クロックデータ復元装置
【課題】より正確にクロック信号およびデータを復元することができるクロックデータ復元装置を提供する。
【解決手段】クロックデータ復元装置1は、入力したデジタル信号に基づいてクロック信号およびデータを復元する装置であって、イコライザ部10、サンプラ部20、クロック生成部30、イコライザ制御部40および位相モニタ部50を備える。イコライザ部10、サンプラ部20およびイコライザ制御部40によるループ処理により、イコライザ部10におけるデジタル信号のレベル調整量の制御が行われるが、一方で、クロック信号CKとデジタル信号との間の位相差が所定値より大きいときには当該制御が位相モニタ部50により停止される。これにより、より正確にクロック信号およびデータが復元され得る。
【解決手段】クロックデータ復元装置1は、入力したデジタル信号に基づいてクロック信号およびデータを復元する装置であって、イコライザ部10、サンプラ部20、クロック生成部30、イコライザ制御部40および位相モニタ部50を備える。イコライザ部10、サンプラ部20およびイコライザ制御部40によるループ処理により、イコライザ部10におけるデジタル信号のレベル調整量の制御が行われるが、一方で、クロック信号CKとデジタル信号との間の位相差が所定値より大きいときには当該制御が位相モニタ部50により停止される。これにより、より正確にクロック信号およびデータが復元され得る。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力したデジタル信号に基づいてクロック信号およびデータを復元する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
送信器から出力されたデジタル信号は、その送信器から伝送路を経て受信器へ伝送される間に波形が劣化することから、その受信器側においてクロック信号およびデータが復元される必要がある。このような復元を行うためのクロックデータ復元装置は、例えば特許文献1,2および3に開示されている。
【0003】
一般的なクロックデータ復元装置は、波形劣化して入力されたデジタル信号のデータを、各ビット期間の中央時刻に検出し(当該検出値をD(n)と表す。)、また、或るビットから次のビットへの遷移時刻にも検出する(当該検出値をDX(n)と表す。)。そして、クロックデータ復元装置は、これらの値D(n)および値DX(n)に基づいて、これらの値を検出するタイミングを示すクロック信号と入力デジタル信号との間の位相差が小さくなるように、クロック信号の周期または位相を調整することで、復元されたクロック信号およびデータを得ることができる。
【0004】
また、クロックデータ復元装置として、入力デジタル信号のレベルを調整して出力するイコライザ部を備えるものが知られている。イコライザ部は、入力デジタル信号のレベルを調整することで、送信器から伝送路を経て受信器へ伝送される間に被る損失を補償する。クロックデータ復元装置は、このイコライザ部によりレベル調整されたデジタル信号から上記の値D(n)および値DX(n)を検出する。
【特許文献1】特開平7−221800号公報
【特許文献2】特表2004−507963号公報
【特許文献3】特表2005−341582号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のようなイコライザ部を備えるクロックデータ復元装置は、入力信号に基づく位相・周波数制御によりクロック信号を復元するとともに、イコライザ部で入力信号波形を補正している。イコライザ部における入力信号波形の補正強度は、データの検出値に基づいて、伝送時に被る損失が変動する場合等にも最適となるよう調整される。すなわち、適切な入力信号の波形補正は、正確なデータの検出が前提となっている。
【0006】
しかし、入力デジタル信号に対して、データサンプリング時刻を指示するクロック信号の位相・周波数が大きくずれている場合には、データを正しく検出できないため、イコライザ部において適切な強度の波形補正が困難である。このため、適切な強度で波形補正がされない場合には、かえって、クロック信号の位相・周波数の復元が不正確になりやすいという場合がある。
【0007】
本発明は、上記問題点を解消する為になされたものであり、より正確にクロック信号およびデータを復元することができるクロックデータ復元装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るクロックデータ復元装置は、入力したデジタル信号に基づいてクロック信号およびデータを復元する装置であって、イコライザ部、サンプラ部、クロック生成部、イコライザ制御部および位相モニタ部を備えることを特徴とする。
【0009】
イコライザ部は、入力したデジタル信号のレベルを調整して、その調整後のデジタル信号を出力する。サンプラ部は、同一の周期Tを有するクロック信号CKおよびクロック信号CKXを入力するとともに、イコライザ部から出力されたデジタル信号を入力する。そして、サンプラ部は、当該周期の第nの期間T(n)それぞれにおいて、クロック信号CKが指示する時刻tCでのデジタル信号の値D(n)をサンプリングしホールドして出力し、クロック信号CKXが指示する時刻tXでのデジタル信号の値DX(n)をサンプリングしホールドして出力する。ただし、「tC<tX」であり、nは整数である。
【0010】
クロック生成部は、各期間T(n)において、サンプラ部から出力された値D(n)および値DX(n)に基づいて、クロック信号CKとデジタル信号との間の位相差が小さくなるように周期Tまたは位相を調整し、「tX−tC=T/2」なる関係を満たすクロック信号CKおよびクロック信号CKXをサンプラ部へ出力する。
【0011】
イコライザ制御部は、各期間T(n)において、イコライザ部から出力されたデジタル信号のレベル、または、サンプラ部から出力された値D(n)および値DX(n)に基づいて、イコライザ部におけるデジタル信号のレベル調整量の制御を行う位相モニタ部は、各期間T(n)において、サンプラ部から出力された値D(n)および値DX(n)に基づいて、クロック信号CKとデジタル信号との間の位相関係を検出し、当該位相差が所定値より大きいときに、イコライザ制御部によるデジタル信号のレベル調整量の制御を停止させる。
【0012】
このクロックデータ復元装置に入力されたデジタル信号は、先ずイコライザ部においてレベル調整されて、サンプラ部に入力される。このサンプラ部には、同一の周期Tを有するクロック信号CKおよびクロック信号CKXも入力される。そして、サンプラ部において、当該周期の第nの期間T(n)それぞれにおいて、クロック信号CKが指示する時刻でのデジタル信号の値D(n)がサンプリングしホールドされて出力され、また、クロック信号CKXが指示する時刻でのデジタル信号の値DX(n)がサンプリングしホールドされて出力される。サンプラ部から出力された値D(n)および値DX(n)は、クロック生成部および位相モニタ部それぞれに入力される。
【0013】
クロック生成部では、サンプラ部から出力された値D(n)および値DX(n)に基づいて、クロック信号CKとデジタル信号との間の位相差が小さくなるように周期Tまたは位相が調整されて、「tX−tC=T/2」なる関係を満たすクロック信号CKおよびクロック信号CKXがサンプラ部へ出力される。サンプラ部およびクロック生成部によるループ処理により、入力デジタル信号に基づいて復元されたクロック信号として、クロック信号CKまたはCKXが生成される。
【0014】
イコライザ制御部では、イコライザ部から出力されたデジタル信号のレベル、または、サンプラ部から出力された値D(n)および値DX(n)に基づいて、イコライザ部におけるデジタル信号のレベル調整量の制御が行われる。ただし、このイコライザ制御部による制御は、位相モニタ部による位相関係の検出結果に基づいて許可または停止される。すなわち、位相モニタ部では、サンプラ部から出力された値D(n)および値DX(n)に基づいて、クロック信号CKとデジタル信号との間の位相関係が検出される。そして、当該位相差が所定値より大きいときには、イコライザ制御部によるデジタル信号のレベル調整量の制御が停止され、当該位相差が所定値以下であるときには、イコライザ制御部によるデジタル信号のレベル調整量の制御が許可される。
【0015】
以上のように、本発明に係るクロックデータ復元装置では、イコライザ部、サンプラ部およびイコライザ制御部によるループ処理により、イコライザ部におけるデジタル信号のレベル調整量の制御が行われるが、一方で、クロック信号CKとデジタル信号との間の位相差が所定値より大きいときには当該制御が位相モニタ部により停止される。これにより、より正確にクロック信号およびデータが復元され得る。
【0016】
クロック生成部は、「D(n-1)≠DX(n-1)=D(n)」であるときに有意値となるUP信号、および、「D(n-1)=DX(n-1)≠D(n)」であるときに有意値となるDN信号に基づいて、周期Tまたは位相を調整して、クロック信号CKおよびクロック信号CKXを出力するのが好適である。
【0017】
位相モニタ部は、「D(n-1)≠DX(n-1)=D(n)」であるときに有意値となるUP信号、および、「D(n-1)=DX(n-1)≠D(n)」であるときに有意値となるDN信号に基づいて、クロック信号CKとデジタル信号との間の位相関係を検出するのが好適である。
【0018】
位相モニタ部は、各期間T(n)において、該期間を含む過去の連続する10期間(T(n-9)〜T(n))内にUP信号およびDN信号の何れかが有意値とならなかったときに、位相差が所定値より大きいと判定して、イコライザ制御部によるデジタル信号のレベル調整量の制御を停止させるのが好適である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、より正確にクロック信号およびデータを復元することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための最良の形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0021】
先ず、本発明に係るクロックデータ復元装置の概略構成について説明する。図1は、本発明に係るクロックデータ復元装置1の概略構成図である。クロックデータ復元装置1は、入力したデジタル信号に基づいてクロック信号およびデータを復元する装置であって、イコライザ部10、サンプラ部20、クロック生成部30、イコライザ制御部40および位相モニタ部50を備える。
【0022】
図2は、本発明に係るクロックデータ復元装置1におけるデジタル信号のデータをサンプリングするタイミングを示す図である。この図には、入力デジタル信号のアイパターンが模式的に示されており、クロック生成部30から出力されサンプラ部20に入力されるクロック信号CKおよびクロック信号CKXそれぞれのタイミングも示され、また、サンプラ部20から出力されるデジタル値D(n)および値DX(n)のタイミングも示されている。
【0023】
イコライザ部10は、入力したデジタル信号のレベルを調整して、その調整後のデジタル信号をサンプラ部20へ出力する。サンプラ部20は、同一の周期Tを有するクロック信号CKおよびクロック信号CKXを入力するとともに、イコライザ部10から出力されたデジタル信号を入力する。そして、サンプラ部20は、当該周期の第nの期間T(n)それぞれにおいて、クロック信号CKが指示する時刻tCでのデジタル信号の値D(n)をサンプリングしホールドして出力し、また、クロック信号CKXが指示する時刻tXでのデジタル信号の値DX(n)をサンプリングしホールドして出力する。ただし、「tC<tX」であり、nは整数である。
【0024】
クロック生成部30は、各期間T(n)において、サンプラ部20から出力された値D(n)および値DX(n)に基づいて、クロック信号CKとデジタル信号との間の位相差が小さくなるように周期Tまたは位相を調整し、「tX−tC=T/2」なる関係を満たすクロック信号CKおよびクロック信号CKXをサンプラ部20へ出力する。なお、クロック信号CKは、サンプラ部20においてデジタル信号のデータを各ビット期間の中央時刻で検出するタイミングを指示するものであり、クロック信号CKXは、サンプラ部20においてデジタル信号のデータを或るビットから次のビットへの遷移時刻で検出するタイミングを指示するものである。
【0025】
なお、2つのクロック信号CKおよびクロック信号CKXそれぞれは、単相であってもよいし、多相であってもよい。例えば、クロック信号CKを4相とした場合を考えると、各々の周期が4Tであって位相がπ/2づつ異なっている4つのクロック信号CK<1>,CK<2>,CK<3>,CK<4> を用い、また、これらの4つのクロック信号CK<1>〜CK<4> に対応して4つのラッチ回路をサンプラ部に設けることになる。多相とした場合、サンプラ部の回路規模が大きくなるものの、各回路ブロックに要求されるスピードは緩和される。
【0026】
イコライザ制御部40は、各期間T(n)において、イコライザ部10から出力されたデジタル信号のレベル、または、サンプラ部20から出力された値D(n)および値DX(n)に基づいて、イコライザ部10におけるデジタル信号のレベル調整量の制御を行う。位相モニタ部50は、各期間T(n)において、サンプラ部20から出力された値D(n)および値DX(n)に基づいて、クロック信号CKとデジタル信号との間の位相関係を検出する。そして、位相モニタ部50は、当該位相差が所定値より大きいときに、イコライザ制御部40によるデジタル信号のレベル調整量の制御を停止させ、当該位相差が所定値以下であるときに、イコライザ制御部40によるデジタル信号のレベル調整量の制御を許可する。
【0027】
このクロックデータ復元装置1は以下のように動作する。送信器から出力されて伝送路を経て到達した波形劣化したデジタル信号は、先ずイコライザ部10においてレベル調整されて、伝送時に被った損失が補償された後、サンプラ部20に入力される。このサンプラ部20には、同一の周期Tを有するクロック信号CKおよびクロック信号CKXも入力される。そして、サンプラ部20において、当該周期の第nの期間T(n)それぞれにおいて、クロック信号CKが指示する時刻でのデジタル信号の値D(n)がサンプリングしホールドされて出力され、また、クロック信号CKXが指示する時刻でのデジタル信号の値DX(n)がサンプリングしホールドされて出力される。サンプラ部20から出力された値D(n)および値DX(n)は、クロック生成部30および位相モニタ部50それぞれに入力される。
【0028】
クロック生成部30では、サンプラ部20から出力された値D(n)および値DX(n)に基づいて、クロック信号CKとデジタル信号との間の位相差が小さくなるように周期Tまたは位相が調整されて、「tX−tC=T/2」なる関係を満たすクロック信号CKおよびクロック信号CKXがサンプラ部20へ出力される。サンプラ部20およびクロック生成部30によるループ処理により、入力デジタル信号に基づいて復元されたクロック信号として、クロック信号CKまたはCKXが生成される。
【0029】
イコライザ制御部40では、イコライザ部10から出力されたデジタル信号のレベル、または、サンプラ部20から出力された値D(n)および値DX(n)に基づいて、イコライザ部10におけるデジタル信号のレベル調整量の制御が行われる。ただし、このイコライザ制御部40による制御は、位相モニタ部50による位相関係の検出結果に基づいて許可または停止される。すなわち、位相モニタ部50では、サンプラ部20から出力された値D(n)および値DX(n)に基づいて、クロック信号CKとデジタル信号との間の位相関係が検出される。そして、当該位相差が所定値より大きいときには、イコライザ制御部40によるデジタル信号のレベル調整量の制御が停止され、当該位相差が所定値以下であるときには、イコライザ制御部40によるデジタル信号のレベル調整量の制御が許可される。
【0030】
以上のように、本発明に係るクロックデータ復元装置1では、イコライザ部10、サンプラ部20およびイコライザ制御部40によるループ処理により、イコライザ部10におけるデジタル信号のレベル調整量の制御が行われるが、一方で、クロック信号CKとデジタル信号との間の位相差が所定値より大きいときには当該制御が位相モニタ部50により停止される。これにより、より正確にクロック信号およびデータが復元され得る。
【0031】
以下では、クロックデータ復元装置1の更に具体的な構成を、第1および第2の実施形態として説明する。第1および第2の実施形態のクロックデータ復元装置は、クロック生成部30および位相モニタ部50それぞれの構成が共通であるが、イコライザ部10の構成が相違しており、これに応じて、サンプラ部20およびイコライザ制御部50それぞれの構成も相違している。
【0032】
(第1実施形態)
図3は、第1実施形態に係るクロックデータ復元装置1Aの構成図である。この図に示されるクロックデータ復元装置1Aは、入力したデジタル信号に基づいてクロック信号およびデータを復元する装置であって、イコライザ部10A、サンプラ部20A、クロック生成部30、イコライザ制御部40Aおよび位相モニタ部50を備える。この図には、イコライザ部10A、サンプラ部20Aおよびクロック生成部30それぞれの回路構成が具体的に示されている。
【0033】
図4は、第1実施形態に係るクロックデータ復元装置1Aにおけるデジタル信号のデータをサンプリングするタイミングを示す図である。この図には、入力デジタル信号のアイパターンが模式的に示されており、クロック生成部30から出力されサンプラ部20Aに入力されるクロック信号CKおよびクロック信号CKXそれぞれのタイミングも示され、また、サンプラ部20Aから出力されるデジタル値D(n)および値DX(n)等のタイミングも示されている。
【0034】
イコライザ部10Aは、入力したデジタル信号のレベルを調整して当該調整後のデジタル信号(第1信号、第2信号)をサンプラ部20Aへ出力するものであって、4個の加算回路111〜114およびDA変換回路115を含む。DA変換回路115は、イコライザ制御部40Aから出力される値DAVALを受けてオフセット電圧値(±Voff)を発生し出力する。加算回路111,113は、入力したデジタル信号とDA変換回路115からのオフセット電圧値(−Voff)とを加算して、その加算結果である第1信号(=入力デジタル信号−Voff)を出力する。また、加算回路112,114は、入力したデジタル信号とDA変換回路115からのオフセット電圧値(+Voff)とを加算して、その加算結果である第2信号(=入力デジタル信号+Voff)を出力する。
【0035】
サンプラ部20Aは、4個のラッチ回路121〜124、2個の選択回路125,126およびラッチ回路127を含む。ラッチ回路121は、加算回路111から出力された第1信号を入力するとともに、クロック生成部30から出力されたクロック信号CKをも入力して、各期間T(n)においてクロック信号CKが指示する時刻での第1信号の値DA(n)をサンプリングしホールドして選択回路125へへ出力する。ラッチ回路122は、加算回路112から出力された第2信号を入力するとともに、クロック生成部30から出力されたクロック信号CKをも入力して、各期間T(n)においてクロック信号CKが指示する時刻での第2信号の値DB(n)をサンプリングしホールドして選択回路125へ出力する。
【0036】
ラッチ回路123は、加算回路113から出力された第1信号を入力するとともに、クロック生成部30から出力されたクロック信号CKXをも入力して、各期間T(n)においてクロック信号CKXが指示する時刻での第1信号の値DAX(n)をサンプリングしホールドして選択回路126へ出力する。ラッチ回路124は、加算回路114から出力された第2信号を入力するとともに、クロック生成部30から出力されたクロック信号CKXをも入力して、各期間T(n)においてクロック信号CKXが指示する時刻での第2信号の値DBX(n)をサンプリングしホールドして選択回路126へ出力する。
【0037】
選択回路125は、ラッチ回路121から出力された値DA(n)、ラッチ回路122から出力された値DB(n)、および、ラッチ回路127から出力された値D(n-1)を入力して、値D(n-1)がハイレベルであるときには値DA(n)を選択して値D(n)として出力し、値D(n-1)がローレベルであるときには値DB(n)を選択して値D(n)として出力する。
【0038】
選択回路126は、ラッチ回路123から出力された値DAX(n)、ラッチ回路124から出力された値DBX(n)、および、ラッチ回路127から出力された値D(n-1)を入力して、値D(n-1)がハイレベルであるときには値DAX(n)を選択して値DX(n)として出力し、値D(n-1)がローレベルであるときには値DBX(n)を選択して値DX(n)として出力する。
【0039】
ラッチ回路127は、各期間T(n-1)に選択回路125から出力された値D(n-1)を入力してホールドし、その値D(n-1)を次の期間T(n)に選択回路125,126それぞれへ出力する。
【0040】
このように、サンプラ部20Aは、各期間T(n)において、値D(n-1)がハイレベルであるときに「D(n)=DA(n)」および「DX(n-1)=DXA(n-1)」とし、値D(n-1)がローレベルであるときに「D(n)=DB(n)」および「DX(n-1)=DXB(n-1)」として、クロック信号CKが指示する時刻でのデジタル信号の値D(n)を出力し、クロック信号CKXが指示する時刻でのデジタル信号の値DX(n)を出力する。
【0041】
クロック生成部30は、サンプラ部20Aから出力された値D(n)および値DX(n)に基づいてクロック信号CKおよびクロック信号CKXを生成するものであって、位相関係検出回路(BBPHD)31、チャージポンプ回路(CP)32、ローパスフィルタ回路(LPF)33および電圧制御発振回路(VCO)34を含む。
【0042】
位相関係検出回路31は、サンプラ部20Aから出力された値D(n)および値DX(n)に基づいて、図5に示される真理値表に従う論理演算を行って、UP信号およびDN信号を出力する。すなわち、位相関係検出回路31は、「D(n-1)≠DX(n-1)=D(n)」であるときに有意値となるUP信号、および、「D(n-1)=DX(n-1)≠D(n)」であるときに有意値となるDN信号を、位相関係を表す信号として出力する。
【0043】
位相関係検出回路31は、図6に回路図が示されるように、値D(n-1)および値D(n)を入力する排他的論理和回路311、値D(n-1)および値DX(n)を入力する排他的論理和回路312、排他的論理和回路311および排他的論理和回路312それぞれの出力値を入力してUP信号を出力する論理積回路313、ならびに、排他的論理和回路311の出力値および排他的論理和回路312の出力値の論理反転値を入力してDN信号を出力する論理積回路314、を含んで構成され得る。
【0044】
UP信号が有意値であるとき、入力デジタル信号に対してクロック信号CKの位相が遅れているから、クロック信号CKおよびクロック信号CKXの位相を早める必要がある。一方、DN信号が有意値であるとき、入力デジタル信号に対してクロック信号CKの位相が進んでいるから、クロック信号CKおよびクロック信号CKXの位相を遅らせる必要がある。
【0045】
そこで、チャージポンプ回路32は、位相関係検出回路31から出力されたUP信号およびDN信号の何れが有意値であるかに応じて、充電および放電の何れかの電流パルスをローパスフィルタ回路33へ出力する。ローパスフィルタ回路33は、チャージポンプ回路32から出力された電流パルスを入力して、その入力した電流パルスが充電および放電の何れであるかによって、出力電圧値を増減する。そして、電圧制御発振回路34は、ローパスフィルタ回路33からの出力電圧値に応じた周期のクロック信号CKおよびクロック信号CKXを発生する。このようにしてクロック生成部30において生成されたクロック信号CKおよびクロック信号CKXは、UP信号およびDN信号に基づいて周期が調整されたものとなる。
【0046】
図7は、位相モニタ部50の回路図である。位相モニタ部50は、排他的論理和回路51,52、論理積回路53,54、シフトレジスタ回路55,56、論理和回路57,58、および、論理積回路59を含んで構成される。
【0047】
排他的論理和回路51は、値D(n-1)および値D(n)を入力して、これら2つの値の排他的論理和の値を出力する。排他的論理和回路52は、値D(n-1)および値DX(n)を入力して、これら2つの値の排他的論理和の値を出力する。論理積回路53は、排他的論理和回路51および排他的論理和回路52それぞれの出力値を入力して、これらの2つの値の論理積である値UP(n)を出力する。論理積回路54は、排他的論理和回路51の出力値および排他的論理和回路52の出力値の論理反転値を入力して、これらの2つの値の論理積である値DN(n)を出力する。すなわち、「D(n-1)≠DX(n-1)=D(n)」であるときに値UP(n)は有意値となり、「D(n-1)=DX(n-1)≠D(n)」であるときに値DN(n)は有意値となる
シフトレジスタ回路55は、各期間T(n)において、論理積回路53から出力された値UP(n)を入力して、その期間を含む過去の連続する10期間(T(n-9)〜T(n))の値UP(n-9)〜UP(n)を記憶し出力する。また、シフトレジスタ回路56は、各期間T(n)において、論理積回路54から出力された値DN(n)を入力して、その期間を含む過去の連続する10期間(T(n-9)〜T(n))の値DN(n-9)〜DN(n)を記憶し出力する。
【0048】
論理和回路57は、シフトレジスタ回路55から出力された値UP(n-9)〜UP(n)を入力して、これら10個の値の論理和値を出力する。論理和回路58は、シフトレジスタ回路56から出力された値DN(n-9)〜DN(n)を入力して、これら10個の値の論理和値を出力する。論理積回路59は、論理和回路57および論理和回路58それぞれから出力された値を入力して、これら2つの値の論理積である値ENABLEを出力する。
【0049】
すなわち、値UP(n-9)〜UP(n)のうち少なくとも1つが有意値であり、且つ、値DN(n-9)〜DN(n)のうち少なくとも1つが有意値であるときに、論理積回路59から出力される値ENABLEは有意値となる。一方、値UP(n-9)〜UP(n)の全てが非有意値であるとき、又は、値DN(n-9)〜DN(n)の全てが非有意値であるときに、論理積回路59から出力される値ENABLEは非有意値となる。値ENABLEが非有意値であることは、クロック信号CKとデジタル信号との間の位相差が所定値より大きいことを表している。
【0050】
なお、位相モニタ部50における値ENABLEの出力は、各期間T(n)に1回行われてもよいし、M期間(例えば10期間)毎に1回行われてもよい。前者の場合、或る期間T(n)を含む過去の連続する10期間(T(n-9)〜T(n))について値ENABLEが求められ、次の期間T(n-1)に10期間(T(n-8)〜T(n+1))について次の値ENABLEが求められる。後者の場合、或る期間T(n)を含む過去の連続する10期間(T(n-9)〜T(n))について値ENABLEが求められ、これからM期間後に10期間(T(n+M-9)〜T(n+M))について次の値ENABLEが求められる。
【0051】
UP信号およびDN信号それぞれが有意値となった期間が存在するか否かを10期間に亘って判断することとしたのは以下の理由による。すなわち、入力デジタル信号の或るビットと次のビットとの間でデータ遷移がある場合、UP信号およびDN信号のうちの一方が有意値となり他方が非有意値となる。入力デジタル信号の或るビットと次のビットとの間でデータ遷移が無い場合、UP信号およびDN信号の双方が非有意値となる。
【0052】
クロック信号CKおよびクロック信号CKXそれぞれの位相が適切であれば、或る連続する複数の期間の間に、UP信号が有意値となる期間が存在し、DN信号が有意値となる期間も存在する。しかし、クロック信号CKおよびクロック信号CKXそれぞれの位相がずれていれば、或る連続する複数の期間の間に、UP信号が常に非有意値となり、或いは、DN信号が常に非有意値となる。
【0053】
シリアルデータ通信において用いられる8B10B符号では、10ビットの間にデータ遷移が2回以上あることが保証されている。したがって、UP信号およびDN信号それぞれが有意値となった期間が存在するか否かを10期間に亘って判断することにすれば、クロック信号CKおよびクロック信号CKXそれぞれの位相が適切であれば、その10期間のうちに、UP信号が有意値となる期間が必ず存在し、DN信号が有意値となる期間も必ず存在する。
【0054】
逆に、10期間に亘ってDN信号が常に非有意値である場合、または、10期間に亘ってUP信号が常に非有意値である場合には、クロック信号CKおよびクロック信号CKXそれぞれの位相がずれていると判定され、それ故、オフセット付与量Voffの適正値からのずれが正しく検知され得ない。以上のような理由から、UP信号およびDN信号それぞれが有意値となった期間が存在するか否かを10期間に亘って判断するのが好ましい。
【0055】
位相モニタ部50から出力される値ENABLEはイコライザ制御部40Aに入力される。イコライザ制御部40Aは、この値ENABLEが有意値であるときに、イコライザ部10におけるデジタル信号のレベル調整量(すなわち、入力デジタル信号に付加されるオフセット電圧値)の制御を行う。一方、イコライザ制御部40Aは、この値ENABLEが非有意値であるときに、イコライザ部10におけるデジタル信号のレベル調整量の制御を停止する。
【0056】
図8は、イコライザ制御部40Aにおける処理を説明するフローチャートである。イコライザ制御部40Aは、位相モニタ部50から出力された値ENABLEを用いるとともに、変数INCNT,変数EDGCNT,変数INFLG,変数EDGFLG,定数INCNTTHおよび定数EDGCNTTHを用いて、イコライザ部10Aに含まれるDA変換回路115へ出力されるべき値DAVALを求める。変数INFLGおよび変数EDGFLGそれぞれの値は、図9に示される論理回路により、値D(n)および値DX(n)から求められ、「EDGFLG(n)=D(n-1)~D(n)」、「INFLG(n)=EDGFLG(n)*{D(n-2)~DX(n-1)}」と表される。ここで、演算記号「^」は排他的論理和を表す。
【0057】
ステップS10では、変数INCNTおよび変数EDGCNTそれぞれの値を初期値0に設定する。続くステップS11では、位相モニタ部50から出力された値ENABLEが有意値であるか否かを判断して、値ENABLEが有意値であればステップS12に進み、そうでなければステップS11に留まる。ステップS12では、変数INCNTの値に変数INFLGの値を加算して、その加算値を変数INCNTの新たな値とする。また、ステップS12では、変数EDGCNTの値に変数EDGFLGの値を加算して、その加算値を変数EDGCNTの新たな値とする。
【0058】
続くステップS13では、変数EDGCNTの値が定数EDGCNTTHより大きいか否かを判定して、変数EDGCNTの値が定数EDGCNTTHより大きければステップS14へ進み、変数EDGCNTの値が定数EDGCNTTH以下であればステップS11へ戻る。すなわち、ステップS13において変数EDGCNTの値が定数EDGCNTTHより大きくなったと判定されるまで、ステップS11〜S13それぞれの処理は行われる。
【0059】
イコライザ制御部40AにおけるステップS11〜S13それぞれの処理は、位相モニタ部50における値ENABLEの出力と同様に、各期間T(n)に1回行われてもよいし、M期間(例えば10期間)毎に1回行われてもよい。後者の場合、ステップS12では、M期間それぞれに対して得られた変数INFLGの総和値を変数INCNTの値に加算し、M期間それぞれに対して得られた変数EDGFLGの総和値を変数EDGCNTの値に加算する。
【0060】
ステップS14では、以下に示すような3つの場合(a)〜(c)に分けて異なる処理をする。すなわち、定数INCNTTHより変数INCNTの値が小さい場合には、値DAVALを増加させて、新たな値DAVALをDA変換回路115へ通知する。変数EDGCNTの値から定数INCNTTHを差し引いた値より変数INCNTの値が大きい場合には、値DAVALを減少させて、新たな値DAVALをDA変換回路115へ通知する。また、上記の2つの場合の何れでもない場合には、値DAVALを維持する。そして、ステップS14の処理が終了すると、ステップS10に戻り、これまでに説明した処理を繰り返す。
【0061】
【数1】
【0062】
以上のようなイコライザ制御部40Aの処理により、一定範囲(INCNTTH 〜 EDGCNT−INCNTTH)内に変数INCNT の値が存在するように値DAVALが調整され、イコライザ部10Aにおけるオフセット付与量(±Voff)が調整される。このようにすることにより、イコライザ部10Aにおけるオフセット付与量が適正値に設定される。
【0063】
また、イコライザ制御部40Aにおいて、位相モニタ部50から出力された値ENABLEが有意値である場合(すなわち、値UP(n-9)〜UP(n)のうち少なくとも1つが有意値であり、且つ、値DN(n-9)〜DN(n)のうち少なくとも1つが有意値である場合)には、その間の値Dおよび値DNは値DAVALの更新の際に参照され、イコライザ部10Aにおけるデジタル信号のレベル調整量の制御は行われる。
【0064】
しかし、イコライザ制御部40Aにおいて、位相モニタ部50から出力された値ENABLEが非有意値である場合(すなわち、値UP(n-9)〜UP(n)の全てが非有意値である場合、又は、値DN(n-9)〜DN(n)の全てが非有意値である場合)には、クロック信号CKとデジタル信号との間の位相差が所定値より大きいので、その間の値Dおよび値DNは値DAVALの更新の際に参照されず、イコライザ部10Aにおけるデジタル信号のレベル調整量の制御は停止される。
【0065】
このようにして、第1実施形態に係るクロックデータ復元装置1Aでは、デジタル信号が伝送時に被る損失が変動する場合等にも、イコライザ部10Aにおけるデジタル信号のレベル調整量(オフセット付与量)が適正値に設定されて、より正確にクロック信号およびデータが復元され得る。
【0066】
(第2実施形態)
図10は、第2実施形態に係るクロックデータ復元装置1Bの構成図である。この図に示されるクロックデータ復元装置1Bは、入力したデジタル信号に基づいてクロック信号およびデータを復元する装置であって、イコライザ部10B、サンプラ部20B、クロック生成部30、イコライザ制御部40Bおよび位相モニタ部50を備える。この図には、イコライザ部10Bおよびサンプラ部20Bそれぞれの回路構成が具体的に示されている。なお、第2実施形態におけるクロック生成部30および位相モニタ部50それぞれの構成は、第1実施形態の場合と同様である。
【0067】
図11は、第2実施形態に係るクロックデータ復元装置1Bにおけるデジタル信号のデータをサンプリングするタイミングを示す図である。この図には、入力デジタル信号のアイパターンが模式的に示されており、クロック生成部30から出力されサンプラ部20Bに入力されるクロック信号CKおよびクロック信号CKXそれぞれのタイミングも示され、また、サンプラ部20Bから出力されるデジタル値D(n),値DX(n),値EH(n)および値EL(n)のタイミングも示されている。
【0068】
イコライザ部10Bは、入力したデジタル信号のレベルを調整して当該調整後のデジタル信号(高周波成分を増幅した信号)をサンプラ部20Bへ出力するものであって、ハイパスフィルタ回路(HPF)211、増幅回路212および加算回路213を含む。ハイパスフィルタ回路211は、入力デジタル信号のうち高周波成分を選択的に通過させて増幅回路212へ出力する。増幅回路212は、ハイパスフィルタ回路211から出力された信号を増幅して加算回路213へ出力する。この増幅回路212における利得は、イコライザ部10Bから出力される値GHを受けて設定される。そして、加算回路213は、入力デジタル信号を入力するとともに、増幅回路212から出力された信号を入力して、これらを加算した結果をサンプラ部20Bへ出力する。イコライザ部10Bから出力されてサンプラ部20Bへ入力されるデジタル信号は、入力デジタル信号の高周波成分が増幅されたものであり、伝送時にデジタル信号の高周波成分が被った損失が補償されたものとなる。
【0069】
サンプラ部20Bは、2個の比較回路221,222および4個のラッチ回路223〜226を含む。比較回路221は、イコライザ部10Bから出力されたデジタル信号を入力するとともに、基準電圧値(+VA)をも入力して、デジタル信号値が基準電圧値(+VA)より大きいときには有意値を出力し、そうでないときには非有意値を出力する。比較回路222は、イコライザ部10Bから出力されたデジタル信号を入力するとともに、基準電圧値(−VA)をも入力して、デジタル信号値が基準電圧値(−VA)より小さいときには有意値を出力し、そうでないときには非有意値を出力する。
【0070】
ラッチ回路223は、比較回路221から出力された比較信号を入力するとともに、クロック生成部30から出力されたクロック信号CKをも入力して、各期間T(n)においてクロック信号CKが指示する時刻での該比較信号の値EH(n)をサンプリングしホールドして出力する。ラッチ回路224は、比較回路222から出力された比較信号を入力するとともに、クロック生成部30から出力されたクロック信号CKをも入力して、各期間T(n)においてクロック信号CKが指示する時刻での該比較信号の値EL(n)をサンプリングしホールドして出力する。
【0071】
ラッチ回路225は、イコライザ部10Bから出力されたデジタル信号を入力するとともに、クロック生成部30から出力されたクロック信号CKをも入力して、各期間T(n)においてクロック信号CKが指示する時刻での該デジタル信号の値D(n)をサンプリングしホールドして出力する。ラッチ回路226は、イコライザ部10Bから出力されたデジタル信号を入力するとともに、クロック生成部30から出力されたクロック信号CKXをも入力して、各期間T(n)においてクロック信号CKXが指示する時刻での該デジタル信号の値DX(n)をサンプリングしホールドして出力する。
【0072】
このように、サンプラ部20Bは、クロック信号CKが指示する時刻でのデジタル信号の値D(n)を出力し、クロック信号CKXが指示する時刻でのデジタル信号の値DX(n)を出力する。さらに、サンプラ部20Bは、クロック信号CKが指示する時刻でのデジタル信号値が基準電圧値(+VA)より大きいときに有意値となる値EH(n)を出力し、クロック信号CKが指示する時刻でのデジタル信号値が基準電圧値(−VA)より小さいときに有意値となる値EL(n)を出力する。
【0073】
図12は、イコライザ制御部40Bにおける処理を説明するフローチャートである。イコライザ制御部40Bは、位相モニタ部50から出力された値ENABLEを用いるとともに、変数CNT,変数EECNT,変数EE,定数CNTTHおよび定数EECNTTHを用いて、イコライザ部10Bに含まれる増幅回路212へ出力されるべき値GHを求める。変数EEの値は、図13に示される論理回路により、値EH(n)および値EL(n)から求められ、「EE(n)=EH(n)+EL(n)」と表される。
【0074】
ステップS20では、変数CNTおよび変数EECNTそれぞれの値を初期値0に設定する。続くステップS21では、位相モニタ部50から出力された値ENABLEが有意値であるか否かを判断して、値ENABLEが有意値であればステップS22に進み、そうでなければステップS21に留まる。ステップS22では、変数CNTの値に値1を加算して、その加算値を変数CNTの新たな値とする。また、ステップS22では、変数EECNTの値に変数EEの値を加算して、その加算値を変数EECNTの新たな値とする。
【0075】
続くステップS23では、変数CNTの値が定数CNTTHより大きいか否かを判定して、変数CNTの値が定数CNTTHより大きければステップS24へ進み、変数CNTの値が定数CNTTH以下であればステップS21へ戻る。すなわち、ステップS23において変数CNTの値が定数CNTTHより大きくなったと判定されるまで、ステップS21〜S23それぞれの処理は行われる。
【0076】
イコライザ制御部40BにおけるステップS21〜S23それぞれの処理は、位相モニタ部50における値ENABLEの出力と同様に、各期間T(n)に1回行われてもよいし、M期間(例えば10期間)毎に1回行われてもよい。後者の場合、ステップS22では、値Mを変数CNTの値に加算し、M期間それぞれに対して得られた変数EEの総和値を変数EECNTの値に加算する。
【0077】
ステップS24では、以下に示すような3つの場合(a)〜(c)に分けて異なる処理をする。すなわち、定数EECNTTHより変数EECNTの値が小さい場合には、値GHを増加させて、新たな値GHを増幅回路212へ通知する。変数CNTの値から定数EECNTTHを差し引いた値より変数EECNTの値が大きい場合には、値GHを減少させて、新たな値GHを増幅回路212へ通知する。また、上記の2つの場合の何れでもない場合には、値GHを維持する。そして、ステップS24の処理が終了すると、ステップS20に戻り、これまでに説明した処理を繰り返す。
【0078】
【数2】
【0079】
以上のようなイコライザ制御部40Bの処理により、一定範囲(EECNTTH 〜 CNT−EECNTTH)内に変数EECNT の値が存在するように値GHが調整され、イコライザ部10Bに含まれる増幅回路212における増幅率が調整される。このようにすることにより、イコライザ部10Bにおける高周波成分の増幅率が適正値に設定される。
【0080】
また、イコライザ制御部40Bにおいて、位相モニタ部50から出力された値ENABLEが有意値である場合(すなわち、値UP(n-9)〜UP(n)のうち少なくとも1つが有意値であり、且つ、値DN(n-9)〜DN(n)のうち少なくとも1つが有意値である場合)には、その間の値Dおよび値DNは値GHの更新の際に参照され、イコライザ部10Bにおけるデジタル信号のレベル調整量の制御は行われる。
【0081】
しかし、イコライザ制御部40Bにおいて、位相モニタ部50から出力された値ENABLEが非有意値である場合(すなわち、値UP(n-9)〜UP(n)の全てが非有意値である場合、又は、値DN(n-9)〜DN(n)の全てが非有意値である場合)には、クロック信号CKとデジタル信号との間の位相差が所定値より大きいので、その間の値Dおよび値DNは値GHの更新の際に参照されず、イコライザ部10Bにおけるデジタル信号のレベル調整量の制御は停止される。
【0082】
このようにして、第2実施形態に係るクロックデータ復元装置1Bでは、デジタル信号が伝送時に被る損失が変動する場合等にも、イコライザ部10Bにおけるデジタル信号のレベル調整量(高周波成分の増幅率)が適正値に設定されて、より正確にクロック信号およびデータが復元され得る。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本発明に係るクロックデータ復元装置1の概略構成図である。
【図2】本発明に係るクロックデータ復元装置1におけるデジタル信号のデータをサンプリングするタイミングを示す図である。
【図3】第1実施形態に係るクロックデータ復元装置1Aの構成図である。
【図4】第1実施形態に係るクロックデータ復元装置1Aにおけるデジタル信号のデータをサンプリングするタイミングを示す図である。
【図5】クロック生成部30に含まれる位相関係検出回路31の入出力値の真理値表を示す図表である。
【図6】位相関係検出回路31の回路図である。
【図7】位相モニタ部50の回路図である。
【図8】第1実施形態に係るクロックデータ復元装置1Aに含まれるイコライザ制御部40Aにおける処理を説明するフローチャートである。
【図9】第1実施形態に係るクロックデータ復元装置1Aに含まれるイコライザ制御部40Aにおける処理で用いられる変数INFLGおよび変数EDGFLGそれぞれの値を求めるための回路図である。
【図10】第2実施形態に係るクロックデータ復元装置1Bの構成図である。
【図11】第2実施形態に係るクロックデータ復元装置1Bにおけるデジタル信号のデータをサンプリングするタイミングを示す図である。
【図12】第1実施形態に係るクロックデータ復元装置1Bに含まれるイコライザ制御部40Bにおける処理を説明するフローチャートである。
【図13】第1実施形態に係るクロックデータ復元装置1Bに含まれるイコライザ制御部40Bにおける処理で用いられる変数EEの値を求めるための回路図である。
【符号の説明】
【0084】
1,1A,1B…クロックデータ復元装置、10,10A,10B…イコライザ部、20,20A,20B…サンプラ部、30…クロック生成部、40,40A,40B…イコライザ制御部、50…位相モニタ部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力したデジタル信号に基づいてクロック信号およびデータを復元する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
送信器から出力されたデジタル信号は、その送信器から伝送路を経て受信器へ伝送される間に波形が劣化することから、その受信器側においてクロック信号およびデータが復元される必要がある。このような復元を行うためのクロックデータ復元装置は、例えば特許文献1,2および3に開示されている。
【0003】
一般的なクロックデータ復元装置は、波形劣化して入力されたデジタル信号のデータを、各ビット期間の中央時刻に検出し(当該検出値をD(n)と表す。)、また、或るビットから次のビットへの遷移時刻にも検出する(当該検出値をDX(n)と表す。)。そして、クロックデータ復元装置は、これらの値D(n)および値DX(n)に基づいて、これらの値を検出するタイミングを示すクロック信号と入力デジタル信号との間の位相差が小さくなるように、クロック信号の周期または位相を調整することで、復元されたクロック信号およびデータを得ることができる。
【0004】
また、クロックデータ復元装置として、入力デジタル信号のレベルを調整して出力するイコライザ部を備えるものが知られている。イコライザ部は、入力デジタル信号のレベルを調整することで、送信器から伝送路を経て受信器へ伝送される間に被る損失を補償する。クロックデータ復元装置は、このイコライザ部によりレベル調整されたデジタル信号から上記の値D(n)および値DX(n)を検出する。
【特許文献1】特開平7−221800号公報
【特許文献2】特表2004−507963号公報
【特許文献3】特表2005−341582号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のようなイコライザ部を備えるクロックデータ復元装置は、入力信号に基づく位相・周波数制御によりクロック信号を復元するとともに、イコライザ部で入力信号波形を補正している。イコライザ部における入力信号波形の補正強度は、データの検出値に基づいて、伝送時に被る損失が変動する場合等にも最適となるよう調整される。すなわち、適切な入力信号の波形補正は、正確なデータの検出が前提となっている。
【0006】
しかし、入力デジタル信号に対して、データサンプリング時刻を指示するクロック信号の位相・周波数が大きくずれている場合には、データを正しく検出できないため、イコライザ部において適切な強度の波形補正が困難である。このため、適切な強度で波形補正がされない場合には、かえって、クロック信号の位相・周波数の復元が不正確になりやすいという場合がある。
【0007】
本発明は、上記問題点を解消する為になされたものであり、より正確にクロック信号およびデータを復元することができるクロックデータ復元装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るクロックデータ復元装置は、入力したデジタル信号に基づいてクロック信号およびデータを復元する装置であって、イコライザ部、サンプラ部、クロック生成部、イコライザ制御部および位相モニタ部を備えることを特徴とする。
【0009】
イコライザ部は、入力したデジタル信号のレベルを調整して、その調整後のデジタル信号を出力する。サンプラ部は、同一の周期Tを有するクロック信号CKおよびクロック信号CKXを入力するとともに、イコライザ部から出力されたデジタル信号を入力する。そして、サンプラ部は、当該周期の第nの期間T(n)それぞれにおいて、クロック信号CKが指示する時刻tCでのデジタル信号の値D(n)をサンプリングしホールドして出力し、クロック信号CKXが指示する時刻tXでのデジタル信号の値DX(n)をサンプリングしホールドして出力する。ただし、「tC<tX」であり、nは整数である。
【0010】
クロック生成部は、各期間T(n)において、サンプラ部から出力された値D(n)および値DX(n)に基づいて、クロック信号CKとデジタル信号との間の位相差が小さくなるように周期Tまたは位相を調整し、「tX−tC=T/2」なる関係を満たすクロック信号CKおよびクロック信号CKXをサンプラ部へ出力する。
【0011】
イコライザ制御部は、各期間T(n)において、イコライザ部から出力されたデジタル信号のレベル、または、サンプラ部から出力された値D(n)および値DX(n)に基づいて、イコライザ部におけるデジタル信号のレベル調整量の制御を行う位相モニタ部は、各期間T(n)において、サンプラ部から出力された値D(n)および値DX(n)に基づいて、クロック信号CKとデジタル信号との間の位相関係を検出し、当該位相差が所定値より大きいときに、イコライザ制御部によるデジタル信号のレベル調整量の制御を停止させる。
【0012】
このクロックデータ復元装置に入力されたデジタル信号は、先ずイコライザ部においてレベル調整されて、サンプラ部に入力される。このサンプラ部には、同一の周期Tを有するクロック信号CKおよびクロック信号CKXも入力される。そして、サンプラ部において、当該周期の第nの期間T(n)それぞれにおいて、クロック信号CKが指示する時刻でのデジタル信号の値D(n)がサンプリングしホールドされて出力され、また、クロック信号CKXが指示する時刻でのデジタル信号の値DX(n)がサンプリングしホールドされて出力される。サンプラ部から出力された値D(n)および値DX(n)は、クロック生成部および位相モニタ部それぞれに入力される。
【0013】
クロック生成部では、サンプラ部から出力された値D(n)および値DX(n)に基づいて、クロック信号CKとデジタル信号との間の位相差が小さくなるように周期Tまたは位相が調整されて、「tX−tC=T/2」なる関係を満たすクロック信号CKおよびクロック信号CKXがサンプラ部へ出力される。サンプラ部およびクロック生成部によるループ処理により、入力デジタル信号に基づいて復元されたクロック信号として、クロック信号CKまたはCKXが生成される。
【0014】
イコライザ制御部では、イコライザ部から出力されたデジタル信号のレベル、または、サンプラ部から出力された値D(n)および値DX(n)に基づいて、イコライザ部におけるデジタル信号のレベル調整量の制御が行われる。ただし、このイコライザ制御部による制御は、位相モニタ部による位相関係の検出結果に基づいて許可または停止される。すなわち、位相モニタ部では、サンプラ部から出力された値D(n)および値DX(n)に基づいて、クロック信号CKとデジタル信号との間の位相関係が検出される。そして、当該位相差が所定値より大きいときには、イコライザ制御部によるデジタル信号のレベル調整量の制御が停止され、当該位相差が所定値以下であるときには、イコライザ制御部によるデジタル信号のレベル調整量の制御が許可される。
【0015】
以上のように、本発明に係るクロックデータ復元装置では、イコライザ部、サンプラ部およびイコライザ制御部によるループ処理により、イコライザ部におけるデジタル信号のレベル調整量の制御が行われるが、一方で、クロック信号CKとデジタル信号との間の位相差が所定値より大きいときには当該制御が位相モニタ部により停止される。これにより、より正確にクロック信号およびデータが復元され得る。
【0016】
クロック生成部は、「D(n-1)≠DX(n-1)=D(n)」であるときに有意値となるUP信号、および、「D(n-1)=DX(n-1)≠D(n)」であるときに有意値となるDN信号に基づいて、周期Tまたは位相を調整して、クロック信号CKおよびクロック信号CKXを出力するのが好適である。
【0017】
位相モニタ部は、「D(n-1)≠DX(n-1)=D(n)」であるときに有意値となるUP信号、および、「D(n-1)=DX(n-1)≠D(n)」であるときに有意値となるDN信号に基づいて、クロック信号CKとデジタル信号との間の位相関係を検出するのが好適である。
【0018】
位相モニタ部は、各期間T(n)において、該期間を含む過去の連続する10期間(T(n-9)〜T(n))内にUP信号およびDN信号の何れかが有意値とならなかったときに、位相差が所定値より大きいと判定して、イコライザ制御部によるデジタル信号のレベル調整量の制御を停止させるのが好適である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、より正確にクロック信号およびデータを復元することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための最良の形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0021】
先ず、本発明に係るクロックデータ復元装置の概略構成について説明する。図1は、本発明に係るクロックデータ復元装置1の概略構成図である。クロックデータ復元装置1は、入力したデジタル信号に基づいてクロック信号およびデータを復元する装置であって、イコライザ部10、サンプラ部20、クロック生成部30、イコライザ制御部40および位相モニタ部50を備える。
【0022】
図2は、本発明に係るクロックデータ復元装置1におけるデジタル信号のデータをサンプリングするタイミングを示す図である。この図には、入力デジタル信号のアイパターンが模式的に示されており、クロック生成部30から出力されサンプラ部20に入力されるクロック信号CKおよびクロック信号CKXそれぞれのタイミングも示され、また、サンプラ部20から出力されるデジタル値D(n)および値DX(n)のタイミングも示されている。
【0023】
イコライザ部10は、入力したデジタル信号のレベルを調整して、その調整後のデジタル信号をサンプラ部20へ出力する。サンプラ部20は、同一の周期Tを有するクロック信号CKおよびクロック信号CKXを入力するとともに、イコライザ部10から出力されたデジタル信号を入力する。そして、サンプラ部20は、当該周期の第nの期間T(n)それぞれにおいて、クロック信号CKが指示する時刻tCでのデジタル信号の値D(n)をサンプリングしホールドして出力し、また、クロック信号CKXが指示する時刻tXでのデジタル信号の値DX(n)をサンプリングしホールドして出力する。ただし、「tC<tX」であり、nは整数である。
【0024】
クロック生成部30は、各期間T(n)において、サンプラ部20から出力された値D(n)および値DX(n)に基づいて、クロック信号CKとデジタル信号との間の位相差が小さくなるように周期Tまたは位相を調整し、「tX−tC=T/2」なる関係を満たすクロック信号CKおよびクロック信号CKXをサンプラ部20へ出力する。なお、クロック信号CKは、サンプラ部20においてデジタル信号のデータを各ビット期間の中央時刻で検出するタイミングを指示するものであり、クロック信号CKXは、サンプラ部20においてデジタル信号のデータを或るビットから次のビットへの遷移時刻で検出するタイミングを指示するものである。
【0025】
なお、2つのクロック信号CKおよびクロック信号CKXそれぞれは、単相であってもよいし、多相であってもよい。例えば、クロック信号CKを4相とした場合を考えると、各々の周期が4Tであって位相がπ/2づつ異なっている4つのクロック信号CK<1>,CK<2>,CK<3>,CK<4> を用い、また、これらの4つのクロック信号CK<1>〜CK<4> に対応して4つのラッチ回路をサンプラ部に設けることになる。多相とした場合、サンプラ部の回路規模が大きくなるものの、各回路ブロックに要求されるスピードは緩和される。
【0026】
イコライザ制御部40は、各期間T(n)において、イコライザ部10から出力されたデジタル信号のレベル、または、サンプラ部20から出力された値D(n)および値DX(n)に基づいて、イコライザ部10におけるデジタル信号のレベル調整量の制御を行う。位相モニタ部50は、各期間T(n)において、サンプラ部20から出力された値D(n)および値DX(n)に基づいて、クロック信号CKとデジタル信号との間の位相関係を検出する。そして、位相モニタ部50は、当該位相差が所定値より大きいときに、イコライザ制御部40によるデジタル信号のレベル調整量の制御を停止させ、当該位相差が所定値以下であるときに、イコライザ制御部40によるデジタル信号のレベル調整量の制御を許可する。
【0027】
このクロックデータ復元装置1は以下のように動作する。送信器から出力されて伝送路を経て到達した波形劣化したデジタル信号は、先ずイコライザ部10においてレベル調整されて、伝送時に被った損失が補償された後、サンプラ部20に入力される。このサンプラ部20には、同一の周期Tを有するクロック信号CKおよびクロック信号CKXも入力される。そして、サンプラ部20において、当該周期の第nの期間T(n)それぞれにおいて、クロック信号CKが指示する時刻でのデジタル信号の値D(n)がサンプリングしホールドされて出力され、また、クロック信号CKXが指示する時刻でのデジタル信号の値DX(n)がサンプリングしホールドされて出力される。サンプラ部20から出力された値D(n)および値DX(n)は、クロック生成部30および位相モニタ部50それぞれに入力される。
【0028】
クロック生成部30では、サンプラ部20から出力された値D(n)および値DX(n)に基づいて、クロック信号CKとデジタル信号との間の位相差が小さくなるように周期Tまたは位相が調整されて、「tX−tC=T/2」なる関係を満たすクロック信号CKおよびクロック信号CKXがサンプラ部20へ出力される。サンプラ部20およびクロック生成部30によるループ処理により、入力デジタル信号に基づいて復元されたクロック信号として、クロック信号CKまたはCKXが生成される。
【0029】
イコライザ制御部40では、イコライザ部10から出力されたデジタル信号のレベル、または、サンプラ部20から出力された値D(n)および値DX(n)に基づいて、イコライザ部10におけるデジタル信号のレベル調整量の制御が行われる。ただし、このイコライザ制御部40による制御は、位相モニタ部50による位相関係の検出結果に基づいて許可または停止される。すなわち、位相モニタ部50では、サンプラ部20から出力された値D(n)および値DX(n)に基づいて、クロック信号CKとデジタル信号との間の位相関係が検出される。そして、当該位相差が所定値より大きいときには、イコライザ制御部40によるデジタル信号のレベル調整量の制御が停止され、当該位相差が所定値以下であるときには、イコライザ制御部40によるデジタル信号のレベル調整量の制御が許可される。
【0030】
以上のように、本発明に係るクロックデータ復元装置1では、イコライザ部10、サンプラ部20およびイコライザ制御部40によるループ処理により、イコライザ部10におけるデジタル信号のレベル調整量の制御が行われるが、一方で、クロック信号CKとデジタル信号との間の位相差が所定値より大きいときには当該制御が位相モニタ部50により停止される。これにより、より正確にクロック信号およびデータが復元され得る。
【0031】
以下では、クロックデータ復元装置1の更に具体的な構成を、第1および第2の実施形態として説明する。第1および第2の実施形態のクロックデータ復元装置は、クロック生成部30および位相モニタ部50それぞれの構成が共通であるが、イコライザ部10の構成が相違しており、これに応じて、サンプラ部20およびイコライザ制御部50それぞれの構成も相違している。
【0032】
(第1実施形態)
図3は、第1実施形態に係るクロックデータ復元装置1Aの構成図である。この図に示されるクロックデータ復元装置1Aは、入力したデジタル信号に基づいてクロック信号およびデータを復元する装置であって、イコライザ部10A、サンプラ部20A、クロック生成部30、イコライザ制御部40Aおよび位相モニタ部50を備える。この図には、イコライザ部10A、サンプラ部20Aおよびクロック生成部30それぞれの回路構成が具体的に示されている。
【0033】
図4は、第1実施形態に係るクロックデータ復元装置1Aにおけるデジタル信号のデータをサンプリングするタイミングを示す図である。この図には、入力デジタル信号のアイパターンが模式的に示されており、クロック生成部30から出力されサンプラ部20Aに入力されるクロック信号CKおよびクロック信号CKXそれぞれのタイミングも示され、また、サンプラ部20Aから出力されるデジタル値D(n)および値DX(n)等のタイミングも示されている。
【0034】
イコライザ部10Aは、入力したデジタル信号のレベルを調整して当該調整後のデジタル信号(第1信号、第2信号)をサンプラ部20Aへ出力するものであって、4個の加算回路111〜114およびDA変換回路115を含む。DA変換回路115は、イコライザ制御部40Aから出力される値DAVALを受けてオフセット電圧値(±Voff)を発生し出力する。加算回路111,113は、入力したデジタル信号とDA変換回路115からのオフセット電圧値(−Voff)とを加算して、その加算結果である第1信号(=入力デジタル信号−Voff)を出力する。また、加算回路112,114は、入力したデジタル信号とDA変換回路115からのオフセット電圧値(+Voff)とを加算して、その加算結果である第2信号(=入力デジタル信号+Voff)を出力する。
【0035】
サンプラ部20Aは、4個のラッチ回路121〜124、2個の選択回路125,126およびラッチ回路127を含む。ラッチ回路121は、加算回路111から出力された第1信号を入力するとともに、クロック生成部30から出力されたクロック信号CKをも入力して、各期間T(n)においてクロック信号CKが指示する時刻での第1信号の値DA(n)をサンプリングしホールドして選択回路125へへ出力する。ラッチ回路122は、加算回路112から出力された第2信号を入力するとともに、クロック生成部30から出力されたクロック信号CKをも入力して、各期間T(n)においてクロック信号CKが指示する時刻での第2信号の値DB(n)をサンプリングしホールドして選択回路125へ出力する。
【0036】
ラッチ回路123は、加算回路113から出力された第1信号を入力するとともに、クロック生成部30から出力されたクロック信号CKXをも入力して、各期間T(n)においてクロック信号CKXが指示する時刻での第1信号の値DAX(n)をサンプリングしホールドして選択回路126へ出力する。ラッチ回路124は、加算回路114から出力された第2信号を入力するとともに、クロック生成部30から出力されたクロック信号CKXをも入力して、各期間T(n)においてクロック信号CKXが指示する時刻での第2信号の値DBX(n)をサンプリングしホールドして選択回路126へ出力する。
【0037】
選択回路125は、ラッチ回路121から出力された値DA(n)、ラッチ回路122から出力された値DB(n)、および、ラッチ回路127から出力された値D(n-1)を入力して、値D(n-1)がハイレベルであるときには値DA(n)を選択して値D(n)として出力し、値D(n-1)がローレベルであるときには値DB(n)を選択して値D(n)として出力する。
【0038】
選択回路126は、ラッチ回路123から出力された値DAX(n)、ラッチ回路124から出力された値DBX(n)、および、ラッチ回路127から出力された値D(n-1)を入力して、値D(n-1)がハイレベルであるときには値DAX(n)を選択して値DX(n)として出力し、値D(n-1)がローレベルであるときには値DBX(n)を選択して値DX(n)として出力する。
【0039】
ラッチ回路127は、各期間T(n-1)に選択回路125から出力された値D(n-1)を入力してホールドし、その値D(n-1)を次の期間T(n)に選択回路125,126それぞれへ出力する。
【0040】
このように、サンプラ部20Aは、各期間T(n)において、値D(n-1)がハイレベルであるときに「D(n)=DA(n)」および「DX(n-1)=DXA(n-1)」とし、値D(n-1)がローレベルであるときに「D(n)=DB(n)」および「DX(n-1)=DXB(n-1)」として、クロック信号CKが指示する時刻でのデジタル信号の値D(n)を出力し、クロック信号CKXが指示する時刻でのデジタル信号の値DX(n)を出力する。
【0041】
クロック生成部30は、サンプラ部20Aから出力された値D(n)および値DX(n)に基づいてクロック信号CKおよびクロック信号CKXを生成するものであって、位相関係検出回路(BBPHD)31、チャージポンプ回路(CP)32、ローパスフィルタ回路(LPF)33および電圧制御発振回路(VCO)34を含む。
【0042】
位相関係検出回路31は、サンプラ部20Aから出力された値D(n)および値DX(n)に基づいて、図5に示される真理値表に従う論理演算を行って、UP信号およびDN信号を出力する。すなわち、位相関係検出回路31は、「D(n-1)≠DX(n-1)=D(n)」であるときに有意値となるUP信号、および、「D(n-1)=DX(n-1)≠D(n)」であるときに有意値となるDN信号を、位相関係を表す信号として出力する。
【0043】
位相関係検出回路31は、図6に回路図が示されるように、値D(n-1)および値D(n)を入力する排他的論理和回路311、値D(n-1)および値DX(n)を入力する排他的論理和回路312、排他的論理和回路311および排他的論理和回路312それぞれの出力値を入力してUP信号を出力する論理積回路313、ならびに、排他的論理和回路311の出力値および排他的論理和回路312の出力値の論理反転値を入力してDN信号を出力する論理積回路314、を含んで構成され得る。
【0044】
UP信号が有意値であるとき、入力デジタル信号に対してクロック信号CKの位相が遅れているから、クロック信号CKおよびクロック信号CKXの位相を早める必要がある。一方、DN信号が有意値であるとき、入力デジタル信号に対してクロック信号CKの位相が進んでいるから、クロック信号CKおよびクロック信号CKXの位相を遅らせる必要がある。
【0045】
そこで、チャージポンプ回路32は、位相関係検出回路31から出力されたUP信号およびDN信号の何れが有意値であるかに応じて、充電および放電の何れかの電流パルスをローパスフィルタ回路33へ出力する。ローパスフィルタ回路33は、チャージポンプ回路32から出力された電流パルスを入力して、その入力した電流パルスが充電および放電の何れであるかによって、出力電圧値を増減する。そして、電圧制御発振回路34は、ローパスフィルタ回路33からの出力電圧値に応じた周期のクロック信号CKおよびクロック信号CKXを発生する。このようにしてクロック生成部30において生成されたクロック信号CKおよびクロック信号CKXは、UP信号およびDN信号に基づいて周期が調整されたものとなる。
【0046】
図7は、位相モニタ部50の回路図である。位相モニタ部50は、排他的論理和回路51,52、論理積回路53,54、シフトレジスタ回路55,56、論理和回路57,58、および、論理積回路59を含んで構成される。
【0047】
排他的論理和回路51は、値D(n-1)および値D(n)を入力して、これら2つの値の排他的論理和の値を出力する。排他的論理和回路52は、値D(n-1)および値DX(n)を入力して、これら2つの値の排他的論理和の値を出力する。論理積回路53は、排他的論理和回路51および排他的論理和回路52それぞれの出力値を入力して、これらの2つの値の論理積である値UP(n)を出力する。論理積回路54は、排他的論理和回路51の出力値および排他的論理和回路52の出力値の論理反転値を入力して、これらの2つの値の論理積である値DN(n)を出力する。すなわち、「D(n-1)≠DX(n-1)=D(n)」であるときに値UP(n)は有意値となり、「D(n-1)=DX(n-1)≠D(n)」であるときに値DN(n)は有意値となる
シフトレジスタ回路55は、各期間T(n)において、論理積回路53から出力された値UP(n)を入力して、その期間を含む過去の連続する10期間(T(n-9)〜T(n))の値UP(n-9)〜UP(n)を記憶し出力する。また、シフトレジスタ回路56は、各期間T(n)において、論理積回路54から出力された値DN(n)を入力して、その期間を含む過去の連続する10期間(T(n-9)〜T(n))の値DN(n-9)〜DN(n)を記憶し出力する。
【0048】
論理和回路57は、シフトレジスタ回路55から出力された値UP(n-9)〜UP(n)を入力して、これら10個の値の論理和値を出力する。論理和回路58は、シフトレジスタ回路56から出力された値DN(n-9)〜DN(n)を入力して、これら10個の値の論理和値を出力する。論理積回路59は、論理和回路57および論理和回路58それぞれから出力された値を入力して、これら2つの値の論理積である値ENABLEを出力する。
【0049】
すなわち、値UP(n-9)〜UP(n)のうち少なくとも1つが有意値であり、且つ、値DN(n-9)〜DN(n)のうち少なくとも1つが有意値であるときに、論理積回路59から出力される値ENABLEは有意値となる。一方、値UP(n-9)〜UP(n)の全てが非有意値であるとき、又は、値DN(n-9)〜DN(n)の全てが非有意値であるときに、論理積回路59から出力される値ENABLEは非有意値となる。値ENABLEが非有意値であることは、クロック信号CKとデジタル信号との間の位相差が所定値より大きいことを表している。
【0050】
なお、位相モニタ部50における値ENABLEの出力は、各期間T(n)に1回行われてもよいし、M期間(例えば10期間)毎に1回行われてもよい。前者の場合、或る期間T(n)を含む過去の連続する10期間(T(n-9)〜T(n))について値ENABLEが求められ、次の期間T(n-1)に10期間(T(n-8)〜T(n+1))について次の値ENABLEが求められる。後者の場合、或る期間T(n)を含む過去の連続する10期間(T(n-9)〜T(n))について値ENABLEが求められ、これからM期間後に10期間(T(n+M-9)〜T(n+M))について次の値ENABLEが求められる。
【0051】
UP信号およびDN信号それぞれが有意値となった期間が存在するか否かを10期間に亘って判断することとしたのは以下の理由による。すなわち、入力デジタル信号の或るビットと次のビットとの間でデータ遷移がある場合、UP信号およびDN信号のうちの一方が有意値となり他方が非有意値となる。入力デジタル信号の或るビットと次のビットとの間でデータ遷移が無い場合、UP信号およびDN信号の双方が非有意値となる。
【0052】
クロック信号CKおよびクロック信号CKXそれぞれの位相が適切であれば、或る連続する複数の期間の間に、UP信号が有意値となる期間が存在し、DN信号が有意値となる期間も存在する。しかし、クロック信号CKおよびクロック信号CKXそれぞれの位相がずれていれば、或る連続する複数の期間の間に、UP信号が常に非有意値となり、或いは、DN信号が常に非有意値となる。
【0053】
シリアルデータ通信において用いられる8B10B符号では、10ビットの間にデータ遷移が2回以上あることが保証されている。したがって、UP信号およびDN信号それぞれが有意値となった期間が存在するか否かを10期間に亘って判断することにすれば、クロック信号CKおよびクロック信号CKXそれぞれの位相が適切であれば、その10期間のうちに、UP信号が有意値となる期間が必ず存在し、DN信号が有意値となる期間も必ず存在する。
【0054】
逆に、10期間に亘ってDN信号が常に非有意値である場合、または、10期間に亘ってUP信号が常に非有意値である場合には、クロック信号CKおよびクロック信号CKXそれぞれの位相がずれていると判定され、それ故、オフセット付与量Voffの適正値からのずれが正しく検知され得ない。以上のような理由から、UP信号およびDN信号それぞれが有意値となった期間が存在するか否かを10期間に亘って判断するのが好ましい。
【0055】
位相モニタ部50から出力される値ENABLEはイコライザ制御部40Aに入力される。イコライザ制御部40Aは、この値ENABLEが有意値であるときに、イコライザ部10におけるデジタル信号のレベル調整量(すなわち、入力デジタル信号に付加されるオフセット電圧値)の制御を行う。一方、イコライザ制御部40Aは、この値ENABLEが非有意値であるときに、イコライザ部10におけるデジタル信号のレベル調整量の制御を停止する。
【0056】
図8は、イコライザ制御部40Aにおける処理を説明するフローチャートである。イコライザ制御部40Aは、位相モニタ部50から出力された値ENABLEを用いるとともに、変数INCNT,変数EDGCNT,変数INFLG,変数EDGFLG,定数INCNTTHおよび定数EDGCNTTHを用いて、イコライザ部10Aに含まれるDA変換回路115へ出力されるべき値DAVALを求める。変数INFLGおよび変数EDGFLGそれぞれの値は、図9に示される論理回路により、値D(n)および値DX(n)から求められ、「EDGFLG(n)=D(n-1)~D(n)」、「INFLG(n)=EDGFLG(n)*{D(n-2)~DX(n-1)}」と表される。ここで、演算記号「^」は排他的論理和を表す。
【0057】
ステップS10では、変数INCNTおよび変数EDGCNTそれぞれの値を初期値0に設定する。続くステップS11では、位相モニタ部50から出力された値ENABLEが有意値であるか否かを判断して、値ENABLEが有意値であればステップS12に進み、そうでなければステップS11に留まる。ステップS12では、変数INCNTの値に変数INFLGの値を加算して、その加算値を変数INCNTの新たな値とする。また、ステップS12では、変数EDGCNTの値に変数EDGFLGの値を加算して、その加算値を変数EDGCNTの新たな値とする。
【0058】
続くステップS13では、変数EDGCNTの値が定数EDGCNTTHより大きいか否かを判定して、変数EDGCNTの値が定数EDGCNTTHより大きければステップS14へ進み、変数EDGCNTの値が定数EDGCNTTH以下であればステップS11へ戻る。すなわち、ステップS13において変数EDGCNTの値が定数EDGCNTTHより大きくなったと判定されるまで、ステップS11〜S13それぞれの処理は行われる。
【0059】
イコライザ制御部40AにおけるステップS11〜S13それぞれの処理は、位相モニタ部50における値ENABLEの出力と同様に、各期間T(n)に1回行われてもよいし、M期間(例えば10期間)毎に1回行われてもよい。後者の場合、ステップS12では、M期間それぞれに対して得られた変数INFLGの総和値を変数INCNTの値に加算し、M期間それぞれに対して得られた変数EDGFLGの総和値を変数EDGCNTの値に加算する。
【0060】
ステップS14では、以下に示すような3つの場合(a)〜(c)に分けて異なる処理をする。すなわち、定数INCNTTHより変数INCNTの値が小さい場合には、値DAVALを増加させて、新たな値DAVALをDA変換回路115へ通知する。変数EDGCNTの値から定数INCNTTHを差し引いた値より変数INCNTの値が大きい場合には、値DAVALを減少させて、新たな値DAVALをDA変換回路115へ通知する。また、上記の2つの場合の何れでもない場合には、値DAVALを維持する。そして、ステップS14の処理が終了すると、ステップS10に戻り、これまでに説明した処理を繰り返す。
【0061】
【数1】
【0062】
以上のようなイコライザ制御部40Aの処理により、一定範囲(INCNTTH 〜 EDGCNT−INCNTTH)内に変数INCNT の値が存在するように値DAVALが調整され、イコライザ部10Aにおけるオフセット付与量(±Voff)が調整される。このようにすることにより、イコライザ部10Aにおけるオフセット付与量が適正値に設定される。
【0063】
また、イコライザ制御部40Aにおいて、位相モニタ部50から出力された値ENABLEが有意値である場合(すなわち、値UP(n-9)〜UP(n)のうち少なくとも1つが有意値であり、且つ、値DN(n-9)〜DN(n)のうち少なくとも1つが有意値である場合)には、その間の値Dおよび値DNは値DAVALの更新の際に参照され、イコライザ部10Aにおけるデジタル信号のレベル調整量の制御は行われる。
【0064】
しかし、イコライザ制御部40Aにおいて、位相モニタ部50から出力された値ENABLEが非有意値である場合(すなわち、値UP(n-9)〜UP(n)の全てが非有意値である場合、又は、値DN(n-9)〜DN(n)の全てが非有意値である場合)には、クロック信号CKとデジタル信号との間の位相差が所定値より大きいので、その間の値Dおよび値DNは値DAVALの更新の際に参照されず、イコライザ部10Aにおけるデジタル信号のレベル調整量の制御は停止される。
【0065】
このようにして、第1実施形態に係るクロックデータ復元装置1Aでは、デジタル信号が伝送時に被る損失が変動する場合等にも、イコライザ部10Aにおけるデジタル信号のレベル調整量(オフセット付与量)が適正値に設定されて、より正確にクロック信号およびデータが復元され得る。
【0066】
(第2実施形態)
図10は、第2実施形態に係るクロックデータ復元装置1Bの構成図である。この図に示されるクロックデータ復元装置1Bは、入力したデジタル信号に基づいてクロック信号およびデータを復元する装置であって、イコライザ部10B、サンプラ部20B、クロック生成部30、イコライザ制御部40Bおよび位相モニタ部50を備える。この図には、イコライザ部10Bおよびサンプラ部20Bそれぞれの回路構成が具体的に示されている。なお、第2実施形態におけるクロック生成部30および位相モニタ部50それぞれの構成は、第1実施形態の場合と同様である。
【0067】
図11は、第2実施形態に係るクロックデータ復元装置1Bにおけるデジタル信号のデータをサンプリングするタイミングを示す図である。この図には、入力デジタル信号のアイパターンが模式的に示されており、クロック生成部30から出力されサンプラ部20Bに入力されるクロック信号CKおよびクロック信号CKXそれぞれのタイミングも示され、また、サンプラ部20Bから出力されるデジタル値D(n),値DX(n),値EH(n)および値EL(n)のタイミングも示されている。
【0068】
イコライザ部10Bは、入力したデジタル信号のレベルを調整して当該調整後のデジタル信号(高周波成分を増幅した信号)をサンプラ部20Bへ出力するものであって、ハイパスフィルタ回路(HPF)211、増幅回路212および加算回路213を含む。ハイパスフィルタ回路211は、入力デジタル信号のうち高周波成分を選択的に通過させて増幅回路212へ出力する。増幅回路212は、ハイパスフィルタ回路211から出力された信号を増幅して加算回路213へ出力する。この増幅回路212における利得は、イコライザ部10Bから出力される値GHを受けて設定される。そして、加算回路213は、入力デジタル信号を入力するとともに、増幅回路212から出力された信号を入力して、これらを加算した結果をサンプラ部20Bへ出力する。イコライザ部10Bから出力されてサンプラ部20Bへ入力されるデジタル信号は、入力デジタル信号の高周波成分が増幅されたものであり、伝送時にデジタル信号の高周波成分が被った損失が補償されたものとなる。
【0069】
サンプラ部20Bは、2個の比較回路221,222および4個のラッチ回路223〜226を含む。比較回路221は、イコライザ部10Bから出力されたデジタル信号を入力するとともに、基準電圧値(+VA)をも入力して、デジタル信号値が基準電圧値(+VA)より大きいときには有意値を出力し、そうでないときには非有意値を出力する。比較回路222は、イコライザ部10Bから出力されたデジタル信号を入力するとともに、基準電圧値(−VA)をも入力して、デジタル信号値が基準電圧値(−VA)より小さいときには有意値を出力し、そうでないときには非有意値を出力する。
【0070】
ラッチ回路223は、比較回路221から出力された比較信号を入力するとともに、クロック生成部30から出力されたクロック信号CKをも入力して、各期間T(n)においてクロック信号CKが指示する時刻での該比較信号の値EH(n)をサンプリングしホールドして出力する。ラッチ回路224は、比較回路222から出力された比較信号を入力するとともに、クロック生成部30から出力されたクロック信号CKをも入力して、各期間T(n)においてクロック信号CKが指示する時刻での該比較信号の値EL(n)をサンプリングしホールドして出力する。
【0071】
ラッチ回路225は、イコライザ部10Bから出力されたデジタル信号を入力するとともに、クロック生成部30から出力されたクロック信号CKをも入力して、各期間T(n)においてクロック信号CKが指示する時刻での該デジタル信号の値D(n)をサンプリングしホールドして出力する。ラッチ回路226は、イコライザ部10Bから出力されたデジタル信号を入力するとともに、クロック生成部30から出力されたクロック信号CKXをも入力して、各期間T(n)においてクロック信号CKXが指示する時刻での該デジタル信号の値DX(n)をサンプリングしホールドして出力する。
【0072】
このように、サンプラ部20Bは、クロック信号CKが指示する時刻でのデジタル信号の値D(n)を出力し、クロック信号CKXが指示する時刻でのデジタル信号の値DX(n)を出力する。さらに、サンプラ部20Bは、クロック信号CKが指示する時刻でのデジタル信号値が基準電圧値(+VA)より大きいときに有意値となる値EH(n)を出力し、クロック信号CKが指示する時刻でのデジタル信号値が基準電圧値(−VA)より小さいときに有意値となる値EL(n)を出力する。
【0073】
図12は、イコライザ制御部40Bにおける処理を説明するフローチャートである。イコライザ制御部40Bは、位相モニタ部50から出力された値ENABLEを用いるとともに、変数CNT,変数EECNT,変数EE,定数CNTTHおよび定数EECNTTHを用いて、イコライザ部10Bに含まれる増幅回路212へ出力されるべき値GHを求める。変数EEの値は、図13に示される論理回路により、値EH(n)および値EL(n)から求められ、「EE(n)=EH(n)+EL(n)」と表される。
【0074】
ステップS20では、変数CNTおよび変数EECNTそれぞれの値を初期値0に設定する。続くステップS21では、位相モニタ部50から出力された値ENABLEが有意値であるか否かを判断して、値ENABLEが有意値であればステップS22に進み、そうでなければステップS21に留まる。ステップS22では、変数CNTの値に値1を加算して、その加算値を変数CNTの新たな値とする。また、ステップS22では、変数EECNTの値に変数EEの値を加算して、その加算値を変数EECNTの新たな値とする。
【0075】
続くステップS23では、変数CNTの値が定数CNTTHより大きいか否かを判定して、変数CNTの値が定数CNTTHより大きければステップS24へ進み、変数CNTの値が定数CNTTH以下であればステップS21へ戻る。すなわち、ステップS23において変数CNTの値が定数CNTTHより大きくなったと判定されるまで、ステップS21〜S23それぞれの処理は行われる。
【0076】
イコライザ制御部40BにおけるステップS21〜S23それぞれの処理は、位相モニタ部50における値ENABLEの出力と同様に、各期間T(n)に1回行われてもよいし、M期間(例えば10期間)毎に1回行われてもよい。後者の場合、ステップS22では、値Mを変数CNTの値に加算し、M期間それぞれに対して得られた変数EEの総和値を変数EECNTの値に加算する。
【0077】
ステップS24では、以下に示すような3つの場合(a)〜(c)に分けて異なる処理をする。すなわち、定数EECNTTHより変数EECNTの値が小さい場合には、値GHを増加させて、新たな値GHを増幅回路212へ通知する。変数CNTの値から定数EECNTTHを差し引いた値より変数EECNTの値が大きい場合には、値GHを減少させて、新たな値GHを増幅回路212へ通知する。また、上記の2つの場合の何れでもない場合には、値GHを維持する。そして、ステップS24の処理が終了すると、ステップS20に戻り、これまでに説明した処理を繰り返す。
【0078】
【数2】
【0079】
以上のようなイコライザ制御部40Bの処理により、一定範囲(EECNTTH 〜 CNT−EECNTTH)内に変数EECNT の値が存在するように値GHが調整され、イコライザ部10Bに含まれる増幅回路212における増幅率が調整される。このようにすることにより、イコライザ部10Bにおける高周波成分の増幅率が適正値に設定される。
【0080】
また、イコライザ制御部40Bにおいて、位相モニタ部50から出力された値ENABLEが有意値である場合(すなわち、値UP(n-9)〜UP(n)のうち少なくとも1つが有意値であり、且つ、値DN(n-9)〜DN(n)のうち少なくとも1つが有意値である場合)には、その間の値Dおよび値DNは値GHの更新の際に参照され、イコライザ部10Bにおけるデジタル信号のレベル調整量の制御は行われる。
【0081】
しかし、イコライザ制御部40Bにおいて、位相モニタ部50から出力された値ENABLEが非有意値である場合(すなわち、値UP(n-9)〜UP(n)の全てが非有意値である場合、又は、値DN(n-9)〜DN(n)の全てが非有意値である場合)には、クロック信号CKとデジタル信号との間の位相差が所定値より大きいので、その間の値Dおよび値DNは値GHの更新の際に参照されず、イコライザ部10Bにおけるデジタル信号のレベル調整量の制御は停止される。
【0082】
このようにして、第2実施形態に係るクロックデータ復元装置1Bでは、デジタル信号が伝送時に被る損失が変動する場合等にも、イコライザ部10Bにおけるデジタル信号のレベル調整量(高周波成分の増幅率)が適正値に設定されて、より正確にクロック信号およびデータが復元され得る。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本発明に係るクロックデータ復元装置1の概略構成図である。
【図2】本発明に係るクロックデータ復元装置1におけるデジタル信号のデータをサンプリングするタイミングを示す図である。
【図3】第1実施形態に係るクロックデータ復元装置1Aの構成図である。
【図4】第1実施形態に係るクロックデータ復元装置1Aにおけるデジタル信号のデータをサンプリングするタイミングを示す図である。
【図5】クロック生成部30に含まれる位相関係検出回路31の入出力値の真理値表を示す図表である。
【図6】位相関係検出回路31の回路図である。
【図7】位相モニタ部50の回路図である。
【図8】第1実施形態に係るクロックデータ復元装置1Aに含まれるイコライザ制御部40Aにおける処理を説明するフローチャートである。
【図9】第1実施形態に係るクロックデータ復元装置1Aに含まれるイコライザ制御部40Aにおける処理で用いられる変数INFLGおよび変数EDGFLGそれぞれの値を求めるための回路図である。
【図10】第2実施形態に係るクロックデータ復元装置1Bの構成図である。
【図11】第2実施形態に係るクロックデータ復元装置1Bにおけるデジタル信号のデータをサンプリングするタイミングを示す図である。
【図12】第1実施形態に係るクロックデータ復元装置1Bに含まれるイコライザ制御部40Bにおける処理を説明するフローチャートである。
【図13】第1実施形態に係るクロックデータ復元装置1Bに含まれるイコライザ制御部40Bにおける処理で用いられる変数EEの値を求めるための回路図である。
【符号の説明】
【0084】
1,1A,1B…クロックデータ復元装置、10,10A,10B…イコライザ部、20,20A,20B…サンプラ部、30…クロック生成部、40,40A,40B…イコライザ制御部、50…位相モニタ部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力したデジタル信号に基づいてクロック信号およびデータを復元する装置であって、
入力したデジタル信号のレベルを調整して、その調整後のデジタル信号を出力するイコライザ部と、
同一の周期Tを有するクロック信号CKおよびクロック信号CKXを入力するとともに、前記イコライザ部から出力されたデジタル信号を入力し、当該周期の第nの期間T(n)それぞれにおいて、前記クロック信号CKが指示する時刻tCでの前記デジタル信号の値D(n)をサンプリングしホールドして出力し、前記クロック信号CKXが指示する時刻tXでの前記デジタル信号の値DX(n)をサンプリングしホールドして出力するサンプラ部と(ただし、tC<tX、nは整数)、
各期間T(n)において、前記サンプラ部から出力された値D(n)および値DX(n)に基づいて、前記クロック信号CKと前記デジタル信号との間の位相差が小さくなるように周期Tまたは位相を調整し、「tX−tC=T/2」なる関係を満たす前記クロック信号CKおよび前記クロック信号CKXを前記サンプラ部へ出力するクロック生成部と、
各期間T(n)において、前記イコライザ部から出力されたデジタル信号のレベル、または、前記サンプラ部から出力された値D(n)および値DX(n)に基づいて、前記イコライザ部における前記デジタル信号のレベル調整量の制御を行うイコライザ制御部と、
各期間T(n)において、前記サンプラ部から出力された値D(n)および値DX(n)に基づいて、前記クロック信号CKと前記デジタル信号との間の位相関係を検出し、当該位相差が所定値より大きいときに、前記イコライザ制御部による前記デジタル信号のレベル調整量の制御を停止させる位相モニタ部と、
を備えることを特徴とするクロックデータ復元装置。
【請求項2】
前記クロック生成部は、「D(n-1)≠DX(n-1)=D(n)」であるときに有意値となるUP信号、および、「D(n-1)=DX(n-1)≠D(n)」であるときに有意値となるDN信号に基づいて、周期Tまたは位相を調整して、前記クロック信号CKおよび前記クロック信号CKXを出力する、ことを特徴とする請求項1記載のクロックデータ復元装置。
【請求項3】
前記位相モニタ部は、「D(n-1)≠DX(n-1)=D(n)」であるときに有意値となるUP信号、および、「D(n-1)=DX(n-1)≠D(n)」であるときに有意値となるDN信号に基づいて、前記クロック信号CKと前記デジタル信号との間の位相関係を検出する、ことを特徴とする請求項1記載のクロックデータ復元装置。
【請求項4】
前記位相モニタ部は、各期間T(n)において、該期間を含む過去の連続する10期間(T(n-9)〜T(n))内に前記UP信号および前記DN信号の何れかが有意値とならなかったときに、位相差が所定値より大きいと判定して、前記イコライザ制御部による前記デジタル信号のレベル調整量の制御を停止させる、ことを特徴とする請求項3記載のクロックデータ復元装置。
【請求項1】
入力したデジタル信号に基づいてクロック信号およびデータを復元する装置であって、
入力したデジタル信号のレベルを調整して、その調整後のデジタル信号を出力するイコライザ部と、
同一の周期Tを有するクロック信号CKおよびクロック信号CKXを入力するとともに、前記イコライザ部から出力されたデジタル信号を入力し、当該周期の第nの期間T(n)それぞれにおいて、前記クロック信号CKが指示する時刻tCでの前記デジタル信号の値D(n)をサンプリングしホールドして出力し、前記クロック信号CKXが指示する時刻tXでの前記デジタル信号の値DX(n)をサンプリングしホールドして出力するサンプラ部と(ただし、tC<tX、nは整数)、
各期間T(n)において、前記サンプラ部から出力された値D(n)および値DX(n)に基づいて、前記クロック信号CKと前記デジタル信号との間の位相差が小さくなるように周期Tまたは位相を調整し、「tX−tC=T/2」なる関係を満たす前記クロック信号CKおよび前記クロック信号CKXを前記サンプラ部へ出力するクロック生成部と、
各期間T(n)において、前記イコライザ部から出力されたデジタル信号のレベル、または、前記サンプラ部から出力された値D(n)および値DX(n)に基づいて、前記イコライザ部における前記デジタル信号のレベル調整量の制御を行うイコライザ制御部と、
各期間T(n)において、前記サンプラ部から出力された値D(n)および値DX(n)に基づいて、前記クロック信号CKと前記デジタル信号との間の位相関係を検出し、当該位相差が所定値より大きいときに、前記イコライザ制御部による前記デジタル信号のレベル調整量の制御を停止させる位相モニタ部と、
を備えることを特徴とするクロックデータ復元装置。
【請求項2】
前記クロック生成部は、「D(n-1)≠DX(n-1)=D(n)」であるときに有意値となるUP信号、および、「D(n-1)=DX(n-1)≠D(n)」であるときに有意値となるDN信号に基づいて、周期Tまたは位相を調整して、前記クロック信号CKおよび前記クロック信号CKXを出力する、ことを特徴とする請求項1記載のクロックデータ復元装置。
【請求項3】
前記位相モニタ部は、「D(n-1)≠DX(n-1)=D(n)」であるときに有意値となるUP信号、および、「D(n-1)=DX(n-1)≠D(n)」であるときに有意値となるDN信号に基づいて、前記クロック信号CKと前記デジタル信号との間の位相関係を検出する、ことを特徴とする請求項1記載のクロックデータ復元装置。
【請求項4】
前記位相モニタ部は、各期間T(n)において、該期間を含む過去の連続する10期間(T(n-9)〜T(n))内に前記UP信号および前記DN信号の何れかが有意値とならなかったときに、位相差が所定値より大きいと判定して、前記イコライザ制御部による前記デジタル信号のレベル調整量の制御を停止させる、ことを特徴とする請求項3記載のクロックデータ復元装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2008−99017(P2008−99017A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−278994(P2006−278994)
【出願日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【出願人】(399011195)ザインエレクトロニクス株式会社 (61)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【出願人】(399011195)ザインエレクトロニクス株式会社 (61)
【Fターム(参考)】
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