説明

スライドの変形を吸収するためのひずみメカニズムモジュールを有する試料移動ステージ

【課題】試料移動ステージをスライドさせて生じるスライドの変形が試料テーブルに伝達されることを防止する試料移動ステージに関する。
【解決手段】ベースフレームに取り付けられ第1のガイドブロックに沿って移動する第1のスライド、および前記第1のスライドに取り付けられかつ第2のガイドブロックに沿って移動する第2のスライドが相互横断方向に取り付けられる可動部と、前記第2のスライドに形成されたひずみメカニズムモジュール50を仲介して取り付けられた試料テーブルによって試料を移動させる。前記ひずみメカニズム50は、上下方向に沿って一定間隔で上記第2のスライドの上面を規則的に貫通する多数の緩衝孔53と、前記緩衝孔53の中心に当たるように切断され、かつ上記試料テーブルが取り付けられるブリッジ部56および取付部52の変形空間を提供する多数の変形ライン54とからなり、スライドによる変形が試料テーブルに伝達されない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体またはFPD(フラットパネルディスプレイ)用の検査装置または精密処理装置のために使用される試料移動ステージに関し、特に、試料移動ステージをスライドさせた結果として生じるスライドの変形が試料テーブルに伝達されることを防止することによって計測精度を向上させるように、前記スライドの変形を吸収するためのひずみメカニズムを有する試料移動ステージに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、試料移動ステージは、半導体またはFPDの検査装置または精密処理装置のために使用される物体(以下で「試料」と呼ばれる)を所望の位置に装填しまた移動させて計測/処理するために使用される装置部材であり、またこの試料移動ステージは、ミラーに入射するレーザービームと、ミラーによって反射されるレーザービームとの干渉により計測された信号を有する変位信号を分析するためのレーザー変位計測システムのために使用される。
【0003】
例えば、図1によれば、試料移動ステージ(100)は、X、Yガイド(111、112)によって相互横断方向にガイドされるX、Yスライド(113、114)と、前記Yスライド(114)に取り付けられかつ試料(115)を移動させる試料テーブル(116)と、前記試料テーブル(116)に相互垂直方向に取り付けられたX、Yバーミラーとを含む主体部からなる。
【0004】
また、計測部は、上記主体部の動作経路に実装されてビーム分割器(132)を通して分割された後にレーザーヘッド(131)で出力されるX、Yビームを上記X、Yバーミラー(117、118)によって拡散させるための干渉計(133)と、前記X、Yバーミラー(117、118)によって反射される干渉信号を変位信号に変換するためのX、Y受信機(134)とを含む。
【0005】
それに応じて、試料移動ステージ(100)による試料位置計測は、上記試料テーブル(116)に固定されたX、Yバーミラー(117、118)と、この前記X、Yバーミラー(117、118)によって反射されるレーザービームとの干渉により計測される構成を有するので、上記試料(115)の正確な位置を計測するために、前記X、Yバーミラー(117、118)と前記試料(115)との相対変位を定期的に維持しなければならないという問題を予め解決する必要がある。
【0006】
しかし、以下の理由によって、試料移動ステージ(100)の試料テーブル(116)が変形することがある。第1に、ガイド部(111、112)の処理誤差、または直線性および平坦度に関する誤差により、スライド(113、114)が過剰に接続される。第2に、周囲温度が変化した場合、変形度は、スライド(113、114)と試料テーブル(116)との熱膨張係数の差によって異なり、特に、スライド(113、114)と試料テーブル(116)とが、ボルト等の接続ツールによって過剰に接続された場合、スライド(113、114)の変形が試料テーブル(116)に伝達されたときに、スライド(113、114)の変形に関する問題が実際に発生する。
【0007】
図2によれば、これらの状況によって、試料移動ステージ(100)の使用プロセス中に、ミラー(117)および試料(115)の変形が生じて、2つの相対距離が変化し、ここで、上記理由により、試料テーブル(116)が変形される。これらのことにより、計測誤差が直接生じて、試料の正確な配置を得ることが困難になる。
【0008】
さらに、試料移動ステージ(100)の計測部から出力されたレーザービーム(135)がミラーに入射したときに、直線のレーザービームが、試料テーブル(116)の変形によって生じるミラー(117)の傾斜誤差により偏向された場合、入射ビームと反射ビームとの干渉が生じず、変位に関する計測信号が損失される。レーザービーム(135)を用いた変位計測システムにおける計測信号の損失は、制御安全性を低下させる限りにおいては重大な問題であることがあり、したがって、このことを防止しなければならない。
【0009】
これに応じて、(特許文献1)による図3によれば、スライド(114)と試料テーブル(116)との間の空間においてX、Y方向に運動自由角度を有する3つの変形防止手段(150)を取り付けることによって、スライド(114)の変形が試料テーブル(116)に伝達されない構成が提案される。
【0010】
また、(特許文献1)は、試料移動ステージ(100)の構成のプロセスにおいて、変形防止メカニズム(150)がX、Y方向に対して強度が低くなることを防止するように、X、Y方向の運動を制限するためのひずみメカニズム(160)をさらに構成する。
【0011】
しかし、(特許文献1)は、変形防止メカニズム強化ツール(150)としてひずみメカニズム(160)を使用していても、X、Y方向の低下された強度を補償することが困難であり、さらに、ここで、周囲温度が変化したときに構造が非対称になることによって、非対称特性が生じる。
【0012】
その上、変形防止メカニズム(150、160)の高さによって、試料(115)とスライド(114)との高度差が生じる。このことにより、安定性の低下に関する問題が発生するが、この理由は、上記変形防止メカニズムが、駆動ユニットの重心を形成し、また駆動ユニット作動点と実際の重心とのずれを形成するからである。
【0013】
さらに、図4によれば、スライド(114)の上側に試料テーブル(116)と共に固定される3つのバッファメカニズム(170)を構成することによって、また前記バッファメカニズム(170)で6つの自由角度を制限しつつ、熱膨張方向の中心からより遠くになるように半径方向に向かって自由角度のみを許容することによって、スライド(114)の変形が試料テーブル(116)に伝達される構成が提案される。
【0014】
しかし、上記構成は、図4による試料移動ステージ(100)が、バッファメカニズム(170)の加工および組み立てに関する困難性を有し、またバッファメカニズム(170)の高さによって試料テーブル(116)とスライド(114)との高度差が生じるという問題を有する。このことは、試料移動ステージ用の駆動ユニットの重心を高くするだけでなく、制御安定性を低下させるが、この理由は、このことにより、駆動力が作用する箇所と実際の重心との間にずれが生じるからである。
【0015】
上記問題を解決するために、試料移動ステージ(100)に適切な超精度を要求する精密機器では、上記スライド(113、114)および試料テーブル(116)用のアンバーまたはゼロダ等の材料が、単一本体のために使用されるが、これを使用することにより、アンバーまたはゼロダのコストがアルミニウムのコストの少なくとも10倍になり、また加工レベルが低いために加工コストも増加するという問題が発生する。
【特許文献1】米国特許出願公開第2003/00202251号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、上記課題を解決するために開発され、また上部構造に変形が伝達して構造が低下することを防止するためのひずみメカニズムモジュールを構成するか、前記ひずみメカニズムモジュールを試料移動ステージのスライドに一体的に形成するか、またはボルト接続により前記ひずみメカニズムモジュールをスライド領域に結合させることによって、スライドの変形が試料テーブルに伝達されることを防止するように、スライドの変形を吸収するためのひずみメカニズムモジュールを使用した試料移動ステージを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成するように意図された本発明は、ベースフレームに取り付けられかつ第1のガイドブロックに沿って移動する第1のスライド、および前記第1のスライドに取り付けられかつ第2のガイドブロックに沿って移動する第2のスライドが相互横断方向に取り付けられる可動部と、前記第2のスライドに共に形成されたひずみメカニズムモジュールを仲介して取り付けられた試料テーブルによって試料を移動させ、また前記試料テーブルに相互垂直方向に取り付けられたX、Yバーミラーによって変位を計測する移動部と、前記可動部の動作経路に取り付けられたレーザーヘッド、ビーム分割器および干渉計によって拡散を行い、また前記X、Yバーミラーにより受信機から反射された入力ビーム干渉信号を受信することによって出力を変位信号に変換する計測部とからなる。
【発明の効果】
【0018】
スライドの変形を吸収するためのひずみメカニズムモジュールを使用した本発明の試料移動ステージは、試料移動ステージに構成された第2のスライドにひずみメカニズムを一体的に構成する方法によって、または製造されたひずみメカニズムモジュールをスライド領域に結合させることによって以下の効果を有する。
【0019】
第1に、計測精度は、試料テーブルを含むミラーおよび試料の変形誤差により向上し、スライドによる変形が試料テーブルに伝達されないことにより低下し、また誤差率を最小にすることにより試料の製造精度が向上するので、生産性が向上する。
【0020】
第2に、試料移動ステージの製造プロセス中にスライドおよびひずみメカニズムを一体的に形成することが可能であるので、構成要素に関する製造コストが減少し、また重心が相対的に低くなることによって、高速運動および高い制御安定性が実現されるので、高い生産レベルを実現できる。
【0021】
第3に、一般的なアルミニウムまたはアルミニウム合金が、試料移動ステージの製造プロセス中にアンバーまたはゼロダ等の高価な材料に取って代わることができるので、スライドに関するものを含む材料コストを低減でき、また構成要素の加工性が向上されるので、製造コストも節約できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明の実施例について以下に説明する。
【0023】
図5は、試料移動ステージの組立状態を示した図面であり、図6は、試料移動ステージの分解状態を示した図面であり、図7は、本発明による試料移動ステージ用のひずみメカニズムモジュールを示した図面であり、図8は、ひずみメカニズムの取付状態および変形状態を示した実施例1であり、図9は、ひずみメカニズムの取付状態および変形状態を示した実施例2であり、また図10は、本発明によるひずみメカニズムモジュールの例を示した分解図である。
【0024】
図5と図10によれば、本発明は、ベースフレーム(10)に取り付けられかつ第1のガイドブロック(21)に沿って移動する第1のスライド、および前記第1のスライド(20)に取り付けられかつ第2のガイドブロック(32)に沿って移動する第2のスライド(30)が相互横断方向に取り付けられる可動部と、前記第2のスライド(30)に共に形成されたひずみメカニズム(50)を仲介して取り付けられた試料テーブル(40)によって試料(41)を移動させ、また前記試料テーブル(40)に相互垂直方向に取り付けられたX、Yバーミラー(42、43)によって変位を計測する移動部と、前記可動部の動作経路に取り付けられたレーザーヘッド(61)、ビーム分割器(62)および干渉計(63)によって拡散を行い、また前記X、Yバーミラー(42、43)により受信機(64)から反射された入力ビーム干渉信号を受信することによって出力を変位信号に変換する計測部とからなる。
【0025】
初めに、これらの実施例の試料移動ステージ(1)は、取付位置のX軸方向およびY軸方向に往復運動を行うための可動部と、前記可動部に取り付けられかつ物体(41)(以下で「試料」と呼ばれる)を搬送して計測/処理するための移動部と、前記可動部によって搬送される試料(41)の位置をレーザービームで計測するための計測部とからなる。
【0026】
そして、可動部は、ベースフレーム(10)に取り付けられ、また外部信号に従ってX軸方向およびY軸方向への往復運動を行い、また前記可動部は、ベースフレーム(10)に取り付けられる第1のスライド(20)および第2のスライド(30)が互いに横断する方向に取り付けられる。
【0027】
また、第1のスライド(20)は、平行にまた一定間隔で、ベースフレーム(10)に、好ましくは、ベースフレーム(10)の中央上部に取り付けられた一対のガイドレール(11)に取り付けられ、そしてガイドレール(31)に接続された第2のガイドブロック(32)を仲介するように図面のX軸方向に往復運動を行う。
【0028】
さらに、第2のスライド(30)は、平行にまた一定間隔で、ベースフレーム(10)に、好ましくは、第1のスライド(20)の上部両側に取り付けられた一対のガイドレール(31)に取り付けられ、そしてガイドレール(31)に接続された第2のガイドブロック(32)を仲介するように図面のY軸方向に往復運動を行う。
【0029】
また、移動部は、試料(41)を搬送するために第2のスライド(30)に取り付けられた物体であり、そして試料が上面に載置される第2のスライド(30)に取り付けられる試料テーブル(40)と、前記試料テーブル(40)と第2のスライド(30)との間に挿入されかつ前記第2のスライド(30)の変形を吸収するひずみメカニズムモジュール(50)とからなる。
【0030】
さらに、試料テーブル(40)は、第1のスライド(30)と第2のスライド(30)とによって往復運動を行う物体であり、そしてXバーミラー(42)およびYバーミラー(43)は、相互垂直方向に上面に加えられたレーザービームの変位を計測する。
【0031】
また、接続孔は、第2のスライド(30)および試料テーブル(40)に形成され、そして試料テーブル(40)の接続プロセス中に使用される。
【0032】
さらに、ひずみメカニズムモジュール(50)は、第2のスライド(30)の上面に構成された物体であり、また第2のスライド(30)の変形が試料テーブル(40)に伝達されることを防止し、そしてひずみメカニズムモジュールに構成された1つのひずみメカニズムは、[参照図1]によれば、短い軸方向に変形し、スライドの変形中も、スライドが変形する前の試料テーブルの形状を維持する。
【0033】
[図1]

【0034】
それに応じて、ひずみメカニズムモジュール(50)の各ひずみメカニズム領域は、短い軸方向に小範囲で変形し、特に、ひずみメカニズムの加工特性および変形形状を考慮する種々の種類および形状で製造され得るように形成される。
【0035】
また、ひずみメカニズム(50)は、上下方向に沿って一定間隔で上記第2のスライド(30)の上面を規則的に貫通する多数の緩衝孔(53)と、前記緩衝孔(53)の中心に当たるように切断され、かつ上記試料テーブル(40)が取り付けられるブリッジ部(56)および取付部(52)の変形空間を提供する多数の変形ライン(54)とからなる。
【0036】
さらに、ひずみメカニズム(50)の形成プロセスにおいて、1つ以上のブリッジ部(56)が取付部(52)の両側に一体的に形成されることが好ましい。
【0037】
このときに、取付部(52)に形成された接続孔(51)は、上記試料テーブル(40)およびボルト等の接続ツールを使用することによって設けられる。
【0038】
また、ひずみメカニズム(50)の形成プロセスにおいて、緩衝孔が正確な位置にあるようにまた正確な大きさであるように加工されることが好ましく、そして上記変形ライン(54)が、緩衝孔(53)の位置に当たるようにワイヤEDMによって加工されることが好ましい。
【0039】
取付部(52)およびブリッジ部(56)の接触面を[参照図2]の(a)のような線形状に形成する板ばね式ひずみメカニズム、取付部(52)およびブリッジ部(56)の接触面を(b)のような半円形状に形成する直円ヒンジひずみメカニズム、取付部(52)およびブリッジ部(56)の接触面を(c)のような形状に形成する隅肉ヒンジひずみメカニズム、および取付部(52)およびブリッジ部(56)の接触面を(d)のような楕円形状に形成する楕円形ヒンジひずみメカニズム等のような種々の種類によって、ひずみメカニズムを構成できる。
【0040】
板ばね式ひずみメカニズムは、高い変位レベルを生成できるが、軸が変形を許容する以外の方向の強度が比較的弱いという欠点を有し、対照的に、直円ヒンジひずみメカニズムは、軸強度特性が優れているという利点を有するが、変形レベルは比較的低い。
【0041】
さらに、楕円形ヒンジひずみメカニズムまたは隅肉ヒンジひずみメカニズムは、2種類のひずみメカニズムの利点および欠点を相殺するものである。このことを利用すると、以下の図面によれば、ひずみメカニズムのために種々の形状が可能になる。
【0042】
[図2]

【0043】
[図3]

【0044】
[参照図3]は、直円ヒンジひずみメカニズムを使用した形状の例を示しており、またこの直円ヒンジひずみメカニズムは、4バーリンケージを介して短い軸方向に変化できる。上記例に加えて、より複雑なメカニズムを実行できるが、4バーメカニズムのプロセスが最も容易であると思われる。
【0045】
また、スライドの変形が試料テーブルに伝達されることを防止するように、ひずみメカニズム(50)をひずみメカニズムモジュールに配置できる。基本的に、面において3つの自由角度を制限するように、短い軸方向の変形が許容されるひずみメカニズムを少なくとも3つのユニットから利用可能であり、またより多くのユニットを配置できる。
【0046】
それに応じて、3つのひずみメカニズムは、図9(a)と図9(b)によれば、第2のスライド(30)の一方の側の両方のコーナーにまた他方の側の中央に配置され、そして4つのひずみメカニズムは、図8(b)によれば、第2のスライド(30)の4つのコーナーに配置される。
【0047】
また、[参照図4]によれば、6つ、8つまたはそれ以上のひずみメカニズムをひずみメカニズムモジュールに配置できる。ひずみメカニズムの配置は対称である必要がなく、5つまたは7つのユニットが非対称的に配置されても、試料テーブルへの熱変形伝達を防止することができる。
【0048】
[図4]

【0049】
また、ひずみメカニズム(50)を上記第2のスライド(30)に一体的に形成できるが、追加の部材によって、前記ひずみメカニズムを形成および接続することもできる。
【0050】
さらに、計測部(60)は、試料テーブル(41)に取り付けられかつレーザービームが移動する試料(41)の位置を計測し、また第1および第2のスライド(20、30)の移動経路に取り付けられかつレーザービームを出力するレーザーヘッド(61)と、前記レーザーヘッド(61)から出力されたレーザービームをXビームとYビームとに分割するビーム分割器(62)と、前記ビーム分割器(62)によって2つの部分に分割されたビームをXバーミラー(42)とYバーミラー(43)とに出力する干渉計(63)と、前記X、Y受信機(42、43)により反射された干渉信号を受信することによってビームを変位信号に変換するX、Y受信機(64)とからなる。
【0051】
ここからは、本発明の方法について以下に説明する。
【0052】
最初に、試料移動ステージ(1)の作動プロセス中に、試料(41)の位置が、計測部によって計測されるが、この理由は、試料テーブル(40)のX方向変位が、Xバーミラー(42)によって計測され、またY方向変位が、Yバーミラー(43)によって計測されるからである。
【0053】
2つの指示ビーム(X、Y)に分割された後に、レーザーヘッド(61)から出力されたビームは、ビーム分割器(62)を通過し、干渉計(63)を通過し、X、Yバーミラー(42、43)によって反射され、また干渉計(63)に干渉を生じさせる。
【0054】
次に、干渉計(63)の干渉信号は、計測部の受信機(64)によって計測され、また信号処理プロセス後に変位信号に変換される。
【0055】
第1および第2のスライド(20、30)が、過剰な接続または熱膨張によって変形された場合、ひずみメカニズム(50)を介して吸収された状態下で、第2のスライド(30)の変形が試料テーブル(40)に伝達される。
【0056】
言い換えれば、第2のスライド(30)は変形されているが、図8bおよび図9bによれば、ひずみメカニズム(50)の緩衝孔(53)または変形ライン(54)は、第2のスライド(30)の対応する変形レベルの範囲まで変形し、またスライド(30)の前記変形を吸収する。
【0057】
このことにより、第2のスライド(30)の変形が試料テーブル(40)またはX、Yバーミラー(42、43)に直接伝達されないので、試料テーブル(40)に取り付けられた試料(41)とミラー(42、43)との相対距離が正確に計測される。
【0058】
本発明のひずみメカニズムの設計方法について以下に説明する。
【0059】
第1に、温度が変化した場合にスライド部の熱膨張を防止するために実施される、ひずみメカニズムヒンジ部の設計方法に関するガイドラインが推奨される。
【0060】
[図5]

【0061】
[図6]

【0062】
[参照図5]によれば、一般にボルト接続によって試料テーブルを固定するスライド部の外観が示されている。[参照図6]によれば、温度が変化した場合には、スライド部が変形される。実線で示されている部分は、変形前のスライドの外観を示しており、また点線で示されている部分は、熱によって膨張された後のスライドの外観を示している。
【0063】
スライドの中心から、スライドを半径方向に膨張させるべきである。スライドが、ボルトによって試料テーブルにまた4つの箇所に接続されていることを前提とすると、熱膨張が生じることによって、全ての接続部に加えられる力F(以下で「熱膨張力」と呼ばれる)が作用すると思われる。このときに、熱膨張力は次式のように計算される。
【0064】
【数1】

【0065】
ここで、「a」は材料の熱膨張係数であり、「E」は材料の弾性率であり、「A」は接続部の断面積であり、「d」は接続ボルトの直径であり、「b」はスライド部の厚さであり、「L」はスライドの中心から接続部までの距離であり、また「ΔL」は、熱変形によって接続部が膨張される変形度である。
【0066】
それに応じて、スライドの熱膨張度が、ひずみメカニズムマウントによって試料テーブルに伝達されないことを保証するために、熱膨張力によるひずみメカニズムの変形の許容度は「ΔL」を超える必要がある。
【0067】
第2に、ひずみメカニズムのヒンジに加えられる最大応力は、降伏強度よりも小さいことが必要であるが、この理由は、ひずみメカニズムの許容できる変形度が「ΔL」になったとしても、降伏現象が生じてはならないからである。
【0068】
第3に、上記2つの条件が満たされたとしても、ひずみメカニズムマウントの上側に固定された試料テーブル、試料およびミラーの全重量によって、重力方向への沈降現象が生じるが、値は適切なレベル未満であるべきである。
【0069】
したがって、上記3つの条件を満たすひずみメカニズム構造が望ましいと考えられる。
【0070】
ここで、本発明は、最初に満たすべきである条件を決定する。熱膨張力Fによるひずみメカニズムの変形度を推定するように、単一のひずみメカニズムの強度を計算すべきである。
【0071】
[図7]

【0072】
分かりやすくするために、[参照図8]により、単一のひずみメカニズムの外観が示されている。[参照図7]および[参照図8]の手段部の外観は互いに異なるが、構造およびメカニズムは同一である。
【0073】
単一のひずみ手段部は以下のように構成される。60は、スライド部またはスライドに対する固定部を示しており、62は、試料テーブル用の固定部を示しており、61は、スライド部と固定部とを接続するためのリンク部を示しており、また64〜70は、回転自由角度を有する6つのヒンジを示している。熱膨張力Fの場合における、単一のひずみメカニズムが変形する現象が[参照図9]に示されている。
【0074】
[図8]

【0075】
[図9]

【0076】
ここで、8つのヒンジが回転することによって、固定部の位置が「Δx」だけ変化する。このときに、変形度「Δx」を実現するために、全てのヒンジの変形によって蓄積された位置エネルギーを計算する必要がある。単一のヒンジの外観は[参照図10]に示されている。
【0077】
[図10]

【0078】
単一のヒンジの変形によって蓄積された位置エネルギーは式(1)のように表される。
【0079】
【数2】

【0080】
ここで、「ke」は、ヒンジ部の回転強度を表し、また式(2)のように計算される。
【0081】
【数3】

【0082】
また、Δx/lはヒンジの回転角度を示している。ヒンジの変形度が非常に小さかった場合、回転角度をΔx/lとして推定できる。8つのヒンジが使用されるので、全てのヒンジに蓄積された位置エネルギーは、式(4)のように計算される。
【0083】
【数4】

【0084】
単一のひずみメカニズムの強度Kを計算するために、位置エネルギー「V」が「x」で識別された場合、式(5)のように、回復力Fを計算して表すことができる。
【0085】
【数5】

【0086】
xに対して回復力Fを識別することにより、式(6)のように、単一のひずみメカニズムの強度を計算して表すことができる。
【0087】
【数6】

【0088】
式(2)〜式(6)から計算される単一のひずみメカニズムの変形度Δxは、式(7)のように表される。
【0089】
【数7】

【0090】
単一のひずみメカニズムの変形度(Δx)は、スライド部の熱変形度(ΔL)が試料テーブルに伝達されないように、ΔL(Δx>/=ΔL)を超えるべきである。したがって、式(8)の条件を満たす必要がある。
【0091】
【数8】

【0092】
第2に、ヒンジに対する応力が降伏強度未満である必要があるので、条件を考慮する必要がある。「σmax=(0.1〜0.3)σy」として設定された安全係数を考慮すると、ヒンジに対する最大応力の大きさを想定したものはσmaxである。モーメントの大きさ(Mmax)は、σmaxをヒンジに加算するために式(9)のように計算される。
【0093】
【数9】

【0094】
ここで、応力集中係数としてのKtは、式(10)のように表される。
【0095】
【数10】

【0096】
熱膨張力Fが単一のひずみメカニズムに加えられた場合、1つのリンクに加えられる力の大きさはF/4になるが、この理由は、前記熱膨張力が4つのリンクの間で均等に分散されるからである。リンクの長さは「l」であるので、リンクからなる2つのヒンジに加えられるモーメントの大きさは、Fl/4になる。それに応じて、熱膨張力によって全てのヒンジに加えられたモーメントの大きさ(=Fl/4)は、ヒンジの降伏現象を防止するために、Mmaxの大きさよりも小さいことが必要であり、また前記モーメントの大きさを式(11)のように表すことができる。
【0097】
【数11】

【0098】
試料テーブルが上部ひずみメカニズムマウントに固定された場合、過剰な重量により、固定部およびリンクが重力方向に沈降する。
【0099】
第3の条件は、適切な値未満に値を維持することである。固定部の沈降度を計算する必要がある。
【0100】
ビームが一定の断面積を有する場合、沈降式を用いれば、沈降度を計算することは容易である。しかし、所定の構造特性により断面積が一定ではないので、本発明のひずみメカニズムの場合には、この計算を行うことは容易ではない。
【0101】
したがって、沈降度を計算するときに、最悪の条件を推定すべきである。この場合、最悪の条件とは、図7のように、ひずみメカニズムのビームがヒンジおよび凹部領域と同一の断面積からなる場合を指す。
【0102】
[図11]

【0103】
ひずみメカニズムマウントの固定部の質量の総計を想定したものは、上部領域に固定される試料試験体の質量、ならびにミラーおよび試料の質量である。4つのひずみメカニズムに均等に分散される重量が作用した場合、Mg/4に等しい力が、単一のひずみメカニズムの固定部において重力方向に向かって作用するとみなすことができる。このときに、図8と同一のひずみメカニズムの沈降現象が生じる。
【0104】
[図12]

【0105】
ここで、ひずみメカニズムの沈降度「σ」は、ビーム沈降式の式(12)のように表される。
【0106】
【数12】

【0107】
ビームの断面外観を見ると(図7と図8参照)、その外観は「t」の幅と「b」の高さとを有する長方形であり、したがって、領域慣性モーメントは式(13)と同一である。
【0108】
【数13】

【0109】
それに応じて、沈降度「σ」は、式(14)のように計算される。
【0110】
【数14】

【0111】
この構造では、この値が、適切な沈降限界値(σlimit)未満であるのに十分である。
【0112】
したがって、望ましいひずみメカニズムを設計するためには、上記3つの条件の全てを満たす必要があり、またこれらの条件は式(8)、式(11)および式(14)に示されているようなものである。
【図面の簡単な説明】
【0113】
【図1】従来技術による試料移動ステージを示した図面である。
【図2】従来技術による試料移動ステージに構成されたスライドの変形状態を示した図面である。
【図3】従来技術によるスライドの変形防止メカニズムを示した図面である。
【図4】従来技術によるスライドの緩衝メカニズムを示した図面である。
【図5】従来技術による試料移動ステージの接続状態を示した図面である。
【図6】従来技術による試料移動ステージの分解状態を示した図面である。
【図7】従来技術による試料移動ステージのひずみメカニズムモジュールを示した図面である。
【図8a】本発明によるひずみメカニズムモジュールの取付状態を示した図面である。
【図8b】本発明によるひずみメカニズムモジュールの変形状態を示した図面である。
【図9a】本発明によるひずみメカニズムモジュールの取付状態を示した図面である。
【図9b】本発明によるひずみメカニズムモジュールの変形状態を示した図面である。
【図10】本発明によるひずみメカニズムモジュールの例を示した拡大図である。
【符号の説明】
【0114】
1 試料移動ステージ
10 ベースフレーム
11 ガイドレール
31 ガイドレール
20 第1のスライド
30 第2のスライド
40 試料テーブル
41 試料
42 Xバーミラー
43 Yバーミラー
50 ひずみメカニズム
52 取付部
53 緩衝孔
54 変形ライン
63 干渉計
64 受信機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スライドの変形を吸収するためのひずみメカニズムモジュールを使用する試料移動ステージであって、
ベースフレーム(10)に取り付けられかつ第1のガイドブロック(21)に沿って移動する第1のスライド(20)と、該第1のスライド(20)に取り付けられかつ第2のガイドブロック(32)に沿って移動する第2のスライド(30)とが相互横断方向に取り付けられる可動部と、
前記第2のスライド(30)に共に形成されたひずみメカニズムモジュール(50)を仲介して取り付けられた試料テーブル(40)によって試料(41)を移動させ、また前記試料テーブル(40)に相互垂直方向に取り付けられたX、Yバーミラー(42、43)によって変位を計測する移動部と、
前記可動部の動作経路に取り付けられたレーザーヘッド(61)、ビーム分割器(62)および干渉計(63)によって拡散を行い、また前記X、Yバーミラー(42、43)により受信機(62)から反射された入力ビーム干渉信号を受信することによって出力を変位信号に変換する計測部と、を使用する試料移動ステージ。
【請求項2】
前記ひずみメカニズム(50)が、上下方向に沿って一定間隔で前記第2のスライド(30)の上面を規則的に貫通する多数の緩衝孔(53)と、前記緩衝孔(53)の中心に当たるように切断され、かつ前記試料テーブル(40)が取り付けられるブリッジ部および取付部の変形空間を提供する多数の変形ライン(54)とを有し、
またスライドの変形を吸収するためのひずみメカニズムモジュールを使用するために前記形態のような形状を有する試料移動ステージである請求項1に記載のひずみメカニズム(50)。
【請求項3】
前記ひずみメカニズム(50)が、スライドの変形を吸収するためのひずみメカニズムモジュールを使用するための試料移動ステージであり、前記ひずみメカニズムモジュールが、前記第2のスライド(30)の4つのコーナーに形成された形状を有する請求項1または2に記載のひずみメカニズム(50)。
【請求項4】
前記ひずみメカニズム(50)が、スライドの変形を吸収するためのひずみメカニズムモジュールを使用するための試料移動ステージであり、前記ひずみメカニズムモジュールが、前記第2のスライド(30)の一方の側の両方のコーナーにまた他方の側の中央に形成された形状を有する請求項1または2に記載のひずみメカニズム(50)。
【請求項5】
前記ひずみメカニズム(50)が、スライドの変形を吸収するためのひずみメカニズムモジュールを使用するための試料移動ステージであり、前記ひずみメカニズムモジュールが、前記第2のスライド(30)に5つ以上のものが対称的または非対称的に配置されている形状を有する請求項1または2に記載のひずみメカニズム(50)。
【請求項6】
前記取付部(52)が、スライドの変形を吸収するためのひずみメカニズムモジュールを使用するための試料移動ステージであり、前記ひずみメカニズムモジュールが、前記試料テーブル(40)に接触する緩衝材(55)が上面に固定される形状を有する請求項2に記載の取付部(52)。
【請求項7】
スライドの変形を吸収するためのひずみメカニズムモジュールを使用するための請求項2に記載の試料移動ステージであって、前記ひずみメカニズムモジュールが、線形状、半円形状または楕円形状あるいはそれらの任意の組み合わせによって前記取付部(52)およびブリッジ部(56)の接触領域が形成されている形状を有する試料移動ステージ。
【請求項8】
前記ひずみメカニズム(50)が、スライドの変形を吸収するためのひずみメカニズムモジュールを使用するための試料移動ステージであり、前記ひずみメカニズムモジュールが、前記第2のスライド(30)に加工されているかまたは前記第2のスライド(30)に接続されている形状を有する請求項1または2に記載のひずみメカニズム(50)。
【請求項9】
前記ひずみメカニズム(50)が、スライドの変形を吸収するためのひずみメカニズムモジュールを使用するための試料移動ステージであり、前記ひずみメカニズムモジュールが、次式(1)または(3)のように前記緩衝孔(53)と前記変形ライン(54)とを調整することによって、前記取付部(52)およびブリッジ部(56)を構成する形状を有し、
【数1】

ここで、□xはひずみメカニズム部の変形度であり、□Lはスライド部の熱変形度であり、
【数2】

ここで、Fl/4はモーメントの大きさであり、Mmaxは、試料テーブルおよび試料を含む取付部の全質量であり、Fは熱膨張力であり、Lはリンクの長さであり、
【数3】

ここで、σはひずみメカニズム部の沈降度であり、σlimitはひずみメカニズム部の沈降度限界値である請求項1または2に記載のひずみメカニズム(50)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8a】
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【図8b】
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【図9a】
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【図9b】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−65147(P2009−65147A)
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−210611(P2008−210611)
【出願日】平成20年8月19日(2008.8.19)
【出願人】(508250936)スンハン・エンジニアリング・コーポレイション (4)
【出願人】(508251759)コリア・アドヴァンスト・インスティテュート・オブ・サイエンス・アンド・テクノロジー (1)
【Fターム(参考)】