカーボン膜を含む層間絶縁膜を形成する工程と、前記層間絶縁膜にドライエッチングを施してホールまたはトレンチを形成する工程と、前記ドライエッチングを施した層間絶縁膜にウエット洗浄処理を施す工程と、ウエット洗浄処理後に、アモルファスカーボン膜の表面改質処理を行う工程と、表面改質処理後、アモルファスカーボン膜の上層としてバリア膜を形成する工程と、前記ホールまたはトレンチに配線金属を埋め込む工程とを含むことを特徴とする半導体装置の製造方法を提供する。
【0009】
上記第1および第2の観点において、前記表面改質処理として、アモルファスカーボン膜にシリル化剤を接触させるシリル化処理を用いることができる。前記シリル化処理はシリル化剤の蒸気を前記アモルファスカーボン膜の表面に接触させることにより行われることができる。この場合に、前記シリル化処理は、室温〜200℃の温度で行うことができる。
【0010】
また、上記第1および第2の観点において、前記シリル化剤は、
HMDS(Hexamethyldisilan)、
DMSDMA(Dimethylsilyldimethylamine)、
TMSDMA(Dimethylaminotrimethylsilane)、
TMDS(1,1,3,3-Tetramethyldisilazane)、
TMSPyrole(1-Trimethylsilylpyrole)、
BSTFA(N,O-Bis(trimethylsilyl)trifluoroacetamide)、
BDMADMS(Bis(dimethylamino)dimethylsilane)
からなる群から選択された1種または2種以上であることが好ましい。
【0011】
さらに、上記第1または第2の観点において、前記表面改質処理として、アモルファスカーボン膜にシリコン水素化ガスを接触させる処理を用いることができる。
【0012】
さらにまた、上記第1または第2の観点において、前記ウエット洗浄処理の後、前記表面改質処理の前に、前記アモルファスカーボン膜の表面酸化膜を除去する処理を行うことが好ましい。
【0013】
本発明の第3の観点では、コンピュータ上で動作し、処理装置を制御するプログラムが記憶された記憶媒体であって、前記制御プログラムは、実行時に、上記第1の観点の方法が行われるようにコンピュータに処理装置を制御させることを特徴とするコンピュータ読取可能な記憶媒体を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ドライエッチング後にウエット洗浄処理が施されたアモルファスカーボン膜に対し、上層の形成前に表面改質処理を行うので、ドライエッチングによりダメージを受けてその後ウエット洗浄により水酸基(OH基)が形成された表面が改質されるので、その上に形成される膜との密着性が劣化することを抑制することができ、かつOH基が形成されることにより上昇したアモルファスカーボン膜自体の誘電率を回復させることができる。特に、このような表面改質処理としてシリル化処理を行うことにより、アモルファスカーボン膜の表面に形成された水酸基がシリル基に置換されるので、上層の金属膜の密着性の問題やアモルファスカーボン膜自体の誘電率が上昇することを、極めて有効に解消することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
図1は本実施形態に係るアモルファスカーボン膜の処理方法を含む半導体装置の製造方法の一連の手順を示すフローチャート、図2および図3はその工程断面図である。
【0016】
本実施形態では、まず、シリコン基板(半導体ウエハ)101の上に層間絶縁膜としてのアモルファスカーボン膜102を成膜する(ステップ1、図2(a))。アモルファスカーボン膜102の成膜方法は特に限定されるものではないが、後述するようにCVDで成膜することが好ましい。この際の処理ガスとしては、プロピレン(C)、プロピン(C)、プロパン(C)、ブタン(C10)、ブチレン(C)、ブタジエン(C)、アセチレン(C)等の炭化水素ガスや、これらの化合物を主体とするものを用いることができる。また、処理ガスとしてさらに酸素を含有させることにより、比較的低温成膜であっても強固なカーボンネットワークを形成することが可能となる。
【0017】
アモルファスカーボン膜102の成膜後、層間絶縁膜としてのアモルファスカーボン膜102に対してドライエッチングを施し、ホール103、トレンチ104を形成する(ステップ2、図2(b))。具体的には、まず、レジスト層(図示せず)等をマスクとしてビアエッチングを行い、レジストを除去した後、犠牲層(図示せず)を形成し、レジスト層をマスクとしてトレンチエッチングを行い、再びレジストを除去しドライアッシング行い、犠牲膜およびストッパー層(図示せず)をエッチング除去してホール103、トレンチ104を形成する。このとき、アモルファスカーボン膜102には、エッチングやアッシングによるダメージ層105が形成されている。
【0018】
上記ステップ2の処理の後、常法に従ってウエット洗浄を行う(ステップ3、図2(c))。このウエット洗浄の際の水分によりダメージ層105が比較的容易に酸化され、OH基を有する自然酸化膜106となる。
【0019】
次に、必要に応じて表面の自然酸化膜106を除去する(ステップ4、図2(d))。自然酸化膜の除去は、プラズマ処理、Hガス等の還元ガスを用いた処理、アンモニアガスおよびフッ化水素ガスを用いたCOR処理等を用いることができる。ただし、このようにして自然酸化膜を除去してもアモルファスカーボン膜102の表面にはOH基が存在する変質層107が残存する。
【0020】
自然酸化膜106や変質層107のようなOH基を有する部分が表面に存在すると、その後に金属膜を形成した場合に金属膜が酸化したり、アモルファスカーボン膜102自体の誘電率が上昇して、膜質が劣化してしまう。
【0021】
このため、次に、上層の形成に先立って、アモルファスカーボン膜102に表面改質処理を施し、表面改質層108を形成する(ステップ5、図2(e))。このようにアモルファスカーボン膜102の表面を改質して表面のOH基を他の基に置換することにより、酸化作用を低減して、その上に形成される膜の密着性の低下を抑制することができる。また、OH基が存在することによる上昇したアモルファスカーボン膜102の誘電率を回復することができる。
【0022】
このような処理として例えばシリル化処理を挙げることができる。シリル化処理は、アモルファスカーボン膜102の表面に形成されたOH基とシリル化剤とを反応させてトリメチルシリル基等のシリル基に置換する処理であり、これによりアモルファスカーボン膜の表面が改質され、表面改質層108が形成される。
【0023】
シリル化剤としては、シリル化反応を起こす物質であれば特に制限なく使用可能であるが、分子内にシラザン結合(Si−N結合)を有する化合物群の中で比較的小さな分子構造を持つものが好ましい。具体的には、例えば、
HMDS(Hexamethyldisilan)、
DMSDMA(Dimethylsilyldimethylamine)、
TMSDMA(Dimethylaminotrimethylsilane)、
TMDS(1,1,3,3-Tetramethyldisilazane)、
TMSPyrole(1-Trimethylsilylpyrole)、
BSTFA(N,O-Bis(trimethylsilyl)trifluoroacetamide)、
BDMADMS(Bis(dimethylamino)dimethylsilane)
等を用いることが可能である。これらの化学構造を以下に示す。
【0024】
【化1】

【0025】
シリル化反応は、シリル化剤としてDMSDMAを用いた場合を例にとると、下記化2式で示され、膜中のOH基がO−Siの形に置き換わる。
【0026】
【化2】

【0027】
シリル化処理は、上記シリル化剤をアモルファスカーボン膜に接触させることにより行うことができ、典型的には後述するように上記シリル化剤の蒸気をアモルファスカーボン膜の表面に接触させることが挙げられる。シリル化剤をアモルファスカーボン膜に塗布することにより行ってもよい。
【0028】
このようにアモルファスカーボン膜102に本実施形態の処理を施した後、アモルファスカーボン膜の上層としてバリア膜110を形成する(ステップ6、図3(a))。
【0029】
次に、ホール103およびトレンチ104をCuめっき等で埋めてCu配線層111を形成する(ステップ7、図3(b))。そして、形成したCu配線層111をCMPにより研磨する(ステップ8、図3(c))。得られる半導体装置の特性を良好にする観点から、Cu配線層111の表面の自然酸化膜を除去することが好ましい。
【0030】
次に、Cu配線層111およびアモルファスカーボン膜102の上に、SiN膜等の銅拡散バリア膜112を形成する(ステップ9、図3(d))。その後、銅拡散バリア膜112の上に、次の層間絶縁膜113を形成する(ステップ10、図3(e))。この層間絶縁膜113にも同様にデュアルダマシン法によりホールおよびトレンチを形成し、Cu配線層を埋め込み、このような処理を所定回数繰り返し、銅多層配線構造を有する半導体装置が製造される。
【0031】
次に、上記図1のステップ5の本実施形態に係るアモルファスカーボン膜の表面改質処理までの一連の工程を実施するための処理装置群について説明する。図4は、上記一連の工程を実施するための処理装置群を示すブロック図である。この処理装置群は、アモルファスカーボン膜を成膜するアモルファスカーボン膜成膜装置201と、半導体ウエハWの上のアモルファスカーボン膜にドライエッチング処理を施すドライエッチング装置202と、エッチング後にレジスト膜等をアッシングするアッシング装置203と、エッチング、アッシング後にウエット洗浄処理を行うウエット洗浄処理装置204と、ウエット洗浄後にアモルファスカーボン膜の表面の自然酸化膜を除去する自然酸化膜除去装置205と、ウエット洗浄後または自然酸化膜除去後にアモルファスカーボン膜に表面改質処理としてのシリル化処理を施すシリル化処理装置206とを有している。なお、各装置間でウエハWを搬送する際には、図示しない搬送装置を用いることができる。搬送装置を用いる代わりにオペレータにより搬送してもよい。また、上記一群の装置のうち、アモルファスカーボン成膜装置201とシリル化処理装置206は以下に説明するが、他の装置は通常用いられる装置を適用することができるため、詳細な説明は省略する。
【0032】
これら各装置は、マイクロプロセッサ(コンピュータ)を備えたプロセスコントローラ211により一括して制御される構成となっている。プロセスコントローラ211には、工程管理者が各装置を管理するためにコマンドの入力操作等を行うキーボードや、各装置の稼働状況を可視化して表示するディスプレイ等からなるユーザーインターフェース212と、各処理装置で実行される各種処理をプロセスコントローラ211の制御にて実現するための制御プログラムや処理条件データ等が記録されたレシピが格納された記憶部213とが接続されている。
【0033】
そして、必要に応じて、ユーザーインターフェース212からの指示等を受けて、任意のレシピを記憶部213から呼び出してプロセスコントローラ211に実行させることで、プロセスコントローラ211の制御下で、処理装置群において所望の一連の処理が行われる。また、前記レシピは、例えば、CD−ROM、ハードディスク、フレキシブルディスク、不揮発性メモリなどの読み出し可能な記憶媒体に格納された状態のものであってもよく、さらに、各装置間、あるいは外部の装置から、例えば専用回線を介して随時伝送させてオンラインで利用したりすることも可能である。
【0034】
次に、アモルファスカーボン膜成膜装置201について詳細に説明する。図5はアモルファスカーボン膜の成膜装置の一例を示す断面図である。
【0035】
このアモルファスカーボン膜成膜装置201は、略円筒状のチャンバ21を有している。このチャンバ21の内部には、被処理体であるウエハWを水平に支持するためのサセプタ22がその中央下部に設けられた円筒状の支持部材23により支持された状態で配置されている。サセプタ22の外縁部にはウエハWをガイドするためのガイドリング24が設けられている。また、サセプタ22にはヒータ25が埋め込まれており、このヒータ25はヒータ電源26から給電されることにより被処理基板であるウエハWを所定の温度に加熱する。サセプタ22には熱電対27が埋設されており、この検出信号によりヒータ25への出力が制御されるようになっている。サセプタ22の表面近傍には電極28が埋設されており、この電極28は接地されている。さらに、サセプタ22には、ウエハWを支持して昇降させるための3本のウエハ支持ピン(図示せず)がサセプタ22の表面に対して突没可能に設けられている。
【0036】
チャンバ21の天壁21aには、絶縁部材29を介してシャワーヘッド30が設けられている。このシャワーヘッド30は、内部にガス拡散空間39を有する円筒状をなしており、上面に処理ガスを導入するガス導入口31、下面に多数のガス吐出口32を有している。シャワーヘッド30のガス導入口31には、ガス配管33を介して、アモルファスカーボン膜を形成するための処理ガスを供給するガス供給機構34が接続されている。
【0037】
シャワーヘッド30には、整合器35を介して高周波電源36が接続されており、この高周波電源36からシャワーヘッド30に高周波電力が供給されるようになっている。高周波電源36から高周波電力を供給することにより、シャワーヘッド30を介してチャンバ21内に供給されたガスをプラズマ化することができる。
【0038】
チャンバ21の底壁21bには排気管37が接続されており、この排気管37には真空ポンプを含む排気装置38が接続されている。そしてこの排気装置38を作動させることによりチャンバ21内を所定の真空度まで減圧することが可能となっている。チャンバ21の側壁には、ウエハWの搬入出を行うための搬入出口40と、この搬入出口40を開閉するゲートバルブ41とが設けられている。
【0039】
アモルファスカーボン膜成膜装置201の各構成部、例えば、ヒータ電源26、ガス供給機構34,高周波電源36、排気装置38等は、装置コントローラ42接続され、装置コントローラ42は上記プロセスコントローラ211に接続されている。そして、プロセスコントローラ211の指令に基づいて装置コントローラ42によりアモルファスカーボン膜成膜装置201の各構成部が制御されるようになっている。
【0040】
このように構成されたアモルファスカーボン膜成膜装置201においては、まず半導体ウエハWをチャンバ21内に搬入し、サセプタ22上に載置する。そして、ガス供給機構34からガス配管33およびシャワーヘッド30を介してプラズマ生成ガスとして例えばArガスを流しながら、排気装置38によりチャンバ21内を排気して、チャンバ21内を所定の減圧状態に維持するとともに、ヒータ25によりサセプタ22を100〜200℃の所定温度に加熱する。そして、高周波電源36からシャワーヘッド30に高周波電力を印加することにより、シャワーヘッド30と電極28との間に高周波電界が生じ、処理ガスがプラズマ化される。
【0041】
その状態で、ガス供給機構34からアモルファスカーボン膜を成膜するための炭化水素ガスを含む処理ガスをガス配管33およびシャワーヘッド30を介してチャンバ21内に導入する。
【0042】
これにより、チャンバ21内に形成されたプラズマにより処理ガスを励起させるとともに、ウエハW上で加熱して分解させて、所定の厚さのアモルファスカーボン膜を成膜する。
【0043】
炭化水素ガスを含む処理ガスとしては、アセチレンと水素ガスを混合したガスを用いることができる。また、この他に、化学式がCで表されるガスを用いることができ、具体的な化合物としては、2−ブチン、ブタジエンを用いることができる。また、処理ガスとしては、Arガス等の不活性ガスが含まれていてもよい。さらに、成膜の際のチャンバ内圧力は、2.7Pa(20mTorr)以下が好ましい。
【0044】
また、アモルファスカーボン膜を成膜する際のウエハ温度(成膜温度)は、200℃以下が好ましく、100〜200℃がより好ましい。
【0045】
シャワーヘッド30に印加される高周波電力の周波数およびパワーは、必要な反応に応じて適宜設定すればよい。このように高周波電力を印加することにより、チャンバ21内に高周波電界を形成して処理ガスをプラズマ化することができ、プラズマCVDによるアモルファスカーボン膜の成膜を実現することができる。プラズマ化されたガスは反応性が高いため、成膜温度をより低下させることが可能である。なお、プラズマ源としては、このような高周波電力による容量結合型のものに限らず、誘導結合型のプラズマでもよいし、マイクロ波を導波管およびアンテナを介してチャンバ21内に導入してプラズマを形成するものであってもよい。また、プラズマ生成は必須ではなく、反応性が十分な場合には、熱CVDによる成膜であってもよい。
【0046】
このようにして成膜されたアモルファスカーボン膜は、炭素と水素とからなるCH膜(0.8<x<1.2)であり、誘電率が2.7程度と既存のLow−k膜より若干高い値程度であり、十分に低誘電率の層間絶縁膜として適用可能である。また、このように形成されたアモルファスカーボン膜は、Cuの拡散に対するバリア性が高い。
【0047】
次に、アモルファスカーボン膜の表面改質処理であるシリル化処理を実施するシリル化処理装置206について説明する。図6はシリル化処理装置の概略構成を示す断面図である。シリル化処理装置206は、ウエハWを収容するチャンバ51を備えており、チャンバ51は、固定された下部容器51aと、下部容器51aを覆う蓋体51bから構成され、蓋体51bは図示しない昇降装置により昇降自在である。下部容器51aにはホットプレート52が設けられており、ホットプレート52の周囲から上記いずれかのシリル化剤の蒸気がチャンバ51内に供給されるようになっている。シリル化剤は気化器53によって気化されて蒸気状になり、Nガスにキャリアされてチャンバ51に供給される。
【0048】
ホットプレート52内には、ヒータ52aが埋設されており、このヒータ52aがヒータ電源(図示せず)から給電されることによって、例えば、室温〜200℃の範囲で温度調節が可能であり、その表面には半導体ウエハWを支持するピン54が設けられている。半導体ウエハWをホットプレート52に直接載置しないことで、ウエハWの裏面の汚染が防止される。下部容器51aの外周部上面には第1シールリング55が設けられており、蓋体51bの外周部下面には、蓋体51bを下部容器51aに押し付けた際に第1シールリング55と接触する第2シールリング56が設けられている。これら第1および第2シールリング55,56のペアーは内側と外側に2組設けられており、これらの間の空間は減圧可能となっていて、この空間を減圧することにより、チャンバ51の気密性が確保される。蓋体51bの略中心部には、チャンバ51に供給されたシリル化剤と窒素ガスを排気するための排気口57が設けられており、この排気口57は圧力調整装置58を介して、真空ポンプ59に接続されている。
【0049】
シリル化処理装置206の各構成部は、装置コントローラ60に接続され、装置コントローラ60は上記プロセスコントローラ211に接続されている。そして、プロセスコントローラ211の指令に基づいて装置コントローラ60によりシリル化処理装置206の各構成部が制御されるようになっている。
【0050】
このように構成されるシリル化処理装置206においては、蓋体51bを上昇した状態でチャンバ51内に半導体ウエハWを搬入してホットプレート52のピン54上に載置する。次いで、蓋体51bを下降させてチャンバ51内を密閉空間とし、さらにチャンバ51内を減圧して気密性を高め、この状態で、ホットプレート52を室温〜200℃の所定の温度に制御するとともに、気化器53の温度を室温〜50℃とし、シリル化剤を例えば0.1〜1.0g/min、Nガス(パージガス)を例えば1〜10L/minの流量で供給するとともに、処理圧力を666〜96000Pa(5〜720Torr)としてシリル化処理を1分程度行う。これにより、シリル化剤の蒸気が半導体ウエハWに形成されたアモルファスカーボン膜上に供給され、その表面でシリル化反応を生じて表面改質層が形成される。
【0051】
このように表面改質処理を行うことにより、実質的にOH基が存在しない表面改質層が形成されるので、その上に形成されるCu拡散バリア層との密着性の低下が抑制されるとともに、OH基の存在により上昇したアモルファスカーボン膜自体の誘電率を2.7程度に回復することができる。
【0052】
なお、本発明は上記実施形態に限定されることなく、種々の変形が可能である。例えば、上記実施形態では、アモルファスカーボン膜の表面改質処理としてシリル化処理を例示したが、アモルファスカーボン膜を改質することができる処理であれば特に限定されない。例えば、他の方面改質処理として、アモルファスカーボン膜を加熱還元雰囲気中に曝す方法を採用することもできる。ここで還元ガス(雰囲気)としては、シラン(SiH)のようなシリコン水素化ガスを挙げることができる。例えば、既述のアモルファスカーボン膜成膜装置201において、室温〜350℃の所定温度に維持されたサセプタ22上にウエハWを載置し、シャワーヘッド30から例えばシランガスを供給することにより、アモルファスカーボン膜の表面にシリコン水素化ガスを接触させる。このようにして作製されたアモルファスカーボン膜を、ESCA(X線光電子分析装置)で観察すると、Si−Cの結合スペクトルが見られることから、アモルファスカーボンに付着した水酸基は、シリコン水素化ガスと以下のような反応を起こすものと考えられる。
SiH + HO−C− → HO + HSi−C
【0053】
また、上記実施形態では、アモルファスカーボン膜を層間絶縁膜として適用し、かつアモルファスカーボン膜のみで層間絶縁膜を形成した例について示したが、図7や図8のように、SiOC系等の他の低誘電率膜120とを積層したものであっても本発明を適用可能である。また、層間絶縁膜に限らず、Cu拡散バリア膜等の他の用途にアモルファスカーボン膜を適用した場合にも同様に本発明を適用することが可能である。さらに、ドライエッチングによりホールおよびトレンチを形成した例を示したが、これらのいずれかでもよく、他のエッチングであってもよい。
【0054】
さらに、上記実施形態では、被処理基板として半導体ウエハを例示したが、これに限らず、液晶表示装置(LCD)に代表されるフラットパネルディスプレイ(FPD)用のガラス基板等、他の基板にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本実施形態に係るアモルファスカーボン膜の処理方法を含む半導体装置の製造方法の一連の手順を示すフローチャート。
【図2】本実施形態に係るアモルファスカーボン膜の処理方法を含む半導体装置の製造方法におけるアモルファスカーボン膜の表面改質処理までの工程を示す工程断面図。
【図3】本実施形態に係るアモルファスカーボン膜の処理方法を含む半導体装置の製造方法におけるアモルファスカーボン膜の表面改質処理後の工程を示す工程断面図。
【図4】上記半導体装置の製造工程のうち、アモルファスカーボン膜の表面改質処理までの一連の工程を実施するための処理装置群を説明するブロック図。
【図5】図4の処理装置群の中のアモルファスカーボン膜成膜装置の概略構成を示す断面図。
【図6】図4の処理装置群の中のシリル化処理装置の概略構成を示す断面図。
【図7】本発明のアモルファスカーボン膜の処理方法の他の適用例を示す断面図。
【図8】本発明のアモルファスカーボン膜の処理方法のさらに他の適用例を示す断面図。
【符号の説明】
【0056】
21;チャンバ
22;サセプタ
25;ヒータ
30;シャワーヘッド
34,50;ガス供給機構
36;高周波電源
42;装置コントローラ
51;チャンバ
52;ホットプレート
52a;ヒータ
53;気化器
57;排気口
60;装置コントローラ
101;シリコン基板
102;アモルファスカーボン膜
103;ホール
104;トレンチ
105;ダメージ層
106;自然酸化膜
107;変質層
108;表面改質層
110;バリア膜
111;Cu配線層
112;銅拡散バリア膜
120;低誘電率膜
201;アモルファスカーボン膜成膜装置
202;ドライエッチング装置
203;アッシング装置
204;ウエット洗浄処理装置
205;自然酸化膜除去装置
206;シリル化処理装置
211;プロセスコントローラ
212;ユーザーインターフェース
213;記憶部
W;半導体ウエハ




【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に成膜され、ドライエッチング後にウエット洗浄処理が施されたアモルファスカーボン膜の処理方法であって、
ウエット洗浄処理後、上層の形成前に、アモルファスカーボン膜の表面改質処理を行うことを特徴とするアモルファスカーボン膜の処理方法。
【請求項2】
前記表面改質処理は、アモルファスカーボン膜にシリル化剤を接触させるシリル化処理であることを特徴とする請求項1に記載のアモルファスカーボン膜の処理方法。
【請求項3】
前記シリル化処理はシリル化剤の蒸気を前記アモルファスカーボン膜の表面に接触させることにより行われることを特徴とする請求項2に記載のアモルファスカーボン膜の処理方法。
【請求項4】
前記シリル化処理は、室温〜200℃の温度で行うことを特徴とする請求項3に記載のアモルファスカーボン膜の処理方法。
【請求項5】
前記シリル化剤は、
HMDS(Hexamethyldisilan)、
DMSDMA(Dimethylsilyldimethylamine)、
TMSDMA(Dimethylaminotrimethylsilane)、
TMDS(1,1,3,3-Tetramethyldisilazane)、
TMSPyrole(1-Trimethylsilylpyrole)、
BSTFA(N,O-Bis(trimethylsilyl)trifluoroacetamide)、
BDMADMS(Bis(dimethylamino)dimethylsilane)
からなる群から選択された1種または2種以上であることを特徴とする請求項2から請求項4のいずれか1項に記載のアモルファスカーボン膜の処理方法。
【請求項6】
前記表面改質処理は、アモルファスカーボン膜にシリコン水素化ガスを接触させる処理であることを特徴とする請求項1に記載のアモルファスカーボンの処理方法。
【請求項7】
前記ウエット洗浄処理の後、前記表面改質処理の前に、前記アモルファスカーボン膜の表面酸化膜を除去する処理を行うことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のアモルファスカーボン膜の処理方法。
【請求項8】
半導体基板上にアモルファスカーボン膜を含む層間絶縁膜を形成する工程と、
前記層間絶縁膜にドライエッチングを施してホールまたはトレンチを形成する工程と、
前記ドライエッチングを施した層間絶縁膜にウエット洗浄処理を施す工程と、
ウエット洗浄処理後に、アモルファスカーボン膜の表面改質処理を行う工程と、
表面改質処理後、アモルファスカーボン膜の上層としてバリア膜を形成する工程と、
前記ホールまたはトレンチに配線金属を埋め込む工程と
を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記表面改質処理は、アモルファスカーボン膜にシリル化剤を接触させるシリル化処理であることを特徴とする請求項8に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項10】
前記シリル化処理はシリル化剤の蒸気を前記アモルファスカーボン膜の表面に接触させることにより行われることを特徴とする請求項9に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項11】
前記シリル化処理は、室温〜200℃の温度で行うことを特徴とする請求項9または請求項10に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項12】
前記シリル化剤は、
HMDS(Hexamethyldisilan)、
DMSDMA(Dimethylsilyldimethylamine)、
TMSDMA(Dimethylaminotrimethylsilane)、
TMDS(1,1,3,3-Tetramethyldisilazane)、
TMSPyrole(1-Trimethylsilylpyrole)、
BSTFA(N,O-Bis(trimethylsilyl)trifluoroacetamide)、
BDMADMS(Bis(dimethylamino)dimethylsilane)
からなる群から選択された1種または2種以上であることを特徴とする請求項9から請求項11のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項13】
前記表面改質処理は、アモルファスカーボン膜にシリコン水素化ガスを接触させる処理であることを特徴とする請求項8に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項14】
前記ウエット洗浄処理の後、前記表面改質処理の前に、前記アモルファスカーボン膜の表面酸化膜を除去する処理を行うことを特徴とする請求項8から請求項13のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項15】
コンピュータ上で動作し、処理装置を制御するプログラムが記憶された記憶媒体であって、
前記制御プログラムは、実行時に、請求項1から請求項7のいずれかの方法が行われるようにコンピュータに処理装置を制御させることを特徴とするコンピュータ読取可能な記憶媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−170788(P2009−170788A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−9504(P2008−9504)
【出願日】平成20年1月18日(2008.1.18)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】