ターボチャージャ付き圧縮着火エンジンシステムにおける排気ガス再循環制御方法
【課題】排出ガス規制に適合し、エンジン燃費及び性能を最適化する排気ガス再循環制御を提供する。
【解決手段】エンジン(12)、エンジンと上流で連通する吸気サブシステム(14)、エンジンと下流で連通する排気サブシステム(16)、ターボチャージャタービン(38)の上流及びターボチャージャコンプレッサ(28)の下流の排気サブシステムと吸気サブシステムとの間の高圧EGR通路(46)、及びターボチャージャタービンの下流及びターボチャージャコンプレッサ(28)の上流の排気サブシステムと吸気サブシステムとの間の低圧EGR通路(48)を備えるターボチャージャ付き圧縮着火エンジンシステム(10)における排気ガス再循環(EGR)の制御方法。排気ガス基準に適合する目標総EGR率が決定された後、目標HP/LP EGR比が決定され、決定された目標総EGR率の制約内で他のエンジンシステム基準が最適化される。
【解決手段】エンジン(12)、エンジンと上流で連通する吸気サブシステム(14)、エンジンと下流で連通する排気サブシステム(16)、ターボチャージャタービン(38)の上流及びターボチャージャコンプレッサ(28)の下流の排気サブシステムと吸気サブシステムとの間の高圧EGR通路(46)、及びターボチャージャタービンの下流及びターボチャージャコンプレッサ(28)の上流の排気サブシステムと吸気サブシステムとの間の低圧EGR通路(48)を備えるターボチャージャ付き圧縮着火エンジンシステム(10)における排気ガス再循環(EGR)の制御方法。排気ガス基準に適合する目標総EGR率が決定された後、目標HP/LP EGR比が決定され、決定された目標総EGR率の制約内で他のエンジンシステム基準が最適化される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、2005年12月20日付けで出願された米国仮特許出願第60/752,415号明細書の利益を主張する。
概して本開示の関わる分野は、ターボチャージャ付き圧縮着火エンジンシステム内での排気ガス再循環制御を含む。
【背景技術】
【0002】
ターボチャージャ付きエンジンシステムは、燃焼室で空気及び燃料を燃焼させて機械的動力に変換するエンジン、吸気ガスを燃焼室に搬送するための空気吸気サブシステム、及びエンジン排気サブシステムを備える。排気サブシステムは典型的には、エンジン燃焼室から排気ガスを運び出し、エンジン排気騒音を消音し、及びエンジン燃焼温度の上昇に伴い増加する排気ガス微粒子及び窒素酸化物(NOx)を低減する。排気ガスは多くの場合、排気ガスサブシステムから再循環され吸気サブシステムに至り、新気と混合されたうえエンジンに戻される。排気ガス再循環による不活性ガス量の増加に伴い吸気ガス中の酸素が低減されるため、エンジン燃焼温度が低下し、ひいてはNOx形成が低減される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
方法の一例示的実施形態は、エンジン、エンジンと上流で連通する吸気サブシステム、エンジンと下流で連通する排気サブシステム、ターボチャージャタービンの上流及びターボチャージャコンプレッサの下流の排気サブシステムと吸気サブシステムとの間の高圧EGR通路、及びターボチャージャタービンの下流及びターボチャージャコンプレッサの上流の排気サブシステムと吸気サブシステムとの間の低圧EGR通路を備えるターボチャージャ付き圧縮着火エンジンシステムにおける排気ガス再循環(EGR)を制御するステップを含む。初めに、排気ガス基準に適合する目標総EGR率が決定される。次に、目標HP/LP EGR比が決定され、決定された目標総EGR率の制約内で他のエンジンシステム基準が最適化される。
【0004】
本方法の例示的実施形態の好ましい当該態様に従えば、総EGR率は1つ又は複数のエンジンシステムモデルに対する入力としての代替パラメータに応じて推定され得るもので、HP若しくはLP EGR流量センサ又は総EGR流量センサにより直接計測されることはない。また、目標総EGR率はHP及び/又はLP EGR率に対する閉ループ調整により閉ループ制御もされ得る。
【0005】
本発明の他の例示的実施形態は、以下の詳細な説明から明らかとなるであろう。これらの詳細な説明及び特定の例は本発明の例示的実施形態を示すが、意図される目的は例示に過ぎず、本発明の範囲を制限することは意図されないものと理解されたい。
【0006】
本発明の例示的実施形態は、詳細な説明及び添付の図面からより十全に理解されることとなるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】例示的制御サブシステムを備えるエンジンシステムの例示的実施形態の概略図である。
【図2】図1のエンジンシステムの例示的制御サブシステムのブロック図である。
【図3】図1のエンジンシステムで使用され得るEGR制御の例示的方法のフローチャートである。
【図4】図3の方法の好ましい制御フロー部分を示すとともに総EGR推定ブロック並びに高圧及び低圧EGR開ループ制御ブロックを含むブロック図である。
【図5A】図4の推定ブロックの例示的実施形態を示す。
【図5B】図4の推定ブロックの例示的実施形態を示す。
【図5C】図4の推定ブロックの例示的実施形態を示す。
【図6A】図4の高圧及び低圧EGR開ループ制御ブロックの例示的実施形態を示す。
【図6B】図4の高圧及び低圧EGR開ループ制御ブロックの例示的実施形態を示す。
【図7】目標総EGR率に対する弁位置の例示的プロットを示すグラフである。
【図8】図3の方法の第2の制御フロー部分を示すブロック図である。
【図9】図3の方法の第3の制御フロー部分を示すブロック図である。
【図10】図3の方法の第4の制御フロー部分を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本実施形態の以下の説明は本質的に例示に過ぎず、一切、本発明、その適用又は使用の制限を意図するものではない。
【0009】
方法の例示的実施形態に従えば、排気ガス再循環(EGR)は、高圧(HP)及び低圧(LP)EGR通路を有するターボチャージャ付き圧縮着火エンジンシステムにおいて制御される。好ましくは、総EGR率が1つ又は複数のエンジンシステムモデルに対する入力としての代替パラメータに応じて推定され、これはHP若しくはLP EGR流量センサ又は総EGR流量センサにより直接計測されることはない。目標総EGR率は排気ガス基準に適合するよう決定される。次に、目標HP/LP EGR比が他の基準、例えば燃費目標値、エンジンシステム性能の照準、又はエンジンシステムの保護又は保守規格の少なくとも1つなどを、決定された目標総EGR率の制約内で最適化するよう決定される。また好ましくは、目標総EGR率はHP及び/又はLP EGR率に対する閉ループ調整により閉ループ制御もされる。以下の説明では、本方法を実行するための例示的システムが記載されるとともに、例示的方法及び例示的制御フローもまた記載される。
【0010】
例示的システム
例示的動作環境が図1に示され、これを使用して本開示のEGR制御方法が実現され得る。本方法は任意の好適なシステムを使用して実行され得るとともに、好ましくは、システム10などのエンジンシステムと連動して実行される。以下のシステム説明は単に一例示的エンジンシステムの概要を提供するものであるが、本明細書に示されない他のシステム及び構成要素もまた本開示の方法を支援し得るであろう。
【0011】
一般的にシステム10は、燃料と吸気ガスとの混合物の内燃から機械的動力を発生させるための内燃エンジン12、概してエンジン12に吸気ガスを供給するための吸気サブシステム14、及び概してエンジン12から燃焼ガスを搬出するための排気サブシステム16を備える。本明細書で使用されるとき、吸気ガスという語句には、新気と再循環された排気ガスとが含まれ得る。またシステム10は一般的に、排気サブシステム16及び吸気サブシステム14と交差して連通するターボチャージャ18も備えることで吸気を圧縮でき、それにより燃焼が改善されるとともに従ってエンジン出力が増加する。さらにシステム10は一般的に、排気サブシステム16及び吸気サブシステム14と交差して排気ガス再循環サブシステム20を備えることで排気ガスを再循環させて新気と混合でき、それによりエンジンシステム10のエミッション性能が向上する。さらにシステム10は一般的に、制御サブシステム22を備えることによりエンジンシステム10の動作を制御できる。当業者は認識するであろうことだが、任意の好適な液体及び/又は気体燃料をエンジン12に供給してエンジン内で吸気ガスと共に燃焼させるために燃料サブシステム(図示せず)が使用される。
【0012】
内燃エンジン12は、自己着火又はディーゼルエンジンのような圧縮着火エンジンなどの任意の好適な種類のエンジンであり得る。エンジン12はブロック24を備えて中にシリンダ及びピストン(個別には図示せず)を有することができ、これらはシリンダヘッド(同様に個別には図示せず)と共に、燃料と吸気ガスとの混合物を内燃させるための燃焼室(図示せず)を画成する。
【0013】
吸気サブシステム14は、好適な導管及びコネクタに加え、空気フィルタ(図示せず)を有して入ってくる空気をろ過し得る入口端26、及び入口端26の下流に吸気を圧縮するためのターボチャージャコンプレッサ28を備え得る。吸気サブシステム14はまた、ターボチャージャコンプレッサ28の下流に圧縮空気を冷却するための給気冷却器30、及び給気冷却器30の下流に冷却された空気のエンジン12への流れを絞るための吸気絞り弁32も備え得る。吸気サブシステム14はまた、絞り弁32の下流及びエンジン12の上流に吸気マニホルド34も備えることにより、絞られた空気を受け入れ得るとともにそれをエンジン燃焼室に送り込み得る。
【0014】
排気サブシステム16は、好適な導管及びコネクタに加え排気マニホルド36を備えることにより、エンジン12の燃焼室からの排気ガスを捕集し得るとともにそれを下流の排気サブシステム16の残り部分へと搬送し得る。排気サブシステム16はまた、排気マニホルド36と下流で連通するターボチャージャタービン38も備え得る。ターボチャージャ18は、可変タービンジオメトリ(VTG)型のターボチャージャ、二段式ターボチャージャ、又はウェイストゲート若しくはバイパス装置を伴うターボチャージャなどであり得る。いずれの場合にも、ターボチャージャ18及び/又は任意のターボチャージャ付属装置を調整して次のパラメータ、すなわちターボチャージャ給気圧、空気質量流量、及び/又はEGR流量の任意の1つ又は複数を変更し得る。排気サブシステム16はまた、任意の好適なエミッション装置40、例えば密結合ディーゼル酸化触媒(DOC)装置のような触媒コンバータ、窒素酸化物(NOx)吸着ユニット、微粒子フィルタなども備え得る。排気サブシステム16はまた、排気出口44の上流に配置される排気絞り弁42も備え得る。
【0015】
EGRサブシステム20は好ましくはハイブリッド又は二系統型EGRサブシステムであり、排気サブシステム16からの排気ガスの一部を吸気サブシステム14に再循環させてエンジン12で燃焼させる。従って、EGRサブシステム20は2つの通路、すなわち高圧(HP)EGR通路46及び低圧(LP)EGR通路48を備え得る。好ましくは、HP EGR通路46はターボチャージャタービン38の上流で排気サブシステム16に接続されるが、吸気サブシステム12にはターボチャージャコンプレッサ28の下流で接続される。また好ましくは、LP EGR通路48はターボチャージャタービン38の下流で排気サブシステム16に接続されるが、吸気サブシステム14にはターボチャージャコンプレッサ28の上流で接続される。内部エンジン可変バルブタイミング及びリフトを利用して内部HP EGRを誘導するなど他の形態のHP EGRを含め、排気サブシステム16と吸気サブシステム14との間の任意の他の好適な接続もまた企図される。
【0016】
HP EGR通路46は、好適な導管及びコネクタに加えHP EGR弁50を備えることにより、排気サブシステム16から吸気サブシステム14への排気ガスの再循環を制御し得る。HP EGR弁50は専有のアクチュエータを有するスタンドアロン装置であってもよく、又は吸気絞り弁32と共に共通のアクチュエータを有する複合装置に統合されてもよい。HP EGR通路46はまた、HP EGR弁50の上流、又は場合により下流にHP EGR冷却器52も備えてHP EGRガスを冷却し得る。HP EGR通路46は好ましくは、ターボチャージャタービン38の上流及び絞り弁32の下流に接続され、HP EGRガスを絞られた空気及び他の吸気ガスと混合する(空気はLP EGRを有し得る)。
【0017】
LP EGR通路48は、好適な導管及びコネクタに加えLP EGR弁54を備えることにより、排気サブシステム16から吸気サブシステム14への排気ガスの再循環を制御し得る。LP EGR弁54は専有のアクチュエータを有するスタンドアロン装置であってもよく、又は排気絞り弁42と共に共通のアクチュエータを有する複合装置に統合されてもよい。LP EGR通路48はまた、LP EGR弁54の下流、又は場合により上流にLP EGR冷却器56も備えてLP EGRガスを冷却し得る。LP EGR通路48は好ましくは、ターボチャージャタービン38の下流及びターボチャージャコンプレッサ28の上流に接続され、LP EGRガスをろ過された吸気と混合する。
【0018】
ここで図2を参照すると、制御サブシステム22は任意の好適なハードウェア、ソフトウェア、及び/又はファームウェアを備えることにより、本明細書に開示される方法の少なくとも一部分を実行し得る。例えば、制御サブシステム22は、上記で考察されるエンジンシステムアクチュエータ58の一部又は全部、並びに様々なエンジンセンサ60を備え得る。エンジンシステムセンサ60は図面上では個別に示されないが、エンジンシステムパラメータを監視するための任意の好適な装置を含み得る。
【0019】
例えば、エンジン速度センサはエンジンクランク軸(図示せず)の回転速度を計測し、エンジン燃焼室と連通する圧力センサはエンジンシリンダ圧を計測し、吸気及び排気マニホルド圧力センサはエンジンシリンダに流れ込む、及びそこから流れ出すガスの圧力を計測し、吸気質量流量センサは吸気サブシステム14に入ってくる空気流量を計測し、及びマニホルド質量流量センサはエンジン12への吸気ガスの流量を計測する。別の例において、エンジンシステム10は、エンジンシリンダへと流れる吸気ガスの温度を計測するための温度センサ、及び空気フィルタの下流及びターボチャージャコンプレッサ28の上流に温度センサを備え得る。さらなる例において、エンジンシステム10は、ターボチャージャコンプレッサ28に好適に連結される速度センサを備えてその回転速度を計測し得る。集積角度位置センサなどのスロットル位置センサが絞り弁32の位置を計測する。位置センサがターボチャージャ18の近傍に配置され、可変容量タービン38の位置を計測する。排気管温度センサが排気管出口のすぐ上流に設置され、排気サブシステム16から排出される排気ガスの温度を計測し得る。また、エミッション装置40の上流及び下流にも温度センサが設置され、その入口及び出口における排気ガスの温度を計測する。同様に、1つ又は複数の圧力センサがエミッション装置40と交差して設置され、それを通じた圧力降下を計測する。酸素(O2)センサが排気サブシステム16及び/又は吸気サブシステム14に設置され、排気ガス及び/又は吸気ガス中の酸素を計測する。最後に、位置センサがHP EGR弁50、LP EGR弁54及び排気絞り弁42の位置を計測する。
【0020】
本明細書で考察されるセンサ60に加え、任意の他の好適なセンサ及びそれらに関連するパラメータが、本開示のシステム及び方法により包含され得る。例えば、センサ60としてはまた、加速度センサ、車両速度センサ、パワートレイン速度センサ、フィルタセンサ、他の流量センサ、振動センサ、ノックセンサ、吸気圧及び排気圧センサなども挙げられるであろう。換言すれば、任意のセンサを使用して、電気的、機械的、及び化学的パラメータを含む任意の好適な物理的パラメータを検知し得る。本明細書で使用されるとき、センサという用語には、任意のエンジンシステムパラメータ及び/又はかかるパラメータの様々な組み合わせを感知するために使用される任意の好適なハードウェア及び/又はソフトウェアが含まれる。
【0021】
制御サブシステム22はさらに、アクチュエータ58及びセンサ60と連通する1つ又は複数のコントローラ(図示せず)を備えることにより、センサ入力を受信及び処理し得るとともにアクチュエータ出力信号を送信し得る。コントローラは1つ又は複数の好適なプロセッサ及びメモリデバイス(図示せず)を備え得る。メモリは、エンジンシステム10の機能の少なくとも一部を提供するとともにプロセッサにより実行され得るデータ及び命令の記憶域を提供するよう構成され得る。本方法の少なくとも一部分は、1つ又は複数のコンピュータプログラム及びメモリ内にルックアップテーブル、マップ、モデルなどとして格納される様々なエンジンシステムデータ又は命令により可能となり得る。いずれの場合にも制御サブシステム22は、センサ60から入力信号を受信し、センサ入力信号を踏まえて命令又はアルゴリズムを実行し、及び好適な出力信号を様々なアクチュエータ58に送信することにより、エンジンシステムパラメータを制御する。
【0022】
制御サブシステム22は、コントローラにいくつかのモジュールを備え得る。例えば、トップレベルエンジン制御モジュール62が任意の好適なエンジンシステム入力信号を受信及び処理するとともに出力信号を吸気制御モジュール64、燃料制御モジュール66、及び任意の他の好適な制御モジュール68に伝達する。以下でより詳細に考察されるであろうとおり、トップレベルエンジン制御モジュール62はエンジンシステムパラメータセンサ60の1つ又は複数からの入力信号を受信及び処理して任意の好適な方法で総EGR率を推定する。
【0023】
EGR率を推定する様々な方法が当業者に知られている。本明細書で使用されるとき、語句「総EGR率」はその構成パラメータの1つ又は複数を含むとともに、次の方程式により表すことができ、
【数1】
式中、
MAFは吸気サブシステムへの新気質量流量であり、
MEGRは吸気サブシステムへのEGR質量流量であり、
MENGはエンジンへの吸気ガス質量流量であり、及び
rEGRはエンジンに流入する吸気ガスのうち再循環された排気ガスに由来する部分を含む。
【0024】
上記の方程式から、総EGR率は、新気質量流量センサ及びセンサ又はその推定値からの吸気ガス質量流量を使用して、又は総EGR率それ自体の推定値及び吸気ガス質量流量を使用して計算され得る。いずれの場合にも、トップレベルエンジン制御モジュール62は好適なデータ入力を備えて1つ又は複数の質量流量センサ計測値又は1つ又は複数のエンジンシステムモデルに対する入力としての推定値から総EGR率を直接推定し得る。
【0025】
本明細書で使用されるとき、用語「モデル」には、ルックアップテーブル、マップ、アルゴリズムなどの変数を使用するものを表す任意の構築が含まれる。モデルは、任意の所定のエンジンシステムの正確な設計及び性能仕様に特有且つ特定のアプリケーションである。一例において、エンジンシステムモデルはまた、エンジン速度及び吸気マニホルドの圧力及び温度に基づき得る。エンジンシステムモデルはエンジンパラメータが変化するごとに更新されるとともに、エンジン速度、並びに吸気圧、温度、及び一般ガス定数により決定され得るエンジン吸気密度を含む入力を使用する多次元ルックアップテーブルであり得る。
【0026】
総EGR率は、直接的に、又はその構成要素を介して間接的に、推定又は感知される空気質量流量、O2、又はエンジンシステム温度などの1つ又は複数のエンジンシステムパラメータと相関し得る。かかるパラメータは、総EGR率との相関について任意の好適な方式で分析され得る。例えば、総EGR率は数式上、他のエンジンシステムパラメータと関連し得る。別の例において、エンジンキャリブレーション又はモデリングから、総EGR率は経験的及び統計的に、他のエンジンシステムパラメータと関連し得る。いずれの場合にも、総EGR率が任意の他のエンジンシステムパラメータと確実に相関していることが認められる場合、当該相関は数式的に、経験的に、音響的に等、モデル化され得る。例えば、経験的モデルは好適な試験から開発され得るとともに、総EGR率値を他のエンジンシステムパラメータ値と相互参照し得るルックアップテーブル及びマップなどを挙げることができる。
【0027】
従って、総EGR率及び/又は個別のHP及び/又はLP EGR流量の直接的なセンサ計測値の代わりとしてエンジンシステムパラメータが使用され得る。従って、総EGR、HP EGR、及びLP EGR流量センサが不要となるため、エンジンシステムの費用及び重量を節減し得る。かかるセンサが不要であることにより、他のセンサ関連ハードウェア、ソフトウェア、並びに配線、コネクタピン、コンピュータ処理電源及びメモリなどの費用もまた不要となる。
【0028】
また、トップレベルエンジン制御62モジュールが好ましくは、ターボチャージャ給気圧設定値及び目標総EGR設定値を計算するとともに、それらの設定値を吸気制御モジュール64に送信する。同様に、トップレベルエンジン制御モジュール62は好適なタイミング及び燃料注入設定値を計算するとともにそれらを燃料制御モジュール66に送信し、及び他の設定値を計算するとともにそれらを他の制御モジュール68に送信する。燃料制御モジュール66及び他の制御モジュール68がかかる入力を受信及び処理するとともに、燃料インジェクタ、燃料ポンプ、又は他の装置などの任意の好適なエンジンシステム装置に対する好適なコマンド信号を生成する。
【0029】
あるいは、トップレベルエンジン制御モジュール62は、目標総EGR設定値ではなく、給気圧設定値及び総吸気質量流量設定値(破線で示されるとおり)を計算及び送信してもよい。この代替例においては、続いて総EGR設定値が空気質量流量設定値から決定され、これは実際の総EGR率が実際の質量流量センサの読み取り値から推定される場合とほぼ同様の方法による。第2の代替例においては、全制御方法を通じて空気質量流量が総EGR率に代わる。これにより使用されるデータのタイプ並びにHP及びLP EGR流量目標値の設定方法が変わるものの、コントローラの基本構成及び制御方法のフローは同じである。
【0030】
吸気制御モジュール64は、トップレベルエンジン制御モジュール62から受信する設定値に加え、任意の好適なエンジンシステムパラメータ値を受信する。例えば、吸気制御モジュール64は、ターボチャージャ給気圧などの吸気及び/又は排気サブシステムパラメータ値、及び質量流量を受信する。吸気制御モジュール64は、受信したパラメータ値を処理するトップレベル吸気制御サブモジュール70を備え得るとともに、LP及びHP EGR設定値などの任意の好適な出力、及びターボチャージャ設定値を、それぞれLP EGR制御サブモジュール72、HP EGR制御サブモジュール74、及びターボチャージャ制御サブモジュール76に送信する。LP EGR制御サブモジュール72、HP EGR制御サブモジュール74、及びターボチャージャ制御サブモジュール76は、かかる吸気制御サブモジュール出力を処理するとともに、LP EGR弁54及び排気絞り弁42、HP EGR弁50及び吸気絞り弁32、及び1つ又は複数のターボチャージャアクチュエータ19などの様々なエンジンシステム装置に対する好適なコマンド信号を生成する。様々なモジュール及び/又はサブモジュールは図示されるとおり別個であってもよく、又は1つ又は複数の複合モジュール及び/又はサブモジュールとして統合されてもよい。
【0031】
例示的方法
ここではLP及びHP EGRの制御方法が提供され、これは上記のエンジンシステム10の動作環境内で1つ又は複数のコンピュータプログラムとして実行され得る。当業者は、本方法が他の動作環境内の他のエンジンシステムを使用して実行されてもよいこともまた認識するであろう。ここで図3を参照すると、例示的方法300がフローチャートの形式で示されている。
【0032】
ステップ305に示されるとおり、方法300は任意の好適な様式で開始され得る。例えば、方法300は図1のエンジンシステム10のエンジン12の始動から開始されてもよい。
【0033】
ステップ310において、新気がエンジンシステムの吸気サブシステムに引き込まれるとともに、吸気ガスが吸気サブシステムを通じてエンジンシステムのエンジンに導入される。例えば、新気は吸気システム14の入口26に引き込まれ得るとともに、吸気ガスは吸気マニホルド34を通じてエンジン12に導入され得る。
【0034】
ステップ315において、排気ガスがエンジンシステムの排気サブシステムを通じてエンジンから排出される。例えば、排気ガスは排気マニホルド36を通じてエンジン12から排出され得る。
【0035】
ステップ320において、排気ガスが排気サブシステムから高圧又は低圧EGR通路の一方又は双方を通じてエンジンシステムの吸気サブシステムへと再循環される。例えば、HP及びLP排気ガスは、排気サブシステム16から、HP EGR通路46及びLP EGR通路48を通じて吸気サブシステム14へと再循環されてもよい。
【0036】
ステップ325において、総EGR率の指標となる1つ又は複数の代替パラメータが感知され得る。例えば、代替パラメータとしては、空気質量流量、O2、及び/又はエンジンシステム温度を挙げることができ、これらはエンジンシステム10のそれぞれのセンサ60により計測され得る。
【0037】
ステップ330において、目標総EGR率は排気ガス基準に適合するよう決定される。例えば、トップレベルエンジン制御モジュール62は、任意の好適なエンジンシステムモデルを使用して現在のエンジン動作パラメータを所望の総EGR率値と相互参照することにより、所定の排出基準に適合し得る。本明細書で使用されるとき、用語「目標」には、単一の値、複数の値、及び/又は任意の値の範囲が含まれる。また、本明細書で使用されるとき、用語「基準」には単数形及び複数形が含まれる。然るべきEGR率を決定するために使用される基準の例としては、速度及び負荷に基づく較正表、シリンダ温度目標値を決定するとともにEGR率に変換するモデルに基づく手法及び過渡動作又は定常状態動作などの動作条件が挙げられる。米国環境保護庁(Environmental Protection Agency:EPA)などの環境当局により絶対排出基準が規定され得る。
【0038】
ステップ335において、目標HP/LP EGR比が決定され、1つ又は複数の他のエンジンシステム基準、例えば燃費目標値、エンジンシステム性能の照準、又はエンジンシステムの保護又は保守規格などが、ステップ330において決定される目標総EGR率による制約に応じて最適化される。
【0039】
ステップ340において、ステップ335において決定される目標HP/LP EGR比に従い、個別のHP EGR及び/又はLP EGR設定値が生成され得る。
【0040】
ステップ345において、HP及びLP EGR設定値に対応する目標HP及びLP EGR開度が決定され得る。例えば、開ループコントローラがモデルを使用してHP及びLP EGR設定値及び他のエンジンシステムパラメータを処理することにより、開度が生成され得る。
【0041】
ステップ350において、先に上記で考察されたとおり任意の好適なエンジンシステムモデルに対する入力として使用される代替パラメータに応じて、総EGR率が推定され得る。例えば、総EGR率推定には、数式的又は経験的に代替パラメータを総EGR率と相関付けるエンジンシステムモデルが含まれ得る。モデルが含むルックアップテーブル、マップなどは、EGR率値を代替パラメータ値と相互参照し得るものであるとともに、エンジン速度及び吸気マニホルドの圧力及び温度に基づき得る。いずれの場合にも、実際に個別のHP及び/又はLP EGR流量センサ又は複合型総EGR流量センサを使用して総EGR率が直接計測されることはない。
【0042】
ステップ355において、個別のHP EGR及び/又はLP EGR率の一方又は双方が、推定された総EGR率を伴う閉ループ制御を使用して調整され得る。HP及び/又はLP EGR率は、それぞれHP及び/又はLP EGR設定値又は弁及び/又はスロットル開度のいずれか又は双方の閉ループ制御を介して調整されてもよい。例えば、及び以下でより詳細に考察されるであろうとおり、閉ループコントローラが推定された総EGR率をプロセス変数入力として、及び総EGR率設定値を設定値入力として処理し、それによりHP及び/又はLP EGR設定値出力トリムコマンドが生成され得る。従って、目標総EGR率は好ましくはHP及び/又はLP EGR率に対する閉ループ調整により閉ループ制御される。かかる調整により実際のHP/LP EGR比が変化し得る。
【0043】
ステップ360において、ステップ350からのHP EGR及びLP EGR開度が、1つ又は複数のHP EGR弁、LP EGR弁、吸気絞り弁、又は排気絞り弁にそれぞれ適用され得る。HP及び/又はLP EGR開度は開ループ制御ブロックの下流で直接的に、又は開ループ制御ブロックの上流で設定値調整を介して間接的に調整される。
【0044】
例示的制御フロー
ここで図4の制御ダイアグラムを参照すると、図3の制御方法300の一部がEGR制御フロー400としてブロック図の形式で示されている。制御フロー400は、例えば図2の例示的制御サブシステム内で、及びより詳細には、その吸気制御モジュール64内で実行され得る。従って図4は、HP EGR制御サブモジュール又はブロック74、LP EGR制御サブモジュール又はブロック72及びターボチャージャブースト制御サブモジュール又はブロック76を示す。同様に、最適化ブロック402、EGR率推定部ブロック404、及びEGR率閉ループ制御ブロック406もまた、吸気制御モジュール64内、及びより詳細には、図2のトップレベル吸気制御サブモジュール70内で実行され得る。
【0045】
第一に、及び図5A〜5Cも参照すると、実総EGR率推定部ブロック404は好ましくは、エンジン負荷、エンジン速度、ターボチャージャ給気圧、及びエンジンシステム温度などの他の標準的なエンジンシステムパラメータに加え、実際の総EGR率の代替パラメータを使用して実行される。例えば、図5Aは好ましい代替パラメータが空気質量流量414aであることを示し、これは任意の好適な空気質量流量推定値又は吸気質量流量センサなどからの読み取り値から得ることができる。別の例において、図5Bは代替パラメータが、吸気サブシステム14に配置されるO2センサのようなO2センサなどからの酸素パーセンテージ414bであり得ることを示す。例えば、O2センサは全領域空燃比センサ(UEGO)であってもよく、これは吸気マニホルド34に位置し得る。さらなる例において、図5Cは代替パラメータが、温度センサから得られる吸気サブシステム及び排気サブシステム温度414cであり得ることを示す。例えば、空気入口温度センサなどからの吸気温度、排気温度センサなどからの排気温度、及び吸気マニホルド温度センサなどからのマニホルド温度が使用され得る。上記のいずれの手法においても、実総EGR率416は1つ又は複数の代替パラメータタイプから推定され得る。
【0046】
第二に、及び再び図4を参照すると、最適化ブロック402が様々なエンジンシステム入力を受信及び処理して最適なHP/LP EGR比を特定するとともに当該比に従いHP EGR設定値を生成する。例えば、最適化ブロック402は、エンジンシステム10の対応するセンサなどからエンジン負荷信号407及びエンジン速度信号408を受信し得る。エンジン負荷信号407としては、マニホルド圧力、燃料注入流量等の任意のパラメータを挙げることができる。最適化ブロック402はまた、トップレベルエンジン制御モジュール62などから総EGR率設定値418も受信し得る。
【0047】
最適化ブロック402は、最適なHP/LP EGR比を特定するとともに対応するHP EGR設定値を生成するうえで燃費基準を優先させ得る。燃費最適化により、最適化ブロック402は任意の好適な正味ターボチャージャ効率モデルを含んでもよく、これはポンプ損失、並びにタービン及びコンプレッサ効率などの様々なパラメータを包含する。
効率モデルは、エンジン吸気サブシステム14の原理に基づく数学的表現、一組のエンジンシステム較正表などを含み得る。燃費基準を満たすよう所望のEGR比を決定するために使用される基準の例としては、燃費に負の影響を及ぼす傾向のある吸気又は排気スロットルの閉鎖の必要なしに総EGR率の達成が可能な比の設定を挙げることができ、又はこの比が最高燃費に最適な吸気空気温度を達成するよう調整され得る。
【0048】
最適化ブロック402はまた、燃費基準より、任意の好適な目的上の他のエンジンシステム基準の最適化を優先し得る。例えば、燃費基準よりHP/LP EGR比の提供が優先されてもよく、この比により運転者の車両加速要求に応えるトルク出力の増加など、エンジンシステム性能の向上が提供される。この場合、コントローラについてはLP EGRの割合がより高いほどターボチャージャの高速化が可能となり、ターボラグが低減されるため有利であり得る。別の例において、異なるHP/LP EGR比の提供が優先されることにより、ターボチャージャの過速条件又はコンプレッサ先端の過剰温度の回避、又はターボチャージャの凝縮液形成の低減など、エンジンシステム10が保護され得る。さらなる例において、別のHP/LP EGR比の提供が優先されることにより、吸気又は排気サブシステム温度に作用するなどしてエンジンシステム10が保守され得る。例えば、排気サブシステム温度を上昇させてディーゼル微粒子フィルタを再生し得るとともに、吸気温度を低下させてエンジン12を冷却し得る。さらなる例として、吸気空気温度を制御することにより入口吸気通路において形成する可能性のある凝縮水を低減し得る。
【0049】
いずれの場合にも、最適化ブロック402はそのモデルに従い入力を処理して目標HP/LP EGR比を決定するとともに、次にHP EGR設定値420を生成し、これが下流のHP EGR制御ブロック74及び演算ノード422に供給され、演算ノード422はトップレベルエンジン制御モジュール62から総EGR率設定値418もまた受信することでLP EGR設定値424がもたらされる。
【0050】
第三に、及びなお図4を参照すると、総EGR率閉ループ制御ブロック406は、PIDコントローラブロックなどの総EGR率を制御するための任意の好適な閉ループ制御手段であり得る。閉ループ制御ブロック406は設定値入力406aを含んでトップレベルエンジン制御モジュール62から目標総EGR率設定値を受信するとともに、さらにプロセス変数入力406bを含んで推定部ブロック404から実総EGR率推定値を受信する。総EGR率制御ブロック406はこれらの入力を処理してフィードバック制御信号又はトリムコマンド406cを生成し、これは別の演算ノード426でLP EGR設定値424と合計され下流でLP EGR制御ブロック72において入力される。かかるトリム調整は同様に、又は代替的に、LP EGR弁及び/又は排気絞り弁パーセンテージ開放コマンドに対する調整として計算され得るとともにLP EGR開ループ制御ブロック72の後に加算され得る。従って、制御ブロック406及び関連ノードは、開ループ制御ブロック72とその下流側で通信することによっても弁及びスロットル開度に好適な設定値を調整し得るであろう。
【0051】
HP EGR流量は開ループ制御されるのみであることから、目標総EGR率を達成するためLP EGR流量又はLP EGR率が閉ループ制御ブロック406により調整される。より具体的には、排気エミッション及びエンジン燃費は双方とも総EGR率に大きく依存し、且つそれほどではないにせよHP/LP EGR比にもある程度依存するため、最大限に制御するべく総EGR率が閉ループ制御される一方、最大限の費用効果及び効率のためHP及び/又はLP EGR率及び/又はHP/LP EGR比が少なくとも部分的に開ループ制御される。これらの開ループ制御ブロック72、74は、良好な応答時間を提供し、コントローラの相互依存性を低減し、且つセンサ信号の過渡性及び外乱の影響を低減する。これは一例示的手法であるが、以下では図8〜10を参照して他の手法が考察される。
【0052】
第四に、LP EGR制御ブロック72及びHP EGR制御ブロック74は、ターボチャージャ給気圧409並びにエンジン負荷入力407及びエンジン速度入力408に加え、それらの各LP及びHP EGR設定値を受信する。LP EGR制御ブロック72及びHP EGR制御ブロック74はかかる入力を受信してそれらの各LP及びHP EGRアクチュエータを開ループ又はフィードフォワード制御する。例えば、LP EGR制御ブロック72及びHP EGR制御ブロック74は、LP EGR弁コマンド430及び/又は排気スロットルコマンド432、及びHP EGR弁コマンド438及び/又は吸気スロットルコマンド440を出力する。LP EGR制御ブロック72及びHP EGR制御ブロック74は、1つ又は複数のモデルを使用してHP及びLP EGR流量を好適なHP及びLP EGR弁及び/又はスロットル位置と相関付ける。
【0053】
図6A及び6Bに示されるとおり、LP EGR制御ブロック72及びHP EGR制御ブロック74は様々な開ループ制御モデルを含み得る。例えば、LP EGR制御ブロック72は任意の好適なモデル426を含むことでLP EGR設定値424をLP EGR弁位置と相関付け、目標HP/LP EGR比の達成を支援し得る。また、LP EGR制御ブロック72は任意の好適なモデル428を含むことでLP EGR設定値424を排気スロットル位置と相関付け、目標HP/LP EGR比の達成を支援し得る。モデル426、428は、エンジン負荷407、エンジン速度408、及びターボチャージャ給気圧409などの任意の好適な入力を受信し得る。モデル426、428は、実行されるとそれぞれLP EGR弁コマンド430及び/又は排気スロットルコマンド432を生成し、これらはそれぞれのアクチュエータにより使用される。アクチュエータは開ループモードで動作してもよく、又はアクチュエータ位置を計測するための任意の好適なセンサと動作上連結されるとともにコマンドを調整して目標パーセンテージを達成してもよいことに留意されたい。
【0054】
同様に、HP EGR制御ブロック74は任意の好適なモデル434を含むことでHP EGR設定値420をHP EGR弁位置と相関付け、目標HP/LP EGR比の達成を支援し得る。また、HP EGR制御ブロック74は任意の好適なモデル436も含むことでHP EGR設定値420を吸気スロットル位置と相関付け、目標HP/LP EGR比の達成を支援し得る。さらに、モデル434、436は、エンジン負荷407、エンジン速度408、及びターボチャージャ給気圧409などの任意の好適な入力を受信し得る。モデル434、436は、実行されるとそれぞれHP EGR弁コマンド438及び/又は吸気スロットルコマンド440を生成し、これらはそれぞれのアクチュエータにより使用される。
【0055】
図7は、目標総EGR率に対する例示的LP EGR弁及び排気スロットル開度のグラフを示す。示されるとおり、絞り弁42は約0%EGRにおいて実質的に閉鎖されているとともに徐々に開放され約20%EGRで実質的に100%の開放位置となり、一方LP EGR弁54は約0%EGRから約20%EGRまで実質的に閉鎖されたままである。
その後、排気スロットル42は総EGRが約70%に達するまで100%開放されたままであり、及びLP EGR弁54は徐々に開放され約70%EGRで実質的に100%の開放となる。その後、LP EGR弁54は実質的に100%開放されたまま保たれる一方、排気絞り弁42は徐々に閉鎖され100%EGRで実質的に閉鎖される。単一の組み合わされたLP EGR及び排気絞り弁が今しがた記載したような弁開放を実質的に達成し得る限り、2つの別個の弁ではなく、かかる一体の弁装置が使用され得るであろう。
【0056】
再び図4を参照すると、ターボチャージャブースト制御ブロック76は、好適なPID制御ブロックなどの、ターボチャージャアクチュエータを調整して安全なターボ動作範囲内で目標給気圧を達成するための任意の好適な閉ループ制御手段である。制御ブロック76は設定値入力76aを含むことでトップレベルエンジン制御モジュール62からブースト設定値を、及びターボチャージャブーストセンサから実給気圧入力76bを受信し得る。制御ブロック76はこれらの入力を処理するとともに可変タービンジオメトリコマンド444などの任意の好適なターボチャージャコマンド出力を生成してターボチャージャ18の可変ベーンを調整する。
【0057】
ここで図8を参照すると、好ましい制御フロー400の代わりに代替的制御フロー800が使用され得る。この実施形態は図4の実施形態と多くの点で類似しているとともに、実施形態間で同じ数字は、図面のいくつかの図を通じて同様の、又は対応する要素をほぼ示す。加えて、前の実施形態の記載が参照により援用されるとともに、ここでは基本的に共通の主題は繰り返されないものとする。
【0058】
代替的制御フロー800はLP EGRではなくHP EGRの閉ループ調整を含む。
換言すれば、LP EGR設定値424’ではなくHP EGR設定値420’が調整されることにより総EGR率が制御され得る。従って、閉ループ制御ブロック406は制御信号を生成してHP EGR率を−LP EGR率ではなく−調整し得る。制御戦略のこの変更に適合させるため、最適化ブロック402’が提供され、HP EGR設定値420ではなくLP EGR設定値424’が出力され得る。かかるトリム調整は同様に、又は代替的に、HP EGR弁及び/又は吸気絞り弁パーセンテージ開放コマンドに対する調整として計算され得るとともにHP EGR開ループ制御ブロック74の後に加算され得る。従って、制御ブロック406及び関連ノードは開ループ制御ブロック74とその下流側で通信することによっても弁及びスロットル開度について好適な設定値を調整し得るであろう。それ以外は、フロー800はフロー400と実質的に同様である。
【0059】
ここで図9を参照すると、好ましい制御フロー400の代わりに第2の制御フロー900が使用され得る。この実施形態は図4の実施形態と多くの点で類似しているとともに、実施形態間で同じ数字は、図面のいくつかの図を通じて同様の、又は対応する要素をほぼ示す。加えて、前の実施形態の記載が参照により援用されるとともに、ここでは基本的に共通の主題は繰り返されないものとする。
【0060】
第2の制御フロー900において、閉ループ制御がHP及びLP EGR設定値と同じ比率でHP及びLP EGR率に割り当てられ得る。換言すれば、HP及びLP EGR率は双方ともそれらの各HP及びLP EGR設定値に応じて閉ループ調整される。
【0061】
制御戦略のこの変更を促進するため、閉ループ制御ブロック406はそのトリムコマンド406cを、フロー400のように上流演算ノード426を介してLP EGR制御ブロック72のみに出力することはない。むしろ、トリムコマンドはLP EGR制御ブロック72及びHP EGR制御ブロック74の双方に出力される。この変更をさらに促進するため、比例演算ブロック950、952がそれぞれHP及びLP EGR設定値及び総EGR設定値418を受信する。演算ブロック950、952からの比例出力は乗算演算ブロック954、956で受信され、それらに対し閉ループトリムコマンド406cが比例割当てされる。乗算出力は下流演算ノード426、926でLP及びHP EGR設定値と合計され、下流でLP EGR制御ブロック72及びHP EGR制御ブロック74において入力される。好適なチェックが演算ブロック内で実施され、総EGR率設定値が0のときに0で除算されることが回避され得るであろう。それ以外の点では、フロー900はフロー400及び/又は800と実質的に同様である。
【0062】
ここで図10を参照すると、好ましい制御フロー400に代わり第3の例示的制御フロー1000が使用され得る。この実施形態は図4の実施形態と多くの点で類似しているとともに、実施形態間で同じ数字は、図面のいくつかの図を通じて同様の、又は対応する要素をほぼ示す。加えて、前の実施形態の記載が参照により援用されるとともに、ここでは基本的に共通の主題は繰り返されないものとする。
【0063】
第3の制御フロー1000において、閉ループ制御はLP EGR開ループ制御ブロック72とHP EGR開ループ制御ブロック74との間を任意の所定の瞬間のエンジン動作条件に応じて交互に切り換えられ得る。換言すれば、HP又はLP EGR設定値のいずれも閉ループ制御により調整され得る。例えば、HP EGRが閉ループ制御されることにより、エンジンシステム温度が比較的高いとき、又は総EGR率の急速な変更が必要とされるとき、又はターボチャージャ性能がそれほど重要ではないか、若しくは必要とされないときの、ターボチャージャでの凝縮が回避される。
【0064】
制御戦略の変更を達成するため、閉ループ制御ブロック1006は、フロー400のように上流演算ノード426を介してLP EGR制御ブロック72のみに出力を提供することはない。むしろ、制御ブロック1006は出力をLP EGR制御ブロック72及びHP EGR制御ブロック74の双方に提供する。閉ループ制御ブロック1006は設定値入力1006aを含むことでトップレベルエンジン制御モジュール62から目標総EGR率設定値418を受信し得るとともに、さらにプロセス変数入力1006bを含むことで推定部ブロック404から実総EGR率推定値を受信し得る。総EGR率制御ブロック1006はこれらの入力を処理し、次の代替的トリムコマンド、すなわち演算ノード426においてLP EGR設定値424と合計して下流でLP EGR制御ブロック72において入力するためのLP EGRトリムコマンド1006c、及び別の演算ノード1026においてHP EGR設定値420と合計して下流でHP EGR制御ブロック74において入力するためのHP EGRトリムコマンド1006dを生成する。制御ブロック1006が2つの出力1000cと1000dとの間を切り換えられることによって、LP EGR率又はHP EGR率が閉ループ制御ブロック1006により調整され、目標総EGR率が達成され得る。それ以外の点では、フロー1000はフロー400及び/又は800と実質的に同様である。
【0065】
上記の様々な例示的実施形態の1つ又は複数が次の利点の1つ又は複数を含み得る。第一に、何よりまず排出ガス規制に適合し、及び次にエンジン燃費及び性能を最適化するとともにエンジンシステムを保護及び保守するような方法で、総目標EGR率がHP及びLP EGR通路に割り当てられ得る。第二に、費用がかかり、エンジンシステムを複雑にし、故障モードを招く、個別の総EGR、HP EGR、又はLP EGR流量センサの使用が必要ない。第三に、1つの標準的閉ループ制御手段を使用して目標総EGR率並びに個別のHP及びLP EGR流量を制御し得るため、現行のエンジン制御アーキテクチャにおける実用的且つ費用効果の高い実現が可能となる。第四に、単一の共通アクチュエータにより制御される複合型LP EGR弁及び排気絞り弁が使用され得るとともに、同様に、単一の共通アクチュエータにより制御される複合型HP EGR弁及び吸気絞り弁もまた使用され得る。
【0066】
上述される本発明の実施形態は本質的に単なる例示であり、従ってそれらの変形例は、本発明の精神及び範囲からの逸脱とは見なされないものとする。
【0067】
本発明は、以下のような態様であっても良い。
(1)エンジン、前記エンジンと上流で連通する吸気サブシステム、前記エンジンと下流で連通する排気サブシステムを備え、且つ排気絞り弁、ターボチャージャタービンの上流及びターボチャージャコンプレッサの下流の前記排気サブシステムと吸気サブシステムとの間の高圧EGR通路を備え、且つHP EGR弁、及び前記ターボチャージャタービンの下流及び前記ターボチャージャコンプレッサの上流の前記排気サブシステムと吸気サブシステムとの間の低圧EGR通路を備え、且つLP EGR弁を備えるターボチャージャ付きエンジンシステムにおいて排気ガス再循環(EGR)を制御する方法であって、新気を前記吸気サブシステムに引き込むステップ、前記吸気サブシステムを通じて吸気ガスを前記エンジンに導入するステップ、前記排気サブシステムを通じて排気ガスを前記エンジンから排出するステップ、前記排気サブシステムから前記高圧又は低圧EGR通路の少なくとも1つを通じて前記吸気サブシステムへと排気ガスを再循環させるステップ、総EGR率の指標となる1つ又は複数の代替パラメータを感知するステップ、少なくとも1つのエンジンシステムモデルに対する入力としての前記感知された代替パラメータに応じて、且つEGR流量センサを使用せず、総EGR率を推定するステップ、排気ガス基準に適合する目標総EGR率を決定するステップ、目標HP/LP EGR比を決定して前記決定された目標総EGR率の制約内で燃費基準を最適化するステップ、前記決定された目標HP/LP EGR比に従いHP EGR設定値及びLP EGR設定値を生成するステップ、前記HP及びLP EGR設定値に対応する目標HP及びLP EGR弁並びに排気絞り弁開度を決定するステップ、前記推定された総EGR率をプロセス変数入力として、及び前記目標総EGR率を設定値入力として処理することにより前記設定値又は開度の少なくとも1つを調整するステップ、及び前記HP EGR及びLP EGR弁並びに排気絞り弁開度を前記HP EGR及びLP EGR弁並びに排気絞り弁に適用するステップ、を含む方法。
(2)前記代替パラメータが、空気質量流量、O2、又はエンジンシステム温度の少なくとも1つを含む、(1)に記載の方法。
(3)前記総EGR率を推定するステップが、前記エンジンシステムモデルを使用して数式的又は経験的に前記代替パラメータを前記総EGR率と相関付けるステップを含み得る、(1)に記載の方法。
(4)前記エンジンシステムモデルが、EGR率値を代替パラメータ値と相互参照するルックアップテーブル又はマップの少なくとも1つを含む、(3)に記載の方法。
(5)前記エンジンシステムモデルがエンジン速度及び吸気マニホルドの圧力及び温度に基づく、(4)に記載の方法。
(6)前記目標HP/LP EGR比を決定するステップが、前記決定された目標総EGR率の制約内で、前記燃費基準より他のエンジンシステム基準の方を選んで優先するステップを含む、(1)に記載の方法。
(7)前記他のエンジンシステム基準がエンジンシステム性能を含む、(6)に記載の方法。
(8)前記他のエンジンシステム基準がエンジンシステム保護規格又は保守規格の少なくとも1つをさらに含む、(7)に記載の方法。
(9)前記ターボチャージャを閉ループ制御するステップをさらに含む、(1)に記載の方法。
(10)前記LP EGR弁が吸気絞り弁を含み、前記弁が共通アクチュエータにより動作する、(1)に記載の方法。
(11)前記HP EGR弁が排気絞り弁を含み、前記弁が共通アクチュエータにより動作する、(1)に記載の方法。
(12)目標HP/LP EGR比を決定する前記ステップが、ターボチャージャ効率モデルを使用するステップを含む、(1)に記載の方法。
(13)前記LP EGR設定値を閉ループ制御により調整するステップをさらに含む、(1)に記載の方法。
(14)目標HP及びLP EGR開度を決定する前記ステップが、エンジン負荷、エンジン速度、及びターボチャージャ給気圧を入力として伴う開ループモデルを使用するステップを含む、(1)に記載の方法。
(15)前記排気絞り弁が約0%EGRで実質的に閉鎖されているとともに徐々に開放されて約20%EGRで実質的に100%の開放位置となる一方、前記LP EGR弁が約0%EGRから約20%EGRまで実質的に閉鎖されたままであり、その後、前記排気絞り弁は総EGRが約70%に達するまで実質的に100%開放されたままであるとともに、前記LP EGR弁は徐々に開放され約70%EGRで実質的に100%の開放となり、その後、前記LP EGR弁が実質的に100%開放されたまま保たれる一方、前記排気絞り弁が徐々に閉鎖され約100%EGRで実質的に閉鎖されるように前記開度が適用される、(14)に記載の方法。
(16)前記HP EGR設定値を閉ループ制御により調整するステップをさらに含む、(1)に記載の方法。
(17)前記HP及びLP設定値の比率に従い前記HP及びLP EGR設定値を閉ループ制御により調整するステップをさらに含む、(1)に記載の方法。
(18)任意の所定の瞬間のエンジン動作条件に応じて前記HP及びLP EGR設定値の一方又は他方を閉ループ制御により調整するステップをさらに含む、(1)に記載の方法。
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、2005年12月20日付けで出願された米国仮特許出願第60/752,415号明細書の利益を主張する。
概して本開示の関わる分野は、ターボチャージャ付き圧縮着火エンジンシステム内での排気ガス再循環制御を含む。
【背景技術】
【0002】
ターボチャージャ付きエンジンシステムは、燃焼室で空気及び燃料を燃焼させて機械的動力に変換するエンジン、吸気ガスを燃焼室に搬送するための空気吸気サブシステム、及びエンジン排気サブシステムを備える。排気サブシステムは典型的には、エンジン燃焼室から排気ガスを運び出し、エンジン排気騒音を消音し、及びエンジン燃焼温度の上昇に伴い増加する排気ガス微粒子及び窒素酸化物(NOx)を低減する。排気ガスは多くの場合、排気ガスサブシステムから再循環され吸気サブシステムに至り、新気と混合されたうえエンジンに戻される。排気ガス再循環による不活性ガス量の増加に伴い吸気ガス中の酸素が低減されるため、エンジン燃焼温度が低下し、ひいてはNOx形成が低減される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
方法の一例示的実施形態は、エンジン、エンジンと上流で連通する吸気サブシステム、エンジンと下流で連通する排気サブシステム、ターボチャージャタービンの上流及びターボチャージャコンプレッサの下流の排気サブシステムと吸気サブシステムとの間の高圧EGR通路、及びターボチャージャタービンの下流及びターボチャージャコンプレッサの上流の排気サブシステムと吸気サブシステムとの間の低圧EGR通路を備えるターボチャージャ付き圧縮着火エンジンシステムにおける排気ガス再循環(EGR)を制御するステップを含む。初めに、排気ガス基準に適合する目標総EGR率が決定される。次に、目標HP/LP EGR比が決定され、決定された目標総EGR率の制約内で他のエンジンシステム基準が最適化される。
【0004】
本方法の例示的実施形態の好ましい当該態様に従えば、総EGR率は1つ又は複数のエンジンシステムモデルに対する入力としての代替パラメータに応じて推定され得るもので、HP若しくはLP EGR流量センサ又は総EGR流量センサにより直接計測されることはない。また、目標総EGR率はHP及び/又はLP EGR率に対する閉ループ調整により閉ループ制御もされ得る。
【0005】
本発明の他の例示的実施形態は、以下の詳細な説明から明らかとなるであろう。これらの詳細な説明及び特定の例は本発明の例示的実施形態を示すが、意図される目的は例示に過ぎず、本発明の範囲を制限することは意図されないものと理解されたい。
【0006】
本発明の例示的実施形態は、詳細な説明及び添付の図面からより十全に理解されることとなるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】例示的制御サブシステムを備えるエンジンシステムの例示的実施形態の概略図である。
【図2】図1のエンジンシステムの例示的制御サブシステムのブロック図である。
【図3】図1のエンジンシステムで使用され得るEGR制御の例示的方法のフローチャートである。
【図4】図3の方法の好ましい制御フロー部分を示すとともに総EGR推定ブロック並びに高圧及び低圧EGR開ループ制御ブロックを含むブロック図である。
【図5A】図4の推定ブロックの例示的実施形態を示す。
【図5B】図4の推定ブロックの例示的実施形態を示す。
【図5C】図4の推定ブロックの例示的実施形態を示す。
【図6A】図4の高圧及び低圧EGR開ループ制御ブロックの例示的実施形態を示す。
【図6B】図4の高圧及び低圧EGR開ループ制御ブロックの例示的実施形態を示す。
【図7】目標総EGR率に対する弁位置の例示的プロットを示すグラフである。
【図8】図3の方法の第2の制御フロー部分を示すブロック図である。
【図9】図3の方法の第3の制御フロー部分を示すブロック図である。
【図10】図3の方法の第4の制御フロー部分を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本実施形態の以下の説明は本質的に例示に過ぎず、一切、本発明、その適用又は使用の制限を意図するものではない。
【0009】
方法の例示的実施形態に従えば、排気ガス再循環(EGR)は、高圧(HP)及び低圧(LP)EGR通路を有するターボチャージャ付き圧縮着火エンジンシステムにおいて制御される。好ましくは、総EGR率が1つ又は複数のエンジンシステムモデルに対する入力としての代替パラメータに応じて推定され、これはHP若しくはLP EGR流量センサ又は総EGR流量センサにより直接計測されることはない。目標総EGR率は排気ガス基準に適合するよう決定される。次に、目標HP/LP EGR比が他の基準、例えば燃費目標値、エンジンシステム性能の照準、又はエンジンシステムの保護又は保守規格の少なくとも1つなどを、決定された目標総EGR率の制約内で最適化するよう決定される。また好ましくは、目標総EGR率はHP及び/又はLP EGR率に対する閉ループ調整により閉ループ制御もされる。以下の説明では、本方法を実行するための例示的システムが記載されるとともに、例示的方法及び例示的制御フローもまた記載される。
【0010】
例示的システム
例示的動作環境が図1に示され、これを使用して本開示のEGR制御方法が実現され得る。本方法は任意の好適なシステムを使用して実行され得るとともに、好ましくは、システム10などのエンジンシステムと連動して実行される。以下のシステム説明は単に一例示的エンジンシステムの概要を提供するものであるが、本明細書に示されない他のシステム及び構成要素もまた本開示の方法を支援し得るであろう。
【0011】
一般的にシステム10は、燃料と吸気ガスとの混合物の内燃から機械的動力を発生させるための内燃エンジン12、概してエンジン12に吸気ガスを供給するための吸気サブシステム14、及び概してエンジン12から燃焼ガスを搬出するための排気サブシステム16を備える。本明細書で使用されるとき、吸気ガスという語句には、新気と再循環された排気ガスとが含まれ得る。またシステム10は一般的に、排気サブシステム16及び吸気サブシステム14と交差して連通するターボチャージャ18も備えることで吸気を圧縮でき、それにより燃焼が改善されるとともに従ってエンジン出力が増加する。さらにシステム10は一般的に、排気サブシステム16及び吸気サブシステム14と交差して排気ガス再循環サブシステム20を備えることで排気ガスを再循環させて新気と混合でき、それによりエンジンシステム10のエミッション性能が向上する。さらにシステム10は一般的に、制御サブシステム22を備えることによりエンジンシステム10の動作を制御できる。当業者は認識するであろうことだが、任意の好適な液体及び/又は気体燃料をエンジン12に供給してエンジン内で吸気ガスと共に燃焼させるために燃料サブシステム(図示せず)が使用される。
【0012】
内燃エンジン12は、自己着火又はディーゼルエンジンのような圧縮着火エンジンなどの任意の好適な種類のエンジンであり得る。エンジン12はブロック24を備えて中にシリンダ及びピストン(個別には図示せず)を有することができ、これらはシリンダヘッド(同様に個別には図示せず)と共に、燃料と吸気ガスとの混合物を内燃させるための燃焼室(図示せず)を画成する。
【0013】
吸気サブシステム14は、好適な導管及びコネクタに加え、空気フィルタ(図示せず)を有して入ってくる空気をろ過し得る入口端26、及び入口端26の下流に吸気を圧縮するためのターボチャージャコンプレッサ28を備え得る。吸気サブシステム14はまた、ターボチャージャコンプレッサ28の下流に圧縮空気を冷却するための給気冷却器30、及び給気冷却器30の下流に冷却された空気のエンジン12への流れを絞るための吸気絞り弁32も備え得る。吸気サブシステム14はまた、絞り弁32の下流及びエンジン12の上流に吸気マニホルド34も備えることにより、絞られた空気を受け入れ得るとともにそれをエンジン燃焼室に送り込み得る。
【0014】
排気サブシステム16は、好適な導管及びコネクタに加え排気マニホルド36を備えることにより、エンジン12の燃焼室からの排気ガスを捕集し得るとともにそれを下流の排気サブシステム16の残り部分へと搬送し得る。排気サブシステム16はまた、排気マニホルド36と下流で連通するターボチャージャタービン38も備え得る。ターボチャージャ18は、可変タービンジオメトリ(VTG)型のターボチャージャ、二段式ターボチャージャ、又はウェイストゲート若しくはバイパス装置を伴うターボチャージャなどであり得る。いずれの場合にも、ターボチャージャ18及び/又は任意のターボチャージャ付属装置を調整して次のパラメータ、すなわちターボチャージャ給気圧、空気質量流量、及び/又はEGR流量の任意の1つ又は複数を変更し得る。排気サブシステム16はまた、任意の好適なエミッション装置40、例えば密結合ディーゼル酸化触媒(DOC)装置のような触媒コンバータ、窒素酸化物(NOx)吸着ユニット、微粒子フィルタなども備え得る。排気サブシステム16はまた、排気出口44の上流に配置される排気絞り弁42も備え得る。
【0015】
EGRサブシステム20は好ましくはハイブリッド又は二系統型EGRサブシステムであり、排気サブシステム16からの排気ガスの一部を吸気サブシステム14に再循環させてエンジン12で燃焼させる。従って、EGRサブシステム20は2つの通路、すなわち高圧(HP)EGR通路46及び低圧(LP)EGR通路48を備え得る。好ましくは、HP EGR通路46はターボチャージャタービン38の上流で排気サブシステム16に接続されるが、吸気サブシステム12にはターボチャージャコンプレッサ28の下流で接続される。また好ましくは、LP EGR通路48はターボチャージャタービン38の下流で排気サブシステム16に接続されるが、吸気サブシステム14にはターボチャージャコンプレッサ28の上流で接続される。内部エンジン可変バルブタイミング及びリフトを利用して内部HP EGRを誘導するなど他の形態のHP EGRを含め、排気サブシステム16と吸気サブシステム14との間の任意の他の好適な接続もまた企図される。
【0016】
HP EGR通路46は、好適な導管及びコネクタに加えHP EGR弁50を備えることにより、排気サブシステム16から吸気サブシステム14への排気ガスの再循環を制御し得る。HP EGR弁50は専有のアクチュエータを有するスタンドアロン装置であってもよく、又は吸気絞り弁32と共に共通のアクチュエータを有する複合装置に統合されてもよい。HP EGR通路46はまた、HP EGR弁50の上流、又は場合により下流にHP EGR冷却器52も備えてHP EGRガスを冷却し得る。HP EGR通路46は好ましくは、ターボチャージャタービン38の上流及び絞り弁32の下流に接続され、HP EGRガスを絞られた空気及び他の吸気ガスと混合する(空気はLP EGRを有し得る)。
【0017】
LP EGR通路48は、好適な導管及びコネクタに加えLP EGR弁54を備えることにより、排気サブシステム16から吸気サブシステム14への排気ガスの再循環を制御し得る。LP EGR弁54は専有のアクチュエータを有するスタンドアロン装置であってもよく、又は排気絞り弁42と共に共通のアクチュエータを有する複合装置に統合されてもよい。LP EGR通路48はまた、LP EGR弁54の下流、又は場合により上流にLP EGR冷却器56も備えてLP EGRガスを冷却し得る。LP EGR通路48は好ましくは、ターボチャージャタービン38の下流及びターボチャージャコンプレッサ28の上流に接続され、LP EGRガスをろ過された吸気と混合する。
【0018】
ここで図2を参照すると、制御サブシステム22は任意の好適なハードウェア、ソフトウェア、及び/又はファームウェアを備えることにより、本明細書に開示される方法の少なくとも一部分を実行し得る。例えば、制御サブシステム22は、上記で考察されるエンジンシステムアクチュエータ58の一部又は全部、並びに様々なエンジンセンサ60を備え得る。エンジンシステムセンサ60は図面上では個別に示されないが、エンジンシステムパラメータを監視するための任意の好適な装置を含み得る。
【0019】
例えば、エンジン速度センサはエンジンクランク軸(図示せず)の回転速度を計測し、エンジン燃焼室と連通する圧力センサはエンジンシリンダ圧を計測し、吸気及び排気マニホルド圧力センサはエンジンシリンダに流れ込む、及びそこから流れ出すガスの圧力を計測し、吸気質量流量センサは吸気サブシステム14に入ってくる空気流量を計測し、及びマニホルド質量流量センサはエンジン12への吸気ガスの流量を計測する。別の例において、エンジンシステム10は、エンジンシリンダへと流れる吸気ガスの温度を計測するための温度センサ、及び空気フィルタの下流及びターボチャージャコンプレッサ28の上流に温度センサを備え得る。さらなる例において、エンジンシステム10は、ターボチャージャコンプレッサ28に好適に連結される速度センサを備えてその回転速度を計測し得る。集積角度位置センサなどのスロットル位置センサが絞り弁32の位置を計測する。位置センサがターボチャージャ18の近傍に配置され、可変容量タービン38の位置を計測する。排気管温度センサが排気管出口のすぐ上流に設置され、排気サブシステム16から排出される排気ガスの温度を計測し得る。また、エミッション装置40の上流及び下流にも温度センサが設置され、その入口及び出口における排気ガスの温度を計測する。同様に、1つ又は複数の圧力センサがエミッション装置40と交差して設置され、それを通じた圧力降下を計測する。酸素(O2)センサが排気サブシステム16及び/又は吸気サブシステム14に設置され、排気ガス及び/又は吸気ガス中の酸素を計測する。最後に、位置センサがHP EGR弁50、LP EGR弁54及び排気絞り弁42の位置を計測する。
【0020】
本明細書で考察されるセンサ60に加え、任意の他の好適なセンサ及びそれらに関連するパラメータが、本開示のシステム及び方法により包含され得る。例えば、センサ60としてはまた、加速度センサ、車両速度センサ、パワートレイン速度センサ、フィルタセンサ、他の流量センサ、振動センサ、ノックセンサ、吸気圧及び排気圧センサなども挙げられるであろう。換言すれば、任意のセンサを使用して、電気的、機械的、及び化学的パラメータを含む任意の好適な物理的パラメータを検知し得る。本明細書で使用されるとき、センサという用語には、任意のエンジンシステムパラメータ及び/又はかかるパラメータの様々な組み合わせを感知するために使用される任意の好適なハードウェア及び/又はソフトウェアが含まれる。
【0021】
制御サブシステム22はさらに、アクチュエータ58及びセンサ60と連通する1つ又は複数のコントローラ(図示せず)を備えることにより、センサ入力を受信及び処理し得るとともにアクチュエータ出力信号を送信し得る。コントローラは1つ又は複数の好適なプロセッサ及びメモリデバイス(図示せず)を備え得る。メモリは、エンジンシステム10の機能の少なくとも一部を提供するとともにプロセッサにより実行され得るデータ及び命令の記憶域を提供するよう構成され得る。本方法の少なくとも一部分は、1つ又は複数のコンピュータプログラム及びメモリ内にルックアップテーブル、マップ、モデルなどとして格納される様々なエンジンシステムデータ又は命令により可能となり得る。いずれの場合にも制御サブシステム22は、センサ60から入力信号を受信し、センサ入力信号を踏まえて命令又はアルゴリズムを実行し、及び好適な出力信号を様々なアクチュエータ58に送信することにより、エンジンシステムパラメータを制御する。
【0022】
制御サブシステム22は、コントローラにいくつかのモジュールを備え得る。例えば、トップレベルエンジン制御モジュール62が任意の好適なエンジンシステム入力信号を受信及び処理するとともに出力信号を吸気制御モジュール64、燃料制御モジュール66、及び任意の他の好適な制御モジュール68に伝達する。以下でより詳細に考察されるであろうとおり、トップレベルエンジン制御モジュール62はエンジンシステムパラメータセンサ60の1つ又は複数からの入力信号を受信及び処理して任意の好適な方法で総EGR率を推定する。
【0023】
EGR率を推定する様々な方法が当業者に知られている。本明細書で使用されるとき、語句「総EGR率」はその構成パラメータの1つ又は複数を含むとともに、次の方程式により表すことができ、
【数1】
式中、
MAFは吸気サブシステムへの新気質量流量であり、
MEGRは吸気サブシステムへのEGR質量流量であり、
MENGはエンジンへの吸気ガス質量流量であり、及び
rEGRはエンジンに流入する吸気ガスのうち再循環された排気ガスに由来する部分を含む。
【0024】
上記の方程式から、総EGR率は、新気質量流量センサ及びセンサ又はその推定値からの吸気ガス質量流量を使用して、又は総EGR率それ自体の推定値及び吸気ガス質量流量を使用して計算され得る。いずれの場合にも、トップレベルエンジン制御モジュール62は好適なデータ入力を備えて1つ又は複数の質量流量センサ計測値又は1つ又は複数のエンジンシステムモデルに対する入力としての推定値から総EGR率を直接推定し得る。
【0025】
本明細書で使用されるとき、用語「モデル」には、ルックアップテーブル、マップ、アルゴリズムなどの変数を使用するものを表す任意の構築が含まれる。モデルは、任意の所定のエンジンシステムの正確な設計及び性能仕様に特有且つ特定のアプリケーションである。一例において、エンジンシステムモデルはまた、エンジン速度及び吸気マニホルドの圧力及び温度に基づき得る。エンジンシステムモデルはエンジンパラメータが変化するごとに更新されるとともに、エンジン速度、並びに吸気圧、温度、及び一般ガス定数により決定され得るエンジン吸気密度を含む入力を使用する多次元ルックアップテーブルであり得る。
【0026】
総EGR率は、直接的に、又はその構成要素を介して間接的に、推定又は感知される空気質量流量、O2、又はエンジンシステム温度などの1つ又は複数のエンジンシステムパラメータと相関し得る。かかるパラメータは、総EGR率との相関について任意の好適な方式で分析され得る。例えば、総EGR率は数式上、他のエンジンシステムパラメータと関連し得る。別の例において、エンジンキャリブレーション又はモデリングから、総EGR率は経験的及び統計的に、他のエンジンシステムパラメータと関連し得る。いずれの場合にも、総EGR率が任意の他のエンジンシステムパラメータと確実に相関していることが認められる場合、当該相関は数式的に、経験的に、音響的に等、モデル化され得る。例えば、経験的モデルは好適な試験から開発され得るとともに、総EGR率値を他のエンジンシステムパラメータ値と相互参照し得るルックアップテーブル及びマップなどを挙げることができる。
【0027】
従って、総EGR率及び/又は個別のHP及び/又はLP EGR流量の直接的なセンサ計測値の代わりとしてエンジンシステムパラメータが使用され得る。従って、総EGR、HP EGR、及びLP EGR流量センサが不要となるため、エンジンシステムの費用及び重量を節減し得る。かかるセンサが不要であることにより、他のセンサ関連ハードウェア、ソフトウェア、並びに配線、コネクタピン、コンピュータ処理電源及びメモリなどの費用もまた不要となる。
【0028】
また、トップレベルエンジン制御62モジュールが好ましくは、ターボチャージャ給気圧設定値及び目標総EGR設定値を計算するとともに、それらの設定値を吸気制御モジュール64に送信する。同様に、トップレベルエンジン制御モジュール62は好適なタイミング及び燃料注入設定値を計算するとともにそれらを燃料制御モジュール66に送信し、及び他の設定値を計算するとともにそれらを他の制御モジュール68に送信する。燃料制御モジュール66及び他の制御モジュール68がかかる入力を受信及び処理するとともに、燃料インジェクタ、燃料ポンプ、又は他の装置などの任意の好適なエンジンシステム装置に対する好適なコマンド信号を生成する。
【0029】
あるいは、トップレベルエンジン制御モジュール62は、目標総EGR設定値ではなく、給気圧設定値及び総吸気質量流量設定値(破線で示されるとおり)を計算及び送信してもよい。この代替例においては、続いて総EGR設定値が空気質量流量設定値から決定され、これは実際の総EGR率が実際の質量流量センサの読み取り値から推定される場合とほぼ同様の方法による。第2の代替例においては、全制御方法を通じて空気質量流量が総EGR率に代わる。これにより使用されるデータのタイプ並びにHP及びLP EGR流量目標値の設定方法が変わるものの、コントローラの基本構成及び制御方法のフローは同じである。
【0030】
吸気制御モジュール64は、トップレベルエンジン制御モジュール62から受信する設定値に加え、任意の好適なエンジンシステムパラメータ値を受信する。例えば、吸気制御モジュール64は、ターボチャージャ給気圧などの吸気及び/又は排気サブシステムパラメータ値、及び質量流量を受信する。吸気制御モジュール64は、受信したパラメータ値を処理するトップレベル吸気制御サブモジュール70を備え得るとともに、LP及びHP EGR設定値などの任意の好適な出力、及びターボチャージャ設定値を、それぞれLP EGR制御サブモジュール72、HP EGR制御サブモジュール74、及びターボチャージャ制御サブモジュール76に送信する。LP EGR制御サブモジュール72、HP EGR制御サブモジュール74、及びターボチャージャ制御サブモジュール76は、かかる吸気制御サブモジュール出力を処理するとともに、LP EGR弁54及び排気絞り弁42、HP EGR弁50及び吸気絞り弁32、及び1つ又は複数のターボチャージャアクチュエータ19などの様々なエンジンシステム装置に対する好適なコマンド信号を生成する。様々なモジュール及び/又はサブモジュールは図示されるとおり別個であってもよく、又は1つ又は複数の複合モジュール及び/又はサブモジュールとして統合されてもよい。
【0031】
例示的方法
ここではLP及びHP EGRの制御方法が提供され、これは上記のエンジンシステム10の動作環境内で1つ又は複数のコンピュータプログラムとして実行され得る。当業者は、本方法が他の動作環境内の他のエンジンシステムを使用して実行されてもよいこともまた認識するであろう。ここで図3を参照すると、例示的方法300がフローチャートの形式で示されている。
【0032】
ステップ305に示されるとおり、方法300は任意の好適な様式で開始され得る。例えば、方法300は図1のエンジンシステム10のエンジン12の始動から開始されてもよい。
【0033】
ステップ310において、新気がエンジンシステムの吸気サブシステムに引き込まれるとともに、吸気ガスが吸気サブシステムを通じてエンジンシステムのエンジンに導入される。例えば、新気は吸気システム14の入口26に引き込まれ得るとともに、吸気ガスは吸気マニホルド34を通じてエンジン12に導入され得る。
【0034】
ステップ315において、排気ガスがエンジンシステムの排気サブシステムを通じてエンジンから排出される。例えば、排気ガスは排気マニホルド36を通じてエンジン12から排出され得る。
【0035】
ステップ320において、排気ガスが排気サブシステムから高圧又は低圧EGR通路の一方又は双方を通じてエンジンシステムの吸気サブシステムへと再循環される。例えば、HP及びLP排気ガスは、排気サブシステム16から、HP EGR通路46及びLP EGR通路48を通じて吸気サブシステム14へと再循環されてもよい。
【0036】
ステップ325において、総EGR率の指標となる1つ又は複数の代替パラメータが感知され得る。例えば、代替パラメータとしては、空気質量流量、O2、及び/又はエンジンシステム温度を挙げることができ、これらはエンジンシステム10のそれぞれのセンサ60により計測され得る。
【0037】
ステップ330において、目標総EGR率は排気ガス基準に適合するよう決定される。例えば、トップレベルエンジン制御モジュール62は、任意の好適なエンジンシステムモデルを使用して現在のエンジン動作パラメータを所望の総EGR率値と相互参照することにより、所定の排出基準に適合し得る。本明細書で使用されるとき、用語「目標」には、単一の値、複数の値、及び/又は任意の値の範囲が含まれる。また、本明細書で使用されるとき、用語「基準」には単数形及び複数形が含まれる。然るべきEGR率を決定するために使用される基準の例としては、速度及び負荷に基づく較正表、シリンダ温度目標値を決定するとともにEGR率に変換するモデルに基づく手法及び過渡動作又は定常状態動作などの動作条件が挙げられる。米国環境保護庁(Environmental Protection Agency:EPA)などの環境当局により絶対排出基準が規定され得る。
【0038】
ステップ335において、目標HP/LP EGR比が決定され、1つ又は複数の他のエンジンシステム基準、例えば燃費目標値、エンジンシステム性能の照準、又はエンジンシステムの保護又は保守規格などが、ステップ330において決定される目標総EGR率による制約に応じて最適化される。
【0039】
ステップ340において、ステップ335において決定される目標HP/LP EGR比に従い、個別のHP EGR及び/又はLP EGR設定値が生成され得る。
【0040】
ステップ345において、HP及びLP EGR設定値に対応する目標HP及びLP EGR開度が決定され得る。例えば、開ループコントローラがモデルを使用してHP及びLP EGR設定値及び他のエンジンシステムパラメータを処理することにより、開度が生成され得る。
【0041】
ステップ350において、先に上記で考察されたとおり任意の好適なエンジンシステムモデルに対する入力として使用される代替パラメータに応じて、総EGR率が推定され得る。例えば、総EGR率推定には、数式的又は経験的に代替パラメータを総EGR率と相関付けるエンジンシステムモデルが含まれ得る。モデルが含むルックアップテーブル、マップなどは、EGR率値を代替パラメータ値と相互参照し得るものであるとともに、エンジン速度及び吸気マニホルドの圧力及び温度に基づき得る。いずれの場合にも、実際に個別のHP及び/又はLP EGR流量センサ又は複合型総EGR流量センサを使用して総EGR率が直接計測されることはない。
【0042】
ステップ355において、個別のHP EGR及び/又はLP EGR率の一方又は双方が、推定された総EGR率を伴う閉ループ制御を使用して調整され得る。HP及び/又はLP EGR率は、それぞれHP及び/又はLP EGR設定値又は弁及び/又はスロットル開度のいずれか又は双方の閉ループ制御を介して調整されてもよい。例えば、及び以下でより詳細に考察されるであろうとおり、閉ループコントローラが推定された総EGR率をプロセス変数入力として、及び総EGR率設定値を設定値入力として処理し、それによりHP及び/又はLP EGR設定値出力トリムコマンドが生成され得る。従って、目標総EGR率は好ましくはHP及び/又はLP EGR率に対する閉ループ調整により閉ループ制御される。かかる調整により実際のHP/LP EGR比が変化し得る。
【0043】
ステップ360において、ステップ350からのHP EGR及びLP EGR開度が、1つ又は複数のHP EGR弁、LP EGR弁、吸気絞り弁、又は排気絞り弁にそれぞれ適用され得る。HP及び/又はLP EGR開度は開ループ制御ブロックの下流で直接的に、又は開ループ制御ブロックの上流で設定値調整を介して間接的に調整される。
【0044】
例示的制御フロー
ここで図4の制御ダイアグラムを参照すると、図3の制御方法300の一部がEGR制御フロー400としてブロック図の形式で示されている。制御フロー400は、例えば図2の例示的制御サブシステム内で、及びより詳細には、その吸気制御モジュール64内で実行され得る。従って図4は、HP EGR制御サブモジュール又はブロック74、LP EGR制御サブモジュール又はブロック72及びターボチャージャブースト制御サブモジュール又はブロック76を示す。同様に、最適化ブロック402、EGR率推定部ブロック404、及びEGR率閉ループ制御ブロック406もまた、吸気制御モジュール64内、及びより詳細には、図2のトップレベル吸気制御サブモジュール70内で実行され得る。
【0045】
第一に、及び図5A〜5Cも参照すると、実総EGR率推定部ブロック404は好ましくは、エンジン負荷、エンジン速度、ターボチャージャ給気圧、及びエンジンシステム温度などの他の標準的なエンジンシステムパラメータに加え、実際の総EGR率の代替パラメータを使用して実行される。例えば、図5Aは好ましい代替パラメータが空気質量流量414aであることを示し、これは任意の好適な空気質量流量推定値又は吸気質量流量センサなどからの読み取り値から得ることができる。別の例において、図5Bは代替パラメータが、吸気サブシステム14に配置されるO2センサのようなO2センサなどからの酸素パーセンテージ414bであり得ることを示す。例えば、O2センサは全領域空燃比センサ(UEGO)であってもよく、これは吸気マニホルド34に位置し得る。さらなる例において、図5Cは代替パラメータが、温度センサから得られる吸気サブシステム及び排気サブシステム温度414cであり得ることを示す。例えば、空気入口温度センサなどからの吸気温度、排気温度センサなどからの排気温度、及び吸気マニホルド温度センサなどからのマニホルド温度が使用され得る。上記のいずれの手法においても、実総EGR率416は1つ又は複数の代替パラメータタイプから推定され得る。
【0046】
第二に、及び再び図4を参照すると、最適化ブロック402が様々なエンジンシステム入力を受信及び処理して最適なHP/LP EGR比を特定するとともに当該比に従いHP EGR設定値を生成する。例えば、最適化ブロック402は、エンジンシステム10の対応するセンサなどからエンジン負荷信号407及びエンジン速度信号408を受信し得る。エンジン負荷信号407としては、マニホルド圧力、燃料注入流量等の任意のパラメータを挙げることができる。最適化ブロック402はまた、トップレベルエンジン制御モジュール62などから総EGR率設定値418も受信し得る。
【0047】
最適化ブロック402は、最適なHP/LP EGR比を特定するとともに対応するHP EGR設定値を生成するうえで燃費基準を優先させ得る。燃費最適化により、最適化ブロック402は任意の好適な正味ターボチャージャ効率モデルを含んでもよく、これはポンプ損失、並びにタービン及びコンプレッサ効率などの様々なパラメータを包含する。
効率モデルは、エンジン吸気サブシステム14の原理に基づく数学的表現、一組のエンジンシステム較正表などを含み得る。燃費基準を満たすよう所望のEGR比を決定するために使用される基準の例としては、燃費に負の影響を及ぼす傾向のある吸気又は排気スロットルの閉鎖の必要なしに総EGR率の達成が可能な比の設定を挙げることができ、又はこの比が最高燃費に最適な吸気空気温度を達成するよう調整され得る。
【0048】
最適化ブロック402はまた、燃費基準より、任意の好適な目的上の他のエンジンシステム基準の最適化を優先し得る。例えば、燃費基準よりHP/LP EGR比の提供が優先されてもよく、この比により運転者の車両加速要求に応えるトルク出力の増加など、エンジンシステム性能の向上が提供される。この場合、コントローラについてはLP EGRの割合がより高いほどターボチャージャの高速化が可能となり、ターボラグが低減されるため有利であり得る。別の例において、異なるHP/LP EGR比の提供が優先されることにより、ターボチャージャの過速条件又はコンプレッサ先端の過剰温度の回避、又はターボチャージャの凝縮液形成の低減など、エンジンシステム10が保護され得る。さらなる例において、別のHP/LP EGR比の提供が優先されることにより、吸気又は排気サブシステム温度に作用するなどしてエンジンシステム10が保守され得る。例えば、排気サブシステム温度を上昇させてディーゼル微粒子フィルタを再生し得るとともに、吸気温度を低下させてエンジン12を冷却し得る。さらなる例として、吸気空気温度を制御することにより入口吸気通路において形成する可能性のある凝縮水を低減し得る。
【0049】
いずれの場合にも、最適化ブロック402はそのモデルに従い入力を処理して目標HP/LP EGR比を決定するとともに、次にHP EGR設定値420を生成し、これが下流のHP EGR制御ブロック74及び演算ノード422に供給され、演算ノード422はトップレベルエンジン制御モジュール62から総EGR率設定値418もまた受信することでLP EGR設定値424がもたらされる。
【0050】
第三に、及びなお図4を参照すると、総EGR率閉ループ制御ブロック406は、PIDコントローラブロックなどの総EGR率を制御するための任意の好適な閉ループ制御手段であり得る。閉ループ制御ブロック406は設定値入力406aを含んでトップレベルエンジン制御モジュール62から目標総EGR率設定値を受信するとともに、さらにプロセス変数入力406bを含んで推定部ブロック404から実総EGR率推定値を受信する。総EGR率制御ブロック406はこれらの入力を処理してフィードバック制御信号又はトリムコマンド406cを生成し、これは別の演算ノード426でLP EGR設定値424と合計され下流でLP EGR制御ブロック72において入力される。かかるトリム調整は同様に、又は代替的に、LP EGR弁及び/又は排気絞り弁パーセンテージ開放コマンドに対する調整として計算され得るとともにLP EGR開ループ制御ブロック72の後に加算され得る。従って、制御ブロック406及び関連ノードは、開ループ制御ブロック72とその下流側で通信することによっても弁及びスロットル開度に好適な設定値を調整し得るであろう。
【0051】
HP EGR流量は開ループ制御されるのみであることから、目標総EGR率を達成するためLP EGR流量又はLP EGR率が閉ループ制御ブロック406により調整される。より具体的には、排気エミッション及びエンジン燃費は双方とも総EGR率に大きく依存し、且つそれほどではないにせよHP/LP EGR比にもある程度依存するため、最大限に制御するべく総EGR率が閉ループ制御される一方、最大限の費用効果及び効率のためHP及び/又はLP EGR率及び/又はHP/LP EGR比が少なくとも部分的に開ループ制御される。これらの開ループ制御ブロック72、74は、良好な応答時間を提供し、コントローラの相互依存性を低減し、且つセンサ信号の過渡性及び外乱の影響を低減する。これは一例示的手法であるが、以下では図8〜10を参照して他の手法が考察される。
【0052】
第四に、LP EGR制御ブロック72及びHP EGR制御ブロック74は、ターボチャージャ給気圧409並びにエンジン負荷入力407及びエンジン速度入力408に加え、それらの各LP及びHP EGR設定値を受信する。LP EGR制御ブロック72及びHP EGR制御ブロック74はかかる入力を受信してそれらの各LP及びHP EGRアクチュエータを開ループ又はフィードフォワード制御する。例えば、LP EGR制御ブロック72及びHP EGR制御ブロック74は、LP EGR弁コマンド430及び/又は排気スロットルコマンド432、及びHP EGR弁コマンド438及び/又は吸気スロットルコマンド440を出力する。LP EGR制御ブロック72及びHP EGR制御ブロック74は、1つ又は複数のモデルを使用してHP及びLP EGR流量を好適なHP及びLP EGR弁及び/又はスロットル位置と相関付ける。
【0053】
図6A及び6Bに示されるとおり、LP EGR制御ブロック72及びHP EGR制御ブロック74は様々な開ループ制御モデルを含み得る。例えば、LP EGR制御ブロック72は任意の好適なモデル426を含むことでLP EGR設定値424をLP EGR弁位置と相関付け、目標HP/LP EGR比の達成を支援し得る。また、LP EGR制御ブロック72は任意の好適なモデル428を含むことでLP EGR設定値424を排気スロットル位置と相関付け、目標HP/LP EGR比の達成を支援し得る。モデル426、428は、エンジン負荷407、エンジン速度408、及びターボチャージャ給気圧409などの任意の好適な入力を受信し得る。モデル426、428は、実行されるとそれぞれLP EGR弁コマンド430及び/又は排気スロットルコマンド432を生成し、これらはそれぞれのアクチュエータにより使用される。アクチュエータは開ループモードで動作してもよく、又はアクチュエータ位置を計測するための任意の好適なセンサと動作上連結されるとともにコマンドを調整して目標パーセンテージを達成してもよいことに留意されたい。
【0054】
同様に、HP EGR制御ブロック74は任意の好適なモデル434を含むことでHP EGR設定値420をHP EGR弁位置と相関付け、目標HP/LP EGR比の達成を支援し得る。また、HP EGR制御ブロック74は任意の好適なモデル436も含むことでHP EGR設定値420を吸気スロットル位置と相関付け、目標HP/LP EGR比の達成を支援し得る。さらに、モデル434、436は、エンジン負荷407、エンジン速度408、及びターボチャージャ給気圧409などの任意の好適な入力を受信し得る。モデル434、436は、実行されるとそれぞれHP EGR弁コマンド438及び/又は吸気スロットルコマンド440を生成し、これらはそれぞれのアクチュエータにより使用される。
【0055】
図7は、目標総EGR率に対する例示的LP EGR弁及び排気スロットル開度のグラフを示す。示されるとおり、絞り弁42は約0%EGRにおいて実質的に閉鎖されているとともに徐々に開放され約20%EGRで実質的に100%の開放位置となり、一方LP EGR弁54は約0%EGRから約20%EGRまで実質的に閉鎖されたままである。
その後、排気スロットル42は総EGRが約70%に達するまで100%開放されたままであり、及びLP EGR弁54は徐々に開放され約70%EGRで実質的に100%の開放となる。その後、LP EGR弁54は実質的に100%開放されたまま保たれる一方、排気絞り弁42は徐々に閉鎖され100%EGRで実質的に閉鎖される。単一の組み合わされたLP EGR及び排気絞り弁が今しがた記載したような弁開放を実質的に達成し得る限り、2つの別個の弁ではなく、かかる一体の弁装置が使用され得るであろう。
【0056】
再び図4を参照すると、ターボチャージャブースト制御ブロック76は、好適なPID制御ブロックなどの、ターボチャージャアクチュエータを調整して安全なターボ動作範囲内で目標給気圧を達成するための任意の好適な閉ループ制御手段である。制御ブロック76は設定値入力76aを含むことでトップレベルエンジン制御モジュール62からブースト設定値を、及びターボチャージャブーストセンサから実給気圧入力76bを受信し得る。制御ブロック76はこれらの入力を処理するとともに可変タービンジオメトリコマンド444などの任意の好適なターボチャージャコマンド出力を生成してターボチャージャ18の可変ベーンを調整する。
【0057】
ここで図8を参照すると、好ましい制御フロー400の代わりに代替的制御フロー800が使用され得る。この実施形態は図4の実施形態と多くの点で類似しているとともに、実施形態間で同じ数字は、図面のいくつかの図を通じて同様の、又は対応する要素をほぼ示す。加えて、前の実施形態の記載が参照により援用されるとともに、ここでは基本的に共通の主題は繰り返されないものとする。
【0058】
代替的制御フロー800はLP EGRではなくHP EGRの閉ループ調整を含む。
換言すれば、LP EGR設定値424’ではなくHP EGR設定値420’が調整されることにより総EGR率が制御され得る。従って、閉ループ制御ブロック406は制御信号を生成してHP EGR率を−LP EGR率ではなく−調整し得る。制御戦略のこの変更に適合させるため、最適化ブロック402’が提供され、HP EGR設定値420ではなくLP EGR設定値424’が出力され得る。かかるトリム調整は同様に、又は代替的に、HP EGR弁及び/又は吸気絞り弁パーセンテージ開放コマンドに対する調整として計算され得るとともにHP EGR開ループ制御ブロック74の後に加算され得る。従って、制御ブロック406及び関連ノードは開ループ制御ブロック74とその下流側で通信することによっても弁及びスロットル開度について好適な設定値を調整し得るであろう。それ以外は、フロー800はフロー400と実質的に同様である。
【0059】
ここで図9を参照すると、好ましい制御フロー400の代わりに第2の制御フロー900が使用され得る。この実施形態は図4の実施形態と多くの点で類似しているとともに、実施形態間で同じ数字は、図面のいくつかの図を通じて同様の、又は対応する要素をほぼ示す。加えて、前の実施形態の記載が参照により援用されるとともに、ここでは基本的に共通の主題は繰り返されないものとする。
【0060】
第2の制御フロー900において、閉ループ制御がHP及びLP EGR設定値と同じ比率でHP及びLP EGR率に割り当てられ得る。換言すれば、HP及びLP EGR率は双方ともそれらの各HP及びLP EGR設定値に応じて閉ループ調整される。
【0061】
制御戦略のこの変更を促進するため、閉ループ制御ブロック406はそのトリムコマンド406cを、フロー400のように上流演算ノード426を介してLP EGR制御ブロック72のみに出力することはない。むしろ、トリムコマンドはLP EGR制御ブロック72及びHP EGR制御ブロック74の双方に出力される。この変更をさらに促進するため、比例演算ブロック950、952がそれぞれHP及びLP EGR設定値及び総EGR設定値418を受信する。演算ブロック950、952からの比例出力は乗算演算ブロック954、956で受信され、それらに対し閉ループトリムコマンド406cが比例割当てされる。乗算出力は下流演算ノード426、926でLP及びHP EGR設定値と合計され、下流でLP EGR制御ブロック72及びHP EGR制御ブロック74において入力される。好適なチェックが演算ブロック内で実施され、総EGR率設定値が0のときに0で除算されることが回避され得るであろう。それ以外の点では、フロー900はフロー400及び/又は800と実質的に同様である。
【0062】
ここで図10を参照すると、好ましい制御フロー400に代わり第3の例示的制御フロー1000が使用され得る。この実施形態は図4の実施形態と多くの点で類似しているとともに、実施形態間で同じ数字は、図面のいくつかの図を通じて同様の、又は対応する要素をほぼ示す。加えて、前の実施形態の記載が参照により援用されるとともに、ここでは基本的に共通の主題は繰り返されないものとする。
【0063】
第3の制御フロー1000において、閉ループ制御はLP EGR開ループ制御ブロック72とHP EGR開ループ制御ブロック74との間を任意の所定の瞬間のエンジン動作条件に応じて交互に切り換えられ得る。換言すれば、HP又はLP EGR設定値のいずれも閉ループ制御により調整され得る。例えば、HP EGRが閉ループ制御されることにより、エンジンシステム温度が比較的高いとき、又は総EGR率の急速な変更が必要とされるとき、又はターボチャージャ性能がそれほど重要ではないか、若しくは必要とされないときの、ターボチャージャでの凝縮が回避される。
【0064】
制御戦略の変更を達成するため、閉ループ制御ブロック1006は、フロー400のように上流演算ノード426を介してLP EGR制御ブロック72のみに出力を提供することはない。むしろ、制御ブロック1006は出力をLP EGR制御ブロック72及びHP EGR制御ブロック74の双方に提供する。閉ループ制御ブロック1006は設定値入力1006aを含むことでトップレベルエンジン制御モジュール62から目標総EGR率設定値418を受信し得るとともに、さらにプロセス変数入力1006bを含むことで推定部ブロック404から実総EGR率推定値を受信し得る。総EGR率制御ブロック1006はこれらの入力を処理し、次の代替的トリムコマンド、すなわち演算ノード426においてLP EGR設定値424と合計して下流でLP EGR制御ブロック72において入力するためのLP EGRトリムコマンド1006c、及び別の演算ノード1026においてHP EGR設定値420と合計して下流でHP EGR制御ブロック74において入力するためのHP EGRトリムコマンド1006dを生成する。制御ブロック1006が2つの出力1000cと1000dとの間を切り換えられることによって、LP EGR率又はHP EGR率が閉ループ制御ブロック1006により調整され、目標総EGR率が達成され得る。それ以外の点では、フロー1000はフロー400及び/又は800と実質的に同様である。
【0065】
上記の様々な例示的実施形態の1つ又は複数が次の利点の1つ又は複数を含み得る。第一に、何よりまず排出ガス規制に適合し、及び次にエンジン燃費及び性能を最適化するとともにエンジンシステムを保護及び保守するような方法で、総目標EGR率がHP及びLP EGR通路に割り当てられ得る。第二に、費用がかかり、エンジンシステムを複雑にし、故障モードを招く、個別の総EGR、HP EGR、又はLP EGR流量センサの使用が必要ない。第三に、1つの標準的閉ループ制御手段を使用して目標総EGR率並びに個別のHP及びLP EGR流量を制御し得るため、現行のエンジン制御アーキテクチャにおける実用的且つ費用効果の高い実現が可能となる。第四に、単一の共通アクチュエータにより制御される複合型LP EGR弁及び排気絞り弁が使用され得るとともに、同様に、単一の共通アクチュエータにより制御される複合型HP EGR弁及び吸気絞り弁もまた使用され得る。
【0066】
上述される本発明の実施形態は本質的に単なる例示であり、従ってそれらの変形例は、本発明の精神及び範囲からの逸脱とは見なされないものとする。
【0067】
本発明は、以下のような態様であっても良い。
(1)エンジン、前記エンジンと上流で連通する吸気サブシステム、前記エンジンと下流で連通する排気サブシステムを備え、且つ排気絞り弁、ターボチャージャタービンの上流及びターボチャージャコンプレッサの下流の前記排気サブシステムと吸気サブシステムとの間の高圧EGR通路を備え、且つHP EGR弁、及び前記ターボチャージャタービンの下流及び前記ターボチャージャコンプレッサの上流の前記排気サブシステムと吸気サブシステムとの間の低圧EGR通路を備え、且つLP EGR弁を備えるターボチャージャ付きエンジンシステムにおいて排気ガス再循環(EGR)を制御する方法であって、新気を前記吸気サブシステムに引き込むステップ、前記吸気サブシステムを通じて吸気ガスを前記エンジンに導入するステップ、前記排気サブシステムを通じて排気ガスを前記エンジンから排出するステップ、前記排気サブシステムから前記高圧又は低圧EGR通路の少なくとも1つを通じて前記吸気サブシステムへと排気ガスを再循環させるステップ、総EGR率の指標となる1つ又は複数の代替パラメータを感知するステップ、少なくとも1つのエンジンシステムモデルに対する入力としての前記感知された代替パラメータに応じて、且つEGR流量センサを使用せず、総EGR率を推定するステップ、排気ガス基準に適合する目標総EGR率を決定するステップ、目標HP/LP EGR比を決定して前記決定された目標総EGR率の制約内で燃費基準を最適化するステップ、前記決定された目標HP/LP EGR比に従いHP EGR設定値及びLP EGR設定値を生成するステップ、前記HP及びLP EGR設定値に対応する目標HP及びLP EGR弁並びに排気絞り弁開度を決定するステップ、前記推定された総EGR率をプロセス変数入力として、及び前記目標総EGR率を設定値入力として処理することにより前記設定値又は開度の少なくとも1つを調整するステップ、及び前記HP EGR及びLP EGR弁並びに排気絞り弁開度を前記HP EGR及びLP EGR弁並びに排気絞り弁に適用するステップ、を含む方法。
(2)前記代替パラメータが、空気質量流量、O2、又はエンジンシステム温度の少なくとも1つを含む、(1)に記載の方法。
(3)前記総EGR率を推定するステップが、前記エンジンシステムモデルを使用して数式的又は経験的に前記代替パラメータを前記総EGR率と相関付けるステップを含み得る、(1)に記載の方法。
(4)前記エンジンシステムモデルが、EGR率値を代替パラメータ値と相互参照するルックアップテーブル又はマップの少なくとも1つを含む、(3)に記載の方法。
(5)前記エンジンシステムモデルがエンジン速度及び吸気マニホルドの圧力及び温度に基づく、(4)に記載の方法。
(6)前記目標HP/LP EGR比を決定するステップが、前記決定された目標総EGR率の制約内で、前記燃費基準より他のエンジンシステム基準の方を選んで優先するステップを含む、(1)に記載の方法。
(7)前記他のエンジンシステム基準がエンジンシステム性能を含む、(6)に記載の方法。
(8)前記他のエンジンシステム基準がエンジンシステム保護規格又は保守規格の少なくとも1つをさらに含む、(7)に記載の方法。
(9)前記ターボチャージャを閉ループ制御するステップをさらに含む、(1)に記載の方法。
(10)前記LP EGR弁が吸気絞り弁を含み、前記弁が共通アクチュエータにより動作する、(1)に記載の方法。
(11)前記HP EGR弁が排気絞り弁を含み、前記弁が共通アクチュエータにより動作する、(1)に記載の方法。
(12)目標HP/LP EGR比を決定する前記ステップが、ターボチャージャ効率モデルを使用するステップを含む、(1)に記載の方法。
(13)前記LP EGR設定値を閉ループ制御により調整するステップをさらに含む、(1)に記載の方法。
(14)目標HP及びLP EGR開度を決定する前記ステップが、エンジン負荷、エンジン速度、及びターボチャージャ給気圧を入力として伴う開ループモデルを使用するステップを含む、(1)に記載の方法。
(15)前記排気絞り弁が約0%EGRで実質的に閉鎖されているとともに徐々に開放されて約20%EGRで実質的に100%の開放位置となる一方、前記LP EGR弁が約0%EGRから約20%EGRまで実質的に閉鎖されたままであり、その後、前記排気絞り弁は総EGRが約70%に達するまで実質的に100%開放されたままであるとともに、前記LP EGR弁は徐々に開放され約70%EGRで実質的に100%の開放となり、その後、前記LP EGR弁が実質的に100%開放されたまま保たれる一方、前記排気絞り弁が徐々に閉鎖され約100%EGRで実質的に閉鎖されるように前記開度が適用される、(14)に記載の方法。
(16)前記HP EGR設定値を閉ループ制御により調整するステップをさらに含む、(1)に記載の方法。
(17)前記HP及びLP設定値の比率に従い前記HP及びLP EGR設定値を閉ループ制御により調整するステップをさらに含む、(1)に記載の方法。
(18)任意の所定の瞬間のエンジン動作条件に応じて前記HP及びLP EGR設定値の一方又は他方を閉ループ制御により調整するステップをさらに含む、(1)に記載の方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン、前記エンジンと上流で連通する吸気サブシステム、前記エンジンと下流で連通する排気サブシステム、ターボチャージャタービンの上流及びターボチャージャコンプレッサの下流の前記排気サブシステムと吸気サブシステムとの間の高圧EGR通路、及び前記ターボチャージャタービンの下流及び前記ターボチャージャコンプレッサの上流の前記排気サブシステムと吸気サブシステムとの間の低圧EGR通路を備えるターボチャージャ付きエンジンシステムにおける排気ガス再循環(EGR)を制御する方法であって、
排気ガス基準に適合するよう目標総EGR率を決定するステップ、及び
目標HP/LP EGR比を決定して、前記決定された目標総EGR率の制約内で他のエンジンシステム基準を最適化するステップ、
を含む方法。
【請求項2】
エンジン、前記エンジンと上流で連通する吸気サブシステム、前記エンジンと下流で連通する排気サブシステム、ターボチャージャタービンの上流及びターボチャージャコンプレッサの下流の前記排気サブシステムと吸気サブシステムとの間の高圧EGR通路を備え、且つHP EGR弁、及び前記ターボチャージャタービンの下流及び前記ターボチャージャコンプレッサの上流の前記排気サブシステムと吸気サブシステムとの間の低圧EGR通路を備え、且つLP EGR弁を備えるターボチャージャ付きエンジンシステムにおける排気ガス再循環(EGR)を制御する方法であって、
実際の総EGR率の指標となる代替パラメータを感知するステップ、
少なくとも1つのエンジンシステムモデルに対する入力としての前記感知された代替パラメータに応じて、且つEGR流量センサを使用せず、実際の総EGR率を推定するステップ、
排気ガス基準に適合するよう目標総EGR率を決定するステップ、
目標HP/LP EGR比を決定して、前記決定された目標総EGR率の制約内で他のエンジンシステム基準を最適化するステップ、
前記決定された目標HP/LP EGR比に従いHP EGR及びLP EGR設定値を生成するステップ、
前記HP及びLP EGR設定値に対応する目標HP及びLP EGR弁開度を決定するステップ、
閉ループ制御を使用して前記設定値又は開度の少なくとも1つを調整するステップ、及び
前記HP EGR及びLP EGR弁開度を前記HP EGR及びLP EGR弁に適用するステップ、
を含む方法。
【請求項3】
前記目標HP/LP EGR比を決定するステップにおける前記他のエンジンシステム基準は、燃費基準、又はエンジンシステム性能基準、又はエンジンシステム保護規格、又はエンジンシステム保守規格のうちの少なくとも1つを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記燃費基準は、吸気又は排気スロットルの閉鎖の必要なしに前記総EGR率の達成を可能にすること、又は最高燃費に最適な吸気空気温度を達成することのうちの少なくとも1つを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記エンジンシステム性能基準は、トルク出力の増加を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記エンジンシステム保護規格は、ターボチャージャの過速の回避、又はコンプレッサ先端の過剰温度の回避、又はターボチャージャの凝縮液形成の低減のうちの少なくとも1つを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
前記エンジンシステム保守規格は、排気温度を上昇させてディーゼル微粒子フィルタを再生すること、又はエンジン冷却のために吸気温度を低下させること、又は吸気空気温度を制御して吸気凝縮を低減させることのうちの少なくとも1つを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項8】
前記決定された目標HP/LP EGR比に従いHP EGR及びLP EGR設定値を生成するステップ、
前記HP及びLP EGR設定値に対応する目標HP及びLP EGR弁開度を決定するステップ、
閉ループ制御を使用して前記設定値又は開度の少なくとも1つを調整するステップ、及び
前記HP EGR及びLP EGR弁開度を、前記HP 及びLP EGR通路のそれぞれの前記HP EGR及びLP EGR弁のそれぞれに適用するステップ、
をさらに含む、請求項3に記載の方法。
【請求項9】
前記ターボチャージャを閉ループ制御するステップをさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記LP EGR弁が吸気絞り弁を含み、前記弁が共通アクチュエータにより動作する、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記HP EGR弁が排気絞り弁を含み、前記弁が共通アクチュエータにより動作する、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
目標HP/LP EGR比を決定する前記ステップが、ターボチャージャ効率モデルを使用するステップを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
前記LP EGR設定値を閉ループ制御により調整するステップをさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項14】
目標HP及びLP EGR弁開度を決定する前記ステップが、エンジン負荷、エンジン速度、及びターボチャージャ給気圧を入力として伴う開ループモデルを使用するステップを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項15】
前記排気サブシステムの排気絞り弁が約0%EGRで実質的に閉鎖されているとともに徐々に開放されて約20%EGRで実質的に100%の開放位置となる一方、前記LP EGR弁が約0%EGRから約20%EGRまで実質的に閉鎖されたままであり、その後、前記排気絞り弁は総EGRが約70%に達するまで実質的に100%開放されたままであるとともに、前記LP EGR弁は徐々に開放され約70%EGRで実質的に100%の開放となり、その後、前記LP EGR弁が実質的に100%開放されたまま保たれる一方、前記排気絞り弁が徐々に閉鎖され約100%EGRで実質的に閉鎖されるように前記開度が適用される、請求項8に記載の方法。
【請求項16】
前記HP EGR設定値を閉ループ制御により調整するステップをさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項17】
前記HP及びLP設定値の比率に従い前記HP及びLP EGR設定値を閉ループ制御により調整するステップをさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項18】
任意の所定の瞬間のエンジン動作条件に応じて前記HP及びLP EGR設定値の一方又は他方を閉ループ制御により調整するステップをさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項19】
実際の総EGR率の指標となる代替パラメータを感知するステップ、
少なくとも1つのエンジンシステムモデルに対する入力としての前記感知された代替パラメータに応じて、且つEGR流量センサを使用せず、実際の総EGR率を推定するステップをさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項20】
排気ガス再循環(EGR)を制御するコントローラを含む製品であって、
前記コントローラは、
排気ガス基準に適合する目標総EGR率及び少なくとも1つの他のエンジンシステム入力信号を含む入力信号を受信し、
他のエンジンシステムパラメータを目標総EGR率の制約内で制御するために、目標高圧/低圧 EGR比を決定し、
前記目標高圧/低圧 EGR比に応じて、出力信号を送信するように構成されている、製品。
【請求項21】
前記他のエンジンシステムパラメータが、燃費、エンジンシステム性能、エンジンシステム保護、又はエンジンシステム保守のうちの少なくとも1つを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項22】
前記他のエンジンシステムパラメータが、吸気サブシステム温度制御又は排気サブシステム温度制御のうちの少なくとも1つを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
排気サブシステム温度を上昇させてディーゼル微粒子フィルタを再生するように、前記目標HP/LP EGR比を決定する、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
吸気サブシステム温度が低下するように、前記目標HP/LP EGR比を決定する、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
吸気空気温度を制御して凝縮を避けるように、前記目標HP/LP EGR比を決定する、請求項22に記載の方法。
【請求項26】
ターボチャージャの過速を回避するように、前記目標HP/LP EGR比を決定する、請求項21に記載の方法。
【請求項27】
運転者の車両加速要求に応えてトルク出力を増加するように、前記目標HP/LP EGR比を決定する、請求項21に記載の方法。
【請求項28】
LP EGRの割合をより高くしてターボラグが低減するように、前記目標HP/LP EGR比を決定する、請求項21に記載の方法。
【請求項29】
吸気又は排気弁の閉鎖の必要なしに総EGR率の達成が可能なように、前記目標HP/LP EGR比を決定する、請求項21に記載の方法。
【請求項30】
吸気空気温度を最高燃費に最適化するように、前記目標HP/LP EGR比を決定する、請求項21に記載の方法。
【請求項31】
排気ガスを低減するように、前記目標HP/LP EGR比を決定する、請求項21に記載の方法。
【請求項32】
EGR応答を改善するように、前記目標HP/LP EGR比を開ループ制御により決定する、請求項21に記載の方法。
【請求項33】
コンプレッサ先端の過剰温度が低減するように、前記目標HP/LP EGR比を決定する、請求項21に記載の方法。
【請求項34】
前記コントローラは吸気制御モジュールを含み、前記吸気制御モジュールは、前記目標総EGR率を受信するようにエンジン制御モジュールと連通するように構成されている、請求項21に記載の方法。
【請求項35】
前記少なくとも1つの他のエンジンシステム入力信号は、ターボチャージャ給気圧又は吸気質量流量のうちの少なくとも1つを含み、前記出力信号は、HP EGR設定値、LP EGR設定値、又はターボチャージャ設定値のうちの少なくとも1つを含む、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記コントローラはHP EGR制御モジュール及びLP EGR制御モジュールも含み、前記HP EGR制御モジュール及びLP EGR制御モジュールは、前記吸気制御モジュールと連通して、前記目標HP/LP EGR比に基づいた前記出力信号を受信して処理し、アクチュエータコマンド信号を伝達する、請求項34に記載の方法。
【請求項37】
前記コントローラは、総EGR率の指標となる少なくとも1つの感知された代替パラメータに応じて、総EGR率を推定するようにも構成されている、請求項21に記載の方法。
【請求項38】
前記少なくとも1つの感知された代替パラメータはシリンダ圧である、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記コントローラは、さらに、
前記決定された目標HP/LP EGR比に従いHP EGR設定値及びLP EGR設定値を生成し、前記HP及びLP EGR設定値に対応する目標HP及びLP EGR弁開度を決定し、
前記推定された総EGR率をプロセス変数入力として、及び前記目標総EGR率を設定値入力として処理することにより前記設定値又は開度の少なくとも1つを調整し、及び
前記開度を前記出力信号として送信する、ように構成されている、請求項2に記載の方法。
【請求項40】
前記推定された総EGR率は、総EGR率の指標となる少なくとも1つの代替パラメータに応じたものであり、前記推定された総EGR率は、前記推定された総EGR率を生成するために、少なくとも1つのエンジンシステムモデルに入力される、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記少なくとも1つの代替パラメータは、空気質量流量、O2、又はエンジンシステム温度のうちの少なくとも1つを含み、前記少なくとも1つのエンジンシステムモデルは、エンジン速度、吸気マニホルドの圧力、又は温度のうちの少なくとも1つに基づく、請求項40に記載の方法。
【請求項1】
エンジン、前記エンジンと上流で連通する吸気サブシステム、前記エンジンと下流で連通する排気サブシステム、ターボチャージャタービンの上流及びターボチャージャコンプレッサの下流の前記排気サブシステムと吸気サブシステムとの間の高圧EGR通路、及び前記ターボチャージャタービンの下流及び前記ターボチャージャコンプレッサの上流の前記排気サブシステムと吸気サブシステムとの間の低圧EGR通路を備えるターボチャージャ付きエンジンシステムにおける排気ガス再循環(EGR)を制御する方法であって、
排気ガス基準に適合するよう目標総EGR率を決定するステップ、及び
目標HP/LP EGR比を決定して、前記決定された目標総EGR率の制約内で他のエンジンシステム基準を最適化するステップ、
を含む方法。
【請求項2】
エンジン、前記エンジンと上流で連通する吸気サブシステム、前記エンジンと下流で連通する排気サブシステム、ターボチャージャタービンの上流及びターボチャージャコンプレッサの下流の前記排気サブシステムと吸気サブシステムとの間の高圧EGR通路を備え、且つHP EGR弁、及び前記ターボチャージャタービンの下流及び前記ターボチャージャコンプレッサの上流の前記排気サブシステムと吸気サブシステムとの間の低圧EGR通路を備え、且つLP EGR弁を備えるターボチャージャ付きエンジンシステムにおける排気ガス再循環(EGR)を制御する方法であって、
実際の総EGR率の指標となる代替パラメータを感知するステップ、
少なくとも1つのエンジンシステムモデルに対する入力としての前記感知された代替パラメータに応じて、且つEGR流量センサを使用せず、実際の総EGR率を推定するステップ、
排気ガス基準に適合するよう目標総EGR率を決定するステップ、
目標HP/LP EGR比を決定して、前記決定された目標総EGR率の制約内で他のエンジンシステム基準を最適化するステップ、
前記決定された目標HP/LP EGR比に従いHP EGR及びLP EGR設定値を生成するステップ、
前記HP及びLP EGR設定値に対応する目標HP及びLP EGR弁開度を決定するステップ、
閉ループ制御を使用して前記設定値又は開度の少なくとも1つを調整するステップ、及び
前記HP EGR及びLP EGR弁開度を前記HP EGR及びLP EGR弁に適用するステップ、
を含む方法。
【請求項3】
前記目標HP/LP EGR比を決定するステップにおける前記他のエンジンシステム基準は、燃費基準、又はエンジンシステム性能基準、又はエンジンシステム保護規格、又はエンジンシステム保守規格のうちの少なくとも1つを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記燃費基準は、吸気又は排気スロットルの閉鎖の必要なしに前記総EGR率の達成を可能にすること、又は最高燃費に最適な吸気空気温度を達成することのうちの少なくとも1つを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記エンジンシステム性能基準は、トルク出力の増加を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記エンジンシステム保護規格は、ターボチャージャの過速の回避、又はコンプレッサ先端の過剰温度の回避、又はターボチャージャの凝縮液形成の低減のうちの少なくとも1つを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
前記エンジンシステム保守規格は、排気温度を上昇させてディーゼル微粒子フィルタを再生すること、又はエンジン冷却のために吸気温度を低下させること、又は吸気空気温度を制御して吸気凝縮を低減させることのうちの少なくとも1つを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項8】
前記決定された目標HP/LP EGR比に従いHP EGR及びLP EGR設定値を生成するステップ、
前記HP及びLP EGR設定値に対応する目標HP及びLP EGR弁開度を決定するステップ、
閉ループ制御を使用して前記設定値又は開度の少なくとも1つを調整するステップ、及び
前記HP EGR及びLP EGR弁開度を、前記HP 及びLP EGR通路のそれぞれの前記HP EGR及びLP EGR弁のそれぞれに適用するステップ、
をさらに含む、請求項3に記載の方法。
【請求項9】
前記ターボチャージャを閉ループ制御するステップをさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記LP EGR弁が吸気絞り弁を含み、前記弁が共通アクチュエータにより動作する、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記HP EGR弁が排気絞り弁を含み、前記弁が共通アクチュエータにより動作する、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
目標HP/LP EGR比を決定する前記ステップが、ターボチャージャ効率モデルを使用するステップを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
前記LP EGR設定値を閉ループ制御により調整するステップをさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項14】
目標HP及びLP EGR弁開度を決定する前記ステップが、エンジン負荷、エンジン速度、及びターボチャージャ給気圧を入力として伴う開ループモデルを使用するステップを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項15】
前記排気サブシステムの排気絞り弁が約0%EGRで実質的に閉鎖されているとともに徐々に開放されて約20%EGRで実質的に100%の開放位置となる一方、前記LP EGR弁が約0%EGRから約20%EGRまで実質的に閉鎖されたままであり、その後、前記排気絞り弁は総EGRが約70%に達するまで実質的に100%開放されたままであるとともに、前記LP EGR弁は徐々に開放され約70%EGRで実質的に100%の開放となり、その後、前記LP EGR弁が実質的に100%開放されたまま保たれる一方、前記排気絞り弁が徐々に閉鎖され約100%EGRで実質的に閉鎖されるように前記開度が適用される、請求項8に記載の方法。
【請求項16】
前記HP EGR設定値を閉ループ制御により調整するステップをさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項17】
前記HP及びLP設定値の比率に従い前記HP及びLP EGR設定値を閉ループ制御により調整するステップをさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項18】
任意の所定の瞬間のエンジン動作条件に応じて前記HP及びLP EGR設定値の一方又は他方を閉ループ制御により調整するステップをさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項19】
実際の総EGR率の指標となる代替パラメータを感知するステップ、
少なくとも1つのエンジンシステムモデルに対する入力としての前記感知された代替パラメータに応じて、且つEGR流量センサを使用せず、実際の総EGR率を推定するステップをさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項20】
排気ガス再循環(EGR)を制御するコントローラを含む製品であって、
前記コントローラは、
排気ガス基準に適合する目標総EGR率及び少なくとも1つの他のエンジンシステム入力信号を含む入力信号を受信し、
他のエンジンシステムパラメータを目標総EGR率の制約内で制御するために、目標高圧/低圧 EGR比を決定し、
前記目標高圧/低圧 EGR比に応じて、出力信号を送信するように構成されている、製品。
【請求項21】
前記他のエンジンシステムパラメータが、燃費、エンジンシステム性能、エンジンシステム保護、又はエンジンシステム保守のうちの少なくとも1つを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項22】
前記他のエンジンシステムパラメータが、吸気サブシステム温度制御又は排気サブシステム温度制御のうちの少なくとも1つを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
排気サブシステム温度を上昇させてディーゼル微粒子フィルタを再生するように、前記目標HP/LP EGR比を決定する、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
吸気サブシステム温度が低下するように、前記目標HP/LP EGR比を決定する、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
吸気空気温度を制御して凝縮を避けるように、前記目標HP/LP EGR比を決定する、請求項22に記載の方法。
【請求項26】
ターボチャージャの過速を回避するように、前記目標HP/LP EGR比を決定する、請求項21に記載の方法。
【請求項27】
運転者の車両加速要求に応えてトルク出力を増加するように、前記目標HP/LP EGR比を決定する、請求項21に記載の方法。
【請求項28】
LP EGRの割合をより高くしてターボラグが低減するように、前記目標HP/LP EGR比を決定する、請求項21に記載の方法。
【請求項29】
吸気又は排気弁の閉鎖の必要なしに総EGR率の達成が可能なように、前記目標HP/LP EGR比を決定する、請求項21に記載の方法。
【請求項30】
吸気空気温度を最高燃費に最適化するように、前記目標HP/LP EGR比を決定する、請求項21に記載の方法。
【請求項31】
排気ガスを低減するように、前記目標HP/LP EGR比を決定する、請求項21に記載の方法。
【請求項32】
EGR応答を改善するように、前記目標HP/LP EGR比を開ループ制御により決定する、請求項21に記載の方法。
【請求項33】
コンプレッサ先端の過剰温度が低減するように、前記目標HP/LP EGR比を決定する、請求項21に記載の方法。
【請求項34】
前記コントローラは吸気制御モジュールを含み、前記吸気制御モジュールは、前記目標総EGR率を受信するようにエンジン制御モジュールと連通するように構成されている、請求項21に記載の方法。
【請求項35】
前記少なくとも1つの他のエンジンシステム入力信号は、ターボチャージャ給気圧又は吸気質量流量のうちの少なくとも1つを含み、前記出力信号は、HP EGR設定値、LP EGR設定値、又はターボチャージャ設定値のうちの少なくとも1つを含む、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記コントローラはHP EGR制御モジュール及びLP EGR制御モジュールも含み、前記HP EGR制御モジュール及びLP EGR制御モジュールは、前記吸気制御モジュールと連通して、前記目標HP/LP EGR比に基づいた前記出力信号を受信して処理し、アクチュエータコマンド信号を伝達する、請求項34に記載の方法。
【請求項37】
前記コントローラは、総EGR率の指標となる少なくとも1つの感知された代替パラメータに応じて、総EGR率を推定するようにも構成されている、請求項21に記載の方法。
【請求項38】
前記少なくとも1つの感知された代替パラメータはシリンダ圧である、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記コントローラは、さらに、
前記決定された目標HP/LP EGR比に従いHP EGR設定値及びLP EGR設定値を生成し、前記HP及びLP EGR設定値に対応する目標HP及びLP EGR弁開度を決定し、
前記推定された総EGR率をプロセス変数入力として、及び前記目標総EGR率を設定値入力として処理することにより前記設定値又は開度の少なくとも1つを調整し、及び
前記開度を前記出力信号として送信する、ように構成されている、請求項2に記載の方法。
【請求項40】
前記推定された総EGR率は、総EGR率の指標となる少なくとも1つの代替パラメータに応じたものであり、前記推定された総EGR率は、前記推定された総EGR率を生成するために、少なくとも1つのエンジンシステムモデルに入力される、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記少なくとも1つの代替パラメータは、空気質量流量、O2、又はエンジンシステム温度のうちの少なくとも1つを含み、前記少なくとも1つのエンジンシステムモデルは、エンジン速度、吸気マニホルドの圧力、又は温度のうちの少なくとも1つに基づく、請求項40に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2012−225348(P2012−225348A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−158638(P2012−158638)
【出願日】平成24年7月17日(2012.7.17)
【分割の表示】特願2008−547628(P2008−547628)の分割
【原出願日】平成18年12月20日(2006.12.20)
【出願人】(500124378)ボーグワーナー インコーポレーテッド (302)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年7月17日(2012.7.17)
【分割の表示】特願2008−547628(P2008−547628)の分割
【原出願日】平成18年12月20日(2006.12.20)
【出願人】(500124378)ボーグワーナー インコーポレーテッド (302)
【Fターム(参考)】
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