説明

エンジンシステム

【課題】運転の安定性を向上し得るエンジンシステムを提供する。
【解決手段】制御手段20が、触媒温度検出手段14の検出温度が過熱防止用設定温度以上になって触媒過熱状態であると判断すると、エンジン1の出力を低下させる又はエンジン1を停止するように構成されたエンジンシステムであって、制御手段20がエンジン1の燃焼モードをストイキ燃焼モードからリーン燃焼モードに切り換えるときは、少なくともその切り換えタイミングになった以降から開始されて、燃焼モードがリーン燃焼モードに切り換えられた後にまで延びるように設定される牽制用設定時間が経過する間、制御手段20が触媒過熱状態であると判断するのを阻止する過熱判断阻止手段21が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、混合気を燃焼室で圧縮して燃焼させて駆動力を出力するエンジンと、前記エンジンからの排ガスが通流する排気路に排ガスが通過自在に設けられた三元触媒と、その三元触媒の温度を検出する触媒温度検出手段と、エンジン負荷に応じて前記エンジンの出力を制御する制御手段とを備え、前記制御手段が、エンジン負荷に応じて、前記燃焼室で燃焼する混合気の空気過剰率をストイキ範囲内に設定するストイキ燃焼モードと前記燃焼室で燃焼する混合気の空気過剰率を前記ストイキ範囲よりも大きいリーン範囲内に設定するリーン燃焼モードとに前記エンジンの燃焼モードを切り換え自在で、且つ、前記触媒温度検出手段の検出温度が前記三元触媒の過熱を防止するための過熱防止用設定温度以上になって触媒過熱状態であると判断すると、前記エンジンの出力を低下させる又は前記エンジンを停止するように構成されたエンジンシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
かかるエンジンシステムとして、例えば、圧縮機がエンジンにて駆動される圧縮式ヒートポンプ回路を備えたエンジン駆動式のヒートポンプシステムや、エンジンにて駆動される発電機を備えたエンジン駆動式の熱電併給システムが知られている。
このようなエンジンシステムでは、エンジンの燃焼モードが、エンジン負荷に応じて、混合気の空気過剰率をストイキ範囲内(例えば1.0程度)に設定するストイキ燃焼モードと混合気の空気過剰率をストイキ範囲よりも大きいリーン範囲(例えば1.4〜1.6)内に設定するリーン燃焼モードとに切り換え自在に構成されている。
又、エンジンから排出される排ガス中の有害成分を浄化するために、エンジンからの排ガスが通流する排気路に三元触媒が排ガスの通過が自在に設けられ、又、三元触媒の温度を検出する触媒温度検出手段も設けられている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
つまり、ストイキ燃焼モードは、リーン燃焼モードに比べて高出力が得られ、リーン燃焼モードは、ストイキ燃焼モードに比べて高効率が得られるので、エンジン負荷が大きい領域では、エンジンがストイキ燃焼モードで運転され、逆に、エンジン負荷が小さい領域では、エンジンがリーン燃焼モードで運転される。
【0004】
そして、燃焼室から排出される排ガスには、CO(一酸化炭素)及びHC(炭化水素)が含まれるが、ストイキ燃焼モードでは、燃焼室に吸気される混合気中に燃焼熱を奪う空気が少ないため、燃焼室での燃焼温度が高くなって排ガスの温度が高くなるので、排ガスにはNOx(窒素酸化物)が比較的多く含まれる。
一方、リーン燃焼モードでは、燃焼室に吸気される混合気中には燃焼熱を奪う空気が多くなるので、エンジンがストイキ燃焼モードで運転される場合に比べて、燃焼室での燃焼温度が低くなって排ガスの温度が低くなり、その結果、燃焼室から排出される排ガスに含まれるNOxは少ない。
そして、エンジンがストイキ燃焼モードで運転されるときは、三元触媒において、排ガスに含まれるNOxが還元されると共にCO及びHCが酸化されることになり、NOx、CO及びHCが同時に除去される。
一方、エンジンがリーン燃焼モードで運転されるときは、三元触媒において、主に、CO及びHCが酸化されて除去されることになり、又、排ガスには元々NOxが殆ど含まれていないので、NOxは排出量が規定値以下に抑えられる。
【0005】
ところで、エンジンの運転中に、三元触媒の温度が異常に上昇する場合がある。例えば、エンジンがストイキ燃焼モードで運転されていて排ガスの温度が高い状態で、排ガス中の酸化性成分と還元性成分との釣り合いが崩れて、還元性成分、即ち、CO及びHCが多くなると、CO及びHCが三元触媒で反応して三元触媒の温度が異常に上昇する。
そこで、上記の特許文献1には記載されてないが、三元触媒の過熱による劣化を抑制するために、触媒温度検出手段の検出温度が過熱防止用設定温度以上になって触媒過熱状態であると判断すると、強制的にエンジンの出力を低下させる又はエンジンを停止するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−286066号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように、従来のエンジンシステムは、触媒温度検出手段の検出温度が過熱防止用設定温度以上になって触媒過熱状態であると判断すると、無条件で強制的にエンジンの出力を低下させる又はエンジンを停止する構成であるので、強制的にエンジンの出力が低下される又はエンジンが停止される回数が多くなり易く、エンジンシステムを安定的に運転する上で改善の余地があった。
【0008】
特に、エンジンの燃焼モードをストイキ燃焼モードからリーン燃焼モードに切り換えるときは、以下に説明する理由により、三元触媒の温度が異常に上昇し易く、しかも、エンジン負荷の低下に基づくストイキ燃焼モードからリーン燃焼モードへの切り換えは、比較的高い頻度で行われる場合があるので、従来のエンジンシステムでは、強制的にエンジンの出力が低下される又はエンジンが停止される回数が多くなり易かった。
【0009】
即ち、エンジンの燃焼モードをストイキ燃焼モードからリーン燃焼モードに切り換えるときには、エンジン負荷の低下に応じて、燃焼室への混合気の吸気量が減少調整されると共に、空気過剰率をリーン範囲内に増大変更すべく燃料の供給量が減少調整される。
このときに、例えば、混合気の吸気量の減少調整における減少率に比べて、燃料の供給量の減少調整における減少率が相対的に小さくなると、排ガスの温度が高い状態で、排ガス中の酸化性成分と還元性成分との釣り合いが崩れて、還元性成分(CO及びHC)が多くなるので、三元触媒の温度が異常に上昇し易い。
【0010】
本発明は、かかる実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、運転の安定性を向上し得るエンジンシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のエンジンシステムは、混合気を燃焼室で圧縮して燃焼させて駆動力を出力するエンジンと、前記エンジンからの排ガスが通流する排気路に排ガスが通過自在に設けられた三元触媒と、その三元触媒の温度を検出する触媒温度検出手段と、エンジン負荷に応じて前記エンジンの出力を制御する制御手段とを備え、前記制御手段が、エンジン負荷に応じて、前記燃焼室で燃焼する混合気の空気過剰率をストイキ範囲内に設定するストイキ燃焼モードと前記燃焼室で燃焼する混合気の空気過剰率を前記ストイキ範囲よりも大きいリーン範囲内に設定するリーン燃焼モードとに前記エンジンの燃焼モードを切り換え自在で、且つ、前記触媒温度検出手段の検出温度が前記三元触媒の過熱を防止するための過熱防止用設定温度以上になって触媒過熱状態であると判断すると、前記エンジンの出力を低下させる又は前記エンジンを停止するように構成されたものであって、
第1特徴構成は、前記制御手段が前記燃焼モードを前記ストイキ燃焼モードから前記リーン燃焼モードに切り換えるときは、少なくともその切り換えタイミングになった以降から開始されて、前記燃焼モードが前記リーン燃焼モードに切り換えられた後にまで延びるように設定される牽制用設定時間が経過する間、前記制御手段が前記触媒過熱状態であると判断するのを阻止する過熱判断阻止手段が設けられている点にある。
【0012】
上記特徴構成によれば、制御手段がエンジンの燃焼モードをストイキ燃焼モードからリーン燃焼モードに切り換えるときは、過熱判断阻止手段により、切り換えタイミングになった以降から開始される牽制用設定時間が経過する間、制御手段が触媒過熱状態であると判断するのが阻止される。
そして、牽制用設定時間は、エンジンの燃焼モードがリーン燃焼モードに切り換えられた後にまで延びるように設定されるので、燃焼モードがストイキ燃焼モードからリーン燃焼モードに切り換えられると共に、その切り換え後、エンジンがリーン燃焼モードで安定するまで、制御手段が触媒過熱状態であると判断するのが阻止されて、強制的にエンジンの出力が低下される又はエンジンが停止されるのを回避するようにすることが可能となる。その結果、強制的にエンジンの出力が低下される又はエンジンが停止される回数が低減される。
【0013】
つまり、本発明の発明者らは、エンジンシステムの運転の安定性を向上すべく、種々の実験を行い、エンジンの燃焼モードがストイキ燃焼モードからリーン燃焼モードに切り換えられるときに、排ガス中の酸化性成分と還元性成分との釣り合いが崩れて三元触媒の温度が上昇しても、その上昇の程度は、三元触媒の劣化を十分に抑制可能な範囲内であり、しかも、短時間でエンジンがリーン燃焼モードで安定して、三元触媒の温度がリーン燃焼モードでの通常温度に低下することを見出した。
そこで、燃焼モードがストイキ燃焼モードからリーン燃焼モードに切り換えられるときに、三元触媒の温度が過熱防止用設定温度以上に上昇しているにも拘らず、エンジンの出力が低下されない又はエンジンが停止されないようにしても、三元触媒の劣化を十分に抑制することができるのである。
従って、エンジンの燃焼モードがストイキ燃焼モードからリーン燃焼モードに切り換えられるときに強制的にエンジンの出力が低下される又はエンジンが停止されるのを回避することにより、三元触媒の劣化を十分に抑制しながら、運転の安定性を向上し得るエンジンシステムを提供することができるようになった。
【0014】
第2特徴構成は、上記第1特徴構成に加えて、
前記過熱判断阻止手段が、前記過熱防止用設定温度を補正用設定温度だけ高く補正して、その補正された過熱防止用設定温度に基づいて前記制御手段に前記触媒過熱状態であるか否かを判断させることにより、前記制御手段が前記触媒過熱状態であると判断するのを阻止するように構成されている点にある。
【0015】
上記特徴構成によれば、制御手段は、エンジンの燃焼モードをストイキ燃焼モードからリーン燃焼モードに切り換えるときは、切り換えタイミングになった以降から開始される牽制用設定時間が経過する間、過熱防止用設定温度が補正用設定温度だけ高く補正された補正過熱防止用設定温度に基づいて、触媒過熱状態であるか否かを判断する。
そして、補正用設定温度を、エンジンの燃焼モードがストイキ燃焼モードからリーン燃焼モードに切り換えられるときに三元触媒の温度が上昇すると考えられる温度幅よりも大きく設定することにより、エンジンの燃焼モードがストイキ燃焼モードからリーン燃焼モードに切り換えられるときに、制御手段が触媒過熱状態であると判断するのを的確に阻止することができる。
しかも、三元触媒の温度が想定以上に異常に上昇した場合は、触媒温度検出手段の検出温度が補正過熱防止用設定温度よりも高くなって触媒過熱状態であると判断させることにより、エンジンの出力が低下される又はエンジンが停止されるようにすることができるので、三元触媒の劣化をより一層抑制することができる。
従って、エンジンの燃焼モードがストイキ燃焼モードからリーン燃焼モードに切り換えられるときに、三元触媒の劣化をより一層抑制しながら、エンジンの出力が低下される又はエンジンが停止されるのを阻止することができるようになった。
【0016】
第3特徴構成は、上記第1特徴構成に加えて、
前記過熱判断阻止手段が、前記触媒過熱状態であるか否かを判断する処理を前記制御手段に中断させることにより、前記制御手段が前記触媒過熱状態であると判断するのを阻止するように構成されている点にある。
【0017】
上記特徴構成によれば、制御手段は、エンジンの燃焼モードをストイキ燃焼モードからリーン燃焼モードに切り換えるときは、切り換えタイミングになった以降から開始される牽制用設定時間が経過する間、触媒過熱状態であるか否かを判断する処理を中断する。
従って、エンジンの燃焼モードがストイキ燃焼モードからリーン燃焼モードに切り換えられるときに、エンジンの出力が低下される又はエンジンが停止されるのを的確に阻止することができるようになった。
【0018】
第4特徴構成は、上記第1〜第3特徴構成のいずれか1つに加えて、
前記制御手段が、前記燃焼モードを前記ストイキ燃焼モードから前記リーン燃焼モードに切り換えるタイミングになると、クラッチ手段をオフにして前記エンジンにエンジン負荷がかからないようにし、且つ、前記エンジンの回転速度を前記ストイキ燃焼モードに対応するストイキ側回転速度範囲の下限値又はその下限値に近い値に設定される切換用回転速度に調整した後、前記燃焼モードを前記ストイキ燃焼モードから前記リーン燃焼モードに切り換え、且つ、前記エンジンの回転速度を前記リーン燃焼モードに対応するリーン側回転速度範囲の回転速度に調整し、続いて、前記クラッチ手段をオンにして前記エンジンにエンジン負荷をかけるように構成され、
前記過熱判断阻止手段が、前記エンジンの回転速度が前記切換用回転速度になった時点から、前記牽制用設定時間の計時を開始するように構成されている点にある。
【0019】
上記特徴構成によれば、制御手段は、燃焼モードをストイキ燃焼モードからリーン燃焼モードに切り換えるタイミングになると、ストイキ燃焼モードに維持した状態で、クラッチ手段をオフにしてエンジンにエンジン負荷がかからないようにし、且つ、エンジンの回転速度をストイキ側回転速度範囲の下限値又はその下限値に近い値に設定される切換用回転速度に調整した後、燃焼モードをストイキ燃焼モードからリーン燃焼モードに切り換え、且つ、エンジンの回転速度をリーン側回転速度範囲の回転速度に調整し、続いて、クラッチ手段をオンにしてエンジンにエンジン負荷をかける。
そして、エンジンの回転速度が切換用回転速度になった時点から、牽制用設定時間が経過するまでの間、過熱判断阻止手段により、制御手段が触媒過熱状態であると判断する処理が阻止される。
【0020】
つまり、燃焼モードがストイキ燃焼モードからリーン燃焼モードに切り換えられるにしても、切り換え直前のストイキ燃焼モードでは、エンジンにエンジン負荷がかからない状態で、しかも、回転速度がストイキ側回転速度範囲の下限値又はその下限値に近い切換用回転速度になっており、そして、そのような状態で、燃焼モードがリーン燃焼モードに切り換えられる。
これにより、切り換え直前のストイキ燃焼モードでの排ガスの温度を低温化することができると共に、リーン燃焼モードに切り換えられたときに、排ガス中の酸化性成分と還元性成分との釣り合いが崩れるのを抑制することできるようになり、三元触媒の温度が上昇するのを抑制しながら、制御手段が触媒過熱状態であると判断する処理を阻止することができる。
要するに、エンジンの燃焼モードがストイキ燃焼モードからリーン燃焼モードに切り換えられるときに、三元触媒の温度が過熱防止用設定温度以上になっても、エンジンの出力を低下させる又はエンジンを停止する処理を実行しないようにするに当たって、三元触媒の温度が上昇するのを極力抑制することができるので、三元触媒の劣化をより一層抑制することができる。
従って、エンジンの燃焼モードがストイキ燃焼モードからリーン燃焼モードに切り換えられるときに、三元触媒の劣化をより一層抑制しながら、エンジンの出力が低下される又はエンジンが停止されるのを阻止することができるようになった。
【0021】
第5特徴構成は、上記第1〜第4特徴構成のいずれか1つに加えて、
前記エンジンにて駆動される圧縮機を有する圧縮式ヒートポンプ回路が設けられ、
前記エンジンに、前記圧縮式ヒートポンプにかかる空調負荷に応じたエンジン負荷がかかるように構成されている点にある。
【0022】
上記特徴構成によれば、エンジンを作動させると、そのエンジンにより圧縮機が駆動されて圧縮式ヒートポンプが作動し、冷房や暖房等の空調運転が行われる。
そして、空調負荷が低下するのに伴って、その空調負荷に応じたエンジン負荷が低下すると、エンジンの燃焼モードがストイキ燃焼モードからリーン燃焼モードに切り換えられるが、そのときに、強制的にエンジンの出力が低下されたり、エンジンが停止されたりするのを回避することができる。
従って、エンジンの燃焼モードがストイキ燃焼モードからリーン燃焼モードに切り換えられるときに強制的にエンジンの出力が低下される又はエンジンが停止されるのを回避することにより、三元触媒の劣化を十分に抑制しながら、運転の安定性を向上し得るエンジン駆動式のヒートポンプシステムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】エンジン駆動式のヒートポンプシステムの全体構成を示すブロック図
【図2】第1及び第2の各実施形態に係る制御動作のフローチャートを示す図
【図3】第1実施形態に係る制御動作のフローチャートを示す図
【図4】第1実施形態に係る燃焼モード切換時のタイムチャートを示す図
【図5】第2実施形態に係る制御動作のフローチャートを示す図
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面に基づいて、本発明の実施の形態を説明する。
〔第1実施形態〕
先ず、第1実施形態を説明する。
図1に示すように、エンジンシステムは、混合気Mを燃焼室2で圧縮して燃焼させて駆動力を出力するエンジン1、そのエンジン1にて駆動される圧縮機31を有する圧縮式ヒートポンプ回路30、及び、エンジン負荷に応じてエンジン1の出力を制御する制御手段としての制御装置20等を備えて、エンジン駆動式のヒートポンプシステムとして構成されている。
【0025】
エンジン1の燃焼室2には、混合気Mを吸引する吸気路3、及び、エンジン1から排出される排ガスEが通流する排気路4が接続されている。
吸気路3には、混合器5を介して、天然ガス系都市ガス等の燃料ガスGを供給する燃料供給路6が接続されている。
そして、吸気路3の端部から吸気される空気Aと燃料供給路6から供給される燃料ガスGとが混合器5で混合されて、その混合気Mが吸気路3を通して燃焼室2に吸気され、燃焼室2において、その混合気Mが圧縮されると共に圧縮状態で点火プラグ(図示省略)にて点火されて燃焼・膨張することにより、クランクシャフト7が回転されて駆動力が出力され、燃焼により発生した排ガスEが排気路4を通して排気される。つまり、このエンジン1は、通常の4サイクル式に構成されている。
更に、このエンジン1には、クランクシャフト7にギア連結されて、エンジン1の起動時にバッテリ(図示省略)駆動によりクランクシャフト7を強制的に回転させるセルモータ8、及び、クランクシャフト7の回転速度、即ち、エンジン1の回転速度を検出する回転速度センサ9が設けられている。
セルモータ8は、制御装置20により制御され、回転速度センサ9の検出情報は、制御装置20に入力されるように構成されている。
【0026】
燃料供給路6には、燃料ガスGの供給量を調整することにより混合気Mの空気過剰率を調整可能な燃料供給弁10が設けられ、吸気路3には、燃焼室2に吸気される混合気Mの吸気量を調整可能なスロットルバルブ11が設けられている。
排気路4には、排ガスEの酸素濃度を検出する酸素濃度センサ12、排ガスが通過自在な三元触媒13、及び、その三元触媒13を出た直後の排ガスEの温度を三元触媒13の温度として検出する触媒温度検出手段としての触媒温度センサ14が夫々設けられている。
燃料供給弁10及びスロットルバルブ11は、制御装置20により制御され、酸素濃度センサ12の検出情報、及び、触媒温度センサ14の検出情報は、夫々、制御装置20に入力されるように構成されている。
尚、酸素濃度センサ12は、排気路4において三元触媒13の上流側の箇所に設けられ、触媒温度センサ14は、排気路4において三元触媒13の下流側の箇所に設けられている。
排ガスEの酸素濃度を検出する酸素濃度センサとして、排気路4における三元触媒13の上流側に設けた酸素濃度センサ12に加えて、排気路4における三元触媒13の下流側の箇所に設けて、その酸素濃度センサの検出情報も制御装置20に入力されるように構成しても良い。
又、触媒温度センサ14は、三元触媒13の内部に設けても良い。
【0027】
圧縮式ヒートポンプ回路30には、圧縮機31に加えて、室外空気熱交換器32、室内機33及び膨張弁34、並びに、圧縮機31にて圧縮された冷媒の送出先を室外空気熱交換器32側と室内機33側とに切り換える四方弁35等を備えて構成されている。尚、室内機33及び膨張弁34は、空調対象空間内に設置される室内ユニットUiに装備され、室内機33及び膨張弁34以外の部材、即ち、エンジン1、圧縮機31、室外空気熱交換器32及び四方弁35等は、空調対象空間外に設置される室外ユニットUeに装備される。
圧縮機31は、動力伝達機構40によってエンジン1に伝動連結され、エンジン1の軸動力により圧縮機31を駆動して冷媒を圧縮することにより、後述するように、冷房運転や暖房運転等の空調運転を行うように構成されている。
動力伝達機構40は、エンジン1のクランクシャフト7に固定されたエンジン側プーリ41と、圧縮機31の駆動軸31aにクラッチ手段としての電磁クラッチ42を介して連結された圧縮機側プーリ43と、それらエンジン側プーリ41と圧縮機側プーリ43とにわたって巻回されたベルト44等を備えて構成されている。
電磁クラッチ42は、制御装置20により制御される。つまり、制御装置20により電磁クラッチ42のオンオフが切り換えられ、その電磁クラッチ42のオンオフの切り換えにより、エンジン1と圧縮機31との伝動連結が断続されて、エンジン1にエンジン負荷がかかる状態とエンジン負荷がかからない状態とに切り換えられるように構成されている。
【0028】
圧縮式ヒートポンプ回路30を冷房運転するときには、図1に実線で示すように、圧縮機31の吐出側が室外空気熱交換器32に接続され且つ圧縮機31の流入側が室内機33に接続されるように、四方弁35が切り換えられる。このように四方弁35が切り換えられると、圧縮機31にて圧縮された高温高圧の冷媒蒸気が室外空気熱交換器32にて放熱して凝縮し、その凝縮した冷媒液が膨張弁34を通過して低温低圧化して室内機33に流入して、その室内機33にて吸熱蒸発し、その蒸発した冷媒蒸気が圧縮機31に戻るといった形態で、冷媒がヒートポンプ回路30を循環することになる。
そして、室内機33において冷媒液が吸熱して蒸発する際に発生する冷熱を利用して、空調対象空間の冷房等を行うように構成される。
【0029】
一方、圧縮式ヒートポンプ回路30を暖房運転するときには、図1に破線で示すように、圧縮機31の吐出側が室内機33に接続され且つ圧縮機31の流入側が室外空気熱交換器32に接続されるように、四方弁35が切り換えられる。このように四方弁35が切り換えられると、圧縮機31にて圧縮された高温高圧の冷媒蒸気が室内機33にて放熱して凝縮し、その凝縮した冷媒液が膨張弁34を通過して低温低圧化して室外空気熱交換器32に流入して、その室外空気熱交換器32にて吸熱蒸発し、その蒸発した冷媒蒸気が圧縮機31に戻るといった形態で、冷媒がヒートポンプ回路30を循環することになる。
そして、室内機において冷媒蒸気が放熱して凝縮する際に発生する温熱を利用して、空調対象空間の暖房等を行うように構成される。
【0030】
つまり、上述のように、圧縮機31が動力伝達機構40によってエンジン1に伝動連結されることで、エンジン1には、圧縮式ヒートポンプ回路30の空調負荷に応じたエンジン負荷がかかることになる。
そして、制御装置20は、エンジン負荷に応じて、即ち、空調負荷に応じて目標回転速度を求めて、回転速度センサ9にて検出されるエンジン1の回転速度が目標回転速度になるように、スロットルバルブ11の開度を調整して燃焼室2への混合気Mの吸気量を調整することにより、エンジン1の出力を制御するように構成されている。
【0031】
又、制御装置20は、酸素濃度センサ12にて検出される酸素濃度を監視しながら、燃料供給弁10の開度を調整することにより、燃焼室2で燃焼する混合気Mの空気過剰率をストイキ範囲(例えば、1.0程度)内に設定するストイキ燃焼モードと燃焼室2で燃焼する混合気Mの空気過剰率をストイキ範囲よりも大きいリーン範囲内(例えば、1.4〜1.6)に設定するリーン燃焼モードとにエンジン1の燃焼モードを切り換え自在に構成されている。
更に、制御装置20は、触媒温度センサ14の検出温度が三元触媒13の過熱を防止するための過熱防止用設定温度以上になって触媒過熱状態であると判断すると、スロットルバルブ11を閉じて燃焼室2への混合気Mの吸気を停止することにより、エンジン1を停止するように構成されている。
【0032】
説明を加えると、図示を省略するが、このエンジン駆動式のヒートポンプシステムのリモートコントローラには、空調目標温度を設定する温度設定部が備えられ、又、空調対象空間の温度を検出する室温センサが設けられている。これら温度設定部の設定情報及び室温センサの検出情報が制御装置20に入力されるように構成され、制御装置20は、温度設定部にて設定される空調目標温度と室温センサにて検出される空調対象空間の温度との偏差を空調負荷として求めるように構成されている。
【0033】
そして、エンジン1の目標回転速度として、空調負荷が所定負荷以上の定格負荷領域に対応して、ストイキ側回転速度範囲が設定され、空調負荷が所定負荷よりも小さい部分負荷領域に対応して、ストイキ側回転速度範囲よりも小さいリーン側回転速度範囲が設定されている。又、空調負荷が定格負荷領域のときは、エンジン1の燃焼モードがストイキ燃焼モードに設定され、空調負荷が部分負荷領域のときは、エンジン1の燃焼モードがリーン燃焼モードに設定される。
【0034】
そして、制御装置20は、空調負荷が定格負荷領域のときは、空調負荷に応じて目標回転速度をストイキ側回転速度範囲内で定めて、酸素濃度センサ12にて検出される排ガスEの酸素濃度がストイキ範囲内の空気過剰率に応じて設定されたストイキ側目標濃度(例えば、略ゼロ)になるように燃料ガスGの供給量を調整すべく、燃料供給弁10の開度を調整し、並びに、回転速度センサ9にて検出されるエンジン1の回転速度が空調負荷に応じた目標回転速度になるように混合気Mの吸気量を調整すべく、スロットルバルブ11の開度を調整する。
【0035】
又、制御装置20は、空調負荷が部分負荷領域のときは、空調負荷に応じて目標回転速度をリーン側回転速度範囲内で定めて、酸素濃度センサ12にて検出される排ガスEの酸素濃度がリーン範囲内の空気過剰率に応じて設定されたリーン側目標濃度になるように燃料ガスGの供給量を調整すべく、燃料供給弁10の開度を調整し、並びに、回転速度センサ9にて検出されるエンジン1の回転速度が空調負荷に応じた目標回転速度になるように混合気Mの吸気量を調整すべく、スロットルバルブ11の開度を調整する。
【0036】
三元触媒13は、例えば、アルミナ等の無機担体に白金、パラジウム、ロジウム等の貴金属成分を担持して構成され、酸化性成分と還元性成分とがつりあった状態の理論当量比の排ガスEが通過することで、その排ガスEに含まれるNOx、CO及びHCの排出物を同時に除去するように構成されている。
つまり、エンジン1がストイキ燃焼モードで運転されるときは、排ガスEが三元触媒13を通過すると、その排ガスEに含まれるNOxが還元されると共に、CO及びHCが酸化されることになり、NOx、CO及びHCが同時に除去される。
一方、エンジン1がリーン燃焼モードで運転されるときは、排ガスEが三元触媒13を通過すると、主に、CO及びHCが酸化されて除去されることになり、又、排ガスEには元々NOxが殆ど含まれていないので、NOxは排出量が規定値以下に抑えられることになる。
【0037】
そして、三元触媒13の温度が異常に上昇する場合があるので、その三元触媒13の過熱による劣化を防止するために、上述のように、触媒温度センサ14の検出温度が過熱防止用設定温度以上になって触媒過熱状態であると判断すると、スロットルバルブ11を閉じてエンジン1を停止するように、制御装置20が構成されているのである。
【0038】
そして、本発明は、エンジン1の燃焼モードをストイキ燃焼モードからリーン燃焼モードに切り換えるときに、エンジン1が停止されるのを回避するようにしたものである。
つまり、制御装置20が燃焼モードをストイキ燃焼モードからリーン燃焼モードに切り換えるときは、その切り換えタイミングになった以降から開始されて、燃焼モードがリーン燃焼モードに切り換えられた後にまで延びるように設定される牽制用設定時間が経過する間、制御装置20が触媒過熱状態であると判断するのを阻止する過熱判断阻止手段21が設けられている。
この第1実施形態では、過熱判断阻止手段21が、過熱防止用設定温度Tsを補正用設定温度αだけ高く補正して、その補正された補正過熱防止用設定温度Tsrに基づいて制御装置20に触媒過熱状態であるか否かを判断させることにより、制御装置20が触媒過熱状態であると判断するのを阻止するように構成されている。
【0039】
そして、補正用設定温度αとして設定された温度は、エンジン1の燃焼モードがストイキ燃焼モードからリーン燃焼モードに切り換えられるときに、三元触媒13の温度が上昇すると考えられる温度幅よりも十分大きい。
つまり、エンジン1の燃焼モードがストイキ燃焼モードからリーン燃焼モードに切り換えられたときに、三元触媒13の温度が上昇するとしても、その三元触媒13の温度が補正過熱防止用設定温度Tsrを越えることがないように、補正過熱防止用設定温度Tsrが設定される。
【0040】
制御装置20は、所定のコンピュータプログラムを実行することにより、上述のエンジン1の出力制御及び燃焼モードの切換制御等の各種制御を実行すると共に、上述の如き、触媒過熱状態であると判断するのを阻止する処理を実行するように構成されている。
つまり、この実施形態では、過熱判断阻止手段21が、制御装置20を用いて構成されている。
【0041】
以下、制御装置20の制御動作について、説明を加える。
先ず、エンジン1の出力制御及び燃焼モードの切換制御における全体の制御動作を、図2に示すフローチャートに基づいて説明する。このフローチャートは、本願における燃焼モード選択と三元触媒13の過熱防止を行うための基本的な制御である。
触媒温度センサ14の検出温度Tが過熱防止用設定温度Ts以上か否かを判定して、触媒温度センサ14の検出温度Tが過熱防止用設定温度Tsよりも低い場合は、空調負荷が定格負荷領域か部分負荷領域かを判定する(ステップ#1,2)。
ステップ#2で空調負荷が定格負荷領域であると判定すると、空調負荷に応じて目標回転速度をストイキ側回転速度範囲内で定めて、酸素濃度センサ12にて検出される排ガスEの酸素濃度がストイキ側目標濃度になると共に、回転速度センサ9にて検出されるエンジン1の回転速度が目標回転速度になるように、燃料供給弁10及びスロットルバルブ11の開度を調整して、リターンする(ステップ#3,4)。
つまり、燃焼モードがストイキ燃焼モードのときは、そのストイキ燃焼モードが継続されると共に、エンジン1の回転速度が空調負荷に応じた回転速度になるように回転速度調整が行われ、燃焼モードがリーン燃焼モードのときは、燃焼モードがストイキ燃焼モードに切り換えられると共に、エンジン1の回転速度が空調負荷に応じた回転速度になるように回転速度調整が行われることになる。
【0042】
ステップ#2で空調負荷が部分負荷領域であると判定すると、ステップ#5で現時点の燃焼モードがストイキ燃焼モードか否かを判定して、現時点の燃焼モードがストイキ燃焼モードでない、即ち、リーン燃焼モードのときは、空調負荷に応じて目標回転速度をリーン側回転速度範囲内で定めて、酸素濃度センサ12にて検出される排ガスEの酸素濃度がリーン側目標濃度になると共に、回転速度センサ9にて検出されるエンジン1の回転速度が目標回転速度になるように、燃料供給弁10及びスロットルバルブ11の開度を調整して、リターンする(ステップ#6,7)。つまり、リーン燃焼モードが継続されると共に、エンジン1の回転速度が空調負荷に応じた回転速度になるように回転速度調整が行われることになる。
又、ステップ#5で、現時点の燃焼モードがストイキ燃焼モードであると判定すると、後述するように、燃焼モードをストイキ燃焼モードからリーン燃焼モードに切り換えるストイキ→リーン切換処理を実行する(ステップ#8)。
【0043】
ステップ#1で、触媒温度センサ14の検出温度Tが過熱防止用設定温度Ts以上であると判定すると、スロットルバルブ11を閉じてエンジン1を停止し、その後、触媒温度センサ14の検出温度Tが過熱防止用設定温度Tsよりも低くなると、セルモータ8を作動させて再起動処理を実行して、リターンする(ステップ#9〜11)。
制御装置20は、図2に示すフローチャートに基づく制御動作を、予め設定されたサイクル時間で繰り返し実行する。
【0044】
ちなみに、ステップ#11のエンジン再起動処理では、セルモータ8を作動させた状態で、酸素濃度センサ12にて検出される排ガスEの酸素濃度が触媒過熱状態であると判断した時に設定されていた燃焼モードに応じた値になり、且つ、混合気Mの吸気量が所定の起動用吸気量になるように、燃料供給弁10及びスロットルバルブ11の開度を調整し、セルモータ8を停止させても回転速度センサ9にてエンジン1の回転が検出されて、エンジン1の起動が確認されると、酸素濃度センサ12にて検出される排ガスEの酸素濃度が触媒過熱状態であると判断した時に設定されていた燃焼モードに応じた値になり、且つ、回転速度センサ9にて検出されるエンジン1の回転速度が目標回転速度になるように、燃料供給弁10及びスロットルバルブ11の開度を調整する。
【0045】
次に、エンジン1の燃焼モードをストイキ燃焼モードからリーン燃焼モードに切り換えるストイキ→リーン切換処理について、説明する。
制御装置20は、空調負荷が定格負荷領域から部分負荷領域に変化して、燃焼モードをストイキ燃焼モードからリーン燃焼モードに切り換えるタイミングになると、電磁クラッチ42をオフにしてエンジン1にエンジン負荷がかからないようにし、且つ、エンジン1の回転速度をストイキ燃焼モードに対応するストイキ側回転速度範囲の下限値又はその下限値に近い値に設定される切換用回転速度に調整した後、燃焼モードをストイキ燃焼モードからリーン燃焼モードに切り換え、且つ、エンジン1の回転速度をリーン燃焼モードに対応するリーン側回転速度範囲の回転速度に調整し、続いて、電磁クラッチ42をオンにしてエンジン1にエンジン負荷をかけるように構成されている。
又、制御装置20は、エンジン1の回転速度が切換用回転速度になった時点から、牽制用設定時間の計時を開始するように構成されている。
【0046】
ちなみに、牽制用設定時間は、電磁クラッチ42がオフの状態で、エンジン1の回転速度が切換用回転速度になった時点から、燃焼モードがストイキ燃焼モードからリーン燃焼モードに切り換えられると共に、エンジン1の回転速度がリーン燃焼モードに対応するリーン側回転速度範囲の回転速度になった後、エンジン1がリーン燃焼モードで安定するまでに要する時間に設定される。
又、切換用回転速度は、本実施形態では、ストイキ側回転速度範囲の下限値に設定されている。
【0047】
次に、図3に示すフローチャート及び図4に示すタイムチャートに基づいて、ストイキ→リーン切換処理における制御動作を説明する。このフローチャートは、本願において、エンジン1の燃焼モードをストイキ燃焼モードからリーン燃焼モードに切り換えるときにエンジン1が停止されるのを回避するための制御である。ちなみに、図4において、(a)は、エンジン1の回転速度R及びトルク夫々の時間経過に伴う変動を示し、(b)は、触媒温度センサ14の検出温度Tの時間経過に伴う変動を示し、(c)は、混合気Mの空気過剰率の時間経過に伴う変動を示す。
【0048】
先ず、制御装置20は、燃焼モードをストイキ燃焼モードからリーン燃焼モードに切り換えるタイミングになると、電磁クラッチ42をオフにした後、触媒温度センサ14の検出温度Tが過熱防止用設定温度Ts以上にならないかを監視しながら、酸素濃度センサ12にて検出される排ガスEの酸素濃度をストイキ側目標濃度に維持し、且つ、回転速度センサ9にて検出されるエンジン1の回転速度Rが切換用回転速度Raになるように、燃料供給弁10及びスロットルバルブ11の開度を調整する(ステップ#21〜24)。ちなみに、ΔRは微小な値に設定される。つまり、燃焼モードがストイキ燃焼モードに維持される状態で、エンジン1の回転速度が切換用回転速度Raに調整される。
【0049】
触媒温度センサ14の検出温度Tが過熱防止用設定温度Ts以上にならない状態で、回転速度センサ9にて検出されるエンジン1の回転速度Rが切換用回転速度Ra±ΔRの範囲に入ると 過熱防止用設定温度Tsに補正用設定温度αを加えることにより、過熱防止用設定温度Tsを補正過熱防止用設定温度Tsrに補正すると共に、牽制経過時間Hの計時を開始する(ステップ#25,26)。
更に、空調負荷に応じて目標回転速度Rpをリーン側回転速度範囲内で定めて、触媒温度センサ14の検出温度Tが補正過熱防止用設定温度Tsr以上にならないかを監視しながら、酸素濃度センサ12にて検出される排ガスEの酸素濃度がリーン側目標濃度になり、且つ、回転速度センサ9にて検出されるエンジン1の回転速度Rが目標回転速度Rpになるように、燃料供給弁10及びスロットルバルブ11の開度を調整する(ステップ#27〜29)。
【0050】
触媒温度センサ14の検出温度Tが補正過熱防止用設定温度Tsr以上にならない状態で、回転速度センサ9にて検出されるエンジン1の回転速度Rが目標回転速度Rp±ΔRの範囲に入ると、電磁クラッチ42をオンし、触媒温度センサ14の検出温度Tが補正過熱防止用設定温度Tsr以上にならないかを監視しながら、牽制経過時間Hが牽制用設定時間Hsに達するまで待機する(ステップ#30〜32)。
触媒温度センサ14の検出温度Tが補正過熱防止用設定温度Tsr以上にならない状態で、牽制経過時間Hが牽制用設定時間Hsに達すると、リターンする(ステップ#31,32)。
【0051】
ステップ#23で触媒温度センサ14の検出温度Tが過熱防止用設定温度Ts以上になると、又は、ステップ#28若しくは31で、触媒温度センサ14の検出温度Tが補正過熱防止用設定温度Tsr以上になると、スロットルバルブ11を閉じてエンジン1を停止する(ステップ#33)。
エンジン1の停止後、触媒温度センサ14の検出温度Tが過熱防止用設定温度Tsよりも低くなると、セルモータ8を作動させて再起動処理を実行し、電磁クラッチ42がオンの場合はそのままリターンし、電磁クラッチ42がオフの場合は電磁クラッチ42をオンにした後、リターンする(ステップ#33〜37)。
尚、ステップ#35のエンジン再起動処理の制御動作は、ステップ#11のエンジン再起動処理と同様である。
【0052】
図4のタイムチャートに示すように、混合気Mの空気過剰率がストイキ範囲内(例えば1)に維持された状態で、エンジン1の回転速度Rがストイキ側回転速度範囲の下限値に設定される切換用回転速度Raに低下されても、三元触媒13の温度Tは、エンジン1がストイキ燃焼モードで運転される状態での通常の温度近辺に維持される。
そして、その状態で、混合気Mの空気過剰率がリーン範囲内(例えば1.6)に変更されて、燃焼モードがストイキ燃焼モードからリーン燃焼モードに切り換えられると、エンジン1がリーン燃焼モードで安定するまでの間、三元触媒13の温度が上昇する。
【0053】
本発明では、エンジン1の燃焼モードがストイキ燃焼モードに維持された状態で、エンジン1の回転速度Rが切換用回転速度Raになった時点で、牽制用設定時間Hsの計時が開始され、牽制用設定時間Hsの間、過熱防止用設定温度Tsが補正用設定温度αだけ高温側に補正された補正過熱防止用設定温度Tsrに基づいて触媒過熱状態であるか否かを判断させる。
そして、この牽制用設定時間Hsは、エンジン1の燃焼モードがリーン燃焼モードに切り換わった後、そのリーン燃焼モードで安定して、三元触媒13の温度がリーン燃焼モードでの通常の温度近辺に低下するまで延びるように設定される。
従って、エンジン1の燃焼モードがストイキ燃焼モードからリーン燃焼モードに切り換えられるときに、触媒過熱状態であると判断されるのを回避することができるので、エンジン1の燃焼モードがストイキ燃焼モードからリーン燃焼モードに切り換えられるときに、触媒過熱状態であると判断されることに基づいてエンジン1が停止されるのを回避することができる。
【0054】
そして、図2に示すフローチャートのステップ#1や図3に示すステップ#23において、触媒過熱状態であるか否かが判断されるが、このような判断は、エンジン1の燃焼モードが切り換えられない状態で行われるものであり、三元触媒13等に異常がない限り、触媒過熱状態であると判断されることは殆どないので、エンジン1が停止されることは殆どない。
従って、エンジン1の燃焼モードがストイキ燃焼モードからリーン燃焼モードに切り換えられるときに、強制的にエンジン1が停止されるのを回避することにより、三元触媒13の劣化を十分に抑制しながら、運転の安定性を向上することができる。
【0055】
〔第2実施形態〕
以下、本発明の第2実施形態を説明するが、この第2実施形態は、過熱判断阻止手段21の別の実施形態を説明するものであり、エンジン駆動式のヒートポンプシステムの構成は上記の第1実施形態と同様である。従って、重複説明を避けるために、エンジン駆動式のヒートポンプシステムの構成については説明を省略して、主として、過熱判断阻止手段21について説明する。
【0056】
この第2実施形態では、過熱判断阻止手段21が、触媒過熱状態であるか否かを判断する処理を制御装置20に中断させることにより、制御装置20が触媒過熱状態であると判断するのを阻止するように構成されている。
この過熱判断阻止手段21は、上記の第1実施形態と同様に、制御装置20を用いて構成されている。
【0057】
以下、制御装置20の制御動作について、説明を加えるが、エンジン1の出力制御及び燃焼モードの切換制御における全体の制御動作については、上記の第1実施形態において図2のフローチャートに基づいて説明した制御動作と同様であるので、説明を省略して、ストイキ→リーン切換処理について、説明する。
この第2実施形態でも、上記の第1実施形態と同様に、空調負荷が定格負荷領域から部分負荷領域に変化して、燃焼モードをストイキ燃焼モードからリーン燃焼モードに切り換えるタイミングになると、電磁クラッチ42をオフにしてエンジン1にエンジン負荷がかからないようにし、且つ、エンジン1の回転速度をストイキ燃焼モードに対応するストイキ側回転速度範囲の下限値又はその下限値に近い値に設定される切換用回転速度に調整した後、燃焼モードをストイキ燃焼モードからリーン燃焼モードに切り換え、且つ、エンジン1の回転速度をリーン燃焼モードに対応するリーン側回転速度範囲の回転速度に調整し、続いて、電磁クラッチ42をオンにしてエンジン1にエンジン負荷をかけるように構成されている。
又、制御装置20は、エンジン1の回転速度が切換用回転速度になった時点から、牽制用設定時間の計時を開始するように構成されている。
【0058】
次に、図5に示すフローチャートに基づいて、ストイキ→リーン切換処理における制御動作を説明する。
ステップ#41〜44の制御動作は、第1実施形態で説明した図3に示すフローチャートの#21〜24の制御動作と同様である。
即ち、燃焼モードがストイキ燃焼モードに維持される状態で、エンジン1の回転速度が切換用回転速度Raに調整される。
【0059】
触媒温度センサ14の検出温度Tが過熱防止用設定温度Ts以上にならない状態で、回転速度センサ9にて検出されるエンジン1の回転速度Rが切換用回転速度Ra±ΔRの範囲に入ると 牽制経過時間Hの計時を開始すると共に、空調負荷に応じて目標回転速度Rpをリーン側回転速度範囲内で定めて、酸素濃度センサ12にて検出される排ガスEの酸素濃度がリーン側目標濃度になり、且つ、回転速度センサ9にて検出されるエンジン1の回転速度Rが目標回転速度Rpになるように、燃料供給弁10及びスロットルバルブ11の開度を調整しながら、回転速度センサ9にて検出されるエンジン1の回転速度Rが目標回転速度Rp±ΔRの範囲に入るまで待機する(ステップ#45〜47)。
このように、回転速度センサ9にて検出されるエンジン1の回転速度Rが目標回転速度Rp±ΔRの範囲に入るまで待機している間は、上記の第1実施形態の如き触媒温度センサ14の検出温度Tが補正過熱防止用設定温度Tsr以上にならないかの監視は実行されない。
【0060】
そして、回転速度センサ9にて検出されるエンジン1の回転速度Rが目標回転速度Rp±ΔRの範囲に入ると、電磁クラッチ42をオンして、牽制経過時間Hが牽制用設定時間Hsに達するまで待機し、牽制経過時間Hが牽制用設定時間Hsに達すると、リターンする(ステップ#48,49)。
このように、牽制経過時間Hが牽制用設定時間Hsに達するまで待機している間も、上記の第1実施形態の如き触媒温度センサ14の検出温度Tが補正過熱防止用設定温度Tsr以上にならないかの監視は実行されない。
【0061】
即ち、この図5に示すフローチャートでは、先の図3のフローチャートで示した触媒温度センサ14の検出温度Tが補正過熱防止用設定温度Tsr以上か否かを判断するステップ(ステップ#28,31)が存在しない。
【0062】
ステップ#43で触媒温度センサ14の検出温度Tが過熱防止用設定温度Ts以上になると、図3に示すフローチャートの#33〜37と同様の制御動作であるステップ#50〜54を実行する。即ち、スロットルバルブ11を閉じてエンジン1を停止した後、停止触媒温度センサ14の検出温度Tが過熱防止用設定温度Tsよりも低くなると、エンジン1を再起動し、電磁クラッチ42がオンの場合はそのままリターンし、電磁クラッチ42がオフの場合は電磁クラッチ42をオンにした後、リターンする。
【0063】
上記のストイキ→リーン切換処理を実行することにより、エンジン1の燃焼モードがストイキ燃焼モードからリーン燃焼モードに切り換えられるときにエンジン1が停止されるのを回避することができる点を、上記の第1実施形態で説明した図4のタイムチャートを利用して説明する。
エンジン1の燃焼モードがストイキ燃焼モードに維持された状態で、エンジン1の回転速度Rが切換用回転速度Raになった時点で、牽制用設定時間Hsの計時が開始され、その牽制用設定時間Hsが経過するまで、触媒温度センサ14の検出温度が過熱防止用設定温度Ts以上になることに基づく触媒過熱状態の判断が中断される。
そして、この牽制用設定時間Hsは、エンジン1の燃焼モードがリーン燃焼モードに切り換わった後、そのリーン燃焼モードで安定して、三元触媒13の温度がリーン燃焼モードでの通常の温度に低下するまで延びるように設定されるので、触媒過熱状態であると判断されることに基づいてエンジン1が停止されるのを回避することができる。
【0064】
〔別実施形態〕
次に別実施形態を説明する。
(イ) エンジン1の燃焼モードをストイキ燃焼モードからリーン燃焼モードに切り換えるための制御形態は、上記の実施形態で説明した制御形態、即ち、燃焼モードをストイキ燃焼モードに維持した状態で、電磁クラッチ42をオフにし、且つ、エンジン1の回転速度を切換用回転速度に調整した後、燃焼モードをストイキ燃焼モードからリーン燃焼モードに切り換え、且つ、エンジン1の回転速度をリーン側回転速度範囲の回転速度に調整し、続いて、電磁クラッチ手段42をオンする制御形態に限定されるものではない。
例えば、燃焼モードをストイキ燃焼モードからリーン燃焼モードに切り換えるタイミングになると、先ず、燃焼モードをストイキ燃焼モードに維持し且つ電磁クラッチ42をオンに維持した状態で、エンジン1の回転速度を切換用回転速度に調整した後、燃焼モードをストイキ燃焼モードからリーン燃焼モードに切り換え、且つ、エンジン1の回転速度をリーン側回転速度範囲の回転速度に調整する制御形態でも良い。
この場合は、過熱判断阻止手段21を、エンジン1の回転速度が切換用回転速度になった時点から、牽制用設定時間の計時を開始するように構成することになる。
【0065】
あるいは、燃焼モードをストイキ燃焼モードからリーン燃焼モードに切り換えるタイミングになると、電磁クラッチ42をオンに維持した状態で、即、燃焼モードをストイキ燃焼モードからリーン燃焼モードに切り換え、且つ、エンジン1の回転速度をリーン側回転速度範囲の回転速度に調整する制御形態でも良い。
この場合は、過熱判断阻止手段21を、燃焼モードをストイキ燃焼モードからリーン燃焼モードに切り換えるタイミングになった時点から、牽制用設定時間の計時を開始するように構成することになる。
【0066】
(ロ) 上記の実施形態では、触媒温度センサ14の検出温度が過熱防止用設定温度以上になって触媒過熱状態であると判断すると、エンジン1を停止するように構成したが、エンジン1の回転速度を低下させてエンジン1の出力を低下させるように構成しても良い。
このようにエンジン1の回転速度を低下させるときの低下目標回転速度は、エンジン1の安定運転が可能な条件で極力低速に設定して、排ガス量を極力少なくすることにより、三元触媒13の温度が極力速く低下するようにする。
この場合、触媒温度センサ14の検出温度が過熱防止用設定温度よりも低くなると、エンジン1の回転速度を低下前の回転速度に戻すことにより、エンジン1の出力を低下前の出力に上昇させるように構成することになる。
【0067】
(ハ) 燃焼モードをストイキ燃焼モードからリーン燃焼モードに切り換えるときに、電磁クラッチ42をオフにする制御動作を実行するタイミングは、エンジン1の回転速度をストイキ側回転速度範囲の下限値又はその下限値に近い値に設定される切換用回転速度に調整する制御動作の前でも後でも良い。
【0068】
(ニ) 本発明を適用可能なエンジンシステムの具体例は、上記の実施形態の如きエンジン駆動式のヒートポンプシステムに限定されるものではなく、種々の構成のエンジンシステムに適用可能である。
例えば、エンジン1にて駆動される発電機を有するエンジン駆動式の熱電併給システムに適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0069】
以上説明したように、エンジンの燃焼モードがストイキ燃焼モードからリーン燃焼モードに切り換えられるときに強制的にエンジンの出力が低下される又はエンジンが停止されるのを回避することにより、三元触媒の劣化を十分に抑制しながら、運転の安定性を向上し得るエンジンシステムを提供することができる。
【符号の説明】
【0070】
1 エンジン
2 燃焼室
4 排気路
13 三元触媒
14 触媒温度センサ(触媒温度検出手段)
20 制御装置(制御手段)
21 過熱判断阻止手段
30 圧縮式ヒートポンプ回路
31 圧縮機
42 電磁クラッチ(クラッチ手段)
E 排ガス
M 混合気

【特許請求の範囲】
【請求項1】
混合気を燃焼室で圧縮して燃焼させて駆動力を出力するエンジンと、
前記エンジンからの排ガスが通流する排気路に排ガスが通過自在に設けられた三元触媒と、
その三元触媒の温度を検出する触媒温度検出手段と、
エンジン負荷に応じて前記エンジンの出力を制御する制御手段とを備え、
前記制御手段が、エンジン負荷に応じて、前記燃焼室で燃焼する混合気の空気過剰率をストイキ範囲内に設定するストイキ燃焼モードと前記燃焼室で燃焼する混合気の空気過剰率を前記ストイキ範囲よりも大きいリーン範囲内に設定するリーン燃焼モードとに前記エンジンの燃焼モードを切り換え自在で、且つ、前記触媒温度検出手段の検出温度が前記三元触媒の過熱を防止するための過熱防止用設定温度以上になって触媒過熱状態であると判断すると、前記エンジンの出力を低下させる又は前記エンジンを停止するように構成されたエンジンシステムであって、
前記制御手段が前記燃焼モードを前記ストイキ燃焼モードから前記リーン燃焼モードに切り換えるときは、少なくともその切り換えタイミングになった以降から開始されて、前記燃焼モードが前記リーン燃焼モードに切り換えられた後にまで延びるように設定される牽制用設定時間が経過する間、前記制御手段が前記触媒過熱状態であると判断するのを阻止する過熱判断阻止手段が設けられているエンジンシステム。
【請求項2】
前記過熱判断阻止手段が、前記過熱防止用設定温度を補正用設定温度だけ高く補正して、その補正された過熱防止用設定温度に基づいて前記制御手段に前記触媒過熱状態であるか否かを判断させることにより、前記制御手段が前記触媒過熱状態であると判断するのを阻止するように構成されている請求項1に記載のエンジンシステム。
【請求項3】
前記過熱判断阻止手段が、前記触媒過熱状態であるか否かを判断する処理を前記制御手段に中断させることにより、前記制御手段が前記触媒過熱状態であると判断するのを阻止するように構成されている請求項1に記載のエンジンシステム。
【請求項4】
前記制御手段が、前記燃焼モードを前記ストイキ燃焼モードから前記リーン燃焼モードに切り換えるタイミングになると、クラッチ手段をオフにして前記エンジンにエンジン負荷がかからないようにし、且つ、前記エンジンの回転速度を前記ストイキ燃焼モードに対応するストイキ側回転速度範囲の下限値又はその下限値に近い値に設定される切換用回転速度に調整した後、前記燃焼モードを前記ストイキ燃焼モードから前記リーン燃焼モードに切り換え、且つ、前記エンジンの回転速度を前記リーン燃焼モードに対応するリーン側回転速度範囲の回転速度に調整し、続いて、前記クラッチ手段をオンにして前記エンジンにエンジン負荷をかけるように構成され、
前記過熱判断阻止手段が、前記エンジンの回転速度が前記切換用回転速度になった時点から、前記牽制用設定時間の計時を開始するように構成されている請求項1〜3のいずれか1項に記載のエンジンシステム。
【請求項5】
前記エンジンにて駆動される圧縮機を有する圧縮式ヒートポンプ回路が設けられ、
前記エンジンに、前記圧縮式ヒートポンプにかかる空調負荷に応じたエンジン負荷がかかるように構成されている請求項1〜4のいずれか1項に記載のエンジンシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−207576(P2012−207576A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−73450(P2011−73450)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(000000284)大阪瓦斯株式会社 (2,453)
【Fターム(参考)】