説明

シリコン基板上にIII族窒化物材料を成長させるための方法及びそのための装置

【課題】シリコン基板上にIII族窒化物材料を成長させるための新規な方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、ポーラス状の最上層を有するシリコン基板を含む基板と、
上記最上層上の、Ge材料からなる第2層と、
上記第2層上の、III族窒化物材料からなる別の層とを有する装置に関する。
さらに、本発明は、高品質のIII族窒化物層のエピタキシャル成長に非常に適した方法、中間層若しくはテンプレートデバイスに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコン基板上にIII族窒化物材料を成長させる方法及びその方法により得られる装置に関する。また、本発明は品質が改善されたエピタキシャル層を有する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
市販のGaN基板が不足しているため、今日GaNヘテロ構造を主にサファイア若しくはSiC上に成長させている。Siは非常に魅力的な基板であるため、ますます大きな興味が示されている。その主な利点は、熱伝導率が許容範囲にあること(SiCの熱伝導率の半分である。)及び大きな体積及び大きなウエハサイズで入手することができることである。サファイア及びSiC基板と比較した場合、Siの最も重要な利点は、非常にコストが低いということである。
【0003】
Kuykendall(ナノレター2003,Vol.3,No.8,1063-10)は、例えば、MOCVDによりシリコン及びサファイア基板上にGaNナノワイヤを形成することを開示している。
【0004】
しかし、Si上に直接高品質のエピタキシャルGaN層を成長させることに関して直接的に記載されていない。
【0005】
Si及びGaN間の格子不整合が大きいことにより、GaN層の転位密度が高くなる。サファイア上でGaNを成長させるために開発された適切な成長方法を適用することにより、この高い転位密度を劇的に減少させることができる。
【0006】
GaNとSiとの間の熱膨張係数の大きな相違により、成長温度から室温まで冷却する間に、GaNフィルム内に大きな引張応力が誘発され、それによりGaN層にクラックが発生する。クラック現象は、1μm以上の膜厚を有する層にとって問題となり、これにより、光電子装置の性能に対して弊害をもたらす。
【0007】
Si基板上に直接GaNを成長させることに対する他の問題点は、Ga及びSiのいわゆるメルトバックエッチングプロセスである。高温において、Ga及びSiは、合金を形成する。この合金は、激しくて速いエッチング反応を起こし、このエッチング反応によりこの基板及びGaN層を破壊する。これにより非常に荒い表面となる。
【0008】
また、別の問題点は、Si基板上に酸化物が形成され、特別の注意、例えば、基板上にGaNを成長させるため、反応炉内にサンプルを導入する直前に注意深く洗浄すること等が必要となることである
【0009】
Si上にGaNを成長させることに対する他の問題点は、基板が湾曲することである。GaNの層がSi上に形成された時、GaN層に発生した応力は、続いてSi基板にも応力を発生させる。このため、Si基板の変形若しくはいわゆる'湾曲'が発生することになる。
【0010】
特許出願WO03/054939号明細書において、Aixtronは、シリコン基板等の非III-V基板上にIII-V基板を成長させる方法を開示している。III-Vバッファ層若しくはIII-Vジャーミネーション層(III-V germination layer)をMOCVDにより基板上に成長させる。
【0011】
活性GaN層の成長のため、Boufaden等は薄いAlN層を使用して、GaN及びポーラスSi/Si基板間において濡れ特性(wetting)を改良することを提案している(マイクロエレクトロニックジャーナル34(2003)843-848)。AlN層は、GaNとSiとの間の格子不整合を2.5%まで減少させる。また、Orita等は、ポーラスSi層(PS)及びGaNエピタキシャル層との間のAlNバッファ層をUS−A−6344375において提案している。
【0012】
クラック及び貫通転移(threading dislocation)を減少させる様々な方法を「Si層上のGaNベース装置(A.Krost,A.Dadgar,Phys.Stat.Sol.(a),Vol.194,Issue2,2002,pp.361
-375)」において参照できる。
【0013】
上述の問題を解決するために提案された様々な手段を2つのカテゴリーに分類することができる。完全にin-situな成長方法を使用したもの、およびex-situなプロセス工程が必要なものである。このex-situなプロセスは、次の成長工程に続く。前者のグループは、応力工学に基づき、クラックを防止し、そして活性GaN層に存在する貫通転位密度をできるだけ多く減少させる。前者のグループは、適切なシード層、スーパー層、若しくは中間層を使用する。後者のグループは、熱クラック及び貫通転移欠陥の幾何分布を制御することを目的とする。ELOG、ペンデオ(Pendeo)、カンチレバーエピタキシ(Cantilever
Epitaxy)の全てにより高品質の領域とすることができ、一方他の方法は、応力を発生させる全ての貫通転移及び/又はクラックを一カ所に集中させる。
【特許文献1】WO03/054939
【特許文献2】US−A−6344375
【非特許文献1】ナノレター2003,Vol.3,No.8,1063-10
【非特許文献2】マイクロエレクトロニックジャーナル34(2003)843-848
【非特許文献3】Phys.Stat.Sol.(a),Vol.194,Issue2,2002,pp.361-375)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、従来の解決手段の問題点を克服するための、シリコン基板上にIII族窒化物材料を成長させる新規な方法を提供することを目的とする。
【0015】
また、本発明は、高品質のIII族窒化物エピタキシャル層を備える装置を提供することを目的とする。
【0016】
さらに、本発明は、上記高品質のIII族窒化物エピタキシャル層の成長のための、適切な中間テンプレートデバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
第1発明では、
ポーラス最上層を有するシリコン基板を備える基板と、
上記最上層上に配置された、Ge材料からなる第2層と、
上記第2層の上のIII族窒化物材料からなる別の層とを備える装置を開示している。
【0018】
本明細書の「ポーラス状の最上層」という用語により、他の最上層の中で、基本的にポーラスシリコン(PS)からなる最上層だけでなく、サブマイクロオーダでパターニングされた2次元的若しくは溝付きの(castellated)最上層などの人為的に作製されたポーラス材料からなる最上層をも意味する。
【0019】
そのような「ポーラス状の最上層」により、荒くて、ザラザラした(textured)、非平面的な、好ましくは3D構造の表面さらにしなやかな骨格与えられる。そのようなポーラス状の最上層の下にボイド、バブル、若しくは封入物(inclusion)が存在してもよい。ポーラス状の最上層の表面でポアを閉じ込めることにより、ボイド、バブル、封入物若しくはマイクロポア等を形成することができる。
【0020】
「ポーラス状の最上層」は、ポアの少なくとも一部(できれば略全部)が、上記最上層の表面において開口しているが、上記表面において上記ポアの少なくとも一部が閉じていてもよい。別の実施の形態では、全てのポアが閉じられ、ボイド、バブル、封入物若しくはマイクロポア基板内に形成されていてもよい。
【0021】
第1発明のある実施の形態では、これ以前の実施の形態に記載された装置であって、上記ポーラス状最上層が、ボイド、封入物、バブル若しくはマイクロポア等の、少なくとも一部が閉じられたポアを有することを特徴とする装置を開示している。
【0022】
本発明の好ましい実施の形態に係るポーラス最上層に、空隙率の勾配が存在してもよい。ポアのサイズ及び/又はポアの量は、上記最上層の表面から離れる方向に増加することが好ましい。
【0023】
少なくとも2つの空隙率を有する最上層が好ましい。これは、本明細書において、異なる空隙率を有する少なくとも2つのサブ基板が上記最上層に存在することを意味する。この差異は、ポアのサイズ及び/又は量にある。
【0024】
高い空隙率と低い空隙率を有する積層体を有してもよい。高い空隙率を有する層と低い空隙率を有する層とを入れ替えてもよい。小さなサイズのポアが存在すること、及び/又は少量のポアが存在すること(低空隙率)と比較して、高い空隙率は、大きなポアが存在すること、及び/又は大量のポアが存在することを意味する。高い空隙率及び低い空隙率の層を作製する方法は、この技術分野において知られている。
【0025】
例えば、水素雰囲気における高温のアニールにより、高い空隙率のサブ基板の下に、シリコン基板に接触するように、分離した層を作製することが好ましい。この分離した層は、高い空隙率を有する層であり、機械的に非常に脆弱である。この層は、小さな機械的力により、即ち超音波処理若しくは引張り処理(pulling)により容易に破壊され得る(例えばEP1132952を参照のこと)。
【0026】
本発明に係るポーラス状最上層は、一般的に10%〜90%の空隙率を有する。このポーラス状最上層は、一般的に10nm〜10μm、10nm〜3μmの間の膜厚を有する。
【0027】
本発明に係る「ポーラス状最上層」を、成長の後再び緩和させてもよい。さらに、応力解放によりエピタキシャル層をサブ基板から分離してもよい。
【0028】
「Ge材料からなる層」は、少なくともGeを含有する材料からなる層を意味する。
【0029】
第1発明の好ましい実施の形態では、それ以前の実施の形態に記載した装置であって、上記第2層が、SiGe材料(少なくともSiGeを含む材料)からなることを特徴とする装置を開示している。この第2層はSiGe層であってもよい。Ge材料、好ましくはSiGe材料からなる層の組成は任意ではあるが濃度勾配が付けられている。上記(濃度勾配の付いた)第2層の材料中のGe濃度は、基板から離れる方向に増加することが好ましい。
【0030】
第1発明の好ましい実施の形態では、これ以前の実施の形態のいずれかに記載した装置であって、III族窒化物材料に少なくともGaNが含まれることを特徴とする装置を開示している。第1発明の好ましい実施の形態では、これ以前の実施の形態のいずれかに記載された装置であって、III族窒化物材料がGaNであることを特徴とする装置を開示している。
【0031】
別の実施の形態では、上記III族窒化物材料は、少なくともAlNを含んでいても良いし、若しくはAlNであってもよい。他に、例えば少なくともAlGaNを含有するIII族窒化物エピタキシャル層を成長させることも可能である。
【0032】
好ましい実施の形態では、これ以前の実施の形態のいずれかに記載された装置であって、上記第2層が上記最上層と直接接触している装置を開示している。好ましい実施の形態では、それ以前の実施の形態に記載された装置であって、例えばGaN層等のIII族窒化物層が、上記第2層と直接接触している装置を開示している。
【0033】
第1発明のある実施の形態では、これ以前の実施の形態のいずれかに記載された装置であって、第2層(この第2層はSiGe等のGe材料からなる。)は、1nm〜1000nm若しくは2000nmの間の膜厚を、好ましくは1nm〜500nmの間の膜厚を、さらに好ましくは1nm〜300nmの間の膜厚を、さらに好ましくは10nm〜200nmの膜厚を有する装置を開示している。
【0034】
Ge材料層の膜厚は、1nm〜100nm、1nm〜50nm、1nm〜20nm、1nm〜15nm、1nm〜10nmであることが好ましい。Ge材料を含有する層の膜厚は、好ましくは1nm〜20nm、より好ましくは5nm〜15nm、最も好ましくは6nm〜12nmである。
【0035】
本発明に係る好ましい実施の形態では、本発明に係る装置であって、上記最上層が、本発明に係るポーラス状最上層であり、上記第2層がSiGe材料(例えばSiGe層)からなり、さらに別の層がGaN層であることを特徴とする装置を開示している。SiGe材料からなる層(例えばSiGe層)は、上記最上層と直接接触していることが好ましい。また、上記GaN層は、この第2層と直接接触していることが好ましい。ここに記載された実施の形態の第2層の膜厚は、1nm〜2μm、1nm〜1000nm、1nm〜500nm、1nm〜300nm、10nm〜200nmの間にあることが好ましい。
【0036】
上記最上層内のポアは、開口したポアであっても良いし、若しくは閉口したポア及び開口したポアを組み合わせたものが存在してもよい。本発明に係る他の特定の好ましい実施の形態では、本発明に係るポーラス状最上層は、少なくとも一部に閉じたポアを含み、上記第2層がSiGe材料(例えばSiGe層)からなり、上記別の層はGaN層であることを特徴とする装置である。実質的に全てのポア(ポアの70%、80%、90%若しくは95%以上)は、閉口したポアであってもよい。
【0037】
閉口したポアの具体例として、バブル、封入物、ボイド若しくはマイクロポアが含まれるが、これらに限定されるものではない。ポーラス状のSi基板における初期のポアの直径と比較して、マイクロポアは、サイズが減少する小さな直径を有する。これは、例えば、III族窒化物層の成長の前のアニール工程のためである。アニール工程の温度は、III族窒化物材料を成長させる工程の温度より高い。GaNの成長温度は、500〜1300℃、約1100℃、約1050℃である。一方、アニールのための温度は、1050℃以上、1100℃以上、好ましくは1100℃〜1200℃である。
【0038】
本発明の好ましい実施の形態では、本発明に係る装置であって、第2層がGeからなる層であるか、若しくは濃度勾配の付いたSiGe層からなる層であり、さらに別の層がGaN層であることを特徴とする装置を開示している。濃度勾配の付いたSiGeにおけるGe濃度は、上記基板から離れる方向に増加することが好ましい。
【0039】
以前の実施の形態のいずれかに記載された装置は、さらに中間層(第3層)を備えることが好ましい。この中間層は、第2層(Ge材料からなる層、例えばSiGe材料等)とIII族窒化物層(別の層)との間に存在する。この中間層は、III族窒化物層の成長のためのベースとして、若しくはIII族窒化物層の成長が開始する層として機能するように配置されていることが好ましい。この中間層は、核形成層の一種であることが好ましい。中間層は、1nm〜200nm、1nm〜100nm、1nm〜50nmの間の範囲の膜厚を有する層であってもよい。この中間層は、平坦な連続する層であっても良いし、若しくは例えばアイランドを有する不連続層であってもよい。この中間層はAlN層であってもよい。
【0040】
本発明に係る他の実施の形態では、本発明に係る装置であって、上記第2層がGeからなる層であるか、若しくは濃度勾配の付いたSiGeからなる層であり、上記中間層はAlNからなる層であり、さらに上記別の層はGaN層であることを特徴とする装置を開示している。濃度勾配の付いたSiGeにおけるGe濃度は、上記基板から離れる方向に増加することが好ましい。本発明の他の実施の形態では、上記第2層がSiGeからなる層であり、上記別の層がAlNであることを特徴とする装置を開示している。
【0041】
本発明は、これ以前の実施の形態のいずれかに記載された発明に係る装置を含む、FET、LED、レーザダイオード、HEMT(高電子移動度トランジスタ)若しくはヘテロ接合パイポーラトランジスタに関連する。
【0042】
第1発明の特定の実施の形態では、以前の実施の形態のいずれかに記載された装置であって、電子回路が上記シリコン基板上に集積された装置を開示している。上記装置には、III族窒化物層に形成された光学電子装置若しくはFETが含まれていても良い。
【0043】
第2発明は、シリコン上にIII族窒化物材料を含む装置を作製する方法であって、
(定義されたような)ポーラス状の最上層を含むシリコン基板を準備する工程と、
上記ポーラス状の最上層を有する上記シリコン基板にGe含有物質を接触させ、それにより上記最上層上にGe材料層(第2層)を形成する工程と、
Ge材料層を有するシリコン基板にIII族元素含有物質及びN含有物質を接触させ、それにより上記第2層上にIII族窒化物材料からなる別の層を形成する工程とを含む方法に関する(図1参照)。
【0044】
第2発明の好ましい実施の形態では、これ以前の実施の形態のいずれかに記載された方法であって、上記方法が、Ge材料層を有するシリコン基板にIII族元素含有物質及びN含有物質を接触させる工程より前に、Ge材料からなる層を熱的にアニールする工程(図1の任意の工程)を含むことを特徴とする方法を開示している。熱的にアニールする工程は、500〜1300℃の間の温度で行うことが好ましく、500℃〜1100℃の間の温度で行うことがさらに好ましい。
【0045】
ポーラス状の最上層を有するシリコン基板にGe含有物質を接触させる工程を、プラズマ気相成長法(PECVD)、熱蒸着、閉空間蒸気伝達法(close space vapour transport)、若しくは分子ビームエピタキシ法により実行することが好ましい。
【0046】
上記第2層の成長の後、予め決定された期間(即ち数時間、数週間、数ヶ月、数年)に亘って、この中間装置を保管してもよい。これは、保護雰囲気(N雰囲気等)の下この装置を保管する必要はない。これ以前の実施の形態のいずれかに記載された方法であって、上記最上層に第2層を形成する工程の後、中間装置が保管されることを特徴とする方法を開示している。
【0047】
Ge材料の層を含むシリコン基板にIII族元素含有物質及びN含有物質を接触させる工程を有機金属化学気相成長法(MOCVD)プロセスにより実行することが好ましい。この工程は、一般的に500℃〜1300℃の間の温度、1000℃〜1100℃の間の温度で実行し、1050℃で実行することが好ましい。別の実施の形態では、Ge材料層を有するシリコン基板にIII族元素含有物質及びN含有物質を接触させる工程を、分子ビームエピタキシ(MBE)若しくはハイドライド気相エピタキシー法(HVPE)により実行する。
【0048】
別の実施の形態では、Ge材料層を有するシリコン基板にIII族元素含有物質及びN含有物質を接触させる工程に先行してアニール工程を行ってもよい。アニール工程により、安定な層を形成することができる。例えば、ポーラス状最上層及び第2層の構造体をアニール工程の間変化させてもよい。その結果として、Ge材料の層を有するシリコン基板にIII族元素含有物質及びN含有物質を接触させる工程の間、下地層は、構造的な変化(これに限定されるわけではないが、例えばポア構造の変化)に対して影響を受けにくい。また、アニール工程の後、第2層はSiGeからなる層となるであろう。
【0049】
第2発明の好ましい実施の形態では、これ以前の実施の形態のいずれかに記載された方法であって、III族元素がGaであることを特徴とする方法を開示している。最も好ましくは、III族窒化物はGaNである。III族窒化物材料はAlN若しくはAlGaNであってもよい。
【0050】
第2発明の他の好ましい実施の形態では、これ以前の実施の形態のいずれかに記載された方法であって、III族元素がAlであり、III族窒化物がAlNであることを特徴とする方法を開示している。
【0051】
第2発明の好ましい実施の形態では、これ以前の実施の形態のいずれかに記載された方法であって、上記方法が、上記のポーラス状最上層を有するシリコン基板にGe含有物質を接触させる工程と、上記のGe材料層を有するシリコン基板にIII族元素含有物質及びN含有物質を接触させる工程との間に、中間層を形成する工程を備えることを特徴とする方法を開示している。ここでは中間層AlN層を形成することが好ましい。
【0052】
MOCVDにより、MOCVD反応炉内において、900℃〜1200℃の間等の高温においてAlN層を成長させてもよい。別の実施の形態では、AlN層を、400℃〜900℃の間、500℃〜800℃の間等の低温で成長させ、その後、熱的アニール工程を行っても良い。
【0053】
第2発明の好ましい実施の形態では、GaN層等のIII族窒化物層の成長を500℃〜1300℃の間の異なる2つの温度で実行することを特徴とする方法を開示している。上記成長工程の第1工程は、より低温(例えば、400℃〜800℃の間の温度、400℃〜700℃の間の温度、400℃〜600℃の間の温度)で実行し、続いて、より高温(例えば、800℃〜1200℃の間の温度、800℃〜1100℃の間の温度、800℃〜1000℃の間の温度)で実行することが好ましい。
【0054】
第3発明は、上記の方法のいずれかにより得られる装置に関する。本発明に係る上述の方法のいずれかにより得られる上記装置の具体例を、第1発明に係る部分で挙げている。
【0055】
第4発明は、III族窒化物材料の成長のための中間テンプレートデバイスを作製するための方法であって、
ポーラス状の最上層を含むシリコン基板を準備する工程と、
ポーラス状の最上層を含む上記シリコン基板にGe含有物質を接触させ、それにより上記最上層上に、Ge含有材料からなる第2層を形成する工程と、
続いてGe含有の材料からなる上記第2層を熱的にアニールする工程とを有することを特徴とする方法に関する。
【0056】
異なる層を形成する方法、それらの組成及び膜厚に関する好ましい実施の形態を、本発明の第1から第3発明に係る部分に記載している。
【0057】
この方法により、III族窒化物材料の成長に最適のテンプレートデバイスとすることができる。上記テンプレートデバイスは、ポーラス状最上層、及び上記最上層上に第2層を有するシリコン基板を備え、上記第2層はGe含有材料からなることを特徴とする。上記最上層を、III族窒化物材料が上記第2層上に成長するように配置する。好ましい実施の形態では、最上層のポアの少なくとも一部が、閉口したポアであってもよい。さらに別の発明は、本発明に係るテンプレートデバイスを形成する方法により得られるテンプレートデバイスに関連する。
【0058】
本発明の別の発明は、III族窒化物材料の成長のための中間テンプレートデバイスの用途に関する。上記テンプレートデバイスは、ポーラス状の最上層を含むシリコン基板、及び上記最上層上に形成された第2層を有し、上記第2層はGe含有材料からなる。III族窒化物材料が上記第2層上で成長するように上記最上層を配置することが好ましい。上記最上層のポアの少なくとも一部が、閉口したポアであっても良いし、若しくは直径が減少したポアであってもよい。可能性として考えられる膜厚及び/又は層の組成等は、第1発明及び第2発明の関連する部分に示した通りである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0059】
本発明を以下に詳細に説明している。しかし、当業者であれば、本発明を実行するためのいくつかの他の同様な実施の形態若しくは他の方法に想到することができることは明らかである。
【0060】
この発明では、ある層が他の層若しくは基板の「上に」あるというときにはその層が直接当該他の層若しくは基板上にあることを意味し、ある層が他の層若しくは基板の「上方に」あるというときには中間層が存在することを意味する。ある層が他の層若しくは基板と「直接接触している」というときは、2つの層の間、若しくはその層と基板との間に中間層がないことを意味する。
【0061】
この発明では、III族窒化物材料は、元素の周期表のIII族元素の窒化物を含む材料である。III族窒化物材料はGaNであっても良い。ここで、GaNは、AlN、AlGaN、InGaN、AlInGaN、GaAsPN、及び同様のもの(これらに限定されるものではない)等の少なくともGaNを含む材料であると理解されるべきである。この発明に記載された装置は、III族材料の代わりに、ダイアモンド層を含んでいてもよい。
【0062】
シリコン基板は、シリコンを含有する基板である。特定の実施の形態では、上記シリコン基板はシリコンウエハである。このシリコン基板は、本発明に係るポーラス状最上層(上述のように定義している。)を含んでいてもよい。
【0063】
「溝付きの(castellated)」という用語により、主面における基板の断面が、急峻な丘部及び谷部により特徴付けられ、上記丘部の上面は平坦な台形表面部分を規定し、当該台形表面部分は谷部により形成されたギャップにより互いに離間されている。これらの台形部分のそれぞれは、台形の上面に沿った距離が、1μm以下、より好ましくは200Å以下、最も好ましくは100Å以下の最小横幅を有する。隣接する台形部は、少なくとも30Å、より好ましくは60Åの幅のギャップにより互いに離間されている。
【0064】
「2次元的にサブミクロンでパターニングされた」という用語により、表面が任意の形状の平坦な台形により特徴付けられ、それぞれの台形部分は、台形上面に沿った方向の最小横幅が1ミクロン以下の横幅を有し、溝部により形成されたギャップが台形部分の間に位置する。これは、Douglas等により記載されたナノメートルリソグラフィー(アプライドフィジックレター(1986),vol 48(10)676-678)等により得られる。
【0065】
本明細書における「ポア」という用語は、上述のように、「ギャップ」、「谷部」若しくは「溝部」まで拡張される。本発明に係るポーラス状最上層における「ポア」は、開口ポア、閉口ポアであっても良く、開口ポア及び閉口ポアを組み合わせたものが存在してもよい。このポアは、バブル、封入物、ボイド若しくはマクロポア等である。
【0066】
第1発明では、ポーラス状の最上層を有するシリコン基板を備える基板と、
Ge材料からなる第2層と、
上記第2層上にIII族窒化物材料からなる別の層とを備える装置を開示している。
【0067】
上記第2層はSiGeを含んでいることが好ましい。III族窒化物材料は少なくともGaNを含むことが好ましい。III族窒化物材料はGaNであることが好ましい。別の実施の形態では、III族窒化物材料は少なくともAlNを含んでいてもよいし、AlNであってもよい。
【0068】
SiとIII族窒化物材料との間の格子不整合は非常に大きい。GeをSiに添加し、そしてアニール工程を実行することにより、より一層格子不整合の大きいSiGe層を形成する。
【0069】
また、2つの材料(SiとIII族窒化物材料)の間の熱膨張係数の相違は非常に大きく、そのためGaN成長後の冷却工程の間GaN層等のIII族窒化物層内における応力が過剰に大きくなる。
【0070】
Si及びIII族窒化物材料好ましくはGaNの間の熱応力の相違は、SiGe層がSiとIII族窒化物材料との間に形成された時減少するであろう。結果的に、III族窒化物材料内のクラックの発生が減少する。
【0071】
上述のように、Ge材料層は熱応力を劇的に減少させ、また格子不整合を発生させない。実際この熱応力は、Si上にGaN等のIII族窒化物材料を成長させることに対する主な障害である。
【0072】
GaN層等のIII族窒化物材料内においてなお転移が起こるかもしれない。この問題は、本発明に係る非常に柔軟性を有するポーラス状Si層を使用することにより解決することができる。本発明に係るポーラス状Si層により、この基板を、シリコンとIII族窒化物層との間の大きな格子不整合に適応させることができ、それにより後者の層における転移密度を減少させることができる。さらに、本発明に係る基板を使用することにより、装置の冷却の間、III族窒化物層のクラックを防止することができる。さらに別の利点は、基板の「湾曲」を防止することである。
【0073】
基板の選択(本発明に係るポーラス層を有するシリコン)に関しては直接事項ではない。ポーラス状のSiは熱的に不安定であり(それは高温において変形する可能性がある)、外気から湿気を吸収する可能性があるからである。
【0074】
Ge材料層を、300℃〜800℃の温度で、好ましくは500℃の温度で成長させる。これは、この技術分野において標準的に使用されるAlN及びGaNの成長温度が高いのと対照的である。
【0075】
他方、Ge層は、主に本発明に係るポーラス状Siの酸化を防止するための保護層として機能する。その結果、ポーラス状Si層の構造的な変形を防止する。本発明に係るシリコン基板上に直接成長させたGaN層若しくはAlN層は、ポーラス状Si基板の酸化を防止することができない。
【0076】
さらに、Geの還元温度は、ポーラス状のSiを、ボイドを有するバルク状Siに再結晶化させる臨界温度より非常に低い。一方、Siの還元温度は、この遷移温度をかなり上回る。ここでボイドは、ポーラス状のSiにおけるマイクロポアと見なすことができる。
【0077】
Ge中間層によりSi基板の窒化防止され、この界面においてアモルファスSiNx材料全く形成されないか、若しくは少量しか形成されない。アモルファス状の薄いSiNx材料の形成は、装置の更なるエピタキシャル成長に対して最悪の欠点である。またGe中間層はGa及びSiの混合を減少させ、それによりメルトバックエッチングを防止する。
【0078】
本発明に係るGe材料からなる第2層の有利な効果は、Ge含有の非常に薄い層を、本発明に係る最上層を有するSi基板上に塗布する時に得られる。例えば、この最上層は、1nm〜20nm、5nm〜15nm、6nm〜12nmの間の膜厚を有する層である。
【0079】
本発明に係る方法により得られる装置は、高品質の装置である。
【0080】
本発明に係る最上層を有するSi基板上のGe含有材料層により、高品質のワイドなバンドギャップを有するIII族窒化物半導体材料、特にGaNをエピタキシャル成長させるのに非常に適した表面を提供することができることが分かった。Ge層のないポーラス状でないSi基板上に成長させるのと比較して、結晶性が良好で、クラックが非常に少なく、湾曲部分が非常に減少した等の高品質のエピタキシャル層を得ることができた。
【0081】
本発明に係る好ましい装置を以下に記載している。
【0082】
その第1装置は、
ポーラス状の最上層を有するシリコン基板を備える基板と、
上記ポーラス状最上層上の、SiGe含有の材料からなる第2層と、
この第2層上のGaN層とを備える。
【0083】
上記ポーラス状層内のポアは、開口したポアであっても良いし、閉口したポアと開口したポアとを組み合わせたものであってもよい。
【0084】
本発明のある実施の形態では、SiGe材料層(少なくともSiGeを含有する材料)は、上記最上層と直接接触している。特定の実施の形態では、GaN層は、SiGe材料の層と直接接触している。上記第2層はSiGe層であることが好ましい。
【0085】
ここに記載した実施の形態におけるSiGe材料の層の膜厚は、1nm〜2μm、1nm〜1000nm、1nm〜500nm、1nm〜300nm、10nm〜200nmの間にある。
【0086】
他の好ましい装置は、
少なくとも一部に閉口したポアを備えるポーラス状最上層を有するシリコン基板を備える基板と、
上記ポーラス状最上層上の、SiGe含有の材料からなる第2層と、
この第2層上の、別のGaNとを備える。第2層はSiGe層であることが好ましい。
【0087】
少なくとも一部に閉口したポア、例えばボイドを有する最上層を備えるシリコン基板を持つ基板を、例えばGaN層の成長と冷却の後に形成する。GaNの成長プロセスにおける第1工程(これはアニール工程である)の間、ポーラス状シリコン層を、ボイドを含むバルク状Siに変換する。
【0088】
本発明は、III族窒化物材料層及び基板を含む装置を開示している。ある実施の形態では、この装置は、
ポーラス状の最上層を有するシリコン基板を備える基板と、
上記ポーラス状最上層上の、Ge層及び濃度勾配の付いたSiGe層からなる第2層と、
この第2層上のGaN層とを備える。
【0089】
Ge材料からなる第2層、例えばGe層若しくは濃度勾配の付いたSiGeからなる層等は、上記最上層に直接接触することが好ましい。上記濃度勾配の付いたSiGe内のGe濃度は、上記基板から離れる方向に増加することが好ましい。GaN層は、上記第2層と直接接触していることが好ましい。
【0090】
ポーラス状Si層及びGe層は拡がっており、その結果少なくともその層のより低い部分、即ちSi基板近くの部分に、SiGe層、可能性としては濃度勾配の付いたSiGe層が形成されることとなる
【0091】
ここに記載された実施の形態におけるGe層若しくは濃度勾配の付いたSiGe層の膜厚は、1nm〜1000nm、1nm〜500nm、1nm〜300nm、10nm〜200nmの間にある。Ge層及び濃度勾配の付いたSiGe層の膜厚は、1nm〜100nm、1nm〜50nm、1nm〜20nm、1nm〜15nm、1nm〜10nmの間にあることがさらに好ましい。
【0092】
本発明に係る基板の、上記実施の形態のいずれかに記載された基板は、高品質のワイドなバンドギャップを有するIII族窒化物半導体材料、特にGaNのエピタキシャル成長にとって非常に有益である。特に、アニール工程、及び/又は2つの工程(第1工程において低温で行われ、続いてより高温で成長させる。)においてIII族窒化物を成長させる工程を含む方法にしたがって準備された基板及び/又はGe層を含む基板は、これらの目的に対して非常に適当である。
【0093】
上述の装置の全ては、少なくともデバイス領域の一部であってもよい。この装置は、FET、LED、レーザダイオード、HEMT若しくはヘテロ接合バイポーラトランジスタの一部であってもよい。
【0094】
本発明の他の発明では、III族窒化物材料の成長のための例えばSi/pSi/SiGe基板の用途を開示している。ここで、pSiは本発明に係るポーラスSiを示す。テンプレートデバイスと呼ばれるSi/pSi/SiGe基板は、ポーラス状最上層と、上記最上層上のSiGe材料層(第2層)とを備えるシリコン基板を含む。「Si/pSi/SiGe基板」は、実際本発明において開示された全てのテンプレートデバイス、即ちGe材料(好ましくはSiGe層)からなる層を第2層として有するデバイスに関係する。
【0095】
本発明に係るSi/pSi/SiGe基板を、III族窒化物材料の成長のために使用することにより、従来の課題に対する問題点を解決することができる。しかし、III族窒化物材料が成長するまで、好ましくはポアの少なくとも一部が閉じた、本発明のSi/pSi/SiGe基板を形成し保管してもよい。この保管は、数時間、数日、一ヶ月若しくはそれ以上の間であってもよい。
【0096】
さらに別の発明では、上述のテンプレートデバイスを作製するための方法を開示している。この方法は、
ポーラス状の最上層を備えるシリコン基板を準備する工程と、
上記ポーラス状最上層を有する上記シリコン基板を、Ge含有の物質に接触させ、それにより上記最上層上に、Ge含有の材料からなる第2層を形成する工程と、
続いて、Ge含有の材料からなる上記層を熱的にアニールする工程とを含む。
【0097】
シリコン基板を準備する工程、及び上記シリコン基板にGe含有物質を接触させる工程を実行し、さらに結果として得られる基板を保管してもよい。上記Ge材料層を有する上記基板にIII族元素含有物質及びN含有物質を接触させる工程を、上記装置がさらに処理される必要があるとき実行してもよい。
【0098】
上記アニール工程を、Ge材料の層を有する上記シリコン基板にIII族元素含有物質及びN含有物質を接触させる工程の前に実行することが好ましい。ある好ましい実施の形態ではIII族元素はGaである。別の実施の形態ではIII族元素はAlであってもよい。
【0099】
Ge材料層にIII族元素(例えばGa)含有物質を接触させる工程の前の、Ge材料層を熱的にアニールする工程により、Ge層上に形成された酸化物を取り除くことができ、そしてポーラス状Si最上層上にSiGe材料層、可能性としては濃度勾配の付いたSiGe材料を形成することができる。熱的アニール工程は、500℃〜1300℃、好ましくは500℃〜1100℃の間の温度で実行することが好ましい。
【0100】
ポーラス状最上層を有するシリコン基板にGe含有物質を接触させる工程により、上記ポーラス状最上層上にSiOが形成されることを防止することができる。従来技術(「室温におけるポーラスシリコンの雰囲気内投入」Canham等、J.Appl.Phys.70(1),1991年7月,pp422-431)により、新たにエッチングされたシリコン基板の、汚染されていない、フッ素処理された水素化物表面が、長い時間外気に曝されている間、汚染された自然酸化物に変換され、その結果構造特性が連続的に変更されるということが知られている。
【0101】
本発明に係る方法は、さらにGe層を有する上記シリコン基板にIII族元素含有物質及びN含有物質を接触させ、それにより上記第2層上にIII族窒化物層を形成する工程を含んでいてもよい。
【0102】
本発明は、さらに上記Ge材料の第2層と、III族窒化物層(別の層)との間に中間(第3)層を形成する工程を含んでいてもよい。III族窒化物層の成長のためのベースとして、若しくはIII族窒化物層の成長が開始される層として機能するように中間層が配置されていることが好ましい。この中間層は、1nm〜200nm、1nm〜100nm、1nm〜50nmの間の膜厚を有する層であってもよい。この中間層は、平坦な連続層若しくはアイランドを有する不連続な層であってもよい。この中間層は、AlN層であってもよい。
【0103】
中間層AlNは、AlN上に成長されたGaN層内に適度な圧縮応力を誘発する可能性がある。これは、ヘテロ構造体の冷却の間、熱的な不整合による大きな熱的引張り応力を相殺し、さらにクラックを防止する。
【0104】
AlN層の膜厚は、1nm〜2μm、10nm〜1000nm、10nm〜500nmの間にある。AlN層は、500℃〜900℃若しくは900℃〜1100℃の間の温度で成長する。
【0105】
プラズマ気相成長法(PECVD)、熱蒸着、閉空間蒸気伝達法若しくは分子ビームエピタキシにより、ポーラス状の最上層を有するシリコン基板にGe含有物質を接触させる工程を実行してもよい。
【0106】
Ge層の成長は一般的に数分かかる。ポーラス状シリコン基板を準備する工程の後、本発明に係るポーラス状最上層を有するこの基板を数秒、数分、数時間(2時間まで)、保護雰囲気(N雰囲気等)の下保管してもよく、それ以降Ge材料層が成長する。
【0107】
上記Ge層にIII族含有物質及びN含有物質を接触させ、それによりIII族窒化物層を成長させる工程のために、このウエハを有機金属化学気相成長(MOCVD)炉内に投入することが好ましい。また、このウエハをMBE炉若しくはHVPRE炉内に投入してもよい。成長の前に、例えばH雰囲気中で基板をアニールし、それにより酸化物を取り除く。このアニール工程の間、安定なエピタキシャルGeケイ化物層を形成する。
【0108】
III族含有物質はTMGa(トリメチルガリウム)であっても良く、一方N含有物質はNHであっても良い。ある実施の形態では、上記Ge材料層にG含有物質及びN含有物質を接触させる工程を、500℃〜1300℃、好ましくは1000℃〜1100℃の間の温度で実行しても良い。
【0109】
別の実施の形態では、上記Ge材料層にIII族含有物質及びN含有物質を接触させる工程を、500℃〜1300℃の間の異なる2つの温度で実行しても良い。この工程の第1工程を、より低い温度(例えば、400℃〜800℃の間の温度)で実行し、続いてより高い温度(例えば800℃〜1200℃の間の温度)で実行しても良い。
【0110】
上記Ge材料層にIII族含有物質及びN含有物質を接触させる工程により、III族窒化物材料層を形成することができる。好ましい実施の形態では、III族窒化物材料層は、少なくともGaNを含む材料である。別の実施の形態では、III族窒化物材料層は、少なくともAlNを含む材料であってもよい。
【0111】
ある実施の形態では、Siウエハから出発して、当業者により知られた方法によりポーラス状に形成された基板を作製しても良い。
【0112】
ある実施の形態では、この最上層を、例えば濃縮フッ酸(HF)を用いて陽極酸化反応することによりポーラス状に形成しても良い。
【実施例1】
【0113】
2つの電極の装置(図2参照)を使用して、HFベース溶液中で陽極酸化を行うことによりポーラス状のSi(pSi)を得る。この2つの電極は、シリコン作用電極(24)及びプラチナ対極(23)を有する。界面活性剤として酢酸を添加し、それによりpSi形成の間に発生した水素バブルを効果的に取り除き、より均質のpSi層とすることができる。Si(111)基板(21)の陽極酸化の間、Si元素の電気化学的な溶解は、すでに形成されたpSiとSi基板との間の界面近傍で起こる。そのためpSi層の膜厚をエッチング時間で制御する。ポア形成のための適切なパラメータは、電流密度、基板のドーピングのタイプ、基板のドーピングレベル、電解液の濃度、見込まれるウエハの照度である。電極表面における正孔は、シリコンの溶解に必要とされるので、p型シリコンは暗闇の中でも容易にエッチングすることができ、一方、n型材料では照度を必要とする。10%〜90%の範囲にある空隙率を有し、10nm〜数μmの範囲で変化するポーラス層を容易に得ることができる。このプロセスにより、大きなウエハ領域上に均質なポーラス層を形成することができる。図2は、pSi形成のための設備を示している。21はシリコン基板を、22はテフロンビーカを、23はプラチナ電極を、24はシリコンアノードを、25はバック接点を示す。ある特定のプロセス条件は、
膜厚:280mm
抵抗率:0.01Wcm
化学溶液:2フッ酸/3酢酸
電流密度:75mA/cm
である。このプロセスにより、30%以下の空隙率を有する1.7mmポーラスSi層となる。図4は、上述の方法により得られるポーラス状シリコン〔001〕に関連する。図5は、シリコン基板(53)、低空隙率層(51)、及び高空隙率層(52)を備えるポーラス状シリコン〔001〕基板を示している。図6a−fは、例えばEP1132652に記載されたHFベース溶液における陽極酸化反応によりシリコン〔001〕基板上にポーラス状最上層を形成する様々な工程を示している。数字61はシリコン基板を、62はポアを、63は反応のポイントを、64は水素分子を、65はその分子により作用を受けた流体力(hydrodynamic force)の方向を示している。
【0114】
pSi形成の後、電解液の痕跡が残らなくなるまで、ウエハをDIウォータ内で徹底的にリンスする。この基板をその後Nで乾燥させ、直ぐに真空システム内に投入し、Ge層を成長させる。これは、ポーラス状のSiの酸化を起こさないことを意味する。Geを約500℃の適当な温度でプラズマCVDシステム内で成長させる。Geは10〜100nmの範囲の膜厚を有することとなる。PECVD Ge層のXRD分析から推測されるように、PECVDにより、Si基板の上面にエピタキシャルGe層が形成されている。図3は、反射率及びXRD測定を示している。このXRD測定は、pSi(111)の上面にGaNのエピタキシャル層が成長していることを示している。
【0115】
この工程に続いて1125℃で脱気及びアニール工程を行い、その結果SiGe層を形成する。
【0116】
次の工程において、基板を、MOCVD炉内でTMAl及びNHに接触させ、そしてAlNの中間層を1100℃で形成する(率:7.5nm/min、膜厚200nm)。
【0117】
Ge層を成長させた後、この基板をMOCVD炉内に投入する。この基板を、1020℃でTMGa及びNHと接触させる(率10nm/min、膜厚1μm)。結果として得られる反射率(図3a)及びXRD測定(図3b)は、滑らかなGaNエピタキシャル層がポーラス状Si(111)の上面に形成されていることを示している。
【図面の簡単な説明】
【0118】
【図1】図1は、本発明の(必須及び任意の)工程を示したフローチャートを示している。任意の工程は点線で示している。
【図2】図2は、pSi形成の構成を示している。
【図3】図3aは、時間を関数とした反射率を示している。図3bはXRD測定を示している。
【図4】図4は、低い空隙率から高い空隙率に勾配しているポーラス状シリコン基板を示している。
【図5】図5は、シリコン基板(53)、低空隙率を有する層(51)及び高空隙率を有する層(52)を備えるポーラス状シリコン基板を示している。
【図6】図6a−fは、例えばEP1132952に記載されたようなHFベースの溶液内で陽極酸化することにより、シリコン〔001〕基板上にポーラス最上層を形成する場合における様々な工程を示している。数字61はシリコン基板を、62はポアを、63は反応ポイントを、64は水素分子を、65はその分子により作用する流体力の方向を示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポーラス状の最上層を有するシリコン基板を含む基板と、
上記最上層の上に配置された、Ge材料からなる第2層と、
上記第2層上にあるIII族窒化物材料からなる別の層と、を有する装置。
【請求項2】
上記第2層が少なくともSiGeを含む材料からなることを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項3】
上記第2層がSiGe層であることを特徴とする請求項1又は2記載の装置。
【請求項4】
上記第2層の組成が、濃度勾配を持っていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の装置。
【請求項5】
上記第2層の材料中のGe濃度が、上記基板から離れる方向に増加していることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の装置。
【請求項6】
上記III族窒化物材料が、GaN若しくはAlNであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の装置。
【請求項7】
上記第2層が、上記ポーラス状の最上層と直接接触していることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の装置。
【請求項8】
上記第2層と上記別の層との間に配置された第3層をさらに備えることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の装置。
【請求項9】
上記ポーラス状最上層が、少なくとも一部にバブル、ボイド、封入物若しくはマイクロポア等の閉口したポアを有することを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の装置。
【請求項10】
上記ポーラス状最上層が、10〜90%の間の空隙率を有することを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の装置。
【請求項11】
上記ポーラス状最上層が、10nm〜3μmの間の膜厚を有することを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の装置。
【請求項12】
上記第2層が、1nm〜1000nmの間の膜厚を有することを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の装置。
【請求項13】
上記第2層が、1nm〜20nm、好ましくは5〜15nmの間の膜厚を有することを特徴とする請求項1〜12のいずれかに記載の装置。
【請求項14】
上記第2層がSiGe材料からなる層であり、さらに上記別の層がGaN層であることを特徴とする請求項1〜13のいずれかに記載の装置。
【請求項15】
上記ポーラス状最上層が、少なくとも一部に、バブル、ボイド、マイクロポア等の閉口したポアを含み、さらに上記第2層が、SiGe材料からなる層であり、上記別の層がGaN層であることを特徴とする請求項1〜14のいずれかに記載の装置。
【請求項16】
上記第2層が、Geからなる層であるか、若しくは濃度勾配の付いたSiGeからなる層であり、上記濃度勾配の付いたSiGe層内のGe濃度が、上記基板から離れる方向に向かって増加しており、さらに上記別の層がGaN層であることを特徴とする請求項1〜14のいずれかに記載の装置。
【請求項17】
請求項1〜16のいずれかに記載の装置を含むことを特徴とするFET、LED、レーザダイオード、HEMT若しくはヘテロ接合バイポーラトランジスタ。
【請求項18】
電気回路が上記シリコン基板内に集積されていることを特徴とする請求項1〜17のいずれかに記載の装置。
【請求項19】
光学電子素子若しくはFETが、III族窒化物層上に形成されていることを特徴とする請求項1〜18のいずれかに記載の装置。
【請求項20】
シリコンの上にIII族窒化物材料を含む装置を作製する方法であって、
ポーラス状の最上層(すでに定義している。)を含むシリコン基板を準備する工程と、
上記ポーラス状の最上層を有するシリコン基板にGe含有物質を接触させ、それにより上記最上層上にGe材料の第2層を形成する工程と、
Ge材料の層を有するシリコン基板にIII族元素含有物質及びN含有物質を接触させ、それにより上記第2層上にIII族窒化物材料からなる別の層を形成する工程と、を有することを特徴とする方法。
【請求項21】
上記Ge材料の層を有するシリコン基板にIII族元素含有物質及びN含有物質を接触させIII族窒化物材料の別の層を形成する工程の前に、上記Ge材料の第2層を熱的にアニールする工程を含むことを特徴とする請求項20記載の方法。
【請求項22】
上記熱的アニール工程が、500℃〜1300℃の間の温度で実行されることを特徴とする請求項21記載の方法。
【請求項23】
上記熱的アニール工程が、500℃〜1100℃の間の温度で実行されることを特徴とする請求項21若しくは22記載の方法。
【請求項24】
上記のポーラス状の最上層を有するシリコン基板にGe含有物質を接触させる工程が、プラズマ気相成長法、熱蒸着、閉空間蒸気伝達法若しくは分子ビームエピタキシ法により実行されることを特徴とする請求項20〜23のいずれかに記載の方法。
【請求項25】
上記の最上層に第2層を形成する工程の後に、中間装置を保管することを特徴とする請求項20〜24のいずれかに記載の方法。
【請求項26】
上記のGe材料の層を有するシリコン基板にIII族元素含有物質及びN含有物質を接触させる工程が、有機金属化学気相成長プロセスにより実行されることを特徴とする請求項20〜25のいずれかに記載の方法。
【請求項27】
上記工程を500℃〜1300℃の間の温度で実行することを特徴とする請求項26記載の方法。
【請求項28】
上記工程を1000℃〜1100℃の間の温度で実行することを特徴とする請求項26又は27記載の方法。
【請求項29】
上記III族元素がGaであることを特徴とする請求項20〜28のいずれかに記載の方法。
【請求項30】
上記III族窒化物材料がGaNであることを特徴とする請求項20〜29のいずれかに記載の方法。
【請求項31】
上記III族元素がAlであることを特徴とする請求項20〜28のいずれかに記載の方法。
【請求項32】
上記III族窒化物材料がAlNであることを特徴とする請求項20〜28のいずれか、若しくは請求項31に記載の方法。
【請求項33】
上記のポーラス状の最上層を有するシリコン基板にGe含有物質を接触させる工程と、上記のGe材料層を有するシリコン基板にIII族元素含有物質及びN含有物質を接触させる工程との間に、AlN層等の中間層を形成する工程を備えることを特徴とする請求項20〜32のいずれかに記載の方法。
【請求項34】
GaN層等のIII族窒化物層を成長させる工程が、500℃〜1300℃の間の2つの異なる温度で実行されることを特徴とする請求項20〜33のいずれかに記載の方法。
【請求項35】
上記成長工程の第1工程を400℃〜800℃の間の温度で実行し、続いて800℃〜1200℃の間の温度での工程を実行することを特徴とする請求項34記載の方法。
【請求項36】
III族窒化物材料を成長させるためのテンプレートデバイスを作製するための方法であって、
ポーラス状の最上層を有するシリコン基板を準備する工程と、
ポーラス状の最上層を有するシリコン基板にGe含有物質を接触させ、それにより上記最上層上にGe含有材料からなる第2層を形成する工程と、
続いて、Ge含有材料からなる層を熱的にアニールする工程と、を含むことを特徴とするテンプレートデバイス作製方法。
【請求項37】
好ましくはアニール工程の後、所定の時間の間、装置を保管する工程をさらに含むことを特徴とする請求項36記載のテンプレートデバイス作製方法。
【請求項38】
III族窒化物材料の成長のためのテンプレートデバイスであって、
ポーラス状の最上層を有するシリコン基板を含む基板を備え、上記最上層上にGe含有材料からなる第2層を備えるテンプレートデバイスの用途。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−182475(P2012−182475A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−101472(P2012−101472)
【出願日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【分割の表示】特願2004−371050(P2004−371050)の分割
【原出願日】平成16年12月22日(2004.12.22)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(591060898)アイメック (302)
【氏名又は名称原語表記】IMEC
【Fターム(参考)】