キャリア、ウエハ研磨装置、ウエハ研磨方法、圧電振動子の製造方法、圧電振動子、発振器、電子機器及び電波時計
【課題】 研磨工程において、ウエハに割れや欠けといった破損が生じてしまうのを防止したキャリアと、このキャリアを用いてなる研磨装置及び研磨方法を提供する。
【解決手段】 ウエハSの両面を研磨して、ウエハSの厚みを所定の厚みに調整するウエハ研磨装置において、ウエハSを収容し保持するためのキャリア41である。ウエハSを収容する、開口形状が略角形状の保持孔41bを有している。保持孔41bの角部には、角部を形成する二本の直線部L1、L2の交点Pとその近傍において、保持孔41bの内側に向かって凹形状となる第1湾曲部41cが形成され、第1湾曲部41cの両側には、それぞれ対応する直線部より保持孔41bの内側に膨出することなく、保持孔41bの内側に向かって凸形状となる第2湾曲部41dが形成されている。
【解決手段】 ウエハSの両面を研磨して、ウエハSの厚みを所定の厚みに調整するウエハ研磨装置において、ウエハSを収容し保持するためのキャリア41である。ウエハSを収容する、開口形状が略角形状の保持孔41bを有している。保持孔41bの角部には、角部を形成する二本の直線部L1、L2の交点Pとその近傍において、保持孔41bの内側に向かって凹形状となる第1湾曲部41cが形成され、第1湾曲部41cの両側には、それぞれ対応する直線部より保持孔41bの内側に膨出することなく、保持孔41bの内側に向かって凸形状となる第2湾曲部41dが形成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャリア、ウエハを研磨加工して所定の厚みに調整するウエハ研磨装置、ウエハ研磨方法、該ウエハ研磨方法を利用して圧電振動子を製造する圧電振動子の製造方法、該製造方法で製造された圧電振動子、これを有する発振器、電子機器及び電波時計に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話や携帯情報端末機器には、時刻源や制御信号等のタイミング源、リファレンス信号源等として水晶等を利用した圧電振動子が用いられている。この種の圧電振動子は、様々なものが知られており、例えば音叉型の圧電振動片を有するものや、厚み滑り振動する圧電振動片を有するもの等が知られている。
ところで、この圧電振動片は、水晶、タンタル酸リチウムやニオブ酸リチウム等の各種の圧電体から形成されている。具体的には、圧電体の原石を切断してウエハにした後、該ウエハを所定の厚みまで研磨加工する。そして、研磨加工されたウエハを洗浄、乾燥させた後、フォトリソ技術によりエッチング加工して圧電振動片の外形を形成すると共に、所定の金属膜をパターニングして電極を形成する。これにより、1枚のウエハから一度に複数の圧電振動片を作製することができる。
【0003】
このように作製される圧電振動片は、自身の厚みがウエハの厚みに依存するため、前述した研磨加工が品質等を決定付けるために特に重要な工程とされている。通常、研磨加工は、原石から切断されたウエハをある程度の厚みまで粗く研磨するラッピング工程と、該ラッピング工程後、ウエハを鏡面研磨して所定の厚みまで高精度に仕上げるポリッシング工程と、を行っている。なお、このような研磨加工に供されるウエハは、その形態として、原石を切断した状態に近い矩形板状のものが多く用いられている。
また、この研磨加工は、一般的に研磨装置を利用して行われている。ここで、従来の研磨装置について図28から図30を参照して簡単に説明する。
【0004】
研磨装置200は、図28及び図29に示すように、サンギア201と、インターナルギア202と、キャリア203とを有している。また、キャリア203の上下には、上定盤204及び下定盤205が配置されている。サンギア201及びインターナルギア202は、共に反時計方向に回転するようになっており、キャリア203を遊星運動させている。すなわち、キャリア203を時計方向に自転させながら、反時計方向に公転させている。
【0005】
キャリア203は、例えば直径数インチの円板からなり、研磨処理前のウエハSに比べて十分に薄く形成されたもので、ウエハSを保持する保持孔203aを形成したものである。保持孔203aは、図28に示したように、ウエハSの形状に対応してその開口が略矩形状に形成されたもので、あそびを持ってウエハSを保持するべく、このウエハSより一回り大きい矩形状に形成されたものである(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
また、このようなキャリア203は、上定盤204と下定盤205との間において所定角度毎に複数個配置されるようになっており、したがって研磨装置200では、1バッチの研磨で複数枚のウエハSを同時に研磨できるようになっている。
【0006】
上定盤204及び下定盤205には、それぞれ対向面に研磨パッドPが着脱可能に固定されている。そして、キャリア203に保持されたウエハSを両定盤204、205で上下から挟み込んでいる。この際、上定盤204は、所定の荷重をウエハSに加えた状態となっている。下定盤205は、キャリア203が公転する方向とは逆方向である反時計方向に回転するようになっている。
また、上定盤204には、図28及び図30に示すように、該上定盤204を貫通して両定盤204、205の間に研磨液Wを供給するための、供給路204aが複数(数十個)形成されている。具体的には、半径raの内側円、半径rbの中間円、半径rcの外側円に沿って所定間隔毎に形成されている。そして、図示しない供給ホースを介して研磨液Wが供給路204aに供給されるようになっている。これにより、両定盤204、205の間に各供給路204aを介して研磨液Wを供給することができ、研磨液Wを利用してウエハSを研磨することができるようになっている。
【0007】
なお、上定盤204に形成された研磨パッドPには、供給路204aを塞がないように開口が形成されている。また、研磨液Wとしては、微小な粒径の研磨剤が混入されたものが使用される。また、ラッピング工程あるいはポリッシング工程を行う場合には、通常、同一の構成ではあるものの、異なる研磨装置200を使用している。ただし、ラッピングを行う場合には、通常、研磨パッドPは上定盤204、下定盤205からそれぞれ外し、使用しない。これは、研磨材(遊離砥粒)によるウエハ表面の微細な破壊により、ラッピングを進行させるためである。
【0008】
このように構成された研磨装置200によりラッピング工程を行って、ウエハSを研磨する場合について簡単に説明する。
まず、上定盤204と下定盤205とを離間させた状態で、下定盤205上に各キャリア203をセットする。また、このようにしてセットした各キャリア203の保持孔203aにそれぞれウエハSをセットする。このようにしてセットを終了した後、上定盤204を下降させてウエハSの上面に該上定盤204を所定の荷重で押し付け、該ウエハSを両定盤204、205で挟み込む。
【0009】
そして、供給路204aを介して両定盤204、205の間に研磨液Wを供給しながら、サンギア201、インターナルギア202を駆動させてキャリア203を自転及び公転させる。また、これと同時に下定盤205を回転させる。これにより、キャリア203に保持されたウエハSの両面を研磨することができ、ウエハSの厚みを所定の厚みに仕上げることができる。
【特許文献1】特開2001−170859号公報
【特許文献2】特開平5−38671号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、前記したウエハの研磨には以下の改善すべき課題がある。
前記の矩形状のウエハSについては、特にその角部が研磨時に保持孔203aの内周面に衝突したり擦れたりすることで、割れや欠けといった破損が生じ易くなっている。そして、その結果歩留まりが低下し、生産コストの低減化を損なう一因となっている。なお、ウエハSについては、面取り加工(C面取り)することで一つの角部を二つの角部にし、それぞれの角度を直角でなく鈍角にすることもなされているが、その場合にも鈍角の角部が依然として残ることにより、やはりこれら角部に割れや欠けといった破損が生じ易くなっている。
【0011】
そこで、従来のキャリア203では、図31(a)(b)に示すように、保持孔203aの全ての角部に、該保持孔203aの内側に向かって凹形状となる円弧状の湾曲部203bを形成し、これによってウエハSの角部が保持孔203aの内周面に衝突したり擦れたりすることを抑制している。
しかしながら、このように保持孔203aの角部に湾曲部203bを形成しても、保持孔203aの内周面を形成する直線部203cと湾曲部203bとの接点部分には、保持孔203の内側に向けて尖ってなる尖角部203dが形成されてしまう。したがって、ウエハSの角部やその近傍が、研磨時に前記尖角部203dに衝突したり擦れたりすることにより、やはりウエハSに割れや欠けといった破損が生じているのが現状である。
【0012】
本発明は前記課題を解決するためになされたもので、その主目的は、特に研磨工程において、ウエハに割れや欠けといった破損が生じてしまうのを防止したキャリアと、このキャリアを用いてなる研磨装置及び研磨方法を提供することである。
また、別の目的としては、ウエハ研磨方法を利用して圧電振動子を製造する圧電振動子の製造方法、該製造方法で製造された圧電振動子、該圧電振動子を有する発振器、電子機器及び電波時計を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、前記課題を解決するために以下の手段を提供する。
本発明に係るキャリアは、ウエハの両面を研磨して、該ウエハの厚みを所定の厚みに調整するウエハ研磨装置において、前記ウエハを収容し保持するためのキャリアであって、
前記ウエハを収容する、開口形状が略角形状の保持孔を有してなり、
前記保持孔の角部には、該角部を形成する二本の直線部の交点部近傍において、該保持孔の内側に向かって凹形状となる第1湾曲部が形成され、該第1湾曲部の両側には、それぞれ対応する前記直線部より前記保持孔の内側に膨出することなく、該保持孔の内側に向かって凸形状となる第2湾曲部が形成されていることを特徴としている。
【0014】
このキャリアによれば、その保持孔の角部に、該保持孔の内側に向かって凹形状となる第1湾曲部が形成され、さらに、該第1湾曲部の両側に、前記保持孔の内側に膨出することなく、該保持孔の内側に向かって凸形状となる第2湾曲部が形成されているので、ウエハをこの保持孔に収容してウエハ研磨装置で研磨加工した際、ウエハの角部での割れや欠けといった破損を防止することができる。すなわち、ウエハの角部を第1湾曲部内に入り込ませることにより、ウエハの角部が保持孔の内周面に衝突したり擦れたりすることを抑制し、その破損を防止することができる。また、第1湾曲部の両側に第2湾曲部を形成しているので、従来のようにここに尖った角部(尖角部)を形成することなく、したがって該第2湾曲部をウエハに対してほぼ面接触させることで、ウエハの破損を防止することができる。つまり、従来では尖角部がウエハに対して点接触していたことにより、ウエハに対して局部的に大きな負荷(衝撃)をかけ、割れや欠けといった破損を引き起こしていたが、本発明では第2湾曲部を形成してウエハに面接触させているので、ウエハに与える負荷を分散し、割れや欠けといった破損を防止することことができる。
【0015】
また、本発明に係るキャリアは、前記第1湾曲部が、前記保持孔の角部を形成する二本の直線部の、交点を中心として形成される円の円弧形状を有してなり、 前記第2湾曲部が、対応する前記直線部と前記第1湾曲部とに接する円の円弧形状を有してなるのが好ましい。
このようにすれば、第1湾曲部と第2湾曲部との間が直線に近くなり、保持孔の内側に向かって凸状に膨出することが確実になくなるので、ウエハの破損をより確実に防止することができる。
【0016】
また、本発明に係るキャリアは、前記第1湾曲部における前記円の半径r1が、前記第2湾曲部における前記円の半径r2より小さくなっているのが好ましい。
このようにすれば、第1湾曲部の円の曲率が第2湾曲部の円の曲率より大きくなるので、ウエハの角部を第1湾曲部内により多く入り込ませることができ、したがってウエハの角部の破損をより良好に防止することができる。
【0017】
また、本発明に係るキャリアは、前記保持孔の開口形状が略矩形状であり、全ての角部が、前記第1湾曲部と前記第2湾曲部とを有してなるのが好ましい。
このようにすれば、矩形状のウエハを保持孔に収納して研磨する際、その全ての角部での破損を確実に防止することができる。
【0018】
本発明に係るウエハ研磨装置は、研磨液を供給しつつウエハの両面を研磨して、該ウエハの厚みを所定の厚みに調整するウエハ研磨装置であって、
外周縁がギア部とされ、前記ウエハが収納される保持孔が形成された円板状のキャリアと、
前記ギア部を介して前記キャリアに噛合され、該キャリアを自転させながら軸線回りに公転させる遊星歯車機構と、
中心が刳り貫かれた円板状に形成され、前記キャリアの上下に配置されて、前記保持孔に収納された前記ウエハに所定の荷重を加えつつ、該ウエハの両面を挟み込む上定盤及び下定盤と、
前記上定盤と前記下定盤との間に前記研磨液を供給する研磨液供給手段と、を備え、
前記キャリアは、前記保持孔が、前記した本発明に係るキャリアの保持孔と同じ構成からなっていることを特徴としている。
【0019】
本発明に係るウエハ研磨方法は、外周縁がギア部とされ、ウエハが収納される保持孔が形成された円板状のキャリアと、前記ギア部を介して前記キャリアに噛合され、該キャリアを自転させながら軸線回りに公転させる遊星歯車機構と、中心が刳り貫かれた円板状に形成され、前記キャリアの上下に配置されて、前記保持孔に収納された前記ウエハに所定の荷重を加えつつ、該ウエハの両面を挟み込む上定盤及び下定盤と、前記上定盤と前記下定盤との間に前記研磨液を供給する研磨液供給手段と、を備えるウエハ研磨装置により、前記研磨液供給手段から研磨液を供給しつつ前記ウエハの両面を研磨し、該ウエハの厚みを所定の厚みに調整する研磨工程を備えたウエハ研磨方法であって、
前記キャリアとして、前記保持孔が、前記した本発明に係るキャリアの保持孔と同じ構成からなっているものを用いることを特徴としている。
【0020】
この発明に係るウエハ研磨装置及びウエハ研磨方法においては、矩形状のウエハを保持するキャリアとして、前記した、保持孔の角部に第1湾曲部と第2湾曲部とを形成したものを用意する。そして、研磨工程の前に、下定盤上に前記キャリアをセットするとともに、該キャリアの保持孔に研磨加工対象物である前記ウエハを収納し、ここに保持させておく。
このようにしてキャリア及びウエハをセットしたら、研磨工程を行うべく、まず、上定盤を下降させ、キャリアの保持孔内に収納されたウエハの両面を、上定盤と下定盤とで所定の荷重を加えながら挟み込む。
次いで、研磨液供給手段から研磨液を供給しつつ、両定盤でウエハの両面を研磨加工して、ウエハを所定の厚みに調整する。
【0021】
その際、前述したようにキャリアの保持孔の角部が第1湾曲部と第2湾曲部とを有しているので、ウエハの角部が保持孔の内周面に衝突したり擦れたりすることを抑制し、その破損を防止することができる。また、該第2湾曲部をウエハに対してほぼ面接触させることで、ウエハの破損を防止することもできる。
【0022】
また、本発明に係る圧電振動子の製造方法は、前記本発明のウエハ研磨方法により研磨されたウエハを利用して圧電振動子を一度に複数製造する方法であって、
研磨後の前記ウエハをフォトリソ技術によりエッチングして、該ウエハに複数の圧電振動片の外形形状をパターニングする外形形成工程と、
複数の前記圧電振動片の外表面上に電極膜をパターニングして、所定の電圧が印加されたときに圧電振動片を振動させる励振電極と、引き出し電極を介して励振電極に電気的に接続されるマウント電極と、をそれぞれ形成する電極形成工程と、
複数の前記圧電振動片を前記ウエハから切り離して固片化する切断工程と、
該切断工程後、固片化された前記圧電振動片の前記マウント電極を、一端側が外部に電気的に接続される外部接続端子の他端側に接合するマウント工程と、
該マウント工程後、前記圧電振動片を封止部材により気密封止する封止工程と、を備えていることを特徴としている。
【0023】
この発明に係る圧電振動子の製造方法においては、ウエハ研磨方法により両面が研磨加工され、所定の厚みに高精度に調整されたウエハをフォトリソ技術によりエッチングして、ウエハに複数の圧電振動片の外形形状をパターニングする外形形成工程を行う。
次いで、複数の圧電振動片の外表面上に電極膜をパターニングして、励振電極、引き出し電極及びマウント電極の各電極をそれぞれ形成する電極形成工程を行う。そして、複数の圧電振動片をウエハから切り離して固片化する切断工程を行う。これにより、所定の厚みに調整されたウエハから、励振電極、引き出し電極及びマウント電極が外表面上に形成された圧電振動片を一度に複数製造することができる。
【0024】
次いで、固片化された圧電振動片のマウント電極を、一端側が外部に電気的に接続される外部接続端子の他端側に接続するマウント工程を行う。これにより圧電振動片は、外部接続端子に機械的に支持されると共に電気的に接続された状態となる。そして最後に、マウントされた圧電振動片を封止部材により内部に気密封止する封止工程を行う。その結果、圧電振動片が気密封止された圧電振動子を得ることできる。
【0025】
このように製造された圧電振動子を作動させる場合には、外部接続端子の一端側に対して所定の電圧を印加する。これにより、外部接続端子、マウント電極及び引き出し電極を介して励振電極に電流を流すことができ、圧電振動片を所定の周波数で振動させることができる。
このような圧電振動子の製造方法によれば、前記のウエハ研磨方法により、割れや欠けといった破損が防止された状態で、良好に研磨されたウエハを利用しているので、製造工程全体で見ると、生産性を改善して歩留まりを向上することができ、したがって生産コストの低減化を図ることができる。
【0026】
また、本発明に係る圧電振動子は、前記本発明の圧電振動子の製造方法により製造されたことを特徴としている。
この発明に係る圧電振動子によれば、前述した製造方法により製造されているので、従来のものに比べて、生産コストが低減化されたものとなる。
【0027】
また、本発明に係る発振器は、前記本発明の圧電振動子が、発振子として集積回路に電気的に接続されていることを特徴とするものである。
また、本発明に係る電子機器は、前記本発明の圧電振動子が、計時部に電気的に接続されていることを特徴とするものである。
また、本発明に係る電波時計は、前記本発明の圧電振動子が、フィルタ部に電気的に接続されていることを特徴とするものである。
この発明に係る発振器、電子機器及び電波時計においては、前述した圧電振動子を備えているので、従来のものに比べて生産コストが低減化されたものとなる。
【発明の効果】
【0028】
本発明に係るキャリアによれば、ウエハを研磨加工した際、ウエハに割れや欠けといった破損が生じるのを防止することができるので、研磨加工についての生産性を改善し、歩留まりを向上することができ、したがって生産コストの低減化を図ることができる。
本発明に係るウエハ研磨装置及びウエハ研磨方法によれば、ウエハの角部での割れや欠けといった破損を防止することができるので、生産性を改善して歩留まりを向上し、生産コストの低減化を図ることができる。
また、本発明に係る圧電振動子の製造方法によれば、前述したウエハ研磨方法で研磨されたウエハを利用するので、製造工程全体で見ると、生産コストの低減化を図ることができる。
また、本発明に係る圧電振動子によれば、前述した製造方法により製造されているので、従来のものに比べて生産コストが低減化されたものとなる。
また、本発明に係る発振器、電子機器及び電波時計によれば、前記圧電振動子を備えているので、従来のものに比べて生産コストが低減化されたものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明の圧電振動子に係る一実施形態を、図1から図19を参照して説明する。なお、本実施形態では、圧電振動子1として、シリンダパッケージタイプの圧電振動子を例に挙げて説明する。
本実施形態の圧電振動子1は、図1から図4に示すように、圧電振動片2と、該圧電振動片2を内部に収納するケース3と、圧電振動片2をケース3内に密閉させる気密端子であるプラグ4と、を備えている。
【0030】
圧電振動片2は、図2及び図3に示すように、水晶、タンタル酸リチウムやニオブ酸リチウム等の圧電材料から形成された音叉型の振動片であり、所定の電圧が印加されたときに振動するものである。なお、この圧電振動片2は、後述するウエハSから作製されたものである。
この圧電振動片2は、平行に配置された一対の振動腕部10、11と、該一対の振動腕部10、11の基端側を一体的に固定する基部12と、一対の振動腕部10、11の外表面上に形成されて一対の振動腕部10、11を振動させる第1の励振電極13と第2の励振電極14とからなる励振電極15と、第1の励振電極13及び第2の励振電極14に電気的に接続されたマウント電極16、17とを有している。
また、本実施形態の圧電振動片2は、一対の振動腕部10、11の両主面上に、該振動腕部10、11の長手方向Xに沿ってそれぞれ形成された溝部18を備えている。この溝部18は、振動腕部10、11の基端側から略中間付近まで形成されている。
【0031】
第1の励振電極13と第2の励振電極14とからなる励振電極15は、一対の振動腕部10、11を互いに接近又は離間する方向に所定の共振周波数で振動させる電極であり、一対の振動腕部10、11の外表面に、それぞれ電気的に切り離された状態でパターニングされて形成されている。具体的には、図4に示すように、第1の励振電極13が、一方の振動腕部10の溝部18上と、他方の振動腕部11の両側面上とに主に形成され、第2の励振電極14が、一方の振動腕部10の両側面上と他方の振動腕部11の溝部18上とに主に形成されている。
【0032】
また、第1の励振電極13及び第2の励振電極14は、図2及び図3に示すように、基部12の両主面上において、それぞれ引き出し電極19、20を介してマウント電極16、17に電気的に接続されている。そして圧電振動片2は、このマウント電極16、17を介して電圧が印加されるようになっている。
なお、前述した励振電極15、マウント電極16、17及び引き出し電極19、20は、例えば、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、アルミニウム(Al)やチタン(Ti)等の導電性膜(電極膜)の被膜により形成されたものである。
【0033】
また、一対の振動腕部10、11の先端には、自身の振動状態を所定の周波数の範囲内で振動するように調整(周波数調整)を行うための重り金属膜21が被膜されている。なお、この重り金属膜21は、周波数を粗く調整する際に使用される粗調膜21aと、微小に調整する際に使用される微調膜21bとに分かれている。これら粗調膜21a及び微調膜21bを利用して周波数調整を行うことで、一対の振動腕部10、11の周波数をデバイスの公称周波数の範囲内に収めることができる。
【0034】
ケース3は、図1に示すように有底円筒状に形成されたもので、圧電振動片2を内部に収納した状態で、プラグ4の後述するステム30の外周に対して圧入され、嵌合固定されたものである。なお、このケース3の圧入は真空雰囲気下で行われており、これによってケース3内の圧電振動片2を囲む空間は、真空に保たれた状態となっている。
【0035】
プラグ4は、ケース3を密閉させるステム30と、該ステム30を貫通するように平行配置され、ステム30を間に挟んで一端側が圧電振動片2をマウント(機械的に接合及び電気的に接続)するインナーリード31aとされ、他端側が外部に電気的に接続されるアウターリード31bとされた2本のリード端子31と、ステム30の内側に充填されてステム30とリード端子31とを固定させる絶縁性の充填材32とを有している。
ステム30は、金属材料で環状に形成されたものである。また、充填材32の材料としては、例えばホウ珪酸ガラスが用いられている。また、リード端子31の表面及びステム30の外周には、それぞれ同材料の図示しないメッキが施されている。
【0036】
2本のリード端子31は、ケース3内に突出している部分がインナーリード31aとなり、ケース3外に突出している部分がアウターリード31bとなっている。そして、インナーリード31aとマウント電極16、17とが、導電性のバンプEを介してマウントされている。すなわち、バンプEを介してインナーリード31aとマウント電極16、17とが機械的に接合されていると同時に、電気的に接続されている。その結果、圧電振動片2は、2本のリード端子31にマウントされた状態となっている。
【0037】
なお、前述した2本のリード端子31は、一端側(アウターリード31b側)が外部に電気的に接続され、他端側(インナーリード31a側)が圧電振動片2に対してマウントされる外部接続端子として機能する。また、ケース3及びプラグ4は、マウントされた圧電振動片2を内部に気密封止する封止部材5として機能する。
【0038】
ここで、プラグ4を構成する主要部品の寸法及び材質の一例について述べる。
リード端子31の直径は例えば約0.12mmであり、リード端子31の母材の材質としては、コバール(FeNiCo合金)が慣用されている。また、リード端子31の外表面及びステム30の外周に被膜させるメッキの材質としては、下地金属膜としてはCuが用いられ、仕上金属膜としては、耐熱ハンダメッキ(錫と鉛の合金で、その重量比が1:9)や、銀(Ag)や錫銅合金(SnCu)や金錫合金(AuSn)等が用いられる。
また、ステム30の外周に被膜された金属膜(メッキ層)を介在させながらケース3の内周に真空中で冷間圧接させることにより、ケース3の内部を真空状態で気密封止できるようになっている。
【0039】
このように構成された圧電振動子1を作動させる場合には、2本のリード端子31のアウターリード31bに対して、所定の駆動電圧を印加する。これにより、インナーリード31a、バンプE、マウント電極16、17及び引き出し電極19、20を介して、第1の励振電極13及び第2の励振電極14からなる励振電極15に電流を流すことができ、一対の振動腕部10、11を接近・離間させる方向に所定の周波数で振動させることができる。そして、この一対の振動腕部10、11の振動を利用して、時刻源、制御信号のタイミング源やリファレンス信号源等として利用することができる。
【0040】
次に、前述した圧電振動子1の製造方法について説明するが、これに先立ち、本発明に係るキャリアについて説明する
図5(a)(b)は、本発明に係るキャリアの一実施形態を示す図である。図5(a)(b)においてキャリア41は、従来の研磨用キャリアと同様に、炭素工具鋼等の板材を圧延加工した厚さ約120μm〜約130μm程度の円盤状のもので、図5(a)に示すように外縁をギア部41aとし、ウエハSを収容保持するための保持孔41bを放射状に四つ形成したものである。
【0041】
保持孔41bは、矩形状のウエハSに対応して開口形状が略矩形状に形成されたもので、図5(b)に示すようにこの開口形状、すなわち平面視した形状における全ての(四つの)角部に、それぞれ第1湾曲部41cと第2湾曲部41dとを形成したものである。ここで、保持孔41bにおける角部とは、本発明では第1湾曲部41c及び第2湾曲部41dがない元の矩形状(角形状)における角部、すなわち交差する二辺(二本の直線部L1、L2)の交点Pとその近傍(交点部近傍)をいう。なお、実際には第1湾曲部41c及び第2湾曲部41dが形成されていることにより、キャリア41上には前記二辺が交差する交点Pが存在せず、この交点Pは保持孔41b内に位置しているものの、二辺(直線部L1、L2)の交点Pは仮想的にキャリア41に存在するものとする。
【0042】
第1湾曲部41cは、前記した保持孔41bの各角部、すなわち該角部を形成する二本の直線部L1、L2の交点Pとその近傍(交点部近傍)に形成されたもので、該保持孔41bの内側に向かって凹形状となるように形成されたものである。具体的には、この第1湾曲部41cは保持孔41bの開口形状(平面視形状)において、角部を形成する二本の直線部L1、L2の交点Pを中心として形成される半径r1の円の円周の一部、つまりこの円の円弧形状を有して形成されたもので、前記角部の外側に向かって膨らんで形成されたものである。
【0043】
また、この第1湾曲部41cの両側には、それぞれに第2湾曲部41dが連続して形成されている。これら第2湾曲部41dは、それぞれ、対応する直線部L1(あるいはL2)、すなわち該第2湾曲部41dが形成される側の直線部L1(あるいはL2)より保持孔41bの内側に膨出することなく、かつ、該保持孔41bの内側に向かって凸形状となるように形成されたものである。具体的には、これら第2湾曲部41dは、対応する前記直線部L1(あるいはL2)と前記第1湾曲部41cとに接する半径r2の円の円周の一部、つまりこの円の円弧形状を有して形成されたもので、前記角部の内側に向かって膨らんで形成されたものである。
【0044】
このように第1湾曲部41cの両側に第2湾曲部41dを形成しているので、保持孔41bは、従来のように尖った角部(尖角部)を各角部に形成することなく、該角部の内周面を連続した曲線(曲面)によって構成している。
ここで、前記第1湾曲部41cにおける前記円の半径r1は、前記第2湾曲部41dにおける前記円の半径r2より小さく形成されており、したがって第1湾曲部41cの曲率R1(=1/r1)は、第2湾曲部41dの曲率R2(=1/r2)より大きくなっている。
なお、図5(b)では、開口形状が略矩形状の保持孔41bにおいて、一つの角部についてしか記載していないものの、本実施形態では、四つの角部全てに、第1湾曲部41c、第2湾曲部41d、41dが形成されている。
【0045】
このような保持孔41bを有するキャリア41に対して、矩形状のウエハSはそれぞれの保持孔41bに収容され、保持されるようになっている。ウエハSは、保持孔41bの開口形状より一回り小さくなっており、これによって保持孔41bに容易に収容でき、かつここから取り外すことができるようになっている。なお、ウエハSについては、図5(b)中二点鎖線で示すように、その角部が面取り加工(C面取り)されていてもよい。
【0046】
このようにして保持孔41b内にウエハSを保持すると、キャリア41は、ウエハSの角部SCを保持孔41bの前記第1湾曲部41c内に入り込ませることで、後述する研磨時、該角部SCが保持孔41bの内周面に衝突したり擦れたりすることを抑制し、その破損を防止することができる。また、第1湾曲部41cの両側に第2湾曲部41dを形成し、これによって保持孔41bの角部の内周面に尖った角部(尖角部)を形成していないので、第2湾曲部41dをウエハSに対してほぼ面接触させることができ、これによってもウエハSの破損を防止することができる。
さらに、第1湾曲部41cの曲率R1が第2湾曲部41dの曲率R2より大きくなっているので、ウエハSの角部SCをこれに当接することなく第1湾曲部41c内により多く入り込ませることができ、したがってウエハSの角部SCの破損をより良好に防止することができる。
【0047】
次に、このようなキャリア41を用いた圧電振動子1の製造方法について、図6に示すフローチャートを参照しつつ説明する。
ウエハSを作製するべく、まず、原石を切断して所定の厚さのウエハSにする。すなわち、横断面矩形状の角柱状の原石を用意すると共に、X線回析法等により原石の切断角度(カット角)の測定を行う(S1)。詳細には、原石のZ面のX軸回りの角度が指定の角度になるようにX線を用いて測定する。測定後、ベースとなるガラス上に接着剤を用いて原石を固定する。なお、本実施形態では原石として水晶を用い、この水晶における基準面が、形成するウエハの端面となるようにする。また、必要に応じて前記原石の角部を研磨によって面取り加工し、横断面である矩形の四つの角部全てをC面取りしてもよい。
【0048】
次いで、この原石を、ワイヤーソーのワークテーブルにセットする。そして、測定した前記切断角度に沿って、原石をワイヤーソー(例えば、線径が約160μmの高張力線)を用いて約220μmの厚みに切断し、略矩形状のウエハとする(S2)。
なお、本実施形態では、形成するウエハSの最大長を約95mmとする。また、前記切断の際、ワイヤーソーの送り速度を、毎分40mmから50mmに制御する。さらに、切削液としては、砥粒にラッピングオイルを適量配合した液を使用する。この砥粒としては、平均粒径が約12μm程度の炭化珪素(SiC)が慣用される。なお、切削液については、常温を保つように温度管理する。
【0049】
次に、ウエハSの側面研磨を行う(S3)。すなわち、切断したウエハSの1枚毎に外周面を研磨するか、あるいは、複数のウエハSを重ね合わせて接着剤で張り合わせてブロックにした後に、図示しない研磨機で外周の研磨を行う。これにより、外周を滑らかに仕上げて、ウエハSの割れや欠け等の発生を抑制することができる。特に、本実施形態の略矩形状のウエハSの場合では、ウエハSの外形の寸法精度を出すことができる。研磨後に、加熱等により接着剤を溶解させ、1枚毎のウエハSに分離する。そして、分離したウエハSを洗浄液中で超音波洗浄して、接着剤を完全に除去する。
【0050】
次いで、図7に示すウエハ研磨装置40を用い、側面研磨されたウエハSの両面をラッピング(粗加工)し、所望の厚さにまで研磨する(S4)。ここで、前記ウエハ研磨装置40について詳しく説明する。なお、このウエハ研磨装置40は、図28、図29、図30に示した従来の研磨装置と基本構成は同じであり、異なるところは、図31(a)(b)に示したキャリア203に代えて、図5(a)(b)に示したキャリア41を用いる点である。
【0051】
このウエハ研磨装置40は、図7、図8に示すように、研磨液Wを供給しながらウエハSの両面を研磨し、該ウエハSの厚みを所定の厚みに調整する装置であって、キャリア41と、遊星歯車機構42と、上定盤43と、下定盤44と、研磨液供給手段45と、を備えて構成されている。
キャリア41は、図5(a)(b)に示したように、外縁をギア部41aとし、内部に保持孔41bを四つ有したもので、保持孔41bの各角部に、第1湾曲部41cと第2湾曲部41d、41dとを形成したものである。
なお、本実施形態では、図9に示すように、ウエハ研磨装置40が前記構成のキャリア41を5枚備えているものとして説明する。
【0052】
前記ウエハ研磨装置40においては、図9に示すように、前記5枚のキャリア41が軸線Lを中心として放射状に所定角度間隔で配置されている。また、前記軸線Lに沿ってシャフト50が配置されており、該シャフト50にはサンギア51が固定されている。また、5枚のキャリア41の周囲を取り囲むように、リング状に形成されたインターナルギア52が配置されている。そして、5枚のキャリア41は、サンギア51及びインターナルギア52に対してギア部41aが噛合した状態で配置されている。
【0053】
これらサンギア51及びインターナルギア52は、図示しない駆動源により共に反時計方向に回転するようになっている。この際、サンギア51及びインターナルギア52の回転速度は、それぞれ別個の速度で回転するように調整されている。これにより、各キャリア41は、時計方向に自転しながら、軸線Lを中心に反時計方向に公転するようになっている。つまり、サンギア51及びインターナルギア52は、ギア部41aを介してキャリア41に噛合され、該キャリア41を自転させながら軸線L回りに公転させる前記遊星歯車機構42として機能する。
【0054】
上定盤43及び下定盤44は、図7、図8、図9に示すように、共に中心が刳り貫かれた円板状(リング状)に形成されており、キャリア41の上下に配置されている。下定盤44は、回転テーブル53上に固定されており、回転テーブル53と共に軸線Lを中心としてキャリア41の公転方向とは反対方向(時計方向)に回転するようになっている。また、上定盤43は、図7に示すようにポール54に沿って上下に移動可能とされており、下定盤44との距離を自在に調整できるようになっている。これにより、キャリア41に形成された保持孔41bにウエハSを収納し、あるいはこれらから取り出したり、キャリア41に収納保持したウエハSに所定の荷重を加えながら、該ウエハSを両定盤で挟み込んだりすることができるようになっている。
【0055】
両定盤43、44は、キャリア41の一部を両定盤43、44の内周面及び外周面から外側に飛び出させ、露出させるサイズに形成されている。そのため、自転及び公転するキャリア41は、図9に示すように、サンギア51側の一部及びインターナルギア52側の一部が常に露出するようになっている。なお、図9では、下定盤44だけ図示しているが、上定盤43も下定盤44と同じサイズである。
【0056】
また、上定盤43の上方には、図7に示すように、パウダーリング55が固定されたリングプレート56が配置されており、該リングプレート56の下面に前記ポール54が固定されている。パウダーリング55には、環状の溝部55aが形成されており、パウダーリング55の上方に配置された供給バルブ57から吐出された研磨液Wを内部に貯留できるようになっている。
また、リングプレート56には、複数のパウダーホース(供給ホース)58の基端側が固定されている。この際、各パウダーホース58は、溝部55a内に連通した状態で固定されている。これにより、溝部55a内に一旦貯留された研磨液Wは、溝部55aからパウダーホース58内に流れ、パウダーホース58の先端に向かって流れるようになっている。
【0057】
これらパウダーホース58は、その先端が、上定盤43を貫通して形成された供給路(図示せず)に接続固定されている。供給路は、図30に示したように、半径raの内側円、半径rbの中間円、半径rcの外側円に沿って所定間隔毎に形成された貫通孔からなっている。これにより、パウダーホース58から供給された研磨液Wは、各供給路を介して両定盤43、44の間に供給されるようになっている。
【0058】
また、図7に示すように下定盤44の下方には、研磨後に流れてきた研磨液Wを受け取る回収パン61と、回収パン61で受け取られて集められた研磨液Wを貯める研磨液槽62とが配置されている。研磨液槽62には、内部に溜まった研磨液Wを攪拌すると共に、研磨液Wを汲み上げて循環ホース63に循環させるポンプ64が設けられている。そして、循環ホース63は、供給バルブ57に接続された分配器65に接続されている。これにより、回収した研磨液Wを再度供給バルブ57に戻し、パウダーリング55の溝部55a内に供給できるようになっている。
【0059】
なお、前述したパウダーリング55、リングプレート56、供給バルブ57、パウダーホース58、回収パン61、研磨液槽62、循環ホース63、ポンプ64及び分配器65は、上定盤43の供給路を介してこの上定盤43と下定盤44との間に研磨液Wを供給する、前記研磨液供給手段45として機能する。また、このうち、回収パン61、研磨液槽62、循環ホース63、ポンプ64及び分配器65は、供給した研磨液Wを回収すると共に、回収した研磨液Wを循環させて再度両定盤43、44の間に供給する研磨液回収手段66として機能する。
【0060】
また、回収パン61には、フィルタ67が設けられており、回収した研磨液Wに含まれるウエハSの研磨加工粉を除去している。これにより、常に清浄な研磨液Wを両定盤43、44の間に供給し続けることができるようになっている。
なお、前述した研磨液Wは、研磨材(砥粒)が含有された液である。研磨材(砥粒)としては、このラッピングの際には炭化珪素(SiC)が慣用され、平均砥粒が6μmから9μm程度のより粒径の細かいものが使用される。
また、前記の両定盤43、44には、後述するポリッシング工程を行うときとは異なり、研磨パッドPを取り付けることなく外しておき、これを使用せずにラッピング(研磨)を行う。
【0061】
このように構成されたウエハ研磨装置40を利用してウエハ研磨を行い、前記ラッピングを行う(S4)。本実施形態のウエハ研磨方法は、図5に示したキャリア41を用いてこれを下定盤44上にセットし、その後遊星歯車機構42によりキャリア41を自転及び公転させて、ウエハSの両面を上定盤43及び下定盤44で研磨する研磨工程を、備えた方法である。この研磨工程について、以下に説明する。
【0062】
まず、上定盤43を下定盤44から離間するようにポール54に沿って上方に移動させた後、キャリア41の保持孔41b内にウエハSを収納する。ウエハSの収納後、ポール54に沿って上定盤43を下降させ、保持孔41b内に収納されたウエハSの両面を上定盤43と下定盤44とで所定の荷重を加えながら挟み込む。これにより、ウエハSは、両定盤43、44の表面に挟み込まれた状態となる。
【0063】
次いで、ウエハ研磨処理を行う。すなわち、研磨液供給手段45によって研磨液Wを供給しつつ、これら両定盤43、44によってウエハSの両面を研磨加工し、ウエハSを所定の厚みに調整する。具体的には、研磨液供給手段45によって上定盤43と下定盤44との間に研磨液Wを供給すると同時に、遊星歯車機構42を駆動させてキャリア41を自転させながら、両定盤43、44の中心を貫く軸線L回りに公転させる。ただし、研磨液Wの供給と遊星歯車機構42の作動とを同時にすることなく、研磨液Wの供給を行った後に遊星歯車機構42を駆動させても構わない。また、遊星歯車機構42の駆動と同時に、下定盤44をキャリア41の公転方向と反対方向に回転させる。
【0064】
研磨液供給手段45によって研磨液Wを供給するには、ポンプ64を作動させる。ポンプ64を作動させると、研磨液Wは、図7に示すように研磨液槽62の中で十分に撹拌された後に汲み上げられ、循環ホース63内に送られる。そして、循環ホース63内を通過した後、研磨液Wは分配器65に送られ、該分配器65で分流されてパウダーリング55内の溝部55a内に送られる。溝部55a内に送られた研磨液Wは、該溝部55a内に貯留されると共に、各パウダーホース58に流れ込む。パウダーホース58を流れた研磨液Wは、上定盤43の供給路を介してこの上定盤43と下定盤44との間に流れ込む。これにより、研磨液Wはその一部がキャリア41の上面に流れ落ち、残部が下定盤44上に流れ落ちる。したがって、ウエハSと両定盤43、44との間に研磨に必要な量の研磨液Wが安定して供給される。
【0065】
このようにしてラッピングを行うと、キャリア41の保持孔41bの各角部に、前述したように第1湾曲部41cと第2湾曲部41d、41dとを形成しているので、ウエハSの角部SCでの割れや欠けといった破損を防止することができる。すなわち、ウエハSの角部SCを第1湾曲部41c内に入り込ませることにより、ウエハSの角部SCが保持孔41bの内周面に衝突したり擦れたりすることを抑制し、その破損を防止することができる。
【0066】
また、第1湾曲部41cの両側に第2湾曲部41dを形成しているので、従来のようにここに尖った角部(尖角部)を形成することなく、したがって該第2湾曲部41dをウエハSに対してほぼ面接触させることで、ウエハSの破損を防止することができる。つまり、従来では尖角部がウエハSに対して点接触(線接触)していたことにより、ウエハに対して局部的に大きな負荷(衝撃)をかけ、割れや欠けといった破損を引き起こしていたが、本実施形態では第2湾曲部41dを形成してウエハSに面接触させているので、ウエハSに与える負荷を分散し、割れや欠けといった破損を防止することことができる。
よって、このキャリア41によれば、ウエハSを研磨加工した際、ウエハSに割れや欠けといった破損が生じるのを防止することができるので、研磨加工についての生産性を改善し、歩留まりを向上することができ、したがって生産コストの低減化を図ることができる。
【0067】
なお、本実施形態では、ウエハSを研磨する際に、下定盤44をキャリア41の公転方向とは反対方向に向けて回転させているので、下定盤44とウエハSとの抵抗を増大でき、より効率良くウエハSを研磨することができる。
また、両定盤43、44の間に供給された研磨液Wは、最終的には図7に示すように、回収パン61によって回収される。そして、回収パン61によって回収された研磨液W及び研磨加工粉は、フィルタ67を通過した後、研磨液槽62に溜まる。フィルタ67を通過する際に、研磨加工粉は除去されるため、研磨液槽62には清浄な研磨液Wだけが溜まるようになる。そして、回収された研磨液Wは、再度ポンプ64によって送り出され、再使用される。
【0068】
このように、一度供給した研磨液Wを廃棄して無駄にするのではなく、再度有効利用できるので、研磨液Wに費やすコストの低減化を図ることができる。しかも、フィルタ67を利用して研磨加工粉を除去できるので、常に清浄な研磨液Wだけを安定して供給し続けることができ、高精度な研磨を行うことができる。
【0069】
このようにしてラッピングが終了したら、ウエハSを洗浄する(S5)。すなわち、ウエハSを図示しないバスケットに収納すると共に、バスケットごと洗浄液に漬浸する。そして、超音波洗浄と純水洗浄とを繰り返し行う。また、同時に酸洗浄とアルカリ洗浄とを組み合わせて行う。そして、ウエハSに付着している砥粒を除去した後、純水によるすすぎ洗浄を行う。その後、スピン乾燥機により脱水及び乾燥を行う。
【0070】
次いで、ラッピングによってウエハSの表面に生じた加工変質層を除去する第1のエッチングを行う(S6)。この工程は、ラッピングを行った際に用いた砥粒が加工変質層に食い込んでいるので、ウエハSの両面を約10μm程度フッ酸系の溶液によりエッチングして加工変質層を除去する工程である。詳細には、ウエハSをバスケットに収納した後、所定の時間の間、バスケットごとフッ酸系の溶液であるエッチング液に漬浸する。なおこの間、バスケットをゆっくり上下に揺動させて、ウエハSの厚みにムラが生じてしまうことを防止することが好ましい。そして、所定の時間が経過した後、バスケットをエッチング液から取り出すと共に、純水に漬浸させて十分にエッチング液を取り去る。
【0071】
次いで、ウエハSを乾燥させた後、ウエハSの両面を鏡面研磨して、最終的に厚みを所定の厚みに仕上げて調整するポリッシングを行う(S7)。このポリッシングは、図7に示すウエハ研磨装置40を利用して行うが、先のラッピング時とは異なり、下定盤44の上面、および上定盤43の下面にそれぞれ研磨パッド(図示せず)を接着しておき、その状態で研磨を行う。ウエハSを直接両定盤43、44で挟み込むことなく、研磨パッドを介してウエハSの両面を挟み込み、研磨するのである。
【0072】
また、ウエハSを保持するキャリアに関しては、前記ラッピング時と同様に、保持孔41bの各角部に、第1湾曲部41cと第2湾曲部41d、41dとを形成してなる、図5(a)(b)に示したキャリア41が用いられる。ただし、このポリッシングに用いるキャリア41としては、その厚さについては研磨対象となるウエハSに対応して、ラッピングに用いるものに比べて厚さが薄いものを用いる。
また、研磨液Wについては、研磨材が含有された液が用いられ、研磨材としては、一般的に酸化セリウム(CeO2)が慣用される。したがって、研磨液Wとしては、例えば酸化セリウムと防錆材と水とからなるスラリーが用いられる。
さらに、ウエハ研磨装置40の動作については、前記ラッピング時と同様にして行う。
【0073】
以上によりポリッシングが終了し、所定の厚さに高精度に仕上げされたウエハSを得ることができる。
このようにしてポリッシングを行っても、キャリアとして、保持孔41bの各角部に、第1湾曲部41cと第2湾曲部41d、41dとを形成したキャリア41を用いているので、ウエハSに割れや欠けといった破損が生じるのを防止することができる。よって、このポリッシング工程でも、生産性を改善し、歩留まりを向上することができ、生産コストの低減化を図ることができる。
【0074】
次いで、ポリッシング終了後、再び洗浄を行う(S8)。すなわち、ウエハSをバスケットに収納した後、超音波洗浄と純水洗浄とを繰り返し行って洗浄を行う。なお、ポリッシングが終了したウエハSは、次工程に移行するまでの間、純水等に漬浸した状態で保管することが好ましい。
【0075】
次いで、ポリッシングによってウエハSの表面に生じたダメージ層や何らかの付着物等を除去する第2のエッチングを行う(S9)。詳細には、ウエハSをバスケットに収納した後、所定の時間の間、バスケットごとフッ酸系の溶液であるエッチング液に漬浸してエッチングを行う。
次いで、ウエハSをバスケットに収納した後、純水や60℃程度の温度に加熱した温純水や超純水にバスケットを漬浸して、ウエハSの洗浄を行う(S10)。洗浄した後、ウエハSをスピン乾燥機等で脱水する。脱水後、真空中でウエハSを加熱して、吸着した水分を脱利させて乾燥させる。なお、乾燥後は、窒素を封入したデシケータ中にウエハSを保管するのが好ましい。
【0076】
次に、前述したように研磨されたウエハSを利用して、圧電振動子1を一度に複数製造する製造方法について、図10及び図11に示すフローチャートを参照して説明する。
本実施形態の圧電振動子1の製造方法は、外形形成工程と、電極形成工程と、切断工程と、マウント工程と、封止工程とを順次行って、製造する方法である。これら各工程について、以下に詳細に説明する。
【0077】
まず、研磨後のウエハSをフォトリソ技術によりエッチングして、複数の圧電振動片2の外形形状をパターニングする外形形成工程を行う(S20)。この工程について、具体的に説明する。
始めに、ポリッシングが終了したウエハSを準備(S21)した後、図12に示すようにウエハSの両面にエッチング保護膜70をそれぞれ成膜する(S22)。このエッチング保護膜70としては、例えば、クロム(Cr)を数μm成膜する。次いで、エッチング保護膜70上に図示しないフォトレジスト膜を、フォトリソグラフィ技術によってパターニングする。この際、圧電振動片2の周囲を囲むようにパターニングする。そして、このフォトレジスト膜をマスクとしてエッチング加工を行い、マスクされていないエッチング保護膜70を選択的に除去する。
なお、前記ウエハSは、結晶方位についての基準面が容易に識別可能となっているので、前記パターニングを行う際、マスクの位置決めなどが容易になっている。
【0078】
そして、エッチング加工後にフォトレジスト膜を除去する。これにより、図13及び図14に示すように、エッチング保護膜70を前述した形状にパターニングすることができる(S23)。つまり、圧電振動片2の外形形状、すなわち、一対の振動腕部10、11及び基部12の外形形状に沿ってパターニングすることができる。またこの際、複数の圧電振動片2の数だけパターニングを行う。なお、図14から図19は、図13に示す切断線C−C線に沿った矢視断面を示す図である。
【0079】
次いで、パターニングされたエッチング保護膜70をマスクとして、ウエハSの両面をそれぞれエッチング加工する(S24)。これにより、図15に示すように、エッチング保護膜70でマスクされていない領域を選択的に除去して、圧電振動片2の外形形状を形作ることができる。この時点で、外形形成工程が終了する。なお、圧電振動片2は、後に行う切断工程を行うまで、図示しない連結部を介してウエハSに連結された状態となっている。
【0080】
次に、本実施形態では、電極形成工程を行う前に一対の振動腕部10、11に溝部18を形成する溝部形成工程を行う(S30)。この工程について、具体的に説明する。
まず、図16に示すように、エッチング保護膜70上にフォトレジスト膜71をスプレー塗布等により成膜する(S31)。そして、このフォトレジスト膜71を、フォトリソグラフィ技術によってパターニングする。この際、図17に示すように、溝部18の領域を空けた状態で圧電振動片2の外形形状に沿ってパターニングする(S32)。そして、パターニングされたフォトレジスト膜71をマスクとしてエッチング加工を行い、マスクされていないエッチング保護膜70を選択的に除去する(S33)。そして、エッチング加工後にフォトレジスト膜71を除去する。これにより、図18に示すように、既にパターニングされたエッチング保護膜70を、溝部18の領域を空けた状態でさらにパターニングすることができる。
【0081】
次いで、この再度パターニングされたエッチング保護膜70をマスクとして、ウエハSをエッチング加工(S34)した後、マスクとしていたエッチング保護膜70を除去する(S35)。これにより、図19に示すように、一対の振動腕部10、11に溝部18を形成することができる。この時点で、溝部形成工程が終了する。
【0082】
次に、複数の圧電振動片2の外表面上に図示しない電極膜を成膜すると共に、パターニングを行って、励振電極15、引き出し電極19、20、マウント電極16、17をそれぞれ形成する電極形成工程を行う(S40)。また、これと同時に、同様の方法により重り金属膜21を形成する(S41)。
次いで、ウエハSと圧電振動片2とを連結していた連結部を切断して、複数の圧電振動片2をウエハSから切り離して固片化する切断工程を行う(S42)。これにより、所定の厚みに調整されたウエハSから、励振電極15、引き出し電極19、20及びマウント電極16、17の各電極が形成された圧電振動片2を一度に複数製造することができる。
【0083】
次いで、圧電振動片2をマウントする前に、共振周波数の粗調を行う(S43)。これは、重り金属膜21の粗調膜21aにレーザ光を照射して一部を蒸発させ、重量を変化させることで行う。なお、共振周波数をより高精度に調整する微調に関しては後に行う。これについては、後に説明する。
【0084】
次に、プラグ4を作製する気密端子作製工程を行う(S50)。具体的には、まず、ステム作製工程によりステム30を作製する(S51)。すなわち、鉄ニッケルコバルト合金や鉄ニッケル合金等の導電性を有する板部材をランス加工した後、複数回の深絞り加工を行って有底の筒部材を形成する。そして、筒部材の底面に開口を形成すると共に、外形抜きを行って筒部材を板部材から切り離すことで、ステム30を作製する。
次いで、ステム30内に、リード端子31及び充填材32をそれぞれセットするセット工程を行う(S52)。まず、作製したステム30を、図示しない専用の治具にセットした後、予めリング状に焼結された充填材32をステム30の内部にセットすると共に、充填材32を貫通するようにリード端子31をセットする。
【0085】
前記セット工程により、ステム30とリード端子31と充填材32とを組み合わせた後、治具を加熱炉内に入れて1000℃前後の温度雰囲気で充填材32の焼成を行う(S53)。これにより、充填材32とリード端子31との間、充填材32とステム30との間が完全に封着されて、気密に耐えられる構造となる。そして、治具から取り出すことで、プラグ4を得ることができる。この時点で、気密端子作製工程が終了する。
【0086】
次に、リード端子31の外表面及びステム30の外周に同一材料の金属膜を湿式メッキ法で被膜させるメッキ工程を行う(S60)。そのための前処理として、リード端子31の外表面及びステム30の外周を洗浄すると共に、アルカリ溶液で脱脂した後、塩酸及び硫酸の溶液にて酸洗浄を行う。この前処理が終了した後、リード端子31の外表面及びステム30の外周面に下地金属膜を形成する。例えば、Cuメッキ或いはNiメッキを略2μm〜5μmの膜厚で被膜させる。続いて、下地金属膜上に仕上金属膜を形成する。例えば錫や銀等の単一材料の他、耐熱メッキや、錫銅合金、錫ビス膜合金、錫アンチモン合金等を、略8μm〜15μmの膜厚で被膜させる。
このように、下地金属膜及び仕上金属膜からなる金属膜を被膜させることで、インナーリード31aと圧電振動片2との接続を可能にすることができる。また、圧電振動片2の接続だけでなく、ステム30の外周に被膜された金属膜が柔らかく弾性変形する特性を有しているので、ステム30とケース3との冷間圧接を可能にすることができ、気密接合を行うことができる。
【0087】
続いて、金属膜の安定化を図るため、真空雰囲気の炉中でアニーリングを行う(S61)。例えば、170℃の温度で1時間の加熱を行う。これにより、下地金属膜の材料と仕上金属膜の材料との界面に形成される金属間化合物の組成を調整して、ウイスカの発生を抑制することができる。このアニーリングが終了した時点でマウント工程を行うことができる。なお、金属膜を被膜する際に、湿式メッキ法で行った場合を例にしたが、この場合に限られず、例えば、蒸着法や化学気相法等で行っても構わない。
【0088】
なお、本実施形態では、アニーリングが終了した後、次に行うマウント工程のためにインナーリード31aの先端に、金等の導電性のバンプEを形成する(S62)。そして、圧電振動片2のマウント電極16、17をインナーリード31aに接合するマウント工程を行う(S63)。具体的には、バンプEを加熱しながら、該バンプEを間に挟んだ状態でインナーリード31aと圧電振動片2とを所定の圧力で重ね合わせる。これにより、バンプEを介してインナーリード31aとマウント電極16、17とを接続することができる。その結果、圧電振動片2をマウントすることができる。すなわち、圧電振動片2は、リード端子31に機械的に支持されると共に、電気的に接続された状態となる。
なお、バンプ接続する際に、加熱・加圧を行ってマウントしたが、超音波を利用してバンプ接続を行っても構わない。
【0089】
次に、封止工程を行う前に、前述したマウントによる歪みをなくすために、所定の温度でベーキングを行う(S64)。続いて、圧電振動片2の周波数調整(微調)を行う(S65)。この周波数調整について、具体的に説明すると、全体を真空チャンバーに入れた状態で、アウターリード31b間に電圧を印加して圧電振動片2を振動させる。そして、周波数を計測しながら、レーザにより重り金属膜21の微調膜21bを蒸発させることで、周波数の調整を行う。なお、周波数計測を行うには、アウターリード31bに図示しないプローブの先端を押し付けることで、計測を正確に行うことができる。この周波数調整を行うことで、予め決められた周波数の範囲内に圧電振動片2の周波数を調整することができる。
【0090】
なお、前記微調及び先に行った粗調の際に、レーザの照射により重り金属膜21を蒸発させることで、周波数調整を行ったが、レーザではなくアルゴンイオンを利用しても構わない。この場合には、アルゴンイオンの照射によりスパッタリングを行い、重り金属膜21を除去することで周波数調整を行う。
【0091】
最後に、マウントされた圧電振動片2を内部に収納するようにケース3をステム30に圧入し、圧電振動片2を気密封止する封止工程を行う(S66)。具体的に説明すると、真空中で所定の荷重を加えながらケース3をプラグ4のステム30の外周に圧入する。すると、ステム30の外周に形成された金属膜が弾性変形するので、冷間圧接により気密封止することができる。これにより、ケース3内に圧電振動片2を密閉して真空封止することができる。
なお、この工程を行う前に、圧電振動片2、ケース3及びプラグ4を十分に加熱して、表面吸着水分等を脱離させておくことが好ましい。
【0092】
そして、ケース3の固定が終了した後、スクリーニングを行う(S67)。このスクリーニングは、周波数や共振抵抗値の安定化を図ると共に、ケース3を圧入した嵌合部に圧縮応力に起因する金属ウイスカが発生してしまうことを抑制するために行うものである。
スクリーニング終了後、内部の電気特性検査を行う(S68)。すなわち、圧電振動片2の共振周波数、共振抵抗値、ドライブレベル特性(共振周波数及び共振抵抗値の励振電力依存性)等を測定してチェックする。また、絶縁抵抗特性等を併せてチェックする。そして、最後に圧電振動子1の外観検査を行って、寸法や品質等を最終的にチェックする。この結果、図1に示す圧電振動子1を製造することができる。
【0093】
特に、本実施形態の製造方法によれば、前記ウエハ研磨方法によって破損が防止された状態で良好に研磨されたウエハSを利用しているので、製造工程全体で見ると、生産性を改善して歩留まりを向上することができる。したがって、生産コストの低減化を図ることができる。
【0094】
なお、前記実施形態では、本発明のキャリア41として、図5(a)(b)に示したように保持孔41bがウエハSに対応して略矩形状であるものを用いたが、例えばウエハが略三角形状や略五角形状などの矩形以外の多角形状である場合には、キャリアについても、その保持孔の開口形状が、ウエハの多角形状に対応して略三角形状や略五角形状などの略角形状に形成されたものを用いてもよい。
また、前記キャリア41については、保持孔41bを四つ形成したものについて例示したが、ウエハSの大きさに対応して、保持孔41bの数が三つ以下、あるいは五つ以上に形成されたものであってもよい。
【0095】
また、前記実施形態では、本発明に係る圧電振動子として、音叉型の圧電振動片2を備えた圧電振動子1を例に挙げて説明したが、本発明はこの圧電振動子1に限定されるものではない。
例えば、図20に示すように、厚み滑り振動片(圧電振動片)81を有する厚み滑り振動子(圧電振動子)80であっても構わない。厚み滑り振動片81は、ウエハSから一定の厚みで板状に形成された圧電板82と、励振電極83、引き出し電極84、マウント電極85とを備えている。圧電板82は、例えば、外形が矩形状に形成されており、両面の略中央部分に励振電極83が対向するように形成されている。圧電板82の端部には、引き出し電極84を介して励振電極83に電気的に接続されたマウント電極85が形成されている。なお、マウント電極85は、一方の励振電極83に接続されたものと、他方の励振電極83に接続されたものとが、圧電板82の両面にそれぞれ形成されている。この際、圧電板82の一方の面に形成されたマウント電極85は、他方の面に形成されたマウント電極85に対して、圧電板82の側面上に形成された側面電極86を介して電気的に接続されている。
【0096】
このように構成された厚み滑り振動子80であっても、前記のウエハ研磨装置40及びウエハ研磨方法によって研磨されたウエハSから厚み滑り振動片81が製造されるので、従来のものに比べて生産コストが低減化されたものとなる。
【0097】
また、前記実施形態では、圧電振動子の一例として、シリンダパッケージタイプの圧電振動子1を例に挙げて説明したが、この圧電振動子1に限定されるものではない。例えば、図21及び図22に示すように、セラミックパッケージタイプの圧電振動子90でも構わない。
この圧電振動子90は、内部に凹部91aが形成されたベース91と、該ベース91の凹部91a内に収容される圧電振動片2と、圧電振動片2を収容した状態でベース91に固定されるリッド92と、を備えている。
【0098】
ベース91には、ハーメチック封止構造を持つリード93が配置され、その先端にバンプ(図示せず)が設けられている。そして、バンプと圧電振動片2のマウント電極16、17とが機械的及び電気的に接続されている。また、リード93はベース91の底面に露出している。すなわち、このリード93は、一端側が外部に電気的に接続されると共に、他端側がマウント電極16、17に電気的に接続される外部接続端子として機能する。
また、ベース91は、蓋となるリッド92により、真空中で電子ビーム溶接や真空シーム溶接、或いは、低融点ガラスや共晶金属による接合等の各種手段を用いて真空気密封止されている。これにより、圧電振動片2は、内部に気密封止されている。すなわち、ベース91及びリッド92は、圧電振動片2を気密封止する封止部材94として機能する。
【0099】
このように構成された圧電振動子90であっても、前記のウエハ研磨装置40及びウエハ研磨方法によって研磨されたウエハSから圧電振動片2が製造されるので、従来のものに比べて生産コストが低減化されたものとなる。
【0100】
更には、シリンダパッケージタイプの圧電振動子1を、さらにモールド樹脂部101で固めて表面実装型振動子100としても構わない。
この表面実装型振動子100は、図23及び図24に示すように、圧電振動子1と、該圧電振動子1を所定の形状で固定するモールド樹脂部101と、一端側がアウターリード31bに電気的に接続されると共に、他端側がモールド樹脂部101の底面に露出して外部に電気的に接続される外部接続端子102と、を備えている。この外部接続端子102は、銅等の金属材料で断面コ形に形成されている。このように圧電振動子1をモールド樹脂部101で固めることで、回路基板等に安定して取り付けることができるので、より使用し易く、使い易さが向上する。特に、圧電振動子1は従来のものに比べて生産コストが低減化されているので、表面実装型振動子100自体に関しても生産コストが低減化されたものとなる。
【0101】
次に、本発明に係る発振器の一実施形態について、図25を参照しながら説明する。
本実施形態の発振器110は、図25に示すように、圧電振動子1を、集積回路111に電気的に接続された発振子として構成したものである。この発振器110は、コンデンサ等の電子部品112が実装された基板113を備えている。基板113には、発振器用の前記集積回路111が実装されており、この集積回路111の近傍に、圧電振動子1の圧電振動片2が実装されている。これら電子部品112、集積回路111及び圧電振動子1は、図示しない配線パターンによってそれぞれ電気的に接続されている。なお、各構成部品は、図示しない樹脂によりモールドされている。
【0102】
このように構成された発振器110において、圧電振動子1に電圧を印加すると、該圧電振動子1内の圧電振動片2が振動する。この振動は、圧電振動片2が有する圧電特性により電気信号に変換されて、集積回路111に電気信号として入力される。入力された電気信号は、集積回路111によって各種処理がなされ、周波数信号として出力される。これにより、圧電振動子1が発振子として機能する。
また、集積回路111の構成を、例えば、RTC(リアルタイムクロック)モジュール等を要求に応じて選択的に設定することで、時計用単機能発振器等の他、当該機器や外部機器の動作日や時刻を制御したり、時刻やカレンダー等を提供したりする機能を付加することができる。
【0103】
このような本実施形態の発振器110によれば、従来のものに比べて生産コストが低減化された圧電振動子1を備えているので、発振器110自体に関しても生産コストが低減化されたものとなる。
【0104】
次に、本発明に係る電子機器の一実施形態について、図26を参照して説明する。なお電子機器として、前述した圧電振動子1を有する携帯情報機器120を例にして説明する。始めに本実施形態の携帯情報機器120は、例えば、携帯電話に代表されるものであり、従来技術における腕時計を発展、改良したものである。外観は腕時計に類似し、文字盤に相当する部分に液晶ディスプレイを配し、この画面上に現在の時刻等を表示させることができるものである。また、通信機として利用する場合には、手首から外し、バンドの内側部分に内蔵されたスピーカ及びマイクロフォンによって、従来技術の携帯電話と同様の通信を行うことが可能である。しかしながら、従来の携帯電話と比較して、格段に小型化及び軽量化されている。
【0105】
次に、本実施形態の携帯情報機器120の構成について説明する。この携帯情報機器120は、図26に示すように、圧電振動子1と、電力を供給するための電源部121とを備えている。電源部121は、例えば、リチウム二次電池からなっている。この電源部121には、各種制御を行う制御部122と、時刻等のカウントを行う計時部123と、外部との通信を行う通信部124と、各種情報を表示する表示部125と、それぞれの機能部の電圧を検出する電圧検出部126とが並列に接続されている。そして、電源部121によって、各機能部に電力が供給されるようになっている。
【0106】
制御部122は、各機能部を制御して音声データの送信及び受信、現在時刻の計測や表示等、システム全体の動作制御を行う。また、制御部122は、予めプログラムが書き込まれたROMと、該ROMに書き込まれたプログラムを読み出して実行するCPUと、該CPUのワークエリアとして使用されるRAM等とを備えている。
【0107】
計時部123は、発振回路、レジスタ回路、カウンタ回路及びインターフェース回路等を内蔵する集積回路と、圧電振動子1とを備えている。圧電振動子1に電圧を印加すると圧電振動片2が振動し、該振動が水晶の有する圧電特性により電気信号に変換されて、発振回路に電気信号として入力される。発振回路の出力は二値化され、レジスタ回路とカウンタ回路とにより計数される。そして、インターフェース回路を介して、制御部122と信号の送受信が行われ、表示部125に、現在時刻や現在日付或いはカレンダー情報等が表示される。
【0108】
通信部124は、従来の携帯電話と同様の機能を有し、無線部127、音声処理部128、切替部129、増幅部130、音声入出力部131、電話番号入力部132、着信音発生部133及び呼制御メモリ部134を備えている。
無線部127は、音声データ等の各種データを、アンテナ135を介して基地局と送受信のやりとりを行う。音声処理部128は、無線部127又は増幅部130から入力された音声信号を符号化及び複号化する。増幅部130は、音声処理部128又は音声入出力部131から入力された信号を、所定のレベルまで増幅する。音声入出力部131は、スピーカやマイクロフォン等からなり、着信音や受話音声を拡声したり、音声を集音したりする。
【0109】
また、着信音発生部133は、基地局からの呼び出しに応じて着信音を生成する。切替部129は、着信時に限って、音声処理部128に接続されている増幅部130を着信音発生部133に切り替えることによって、着信音発生部133において生成された着信音が増幅部130を介して音声入出力部131に出力される。
なお、呼制御メモリ部134は、通信の発着呼制御に係るプログラムを格納する。また、電話番号入力部132は、例えば、0から9の番号キー及びその他のキーを備えており、これら番号キー等を押下することにより、通話先の電話番号等が入力される。
【0110】
電圧検出部126は、電源部121によって制御部122等の各機能部に対して加えられている電圧が、所定の値を下回った場合に、その電圧降下を検出して制御部122に通知する。このときの所定の電圧値は、通信部124を安定して動作させるために必要な最低限の電圧として予め設定されている値であり、例えば、3V程度となる。電圧検出部126から電圧降下の通知を受けた制御部122は、無線部127、音声処理部128、切替部129及び着信音発生部133の動作を禁止する。特に、消費電力の大きな無線部127の動作停止は、必須となる。更に、表示部125に、通信部124が電池残量の不足により使用不能になった旨が表示される。
【0111】
すなわち、電圧検出部126と制御部122とによって、通信部124の動作を禁止し、その旨を表示部125に表示することができる。この表示は、文字メッセージであっても良いが、より直感的な表示として、表示部125の表示面の上部に表示された電話アイコンに、×(バツ)印を付けるようにしても良い。
なお、通信部124の機能に係る部分の電源を、選択的に遮断することができる電源遮断部136を備えることで、通信部124の機能をより確実に停止することができる。
【0112】
前述したように、本実施形態の携帯情報機器120によれば、従来のものに比べて生産コストが低減化された圧電振動子1を備えているので、携帯情報機器120自体に関しても生産コストが低減化されたものとなる。
【0113】
次に、本発明に係る電波時計の一実施形態について、図27を参照して説明する。
本実施形態の電波時計140は、図27に示すように、フィルタ部141に電気的に接続された圧電振動子1を備えたものであり、時計情報を含む標準の電波を受信して、正確な時刻に自動修正して表示する機能を備えた時計である。
日本国内には、福島県(40kHz)と佐賀県(60kHz)とに、標準の電波を送信する送信所(送信局)があり、それぞれ標準電波を送信している。40kHz若しくは60kHzのような長波は、地表を伝播する性質と、電離層と地表とを反射しながら伝播する性質とを併せもつため、伝播範囲が広く、前述した2つの送信所で日本国内を全て網羅している。
【0114】
以下、電波時計140の機能的構成について詳細に説明する。
アンテナ142は、40kHz若しくは60kHzの長波の標準電波を受信する。長波の標準電波は、タイムコードと呼ばれる時刻情報を、40kHz若しくは60kHzの搬送波にAM変調をかけたものである。受信された長波の標準電波は、アンプ143によって増幅され、複数の圧電振動子1を有するフィルタ部141によって濾波、同調される。
本実施形態における圧電振動子1は、前記搬送周波数と同一の40kHz及び60kHzの共振周波数を有する水晶振動子部148、149をそれぞれ備えている。
【0115】
更に、濾波された所定周波数の信号は、検波、整流回路144により検波復調される。
続いて、波形整形回路145を介してタイムコードが取り出され、CPU146でカウントされる。CPU146では、現在の年、積算日、曜日、時刻等の情報を読み取る。読み取られた情報は、RTC148に反映され、正確な時刻情報が表示される。
搬送波は、40kHz若しくは60kHzであるから、水晶振動子部148、149は、前述した音叉型の構造を持つ振動子が好適である。
【0116】
なお、前述の説明は、日本国内の例で示したが、長波の標準電波の周波数は、海外では異なっている。例えば、ドイツでは77.5KHzの標準電波が用いられている。従って、海外でも対応可能な電波時計140を携帯機器に組み込む場合には、さらに日本の場合とは異なる周波数の圧電振動子1を必要とする。
【0117】
前述したように、本実施形態の電波時計140によれば、従来のものに比べて生産コストが低減化された圧電振動子1を備えているので、電波時計140自体に関しても生産コストが低減化されたものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0118】
【図1】本発明に係る圧電振動子の一実施形態を示す図であって、上面側から見た全体図である。
【図2】図1に示す圧電振動子を構成する圧電振動片を上面から見た図である。
【図3】図1に示す圧電振動子を構成する圧電振動片を下面から見た図である。
【図4】図2のA−A線矢視断面図である。
【図5】(a)は本発明に係るキャリアとこれに保持されたウエハとを示す平面図であり、(b)は(a)の要部拡大図である。
【図6】図2に示す圧電振動片の元となるウエハを作製する際の流れを示すフローチャートである。
【図7】本発明に係るウエハ研磨装置の構成図である。
【図8】図7に示すウエハ研磨装置を構成するキャリア周辺の拡大図である。
【図9】図7のB−B線矢視図である。
【図10】研磨加工されたウエハを利用して、図1に示す圧電振動子を製造する際の流れを示すフローチャートである。
【図11】図10に示すフローチャートの続きのフローチャートである。
【図12】図10に示すフローチャートに沿って圧電振動子を製造する際の一工程を示す図であって、ウエハの両面にエッチング保護膜を成膜した状態を示す図である。
【図13】図12に示す状態から、エッチング保護膜をパターニングした後の状態を示す図であって、ウエハを上方から見た図である。
【図14】図13のC−C線矢視断面図である。
【図15】図14に示す状態から、エッチング保護膜をマスクとして、ウエハをエッチング加工した状態を示す図である。
【図16】図15に示す状態から、ウエハの両面にフォトレジスト膜を成膜した状態を示す図である。
【図17】図16に示す状態から、フォトレジスト膜をパターニングした後の状態を示す図である。
【図18】図17に示す状態から、パターニングしたフォトレジスト膜をマスクとして、エッチング保護膜をエッチング加工してさらにパターニングした後の状態を示す図である。
【図19】図18に示す状態から、さらにパターニングしたエッチング保護膜をマスクとして、ウエハをエッチング加工した状態を示す図である。
【図20】本発明に係る圧電振動子の他の例を示す図であって、厚み滑り振動する圧電振動子の斜視図である。
【図21】本発明に係る圧電振動子の他の例を示す図であって、セラミックパッケージタイプの圧電振動子の上面図である。
【図22】図21のD−D線矢視断面図である。
【図23】本発明に係る圧電振動子を有する表面実装型振動子を示す断面図である。
【図24】図23に示す圧電振動子と外部接続端子との取り付け関係を示す斜視図である。
【図25】本発明に係る発振器の一実施形態を示す構成図である。
【図26】本発明に係る電子機器の一実施形態を示す構成図である。
【図27】本発明に係る電波時計の一実施形態を示す構成図である。
【図28】従来の研磨装置の一例を示す構成図である。
【図29】図28のE−E線矢視断面図である。
【図30】図28に示す研磨装置を構成する上定盤の上面図である。
【図31】(a)は従来のキャリアとこれに保持されたウエハとを示す平面図であり、(b)は(a)の要部拡大図である。
【符号の説明】
【0119】
L…軸線、L1、L2…直線部、S…ウエハ、SC…角部、W…研磨液、1、90…圧電振動子、2…圧電振動片、5、94…封止部材、15、83…励振電極、16、17、85…マウント電極、19、20、84…引き出し電極、31…リード端子(外部接続端子)、40…ウエハ研磨装置、41…キャリア、41a…キャリアのギア部、41b…キャリアの保持孔、41c…第1湾曲部、41d…第2湾曲部、42…遊星歯車機構、43…上定盤、44…下定盤、45…研磨液供給手段、58…パウダーホース、66…研磨液回収手段、67…フィルタ、90…厚み滑り振動片、93…リード(外部接続端子)、80…厚み滑り振動子(圧電振動子)、81…厚み滑り振動片(圧電振動片)、110…発振器、120…携帯情報機器(電子機器)、140…電波時計
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャリア、ウエハを研磨加工して所定の厚みに調整するウエハ研磨装置、ウエハ研磨方法、該ウエハ研磨方法を利用して圧電振動子を製造する圧電振動子の製造方法、該製造方法で製造された圧電振動子、これを有する発振器、電子機器及び電波時計に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話や携帯情報端末機器には、時刻源や制御信号等のタイミング源、リファレンス信号源等として水晶等を利用した圧電振動子が用いられている。この種の圧電振動子は、様々なものが知られており、例えば音叉型の圧電振動片を有するものや、厚み滑り振動する圧電振動片を有するもの等が知られている。
ところで、この圧電振動片は、水晶、タンタル酸リチウムやニオブ酸リチウム等の各種の圧電体から形成されている。具体的には、圧電体の原石を切断してウエハにした後、該ウエハを所定の厚みまで研磨加工する。そして、研磨加工されたウエハを洗浄、乾燥させた後、フォトリソ技術によりエッチング加工して圧電振動片の外形を形成すると共に、所定の金属膜をパターニングして電極を形成する。これにより、1枚のウエハから一度に複数の圧電振動片を作製することができる。
【0003】
このように作製される圧電振動片は、自身の厚みがウエハの厚みに依存するため、前述した研磨加工が品質等を決定付けるために特に重要な工程とされている。通常、研磨加工は、原石から切断されたウエハをある程度の厚みまで粗く研磨するラッピング工程と、該ラッピング工程後、ウエハを鏡面研磨して所定の厚みまで高精度に仕上げるポリッシング工程と、を行っている。なお、このような研磨加工に供されるウエハは、その形態として、原石を切断した状態に近い矩形板状のものが多く用いられている。
また、この研磨加工は、一般的に研磨装置を利用して行われている。ここで、従来の研磨装置について図28から図30を参照して簡単に説明する。
【0004】
研磨装置200は、図28及び図29に示すように、サンギア201と、インターナルギア202と、キャリア203とを有している。また、キャリア203の上下には、上定盤204及び下定盤205が配置されている。サンギア201及びインターナルギア202は、共に反時計方向に回転するようになっており、キャリア203を遊星運動させている。すなわち、キャリア203を時計方向に自転させながら、反時計方向に公転させている。
【0005】
キャリア203は、例えば直径数インチの円板からなり、研磨処理前のウエハSに比べて十分に薄く形成されたもので、ウエハSを保持する保持孔203aを形成したものである。保持孔203aは、図28に示したように、ウエハSの形状に対応してその開口が略矩形状に形成されたもので、あそびを持ってウエハSを保持するべく、このウエハSより一回り大きい矩形状に形成されたものである(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
また、このようなキャリア203は、上定盤204と下定盤205との間において所定角度毎に複数個配置されるようになっており、したがって研磨装置200では、1バッチの研磨で複数枚のウエハSを同時に研磨できるようになっている。
【0006】
上定盤204及び下定盤205には、それぞれ対向面に研磨パッドPが着脱可能に固定されている。そして、キャリア203に保持されたウエハSを両定盤204、205で上下から挟み込んでいる。この際、上定盤204は、所定の荷重をウエハSに加えた状態となっている。下定盤205は、キャリア203が公転する方向とは逆方向である反時計方向に回転するようになっている。
また、上定盤204には、図28及び図30に示すように、該上定盤204を貫通して両定盤204、205の間に研磨液Wを供給するための、供給路204aが複数(数十個)形成されている。具体的には、半径raの内側円、半径rbの中間円、半径rcの外側円に沿って所定間隔毎に形成されている。そして、図示しない供給ホースを介して研磨液Wが供給路204aに供給されるようになっている。これにより、両定盤204、205の間に各供給路204aを介して研磨液Wを供給することができ、研磨液Wを利用してウエハSを研磨することができるようになっている。
【0007】
なお、上定盤204に形成された研磨パッドPには、供給路204aを塞がないように開口が形成されている。また、研磨液Wとしては、微小な粒径の研磨剤が混入されたものが使用される。また、ラッピング工程あるいはポリッシング工程を行う場合には、通常、同一の構成ではあるものの、異なる研磨装置200を使用している。ただし、ラッピングを行う場合には、通常、研磨パッドPは上定盤204、下定盤205からそれぞれ外し、使用しない。これは、研磨材(遊離砥粒)によるウエハ表面の微細な破壊により、ラッピングを進行させるためである。
【0008】
このように構成された研磨装置200によりラッピング工程を行って、ウエハSを研磨する場合について簡単に説明する。
まず、上定盤204と下定盤205とを離間させた状態で、下定盤205上に各キャリア203をセットする。また、このようにしてセットした各キャリア203の保持孔203aにそれぞれウエハSをセットする。このようにしてセットを終了した後、上定盤204を下降させてウエハSの上面に該上定盤204を所定の荷重で押し付け、該ウエハSを両定盤204、205で挟み込む。
【0009】
そして、供給路204aを介して両定盤204、205の間に研磨液Wを供給しながら、サンギア201、インターナルギア202を駆動させてキャリア203を自転及び公転させる。また、これと同時に下定盤205を回転させる。これにより、キャリア203に保持されたウエハSの両面を研磨することができ、ウエハSの厚みを所定の厚みに仕上げることができる。
【特許文献1】特開2001−170859号公報
【特許文献2】特開平5−38671号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、前記したウエハの研磨には以下の改善すべき課題がある。
前記の矩形状のウエハSについては、特にその角部が研磨時に保持孔203aの内周面に衝突したり擦れたりすることで、割れや欠けといった破損が生じ易くなっている。そして、その結果歩留まりが低下し、生産コストの低減化を損なう一因となっている。なお、ウエハSについては、面取り加工(C面取り)することで一つの角部を二つの角部にし、それぞれの角度を直角でなく鈍角にすることもなされているが、その場合にも鈍角の角部が依然として残ることにより、やはりこれら角部に割れや欠けといった破損が生じ易くなっている。
【0011】
そこで、従来のキャリア203では、図31(a)(b)に示すように、保持孔203aの全ての角部に、該保持孔203aの内側に向かって凹形状となる円弧状の湾曲部203bを形成し、これによってウエハSの角部が保持孔203aの内周面に衝突したり擦れたりすることを抑制している。
しかしながら、このように保持孔203aの角部に湾曲部203bを形成しても、保持孔203aの内周面を形成する直線部203cと湾曲部203bとの接点部分には、保持孔203の内側に向けて尖ってなる尖角部203dが形成されてしまう。したがって、ウエハSの角部やその近傍が、研磨時に前記尖角部203dに衝突したり擦れたりすることにより、やはりウエハSに割れや欠けといった破損が生じているのが現状である。
【0012】
本発明は前記課題を解決するためになされたもので、その主目的は、特に研磨工程において、ウエハに割れや欠けといった破損が生じてしまうのを防止したキャリアと、このキャリアを用いてなる研磨装置及び研磨方法を提供することである。
また、別の目的としては、ウエハ研磨方法を利用して圧電振動子を製造する圧電振動子の製造方法、該製造方法で製造された圧電振動子、該圧電振動子を有する発振器、電子機器及び電波時計を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、前記課題を解決するために以下の手段を提供する。
本発明に係るキャリアは、ウエハの両面を研磨して、該ウエハの厚みを所定の厚みに調整するウエハ研磨装置において、前記ウエハを収容し保持するためのキャリアであって、
前記ウエハを収容する、開口形状が略角形状の保持孔を有してなり、
前記保持孔の角部には、該角部を形成する二本の直線部の交点部近傍において、該保持孔の内側に向かって凹形状となる第1湾曲部が形成され、該第1湾曲部の両側には、それぞれ対応する前記直線部より前記保持孔の内側に膨出することなく、該保持孔の内側に向かって凸形状となる第2湾曲部が形成されていることを特徴としている。
【0014】
このキャリアによれば、その保持孔の角部に、該保持孔の内側に向かって凹形状となる第1湾曲部が形成され、さらに、該第1湾曲部の両側に、前記保持孔の内側に膨出することなく、該保持孔の内側に向かって凸形状となる第2湾曲部が形成されているので、ウエハをこの保持孔に収容してウエハ研磨装置で研磨加工した際、ウエハの角部での割れや欠けといった破損を防止することができる。すなわち、ウエハの角部を第1湾曲部内に入り込ませることにより、ウエハの角部が保持孔の内周面に衝突したり擦れたりすることを抑制し、その破損を防止することができる。また、第1湾曲部の両側に第2湾曲部を形成しているので、従来のようにここに尖った角部(尖角部)を形成することなく、したがって該第2湾曲部をウエハに対してほぼ面接触させることで、ウエハの破損を防止することができる。つまり、従来では尖角部がウエハに対して点接触していたことにより、ウエハに対して局部的に大きな負荷(衝撃)をかけ、割れや欠けといった破損を引き起こしていたが、本発明では第2湾曲部を形成してウエハに面接触させているので、ウエハに与える負荷を分散し、割れや欠けといった破損を防止することことができる。
【0015】
また、本発明に係るキャリアは、前記第1湾曲部が、前記保持孔の角部を形成する二本の直線部の、交点を中心として形成される円の円弧形状を有してなり、 前記第2湾曲部が、対応する前記直線部と前記第1湾曲部とに接する円の円弧形状を有してなるのが好ましい。
このようにすれば、第1湾曲部と第2湾曲部との間が直線に近くなり、保持孔の内側に向かって凸状に膨出することが確実になくなるので、ウエハの破損をより確実に防止することができる。
【0016】
また、本発明に係るキャリアは、前記第1湾曲部における前記円の半径r1が、前記第2湾曲部における前記円の半径r2より小さくなっているのが好ましい。
このようにすれば、第1湾曲部の円の曲率が第2湾曲部の円の曲率より大きくなるので、ウエハの角部を第1湾曲部内により多く入り込ませることができ、したがってウエハの角部の破損をより良好に防止することができる。
【0017】
また、本発明に係るキャリアは、前記保持孔の開口形状が略矩形状であり、全ての角部が、前記第1湾曲部と前記第2湾曲部とを有してなるのが好ましい。
このようにすれば、矩形状のウエハを保持孔に収納して研磨する際、その全ての角部での破損を確実に防止することができる。
【0018】
本発明に係るウエハ研磨装置は、研磨液を供給しつつウエハの両面を研磨して、該ウエハの厚みを所定の厚みに調整するウエハ研磨装置であって、
外周縁がギア部とされ、前記ウエハが収納される保持孔が形成された円板状のキャリアと、
前記ギア部を介して前記キャリアに噛合され、該キャリアを自転させながら軸線回りに公転させる遊星歯車機構と、
中心が刳り貫かれた円板状に形成され、前記キャリアの上下に配置されて、前記保持孔に収納された前記ウエハに所定の荷重を加えつつ、該ウエハの両面を挟み込む上定盤及び下定盤と、
前記上定盤と前記下定盤との間に前記研磨液を供給する研磨液供給手段と、を備え、
前記キャリアは、前記保持孔が、前記した本発明に係るキャリアの保持孔と同じ構成からなっていることを特徴としている。
【0019】
本発明に係るウエハ研磨方法は、外周縁がギア部とされ、ウエハが収納される保持孔が形成された円板状のキャリアと、前記ギア部を介して前記キャリアに噛合され、該キャリアを自転させながら軸線回りに公転させる遊星歯車機構と、中心が刳り貫かれた円板状に形成され、前記キャリアの上下に配置されて、前記保持孔に収納された前記ウエハに所定の荷重を加えつつ、該ウエハの両面を挟み込む上定盤及び下定盤と、前記上定盤と前記下定盤との間に前記研磨液を供給する研磨液供給手段と、を備えるウエハ研磨装置により、前記研磨液供給手段から研磨液を供給しつつ前記ウエハの両面を研磨し、該ウエハの厚みを所定の厚みに調整する研磨工程を備えたウエハ研磨方法であって、
前記キャリアとして、前記保持孔が、前記した本発明に係るキャリアの保持孔と同じ構成からなっているものを用いることを特徴としている。
【0020】
この発明に係るウエハ研磨装置及びウエハ研磨方法においては、矩形状のウエハを保持するキャリアとして、前記した、保持孔の角部に第1湾曲部と第2湾曲部とを形成したものを用意する。そして、研磨工程の前に、下定盤上に前記キャリアをセットするとともに、該キャリアの保持孔に研磨加工対象物である前記ウエハを収納し、ここに保持させておく。
このようにしてキャリア及びウエハをセットしたら、研磨工程を行うべく、まず、上定盤を下降させ、キャリアの保持孔内に収納されたウエハの両面を、上定盤と下定盤とで所定の荷重を加えながら挟み込む。
次いで、研磨液供給手段から研磨液を供給しつつ、両定盤でウエハの両面を研磨加工して、ウエハを所定の厚みに調整する。
【0021】
その際、前述したようにキャリアの保持孔の角部が第1湾曲部と第2湾曲部とを有しているので、ウエハの角部が保持孔の内周面に衝突したり擦れたりすることを抑制し、その破損を防止することができる。また、該第2湾曲部をウエハに対してほぼ面接触させることで、ウエハの破損を防止することもできる。
【0022】
また、本発明に係る圧電振動子の製造方法は、前記本発明のウエハ研磨方法により研磨されたウエハを利用して圧電振動子を一度に複数製造する方法であって、
研磨後の前記ウエハをフォトリソ技術によりエッチングして、該ウエハに複数の圧電振動片の外形形状をパターニングする外形形成工程と、
複数の前記圧電振動片の外表面上に電極膜をパターニングして、所定の電圧が印加されたときに圧電振動片を振動させる励振電極と、引き出し電極を介して励振電極に電気的に接続されるマウント電極と、をそれぞれ形成する電極形成工程と、
複数の前記圧電振動片を前記ウエハから切り離して固片化する切断工程と、
該切断工程後、固片化された前記圧電振動片の前記マウント電極を、一端側が外部に電気的に接続される外部接続端子の他端側に接合するマウント工程と、
該マウント工程後、前記圧電振動片を封止部材により気密封止する封止工程と、を備えていることを特徴としている。
【0023】
この発明に係る圧電振動子の製造方法においては、ウエハ研磨方法により両面が研磨加工され、所定の厚みに高精度に調整されたウエハをフォトリソ技術によりエッチングして、ウエハに複数の圧電振動片の外形形状をパターニングする外形形成工程を行う。
次いで、複数の圧電振動片の外表面上に電極膜をパターニングして、励振電極、引き出し電極及びマウント電極の各電極をそれぞれ形成する電極形成工程を行う。そして、複数の圧電振動片をウエハから切り離して固片化する切断工程を行う。これにより、所定の厚みに調整されたウエハから、励振電極、引き出し電極及びマウント電極が外表面上に形成された圧電振動片を一度に複数製造することができる。
【0024】
次いで、固片化された圧電振動片のマウント電極を、一端側が外部に電気的に接続される外部接続端子の他端側に接続するマウント工程を行う。これにより圧電振動片は、外部接続端子に機械的に支持されると共に電気的に接続された状態となる。そして最後に、マウントされた圧電振動片を封止部材により内部に気密封止する封止工程を行う。その結果、圧電振動片が気密封止された圧電振動子を得ることできる。
【0025】
このように製造された圧電振動子を作動させる場合には、外部接続端子の一端側に対して所定の電圧を印加する。これにより、外部接続端子、マウント電極及び引き出し電極を介して励振電極に電流を流すことができ、圧電振動片を所定の周波数で振動させることができる。
このような圧電振動子の製造方法によれば、前記のウエハ研磨方法により、割れや欠けといった破損が防止された状態で、良好に研磨されたウエハを利用しているので、製造工程全体で見ると、生産性を改善して歩留まりを向上することができ、したがって生産コストの低減化を図ることができる。
【0026】
また、本発明に係る圧電振動子は、前記本発明の圧電振動子の製造方法により製造されたことを特徴としている。
この発明に係る圧電振動子によれば、前述した製造方法により製造されているので、従来のものに比べて、生産コストが低減化されたものとなる。
【0027】
また、本発明に係る発振器は、前記本発明の圧電振動子が、発振子として集積回路に電気的に接続されていることを特徴とするものである。
また、本発明に係る電子機器は、前記本発明の圧電振動子が、計時部に電気的に接続されていることを特徴とするものである。
また、本発明に係る電波時計は、前記本発明の圧電振動子が、フィルタ部に電気的に接続されていることを特徴とするものである。
この発明に係る発振器、電子機器及び電波時計においては、前述した圧電振動子を備えているので、従来のものに比べて生産コストが低減化されたものとなる。
【発明の効果】
【0028】
本発明に係るキャリアによれば、ウエハを研磨加工した際、ウエハに割れや欠けといった破損が生じるのを防止することができるので、研磨加工についての生産性を改善し、歩留まりを向上することができ、したがって生産コストの低減化を図ることができる。
本発明に係るウエハ研磨装置及びウエハ研磨方法によれば、ウエハの角部での割れや欠けといった破損を防止することができるので、生産性を改善して歩留まりを向上し、生産コストの低減化を図ることができる。
また、本発明に係る圧電振動子の製造方法によれば、前述したウエハ研磨方法で研磨されたウエハを利用するので、製造工程全体で見ると、生産コストの低減化を図ることができる。
また、本発明に係る圧電振動子によれば、前述した製造方法により製造されているので、従来のものに比べて生産コストが低減化されたものとなる。
また、本発明に係る発振器、電子機器及び電波時計によれば、前記圧電振動子を備えているので、従来のものに比べて生産コストが低減化されたものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明の圧電振動子に係る一実施形態を、図1から図19を参照して説明する。なお、本実施形態では、圧電振動子1として、シリンダパッケージタイプの圧電振動子を例に挙げて説明する。
本実施形態の圧電振動子1は、図1から図4に示すように、圧電振動片2と、該圧電振動片2を内部に収納するケース3と、圧電振動片2をケース3内に密閉させる気密端子であるプラグ4と、を備えている。
【0030】
圧電振動片2は、図2及び図3に示すように、水晶、タンタル酸リチウムやニオブ酸リチウム等の圧電材料から形成された音叉型の振動片であり、所定の電圧が印加されたときに振動するものである。なお、この圧電振動片2は、後述するウエハSから作製されたものである。
この圧電振動片2は、平行に配置された一対の振動腕部10、11と、該一対の振動腕部10、11の基端側を一体的に固定する基部12と、一対の振動腕部10、11の外表面上に形成されて一対の振動腕部10、11を振動させる第1の励振電極13と第2の励振電極14とからなる励振電極15と、第1の励振電極13及び第2の励振電極14に電気的に接続されたマウント電極16、17とを有している。
また、本実施形態の圧電振動片2は、一対の振動腕部10、11の両主面上に、該振動腕部10、11の長手方向Xに沿ってそれぞれ形成された溝部18を備えている。この溝部18は、振動腕部10、11の基端側から略中間付近まで形成されている。
【0031】
第1の励振電極13と第2の励振電極14とからなる励振電極15は、一対の振動腕部10、11を互いに接近又は離間する方向に所定の共振周波数で振動させる電極であり、一対の振動腕部10、11の外表面に、それぞれ電気的に切り離された状態でパターニングされて形成されている。具体的には、図4に示すように、第1の励振電極13が、一方の振動腕部10の溝部18上と、他方の振動腕部11の両側面上とに主に形成され、第2の励振電極14が、一方の振動腕部10の両側面上と他方の振動腕部11の溝部18上とに主に形成されている。
【0032】
また、第1の励振電極13及び第2の励振電極14は、図2及び図3に示すように、基部12の両主面上において、それぞれ引き出し電極19、20を介してマウント電極16、17に電気的に接続されている。そして圧電振動片2は、このマウント電極16、17を介して電圧が印加されるようになっている。
なお、前述した励振電極15、マウント電極16、17及び引き出し電極19、20は、例えば、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、アルミニウム(Al)やチタン(Ti)等の導電性膜(電極膜)の被膜により形成されたものである。
【0033】
また、一対の振動腕部10、11の先端には、自身の振動状態を所定の周波数の範囲内で振動するように調整(周波数調整)を行うための重り金属膜21が被膜されている。なお、この重り金属膜21は、周波数を粗く調整する際に使用される粗調膜21aと、微小に調整する際に使用される微調膜21bとに分かれている。これら粗調膜21a及び微調膜21bを利用して周波数調整を行うことで、一対の振動腕部10、11の周波数をデバイスの公称周波数の範囲内に収めることができる。
【0034】
ケース3は、図1に示すように有底円筒状に形成されたもので、圧電振動片2を内部に収納した状態で、プラグ4の後述するステム30の外周に対して圧入され、嵌合固定されたものである。なお、このケース3の圧入は真空雰囲気下で行われており、これによってケース3内の圧電振動片2を囲む空間は、真空に保たれた状態となっている。
【0035】
プラグ4は、ケース3を密閉させるステム30と、該ステム30を貫通するように平行配置され、ステム30を間に挟んで一端側が圧電振動片2をマウント(機械的に接合及び電気的に接続)するインナーリード31aとされ、他端側が外部に電気的に接続されるアウターリード31bとされた2本のリード端子31と、ステム30の内側に充填されてステム30とリード端子31とを固定させる絶縁性の充填材32とを有している。
ステム30は、金属材料で環状に形成されたものである。また、充填材32の材料としては、例えばホウ珪酸ガラスが用いられている。また、リード端子31の表面及びステム30の外周には、それぞれ同材料の図示しないメッキが施されている。
【0036】
2本のリード端子31は、ケース3内に突出している部分がインナーリード31aとなり、ケース3外に突出している部分がアウターリード31bとなっている。そして、インナーリード31aとマウント電極16、17とが、導電性のバンプEを介してマウントされている。すなわち、バンプEを介してインナーリード31aとマウント電極16、17とが機械的に接合されていると同時に、電気的に接続されている。その結果、圧電振動片2は、2本のリード端子31にマウントされた状態となっている。
【0037】
なお、前述した2本のリード端子31は、一端側(アウターリード31b側)が外部に電気的に接続され、他端側(インナーリード31a側)が圧電振動片2に対してマウントされる外部接続端子として機能する。また、ケース3及びプラグ4は、マウントされた圧電振動片2を内部に気密封止する封止部材5として機能する。
【0038】
ここで、プラグ4を構成する主要部品の寸法及び材質の一例について述べる。
リード端子31の直径は例えば約0.12mmであり、リード端子31の母材の材質としては、コバール(FeNiCo合金)が慣用されている。また、リード端子31の外表面及びステム30の外周に被膜させるメッキの材質としては、下地金属膜としてはCuが用いられ、仕上金属膜としては、耐熱ハンダメッキ(錫と鉛の合金で、その重量比が1:9)や、銀(Ag)や錫銅合金(SnCu)や金錫合金(AuSn)等が用いられる。
また、ステム30の外周に被膜された金属膜(メッキ層)を介在させながらケース3の内周に真空中で冷間圧接させることにより、ケース3の内部を真空状態で気密封止できるようになっている。
【0039】
このように構成された圧電振動子1を作動させる場合には、2本のリード端子31のアウターリード31bに対して、所定の駆動電圧を印加する。これにより、インナーリード31a、バンプE、マウント電極16、17及び引き出し電極19、20を介して、第1の励振電極13及び第2の励振電極14からなる励振電極15に電流を流すことができ、一対の振動腕部10、11を接近・離間させる方向に所定の周波数で振動させることができる。そして、この一対の振動腕部10、11の振動を利用して、時刻源、制御信号のタイミング源やリファレンス信号源等として利用することができる。
【0040】
次に、前述した圧電振動子1の製造方法について説明するが、これに先立ち、本発明に係るキャリアについて説明する
図5(a)(b)は、本発明に係るキャリアの一実施形態を示す図である。図5(a)(b)においてキャリア41は、従来の研磨用キャリアと同様に、炭素工具鋼等の板材を圧延加工した厚さ約120μm〜約130μm程度の円盤状のもので、図5(a)に示すように外縁をギア部41aとし、ウエハSを収容保持するための保持孔41bを放射状に四つ形成したものである。
【0041】
保持孔41bは、矩形状のウエハSに対応して開口形状が略矩形状に形成されたもので、図5(b)に示すようにこの開口形状、すなわち平面視した形状における全ての(四つの)角部に、それぞれ第1湾曲部41cと第2湾曲部41dとを形成したものである。ここで、保持孔41bにおける角部とは、本発明では第1湾曲部41c及び第2湾曲部41dがない元の矩形状(角形状)における角部、すなわち交差する二辺(二本の直線部L1、L2)の交点Pとその近傍(交点部近傍)をいう。なお、実際には第1湾曲部41c及び第2湾曲部41dが形成されていることにより、キャリア41上には前記二辺が交差する交点Pが存在せず、この交点Pは保持孔41b内に位置しているものの、二辺(直線部L1、L2)の交点Pは仮想的にキャリア41に存在するものとする。
【0042】
第1湾曲部41cは、前記した保持孔41bの各角部、すなわち該角部を形成する二本の直線部L1、L2の交点Pとその近傍(交点部近傍)に形成されたもので、該保持孔41bの内側に向かって凹形状となるように形成されたものである。具体的には、この第1湾曲部41cは保持孔41bの開口形状(平面視形状)において、角部を形成する二本の直線部L1、L2の交点Pを中心として形成される半径r1の円の円周の一部、つまりこの円の円弧形状を有して形成されたもので、前記角部の外側に向かって膨らんで形成されたものである。
【0043】
また、この第1湾曲部41cの両側には、それぞれに第2湾曲部41dが連続して形成されている。これら第2湾曲部41dは、それぞれ、対応する直線部L1(あるいはL2)、すなわち該第2湾曲部41dが形成される側の直線部L1(あるいはL2)より保持孔41bの内側に膨出することなく、かつ、該保持孔41bの内側に向かって凸形状となるように形成されたものである。具体的には、これら第2湾曲部41dは、対応する前記直線部L1(あるいはL2)と前記第1湾曲部41cとに接する半径r2の円の円周の一部、つまりこの円の円弧形状を有して形成されたもので、前記角部の内側に向かって膨らんで形成されたものである。
【0044】
このように第1湾曲部41cの両側に第2湾曲部41dを形成しているので、保持孔41bは、従来のように尖った角部(尖角部)を各角部に形成することなく、該角部の内周面を連続した曲線(曲面)によって構成している。
ここで、前記第1湾曲部41cにおける前記円の半径r1は、前記第2湾曲部41dにおける前記円の半径r2より小さく形成されており、したがって第1湾曲部41cの曲率R1(=1/r1)は、第2湾曲部41dの曲率R2(=1/r2)より大きくなっている。
なお、図5(b)では、開口形状が略矩形状の保持孔41bにおいて、一つの角部についてしか記載していないものの、本実施形態では、四つの角部全てに、第1湾曲部41c、第2湾曲部41d、41dが形成されている。
【0045】
このような保持孔41bを有するキャリア41に対して、矩形状のウエハSはそれぞれの保持孔41bに収容され、保持されるようになっている。ウエハSは、保持孔41bの開口形状より一回り小さくなっており、これによって保持孔41bに容易に収容でき、かつここから取り外すことができるようになっている。なお、ウエハSについては、図5(b)中二点鎖線で示すように、その角部が面取り加工(C面取り)されていてもよい。
【0046】
このようにして保持孔41b内にウエハSを保持すると、キャリア41は、ウエハSの角部SCを保持孔41bの前記第1湾曲部41c内に入り込ませることで、後述する研磨時、該角部SCが保持孔41bの内周面に衝突したり擦れたりすることを抑制し、その破損を防止することができる。また、第1湾曲部41cの両側に第2湾曲部41dを形成し、これによって保持孔41bの角部の内周面に尖った角部(尖角部)を形成していないので、第2湾曲部41dをウエハSに対してほぼ面接触させることができ、これによってもウエハSの破損を防止することができる。
さらに、第1湾曲部41cの曲率R1が第2湾曲部41dの曲率R2より大きくなっているので、ウエハSの角部SCをこれに当接することなく第1湾曲部41c内により多く入り込ませることができ、したがってウエハSの角部SCの破損をより良好に防止することができる。
【0047】
次に、このようなキャリア41を用いた圧電振動子1の製造方法について、図6に示すフローチャートを参照しつつ説明する。
ウエハSを作製するべく、まず、原石を切断して所定の厚さのウエハSにする。すなわち、横断面矩形状の角柱状の原石を用意すると共に、X線回析法等により原石の切断角度(カット角)の測定を行う(S1)。詳細には、原石のZ面のX軸回りの角度が指定の角度になるようにX線を用いて測定する。測定後、ベースとなるガラス上に接着剤を用いて原石を固定する。なお、本実施形態では原石として水晶を用い、この水晶における基準面が、形成するウエハの端面となるようにする。また、必要に応じて前記原石の角部を研磨によって面取り加工し、横断面である矩形の四つの角部全てをC面取りしてもよい。
【0048】
次いで、この原石を、ワイヤーソーのワークテーブルにセットする。そして、測定した前記切断角度に沿って、原石をワイヤーソー(例えば、線径が約160μmの高張力線)を用いて約220μmの厚みに切断し、略矩形状のウエハとする(S2)。
なお、本実施形態では、形成するウエハSの最大長を約95mmとする。また、前記切断の際、ワイヤーソーの送り速度を、毎分40mmから50mmに制御する。さらに、切削液としては、砥粒にラッピングオイルを適量配合した液を使用する。この砥粒としては、平均粒径が約12μm程度の炭化珪素(SiC)が慣用される。なお、切削液については、常温を保つように温度管理する。
【0049】
次に、ウエハSの側面研磨を行う(S3)。すなわち、切断したウエハSの1枚毎に外周面を研磨するか、あるいは、複数のウエハSを重ね合わせて接着剤で張り合わせてブロックにした後に、図示しない研磨機で外周の研磨を行う。これにより、外周を滑らかに仕上げて、ウエハSの割れや欠け等の発生を抑制することができる。特に、本実施形態の略矩形状のウエハSの場合では、ウエハSの外形の寸法精度を出すことができる。研磨後に、加熱等により接着剤を溶解させ、1枚毎のウエハSに分離する。そして、分離したウエハSを洗浄液中で超音波洗浄して、接着剤を完全に除去する。
【0050】
次いで、図7に示すウエハ研磨装置40を用い、側面研磨されたウエハSの両面をラッピング(粗加工)し、所望の厚さにまで研磨する(S4)。ここで、前記ウエハ研磨装置40について詳しく説明する。なお、このウエハ研磨装置40は、図28、図29、図30に示した従来の研磨装置と基本構成は同じであり、異なるところは、図31(a)(b)に示したキャリア203に代えて、図5(a)(b)に示したキャリア41を用いる点である。
【0051】
このウエハ研磨装置40は、図7、図8に示すように、研磨液Wを供給しながらウエハSの両面を研磨し、該ウエハSの厚みを所定の厚みに調整する装置であって、キャリア41と、遊星歯車機構42と、上定盤43と、下定盤44と、研磨液供給手段45と、を備えて構成されている。
キャリア41は、図5(a)(b)に示したように、外縁をギア部41aとし、内部に保持孔41bを四つ有したもので、保持孔41bの各角部に、第1湾曲部41cと第2湾曲部41d、41dとを形成したものである。
なお、本実施形態では、図9に示すように、ウエハ研磨装置40が前記構成のキャリア41を5枚備えているものとして説明する。
【0052】
前記ウエハ研磨装置40においては、図9に示すように、前記5枚のキャリア41が軸線Lを中心として放射状に所定角度間隔で配置されている。また、前記軸線Lに沿ってシャフト50が配置されており、該シャフト50にはサンギア51が固定されている。また、5枚のキャリア41の周囲を取り囲むように、リング状に形成されたインターナルギア52が配置されている。そして、5枚のキャリア41は、サンギア51及びインターナルギア52に対してギア部41aが噛合した状態で配置されている。
【0053】
これらサンギア51及びインターナルギア52は、図示しない駆動源により共に反時計方向に回転するようになっている。この際、サンギア51及びインターナルギア52の回転速度は、それぞれ別個の速度で回転するように調整されている。これにより、各キャリア41は、時計方向に自転しながら、軸線Lを中心に反時計方向に公転するようになっている。つまり、サンギア51及びインターナルギア52は、ギア部41aを介してキャリア41に噛合され、該キャリア41を自転させながら軸線L回りに公転させる前記遊星歯車機構42として機能する。
【0054】
上定盤43及び下定盤44は、図7、図8、図9に示すように、共に中心が刳り貫かれた円板状(リング状)に形成されており、キャリア41の上下に配置されている。下定盤44は、回転テーブル53上に固定されており、回転テーブル53と共に軸線Lを中心としてキャリア41の公転方向とは反対方向(時計方向)に回転するようになっている。また、上定盤43は、図7に示すようにポール54に沿って上下に移動可能とされており、下定盤44との距離を自在に調整できるようになっている。これにより、キャリア41に形成された保持孔41bにウエハSを収納し、あるいはこれらから取り出したり、キャリア41に収納保持したウエハSに所定の荷重を加えながら、該ウエハSを両定盤で挟み込んだりすることができるようになっている。
【0055】
両定盤43、44は、キャリア41の一部を両定盤43、44の内周面及び外周面から外側に飛び出させ、露出させるサイズに形成されている。そのため、自転及び公転するキャリア41は、図9に示すように、サンギア51側の一部及びインターナルギア52側の一部が常に露出するようになっている。なお、図9では、下定盤44だけ図示しているが、上定盤43も下定盤44と同じサイズである。
【0056】
また、上定盤43の上方には、図7に示すように、パウダーリング55が固定されたリングプレート56が配置されており、該リングプレート56の下面に前記ポール54が固定されている。パウダーリング55には、環状の溝部55aが形成されており、パウダーリング55の上方に配置された供給バルブ57から吐出された研磨液Wを内部に貯留できるようになっている。
また、リングプレート56には、複数のパウダーホース(供給ホース)58の基端側が固定されている。この際、各パウダーホース58は、溝部55a内に連通した状態で固定されている。これにより、溝部55a内に一旦貯留された研磨液Wは、溝部55aからパウダーホース58内に流れ、パウダーホース58の先端に向かって流れるようになっている。
【0057】
これらパウダーホース58は、その先端が、上定盤43を貫通して形成された供給路(図示せず)に接続固定されている。供給路は、図30に示したように、半径raの内側円、半径rbの中間円、半径rcの外側円に沿って所定間隔毎に形成された貫通孔からなっている。これにより、パウダーホース58から供給された研磨液Wは、各供給路を介して両定盤43、44の間に供給されるようになっている。
【0058】
また、図7に示すように下定盤44の下方には、研磨後に流れてきた研磨液Wを受け取る回収パン61と、回収パン61で受け取られて集められた研磨液Wを貯める研磨液槽62とが配置されている。研磨液槽62には、内部に溜まった研磨液Wを攪拌すると共に、研磨液Wを汲み上げて循環ホース63に循環させるポンプ64が設けられている。そして、循環ホース63は、供給バルブ57に接続された分配器65に接続されている。これにより、回収した研磨液Wを再度供給バルブ57に戻し、パウダーリング55の溝部55a内に供給できるようになっている。
【0059】
なお、前述したパウダーリング55、リングプレート56、供給バルブ57、パウダーホース58、回収パン61、研磨液槽62、循環ホース63、ポンプ64及び分配器65は、上定盤43の供給路を介してこの上定盤43と下定盤44との間に研磨液Wを供給する、前記研磨液供給手段45として機能する。また、このうち、回収パン61、研磨液槽62、循環ホース63、ポンプ64及び分配器65は、供給した研磨液Wを回収すると共に、回収した研磨液Wを循環させて再度両定盤43、44の間に供給する研磨液回収手段66として機能する。
【0060】
また、回収パン61には、フィルタ67が設けられており、回収した研磨液Wに含まれるウエハSの研磨加工粉を除去している。これにより、常に清浄な研磨液Wを両定盤43、44の間に供給し続けることができるようになっている。
なお、前述した研磨液Wは、研磨材(砥粒)が含有された液である。研磨材(砥粒)としては、このラッピングの際には炭化珪素(SiC)が慣用され、平均砥粒が6μmから9μm程度のより粒径の細かいものが使用される。
また、前記の両定盤43、44には、後述するポリッシング工程を行うときとは異なり、研磨パッドPを取り付けることなく外しておき、これを使用せずにラッピング(研磨)を行う。
【0061】
このように構成されたウエハ研磨装置40を利用してウエハ研磨を行い、前記ラッピングを行う(S4)。本実施形態のウエハ研磨方法は、図5に示したキャリア41を用いてこれを下定盤44上にセットし、その後遊星歯車機構42によりキャリア41を自転及び公転させて、ウエハSの両面を上定盤43及び下定盤44で研磨する研磨工程を、備えた方法である。この研磨工程について、以下に説明する。
【0062】
まず、上定盤43を下定盤44から離間するようにポール54に沿って上方に移動させた後、キャリア41の保持孔41b内にウエハSを収納する。ウエハSの収納後、ポール54に沿って上定盤43を下降させ、保持孔41b内に収納されたウエハSの両面を上定盤43と下定盤44とで所定の荷重を加えながら挟み込む。これにより、ウエハSは、両定盤43、44の表面に挟み込まれた状態となる。
【0063】
次いで、ウエハ研磨処理を行う。すなわち、研磨液供給手段45によって研磨液Wを供給しつつ、これら両定盤43、44によってウエハSの両面を研磨加工し、ウエハSを所定の厚みに調整する。具体的には、研磨液供給手段45によって上定盤43と下定盤44との間に研磨液Wを供給すると同時に、遊星歯車機構42を駆動させてキャリア41を自転させながら、両定盤43、44の中心を貫く軸線L回りに公転させる。ただし、研磨液Wの供給と遊星歯車機構42の作動とを同時にすることなく、研磨液Wの供給を行った後に遊星歯車機構42を駆動させても構わない。また、遊星歯車機構42の駆動と同時に、下定盤44をキャリア41の公転方向と反対方向に回転させる。
【0064】
研磨液供給手段45によって研磨液Wを供給するには、ポンプ64を作動させる。ポンプ64を作動させると、研磨液Wは、図7に示すように研磨液槽62の中で十分に撹拌された後に汲み上げられ、循環ホース63内に送られる。そして、循環ホース63内を通過した後、研磨液Wは分配器65に送られ、該分配器65で分流されてパウダーリング55内の溝部55a内に送られる。溝部55a内に送られた研磨液Wは、該溝部55a内に貯留されると共に、各パウダーホース58に流れ込む。パウダーホース58を流れた研磨液Wは、上定盤43の供給路を介してこの上定盤43と下定盤44との間に流れ込む。これにより、研磨液Wはその一部がキャリア41の上面に流れ落ち、残部が下定盤44上に流れ落ちる。したがって、ウエハSと両定盤43、44との間に研磨に必要な量の研磨液Wが安定して供給される。
【0065】
このようにしてラッピングを行うと、キャリア41の保持孔41bの各角部に、前述したように第1湾曲部41cと第2湾曲部41d、41dとを形成しているので、ウエハSの角部SCでの割れや欠けといった破損を防止することができる。すなわち、ウエハSの角部SCを第1湾曲部41c内に入り込ませることにより、ウエハSの角部SCが保持孔41bの内周面に衝突したり擦れたりすることを抑制し、その破損を防止することができる。
【0066】
また、第1湾曲部41cの両側に第2湾曲部41dを形成しているので、従来のようにここに尖った角部(尖角部)を形成することなく、したがって該第2湾曲部41dをウエハSに対してほぼ面接触させることで、ウエハSの破損を防止することができる。つまり、従来では尖角部がウエハSに対して点接触(線接触)していたことにより、ウエハに対して局部的に大きな負荷(衝撃)をかけ、割れや欠けといった破損を引き起こしていたが、本実施形態では第2湾曲部41dを形成してウエハSに面接触させているので、ウエハSに与える負荷を分散し、割れや欠けといった破損を防止することことができる。
よって、このキャリア41によれば、ウエハSを研磨加工した際、ウエハSに割れや欠けといった破損が生じるのを防止することができるので、研磨加工についての生産性を改善し、歩留まりを向上することができ、したがって生産コストの低減化を図ることができる。
【0067】
なお、本実施形態では、ウエハSを研磨する際に、下定盤44をキャリア41の公転方向とは反対方向に向けて回転させているので、下定盤44とウエハSとの抵抗を増大でき、より効率良くウエハSを研磨することができる。
また、両定盤43、44の間に供給された研磨液Wは、最終的には図7に示すように、回収パン61によって回収される。そして、回収パン61によって回収された研磨液W及び研磨加工粉は、フィルタ67を通過した後、研磨液槽62に溜まる。フィルタ67を通過する際に、研磨加工粉は除去されるため、研磨液槽62には清浄な研磨液Wだけが溜まるようになる。そして、回収された研磨液Wは、再度ポンプ64によって送り出され、再使用される。
【0068】
このように、一度供給した研磨液Wを廃棄して無駄にするのではなく、再度有効利用できるので、研磨液Wに費やすコストの低減化を図ることができる。しかも、フィルタ67を利用して研磨加工粉を除去できるので、常に清浄な研磨液Wだけを安定して供給し続けることができ、高精度な研磨を行うことができる。
【0069】
このようにしてラッピングが終了したら、ウエハSを洗浄する(S5)。すなわち、ウエハSを図示しないバスケットに収納すると共に、バスケットごと洗浄液に漬浸する。そして、超音波洗浄と純水洗浄とを繰り返し行う。また、同時に酸洗浄とアルカリ洗浄とを組み合わせて行う。そして、ウエハSに付着している砥粒を除去した後、純水によるすすぎ洗浄を行う。その後、スピン乾燥機により脱水及び乾燥を行う。
【0070】
次いで、ラッピングによってウエハSの表面に生じた加工変質層を除去する第1のエッチングを行う(S6)。この工程は、ラッピングを行った際に用いた砥粒が加工変質層に食い込んでいるので、ウエハSの両面を約10μm程度フッ酸系の溶液によりエッチングして加工変質層を除去する工程である。詳細には、ウエハSをバスケットに収納した後、所定の時間の間、バスケットごとフッ酸系の溶液であるエッチング液に漬浸する。なおこの間、バスケットをゆっくり上下に揺動させて、ウエハSの厚みにムラが生じてしまうことを防止することが好ましい。そして、所定の時間が経過した後、バスケットをエッチング液から取り出すと共に、純水に漬浸させて十分にエッチング液を取り去る。
【0071】
次いで、ウエハSを乾燥させた後、ウエハSの両面を鏡面研磨して、最終的に厚みを所定の厚みに仕上げて調整するポリッシングを行う(S7)。このポリッシングは、図7に示すウエハ研磨装置40を利用して行うが、先のラッピング時とは異なり、下定盤44の上面、および上定盤43の下面にそれぞれ研磨パッド(図示せず)を接着しておき、その状態で研磨を行う。ウエハSを直接両定盤43、44で挟み込むことなく、研磨パッドを介してウエハSの両面を挟み込み、研磨するのである。
【0072】
また、ウエハSを保持するキャリアに関しては、前記ラッピング時と同様に、保持孔41bの各角部に、第1湾曲部41cと第2湾曲部41d、41dとを形成してなる、図5(a)(b)に示したキャリア41が用いられる。ただし、このポリッシングに用いるキャリア41としては、その厚さについては研磨対象となるウエハSに対応して、ラッピングに用いるものに比べて厚さが薄いものを用いる。
また、研磨液Wについては、研磨材が含有された液が用いられ、研磨材としては、一般的に酸化セリウム(CeO2)が慣用される。したがって、研磨液Wとしては、例えば酸化セリウムと防錆材と水とからなるスラリーが用いられる。
さらに、ウエハ研磨装置40の動作については、前記ラッピング時と同様にして行う。
【0073】
以上によりポリッシングが終了し、所定の厚さに高精度に仕上げされたウエハSを得ることができる。
このようにしてポリッシングを行っても、キャリアとして、保持孔41bの各角部に、第1湾曲部41cと第2湾曲部41d、41dとを形成したキャリア41を用いているので、ウエハSに割れや欠けといった破損が生じるのを防止することができる。よって、このポリッシング工程でも、生産性を改善し、歩留まりを向上することができ、生産コストの低減化を図ることができる。
【0074】
次いで、ポリッシング終了後、再び洗浄を行う(S8)。すなわち、ウエハSをバスケットに収納した後、超音波洗浄と純水洗浄とを繰り返し行って洗浄を行う。なお、ポリッシングが終了したウエハSは、次工程に移行するまでの間、純水等に漬浸した状態で保管することが好ましい。
【0075】
次いで、ポリッシングによってウエハSの表面に生じたダメージ層や何らかの付着物等を除去する第2のエッチングを行う(S9)。詳細には、ウエハSをバスケットに収納した後、所定の時間の間、バスケットごとフッ酸系の溶液であるエッチング液に漬浸してエッチングを行う。
次いで、ウエハSをバスケットに収納した後、純水や60℃程度の温度に加熱した温純水や超純水にバスケットを漬浸して、ウエハSの洗浄を行う(S10)。洗浄した後、ウエハSをスピン乾燥機等で脱水する。脱水後、真空中でウエハSを加熱して、吸着した水分を脱利させて乾燥させる。なお、乾燥後は、窒素を封入したデシケータ中にウエハSを保管するのが好ましい。
【0076】
次に、前述したように研磨されたウエハSを利用して、圧電振動子1を一度に複数製造する製造方法について、図10及び図11に示すフローチャートを参照して説明する。
本実施形態の圧電振動子1の製造方法は、外形形成工程と、電極形成工程と、切断工程と、マウント工程と、封止工程とを順次行って、製造する方法である。これら各工程について、以下に詳細に説明する。
【0077】
まず、研磨後のウエハSをフォトリソ技術によりエッチングして、複数の圧電振動片2の外形形状をパターニングする外形形成工程を行う(S20)。この工程について、具体的に説明する。
始めに、ポリッシングが終了したウエハSを準備(S21)した後、図12に示すようにウエハSの両面にエッチング保護膜70をそれぞれ成膜する(S22)。このエッチング保護膜70としては、例えば、クロム(Cr)を数μm成膜する。次いで、エッチング保護膜70上に図示しないフォトレジスト膜を、フォトリソグラフィ技術によってパターニングする。この際、圧電振動片2の周囲を囲むようにパターニングする。そして、このフォトレジスト膜をマスクとしてエッチング加工を行い、マスクされていないエッチング保護膜70を選択的に除去する。
なお、前記ウエハSは、結晶方位についての基準面が容易に識別可能となっているので、前記パターニングを行う際、マスクの位置決めなどが容易になっている。
【0078】
そして、エッチング加工後にフォトレジスト膜を除去する。これにより、図13及び図14に示すように、エッチング保護膜70を前述した形状にパターニングすることができる(S23)。つまり、圧電振動片2の外形形状、すなわち、一対の振動腕部10、11及び基部12の外形形状に沿ってパターニングすることができる。またこの際、複数の圧電振動片2の数だけパターニングを行う。なお、図14から図19は、図13に示す切断線C−C線に沿った矢視断面を示す図である。
【0079】
次いで、パターニングされたエッチング保護膜70をマスクとして、ウエハSの両面をそれぞれエッチング加工する(S24)。これにより、図15に示すように、エッチング保護膜70でマスクされていない領域を選択的に除去して、圧電振動片2の外形形状を形作ることができる。この時点で、外形形成工程が終了する。なお、圧電振動片2は、後に行う切断工程を行うまで、図示しない連結部を介してウエハSに連結された状態となっている。
【0080】
次に、本実施形態では、電極形成工程を行う前に一対の振動腕部10、11に溝部18を形成する溝部形成工程を行う(S30)。この工程について、具体的に説明する。
まず、図16に示すように、エッチング保護膜70上にフォトレジスト膜71をスプレー塗布等により成膜する(S31)。そして、このフォトレジスト膜71を、フォトリソグラフィ技術によってパターニングする。この際、図17に示すように、溝部18の領域を空けた状態で圧電振動片2の外形形状に沿ってパターニングする(S32)。そして、パターニングされたフォトレジスト膜71をマスクとしてエッチング加工を行い、マスクされていないエッチング保護膜70を選択的に除去する(S33)。そして、エッチング加工後にフォトレジスト膜71を除去する。これにより、図18に示すように、既にパターニングされたエッチング保護膜70を、溝部18の領域を空けた状態でさらにパターニングすることができる。
【0081】
次いで、この再度パターニングされたエッチング保護膜70をマスクとして、ウエハSをエッチング加工(S34)した後、マスクとしていたエッチング保護膜70を除去する(S35)。これにより、図19に示すように、一対の振動腕部10、11に溝部18を形成することができる。この時点で、溝部形成工程が終了する。
【0082】
次に、複数の圧電振動片2の外表面上に図示しない電極膜を成膜すると共に、パターニングを行って、励振電極15、引き出し電極19、20、マウント電極16、17をそれぞれ形成する電極形成工程を行う(S40)。また、これと同時に、同様の方法により重り金属膜21を形成する(S41)。
次いで、ウエハSと圧電振動片2とを連結していた連結部を切断して、複数の圧電振動片2をウエハSから切り離して固片化する切断工程を行う(S42)。これにより、所定の厚みに調整されたウエハSから、励振電極15、引き出し電極19、20及びマウント電極16、17の各電極が形成された圧電振動片2を一度に複数製造することができる。
【0083】
次いで、圧電振動片2をマウントする前に、共振周波数の粗調を行う(S43)。これは、重り金属膜21の粗調膜21aにレーザ光を照射して一部を蒸発させ、重量を変化させることで行う。なお、共振周波数をより高精度に調整する微調に関しては後に行う。これについては、後に説明する。
【0084】
次に、プラグ4を作製する気密端子作製工程を行う(S50)。具体的には、まず、ステム作製工程によりステム30を作製する(S51)。すなわち、鉄ニッケルコバルト合金や鉄ニッケル合金等の導電性を有する板部材をランス加工した後、複数回の深絞り加工を行って有底の筒部材を形成する。そして、筒部材の底面に開口を形成すると共に、外形抜きを行って筒部材を板部材から切り離すことで、ステム30を作製する。
次いで、ステム30内に、リード端子31及び充填材32をそれぞれセットするセット工程を行う(S52)。まず、作製したステム30を、図示しない専用の治具にセットした後、予めリング状に焼結された充填材32をステム30の内部にセットすると共に、充填材32を貫通するようにリード端子31をセットする。
【0085】
前記セット工程により、ステム30とリード端子31と充填材32とを組み合わせた後、治具を加熱炉内に入れて1000℃前後の温度雰囲気で充填材32の焼成を行う(S53)。これにより、充填材32とリード端子31との間、充填材32とステム30との間が完全に封着されて、気密に耐えられる構造となる。そして、治具から取り出すことで、プラグ4を得ることができる。この時点で、気密端子作製工程が終了する。
【0086】
次に、リード端子31の外表面及びステム30の外周に同一材料の金属膜を湿式メッキ法で被膜させるメッキ工程を行う(S60)。そのための前処理として、リード端子31の外表面及びステム30の外周を洗浄すると共に、アルカリ溶液で脱脂した後、塩酸及び硫酸の溶液にて酸洗浄を行う。この前処理が終了した後、リード端子31の外表面及びステム30の外周面に下地金属膜を形成する。例えば、Cuメッキ或いはNiメッキを略2μm〜5μmの膜厚で被膜させる。続いて、下地金属膜上に仕上金属膜を形成する。例えば錫や銀等の単一材料の他、耐熱メッキや、錫銅合金、錫ビス膜合金、錫アンチモン合金等を、略8μm〜15μmの膜厚で被膜させる。
このように、下地金属膜及び仕上金属膜からなる金属膜を被膜させることで、インナーリード31aと圧電振動片2との接続を可能にすることができる。また、圧電振動片2の接続だけでなく、ステム30の外周に被膜された金属膜が柔らかく弾性変形する特性を有しているので、ステム30とケース3との冷間圧接を可能にすることができ、気密接合を行うことができる。
【0087】
続いて、金属膜の安定化を図るため、真空雰囲気の炉中でアニーリングを行う(S61)。例えば、170℃の温度で1時間の加熱を行う。これにより、下地金属膜の材料と仕上金属膜の材料との界面に形成される金属間化合物の組成を調整して、ウイスカの発生を抑制することができる。このアニーリングが終了した時点でマウント工程を行うことができる。なお、金属膜を被膜する際に、湿式メッキ法で行った場合を例にしたが、この場合に限られず、例えば、蒸着法や化学気相法等で行っても構わない。
【0088】
なお、本実施形態では、アニーリングが終了した後、次に行うマウント工程のためにインナーリード31aの先端に、金等の導電性のバンプEを形成する(S62)。そして、圧電振動片2のマウント電極16、17をインナーリード31aに接合するマウント工程を行う(S63)。具体的には、バンプEを加熱しながら、該バンプEを間に挟んだ状態でインナーリード31aと圧電振動片2とを所定の圧力で重ね合わせる。これにより、バンプEを介してインナーリード31aとマウント電極16、17とを接続することができる。その結果、圧電振動片2をマウントすることができる。すなわち、圧電振動片2は、リード端子31に機械的に支持されると共に、電気的に接続された状態となる。
なお、バンプ接続する際に、加熱・加圧を行ってマウントしたが、超音波を利用してバンプ接続を行っても構わない。
【0089】
次に、封止工程を行う前に、前述したマウントによる歪みをなくすために、所定の温度でベーキングを行う(S64)。続いて、圧電振動片2の周波数調整(微調)を行う(S65)。この周波数調整について、具体的に説明すると、全体を真空チャンバーに入れた状態で、アウターリード31b間に電圧を印加して圧電振動片2を振動させる。そして、周波数を計測しながら、レーザにより重り金属膜21の微調膜21bを蒸発させることで、周波数の調整を行う。なお、周波数計測を行うには、アウターリード31bに図示しないプローブの先端を押し付けることで、計測を正確に行うことができる。この周波数調整を行うことで、予め決められた周波数の範囲内に圧電振動片2の周波数を調整することができる。
【0090】
なお、前記微調及び先に行った粗調の際に、レーザの照射により重り金属膜21を蒸発させることで、周波数調整を行ったが、レーザではなくアルゴンイオンを利用しても構わない。この場合には、アルゴンイオンの照射によりスパッタリングを行い、重り金属膜21を除去することで周波数調整を行う。
【0091】
最後に、マウントされた圧電振動片2を内部に収納するようにケース3をステム30に圧入し、圧電振動片2を気密封止する封止工程を行う(S66)。具体的に説明すると、真空中で所定の荷重を加えながらケース3をプラグ4のステム30の外周に圧入する。すると、ステム30の外周に形成された金属膜が弾性変形するので、冷間圧接により気密封止することができる。これにより、ケース3内に圧電振動片2を密閉して真空封止することができる。
なお、この工程を行う前に、圧電振動片2、ケース3及びプラグ4を十分に加熱して、表面吸着水分等を脱離させておくことが好ましい。
【0092】
そして、ケース3の固定が終了した後、スクリーニングを行う(S67)。このスクリーニングは、周波数や共振抵抗値の安定化を図ると共に、ケース3を圧入した嵌合部に圧縮応力に起因する金属ウイスカが発生してしまうことを抑制するために行うものである。
スクリーニング終了後、内部の電気特性検査を行う(S68)。すなわち、圧電振動片2の共振周波数、共振抵抗値、ドライブレベル特性(共振周波数及び共振抵抗値の励振電力依存性)等を測定してチェックする。また、絶縁抵抗特性等を併せてチェックする。そして、最後に圧電振動子1の外観検査を行って、寸法や品質等を最終的にチェックする。この結果、図1に示す圧電振動子1を製造することができる。
【0093】
特に、本実施形態の製造方法によれば、前記ウエハ研磨方法によって破損が防止された状態で良好に研磨されたウエハSを利用しているので、製造工程全体で見ると、生産性を改善して歩留まりを向上することができる。したがって、生産コストの低減化を図ることができる。
【0094】
なお、前記実施形態では、本発明のキャリア41として、図5(a)(b)に示したように保持孔41bがウエハSに対応して略矩形状であるものを用いたが、例えばウエハが略三角形状や略五角形状などの矩形以外の多角形状である場合には、キャリアについても、その保持孔の開口形状が、ウエハの多角形状に対応して略三角形状や略五角形状などの略角形状に形成されたものを用いてもよい。
また、前記キャリア41については、保持孔41bを四つ形成したものについて例示したが、ウエハSの大きさに対応して、保持孔41bの数が三つ以下、あるいは五つ以上に形成されたものであってもよい。
【0095】
また、前記実施形態では、本発明に係る圧電振動子として、音叉型の圧電振動片2を備えた圧電振動子1を例に挙げて説明したが、本発明はこの圧電振動子1に限定されるものではない。
例えば、図20に示すように、厚み滑り振動片(圧電振動片)81を有する厚み滑り振動子(圧電振動子)80であっても構わない。厚み滑り振動片81は、ウエハSから一定の厚みで板状に形成された圧電板82と、励振電極83、引き出し電極84、マウント電極85とを備えている。圧電板82は、例えば、外形が矩形状に形成されており、両面の略中央部分に励振電極83が対向するように形成されている。圧電板82の端部には、引き出し電極84を介して励振電極83に電気的に接続されたマウント電極85が形成されている。なお、マウント電極85は、一方の励振電極83に接続されたものと、他方の励振電極83に接続されたものとが、圧電板82の両面にそれぞれ形成されている。この際、圧電板82の一方の面に形成されたマウント電極85は、他方の面に形成されたマウント電極85に対して、圧電板82の側面上に形成された側面電極86を介して電気的に接続されている。
【0096】
このように構成された厚み滑り振動子80であっても、前記のウエハ研磨装置40及びウエハ研磨方法によって研磨されたウエハSから厚み滑り振動片81が製造されるので、従来のものに比べて生産コストが低減化されたものとなる。
【0097】
また、前記実施形態では、圧電振動子の一例として、シリンダパッケージタイプの圧電振動子1を例に挙げて説明したが、この圧電振動子1に限定されるものではない。例えば、図21及び図22に示すように、セラミックパッケージタイプの圧電振動子90でも構わない。
この圧電振動子90は、内部に凹部91aが形成されたベース91と、該ベース91の凹部91a内に収容される圧電振動片2と、圧電振動片2を収容した状態でベース91に固定されるリッド92と、を備えている。
【0098】
ベース91には、ハーメチック封止構造を持つリード93が配置され、その先端にバンプ(図示せず)が設けられている。そして、バンプと圧電振動片2のマウント電極16、17とが機械的及び電気的に接続されている。また、リード93はベース91の底面に露出している。すなわち、このリード93は、一端側が外部に電気的に接続されると共に、他端側がマウント電極16、17に電気的に接続される外部接続端子として機能する。
また、ベース91は、蓋となるリッド92により、真空中で電子ビーム溶接や真空シーム溶接、或いは、低融点ガラスや共晶金属による接合等の各種手段を用いて真空気密封止されている。これにより、圧電振動片2は、内部に気密封止されている。すなわち、ベース91及びリッド92は、圧電振動片2を気密封止する封止部材94として機能する。
【0099】
このように構成された圧電振動子90であっても、前記のウエハ研磨装置40及びウエハ研磨方法によって研磨されたウエハSから圧電振動片2が製造されるので、従来のものに比べて生産コストが低減化されたものとなる。
【0100】
更には、シリンダパッケージタイプの圧電振動子1を、さらにモールド樹脂部101で固めて表面実装型振動子100としても構わない。
この表面実装型振動子100は、図23及び図24に示すように、圧電振動子1と、該圧電振動子1を所定の形状で固定するモールド樹脂部101と、一端側がアウターリード31bに電気的に接続されると共に、他端側がモールド樹脂部101の底面に露出して外部に電気的に接続される外部接続端子102と、を備えている。この外部接続端子102は、銅等の金属材料で断面コ形に形成されている。このように圧電振動子1をモールド樹脂部101で固めることで、回路基板等に安定して取り付けることができるので、より使用し易く、使い易さが向上する。特に、圧電振動子1は従来のものに比べて生産コストが低減化されているので、表面実装型振動子100自体に関しても生産コストが低減化されたものとなる。
【0101】
次に、本発明に係る発振器の一実施形態について、図25を参照しながら説明する。
本実施形態の発振器110は、図25に示すように、圧電振動子1を、集積回路111に電気的に接続された発振子として構成したものである。この発振器110は、コンデンサ等の電子部品112が実装された基板113を備えている。基板113には、発振器用の前記集積回路111が実装されており、この集積回路111の近傍に、圧電振動子1の圧電振動片2が実装されている。これら電子部品112、集積回路111及び圧電振動子1は、図示しない配線パターンによってそれぞれ電気的に接続されている。なお、各構成部品は、図示しない樹脂によりモールドされている。
【0102】
このように構成された発振器110において、圧電振動子1に電圧を印加すると、該圧電振動子1内の圧電振動片2が振動する。この振動は、圧電振動片2が有する圧電特性により電気信号に変換されて、集積回路111に電気信号として入力される。入力された電気信号は、集積回路111によって各種処理がなされ、周波数信号として出力される。これにより、圧電振動子1が発振子として機能する。
また、集積回路111の構成を、例えば、RTC(リアルタイムクロック)モジュール等を要求に応じて選択的に設定することで、時計用単機能発振器等の他、当該機器や外部機器の動作日や時刻を制御したり、時刻やカレンダー等を提供したりする機能を付加することができる。
【0103】
このような本実施形態の発振器110によれば、従来のものに比べて生産コストが低減化された圧電振動子1を備えているので、発振器110自体に関しても生産コストが低減化されたものとなる。
【0104】
次に、本発明に係る電子機器の一実施形態について、図26を参照して説明する。なお電子機器として、前述した圧電振動子1を有する携帯情報機器120を例にして説明する。始めに本実施形態の携帯情報機器120は、例えば、携帯電話に代表されるものであり、従来技術における腕時計を発展、改良したものである。外観は腕時計に類似し、文字盤に相当する部分に液晶ディスプレイを配し、この画面上に現在の時刻等を表示させることができるものである。また、通信機として利用する場合には、手首から外し、バンドの内側部分に内蔵されたスピーカ及びマイクロフォンによって、従来技術の携帯電話と同様の通信を行うことが可能である。しかしながら、従来の携帯電話と比較して、格段に小型化及び軽量化されている。
【0105】
次に、本実施形態の携帯情報機器120の構成について説明する。この携帯情報機器120は、図26に示すように、圧電振動子1と、電力を供給するための電源部121とを備えている。電源部121は、例えば、リチウム二次電池からなっている。この電源部121には、各種制御を行う制御部122と、時刻等のカウントを行う計時部123と、外部との通信を行う通信部124と、各種情報を表示する表示部125と、それぞれの機能部の電圧を検出する電圧検出部126とが並列に接続されている。そして、電源部121によって、各機能部に電力が供給されるようになっている。
【0106】
制御部122は、各機能部を制御して音声データの送信及び受信、現在時刻の計測や表示等、システム全体の動作制御を行う。また、制御部122は、予めプログラムが書き込まれたROMと、該ROMに書き込まれたプログラムを読み出して実行するCPUと、該CPUのワークエリアとして使用されるRAM等とを備えている。
【0107】
計時部123は、発振回路、レジスタ回路、カウンタ回路及びインターフェース回路等を内蔵する集積回路と、圧電振動子1とを備えている。圧電振動子1に電圧を印加すると圧電振動片2が振動し、該振動が水晶の有する圧電特性により電気信号に変換されて、発振回路に電気信号として入力される。発振回路の出力は二値化され、レジスタ回路とカウンタ回路とにより計数される。そして、インターフェース回路を介して、制御部122と信号の送受信が行われ、表示部125に、現在時刻や現在日付或いはカレンダー情報等が表示される。
【0108】
通信部124は、従来の携帯電話と同様の機能を有し、無線部127、音声処理部128、切替部129、増幅部130、音声入出力部131、電話番号入力部132、着信音発生部133及び呼制御メモリ部134を備えている。
無線部127は、音声データ等の各種データを、アンテナ135を介して基地局と送受信のやりとりを行う。音声処理部128は、無線部127又は増幅部130から入力された音声信号を符号化及び複号化する。増幅部130は、音声処理部128又は音声入出力部131から入力された信号を、所定のレベルまで増幅する。音声入出力部131は、スピーカやマイクロフォン等からなり、着信音や受話音声を拡声したり、音声を集音したりする。
【0109】
また、着信音発生部133は、基地局からの呼び出しに応じて着信音を生成する。切替部129は、着信時に限って、音声処理部128に接続されている増幅部130を着信音発生部133に切り替えることによって、着信音発生部133において生成された着信音が増幅部130を介して音声入出力部131に出力される。
なお、呼制御メモリ部134は、通信の発着呼制御に係るプログラムを格納する。また、電話番号入力部132は、例えば、0から9の番号キー及びその他のキーを備えており、これら番号キー等を押下することにより、通話先の電話番号等が入力される。
【0110】
電圧検出部126は、電源部121によって制御部122等の各機能部に対して加えられている電圧が、所定の値を下回った場合に、その電圧降下を検出して制御部122に通知する。このときの所定の電圧値は、通信部124を安定して動作させるために必要な最低限の電圧として予め設定されている値であり、例えば、3V程度となる。電圧検出部126から電圧降下の通知を受けた制御部122は、無線部127、音声処理部128、切替部129及び着信音発生部133の動作を禁止する。特に、消費電力の大きな無線部127の動作停止は、必須となる。更に、表示部125に、通信部124が電池残量の不足により使用不能になった旨が表示される。
【0111】
すなわち、電圧検出部126と制御部122とによって、通信部124の動作を禁止し、その旨を表示部125に表示することができる。この表示は、文字メッセージであっても良いが、より直感的な表示として、表示部125の表示面の上部に表示された電話アイコンに、×(バツ)印を付けるようにしても良い。
なお、通信部124の機能に係る部分の電源を、選択的に遮断することができる電源遮断部136を備えることで、通信部124の機能をより確実に停止することができる。
【0112】
前述したように、本実施形態の携帯情報機器120によれば、従来のものに比べて生産コストが低減化された圧電振動子1を備えているので、携帯情報機器120自体に関しても生産コストが低減化されたものとなる。
【0113】
次に、本発明に係る電波時計の一実施形態について、図27を参照して説明する。
本実施形態の電波時計140は、図27に示すように、フィルタ部141に電気的に接続された圧電振動子1を備えたものであり、時計情報を含む標準の電波を受信して、正確な時刻に自動修正して表示する機能を備えた時計である。
日本国内には、福島県(40kHz)と佐賀県(60kHz)とに、標準の電波を送信する送信所(送信局)があり、それぞれ標準電波を送信している。40kHz若しくは60kHzのような長波は、地表を伝播する性質と、電離層と地表とを反射しながら伝播する性質とを併せもつため、伝播範囲が広く、前述した2つの送信所で日本国内を全て網羅している。
【0114】
以下、電波時計140の機能的構成について詳細に説明する。
アンテナ142は、40kHz若しくは60kHzの長波の標準電波を受信する。長波の標準電波は、タイムコードと呼ばれる時刻情報を、40kHz若しくは60kHzの搬送波にAM変調をかけたものである。受信された長波の標準電波は、アンプ143によって増幅され、複数の圧電振動子1を有するフィルタ部141によって濾波、同調される。
本実施形態における圧電振動子1は、前記搬送周波数と同一の40kHz及び60kHzの共振周波数を有する水晶振動子部148、149をそれぞれ備えている。
【0115】
更に、濾波された所定周波数の信号は、検波、整流回路144により検波復調される。
続いて、波形整形回路145を介してタイムコードが取り出され、CPU146でカウントされる。CPU146では、現在の年、積算日、曜日、時刻等の情報を読み取る。読み取られた情報は、RTC148に反映され、正確な時刻情報が表示される。
搬送波は、40kHz若しくは60kHzであるから、水晶振動子部148、149は、前述した音叉型の構造を持つ振動子が好適である。
【0116】
なお、前述の説明は、日本国内の例で示したが、長波の標準電波の周波数は、海外では異なっている。例えば、ドイツでは77.5KHzの標準電波が用いられている。従って、海外でも対応可能な電波時計140を携帯機器に組み込む場合には、さらに日本の場合とは異なる周波数の圧電振動子1を必要とする。
【0117】
前述したように、本実施形態の電波時計140によれば、従来のものに比べて生産コストが低減化された圧電振動子1を備えているので、電波時計140自体に関しても生産コストが低減化されたものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0118】
【図1】本発明に係る圧電振動子の一実施形態を示す図であって、上面側から見た全体図である。
【図2】図1に示す圧電振動子を構成する圧電振動片を上面から見た図である。
【図3】図1に示す圧電振動子を構成する圧電振動片を下面から見た図である。
【図4】図2のA−A線矢視断面図である。
【図5】(a)は本発明に係るキャリアとこれに保持されたウエハとを示す平面図であり、(b)は(a)の要部拡大図である。
【図6】図2に示す圧電振動片の元となるウエハを作製する際の流れを示すフローチャートである。
【図7】本発明に係るウエハ研磨装置の構成図である。
【図8】図7に示すウエハ研磨装置を構成するキャリア周辺の拡大図である。
【図9】図7のB−B線矢視図である。
【図10】研磨加工されたウエハを利用して、図1に示す圧電振動子を製造する際の流れを示すフローチャートである。
【図11】図10に示すフローチャートの続きのフローチャートである。
【図12】図10に示すフローチャートに沿って圧電振動子を製造する際の一工程を示す図であって、ウエハの両面にエッチング保護膜を成膜した状態を示す図である。
【図13】図12に示す状態から、エッチング保護膜をパターニングした後の状態を示す図であって、ウエハを上方から見た図である。
【図14】図13のC−C線矢視断面図である。
【図15】図14に示す状態から、エッチング保護膜をマスクとして、ウエハをエッチング加工した状態を示す図である。
【図16】図15に示す状態から、ウエハの両面にフォトレジスト膜を成膜した状態を示す図である。
【図17】図16に示す状態から、フォトレジスト膜をパターニングした後の状態を示す図である。
【図18】図17に示す状態から、パターニングしたフォトレジスト膜をマスクとして、エッチング保護膜をエッチング加工してさらにパターニングした後の状態を示す図である。
【図19】図18に示す状態から、さらにパターニングしたエッチング保護膜をマスクとして、ウエハをエッチング加工した状態を示す図である。
【図20】本発明に係る圧電振動子の他の例を示す図であって、厚み滑り振動する圧電振動子の斜視図である。
【図21】本発明に係る圧電振動子の他の例を示す図であって、セラミックパッケージタイプの圧電振動子の上面図である。
【図22】図21のD−D線矢視断面図である。
【図23】本発明に係る圧電振動子を有する表面実装型振動子を示す断面図である。
【図24】図23に示す圧電振動子と外部接続端子との取り付け関係を示す斜視図である。
【図25】本発明に係る発振器の一実施形態を示す構成図である。
【図26】本発明に係る電子機器の一実施形態を示す構成図である。
【図27】本発明に係る電波時計の一実施形態を示す構成図である。
【図28】従来の研磨装置の一例を示す構成図である。
【図29】図28のE−E線矢視断面図である。
【図30】図28に示す研磨装置を構成する上定盤の上面図である。
【図31】(a)は従来のキャリアとこれに保持されたウエハとを示す平面図であり、(b)は(a)の要部拡大図である。
【符号の説明】
【0119】
L…軸線、L1、L2…直線部、S…ウエハ、SC…角部、W…研磨液、1、90…圧電振動子、2…圧電振動片、5、94…封止部材、15、83…励振電極、16、17、85…マウント電極、19、20、84…引き出し電極、31…リード端子(外部接続端子)、40…ウエハ研磨装置、41…キャリア、41a…キャリアのギア部、41b…キャリアの保持孔、41c…第1湾曲部、41d…第2湾曲部、42…遊星歯車機構、43…上定盤、44…下定盤、45…研磨液供給手段、58…パウダーホース、66…研磨液回収手段、67…フィルタ、90…厚み滑り振動片、93…リード(外部接続端子)、80…厚み滑り振動子(圧電振動子)、81…厚み滑り振動片(圧電振動片)、110…発振器、120…携帯情報機器(電子機器)、140…電波時計
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウエハの両面を研磨して、該ウエハの厚みを所定の厚みに調整するウエハ研磨装置において、前記ウエハを収容し保持するためのキャリアであって、
前記ウエハを収容する、開口形状が略角形状の保持孔を有してなり、
前記保持孔の角部には、該角部を形成する二本の直線部の交点部近傍において、該保持孔の内側に向かって凹形状となる第1湾曲部が形成され、該第1湾曲部の両側には、それぞれ対応する前記直線部より前記保持孔の内側に膨出することなく、該保持孔の内側に向かって凸形状となる第2湾曲部が形成されていることを特徴とするキャリア。
【請求項2】
前記第1湾曲部は、前記保持孔の角部を形成する二本の直線部の、交点を中心として形成される円の円弧形状を有してなり、
前記第2湾曲部は、対応する前記直線部と前記第1湾曲部とに接する円の円弧形状を有してなることを特徴とする請求項1記載のキャリア。
【請求項3】
前記第1湾曲部における前記円の半径r1は、前記第2湾曲部における前記円の半径r2より小さいことを特徴とする請求項2記載のキャリア。
【請求項4】
前記保持孔の開口形状が略矩形状であり、全ての角部が、前記第1湾曲部と前記第2湾曲部とを有してなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のキャリア。
【請求項5】
研磨液を供給しつつウエハの両面を研磨して、該ウエハの厚みを所定の厚みに調整するウエハ研磨装置であって、
外周縁がギア部とされ、前記ウエハが収納される保持孔が形成された円板状のキャリアと、
前記ギア部を介して前記キャリアに噛合され、該キャリアを自転させながら軸線回りに公転させる遊星歯車機構と、
中心が刳り貫かれた円板状に形成され、前記キャリアの上下に配置されて、前記保持孔に収納された前記ウエハに所定の荷重を加えつつ、該ウエハの両面を挟み込む上定盤及び下定盤と、
前記上定盤と前記下定盤との間に前記研磨液を供給する研磨液供給手段と、を備え、
前記キャリアは、前記保持孔が、請求項1〜4のいずれか一項に記載のキャリアの保持孔と同じ構成からなっていることを特徴とするウエハ研磨装置。
【請求項6】
外周縁がギア部とされ、ウエハが収納される保持孔が形成された円板状のキャリアと、前記ギア部を介して前記キャリアに噛合され、該キャリアを自転させながら軸線回りに公転させる遊星歯車機構と、中心が刳り貫かれた円板状に形成され、前記キャリアの上下に配置されて、前記保持孔に収納された前記ウエハに所定の荷重を加えつつ、該ウエハの両面を挟み込む上定盤及び下定盤と、前記上定盤と前記下定盤との間に前記研磨液を供給する研磨液供給手段と、を備えるウエハ研磨装置により、前記研磨液供給手段から研磨液を供給しつつ前記ウエハの両面を研磨し、該ウエハの厚みを所定の厚みに調整する研磨工程を備えたウエハ研磨方法であって、
前記キャリアとして、前記保持孔が、請求項1〜4のいずれか一項に記載のキャリアの保持孔と同じ構成からなっているものを用いることを特徴とするウエハ研磨方法。
【請求項7】
請求項6記載のウエハ研磨方法により研磨されたウエハを利用して圧電振動子を一度に複数製造する方法であって、
研磨後の前記ウエハをフォトリソ技術によりエッチングして、該ウエハに複数の圧電振動片の外形形状をパターニングする外形形成工程と、
複数の前記圧電振動片の外表面上に電極膜をパターニングして、所定の電圧が印加されたときに圧電振動片を振動させる励振電極と、引き出し電極を介して励振電極に電気的に接続されるマウント電極と、をそれぞれ形成する電極形成工程と、
複数の前記圧電振動片を前記ウエハから切り離して固片化する切断工程と、
該切断工程後、固片化された前記圧電振動片の前記マウント電極を、一端側が外部に電気的に接続される外部接続端子の他端側に接合するマウント工程と、
該マウント工程後、前記圧電振動片を封止部材により気密封止する封止工程と、を備えていることを特徴とする圧電振動子の製造方法。
【請求項8】
請求項7記載の圧電振動子の製造方法により製造されたことを特徴とする圧電振動子。
【請求項9】
請求項8記載の圧電振動子が、発振子として集積回路に電気的に接続されていることを特徴とする発振器。
【請求項10】
請求項8記載の圧電振動子が、計時部に電気的に接続されていることを特徴とする電子機器。
【請求項11】
請求項8記載の圧電振動子が、フィルタ部に電気的に接続されていることを特徴とする電波時計。
【請求項1】
ウエハの両面を研磨して、該ウエハの厚みを所定の厚みに調整するウエハ研磨装置において、前記ウエハを収容し保持するためのキャリアであって、
前記ウエハを収容する、開口形状が略角形状の保持孔を有してなり、
前記保持孔の角部には、該角部を形成する二本の直線部の交点部近傍において、該保持孔の内側に向かって凹形状となる第1湾曲部が形成され、該第1湾曲部の両側には、それぞれ対応する前記直線部より前記保持孔の内側に膨出することなく、該保持孔の内側に向かって凸形状となる第2湾曲部が形成されていることを特徴とするキャリア。
【請求項2】
前記第1湾曲部は、前記保持孔の角部を形成する二本の直線部の、交点を中心として形成される円の円弧形状を有してなり、
前記第2湾曲部は、対応する前記直線部と前記第1湾曲部とに接する円の円弧形状を有してなることを特徴とする請求項1記載のキャリア。
【請求項3】
前記第1湾曲部における前記円の半径r1は、前記第2湾曲部における前記円の半径r2より小さいことを特徴とする請求項2記載のキャリア。
【請求項4】
前記保持孔の開口形状が略矩形状であり、全ての角部が、前記第1湾曲部と前記第2湾曲部とを有してなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のキャリア。
【請求項5】
研磨液を供給しつつウエハの両面を研磨して、該ウエハの厚みを所定の厚みに調整するウエハ研磨装置であって、
外周縁がギア部とされ、前記ウエハが収納される保持孔が形成された円板状のキャリアと、
前記ギア部を介して前記キャリアに噛合され、該キャリアを自転させながら軸線回りに公転させる遊星歯車機構と、
中心が刳り貫かれた円板状に形成され、前記キャリアの上下に配置されて、前記保持孔に収納された前記ウエハに所定の荷重を加えつつ、該ウエハの両面を挟み込む上定盤及び下定盤と、
前記上定盤と前記下定盤との間に前記研磨液を供給する研磨液供給手段と、を備え、
前記キャリアは、前記保持孔が、請求項1〜4のいずれか一項に記載のキャリアの保持孔と同じ構成からなっていることを特徴とするウエハ研磨装置。
【請求項6】
外周縁がギア部とされ、ウエハが収納される保持孔が形成された円板状のキャリアと、前記ギア部を介して前記キャリアに噛合され、該キャリアを自転させながら軸線回りに公転させる遊星歯車機構と、中心が刳り貫かれた円板状に形成され、前記キャリアの上下に配置されて、前記保持孔に収納された前記ウエハに所定の荷重を加えつつ、該ウエハの両面を挟み込む上定盤及び下定盤と、前記上定盤と前記下定盤との間に前記研磨液を供給する研磨液供給手段と、を備えるウエハ研磨装置により、前記研磨液供給手段から研磨液を供給しつつ前記ウエハの両面を研磨し、該ウエハの厚みを所定の厚みに調整する研磨工程を備えたウエハ研磨方法であって、
前記キャリアとして、前記保持孔が、請求項1〜4のいずれか一項に記載のキャリアの保持孔と同じ構成からなっているものを用いることを特徴とするウエハ研磨方法。
【請求項7】
請求項6記載のウエハ研磨方法により研磨されたウエハを利用して圧電振動子を一度に複数製造する方法であって、
研磨後の前記ウエハをフォトリソ技術によりエッチングして、該ウエハに複数の圧電振動片の外形形状をパターニングする外形形成工程と、
複数の前記圧電振動片の外表面上に電極膜をパターニングして、所定の電圧が印加されたときに圧電振動片を振動させる励振電極と、引き出し電極を介して励振電極に電気的に接続されるマウント電極と、をそれぞれ形成する電極形成工程と、
複数の前記圧電振動片を前記ウエハから切り離して固片化する切断工程と、
該切断工程後、固片化された前記圧電振動片の前記マウント電極を、一端側が外部に電気的に接続される外部接続端子の他端側に接合するマウント工程と、
該マウント工程後、前記圧電振動片を封止部材により気密封止する封止工程と、を備えていることを特徴とする圧電振動子の製造方法。
【請求項8】
請求項7記載の圧電振動子の製造方法により製造されたことを特徴とする圧電振動子。
【請求項9】
請求項8記載の圧電振動子が、発振子として集積回路に電気的に接続されていることを特徴とする発振器。
【請求項10】
請求項8記載の圧電振動子が、計時部に電気的に接続されていることを特徴とする電子機器。
【請求項11】
請求項8記載の圧電振動子が、フィルタ部に電気的に接続されていることを特徴とする電波時計。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図2】
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【図18】
【図19】
【図20】
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【図22】
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【図26】
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【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【公開番号】特開2009−178780(P2009−178780A)
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−17933(P2008−17933)
【出願日】平成20年1月29日(2008.1.29)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年1月29日(2008.1.29)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】
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