説明

エネルギー回生装置および触媒加熱後処理システム

【課題】 エネルギー回生装置が搭載された車両を減速状態から加速する場合、応答性が良好ではなく、スモークが発生する可能性があった。
【解決手段】 車両10の運動エネルギーを回収するエネルギー回収手段の作動を制御する制御装置37と、車両10の運転状態を検出する運転状態検出手段とを具え、この運転状態検出手段による検出結果に基づき、車両10の運転状態がエネルギー回収領域にあると判断した場合、制御装置37がエネルギー回収手段を作動させる本発明のエネルギー回生装置は、吸気弁26の開閉タイミングに応じて開閉し得る吸気制御弁36を吸気通路29に具え、車両10の運転状態がエネルギー回収領域にあると判断した場合、エンジン10の負仕事が最少となるように吸気制御弁36の開閉時期を設定する開閉時期設定部をさらに有し、この設定された開閉時期となるように吸気制御弁36の開閉が制御される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の運動エネルギーを回収するエネルギー回生装置および排気ガスを浄化するための触媒を加熱して再生する触媒加熱後処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
走行中の車両の減速時に余剰となる運動エネルギーを電気的または機械的に回収するエネルギー回生装置が特許文献1にて提案されている。この特許文献1においては、エネルギーの回収時に機関のポンピングロスを低減させるため、吸気通路に設けたスロットルを絞って吸気量を減少させ、さらに排気通路と吸気通路とを連通するEGR通路に設けたEGR弁を全開状態にして排気通路内の圧力を低下させている。
【0003】
また、機関の負仕事を減少させるため、可変動弁機構を用いて吸排気弁の開閉動作を停止し、ピストンの行程に拘らず吸排気通路を完全に閉じた状態に保持し、燃焼室内の空気の入れ替えをなくすようにした技術も知られている。
【0004】
一方、機関から排出される排気ガスを清浄化するため、この排気ガス中に占める炭素または炭化物を含む粒子状物質(PM)を吸着除去する触媒が排気通路に組み込まれている。また、この触媒の機能が低下した場合、これを加熱してPMを燃焼させることにより、触媒の再生を行う加熱後処理システムを組み込んだものも知られている。
【0005】
このような触媒の加熱後処理システムにおいては、加熱再生中の触媒の温度が上昇し過ぎると、触媒自体が熱損傷を受けてしまうため、通過空気量を増大させて触媒を冷却させることが必要である。
【0006】
【特許文献1】特開2003−293819号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に開示されたエネルギー回生装置においては、車両が減速状態から加速状態へと移行した場合、EGR弁が減速状態にて全開状態となっているため、新気量が不足傾向となってスモークが発生する可能性がある。このような不具合を回避するため、車両の減速時にEGR弁の開度を絞ると、吸気通路内の圧力と排気通路内の圧力との差圧が増大する結果、機関のポンピングロスの増大に伴って回収エネルギー量が低下してしまう不具合が生ずる。
【0008】
同様に、車両の減速時に可変動弁機構を用いて吸排気弁を完全に閉止状態に保持すると、排気ガスによって作動するターボ過給機が全く機能しない状態となるため、車両の円滑な加速を行うことができない。
【0009】
一方、触媒の加熱後処理システムにおいて、触媒の加熱再生中にその温度が上昇して空気で冷却する必要が生じた場合、特に上述したエネルギー回生装置を組み込んだ車両が減速状態にあると、吸気通路側から排気通路側への空気の流れがないため、触媒を空気で冷却することが基本的に困難となってしまう。
【0010】
本発明の目的は、車両用のエネルギー回生装置および熱損傷を防止し得る触媒加熱後処理システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1の形態は、車両の運動エネルギーを回収するためのエネルギー回収手段と、このエネルギー回収手段の作動を制御する制御手段と、車両の運転状態を検出する運転状態検出手段とを具え、前記制御手段は、この運転状態検出手段による検出結果に基づき、車両の運転状態がエネルギー回収領域にあると判断した場合、前記エネルギー回収手段を作動させる車両用エネルギー回生装置であって、吸気通路に設けられて吸気弁の開閉タイミングに応じて開閉し得る吸気制御弁をさらに具え、前記制御手段は、車両の運転状態がエネルギー回収領域にあると判断した場合、機関の負仕事が最少となるように前記吸気制御弁の開閉時期を設定する開閉時期設定部をさらに有し、この開閉時期設定部にて設定された開閉時期となるように前記吸気制御弁の開閉を制御することを特徴とするものである。
【0012】
上述したエネルギー回生手段は、走行中の車両の運動エネルギーを駆動輪から電気的あるいは機械的エネルギーとして回収するものである。一例として、駆動輪の回転駆動力を動力分割機構から発電機に伝え、これによって発生する交流電気をインバータを介してバッテリに充電するものを採用することができる。
【0013】
運転状態検出手段は、運転者によって操作されるアクセルペダルの開度を検出するためのアクセル開度センサや、ブレーキペダルの踏み込み量を検出するためのブレーキセンサや、機関のクランク角位相を検出するためのクランク角センサや、車両の走行速度Vを検出するための車速センサやなどを挙げることができる。
【0014】
本発明においては、運転状態検出手段が車両の運転状態を検出する。制御手段は、この運転状態検出手段による検出結果に基づき、車両の運転状態がエネルギー回収領域にあるか否かを判断する。ここで、車両の運転状態がエネルギー回収領域にあると判断した場合、開閉時期設定部は機関の負仕事が最少となるように吸気制御弁の開閉時期を設定する。制御手段は、この開閉時期設定部にて設定された開閉時期となるように、吸気制御弁の開閉を制御する。
【0015】
本発明の第1の形態によるエネルギー回生装置において、制御手段が、運転状態検出手段による検出結果に基づき、エネルギー回生手段にて回収すべき目標回収エネルギー量を設定する目標回収エネルギー量設定部と、運転状態検出手段による検出結果に基づき、実際に回収し得るエネルギー量を導出する実回収エネルギー量導出部と、この実回収エネルギー量導出部にて導出された実回収エネルギー量が目標回収エネルギー量設定部にて設定された目標回収エネルギー量よりも大きい場合、吸気量が増大するように吸気制御弁の開閉時期を補正する開閉時期補正部とをさらに有するものであってよい。
【0016】
本発明によるエネルギー回生装置が、排気ガスを浄化するための触媒と、この触媒の温度を検出する温度センサと、触媒に燃料を供給してこれを加熱させる燃料供給手段とをさらに具え、開閉時期設定部が、燃料供給手段による燃料の供給中に温度センサによって検出された温度が所定温度以上になった場合、吸気量が最大となるように吸気制御弁の開閉時期を設定するものであってよい。
【0017】
上述した燃料供給手段は、燃焼室内に燃料を供給する燃料噴射装置以外に、触媒の上流側の排気通路内に燃料を供給する燃料添加装置などを含むことができる。
【0018】
本発明の第2の形態は、吸気通路に設けられて吸気弁の開閉タイミングに応じて開閉し得る吸気制御弁と、排気ガスを浄化するための触媒と、この触媒の温度を検出する温度センサと、前記触媒に燃料を供給してこれを加熱させる燃料供給手段と、この燃料供給手段による燃料の供給中に前記温度センサによって検出された温度が所定温度以上になった場合、吸気量が最大となるように前記吸気制御弁の開閉時期を設定する開閉時期設定部を有し、この開閉時期設定部にて設定された開閉時期となるように前記吸気制御弁の開閉を制御する制御手段とを具えたことを特徴とする触媒加熱後処理システムにある。
【0019】
本発明において触媒の再生を行う場合、燃料供給手段から燃料が触媒に供給され、この触媒に付着堆積したPMが燃焼する。この触媒の温度が温度センサによって検出される。再生中の触媒の温度が所定温度以上になった場合、吸気通路に設けられて吸気弁の開閉タイミングに応じて開閉し得る吸気制御弁と、前記触媒に燃料を供給してこれを加熱させる燃料供給手段と、この燃料供給手段による燃料の供給中に前記温度センサによって検出された温度が所定温度以上になった場合、開閉時期設定部は吸気量が最大となるように吸気制御弁の開閉時期を設定する。制御手段は、この開閉時期設定部にて設定された開閉時期となるように吸気制御弁の開閉を制御する。
【発明の効果】
【0020】
本発明のエネルギー回生装置によると、吸気弁の開閉タイミングに応じて開閉し得る吸気制御弁を吸気通路に設け、車両の運転状態がエネルギー回収領域にあると判断した場合、機関の負仕事が最少となるように吸気制御弁の開閉時期を設定する開閉時期設定部を制御手段が有し、この開閉時期設定部にて設定された開閉時期となるように吸気制御弁の開閉を制御するようにしたので、車両の減速時における回収エネルギー量を従来のものよりも増大させることができる。
【0021】
運転状態検出手段による検出結果に基づき、エネルギー回生手段にて回収すべき目標回収エネルギー量を設定する目標回収エネルギー量設定部と、運転状態検出手段による検出結果に基づき、実際に回収し得るエネルギー量を導出する実回収エネルギー量導出部と、この実回収エネルギー量導出部にて導出された実回収エネルギー量が目標回収エネルギー量設定部にて設定された目標回収エネルギー量よりも大きい場合、吸気量が増大するように吸気制御弁の開閉時期を補正する開閉時期補正部とを制御手段がさらに有する場合、車両を減速状態から加速状態に移行させる際、燃焼室内により多量の空気を導入させることができ、スモークの発生防止と相俟って車両の加速性を向上させることができる。
【0022】
本発明のエネルギー回生装置が排気ガスを浄化するための触媒と、この触媒の温度を検出する温度センサと、触媒に燃料を供給してこれを加熱させる燃料供給手段とをさらに具え、燃料供給手段による燃料の供給中に温度センサによって検出された温度が所定温度以上になると、開閉時期設定部によって吸気量が最大となるように吸気制御弁の開閉時期を設定した場合、触媒の熱破損を確実に防止することができる。
【0023】
本発明の触媒加熱後処理システムによると、吸気通路に設けられて吸気弁の開閉タイミングに応じて開閉し得る吸気制御弁と、燃料供給手段による燃料の供給中に温度センサによって検出された温度が所定温度以上になった場合、吸気量が最大となるように吸気制御弁の開閉時期を設定する開閉時期設定部を有し、この開閉時期設定部にて設定された開閉時期となるように吸気制御弁の開閉を制御する制御手段とを具えているので、触媒の熱破損を確実に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明によるエネルギー回生装置および触媒加熱後処理システムを火花点火内燃機関に応用した一実施形態について、図1〜図4を参照しながら詳細に説明するが、本発明はこのような実施形態のみに限らず、特許請求の範囲に記載された本発明の概念に包含されるあらゆる変更や修正が可能であり、従って本発明の精神に帰属する他の任意の技術にも当然応用することができる。
【0025】
本実施形態におけるエンジンシステムの概念を図1に示し、そのエネルギー回生装置の主要概念を図2に示し、このエンジンシステムに関する制御ブロックを図3に示す。本実施形態におけるエンジン11は、燃料であるガソリンを燃料噴射弁12から燃焼室13内に直接噴射し、点火プラグ14によって着火させる型式のものであるが、アルコールやLPG(液化天然ガス)などを燃料として使用することも可能である。
【0026】
エンジン11のクランク軸15に連結された動力分割機構16には、減速機17とモータ18と発電機19とが接続し、減速機17には左右一対の駆動輪20が連結され、モータ18および発電機19にはインバータ21を介して蓄電池22が電気的に接続している。エンジン11からの動力は、動力分割機構16を介して減速機17から駆動輪20に伝達され、蓄電池22を電源とするモータ18からの動力は、動力分割機構16を介して減速機17から駆動輪20に伝達される。車両10の減速時にその運動エネルギーを回生する場合、駆動輪20からの動力が減速機17を介して動力分割機構16に伝達され、モータ18を発電機として機能させてインバータ21を介し電気エネルギーとして蓄電池22に蓄えるようになっており、従ってこれらモータ18,インバータ21,蓄電池22などが本発明におけるエネルギー回収手段として機能する。このように、本実施形態の車両10は、エンジン11とモータ18との2つの動力源を自由に組み合わせて走行させることが可能である。
【0027】
燃焼室13にそれぞれ臨む吸気ポート23および排気ポート24が形成されたシリンダヘッド25には、吸気ポート23を開閉する吸気弁26および排気ポート24を開閉する排気弁27を含む動弁機構と、燃焼室13内の混合気を着火させる前述の点火プラグ14とが組み込まれ、さらにこの点火プラグ14に火花を発生させるイグニッションコイル28が搭載されている。
【0028】
吸気ポート23に連通するようにシリンダヘッド25に連結されて吸気ポート23と共に吸気通路29を画成する吸気管30の上流端側には、大気中に含まれる塵埃などを除去して吸気通路29に導くためのエアクリーナ31が設けられている。このエアクリーナ31よりも下流側に位置する吸気管30の部分には、運転者によって操作されるアクセルペダル32の踏み込み量に基づき、スロットルアクチュエータ33によって開度が調整されるスロットル弁34が組み込まれている。本実施形態では、アクセルペダル32の踏み込み動作と、スロットル弁34の開閉動作とを切り離して電気的に制御できるようにしているが、これらアクセルペダル32とスロットル弁34とを機械的に連結したものであってもよい。さらに、このスロットル弁34よりも下流側に位置する吸気管30の部分には、吸気弁26の開閉時期に応じた所定のタイミングにてアクチュエータ35により吸気通路29を開閉する吸気制御弁36が組み込まれている。エンジン11が気筒当たり複数の吸気ポート23をそれぞれ有する場合、吸気制御弁36を各吸気ポート23毎に独立して設け、各吸気ポート23を個別に開閉することも可能であるが、個々の気筒を単位として吸気制御弁36を開閉するようにしてもよい。これら吸気制御弁36およびそのアクチュエータ35は、吸気弁26の開閉時期に応じて所望の時期に正確に吸気制御弁36が開閉するように、極めて制御応答性の高いものである。
【0029】
本実施形態における吸気制御弁36は、車両10の運転状態に基づき、例えばエンジン11の低回転高負荷運転領域では吸気弁26の開弁時期よりも遅く開弁し、そして吸気弁26の閉弁時期に合わせて閉弁する一方、それ以外の運転領域では吸気弁26の開閉動作に拘らず、基本的に常時全開状態となるように制御装置37からの指令に基づき、アクチュエータ35によってその開閉状態が制御される。この結果、エンジン11の低回転高負荷運転領域ではエンジン11の吸気行程の途中まで負圧状態となっている燃焼室12内に吸気制御弁36よりも上流側に位置する吸気通路14内の空気が一気に流れ込み、一種の慣性過給効果により多量の空気を燃焼室12内に充填させることが可能となる。換言すれば、この吸気制御弁36を用いた過給においては、吸気の慣性と吸気制御弁36よりも下流側に発生する負圧とを利用して制御の開始直後から実際の過給がなされることとなる。従って、ターボ過給方式などよりも制御の応答性に優れ、いわゆる車両の加速遅れを解消することができる。なお、このような吸気制御弁36に関する基本的な技術は、2103年フランクフルトモーターショーにて Siemens VDO Automotive AG から9月9日にプレス発表された "Impulses for Greater Driving Fun" に詳述されている。
【0030】
排気ポート24に連通するようにシリンダヘッド25に連結されて排気ポート24と共に排気通路38を画成する排気管39の途中には、燃焼室13内での混合気の燃焼により生成する有害物質を無害化する三元触媒40が組み込まれ、この三元触媒40よりも上流側の排気管39の途中には、この三元触媒40に付着堆積するPMを燃焼させるための燃料を供給する燃料添加弁41が取り付けられている。この燃料添加弁41は、制御装置37に予め設定されたプログラムに従い、所定のタイミングにて所定量の燃料を排気通路38内に噴射し、三元触媒40の加熱後処理、つまり再生を行うものである。なお、三元触媒40を排気通路38に沿って直列に複数個組み込むことも有効である。
【0031】
従って、エアクリーナ31を通って吸気管30から燃焼室13内に供給される吸気は、燃料噴射弁12から燃焼室13内に噴射される燃料と混合気を形成し、点火プラグ14の火花により着火して燃焼し、これによって生成する排気ガスが三元触媒40を通って排気管39から大気中に排出される。
【0032】
本実施形態では、エンジン11およびこのエンジン11が搭載される車両10の運転状態を把握して制御装置37が燃料噴射弁11からの燃料の噴射量および噴射時期,イグニッションコイル28を介した点火プラグ14の点火時期,スロットルアクチュエータ33の作動,アクチュエータ35を介した吸気制御弁36の作動,燃料添加弁41からの排気通路38内への燃料の添加量などを制御するため、以下に記すような各種センサ類を具えている。すなわち、車両10の走行速度Vを検出する車速センサ42および蓄電池22の充電容量を検出する充電容量センサ43が組み込まれ、これらの検出信号が制御装置37に出力される。運転者によって操作されるアクセルペダル32の踏み込み量とブレーキペダル44の踏み込み状態を検出してこれを制御装置37にそれぞれ出力するアクセル開度センサ45およびブレーキセンサ46を具えている。また、ピストン47が往復動するシリンダブロック48には、連接棒49を介してピストン47が連結されるクランク軸15の回転位相、つまりクランク角を検出してこれを制御装置37に出力するクランク角センサ50が取り付けられている。本実施形態においては、このクランク角センサ50をエンジン回転数センサとしても利用している。さらに、排気管39と三元触媒40との上流側の接続部分には、三元触媒40の温度を検出してこれを制御装置37に出力する触媒温度センサ51が設けられている。
【0033】
制御装置37は、これらセンサ42,43,45,46,50,51などからの検出信号に基づき、予め設定されたプログラムに従って円滑なエンジン11およびモータ18の運転がなされるように、燃料噴射弁11,点火プラグ14,スロットルアクチュエータ33,吸気制御弁36,燃料添加弁41などの作動を制御するようになっている。
【0034】
本実施形態における制御装置37は、車速センサ42およびアクセル開度センサ45からの検出信号に基づいてエンジン11の駆動トルク、つまり燃料噴射弁11からの燃料の噴射量を算出する燃料噴射量設定部52と、この燃料噴射量設定部52にて設定された燃料噴射量に対応した燃料の噴射時期を設定する噴射時期設定部53と、車速センサ42,アクセル開度センサ45,ブレーキセンサ46からの検出結果に基づき、車両10の運転状態がエネルギー回収領域にあるか否かを判定する回生判定部54と、この回生判定部54にて車両10の運転状態がエネルギー回収領域にあると判断された場合、エンジン11の負仕事が最少となるように吸気制御弁36の開弁時期Cを設定する開弁時期設定部55と、充電容量センサ43からの検出結果に基づき、蓄電池22に回収すべき目標回収エネルギー量Jを設定する目標回収エネルギー量設定部56と、車速センサ42,ブレーキセンサ46による検出結果に基づき、実際に回収し得るエネルギー量Jを導出する実回収エネルギー量導出部57と、この実回収エネルギー量導出部57にて導出された実回収エネルギー量Jが目標回収エネルギー量設定部56にて設定された目標回収エネルギー量Jよりも大きい場合、燃焼室13内に供給される吸気量が増大するように、開弁時期設定部55にて設定された吸気制御弁36の開弁時期をCに補正する、つまり開弁時期Cを遅らせる開弁時期補正部58と、燃料添加弁41からの燃料の噴射状態に基づき、三元触媒40の加熱後処理がなされているか否かを判定し、この判定結果を燃料噴射量設定部52および開弁時期設定部55に出力する触媒後処理判定部59とを具えている。
【0035】
上述した燃料噴射量設定部52は、周知のようにエンジン回転数などに応じてあらかじめ設定された燃料の噴射量に関する図示しないマップを有している。燃料噴射量は、エンジン負荷と同義であるので、燃料噴射量の算出に代えてエンジン負荷を算出するようにしてもよい。この燃料噴射量設定部52は、アクセルペダル32が踏み込まれていない場合や、ブレーキペダル44が踏み込まれている場合や、あるいは触媒後処理判定部59が三元触媒40を再生中であると判定した場合、基本的に燃料噴射量が0となるように設定する。
【0036】
回生判定部54は、アクセルペダル32が踏み込まれておらず、かつブレーキペダル44が踏み込まれている場合、エネルギー回収領域にあると判断する。
【0037】
開弁時期設定部55は、三元触媒40の再生中に触媒温度センサ51によって検出された温度が所定温度以上になった場合、回生判定部54での判定結果に応じて設定される吸気制御弁36の開弁時期Cや、開弁時期補正部58にて設定される吸気制御弁36の開閉時期Cに拘らず、吸気量が最大となるように吸気制御弁36の開閉時期Cを設定する。三元触媒40の再生中に触媒温度センサ51によって検出された温度Tが所定温度T未満の場合、本実施形態では吸気制御弁36の開閉時期として、エンジン11の負仕事が最少となる開弁時期Cを選択し、三元触媒40を空気ができるだけ通過しないように配慮している。
【0038】
制御装置37は、開弁時期設定部55および開弁時期補正部58にて設定された開弁時期となるように、吸気制御弁36の開閉を制御する。本実施形態においては、吸気制御弁36の閉弁時期はすべて一定に設定され、吸気弁26の閉弁時期と同じか、あるいはそれよりも多少遅めに閉弁するようになっている。
【0039】
このような本実施形態における吸気制御弁36の制御手順を図4に示す。すなわち、S11のステップにてアクセル開度が0であるか否かを判定し、ここでアクセル開度が0ではない、つまり運転者がアクセルペダル32を踏み込んでいると判断した場合には、エネルギーの回生を行うことができないので、S12のステップに移行し、通常制御、つまりエンジン11の低回転高負荷運転領域では吸気弁26の開弁時期よりも遅く開弁し、そして吸気弁26の閉弁時期に合わせて閉弁する一方、それ以外の運転領域では吸気弁26の開閉動作に拘らず、基本的に常時全開状態となるように制御される。
【0040】
S11のステップにてアクセル開度が0である、つまり運転者がアクセルペダル32を踏み込んでいないと判断した場合には、S13のステップに移行して車速Vが例えば、エネルギーの回生を有効に行うことができる10km/h以上であるか否かを判定する。ここで車速Vが10km/h未満、つまりエネルギーの回生制御が困難であると判断した場合には、S12の通常制御のステップに移行する。
【0041】
一方、S13のステップにて車速Vが10km/h以上であると判断した場合には、S14のステップに移行して三元触媒40の再生中であるか否かを判定する。ここで三元触媒40が再生中ではないと判断した場合、S15のステップに移行してブレーキペダル44が踏み込まれているか否かを判定する。ここでブレーキペダル44が踏み込まれていないと判断した場合には、運転者が車両10の減速を希望していないと判断してS12の通常制御のステップに移行する。
【0042】
これに対し、S15のステップにてブレーキペダル44が踏み込まれていると判断した場合には、運転者が車両10の減速を希望していると判断してS16のステップに移行し、目標回収エネルギー量Jを設定すると共に実回収エネルギー量Jを導出し、さらにS17のステップにて目標回収エネルギー量Jが実回収エネルギー量J以上であるか否かが判定される。ここで、目標回収エネルギー量Jが実回収エネルギー量J以上である、つまり回収エネルギー量を最大にする必要があると判断した場合には、S18のステップに移行してエンジン11の負仕事が最少となるような吸気制御弁36の開弁時期Cを設定し、S19のステップにてこの開弁時期Cにて吸気制御弁36が開弁するようにアクチュエータ35の作動を制御する。これにより、従来のものよりもエネルギーの回収効率を高めることができる。
【0043】
また、S17のステップにて目標回収エネルギー量Jが実回収エネルギー量Jよりも少ないと判断した場合には、目標回収エネルギー量Jを回収すれば充分であるので、S20のステップに移行し、吸気量が開弁時期Cよりも増大するような吸気制御弁36の開弁時期Cを設定し、S19のステップにてこの開弁時期Cにて吸気制御弁36が開弁するようにアクチュエータ35の作動を制御する。このように、目標回収エネルギー量Jよりも実回収エネルギー量Jが多い場合、必要のないエネルギーを回収せずに吸気制御弁36の開弁時期をCに設定し、燃焼室13内に流入する吸気量を増大させておくことにより、車両10が加速状態に切り換わった時の加速応答性を高めることができ、しかもスモークの発生も未然に防止することが可能である。
【0044】
一方、S14のステップにて三元触媒40の再生中であると判断した場合には、S21のステップに移行し、三元触媒40の温度Tが予め設定した温度T以上であるか否かを判定する。ここで、触媒温度センサ51によって検出された温度Tが設定温度T以上である、つまり三元触媒40が熱破損を生ずるおそれがあると判断した場合には、S22のステップに移行して吸気量が最大となるような吸気制御弁36の開弁時期Cを設定し、S19のステップにてこの開弁時期Cにて吸気制御弁36が開弁するようにアクチュエータ35の作動を制御する。これにより、三元触媒40を通過する空気量が最大限に増量される結果、三元触媒40が冷却されてその温度を設定温度T未満に下げることができ、三元触媒40が熱破損を未然に防止することができる。
【0045】
また、上述したS21のステップにて検出温度Tが設定温度T未満である、つまり三元触媒40の熱破損のおそれがないと判断した場合には、S18のステップに移行して開弁時期Cを選択し、S19のステップにてこの開弁時期Cにて吸気制御弁36が開弁するようにアクチュエータ35の作動を制御する。これにより、三元触媒40を通過する空気量を抑制してPMを効率よく燃焼させる。
【0046】
上述した実施形態では本発明を直噴形式のガソリンエンジンに応用した場合について説明したが、点火プラグ14を用いないディーゼルエンジンなどの圧縮点火機関に対しても有効であり、酸化触媒のみならずDPR(Diesel Particulate active Reduction system)やDPNR(Diesel Particulate-NO Reduction System)などに用いられるDPF(Diesel Particulate Filter)などの再生に対し、上述したガソリンエンジンの場合と同様な効果を得ることができることは言うまでもない。また、本発明によるエネルギー回生装置は、上述した実施形態のようなエンジン11とモータ18とを併用した、いわゆるハイブリッド車に限定されるものではなく、エネルギー回生手段としてコンプレッサやポンプを駆動して流体の蓄圧などを行うものであってもよい。同様に、本発明による触媒加熱再処理システムは、上述した実施形態の如きエネルギー回生装置を搭載しない車両にも利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明を火花点火機関に応用した一実施形態の概念図である。
【図2】図1に示した実施形態における車両の概念図である。
【図3】図1に示した実施形態における制御ブロック図である。
【図4】図1に示した実施形態における制御の手順を表すブロック図である。
【符号の説明】
【0048】
10 車両
11 エンジン
12 燃料噴射弁
13 燃焼室
14 点火プラグ
15 クランク軸
16 動力分割機構
17 減速機
18 モータ
19 発電機
20 駆動輪
21 インバータ
22 蓄電池
23 吸気ポート
24 排気ポート
25 シリンダヘッド
26 吸気弁
27 排気弁
28 イグニッションコイル
29 吸気通路
30 吸気管
31 エアクリーナ
32 アクセルペダル
33 スロットルアクチュエータ
34 スロットル弁
35 アクチュエータ
36 吸気制御弁
37 制御装置
38 排気通路
39 排気管
40 三元触媒
41 燃料添加弁
42 車速センサ
43 充電容量センサ
44 ブレーキペダル
45 アクセル開度センサ
46 ブレーキセンサ
47 ピストン
48 シリンダブロック
49 連接棒
50 クランク角センサ
51 触媒温度センサ
52 燃料噴射量設定部
53 噴射時期設定部
54 回生判定部
55 開弁時期設定部
56 目標回収エネルギー量設定部
57 実回収エネルギー量導出部
58 開弁時期補正部
59 触媒後処理判定部
目標回収エネルギー量
実回収エネルギー量
検出温度
設定温度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の運動エネルギーを回収するためのエネルギー回収手段と、このエネルギー回収手段の作動を制御する制御手段と、車両の運転状態を検出する運転状態検出手段とを具え、前記制御手段は、この運転状態検出手段による検出結果に基づき、車両の運転状態がエネルギー回収領域にあると判断した場合、前記エネルギー回収手段を作動させる車両用エネルギー回生装置であって、
吸気通路に設けられて吸気弁の開閉タイミングに応じて開閉し得る吸気制御弁をさらに具え、
前記制御手段は、車両の運転状態がエネルギー回収領域にあると判断した場合、機関の負仕事が最少となるように前記吸気制御弁の開閉時期を設定する開閉時期設定部をさらに有し、この開閉時期設定部にて設定された開閉時期となるように前記吸気制御弁の開閉を制御することを特徴とするエネルギー回生装置。
【請求項2】
前記制御手段は、
前記運転状態検出手段による検出結果に基づき、前記エネルギー回生手段にて回収すべき目標回収エネルギー量を設定する目標回収エネルギー量設定部と、
前記運転状態検出手段による検出結果に基づき、実際に回収し得るエネルギー量を導出する実回収エネルギー量導出部と、
この実回収エネルギー量導出部にて導出された実回収エネルギー量が前記目標回収エネルギー量設定部にて設定された目標回収エネルギー量よりも大きい場合、吸気量が増大するように前記吸気制御弁の開閉時期を補正する開閉時期補正部と
をさらに有することを特徴とする請求項1に記載のエネルギー回生装置。
【請求項3】
排気ガスを浄化するための触媒と、
この触媒の温度を検出する温度センサと、
前記触媒に燃料を供給してこれを加熱させる燃料供給手段と
をさらに具え、
前記開閉時期設定部は、前記燃料供給手段による燃料の供給中に前記温度センサによって検出された温度が所定温度以上になった場合、吸気量が最大となるように前記吸気制御弁の開閉時期を設定することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のエネルギー回生装置。
【請求項4】
吸気通路に設けられて吸気弁の開閉タイミングに応じて開閉し得る吸気制御弁と、
排気ガスを浄化するための触媒と、
この触媒の温度を検出する温度センサと、
前記触媒に燃料を供給してこれを加熱させる燃料供給手段と、
この燃料供給手段による燃料の供給中に前記温度センサによって検出された温度が所定温度以上になった場合、吸気量が最大となるように前記吸気制御弁の開閉時期を設定する開閉時期設定部を有し、この開閉時期設定部にて設定された開閉時期となるように前記吸気制御弁の開閉を制御する制御手段と
を具えたことを特徴とする触媒加熱後処理システム。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2006−283635(P2006−283635A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−103630(P2005−103630)
【出願日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】